(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】大気汚染物質による皮膚損傷防止用及び抗老化用のペプチド、並びにその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20220329BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20220329BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220329BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220329BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20220329BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20220329BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220329BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220329BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220329BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220329BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220329BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220329BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220329BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220329BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220329BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20220329BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220329BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220329BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20220329BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20220329BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220329BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220329BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220329BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K38/08
A61P35/00
A61P17/00
A61P17/08
A61P17/10
A61P17/06
A61P37/02
A61P37/08
A61P25/00
A61P25/02
A61P15/00
A61P7/06
A61P11/00
A61P11/06
A61P9/06
A61P9/00
A61P9/10
A61P17/16
A61K8/64
A61Q19/08
A61Q5/02
A61Q19/00
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2020567020
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 KR2019004881
(87)【国際公開番号】W WO2020171285
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0020013
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510271129
【氏名又は名称】ケアジェン カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジ・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ミ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジ・イ
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0253888(US,A1)
【文献】特表2006-513700(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0340188(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0362598(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0136103(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1092915(KR,B1)
【文献】Accession No. EAW75373.1,Database GenBank [online],2006年,インターネット<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/119595779?sat=11&satkey=1259700>[検索日2021年10月21日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/06
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配
列からなる、汚染物質による皮膚損傷防止用ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、汚染物質の皮膚内流入抑制活性を有するものである、請求項1に記載の汚染物質による皮膚損傷防止用ペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドは、汚染物質と吸着するものである、請求項1に記載の汚染物質による皮膚損傷防止用ペプチド。
【請求項4】
前記汚染物質は、ダイオキシン、微細ほこり及びタバコ煙抽出物からなる群から選択されるものである、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の汚染物質による皮膚損傷防止用ペプチド。
【請求項5】
配列番号1のアミノ酸配
列からなる、皮膚抗老化用ペプチド。
【請求項6】
前記皮膚抗老化は、皮膚のしわまたは弾力の改善である、請求項5に記載の皮膚抗老化用ペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載のペプチドを有効成分として含む、汚染物質によって誘発される疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項8】
前記汚染物質によって誘発される疾患は、癌、アトピー皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、にきび、皮膚乾燥症、乾癬、致死、免疫毒性、末梢神経系損傷、中枢神経系損傷、内分泌腺異常、生殖器官障害、嬰児及び乳児の発達障害、貧血、気管支炎、肺気腫、肺機能減退、喘息、慢性気管支炎、不整脈、心臓麻痺、狭心症、及び心筋梗塞症で構成された群から選択されるいずれか1以上である、請求項7に記載の汚染物質によって誘発される疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項9】
請求項5に記載のペプチドを有効成分として含む、皮膚老化改善用薬学的組成物。
【請求項10】
前記皮膚老化改善は、しわの改善である、請求項9に記載の皮膚老化改善用薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1または請求項5に記載のペプチドのうちいずれか一つを有効成分として含む、汚染物質による皮膚損傷防止用または皮膚老化改善用の化粧料組成物。
【請求項12】
前記化粧料組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、ローション、エッセンス、クリーム、パウダー、せっけん、シャンプー、リンス、パックマスク、界面活性剤含有クレンジング、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、オイル、リキッドファウンデーション、クリームファウンデーション及びスプレーからなる群から選択される1種の剤形を有するものである、請求項11に記載の汚染物質による皮膚損傷防止用または皮膚老化改善用の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質による皮膚損傷防止活性及び抗老化効果を有する新規ペプチド、並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、大都市形成と産業化とによる大気汚染が深刻な社会的問題として認識され、大気中の汚染物質が、呼吸器を始めとする人間の全般的な健康に悪影響を及ぼしうるという各種研究結果が報告されている。特に、最近になり、韓国における大気中において、微細ほこりの濃度が、例年に比べて顕著に上昇しながら、それに係わる言論報道が続いていることにより、大気汚染の深刻性に対する大衆の関心と心配とが高まっている。
【0003】
大気中の汚染物質は、人体内部の臓器のうち呼吸器に最大の影響を及ぼすが、直接には、汚染物質と接する表面積が最も広く、持続的な露出が起きる皮膚は、汚染物質の主な標的になる臓器のうち一つである。一般的には、外部環境による皮膚健康悪化問題は、太陽光に含まれた紫外線によって誘発される問題に集中されてきたが、だんだんと悪化していく大気汚染問題と、空気中の汚染物質増加現象とにより、これ以上関連研究をおろそかにすることができない実情であり、大気汚染物質から皮膚を保護して回復させることができる物質や、それを含む化粧品などの研究と開発との必要性が叫ばれている。
【0004】
アリール炭化水素受容体(AhR:aryl hydrocarbon receptor)は、大気汚染物質が皮膚に接触したとき、細胞内において有害信号を伝達し、皮膚損傷を誘導する役割を行う核心的な受容体であり、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)のようなダイオキシン類や、多環芳香族炭素(PAHs)などが人体の皮膚に露出されれば、前記AhRに結合し、ステロイドホルモンの作用メカニズムのように、細胞核に移動し、毒性メカニズムを起こす。AhRと結合されたダイオキシン複合体は、核内に存在するArnt(AhR nuclear translocator)蛋白質と結合するが、AhR/Arnt複合体は、Cytochrome P450s(P450またはcyps(CYP1A1、CYP1A2及びCYP1B1))を含む標的遺伝子の転写調節領域にあるDREまたあはXRE(drug/xenobiotic responsive element)と呼ばれる塩基配列と結合し、さまざまな遺伝子群の転写を誘導し、それによって毒性を示す。
【0005】
一方、皮膚細胞は、各種原因により、老化現象が起こり、該皮膚細胞の老化により、しわが発生しうる。生物学的過程によって経時的に示される自然老化である年代学的老化(内因的老化)と、太陽光に露出される部位で発生する退行性変化と、前記年代学的老化とが複合的に示される光老化(光因性老化)とに区分されうる。細胞の成長と係わる各種因子の発現または活性が阻害される場合、自然な細胞の老化が発生し、太陽光に含まれた280nm波長ないし400nm波長の光により、皮膚細胞の光老化が進む。そのうちでも、特に、280nmないし320nm範囲の波長を有するUVBのような紫外線の照射により、皮膚や線維の損傷が発生し、皮膚が黒く日焼けする煤塵現象が発生しうる。UVBが照射されれば、皮膚細胞内のROS及び自由ラジカルの蓄積が促進され、ラジカルにより、細胞内信号伝逹体系を刺激し、DNA、蛋白質、脂質のような生体分子に酸化的ストレスを誘発させ、それにより、皮膚組織の損傷が発生してしまう。
【0006】
皮膚細胞の酸化的ストレスが増大すれば、表皮の角質細胞や、真皮の線維芽細胞に刺激が発生し、一連の細胞内信号伝達過程を経て、コラーゲン分解酵素であるMMP(matrix metalloproteinase)のような遺伝子の発現が増大され、皮膚の主要構成成分であり、真皮の90%を占め、皮膚に、強度、張力を付与し、外部刺激や力から皮膚を保護する役割を行うコラーゲンの低減が誘発され、それにより、皮膚の老化やしわが形成されうる。従って、前記コラーゲンのような線維蛋白質の合成や分解に係わる遺伝子の発現調節を介して皮膚細胞の老化を防止し、しわの改善効果を期待することができる。
【0007】
太陽光に含まれた紫外線の照射による細胞の老化作用や、前述のような大気汚染物質の細胞内流入は、単に皮膚の損傷により、美容的な側面で問題を発生させるだけではなく、細胞のDNA損傷により、癌を誘発したり、中枢神経系及び末梢神経系の損傷、免疫システム破壊、生殖器官障害、嬰児及び乳児の発達障害、並びに塩素ざ瘡のような皮膚疾患を起こし、深刻な健康上の問題も発生しうるが、それに対する解決策が至急である。
【0008】
前述のような問題点を解決するために、さまざまな種類の物質が開発され、多様な種類の植物や微生物から得た抽出物を利用し、前述のような問題点を克服しようとする試みがなされてきた。しかし、多くの場合、自然物から得た抽出物内において、具体的に、どの物質が皮膚細胞の保護効果や、老化現象からの回復効果を導き出すことができるかということを確認することができず正確な構成を知ることができず、未知の物質も共に含んでいる抽出物組成物を利用している実情である。人体に直接接触させたり適用させたりして使用しなければならない特性上、副作用を最小化させ、人体に対する安全性が確保されなければならないが、前述のような問題点を解決することができる効果を有する単一物質を正確に究明し、人体の皮膚細胞などに適用しなければならない必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ダイオキシン、微細ほこり、タバコ煙のような汚染物質の細胞流入を阻害することにより、汚染物質によって発生する皮膚損傷を防止し、皮膚細胞を保護する用途に利用することができるペプチドを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、自然に発生するか、あるいは太陽光の紫外線によって発生する皮膚細胞の老化現象を減らし、それにより、皮膚しわを改善させるための用途に利用することができるペプチドを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前述のようなペプチドを有効成分として含み、汚染物質によって誘発される疾患を予防または治療するか、あるいは皮膚老化を改善させることができる薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、前述のようなペプチドを有効成分として含み、汚染物質による皮膚損傷を防止し、皮膚老化を改善させることができる化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の目的を達成するために、本発明の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、汚染物質による皮膚損傷防止用ペプチドを提供することである。
【0014】
本発明の他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、皮膚抗老化用ペプチドを提供することである。
【0015】
本発明の他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、汚染物質によって誘発される疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供することである。
【0016】
本発明の他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、皮膚老化改善用薬学的組成物を提供することである。
【0017】
本発明の他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む、汚染物質による皮膚損傷防止用または皮膚老化改善用の化粧料組成物を提供することである。
【発明の効果】
【0018】
本発明で提供するペプチドは、大気中に存在するダイオキシン、微細ほこり、タバコ煙のような汚染物質の細胞内流入を防止し、皮膚細胞の老化現象を抑制するので、汚染物質によって誘発されうる癌、皮膚疾患、肺疾患などを予防または治療するか、あるいは皮膚老化を改善させる薬学的組成物の有効成分としても有用に使用され、汚染物質から皮膚を保護し、皮膚老化及びしわを改善させるための化粧料組成物の有効成分として使用されうる効果がある。
【0019】
ただし、本発明の効果は、前述のところで言及した効果に制限されるものではなく、言及されていない他の効果は、下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞に対し、TCDDを処理した場合のAhR核移動量を確認して示したウェスタンブロッティング結果である。以下、Conは、control、NCは、negative controlを意味する。
【
図1B】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞に対し、PMを処理した場合のAhR核移動量を確認して示したウェスタンブロッティング結果である。以下、Conは、control、NCは、negative controlを意味する。
【
図1C】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞に対し、CSEを処理した場合のAhR核移動量を確認して示したウェスタンブロッティング結果である。以下、Conは、control、NCは、negative controlを意味する。
【
図1D】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したA549細胞に対し、CSEを処理した場合のAhR核移動量を確認して示したウェスタンブロッティング結果である。
【
図2A】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞に対し、TCDDを処理した場合のCYP1A1及びCOX-2遺伝子の発現量を確認して示したRT-PCR結果である。
【
図2B】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞に対し、PMを処理した場合のCYP1A1及びCOX-2遺伝子の発現量を確認して示したRT-PCR結果である。
【
図2C】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞に対し、CSEを処理した場合のCYP1A1及びCOX-2遺伝子の発現量を確認して示したRT-PCR結果である。
【
図3A】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞に対し、TCDDを処理した場合のMMP-1及びCOX-2の蛋白質量を確認して示したウェスタンブロッティング結果である。
【
図3B】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞に対し、PMを処理した場合のMMP-1及びCOX-2の蛋白質量を確認して示したウェスタンブロッティング結果である。
【
図4A】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドがPMと吸着して沈澱されるか否かということを確認した写真である。
【
図4B】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドがCSEと吸着して沈澱されるか否かということを確認した写真である。
【
図5A】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞のp-Akt、p-ERKの蛋白質量を確認して示したウェスタンブロッティング結果である。
【
図5B】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞のSIRT1遺伝子の発現量を確認して示したRT-PCR結果である。
【
図6A】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したNIH3T3細胞のp-Akt、p-ERKの蛋白質量を確認して示したウェスタンブロッティング結果である。
【
図6B】配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したNIH3T3細胞のコラーゲン(Col1a1)遺伝子、フィブロネクチン(fibronectin)遺伝子、エラスチン(elastin)遺伝子の発現量を確認して示したRT-PCR結果である。
【
図7】UVBを照射し、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したHaCaT細胞のSIRT1遺伝子及びAQP3遺伝子の発現量を確認して示したRT-PCR結果である。
【
図8A】UVBを照射し、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したNIH3T3細胞のコラーゲン(Col1a1)遺伝子、フィブロネクチン(fibronectin)遺伝子、エラスチン(elastin)遺伝子の発現量を確認して示したRT-PCR結果である。
【
図8B】UVBを照射し、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理したNIH3T3細胞のMMP-1蛋白質の量を確認して示したウェスタンブロッティング結果と、MMP-2蛋白質の量を確認して示したゼラチンザイモグラフィ結果とである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
1.汚染物質による皮膚損傷防止用または皮膚抗老化用のペプチド
本発明の一側面は、汚染物質による皮膚損傷を防止することができる新規ペプチドを提供するものである。
【0023】
本発明の他の側面は、皮膚の老化を抑制することができる新規ペプチドを提供するものである。
【0024】
前記ペプチドは、ペプチド結合で連結された2個以上のアミノ酸からなるポリマーを意味するが、ペプチド自体サイズが過度に大きく、標的組織または標的細胞に効果的に流入されなかったり、半減期が短く、短期間に体内で消滅したりするという短所があるので、本発明の前記ペプチドは、汚染物質の細胞流入抑制活性を有する、20個以下、例えば、15個以下または10個以下のアミノ酸からなる。
【0025】
本発明のペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記ペプチドの汚染物質による皮膚損傷抑制活性、及び皮膚の抗老化活性に影響を及ぼさない範囲内において、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換、またはそれらの組み合わせにより、異なる配列を有するアミノ酸の変異体または断片でもある。前記ペプチドの汚染物質による皮膚損傷抑制活性、及び皮膚の抗老化活性を全体的に変更させないペプチドレベルでのアミノ酸交換は、当該分野に公知されている。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などによっても変形される。従って、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドと実質的に同一なアミノ酸配列を含むペプチド、及びその変異体またはその活性断片を含む。前記実質的に同一な蛋白質とは、前記配列番号1のアミノ酸配列と、それぞれ75%以上、例えば、80%以上、90%以上、95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を意味する。また、前記ペプチドには、標的化配列、タグ(tag)、標識された残基、半減期またはペプチド安定性を増大させるための特定目的によって製造されたアミノ酸配列が追加しても含まれる。
【0026】
また、本発明の前記ペプチドは、当該分野で広く公知された多様な方法で獲得することができる。一例として、ポリヌクレオチド組み換えと蛋白質発現システムとを利用して製造するか、あるいはペプチド合成のような化学的合成を介し、試験管内で合成する方法、及び無細胞蛋白質合成法などによっても製造される。
【0027】
また、さらに良好な化学的安定性、強化された薬理特性(半減期、吸水性、力価、効能など)、変更された特異性(例えば、広範囲な生物学的活性スペクトル)、低減された抗原性を獲得するために、ペプチドのN末端またはC末端に、保護基が結合されてもいる。例えば、前記保護基は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基またはポリエチレングリコール(PEG)でもあるが、ペプチドの改質、特に、ペプチドの安定性を増進させることができる成分であるならば、制限なしにも含まれる。前記「安定性」は、生体内蛋白質切断酵素の攻撃から、本発明のペプチドを保護するインビボにおける安定性だけではなく、保存安定性(例えば、常温保存安定性)も意味する。
【0028】
本発明の前記汚染物質は、ダイオキシン(TCDD)、微細ほこり(PM:particulate matter)、またはタバコ煙抽出物(CSE:cigarette smoke extract)でもあるが、それらに制限されるものではなく、外部から細胞内に流入され、細胞の成長過程と正常代謝過程とを妨害しうる毒性を有したゼノバイオティクス(xenobiotics)であるならば、いずれも含まれる。汚染物質による皮膚損傷防止は、汚染物質を細胞内部に流入させないことによっても達成され、それにより、細胞内において、汚染物質が毒性を示すことができなくできる。
【0029】
また、本発明のペプチドは、前記汚染物質との吸着を介し、汚染物質の細胞内流入を阻害することができる。前記ダイオキシンのような汚染物質は、細胞内部に流入されれば。AhRと結合し、さまざまな遺伝子群の発現を誘導することができ、それにより、CYP1A1、CYP1A2、CYP1B1、COX-2、MMPsなどの発現が増大されて示されるが、前述のような遺伝子の発現量変化を確認することにより、前記汚染物質の細胞内流入抑制を介する本発明の前記ペプチドの細胞保護効果を確認することができる。
【0030】
本発明の前記皮膚抗老化は、皮膚細胞の老化現象を抑制する効果を意味する。前記老化は、経時的に細胞において自然に発生する老化でもあり、太陽光によって発生する光老化でもあり、特に、紫外線によって発生する光老化でもある。また、前記老化は、多様な原因によって発生しうる細胞内酸化的ストレス現象によっても誘導され、それにより、細胞成長抑制や細胞死滅が進められ、皮膚細胞において、該皮膚細胞を構成する各種線維蛋白質の合成が阻害され、分解酵素発現が増大されうる。特に、紫外線照射により、皮膚細胞においては、SIRT1、AQP3、Col1a1、フィブロネクチン、エラスチンのような遺伝子の発現が抑制され、MMP-1遺伝子、MMP-2遺伝子の発現が促進され、皮膚細胞の光老化及びしわ発生を誘発しうる。
【0031】
本発明のペプチドは、皮膚細胞内において、細胞増殖と係わる経路の遺伝子発現を増大させたり、線維蛋白質合成遺伝子の発現増大、線維蛋白質分解遺伝子の発現抑制を誘導したりすることができる。従って、前記ペプチドは、線維蛋白質合成を増大させることにより、皮膚のしわ及び弾力性を改善させることができ、皮膚障壁を改善させることにより、皮膚の抗老化活性を有するようにする。皮膚の老化が進行されることにより、皮膚細胞内において、発現量が変化する細胞増殖と係わる蛋白質、抗老化遺伝子、線維蛋白質、及びその分解酵素関連遺伝子の発現量を確認することにより、本発明の前記ペプチドの抗老化効果及び皮膚しわ改善効果を確認することができる。
【0032】
本発明の前記ペプチドが有する汚染物質による皮膚損傷防止効果を確認するために、本発明の具体的な実施例においては、角質形成細胞と線維芽細胞とに、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドと共に、ダイオキシン、微細ほこり、タバコ煙抽出物を処理し、AhR(aryl hydrocarbon receptor)の核移動量、CYP1A1、COX-2及びMMP-1の発現量を確認した結果、前記ダイオキシン、前記微細ほこり、前記タバコ煙抽出物のような汚染物質の細胞内流入が抑制され、汚染物質の流入によるAhRの核移動量と、CYP1A1、COX-2及びMMP-1の発現量とが、本発明のペプチド処理依存的に減少することを確認した(
図1Aないし
図3B)。
【0033】
また、本発明の前記ペプチドと、汚染物質との吸着いかんを確認するために、本発明の具体的な実施例においては、微細ほこりとタバコ煙抽出物とを、本発明の配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドと混合させて肉眼で観察した結果、本発明のペプチドは、前記微細ほこり、タバコ煙抽出物のような汚染物質と吸着して沈澱されることを確認することができ、前記ペプチドの量に依存して吸着が起こることを確認した(
図4A及び
図4B)。
【0034】
また、本発明の前記ペプチドが有する皮膚細胞の自然老化抑制効果を確認するために、本発明の具体的な実施例においては、角質形成細胞と線維芽細胞とに、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理し、リン酸化された形態のAkt及びERKの量、SIRT1、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチンの発現量を確認した結果、リン酸化された形態のAkt及びERKの量、SIRT1蛋白質の量と、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチンのような線維蛋白質の発現量とが、本発明のペプチド処理依存的に増加することを確認した(
図5Bないし
図6B)。
【0035】
併せて、本発明の前記ペプチドが有する紫外線(UV)照射による皮膚細胞の光老化現状の回復効果を確認するために、本発明の具体的な実施例においては、角質形成細胞と線維芽細胞とに、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理し、減少されたSIRT1、AQP3、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチンの発現量がさらに増加するか否かということ、そして増加されたMMP1、MMP2の発現量がさらに減少するか否かということを確認した結果、SIRT1、AQP3、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチンの発現量が、本発明のペプチド処理依存的に増加し、紫外線の照射によって減少された発現量が回復されることを確認し(
図7及び
図8A)、MMP-1、MMP-2の発現量が、本発明のペプチド処理依存的に減少し、紫外線の照射によって増加された発現量が回復されすることを確認した(
図8B参照)。
【0036】
従って、本発明の前記ペプチドは、TCDD、PM、CSEのような汚染物質の細胞内流入を抑制し、皮膚損傷を防止し、皮膚細胞の自然老化現象や、紫外線によって発生する光老化現象と係わる遺伝子の発現を調節することにより、抗老化活性を介し、皮膚のしわを改善させることができる活性を有することが明らかであり、従って、本発明の前記ペプチドは、汚染物質による皮膚損傷防止、抗老化及び皮膚しわ改善のための組成物の有効成分としても有用に使用される。
【0037】
2.汚染物質によって誘発される疾患の予防用または治療用、皮膚老化改善用の薬学的組成物
本発明の他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む汚染物質によって誘発される疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供するものである。
【0038】
本発明のさらに他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む皮膚老化改善用薬学的組成物を提供するものである。
【0039】
前記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、前記「1.汚染物質に対する細胞保護用または皮膚細胞抗老化用のペプチド」項目で説明したペプチドと同一であるが、具体的な説明は、前述の「1.汚染物質に対する細胞保護用または皮膚細胞抗老化用のペプチド」項目を援用し、以下においては、汚染物質によって誘発される疾患の予防用または治療用、皮膚老化改善用の薬学的組成物に独特な構成についてのみ説明することにする。
【0040】
本発明の前記ペプチドは、汚染物質の細胞内流入を阻害し、皮膚細胞の老化を抑制する効果があるが、前記ペプチドを有効成分として含む薬学的組成物は、汚染物質によって誘発される疾患を予防するか、あるいは治療する用途に利用することができ、皮膚細胞の老化を改善させ、しわを低減させ、皮膚の弾力を改善させるための用途に利用することができる。
【0041】
前記汚染物質によって誘発される疾患は、汚染物質、例えば、ダイオキシン、微細ほこり、タバコ煙のような大気汚染物質によっても誘発される疾患を意味するものであり、皮膚疾患、肺疾患、神経系疾患、生殖系疾患、心血管系疾患などを含み、癌、アトピー皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、にきび、皮膚乾燥症、乾癬、致死、免疫毒性、末梢神経系損傷、中枢神経系損傷、内分泌腺異常、生殖器官障害、嬰児及び乳児の発達障害、貧血、気管支炎、肺気腫、肺機能減退、喘息、慢性気管支炎、不整脈、心臓麻痺、狭心症または心筋梗塞症を含む。
【0042】
本発明の前記薬学的組成物は、汚染物質の細胞流入を阻害することにより、 前記汚染物質によって誘発される疾患が発生しないように予防するか、前記疾患の患者の細胞に追加して流入される汚染物質を抑制して症状を緩和するか、あるいは病状の悪化を阻害し、疾患を治療するための用途にも使用される。
【0043】
前記皮膚老化は、皮膚細胞の自然老化または光老化によって誘発されう皮膚状態の否定的変化を意味するものであり、皮膚のしわ、微細線、皮膚弾性及び/または緊張の低下、しわしわになること、薄くなること、つやと光沢との低減のような生理学的及び/または化学線的な老化でもあり、紫外線に露出されて真皮が薄くなる内部皮膚劣化(internal skin degradation)、特に、コラーゲン線維の劣化のように、老化による皮膚の外形的な変化でもある。
【0044】
本発明の前記薬学的組成物は、皮膚細胞で発生しうる老化現象を抑制することにより、自然に、または光によって誘発された前記皮膚老化と係わり、皮膚弾力を正常なレベルに戻すというように、医学的に良好な皮膚状態に復旧させ、皮膚老化を改善させる用途にも使用される。
【0045】
一方、本発明の前記ペプチドを有効成分として含む薬学的組成物は、本発明が属する技術分野で当業者が容易に実施することができる方法により、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位用量形態に製造されるか、あるいは多用量容器内に内入させても製造される。このとき、剤形は、オイル内または水性媒質内の溶液、懸濁液状または乳化液状でもあり、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはゲル(例えば、ヒドロゲル)状でもあり、分散剤または安定化剤を追加して含んでもよい。
【0046】
また、前記薬学的組成物が含む前記ペプチドは、コロイド懸濁液、粉末、食塩水、脂質、リポソーム、微小球体(microspheres)またはナノ球形粒子のような薬学的に許容されうる担体によっても運搬される。それらは、運搬手段と複合体を形成するか、あるいは係わり、脂質、リポソーム、微細粒子、金、ナノ粒子、ポリマー、縮合反応剤、多糖類、ポリアミノ酸、デンドリマー、サポニン、吸着増進物質または脂肪酸のような、当業界に公知された運搬システムを使用しても生体内運搬される。
【0047】
それ以外にも、薬学的に許容される担体は、製剤時に一般的に利用されるラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシア、ゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含んでもよいが、それらに制限されるのではない。また、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液剤、保存剤などを追加で含んでもよい。
【0048】
本発明による薬学的組成物は、臨床投与時、経口または非経口で投与が可能であり、一般的な医薬品製剤の形態でも使用される。すなわち、本発明の薬学的組成物は、実際の臨床投与時、経口及び非経口のさまざまな剤形によっても投与されるが、製剤化する場合には、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤のような希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、そのような固形製剤は、生薬抽出物または生薬発酵物に、少なくとも1以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁液剤、耐溶液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、一般的に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外のさまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁液剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されうる。坐剤の基剤としては、ウィテプソル、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用されうる。
【0049】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の比率で疾患を治療するに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出の比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素、及びその他医学分野に周知された要素によっても決定される。本発明の他の薬学的組成物は、個別治療剤で投与するか、あるいは他の汚染物質によって誘発される疾患の治療剤、または皮膚老化改善のための治療剤と併用しても投与され、従来の治療剤とは、同時、別途または順次に投与され、単一または多重で投与されうる。前記要素をいずれも考慮し、副作用なしに、最小限量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、それは、当業者によって容易に決定されうる。
【0050】
具体的には、本発明の薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内への活性成分吸収度、不活性率、排泄速度、疾病種類、併用される薬物によっても異なり、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによっても増減され、一例として、本発明のペプチドを1日当たり患者体重1kg当たり約0.0001μgないし500mg、例えば、0.01μgないし100mgで投与することができる。また、医師または薬剤師の判断により、日程時間間隔で、1日数回、例えば、1日に2回ないし3回分割投与されうる。
【0051】
3.汚染物質による皮膚損傷防止用または皮膚老化改善用の化粧料組成物
本発明のさらに他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む汚染物質による皮膚損傷防止用または皮膚老化改善用の化粧料組成物を提供するものである。
【0052】
前記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、前記「1.汚染物質に対する細胞保護用または皮膚細胞抗老化用のペプチド」項目で説明したペプチドと同一であるが、具体的な説明は、前述の「1.汚染物質に対する細胞保護用または皮膚細胞抗老化用のペプチド」項目を援用し、以下においては、汚染物質による皮膚損傷防止用または皮膚老化改善用の化粧料組成物の独特な構成についてのみ説明する。
【0053】
本発明の前記ペプチドは、汚染物質の細胞内流入を阻害し、皮膚細胞の老化を抑制する効果があるが、前記ペプチドを有効成分として含む化粧料組成物は、汚染物質によって発生しうる皮膚損傷を防止する用途に利用することができ、皮膚細胞の老化を改善させ、しわを低減させ、皮膚の弾力を改善させるための用途に利用することができる。
【0054】
前記ペプチドは、化粧料組成物全体100重量%において、0.001ないし30重量%にも含有され、例えば、0.1ないし20重量%、0.1ないし10重量%、1ないし10重量%、または2ないし5重量%にも含有されるが、それらに制限されるものではない。
【0055】
本発明の前記ペプチドを有効成分として含む化粧料組成物は、前記ペプチドの汚染物質の細胞流入抑制活性、及び皮膚細胞の老化改善活性に影響を及ぼさない範囲内において、例えば、前記ペプチドの活性に相乗効果を与えることができる特徴がある他の成分を追加で含んでもよい。例えば、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲルカ剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型の乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、香料、親水性または親油性の活性剤、脂質小胞、または化粧品に一般的に使用される任意の他の成分のように、化粧品分野や皮膚科学分野において、一般的に使用される補助剤を含み、前記成分は、化粧品分野や皮膚科学分野において、一般的に使用される量にも含有される。
【0056】
本発明の前記化粧料組成物は、当業界で一般的に製造されるいかなる剤形にも製造され、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、ローション、エッセンス、クリーム、パウダー、せっけん、シャンプー、リンス、パックマスク、界面活性剤含有クレンジング、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、オイル、リキッドファウンデーション、クリームファウンデーションまたはスプレーなどの化粧料にも剤形化される。
【0057】
前記剤形が、溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が利用され、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルが利用されうる。前記剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水・エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁液剤、アルミニウムメタヒドロキシド、微小結晶性セルロース、ベントナイト、アガールまたはトラカントなどが利用されうる。前記剤形がクリームまたはゲルである場合には、担体成分として、ワックス、パラフィン、トラカント、動物性油、澱粉、セルロース誘導体、シリコン、ベントナイト、ポリエチレングリコール、シリカ、酸化亜鉛またはタルクなどが利用されうる。前記剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、シリカ、タルク、アルミニウムヒドロキシ基、ラクトース、ケイ酸カルシウム、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体を含んでもよい。前記剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコールスルフェート、脂肪族アルコールエーテルスルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イミダゾリニウム誘導体、イセチオネート、メチルタウリン、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルスルフェート、脂肪族アルコール、アルキルアミドベタイン、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが利用されうる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について実施例によって詳細に説明する。
【0059】
ただし、下記実施例は、本発明を具体的に例示するものであり、本発明の内容は、下記実施例によって限定されるものではない。
【0060】
[製造例]ペプチド作製
自動ペプチド合成器(Milligen 9050、Millipore、米国)を利用し、下記表1に記載された配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドを合成し、C18逆相高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)(Waters Associates、米国)を利用し、それら合成されたペプチドを精製分離した。カラムは、ACQUITY UPLC BEH300C18(2.1mm×100mm、1.7μm、Waters Co、米国)を利用した。
【表1】
【0061】
[実験例1]ペプチド処理によるAhRの核移動量減少確認
汚染物質の細胞内流入抑制効果を確認するために、ダイオキシン(以下、「TCDD」とする)、微細ほこり(PM)及びタバコ煙抽出物(CSE)を細胞に処理した後、AhR)の核移動量を確認した。前記AhRは、細胞外部から流入されたゼノバイオティクスが存在する場合、それと結合し、転写因子として作用し、細胞内核に移動することになるので、AhRの核移動量を確認することにより、前記汚染物質の細胞内流入量を確認することができる。HaCaT細胞(human keratinocyte)を対象に、TCDD、PM、CSEをそれぞれ処理して確認し、A549細胞(human alveolar epithelial cell)を対象に、CSEを処理して確認した。TCDD、PM、CSEは、本発明のペプチドと混合し、無血清培地(SFM:serum-free media)上において、1時間事前に反応させておいた後で使用した。
【0062】
TCDDを処理した場合の実験結果を確認するために、まず、74継代(passage)のHaCaT細胞を、3×105/ウェルの細胞密度で、6ウェルプレートに播種(seeding)した後、16時間培養させ、培養液を無血清培地(SFM)で交換した後、そこに、事前に反応させておいたTCDDと、前記ペプチドの混合物とを1時間処理した。TCDDは、0.1μMの濃度で処理したしペプチドは、それぞれ10,50,100μMの濃度で処理した。陰性対照区(negative control)は、ペプチドは、処理せず、TCDDだけ処理し、陽性対照区(positive control)は、TCDDと共に、CH223191を10μMの濃度で処理した。細胞を前記混合物と1時間反応させた後、細胞を溶解させ、細胞質及び核蛋白質を分離することができるキット(Nuclear and Cytoplasmic Extraction Reagents Kit、Thermo scientific、米国)を利用し、核蛋白質のみを分離した後、抗AhR抗体(Santacruz biotechnology、米国)と抗HDAC抗体(Santacruz biotechnology、米国)とを使用し、AhRに対するウェスタンブロッティングを進めた。実験に使用した核蛋白質総量を比較するために、HDACも共に確認した。
【0063】
PMとCSEとを処理した場合の実験過程も、前述のTCDDを処理した場合と同一方法を介して進められ、PMは、50μg/cm2の濃度、CSEは、2%の濃度でそれぞれ処理した。前記CSEは、減圧フラスコに、50mlのPBSを充填して入れ、フラスコを真空ポンプに連結し、タバコ40本に火をつけて調製したものを利用した。A549細胞を対象にCSEを処理して確認した実験も、前述の実験過程と類似しており、48継代のA549細胞を、5×105/ウェルの細胞密度で6ウェルプレートに播種した後、CSEを処理して分離した核蛋白質を対象にウェスタンブロッティングを進めた。
【0064】
その結果、
図1Aないし
図1Dのウェスタンブロッティング結果から分かるように、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理せず、TCDD、PMまたはCSEのみを処理した陰性対照区(negative control)においては、核蛋白質において、AhRが多量存在するところに反し、前記ペプチドを処理した場合には、ペプチド濃度が上昇するにつれ、だんだんとAhR核内に存在する量が減少することを確認した。
【0065】
前述のような結果を介して、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより、HaCaT細胞及びA549細胞において、TCDD、PM、CSEのような汚染物質の流入が阻害され、それにより、AhRの核移動量も、減少したということを知ることができる。
【0066】
[実験例2]ペプチド処理によるCYP1A1及びCOX-2の発現量減少確認
汚染物質の細胞内流入抑制効果を、他の方法を介して確認するために、TCDD、PM及びCSEをHaCaT細胞に処理した後、CYP1A1及びCOX-2の発現量を確認した。TCDDのような汚染物質により、AhRの活性が促進されれば、AhRが転写因子として作用し、CYP1A1及びCOX-2の発現を増大させるので、CYP1A1、COX-2の遺伝子がどれほど発現されたということを確認することにより、前記汚染物質の細胞内流入程度と、AhRの活性いかんとを確認することができる。TCDD、PM、CSEは、本発明のペプチドと混合し、無血清培地(SFM)上において、1時間事前に反応させておいた後で使用した。
【0067】
TCDDを処理した場合の実験結果を確認するために、まず、78継代のHaCaT細胞を、3×105/ウェルの細胞密度で6ウェルプレートに播種した後、16時間培養させ、培養液を無血清培地(SFM)で交換した後、そこに、事前に反応させておいたTCDDと前記ペプチドとの混合物を2時間処理した。TCDDは、0.1μMの濃度で処理し、ペプチドは、それぞれ10,50,100μMの濃度で処理した。陰性対照区(negative control)は、ペプチドは、処理せずにTCDDだけ処理し、陽性対照区(positive control)は、TCDDと共に、CH223191を10μMの濃度で処理した。細胞を前記混合物と2時間反応させた後、RNAを分離した。培養液を除去した後、細胞を培養したプレートに、TRIzol(Thermo Fisher Scientific、米国)を処理し、スクレーパを利用し、RNAを含む試料を得た後、クロロホルムを処理し、遠心分離を介して上澄み液を得た。上澄み液にイソプロパノールを処理し、さらに遠心分離し、底のRNAペレットを確認し、そこに70%のエタノールを処理し、ペレットを洗浄した後、十分に乾燥させ、RNAを分離した。分離されたRNAは、RNase-free water(Corning、米国)に溶かして使用した。分離されたRNAをcDNAで逆転写させ、CYP1A1及びCOX-2のプライマー(表2)を利用し、RT-PCRを遂行した(cDNA重合キット及びPCR pre-mix:Intron、韓国)。各処理群の全体RNA量比較のために使用されたGAPDHのプライマーは、下記表2の配列を有したものを利用した。
【0068】
PMとCSEとを処理した場合の実験過程も、前述のTCDDを処理した場合と同一方法を介して進められ、PMは、25μg/cm
2の濃度、CSEは、2%の濃度でそれぞれ処理した。前記CSEは、減圧フラスコに50mlのPBSを充填して入れ、フラスコを真空ポンプに連結し、タバコ40本に火をつけて調製したものを利用した。
【表2】
その結果、
図2Aないし
図2CのRT-PCR結果から分かるように、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理せず、TCDD、PMまたはCSEのみを処理した陰性対照区(negative control)においては、CYP1A1及びCOX-2の遺伝子が多量発現されたところに反し、前記ペプチドを処理した場合には、ペプチド濃度が上昇するにつれ、だんだんとCYP1A1とCOX-2との発現量が減少することを確認した。
【0069】
前述のような結果を介して、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより、HaCaT細胞において、TCDD、PM、CSEのような汚染物質の流入が阻害され、それにより、CYP1A1及びCOX-2の発現量も減少したということを知ることができる。
【0070】
[実験例3]ペプチド処理によるMMP-1及びCOX-2の蛋白質量減少の確認
汚染物質の細胞内流入抑制効果を、他の方法を介して確認するために、TCDD及びPMをHaCaT細胞に処理した後、MMP-1蛋白質及びCOX-2蛋白質の量を確認した。前記MMP-1は、コラーゲン分解酵素であり、TCDDのような汚染物質によってAhRの活性が促進されれば、AhRが転写因子として作用し、MMP-1及びCOX-2の発現を増大させるので、MMP-1、COX-2の遺伝子がどれほど発現されたかをいうことを確認することにより、前記汚染物質の細胞内流入程度と、AhRの活性いかんとを確認することができる。TCDD、PMは、本発明のペプチドと混合し、無血清培地(SFM)上において、1時間事前に反応させておいた後で使用した。
【0071】
TCDDを処理した場合の実験結果を確認するために、まず、80継代のHaCaT細胞を、3×105/ウェルの細胞密度で6ウェルプレートに播種した後、16時間培養させ、培養液を無血清培地(SFM)で交換した後、そこに、事前に反応させておいたTCDDと前記ペプチドとの混合物を24時間処理した。TCDDは、0.1μMの濃度で処理し、ペプチドは、それぞれ10,50,100μMの濃度で処理した。陰性対照区(negative control)は、ペプチドは、処理せずにTCDDだけ処理し、陽性対照区(positive control)は、TCDDと共に、CH223191を10μMの濃度で処理した。細胞を前記混合物と24時間反応させた後、細胞から溶解物を得て、抗MMP-1抗体(Cell Signaling、米国)と抗COX-2抗体(Santacruz biotechnology、米国)とを使用し、MMP-1及びCOX-2に対するウェスタンブロッティングを進めた。
【0072】
β-アクチンは、実験に使用した蛋白質総量を比較するために、抗β-アクチン抗体(Santacruz biotechnology、米国)を利用して確認した。
【0073】
PMを処理した場合の実験過程も、前述のTCDDを処理した場合と同一方法を介して進められ、PMは、50μg/cm2の濃度で処理した
【0074】
その結果、
図3A及び
図3Bのウェスタンブロッティング結果から分かるように、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理せず、TCDDまたはPMのみを処理した陰性対照区(negative control)においては、MMP-1及びCOX-2の蛋白質量が多量であることに反し、前記ペプチドを処理した場合には、ペプチド濃度が上昇するにつれ、だんだんとMMP-1及びCOX-2の蛋白質量が減少することを確認した。
【0075】
前述のような結果を介して、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより、HaCaT細胞において、TCDD、PMのような汚染物質の流入が阻害され、それにより、MMP-1及びCOX-2の蛋白質量も減少したということを知ることができる。
【0076】
[実験例4]ペプチドの環境汚染物質との吸着効果確認
本発明のペプチドが汚染物質と吸着されるか否かということを確認するために、ペプチドと汚染物質との混合物が沈澱される様相を肉眼で観察した。
【0077】
まず、微細ほこりの吸着程度を確認するために、100μg/mlのPMと、それぞれ100,200μMの前記ペプチドとを混合して沈澱される様相を観察し、タバコ40本煙を利用して調製したCSEと、200μMのペプチドとを混合して肉眼観察した。
【0078】
その結果、
図4A及び
図4Bの結果から分かるように、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを処理せず、PMまたはCSEのみを処理した場合には、混合物内のPMとCSEとが混合され、そのまま存在することに反し、前記ペプチドを処理した場合には、ペプチド濃度が上昇するにつれ、だんだんと沈澱し、下方に沈む程度が上昇することを確認した。
【0079】
前述のような結果を介し、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、PMやCSEのような汚染物質分子を捕らえて吸着される効果があり、前記汚染物質分子の皮膚内流入を阻害する効果があるということを知ることができる。
【0080】
[実験例5]自然老化抑制ペプチド処理による角質形成細胞の活性促進確認
角質形成細胞(keratinocyte)を対象に、細胞において自然に進められる細胞老化現状を、本発明のペプチドが抑制させることができるか否かということを確認するために、自然老化と係わる蛋白質の量、及び遺伝子の発現量を確認した。
【0081】
<5-1>増殖関連信号蛋白質のリン酸化いかん確認
Akt及びERKは、細胞の増殖と係わる信号伝達過程に関与する蛋白質の一種であり、リン酸化された形態(それぞれp-Akt、p-ERK)において活性を示すが、本発明のペプチドを処理する場合、リン酸化されたAkt、ERKが増加し、細胞老化現象を抑制することができるか否かということを確認した。
【0082】
まず、81継代のHaCaT細胞を、3×105/ウェルの細胞濃度で6ウェルプレートに播種した後、24時間無血清培地(SFM)で培養した後、本発明のペプチドを、それぞれ10,50,100μMの濃度で15分間処理した。陽性対照区(positive control)は、前記ペプチドの代わりに、成長因子であるbFGF100nM及びIGF100nMを処理したものにした。細胞を前記混合物と15分間反応させた後、細胞から溶解物を得て、抗p-Akt抗体(Cell Signaling、米国)と抗p-ERK抗体(Cell Signaling、米国)とを使用し、p-Akt及びp-ERKに対するウェスタンブロッティングを進めた。
【0083】
β-アクチンは、実験に使用した蛋白質総量を比較するために、抗β-アクチン抗体(Santacruz biotechnology、米国)を利用して確認した。
【0084】
その結果、
図5Aのウェスタンブロッティング結果から分かるように、前記ペプチドを処理した場合、ペプチド濃度が上昇するにつれ、だんだんとAkt及びERKのリン酸化程度が上昇することを確認した。
【0085】
前述のような結果を介し、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより、HaCaT細胞において、Akt及びERKのリン酸化程度が上昇し、それは、細胞の成長が促進されることを意味するが、前記ペプチドを処理することにより、細胞の自然老化現象を抑制しうることを知ることができる。
【0086】
<5-2>SIRT1(抗老化遺伝子)の発現増大確認
老化を防止する役割を行うSIRT1遺伝子の発現量増加いかんを確認することにより、本発明のペプチドを処理する場合、細胞老化現象を抑制することができるか否かということを確認した。
【0087】
78継代のHaCaT細胞を、3×10
5/ウェルの細胞濃度で6ウェルプレートに播種した後、24時間無血清培地(SFM)で培養した後、本発明のペプチドを、それぞれ10,50,100μMの濃度で24時間処理した。陽性対照区(positive control)は、前記ペプチドの代わりに、成長因子であるbFGF100nM及びIGF100nMを処理したものにした。細胞を前記混合物と24時間反応させた後、細胞から前記実験例2と同一方法を介してRNAを分離した後、分離されたRNAをcDNAで逆転写させ、SIRT1のプライマー(表3)を利用し、RT-PCRを遂行した(cDNA重合キット及びPCR pre-mix:Intron、韓国)。各処理群の全体RNA量比較のために使用されたGAPDHのプライマーは、前記表2の配列を有したものを利用した。
【表3】
【0088】
その結果、
図5BのRT-PCR結果から分かるように、前記ペプチドを処理した場合、ペプチド濃度が上昇するにつれ、だんだんとSIRT1遺伝子の発現量が増加することを確認した。
【0089】
前述のような結果を介し、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより、HaCaT細胞において、抗老化遺伝子であるSIRT1遺伝子の発現量が増加し、細胞の自然老化現象が抑制される効果があるということを知ることができる。
【0090】
[実験例6]自然老化抑制ペプチド処理による線維芽細胞の活性促進確認
線維芽細胞(fibroblast)を対象に、細胞において自然に進められる細胞老化現状を、本発明のペプチドが抑制させることができるか否かということを確認するために、自然老化と係わる蛋白質の量、及び遺伝子の発現量を確認した。
【0091】
<6-1>増殖関連信号蛋白質のリン酸化いかん確認
Akt及びERKは、細胞の増殖と係わる信号伝達過程に関与する蛋白質の一種であり、リン酸化された形態(それぞれp-Akt、p-ERK)で活性を示すが、本発明のペプチドを処理する場合、リン酸化されたAkt、ERKが増加し、細胞老化現象を抑制することができるか否かということを確認した。
【0092】
まず、38継代のNIH3T3細胞(マウス線維芽細胞)を、3×105/ウェルの細胞密度で6ウェルプレートに播種した後、24時間無血清培地(SFM)で培養した後、本発明のペプチドを、それぞれ10,50,100μMの濃度で15分間処理した。陽性対照区(positive control)は、前記ペプチドの代わりに、成長因子であるbFGF50nM及びIGF25nMを処理したものにした。細胞を前記混合物と15分間反応させた後、細胞から溶解物を得て、抗p-Akt抗体(Cell Signaling、米国)と抗p-ERK抗体(Cell Signaling、米国)とを使用し、p-Akt及びp-ERKに対するウェスタンブロッティングを進めた。β-アクチンは、実験に使用した蛋白質総量を比較するために、抗β-アクチン抗体(Santacruz biotechnology、米国)を利用して確認した。
【0093】
その結果、
図6Aのウェスタンブロッティング結果から分かるように、前記ペプチドを処理した場合、ペプチド濃度が上昇するにつれ、だんだんとAkt及びERKのリン酸化程度が上昇することを確認した。
【0094】
前述のような結果を介し、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより、NIH3T3細胞において、Akt及びERKのリン酸化程度が上昇し、それは、細胞の成長が促進されることを意味するが、前記ペプチドを処理することにより、細胞の自然老化現象を抑制しうることを知ることができる。
【0095】
<6-2>真皮構成成分(コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン)の発現増大確認
真皮を構成する成分の一種として、線維形成と係わるコラーゲン遺伝子、フィブロネクチン遺伝子及びエラスチン遺伝子の発現量増加いかんを確認することにより、本発明のペプチドを処理する場合、細胞老化現象を抑制することができるか否かということを確認した。COL1A1は、コラーゲンIを暗号化する遺伝子である。
【0096】
26継代のNIH3T3細胞を、3×10
5/ウェルの細胞濃度で6ウェルプレートに播種した後、24時間無血清培地(SFM)で培養した後、本発明のペプチドを、それぞれ10,50,100μMの濃度で24時間処理した。陽性対照区(positive control)は、前記ペプチドの代わりに、成長因子であるbFGF100nM及びTGF-/5ng/mlを処理したものにした。細胞を前記混合物と24時間反応させた後、細胞から、前記実験例2と同一方法を介してRNAを分離した後、分離されたRNAをcDNAで逆転写させ、Col1a1、フィブロネクチン、エラスチンのプライマー(表4)を利用し、RT-PCRを遂行した(cDNA重合キット及びPCRpre-mix:Intron、韓国)。各処理群の全体RNA量比較のために使用されたGAPDHのプライマーは、前記表2の配列を有したものを利用した。
【表5】
【0097】
その結果、
図7のRT-PCR結果から分かるように、前記ペプチドを処理した場合、UVBの照射によって阻害されたSIRT1遺伝子及びAQP3遺伝子の発現量が、ペプチド濃度が上昇するにつれ、だんだんと増加することを確認した。
【0098】
前述のような結果を介し、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより、HaCaT細胞において、減少された抗老化遺伝子であるSIRT1、及び皮膚障壁構成遺伝子であるAQP3の発現量が増加してさらに回復され、細胞の光老化現象が抑制される効果があるということを知ることができる。
【0099】
[実験例7]光老化抑制紫外線によって抑制された線維芽細胞の活性回復確認
<7-1>真皮構成成分(コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン)の発現回復確認
UVが照射されれば、真皮を構成するコラーゲン遺伝子、フィブロネクチン遺伝子、エラスチン遺伝子の発現が阻害されるので、本発明のペプチドを処理する場合、コラーゲン遺伝子、フィブロネクチン遺伝子、エラスチン遺伝子の発現量がさらに回復されて増加するか否かということを確認することにより、細胞の光老化現象を抑制することができるか否かということを確認した。
【0100】
まず、34継代のNIH3T3細胞を、5×105/ウェルの細胞密度で6ウェルプレートに播種した後、16時間無血清培地(SFM)で培養した後、本発明のペプチドを、それぞれ10,50,100μMの濃度で1時間処理した。PBSで洗浄し、PBSを充填した後、さらに6J/cm2のUVAを1時間事前に照射した。そして、さらに、本発明のペプチドを、それぞれ前述の濃度で6時間処理した。陽性対照区(positive control)は、前記ペプチドの代わりに、NaC 2.5mM及びクェルセチン(quercetin)50μMを処理したものにした。細胞を前記ペプチドと6時間反応させた後、細胞から、前記実験例2と同一方法を介してRNAを分離した後、分離されたRNAをcDNAで逆転写させ、コラーゲン(Col1a1)、フィブロネクチン、エラスチンのプライマー(表4)を利用し、RT-PCRを遂行した(cDNA重合キット及びPCRpre-mix:Intron、韓国)。各処理群の全体RNA量比較のために使用されたGAPDHのプライマーは、前記表2の配列を有したものを利用した。
【0101】
その結果、
図8AのRT-PCR結果から分かるように、前記ペプチドを処理した場合、ペプチド濃度が上昇するにつれ、だんだんとコラーゲン(Col1a1)遺伝子、フィブロネクチン遺伝子、エラスチン遺伝子の発現量が増加することを確認した。
【0102】
前述のような結果を介し、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより、NIH3T3細胞において、UVAの照射によって減少されたコラーゲン(Col1a1)遺伝子、フィブロネクチン遺伝子、エラスチン遺伝子の発現量が増加してさらに回復され、細胞の光老化現象が抑制されることにより、前記遺伝子から発現される蛋白質により、皮膚のしわが改善される効果があるということを知ることができる。
【0103】
<7-2>MMP-1及びMMP-2の発現阻害確認
コラーゲン分解と係わる蛋白質を暗号化するMMP-1及びMMP-2は、紫外線の照射によって発現が増大されるが、本発明のペプチドを処理する場合、前記MMP-1蛋白質及び前記MMP-2蛋白質の合成がさらに抑制され、細胞老化現象を抑制することができるか否かということを確認した。
【0104】
31継代のNIH3T3細胞を、5×105/ウェルの細胞密度で6ウェルプレートに播種した後、16時間無血清培地(SFM)で培養した後、本発明のペプチドを、それぞれ10,50,100μMの濃度で1時間処理した。PBSで洗浄してPBSを充填した後、さらに6J/cm2のUVBを1時間の照射した。そして、さらに本発明のペプチドを、それぞれ前述の濃度で48時間処理した。陽性対照区(positive control)は、前記ペプチドの代わりに、NaC2.5mM及びクェルセチン50μMを処理したものにした。細胞を前記混合物と48時間反応させた後、細胞から溶解物を得て、抗MMP-1抗体(Cell Signaling、米国)を使用し、MMP-1に対するウェスタンブロッティングを進めた。β-アクチンは、実験に使用した蛋白質総量を比較するために、抗β-アクチン抗体(Santacruz biotechnology、米国)を利用して確認した。
【0105】
また、MMP-2の量を分析するために、前述のところで得た細胞の溶解物を準備した後、ゼラチンザイモグラフィ(gelatin zymography)を遂行した。ゼラチン(2mg/ml)を基質にし、蛋白質電気泳動(SDS-PAGE)をまず施した後、2.5%のトリトンX-100に30分間処理した後、さらに緩衝剤(50mM Tris-HCl、0.2M NaCl、5mM CaCl2、1%トリトンX-100)で24時間37℃で処理した。処理されたゲルは、クマシーブリリアントブルー(Coomassie brilliant blue)R250(Sigma)で染色し、脱色バッファ(5%エタノール、7.5%酢酸及び蒸溜水)で処理した。その後、ゼラチンが加水分解されることによって示されるゲル相の空いているバンドを観察することにより、MMP-2の活性を確認した。
【0106】
その結果、
図8Bのウェスタンブロッティング結果及びザイモグラフィ結果から分かるように、前記ペプチドを処理した場合、ペプチド濃度が上昇するにつれ、だんだんとMMP-1及びMMP-2の蛋白質量が減少することを確認した。
【0107】
前述のような結果を介し、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより、NIH3T3細胞において、UVAの照射によって増加されたMMP-1及びMMP-2の蛋白質量がさらに減少して回復され、コラーゲンの量がさらに増加され、細胞の光老化現象が抑制されることにより、皮膚しわの改善効果があるということを知ることができる。
【0108】
以上、本発明は、記載された実施例についてのみ詳細に説明されたが、本発明の技術思想範囲内において、多様な変形及び修正が可能であるということは、当業者において明白なことであり、そのような変形及び修正が、特許請求の範囲に属することは、言うまでもない。
【配列表】