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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】高温超伝導ケーブルの温度測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20210101AFI20220329BHJP
   G01K 11/324 20210101ALI20220329BHJP
   G01K 7/16 20060101ALI20220329BHJP
   H02G 15/34 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G01K1/14 L
G01K11/324
G01K7/16 Z
H02G15/34
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020570618
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2019074835
(87)【国際公開番号】W WO2020151032
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2020-09-07
(31)【優先権主張番号】201910062551.3
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520345081
【氏名又は名称】深▲セン▼供電局有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN POWER SUPPLY BUREAU CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Electric Power Dispatching Communication Building, No. 4020, Shennan East Road, Luohu District, Shenzhen, Guangdong 518000
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼驍剛
(72)【発明者】
【氏名】胡子▲ヘン▼
(72)【発明者】
【氏名】廖建平
(72)【発明者】
【氏名】章彬
(72)【発明者】
【氏名】汪▲チェン▼子
(72)【発明者】
【氏名】汪偉
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-025059(JP,A)
【文献】特開2010-165551(JP,A)
【文献】特表2013-511702(JP,A)
【文献】特開2013-229978(JP,A)
【文献】特開2012-026777(JP,A)
【文献】特開2018-186037(JP,A)
【文献】特開2000-227369(JP,A)
【文献】特開2008-261575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/14
G01K 11/324
G01K 7/16
H02G 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に接続される高温超伝導ケーブルと端末冷却システムに応用される高温超伝導ケーブルの温度測定システムであって、
前記高温超伝導ケーブルの温度測定システムは、
低温温度測定光ファイバーと、
温抵抗体と、
光ファイバー温度測定ホストと、
測温抵抗体温度監視制御装置と、
温度測定制御装置と、からなり、
前記低温温度測定光ファイバーは、前記高温超伝導ケーブルに中に設けられ、
前記測温抵抗体は、前記端末冷却システムに設置され、
前記光ファイバー温度測定ホストは、前記低温温度測定光ファイバーの各測定点からの温度測定情報を受信するのに用いられ、
記測温抵抗体温度監視制御装置は、測温抵抗体からの温度情報を受信するのに用いられ、
前記温度測定制御装置は、前記光ファイバー温度測定ホスト及び前記測温抵抗体温度監視制御装置と相互に接続され、前記温度測定情報及び温度情報を受信し、前記温度測定情報及び温度情報に基づいて評価及び判定することにより、接続されたケーブル動作制御ホストの保護動作及び保護領域が決定され、前記ケーブル動作制御ホストは、前記保護動作及び保護領域に基づき、対応するインバータシステムまたは遮断器を操作し、
前記温度測定制御装置は、信号受信処理ユニットと、保護動作決定ユニットと、保護領域決定ユニットと、保護情報送信ユニットと、を備え、
前記信号受信処理ユニットは、前記温度測定制御装置が温度信号を受信した後、ケーブル沿線温度T、ケーブル沿線温度の平均値T av 、及び、冷却システムの温度T を取得するのに用いられ、
前記保護動作決定ユニットは、前記信号受信処理ユニットによって取得された数値を、所定のケーブル沿線温度警告値T 、ケーブル最高許容温度T max 、ケーブル平均温度低しきい値T 、ケーブル平均温度高しきい値T 、及び、冷却システムの最高許容温度T cH と比較してケーブル動作制御ホストの保護動作を判定するのに用いられ、
前記保護領域決定ユニットは、前記数値が取得された後、ケーブル沿線の温度曲線を取得するとともに、シミュレーションにより、形態学的勾配のピーク幅の識別方法に基づいて得られた温度異常点を示した図を取得し、前記温度異常点を示した図における正と負の狭いピークの相対位置によって、ケーブル上の温度異常点の位置を特定することで、保護領域を確定するのに用いられ、
前記保護情報送信ユニットは、前記保護動作及び保護領域情報を、接続されたケーブル動作制御ホストに送信するのに用いられる
ことを特徴とする高温超伝導ケーブルの温度測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の高温超伝導ケーブルの温度測定システムにおいて、
前記光ファイバー温度測定ホストは、さらに、情報収集受信ユニットと、第1計算ユニットと、位置測定ユニットを備え、
前記情報収集受信ユニットは、前記低温温度測定光ファイバーの各温度測定点に散光されるストークス光と反ストークス光をそれぞれ収集するのに用いられ、
前記第1計算ユニットは、各温度測定点におけるストークス光と反ストークス光を以下の計算公式、
【数7】
で計算し、前記温度測定点の温度を取得するのに用いられ、
式における、IASは反ストークス強度であり、Iはストークス強度であり、hはプランク定数であり、kはボルツマン定数であり、νは光の振動数であり、νは振動周波数であり、Tは絶対温度であり、レーザー源が決定されると、νは定数となり、νは、光ファイバー材料によって决定され、光ファイバーが確定されると定数となり、
前記位置測定ユニットは、光学時間領域反射率測定(OTDR)技術に基づいて、前記低温温度測定光ファイバーの各温度測定点の位置を特定し、各温度測定点の位置情報を取得するのに用いられる
ことを特徴とする高温超伝導ケーブルの温度測定システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高温超伝導ケーブルの温度測定システムにおいて、
前記測温抵抗体は、T100温度センサーである
ことを特徴とする高温超伝導ケーブルの温度測定システム
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の高温超伝導ケーブルの温度測定システムにおいて、
前記保護動作決定ユニットは、
比較結果が、(T>T)∨(Tav>T)である場合、生成される保護動作は警報命令であり、ケーブル動作制御ホストが警報命令及び保護領域情報を受信すると、インバータシステムの前記保護領域における前記高温超伝導ケーブルの送電が制御されるポリシーと
比較結果が、(T>Tmax)∨(Tav>T)∨(T>TcH)である場合、生成される保護動作は遮断命令であり、ケーブル動作制御ホストが前記遮断命令及び保護領域情報を受信すると、遮断器が制御され、直ちに前記保護領域における故障を起こした前記高温超伝導ケーブルが送電網から切断されるポリシーとにより保護動作が決定される
ことを特徴とする高温超伝導ケーブルの温度測定システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の高温超伝導ケーブルの温度測定システムにおいて、
前記高温超伝導ケーブルは、外側から内側へ、低温恒温器と、シールド層と、少なくとも一層の絶縁層及び相導体と、ケーブルボビンを備え、前記低温恒温器とシールド層の間、及び、ケーブルボビン内には、いずれも液体窒素が充填され、そのうち、
前記高温超伝導ケーブルの中には、さらに、低温耐性温度測定光ファイバーが取り付けられ、前記低温耐性温度測定光ファイバーは、少なくともシールド層外表面、最も外側の絶縁層と最も外側の相導体の間、ケーブルボビンの内表面の3つの位置のうちのいずれかに取り付けられる
ことを特徴とする高温超伝導ケーブルの温度測定システム。
【請求項6】
請求項5に記載の高温超伝導ケーブルの温度測定システムにおいて、
前記低温耐性温度測定光ファイバーには、石英系マルチモード光ファイバーが採用されるとともに、光ファイバーコーティング層の周囲には、光ファイバーの断面が同心円になるように被覆材料が塗布される、または、非金属密着スリーブが設けられ、前記非金属密着スリーブには、繊維強化複合プラスチックスリーブ、PBTルースチューブ、フィブリル化ケブラースリーブが採用される
ことを特徴とする高温超伝導ケーブルの温度測定システム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の高温超伝導ケーブルの温度測定システムにおいて、
前記低温耐性光ファイバーには、直線敷設またはS敷設の方法が採用される
ことを特徴とする高温超伝導ケーブルの温度測定システム。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれかに記載の高温超伝導ケーブルの温度測定システムにおいて、
前記低温恒温器は、真空中間層を備える2層のステンレスが溶接されて製造され、前記2層のステンレスの真空中間層には、複数の層の絶縁材料及び活性炭が設置され、
前記シールド層は、銅シールド層であり、その一端または両端は、接地され、
前記絶縁層は、ポリプロピレンラミネート紙、芳香族ポリアミド紙、または、ポリイミド材料が採用されて製造され、
前記相導体は、Y系高温超伝導体YBCOであり、その幅は≧5mmであり、その厚みは≒0.3mmでなければならないとともに、銅層がメッキされることで安定層とされ、
ケーブルボビンは、目の細かい金網で覆われた金属波形管であり、超伝導テープが巻きつけられた基準支持物であると同時に、液体窒素の流通パイプに用いられる
ことを特徴とする高温超伝導ケーブルの温度測定システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の高温超伝導ケーブルの温度測定システムにおいて、
前記高温超伝導ケーブルは、三相独立超伝導ケーブル構造、三相平行軸超伝導ケーブル構造、または、三相同軸超伝導ケーブル構造である
ことを特徴とする高温超伝導ケーブルの温度測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電の応用技術分野に関し、特に、高温超伝導ケーブルの温度測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本申請は、申請番号201910062551.3、発明名称「高温超伝導ケーブルの温度測定システム」の中国特許申請における優先権を、2019年1月23日に中国特許庁に提出しており、上述の特許文献の内容全てが本申請において引用され組み込まれている。
【0003】
中国経済が急速に発展するのに伴い、多くの都市での電力消費量は年々増加しており、都市の中心部における電力負荷は急激に増加し、送配電容量も大幅に増加しているため、いかに送電網の損失を減少させ、送電網の動作の安定性を向上させるかという課題が提示されている。現在の送電網システムは、送配電プロセスにおける損失が多いため、各国が送電網の損失を減少させるプランを探求している。そのうち、超伝導材料は、送電網の損失を減少させるための最も重要なプランの1つであり、高温超伝導テープの商業化生産によって、世界中の超伝導裝置の広範囲な研究と応用が促進されている。高温超伝導ケーブルは、従来の電力ケーブルに比べて、通流能力が高いとともに、容量が大きく、コンパクトな構造で、電磁放射汚染がないといった長所を備えるため広く注目されており、現在、世界中で、複数の高温超伝導ケーブルネットワークがすでに運用されている。
【0004】
従来の電力ケーブルの応用と異なる点として、高温超伝導ケーブルの運用環境は少なくとも液体窒素温度(-196℃)以下でなければならないとともに、サイズはさらに小さく且つコンパクトでなければならない。従って、高温超伝導ケーブルを送電網において大規模に応用するには、技術的に難しい点が以下の2点存在する。
【0005】
(1)高温超伝導ケーブルの動作時は、超伝導ケーブルを外部から臨界温度(-196℃)以下にまで冷却しなければ動作しない。しかしながら、通電時に超伝導ケーブルの一部の領域の熱妨害等の原因により超伝導ケーブルの一部の領域が超伝導状態から通常状態に遷移する際に生じるジュール熱により、超伝導ケーブルの温度が上昇し、周囲の常伝導遷移が促進されることで、常伝導状態の領域が拡大される(クエンチ現象)。
【0006】
(2)高温超伝導ケーブル全線は液体窒素の中で動作するため、その構造と従来の電力ケーブルは大きく異なり、サイズがさらに小さく、構造がコンパクトであるため、測温抵抗体といった従来の温度センサーを超伝導ケーブルに取り付けてその沿線の温度を監視測定することができない(ケーブルの絶縁性能が損なわれるとともに、温度センサーの温度測定性能が電磁干渉の影響を受ける)。
【0007】
上述の2点が高温超伝導ケーブルの送電網における幅広い応用を制限している点であるとともに、上述の2点により、現在の超伝導ケーブルシステムの温度監視測定範囲は、端末の冷却システムの温度監視測定に限定され、高温超伝導ケーブル沿綫の温度の測定はまだ実現していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、主に、従来技術の欠点を解決するため、使用しやすく構造が簡単であるといった長所を備え、高温超伝導ケーブルの沿線における温度の異常を正確に監視制御するとともにその位置を特定することができることで、超伝導ケーブルの整備点検の際に、故障を解決するとともに故障の範囲を狭め、故障の処理時間を短縮することのできる高温超伝導ケーブルの温度測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の技術問題を解決するため、本発明の実施例は、低温温度測定光ファイバー及び測温抵抗体と、光ファイバー温度測定ホストと、測温抵抗体温度監視制御装置と、温度測定制御装置と、からなる高温超伝導ケーブルの温度測定システムを提供し、相互に接続された高温超伝導ケーブルと端末冷却システムに応用される。
【0010】
前記低温温度測定光ファイバーは、前記高温超伝導ケーブルに中に設けられ、前記測温抵抗体は、前記端末冷却システムに設置される。
【0011】
前記光ファイバー温度測定ホストは、前記低温温度測定光ファイバーの各測定点からの温度測定情報を受信するのに用いられる。
【0012】
前記測温抵抗体温度監視制御装置は、自己測温抵抗体からの温度情報を受信するのに用いられる。
【0013】
前記温度測定制御装置は、前記光ファイバー温度測定ホスト及び前記測温抵抗体温度監視制御装置と相互に接続され、前記温度測定情報及び温度情報を受信し、前記温度測定情報及び温度情報に基づいて評価及び判定することにより、接続されたケーブル動作制御ホストの保護動作及び保護領域が決定され、前記ケーブル動作制御ホストは、前記保護動作及び保護領域に基づき、対応するインバータシステムまたは遮断器を操作する。
【0014】
前記光ファイバー温度測定ホストは、さらに、情報収集受信ユニットと、第1計算ユニットと、位置測定ユニットを備えることが好ましい。
【0015】
前記情報収集受信ユニットは、前記低温温度測定光ファイバーの各温度測定点に散光されるストークス光と反ストークス光をそれぞれ収集するのに用いられる。
【0016】
前記第1計算ユニットは、各温度測定点におけるストークス光と反ストークス光を計算し、前記温度測定点の温度を取得するのに用いられ、計算公式は以下の通りである。
【0017】
【数1】
【0018】
式における、IASは反ストークス強度であり、Iはストークス強度であり、hはプランク定数であり、kはボルツマン定数であり、νは光の振動数であり、νは振動周波数であり、Tは絶対温度であり、レーザー源が決定されると、νは定数となり、νは、光ファイバー材料によって决定され、光ファイバーが確定されると定数となる。
【0019】
前記位置測定ユニットは、光学時間領域反射率測定(OTDR)技術に基づいて、前記低温温度測定光ファイバーの各温度測定点の位置を特定し、各温度測定点の位置情報を取得するのに用いられる。
【0020】
前記測温抵抗体は、T100温度センサーであることが好ましい。
【0021】
前記温度測定システムは、信号受信処理ユニットと、保護動作決定ユニットと、保護領域決定ユニットと、保護情報送信ユニットを備えることが好ましい。
【0022】
前記信号受信処理ユニットは、前記温度測定制御装置が温度信号を受信した後、ケーブル沿線温度T、ケーブル沿線温度の平均値Tav、及び、冷却システム温度Tを取得するのに用いられる。
【0023】
前記保護動作決定ユニットは、前記信号受信処理ユニットによって取得された数値を、所定のケーブル沿線温度警告値T、ケーブル最高許容温度Tmax、ケーブル平均温度低しきい値T、ケーブル平均温度高しきい値T、及び、冷却システム最高許容温度TcHと比較してケーブル動作制御ホストの保護動作を判定するのに用いられる。
【0024】
前記保護領域決定ユニットは、前記数値が取得された後、ケーブル沿線の温度曲線を取得するとともに、シミュレーションにより、形態学的勾配のピーク幅の識別方法に基づいて得られた温度異常点を示した図を取得し、前記温度異常点を示した図における正と負の狭いピークの相対位置によって、ケーブル上の温度異常点の位置を特定することで、保護領域を確定するのに用いられる。
【0025】
前記保護情報送信ユニットは、前記保護動作及び保護領域情報を、接続されたケーブル動作制御ホストに送信するのに用いられる。
【0026】
前記保護動作決定ユニットは、以下に述べるポリシーにより保護動作が決定されることが好ましい。
【0027】
比較結果が(T>T)∨(Tav>T)である場合、生成される保護動作は警報命令であり、ケーブル動作制御ホストが警報命令及び保護領域情報を受信すると、インバータシステムの前記保護領域における高温超伝導ケーブルの送電が制御される。
【0028】
比較結果が(T>Tmax)∨(Tav>T)∨(T>TcH)である場合、生成される保護動作は遮断命令であり、ケーブル動作制御ホストが前記遮断命令及び保護領域情報を受信すると、遮断器が制御され、直ちに前記保護領域における故障を起こした高温超伝導ケーブルが送電網から切断される。
【0029】
前記高温超伝導ケーブルは、外側から内側へ、低温恒温器と、シールド層と、少なくとも一層の絶縁層及び相導体と、ケーブルボビンを備えることが好ましい。前記低温恒温器とシールド層の間、及び、ケーブルボビン内には、いずれも液体窒素が充填される。
【0030】
前記高温超伝導ケーブルの中には、さらに、低温耐性温度測定光ファイバーが取り付けられ、前記低温耐性温度測定光ファイバーは、少なくともシールド層外表面、最も外側の絶縁層と最も外側の相導体の間、ケーブルボビンの内表面の3つの位置のうちのいずれかに取り付けられる。
【0031】
前記低温耐性温度測定光ファイバーには、石英系マルチモード光ファイバーが採用されるとともに、光ファイバーコーティング層の周囲には、光ファイバーの断面が同心円になるように被覆材料が塗布される、または、非金属密着スリーブが套設され、前記非金属密着スリーブには、繊維強化複合プラスチックスリーブ、PBTルースチューブ、フィブリル化ケブラースリーブが採用されることが好ましい。
【0032】
前記低温耐性光ファイバーには、直線敷設方法またはS敷設方式が採用されることが好ましい。
【0033】
前記低温恒温器は、真空中間層を備える2層のステンレスが溶接されて製造され、2層のステンレスの真空中間層には、複数の層の絶縁材料及び活性炭が設置されることが好ましい。
【0034】
シールド層は、銅シールド層であり、その一端または両端は、接地される。
【0035】
絶縁層は、ポリプロピレンラミネート紙、芳香族ポリアミド紙、または、ポリイミド材料が採用されて製造される。
【0036】
相導体は、Y系高温超伝導体YBCOであり、その幅は≧5mmであり、その厚みは≒0.3mmでなければならないとともに、銅層がメッキされることで安定層となる。
【0037】
ケーブルボビンは、目の細かい金網で覆われた金属波形管であり、それは、超伝導テープが巻きつけられた基準支持物であると同時に、液体窒素の流通パイプに用いられる。
【0038】
高温超伝導ケーブルは、三相独立超伝導ケーブル構造、三相平行軸超伝導ケーブル構造、または、三相同軸超伝導ケーブル構造であることが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の実施例を実施することで、以下の有益な效果を備える。
【0040】
本発明の提供する高温超伝導ケーブル温度測定システムは、従来の温度センサー(測温抵抗体)と光ファイバー温度測定技術が組み合わせて使用され、超伝導ケーブルを製造する際に、あらかじめ光ファイバーを超伝導ケーブルの中に設置するとともに、測温抵抗体を超伝導ケーブル端末(端末冷却システム)に配置することで、光ファイバー温度測定と測温抵抗体が組み合わされた複合温度測定部品が組成され、それにより、高温超伝導ケーブル沿線の温度と端末冷却システムの温度が測定される。前記システムは、リアルタイムで高温超伝導ケーブル沿線の温度分布を正確に把握することができることで、超伝導ケーブルの動作温度に応じてケーブルの輸送電流または超伝導ケーブル保護裝置を制御することができる。熱障害に関連したケーブル動作の欠陥を早急に発見することができるとともに、警告信号を発信することで、高温超伝導ケーブルの安全な動作が保証される。形態学的勾配における正と負の狭いピークの位置によって高温超伝導ケーブルの沿線における温度の異常点の位置を正確に特定する方法を提出することで、超伝導ケーブルの整備点検の際に、故障を解決することができるとともに故障の範囲を狭めることができ、故障の処理時間を短縮することができる。
【0041】
本発明が提供する高温超伝導ケーブル温度測定システムは、電力送電網における高温超伝導ケーブルの温度測定と監視制御保護に応用することができ、高温超伝導ケーブルの構造の違いに応じて、高電圧レベル、中電圧レベル、低電圧レベルに対応することができるため、高い安定性と信頼性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の実施例または従来技術における技術案についてさらに分かりやすく説明するため、以下に実施例または従来技術を描写するのに必要な図について簡単に紹介する。見て分かる通り、以下に描写する図は、本発明の実施例の一部に過ぎず、本分野の一般の技術者が創造力を働かせずに、これらの図に基づいて取得したその他の図も本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
図1】本発明が提供する高温超伝導ケーブルの温度測定システムにおける1つ実施例の構造を示した図である。
図2図1の高温超伝導ケーブルの断面図である。
図3図1の光ファイバー温度測定ホストの構造を示した図である。
図4図1の温度測定制御装置の構造を示した図である。
図5図4の保護領域決定ユニットにおける形態学アルゴリズムに関連したTop-Hat変換の原理を示した図である。
図6図4の保護領域決定ユニットにおける入出力図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に本発明の実施例の図と組み合わせて、本発明の実施例における技術案をさらに分かりやすく、全て説明する。明らかな点として、本発明が以下に描写する実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、本分野の一般の技術者が創造力を働かせずに取得した全てのその他の実施例は、全て本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【0044】
図1は、本発明が提供する高温超伝導ケーブル11の温度測定システムにおける1つ実施例の構造を示した図である。後に続く図を併せて組み合わせる。本実施例において、本発明の実施例が提供する高温超伝導ケーブル11の温度測定システムは、相互に接続された高温超伝導ケーブル11と端末冷却システム4に応用され、高温超伝導ケーブル11の温度測定システムは、低温温度測定光ファイバー9及び測温抵抗体5と、光ファイバー温度測定ホスト1と、測温抵抗体温度監視制御装置2と、温度測定制御装置3と、からなる。
【0045】
低温温度測定光ファイバー9は高温超伝導ケーブル11に設けられ、測温抵抗体5は端末冷却システム4に設けられる。
【0046】
光ファイバー温度測定ホスト1は、低温温度測定光ファイバー9の各測定点からの温度測定情報を受信するのに用いられる。
【0047】
測温抵抗体温度監視制御装置2は、自己測温抵抗体5からの温度情報を受信するのに用いられる。
【0048】
温度測定制御装置3は、光ファイバー温度測定ホスト1及び測温抵抗体温度監視制御装置2と相互に接続され、前記温度測定情報及び温度情報を受信し、前記温度測定情報及び温度情報に基づいて評価及び判定することにより、接続されたケーブル動作制御ホスト6の保護動作及び保護領域が決定され、ケーブル動作制御ホスト6は、前記保護動作及び保護領域に基づいて、対応するインバータシステム7または遮断器8を操作する。
【0049】
当然のことながら、本発明の実施例において、高温超伝導ケーブル11内部にあらかじめ低温耐性(-196℃以下)の温度測定光ファイバー9が設置され、端末冷却システム4の内部には、測温抵抗体5が設置されるとともに、温度測定制御装置3によって温度信号に基づきケーブルの動作状况が判定されることで、ケーブル動作制御ホスト6の動作がプリセットされ、実測温度とあらかじめ設置された各温度の闕値の間の比較結果に基づいて判定されると同時に、形態学的勾配における波形の特徴の分析に基づいて温度異常点の位置が判定される。ケーブル動作制御ホスト6は、判定結果に基づきインバータシステム77または遮断器8を制御することで、高温超伝導ケーブル11が確実に安全な動作状態に保たれる、または、故障したケーブルが直ちに切断される。
【0050】
本発明の構造をより理解しやすくするため、以下に本発明の各構成部品について詳しく説明する。まず、本発明における高温超伝導ケーブル11の構造について紹介する。
【0051】
本発明における高温超伝導ケーブル11は、ケーブル相と相導体の相互関係によって、(a)三相独立超伝導ケーブル構造と、(b)三相平行軸超伝導ケーブル構造と、(c)三相同軸超伝導ケーブル構造の3種類に分類される。そのうち、三相独立超伝導ケーブルは、1つのケーブルのケーシング内に相導体のみを備え、各相の間の電磁干渉を防止するため、中電圧レベル及び高電圧レベルで三相独立超伝導ケーブルを使用することができる。三相平行軸超伝導ケーブルの三相は、いずれも同じ断熱器とケーブルケーシング内に備えられることで、スペースが大幅に節約されるとともに、導体の損失も低減し、電磁場をシールドするための金属防護層が必要ないことで、中電圧レベルで使用することができる。三相同軸超伝導ケーブルの三相導体は、同じ軸に沿って巻き付けられることで、さらにスペースが節約されるとともに、ケーブル全体で1つシールド層13のみが使用されるため、さらに材料が節約されるが、この構造では、電気絶縁が難しくなるため、中電圧レベル及び低電圧レベルにのみ適用される。
【0052】
本実施例では、三相同軸超伝導ケーブル構造について説明するが、当然のことながら、本発明は、その他2種類の形態の超伝導ケーブル構造を採用することもできる。
【0053】
図2に示す通り、本発明の実施例において、高温超伝導ケーブル11は、外側から内側へ、低温恒温器12と、シールド層13と、少なくとも一層の絶縁層及び相導体と、ケーブルボビン16を備え、そのうち、少なくとも一層の絶縁層は、最も外側に位置するC相絶縁層14を備え、少なくとも一層の相導体は、C相相導体15を備え、続く順番は、B相絶縁層、B相相導体、A相絶縁層、A相相導体である。低温恒温器12とシールド層13の間、及び、ケーブルボビン16内には、いずれも液体窒素17が充填されることで、高温超伝導ケーブル11は、動作温度(-196℃)以下で作動する。
【0054】
高温超伝導ケーブル11の中には低温耐性温度測定光ファイバー9がさらに設置され、低温耐性温度測定光ファイバー9は、少なくとも、シールド層13の外表面、最も外側の絶縁層(つまり、C相絶縁層14)と最も外側の相導体(つまり、C相相導体15)の間、及び、ケーブルボビン16の内表面の3つの位置のうちの1つに設置される。
【0055】
そのうち、低温恒温器12は、真空中間層を備える2層のステンレスが溶接されて製造され、2層のステンレスの真空中間層の中には、複数層の絶熱材料及び活性炭がさらに設けられることで、超伝導ケーブル11を出入りする液体窒素の温度は確実に一定に保たれる。
【0056】
シールド層13は銅シールド層であり、その一端または両端は接地され、その主な役割は、電界をシールドすることであり、シールド層13自体は電流を通さない。
【0057】
前記絶縁層の製造には、ポリプロピレンラミネート紙(PPLP)、芳香族ポリアミド紙(Nomex)、または、ポリイミド素材(PI)が採用され、これらの材料は、いずれも低温下で正常に使用される複合型材料である。当然のことながら、絶縁層の設計は、絶縁材料の特性、動作電圧、ケーブルのサイズ等の要素に基づいて決定される。電気性能、熱性能、耐力性能、及び製造技術の難易度等の要素をすべて考量した上で、本実施例において、低温絶縁材料としてPPLPを採用することが好ましい。
【0058】
在本実施例において、前記相導体には、Y系高温超伝導体YBCOが採用され、その幅は≧5mmであり、その厚度は≒0.3mmでなければならないとともに、銅メッキは安定層である。当然のことながら、Y系高温超伝導体YBCOとは、金属ベースにエピタキシャル配向成長させた希土類膜導体(希土類被覆導体とも呼ばれる)である。この種の材料には、まず、ニッケルまたはニッケル合金のベースに結晶構造の拡張に有利な化学的に安定した層がめっきされ、高温と特定の雰囲気条件下で高温超伝導材料RBaCu(Rはいずれかの希土元素であり、最も一般的に使用されるのはY系である)が結晶格子の配向が一致されてめっきされた後、銀または銅の保護層がさらにめっきされる。現在、製造業者は、4~12mm幅のY系高温超伝導体を提供することができ、その厚みは一般に0.3mm及びそれ以下である。
【0059】
ケーブルボビン16は、目の細かい金網で覆われた金属波形管であり、それは、超伝導テープが巻きつけられた基準支持物であると同時に、液体窒素の流通パイプに用いられる。
【0060】
低温耐性温度測定光ファイバー9には、石英系のマルチモード光ファイバーが採用され、具体的には、石英系光ファイバーを構成する材質は、純石英ガラス、ゲルマニウム(Ge)のドープ石英ガラス(屈折率が向上)等の中から適切に選択される。
【0061】
当然のことながら、高温超伝導ケーブル11に使用される温度測定光ファイバー9は、極低温度(-196℃以下)の環境に耐えられなければならず、光信号が低温耐性光ファイバー9において正常に伝達されるとともに、応力といった温度以外のその他の物理的要因の影響を受けない。
【0062】
光ファイバー設置後に高温超伝導ケーブル11を損傷させない絶縁性能及び設置難易度を可能な限り抑えられるかを基準に考えて、低温耐性の温度測定光ファイバー9のサイズは、可能な限り小さくなくてはならないとともに、金属外装を備えることができない。従って、温度測定光ファイバー9には、ポリイミドの裸光ファイバー(強度が比較的低い)または非金属密着スリーブ光ファイバーのみが塗布される。前記非金属密着スリーブには、一般に、ファイバー強化複合プラスチックスリーブ、PBTルースチューブ、フィブリル化ケブラースリーブ等が採用されることで、光ファイバーが保護され、その強度が強化され、折れやすくされる。
【0063】
本実施例において使用される高温超伝導ケーブル11は、三相同軸超伝導ケーブル構造であり、その構造はコンパクトで、サイズは比較的小さい。従って、採用される温度測定光ファイバー9のサイズは大きすぎないことで、超伝導ケーブル内部のスペースが占拠されないとともに、ケーブルの絶縁性能に影響を及ぼさない。実施例では、サイズの比較的小さいポリイミドが塗布されただけの裸光ファイバーまたはサイズの比較的小さい非金属の密着スリーブ光ファイバーが採用され、高温超伝導ケーブル11内部における設置位置は、図2に示す通りである。
【0064】
サイズが小さいポリイミド素材が塗布されただけの裸光ファイバーは、C相相導体15とC相絶縁層14の間に設置できることで、相導体の温度がさらに直に検出されるが、注意しなければならない点として、裸光ファイバーの強度は比較的低く、超伝導ケーブルを製造する過程で裸光ファイバーを直接設置すると、複雑な製造工程において損傷し折れてしまう可能性がある(設置が非常に困難である)。設置の難しさを低減するため、サイズの比較的小さい非金属の密着スリーブ光ファイバーの使用を考慮に入れることができ、その強度は比較的高いとともにケーブルの絶縁性能にほぼ影響を及ぼさず、高温超伝導ケーブル11のケーブルボビン16にまたはシールド層13と低温恒温器12の間の隙間に設置することができる。
【0065】
実際の工程では、具体的な温度測定のニーズに基づいて、光ファイバーを設置する位置と設置する数を決めることができる。上述の設置位置には、複数の温度測定光ファイバーを同時に設置することができ、そのうちの一箇所に温度測定光ファイバーを設置することもできる。
【0066】
高温超伝導ケーブル11内部のC相相導体15とC相絶縁層14の間に設置される温度測定光ファイバー9は、直線敷設の方法でC相相導体15に敷設されることができるとともに、C相相導体15と共に巻き付けられる。高温超伝導ケーブル11内のケーブルボビン16にまたはシールド層13と低温恒温器12の間に設置される温度測定光ファイバー9は、S敷設の方法で敷設されることができる。
【0067】
その他2種類の超伝導ケーブルにおける光ファイバーの設置位置と設置方法は、本実施例において採用されている三相同軸高温超伝導ケーブル11と同じである。
【0068】
以下に、本発明における光ファイバー測定ホストについて説明する。図3に示す通り、本実施例において、光ファイバー温度測定ホスト1は、さらに、情報収集受信ユニット100と、第1計算ユニット110と、位置測定ユニット120を備える。
【0069】
情報収集受信ユニット100は、低温温度測定光ファイバー9の各温度測定点に散光されるストークス光と反ストークス光をそれぞれ収集するのに用いられる。
【0070】
第1計算ユニット110は、各温度測定点におけるストークス光と反ストークス光を計算し、前記温度測定点の温度を取得するのに用いられ、計算公式は以下の通りである。
【0071】
【数2】
【0072】
式における、IASは反ストークス強度であり、Iはストークス強度であり、hはプランク定数であり、kはボルツマン定数であり、νは光の振動数であり、νは振動周波数であり、Tは絶対温度であり、レーザー源が決定されると、νは定数となり、νは、光ファイバー材料によって决定され、光ファイバーが確定されると定数となる。
【0073】
位置測定ユニット120は、光学時間領域反射率測定(OTDR)技術に基づいて、前記低温温度測定光ファイバー9の各温度測定点の位置を特定し、各温度測定点の位置情報を取得するのに用いられる。
【0074】
具体的には、位置測定ユニット120は、光学時間領域反射率測定(OTDR)技術に基づいて、光ファイバー沿線の温度測定点の位置を特定する。その基本原理は、レーザー源から発信されるパルス光が光ファイバーの中に入射されて送信され、仮に入射光が光ファイバーに入射される瞬間を計時の開始点、時刻0とし、レーザー源Lから離れた場所で散乱された場合、後ろ向きに散乱された光がコアに沿って入射端に戻ってくる時刻をtとすると、
【数3】
となる。
【0075】
そのうち、νは、光ファイバーにおける光波の伝播速度を指し、cは、真空下における光速を指し、nは、光ファイバーの屈折率を指す。従って、時間tにより測定点と入射端の距離を取得し、位置を特定することができる。このように入射光と反射光のデータを利用して、時間間隔を収集することで空間における位置を特定する技術が光学時間領域反射率測定技術(OTDR)である。
【0076】
当然のことながら、光ファイバー温度測定ホスト11上の光信号によりチャネルが収集され、各温度測定点に散光されるストークス光と反ストークス光がそれぞれ収集され、2つの強度の比率により温度信号が復調される。そのうち、温度測定点には、光ファイバー温度測定ホスト11が設けられた温度測定ソフトウェアが設置される、つまり、光信号によって間隔点がサンプリングされ(本実施で設置されたサンプリング間隔は、0.4mである)、光ファイバー温度測定ホスト11によって各温度測定点の光信号が収集されるとともに、その位置が特定される。
【0077】
測温抵抗体温度監視制御装置2に接続される測温抵抗体5は、金属導体の抵抗値が温度の変化によって変化するという特性に基づいて温度を測定し、その抵抗値が温度の上昇に伴い大きくなる場合、正の抵抗率温度抵抗センサーと呼ばれ、反対に、その抵抗値が温度の上昇に伴い小さくなる場合、負の抵抗率抵抗温度センサーと呼ばれる。測温抵抗体5は、ほとんどが純金属材料で製造され、現在最も広く使用されているのはプラチナと銅である。さらに、現在すでに、ニッケル、マンガン、ロジウム等の材料によって測温抵抗体が製造されている。そのうち、プラチナの測温抵抗体5(PT100温度センサー)の測定精度が最も優れており、工業用温度測定において広く応用されているだけでなく、標準的な基準器としても製造されている。PT100の温度測定範囲は、-200℃-650℃であり、測定精度は0.1℃に達し、好ましい安定性と比較的快い応答速度を備え、低温環境下における測定温度の理想的な選択肢である。従って、本実施例においてPT100プラチナ抵抗は、温度センサーによって端末冷却システム4の温度を監視測定するために使用される。
【0078】
続いて温度測定制御装置3を紹介する。図4に示す通り、本発明の実施例において、温度測定制御装置3は、信号受信処理ユニット300と、保護動作決定ユニット310と、保護領域決定ユニット320と、保護情報送信ユニット330を備える。
【0079】
信号受信処理ユニット300は、温度信号を受信した後、ケーブル沿線温度T、ケーブル沿線温度の平均値Tav、及び、端末冷却システムの温度Tを取得するのに用いられる。
【0080】
保護動作決定ユニット310は、信号受信処理ユニット300によって取得された数値を、所定のケーブル沿線温度警告値T、ケーブル最高許容温度Tmax、ケーブル平均温度低しきい値T、ケーブル平均温度高しきい値T、及び、端末冷却システムの最高許容温度TcHと比較して、ケーブル動作制御ホスト6の保護動作を判定するのに用いられる。
【0081】
保護領域決定ユニット320は前記数値が取得された後、ケーブル沿線の温度曲線を取得するとともに、シミュレーションにより、形態学的勾配のピーク幅の識別方法に基づいて得られた温度異常点を示した図を取得し、前記温度異常点を示した図における正と負の狭いピークの相対位置によって、ケーブル上の温度異常点の位置を特定することで、保護領域を確定するのに用いられる。
【0082】
保護情報送信ユニット330は、前記保護動作及び保護領域情報を接続されたケーブル動作制御ホスト6に送信するのに用いられる。
【0083】
保護動作決定ユニット310は、以下に述べるポリシーにより保護動作が決定されることが好ましい。
【0084】
比較結果が(T>T)∨(Tav>T)である場合(つまり、上述のいずれかの判断結果が生じた場合)、生成される保護動作は警報命令であり、ケーブル動作制御ホスト6が警報命令及び保護領域情報を受信すると、インバータシステム7の前記保護領域における高温超伝導ケーブル11の送電が制御される。
【0085】
比較結果が、(T>Tmax)∨(Tav>T)∨(T>TcH)である場合(つまり、上述のいずれかの判断結果が生じた場合)、生成される保護動作は遮断命令であり、ケーブル動作制御ホスト6が前記遮断命令及び保護領域情報を受信すると、遮断器8が制御され、直ちに前記保護領域における故障を起こした高温超伝導ケーブル11が送電網から切断される。
【0086】
本発明の実施例では、保護領域決定ユニット320は、形態学的勾配のピーク幅に基づく識別方法によって、保護領域(つまり故障領域)が確定される。
【0087】
そのうち、数学的形態学(Mathematical Morphology)とは、幾何学的形状と構造を分析する数学方法であり、集合代数の基礎に基づいて確立されており、集合論の方法で対象の幾何学的構造を定量的に描写する学科である。そのうち、形態学的操作と腐食画像は、形態学における2つの最も基本的な操作である。
【0088】
腐食とは、特定の"プローブ"(つまり特定の形状のプリミティブまたは構造要素)により1つの画像をプローブすることで、画像内部における前記プリミティブを制御できる領域を探すことができる、つまり腐食は画像の縮小に似ており、その定義は以下の通りである。
【0089】
集合Aが集合Bに腐食される場合、
【数4】
と表示され、数学形式は、
【数5】
である。
【0090】
膨脹、腐食計算の二次元計算は、拡張に似ており、その数学形式は、
【数6】
である。
【0091】
画像における形態学的勾配の計算は、形態学における重要な操作の1つであり、腐食と膨脹の2つの基本操作が適切に組み合わされてなる。形態学的勾配には、グレイ値の形態学的アルゴリズムがあり、そのうちのTop-Hat(トップハット)変換は、監視測定のピーク作用を備え、それを示した図が図5であり、信号のプリミティブによる腐食と定義され、計算によりTop-Hat変換が取得されると、信号のピークが検出される。
【0092】
要約すると、温度測定制御装置3にケーブル沿線の温度信号を入力し、上述の形態学的勾配における腐食と膨脹により、温度異常の大まかな領域が検出され、さらに、Top-Hat変換により温度異常点のピークが検出されることで、温度異常の位置が確定される。
【0093】
形態学的勾配のピーク幅の識別方法に基づいて、ケーブル沿線の温度異常の状况がシミュレーションされ、そのシミュレーション結果は図6に示す通りであり、温度測定制御装置3にケーブルの沿線温度曲線(上図)が出力され、出力は、形態学的勾配のピーク幅の識別方法に基づいて得られる温度異常点を示した図である(下図)。温度曲線上の各ピークは、1つの正の狭いピークと1つの負の狭いピークの勾配の組み合わせに対応し、形態学的勾配の正と負の狭いピークによって急速に冷却された個所(温度異常点)の位置を特定することができるとともに、正と負の狭いピークにおけるピーク値の間の距離に基づいて急速に冷却された領域の幅が推定される。
【0094】
さらに具体的には、本発明の高温超伝導ケーブル温度測定システムにおいて使用される光ファイバー温度測定ホスト11は、DTS光ファイバー温度測定ホスト1N4385Bであることができ、計算機のポートは、USBとイーサネット(LAN)を備え、通信プロトコルはSCPIとModbus TCP/IP(オプション-060)をサポートしている。測温抵抗体温度監視制御装置22には、Keithley3700シリーズデジタルマルチメータが使用され、そのホストは、最大576の2線式のマルチプレクサチャネルをサポートすることができ、複数のPT白金抵抗センサーの測定信号に同時に接続することができる。光ファイバー温度測定ホスト11と測温抵抗体温度監視制御装置22が組み合わされた複合温度測定部品は、温度測定制御装置3に温度信号を出力し、前記システムは、Labviewプログラムに基づいてソフトウェアを開発し、光ファイバー温度測定と測温抵抗体5による温度測定を組み合わせるとともに、仮想の計測プラットフォームに相当する測定及び判定プラットフォームを構築することで、データ情報の集積を大幅に向上させることにより、良好なマンマシンインタフェースが提供され、システムの使用における柔軟性が向上される。
【0095】
本発明の実施例を実施することで、以下の有益な效果を備える。
【0096】
本発明の提供する高温超伝導ケーブル温度測定システムは、従来の温度センサー(測温抵抗体)と光ファイバー温度測定技術が組み合わされて使用され、超伝導ケーブルを製造する際に、あらかじめ光ファイバーを超伝導ケーブルの中に設置するとともに、測温抵抗体を超伝導ケーブル端末(端末冷却システム)に配置することで、光ファイバー温度測定と測温抵抗体が組み合わされた複合温度測定部品が組成され、それにより、高温超伝導ケーブル沿線の温度と端末冷却システムの温度が測定される。前記システムは、リアルタイムで高温超伝導ケーブル沿線の温度分布を正確に把握することができることで、超伝導ケーブルの動作温度に応じてケーブルの輸送電流または超伝導ケーブル保護裝置を制御することができる。熱障害に関連したケーブル動作の欠陥を早急に発見することができるとともに、警告信号を発信することで、高温超伝導ケーブルの安全な動作が保証される。形態学的勾配における正と負の狭いピークの位置によって高温超伝導ケーブルの沿線における温度の異常点の位置を正確に特定する方法を提出することで、超伝導ケーブルの整備点検の際に、故障を解決することができるとともに故障の範囲を狭めることができ、故障の処理時間を短縮することができる。
【0097】
本発明が提供する高温超伝導ケーブル温度測定システムは、電力送電網における高温超伝導ケーブルの温度測定と監視制御保護に応用することができ、高温超伝導ケーブルの構造の違いに応じて、高電圧レベル、中電圧レベル、低電圧レベルに対応することができるため、高い安定性と信頼性を備える。
【0098】
説明すべき点として、本文中の、第1、第2等の関係用語はすべて、1つの実体または操作を他の実体または操作と区別する目的にのみに使用され、必ずしもこれらの実体または操作の間に実際の関係または順序が存在することを要求または暗示するものではない。また、用語の「からなる」、「備える」、またはいかなるその他の変形語も、非排他的な含みをカバーすることを意図し、それによって、一連の要素からなる過程、方法、物品または設備は、それらの要素を含むだけでなく、明確に示されていないその他の要素も含み、または、この種の過程、方法、物品あるいは設備にもとからある要素も含むことになる。さらに多くの制限がない場合、「一つの……からなる」の文によって限定される要素は、前記要素を含む過程、方法、物品または設備中に存在する別の共通する要素を排除しない。
【0099】
上述は、本発明の具体的な実施方法に過ぎず、指摘すべき点として、本技術分野における一般の技術者は、本発明の原理を逸脱することなく、若干の改善及び潤色を行うことができ、これらの改善及び潤色も本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0100】
1 光ファイバー温度測定ホスト
2 測温抵抗体温度監視制御装置
3 温度測定制御装置
4 端末冷却システム
5 自己測温抵抗体
6 ケーブル動作制御ホスト
7 インバータシステム
8 遮断器
9 低温温度測定光ファイバー
11 高温超伝導ケーブル
12 低温恒温器
13 シールド層
14 C相絶縁層
15 C相相導体
16 ケーブルボビン
17 液体窒素
100 情報収集受信ユニット
110 第1計算ユニット
120 位置測定ユニット
300 信号受信処理ユニット
310 保護動作決定ユニット
320 保護領域決定ユニット
330 保護情報送信ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6