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特許7048772回転霧化中における平均フィラメント長さの決定方法及びそれに基づく塗料開発中におけるスクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】回転霧化中における平均フィラメント長さの決定方法及びそれに基づく塗料開発中におけるスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20220329BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220329BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220329BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220329BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220329BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20220329BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20220329BHJP
   B05D 1/04 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B05D3/00 D
C09D5/02
C09D201/00
C09D7/61
B05D7/24 303A
B05D7/24 302E
B05D3/02 Z
B05D1/36 Z
B05D1/04 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020572981
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066663
(87)【国際公開番号】W WO2020002230
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】18179596.4
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ブリーゼニック,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】アイアーホフ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッガー,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ボルネマン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】リーディガー,ジークフリート
(72)【発明者】
【氏名】ヴィレンバッハー,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】オスヴァルト,ヴァルター
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-010028(JP,A)
【文献】特開昭54-072512(JP,A)
【文献】特開2001-051405(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054438(WO,A1)
【文献】特開2007-260490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 3/00
B05D 1/04
C09D 5/02
C09D 201/00
C09D 7/61
B05D 7/24
B05D 3/02
B05D 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング材料組成物の回転霧化で形成されるフィラメントの平均長さを決定するための方法であって、少なくともステップ(1)から(3)、具体的には、
(1)回転可能なベルカップを塗布要素として含む回転霧化装置によってコーティング材料組成物を霧化するステップ、
(2)少なくとも1つのカメラを用いて、ステップ(1)による霧化によってベルカップのエッジに形成されたフィラメントを光学的に取得するステップ、及び、
(3)霧化で形成された前記ベルカップのエッジに位置するフィラメントの平均長さを求めるため、ステップ(2)による光学的取得によって得られた光学データをデジタル評価するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(1)で使用された前記コーティング材料組成物が、好ましくは水系ベースコート材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)で使用された前記コーティング材料組成物は、成分(a)として、バインダーとして採用可能な少なくとも1つのポリマー;成分(b)として少なくとも1つの顔料及び/又は少なくとも1つのフィラー;及び、成分(c)として水及び/又は少なくとも1つの有機溶媒、を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記成分(b)は、前記コーティング材料組成物中に少なくとも1つの効果顔料を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(1)による前記霧化は、100~1000ml/分の範囲の霧化のための前記コーティング材料組成物の吐出速度、及び/又は、15000~70000回転/分の範囲の前記ベルカップの回転スピードで行われる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(2)による前記光学的取得は、前記霧化中に前記ベルカップ及び前記ベルカップエッジを毎秒30000~250000画像記録する少なくとも1つのカメラによって行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(3)による前記デジタル評価は、ステップ(2)により得られた前記光学データの画像解析及び/又はビデオ解析によって行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(3)による前記デジタル評価は、前記ステップ(2)により取得された少なくとも1000画像に基づいて行われる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(3)による前記デジタル評価は、少なくとも6つの段階(3a)~(3f)、具体的には
(3a)前記画像から前記ベルカップを除去するように、ガウスフィルタを用いて、ステップ(2)の実施後に光学データとして得られた前記画像の平滑化を行う段階、
(3b)段階(3a)によって平滑化された前記画像を二値化及び反転する段階、
(3c)前記ベルカップエッジのない二値化画像を得るために、段階(3a)で使用された画像を二値化し、こうして二値化された前記画像を段階(3b)からの反転画像に加算し、及び、このようにして得られた前記画像を反転する段階、
(3d)残りの配置された物体のすべてがフィラメントである画像を得るように、段階(3c)によって得られた前記画像から、滴、断片化されたフィラメント、及びベルカップエッジに位置していないフィラメントを除去する段階、
(3e)段階(3d)によって得られた前記画像から、完全には前記画像内に配置されていないそれらのフィラメントを除去する段階、及び
(3f)段階(3e)の後に前記画像に残っている全てのフィラメントをそれらのピクセル数に漸減し、各フィラメントのピクセル数を加算し、ピクセルサイズに基づいて各フィラメントのフィラメント長さを決定し、及び、測定された全てのフィラメントの全体についての平均フィラメント長さを確定する段階、
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
段階(3d)による前記除去は、(i)前記画像上に位置する全ての物体の全ての斜辺の長さを決定すること、(ii)これらの物体の確定された前記斜辺の値が所定の値hを下回った場合に、物体を滴及び/又は断片化されたフィラメントとして前記画像上でラベリングし、これらの物体を除去すること、及び、(iii)前記画像上の位置に基づいて、残りの前記物体、すなわち前記フィラメントを、それらが前記ベルカップエッジに位置していたかどうかについて検証し、これに当てはまらないそれらのフィラメントを除去すること、によって達成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
互いに異なる霧化されたコーティング材料組成物の平均フィラメント長さを含む電子データベースを編集及び/又は更新する方法であって、少なくともステップ(1)~(3)、(4A)、及び(5A)、具体的には、
― 第1コーティング材料組成物(i)について、請求項1~10のいずれか1項で定義されたステップ(1)、(2)、及び(3)、
(4A)前記第1コーティング材料組成物(i)についてステップ(3)により確定された平均フィラメント長さを電子データベースに組み込むステップ、及び
(5A)前記第1コーティング材料組成物(i)とは異なる少なくとも1つのさらなるコーティング材料組成物について、前記ステップ(1)~(3)及び(4A)を少なくとも1回繰り返すステップ、
を含む、方法。
【請求項12】
少なくとも更なるステップ(3A)、(3B)及び(3C)、具体的には、
(3A)ステップ(1)で霧化した前記第1コーティング材料組成物(i)を基材に塗布し、前記基材上に配置される膜を形成し、この膜を焼成して前記基材上に配置されるコーティングを形成するステップ、
(3B)表面欠陥及び/又は光学的欠陥の発生又は非発生について、ステップ(3A)の後に得られたコーティングを分析及び評価するステップ、及び
(3C)ステップ(3B)の実施後に得られた結果を前記電子データベースに組み込むステップ、
を含み、
ここで、ステップ(5A)は、前記第1コーティング材料組成物(i)とは異なる前記少なくとも1つの更なるコーティング材料組成物について、これらのステップ(3A)、(3B)、及び(3C)の繰り返しを伴う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
塗料配合の開発においてコーティング材料組成物をスクリーニングする方法であって、少なくともステップ(1)~(3)、(4B)、(5B)、及び(6B)、ならびに任意に(7B)、具体的には、
― コーティング材料組成物(X1)について請求項1~10のいずれか1項に記載のステップ(1)、(2)、及び(3)、
(4B)前記コーティング材料組成物(X1)についてステップ(3)によって決定された平均フィラメント長さを、電子データベースに保存された更なるコーティング材料組成物の平均フィラメント長さと比較するステップであって、前記データベースは、請求項11又は12に記載の方法によって取得可能である、ステップ、
(5B)ステップ(4B)による比較に基づいて、前記コーティング材料組成物(X1)についてステップ(3)により決定された平均フィラメント長さが、コーティング材料組成物(X2)の前記データベースに保存されている少なくとも1つの平均フィラメント長さよりも短いという条件に適合するか否かをチェックするステップであって、前記コーティング材料組成物(X2)は前記コーティング材料組成物(X1)とは異なるが、前記コーティング材料組成物(X1)の顔料含有量と同一の顔料含有量を有するか、又は前記コーティング材料組成物(X1)に存在する顔料の量に基づいて、前記コーティング材料組成物(X1)の顔料含有量から±10質量%を超えない範囲で逸脱する顔料含有量を有し、及びさらに、前記コーティング材料組成物(X2)が前記コーティング材料組成物(X1)と同一の又は実質的に同一の1つ又は複数の顔料を含む、ステップ、
(6B)前記コーティング材料組成物(X1)について決定された平均フィラメント長さがステップ(5B)で規定された条件を満たす場合、基材への塗布のために前記コーティング材料組成物(X1)を選択するか、
あるいは、
前記コーティング材料組成物(X1)について決定された平均フィラメント長さがステップ(5B)で規定された条件を満たさない場合、前記コーティング材料組成物(X1)の配合の少なくとも1つのパラメータ、及び/又は前記コーティング材料組成物をスクリーニングする方法のステップ(1)から(3)を実施するときの少なくとも1つの方法パラメータを適合させるか、のステップ、
(7B)ステップ(6B)によって少なくとも1つのパラメータの適合が要求された場合、ステップ(6B)の実施を少なくとも1回繰り返すことによって、ステップ(5B)で述べられた条件が満たされて基材への塗布のために使用されるコーティング材料組成物が選択されるまで、ステップ(1)~(3)、(4B)、及び(5B)を少なくとも1回繰り返すステップ、
を含む。
【請求項14】
コーティング材料組成物(X1)の配合の少なくとも1つのパラメータ、及び/又はステップ(6B)によるステップ(1)~(3)の実施における少なくとも1つの方法パラメータの前記適合は、以下のパラメータの適合の群:
(i)前記コーティング材料組成物(X1)中にバインダー成分(a)として存在する少なくとも1つのポリマーの量を上昇又は低下させること、
(ii)前記コーティング材料組成物(X1)中にバインダー成分(a)として存在する少なくとも1つのポリマーを、それとは異なる少なくとも1つのポリマーで少なくとも部分的に置換すること、
(iii)前記コーティング材料組成物(X1)中に成分(b)として存在する少なくとも1つの顔料及び/又はフィラーの量を上昇又は低下させることであって、これは、そこに存在する顔料については上記の範囲内でのみ可能である、
(iv)前記コーティング材料組成物(X1)中に成分(b)として存在する少なくとも1つのフィラーを、それとは異なる少なくとも1つのフィラーで少なくとも部分的に置換すること、
(v)前記コーティング材料組成物(X1)中に成分(c)として存在する少なくとも1つの有機溶媒の量、及び/又はそこに存在する水の量を上昇又は低下させること、
(vi)前記コーティング材料組成物(X1)中に成分(c)として存在する少なくとも1つの有機溶媒を、それとは異なる少なくとも1つの有機溶媒で少なくとも部分的に置換すること、
(vii)コーティング材組成物(X1)中に成分(d)として存在する少なくとも1つの添加剤の量を上昇又は低下させること、
(viii)前記コーティング材料組成物(X1)中に成分(d)として存在する少なくとも1つの添加剤を、それとは異なる少なくとも1つの添加剤で少なくとも部分的に置換すること、及び/又はそれとは異なる少なくとも1つのさらなる添加剤を添加すること、
(ix)前記コーティング材料組成物(X1)を調製するための使用成分の順序を変更すること、及び/又は
(x)前記コーティング材料組成物(X1)を調製するときの混合のエネルギー入力を上昇又は低下させること、
から選択される少なくとも1つの適合を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、成分(b)として少なくとも1つの効果顔料を含む水系ベースコート材料をスクリーニングする方法である、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング材料組成物の回転霧化において形成されるフィラメントの平均長さを決定するための方法であって、少なくともステップ(1)から(3)、具体的には、回転可能なベルカップを塗布要素として含む回転霧化装置によるコーティング材料組成物の霧化(1)、少なくとも1つのカメラを用いて、ベルカップのエッジに形成されたフィラメントの光学的取得(2)、及びベルカップのエッジに位置する霧化で形成されたフィラメントの平均フィラメント長さを求めるため、このようにして得られた光学データのデジタル評価(3)、を含む方法、並びに前記方法に基づいて実施される、塗料の配合を開発するときの電子データベースの作成及びコーティング材料組成物のスクリーニングの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、特に自動車産業において、コーティングされる特定の基材に回転霧化によって塗布される、ベースコート材料などの一連のコーティング材料組成物がある。このような霧化装置は、例えばベルカップのように、塗布されるコーティング材料組成物を霧化する高速回転塗布要素を特徴としており、該霧化は特に遠心力の作用によって生じ、フィラメントが形成されて、滴の形でスプレーミストが生成される。コーティング材料組成物は、塗布効率を最大化し、オーバースプレーを最小化するために、典型的には静電的に塗布される。ベルカップのエッジでは、特に遠心力によって霧化されたコーティング材料が、塗布のためにコーティング材料組成物に高電圧を直接印加されて帯電される(直接帯電)。それぞれのコーティング材料組成物を基材に塗布した後、必要に応じてその上にさらなる膜の形で他のコーティング材料組成物を追加塗布した後に、硬化又は焼成して、結果としての所望のコーティングを得る。
【0003】
コーティングの最適化、特にこのようにして得られるコーティングの特定の所望のコーティング特性、例えば、ピンホール、曇り、及び/又はレベリングのような光学的欠陥及び/又は表面欠陥の形成及び/又は発生の傾向の防止又は少なくとも低減などのコーティングの最適化は、比較的複雑であり、典型的には経験的手段によってのみ可能である。これは、このようなコーティング材料組成物、又は典型的には、その中で異なるパラメータが変更されていくその一連の試験の全体が最初に行われなければならず、次いで、前段落で説明したように、基材に塗布され、硬化又は焼成されなければならないことを意味している。その後に、得られた一連のコーティングを所望の特性に関して調査し、調査した特性の改善の可能性を評価しなければならない。典型的には、この手順は、硬化及び/又は焼成後にコーティングの調査された1つ又は複数の特性の所望の改善が達成されるまで、パラメータをさらに変化させながら何度も繰り返す必要がある。
【0004】
そのようなコーティングを生成するために使用されたコーティング材料組成物を、それらのせん断粘度挙動(せん断レオロジー)に基づいて調査し、特徴付けし、それらの特定の塗装特性のより良い理解を提供することは、従来技術において公知の慣行である。ここでは、例えば、キャピラリーレオメーターを利用することが可能である。しかし、せん断レオロジーの調査に焦点を当てたこの手順の欠点は、回転霧化の過程で発生する伸長粘度(伸長レオロジー)の非常に重要な影響を考慮に入れていないこと、又は十分に考慮していないことである。伸長粘度は、伸長流における材料の流動抵抗の指標である。このような伸長流は、典型的には、例えば、キャピラリー入口流及びキャピラリー出口流の場合のように、これに関連するすべての技術的プロセスにおいてせん断流に付加して生じる。ニュートン流挙動の場合、伸長粘度は、従来の方法で決定されるせん断粘度(トルートン比)に対する一定の比率から計算され得る。一方、非ニュートン流挙動の場合は、実際には、適用範囲にわたってはるかに高い頻度で発生するが、前述の説明と特性評価において伸長レオロジーを十分に考慮するためには、せん断粘度に依存しないパラメータとして、伸長粘度を伸長粘度計の助けを借りて実験的に決定することが一般的に必要である。特に前述の回転霧化法を実施している場合には、伸長粘度は霧化プロセス及びフィラメントのスプレーミストが形成される滴への断裂にかなり大きな影響を与える可能性がある。伸長粘度を決定するための技術は、従来技術から公知である。ここでは、キャピラリーブレークアップ伸長粘度計(CaBER)を用いて伸長粘度を決定することが典型的である。しかし、これまでのところ、調査中の材料を実際に霧化せずに、伸張力とせん断力の両方を等しく考慮するための利用可能な技術はなかった。
【0005】
したがって、コーティング材料組成物の霧化挙動を調査することにより、この霧化によって生成されるコーティングの特定の所望の特性の改善、例えば、光学的欠陥及び/又は表面欠陥の形成及び/又は発生の傾向の防止又は少なくとも低減などのコーティングの特定の所望の特性の改善を、そのようなコーティングを生成するために一般的に必要とされるコーティング及び焼成の完全な操作を経ることなく達成することを可能にする方法が必要とされている。しかしながら、同様に、そのような方法は、それが伴うせん断レオロジーだけでなく、伸長レオロジーも適切に考慮に入れるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明によって解決される問題は、従来の塗装プロセスによって基材に使用するそれぞれのコーティング材料組成物を塗装することなく、具体的にはコーティングを生成するために得られた膜を硬化及び/又は焼成することなく、回転霧化によって生成されるコーティングの特定の所望の特性、例えば、光学的欠陥及び/又は表面欠陥の形成及び/又は発生の傾向の防止又は少なくとも低減などのコーティングの特定の所望の特性を、調査すること、及びより具体的には改善可能な方法を提供することにある。このような方法は、霧化の過程で生じる伸長挙動を等しく考慮する必要がある。本発明が解決する特定の問題は、コーティング材料組成物としての水系ベースコート材料のためのそのような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題は、特許請求の範囲に記載されている主題によって解決され、また、以下の説明に記載されるその主題の好ましい実施形態によっても解決される。
【0008】
本発明の第1の主題は、コーティング材料組成物の回転霧化において形成されるフィラメントの平均長さを決定するための方法であって、少なくともステップ(1)から(3)、具体的には、
(1)回転可能なベルカップを塗布要素として含む回転霧化装置によってコーティング材料組成物を霧化するステップ、
(2)少なくとも1つのカメラを用いて、ステップ(1)による霧化によってベルカップのエッジに形成されたフィラメントを光学的に取得するステップ、及び、
(3)霧化で形成されたベルカップのエッジに位置するフィラメントの平均長さを求めるため、ステップ(2)による光学的取得によって得られた光学データをデジタル評価するステップ、
を含む。
【0009】
驚くべきことに、本発明の方法により、多種多様な異なるコーティング材料組成物、特に水系ベースコート材料の回転霧化挙動を調査し、特徴付けることが可能になったことが判明した。これは、驚くべきことに、ベルカップが回転塗布要素として回転霧化で使用されるときに、ベルカップのエッジに位置する霧化時に発生するそれらのフィラメントの平均長さの決定に基づいて達成される。
【0010】
本発明の方法によって決定される平均フィラメント長さは、電子データベースに組み込むことができ、又はそのようなデータベースは編集及び/又は更新されることができる。したがって、本発明の第2の主題は、互いに異なる霧化されたコーティング材料組成物の平均フィラメント長さを含む電子データベースを編集及び/又は更新するための方法であって、該方法は、少なくともステップ(1)~(3)、(4A)、及び(5A)、具体的には、
- 第1コーティング材料組成物(i)の平均フィラメント長さを決定するための本発明の方法によるステップ(1)、(2)、及び(3)、
(4A)第1コーティング材料組成物(i)についてステップ(3)により確定された平均フィラメント長さを電子データベースに組み込むステップ、及び、
(5A)第1コーティング材料組成物(i)とは異なる少なくとも1つのさらなるコーティング材料組成物について、ステップ(1)~(3)及び(4A)を少なくとも1回繰り返すステップ、
を含む。
【0011】
ステップ(4A)による確定された平均フィラメント長さのデータベースへの組み込みは、それぞれ決定された平均フィラメント長さのそれぞれの標準偏差のデータベースへ組み込みをさらに含むのが好ましい。
【0012】
本発明の方法が実施される場合、コーティングの生成に使用することができるコーティング材料組成物の回転霧化で生じる伸長粘度の影響は十分に考慮される。これは特に、本発明の方法が実施される場合、伸長粘度を決定するために比較的高い伸長率、すなわち100000s-1までの伸長率が考慮され、したがって、特に1000s-1までの伸長率しか達成されないベースコート材料の場合における従来のCaBER測定の場合よりも伸長率が高くなり、前述の比較的高い伸長率で平均フィラメント長さの決定が行われる。従来のCaBER法とは対照的に、本発明の方法により、回転霧化のベルカップを比較的低い回転スピード(回転速度)のみに設定したとしても、より高い伸長粘度と生じるより高い伸長率が、達成され考慮される。さらに、本発明の方法は、回転霧化の過程で(せん断速度及び伸長速度に加えて)発生する横方向の流れを考慮することを可能にする。このような横方向の流れは、せん断レオロジー又は伸長レオロジーを調査するための従来の既知の方法のいずれにおいても考慮されていない。ステップ(1)を有する本発明の方法は、それら自体で回転霧化の実施を含むという事実の結果として、個々の要素(せん断レオロジー又は伸長レオロジー)のみを取得可能な技術を使用することなく、単一の方法内でせん断レオロジー及び伸長レオロジーだけでなく、横方向の流れの発生についても十分に考慮することが可能である。
【0013】
驚くべきことに、特に回転霧化においてコーティング材料組成物として使用される水系ベースコート材料の場合、そこに存在する顔料、特にアルミニウム効果顔料のような効果顔料は、その割合がベースコート材料の全質量に対して増加するにつれて、フィラメントの長さ、少なくとも霧化中に発生するベルカップのエッジに位置するフィラメントの長さの短縮(換言すれば、平均フィラメント長さの低下)をもたらすことがさらに判明された。短い平均フィラメント長さは、ベルカップのエッジにおけるこれらのフィラメントの短い寿命につながる。そのような低い平均フィラメント長さは、次には、使用されるコーティング材料組成物の「より細い」霧化を示す。最大限に細い霧化は、より低い湿潤度、換言すれば、使用するコーティング材料組成物を塗布した後に形成される膜の湿った外観が少なくなるため望ましい。当業者は、高すぎる湿潤度が、望ましくないポップ及び/又はピンホールの発生、より悪いシェード及び/又はフロップ、及び/又は曇りの発生につながり得ることを知っている。この技術的効果、すなわち、コーティング材料組成物中の顔料割合が高くなるにつれての、ベルカップのエッジに位置する短い平均フィラメント長さを有するフィラメントの発生、及び湿潤度の低下などの組み合わされた有利な特性は、一層驚くべきものである、なぜなら、同じコーティング材料組成物の比較CaBER測定によれば、顔料の割合が増加するにつれて、これらのフィラメントのより長い寿命、したがって、より長い平均フィラメント長さが決定され、次には、望ましくないより高い湿潤度をもたらすと考えられていたからである。しかしながら、コーティング材料組成物を用いて得られた膜の湿潤度の調査により、本発明の方法によって得られる湿潤度に関する結果を確認した。このことは、本発明の方法により得られた結果が、比較CaBER測定に基づいて得られた結果よりも、実際の条件に高度に対応していることを示している。換言すれば、CaBER測定のみに依存すると、実際に発生している状況の誤った評価をしてしまう可能性があり、より具体的には、本発明の方法により得られた結果に基づくものと反対の誤った行動をもたらす可能性がある。
【0014】
驚くべきことに、確定された平均フィラメント長さに基づく本発明の方法を実施することにより、特に、光学的欠陥及び/又は表面欠陥の形成及び/又は発生傾向を防止又は少なくとも低減することに関して、この場合コーティングを生成するために従来の塗装手順によって使用する特定のコーティング材料組成物を基材に塗布し、得られた膜の硬化及び/又は焼成を実施することを要することなく、回転霧化によって生成されるコーティングの特定の所望の特性の調査、特に改善を実現することが可能である。
【0015】
したがって、本発明のさらなる主題は、塗料配合の開発におけるコーティング材料組成物のスクリーニング方法であって、該方法は、少なくともステップ(1)~(3)、(4B)、(5B)及び(6B)、ならびに任意に(7B)を含み、そこでは平均フィラメント長さを決定するために、まず、ステップ(1)~(3)において、上記の本発明の方法にしたがってコーティング材料組成物(X1)の回転霧化で形成されたフィラメントの平均長さが決定される。したがって、これらのステップ(1)~(3)は、本発明の第1の主題のステップ(1)~(3)に対応する。
【0016】
塗料配合の開発におけるコーティング材料組成物をスクリーニングする方法は、少なくともステップ(1)~(3)、(4B)、(5B)、及び(6B)、ならびに任意で(7B)を含み、すなわち
(1)回転可能なベルカップを塗布要素として含む回転霧化装置によってコーティング材料組成物(X1)を霧化するステップ、
(2)少なくとも1つのカメラを用いて、ステップ(1)による霧化によってベルカップのエッジに形成されたフィラメントを光学的に取得するステップ、及び、
(3)霧化で形成されたベルカップのエッジに位置するフィラメントの平均長さを求めるため、ステップ(2)による光学的取得によって得られた光学データをデジタル評価するステップ、
(4B)コーティング材料組成物(X1)についてステップ(3)により決定された平均フィラメント長さと、電子データベースを編集及び/又は更新するための本発明の前記方法(本発明の第2の主題)によって得られる電子データベースに保存された更なるコーティング材料組成物の平均フィラメント長さとを比較するステップ、
(5B)ステップ(4B)による比較に基づいて、コーティング材料組成物(X1)についてステップ(3)により決定された平均フィラメント長さが、コーティング材料組成物(X2)のデータベースに保存されている少なくとも1つの平均フィラメント長さよりも短いという条件に適合するか否かをチェックするステップであって、該コーティング材料組成物(X2)はコーティング材料組成物(X1)とは異なるが、コーティング材料組成物(X1)の顔料含有量と同一の顔料含有量を有するか、又はコーティング材料組成物(X1)中に存在する顔料の量に基づいて、コーティング材料組成物(X1)の顔料含有量から±10質量%を超えない範囲で逸脱する顔料含有量を有し、かつさらに、該コーティング材料組成物(X2)はコーティング材料組成物(X1)と同一の又は実質的に同一の1つ又は複数の顔料を含む、ステップ、
(6B)コーティング材料組成物(X1)について決定された平均フィラメント長さがステップ(5B)で規定された条件を満たす場合、基材への塗布のためのコーティング材料組成物(X1)を選択するか、
あるいは、
コーティング材料組成物(X1)について決定された平均フィラメント長さがステップ(5B)で規定された条件を満たさない場合、コーティング材料組成物(X1)の配合の少なくとも1つのパラメータ及び/又はコーティング材料組成物をスクリーニングする方法のステップ(1)~(3)を実施する際の少なくとも1つの方法パラメータを適合させるか、のステップ、
(7B)ステップ(6B)によって少なくとも1つのパラメータの適合が要求された場合、ステップ(6B)の実施を少なくとも1回繰り返すことによって、ステップ(6B)によるステップ(5B)で述べられた条件が満たされて基材への塗布のために使用コーティング材料組成物が選択されるまで、ステップ(1)~(3)、(4B)、及び(5B)を少なくとも1回繰り返すステップ、
を含む。
【0017】
驚くべきことに、塗料配合の開発におけるコーティング材料組成物をスクリーニングするための本発明の方法は、典型的な方法よりもコストと不便さが少なく、したがって、対応する従来の方法よりも(時間)経済及び資金的に利点を有することが判明した。本発明の方法により、驚くべきことに、特に水系ベースコート材料の場合において、コーティングを全く生成することなく、確定された平均フィラメント長さに基づいて、生成されるコーティングに特定の光学的欠陥及び/又は表面欠陥が予想されるかどうかを十分高い確率で推定することが可能である。驚くべきことに、これは回転霧化装置のベルカップのエッジに位置する霧化時に発生するフィラメントの平均長さの決定によって、及びこれらの確定されたフィラメント長さを、前記光学的欠陥及び/又は表面欠陥の発生、又はそれらの防止/低減と相関させることによって達成される。霧化中に発生するこれらの平均フィラメント長さに応じて、生成されるコーティングの光学特性及び表面特性などの結果として生じる特性を監視することができ、特に光学的欠陥及び表面欠陥の発生を防止又は少なくとも低減させることができる。換言すると、本発明の方法により、コーティング材料組成物の霧化の挙動の調査により、最終的なコーティングの質的特性(例えば、ピンホールの発生、曇り、レベリング、又は外観など)に関する予測を行うことが可能である。特に、驚くべきことに、それらは、CaBER測定などの従来技術から知られている他の技術よりも、これらの特性との相関性が高いことが判明した。したがって、本発明の方法は、品質保証のための単純かつ効率的な技術を可能にし、(モデル)基材への比較的高価で不便なコーティング手順に頼ることなく、コーティング材料組成物の目的に応じた開発を可能にする。特に、ここでは、硬化及び/又は焼成のステップを省略することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
平均フィラメント長さを決定するための本発明の方法
本発明の第1の主題は、少なくともステップ(1)~(3)を含む、コーティング材料組成物の回転霧化において形成されるフィラメントの平均長さを決定する方法である。
【0019】
「回転霧化」又は「高速回転霧化」の概念は、当業者に知られているものである。このような回転霧化装置は、遠心力の作用により、塗布されるコーティング材料組成物を、滴の形状のスプレーミストに霧化する回転塗布要素を特徴とする。この場合の塗布要素は、好ましくは金属製のベルカップである。
【0020】
霧化装置による回転霧化の過程において、いわゆるフィラメントは、最初に、ベルカップのエッジで発達し、その後、霧化プロセスのさらなる過程で、分断して前述の滴になり、それらがスプレーミストを形成する。したがって、フィラメントは、これらの滴の前駆体を構成する。フィラメントは、そのフィラメント長さ(「スレッド長さ」とも呼ばれる)及びその直径(「スレッド径」とも呼ばれる)によって表され、特徴付けられることができる。
【0021】
本発明の方法が実施されるときは、回転霧化の間に生じる伸長粘度が十分に考慮される。当業者であれば、伸長流における材料の流動抵抗の尺度として、単位パスカル・秒(Pa・s)を有する伸長粘度neの概念を知っている。伸長粘度を決定するための技術も同様に、当業者に知られている。伸長粘度は、ここでは、例えば、Thermo Scientific社から販売されているキャピラリーブレークアップ伸長粘度計(CaBER)と呼ばれるものを使用して決定されるのが通常である。対応するCaBER測定によって確定される伸長粘度の比較的高い値(すなわち、比較的高い伸長抵抗)は、霧化の際に形成されるフィラメントの比較的高い安定性を意味する。フィラメントの安定性が高ければ、次に、フィラメントがスプレーミストを形成する滴にさらに分断される前の、霧化で発生するフィラメントの平均寿命(スレッド寿命とも呼ばれる)が長くなる。この種の比較的高い平均フィラメント寿命は、通常、これらのフィラメントのより高い平均長さと関連している。CaBER測定による伸長実験におけるスレッド寿命、換言すればフィラメント寿命を決定するための技術は、以下、方法の説明の中で示される。
【0022】
ステップ(1)
本発明の方法のステップ(1)は、塗布要素として回転可能なベルカップを有する回転霧化装置を用いる使用されるコーティング材料組成物の霧化に関する。ここで、任意に、霧化されるコーティング材料組成物は、電圧の印加によってベルカップのエッジで静電帯電を受けることができる。しかし、本発明の方法の実施、特に本発明の方法のステップ(1)の実施には、これは必須ではない。
【0023】
ベルカップの回転スピード(回転速度)は調整可能である。この場合、回転スピードは、好ましくは少なくとも10000回転/分(rpm)であり、多くとも70000回転/分である。回転速度は、好ましくは15000~70000rpmの範囲、より好ましくは17000~70000rpmの範囲、より具体的には18000~65000rpm、又は18000~60000rpmの範囲である。毎分15000回転以上の回転スピードでは、本発明の意味でのこの種の回転霧化装置は、高速回転霧化装置と称されるのが好ましい。一般的な回転霧化、及び特に高速回転霧化は、自動車産業の中で広く普及している。これらのプロセスに使用される(高速)回転霧化装置は市販されており、例としては、Duerr製のEcobell(登録商標)シリーズの製品が挙げられる。このような霧化装置は、好ましくは、自動車産業で使用される塗料などの多数の異なるコーティング材料組成物の静電塗装に適している。本発明の方法内でコーティング材料組成物として特に好ましく使用されるのは、ベースコート材料、より具体的には水系ベースコート材料である。コーティング材料組成物は、静電的に塗装されてもよいが、そうである必要はない。静電塗装の場合は、ベルカップエッジで、好ましくは電圧、例えば塗装されるコーティング材料組成物に高電圧などを直接印加すること(直接帯電)によって、遠心力により霧化されるコーティング材料組成物への静電帯電が行われる。
【0024】
ステップ(1)の実施中の、霧化のためのコーティング材料組成物の吐出速度は、調整可能である。ステップ(1)の実施中の、霧化のためのコーティング材料組成物の吐出速度は、好ましくは50~1000ml/分の範囲、より好ましくは100~800ml/分の範囲、非常に好ましくは150~600ml/分の範囲、より具体的には、200~550ml/分の範囲である。
【0025】
ステップ(1)の実施中の、霧化のためのコーティング材料組成物の吐出速度は、好ましくは100~1000ml/分の範囲、又は200~550ml/分の範囲、及び/又はベルカップの回転スピードは、15000~70000回転/分、又は15000~60000rpmの範囲である。
【0026】
本発明の方法のステップ(1)で使用されるコーティング材料組成物は、好ましくはベースコート材料であり、より好ましくは水系ベースコート材料であり、より具体的には少なくとも1つの効果顔料を含む水系ベースコート材料である。
【0027】
ステップ(2)
本発明の方法のステップ(2)では、ステップ(1)によりベルカップのエッジで霧化の過程で形成され、少なくとも1つのカメラを用いて光学的に取得されたフィラメントを確認する。
【0028】
換言すると、本発明の方法のステップ(2)内では、霧化プロセスは、ステップ(1)により、ベルのベルカップのベルカップエッジにおいて光学的取得され、より具体的には撮影され、及び/又は対応するビデオ記録が準備される。このようにして、霧化中にベルカップエッジで直接形成されたフィラメントの分断に関する情報を得ることができる。
【0029】
ステップ(2)を実施するために使用されるカメラは、好ましくは高速度カメラである。そのようなカメラの例としては、日本のPhotron Tokyo製のFastcam(登録商標)シリーズのモデル、例えばFastcam(登録商標)SA-Zモデルが挙げられる。
【0030】
ステップ(2)による光学的取得は、好ましくは、ベルカップ、特にベルカップエッジの画像を、毎秒30000~250000画像、より好ましくは毎秒40000~220000画像、さらに好ましくは毎秒50000~200000画像、非常に好ましくは毎秒60000~180000画像、さらに好ましくは毎秒70000~160000画像、より具体的には毎秒80000~120000画像を記録する少なくとも1つのカメラによって達成される。画像の解像度は、可変的に設定することができる。例えば、1画像あたり512×256ピクセルの解像度が可能である。
【0031】
ステップ(3)
本発明の方法のステップ(3)は、ステップ(2)により、光学的取得によって得られた光学データのデジタル評価を提供する。このデジタル評価の目的は、霧化中にベルカップのエッジ、すなわちベルカップエッジに直接形成されるそれらのフィラメントの平均長さを決定することにある。
【0032】
ステップ(3)によるデジタル評価は、ステップ(2)により得られた光学データ、例えばステップ(2)内のカメラによって記録された画像及び/又はビデオなどの画像解析及び/又はビデオ解析によって達成されてよい。
【0033】
ステップ(3)は、好ましくは、MATLAB(登録商標)コードに基づくMATLAB(登録商標)ソフトウェアなどのソフトウェアの支援を受けて実施される。
【0034】
ステップ(3)によるデジタル評価は、好ましくは、ステップ(2)で得られた光学データの画像及び/又はビデオの処理の2つ以上の段階を包含する。ステップ(2)で記録された画像のうち、好ましくは、少なくとも1000画像、より好ましくは少なくとも1500画像、非常に好ましくは少なくとも2000画像が、ステップ(3)によるデジタル評価のための光学データの基として使用される。
【0035】
ステップ(3)による平均フィラメント長さの確定は、好ましくは、平均フィラメント長さの標準偏差を含む。
【0036】
ステップ(3)は、好ましくは複数段階で行われる。
【0037】
ステップ(3)によるデジタル評価は、好ましくは少なくとも6つの段階(3a)~(3f)で行われ、具体的には
(3a)画像からベルカップを除去するために、ガウスフィルタを用いて、ステップ(2)の実施後に光学データとして得られた画像の平滑化を行うステップ、
(3b)段階(3a)により平滑化された画像を二値化及び反転するステップ、
(3c)ベルカップエッジのない二値化画像を得るために、段階(3a)で使用した画像の二値化し、こうして二値化された画像を段階(3b)からの反転画像へ追加し、及び、このようにして得られた画像を反転するステップ、
(3d)残りの配置された物体のすべてがフィラメントである画像を得るために、段階(3c)より得られた画像から、滴、断片化されたフィラメント、及びベルカップエッジに位置していないフィラメントを除去するステップ、
(3e)段階(3d)により得られた画像から、完全には画像内に配置されていないそれらのフィラメントを除去するステップ、及び
(3f)段階(3e)の後に画像に残っている全てのフィラメントをそれらのピクセル数に漸減(tapering)し、各フィラメントのピクセル数を加算し、ピクセルサイズに基づく各フィラメントのフィラメント長さを決定し、及び、測定された全てのフィラメントの全体についての平均フィラメント長さを確定するステップ、
を含む。
【0038】
段階(3d)による除去は、好ましくは、(i)画像上に位置する全ての物体の全ての斜辺の長さを決定すること、(ii)これらの物体の確定された斜辺の値が定義された値hを下回った場合には、画像の物体を滴及び/又は断片化されたフィラメントとしてラベリングし、これらの物体を除去すること、及び、(iii)画像上の位置に基づいて、残りの物体、すなわちフィラメントを、ベルカップエッジに位置していたかどうかを検証し、これに当てはまらないフィラメントを除去すること、によって達成される。ここでの値hは15ピクセル(又は300μm)に相当する。
【0039】
個々の段階については、以下で詳しく説明する。
【0040】
第1段階(3a)では、ベルカップは、好ましくは記録されたそれぞれの画像内で除去され、デジタル評価の基礎として使用される。この目的のために、ガウスフィルタを使用して、ベルカップ全体、特にベル全体がもはや見えなくなる程度までに、各画像を平滑化する。
【0041】
第2の段階(3b)では、このようにして平滑化された画像を、好ましくは二値化し、反転する。
【0042】
第3の段階(3c)では、元の画像、すなわち、段階(3a)で使用された画像を同様に好ましくは二値化し、段階(3b)からの反転画像と一緒に加算する。その結果、ベルエッジのない二値化された一連の画像が得られ、この一連の画像は、好ましくは、次にさらなる評価のために反転される。
【0043】
二値化は、各場合において、特に画像の背景から測定用フィラメントをより効果的に区別するために行われる。
【0044】
第4の段階(3d)では、好ましくは、フィラメントが滴などの他の物体から区別され得る条件が定義される。ここでは、まず、各ピクチャ内のフィラメントを含む全ての物体の斜辺を、物体のxmin、xmax、ymin、及びymaxによって計算し、決定する。値は、これらの極値を報告するMATLAB関数によって得られ、したがって、各物体についてx方向の対応するxの値、すなわちxminとxmaxが、及び、各物体についてy方向の対応するyの値、すなわちyminとymaxが得られる。物体の斜辺は、その物体がフィラメントであるとみなされるために、特定の値hよりも大きくなければならない。ここで値hは15ピクセル(又は300μm)に相当する。その結果、滴などの小さな物体のすべてが、進行中の評価から除外される。さらに、各物体は、ベルエッジ(画像上では既に除去されている)のすぐ近傍に位置するy値を有する必要がある。ここで、y値は、ベルエッジに位置するフィラメントであるとみなされるために、各物体が存在しなければならないy方向の定義された距離の値に相当している。この文脈における「すぐ近傍」という概念は、ベルエッジから5ピクセル以内の距離、及び/又はベルエッジから最大でも5ピクセル下の位置を有するy値を包含する。したがって、ベルカップエッジに接続されていない全てのフラグメント、特に相対的に長い全てのフラグメントは、フィラメント長さの決定の評価から除外され、考慮されるフィラメントはベルカップエッジに位置するフラグメントのみとなる。
【0045】
第5の段階(3e)では、段階(3d)の実施後にそれぞれの画像内にまだ残っているすべての物体が、好ましくは、それらの最小x値が0より大きく、最大x値が256より小さいかどうかについて検証される。この条件を満たす物体のみが、さらなる過程で考慮される。したがって、評価されるフィラメントは、記録された画像フレーム内に完全に配置されるもののみである。画像内に残っているすべての物体には、好ましくは番号が付けられる。
【0046】
第6の段階(3f)では、段階(3e)の後に残っている全ての物体は、好ましくは個別に呼び出され、好ましくはスケルトン法によって漸減される。この方法は当業者に知られている。その結果、各物体の1つのピクセルが、続いて最大で1つの他のピクセルに接続される。続いて、物体又はフィラメントごとにピクセル数が一緒にカウントされる。ピクセルサイズが既知であるため、フィラメントの実際の長さが計算され得る。この画像評価は、1つの画像につき約15000個のフィラメントを評価する。これにより、フィラメント長さを決定する際の統計的根拠が高いことが保証される。調査されたフィラメントについてこのように確定されたすべてのフィラメント長さの全体から、これらのフィラメントの平均長さが結果として得られる。このようにして、ベルカップのベルカップエッジに位置する霧化時に形成されるフィラメントの平均長さが得られる。
【0047】
本発明の方法は、少なくともステップ(1)~(3)を含むが、任意にさらなるステップを含んでもよい。ステップ(1)~(3)は、好ましくは番号順に実施される。ステップ(1)及び(2)は、好ましくは同期して実施される;換言すると、ステップ(2)による光学的取得は、好ましくは、ステップ(1)の実施中に行われる。
【0048】
電子データベースを編集及び/又は更新するための本発明の方法
本発明のさらなる主題は、互いに異なる霧化されたコーティング材料組成物の平均フィラメント長さを含む電子データベースを編集及び/又は更新する方法であって、該方法は、少なくともステップ(1)~(3)、(4A)、及び(5A)を含み、具体的には、
第1コーティング材料組成物(i)の平均フィラメント長さを決定するための本発明の方法によるステップ(1)、(2)及び(3)の実施、すなわち
(1)回転可能なベルカップを塗布要素として含む回転霧化装置によってコーティング材料組成物(i)を霧化するステップ、
(2)少なくとも1つのカメラを用いて、ステップ(1)による霧化によってベルカップのエッジに形成されたフィラメントを光学的に取得するステップ、及び、
(3)霧化で形成されたベルカップのエッジに位置するフィラメントの平均長さを求めるため、ステップ(2)による光学的取得によって得られた光学データをデジタル評価するステップ、
(4A)第1コーティング材料組成物(i)についてステップ(3)により確定された平均フィラメント長さを電子データベースに組み込むステップ、及び
(5A)第1コーティング材料組成物(i)とは異なる少なくとも1つのさらなるコーティング材料組成物について、ステップ(1)~(3)及び(4A)を少なくとも1回繰り返すステップ、
を含む。
【0049】
平均フィラメント長さを決定するための本発明の方法に関連して上記に記載されたすべての好ましい実施形態はまた、電子データベースを編集及び/又は更新するための方法に関連して好ましい実施形態である。
【0050】
ステップ(4a)により、確定された平均フィラメント長さをデータベースに組み込むことは、好ましくは、上記で既に観察したように、それぞれの標準偏差をデータベースに組み込むことも伴う。標準偏差は、使用される特定のコーティング材料組成物において霧化の間に発生するあらゆる不均一性及び/又は非適合性を十分に考慮することができる。そのような不均一性及び/又は非適合性の場合、フィラメント長さは、規則的又は不規則的な間隔で実質的な変動を受けている可能性がある:例えば、2つの異なるコーティング材料組成物について確定された平均フィラメント長さが同一であり得る一方、一つのケースではフィラメントのほぼ均一な分断があるかもしれず、他方のケースでは変動があるかもしれず、その場合には標準偏差の考慮によって追加的に取得され、これが、それぞれの標準偏差をデータベースに組み込むことが有利である理由である。
【0051】
ステップ(5A)は、第1コーティング材料組成物(i)とは異なる少なくとも1つのさらなるコーティング材料組成物、例えば少なくとも1つの第2コーティング材料組成物(ii)について、ステップ(1)から(3)及び(4A)を少なくとも1回の繰り返すことを想定している。
【0052】
ステップ(5A)による繰り返しは、好ましくは、それぞれの場合で異なる多数の対応するコーティング材料組成物について実施される。したがって、繰り返しは、少なくとも1回~x回行われ、ここで、xは2以上の正の整数である。本発明の方法は、電子データベースを編集及び/又は更新するための方法であるため、ここで使用されるコーティング材料組成物の数に上限はない:繰り返しのステップ(5A)の数が多いほど、及び/又は繰り返しのステップ(5A)内で使用されるコーティング材料組成物の数が多いほど、霧化中に発生するこれらの組成物の平均フィラメント長さに関してデータベースに組み込まれる情報の量が多くなり、もちろんこれは有利なことである。例えば、パラメータxは、2から1000000まで、又は5又は10又は50又は100から1000000までの範囲であってよい。
【0053】
電子データベースを編集及び/又は更新するための本発明の方法によって、この種の電子データベースは、好ましくは継続的に拡張及び更新される。このようにして、このデータベースは、多数の異なる霧化コーティング材料組成物の平均フィラメント長さについての情報を提供することができる。電子データベースは、好ましくはオンラインデータベースである。ステップ(4A)は、好ましくは、ソフトウェアのサポートによって実行される。
【0054】
電子データベースを編集及び/又は更新するための本発明の方法を実施するときに、ステップ(4A)内でデータベースに組み込むのは、好ましくは、確定された平均フィラメント長さだけでなく、その代わりに、ステップ(1)~(3)の実施のために選択された及び/又は要求されたすべての方法パラメータである。これらの方法パラメータに加えて、又は代替的に、本発明の方法で使用されるコーティング材料組成物に関連するすべての製品パラメータが、好ましくは同様にデータベースに組み込まれ、特に、それらの調製のための特定の調合及び/又はそれらの調製のために使用される成分、及びそれらの対応する量が組み込まれる。
【0055】
ステップ(5A)で使用される少なくとも1つのさらなるコーティング材料組成物、例えば少なくとも1つのコーティング材料組成物(ii)は、第1コーティング材料組成物(i)とは異なる。同様に、ステップ(5A)の繰り返しで使用されるすべてのさらなるコーティング材料組成物は、コーティング材料組成物(i)及び(ii)のそれぞれと異なるだけでなく、互いにも異なる。
【0056】
ステップ(5A)で使用される少なくとも1つのさらなるコーティング材料組成物、例えば少なくとも1つの第2コーティング材料組成物(ii)は、好ましくは、第1コーティング材料組成物(i)の顔料含有量と同一の顔料含有量を有するか、又は、コーティング材料組成物(i)中に存在する顔料の量に基づいて、コーティング材料組成物(i)の顔料含有量から最大で±10質量%、より好ましくは最大で±5質量%逸脱する顔料含有量を有し、かつさらに、コーティング材料組成物(i)と同一又は実質的に同一の1つ又は複数の顔料を含む。同じことが、好ましくは、ステップ(5A)を繰り返すときの使用されるさらなるコーティング材料組成物のそれぞれについても適用され:好ましくは、これらのさらなるコーティング材料組成物の各々は、第1コーティング材料組成物(i)の顔料含有量と同一の顔料含有量を有するか、又はコーティング材料組成物(i)中に存在する顔料の量に基づいて、コーティング材料組成物(i)の顔料含有量から最大で±10質量%、より好ましくは最大で±5質量%逸脱する顔料含有量を有し、かつさらに、コーティング材料組成物(i)と同一又は実質的同一の1つ又は複数の顔料を含む。第1コーティング材料組成物(i)に所定の効果顔料が使用されている場合、例えば、同一の顔料の場合、該同一の効果顔料はまた、ステップ(5A)を繰り返すときに使用されるさらなるコーティング材料組成物のそれぞれの1つの中にも効果顔料として存在し、その量は上記の範囲内で変化してもよい。
【0057】
電子データベースを編集するための本発明の方法は、ステップ(1)~(3)、(4A)及び(5A)の他に、好ましくは、少なくともさらなるステップ(3A)、(3B)及び(3C)、すなわち、
(3A)ステップ(1)で霧化した第1コーティング材料組成物(i)を基材に塗布し、基材上に配置される膜を形成し、この膜を焼成して基材上に配置されるコーティングを形成するステップ、
(3B)表面欠陥及び/又は光学的欠陥の発生又は非発生について、ステップ(3A)の後に得られたコーティングを分析及び評価するステップ、及び
(3C)ステップ(3B)の実施後に得られた結果を電子データベースに組み込むステップ、
を含む。
【0058】
ここで、この場合の本発明の方法のステップ(5A)は、第1コーティング材料組成物(i)とは異なる少なくとも1つのさらなるコーティング材料組成物、例えば少なくとも1つの第2コーティング材料組成物(ii)について、これらのステップ(3A)、(3B)、及び(3C)の繰り返しを含む。
【0059】
このようにして、本発明の方法により編集されたデータベースは、好ましくは、使用されたコーティング材料組成物、例えば使用されたコーティング材料組成物(i)、(ii)及びさらなるコーティング材料組成物のそれぞれについて決定された平均フィラメント長さだけでなく、さらに表面欠陥及び/又は光学的欠陥のあり得る発生についてこれらの組成物の各々から得られるコーティングの評価に関するデータをも含む。これは、組成物の霧化中に発生し決定された平均フィラメント長さと、コーティング中及び/又はコーティング上の表面欠陥及び/又は光学的欠陥の発生又は非発生の、データベース内における直接相関を可能にする。これらのデータは、したがって、データベースから呼び出すことができる。
【0060】
ステップ(3A)では、金属基材を使用することが好ましい。しかし、原則として、非金属基材、特にプラスチック基材も可能である。使用される基材は、コーティングされていてもよい。金属基材がコーティングされる場合には、サーフェイサー及び/又はプライマーサーフェイサー及び/又はベースコート材料が塗布される前に、金属基材は、好ましくは電着塗装によってさらにコーティングされる。プラスチック基材がコーティングされる場合には、サーフェイサー及び/又はプライマーサーフェイサー及び/又はベースコート材料が塗布される前に、プラスチック基材が好ましくは前処理される。このような前処理のために最も一般的に用いられる技術は、フレーミング、プラズマ処理、及びコロナ放電である。フレーミングが採用されるのが好ましい。使用されるコーティング材料組成物、例えば使用されるコーティング材料組成物(i)、(ii)及びさらなるコーティング材料組成物は、好ましくはベースコート材料、より具体的には水性ベースコート材料である。これに対応して、ステップ(3A)の後に得られるコーティングは、好ましくはベースコートである。この場合の基材は、ベースコート材料を塗布する前に、前述のコーティングのうちの少なくとも1つを任意に有することができる。ステップ(3A)における金属基材への1つ又は複数のベースコート材料の塗布は、自動車産業の環境で通例とされる膜厚で、例えば、5~100マイクロメートル、好ましくは5~60マイクロメートル、特に好ましくは5~30マイクロメートルの範囲で行われてよい。使用される基材は、好ましくは電着塗装(EC)、より好ましくは電着塗装材料の陰極蒸着によって塗布される電着塗装を有する。焼成は、好ましくは、公知の技術による乾燥に先立って行われる。例えば、好ましい(1成分)ベースコート材料は、室温(23℃)で1~60分間フラッシングオフされ、次いで、好ましくは30~90℃のわずかに上昇した温度で乾燥され得る。本発明の文脈におけるフラッシングオフ及び乾燥とは、有機溶媒及び/又は水を蒸発させ、塗料を乾燥させるがまだ硬化していない、又は完全に架橋されたコーティング膜をまだ形成していないことを指す。硬化、換言すると焼成は、好ましくは60~200℃の温度で熱的に達成される。プラスチック基材のコーティングは、基本的には金属基材のコーティングと同様である。しかし、ここで、硬化は一般的にはるかに低い温度の30~90℃で行われる。ステップ(3A)は、ステップ(1)で霧化された第1コーティング材料組成物(i)を基材に塗布した後、任意に、さらなるコーティング材料組成物の塗布及びその硬化を含んでもよい。特に、ステップ(1)で霧化された第1コーティング材料組成物(i)が好ましい水系ベースコート材料である場合、市販のクリアコート材料をその上に一般的な技術によって塗布することが可能であり、その場合、膜厚は再び、例えば5~100マイクロメートルのような一般的な範囲内にある。クリアコート材料が塗布された後、それは、例えば1~60分間、室温(23℃)でフラッシングオフされ、任意に乾燥されてよい。クリアコート材料は、次いで、塗布され霧化された第1コーティング材料組成物(i)と共に、硬化、すなわち焼成されるのが好ましい。焼成は、例えば架橋反応を伴い、基材上にマルチコート効果仕上げ、及び/又は色及び効果仕上げを生成する。
【0061】
ステップ(3B)では、ピンホール、ポップ、ラン及び/又は曇りの群から選択される表面欠陥及び/又は光学的欠陥の発生又は非発生を調査及び評価し、及び/又はコーティングの外観(視覚的態様)を調査及び評価するのが好ましい。コーティングは、好ましくは、水系ベースコートのようなベースコートである。ピンホールの発生は、以下に述べる決定方法に従って、ステップ(3A)によって0~40μmの膜厚範囲(乾燥膜厚)で基材へコーティングしたウェッジコーティングのピンホールを、0~20μm及び20超~40μmの範囲で別々に計数し;結果を200cmの面積で標準化し;合計して総数を求めることにより、調査及び評価される。好ましくは、ピンホール1つだけで欠陥とする。ポップの発生は、以下に述べる決定方法に従って、ポップの限界を、すなわち、ポップが発生するベースコートなどのコーティングの膜厚をDIN EN ISO 28199-3、セクション5(日付:2010年1月)によって決定することにより、調査及び評価される。好ましくは、ポップ1つだけで欠陥とする。曇りの発生は、BYK-Gardner GmbHのクラウドランナー装置を使用して、以下に述べる決定方法に従って、使用測定光源の反射角に関して15°、45°及び60°の角度で測定した曇りの指標としての「mottling15」、「mottling45」及び「mottling60」の3つの特性変数を決定し;対応する1つ又は複数の特性変数の値が高いほど、曇りがより顕著になることにより、調査及び評価される。外観は、以下に述べる決定方法に従って、ステップ(3A)によって0~40μmの膜厚範囲(乾燥膜厚)で基材へコーティングしたウェッジコーティングを、例えば10~15μm、15~20μm、及び20~25μmのような異なる領域をマークし、Byk-Gardner GmbH製のWave Scan装置を使用して、これらの膜厚領域で調査及び評価することでレベリングを評価することにより、調査及び評価される。この場合、レーザービームは調査する表面に60°の角度で向けられ、測定距離10cm隔てて短波領域(0.3~1.2mm)と長波領域(1.2~12mm)の反射光の変動が装置によって記録される(長波=LW、短波=SW、数値が低いほどレベリングが良い)。ランの発生は、以下に述べる決定方法に従って、DIN EN ISO 28199-3、セクション4(日付:2010年1月)に従ってランニングの傾向を決定することにより、調査及び評価される。欠陥は、好ましくは、目標膜厚の125%以下の膜厚からランが発生した場合に発生する。例えば、目標膜厚が12μmの場合、12μm+25%の膜厚、すなわち16μmでランが発生した場合、欠陥が発生する。ここでの膜厚は、DIN EN ISO 2808(日付:2007年5月)方法12Aに従って、ElektroPhysik製のMiniTest(登録商標)3100-4100装置を使用して決定される。すべての場合において、問題の厚さは、それぞれの場合の乾燥膜の厚さである。
【0062】
当業者は、例えば、Roempp Chemie Lexikon,Lacke und Druckfarben,1998年,第10版から、「ピンホール」、「ポップ」、「ラン」、及び「レベリング」の用語を知っている。曇りの概念も同様に当業者に知られているものである。塗装仕上げの曇りは、DIN EN ISO 4618(日付:2015年1月)に従って、表面上にランダムに分布する不規則な領域による仕上げの不均一な外観(色及び/又は光沢が異なる)を指すものと理解される。この種のまだら模様の不均一性は、仕上げによって伝えられる均一な全体印象を乱すものであり、一般的に望ましくない。曇りの決定方法は、以下に規定される。
【0063】
塗料配合を開発するときのコーティング材料組成物をスクリーニングのための本発明の方法
本発明のさらなる主題は、塗料配合を開発する際のコーティング材料組成物のスクリーニング方法である。
【0064】
塗料配合を開発するときのコーティング材料組成物をスクリーニングする方法のステップ(1)~(3)は、コーティング材料組成物の回転霧化において形成されるフィラメントの平均長さを決定する方法のステップ(1)~(3)と同一である。したがって、これらのステップに関して、上記の観察を参照する。
【0065】
塗料配合を開発するときのコーティング材料組成物をスクリーニングする本発明の方法は、少なくともステップ(1)~(3)、(4B)、(5B)、及び(6B)、さらに任意に(7B)、すなわち
コーティング材料組成物の回転霧化において形成されるフィラメントの平均長さを決定するための本発明の方法内で定義されている、コーティング材料組成物(X1)についてのステップ(1)、(2)及び(3)であって、したがって
(1)回転可能なベルカップを塗布要素として含む回転霧化装置によってコーティング材料組成物(X1)を霧化するステップ、
(2)少なくとも1つのカメラを用いて、ステップ(1)による霧化によってベルカップのエッジに形成されたフィラメントを光学的に取得するステップ、及び、
(3)霧化で形成されたベルカップのエッジに位置するフィラメントの平均長さを求めるため、ステップ(2)による光学的取得によって得られた光学データをデジタル評価するステップ、
(4B)コーティング材料組成物(X1)についてステップ(3)により決定された平均フィラメント長さを、電子データベースに保存された更なるコーティング材料組成物の平均フィラメント長さと比較するステップであって、前記データベースは、電子データベースを編集及び/又は更新するための本発明の前述の方法によって取得可能である、ステップ、
(5B)ステップ(4B)による比較に基づいて、コーティング材料組成物(X1)についてステップ(3)により決定された平均フィラメント長さが、コーティング材料組成物(X2)のデータベースに保存されている少なくとも1つの平均フィラメント長さよりも短いという条件に適合するか否かをチェックするステップであって、該コーティング材料組成物(X2)はコーティング材料組成物(X1)とは異なるが、コーティング材料組成物(X1)の顔料含有量と同一の顔料含有量を有するか、又はコーティング材料組成物(X1)中に存在する顔料の量に基づいて、コーティング材料組成物(X1)の顔料含有量から±10質量%を超えない範囲で逸脱する顔料含有量を有し、かつさらに、該コーティング材料組成物(X2)はコーティング材料組成物(X1)と同一の又は実質的に同一の1つ又は複数の顔料を含む、ステップ、
(6B)コーティング材料組成物(X1)について決定された平均フィラメント長さがステップ(5B)で規定された条件を満たす場合、基材への塗布のためにコーティング材料組成物(X1)を選択するか、
あるいは、
コーティング材料組成物(X1)について決定された平均フィラメント長さがステップ(5B)で規定された条件を満たさない場合、コーティング材料組成物(X1)の配合の少なくとも1つのパラメータ及び/又はコーティング材料組成物をスクリーニングする方法のステップ(1)から(3)を実施する際の少なくとも1つの方法パラメータを適合させるかの、ステップ、
(7B)ステップ(6B)によって少なくとも1つのパラメータの適合が要求された場合、ステップ(6B)の実施を少なくとも1回繰り返すことによって、ステップ(6B)によるステップ(5B)で述べられた条件が満たされて基材への塗布のために使用されるコーティング材料組成物が選択されるまで、ステップ(1)~(3)、(4B)、及び(5B)を少なくとも1回繰り返すステップ、
を含む。
【0066】
したがって、塗料配合を開発するときのコーティング材料組成物をスクリーニングするための本発明の方法は、コーティング材料組成物(X2)のような比較コーティング材料組成物の既知の平均フィラメント長さに基づいて、及び/又はそれと比較することで、霧化中に生じる平均フィラメント長さの減少という意味で、コーティング材料組成物(X1)などのコーティング材料組成物の適合を可能にする。
【0067】
効果顔料に関連して本発明の意味での「実質的に同一の顔料」という用語は、コーティング材料組成物(X1)に存在する1つ又は複数の効果顔料と、コーティング材料組成物(X2)に存在する1つ又は複数の効果顔料が、第1の条件(i)として、いずれの場合も総質量に基づいて、少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも85質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは少なくとも95質量%、より具体的には少なくとも97質量%の程度まで、ただしいずれの場合も質量比で100%未満であるが、同一の化学組成を有することを意味するものと理解される。(X1)及び(X2)に存在する効果顔料は、例えば、両方ともアルミニウム効果顔料であるが、異なるコーティング-例えば、一方の場合はクロム化であり、他方の場合はケイ酸塩被膜、又は一方の場合はコーティングされているが、他方の場合はコーティングされていない場合には、実質的に同一である。効果顔料に関連して本発明の意味での「実質的に同一の顔料」のさらなる追加の条件(ii)は、効果顔料が、それらの平均粒子径において、互いに最大±20%、好ましくは最大±15%、より好ましくは最大±10%異なることである。平均粒子径は、ISO13320(日付:2009)に従ってレーザー回折によって測定された平均粒子径(dN,50%;数ベースの中央値)の算術的数値平均値である。効果顔料自体の概念は、以下、さらに詳細に解明される。
【0068】
着色顔料に関連して本発明の意味での「実質的に同一の顔料」という用語は、コーティング材料組成物(X1)中に存在する1つ又は複数の着色顔料と、コーティング材料組成物(X2)中に存在する1つ又は複数の色顔料料が、第1の条件(i)として、その色度において、最大で±20%、好ましくは最大で±15%、より好ましくは最大で±10%、より具体的には最大で±5%異なることを意味するものと理解される。ここで、色度は、
【数1】
であり、DIN EN ISO 11664-4(日付:2012年6月)に従って決定される。着色顔料に関連して本発明の意味での「実質的に同一の顔料」のさらなる追加の条件(ii)は、着色顔料が、その平均粒子径が、最大で±20%、好ましくは最大で±15%、より好ましくは最大で±10%、互いに異なることである。平均粒子径は、ISO13320(日付:2009)に従ってレーザー回折によって測定された平均粒子径(dN,50%)の算術的数値平均値である。着色顔料自体の概念は、以下にさらに詳細に解明される。
【0069】
本発明の方法は、ステップ(6B)によって基材への塗布のためにコーティング材料組成物(X1)が選択された場合、好ましくは、少なくともステップ(6C)、(6D)、及び(6E)、すなわち
(6C)コーティング材料組成物(X1)を基材に塗布して基材上に膜を形成し、この膜を焼成して基材上にコーティングを形成するステップ、
(6D)表面欠陥及び/又は光学的欠陥の発生又は非発生に関して、ステップ(6C)の後に得られたコーティングを調査及び評価するステップ、及び
(6E)ステップ(6D)の実施後に得られた結果を電子データベース、好ましくは電子データベースを編集及び/又は更新するための本発明の方法によって得られたデータベースに組み込むステップ、
をさらに含む。
【0070】
ステップ(5B)のステップ(4B)による比較に基づく検証により、コーティング材料組成物(X1)中に存在する顔料の量に基づいて、コーティング材料組成物(X1)の顔料含有量と同一の又は±10質量%以下で異なる顔料含有量を有するコーティング材料組成物(X2)に関するデータがデータベースに保存されておらず、及び、該コーティング材料組成物(X2)がコーティング材料組成物(X1)と同一又は実質的に同一の1つ又は複数の顔料を含まないことが明らかになった場合、それにもかかわらず、ステップ(6B)による選択が行われるのが好ましい。前記ステップ(6C)、(6D)、及び(6E)のさらなる実施において、このようにして電子データベースを編集及び/又は更新するための本発明の方法によって得られ得るデータベースが、さらに更新されることが有利に可能である。
【0071】
コーティング材料組成物をスクリーニングするための本発明の方法は、塗料配合を開発するときにステップ(4B)及び/又は(5B)内で、電子データベースを編集及び/又は更新するための本発明の前記方法によって編集及び/又は更新されたデータベースにアクセスすることが好ましく、該データベースは、ステップ(1)~(3)、(4A)、及び(5A)だけでなく、少なくとも更なるステップ(3A)、(3B)、及び(3C)(ステップ(5A)はこれらのステップ(3A)、(3B)、及び(3C)の繰り返しを含む)を実施することにより、編集及び/又は更新される。換言すると、ステップ(4B)による比較及び/又はステップ(5B)による検証は、好ましくは、データベースを編集及び/又は更新するための本発明の方法で確定された使用コーティング材料組成物の平均フィラメント長さだけでなく、さらに、ステップ(3A)により、これらのコーティング材料組成物から生成されたコーティングの表面欠陥及び/又は光学的欠陥の発生又は非発生に関連する調査及び評価の結果を含む電子データベースに基づいて実施される。
【0072】
好ましく編集及び/又は更新されたこのようなデータベースに基づいて、ステップ(4B)による比較に基づくステップ(5B)による検証が、該データベースが、コーティング材料組成物(X1)の顔料含有量と同一の顔料含有量を有するか、又はコーティング材料組成物(X1)中に存在する顔料の量に基づいて、コーティング材料組成物(X1)の顔料含有量から±10質量%を超えない範囲で逸脱する顔料含有量を有するコーティング材料組成物(X2)に関する保存データを含み、かつ、コーティング材料組成物(X2)がコーティング材料組成物(X1)と同一の又は実質的に同一の1つ又は複数の顔料を含み、かつ、その霧化がすでにコーティング材料組成物(X1)の確定された平均フィラメント長さより低い確定された平均フィラメント長さを生じるということを明らかにしたときは、ステップ(6B)に従って、上記で実施したように、少なくとも1つのパラメータの適合が行われる。
【0073】
ステップ(6B)によるコーティング材料組成物(X1)の配合の少なくとも1つのパラメータの適合は、好ましくは、以下のパラメータの適合の群から選択される少なくとも1つの適合を含む:
(i)コーティング材料組成物(X1)中にバインダー成分(a)として存在する少なくとも1つのポリマーの量を上昇又は低下させること、
(ii)コーティング材料組成物(X1)中にバインダー成分(a)として存在する少なくとも1つのポリマーを、それとは異なる少なくとも1つのポリマーで少なくとも部分的に置換すること、
(iii)コーティング材料組成物(X1)中に成分(b)として存在する少なくとも1つの顔料及び/又はフィラーの量を上昇又は低下させることであって、これは、そこに存在する顔料については上記の範囲内でのみ可能である、
(iv)コーティング材料組成物(X1)中に成分(b)として存在する少なくとも1つのフィラーを、それとは異なる少なくとも1つのフィラーで少なくとも部分的に置換すること、
(v)コーティング材料組成物(X1)中に成分(c)として存在する少なくとも1つの有機溶媒の量、及び/又はそこに存在する水の量を上昇又は低下させること、
(vi)コーティング材料組成物(X1)中に成分(c)として存在する少なくとも1つの有機溶媒を、それとは異なる少なくとも1つの有機溶媒で少なくとも部分的に置換すること、
(vii)コーティング材料組成物(X1)中に成分(d)として存在する少なくとも1つの添加剤の量を上昇又は低下させること、
(viii)コーティング材料組成物(X1)中に成分(d)として存在する少なくとも1つの添加剤を、それとは異なる少なくとも1つの添加剤で少なくとも部分的に置換すること、及び/又はそれとは異なる少なくとも1つのさらなる添加剤を添加すること、
(ix)コーティング材料組成物(X1)を調製するための使用成分の順序を変更すること、及び/又は
(x)コーティング材料組成物(X1)を調製するときの混合のエネルギー入力を上昇又は低下させること。
【0074】
パラメータ(v)により、特にコーティング材料組成物(X1)のスプレー粘度を上昇又は低下させることが可能である。パラメータ(vii)及び/又は(viii)は、特に、添加剤としての増粘剤の置換及び/又は添加、又は(X1)中のそれらの量の変更を含む。そのような増粘剤は、成分(d)の文脈で以下にさらに詳細に説明される。パラメータ(i)及び/又は(ii)は、特に、バインダーの置換及び/又は添加、又は(X1)中のそれらの量の変更を含む。バインダーの概念については、以下でより詳細に説明される。それは架橋剤(架橋エージェント)も包含する。したがって、パラメータ(i)及び/又は(ii)は、架橋剤と、該架橋剤と架橋反応を起こすバインダー成分との相対的な質量比の変化をも包含する。パラメータ(i)~(iv)は、特に、バインダー及び/又は顔料の置換及び/又は添加、又は(X1)におけるそれらの量の変化を含む。したがって、これらのパラメータ(i)~(iv)は、(X1)内の顔料/バインダー比の変化も暗黙的に包含する。
【0075】
平均フィラメント長さを決定するための本発明の方法、及び電子データベースを編集及び/又は更新するための本発明の方法に関連して上述した全ての好ましい実施形態は、塗料配合を開発するときのコーティング材料組成物をスクリーニングするための方法に関する好ましい実施形態でもある。
【0076】
本発明の方法のステップ(1)で好ましく採用されるのは、好ましくはベースコート材料、より好ましくはコーティング材料組成物としての水系ベースコート材料、より具体的には、効果顔料などの少なくとも1つの顔料を含む水系ベースコート材料である。塗料配合を開発するときのコーティング材料組成物をスクリーニングする本発明の方法は、したがって、特に効果顔料などの少なくとも1つの顔料を含む水系ベースコート材料のスクリーニングに関するものであり、そのため、効果顔料などのそこに含まれる少なくとも1つの顔料の種類の影響、ベースコート材料の総質量に基づくその量、及び/又は、ベースコート材料中の顔料/バインダー比を考慮して実施される。
【0077】
本発明の方法により、特に確定された平均フィラメント長さに基づいて、回転霧化によって生成されるコーティングの所定の所望の特性の調査、より具体的には改善、特に光学的欠陥及び/又は表面欠陥の形成及び/又は発生の傾向の防止又は少なくとも減少に関する改善を実現することが可能である。これは、具体的には、ピンホールの減少又はピンホールに対する堅牢性の増加、レベリングの改善、及び曇りの減少/防止を含む。
【0078】
本発明の方法は、少なくともステップ(1)~(3)、(4B)、(5B)、(6B)、及び任意に(7B)を含むが、任意にさらなるステップをも含んでよい。ステップ(1)~(3)、(4B)、(5B)、及び(6B)は、好ましくは番号順に実施される。しかし、好ましくは、本方法は、採用されるコーティング材料組成物(X1)の硬化及び/又は焼成を想定したステップを含まない。
【0079】
本発明の方法で使用されるコーティング材料組成物
以下の実施形態は、平均フィラメント長さを決定する本発明の方法だけでなく、電子データベースを編集する本発明の方法、及び塗料配合を開発するときのコーティング材料組成物をスクリーニングする本発明の方法にも関連する。以下に記載される実施形態は、特に前述の使用されるコーティング材料組成物(X1)、(X2)、(i)、及び(ii)に関する。
【0080】
本発明により使用されるコーティング材料組成物は、好ましくは、
・成分(a)として、バインダーとして採用可能な少なくとも1つのポリマー、
・成分(b)として少なくとも1つの顔料及び/又は少なくとも1つのフィラー、及び、
・成分(c)として水及び/又は少なくとも1つの有機溶媒、
を含む。
【0081】
本発明の意味での「含む」又は「包含する」という用語は、特に本発明により使用されるコーティング材料組成物に関して、好ましくは「からなる」という意味を有する。本発明により使用されるコーティング材料組成物に関して、例えば、成分(a)、(b)及び(c)のみならず、以下に特定される1つ以上の他の任意の成分を含んでもよい。これらの全ての成分は、それぞれ、以下に述べるような好ましい実施形態において存在してもよい。
【0082】
本発明により使用されるコーティング材料組成物は、好ましくは、自動車産業で採用可能なコーティング材料組成物である。ここでは、OEM塗装システムの一部として採用され得るコーティング材料組成物、及び補修システムの一部として採用され得るコーティング材料組成物を使用することが可能である。自動車産業で採用可能なコーティング材料組成物の例としては、電着塗装材料、プライマー、サーフェイサー、ベースコート材料、特に水性ベースコート材料(waterborne basecoat)(水系ベースコート材料(aqueous basecoat material))、クリアコート材料、特に溶媒系クリアコート材料を含むトップコート材料が挙げられる。水性ベースコート材料の使用が特に好ましい。
【0083】
ベースコート材料の概念は当業者に知られており、例えば、Roempp Lexikon,Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag出版,1998年,第10版,57頁に定義されている。したがって、ベースコート材料は、自動車の仕上げ及び一般産業のコーティングで使用される、色及び/又は色と光学効果を付与する中間コーティング材料である。それは、一般に、サーフェイサー又はプライマーで前処理された金属若しくはプラスチックの基材に、又は場合によっては直接プラスチック基材に塗布される。他の可能な基材は、既存の仕上げを含み、可能性としてさらに前処理(例えば、サンディングによって)を必要とする。現在では、複数のベースコートを塗布するのがまったく通例になっている。したがって、このような場合、第1ベースコートは、第2ベースコートの基材となる。ベースコートを、特に環境の影響から保護するために、少なくとも1つの追加のクリアコートがその上に塗布される。水性ベースコート材料は、水性ベースコート材料内の水と有機溶媒の総質量(質量%)に基づいて、水の割合が有機溶媒の割合よりも大きい水系ベースコート材料である。
【0084】
本発明により使用されるコーティング材料組成物中に存在する全成分、例えば成分(a)、(b)、及び(c)、並びに任意で以下に特定されるさらなる任意成分のうちの1つ又は複数は、コーティング材料組成物の総質量に基づいて100質量%に合計される。
【0085】
本発明により使用されるコーティング材料組成物の固形分は、好ましくは、コーティング材料組成物の全質量に基づいて、それぞれ10~45質量%、より好ましくは11~42.5質量%、非常に好ましくは12~40質量%、より具体的には13~37.5質量%の範囲である。固形分、すなわち不揮発留分は、後述する方法により決定される。
【0086】
成分(a)
「バインダー」という用語は、本発明の意味で、及びDIN EN ISO 4618(ドイツ語版、日付:2007年3月)に一致して、好ましくは、本発明により採用されるコーティング材料組成物などの組成物の、含有する顔料及び/又はフィラーは除く不揮発性留分(膜の形成に関与する留分)を指す。不揮発性留分は、後述する方法により決定することができる。したがって、バインダー成分とは、本発明により使用されるコーティング材料組成物などの組成物のバインダー含有量に寄与する任意の成分である。一例は、例えば後述するSCSポリマー;メラミン樹脂などの架橋剤;及び/又はポリマー添加剤など、成分(a)としてバインダーとして採用可能な少なくとも1つのポリマーを含む水系ベースコート材料などのベースコート材料である。
【0087】
成分(a)として使用するために特に好ましいのは、いわゆるシード-コア-シェルポリマー(SCSポリマー)である。このようなポリマー、及びそのようなポリマーを含む水系分散体は、例えばWO2016/116299A1から知られている。該ポリマーは、好ましくは(メタ)アクリルコポリマーである。該ポリマーは、好ましくは水系分散体の形で使用される。成分(A)として使用するのに特に好ましいのは、水中のオレフィン性不飽和モノマーの、好ましくは互いに異なる3つのモノマー混合物(A)、(B)、及び(C)の、逐次ラジカル乳化重合によって調製可能な100~500nmの範囲の平均粒子径を有するポリマーであって、ここで、
混合物(A)は、25℃で0.5g/l未満の水溶解度を有するモノマーの少なくとも50質量%を含み、混合物(A)から調製されるポリマーは、10~65℃のガラス転移温度を有し、混合物(B)は、少なくとも1つの多価不飽和モノマーを含み、混合物(B)から調製されるポリマーは、-35~15℃のガラス転移温度を有し、及び、混合物(C)から調製されるポリマーは、-50~15℃のガラス転移温度を有し、
そこでは、
i.まず、混合物(A)が重合され、
ii.次いで、i.の下で調製されたポリマーの存在下で混合物(B)が重合され、
iii.その後、ii.の下で調製されたポリマーの存在下で混合物(C)が重合される。
【0088】
ポリマーの調製は、それぞれの場合に水中における、オレフィン性不飽和モノマーの3つの混合物(A)、(B)、及び(C)の逐次ラジカル乳化重合を含む。したがって、それは多段ラジカル乳化重合であり、そこでは、i.最初に混合物(A)が重合され、次にii.混合物(B)がi.の下で調製されたポリマーの存在下で重合され、さらに、iii.混合物(C)がii.の下で調製されたポリマーの存在下で重合される。したがって、3つのモノマー混合物はすべて、それぞれの場合に別々に行われるラジカル乳化重合(すなわち、段階又は重合段階)によって重合され、これらの段階は連続して行われる。時間的には、該段階は、互いに続いて直後に行われてよい。一つの段階の終了後、その後に次の段階が実施されるためだけに、問題の反応溶液を一定期間保存し、及び/又は別の反応容器に移すことも同様に可能である。好ましくは、ポリマーの調製は、モノマー混合物(A)、(B)及び(C)の重合以外の重合ステップを含まない。
【0089】
混合物(A)、(B)、及び(C)は、オレフィン性不飽和モノマーの混合物である。適切なオレフィン性不飽和モノマーは、モノ又はポリオレフィン性不飽和であってよい。適切なモノオレフィン性不飽和モノマーの例としては、特に、(メタ)アクリレート系モノオレフィン性不飽和モノマー、アリル基を含むモノオレフィン性不飽和モノマー、及びビニル基を含む他のモノオレフィン性不飽和モノマー、例えばビニル芳香族モノマーなどが挙げられる。本発明の目的のための(メタ)アクリル又は(メタ)アクリレートという用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を包含する。任意の割合で使用するために好ましいのは、必ずしも排他的ではないが、(メタ)アクリレートをベースとするモノオレフィン性不飽和モノマーである。
【0090】
混合物(A)は、25℃で0.5g/l未満の水溶解度を有するオレフィン性不飽和モノマーの少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも55質量%を含む。このような好ましいモノマーの1つは、スチレンである。これらのモノマーの水の溶解度は、後述する方法により決定される。好ましくは、モノマー混合物(A)は、ヒドロキシ官能性モノマーを含まない。同様に好ましくは、モノマー混合物(A)は、酸官能性モノマーを含まない。非常に好ましくは、モノマー混合物(A)は、ヘテロ原子を含む官能基を有するモノマーを全く含まない。これは、ヘテロ原子が存在する場合は、架橋基の形でのみ存在することを意味する。これは、例えば、ラジカルRとしてアルキルラジカルを有する上述の(メタ)アクリレート系モノオレフィン性不飽和モノマーの場合に該当する。モノマー混合物(A)は、好ましくは、モノオレフィン性不飽和モノマーのみを含む。モノマー混合物(A)は、好ましくは、アルキルラジカルを有する(メタ)アクリル酸の少なくとも1つの一価不飽和エステルと、ビニル基を含有し、ビニル基上に配置された芳香族又は飽和脂肪族-芳香族混合物であるラジカルを有する少なくとも1つのモノオレフィン性不飽和モノマーを含み、この場合、ラジカルの脂肪族画分はアルキル基である。混合物(A)中に存在するモノマーは、それらから調製されたポリマーが10~65℃、好ましくは30~50℃のガラス転移温度を有するように選択される。ここでのガラス転移温度は、後述する方法によって決定することができる。モノマー混合物(A)の乳化重合により段階i.で調製されるポリマーは、シードとも呼ばれる。このシードは、好ましくは20~125nmの平均粒子径を有する(後述する動的光散乱法により測定;決定方法と比較)。
【0091】
混合物(B)は、少なくとも1つのポリオレフィン性不飽和モノマー、好ましくは少なくとも1つのジオレフィン性不飽和モノマーを含む。対応する好ましいモノマーは、ヘキサンジオールジアクリレートである。モノマー混合物(B)は、好ましくは、ヒドロキシ官能性モノマーを含まない。同様に好ましくは、モノマー混合物(B)は、酸官能性モノマーを含まない。非常に好ましくは、モノマー混合物(B)は、ヘテロ原子を含む官能基を有するモノマーを全く含まない。これは、ヘテロ原子が存在する場合には、架橋基の形でのみ存在することを意味する。これは、例えば、ラジカルRとしてアルキルラジカルを有する上述の(メタ)アクリレート系モノオレフィン性不飽和モノマーの場合に該当する。少なくとも1つのポリオレフィン性不飽和モノマーに加えて、モノマー混合物(B)は、好ましくは、任意の割合で以下のモノマーを含む:第1に、アルキルラジカルを有する(メタ)アクリル酸の少なくとも1つのモノ不飽和エステル、及び第2に、ビニル基を含有し、ビニル基上に配置された、芳香族又は飽和脂肪族-芳香族混合物であるラジカルを有する少なくとも1つのモノオレフィン性不飽和モノマーを含み、この場合、ラジカルの脂肪族画分はアルキル基である。多価不飽和モノマーの割合は、モノマー混合物(B)中のモノマーの総モル量に基づいて、好ましくは0.05~3モル%である。混合物(B)中に存在するモノマーは、そこから調製されたポリマーが-35℃から15℃、好ましくは-25℃から+7℃のガラス転移温度を有するように選択される。ここでガラス転移温度は、後述する方法によって決定することができる。段階ii.でシードの存在下で、モノマー混合物(B)の乳化重合によって調製されるポリマーは、コアとも呼ばれる。したがって、段階ii.の後、得られるポリマーは、シードとコアを含む。段階ii.の後に得られるポリマーは、好ましくは80~280nm、好ましくは120~250nmの平均粒子径を有する(後述する動的光散乱法により測定;決定方法と比較)。
【0092】
混合物(C)中に存在するモノマーは、そこから調製されるポリマーが-50~15℃、好ましくは-20~+12℃のガラス転移温度を有するように選択される。このガラス転移温度は、後述する方法で決定することができる。混合物(C)のオレフィン性不飽和モノマーは、好ましくは、得られるポリマーがシード、コア、及びシェルを含み、10~25の酸価を有するように選択される。したがって、混合物(C)は、好ましくは、少なくとも1つのα-β不飽和カルボン酸、特に好ましくは(メタ)アクリル酸を含む。混合物(C)中のオレフィン性不飽和モノマーは、好ましくは、得られるポリマーがシード、コア、及びシェルを含み、0~30、好ましくは10~25のOH数を有するように、追加的に又は代替的に選択される。前述の酸価及びOH数はすべて、採用されるモノマー混合物の全体に基づいて計算される値である。モノマー混合物(C)は、好ましくは、少なくとも1つのα-β不飽和カルボン酸と、ヒドロキシル基で置換されたアルキルラジカルを有する(メタ)アクリル酸の少なくとも1つの一価不飽和エステルとを含む。特に好ましくは、モノマー混合物(C)は、少なくとも1つのα-β不飽和カルボン酸と、ヒドロキシル基で置換されたアルキルラジカルを有する(メタ)アクリル酸の少なくとも1つの一価不飽和エステルと、アルキルラジカルを有する(メタ)アクリル酸の少なくとも1つの一価不飽和エステルとを含む。本発明がさらに特定せずにアルキルラジカルを参照する場合、参照は常に官能基及びヘテロ原子を含まない純粋なアルキルラジカルを指す。シード及びコアの存在下でモノマー混合物(C)の乳化重合によって段階iii.で調製されるポリマーは、シェルとも呼ばれる。したがって、段階iii.の後の結果物は、シード、コア、及びシェルを含むポリマー、つまりポリマー(b)である。調製後、ポリマー(b)は、100~500nm、好ましくは125~400nm、非常に好ましくは130~300nmの平均粒子径を有する(後述する動的光散乱法により測定;決定方法と比較)。
【0093】
本発明により使用されるコーティング材料組成物は、好ましくは、少なくとも1つのSCSポリマーなどの成分(a)の画分を、いずれの場合にもコーティング材料組成物の総質量に基づいて、1.0~20質量%、より好ましくは1.5~19質量%、非常に好ましくは2.0~18.0質量%、より具体的には、2.5~17.5質量%、最も好ましくは3.0~15.0質量%の範囲で含む。コーティング材料組成物内の成分(a)の画分の決定及び特定は、成分(a)を含む水系分散体の固形分(不揮発性留分、固形分、又は固形画分とも呼ばれる)の決定を介して行うことができる。
【0094】
成分(a)としての少なくとも1つの前述のSCSポリマーに追加して又は代替して、好ましくは追加して、本発明により使用されるコーティング材料組成物は、成分(a)のバインダーとして、SCSポリマーとは異なる少なくとも1つのポリマー、より具体的には、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリ(メタ)-アクリレート及び/又は前記ポリマーのコポリマー、より具体的には、ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレート及び/又はポリウレアからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含んでよい。
【0095】
好ましいポリウレタンは、例えば、ドイツ特許出願DE19948004A1の4頁、19行目から11頁、29行目(ポリウレタンプレポリマーB1)、欧州特許出願EP0228003A1の3頁、24行目から5頁、40行目、欧州特許出願EP0634431A1の3頁、38行目から8頁、9行目、及び国際特許出願WO92/15405の2頁、35行目から10頁、32行目に記載されている。
【0096】
好ましいポリエステルは、例えば、DE4009858A1のコラム6、53行目からコラム7、61行目及びコラム10、24行目からコラム13、3行目、又はWO2014/033135A2の2頁、24行目から7頁、10行目、さらに28頁、13行目から29頁、13行目に記載されている。
【0097】
好ましいポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー((メタ)アクリレートポリウレタン)及びそれらの調製は、例えばWO91/15528A1の3頁、21行目から20頁、33行目まで、及びDE4437535A1の2頁、27行目から6頁、22行目に記載されている。
【0098】
好ましいポリウレタン-ポリウレアコポリマーは、好ましくは、40~2000nmの平均粒子径を有するポリウレタン-ポリウレア粒子であり、ここで、ポリウレタン-ポリウレア粒子は、それぞれの場合、反応した形態で、イソシアネート基を含み、アニオン性基及び/又はアニオン性基に変換可能な基を含む少なくとも1つのポリウレタンプレポリマー、ならびに2つの第1級アミノ基及び1つ又は2つの第2級アミノ基を含む少なくとも1つのポリアミンを含む。このようなコポリマーは、好ましくは水系分散体の形態で使用される。これらの種類のポリマーは、原則的に従来の、例えばポリイソシアネートとポリオール及びポリアミンとの重付加によって調製可能である。このようなポリウレタン-ポリウレア粒子の平均粒子径は、以下に述べるように決定される(後述する動的光散乱法により測定;決定方法と比較)。
【0099】
SCSポリマーとは異なるこのようなポリマーのコーティング材料組成物の画分は、好ましくはSCSポリマーの画分よりも小さい。記載されているポリマーは、好ましくはヒドロキシ官能性であり、特に好ましくは15~200mgKOH/g、より好ましくは20~150mgKOH/gの範囲のOH数を有する。
【0100】
特に好ましくは、本発明により使用されるコーティング材料組成物は、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマーを含み;さらに好ましくは、それらは、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー、及びまた少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリエステル、また任意に、好ましくはヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリウレアコポリマーを含む。
【0101】
成分(a)のバインダーとしての、SCSポリマーに加えてのさらなるポリマーの画分は、大きく変化してもよく、それぞれの場合にコーティング材料組成物の総質量に基づいて、好ましくは1.0~25.0質量%、より好ましくは3.0~20.0質量%、非常に好ましくは5.0~15.0質量%の範囲である。
【0102】
コーティング材料組成物は、さらに、少なくとも1つの従来の典型的な架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を含む場合、当該種は、好ましくは少なくとも1つのアミノ樹脂及び/又は少なくとも1つのブロック又は遊離ポリイソシアネートであり、好ましくはアミノ樹脂である。アミノ樹脂の中でも、特にメラミン樹脂が好ましい。コーティング材料組成物が架橋剤を含む場合、これらの架橋剤、より具体的にはアミノ樹脂及び/又はブロック又は遊離ポリイソシアネート、より好ましくはアミノ樹脂、さらに好ましくはメラミン樹脂の画分は、それぞれの場合でコーティング材料組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.5~20.0質量%、より好ましくは1.0~15.0質量%、非常に好ましくは1.5~10.0質量%の範囲である。架橋剤の画分は、好ましくは、コーティング材料組成物中のSCSポリマーの画分よりも小さい。
【0103】
成分(b)
当業者は、「顔料」及び「フィラー」という用語に精通している。
【0104】
「フィラー」という用語は、例えば、DIN55943(日付:2001年10月)から当業者に知られている。本発明の意味での「フィラー」は、好ましくは、本発明により使用されるコーティング材料組成物、例えば水性ベースコート材料などに実質的に、好ましくは完全に不溶性であり、特に体積を増加させる目的で使用される成分である。本発明の意味での「フィラー」は、好ましくは、屈折率で「顔料」とは異なるものであり、フィラーの屈折率は1.7未満である。当業者に知られている任意の慣用のフィラーを成分(b)として使用することができる。適切なフィラーの例としては、カオリン、ドロマイト、カルサイト、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、グラファイト、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩、特にヘクトライト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク及び/又はマイカなどの対応するフィロケイ酸塩、シリカ、特にフュームドシリカ、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムなどの水酸化物、又は繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維又はポリマー粉末などの有機フィラーが挙げられる。
【0105】
「顔料」という用語は、例えば、DIN 55943(日付:2001年10月)から、当業者に同様に知られている。本発明の意味での「顔料」は、好ましくは、本発明により使用される例えば水性ベースコート材料などのコーティング材料組成物に実質的に、好ましくは完全に不溶性である粉末又は板状の成分を指す。これらの「顔料」は、好ましくは、着色剤、及び/又はそれらの磁気的、電気的、及び/又は電磁的特性により顔料として使用することができる物質である。顔料は、好ましくは屈折率において「フィラー」と異なり、顔料についての屈折率は1.7以上である。
【0106】
「顔料」という用語は、好ましくは、着色顔料及び効果顔料を包含する。
【0107】
当業者は、着色顔料の概念に精通している。本発明の目的のためには、「色付与顔料(color-imparting pigment)」及び「着色顔料(color pigment)」という用語は交換可能である。顔料の対応する定義及びそのさらなる仕様は、DIN 55943(日付:2001年10月)に記載されている。使用される着色顔料は、有機顔料及び/又は無機顔料を含むことができる。特に好ましく使用される色顔料は、白色顔料、有彩顔料及び/又は黒色顔料である。白色顔料の例は、二酸化チタン、亜鉛ホワイト、硫化亜鉛、及びリトポンである。黒色顔料の例は、カーボンブラック、鉄マンガンブラック、スピネルブラックである。有彩顔料の例は、酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン、ウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルトバイオレット及びマンガンバイオレット、赤色酸化鉄、カドミウムスルホセレニド、モリブデートレッド及びウルトラマリンレッド、褐色酸化鉄、混合褐色、スピネル相及びコランダム相、及びクロムオレンジ、黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエロー及びビスマスバナデートである。
【0108】
当業者は、効果顔料の概念に精通している。対応する定義は、例えば、Roempp Lexikon,Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag出版,1998年,第10版,176頁及び471頁に記載されている。顔料の一般的定義とさらなる仕様はDIN 55943(日付:2001年10月)で扱われている。効果顔料は、好ましくは、光学効果又は色及び光学効果、特に光学効果を付与する顔料である。したがって、「光学効果付与顔料及び色付与顔料(optical effect-imparting and color-imparting pigment)」、「光学効果顔料(optical effect pigment)」及び「効果顔料(effect pigment)」という用語は、好ましくは交換可能である。好ましい効果顔料は、例えば、層状アルミニウム顔料、ゴールドブロンズ、酸化ブロンズ及び/又は酸化鉄アルミニウム顔料などの板状の金属効果顔料、パールエッセンスなどの真珠光沢顔料、塩基性鉛カーボネート、ビスマスオキシクロリド及び/又は金属酸化物マイカ顔料、及び/又は層状グラファイト、層状酸化鉄、PVD膜からの多層効果顔料及び/又は液晶ポリマー顔料などの他の効果顔料である。特に好ましいのは、層状の効果顔料、特に層状アルミニウム顔料及び金属酸化物マイカ顔料である。
【0109】
本発明により使用される水性ベースコート材料などのコーティング材料組成物は、例えば、成分(b)として少なくとも1つの効果顔料を含むのが特に好ましい。
【0110】
本発明により使用されるコーティング材料組成物は、好ましくは、成分(b)としての効果顔料の画分を、いずれの場合もコーティング材料組成物の総質量に基づいて、1~20質量%、より好ましくは1.5~18質量%、非常に好ましくは2~16質量%、より具体的には2.5~15質量%、最も好ましくは3~12質量%、又は3~10質量%の範囲で含む。コーティング材料組成物中のすべての顔料及び/又はフィラーの総画分は、いずれの場合もコーティング材料組成物の総質量に基づいて、好ましくは、0.5~40.0質量%、より好ましくは2.0~20.0質量%、非常に好ましくは3.0~15.0質量%の範囲内である。
【0111】
コーティング材料組成物中の、少なくとも1つの効果顔料などの成分(b)と少なくとも1つのSCSポリマーなどの成分(a)の相対的な質量比は、好ましくは4:1から1:4の範囲内、より好ましくは2:1から1:4の範囲内、非常に好ましくは2:1から1:3の範囲内、より具体的には1:1から1:3又は1:1から1:2.5の範囲内である。
【0112】
成分(C)
本発明により使用されるコーティング材料組成物は、好ましくは水系である。それは、いずれの場合にもコーティング材料組成物の総質量に基づいて、その溶媒として(すなわち、成分(c)として)主に水、好ましくは少なくとも20質量%の量の水、及びより小さい画分の有機溶媒、好ましくは20質量%未満の量の有機溶媒を含む系である。
【0113】
本発明により使用されるコーティング材料組成物は、いずれの場合もコーティング材料組成物の総質量に基づいて、好ましくは、少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも25質量%、非常に好ましくは少なくとも30質量%、より具体的には、少なくとも35質量%の水の画分を含む。
【0114】
本発明により使用されるコーティング材料組成物は、いずれの場合もコーティング材料組成物の総質量に基づいて、好ましくは、20質量%~65質量%の範囲内、より好ましくは25質量%~60質量%の範囲内、非常に好ましくは30質量%~55質量%の範囲内の水の画分を含む。
【0115】
本発明により使用されるコーティング材料組成物は、いずれの場合もコーティング材料組成物の総質量に基づいて、好ましくは、20質量%未満の範囲内、より好ましくは0~20質量%未満の範囲内、非常に好ましくは0.5~20質量%未満の範囲内、又は0.5~15質量%の範囲内にある有機溶媒の画分を含む。
【0116】
このような有機溶媒の例として、ヘテロ環状、脂肪族又は芳香族炭化水素、一価又は多価アルコール、特にメタノール及び/又はエタノール、エーテル、エステル、ケトン、及びアミド、例えば、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、ブタノール、エチルグリコール及びブチルグリコール及びこれらのアセテート、ブチルジグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソホロン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0117】
さらなる任意成分
本発明により使用されるコーティング材料組成物は、任意に、成分(d)として少なくとも1つの増粘剤(thickener)(増粘エージェント(thickening agent)とも称する)をさらに含んでもよい。そのような増粘剤の例は、無機増粘剤、例えば、フィロシリケートなどの金属シリケート、及び有機増粘剤、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸増粘剤及び/又は(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤、ポリウレタン増粘剤、及びまたポリマーワックスである。金属シリケートは、好ましくはスメクタイトの群から選択される。スメクタイトは、特に好ましくは、モンモリロナイト及びヘクトライトの群から選択される。モンモリロナイト及びヘクトライトは、より具体的には、アルミニウムマグネシウムシリケート、及びナトリウムマグネシウムフィロシリケート及びナトリウムマグネシウムフッ素リチウムフィロシリケートからなる群から選択される。これらの無機フィロシリケートは、例えば、Laponite(登録商標)の商品名で販売されている。ポリ(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤に基づく増粘剤は、任意に、適切な塩基で架橋及び/又は中和される。そのような増粘剤の例は、「アルカリ膨潤性乳化」(ASE)、及びその疎水的に修飾された変形、「親水性修飾アルカリ膨潤性乳化」(HASE)である。これらの増粘剤は、好ましくはアニオン性である。Rheovis(登録商標)AS1130などの対応する製品が市販されている。ポリウレタンに基づく増粘剤(例えば、ポリウレタン会合性増粘剤)は、任意に、適切な塩基で架橋及び/又は中和される。Rheovis(登録商標)PU1250などの対応する製品が市販されている。適したポリマーワックスの例として、エチレン-酢酸ビニルコポリマーに基づく任意で修飾されたポリマーワックスが含まれる。対応する製品は、例えばAquatix(登録商標)8421の名称で市販されている。
【0118】
所望の用途に応じて、本発明により使用されるコーティング材料組成物は、さらなる成分又は成分(d)として、1つ以上の一般的に採用される添加剤を含んでよい。例として、コーティング材料組成物は、反応性希釈剤、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、ラジカル重合開始剤、接着促進剤、流動制御剤、膜形成助剤、垂れ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食防止剤、乾燥剤、殺生物剤、及び平坦化剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでよい。添加剤は、既知の慣例的な割合で使用してよい。
【0119】
本発明により使用されるコーティング材料組成物は、慣例的かつ既知の混合方法及び混合ユニットを使用して製成することができる。
【0120】
決定方法
1.不揮発性留分の決定
不揮発性留分(固形分)は、DIN EN ISO 3251(日付:2008年6月)に従って決定される。試料1gを予め乾燥させたアルミ皿に秤量し、試料が入った皿を乾燥キャビネットで125℃で60分間乾燥させ、デシケーターで冷却してから、再び秤量する。使用した試料の総量に対する残渣が、不揮発性留分に相当する。不揮発性留分の体積は、必要に応じて、任意にDIN 53219(日付:2009年8月)に従って決定することができる。
【0121】
2.数平均分子量の決定
数平均分子量(Mn)は、特に明記されていない限り、E.Schroder、G.Muller、K.-F.Arndtによる、「Leitfaden der Polymercharakterisierung」[Principles of polymer characterization]、Akademie-Verlag出版、Berlin、47~54頁、1982年に従って、モデル10.00の蒸気圧浸透圧計(Knauer製)を使用して、使用する装置の実験較正定数を決定するために較正物質としてベンゾフェノンを用いて、50℃でトルエン中の濃度系列に対し決定する。
【0122】
3.OH数と酸価の決定
OH数と酸価はそれぞれ計算により決定される。
【0123】
4.SCSポリマーとポリウレア粒子の平均粒子径の決定
平均粒子径は、DIN ISO 13321(日付:2004年10月)に基づく方法で、動的光散乱(光子相関分光法)(PCS)により決定される。測定は、Malvern Nano S90(Malvern Instruments製)を使用して、25±1℃で行われる。該装置は3~3000nmサイズ範囲をカバーし、633nmにおける4mW He-Neレーザーを備えている。それぞれの試料は、分散媒体として粒子を含まない脱イオン水で希釈され、その後、1mlのポリスチレンキュベット内で適切な散乱強度で測定される。評価は、Zetasizer評価ソフトウェア7.11(Malvern Instruments製)の支援を受けてデジタル相関器を用いて行った。測定は5回行われ、該測定は、第2の新しく調製された試料で繰り返された。SCSポリマーの場合、平均粒子径は、測定した平均粒子径の算術数値平均値(Z平均平均値;数値平均値;dN,50%)を指す。この場合の5重決定の標準偏差は4%以下である。採用可能なポリウレタン-ポリウレア粒子については、平均粒子径は、個々の調製物の平均粒子径の算術体積平均値(V平均平均値;体積平均値;dV,50%(体積基準中央値))を指す。この場合の5回の個別測定値からの体積平均の最大偏差は±15%である。検証は、50~3000nmの間の粒子径を有するポリスチレン標準を用いて行われる。
【0124】
5.膜厚の決定
膜厚は、DIN EN ISO 2808(日付:2007年5月)、方法12Aに従って、ElektroPhysik製のMiniTest(登録商標)3100-4100装置を使用して決定される。
【0125】
6.ピンホールの発生と膜厚依存のレベリングの評価
ピンホールの発生率と膜厚依存のレベリングを評価するために、ウェッジフォーマットのマルチコート塗装系が、以下の一般的なプロトコルに従って生成される:
標準電着塗装(BASF Coatings GmbH製のCathoGuard(登録商標)800)でコーティングされた寸法30×50cmの鋼製パネルが、コーティング後の膜厚差の決定を可能にするように、一長手方向端部に接着ストリップ(Tesaband、19mm)を設ける。水性ベースコート材料を、0~40μmの目標膜厚(乾燥した材料の膜厚)で、ウェッジとして静電的に塗装する。ここでの吐出速度は300ml/分と400ml/分の間であり;ESTAベルの回転速度は23000rpmから43000rpmの間で変化し;特に選択された各塗装パラメータの正確な数値は、以下の実験セクションで述べられる。室温(18~23℃)での4~5分のフラッシュオフ時間の後、系を60℃の強制空気オーブンで10分間乾燥させる。接着ストリップを除去した後、市販の二成分クリアコート材料(BASF Coatings GmbH製のProGloss(登録商標))を、重力供給スプレーガンによって手動で、40~45μmの目標膜厚(乾燥した材料の膜厚)で、乾燥した水性ベースコートに塗布する。結果として得られたクリアコートを、室温(18~23℃)で10分間ブラッシュオフさせ;この後、140℃の強制空気オーブンでさらに20分間硬化させる。
【0126】
ピンホールの発生は、以下の一般的なプロトコルに従って視覚的に評価される:水性ベースコート材料の乾燥膜厚がチェックされ、ベースコート膜厚ウェッジについては、鋼製パネル上の0~20μmの範囲及び20μmからウェッジの端部までの範囲がマークされる。ピンホールは、水性ベースコートウェッジの2つの別々の領域で視覚的に評価される。一領域当たりのピンホールの数が計数する。全ての結果が200cmの面積に標準化され、総数を得るために合計される。これに加えて、適切な場合は、ピンホールが発生しなくなる水性ベースコートウェッジの乾燥膜厚が記録される。
【0127】
膜厚依存のレベリングは、以下の一般的なプロトコルに従って評価される:水性ベースコート材料の乾燥膜厚がチェックされ、ベースコート膜厚ウェッジについては、異なる領域、例えば、10~15μm、15~20μm、及び20~25μmが鋼製パネル上にマークされる。膜厚依存のレベリングは、Byk-Gardner GmbH製のWave scan装置によって、事前に確定されたベースコート膜厚の領域内で決定及び評価される。この目的のために、レーザービームが60°の角度で調査中の表面に向けられ、短波範囲(0.3~1.2mm)及び長波範囲(1.2~12mm)の反射光における変動が、10cmの距離で装置によって記録される(長波=LW、短波=SW;数値が小さいほど、外観が良好である)。さらに、マルチコート系の表面で反射した像の鮮明さの指標として、「像鮮明性(distinctness of image)」(DOI)の特性パラメータが、装置の助けを借りて決定される(数値が大きいほど、外観が良好である)。
【0128】
7.曇りの決定
曇りを決定するために、マルチコート塗料系は、以下の一般的なプロトコルに従って生成される:
従来のサーフェイサー系でコーティングされた寸法32×60cmの鋼製パネルが、水性ベースコート材料により、二重塗布によってさらにコーティングされる:最初のステップの塗装は、8~9μmの目標膜厚で静電的に行われ、第2のステップでは、室温での2分間のフラッシュオフ時間の後に、同様に、4~5μmの目標膜厚で静電的に行われる。室温(18~23℃)でさらに5分間のフラッシュオフ時間の後に、結果として得られた水性ベースコートは80℃の強制空気オーブンで5分間乾燥される。両方のベースコート塗装は、回転速度43000rpm、吐出速度300ml/分で行われる。乾燥した水性ベースコートの上に塗装されるのは、40~45μmの目標膜厚を有する市販の二成分クリアコート材料(BASF Coatings GmbH製のProGloss)である。得られたクリアコートは、室温(18~23℃)で10分間フラッシュオフされ;その後、140℃の強制空気オーブンでさらに20分間硬化される。
【0129】
曇りは、次いで、BYK-Gardner GmbH製のクラウドランナー装置を使用して評価される。該装置は、「mottling15」、「mottling45」、及び「mottling60」の3つの特性パラメータを含むパラメータを出力し、それらは、使用された測定光源の反射角に対して15°、45°、及び60°の角度で測定された曇りの指標とみなされ得る。この値が大きいほど曇りが顕著である。
【0130】
8.伸長実験におけるスレッド寿命の決定
高速回転霧化は、高い伸長成分を有する流れを生成する。使用する試料の伸長挙動を調べるために、Haake CaBER 1装置(Thermo Scientific製)が使用される。この場合の試料は、直径6mm、互いから間隔2mmの平行な2枚のプレートの間に配置される。上側プレートは続いて、2枚のプレート間の新たな距離が10mmになるように、40ms以内に上方に移動される。これにより、毛細管力により先細りする直径を有する不安定な液体のスレッドが生成される。スレッドの直径(すなわち、フィラメントの直径)は、高速度カメラを用いて、1秒間に1000画像の画像レートと1024×1024ピクセルの解像度で記録される。材料の伸長レオロジー特性は、スレッドの直径の変化から決定される。ここで、伸長の流れに対して比較的高い抵抗(すなわち、より大きな伸長粘度)を有する材料は、比較的長いスレッド寿命(フィラメント寿命)を示す材料である。
【0131】
9.平均フィラメント長さを決定するための本発明の方法による平均フィラメント長さの決定
ベルエッジでのフィラメントの分断は、高速カメラFastcam SA-Z(Photron Tokyo製、日本)を用いて、毎秒100000画像の画像レートと、512×256ピクセルの解像度で記録される。画像分析は、1回の記録につき2000画像を使用する。まず、個々の画像は、フィラメントの長さを評価できるように、いくつかのステップで処理される。最初の処理ステップでは、ベルエッジがそれぞれの画像から除去される。この目的のために、各画像は、ベルエッジのみが見える程度までに、ガウスフィルタを用いて平滑化される。次に、これらの画像は二値化され、反転される(a)。その後に、元の画像も同様に二値化され(b)、反転画像(a)と共に加算される。得られた結果は、ベルエッジのない二値化された一連の画像であり、この一連の画像は、さらなる評価のために反転される(c)。次のステップでは、フィラメントが他の物体と区別できるように条件が定義される。まず、物体のxmin、xmax、ymin、ymaxを計算することにより、全ての物体の斜辺が決定される。物体の斜辺は、物体をフィラメントとみなすためには、定義された値hよりも大きくなければならない。滴のようなより小さい物体は、以降の評価では考慮されなくなる。さらに、各物体は、ベルエッジのすぐ近傍に位置するy値を有していなければならない。したがって、ベルエッジに接合されていない長いフラグメントは、フィラメント長さを評価する目的のために除外される。最後に、残りの物体は、その最小のx値が0より大きく、最大のx値が256より小さいという条件を満たす必要がある。したがって、評価されるフィラメントは、記録された画像フレーム内に全体的に配置されたもののみである。4つの条件を満たすことができる全ての物体が個別に呼び出され、スケルトン法によって漸減される。その結果、各物体の1つのピクセルは最大でも1つの他のピクセルに接続される。次に、フィラメント1つ当たりのピクセル数がカウントされる。ピクセルサイズは既知であるため、フィラメントの実際の長さを計算することができる。この画像分析は、1画像当たり約15000本のフィラメントを評価する。これは、フィラメント長さを決定するための高い統計的基盤を確かにする。
【0132】
10.SCSポリマーの調製に使用することができる混合物(A)のモノマーの水への溶解度の決定
モノマーの水溶解度は、水相の上にあるガス空間との平衡の確立を介して決定される(参考文献 X.-S.Chai,Q.X.Hou,F.J.SchorkのJournal of Applied Polymer Science 99巻、1296~1301頁(2006)と同様)。この目的のために、20mlのガス空間試料チューブ内で、2mlなどの所定量の水がそれぞれのモノマーと、該モノマーが選択された水の量に溶解することができない、又は如何なる速度でも完全には溶解することができない程度の質量で、混合される。さらに乳化剤(試料混合物の全質量に基づいて10ppm)が添加される。平衡濃度を得るために、混合物は継続的に振盪される。上澄みの気相は不活性ガスで置換され、このようにして平衡を再確立する。除去された気相中では、検出すべき物質の画分がそれぞれの場合測定される(例えばガスクロマトグラフィーを用いて)。水中の平衡濃度は、気相中のモノマーの画分をグラフとしてプロットすることによって決定することができる。曲線の傾きは、過剰なモノマー画分が混合物から除去されるとすぐに、実質的に一定の値(S1)から著しく負の傾き(S2)に変化する。ここでの平衡濃度は、直線と勾配S1の交点及び直線と勾配S2の交点で達成される。記載された決定は、25℃で行われる。
【0133】
11.混合物(A)、(B)、及び(C)のモノマーからそれぞれ得られるポリマーのガラス転移温度の決定
ガラス転移温度Tは、DIN 51005(日付:2005年8月)「Thermal Analysis(TA)-terms」及びDIN 53765「Thermal Analysis-Dynamic Scanning Calorimetry(DSC)」(日付:1994年3月)に基づいた方法で実験により決定される。これは、15mgの試料を試料ボートに秤量し、ボートをDSC装置に導入することを含む。開始温度まで冷却し、その後に第1と第2の測定が、10K/分の加熱速度で50ml/分の不活性ガスパージ(N)の下で行われ、測定の間は開始温度まで冷却される。測定は、予想されるガラス転移温度より約50℃低い温度から予想されるガラス転移温度より約50℃高い温度までの範囲で行われる。DIN 53765、セクション8.1に従って記録されるガラス転移温度は、比熱容量における変化の半分(0.5デルタcp)に達する第2の測定の温度である。これは、DSC線図(温度に対する熱流のプロット)から決定される。これは、ガラス転移の前後の外挿されたベースライン間の中心線と、測定プロットの交点に対応する温度である。測定において予想されるガラス転移温度の有用な推測のために、公知のFox式を用いることができる。Fox式は、分子量を含めずに、ホモポリマーとその質量部のガラス転移温度に基づいて良好な近似を示すため、合成段階において当業者にとって有用なツールとして使用することができ、いくつかの目標指向の試行を介して所望のガラス転移温度の設定を可能にする。
【0134】
12.湿潤度の決定
評価は、水性ベースコート材料などのコーティング材料組成物を基材に塗布した後に形成される膜の湿潤度について行われる。この場合のコーティング材料組成物は、15μm~40μmの範囲内の目標膜厚などの所望の目標膜厚(乾燥した材料の膜厚)の一定層として、回転霧化によって静電的に塗装される。吐出速度は300~400ml/分であり、回転霧化装置のESTAベルの回転速度は23000~63000rpmの範囲である(それぞれの場合の具体的に選択された塗装パラメータの正確な詳細は、以下、実験セクション内の関連箇所に記載されている)。塗装終了後1分後に、基材上に形成された膜の湿潤度を視覚的に評価する。湿潤度は1から5までのスケールで記録される(1=非常に乾燥した状態~5=非常に湿った状態)。
【0135】
13.ポップの発生の決定
ポッピング傾向を決定するために、マルチコート塗装系が、DIN EN ISO 28199-1(日付:2010年1月)及びDIN EN ISO 28199-3(日付:2010年1月)に基づく方法で、以下の一般的なプロトコルに従って、製成される:硬化カソード電着塗装(BASF Coatings GmbH製のCathoGuard(登録商標)800)でコーティングされた寸法57×20cmの多孔鋼板(DIN EN ISO 28199-1、セクション8.1、バージョンAに準拠)が、DIN EN ISO 28199-1、セクション8.2(バージョンA)と同様に製成される。これに続いて、DIN EN ISO 28199-1、セクション8.3に基づく方法で、0μmから30μmの範囲の目標膜厚(乾燥した材料の膜厚)でウェッジの形で水系ベースコート材料の1回塗装の静電塗装が行われる。得られたベースコートは、事前のフラッシュオフ時間なしに、80℃の強制空気オーブンで5分間の中間乾燥に付される。ポッピングの限界、すなわち、ポップが発生するベースコートの膜厚の決定は、DIN EN ISO 28199-3、セクション5に従って行われる。
【0136】
14.ランの発生の決定
ランの傾向を決定するために、マルチコート塗装系は、DIN EN ISO 28199-1(日付:2010年1月)及びDIN EN ISO 28199-3(日付:2010年1月)に基づく方法で、以下の一般的なプロトコルに従って、製成される。
【0137】
a)水性ベースコート材料
硬化カソード電着塗装(EC)(BASF Coatings GmbH製のCathoGuard(登録商標)800)でコーティングされた寸法57cm×20cmの多孔鋼板(DIN EN ISO 28199-1、セクション8.1、バージョンAに準拠)が、DIN EN ISO 28199-1、セクション8.2(バージョンA)と同様に製成される。これに続いて、DIN EN ISO 28199-1、セクション8.3に基づく方法で、0μmから40μmの範囲の目標膜厚(乾燥した材料の膜厚)でウェッジの形で水系ベースコート材料の1回塗装の静電塗装が行われる。得られたベースコートは、18~23℃で10分間のフラッシュオフ時間後に、80℃の強制空気オーブンで5分間の中間乾燥に付される。ここでは、鋼板はフラッシュオフされ、垂直に立てた状態で中間乾燥される。
【0138】
b)クリアコート材料
硬化カソード電着塗装(EC)(BASF Coatings GmbH製のCathoGuard(登録商標)800)及び市販の水性ベースコート材料(BASF Coatings GmbH製のColorBrite)でコーティングされた寸法57cm×20cmの多孔鋼板(DIN EN ISO 28199-1、セクション8.1、バージョンAに準拠)が、DIN EN ISO 28199-1、セクション8.2(バージョンA)と同様に製成される。これに続いて、DIN EN ISO 28199-1、セクション8.3に基づく方法で、0μmから60μmの範囲の目標膜厚(乾燥した材料の膜厚)でウェッジの形でクリアコート材料の1回塗装の静電塗装が行われる。得られたクリアコート膜は、18~23℃で10分間のフラッシュオフ時間後に、140℃の強制空気オーブンで20分間硬化される。ここでは、鋼板はフラッシュオフされ、垂直に立てた状態でフラッシュオフ及び硬化される。
【0139】
ランの傾向は、いずれの場合もDIN EN ISO 28199-3、セクション4に従って決定される。ランが穿孔の下端から10mmの長さを超える膜厚に加えて、穿孔における最初のランの傾向が視覚的に観察できる膜厚が決定される。
【0140】
15.隠蔽力(hiding power)の決定
隠蔽力はDIN EN ISO 28199-3(2010年1月;セクション7)に従って決定される。
【0141】
本発明の実施例及び比較例
以下の本発明の実施例及び比較例は、本発明を説明するために役立てるが、限定するものと解釈すべきではない。
【0142】
特に明記されていない限り、いずれの場合も、部における数値は、質量部であり、パーセントで表す数値は、質量%である。
【0143】
1.水系分散体AD1の調製
1.1 以下に特定され、水系分散体AD1の調製に使用される成分の意味は以下の通りである:
DMEA ジメチルエタノールアミン
DI水 脱イオン水
EF800 エアゾール EAerosol(登録商標)EF-800、Cytecから市販されている乳化剤
APS ペルオキソ二硫酸アンモニウム
1,6-HDDA 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
2-HEA 2-ヒドロキシエチルアクリレート
MMA メタクリル酸メチル
【0144】
1.2 多段階SCSポリアクリレートを含む水系分散体AD1の調製
モノマー混合物(A)、段階i.
下記の表1.1に示す項目1及び2の80質量%を、還流冷却器を備えた鋼製反応容器(5L容量)中に入れ、80℃に加熱する。表1.1の「初期投入」で列挙されている成分の残りの画分は、別の容器中で予混合される。この混合物、及びそれとは別に「開始剤溶液」(表1.1、項目5及び6)を、20分間にわたって同時に反応容器に滴下して加え、反応液中のモノマーの画分を、反応時間全体を通して、段階i.で使用するモノマーの総量に基づいて、6.0質量%を超えないようにする。続けて30分間、撹拌する。
【0145】
モノマー混合物(B)、段階ii.
表1.1の「Mono 1」に示されている成分を、別の容器中で予混合する。この混合物を2時間にわたって反応容器に滴下して加え、反応液中のモノマーの画分を、反応時間全体を通して、段階ii.で使用するモノマーの総量に対して6.0質量%を超えないようにする。続けて1時間、撹拌する。
【0146】
モノマー混合物(C)、段階iii.
表1.1の「Mono 2」に示されている成分を、別の容器中で予混合する。この混合物を、1時間にわたって反応容器に滴下して加え、反応液中のモノマーの画分を、反応時間全体を通して、段階iii.で使用するモノマーの総量に対して6.0質量%を超えないようにする。続けて2時間、撹拌する。
【0147】
その後、反応混合物を60℃に冷却し、中和混合物(表1.1、項目20、21及び22)を別の容器中で予混合する。中和混合物を、40分間にわたって反応容器に滴下して加え、反応液のpHを7.5~8.5のpHに調整する。続いて、反応生成物をさらに30分間撹拌し、25℃まで冷却し、濾過する。
【0148】
得られた水系分散体AD1の固形分を反応モニタリングのために決定した。その結果を、決定されたpH及び粒子径とともに、表1.2に報告する。
【0149】
【表1】
【0150】
2.水系ポリウレタン-ポリウレア分散体PD1の調製
部分的に中和されたプレポリマー溶液の調製
撹拌機、内部温度計、還流冷却器及び電熱を備えた反応容器に、559.7質量部の直鎖状ポリエステルポリオール及び27.2質量部のジメチロールプロピオン酸(GEO Speciality Chemicals製)を窒素下で344.5質量部のメチルエチルケトン中に溶解させた。直鎖ポリエステルジオールは、あらかじめ、二量化脂肪酸(Pripol(登録商標)1012、Croda)、イソフタル酸(BP Chemicals製)及びヘキサン-1,6-ジオール(BASF SE製)(開始材料の質量比: 二量化脂肪酸:イソフタル酸:ヘキサン-1,6-ジオール=54.00:30.02:15.98)から調整され、73mgKOH/gの固形分のヒドロキシル数、3.5mgKOH/gの固形分の酸価、1379g/molの計算された数平均分子量、及び1350g/molの蒸気圧浸透圧法により決定された数平均分子量を有していた。結果として得られた溶液に、30℃で連続的に、イソシアネート含有率が32.0質量%である、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(Desmodur(登録商標)W、Covestro AG)を213.2質量部、及び3.8質量部のジブチルスズジラウレート(Merck製)を添加した。この後、撹拌しながら80℃に加熱した。溶液のイソシアネート含有率が1.49質量%で一定になるまで、この温度で撹拌を続けた。その後、626.2質量部のメチルエチルケトンをプレポリマーに添加し、反応混合物を40℃に冷却した。40℃に達したら、11.8質量部のトリエチルアミン(BASF SE製)を2分間にわたって滴下して加え、バッチをさらに5分間撹拌した。
【0151】
プレポリマーとジエチレントリアミンジケチミンの反応
メチルイソブチルケトン中のジエチレントリアミンジケチミンの71.9質量%希釈液の30.2質量部(プレポリマーイソシアネート基とジエチレントリアミンジケチミン(1つの2級アミノ基を有する)との比: 5:1mol/mol、ブロックされた1級アミノ基当たり2つのNCO基に対応)を、続いて、プレポリマー溶液の添加後一時的に反応温度を上昇させながら1分間にわたって混合した。メチルイソブチルケトン中のジエチレントリアミンジケチミンの希釈調整物は、あらかじめ、110~140℃のメチルイソブチルケトン中でのジエチレントリアミン(BASF SE製)とメチルイソブチルケトンの反応中に、反応水の共沸除去によって調製された。メチルイソブチルケトンで希釈をし、124.0g/eq.のアミン等価質量(溶液)をセットした。3310cm-1での残留吸着に基づくIR分光法によって、98.5%の1級アミノ基のブロッキングを見出した。イソシアネート基を含むポリマー溶液の固形分は、45.3%であることを見出した。
【0152】
分散及び減圧蒸留
40℃で30分間撹拌した後、反応容器の内容物を7分間かけて1206質量部の脱イオン水(23℃)中に分散させた。得られた分散体からメチルエチルケトンを45℃で減圧蒸留し、溶媒及び水の損失を脱イオン水で補い40質量%の固形分を得た。得られた分散体は白色で安定しており、固形分が高くかつ低粘性であり、架橋粒子を含み、3ヶ月後も全く沈殿を示さなかった。得られたマイクロゲル分散体(PD1)の特性は以下の通りである:
固形分(130℃、60分、1g):40.2質量%
メチルエチルケトン含有率(GC):0.2質量%
メチルイソブチルケトン含有率(GC):0.1質量%
粘度(23℃、回転式粘度計、せん断速度=1000/s):15mPa・s
酸価:17.1mgKOH/g固形分
中和度(計算値):49%
pH(23℃):7.4
粒子径(光子相関分光法、容積平均):167nm
ゲル画分(凍結乾燥):85.1質量%
ゲル画分(130℃):87.3質量%
【0153】
3.カラーペースト及びフィラーペーストの調製
3.1 黄色ペーストP1の製成
黄色ペーストP1は、17.3質量部のBASF SEから入手可能なSicotrans yellow L 1916、18.3質量部のDE4009858A1のコラム16、37~59行目の実施例Dに従って調製されたポリエステル、43.6質量部の国際特許出願WO92/15405の15頁、23~28行目に従って調製されたバインダー分散体、16.5質量部の脱イオン水、及び4.3質量部のブチルグリコールから製成される。
【0154】
3.2 白色ペーストP2の製成
白色ペーストP2は、50質量部のTitanium Rutile2310、6質量部のDE4009858A1のコラム16、37~59行目の実施例Dに従って調製されたポリエステル、24.7質量部の特許出願EP0228003B2の8頁6~18行目に従って調製されたバインダー分散体、10.5質量部の脱イオン水、4質量部の2,4,7,9-テトラメチル-5-デシンジオール、52%のBG(BASF SEから入手可能)、4.1質量部のブチルグリコール、0.4質量部の10%水中ジメチルエタノールアミン、及び0.3質量部のAcrysol RM-8(The Dow Chemical Companyから入手可能)から製成される。
【0155】
3.3 黒色ペーストP3の製成
黒色ペーストP3は、57質量部のWO92/15405の13頁13行目~15頁13行目に従って調製されたポリウレタン分散体、10質量部のカーボンブラック(Cabot Corporation製のMonarch(登録商標)1400)、5質量部のDE4009858A1のコラム16、37~59行目の実施例Dに従って調製されたポリエステル、6.5質量部の10%強度ジメチルエタノールアミン水溶液、2.5質量部の市販のポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900、BASF SEから入手可能)、7質量部のブチルジグリコール、及び12質量部の脱イオン水から製成される。
【0156】
3.4 硫酸バリウムペーストP4の製成
硫酸バリウムペーストP4は、39質量部のEP0228003B2の8頁、6~18行目に従って調製されたポリウレタン分散体、54質量部の硫酸バリウム(Sachtleben Chemie GmbH製のBlanc fixe micro)、3.7質量部のブチルグリコール、0.3質量部のAgitan 282(Muenzing Chemie GmbHから入手可能)、及び3質量部の脱イオン水から製成される。
【0157】
3.5 ステアタイトペーストP5の製成
ステアタイトペーストP5は、49.7質量部のWO91/15528の23頁、26行目~24頁、24行目に従って調製された水系バインダー分散体、28.9質量部のステアタイト(Microtalc IT extra、Mondo Minerals B.V.から入手可能)、0.4質量部のAgitan 282(Muenzing Chemie GmbHから入手可能)、1.45質量部のDisperbyk(登録商標)-184(BYK-Chemie GmbHから入手可能)、3.1質量部の市販ポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900、BASF SEから入手可能)、及び16.45質量部の脱イオン水から製成される。
【0158】
4.さらなる中間体の調製
4.1 混合ワニスML1の調製
特許明細書EP1534792B1のコラム11、1~13行目に従って、81.9質量部の脱イオン水、2.7質量部のRheovis(登録商標)AS1130(BASF SEから入手可能)、8.9質量部の2,4,7,9-テトラメチル-5-デシンジオール、52%のBG(BASF SEから入手可能)、3.2質量部のDispex Ultra FA 4437(BASF SEから入手可能)、及び3.3質量部の10%水中ジメチルエタノールアミンを互いに混合する;結果として得られた混合物を続いて均一化する。
【0159】
4.2 混合ワニスML2の調製
47.38質量部の水系分散体AD1、42.29の質量部の脱イオン水、6.05質量部の2,4,7,9-テトラメチル-5-デシンジオール、52%のブチルグリコール(BASF SEから入手可能)、2.52質量部のDispex Ultra FA 4437(BASF SEから入手可能)、0.76質量部のRheovis(登録商標)AS1130(BASF SEから入手可能)、及び1.0質量部の10%水中ジメチルエタノールアミンを互いに混合する;結果として得られた混合物を続いて均一化する。
【0160】
ML1及びML2は、効果顔料ペーストを製成するために使用される。
【0161】
5.水系ベースコート材料の製成
5.1 水性ベースコート材料WBL1~WBL6の製成
表5.1の「水相」に示されている成分を記載されている順序で一緒に撹拌して水系混合物を形成する。次のステップでは、「アルミニウム顔料予混合物」に示されている成分から予混合物を製成する。この予混合物を水系混合物に加える。添加後、10分間撹拌する。次いで、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いて、pHを8及び回転式粘度計(Anton Paar製のC-LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC)を用いて23℃で測定し、1000s-1のせん断荷重下で85±5mPa・sの霧化粘度をセットする。
【0162】
シリーズWBL1からWBL3では、アルミニウム顔料の画分、したがって顔料/バインダー比がいずれの場合も増加した。WBL1と比較すると、顔料の画分はWBL2においては2倍、WBL3においては3倍になった。シリーズWBL4からWBL6についても同様である:WBL4と比較すると、顔料の画分はWBL5においては2倍、WBL6においては3倍になった。
【0163】
【表2】
【0164】
5.2 水性ベースコート材料WBL7、WBL8の製成
表5.2の「水相」に示されている成分を記載されている順序で一緒に撹拌して水系混合物を形成する。次のステップでは、「アルミニウム顔料予混合物」及び「マイカ顔料予混合物」に示されている成分からいずれの場合も予混合物を製成する。これらの予混合物を水系混合物に別々に加える。各予混合物を添加後、10分間撹拌する。次いで、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いて、pH8、及び回転式粘度計(Anton Paar製のC-LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC)を用いて23℃で測定して1000s-1のせん断荷重下で95±10mPa・sの霧化粘度に設定する。
【0165】
【表3】

【0166】
5.3 水性ベースコート材料WBL9~WBL12の製成
表5.3の「水相」に示されている成分を記載されている順序で一緒に撹拌して水性混合物を形成する。次のステップでは、「アルミニウム顔料予混合物」に示されている成分から予混合物を製成する。この予混合物を水性混合物に加える。添加後、10分間撹拌する。次いで、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いて、pH8、及び回転式粘度計(Anton Paar製のC-LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC)を用いて23℃で測定して1000s-1のせん断荷重下で85±5mPa・sの霧化粘度に設定する。
【0167】
シリーズWBL9~WBL10では、アルミニウム顔料の画分、したがって、顔料/バインダー比がいずれの場合も低下した。WBL11~WBL12についても同様である。
【0168】
【表4】
【0169】
5.4 水性ベースコート材料WBL13~WBL16の製成
表5.4の「水相」に示されている成分を記載されている順序で一緒に撹拌して水性混合物を形成する。次のステップでは、「アルミニウム顔料予混合物」に示されている成分から予混合物を製成する。この予混合物を水性混合物に加える。添加後、10分間撹拌する。次いで、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いて、pH8、及び回転式粘度計(Anton Paar製のC-LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC)を用いて23℃で測定して1000s-1のせん断荷重下で85±5mPa・sの霧化粘度に設定する。
【0170】
シリーズWBL13~WBL14では、アルミニウム顔料の画分、したがって顔料/バインダー比が低下した。WBL15~WBL16についても同様である。
【0171】
【表5】
【0172】
5.5 水性ベースコート材料WBL17~WBL24、WBL17a及びWBL21aの製成
表5.5の「水相」に示されている成分を記載されている順序で一緒に撹拌して水性混合物を形成する。次のステップでは、「アルミニウム顔料予混合物」に示されている成分から予混合物を製成する。この予混合物を水性混合物に加える。添加後、10分間撹拌する。次いで、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いて、pH8、及び回転式粘度計(Anton Paar製のC-LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC)を用いて23℃で測定して1000s-1のせん断荷重下で85±5mPa・sの霧化粘度に設定する。
【0173】
さらに、試料WBL17及びWBL21を、回転式粘度計(Anton Paar製のC-LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC)を用いて23℃で測定して1000s-1のせん断荷重下で120±5mPa・sの霧化粘度に調整する(その結果、それぞれWBL17a及びWBL21aが得られた)。
【0174】
【表6】

【0175】
5.6 水性ベースコート材料WBL25~WBL30の製成
表5.6の「水相」に示されている成分を記載されている順序で一緒に撹拌して水性混合物を形成する。次のステップでは、「アルミニウム顔料予混合物」示されている成分からいずれの場合も予混合物を製成する。これらの予混合物を水性混合物に別々に加える。各予混合物を添加後、10分間撹拌する。次いで、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いて、pH8、及び回転式粘度計(Anton Paar製のC-LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC)を用いて23℃で測定して1000s-1のせん断荷重下で85±10mPa・sの霧化粘度に設定する。
【0176】
【表7】
【0177】
5.7 水性ベースコート材料WBL31、WBL31aの製成
表5.7の「水相」に示されている成分を記載されている順序で一緒に撹拌して水性混合物を形成する。次のステップでは、「アルミニウム顔料予混合物」に示されている成分から予混合物を製成する。この予混合物を水性混合物に加える。添加後、10分間撹拌する。次いで、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いて、pH8、及び回転式粘度計(Anton Paar製のC-LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC)を用いて23℃で測定して1000s-1のせん断荷重下で130±5mPa・s(WBL31)又は80±5mPa・s(WBL31a)の霧化粘度に設定する。WBL31aの場合は、より多量の脱イオン水を使用して達成される。
【0178】
【表8】

【0179】
5.8 水性ベースコート材料WBL32、WBL33の製成
表5.8の「水相」に示されている成分を記載されている順序で一緒に撹拌して水性混合物を形成する。次のステップでは、「ブチレングリコール/ポリエステル混合物(3:1)」に示されている成分から予混合物を製成する。この予混合物を水性混合物に加える。添加後、10分間撹拌する。次いで、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いて、pH8、及び回転式粘度計(Anton Paar製のC-LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC)を用いて23℃で測定して1000s-1のせん断荷重下で135±5mPa・sの霧化粘度に設定する。
【0180】
【表9】
【0181】
5.9 水性ベースコート材料WBL34、WBL35、WBL34a、WBL35aの製成
表5.9の「水相」に示されている成分を記載されている順序で一緒に撹拌されて水性混合物を形成する。次のステップでは、「アルミニウム顔料予混合物」に示されている成分から予混合物を製成する。この予混合物を水性混合物に加える。添加後、10分間撹拌する。次いで、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いて、pHを8及び回転式粘度計(Anton Paar製のC-LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC)を用いて23℃で測定した1000s-1のせん断荷重下で120±5mPa・s(WBL34及びWBL35)又は80±5mPa・s(WBL34a及びWBL35a)の霧化粘度を設定する。
【0182】
【表10】
【0183】
6.水系ベースコート材料の特性と結果として得られる膜やコーティングの調査と比較
6.1 水性ベースコート材料WBL1~WBL6のスレッド寿命とベルエッジにおける平均フィラメント長さの比較
スレッド寿命、平均フィラメント長さ及び湿潤度について、水性ベースコート材料WBL1~WBL6の調査を上述の方法により行った。それぞれの場合で互いに比較するシリーズは、シリーズWBL1~WBL3及びWBL4~WBL6であり、ここではコーティング材料の数値の昇順で、材料中に存在する顔料の画分が増加し、結果として顔料/バインダー比が増加した。結果を表6.1にまとめる。
【0184】
【表11】
【0185】
試料WBL1~WBL3及び同様に試料WBL4~WBL6について、CaBER測定は、調査したベースコート材料中のアルミニウム顔料濃度の増加に対して、スレッド寿命が増加していることを示している。既存の文献(例えば、ErgungorらによるJ.Non-Newtonian Fluid Mech.138(2006),1~6頁;ThompsonらによるJ.Non-Newtonian Fluid Mech.147(2007),11~22頁)に基づけば、明らかな結論は、このことがベルで形成されたスレッドの分断をますます困難にすることにも相関するはずであり、おそらく、より粗い霧化をもたらし、したがってより高い平均フィラメント長さを有するフィラメントをもたらすということである。当業者は、典型的には、そのような粗い霧化、したがって予想されるより高い平均フィラメント長さと、予想されるより湿ったコーティングパターンと関連付ける。しかし、驚くべきことに、WBL1~WBL3、同様にWBL4~WBL6のコーティングの湿潤度の評価では、正確には逆のことが判明した:すなわち、湿潤度が低下している。
【0186】
ベルエッジの平均フィラメント長さの決定は、それぞれのベースコート材料中のアルミニウム顔料の濃度が高くなる(濃度がWBL1からWBL3に、WBL4からWBL6に高くなる)と、より短いフィラメント長さを有する小さいフィラメントが形成されることを示し、このことは視覚的に判定される湿潤度と相関している。換言すると、アルミニウム顔料の濃度が高くなると、全体的に霧化が細かくなり、より小さなフィラメントが形成されるため、結果として生じる湿潤度はより低くなり、これは、CaBER測定と、シリーズWBL1~WBL3、及びそれぞれWBL4~WBL6でのスレッド寿命の増加に基づいて当業者が予想していたこととは逆である。
【0187】
6.2 水性ベースコート材料WBL7とWBL8のピンホール発生の比較
ピンホール発生とフィラメント長さの評価に関する水性ベースコート材料WBL7、WBL8の調査は、上記の方法により行われた。その結果を表6.2にまとめる。
【0188】
WBL7と比較して、WBL8はピンホールの発生に関して、特に23000rpmの比較的低い回転スピードにおいて、非常に危機的であることが分かった。この挙動は,WBL7と比較してWBL8の場合に実験的に得られたより大きなフィラメント長さと相関しており、これは次にはより粗い霧化と湿潤度の増加の指標となる。
【0189】
【表12】
【0190】
6.3 曇り、ピンホールの発生、及び膜厚依存のレベリングの評価に関する水性ベースコート材料WBL9~WBL16の比較
水性ベースコート材料WBL9~WBL16の曇り、ピンホール、膜厚依存のレベリングの評価について、上記の方法で調査を行った。その結果を表6.3及び6.4にまとめる。
【0191】
【表13】
【0192】
各々が同一顔料及び同一量の顔料をそれぞれ含有する、試料のペアリングWBL9とWBL13、WBL10とWBL14、WBL11とWBL15、及びWBL12とWBL16の直接比較において、300ml/分の吐出速度と43000rpmの速度で、ベースコート材料WBL13~WBL16は、それぞれ対応する参照試料WBL9~WBL12よりもフィラメント長さが短いため、より微細な霧化になることがわかる。これは、ピンホールの堅牢性が大幅に向上し、曇りが少ないことに反映されている。
【0193】
【表14】
【0194】
WBL9とWBL11は、それぞれ顔料/バインダー比が0.35であり、WBL10とWBL12はそれぞれ顔料/バインダー比が0.13である。
【0195】
実験結果は、フィラメント長さ、又は結果として生じる霧化特性と、ここでは膜厚の関数としての外観/レベリングとの間の相関関係を示しており:同一の顔料/バインダー比0.35(WBL9とWBL11)及び0.13(WBL10とWBL12)の試料を比較すると、より長いフィラメント長さ、換言すると、より粗く、つまりより湿った霧化は、得られた短波とDOIの数値で示されているように、レベリングの低下につながることがわかる。
【0196】
6.4 隠蔽力、曇り傾向、ピンホール、及びレベリング(顔料の効果)に関する水性ベースコート材料WBL9~WBL20及びWBL25~WBL28の比較
隠蔽力、曇り傾向、ピンホール、及びレベリングに関する水性ベースコート材料WBL9~WBL20及びWBL25~WBL28についての調査を、上述の方法により行った。この場合に具体的に示されているのは、使用されているアルミニウム顔料の置換を介して、特にその粒子径に関して、霧化及び結果としてのコーティング特性にどのように影響を与えることができるかである。全ての実験において、吐出速度は300ml/分であり、ESTAベルの回転スピードは43000rpmであった。表6.5から6.9に結果をまとめた。
【0197】
【表15】
【0198】
【表16】
【0199】
【表17】
【0200】
【表18】
【0201】
【表19】
【0202】
調査したすべての場合(それぞれの場合で異なる顔料含有量を有する)において、使用される効果顔料の置換、特にその低粒子径(顔料のd50に基づく)関連する置換は、ベルエッジで平均フィラメント長さが短くなることを生じる。この結果、より細かい霧化は、隠蔽力、曇り傾向、ピンホール及びレベリング(SWとDOI)にも有益である。
【0203】
6.5 曇り傾向及びピンホールに関する水性ベースコート材料WBL17~WBL24、WBL29及びWBL30の比較(顔料画分の効果影響)
曇り傾向及びピンホールに関する水性ベースコート材料WBL17~WBL24、WBL29及びWBL30についての調査を、上述の方法により行った。この場合に具体的に示されているのは、使用されているアルミニウム顔料の量の置換によって、霧化及び結果としてのコーティング特性にどのように影響を与えることができるかである。全ての実験において、吐出速度は300ml/分であり、ESTAベルの回転スピードは43000rpmであった。表6.10及び6.11に結果をまとめた。
【0204】
【表20】
【0205】
【表21】
【0206】
顔料/バインダー比、換言すると顔料の量に関してのみ異なる試料のそれぞれのペアの比較では、使用されるアルミニウム顔料の量の増加により、より良い霧化(より短いフィラメント長さ)をもたらし、これは、ピンホールや曇り感受性に好影響を与えることがわかった。
【0207】
6.6 ピンホール(スプレー粘度や水量の影響)に関する水性ベースコート材料WBL17又はWBL17a及びWBL21又はWBL21aの比較
ピンホールに関する水性ベースコート材料WBL17又はWBL17a及びまたWBL21又はWBL21aについての調査を、上述の方法により行った。この場合に具体的に示されているのは、霧化及び結果としてのコーティング特性が調整されたスプレー粘度を介して(すなわち、添加される水の量によって)、どのように影響を受けることができるかということである。全ての実験において、吐出速度は300ml/分であり、ESTAベルの回転スピードは43000rpmであった。表6.12に結果をまとめた。
【0208】
【表22】
【0209】
実施例は、材料の霧化中にスプレー粘度を下げることで、ベルエッジでより短いフィラメントが生成され、ピンホール感受性に有益な結果をもたらすことを示している。
6.7 湿潤度に関する水性ベースコート材料WBL32及びWBL33、並びにWBL34及びWBL35、又はWBL34a及びWBL35aの比較
湿潤度に関する水性ベースコート材料WBL32及びWBL33、並びにWBL34及びWBL35、又はWBL34a及びWBL35aについての調査を、上述の方法により行った。この場合に具体的に示されているのは、曇り、ピンホールの堅牢性などの特性の原因となる霧化及び結果としての湿潤度が、共結合剤(ポリエステル)、特に溶媒の追加の添加量を介して、どのように影響を受けることができるかということである。試料WBL32及びWBL33の実験はESTAベル回転速度63000rpmで、試料WBL34及びWBL35、並びにWBL34a及びWBL35aは、それぞれ43000rpm及び63000rpmで行った。全ての実験において、吐出速度は300ml/分であった。表6.13及び表6.14に結果をまとめた。
【0210】
【表23】
【0211】
ポリエステル(DE4009858A1の実施例D、カラム16、37~59行目)とブチルグリコールの混合物の使用量を3分の2(WBL32とWBL33の比較)増やした場合、ベルエッジでのより長いフィラメント長さより明らかなように、霧化は著しく悪く、湿潤度が著しく高く現れることがわかった。
【0212】
【表24】
【0213】
両方の吐出速度(63000rpm及び43000rpm)について、同じスプレー粘度(120mPa・s又は80mPa・s)に調整した試料のそれぞれのペアについて、ブチルグリコールを添加することによって、フィラメント長さの全体にわたって影響が及び、したがって、たとえば曇りやピンホールに対する感受性の原因である湿潤度にも影響が及ぶことがわかった;溶媒により、霧化中にベルでフィラメントの大幅な延長を生じ、したがって、著しく湿った膜が堆積された。
【0214】
6.8 実施例は、本発明の方法により、最終コーティングの質的特性(ピンホールの数、湿潤度、曇り又はレベリング、並びに外観及び隠蔽力)と相関があり、特に先行技術の他の方法よりも相関が良い塗料の霧化に関して予測が可能であることを示している。したがって、本発明の方法は、品質保証のための単純かつ効率的な方法を可能にする。このことは、塗料開発に焦点を当て、そうすることで、モデル基材への高価で不便なコーティング作業(材料の焼成を含む)の必要性を少なくとも部分的に取り除くことに役立ち得る。
【0215】
7.クリアコート材料並びにその結果得られる膜及びコーティングの調査
ランニング限界に関するクリアコートKL1、KL1a及びKL1bの比較
クリアコートKL1、KL1a及びKL1bのランニング挙動に関する調査を、上述の方法により行った。この場合に具体的に示されているのは、溶媒の添加を通じて、また、レオロジー制御剤のような当業者に知られている添加剤の省略を通じて適合されるスプレー粘度を介して、ランニング挙動がどのように影響を受けることができるかということである。関連する材料は以下の通りである:
【0216】
クリアコートKL1
試料KL1は、レオロジー助剤としてヒュームドシリカ(エボニック製のAerosil(登録商標)製品)を含む市販の二成分クリアコート材料(BASF Coatings GmbH製のProGloss(登録商標))であり、ベースワニスは3-エトキシプロピオン酸エチルを用いて、1000/sで粘度100mPa・sに調整されている。
【0217】
クリアコートKL1a
試料KL1aはKL1に相当しており、ベースコートワニスは3-エトキシプロピオン酸エチルを用いて、1000/sで粘度50mPa・sに調整されている点が異なる。
【0218】
クリアコートKL1b
試料KL1bは、KL1に相当しているが、レオロジー助剤としてヒュームドシリカを含まない点が異なる。ベースワニスも、KLの場合と同様に、3-エトキシプロピオン酸エチルを用いて、1000/sで粘度100mPa・sに調整されている。
【0219】
実験は、ESTAベルの回転スピード55000rpmで試料を用いて行った。吐出速度は550ml/分で行った。結果を表7.1にまとめる。
【0220】
【表25】
【0221】
KL1bの場合は、確定された平均フィラメント長さはKL1の場合よりも長くなった。KL1aについても同様であった:ここでも確定された平均フィラメント長さはKL1の場合よりも長くなった。
【0222】
結果は、したがって、基準KL1と比較して、スプレー粘度を減少させること(KL1a)、又はヒュームドシリカに基づくレオロジー助剤を除去すること(KL1b)などの受容的手段によって、霧化が損なわれる可能性があり(霧化手順中のベルエッジでのより長いフィラメント)、その結果、いずれの場合もランニング安定性が低下することを示している。
【0223】
実施例は、本発明の方法によって、特にクリアコート材料についても、最終コーティングの質的特性(例えば、ランニング挙動)と相関し、特に先行技術の他の方法よりも良好に相関する塗料の霧化について、予測を行うことが可能であることを示している。本発明の方法は、したがって、品質保証のための単純かつ効率的な方法を可能にする。このことは、塗料開発に焦点を当て、そうすることで、モデル基材への高価で不便なコーティング作業(材料の焼成を含む)の必要性を少なくとも部分的に取り除くことに役立ち得る。