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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】車載用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220329BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20220329BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G02B27/01
B60R11/02 C
B60K35/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021073489
(22)【出願日】2021-04-23
(62)【分割の表示】P 2016243403の分割
【原出願日】2016-12-15
(65)【公開番号】P2021120750
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】517080957
【氏名又は名称】デュアリタス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】酒井 重史
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190157(WO,A1)
【文献】特開2013-083675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0054564(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007058437(DE,A1)
【文献】特開平04-228326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
G09F 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を有する画像形成部と、前記画像形成部からの光で中間画像を形成する中間画像表示体と、前記中間画像表示体から出射されるイメージ光を被投影部材に投影し虚像を形成する投影光学系と,を有する車載用表示装置において、
前記中間画像表示体は、同一の面に、第1中間画像が形成される第1表示領域と、第2中間画像が形成される第2表示領域と、前記第1表示領域と前記第2表示領域との中間に位置する非表示領域とを有し、
前記投影光学系において、前記第1中間画像に対応する第1イメージ光の光路長と前記第2中間画像に対応する第2イメージ光の光路長とが互いに異なっており、
前記中間画像表示体における前記第1中間画像および前記第2中間画像のサイズを拡大又は縮小することによって、前記第1イメージ光の光路長と前記第2イメージ光の光路長との関係を維持しつつ、前記第1イメージ光の投影光と前記第2イメージ光の投影光の表示サイズを、前記第1中間画像と前記第2中間画像のサイズに応じてそれぞれ変更することを特徴とする車載用表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用表示装置であって、前記第1中間画像の情報量が多くなるときに、前記第1表示領域のサイズが大きくなるように制御する、車載用表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車載用表示装置であって、前記第1表示領域、前記非表示領域及び前記第2表示領域は、この順に並んだ矩形形状を形成し、前記第1表示領域、前記非表示領域及び前記第2表示領域が並んだ方向をH方向とすると、前記第1表示領域のサイズ及び前記第2表示領域のサイズは、前記H方向にそれぞれ拡大又は縮小可能である、車載用表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車載用表示装置であって、前記被投影部材は、車載用表示装置が搭載される車のウインドシールドガラス又は前記ウインドシールドガラスより前記車の車室内側にあるコンバイナである、車載用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドシールドガラスなどの被投影部材の前方に複数の虚像を形成する車載用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ヘッドアップディスプレイとして使用される情報表示装置に関する発明が記載されている。この情報表示装置は、映像投射器の前方に2個の透過型のスクリーンが配置されており、映像投影器によってそれぞれのスクリーンに情報が結像される。それぞれのスクリーンから被画像形成部材としてのウインドシールドガラスまでの距離がそれぞれ相違している。被画像形成部材によって各スクリーンに結像された像は被画像形成部材で反射されて視認者に向けられる。その結果、視認者には被画像形成部材よりも前方に形成される虚像が目視される。
【0003】
それぞれのスクリーンと被画像形成部材との距離が相違しているため、被画像形成部材から離れた位置にあるスクリーンに結像された像で、被画像形成部材の前方の離れた位置に虚像が形成され、被画像形成部材に接近した位置にあるスクリーンに結像された像で、被画像形成部材の前方の近い位置に虚像が形成される。このようにして、運転者である視認者は、ウインドシールドガラスである被画像形成部材の前方において、距離の異なる位置に形成されたそれぞれの虚像を観察することができるようになる。さらに、形成された2つの虚像が重ならないように、2個のスクリーンを所定の間隔だけ離間させるように配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-34919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の情報表示装置では、2個のスクリーンのサイズと位置が固定されているため、各スクリーンに形成する画像に含まれる情報量が多くなった場合、虚像を大きくすることができないことから、各情報を小さく表示せざるを得ないため視認者には見づらい画像となってしまう。したがって、各スクリーンに形成する画像に含まれる情報量が制約されてしまうという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、運転者からの距離が異なる位置に形成される2つの虚像について、視認者による視認性を確保しつつ、情報量に応じて表示サイズを変更することができる車載用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車載用表示装置は、非表示領域によって分割された、第1表示領域と第2表示領域とを有する中間画像表示体を備え、第1表示領域には第1中間画像が形成され、かつ、第2表示領域には第2中間画像が形成され、第1中間画像に対応する第1イメージ光と第2中間画像に対応する第2イメージ光は、投影光学系によって虚像としてそれぞれ投影され、投影光学系において、第1イメージ光の光路長と第2イメージ光の光路長とが互いに異なり、中間画像表示体における非表示領域の位置を変更することによって、第1イメージ光の光路長と第2イメージ光の光路長との関係を維持しつつ、第1イメージ光の投影光と第2イメージ光の投影光の表示サイズをそれぞれ変更することを特徴としている。
これにより、第1イメージ光と第2イメージ光のそれぞれに基づいた投影距離を変えることなく、一方の虚像の表示サイズを大きくすることができる。よって、一方の虚像に含まれる情報量が多くなったときに表示サイズを大きくすることができるため、視認性を確保した、情報量に応じた表示サイズの虚像を形成することが可能となる。したがって、情報量の大小に応じた、運転者が見やすい状態で情報を表示することができる。
【0008】
本発明の車載用表示装置において、投影光学系は、第1イメージ光の光路長と第2イメージ光の光路長とを互いに異ならせるための光学部材を備え、第1イメージ光の投影光と第2イメージ光の投影光の表示サイズがそれぞれ変更されるときに、中間画像表示体及び上記光学部材を移動させることによって、第1イメージ光の光路長と第2イメージ光の光路長との関係を維持させることが好ましい。
これにより、第1イメージ光と第2イメージ光のそれぞれに基づいた2つの虚像の一方を遠方に形成でき、他方を近方に投影でき、かつ、これらの投影位置の関係を変えることなく表示サイズを変更することができる。したがって、表示サイズの変更があっても安定した視認状態を維持させることができる。
【0009】
本発明の車載用表示装置において、上記光学部材は平面の反射面を有する一対のミラーであって、第1イメージ光及び第2イメージ光の一方の光路に一対のミラーが順に配置され、第1イメージ光の投影光と第2イメージ光の投影光の表示サイズがそれぞれ変更されるときに、一対のミラーの一方を、その反射面の方向に沿って移動させることによって、第1イメージ光の光路長と第2イメージ光の光路長との関係が維持されることが好ましい。
これにより、サイズの大きなミラーを用いたり、表示サイズの変更のたびにサイズの異なるミラーに入れ替えることなく、光路を確保できるため、装置の全体サイズの増大や部品点数の増加を抑えつつ、表示サイズを変更可能な車載用表示装置を提供することができる。
【0010】
本発明の車載用表示装置において、投影光学系は、第1イメージ光の光路及び第2イメージ光の光路に共通して配置される投影ミラーを備えることが好ましい。
これにより、第1イメージ光と第2イメージ光を被投影部材に同時に投影することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、距離の異なる位置に形成する2つの虚像について、視認者による視認性を確保しつつ、情報量に応じて表示サイズを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る車載用表示装置が車両に搭載されている状態を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る車載用表示装置の投影動作を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る車載用表示装置の一部の構成部材の配置を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態のスクリーンにおける、非表示領域、第1表示領域、及び、第2表示領域を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る車載用表示装置の一部の構成部材の配置を示す平面図である。
図6】(A)は、中間画像を図5に示す状態で形成したときの、運転者の視野における遠方虚像の範囲を示し、(B)はそのときの運転者の視野における近方虚像の範囲を示し、(C)はそのときのスクリーン上の非表示領域、第1表示領域、及び、第2表示領域の関係を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る車載用表示装置の一部の構成部材の配置を示す平面図である。
図8】(A)は、中間画像を図7に示す状態で形成したときの、運転者の視野における遠方虚像の範囲を示し、(B)はそのときの運転者の視野における近方虚像の範囲を示し、(C)はそのときのスクリーン上の非表示領域、第1表示領域、及び、第2表示領域の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る車載用表示装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る車載用表示装置10が、車両の一例である自動車1に搭載された状態を示す説明図である。
自動車1は、ボンネット部2と天井部3との間にウインドシールドガラス4が装着されており、ウインドシールドガラス4で、車室空間5と、車両の前方の外部空間6とが仕切られている。ウインドシールドガラス4は湾曲しており、車室空間5にウインドシールドガラス4の凹面が向けられ、前方の外部空間6にウインドシールドガラス4の凸面が向けられている。ウインドシールドガラス4は凹曲面を有するハーフミラーとして機能し、被投影部材として、車載用表示装置10からイメージ光が投影され、このイメージ光が運転者に向けて反射されるとともに、ウインドシールドガラス4の前方に虚像が形成される。
【0014】
ここで、ウインドシールドガラス4よりも車室内側に、被投影部材としてのコンバイナを配置し、車載用表示装置10からのイメージ光をコンバイナに投影する構成も可能である。コンバイナは、半反射面として機能するため、入射したイメージ光は運転者に向けて反射され、また、このイメージ光に対応した虚像がウインドシールドガラス4の前方に形成される。
【0015】
車室空間5には、視認者である運転者20が着席する運転席7が設けられ、その前方にステアリングホイール8が設けられている。車室空間5の前方にダッシュボード9が設けられており、このダッシュボード9の内部に、本実施形態の車載用表示装置10が埋め込まれて設けられている。車載用表示装置10は、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置である。
【0016】
図2には、車載用表示装置10とウインドシールドガラス4の一部が示されている。また、図2は、運転者の視線位置に相当する範囲であるアイボックスの中心Pに対する光線を示している。図3には、車載用表示装置10のうちの画像形成部11、スクリーン12、第1反射ミラー13、第2反射ミラー14、及び、第1投影ミラー15の配置が示されている。図3では、中間画像表示体としての透過型のスクリーン12上において、遠方虚像21と近方虚像22のそれぞれに対応する2つの中間画像が左右均等に配置されたときのイメージ光を示している。図4は、スクリーン12における、非表示領域A0、第1表示領域A1、及び、第2表示領域A2を示す平面図であり、遠方虚像21を表示するための第1表示領域A1と、近方虚像22を表示するための第2表示領域A2のそれぞれに対応する2つの中間画像が左右均等に配置された状態を示している。図4において、H方向は運転者が視認する虚像における水平方向に対応し、V方向は前記虚像における鉛直方向に対応する。
【0017】
図2図3に示すように、車載用表示装置10には画像形成部11が設けられている。画像形成部11は、スクリーン12上に中間画像を形成するユニットであり、例えばMEMSミラーと光源を有している。MEMSミラーは、MEMS(MICRO ELECTRO MECHANICAL SYSTEMS)構成であり、走査ミラーと、この走査ミラーをX方向とY方向へ向けて回動させる走査機構とを有している。また、表示光としてR(赤)の可視光レーザを発する光源と、G(緑)とB(青)のそれぞれの可視光レーザを発する光源が設けられている。各色のレーザを発する光源はスイッチング素子で切換えられて動作する。画像形成部11は、スクリーン12上に形成される中間画像に対応する、予め記憶回路に保存された制御データにしたがって駆動される。
【0018】
ここで、画像形成部11として、走査ミラーとしてのDMD(Digital Mirror Device)を用いた、DLP(Digital Light Processing)(登録商標)プロジェクタが使用されてもよい。DMDを用いる場合は、光源からの入射光をマトリックス状に配列した複数のマイクロミラーのそれぞれで反射させ、スクリーン12上に中間画像を形成する。
【0019】
また、走査ミラーに代えて、LCOS(商標、Liquid crystal on silicon)を用いることもできる。LCOSは、透過型と反射型のいずれを用いることができ、LCOSでの透過光又は反射光によってスクリーン12上に中間画像を形成する。
さらにまた、画像形成部11とスクリーン12に代えて、自発光デバイス、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)やEL素子(エレクトロルミネッセンス素子)を用いることもできる。
【0020】
中間画像表示体としてのスクリーン12は、例えば、マイクロレンズアレイ、拡散板である。スクリーン12から出射されるイメージ光は、アイボックスによって認識可能な拡散光として出射される。また、スクリーン12の出射面側にマイクロレンズアレイなどの微細な形状を設けた構成も可能である。
【0021】
スクリーン12上に形成される中間画像は、第1表示領域A1に形成される第1中間画像と、第2表示領域A2に形成される第2中間画像とを有する。第1表示領域A1と第2表示領域A2は図4のH方向において非表示領域A0によって分割される。第1中間画像(第1表示領域A1)と第2中間画像(第2表示領域A2)のサイズは、H方向に沿ってそれぞれ拡大又は縮小が可能であって、第1表示領域A1と第2表示領域A2の拡大・縮小にかかわらず、その間には常に非表示領域A0が存在する。このため、スクリーン12から出射した拡散光に基づいて形成される虚像は、アイボックスでは重なりがない状態で認識可能となる。さらに、第1中間画像(第1表示領域A1)と第2中間画像(第2表示領域A2)を拡大・縮小できるため、一方の領域における情報量が多くなるときには、その領域のサイズを大きくすることによって、形成される画像を運転者が認識しやすい適切なサイズにすることができることから、画像の視認性を確保することができる。
【0022】
画像形成部11よりも車室空間5側には、第1反射ミラー13と第2反射ミラー14が配置されている。第1反射ミラー13と第2反射ミラー14は平面ミラーであり、少なくとも反射面が平面である。図3に示すように、第1反射ミラー13は、スクリーン12上の第1表示領域A1から出射される第1イメージ光I1の光路上に配置され、第2反射ミラー14は、第1反射ミラー13による反射光R1(第1イメージ光I1)の光路上に配置されている。また、第1反射ミラー13と第2反射ミラー14は、スクリーン12上の第2表示領域A2から出射される第2イメージ光I2の進行を妨げない位置に配置されている。
また、第2反射ミラー14による反射光R2(第1イメージ光I1)とスクリーン12上の第2表示領域A2から出射される第2イメージ光I2の光路上に第1投影ミラー15が配置されている。第1投影ミラー15は、第1反射ミラー13と第2反射ミラー14に向けた反射面を有する凹面鏡である。
【0023】
図2に示すように、第1投影ミラー15からの反射光の光路上には第2投影ミラー16が配置されている。第2投影ミラー16は、第1投影ミラー15側に反射面を有する凹面鏡である。第1投影ミラー15で拡大・反射された、第1イメージ光及び第2イメージ光は、第2投影ミラー16でさらに拡大・反射され、ウインドシールドガラス4へ投影される。第1投影ミラー15と第2投影ミラー16で投影光学系が構成される。
【0024】
以上の構成において、第1表示領域A1の第1中間画像に対応する第1イメージ光は、2枚の反射ミラー13、14によって順に反射されて、第1投影ミラー15に入射する。一方、第2表示領域A2の第2中間画像に対応する第2イメージ光は、2枚の反射ミラー13、14に入射することなく、第1投影ミラー15に直接入射する。したがって、スクリーン12から第1投影ミラー15への光路長は、第1中間画像に対応する第1イメージ光の方が、第2中間画像に対応する第2イメージ光よりも長くなる。
【0025】
第1投影ミラー15からの反射光は第2投影ミラー16で拡大・反射され、ウインドシールドガラス4上に投影される。この投影光は、視認者としての運転者側に反射されるとともに、ウインドシールドガラス4の前方に虚像を形成する。ここで、上述のとおり、第1イメージ光と第2イメージ光の光路長が互いに異なるため、これらのイメージ光が第2投影ミラー16によって投影されることによって形成される虚像は、ウインドシールドガラス4の前方の異なる位置に形成される。すなわち、第1イメージ光に対応する虚像は、遠方虚像21として遠方に形成され、第2イメージ光に対応する虚像は、遠方虚像21よりもウインドシールドガラス4側に近方虚像22として形成される。ここで、運転者側から見て、水平方向左側に遠方虚像21が配置され、右側に近方虚像22が配置される。
【0026】
図3で矢印に示すように、スクリーン12はその出射面に沿った方向D1に移動可能であり、第2反射ミラー14はその反射面に沿った方向D2に移動可能である。また、画像形成部11は、スクリーン12との相対位置が一定となるように、スクリーン12とともに上記方向D1に移動する。ここで、車載用表示装置10は、スクリーン12と第2反射ミラー14をそれぞれ移動させる移動機構を備え、画像形成部11に表示させる画像情報に応じて、スクリーン12と第2反射ミラー14の位置が制御される。
これに対して、第1反射ミラー13の位置は固定されている。また、スクリーン12が方向D1に移動した場合であっても、非表示領域A0のサイズと空間的な位置は一定である。なお、スクリーン12上における非表示領域A0の位置は、スクリーン12の移動によって変化する。
【0027】
図5には、図3と同様に、車載用表示装置10のうちの画像形成部11、スクリーン12、第1反射ミラー13、第2反射ミラー14、及び、第1投影ミラー15の配置が示されている。図5では、スクリーン12上において、遠方虚像21に対応する中間画像が最小サイズとされ、近方虚像22に対応する中間画像が最大サイズとされたときのイメージ光が示されている。図6(A)、(B)は、中間画像を図5に示す状態で形成したときの、運転者の視野20Aにおける遠方虚像21と近方虚像22の範囲をそれぞれ示し、図6(C)はそのときのスクリーン12上の非表示領域A0、第1表示領域A1、及び、第2表示領域A2の関係を示す図である。図6(C)は、画像形成部11側からスクリーン12を見た状態を示している。
【0028】
図7には、図3と同様に、車載用表示装置10のうちの画像形成部11、スクリーン12、第1反射ミラー13、第2反射ミラー14、及び、第1投影ミラー15の配置が示されている。図7では、スクリーン12上において、遠方虚像21に対応する中間画像が最大サイズとされ、近方虚像22に対応する中間画像が最小サイズとされたときのイメージ光が示されている。図8(A)、(B)は、中間画像を図7に示す状態で形成したときの、運転者の視野20Aにおける遠方虚像21と近方虚像22の範囲をそれぞれ示し、図8(C)はそのときのスクリーン12上の非表示領域A0、第1表示領域A1、及び、第2表示領域A2の関係を示す図である。図8(C)は、画像形成部11側からスクリーン12を見た状態を示している。
【0029】
図6(A)において矢印で示す、遠方虚像21の左端の位置P11は、図6(C)に示す、非表示領域A0と第1表示領域A1の境界位置P21に対応しており、この境界位置P21における画像が遠方虚像21においては位置P11に配置される。また、図6(B)において矢印で示す、近方虚像22の右端の位置P12は、図6(C)に示す、非表示領域A0と第2表示領域A2の境界位置P22に対応している。
同様に、図8(A)において矢印で示す、遠方虚像21の左端の位置P31は、図8(C)に示す、非表示領域A0と第1表示領域A1の境界位置P41に対応しており、また、図8(B)において矢印で示す、近方虚像22の右端の位置P32は、図8(C)に示す、非表示領域A0と第2表示領域A2の境界位置P42に対応している。
【0030】
図5に示すように、画像形成部11とスクリーン12を図示上向きの方向D11に沿って移動させるとともに、図6(C)に示すように第2表示領域A2の範囲を広げると、第1表示領域A1の範囲が小さくなる。この状態において、第2反射ミラー14を図示左上向きの方向D12に移動させると、第2反射ミラー14がスクリーン12の第2表示領域A2から出射する第2イメージ光I2の進行を遮ることがなく、かつ、スクリーン12で広がった第1表示領域A1から出射して第1反射ミラー13で反射した第1イメージ光I1を第2反射ミラー14で反射させることが可能となる。これにより、図6(A)、(B)に示すように、第1表示領域A1に対応する遠方虚像21のサイズを小さくし、かつ、第2表示領域A2に対応する近方虚像22のサイズを大きくすることができる。ここで方向D11は図3に示す方向D1に平行な方向であり、方向D12は図3に示す方向D2に平行な方向である。
【0031】
一方、図7に示すように、画像形成部11とスクリーン12を図示下向きの方向D21に沿って移動させるとともに、図8(C)に示すように第1表示領域A1の範囲を広げると、第2表示領域A2の範囲が小さくなる。この状態において、第2反射ミラー14を図示右下向きの方向D22に移動させると、第2反射ミラー14がスクリーン12の第2表示領域A2から出射する第2イメージ光I2の進行を遮ることがない範囲で、スクリーン12の第1表示領域A1から出射して第1反射ミラー13で反射した第1イメージ光I1を第2反射ミラー14で反射させることが可能となる。これにより、図8(A)、(B)に示すように、第1表示領域A1に対応する遠方虚像21のサイズを大きくし、かつ、第2表示領域A2に対応する近方虚像22のサイズを小さくすることができる。ここで方向D21は図3に示す方向D1に平行な方向であり、方向D22は図3に示す方向D2に平行な方向である。
【0032】
このような構成・作用により、第1イメージ光I1と第2イメージ光I2のそれぞれに基づいた2つの虚像21、22の位置を変えることなく、一方の虚像の表示サイズを大きくすることができる。したがって、一方の虚像に含まれる情報量が多くなったときに表示サイズを大きくすることができるため、視認性を確保した、情報量に応じた表示サイズの虚像を形成することが可能となり、これによって、情報量の大小に応じた、運転者が見やすい状態で情報を表示することができる。
【0033】
以下に変形例について説明する。
上記実施形態では、遠方虚像21と近方虚像22を水平方向において左右に配置したが、スクリーン12、2枚のミラー13~14、及び、2枚の投影ミラー15~16の配置を変更することによって、鉛直方向において上下に配置することもできる。
【0034】
また、第2イメージ光I2が第1投影ミラー15に直接入射することを妨げず、かつ、第1イメージ光I1を順に反射させて第1投影ミラー15に入射させることができれば、上記実施形態の第1反射ミラー13と第2反射ミラー14に代えて、例えば、2つのプリズムや、3枚以上の反射ミラー、プリズムと反射ミラーの組合せを用いることもできる。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明に係る車載用表示装置は、運転者からの距離が異なる位置に形成される2つの虚像について、視認者による視認性を確保しつつ、情報量に応じて表示サイズを変更することができる点で有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 自動車
4 ウインドシールドガラス
5 車室空間
7 運転席
9 ダッシュボード
10 車載用表示装置
11 画像形成部
12 スクリーン
13 第1反射ミラー
14 第2反射ミラー
15 第1投影ミラー
16 第2投影ミラー
20 運転者
20A 運転者の視野
21 遠方虚像
22 近方虚像
A0 非表示領域
A1 第1表示領域
A2 第2表示領域
D1、D2、D11、D12、D21、D22 方向
I1 第1イメージ光
I2 第2イメージ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8