(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】歯科用ハンドピース及び洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース
(51)【国際特許分類】
A61C 1/07 20060101AFI20220329BHJP
A61C 3/03 20060101ALI20220329BHJP
A61C 1/08 20060101ALI20220329BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20220329BHJP
A61C 17/20 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61C1/07 A
A61C3/03
A61C1/08 S
A61C19/00 J
A61C17/20
(21)【出願番号】P 2021178835
(22)【出願日】2021-11-01
【審査請求日】2021-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000150327
【氏名又は名称】株式会社ナカニシ
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 信一
(72)【発明者】
【氏名】酒主 智弘
(72)【発明者】
【氏名】関塚 晃平
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-163585(JP,A)
【文献】特表平10-503702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0336161(US,A1)
【文献】米国特許第03427480(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/07
A61C 1/08
A61C 3/03
A61C 17/20
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体ケースと、
超音波振動子を含んで構成され、先端部が前記本体ケースのケース先端を塞ぎ、後端部が前記本体ケースのケース後端を塞いで前記本体ケース内に収容されるインサート構成体と、
前記インサート構成体の前記先端部に設けられ、前記超音波振動子からの超音波振動が伝達されるスケーラチップを着脱自在に接続するチップ接続部と、
前記インサート構成体の前記後端部に設けた洗浄液注入口から供給される洗浄液を、前記本体ケースのケース先端部まで導く洗浄液流路と、
前記本体ケースの内側に配置され、前記超音波振動子の外側を覆うハウジング部材と、
を備え、
前記洗浄液流路は、前記本体ケース内で前記インサート構成体を前記洗浄液に浸し、前記インサート構成体を浸した前記洗浄液を前記ケース先端部から排出させるケース内浸漬流路を有し、
前記ケース内浸漬流路は、前記インサート構成体と前記ハウジング部材との間の内側流路と、前記ハウジング部材と前記本体ケースとの間の外側流路とを含む、
歯科用ハンドピース。
【請求項2】
前記ハウジング部材には、前記内側流路と前記外側流路とを連通させる貫通孔が形成されている、
請求項
1に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項3】
前記ハウジング部材の内周面と外周面との少なくとも一方に、前記ハウジング部材の厚さ方向に突出する凸部又は厚さ方向に凹む凹部が形成されている、
請求項
1又は
2に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項4】
前記超音波振動子は、超音波振動源と、前記超音波振動源から発生した超音波振動を前記スケーラチップに伝達する振動伝達部材と、を備え、
前記ハウジング部材は、前記超音波振動源から前記振動伝達部材の先端部までの間を覆う先端側カラーと、前記超音波振動源から前記洗浄液注入口までの間を覆い、前記洗浄液流路に供給する前記洗浄液の注入口を有する後端側カラーとを備える、
請求項
1~
3のいずれか1項に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項5】
前記先端側カラーと前記後端側カラーの少なくとも一方は、半割筒形状の一対のカラー半体からなり、前記カラー半体同士が互いに組み合わされる際に、いずれか一方に設けられた爪部と、いずれか他方に設けられた受け部とが係合する係合部を有する、
請求項
4に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項6】
前記爪部は、前記カラー半体に形成したスリットに囲まれて形成されている、
請求項
5に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項7】
前記ケース内浸漬流路は、
前記本体ケースの前記後端部側から前記先端部側に向かって、前記外側流路の流路断面積を漸減させる流路縮小部と、
前記流路縮小部の先端で、前記ハウジング部材と前記本体ケースの一部とを互いに接触させて前記外側流路の前記洗浄液の流れの一部を規制する流路規制部と、
前記流路規制部から前記先端部側に向かって前記外側流路の流路断面積が漸増する流路拡大部と、を有する、
請求項
1~
6のいずれか1項に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項8】
前記流路拡大部から前記先端部側に向けて前記外側流路の流路断面積が漸減する流路再縮小部と、
前記流路再縮小部の前記先端部側で、前記ハウジング部材と前記本体ケースの一部とが互いに接触して前記外側流路の流れの一部を規制する外側流路規制部と、
を更に有し、
前記チップ接続部の周囲の互いに異なる排出口から、前記内側流路と前記外側流路からの前記洗浄液をそれぞれ排出する、
請求項
7に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項9】
前記洗浄液流路は、前記インサート構成体の中心軸に沿った貫通孔を通じて、前記スケーラチップのチップ側注水流路と接続される本体側注水流路を含む、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項10】
請求項
9に記載の歯科用ハンドピースと、
前記歯科用ハンドピースの後端に着脱自在に接続され、外部機器から供給される前記洗浄液を前記ケース内浸漬流路と前記本体側注水流路とに注入する洗浄アダプタと、
を備える、
洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
【請求項11】
前記洗浄アダプタは、
前記洗浄液を供給する外部機器側に接続される外部接続部と、
前記外部接続部から供給された前記洗浄液を貯留する液注入側貯留部と、
前記液注入側貯留部に連通され、前記歯科用ハンドピースの前記本体側注水流路に接続される中央流路と、
前記液注入側貯留部に連通され、前記歯科用ハンドピースの前記ケース内浸漬流路に接続される複数の周辺流路と、
を備える、
請求項
10に記載の洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
【請求項12】
前記洗浄アダプタは、
前記洗浄液を供給する外部機器側に接続される外部接続部と、
前記外部接続部にそれぞれ連通され、前記歯科用ハンドピースの前記本体側注水流路に接続される中央流路、及び前記歯科用ハンドピースの前記ケース内浸漬流路に接続される複数の周辺流路と、
複数の前記周辺流路と前記歯科用ハンドピースの前記ケース内浸漬流路との間に設けられ、複数の前記周辺流路から送られる前記洗浄液を貯留して、前記ケース内浸漬流路に供給する液送出側貯留部を備える、
請求項
10に記載の洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
【請求項13】
前記外部接続部は、前記中央流路と前記周辺流路とに連通する凹部を有し、
前記凹部の内周面に、前記外部機器の洗浄液供給口と接続される雌ねじが形成されている、
請求項
11又は
12に記載の洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
【請求項14】
前記外部接続部は、軸方向に突出する円筒状突起部を有し、
前記円筒状突起部の内側は、前記中央流路と前記周辺流路と連通している、
請求項
11又は
12に記載の洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
【請求項15】
前記外部接続部は、前記中央流路と前記周辺流路と連通する洗浄液注入孔を有し、
前記洗浄液注入孔の外側開口は、前記外部機器と係合される溝の溝底面に形成されている、
請求項
11又は
12に記載の洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ハンドピース、及び歯科用ハンドピース内に洗浄液を供給するための洗浄アダプタが接続された洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を利用して歯石等を除去する歯科用ハンドピースが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示される歯科用ハンドピースは、超音波振動子、消毒液流路、光源から光を患部に照射する光路となるグラスロッド、等を含んで構成され、患者への処置時にはハンドピース先端にスケーラチップが装着される。
このような歯科用ハンドピースは、患者に歯石除去等の洗浄処置を施す際、ハンドピース内のチップ保持部の近傍に配置されたグラスロッドとの隙間等に、血液又は唾液に含まれるタンパク質等が飛沫して残留することがある。このような残渣は、処置後における歯科用ハンドピースの洗浄、消毒、滅菌工程で処置することになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した洗浄、滅菌工程では、歯科用ハンドピースの一部を分解して、ハンドピース内部の残渣を処置しやすくする必要があり、そのための作業が煩雑であった。
【0005】
そこで本発明は、滅菌前の洗浄時において、分解作業を要さずにハンドピースの内部を十分に洗浄可能な歯科用ハンドピース、及び洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 筒状の本体ケースと、
超音波振動子を含んで構成され、先端部が前記本体ケースのケース先端を塞ぎ、後端部が前記本体ケースのケース後端を塞いで前記本体ケース内に収容されるインサート構成体と、
前記インサート構成体の前記先端部に設けられ、前記超音波振動子からの超音波振動が伝達されるスケーラチップを着脱自在に接続するチップ接続部と、
前記インサート構成体の前記後端部に設けた洗浄液注入口から供給される洗浄液を、前記本体ケースのケース先端部まで導く洗浄液流路と、
前記本体ケースの内側に配置され、前記超音波振動子の外側を覆うハウジング部材と、
を備え、
前記洗浄液流路は、前記本体ケース内で前記インサート構成体を前記洗浄液に浸し、前記インサート構成体を浸した前記洗浄液を前記ケース先端部から排出させるケース内浸漬流路を有し、
前記ケース内浸漬流路は、前記インサート構成体と前記ハウジング部材との間の内側流路と、前記ハウジング部材と前記本体ケースとの間の外側流路とを含む、
歯科用ハンドピース。
(2) (1)に記載の歯科用ハンドピースと、
前記歯科用ハンドピースの後端に着脱自在に接続され、外部機器から供給される前記洗浄液を前記ケース内浸漬流路と前記本体側注水流路とに注入する洗浄アダプタと、
を備える、
洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、滅菌前の洗浄時において、分解作業を要さずにハンドピース内部を十分に洗浄可能な構成にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、スケーラチップと洗浄アダプタとが接続された歯科用ハンドピースの外観を示す側面図である。
【
図2】
図2は、インサート構成体の概略側面図である。
【
図3】
図3は、インサート構成体の概略的な分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線に沿った概略断面図である。
【
図6】
図6は、歯科用ハンドピースの後端側の端面図である。
【
図7】
図7は、歯科用ハンドピースの先端側の端面図である。
【
図8】
図8は、歯科用ハンドピースの内部構造と洗浄液の流路とを模式的に示す説明図である。
【
図9A】
図9Aは、コネクタ部に形成される洗浄液の流路を示した概略斜視図である。
【
図9B】
図9Bは、コネクタ部に形成される洗浄液の流路を示した概略斜視図である。
【
図11】
図11は、カラー半体を組み合わせた後端側カラーの概略斜視図である。
【
図13】
図13は、先端側カラーにおける洗浄液の流れを示す説明図である。
【
図14】
図14は、第1構成例の洗浄アダプタを示す断面図である。
【
図16】
図16は、洗浄アダプタと歯科用ハンドピースとの接続状態を示す一部断面斜視図である。
【
図18】
図18は、スプレー缶のノズルに洗浄アダプタを接続した様子を示す説明図である。
【
図19】
図19は、熱水洗浄器のハンドピースホルダに洗浄アダプタを接続した様子を示す説明図である。
【
図20】
図20は、ハンドピース専用のオートクレーブ装置に接続する洗浄アダプタの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る歯科用ハンドピースの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、スケーラチップ13と洗浄アダプタ200とが接続された歯科用ハンドピース100の外観を示す側面図である。
歯科用ハンドピース100は、筒状の本体ケース11を有する。本体ケース11の先端部には、スケーラチップ13が着脱自在に接続され、本体ケース11の後端部には、詳細を後述する洗浄アダプタ200が接続される。
【0010】
本明細書においては、歯科用ハンドピース100のスケーラチップ13の接続側を「先方」、「先端側」、「前方」とし、洗浄アダプタ200の接続側を「後方」、「後端側」とし、歯科用ハンドピース100の長手方向を「軸方向」として説明する。
【0011】
<歯科用ハンドピースの構成>
図2は、インサート構成体15の概略側面図である。
歯科用ハンドピース100の本体ケース11の内部には、インサート構成体15が収容されている。
図3は、インサート構成体15の概略的な分解斜視図である。ここで示す各部材の形状は、実施形態を説明するための一例であって、これに限定されることはない。
【0012】
図2に示すように、インサート構成体15は、超音波振動子17と、先端部に設けたチップ接続部19とを備え、後端部には後述する洗浄液注入口が設けられている。本構成においては、洗浄液注入口を、不図示のハンドピース制御装置につながるホース又は洗浄機器と接続される、インサート構成体15のコネクタ部21に設けてある。インサート構成体15の先端部は本体ケース11の先端を塞ぎ、インサート構成体15の後端部は、本体ケース11の後端を塞ぐことで、インサート構成体15は、本体ケース11の内部空間を密閉する。また、超音波振動子17の外側には、超音波振動子17の先端側と後端側を覆うハウジング部23が設けられている。ハウジング部23の外側には、インサート構成体15の軸方向に沿って一対のグラスロッド25(
図2では手前側のみ点線で示している)が配置される。グラスロッド25は、コネクタ部21に接続される不図示の光コネクタから供給されるレーザ光等を、インサート構成体15の先端部まで導光する。なお、歯科用ハンドピース100は、グラスロッド25を備えない構成であってもよい。
【0013】
図3に示すように、超音波振動子17は、超音波振動を発生する超音波振動源27と、前部ホーン28と、後部ホーン29とを備える。前部ホーン28は、超音波振動源27の先端側に接続され、発生した超音波振動をスケーラチップ13(
図1)に伝達する振動伝達部材であって、その先端がチップ接続部19となっている。後部ホーン29は、超音波振動源27の後端側に接続される。
【0014】
ハウジング部23は、超音波振動源27から前部ホーン28の先端までの間を覆う先端側カラー31と、超音波振動源27から後部ホーン29の後端までの間を覆う後端側カラー33とを備える。後端側カラー33は、半割筒形状の一対のカラー半体33A,33Bからなることが好ましい。その場合の一対のカラー半体33A,33Bは、互いに組み合わされる際に、互いに係合する係合部35を有する。係合部35は、カラー半体33A,33Bのいずれか一方に設けられた爪部35Aと、いずれか他方に設けられた受け部35Bとが係合して、カラー半体33A,33B同士を一体に組み合わせる。なお、カラー半体33Aとカラー半体33Bとは同一の形状であり、それぞれの爪部35A、受け部35Bが、対応する受け部35B、爪部35Aと係合する。また、後端側カラー33のみが半割筒形状であることに限らす、先端側カラー31が半割筒形状であってもよく、双方が半割筒形状であってもよい。
【0015】
図4は、
図2のIV-IV線に沿った概略断面図である。
図5は、
図2のV-V線に沿った概略断面図である(IV-IV線及びV-V線は、後述する
図6も参照)。以下の説明では、同一の部材又は同一の部位については同一の符号を付与することで、その説明を簡単化又は省略する。
【0016】
図4、
図5に示すように、超音波振動子17の前部ホーン28と後部ホーン29とは、連結部材37を介して接続され、連結部材37の外周に振動体39が配置される。前部ホーン28、連結部材37、後部ホーン29は、それぞれ軸方向に貫通する貫通孔28a、37a、29aを有する。これら貫通孔28a、37a、29a、及びコネクタ部21の中心連結口41と後部ホーン29とを連通する接続流路30によって本体側注水流路43が形成される。本体側注水流路43は、中心連結口41からチップ接続部19までのインサート構成体15の中心軸を貫いて形成されており、患者への処置時に患部への送水等に用いられる。
【0017】
超音波振動源27の外周は、絶縁性及び耐薬品性を有するシリコンゴム等の弾性カバー45で液密に覆われている。なお、振動体39には、
図5に示す電極端子47に接続される不図示のケーブルが接続される。
【0018】
図6は、歯科用ハンドピース100の後端側の端面図である。
図6に示すように、コネクタ部21の中心軸には中心連結口41が配置される。この中心連結口41から本体側注水流路43への送液が可能となっている。また、一対の電極端子47は、コネクタ部21の有底凹部21aに配置されている。一対のグラスロッド25の末端部は、中心連結口41の両脇に配置されるようにコネクタ部21に固定されている。
【0019】
コネクタ部21におけるグラスロッド25と有底凹部21aとの間の周方向隙間は、後述する洗浄液を注入するための洗浄液注入口49(
図6にハッチング部で示す)となっている。本体ケース11の後端は、コネクタ部21の洗浄液注入口49のみ本体ケース11の内部に連通しているが、その他の部分は気密及び水密構造となっている。つまり、洗浄液注入口49以外から本体ケース11の内部に気液が侵入しないようになっている。
【0020】
図7は、歯科用ハンドピース100の先端側の端面図である。
図7に示すように、チップ接続部19の中央には、本体側注水流路43の排出口91が設けられている。チップ接続部19の外側の先端側カラー31には、一対のグラスロッド25の光出射端が固定されている。また、チップ接続部19と先端側カラー31との間の環状の隙間は、詳細を後述する洗浄液の排出口93であり、グラスロッド25と先端側カラー31との間の円弧状の隙間は、詳細を後述する洗浄液の排出口95となっている。なお、歯科用ハンドピース100がグラスロッド25を備えない場合には、先端側カラー31の光出射端は排出口95と共に密閉され、洗浄液は排出口91,95から排出される。
【0021】
<洗浄液流路>
次に、上記構成の歯科用ハンドピース100の内部を洗浄する洗浄液の流路について説明する。
図8は、歯科用ハンドピース100の内部構造と洗浄液の流路とを模式的に示す説明図である。
図8に示すように、コネクタ部21からハンドピース内に洗浄液を供給する流路は、中心連結口41から供給する中央流路FCと、洗浄液注入口49から供給する周辺流路FSとがある。中央流路FCに供給される洗浄液は、中心連結口41から本体側注水流路43を通じてチップ接続部19に送られる。これにより、本体側注水流路43が洗浄される。
【0022】
周辺流路FSに供給される洗浄液は、本体ケース11内でインサート構成体15を洗浄液に浸し、インサート構成体15を浸した洗浄液をケース先端部から排出させるケース内浸漬流路となる。この周辺流路FSは、コネクタ部21内を流れる途中で、中心連結口41に近い中心側を通る内側流路FSr1と、本体ケース11側を通る外側流路FSr2とに分かれる。
【0023】
図9A、
図9Bは、コネクタ部21に形成される洗浄液の流路を示した概略斜視図である。
図9A、
図9Bにおいては、一対の洗浄液注入口49から供給された洗浄液の一部の流路を代表して示している。
図9A、
図9Bに示すように、洗浄液注入口49から供給される洗浄液は、グラスロッド25、及びグラスロッド25をスナップフィット構造により固定するグラスロッド後端保持部51、等により形成される凹凸によって撹拌されながら流路先方に向けて流れる。コネクタ部21は、
図8に示す本体ケース11内で後端側カラー33に接続されており、内側流路FS
r1と外側流路FS
r2は、それぞれ後端側カラー33の軸方向に沿って先端側へ延び、後述する内側流路FS
t1と外側流路FS
t2となる。コネクタ部21は、後端側カラー33と別体に構成されているが、これに限らず後端側カラー33と一体にした構成であってもよい。
【0024】
図10Aは、後端側カラー33の一方のカラー半体33Aの概略斜視図である。
図10Bは、後端側カラー33の他方のカラー半体33Bの概略斜視図である。
図10A、
図10Bに示すように、後端側カラー33を構成する一対のカラー半体33A,33Bは、互いに係合する複数の爪部35A及び受け部35Bを有する。爪部35Aは、カラー半体33A,33Bにスリットを形成し、スリットによりくり抜かれた状態の突片、又はカラー半体33A,33Bの一部から突出して形成された状態の突片である。
【0025】
くり抜かれた状態の爪部35Aの周囲に形成されるスリットは、カラー半体33A,33Bを厚さ方向に貫通する貫通孔55である。また、受け部35Bには、爪部35Aの先端部を挿入するための貫通孔57が形成される。さらに、カラー半体33A,33Bの外周面には、厚さ方向に突出するリブ等の凸部59と、厚さ方向に凹む種々の溝部とが形成される。そして、グラスロッドをスナップフィット構造により固定するグラスロッド保持部61、切欠き部63も形成され、グラスロッド保持部61の周囲には貫通孔65が形成される。このように、後端側カラー33には、多くの貫通孔55,57,65と、凸部59、切欠き部63、溝等の凹部とが形成されている。
【0026】
図8に示す後端側カラー33の領域では、洗浄液は、後端側カラー33の内周側を流れる内側流路FS
t1と、後端側カラー33の外周側の本体ケース11との間を通れる外側流路FS
t2に沿って先端側に向けて流れる。
【0027】
図11は、カラー半体33A,33Bを組み合わせた後端側カラー33の概略斜視図である。
後端側カラー33の領域を洗浄液が通過する途中では、
図11に矢印で示すように、後端側カラー33に形成された貫通孔を通じて、洗浄液が内側流路FS
t1から外側流路FS
t2へ流れたり、外側流路FS
t2から内側流路FS
t1へ流れたりして、洗浄液の拡散が促進される。また、後端側カラー33に形成された凹凸部によって、洗浄液の撹拌効果が高められる。
【0028】
洗浄液は、
図11に点線で示すグラスロッド25を組み付けた場合でも、グラスロッド25と後端側カラー33との間の隙間、後端側カラー33と不図示の本体ケース11の内周面との間の隙間で流動方向を変化させながら撹拌される。
【0029】
内側流路FS
t1を流れた洗浄液は、後端側カラー33の超音波振動源27との接続端側で、矢印FS
tで示すように貫通孔を通じて外側流路FS
t2に導かれる。そして、後端側カラー33の内側流路FS
t1からの洗浄液と、外側流路FS
t2からの洗浄液とが合流した洗浄液は、超音波振動源27の外側、つまり、
図8に示す弾性カバー45の外側を流れる流路FS
vとなって先端側カラー31へ向かう。
【0030】
図12Aは、先端側カラー31の先端側から見た概略斜視図である。
図12Bは、先端側カラー31の後端側から見た概略斜視図である。
先端側カラー31は、後端側の大径部71と、大径部71から先端側に延びる小径部73とを有する。大径部71の周方向の略半分は円筒状に形成され、残りの略半分がグラスロッド25(不図示)を収容する一対の切欠き75となって形成されている。切欠き75は、径方向に対向して一対が形成されている。切欠き75の径方向内側の底部には、円筒状の大径部71の内側空間と連通する開口孔77,79が形成されている。大径部71の後端には超音波振動源27に対向する鍔部81が設けられ、大径部71の先端には本体ケース11の内周面に当接するエッジ部83が設けられている。また、円筒状の大径部71の内周面には、
図12Bに示すように、軸方向に沿ったスリット溝87が形成されている。
【0031】
小径部73は、先端側に向けて縮径する多段の略円筒状であり、その先端部には、グラスロッド25をスナップフィット構造により固定するグラスロッド先端保持部85が一対の切欠き75に対応して設けられている。グラスロッド先端保持部85は、小径部73の外周面から径方向外側に突出して設けられ、本体ケース11(不図示)の内周面と接触する。
【0032】
先端側カラー31は、
図8に示す鍔部81からエッジ部83までの間は、外側流路の流路断面積が漸減する流路縮小部A
Sとなる。流路縮小部A
Sでは、外側流路を流れる洗浄液が、先端側カラー31の内側流路と外側流路とに分かれる。
【0033】
図12Aに示すように、先端側カラー31に到達する外側流路FS
vからの洗浄液は、鍔部81を越えて先方に流れる流路FS
waと、切欠き75で不図示のグラスロッド25の隙間から先方に流れる流路FS
wbとに沿って流れる。
【0034】
図13は、先端側カラー31における洗浄液の流れを示す説明図である。
流路FS
wbの流れは、主には、大径部71の切欠き75に開口する開口孔79から先端側カラー31の内側に流入する流路FS
wcと、開口孔77から先端側カラー31の内側に流入する流路FS
wdと、開口孔77,79を越えて小径部73の外側に向かう流路FS
weとに分かれる。流路FS
wcの洗浄液は、
図12Bに示すスリット溝87に沿って整流されながら先端側カラー31の内側を先方に向けて流れる。また、流路FS
wdの洗浄液も、先端側カラー31の内側で流路FS
wcと合流して先方に向けて流れる。
【0035】
一方、流路FSwaは、大径部71のエッジ部83により外側流路が閉塞されるため、切欠き75から小径部73の外周に向かう流路FSwfとなり、流路FSweと合流して先端側カラー31の外側を流れる。
【0036】
小径部73の大径部71との接続部には、外径が漸減するテーパ状となっている。これにより、
図8に示すように、エッジ部83から先方の外側流路は、流路断面積が漸増する流路拡大部A
Eとなる。流路拡大部A
Eでは、流路幅がエッジ部83により狭められた後に広がるため、洗浄液の流動方向と流速の変化が大きくなり、洗浄液の撹拌が促進される。
【0037】
そして、
図12Aに示すように、先端側カラー31の先端部では、グラスロッド先端保持部85によって外側流路の流路断面積が狭められ、グラスロッド先端保持部85の先端縁85aでは、本体ケース11の内周面に接触して外側流路の周方向の一部が閉塞される。これにより、外側流路はグラスロッド先端保持部85に洗浄液の流れが集中する。このように、
図8に示す流路拡大部A
Eよりも先端側は、外側流路の流路断面積を再度漸減させる再縮小部A
RSとなる。再縮小部A
RSは外側流路規制部であり、再縮小部A
RSを通過する外側流路の洗浄液の一部を規制する。これにより、乱流撹拌されて洗浄液が外側流路の排出口から排出される。また、先端側カラー31の内側流路は、前部ホーン28の外周面との間を通じて、前部ホーン28のチップ接続部19の周囲に繋がっている。
【0038】
その結果、
図7に示す歯科用ハンドピース100の先端では、チップ接続部19の中心に開口する本体側注水流路43の排出口91と、チップ接続部19の外周面と先端側カラー31の内周面との間の環状の隙間である内側流路の排出口93と、グラスロッド25の径方向外側と本体ケース11との間の円弧状の隙間である外側流路の排出口95とが設けられる。排出口91からは、
図8に示す中央流路Fcから供給された洗浄液が排出され、排出口93,95からは、周辺流路FSから供給された洗浄液が排出される。
【0039】
つまり、コネクタ部21から中央流路FCで中心連結口41に供給された洗浄液は、本体側注水流路43を洗浄して、排出口91から排出される。また、コネクタ部21から周辺流路FSで洗浄液注入口49に供給された洗浄液は、本体ケース11の内周面と超音波振動子17の外周面との間で、後端側カラー33の内周側及び外周側を流れ、超音波振動源27の外側を通り、先端側カラー31の内周側及び外周側を流れて、排出口93及び95から排出される。
【0040】
このように、周辺流路FSにおいては、歯科用ハンドピース100の内側に配置されるインサート構成体15を洗浄液に浸し、インサート構成体15を浸した洗浄液を排出口93,95から排出する。したがって、歯科用ハンドピース100を患者への処置に使用して、ハンドピース内に異物等の侵入により残渣が生じても、歯科用ハンドピース100の洗浄工程において、洗浄液がハンドピース内を流れることで残渣を確実に処置できる。さらに、インサート構成体15に電気部品が内蔵された場合、例えば静電気等により付着した塵埃等の異物も洗浄液で洗い流すことができる。
【0041】
一般に、残渣は狭い隙間に付着しやすいため、通常のハンドピース外側から洗浄する方法では、残渣の確実な処置が困難であり、分解清掃が必要となる。しかし、上記構成の歯科用ハンドピース100によれば、分解することなくハンドピース内部を簡単に洗浄できる。つまり、ハンドピース内部を洗浄液で満たすことで、インサート構成体15が洗浄液に浸漬された状態となり、インサート構成体15に付着した汚れが浮き上がる。そして、インサート構成体15を漬けた洗浄液を排出することで、浮き上がった汚れが排出される。しかも洗浄液は、ハンドピース内部で種々の凹凸、貫通孔等により攪拌されながらハンドピース内部を隅々まで流れるため、その液流の勢いによって洗浄効果が向上する。即ち、ハンドピース内部は、インサート構成体15の各部の貫通孔、突起及び溝に加え、スナップフィット構造の係合部(爪部、受け部)を多用した凹凸構造となっており、これにより、洗浄液の流動方向、流路断面積が変化して、洗浄液が淀むことなく十分に撹拌される。その結果、洗浄液による残渣の処置効果が向上する。
【0042】
また、歯科用ハンドピース100は、洗浄液の流路が一方向に沿った流路となっているため、ハンドピース内部から外部への洗浄液の排出が円滑となり、ハンドピース内部での液溜まりが生じにくい。
【0043】
また、ハンドピース内部に配置される電気部品である超音波振動源27は、弾性カバー45で液密に覆われており、電気部品の内部への浸水が防止されている。さらに、弾性カバー45が絶縁性及び耐薬品性を有することで、洗浄処理の工程から電気部品が保護されるようになっている。よって、ハンドピース内部に洗浄液を満たした場合でも、電気部品に影響が及ぶことがない。
【0044】
上記構成によれば、洗浄処理が煩雑化することなく高い洗浄効果が得られ、各国で規定される歯科用ハンドピース洗浄処理のガイドラインの判定を確実にクリアできる。
【0045】
<洗浄アダプタ>
次に、洗浄アダプタ200について説明する。
洗浄アダプタ200は、
図1に示すように歯科用ハンドピース100の後端部に接続され、洗浄液を歯科用ハンドピース100に供給する。一般に、歯科用ハンドピース100には、ハンドピース洗浄、消毒用の各種の外部機器である洗浄機器が接続可能に提供されており、歯科用ハンドピースの使用者は、その歯科用ハンドピースに対応する洗浄アダプタを介して洗浄機器に接続して、洗浄、消毒処理を行っている。
【0046】
(洗浄アダプタの第1構成例)
図14は、第1構成例の洗浄アダプタ200を示す断面図である。
図15は、
図14に示す洗浄アダプタ200の分解図である。
図16は、洗浄アダプタ200と歯科用ハンドピース100との接続状態を示す一部断面斜視図である。
図17は、洗浄アダプタ200の先端側の端面図である。
【0047】
図14、
図15に示すように、洗浄アダプタ200は、コネクタ本体111と、注水流路接続部113と、洗浄機器接続部115とを備える。コネクタ本体111は、
図16に示すように、先端側に凹部117を形成する鍔部119を有する。鍔部119は、コネクタ部21の外周面に嵌合されて、歯科用ハンドピース100と接続される。また、コネクタ本体111の後端側の外周面には、洗浄機器接続部115を固定する雄ねじ121が形成されている。さらに、コネクタ本体111は、
図14に示す中心軸Lcに沿った貫通孔123と、貫通孔123を中心とする径方向外側に複数の周辺孔125とが形成される。貫通孔123の内周面には雌ねじ127が形成されている。また、凹部117の底面には、鍔部119の内周面よりも小径の座ぐり部129が形成され、この座ぐり部129に複数の周辺孔125が開口している。
【0048】
複数の周辺孔125は、
図17に示すように、円周方向に等間隔で例えば4箇所に設けられているが、その個数はこれに限らない。
【0049】
注水流路接続部113は、
図14に示すコネクタ本体111の中心軸Lc上に配置され、後端側に形成された雄ねじ131がコネクタ本体111の雌ねじ127に締結される。また、注水流路接続部113の先端側の接続端133は、凹部117の底面から突出して、歯科用ハンドピース100の中心連結口41(
図16参照)に接続される。注水流路接続部113には、軸方向に沿って貫通する貫通孔134が形成されている。
【0050】
接続端133の外周には、薄肉円筒体を軸方向のスリットで分断した複数の薄肉可撓ばね136が設けられている。薄肉可撓ばね136は、接続端133に挿入された中心連結口41を自身の弾性によって外側から内側に押圧して挟み込む。この薄肉可撓ばね136は、接続端133と中心連結口41との密閉性を向上させる。また、接続端133の先端の外周面には、Oリング138が配置されている。Oリング138は、中心連結口41の内周面に圧接されて液密性を向上させる。これとともに、中心連結口41の抜き差し方向への摩擦力を発生する。この摩擦力が、歯科用ハンドピース100が洗浄中に洗浄液の圧力による脱落を抑制する。このように、注水流路接続部113と中心連結口41との接続構造は、洗浄液の内圧に耐えつつ、歯科用ハンドピース100のより安定した保持を可能にしている。
【0051】
洗浄機器接続部115は、
図15に示すように、先端側に凹部135を形成する鍔部137を有する。鍔部137の内周面には、
図14に示すコネクタ本体111の雄ねじ121に締結される雌ねじ139が形成されている。洗浄機器接続部115の後端側には、洗浄機器に接続する軸部141が設けられる。軸部141には中心軸Lcに沿って貫通孔143が設けられ、貫通孔143の内周面に雌ねじ145が形成されている。また、凹部135と貫通孔143との間には、座ぐり部147が形成されている。
【0052】
上記構成の洗浄アダプタ200においては、
図14に示すように、後端側に、貫通孔143に連通する座ぐり部147とコネクタ本体111との間に液注入側貯留部151となる空間が画成される。液注入側貯留部151には、複数の周辺孔125の後端と、注水流路接続部113の貫通孔134の後端とが共に開口する。また、コネクタ本体111のコネクタ部21との接続側には、複数の周辺孔125に連通する座ぐり部129が形成されている。座ぐり部129とコネクタ部21との間には、液送出側貯留部153が画成される。なお、液送出側貯留部153は、注水流路接続部113の貫通孔134とは連通していない。
【0053】
(洗浄機器との接続)
次に、上記構成の洗浄アダプタ200と洗浄機器に接続した場合の洗浄液の流れを説明する。
洗浄機器との接続形態としては、例えば次に示す形態が挙げられる。
(1)洗浄液(消毒液、乾燥空気の場合もある)を貯留したスプレー缶(例えば、ALPRO MEDICAL GmbH社製のWL-clean)のノズル、又は洗浄液を噴射するスプレーガンのノズルに洗浄アダプタ200を接続する形態。
(2)密閉洗浄庫内にハンドピースを配置すると共に、配置したハンドピース内部に洗浄液を流す熱水洗浄器(例えば、タカラベルモント社製の速洗(登録商標))において、ハンドピースを保持するとともにハンドピース内部に洗浄液を供給するハンドピースホルダに、洗浄アダプタ200を接続する形態。
(3)ハンドピース専用のオートクレーブ装置(例えば、Dentsply Sirona社製のDAC UNIVERSAL 2 GUI)に、専用の洗浄アダプタを接続する形態。
【0054】
図18は、スプレー缶のノズルに洗浄アダプタ200を接続した様子を示す説明図である。
上記(1)の場合は、スプレー缶161の噴射口にノズルアタッチメント163を取り付ける。ノズルアタッチメント163は、その先端に洗浄アダプタ200の雌ねじ145に締結可能な雄ねじ165が形成されている。雄ねじ165を雌ねじ145に締結することでノズルアタッチメント163を洗浄アダプタ200に取り付ける。
【0055】
そして、スプレー缶161から洗浄液を噴射させると、洗浄液は、液注入側貯留部151に供給される。液注入側貯留部151は供給された洗浄液で満たされて、洗浄液が液注入側貯留部151から注水流路接続部113の貫通孔134を通じて本体側注水流路43(
図8参照)に送られる。この流路が前述した中央流路FCとなる。
【0056】
また、液注入側貯留部151から複数の周辺孔125を通じて洗浄液注入口49(
図8参照)に送られる。この流路が前述した周辺流路FSとなる。ここで、各周辺孔125の先端側の開口を通過した洗浄液は、一旦、液送出側貯留部153に溜まる。液送出側貯留部153は、凹部117に接続されたコネクタ部21の後端と座ぐり部129との間の密閉空間であり、この空間に満たされた洗浄液の内圧によって、洗浄液をコネクタ部21の洗浄液注入口49に安定して供給できる。
【0057】
液送出側貯留部153は、周辺孔125と洗浄液注入口49との周方向位置が重ならず、相互に位置ずれが生じる場合でも、各洗浄液注入口49から均等に洗浄液を供給できる。また、洗浄液の供給量を容易に増加できる。
【0058】
図19は、熱水洗浄器のハンドピースホルダ167に洗浄アダプタ200を接続した様子を示す説明図である。
熱水洗浄器のハンドピースホルダ167は、例えばシリコンゴム等の柔軟な弾性体であり、ホルダ凹部169の底部の洗浄液供給口171から洗浄液が供給される。
上記(2)の場合は、洗浄アダプタ200の軸部141をホルダ凹部169に差し込むだけの簡単な操作で、歯科用ハンドピースを熱水洗浄器に固定できる。この場合の洗浄液の流れは、前述した
図18の場合と同様である。
【0059】
(洗浄アダプタの第2構成例)
図20は、ハンドピース専用のオートクレーブ装置に接続する洗浄アダプタ210の構成を示す断面図である。
上記(3)の場合の洗浄アダプタ210は、前述の
図14に示すコネクタ本体111と洗浄機器接続部115とが分離した構造とは異なり、コネクタ本体173と注水流路接続部113とから構成される。
【0060】
コネクタ本体173の後端には、オートクレーブ装置に固定する溝部175を有する台座177が設けられている。溝部175の底面には、洗浄液が注入される注入孔179A,179Bが形成され、オートクレーブ装置の種類によっていずれか一方が選択的に使用される。注入孔179A,179Bの先端側は、複数の周辺孔125及び注水流路接続部113の貫通孔134に連通する通し孔181に接続されている。通し孔181は、両端部が適宜な栓体183によって閉塞されて、前述した液注入側貯留部151となる空間が画成されている。
【0061】
この洗浄アダプタ210によれば、注入孔179A,179Bのいずれかから注入された洗浄液が、貫通孔134を通じて本体側注水流路43(
図8参照)に送られ、中央流路FCに供給される。また、周辺孔125を通じて洗浄液注入口49(
図8参照)に送られ、周辺流路FSに送られる。周辺孔125の先端側には、液送出側貯留部153となる空間が画成され、洗浄液注入口49への洗浄液の安定供給が可能となる。
【0062】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0063】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 筒状の本体ケースと、
超音波振動子を含んで構成され、先端部が前記本体ケースのケース先端を塞ぎ、後端部が前記本体ケースのケース後端を塞いで前記本体ケース内に収容されるインサート構成体と、
前記インサート構成体の前記先端部に設けられ、前記超音波振動子からの超音波振動が伝達されるスケーラチップを着脱自在に接続するチップ接続部と、
前記インサート構成体の前記後端部に設けた洗浄液注入口から供給される洗浄液を、前記本体ケースのケース先端部まで導く洗浄液流路と、
を備え、
前記洗浄液流路は、前記本体ケース内で前記インサート構成体を前記洗浄液に浸し、前記インサート構成体を浸した前記洗浄液を前記ケース先端部から排出させるケース内浸漬流路を有する、
歯科用ハンドピース。
この歯科用ハンドピースによれば、コネクタ部から供給された洗浄液が本体ケース内でインサート構成体に浸され、インサート構成体を浸した洗浄液がケース先端部から排出される。このため、本体ケース内に溜まった残渣を、歯科用ハンドピースを分解することなく、洗浄液によって確実に処置できる。
【0064】
(2) 前記本体ケースの内側に配置され、前記超音波振動子の外側を覆うハウジング部材を備え、
前記ケース内浸漬流路は、前記インサート構成体と前記ハウジング部材との間の内側流路と、前記ハウジング部材と前記本体ケースとの間の外側流路とを含む、(1)に記載の歯科用ハンドピース。
この歯科用ハンドピースによれば、本体ケース内でハウジング部材の内側流路と外側流路とのそれぞれに洗浄液を流すことにより、洗浄液が撹拌されて本体ケース内の汚れを効率よく処置できる。
【0065】
(3) 前記ハウジング部材には、前記内側流路と前記外側流路とを連通させる貫通孔が形成されている、(2)に記載の歯科用ハンドピース。
この歯科用ハンドピースによれば、貫通孔を通じてハウジング部材の内側から外側、外側から内側へ洗浄液が流れるため、ハウジング部材の全体に洗浄液を流動させることができ、淀みが生じにくくなる。
【0066】
(4) 前記ハウジング部材の内周面と外周面との少なくとも一方に、前記ハウジング部材の厚さ方向に突出する凸部又は厚さ方向に凹む凹部が形成されている、(2)又は(3)に記載の歯科用ハンドピース。
この歯科用ハンドピースによれば、凸部又は凹部によって洗浄液の撹拌効果が高められる。
【0067】
(5) 前記超音波振動子は、超音波振動源と、前記超音波振動源から発生した超音波振動を前記スケーラチップに伝達する振動伝達部材と、を備え、
前記ハウジング部材は、前記超音波振動源から前記振動伝達部材の先端部までの間を覆う先端側カラーと、前記超音波振動源から前記洗浄液注入口までの間を覆い、前記洗浄液流路に供給する前記洗浄液の注入口を有する後端側カラーとを備える、(2)~(4)のいずれか1つに記載の歯科用ハンドピース。
この歯科用ハンドピースによれば、先端側カラーと後端側カラーとに沿った洗浄液の流路が形成される。
【0068】
(6) 前記先端側カラーと前記後端側カラーの少なくとも一方は、半割筒形状の一対のカラー半体からなり、前記カラー半体同士が互いに組み合わされる際に、いずれか一方に設けられた爪部と、いずれか他方に設けられた受け部とが係合する係合部を有する、(5)に記載の歯科用ハンドピース。
この歯科用ハンドピースによれば、係合部の爪部と受け部により形成される凹凸によって、洗浄液の撹拌効果が高められる。
【0069】
(7) 前記爪部は、前記カラー半体に形成したスリットに囲まれて形成されている、(6)に記載の歯科用ハンドピース。
この歯科用ハンドピースによれば、爪部がスリットに囲まれて形成された構成であることで、爪部の周囲には貫通孔が形成される。この貫通孔を通じて、洗浄液がハウジング部材の内側と外側に流れるようになる。
【0070】
(8) 前記ケース内浸漬流路は、
前記本体ケースの前記後端部側から前記先端部側に向かって、前記外側流路の流路断面積を漸減させる流路縮小部と、
前記流路縮小部の先端で、前記ハウジング部材と前記本体ケースの一部とを互いに接触させて前記外側流路の前記洗浄液の流れの一部を規制する流路規制部と、
前記流路規制部から前記先端部側に向かって前記外側流路の流路断面積が漸増する流路拡大部と、を有する、(2)~(7)のいずれか1つに記載の歯科用ハンドピース。
この歯科用ハンドピースによれば、洗浄液の外側流路が流路縮小部で狭められ、流路規制部で、その一部の流路が規制され、更に流路拡大部で外側流路が広げられることによる流路断面積の縮小と拡大とによって、洗浄液の撹拌が促進される。
【0071】
(9) 前記流路拡大部から前記先端部側に向けて前記外側流路の流路断面積が漸減する流路再縮小部と、
前記流路再縮小部の前記先端部側で、前記ハウジング部材と前記本体ケースの一部とが互いに接触して前記外側流路の流れの一部を規制する外側流路規制部と、
を更に有し、
前記チップ接続部の周囲の互いに異なる排出口から、前記内側流路と前記外側流路からの前記洗浄液をそれぞれ排出する、
(8)に記載の歯科用ハンドピース。
この歯科用ハンドピースによれば、流路再縮小部を通過する外側流路の洗浄液の一部が、外側流路規制部によって規制されることで、最も残渣の多い先端部側で乱流撹拌されて洗浄液が外側流路の排出口から排出される。
【0072】
(10) 前記洗浄液流路は、前記インサート構成体の中心軸に沿った貫通孔を通じて、前記スケーラチップのチップ側注水流路と接続される本体側注水流路を含む、(1)~(19)のいずれか1つに記載の歯科用ハンドピース。
この歯科用ハンドピースによれば、本体側注水流路に洗浄液を流すことで、本体側注水流路内を洗浄できる。
【0073】
(11) (10)に記載の歯科用ハンドピースと、
前記歯科用ハンドピースの後端に着脱自在に接続され、外部機器から供給される前記洗浄液を前記ケース内浸漬流路と前記本体側注水流路とに注入する洗浄アダプタと、
を備える、洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
この洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピースによれば、外部機器からの洗浄液をケース内浸漬流路と本体側注水流路とに供給できる。
【0074】
(12) 前記洗浄アダプタは、
前記洗浄液を供給する外部機器側に接続される外部接続部と、
前記外部接続部から供給された前記洗浄液を貯留する液注入側貯留部と、
前記液注入側貯留部に連通され、前記歯科用ハンドピースの前記本体側注水流路に接続される中央流路と、
前記液注入側貯留部に連通され、前記歯科用ハンドピースの前記ケース内浸漬流路に接続される複数の周辺流路と、
を備える、(11)に記載の洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
この洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピースによれば、外部接続部からの洗浄液を、液注入側貯留部を通じて中央流路と周辺流路との双方に安定して注入できる。
【0075】
(13) 前記洗浄アダプタは、
前記洗浄液を供給する外部機器側に接続される外部接続部と、
前記外部接続部にそれぞれ連通され、前記歯科用ハンドピースの前記本体側注水流路に接続される中央流路、及び前記歯科用ハンドピースの前記ケース内浸漬流路に接続される複数の周辺流路と、
複数の前記周辺流路と前記歯科用ハンドピースの前記ケース内浸漬流路との間に設けられ、複数の前記周辺流路から送られる前記洗浄液を貯留して、前記ケース内浸漬流路に供給する液送出側貯留部を備える、(11)に記載の洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
この洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピースによれば、複数の周辺流路から供給された洗浄液が液送出拡散部に溜められて、液送出拡散部に満たされた洗浄液の内圧によって、洗浄液がケース内浸漬流路に供給される。そのため、複数の周辺流路の形成位置によらずに、洗浄液をケース内浸漬流路に安定して供給できる。
【0076】
(14) 前記外部接続部は、前記中央流路と前記周辺流路とに連通する凹部を有し、
前記凹部の内周面に、前記外部機器の洗浄液供給口と接続される雌ねじが形成されている、(12)又は(13)に記載の洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
この洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピースによれば、雌ねじと、外部機器の洗浄液供給口の雄ねじとを締結して、外部機器から洗浄液を歯科用ハンドピース側に送り込むことができる。
【0077】
(15) 前記外部接続部は、軸方向に突出する円筒状突起部を有し、
前記円筒状突起部の内側は、前記中央流路と前記周辺流路と連通している、(12)又は(13)に記載の洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
この洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピースによれば、外部機器の洗浄液供給口を有するハンドピースホルダのホルダ凹部に円筒状突起部を挿入することで、ハンドピースホルダの内周面と円筒状突起部の外周面とが密着して、外部機器から洗浄液を歯科用ハンドピース側に送り込むことができる。
【0078】
(16) 前記外部接続部は、前記中央流路と前記周辺流路と連通する洗浄液注入孔を有し、
前記洗浄液注入孔の外側開口は、前記外部機器と係合される溝の溝底面に形成されている、(12)又は(13)に記載の洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピース。
この洗浄アダプタ付き歯科用ハンドピースによれば、外部接続部の溝を外部機器に係合させた状態で、洗浄液注入孔を通じて外部機器から洗浄液を歯科用ハンドピース側に送り込むことができる。
【符号の説明】
【0079】
11 本体ケース
13 スケーラチップ
15 インサート構成体
17 超音波振動子
19 チップ接続部
21 コネクタ部
21a 有底凹部
23 ハウジング部
25 グラスロッド
27 超音波振動源
28 前部ホーン
29 後部ホーン
30 接続流路
31 先端側カラー
33 後端側カラー
33A,33B カラー半体
35 係合部
35A 爪部
35B 受け部
37 連結部材
39 振動体
41 中心連結口
43 本体側注水流路
45 弾性カバー
47 電極端子
49 洗浄液注入口
51 グラスロッド後端保持部
55 貫通孔
57 貫通孔
59 凸部
61 グラスロッド保持部
63 切欠き部
65 貫通孔
71 大径部
73 小径部
75 切欠き
77,79 開口孔
81 鍔部
83 エッジ部
85 グラスロッド先端保持部
85a 先端縁
87 スリット溝
91,93,95 排出口
100 歯科用ハンドピース
111 コネクタ本体
113 注水流路接続部
115 洗浄機器接続部
117 凹部
119 鍔部
121 雄ねじ
123 貫通孔
125 周辺孔
127 雌ねじ
129 座ぐり部
131 雄ねじ
133 接続端
134 貫通孔
135 凹部
136 薄肉可撓ばね
137 鍔部
138 Oリング
139 雌ねじ
141 軸部
143 貫通孔
145 雌ねじ
147 座ぐり部
151 液注入側貯留部
153 液送出側貯留部
161 スプレー缶
163 ノズルアタッチメント
165 雄ねじ
167 ハンドピースホルダ
169 ホルダ凹部
171 洗浄液供給口
173 コネクタ本体
175 溝部
177 台座
179A,179B 注入孔
183 栓体
200 洗浄アダプタ
【要約】
【課題】滅菌前の洗浄時において、分解作業を要さずにハンドピースの内部を十分に洗浄可能にする。
【解決手段】歯科用ハンドピース100は、筒状の本体ケース11と、超音波振動子17を含んで構成され、本体ケース11のケース先端とケース後端とを塞いで本体ケース11内に収容されるインサート構成体15と、インサート構成体15の先端部に設けられ、超音波振動子17からの超音波振動が伝達されるスケーラチップ13を着脱自在に接続するチップ接続部19と、インサート構成体15の後端部に設けた洗浄液注入口から供給される洗浄液を、本体ケースのケース先端部まで導く洗浄液流路とを備える。洗浄液流路は、本体ケース11内でインサート構成体15を洗浄液に浸し、インサート構成体15を浸した洗浄液をケース先端部から排出させるケース内浸漬流路を有する。
【選択図】
図1