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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】延伸フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/04 20060101AFI20220329BHJP
   B29C 55/20 20060101ALI20220329BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B29C55/04
B29C55/20
G02B5/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021187542
(22)【出願日】2021-11-18
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2021057883
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021134524
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150212
【弁理士】
【氏名又は名称】上野山 温子
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】清水 享
(72)【発明者】
【氏名】北岸 一志
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/073019(WO,A1)
【文献】特開2017-009883(JP,A)
【文献】国際公開第2014/73021(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00-55/30
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のフィルムの幅方向の左右端部をそれぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること、
該左右のクリップを少なくとも一方のクリップのクリップピッチを変化させながら左右対称の軌道を描くように走行移動させて、該フィルムを斜め延伸すること、および
該フィルムを熱固定すること、を含み、
該斜め延伸において、該左右のクリップの一方のクリップが他方のクリップよりも先行するように走行移動させ、
該熱固定において、該フィルムの該先行する一方のクリップで把持される端部側の温度が他方の端部側の温度よりも高く、かつ、等温線が該フィルムの幅方向に対して斜め方向に延びる温度勾配領域が形成される、延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記温度勾配領域における幅方向の両端の温度差の最大値が、0.3℃~25℃である、請求項1に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記等温線の延びる方向と前記フィルムの幅方向とのなす角度が、前記フィルムの搬送方向上流側から下流側に向かって次第に大きくなる、請求項1または2に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記温度勾配領域の形成が、前記フィルムに向かって熱風を供給することによって行われる、請求項1から3のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記熱風の風速が、3m/min~45m/minである、請求項4に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記斜め延伸が、(i)前記一方のクリップのクリップピッチをPからPまで増大させつつ、前記他方のクリップのクリップピッチをPからPまで減少させること、および、(ii)該減少したクリップピッチと該増大したクリップピッチとが所定の等しいピッチとなるように、それぞれのクリップのクリップピッチを変化させることを含む、請求項1から5のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項7】
/Pが1.25~1.75であり、P/Pが0.50以上1未満である、請求項6に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の製造方法によって長尺状の延伸フィルムを得ること、および
長尺状の光学フィルムと該長尺状の延伸フィルムとを搬送しながら、その長尺方向を揃えて連続的に貼り合わせることを含む、光学積層体の製造方法。
【請求項9】
前記光学フィルムが、偏光板であり、
前記延伸フィルムが、λ/4板またはλ/2板である、請求項8に記載の光学積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸フィルムの製造方法および光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)等の画像表示装置において、表示特性の向上や反射防止を目的として円偏光板が用いられている。円偏光板は、代表的には、偏光子と位相差フィルム(代表的にはλ/4板)とが、偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが45°の角度をなすようにして積層されている。従来、位相差フィルムは、代表的には、縦方向および/または横方向に一軸延伸または二軸延伸することにより作製されているので、その遅相軸は、多くの場合、長尺状のフィルム原反の横方向(幅方向)または縦方向(長尺方向)に発現する。結果として、円偏光板を作製するには、位相差フィルムを幅方向または長尺方向に対して45°の角度をなすように裁断し、1枚ずつ貼り合わせる必要があった。
【0003】
また、円偏光板の広帯域性を確保するために、λ/4板とλ/2板の二枚の位相差フィルムを積層させる場合もある。その場合はλ/2板は偏光子の吸収軸に対して75°の角度をなすように積層し、λ/4板は偏光子の吸収軸に対して15°の角度をなすように積層する必要がある。この場合でも、円偏光板を作製する際には、位相差フィルムを幅方向または長尺方向に対して15°および75°の角度をなすように裁断し、1枚ずつ貼り合わせる必要があった。
【0004】
さらに別の実施形態においては、ノートPCからの光が、キーボード等に映り込むのを回避するために、偏光板からでた直線偏光の向きを90°回転させる目的で、偏光板の視認側にλ/2板を用いることがある。この場合でも、位相差フィルムを幅方向または長尺方向に対して45°の角度をなすように裁断し、1枚ずつ貼り合わせる必要があった。
【0005】
このような問題を解決するために、長尺状のフィルムの幅方向の左右端部をそれぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持し、該左右のクリップの少なくとも一方のクリップピッチを変化させて、長尺方向に対して斜め方向に延伸(以下、「斜め延伸」とも称する)することにより、位相差フィルムの遅相軸を斜め方向に発現させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、このような技術で得られた斜め延伸フィルムにおいては、弛み(たるみ)やシワが生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4845619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、斜め延伸されたフィルムに生じた弛みおよび/またはシワを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの局面によれば、長尺状のフィルムの幅方向の左右端部をそれぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること、該左右のクリップを少なくとも一方のクリップのクリップピッチを変化させながら左右対称の軌道を描くように走行移動させて、該フィルムを斜め延伸すること、および、該フィルムを熱固定すること、を含み、該斜め延伸において、該左右のクリップの一方のクリップが他方のクリップよりも先行するように走行移動させ、該熱固定において、該フィルムの該先行する一方のクリップで把持される端部側の温度が他方の端部側の温度よりも高い温度勾配領域が形成される、延伸フィルムの製造方法が提供される。
1つの実施形態において、上記温度勾配領域における幅方向の両端の温度差の最大値が、0.3℃~25℃である。
1つの実施形態において、等温線が前記フィルムの幅方向に対して斜め方向に延びるように上記温度勾配領域が形成される。
1つの実施形態において、上記温度勾配領域の形成が、上記フィルムに向かって熱風を供給することによって行われる。
1つの実施形態において、上記熱風の風速が、3m/min~45m/minである。
1つの実施形態において、上記斜め延伸が、(i)前記一方のクリップのクリップピッチをPからPまで増大させつつ、前記他方のクリップのクリップピッチをPからPまで減少させること、および、(ii)該減少したクリップピッチと該増大したクリップピッチとが所定の等しいピッチとなるように、それぞれのクリップのクリップピッチを変化させることを含む。
1つの実施形態において、P/Pが1.25~1.75であり、P/Pが0.50以上1未満である。
本発明の別の局面によれば、上記製造方法によって長尺状の延伸フィルムを得ること、および、長尺状の光学フィルムと該長尺状の延伸フィルムとを搬送しながら、その長尺方向を揃えて連続的に貼り合わせることを含む、光学積層体の製造方法が提供される。
1つの実施形態において、上記光学フィルムが、偏光板であり、上記延伸フィルムが、λ/4板またはλ/2板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の延伸フィルムの製造方法においては、斜め延伸の際に先行するクリップで把持される端部側が他方の端部側よりも温度が高い温度勾配領域を有する熱固定ゾーンで熱固定を行う。これにより、斜め延伸に起因して発生した残留応力の不均一性を低減できる結果、弛みおよび/またはシワが解消または低減された長尺状の斜め延伸フィルムが得られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の延伸フィルムの製造方法に用いられ得る延伸装置の一例の全体構成を説明する概略平面図である。
図2図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図である。
図3図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図である。
図4A】斜め延伸の1つの実施形態におけるクリップピッチのプロファイルを示す概略図である。
図4B】斜め延伸の1つの実施形態におけるクリップピッチのプロファイルを示す概略図である。
図5】熱固定ゾーンDが有する温度勾配の一例を説明する概略平面図である。
図6A】温度勾配領域の形成に使用され得る熱風式加熱装置を説明する概略図である。
図6B】温度勾配領域の形成に使用され得る熱風式加熱装置の配置例を説明する概略平面図である。
図7】本発明の製造方法により得られる位相差フィルムを用いた円偏光板の概略断面図である。
図8】弛み量の測定方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。なお、本明細書において、「縦方向のクリップピッチ」とは、縦方向に隣接するクリップの走行方向における中心間距離を意味する。また、長尺状のフィルムの幅方向の左右関係は、特段の記載がない限り、該フィルムの搬送方向に向かっての左右関係を意味する。
【0012】
A.延伸フィルムの製造方法
本発明の実施形態による延伸フィルムの製造方法は、
長尺状のフィルムの幅方向の左右端部をそれぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること(把持工程)、
該左右のクリップを少なくとも一方のクリップのクリップピッチを変化させながら左右対称の軌道を描くように走行移動させて、該フィルムを斜め延伸すること(斜め延伸工程)、および、
該フィルムを熱固定すること(熱固定工程)、を含む。
本実施形態の製造方法においては、斜め延伸において、該左右のクリップの一方のクリップが他方のクリップよりも先行するように走行移動させ、熱固定において、該フィルムの該先行する一方のクリップで把持される端部側の温度が他方の端部側の温度よりも高い温度勾配領域が形成される。代表的には、本実施形態の製造方法は、予熱工程をさらに含む。具体的には、左右のクリップによって把持されたフィルムは、予熱され、その後、斜め延伸に供される。
【0013】
上記斜め延伸は、例えば、長尺状のフィルムの幅方向の左右端部を把持しながら、互いに異なる速度で左右対称の軌道を描くように走行移動し得る左右のクリップを備えたテンター式同時二軸延伸装置を用いて行われ得る。このようなテンター式同時二軸延伸装置によれば、フィルムの左右端部を互いに異なる延伸倍率で延伸することができる。よって、フィルムを把持した際の一対の左右のクリップの内、一方のクリップの走行速度を他方のクリップの走行速度よりも高くする(フィルムの一方の端部を他方の端部よりも高い延伸倍率で延伸する)ことにより、一方のクリップを他方のクリップよりも先行して走行移動させることができ、当該先行する一方のクリップと後行する他方のクリップとの間でフィルムが斜め方向に延伸される。このとき、他方よりも先行して延伸ゾーンの終端に達した方のクリップで把持されている側が先行するクリップで把持される側(延伸倍率が高い側)である。
【0014】
図1は、本発明の製造方法に用いられ得る延伸装置の一例の全体構成を説明する概略平面図である。延伸装置100においては、フィルムの入口側から出口側へ向けて、把持ゾーンA、予熱ゾーンB、延伸ゾーンC、熱固定ゾーンDおよび開放ゾーンEがこの順に設けられている。これらのそれぞれのゾーンは、延伸対象となるフィルムが実質的に把持、予熱、斜め延伸、熱固定および開放されるゾーンを意味し、機械的、構造的に独立した区画を意味するものではない。また、図1の延伸装置におけるそれぞれのゾーンの長さの比率は、実際の長さの比率と異なることに留意されたい。
【0015】
図1では、図示されていないが、延伸ゾーンCと熱固定ゾーンDとの間には、必要に応じて任意の適切な処理をするためのゾーンが設けられてもよい。このような処理としては、横収縮処理等が挙げられる。また、同様に図示されていないが、上記延伸装置は、代表的には、予熱ゾーンBから開放ゾーンEまでを加熱環境とするための加熱装置(例えば、熱風式、近赤外式、遠赤外式等の各種オーブン)を備えている。
【0016】
延伸装置100は、平面視で、左右両側に、フィルム把持用の多数のクリップ20を有する無端ループ10Lと無端ループ10Rとを左右対称に有する。なお、本明細書においては、フィルムの入口側から見て左側の無端ループを左側の無端ループ10L、右側の無端ループを右側の無端ループ10Rと称する。左右の無端ループ10L、10Rのクリップ20は、それぞれ、基準レール70に案内されてループ状に巡回移動する。左側の無端ループ10Lのクリップ20は反時計廻り方向に巡回移動し、右側の無端ループ10Rのクリップ20は時計廻り方向に巡回移動する。このとき、上述の通り、無端ループ10Lと無端ループ10Rとが平面視で左右対称に構成されていることから、左側の無端ループ10Lのクリップ20および右側の無端ループ10Rのクリップ20は、把持ゾーンAから開放ゾーンEに向けて、左右対称の軌道を描くように走行移動する。
【0017】
上記延伸装置100の把持ゾーンAおよび予熱ゾーンBでは、左右の無端ループ10L、10Rは、延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。延伸ゾーンCでは、予熱ゾーンBの側から熱固定ゾーンDに向かうに従って左右の無端ループ10L、10Rの離間距離が上記フィルムの延伸後の幅に対応するまで徐々に拡大する構成とされている。熱固定ゾーンDおよび開放ゾーンEでは、左右の無端ループ10L、10Rは、上記フィルムの延伸後の幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。ただし、左右の無端ループ10L、10Rの構成は上記図示例に限定されない。例えば、左右の無端ループ10L、10Rは、把持ゾーンAから開放ゾーンEまで延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されていてもよい。
【0018】
左側の無端ループ10Lのクリップ(左側のクリップ)20および右側の無端ループ10Rのクリップ(右側のクリップ)20は、それぞれ独立して巡回移動し得る。例えば、左側の無端ループ10Lの駆動用スプロケット11、12が電動モータ13、14によって反時計廻り方向に回転駆動され、右側の無端ループ10Rの駆動用スプロケット11、12が電動モータ13、14によって時計廻り方向に回転駆動される。その結果、これら駆動用スプロケット11、12に係合している駆動ローラ(図示せず)のクリップ担持部材に走行力が与えられる。これにより、左側の無端ループ10Lは反時計廻り方向に巡回移動し、右側の無端ループ10Rは時計廻り方向に巡回移動する。左側の電動モータおよび右側の電動モータを、それぞれ独立して駆動させることにより、左側の無端ループ10Lおよび右側の無端ループ10Rをそれぞれ独立して巡回移動させることができる。
【0019】
さらに、左側の無端ループ10Lのクリップ(左側のクリップ)20および右側の無端ループ10Rのクリップ(右側のクリップ)20は、それぞれ可変ピッチ型である。すなわち、左右のクリップ20、20は、それぞれ独立して、移動に伴って縦方向のクリップピッチが変化し得る。可変ピッチ型の構成は、パンタグラフ方式、リニアモーター方式、モーター・チェーン方式等の駆動方式を採用することにより実現され得る。以下、一例として、リンク機構(パンタグラフ機構)について説明する。
【0020】
図2および図3はそれぞれ、図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図であり、図2はクリップピッチが最小の状態を示し、図3はクリップピッチが最大の状態を示す。
【0021】
図2および図3に図示されるように、クリップ20を個々に担持する平面視横方向に細長矩形状のクリップ担持部材30が設けられている。図示しないが、クリップ担持部材30は、上梁、下梁、前壁(クリップ側の壁)、および後壁(クリップと反対側の壁)により閉じ断面の強固なフレーム構造に形成されている。クリップ担持部材30は、その両端の走行輪38により走行路面81、82上を転動するよう設けられている。なお、図2および図3では、前壁側の走行輪(走行路面81上を転動する走行輪)は図示されない。走行路面81、82は、全域に亘って基準レール70に並行している。クリップ担持部材30の上梁と下梁の後側(クリップ側の反対側(以下、反クリップ側))には、クリップ担持部材の長手方向に沿って長孔31が形成され、スライダ32が長孔31の長手方向にスライド可能に係合している。クリップ担持部材30のクリップ20側端部の近傍には、上梁および下梁を貫通して一本の第1の軸部材33が垂直に設けられている。一方、クリップ担持部材30のスライダ32には一本の第2の軸部材34が垂直に貫通して設けられている。各クリップ担持部材30の第1の軸部材33には主リンク部材35の一端が枢動連結されている。主リンク部材35は、他端を隣接するクリップ担持部材30の第2の軸部材34に枢動連結されている。各クリップ担持部材30の第1の軸部材33には、主リンク部材35に加えて、副リンク部材36の一端が枢動連結されている。副リンク部材36は、他端を主リンク部材35の中間部に枢軸37によって枢動連結されている。主リンク部材35、副リンク部材36によるリンク機構により、図2に示すように、スライダ32がクリップ担持部材30の後側(反クリップ側)に移動しているほど、クリップ担持部材30同士の縦方向のピッチ(結果として、クリップピッチ)が小さくなり、図3に示すように、スライダ32がクリップ担持部材30の前側(クリップ側)に移動しているほど、クリップ担持部材30同士の縦方向のピッチ(結果として、クリップピッチ)が大きくなる。スライダ32の位置決めは、ピッチ設定レール90により行われる。図2および図3に示すように、基準レール70とピッチ設定レール90との離間距離が小さいほどクリップピッチが大きくなる。
【0022】
上記のような延伸装置を用いてフィルムの斜め延伸を行うことにより、斜め延伸フィルム、例えば、斜め方向に遅相軸を有する位相差フィルムが作製され得る。なお、上記のような延伸装置の具体的な実施形態については、例えば、特開2008-44339号に記載されており、その全体が本明細書に参考として援用される。以下、各工程について詳細に説明する。
【0023】
A-1.把持工程
把持ゾーンA(延伸装置100のフィルム取り込みの入り口)においては、左右の無端ループ10L、10Rのクリップ20によって、延伸対象となるフィルムの両端が互いに等しい一定のクリップピッチ、あるいは、互いに異なるクリップピッチで把持される。左右の無端ループ10L、10Rのクリップ20の移動(実質的には、基準レール70に案内された各クリップ担持部材の移動)により、当該フィルムが予熱ゾーンBに送られる。
【0024】
A-2.予熱工程
予熱ゾーンBにおいては、左右の無端ループ10L、10Rは、上記のとおり延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されているので、基本的には横延伸も縦延伸も行わず、フィルムが加熱される。ただし、予熱によりフィルムのたわみが起こり、オーブン内のノズルに接触するなどの不具合を回避するために、わずかに左右クリップ間の距離(幅方向の距離)を広げてもよい。
【0025】
予熱工程においては、フィルムを温度T1(℃)まで加熱する。温度T1は、フィルムのガラス転移温度(Tg)以上であることが好ましく、より好ましくはTg+2℃以上、さらに好ましくはTg+5℃以上である。一方、加熱温度T1は、好ましくはTg+40℃以下、より好ましくはTg+30℃以下である。用いるフィルムにより異なるが、温度T1は、例えば70℃~190℃であり、好ましくは80℃~180℃である。
【0026】
上記温度T1までの昇温時間および温度T1での保持時間は、フィルムの構成材料や製造条件(例えば、フィルムの搬送速度)に応じて適切に設定され得る。これらの昇温時間および保持時間は、クリップ20の移動速度、予熱ゾーンの長さ、予熱ゾーンの温度等を調整することにより制御され得る。
【0027】
A-3.斜め延伸工程
延伸ゾーンCにおいては、左右のクリップ20を、その少なくとも一方のクリップの縦方向のクリップピッチを変化させながら左右対称の軌道を描くように走行移動させて、フィルムを斜め延伸する。例えば、左右のクリップの当該クリップピッチをそれぞれ異なる位置で増大または縮小させること、それぞれ異なる変化速度で左右のクリップの当該クリップピッチを変化(増大および/または縮小)させること等が行われ得る。このようにクリップピッチを変化させながら左右のクリップを走行移動させる結果、延伸ゾーンに同時に移行した一対の左右のクリップの内、一方のクリップが他方のクリップよりも先行して走行移動し、当該一方のクリップが他方のクリップに先行して延伸ゾーンの終端に到達する。このような斜め延伸によれば、当該先行するクリップと後行するクリップとの間でフィルムが斜め方向に延伸されることになり、その結果として、長尺フィルムの所望の方向(例えば、長手方向に対して45°の方向)に遅相軸を発現させることができる。
【0028】
斜め延伸は、横延伸を含んでもよい。この場合、斜め延伸は、例えば図示例のように、左右のクリップ間の距離(幅方向の距離)を拡大させながら行われ得る。あるいは、図示例とは異なり、斜め延伸は、横延伸を含まず、左右のクリップ間の距離を維持したまま行われ得る。
【0029】
斜め延伸が横延伸を含む場合、横方向(TD)の延伸倍率(フィルムの初期幅Winitialに対する斜め延伸後のフィルムの幅Wfinalの比(Wfinal/Winitial)は、好ましくは1.05~6.00であり、より好ましくは1.10~5.00である。
【0030】
1つの実施形態において、斜め延伸は、上記左右のクリップのうちの一方のクリップのクリップピッチが増大または減少し始める位置と他方のクリップのクリップピッチが増大または減少し始める位置とを縦方向における異なる位置とした状態で、それぞれのクリップのクリップピッチを所定のピッチまで増大または減少することによって行われ得る。当該実施形態の斜め延伸については、例えば、特許文献1、特開2014-238524号公報等の記載を参照することができる。
【0031】
別の実施形態において、斜め延伸は、上記左右のクリップのうちの一方のクリップのクリップピッチを固定したまま、他方のクリップのクリップピッチを所定のピッチまで増大または減少させた後、当初のクリップピッチまで戻すことによって行われ得る。当該実施形態の斜め延伸については、例えば、特開2013-54338号公報、特開2014-194482号公報等の記載を参照することができる。
【0032】
さらに別の実施形態において、斜め延伸は、(i)上記左右のクリップのうちの一方のクリップのクリップピッチをPからPまで増大させつつ、他方のクリップのクリップピッチをPからPまで減少させること、および、(ii)該減少したクリップピッチと該増大したクリップピッチとが所定の等しいピッチとなるように、それぞれのクリップのクリップピッチを変化させることによって行われ得る。当該実施形態の斜め延伸については、例えば、特開2014-194484号公報等の記載を参照することができる。当該実施形態の斜め延伸は、左右のクリップ間の距離を拡大させながら、一方のクリップのクリップピッチをPからPまで増大させつつ、他方のクリップのクリップピッチをPからPまで減少させて、フィルムを斜め延伸すること(第1の斜め延伸)、および、左右のクリップ間の距離を拡大させながら、左右のクリップのクリップピッチが等しくなるように該一方のクリップのクリップピッチをPで維持またはPまで減少させ、かつ、該他方のクリップのクリップピッチをPまたはPまで増大させて、フィルムを斜め延伸すること(第2の斜め延伸)を含み得る。
【0033】
上記第1の斜め延伸においては、フィルムの一方の端部を長尺方向に伸長させつつ、他方の端部を長尺方向に収縮させながら斜め延伸を行うことにより、所望の方向(例えば、長尺方向に対して45°の方向)に高い一軸性および面内配向性で遅相軸を発現させることができる。また、第2の斜め延伸においては、左右のクリップピッチの差を縮小しながら斜め延伸を行うことにより、余分な応力を緩和しつつ、斜め方向に十分に延伸することができる。
【0034】
上記3つの実施形態の斜め延伸において、左右のクリップの移動速度が等しくなった状態でフィルムをクリップから開放することができるので、左右のクリップの開放時にフィルムの搬送速度等のバラつきが生じ難く、その後のフィルムの巻き取りが好適に行われ得る。
【0035】
図4Aおよび図4Bはそれぞれ、上記第1の斜め延伸および第2の斜め延伸を含む斜め延伸におけるクリップピッチのプロファイルの一例を示す概略図である。以下、これらの図を参照しながら、第1の斜め延伸を具体的に説明する。なお、図4Aおよび図4Bにおいて、横軸はクリップの走行距離に対応する。第1の斜め延伸開始時においては、左右のクリップピッチはともにPとされている。Pは、代表的には、フィルムを把持した際のクリップピッチである。第1の斜め延伸が開始されると同時に、一方のクリップ(以下、第1のクリップと称する場合がある)のクリップピッチの増大を開始し、かつ、他方のクリップ(以下、第2のクリップと称する場合がある)のクリップピッチの減少を開始する。第1の斜め延伸においては、第1のクリップのクリップピッチをPまで増大させ、第2のクリップのクリップピッチをPまで減少させる。したがって、第1の斜め延伸の終了時(第2の斜め延伸の開始時)において、第2のクリップはクリップピッチPで移動し、第1のクリップはクリップピッチPで移動することとされている。なお、クリップピッチの比はクリップの移動速度の比に概ね対応し得る。よって、左右のクリップのクリップピッチの比は、フィルムの右側端部と左側端部のMD方向の延伸倍率の比に概ね対応し得る。
【0036】
図4Aおよび図4Bでは、第1のクリップのクリップピッチを増大させ始めるタイミングおよび第2のクリップのクリップピッチを減少させ始めるタイミングをともに第1の斜め延伸の開始時としているが、図示例とは異なり、第1のクリップのクリップピッチを増大させ始めた後に第2のクリップのクリップピッチを減少させ始めてもよく、第2のクリップのクリップピッチを減少させ始めた後に第1のクリップのクリップピッチを増大させ始めてもよい。1つの好ましい実施形態においては、第1のクリップのクリップピッチを増大させ始めた後に第2のクリップのクリップピッチを減少させ始める。このような実施形態によれば、既にフィルムが幅方向に一定程度(好ましくは1.2倍~2.0倍程度)延伸されていることから第2のクリップのクリップピッチを大きく減少させてもシワが発生しにくい。よって、より鋭角な斜め延伸が可能となり、一軸性および面内配向性の高い位相差フィルムが好適に得られ得る。
【0037】
同様に、図4Aおよび図4Bでは、第1の斜め延伸の終了時(第2の斜め延伸の開始時)まで第1のクリップのクリップピッチの増大および第2のクリップのクリップピッチの減少が続いているが、図示例とは異なり、クリップピッチの増大または減少のいずれか一方が他方よりも早く終了し、他方が終了するまで(第1の斜め延伸の終了時まで)そのクリップピッチがそのまま維持されてもよい。
【0038】
第1のクリップのクリップピッチの変化率(P/P)は、好ましくは1.25~1.75、より好ましくは1.30~1.70、さらに好ましくは1.35~1.65である。また、第2のクリップのクリップピッチの変化率(P/P)は、例えば0.50以上1未満、好ましくは0.50~0.95、より好ましくは0.55~0.90、さらに好ましくは0.55~0.85である。クリップピッチの変化率がこのような範囲内であれば、フィルムの長手方向に対して概ね45度の方向に高い一軸性および面内配向性で遅相軸を発現させることができる。
【0039】
クリップピッチは、上記のとおり、延伸装置のピッチ設定レールと基準レールとの離間距離を調整してスライダを位置決めすることにより、調整され得る。
【0040】
第1の斜め延伸におけるフィルムの幅方向の延伸倍率(第1の斜め延伸終了時のフィルム幅/第1の斜め延伸前のフィルム幅)は、好ましくは1.1倍~3.0倍、より好ましくは1.2倍~2.5倍、さらに好ましくは1.25倍~2.0倍である。当該延伸倍率が1.1倍未満であると、収縮させた側の端部にトタン状のシワが生じる場合がある。また、当該延伸倍率が3.0倍を超えると、得られる位相差フィルムの二軸性が高くなってしまい、円偏光板等に適用した場合に視野角特性が低下する場合がある。
【0041】
1つの実施形態において、第1の斜め延伸は、第1のクリップのクリップピッチの変化率と第2のクリップのクリップピッチの変化率との積が、好ましくは0.7~1.5、より好ましくは0.8~1.45、さらに好ましくは0.85~1.40となるように行われる。変化率の積がこのような範囲内であれば、一軸性および面内配向性の高い位相差フィルムが得られ得る。
【0042】
次に、第2の斜め延伸の1つの実施形態を、図4Aを参照しながら具体的に説明する。本実施形態の第2の斜め延伸においては、第2のクリップのクリップピッチをPからPまで増大させる。一方、第1のクリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸の間、Pのまま維持される。したがって、第2の斜め延伸の終了時において、左右のクリップはともに、クリップピッチPで移動することとされている。
【0043】
図4Aに示す実施形態の第2の斜め延伸における第2のクリップのクリップピッチの変化率(P/P)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて制限はない。該変化率(P/P)は、例えば1.3~4.0、好ましくは1.5~3.0である。
【0044】
第2の斜め延伸の別の実施形態を、図4Bを参照しながら具体的に説明する。本実施形態の第2の斜め延伸においては、第1のクリップのクリップピッチを減少させるとともに、第2のクリップのクリップピッチを増大させる。具体的には、第1のクリップのクリップピッチをPからPまで減少させ、第2のクリップのクリップピッチをPからPまで増大させる。したがって、第2の斜め延伸の終了時において、左右のクリップはともにクリップピッチPで移動することとされている。なお、図示例では、第2の斜め延伸の開始と同時に、第1のクリップのクリップピッチの減少および第2のクリップのクリップピッチの増大を開始しているが、これらは異なるタイミングで開始され得る。また、同様に、第1のクリップのクリップピッチの減少および第2のクリップのクリップピッチの増大は、異なるタイミングで終了してもよい。
【0045】
図4Bに示す実施形態の第2の斜め延伸における第1のクリップのクリップピッチの変化率(P/P)および第2のクリップのクリップピッチの変化率(P/P)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて制限はない。変化率(P/P)は、例えば0.4以上1.0未満、好ましくは0.6~0.95である。また、変化率(P/P)は、例えば1.0を超え2.0以下、好ましくは1.2~1.8である。好ましくは、PはP以上である。P<Pであると、端部にシワが生じる、二軸性が高くなる等の問題が生じる場合がある。
【0046】
第2の斜め延伸におけるフィルムの幅方向の延伸倍率(第2の斜め延伸終了時のフィルム幅/第1の斜め延伸終了時のフィルム幅)は、好ましくは1.1倍~3.0倍、より好ましくは1.2倍~2.5倍、さらに好ましくは1.25倍~2.0倍である。当該延伸倍率が1.1倍未満であると、収縮させた側の端部にトタン状のシワが生じる場合がある。また、当該延伸倍率が3.0倍を超えると、得られる位相差フィルムの二軸性が高くなってしまい、円偏光板等に適用した場合に視野角特性が低下する場合がある。また、第1の斜め延伸および第2の斜め延伸における幅方向の延伸倍率(第2の斜め延伸終了時のフィルム幅/第1の斜め延伸前のフィルム幅)は、上記と同様の観点から、好ましくは1.2倍~4.0倍であり、より好ましくは1.4倍~3.0倍である。
【0047】
斜め延伸は、代表的には、温度T2で行われ得る。温度T2は、フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg-20℃~Tg+30℃であることが好ましく、さらに好ましくはTg-10℃~Tg+20℃、特に好ましくはTg程度である。用いるフィルムにより異なるが、温度T2は、例えば70℃~180℃であり、好ましくは80℃~170℃である。上記温度T1と温度T2との差(T1-T2)は、好ましくは±2℃以上であり、より好ましくは±5℃以上である。1つの実施形態においては、T1>T2であり、したがって、予熱ゾーンで温度T1まで加熱されたフィルムは温度T2まで冷却され得る。
【0048】
上述の通り、斜め延伸後に横収縮処理が行われてもよい。斜め延伸後の当該処理については、特開2014-194483号公報の0029~0032段落を参照することができる。
【0049】
A-4.熱固定工程
熱固定ゾーンDでは、斜め延伸されたフィルムを熱処理する。必要に応じて、熱処理の間に縦方向のクリップピッチを減少させ、これにより、応力を緩和してもよい。熱処理および任意の応力緩和によって、延伸状態が固定される。
【0050】
本発明の実施形態においては、熱固定ゾーンDにおいて、斜め延伸の際に先行するクリップで把持される端部側(S側)の温度が他方の端部側(S側)の温度よりも高い温度勾配領域が形成される。図5は、熱固定ゾーンDに形成される温度勾配の一例を説明する概略平面図であり、点線は等温線を示す(a℃>b℃>c℃>d℃)。図5に示される通り、熱固定ゾーンDは、延伸ゾーンC側および開放ゾーンE側にそれぞれ、温度分布が均一な領域D1とD3とを有し、その間に上記所定の温度勾配を有する領域(温度勾配領域)D2を有する。なお、図示例とは異なり、熱固定ゾーンDは、領域D1およびD3のいずれか一方または両方が省略されていてもよい。また、上記温度勾配領域は、フィルムの周囲温度(例えば、フィルム表面から250mm離間した領域の温度)として、熱固定ゾーンにおいて形成されるが、当該温度勾配領域の温度は、実質的にフィルム温度に対応し得る。
【0051】
領域D2においては、好ましくは等温線が温度勾配領域の幅方向(実質的には、フィルムの幅方向)に対して斜め方向に延びている。等温線の延びる方向(等温線のS側とS側とを結んだ直線の延びる方向)は、温度勾配領域の搬送方向上流から下流に向かって次第に変化してもよく、温度勾配領域の全体に渡って一定であってもよい。また、図示例の温度勾配領域では、等温線が曲線状に形成されているが、等温線は直線状であってもよい。等温線の延びる方向が温度勾配領域の搬送方向上流から下流に向かって次第に変化する場合、等温線の延びる方向と幅方向とのなす角度は、搬送方向上流側から下流側に向かって次第に大きくなり得る。当該角度(等温線の延びる方向が変化する場合は当該角度の最大値)は、好ましくは10°~80°または100°~170°、より好ましくは20°~70°または110°~160°、さらに好ましくは30°~60°または120°~150°である。1つの実施形態において、等温線の延びる方向(等温線の延びる方向が変化する場合は、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向(図示例においては、SL3とSH3とを結んだ直線またはSL4とSH4とを結んだ直線が延びる方向))は、斜め延伸方向(フィルム1が正の複屈折を有する樹脂フィルムである場合は遅相軸方向)Xに対して、好ましくは0°~60°または120°~180°、より好ましくは0°~50°または130°~180°、さらに好ましくは0°~45°または135°~180°、さらにより好ましくは0°~30°または150°~180°、さらにより好ましくは0°~20°または160°~180°、さらにより好ましくは0°~10°または170°~180°の角度をなす。好ましくは、等温線の延びる方向は、フィルムの長手方向を基準として、斜め延伸方向Xと同じ側に傾いている(換言すれば、傾きが同符号である)。このような温度勾配領域D2を通過することにより、斜め延伸に起因する残留応力の不均一性が低減される結果、弛みおよび/またはシワが好適に低減され得る。また、等温線の延びる方向が温度勾配領域の搬送方向上流から下流に向かって次第に変化する場合、等温線の延びる方向と幅方向とのなす角度の最小値は0°を超え、例えば1°とすることができる。
【0052】
領域D2においては、幅方向と平行にS側からS側に向かって温度が単調に上昇していればよく、そのパターンは直線的であってもよく、曲線的であってもよい。なお、領域D2の下流領域においては、温度勾配が解消されていくにしたがって、幅方向において温度が一定な部分が存在してもよい。
【0053】
領域D2における幅方向両端の温度差の最大値(例えば、幅方向と平行な線上のS側とS側のフィルム1端部の250mm上方の温度差の最大値)は、例えば0.3℃~25℃である。S側とS側との温度差が当該範囲内であれば、弛みおよび/またはシワの低減効果が好適に得られ得る。
【0054】
1つの実施形態において、当該温度差の最大値は、好ましくは1℃~20℃、より好ましくは3℃~17℃である。S側とS側との温度差が当該範囲内であれば、弛みの低減効果がより好適に得られ得る。
【0055】
1つの実施形態において、当該温度差の最大値は、好ましくは0.5℃~25℃、より好ましくは5℃~20℃である。S側とS側との温度差が当該範囲内であれば、シワの低減効果がより好適に得られ得る。
【0056】
1つの実施形態において、当該温度差の最大値は、好ましくは5℃~17℃、より好ましくは7℃~15℃である。S側とS側との温度差が当該範囲内であれば、弛みおよびシワの低減効果がより好適に得られ得る。
【0057】
領域D2の搬送方向(フィルムの長手方向)においては、上流から下流方向に向かって温度が漸減している。領域D2の始端(幅方向に温度勾配を有する最上流地点)における温度および領域D2の終端(幅方向に温度勾配を有する最下流地点)における温度はそれぞれ、フィルムを形成する樹脂の種類に応じて適切に設定され得る。1つの実施形態において、領域D2の始端における温度は、例えば80℃~180℃であり、好ましくは90℃~170℃、より好ましくは100℃~160℃である。領域D2の終端における温度は、例えば30℃~150℃であり、好ましくは40℃~140℃、より好ましくは50℃~130℃である。領域D2の始端と終端との温度差は、例えば10℃~70℃であり、好ましくは20℃~60℃、より好ましくは30℃~50℃である。なお、領域D2の下流領域においては、温度勾配が解消されていくにしたがって、搬送方向において温度が一定な部分が存在してもよい。
【0058】
領域D2での熱処理時間は、例えば10秒~600秒であり、好ましくは30秒~360秒である。
【0059】
温度勾配を有する領域D2を形成する方法は、特に制限されない。例えば、領域D2の始端側から終端側に向かって(すなわち、搬送方向上流から下流に向かって)温度が低下する搬送方向の温度勾配を設けるとともに、領域D2の始端においてS側からS側に向かって温度が低下する幅方向の温度勾配を設けることにより、等温線が斜め方向に延びる温度勾配領域D2を好適に形成することができる。搬送方向の温度勾配を形成する方法としては、D2領域を複数の区画に分け、ヒーター、熱風等の手段を用いて始端側から終端側に向かって温度が低下するように各区画の雰囲気温度を調整する方法が挙げられる。幅方向の温度勾配を形成する方法としては、フィルムに向かって幅方向に温度勾配を有する熱風を供給する方法、フィルムに向かって幅方向において異なる出力で赤外線ヒーターを照射する方法等が挙げられる。温度勾配の制御が容易であることから、フィルムに向かって熱風を供給する方法が好ましく用いられ得る。
【0060】
フィルムに向かって幅方向に温度勾配を有する熱風を供給する方法は、例えば、図6Aに例示するように、一方の配管210から高温エアが供給され、他方の配管220から低温エアが供給され、本体230内で種々の割合でこれらを混合して、それぞれ異なる温度の熱風を幅方向に所定の間隔で配置された複数のノズル240から噴き出すことができる熱風式加熱装置200を用いて行われ得る。本体230は、例えば、配管210と接続し、配管220側に向かうにつれて流量が小さくなる高温エア用分配ヘッダ(図示せず)と、配管220と接続し、配管210側に向かうにつれて流量が小さくなる低温エア用分配ヘッダ(図示せず)とを有し、これらの分配ヘッダから分配される高温エアと低温エアの割合を調整することにより、所望の温度勾配を有する熱風を供給することができる。
【0061】
1つの実施形態においては、搬送方向に温度勾配が形成された熱固定ゾーンにおいて、領域D2の始端に熱風式加熱装置を配置してフィルムに対して幅方向に温度勾配を有する熱風を供給する。このとき、複数の熱風式加熱装置を並列配置し、各熱風式加熱装置が供給する熱風の温度勾配を制御することにより、搬送方向と幅方向との両方に温度勾配を有する熱風(結果として、等温線が斜め方向に延びるような温度勾配を有する熱風)を供給することができる。例えば、図6Bに示す実施形態においては、搬送方向上流から下流に向かって第1~第4の熱風式加熱装置200a~200dがこの順に並列に配置されている。第1~第4の熱風式加熱装置200a~200dはそれぞれ、幅方向の右端部(S側)から左端部(S側)に向かって温度が低下する温度勾配を有する熱風を供給し、また、S側およびS側における熱風の温度がそれぞれ、第1の熱風式加熱装置200aから第4の熱風式加熱装置200dに向かって(すなわち、搬送方向下流に向かって)低くなるように設定されている。熱風の供給時間は、例えば10秒~600秒、好ましくは30秒~360秒であり得る。幅方向に温度勾配を有する熱風または搬送方向と幅方向に温度勾配を有する熱風が搬送方向下流に向かって徐々にゾーン温度まで冷却されることにより、等温線が斜め方向に延びる温度勾配領域が形成され得る。
【0062】
熱風式加熱装置200からフィルムに向かって供給される熱風の風速は、例えば3m/min~45m/minである。熱風の風速が当該範囲内であれば、上記温度勾配領域をフィルムの端部まで行き渡らせてフィルムに目的の温度制御を行うことができ、その結果、弛みおよび/またはシワの低減効果が好適に得られ得る。
【0063】
1つの実施形態において、熱風の風速は、好ましくは5m/min~30m/min、より好ましくは10m/min~25m/minである。熱風の風速が当該範囲内であれば、弛みの低減効果がより好適に得られ得る。
【0064】
1つの実施形態において、熱風の風速は、好ましくは15m/min~40m/min、より好ましくは20m/min~35m/minである。熱風の風速が当該範囲内であれば、シワの低減効果がより好適に得られ得る。
【0065】
1つの実施形態において、熱風の風速は、好ましくは15m/min~30m/min、より好ましくは20m/min~25m/minである。熱風の風速が当該範囲内であれば、弛みおよびシワの低減効果がより好適に得られ得る。
【0066】
上記温度勾配領域が形成される限り、熱風を吹き付ける角度は制限されない。1つの実施形態において、熱風は、フィルム面に対して90°の角度をなすように吹き付けられる。
【0067】
領域D1の温度は、代表的には、領域D2の始端と同じ温度である。また、領域D1での熱処理時間は、例えば3秒~120秒である。
【0068】
領域D3の温度は、代表的には、領域D2の終端と同じ温度である。また、領域D3での熱処理時間は、例えば3秒~120秒である。
【0069】
A-5.開放工程
開放ゾーンEの任意の位置において、上記フィルムが、クリップから開放される。開放ゾーンEにおいては、通常、熱固定後のフィルムに対して横延伸も縦延伸も行うことなく、所望の温度までフィルムを冷却し、次いで、フィルムをクリップから開放する。代表的には、開放ゾーンは、均一な温度分布を有する。
【0070】
クリップから開放される際のフィルム温度は、例えば150℃以下であり、好ましくは70℃~140℃、より好ましくは80℃~130℃である。
【0071】
クリップから開放された延伸フィルムは、延伸装置の出口から送り出されて、弛み量および/またはシワの有無の検出に供される。
【0072】
B.延伸対象のフィルム
本発明の製造方法においては、任意の適切なフィルムを用いることができる。例えば、位相差フィルムとして適用可能な樹脂フィルムが挙げられる。このようなフィルムを構成する材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、シクロオレフィン樹脂である。これらの樹脂であれば、いわゆる逆分散の波長依存性を示す位相差フィルムが得られ得るからである。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、所望の特性に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0073】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂が用いられる。例えば、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。ジヒドロキシ化合物の具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-プロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、スピログリコール、ジオキサングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)、ビスフェノール類などのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0074】
上記のようなポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば特開2012-67300号公報および特許第3325560号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0075】
ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度は、110℃以上250℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上230℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、また、フィルムの透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
【0076】
上記ポリビニルアセタール系樹脂としては、任意の適切なポリビニルアセタール系樹脂を用いることができる。代表的には、ポリビニルアセタール系樹脂は、少なくとも2種類のアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物と、ポリビニルアルコール系樹脂とを縮合反応させて得ることができる。ポリビニルアセタール系樹脂の具体例および詳細な製造方法は、例えば、特開2007-161994号公報に記載されている。当該記載は、本明細書に参考として援用される。
【0077】
上記延伸対象のフィルムを延伸して得られる延伸フィルム(位相差フィルム)は、好ましくは、屈折率特性がnx>nyの関係を示す。1つの実施形態において、位相差フィルムは、好ましくはλ/4板として機能し得る。本実施形態において、位相差フィルム(λ/4板)の面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm~180nm、より好ましくは135nm~155nmである。別の実施形態において、位相差フィルムは、好ましくはλ/2板として機能し得る。本実施形態において、位相差フィルム(λ/2板)の面内位相差Re(550)は、好ましくは230nm~310nm、より好ましくは250nm~290nmである。なお、本明細書において、nxは面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyは面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率である。また、Re(λ)は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。したがって、Re(550)は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
【0078】
位相差フィルムの面内位相差Re(550)は、斜め延伸条件を適切に設定することにより所望の範囲とすることができる。例えば、斜め延伸によって100nm~180nmの面内位相差Re(550)を有する位相差フィルムを製造する方法は、特開2013-54338号公報、特開2014-194482号公報、特開2014-238524号公報、特開2014-194484号公報等に詳細に開示されている。よって、当業者は、当該開示に基づいて適切な斜め延伸条件を設定することができる。
【0079】
1枚の位相差フィルムを用いて円偏光板を作製する場合、または、1枚の位相差フィルムを用いて直線偏光の向きを90°回転させる場合、用いられる位相差フィルムの遅相軸方向は、当該フィルムの長尺方向に対して好ましくは30°~60°または120°~150°、より好ましくは38°~52°または128°~142°、さらに好ましくは43°~47°または133°~137°、特に好ましくは45°または135°程度である。
【0080】
また、2枚の位相差フィルム(具体的には、λ/2板とλ/4板)を用いて円偏光板を作製する場合、用いられる位相差フィルム(λ/2板)の遅相軸方向は、当該フィルムの長尺方向に対して好ましくは60°~90°、より好ましくは65°~85°、特に好ましくは75°程度である。また、位相差フィルム(λ/4板)の遅相軸方向は、当該フィルムの長尺方向に対して好ましくは0°~30°、より好ましくは5°~25°、特に好ましくは15°程度である。
【0081】
位相差フィルムは、好ましくは、いわゆる逆分散の波長依存性を示す。具体的には、その面内位相差は、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。Re(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.95である。Re(550)/Re(650)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.97である。
【0082】
位相差フィルムは、その光弾性係数の絶対値が、好ましくは2×10-12(m/N)~100×10-12(m/N)であり、より好ましくは5×10-12(m/N)~50×10-12(m/N)である。
【0083】
C.光学積層体および該光学積層体の製造方法
本発明の製造方法により得られた延伸フィルムは、別の光学フィルムと貼り合わせられて光学積層体として用いられ得る。例えば、本発明の製造方法によって得られた位相差フィルムは、偏光板と貼り合わせられて、円偏光板として好適に用いられ得る。
【0084】
図7は、そのような円偏光板の一例の概略断面図である。図示例の円偏光板500は、偏光子510と、偏光子510の片側に配置された第1の保護フィルム520と、偏光子510のもう片側に配置された第2の保護フィルム530と、第2の保護フィルム530の外側に配置された位相差フィルム540と、を有する。位相差フィルム540は、A項に記載の製造方法により得られた延伸フィルム(例えば、λ/4板)である。第2の保護フィルム530は省略されてもよい。その場合、位相差フィルム540が偏光子の保護フィルムとして機能し得る。偏光子510の吸収軸と位相差フィルム540の遅相軸とのなす角度は、好ましくは30°~60°、より好ましくは38°~52°、さらに好ましくは43°~47°、特に好ましくは45°程度である。
【0085】
本発明の製造方法により得られた位相差フィルムは、長尺状であり、かつ、斜め方向(長尺方向に対して例えば45°の方向)に遅相軸を有する。また、多くの場合、長尺状の偏光子は長尺方向または幅方向に吸収軸を有する。よって、本発明の製造方法により得られた位相差フィルムを用いれば、いわゆるロールトゥロールを利用することができ、きわめて優れた製造効率で円偏光板を作製することができる。なお、ロールトゥロールとは、長尺状のフィルム同士をロール搬送しながら、その長尺方向を揃えて連続的に貼り合わせる方法をいう。
【0086】
1つの実施形態において、本発明の光学積層体の製造方法は、A項に記載の延伸フィルムの製造方法によって長尺状の延伸フィルムを得ること、および、長尺状の光学フィルムと該長尺状の延伸フィルムとを搬送しながら、その長尺方向を揃えて連続的に貼り合わせることを含む。
【実施例
【0087】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における測定および評価方法は下記のとおりである。
【0088】
(1)厚み
ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG-205 type pds-2」)を用いて測定した。
(2)位相差値
Axometrics社製のAxoscanを用いて面内位相差Re(550)を測定した。
(3)配向角(遅相軸の発現方向)
測定対象のフィルムの中央部を、一辺が当該フィルムの幅方向と平行となるようにして幅50mm、長さ50mmの正方形状に切り出して試料を作成した。この試料を、Axometrics社製のAxoscanを用いて測定し、波長590nmにおける配向角θを測定した。
(4)ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準じて測定した。
(5)弛み量
図8に示すように、搬送ロール300a、300b間の中間点(ロール間距離:912mm)におけるフィルム1の搬送経路の下方に超音波変位センサー400を配置し、搬送張力150N/mで搬送した際の幅方向の中央部と端部において超音波変位センサーから延伸フィルムまでの距離を測定し、最大距離(LMAX)と最小距離(LMIN)との差(LMAX-LMIN)を弛み量(mm)とした。なお、上記弛み量の測定は、サクションロール等を用いて弛みを矯正するために付与された張力をカットした後、搬送張力150N/mでロール搬送しながら行った。
【0089】
<実施例1>
(ポリエステルカーボネート樹脂フィルムの作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン 29.60質量部(0.046mol)、ISB 29.21質量部(0.200mol)、SPG 42.28質量部(0.139mol)、DPC 63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂のTgは、140℃であった。
【0090】
得られたポリエステルカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmの樹脂フィルムを作製した。
【0091】
(延伸フィルムの作製)
上記のようにして得られたポリエステルカーボネート樹脂フィルムを、図1~3に示すような延伸装置を用いて斜め延伸して、位相差フィルムを得た。
具体的には、ポリエステルカーボネート樹脂フィルムの左右端部を延伸装置の入り口で左右のクリップによって把持し、予熱ゾーンBで145℃に予熱した。予熱ゾーンにおいては、左右のクリップのクリップピッチ(P)は125mmであった。
次に、フィルムが延伸ゾーンCに入ると同時に、右側クリップのクリップピッチの増大および左側クリップのクリップピッチの減少を開始し、右側クリップのクリップピッチをPまで増大させるとともに左側クリップのクリップピッチをPまで減少させた(第1の斜め延伸)。このとき、右側クリップのクリップピッチ変化率(P/P)は、1.42であり、左側クリップのクリップピッチ変化率(P/P)は0.78であり、フィルムの原幅に対する横延伸倍率は1.45倍であった。次いで、右側クリップのクリップピッチをPに維持したままで、左側クリップのクリップピッチの増大を開始し、PからPまで増大させた(第2の斜め延伸)。この間の左側クリップのクリップピッチの変化率(P2/P3)は1.82であり、フィルムの原幅に対する横延伸倍率は1.9倍であった。なお、延伸ゾーンCはTg+3.2℃(143.2℃)に設定した。
次いで、雰囲気温度を140℃に設定した熱固定ゾーンDの始端(延伸ゾーンCの終端)で、熱風式加熱装置を用いてフィルムの右端部側から左端部側に向かって低下する温度勾配を有する熱風を搬送方向上流から下流に向かって右端部側が140℃から125℃に、左端部側が140℃から115℃に低下するように調整しながら180秒間フィルムに吹き付けて、フィルムを熱処理した(熱固定時間210秒)。このとき、熱風の風速(熱風式加熱装置から噴出される際の風速)は20m/minであり、フィルムの200mm下方から、フィルム面に対して90°の角度をなすように吹き付けた。なお、熱固定ゾーンDの終端の温度は、雰囲気温度(115℃)まで低下しており、幅方向の温度勾配は解消していた。
次いで、温度を100℃に設定した開放ゾーンEで、フィルムを100℃まで冷却後、左右のクリップを開放した。
これにより、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
なお、非接触型エリア温度計を用いて熱固定ゾーンの温度(フィルムから250mm上方の温度)を測定したところ、熱固定ゾーンの始端から終端にかけて、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は10℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。また、予熱ゾーン、斜め延伸ゾーンおよび開放ゾーンの温度は、幅方向において均一であり、温度勾配領域は形成されていなかった。
【0092】
上記延伸フィルムの作製に先立って、熱固定ゾーンDの始端で、140℃の熱風を風速7m/minで幅方向に均一に吹き付け、その後は、雰囲気温度に従った熱固定を行ったこと(結果として、斜め方向の温度勾配を形成しなかったこと)以外は、実施例1と同様にして延伸フィルムを得たところ、幅方向の左端部に弛みが生じており、弛み量は18mmであった。
【0093】
<実施例2>
熱固定ゾーンDの始端で、140℃の熱風を風速25m/minで180秒間幅方向に均一に吹き付け、次いで、実施例1と同様の方法で温度勾配を形成したこと(具体的には、フィルムの右端部側から左端部側に向かって低下する温度勾配を有する熱風(風速25m/min)を搬送方向上流から下流に向かって右端部側が140℃から125℃に、左端部側が140℃から111℃に低下するように調整しながら180秒間フィルムに吹き付けたこと)以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0094】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は14℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。
【0095】
<実施例3>
熱固定ゾーンDの始端で、140℃の熱風を風速23m/minで180秒間幅方向に均一に吹き付け、次いで、実施例1と同様の方法で温度勾配を形成したこと(具体的には、フィルムの右端部側から左端部側に向かって低下する温度勾配を有する熱風(風速23m/min)を搬送方向上流から下流に向かって右端部側が140℃から125℃に、左端部側が140℃から118℃に低下するように調整しながら180秒間フィルムに吹き付けたこと)以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0096】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は7℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。
【0097】
<実施例4>
熱固定ゾーンDの始端で、140℃の熱風を風速20m/minで180秒間幅方向に均一に吹き付け、次いで、実施例1と同様の方法で温度勾配を形成したこと(具体的には、フィルムの右端部側から左端部側に向かって低下する温度勾配を有する熱風(風速20m/min)を搬送方向上流から下流に向かって右端部側が140℃から130℃に、左端部側が140℃から115℃に低下するように調整しながら180秒間フィルムに吹き付けたこと)以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0098】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は15℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。
【0099】
<実施例5>
熱固定ゾーンDの始端で、140℃の熱風を風速25m/minで180秒間幅方向に均一に吹き付け、次いで、実施例1と同様の方法で温度勾配を形成したこと(具体的には、フィルムの右端部側から左端部側に向かって低下する温度勾配を有する熱風(風速25m/min)を搬送方向上流から下流に向かって右端部側が140℃から115.5℃に、左端部側が140℃から115℃に低下するように調整しながら180秒間フィルムに吹き付けたこと)以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0100】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は0.5℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。
【0101】
<実施例6>
熱風の風速を20m/minにしたこと以外は実施例2と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0102】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は14℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。
【0103】
<実施例7>
熱風の風速を25m/minにしたこと以外は実施例4と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0104】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は15℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。
【0105】
<実施例8>
熱風の風速を10m/minにしたこと以外は実施例3と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0106】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は7℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。
【0107】
<実施例9>
熱風の風速を30m/minにしたこと以外は実施例2と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0108】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は14℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。
【0109】
<実施例10>
熱風の風速を35m/minにしたこと以外は実施例2と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0110】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は14℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。
【0111】
<実施例11>
熱風の風速を23m/minにしたこと以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0112】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、フィルムの幅方向中央に対して右側の温度が左側の温度よりも高い温度勾配領域が形成されていた。当該温度勾配領域における幅方向両端の温度差の最大値は10℃であり、幅方向に対して最も大きい角度をなす等温線が延びる方向は斜め方向(得られた延伸フィルムの遅相軸方向に対して3°の角度をなす方向)であった。
【0113】
<比較例1>
熱固定ゾーンDの始端で、140℃の熱風を風速20m/minで幅方向に均一に吹き付け、その後は、雰囲気温度に従った熱固定を行ったこと(結果として、斜め方向の温度勾配を形成しなかったこと)以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの位相差Re(550)は、147nmであり、遅相軸方向と長尺方向とのなす角度は45°であった。
【0114】
また、実施例1と同様にして熱固定ゾーンの温度を測定したところ、幅方向において温度は均一であり、斜め方向の温度勾配領域は形成されていなかった(より具体的には、等温線が幅方向に平行であり、搬送方向に向かって温度が低下する温度勾配が形成されていた)。
【0115】
[外観および取り扱い性評価]
上記実施例および比較例で得られた延伸フィルムを、長尺状のマスキングフィルム(東レフィルム加工社製、製品名「トレテック7832C-30」)とロールトゥロールで貼り合わせてフィルム積層体を得た。次いで、フィルム積層体からマスキングフィルムを剥離し、グラビアコーターで接着剤を塗工して偏光板と貼り合せ、UVを照射することにより、光学積層体を得た。光学積層体の外観(目視)および延伸フィルムの取り扱い性を、以下の基準に基づいて評価した。
〇:マスキングフィルム貼り合せ(貼り合せ張力150N/m)後に、シワがみとめられず、接着剤をフィルム全面に塗工ができる。
△:マスキングフィルム貼り合せの際、貼り合せ張力を300N/mに上げることでシワなく貼り合せができたが、接着剤塗工の際に、弛んだ箇所に接着剤を塗工できなかった。
×:マスキングフィルム貼り合せ後に、シワがあり、外観が劣化している。
【0116】
[シワ評価]
以下の基準に基づいて、得られた延伸フィルムのシワを評価した。
〇:ポラリオンライト(ポラリオン社製、製品番号「NP-1」)を照射してもシワが視認されない。
△:蛍光灯を照射してもシワが視認されないが、ポラリオンライトを照射するとシワが視認される。
×:蛍光灯を照射するとシワが視認される。
【0117】
[搬送性評価]
得られた延伸フィルムに関して、弛みおよび/またはシワに起因してフィルムに歪みまたは折れが生じているか否かを目視によって確認し、以下の基準に基づいて評価した。
〇:フィルムに歪みおよび折れが生じていない。
×:フィルムに歪みおよび/または折れが生じている。
【0118】
[視認性評価]
上記外観および取り扱い性評価において作製した光学積層体を、接着層を介して反射板または有機ELパネルの視認側に貼り合わせた。得られた光学積層体に関して、弛みまたはシワに起因する形状のムラまたは光抜けの有無を目視によって確認し、以下の基準に基づいて評価した。
〇:反射板およびパネル実装の両方において、ムラおよび光抜けが視認されない。
△:反射板でムラおよび/または光抜けが視認されるが、パネル実装では視認されない。
×:反射板およびパネル実装の両方において、ムラおよび/または光抜けが視認される。
【0119】
上記実施例および比較例で得られた延伸フィルムに関して、弛み量および上記評価結果を表1に示す。
【表1】
【0120】
<評価>
表1に示されるとおり、斜め延伸の際に先行するクリップで把持される端部側の温度が他方の端部側の温度よりも高い温度勾配領域を有する熱固定ゾーンで熱固定を行うことにより、弛みおよび/またはシワが低減されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の延伸フィルムの製造方法は、位相差フィルムの製造に好適に用いられ、結果として、液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)等の画像表示装置の製造に寄与し得る。
【符号の説明】
【0122】
1 延伸フィルム
10L 無端ループ
10R 無端ループ
20 クリップ
100 延伸装置
200 熱風式加熱装置
300 搬送ロール
400 超音波変位センサー
500 円偏光板
【要約】
【課題】斜め延伸されたフィルムに生じた弛みおよび/またはシワを低減すること。
【解決手段】長尺状のフィルムの幅方向の左右端部をそれぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること、該左右のクリップを少なくとも一方のクリップのクリップピッチを変化させながら左右対称の軌道を描くように走行移動させて、該フィルムを斜め延伸すること、および、該フィルムを熱固定すること、を含み、該斜め延伸において、該左右のクリップの一方のクリップが他方のクリップよりも先行するように走行移動させ、該熱固定において、該フィルムの該先行する一方のクリップで把持される端部側の温度が他方の端部側の温度よりも高い温度勾配領域が形成される、延伸フィルムの製造方法。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8