(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】薄板金加工機械
(51)【国際特許分類】
B30B 1/34 20060101AFI20220329BHJP
B23D 15/04 20060101ALI20220329BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20220329BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B30B1/34 B
B23D15/04
F15B11/00 E
F15B11/02 B
F15B11/02 Z
(21)【出願番号】P 2021518151
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 IB2019058284
(87)【国際公開番号】W WO2020070617
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】102018000009060
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102019000010191
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】507385752
【氏名又は名称】サルヴァニーニ イタリア エッセ.ピ.ア.
【氏名又は名称原語表記】SALVAGNINI ITALIA S.p.A.
【住所又は居所原語表記】VIA GUIDO SALVAGNINI, 51, I-36040 SAREGO (VI), ITALY
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】バッテュー,クロード・ルチアン
(72)【発明者】
【氏名】バッタリア,ルッゲーロ
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-080900(JP,U)
【文献】実用新案登録第2565135(JP,Y2)
【文献】特公昭54-013040(JP,B2)
【文献】特開平10-180500(JP,A)
【文献】特開平11-028529(JP,A)
【文献】特表2015-522419(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1445042(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011114241(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013005876(DE,A1)
【文献】オーストリア国実用新案第008633(AT,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 1/34
B23D 15/04
F15B 11/00
F15B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧運転システム(1)を含む薄板金加工機械(100)であって、前記油圧運転システム(1)は、前記機械(100)の複数の作業工具(51,151,61)を別々の独立した態様で駆動して、工作物(200)に対してそれぞれの機械加工を実行するのに好適であり、
前記油圧運転システム(1)は、
複数の油圧シリンダ(2,102,202)であって、各油圧シリンダ(2,102,202)は、
それぞれの作業工具(51,151,61)に関連付けられており、
それぞれのピストン(21,121,221)を備えており、前記ピストン(21,121,221)は、前記油圧シリンダ(2,102,202)内に推力チャンバ(22,122,222)と戻りチャンバ(23,123,223)とを画定するのに好適であり、対応する作業工具(51,151,61)をそれぞれの作業軸(A,B,C)に沿って動かすために、前記作業工具(51,151,61)に関連付けられている、油圧シリンダ(2,102,202)と、
可逆型の第1ポンプ(3)であって、
前記油圧シリンダ(2,102,202)の前記推力チャンバ(22,122,222)に接続されており、
供給圧力(PA)を有する流体を前記推力チャンバ(22,122,222)の少なくとも1つに送ることで、それぞれのピストン(21,121,221)を作業方向に沿って押し、当該ピストン(21,121,221)に関連付けられた作業工具(51,151,61)が工作物(200)と相互作用することを可能にするか、または、少なくとも前記推力チャンバ(22,122,222)から流体を吸引することで、それぞれのピストン(21,121,221)を戻り方向に沿って動かし、前記作業工具(51,151,61)を前記工作物(200)から引き離し、遠ざけることを可能にするべく構成されている、第1ポンプ(3)と、
複数の弁(4)であって、各弁(4)は、
それぞれの油圧シリンダ(2,102,202)に関連付けられており、
前記第1ポンプ(3)と、前記油圧シリンダ(2,102,202)の前記推力チャンバ(22,122,222)と、の間に介在し、
前記第1ポンプ(3)を前記推力チャンバ(22,122,222)と流動接続させることで前記油圧シリンダ(2,102,202)を駆動するように作動させることができる、弁(4)と、
油圧アキュムレータ(5)であって、
前記油圧シリンダ(2,102,202)の前記戻りチャンバ(23,123,223)に接続されており、
前記戻りチャンバ(23,123,223)における流体を既定の予荷重圧力に維持するべく、特に、対応する弁(4)を作動させることによって駆動する油圧シリンダ(2,102,202)の少なくとも1つのピストン(21,121,221) を戻り方向に沿って動かすべく構成されている、油圧アキュムレータ(5)と、
を備える、薄板金加工機械(100)。
【請求項2】
前記油圧運転システム(1)は、電動機(6)を含み、前記電動機(6)は、
前記機械(100)の制御ユニット(10)によって制御され、
可逆型の前記第1ポンプ(3)を、両方の回転方向に、前記第1ポンプ(3)が既定の供給圧力(PA)を有する流体を既定の流速で送出するように駆動するべく構成されている、請求項1に記載の機械(100)。
【請求項3】
前記油圧運転システム(1)は、可逆型の第2ポンプ(7)を含み、前記第2ポンプ(7)は、
前記第1ポンプ(3)に結合、接続されており、
前記ポンプ(3,7)は、同じ電動機(6)によって駆動し、前記電動機(6)は、前記機械(100)の制御ユニット(10)によって制御され、前記ポンプ(3,7)を、両方の回転方向に、前記ポンプ(3,7)が既定の供給圧力(PA)を有する流体を既定の流速で送出するように駆動するべく構成されている、請求項1または2に記載の機械(100)。
【請求項4】
前記油圧運転システム(1)は、第1差動弁(8)を含み、前記第1差動弁(8)は、
前記第2ポンプ(7)と前記推力チャンバ(22,122,222)との間に介在し、
前記推力チャンバ(22,122,222)のうちの少なくとも1つにおいて前記供給圧力(PA)が第1作業圧力(P1)を超えると、前記第2ポンプ(7)を、大気圧を有する流体溜め(15)に接続させるように作動することができる、請求項3に記載の機械(100)。
【請求項5】
前記油圧運転システム(1)は、第2差動弁(9)を含み、前記第2差動弁(9)は、
前記油圧アキュムレータ(5)と前記戻りチャンバ(23,123,223)との間に介在し、
前記推力チャンバ(22,122,222)のうちの少なくとも1つにおいて前記供給圧力(PA)が第2作業圧力(P2)を超えると、前記戻りチャンバ(23,123,223)を、大気圧を有する流体溜め(15)に接続させるように作動することができる、前述のいずれかの請求項に記載の機械(100)。
【請求項6】
前記第2作業圧力(P2)は前記第1作業圧力(P1)よりも高い、請求項4および5に記載の機械(100)。
【請求項7】
前記油圧運転システム(1)は、流体溜め(15)を含み、
前記供給圧力(PA)を有する流体を前記油圧シリンダ(2,102,202)に送るために、前記第1ポンプ(3)が第1回転方向に駆動されると、少なくとも前記第1ポンプ(3)によって流体が前記流体溜め(15)から吸引され、
前記油圧シリンダ(2,102,202)から流体を吸引するために、前記第1ポンプ(3)が前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に駆動されると、流体が前記流体溜め(15)に送られる、前述のいずれかの請求項に記載の機械(100)。
【請求項8】
マルチプレス打抜き装置(50)と、シングルプレス打抜き装置(150)と、切断装置(60)と、のうちの少なくとも1つを含み、
前記油圧運転システム(1)は、前記シングルプレス打抜き装置(150)の単一の打抜き作業工具(151)と、前記切断装置(60)の少なくとも1つの切断作業工具(61)と、前記マルチプレス打抜き装置(50)の複数の打抜き作業工具(51)のうちの1または複数と、のうちの少なくとも1つを別々の独立した態様で駆動するように構成されている、前述のいずれかの請求項に記載の機械(100)。
【請求項9】
前述のいずれかの請求項に記載の薄板金加工機械(100)における複数の作業工具(51,151,61)を別々の独立した態様で駆動するための方法であって、
供給圧力(PA)を有する流体を送出するべく構成されている可逆型の第1ポンプ(3)と、選択された前記作業工具(51,151,61)に作用する油圧シリンダ(2,102,202)と、の間に介在するそれぞれの弁(4)を作動させることによって駆動する少なくとも1つの作業工具(51,151,61)を選択する工程と、
前記油圧シリンダ(2,102,202)の推力チャンバ(22,122,222)内に加圧された流体を送ることで、前記油圧シリンダ(2,102,202)のピストン(21,121,221)を作業方向に沿って押し、前記ピストン(21,121,221)に関連付けられた、選択された前記作業工具(51,151,61)が工作物(200)に対して機械加工を実行することを可能にするために、前記第1ポンプ(3)を第1回転方向に駆動する工程と、
前記機械加工が実行されると、前記推力チャンバ(22,122,222)から流体を吸引するために、前記第1ポンプ(3)を前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に駆動する工程であって、前記ピストン(21,121,221)が油圧アキュムレータ(5)によって前記油圧シリンダ(2,102,202)の戻りチャンバ(23,123,223)に送られる加圧された流体によって戻り方向に沿って押されることで、前記作業工具(51,151,61)を前記工作物(200)から引き離し、遠ざけることを可能にする工程と、
を備える、方法。
【請求項10】
前記第1ポンプ(3)の前記駆動の間、第1作業圧力(P1)に達するまで前記推力チャンバ(22,122,222)に流体を送るために、特に前記第1ポンプ(3)に結合、接続された可逆型の第2ポンプ(7)を前記第1回転方向にさらに駆動する工程であって、前記第1作業圧力(P1)を超えると、第1差動弁(8)を作動させることによって、前記第2ポンプ(7)は、前記流体の送り先となる流体溜め(15)に接続される工程
を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1ポンプ(3)の前記駆動の間、前記推力チャンバ(22,122,222)の前記供給圧力(PA)が第2作業圧力(P2)を超えると、第2差動弁(9)を作動させることによって、前記戻りチャンバ(23,123,223)を流体溜め(15)に接続する工程
を備える、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板金加工機械に関し、特に、例えば、打抜き工具および/または切断工具などの複数の作業工具を別々の独立した態様で駆動するように適応させた油圧運転システムを備える薄板金加工機械に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチプレス(マルチツール)打抜き装置、および/または、単一打抜き装置、および/または、切断(剪断)装置、を備える薄板金加工機械が知られている。前記薄板金加工機械は、したがって、機械加工を施す薄板金に対して、同時に、および/または、順に、複数の打抜き動作および切断動作を実行できる。
【0003】
前記公知のマルチツール打抜き装置は、複数の打抜き工具(打抜き器)を含む。前記打抜き工具は、1または複数の列で互いに隣接し、並べて配置されて、例えば、互いに平行な列からなる行列構造を形成し、また、直線アクチュエータ、典型的には油圧シリンダ、からなるそれぞれのプレス部によって、別々の独立した様式で直線的に駆動されて、工作物と相互作用する。
【0004】
マルチプレス打抜き装置は、工作物に対して必要となる機械加工を順に実行するのに必要な工具を全て含む。これによって、製造サイクル中に工具変更操作を実行する必要がなくなり、(機械の生産性を増加させるための)工具交換のための停止と、(機械の構造を簡素化するために)工具をセットアップおよび交換するための自動装置と、の両方を排除できる。
【0005】
公知の切断装置または剪断ユニットは、一般に、互いに直交する2枚の刃を含み、前記刃は、それぞれの軸に沿って独立して移動し、薄板金に対して切断を実行することが可能である。前記刃(シヤー)は、それぞれの直線アクチュエータ、典型的には、適当な寸法の油圧シリンダ、によって駆動する。
【0006】
切断装置とマルチプレス打抜き装置とを組み合わせた機械(打抜き/剪断機械とも呼ばれる)では、これら装置は、しばしば一体化して、単一の構造体となっている。
【0007】
打抜きおよび/または切断機械加工を正しく実行するために、各工具の、それぞれの作業軸に沿った位置、変位または行程、および、速度を確認することが必要である。これは、それらのパラメータが、工作物の材質の厚さおよび種類、および/または、実行する機械加工の種類、に依存するからであり、また、それらに関連するからである。
【0008】
打抜きおよび/または切断工具を駆動し、その動きを精密に制御するために、前記公知の機械は、油 圧運転システムを備えている。油圧運転システムは、油圧シリンダに供給し、したがって、それらを別々の独立した態様で駆動できる。油圧シリンダのピストンは、それぞれの工具に接続され、それらを動かすことで、同じ作業段階において、工作物に対して、単一の機械加工または複数の機械加工を実行する。
【0009】
公知の油圧運転システムは、一般に、電動機によって駆動される1または複数の油圧ポンプを含む。電動機は、(300バールに達する)高圧の作動液(油)を、好適なバイパスおよび圧力調整弁によって各油圧シリンダに接続される供給路に供給する。上述の弁によって、油圧シリンダ(すなわち、駆動する工具)、シリンダのピストンの動きの方向(すなわち、ピストン/工具の働き行程または戻り行程)、および、油圧シリンダの供給圧力(すなわち、工具が工作物に対して発揮する打抜き力)、を選択することが可能となる。油圧ポンプが供給路に供給する(300バールに達する)高い圧力は、打抜き装置の1または複数の油圧シリンダが、工作物に対して最大の打抜き力を発揮することを確実にするべく計算される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、普通の作業プロセスでは、工作物に対して実行される機械加工のうち、油圧シリンダにとっての最大供給圧力となる最大打抜き力または最大切断力の印加を必要とするのは、わずかな一部(およそ20%)のみであり、通常必要とする供給圧力は、それよりも大幅に小さい(60~100バール)。
【0011】
したがって、上述の油圧運転システムを備える機械の不利な点の1つは、(高圧の供給路の油に対するポンピングのために必要な)高い電力消費、および、全体的に低い電力効率(油の圧力は、実際に大部分の機械加工において低減しなければならない)、にある。
【0012】
他の不利な点は、以下の事実にある。すなわち、油圧シリンダの制御弁における圧力低減による高い供給圧力と熱放散とにより、油が高温になり、したがって、冷却手段によって適切に冷却しなければならず、結果として、機械がより複雑で高価になってしまう。
【0013】
本発明の目的の1つは、公知の薄板金加工機械、特に、別々の独立した態様で駆動される、例えば、打抜き工具および/または切断工具などの複数の作業工具を備える機械、を改善することである。
【0014】
他の目的は、電力消費が少なく、電力効率が高い機械を提供することである。
【0015】
さらなる目的は、作業工具が、例えば、打抜きおよび切削などの作業プロセスを最適な態様で実行できるようにする、特に、精密かつ正確に、各工具をそれぞれの作業軸に沿って駆動し、その位置、変位、および、速度を制御することができる、機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、請求項1に記載の薄板金加工機械である。
【0017】
本発明の第2の態様は、請求項9に記載の、薄板金加工機械における作業工具を駆動する方法である。
【0018】
本発明は、いくつかの例示的かつ非限定的な実施形態を示す、以下に説明する添付図面を参照して、よりよく理解し、実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】それぞれの油圧シリンダによって駆動する複数の作業工具を動かすための油圧運転システムを備える薄板金加工機械の部分概略図である。
【
図2】
図1の概略図のような概略図であって、油圧シリンダを駆動して、それぞれの作業工具を工作物に対して動かす作業構成の機械および油圧運転システムを示す概略図である。
【
図3】
図1の概略図のような概略図であって、さらなる作業構成の機械および油圧運転システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照すると、同図は、本発明の薄板金加工機械100を模式的かつ部分的に示す。薄板金加工機械100は、油圧運転システム1を含み、油圧運転システム1は、上述の機械100の複数の作業工具51,151,61をそれぞれの作業軸A,B,Cに沿って別々の独立した態様で駆動し、少なくとも1つの工作物200に対してそれぞれの機械加工を実行するように適応させてある。
【0021】
特に、図に示し、下に記載する実施形態では、機械100は、例えば、マルチプレス打抜き装置50と単一打抜き装置150と切断装置60とを含む、打抜き・切断両用機械である。油圧運転システム1は、マルチプレス打抜き装置50の複数の打抜き作業工具(打抜き工具51)と、単一打抜き装置150の単一の打抜き作業工具(打抜き工具151)と、切断装置60の1または複数の切断作業工具(切断工具61)と、を別々の独立した態様で駆動するように構成されている。
【0022】
機械100は、マルチプレス打抜き装置50のみを備える打抜き機であってもよい。
【0023】
公知の種類であるマルチプレス打抜き装置50の打抜き工具51は、図中では、描写を簡易にするために1つのみを示すが、例えば、いくつかの列で並べて配置して、打抜き工具51の行列構造を形成している。
【0024】
切断装置60(剪断ユニット)は、公知の種類であり、例えば、互いに直交する2つの刃61であって、それぞれの軸に沿って独立して移動して薄板金にカットを形成することが可能な刃61を含む。図中では、描写を簡易にするために1つのみを示す。
【0025】
マルチプレス打抜き装置50と単一打抜き装置150と切断装置60とは、同じ工作物200に対して順に、または、2つ以上の工作物200に対して同時に、加工を施すことができる。
【0026】
油圧運転システム1は、複数の油圧シリンダ(ジャッキ)2,102,202を含み、各油圧シリンダは、それぞれの作業工具51,151,61に関連付けられており、これを駆動するように構成されている。各油圧シリンダは、それぞれのピストン21,121,221を含み、ピストン21,121,221は、油圧シリンダ2,102,202内に、推力チャンバ22,122,222と戻りチャンバ23,123,223とを形成し、対応する作業工具51,151,61をそれぞれの作業軸A,B,Cに沿って動かすために、作業工具51,151,61に関連付けられている。より具体的には、ピストン21,121,221は、それぞれの油圧シリンダ2,102,202内で摺動する本体を含み、容積が可変の2つのチャンバを形成する。ピストン21,121,221は、さらに、ステム部を含み、ステム部は、油圧シリンダ2,102,202から突出し、接続手段(公知であり、図示しない)によって、対応する作業工具51,151,61に接続されている。
【0027】
図1の実施形態を参照すると、油圧運転システム1は、マルチプレス打抜き装置50の複数の打抜き工具51を駆動するための複数の第1油圧シリンダ2(1つのみを示す)を含む。各第1油圧シリンダ2は、それぞれの第1ピストン21を備え、前記第1ピストン21は、上述の第1油圧シリンダ2内に、第1推力チャンバ22と第1戻りチャンバ23とを形成し、対応する打抜き工具51に関連付けられて、それぞれの第1作業軸Aに沿って前記打抜き工具51を動かす。油圧運転システム1は、単一打抜き装置150の単一の打抜き工具151を駆動するための第2油圧シリンダ102をさらに含む。第2油圧シリンダ102は、それぞれの第2ピストン121を備え、前記第2ピストン121は、第2油圧シリンダ102内に、第2推力チャンバ122と第2戻りチャンバ123とを形成し、対応する打抜き工具151に関連付けられて、それぞれの第2作業軸Bに沿って前記打抜き工具151を動かす。
【0028】
最後に、油圧運転システム1は、切断装置60の2つの切断工具61を駆動するための、少なくとも1対の第3油圧シリンダ202(1つのみを示す)を含む。各第3油圧シリンダ202は、それぞれの第3ピストン221を備え、前記第3ピストン221は、第3油圧シリンダ202内に、第3推力チャンバ222と第3戻りチャンバ223とを形成し、対応する切断工具61に関連付けられて、それぞれの第3作業軸Cに沿って前記工具61を動かす。
【0029】
油圧運転システム1は、第1ポンプ3をさらに含む。第1ポンプ3は、特に複数の供給ダクトによって形成される供給路12によって、油圧シリンダ2,102,202の推力チャンバ22,122,222に接続されている。可逆型の第1ポンプ3は、以下のように構成されている。すなわち、供給圧力PAを有する流体(特に油)を、推力チャンバ22,122,222のうちの1または複数に送ることで、それぞれのピストン21,121,221を作業方向に沿って押し、それに関連付けられた作業工具51,151,61が工作物200と相互作用できるようにする(駆動段階)か、または、前記推力チャンバ22,122,222から流体を吸引することで、それぞれのピストン21,121,221を、作業方向とは逆の戻り方向に沿って動かし、作業工具51,151,61を工作物200から引き離し、遠ざける(戻り段階)。特に、駆動段階では、第1ポンプ3は、油を供給圧力PAに達するまで送るが、これは、必要とする機械加工を実行するために作業工具が工作物200に対して発揮しなければならない所望の力に関連するものである。
【0030】
油圧運転システム1は、大気圧を有する油(流体)溜め15を含む。油溜め15は、排出路14を介して第1ポンプ3の一方の口部に接続されており、第1ポンプ3の他方の口部は、供給路12を通じて油圧シリンダ2,102,202に接続されている。駆動段階では、第1ポンプ3は、油溜め15から油を引き込み、加圧された状態の油を油圧シリンダ2,102,202に送る。戻り段階では、第1ポンプ3は、油圧シリンダ2,102,202によって吸引された流体を油溜め15に注ぐ。
【0031】
油圧運転システム1は、特に供給路12に挿入された複数の弁4をさらに含む。各弁4は、それぞれの油圧シリンダ2,102,202に関連付けられており、第1ポンプ3と、油圧シリンダ2,102,202の推力チャンバ22,122,222と、の間に介在する。また、各弁4は、作動させて開き、第1ポンプ3を推力チャンバ22,122,222と流動接続させることで、油圧シリンダ2,102,202と、関連する作業工具51,151,61と、を作業方向に駆動することができる。
【0032】
油圧(加圧)アキュムレータ5が、特に複数の戻りダクトによって形成される戻り路13によって、油圧シリンダ2,102,202の戻りチャンバ23,123,223に接続されている。油圧アキュムレータ5(公知の種類であるため、詳述せず)は、戻りチャンバ23,123,223において流体を既定の予荷重圧力に保つように構成されており、特に、対応する弁4を作動させることによって選択的に駆動する、それぞれの油圧シリンダ2,102,202の1または複数のピストン21,121,221を、戻り方向に沿って動かすようになっている。
【0033】
以下のことに留意すべきである。すなわち、油圧シリンダ2,102,202の戻りチャンバ23,123,223における流体の予荷重圧力によって、油圧シリンダ2,102,202と供給路12および戻り路13との、すなわち、油圧運転システム1全体の剛性がより大きくなる。これによって、油圧運転システム1は、工作物200に対して機械加工が実行される間、ピストン21,121,221の、したがって作業工具51,151,61の動きに関して、より反応的かつ精密になる。
【0034】
以下のことにも留意すべきである。すなわち、各油圧シリンダ2,102,202において、作業工具51,151,61が工作物200に対して発揮できる力は、ピストン21,121,221に作用する供給圧力を有する流体から推力チャンバ22,122,222において得られる作業方向の推力と、ピストン21,121,221に作用する予荷重圧力を有する流体から戻りチャンバ23,123,223において得られる戻り方向の(逆方向の)対比する力と、の間の差によって生じる。
【0035】
油圧運転システム1は、電動機6を含む。電動機6は、機械100の制御ユニット10によって制御される。また、電動機6は、可逆型の第1ポンプ3を、両方の回転方向に、第1ポンプ3が加圧された流体を既定の流速で送出するように駆動するべく構成されている。より具体的には、制御ユニット10は、特に電動機軸6aの回転トルク、速度、および、加速度を変動させることによって、電動機6の動作を規制する。電動機軸6aは、作業条件にしたがって第1ポンプ3を駆動する。作業条件とは、例えば、駆動する作業工具51,151,61(すなわち、油圧シリンダ)の数、工作物200に対して発揮する力(すなわち、油圧シリンダに対する油の供給圧力)、などである。前記規制のために、油圧運転システム1は、供給路12に挿入された複数の圧力センサ17を含む。各圧力センサ17は、それぞれの油圧シリンダ2,102,202に関連付けられており、推力チャンバ22,122,222における流体の圧力を測定することができる。圧力センサ17は、制御ユニット10に接続されており、検出した圧力に関する信号を制御ユニット10に送る。
【0036】
図示する実施形態において、本発明の機械100の油圧運転システム1は、同じく可逆型の第2ポンプ7を含む。第2ポンプ7は、特に伝動軸によって第1ポンプ3に結合、接続されており、実質的に第1ポンプ3と同一である。2つのポンプ3,7は、制御ユニット10によって制御される同じ電動機6によって駆動して、ともに同じ速度で回転し、加圧された油を既定の流速で油圧シリンダ2,102,202に送出する。
【0037】
本発明の機械100の変形例(図示せず)において、油圧運転システム1の第1ポンプ3と第2ポンプ7とは一体化して、2つのポンピングユニットの組み合わせを備える単一のポンプとなっている。
【0038】
第1差動弁8が、第2ポンプ7と、油圧シリンダ2,102,202の推力チャンバ22,122,222と、の間に介在する。第1差動弁8は、推力チャンバ22,122,222のうちの少なくとも1つにおいて供給圧力PAが第1作業圧力P1を超えると作動し、第2ポンプ7を油溜め15に接続して、第2ポンプ7をバイパスし、または、再循環に組み込み、電動機6の全動力を第1ポンプ3に伝達させることができる。これによって、第1ポンプ3は、より高い圧力値で油を押し、圧縮することができる。第1差動弁8は、例えば、供給路12に挿入され、第1排出ダクト16を介して油溜め15に接続された三方弁である。第1差動弁8は、例えば、圧力センサ17から送られる圧力信号に基づいて、制御ユニット10によって制御され、作動する。あるいは、第1差動弁8は、供給路12における流体の圧力によって作動するパイロット弁によって駆動するサーボ弁であってもよい。
【0039】
油圧運転システム1は、第2差動弁9をさらに含む。第2差動弁9は、油圧アキュムレータ5と、油圧シリンダ2,102,202の戻りチャンバ23,123,223と、の間に介在する。また、第2差動弁9は、推力チャンバ22,122,222のうちの少なくとも1つにおいて供給圧力PAが第2作業圧力P2を超えると作動し、戻りチャンバ23,123,223を油溜め15に接続して、油溜め15を排出状態に、すなわち、大気圧にすることができる。これによって、推力チャンバ22,122,222における流体の供給圧力PAは一定のままである一方、戻りチャンバ23,123,223の圧力が大気圧の値まで減少するにしたがって、打抜き力および/または切断力は増加する。したがって、このようにすることで、供給圧力PAの値を抑制しつつ、第1ポンプ3の電力消費を低減させることが可能となる。
【0040】
第2作業圧力P2の値は、第1作業圧力P1の値よりも大きい。
【0041】
第2差動弁9は、例えば、戻り路13に挿入され、第2排出ダクト18を介して油溜め15に接続された三方弁である。第2差動弁9は、例えば、圧力センサ17から送られる圧力信号に基づいて、制御ユニット10によって制御され、作動する。あるいは、第2差動弁9は、供給路12における流体の圧力によって作動するパイロット弁によって駆動するサーボ弁であってもよい。
【0042】
油圧運転システム1を備える、本発明の薄板金加工機械100を動作させると、必要とする機械加工を工作物200に対して実行するのに必要な(単一の工具、または)作業工具51,151,61を動かす。例えば、
図2の例示的な作業構成では、油圧運転システム1は、マルチプレス打抜き装置50の複数の打抜き工具51のうちの1つを、それぞれの第1油圧シリンダ2を駆動ことによって、動かすように制御される。第1油圧シリンダ2は、対応する弁4を作動させて開き、第1ポンプ3と第2ポンプ7とを第1回転方向に駆動して、加圧された油を第1推力チャンバ22に送ることによって駆動する。より具体的には、電動機6は、制御ユニット10によって制御されて、既定の速度およびトルクでポンプを第1回転方向に回転させることで、ポンプ3,7が、工作物200に対して工具によって発揮される力(この場合、打抜き力)に関係する供給圧力PAを有する油を安定した流速で、すなわち、工作物200が機械加工、特に打抜きに対抗する抵抗力によって、 送出する。
【0043】
油圧運転システム1は、マルチプレス打抜き装置50の複数の打抜き工具51のうちの複数を、それぞれの第1油圧シリンダ2を駆動することによって同時に動かすこともできる。油圧運転システム1は、第2油圧シリンダ102を駆動することによって、単一打抜き装置150の単一の打抜き工具151を駆動することもできる。さらに、油圧運転システム1は、切断装置60の少なくとも1つの切断工具61を、それぞれの第3油圧シリンダ202を駆動することによって駆動することもできる。この動作は、マルチプレス打抜き装置50の単一の打抜き工具51について下に記載する動作と同じである。
【0044】
(打抜きまたは切断の)力は、使用する工具の種類(形状、大きさ、など)、実行する具体的な機械加工(穴あけ、切削、変形、など)、および、工作物200の材質に依存するが、機械加工の実行中に変動する、特に、増加することがあるため、一般に、供給圧力PAも推力チャンバ22,122,222内で変動(増加)することがあり、これによって、ポンプ3,7が必要とする供給圧力PAを供給するように、電動機6がポンプ3,7に供給しなければならないトルクまたは動力が増加する。機 械加工が工作物200に対して実行されると、第1油圧シリンダ2の第1ピストン21を戻り方向に動かすことによって、打抜き工具51を工作物200から引き離し、遠ざける。これは、電動機6の回転方向を逆転させることによって、すなわち、ポンプ3,7を、第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転させて、第1推力チャンバ22から油を吸引し、油溜め15に向けて移送することによって、達成される。これによって、第1推力チャンバ22の流体の圧力は(大気圧の値近くまで)低減されて、第1戻りチャンバ23内の(油圧アキュムレータ5によって確保される)予荷重圧力を有する流体が、第1ピストン21を戻り方向に押すことができる。
【0045】
以下のことに留意すべきである。すなわち、油圧アキュムレータ5を使用してピストン21,121,221を戻り方向に動かすようにすることで、油圧運転システム1を簡素化し、より経済的にできる。これは、ポンプ3,7から戻りチャンバ23,123,223に分配された流体を移送するためにさらなる弁を使用することを避けられるからである。その上、電動機6と、推力チャンバ22,122,222を油溜め15に接続するために実質的に駆動するポンプ3,7と、の電力消費は最小となり、ポンプ3,7がピストン21,121,221を戻り方向に動かすのに必要となる電力消費よりも低い。
【0046】
図3は、機械100の油圧運転システム1の他の作業または動作構成を示す。この構成は、対応する弁4を作動させて、ポンプ3,7が加圧された流体をそれぞれの第1油圧シリンダ2に送るようにすることによって、単一の打抜き工具51が高い打抜き力を発揮する駆動を実現する。この構成では、第1ピストン21および関連する打抜き工具51の行程において、駆動力、つまり打抜き力は次第に増加し、それとともに、第1推力チャンバ22内の供給圧力PAも増加する。供給圧力PAが第1作業圧力P1を超えると、第2ポンプ7は、再循環に組み込まれる。すなわち、第2ポンプ7は、送出のために油溜め15に接続されて、油溜め15に流体を送り、第1差動弁8を作動させる。これによって、第2ポンプ7は、動作から実質的に除外され、電動機6の全動力が第1ポンプ3に供給される。したがって、必要とする供給圧力PAの増加を保証できる。より具体的には、供給圧力PAを増加させ、流体の流速、つまり、第1ピストン21の速度を低減させ、実質的に電動機6の動力を増加させない、または、実質的にそのような増加を限定的にする、ことが可能である。これにより、機械100の油圧運転システム1全体の電力消費を抑制することができる。
【0047】
機械加工が進み、駆動力がさらに増加し、それとともに、推力チャンバ22内の供給圧力PAも増加した場合、供給圧力PAが第2作業圧力P2を超えると、第2差動弁9が作動する。この結果、第1戻りチャンバ23が油溜め15と流動接続する。すなわち、戻りチャンバ23が大気圧の排出状態になる。これによって、推力チャンバ22の流体の供給圧力PAを、実質的に一定のままに(また、第2作業圧力P2と等しく)できる、または、増加を限定的にできる。しかし、第1ピストン21に対して作業方向に発揮される有効力、すなわち、駆動力は、相当に増加する。これは、第1戻りチャンバ23の圧力が大気圧の値まで減少する、すなわち、ピストンの、戻り方向の対比する力が減少する、からである。すなわち、第2差動弁9によって第2戻りチャンバ23を排出することによって、供給圧力PAを増加させる、または、電動機6の動力を増加させる、必要なしに、駆動力を相当に増加させることが可能であり、これによって、機械100の電力消費を抑制できる。
【0048】
この場合も、工作物200に対する機械加工が終了すると、第1ピストン21を戻り方向に動かす、特に、ポンプ3,7を第2回転方向に回転させて、第1推力チャンバ22から流体を吸引し、油溜め15に向けて移送し、さらに、第2差動弁9を停止して、第1戻りチャンバ23を油圧アキュムレータ5に再度接続することによって、打抜き工具51を工作物200から引き離し、遠ざける。これによって、第1推力チャンバ22の流体の圧力は低減されて、第1戻りチャンバ23内の(油圧アキュムレータ5によって確保される)予荷重圧力を有する流体が、第1ピストン21を戻り方向に押すことができる。
【0049】
類似の動作は、本発明の機械100の油圧運転システム1が、マルチプレス打抜き装置50の複数の打抜き工具51のうちのいくつかを、それぞれの第1油圧シリンダ2を駆動することによって同時に動かすように構成されている場合でも、第2油圧シリンダ102を駆動することによって単一打抜き装置150の単一の打抜き工具151を動かすように構成されている場合でも、さらに、切断装置60の少なくとも1つの切断工具61を、それぞれの第3油圧シリンダ202を駆動することによって駆動するように構成されている場合でも、実現できる。
【0050】
本発明の薄板金加工機械100の油圧供給システム1のおかげで、複数の作業工具を、精密かつ正確に、個々に独立して駆動して、工作物200に対して1または複数の加工を同時に実行することが可能である。より具体的には、弁4を作動させることによって、それぞれの作業工具、特に、単一打抜き装置150の単一の打抜き工具151と、切断装置60の1または複数の切断工具61と、マルチプレス打抜き装置50の複数の打抜き工具51のうちの少なくとも1つと、のうちの少なくとも1つ、を動かすべく駆動する1または複数の油圧シリンダ2,102,202を選択することが可能である。
【0051】
制御ユニット10によって制御される電動機6に作用することでポンプ3,7の回転速度を調節することによって、油圧シリンダ2,102,202の推力チャンバ22,122,222の流体の流速および供給圧力を調節することが可能であり、したがって、ピストン21およびそれぞれの打抜き工具51の位置、変位、および、速度を作業軸A,B,Cに沿って精密かつ正確に制御することが可能である。油圧シリンダ2,102,202および本発明の油圧運転システム1全体は、精密さおよび反応性、すなわち、コマンドおよび調節(シリンダの油の流速および/または圧力の変化)に反応する能力、を有するが、これらを確実にするのは、すでに強調したように、油圧運転システム1全体の剛性でもあり、この剛性は、油圧シリンダ2,102,202の戻りチャンバ23,123,223を油圧アキュムレータ5に接続して、流体を既定の予荷重圧力に維持することによって得られる。
【0052】
油圧アキュムレータ5は、ピストン21,121,221が戻り方向に動くことを可能にするが、油圧運転システム1を簡素化し、その価格を抑えることも可能にする。これは、ポンプ3,7から戻りチャンバ23,123,223に供給された流体を移送するためにさらなる弁を使用することを避けられるからである。また、油圧アキュムレータ5によって、電動機6と、上述のピストン21,121,221を戻り方向に動かすために加圧された流体を送出してはならないポンプ3,7と、の電力消費が低減する。
【0053】
また、本発明の機械100の油圧運転システム1は、2つの差動弁8,9を使用するおかげで、電力消費が低減され、電力効率が高い。差動弁8,9は、油圧シリンダ2,102,202の供給圧力PAが、それぞれ第1作業圧力P1および第2作業圧力P2に達した際に作動する。より具体的には、供給圧力PAが第1作業圧力P1を超えると、第2ポンプ7は、再循環に組み込まれ、送出のために油溜め15に接続されて、第1差動弁8を作動させる。その結果、電動機6は、実際に第1ポンプ3だけを駆動する。したがって、電動機6の動力、したがって、その電力消費を増加させることなく、必要とする供給圧力PAの増加を保証することが可能である。
【0054】
供給圧力PAが第2作業圧力P2を超えると、戻りチャンバ23,123,223と油溜め15とを流動接続させる第2差動弁9も作動する。よって、推力チャンバ22,122,222の流体の供給圧力PAは、実質的に一定のままにできる、または、増加を限定的にできる。これは、ピストン21,121,221に対して作業方向に発揮される有効力、すなわち、打抜き/切断力が、戻りチャンバ23,123,223の圧力を減少させることによって増加するからである。打抜き/切断力を増加させる際、供給圧力PAを増加させる、すなわち、電動機6の動力を増加させる、必要はない。
【0055】
油圧運転システム1のおかげで、本発明の機械100は、公知の薄板金加工機械と比較して、電力消費がより効率的である。
【0056】
以下のことにも留意すべきである。すなわち、限られた数の弁と通常の油圧アキュムレータとを含む油圧運転システム1を使用することは、簡易かつ経済的であり、寸法および空間要件を低減し、コンパクトにできる。
【0057】
上述の、
図1から
図3に示す油圧運転システム1を備える薄板金加工機械100の複数の作業工具51,151,61を別々の独立した態様で駆動するための、本発明に係る方法は、以下を含む。
駆動する少なくとも1つの作業工具51,151,61を選択する工程であって、供給圧力PAを有する流体を送出するように構成されている、可逆型の第1ポンプ3と、選択された作業工具51,151,61に作用する油圧シリンダ2,102,202と、の間に介在するそれぞれの弁4を作動させて開くことによって選択する工程。
油圧シリンダ2,102,202の推力チャンバ22,122,222内に加圧された流体を送るために、第1ポンプ3を第1回転方向に駆動して、前記油圧シリンダ2,102,202のピストン21,121,221を作業方向に沿って押し、前記ピストン21,121,221に関連付けられた、選択された作業工具51,151,61が、工作物200に対して機械加工を実行することを可能にする工程。
前記機械加工が実行されると、推力チャンバ22,122,222から流体を吸引するために、第1ポンプ3を第1回転方向とは逆の第2回転方向に駆動して、油圧アキュムレータ5によって油圧シリンダ2,102,202の戻りチャンバ23,123,223に送られる加圧された流体によってピストン21,121,221を戻り方向に沿って押し、作業工具51,151,61を工作物200から引き離し、遠ざけることを可能にする工程。
【0058】
前記方法は、第1ポンプ3の前記駆動の間、第1作業圧力P1に達するまで油圧シリンダ2,102,202の推力チャンバ22,122,222に流体を送るために、特に第1ポンプ3に結合、接続された可逆型の第2ポンプ7を第1回転方向にさらに駆動する工程であって、第1作業圧力P1を超えると、第1差動弁8を作動させることによって、第2ポンプ7は再循環に組み込まれ、流体の送り先となる油溜め15に接続される工程をさらに含む。
【0059】
前記方法は、第1可逆ポンプ3の前記駆動の間、推力チャンバ22,122,222の流体の圧力が第2作業圧力P2を超えると、第2差動弁9を作動させることによって、油圧シリンダ2,102,202の戻りチャンバ23,123,223を油溜め15に接続する工程をさらに含む。