IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ コーニング コーポレーションの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】溶媒安定性スリップ添加剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20220329BHJP
   C08G 77/06 20060101ALI20220329BHJP
   C08G 77/46 20060101ALI20220329BHJP
   C08G 77/04 20060101ALI20220329BHJP
   C08L 83/12 20060101ALI20220329BHJP
   C09D 183/04 20060101ALN20220329BHJP
   C09D 183/12 20060101ALN20220329BHJP
【FI】
C08L83/04
C08G77/06
C08G77/46
C08G77/04
C08L83/12
C09D183/04
C09D183/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021559616
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2020028447
(87)【国際公開番号】W WO2020219329
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】62/838,354
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】フライフォーグル、パトリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リウ、イーハン
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル、ティモシー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】レイル、ジェニファー エー.
(72)【発明者】
【氏名】レイター、マイケル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ、ジョン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー、ゲイリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジマーマン、ブレット エル.
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-540233(JP,A)
【文献】国際公開第2016/014609(WO,A1)
【文献】特開昭64-58307(JP,A)
【文献】特表2013-539485(JP,A)
【文献】特表平10-512487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/04-83/14
C08G 77/04-77/46
C09D 183/04-183/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散液を含む組成物であって、前記分散液は、
(a)少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、25℃で1,000,000センチポアズ以上の粘度を有し、0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有する粒子の形態であるポリオルガノシロキサンと、
(b)
(i)4,000~50,000の重量平均分子量を有し、以下の組成:
(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2
[式中、下付き文字a、b及びcは、分子中のケイ素原子の総モルに対する前記下付き文字を伴う基の平均モル比を指し、下付き文字aは0.30~0.60、下付き文字bは0.40~0.70、下付き文字cは0.05~0.20であり、下付き文字a及びbの合計は1であり、Rは各出現において独立して、水素、1~30個の炭素原子を含有するアルキル基及びアリール基からなる群から選択され、Zは各出現において独立して、H、及びC~Cアルキルからなる群から選択される]を有するポリシロキサン樹脂、及び、
(ii)4,500ダルトン以上の数平均分子量を有し、同時に50,000ダルトン以下の数平均分子量を有し、以下の組成:
A-O-(CO)(CO)-A’
[式中、下付き文字e及びpは、それぞれ分子中の(CO)及び(CO)基の平均数であり、比e/pは1より大きく9未満であり、A及びA’は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から独立して選択されるが、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つはHである]を有するポリオキシアルキレンポリマーの縮合生成物と、
(c)前記ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアと、を含み、
前記非水性流体キャリア(c)の縮合生成物(b)に対する重量比はが、0.5以上10以下であり、縮合生成物(b)及び非水性流体キャリア(c)の組み合わせの、ポリオルガノシロキサン(a)に対する重量比は、0.01以上0.50以下であり、前記組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有する、組成物。
【請求項2】
前記縮合生成物(b)が、第1の非芳香族溶媒を含み、前記第1の非芳香族溶媒は、101.325キロパスカルの圧力で50~200℃の範囲の沸点を有し、δに関して15.0~22.6(MPa)1/2、δに関して2.8~7.0(MPa)1/2、δに関して4.0~7.5(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記縮合生成物(b)が、第2の非芳香族溶媒を更に含み、前記第2の非芳香族溶媒は、101.325キロパスカルの圧力で50~200℃の範囲の沸点、δに関して12.2~18.7(MPa)1/2、δに関して0.0~1.7(MPa)1/2、δに関して0.0~3.4(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値、及び前記第2の非芳香族溶媒の重量に基づいて0.075重量パーセント未満の水の溶解度を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の非芳香族溶媒及び前記第2の非芳香族溶媒が、δに関して15.0~16.4(MPa)1/2、δに関して2.0~6.0(MPa)1/2、δに関して3.3~6.3(MPa)1/2の合計ハンセン溶解度パラメータ値を有する、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記縮合生成物(b)が、縮合生成物100万重量部当たり5重量部未満の芳香族溶媒を含有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記ポリオルガノシロキサン(a)100重量部当たり最大500重量部の水の濃度で水を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記縮合生成物(b)及び前記組成物の両方が、スズ触媒を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
成分(a)の前記ポリオルガノシロキサン、成分(b)の前記縮合生成物、及び成分(c)の非水性流体キャリアと組み合わせて、有機バインダーを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリオルガノシロキサンが、末端アミン官能基を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物を調製する方法であって、前記方法は、
(a)縮合生成物を調製する工程であって、
(i)4,000~50,000の重量平均分子量を有し、以下の組成:
(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2
[式中、下付き文字a、b及びcは、分子中のケイ素原子の総モルに対する前記下付き文字を伴う基の平均モル比を指し、下付き文字aは0.30~0.60、下付き文字bは0.40~0.70、下付き文字cは0.05~0.20であり、下付き文字a及びbの合計は1であり、各出現におけるRは、水素、1~30個の炭素原子を含有するアルキル基及びアリール基からなる群から選択され、各出現におけるZは、H、及びC~Cアルキルからなる群から選択される]を有するポリシロキサン樹脂、及び、
(ii)4,500ダルトン以上の数平均分子量を有し、同時に50,000ダルトン以下の数平均分子量を有し、以下の組成:
A-O-(CO)(CO)-A’
[式中、下付き文字e及びpは、それぞれ分子中の(CO)及び(CO)基の平均数であり、e/pの値は1より大きく9未満であり、A及びA’は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から独立して選択されるが、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つはHである]を有するポリオキシアルキレンポリマーの間において反応溶媒中で縮合反応を行うことによって、調製する工程と、
(b)前記縮合生成物に、前記ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアを添加して、混合物を形成する工程と、
(c)工程(a)の後及び工程(d)の前に、縮合反応生成物の重量に対して2重量パーセント未満の濃度まで反応溶媒を除去する工程であって、縮合生成物の100万重量部当たり5重量部未満の濃度までいずれの芳香族溶媒も除去することを含む、工程と、
(d)工程(c)の混合物に、少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、剪断下20℃で1,000,000センチポアズ以上の粘度を有するポリオルガノシロキサンを分散させて、工程(c)の混合物中に分散した0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有するポリオルガノシロキサン粒子の分散液を生成して、組成物を形成する工程と、を含み、
工程(b)で添加された非水性流体キャリアの、工程(a)で調製された縮合生成物に対する重量比は、0.5以上10以下であり、工程(a)で調製された縮合生成物と工程(b)で添加された非水性流体キャリアとの組み合わせの、工程(d)で分散されたポリオルガノシロキサンに対する重量比は、0.01以上0.5以下であり、前記組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有する、方法。
【請求項11】
前記縮合反応が、第1の非芳香族溶媒中で実行され、前記第1の非芳香族溶媒は、101.325キロパスカルの圧力で50~200℃の範囲の沸点を有し、δに関して15.0~22.6(MPa)1/2、δに関して2.8~7.0(MPa)1/2、δに関して4.0~7.5(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記縮合反応が、前記第1の非芳香族溶媒と第2の非芳香族溶媒とのブレンドを含む非芳香族溶媒中で実行され、前記第2の非芳香族溶媒は、101.325キロパスカルの圧力で50~200℃の範囲の沸点、δに関して12.5~18.7(MPa)1/2、δに関して0.0~1.5(MPa)1/2、δに関して0.0~3.4(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値、前記第2の非芳香族溶媒の重量に基づいて0.075重量パーセント未満の水の溶解度を有し、第1の非芳香族溶媒と第2の非芳香族溶媒との前記ブレンドは、δに関しては15.0~16.4(MPa)1/2、δに関しては2.0~6.0(MPa)1/2、δに関しては3.3~6.3(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記縮合反応が、ポリシロキサン樹脂、ポリオキシアルキレンポリマー、及び非芳香族溶媒の合計重量100万重量部当たり5重量部未満の芳香族溶媒の存在下で実行される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリシロキサン樹脂及びポリオキシアルキレンポリマーの縮合反応生成物を含有する非水性流体中に分散したポリオルガノシロキサンを含む組成物に関する。組成物は、溶媒安定性のスリップ添加剤として有用である。
【0002】
序論
スリップ添加剤は、コーティングに耐摩耗性を付与するためにコーティングで概ね使用される。スリップ助剤は、物体とコーティングの表面との間の摩擦係数を低減する。コーティングの表面上を滑る物体間の摩擦係数が低下すると、望ましくは、物体が表面上をより自由に滑ることが可能になり、結果として、傷やきしみ音などの望ましくない影響が少なくなる。
【0003】
スリップ添加剤は、水性コーティング配合物中で安定していることが望ましく、コーティング配合物中に存在することが多い合体助剤などの有機溶媒の存在下でも安定していることがより望ましい。スリップ添加剤がコーティング配合物中で安定していない場合、相分離が起こり、配合物の均質性が失われる。魅力的なコーティングには均質性が必要である。
【0004】
コーティング配合物から芳香族溶媒を削減する動向がある。ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、及びキシレンなどの芳香族溶媒は、有機化合物やシリコーン化合物を合成する際によく使用され、得られるコーティング配合物にも持ち越される。芳香族溶媒は、成分の溶解性を高め、コーティングの乾燥時に水分を追い出し、コーティング成分の合体を誘発するのに好ましい。しかし、環境上の理由から、業界では芳香族溶媒の使用を削減したいと考えている。一度存在した芳香族溶媒をスリップ添加剤組成物から除去することは容易ではない。したがって、スリップ添加剤中の芳香族溶媒の量を低減するには、芳香族溶媒をほとんど又は全く使用せずにスリップ添加剤を形成する方法を特定する必要がある。
【0005】
水性コーティング配合物中で及び有機溶媒の存在下で安定であり、同時にスリップ添加剤100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有するスリップ添加剤は、当該技術分野を進歩させ、コーティング産業にとって望ましいものである。
【0006】
本発明は、水性コーティング配合物中で及び有機溶媒の存在下で安定であり、スリップ添加剤100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有するスリップ添加剤を提供する。
【0007】
本発明は、驚くべきことに、(a)ポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂反応生成物100万重量部当たり5重量部未満の芳香族溶媒を含有するポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂界面活性剤系を調製することができ、(b)かかるポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂界面活性剤系は、ポリオルガノシロキサンガムを0.5~20マイクロメートルの粒径に好適に分散させて、水及び有機溶媒の存在下で安定であり、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有するスリップ添加剤組成物を形成できることを発見した結果である。
【0008】
本発明は、スズ化合物を更に含まないことが可能である。ポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂界面活性剤は、縮合反応により作られる。スズ触媒は、縮合反応において一般的であるが、最終的なコーティングでは望ましくない。ポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂界面活性剤系を調製するために使用される本発明の縮合反応は、スズ触媒の非存在下で実行して、スズ触媒を含まないスリップ添加剤を生成することができる。
【0009】
第1の態様において、本発明は、分散液を含む組成物である。該分散液は、(a)少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、25℃で1,000,000センチポアズ以上の粘度を有し、0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有する粒子の形態であるポリオルガノシロキサンと、(b)(i)4,000~50,000の重量平均分子量を有し、以下の組成:(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2[式中、下付き文字a、b及びcは、分子中のケイ素原子の総モルに対する下付き文字を伴う基の平均モル比を指し、下付き文字aは0.30~0.60、下付き文字bは0.40~0.70、下付き文字cは0.05~0.20であり、下付き文字a、b及びcの合計は1であり、Rは各出現において独立して、水素、1~30個の炭素原子を含有するアルキル基及びアリール基からなる群から選択され、Zは各出現において独立して、H、及びC~Cアルキルからなる群から選択される]を有するポリシロキサン樹脂、及び、(ii)4,500ダルトン以上の数平均分子量を有し、同時に50,000ダルトン以下の数平均分子量を有し、以下の組成:A-O-(CO)(CO)-A’[式中、下付き文字e及びpは、それぞれ分子中の(CO)及び(CO)基の平均数であり、比e/pは1より大きく9未満であり、A及びA’は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から独立して選択されるが、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つはHである]を有するポリオキシアルキレンポリマーの縮合生成物と、(c)ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアと、を含み、非水性流体キャリア(c)の縮合生成物(b)に対する重量比は、0.5以上10以下であり、縮合生成物(b)及び非水性流体キャリア(c)の組み合わせの、ポリオルガノシロキサン(a)に対する重量比は、0.01以上0.50以下であり、組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、第1の態様の組成物を調製するための方法である。該方法は、(a)縮合生成物を調製する工程であって、(i)4,000~50,000の重量平均分子量を有し、以下の組成:(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2[式中、下付き文字a、b及びcは、分子中のケイ素原子の総モルに対する下付き文字を伴う基の平均モル比を指し、下付き文字aは0.30~0.60、下付き文字bは0.40~0.70、下付き文字cは0.05~0.20であり、下付き文字a及びbの合計は1であり、各出現におけるRは、水素、1~30個の炭素原子を含有するアルキル基及びアリール基からなる群から選択され、各出現におけるZは、H、及びC~Cアルキルからなる群から選択される]を有するポリシロキサン樹脂、及び、(ii)4,500ダルトン以上の数平均分子量を有し、同時に50,000ダルトン以下の数平均分子量を有し、以下の組成:A-O-(CO)(CO)-A’[式中、下付き文字e及びpは、それぞれ分子中の(CO)及び(CO)基の平均数であり、比e/pは1より大きく9未満であり、A及びA’は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から独立して選択されるが、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つはHである]を有するポリオキシアルキレンポリマーの間において反応溶媒中で縮合反応を行うことによって、調製する工程と、(b)縮合生成物に、ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアを添加して、混合物を形成する工程と、(c)工程(a)の後及び工程(d)の前に、縮合反応生成物の重量に対して2重量パーセント未満の濃度まで任意の反応溶媒を除去する工程であって、縮合生成物の100万重量部当たり5重量部未満の濃度までいずれの芳香族溶媒も除去することを含む、工程と、(d)工程(c)の混合物に、少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、剪断下20℃で1,000,000センチポアズ以上の粘度を有するポリオルガノシロキサンを分散させて、工程(c)の混合物中に分散した0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有するポリオルガノシロキサン粒子の分散液を生成して、組成物を形成する工程と、を含み、工程(b)で添加された非水性流体キャリアの、工程(a)で調製された縮合生成物に対する重量比は、0.5以上10以下であり、工程(a)で調製された縮合生成物と工程(b)で添加された非水性流体キャリアとの組み合わせの、工程(d)で分散されたポリオルガノシロキサンに対する重量比は、0.01以上0.5以下であり、組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有する。
【0011】
本発明の組成物は、コーティング配合物中のスリップ添加剤としての使用に有用である。本発明の方法は、本発明の組成物の調製に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
試験方法は、日付が試験方法番号と共に示されていない場合、本文書の優先日現在での直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)を指し、ENは欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、VDAは、自動車工業会(Verband der Automobilindustrie)を指す。
【0013】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、端点を含む。商品名で識別される製品は、本明細書に別途記載のない限り、本文書の優先日において、それらの商品名でサプライヤーから入手可能な組成物を指す。
【0014】
「アルキル」は、水素原子を除去することによってアルカンから誘導される炭化水素基である。「置換アルキル」は、少なくとも1つの炭素又は水素の代わりに炭素及び水素以外の原子を有するアルキルである。置換アルキルの例としては、アルキルアミン及びアルキルチオールが挙げられる。
【0015】
「アリール」は、水素原子を除去することによって芳香族炭化水素から誘導される基である。「置換アリール」は、少なくとも1つの炭素又は水素の代わりに炭素及び水素以外の原子を有するアリールである。
【0016】
「Cx~y」という種類の表記は、x個以上で同時にy個以下の炭素原子を有することを指す。
【0017】
本明細書の「混和性」成分は、肉眼で見たときに透明である混合物を形成する。
【0018】
シロキサン単位は、M、D、T及びQの表記によって特徴付けられる。Mは、式「(CHSiO1/2」を有するシロキサン単位、又は「トリメチルM単位」を指す。Dは、式「(CHSiO2/2」を有するシロキサン単位、又は「ジメチルD単位」を指す。Tは、式「(CH)SiO3/2」を有するシロキサン単位を指す。Qは、式「SiO4/2」を有するシロキサン単位を指す。M単位、D単位、及びT単位中のケイ素原子に結合した非酸素基は、別段の記載又は指示がない限り、メチル基である。接尾辞「型」が付いたシロキサン単位の表記への言及は、任意の1つ以上のメチル基が、実際には水素又はメチルを含む任意の炭素結合置換基であり得るシロキサン単位を指す。「炭素結合置換基」は、炭素原子を介してケイ素原子に結合している基である。例えば、「D型」シロキサン単位は、例えば、非酸素位置でケイ素原子に結合した水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、又は任意の他の炭素結合置換基を、任意の組み合わせで有し得る。特に、「1/2」の下付き文字の倍数を持つ酸素原子は、その酸素が指定された原子を第2の原子に架橋することを示し、第2の原子も「1/2」の倍数の下付き文字を持つ酸素で指定される。例えば、「(SiO4/2)(ZO1/2)」は、単一の酸素を介して「Z」基に結合したケイ素原子を有するQ型基を指す。
【0019】
「芳香族溶媒」とは、101.325キロパスカルの圧力で23℃にて液体であり、101.325キロパスカルの圧力で150℃未満の沸点を有し、かつ本発明で特許請求されている組成物の1つ以上の成分と混和性である芳香族材料を指す。芳香族溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレンの異性体が挙げられる。
【0020】
本発明は、ポリオルガノシロキサンと、ポリシロキサン樹脂及びポリオキシアルキレンポリマーの縮合生成物と、ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体と、を含む分散液を含む組成物を含む。分散液は、縮合生成物及び非水性流体キャリアを含有する連続相中に分散されたポリオルガノシロキサンポリマーの粒子を含む。
【0021】
組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有する。炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフィー(GC-FID)により、本組成物などの系中の芳香族溶媒の量を測定する。内部標準としてのオクタンと共に分散するまで振盪することにより、分析物(例えば、MQ樹脂)をn-ヘプタンで1:10(重量/重量)に希釈する。次の条件下でGC-FIDを使用して溶液を分析する。入口に1マイクロリットルの分析物溶液を注入し、摂氏280度(℃)の温度に50:1のスプリットで維持し、ヘリウムキャリアガスを2.0マイクロリットル/分で流す。分離は、DB-1 30メートル×0.25ミリメートル×1.0マイクロメートルのフィルムカラムで、30℃~300℃の範囲の温度勾配の下で、15℃/分の速度で発生する。炎イオン化検出器からのデータを解釈する。オクタン内部標準に対する芳香族含有量を定量する。
【0022】
ポリオルガノシロキサン
本発明のポリオルガノシロキサンは、望ましくは、1キロパスカル*秒(kPa*s)以上、5kPa*s以上、10kPa*s以上、15kPa*s以上、20kPa*s以上、25kPa*s以上、30kPa*s以上、40kPa*s以上、50kPa*s以上、75kPa*s以上、更には100kPa*sの粘度を有する。本明細書では、直径25ミリメートルのコーン及びプレートの形状を備えた、TA Instruments Discovery Hybrid Rheometer(DHR)又はAnton Paar Modular Rheometer(MCR)のいずれかを用いて、0.0001~0.01s-1の剪断速度範囲で、摂氏25度(℃)での粘度を測定する。粘度値は、定常剪断粘度である。好ましくは、ポリオルガノシロキサンは「ガム」であり、これは、ASTM法926によって求められるウィリアム可塑度が、30以上、好ましくは50以上であることを意味する。ポリオルガノシロキサンは、少なくとも90モルパーセントのD単位を含む。
【0023】
概して、本発明のポリオルガノシロキサンは、望ましくは以下の構造を有する。
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
式中、
は、各出現において独立して、アルキル基、アリール基、置換アルキル基、及び置換アリール基の群から選択され、式中、Rは、1個以上の炭素を有すると同時に、30個以下の炭素、好ましくは6個以下の炭素を有する。Rは、各出現においてメチルであり得る。
【0024】
は、各出現において独立して、水素、ヒドロキシル、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリール基からなる群から選択され、式中、Rは炭素数30個以下、好ましくは炭素数6個以下である。好適なR基の例としては、C2~30アルキル(エチル、プロピル、n-ブチル及びt-ブチルなど)、フッ素化C2~30アルキル、シクロヘキシル、C2~4アルキルチオール、C2~4一級アルキルアミン、-C2nNR’C2mNR’[式中、R’はH又は-C2mCH(OH)CHOHのいずれかであり、m及びnは、2~4の範囲の整数から独立して選択される]、-C2nOCHCH(OH)CHN(CHCH(OH)CH[式中、nは、2~4の範囲から選択される整数である]、-C2nOCHCHOCH[式中、nは、2~4の範囲から選択される整数である]、-C2nC(O)OH[式中、nは、2~4の範囲から選択される整数である]、並びに-SCHC(O)OHが挙げられる。
【0025】
は、各出現において独立して、R及びRの選択肢から選択される。
【0026】
下付き文字x、y、z、u及びvは、分子中の下付き文字を伴う特定の分子単位の平均数を示し、xは、2~50の範囲から選択される整数であり、yは、1~10,000の範囲から選択される整数であり、zは、0~200の範囲から選択される整数であり、uは1~50の範囲から選択される整数であり、vは1~50の範囲から選択される整数であるが、但し(x+y+z+u+v)は2,000以上であり、(u+v)/(x+y+z+u+v)は、0.4以下であり、z/yは0.05以下であり、x/(x+y+z+u+v)は0.6以下であること、及びポリオルガノシロキサンは少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を有すること、を条件とする。
【0027】
ポリオルガノシロキサンは、直鎖状又は「実質的に直鎖状」であり得る。直鎖状ポリオルガノシロキサンは、それに含まれる唯一のシロキサン単位がM型及びD型シロキサン単位であるという事実によって特徴付けられる。「実質的に直鎖状」ポリオルガノシロキサンは、それに含まれる唯一のシロキサン単位がM型及びD型シロキサン単位であり、総シロキサン単位100モル当たりのT型シロキサン単位とQ型シロキサン単位との合計が最大5モルであり、2つのT単位又はQ単位が分子内で互いに隣接していないという事実によって特徴付けられる。
【0028】
ポリオルガノシロキサンは、有利には、1つ以上の末端アミン官能基を有することができる。末端アミン官能基は、バインダー中に存在することが多いアクリレート及びイソシアネート官能基などの他の官能基と反応することができるため、望ましい。そのため、本発明の組成物が、コーティング配合物中にアクリレート官能化バインダーを含むか、又はそれと組み合わされると、ポリオルガノシロキサンの末端アミンは、反応してコーティングのバインダーに結合し、その結果、耐摩耗性及び耐汚れ性がより高いコーティングが得られる。
【0029】
好適なポリオルガノシロキサンの例としては、表1のものが挙げられる。
【表1】
【0030】
本発明の方法では、ポリオルガノシロキサンは、縮合生成物及び非水性キャリア中に分散されて、ポリオルガノシロキサン粒子の分散液を形成する。本発明の組成物において、ポリオルガノシロキサンは、0.5マイクロメートル(μm)以上の平均粒径を有する分散粒子として存在し、1.0μm以上、2.0μm以上、3.0μm以上、4.0μm以上、5.0μm以上、更には10μm以上であると同時に、望ましくは20μm以下、好ましくは15μm以下、12μm以下、10μm以下、8μm以下、6μm以下、更には5μm以下であり得る。Malvern Instruments製のMastersizer(商標)3000レーザー回折粒径分析器を用いて、ポリオルガノシロキサンの粒径分布の体積加重中央値(Dv50)として平均粒径を測定する。
【0031】
縮合生成物
本発明の組成物は、(i)ポリシロキサン樹脂、及び(ii)ポリオキシアルキレンポリマーの縮合生成物を含む。ポリシロキサン樹脂及びポリオキシアルキレンポリマーの縮合生成物は、縮合反応により生成される複数の成分の組み合わせである。各成分を単離及び特定することは、困難な作業である。更に、反応生成物のいずれか1つを除去すると、非水性流体中のポリオルガノシロキサン粒子を安定化させるための界面活性剤としての縮合生成物の機能に影響を与える可能性がある。縮合反応の生成物は、反応生成物を互いに単離することなく、本反応の組成物に使用される。したがって、この成分は、反応から生じる複数の生成物が存在することを明らかにするために、これら2つの反応物の「縮合生成物」として記載される。
【0032】
縮合反応は、反応溶媒中で実行される。反応溶媒は、縮合反応生成物をキャリア流体(後述)と組み合わせる前又は後に除去することができる。しかし、全ての反応溶媒を縮合反応生成物から除去することができるわけではないので、一部の溶媒が本発明の組成物に持ち越される。
【0033】
縮合生成物は、後述するキャリア流体と共に、特許請求される粒径範囲内の粒子へのポリオルガノシロキサンの分散及び安定化を可能にする界面活性剤として機能する。
【0034】
ポリシロキサン樹脂.ポリシロキサン樹脂は、望ましくは、重量平均分子量が4,000以上、6,000以上、8,000以上、10,000以上、12,000以上、14,000以上、16,000以上、18,000以上、20,000以上であり、同時に望ましくは、重量平均分子量が50,000以下、48,000以下、46,000以下、44,000以下、42,000以下、40,000以下、38,000以下、36,000以下、34,000以下、32,000以下、30,000以下、28,000以下、26,000以下、25,000以下、又は更には24,000以下である。トリプル検出器ゲル浸透クロマトグラフィ(光散乱、屈折率、粘度検出器)及び単一のポリスチレン標準を用いて、重量平均分子量をダルトン単位で測定する。
【0035】
ポリシロキサン樹脂は、以下の一般組成を有するMQ樹脂である。
(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2
式中、
下付き文字a、b、及びcは、分子中のケイ素原子の総モルに対する、下付き文字を伴う基の平均モル比を指す。下付き文字aは0.30~0.60の範囲の値、下付き文字bは0.40~0.70の範囲から選択された値、下付き文字cは0.05~0.20の範囲から選択された値である。必然的に、下付き文字a及びbの値の合計は1である。明確にするために、ZO1/2単位は、必然的にポリシロキサン樹脂分子のQ単位に結合している。望ましくは、下付き文字aの下付き文字bに対する比は、0.4~1.5.の範囲から選択される値である。29Si、13C及びH核磁気共鳴分光法を用いて、下付き文字a、b及びcの値を求める(例えば、The Analytical Chemistry of Silicones,Smith,A.Lee,ed.,John Wiley & Sons:New York,1991,p.347ff.を参照されたい)。
【0036】
Rは各出現において独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び1~30個の炭素原子を含有する置換アリール基からなる群から選択される。典型的には、Rは各出現において独立して、1~30個の炭素原子、より典型的には1~6個の炭素原子を含有するアルキル基及びアリール基からなる群から選択される。最も典型的には、Rは各出現において独立して、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基から選択される。
【0037】
Zは各出現において独立して、H及びC1~8アルキルからなる群から選択される。典型的には、Zは各出現において独立して、H、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から選択される。好ましくは、Zは水素である。
【0038】
好適なポリシロキサン樹脂は、米国特許第2676182号、同第3627851号、同第3772247号、同第8017712号、及び同第5548053号に教示される合成方法によって得ることができる。好適な市販のポリシロキサン樹脂としては、DOWSIL(商標)MQ-1600樹脂(DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である)、SR-1000 MQ樹脂(a=0.43、b=0.57、c=0.11、R=メチル;Z=3H;Momentive製)、及びBELSIL(商標)TMS 803(a=0.41、b=0.59、c=0.08、R=メチル;Z=3:5モル比のH:エチル;BELSILは、Wacker Chemie AGの商標である)として市販されているものが挙げられる。
【0039】
好適なポリシロキサン樹脂の具体例としては、表2のものが挙げられる。ポリシロキサン樹脂の構造は、上記のように、以下の構造で提供される。
(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2
【表2】
【0040】
ポリオキシアルキレンポリマー.ポリオキシアルキレンポリマーは、以下の組成を有する。
A-O-(CO)(CO)-A’
式中、
下付き文字e及びpは、それぞれ分子中のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド単位の数に対応する。比e/pは、望ましくは1以上であり、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上であり得、同時に、典型的には9以下であり、8以下、7以下、6以下、更には5以下であり得る。望ましくは、eとpの合計は100以上、好ましくは110以上、120以上、130以上、140以上であり、同時に、典型的には1000以下、750以下、更には500以下である。
【0041】
13C-又はH-核磁気共鳴分光法のピーク積分値の比から、e/pモル比(X)を求める。数平均分子量値からポリマー末端基の重量を除いた修正分子量値(Y)をMn-(M+MA’+16.00)[式中、Mnは数平均分子量、MはA末端基のモル質量、MA’はA’末端基のモル質量である]として算出する。「p」の値はY/(44.05*X+58.08)である。「e」の値は、「p」の値にe/pモル比(X)を乗じたものである。13C-又はH-核磁気共鳴分光法を用いてA及びA’の組成を最初に特定することによって、M及びMA’を求める。A及びA’の信号が低すぎて、e/p比を求めるのに十分な条件下で、13C-又はH-核磁気共鳴分光法によって構造を求めることができない場合、A及びA’の分子量は無視できると考え、M及びMA’の値にはゼロを使用する。
【0042】
プロピレンオキシド成分は、得られる縮合生成物の可撓性を高めるために、ポリオキシアルキレンポリマーにおいて有用である。ポリオキシアルキレンポリマーは、ポリシロキサン樹脂分子に連結している。プロピレンオキシド成分は、ポリオキシアルキレン中の流動性を確保するために必要であるため、後者のポリオキシアルキレンは、取り扱いや混合が容易な液体である。エチレンオキシド及びプロピレンオキシド単位は、ポリオキシアルキレンポリマー内で、ブロック構成であり得る、ランダムに分布し得る、又は部分的にブロック構成かつ部分的にランダムであり得る。
【0043】
A及びA’は、各出現において独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から選択されるが、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つが水素ある。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル及びブチルが挙げられる。望ましくは、A及びA’は両方とも水素である。
【0044】
ポリオキシアルキレンポリマーは、数平均分子量が4,500ダルトン(Da)以上、典型的には5,000Da以上、好ましくは10,000Da以上、より好ましくは12,500Da以上であると同時に、典型的には50,000Da以下、好ましくは30,000Da以下、更により好ましくは20,000Da以下である。1ミリリットル/分の流量のテトラヒドロフラン溶離剤、35℃の示差屈折率検出器、及び580Da~2,300Daの分子量範囲にわたる16の狭いポリスチレン標準を用いて、Polymer Labs PLgel5マイクロメートルガードカラム(50ミリメートル×7.5ミリメートル)に、続いて2つのPolymer Labs PLgel5マイクロメートルMixed-Cカラム(300ミリメートル×7.5ミリメートル)に、15ミリグラム/ミリリットルの濃度のサンプルを100マイクロリットル注入し、ゲル浸透クロマトグラフィによって数平均分子量を求める。
【0045】
好適なポリオキシアルキレンポリマーの具体例としては、表3のものが挙げられる。
【表3】
【0046】
非水性流体キャリア(キャリア流体)
本発明の組成物は、縮合生成物のキャリア流体として機能し、ポリオルガノシロキサンが分散する連続相として機能する非水性流体を含む。非水性流体キャリアは、ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である。
【0047】
非水性流体キャリアの縮合生成物に対する重量比は、0.5以上であり、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、更には8以上であり得、同時に、概ね10以下であり、9以下、8以下、7以下、6以下、更には5以下であり得る。
【0048】
縮合生成物と非水性流体キャリアとの合計重量の、ポリオルガノシロキサンの重量に対する比は、典型的には、0.01以上、0.05以上、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.30以上、0.35以上、0.40以上、更には0.45以上であると同時に、概ね0.50以下であり、0.45以下、0.40以下、0.35以下、0.30以下、0.25以下、0.20以下、0.15以下、0.10以下、更には0.05以下であり得る。
【0049】
好適な非水性キャリア流体の具体例としては、表4のものが挙げられる。
【表4】
【0050】
水性液体
本発明の組成物は、他の成分と混合された水性液体を更に含み得る。水性液体、好ましくは水は、任意選択で、主に希釈液として含まれ、組成物が水性コーティング配合物の一部である場合に望ましいものである。水性液体の濃度は、ポリオルガノシロキサン100重量部当たり最大500重量部であり得る。
【0051】
バインダー
本発明の組成物は、1つ以上のバインダーを更に含み得る。本発明の組成物の分散液は、コーティング組成物などの組成物におけるスリップ助剤として有用である。スリップ助剤は、コーティングの表面上の摩擦を低減する役割を果たす。コーティングは、基材上にフィルムを形成するバインダーを含有する。本発明の組成物中に存在し得るバインダーの例としては、アクリル及び/又はポリウレタンバインダーが挙げられる。アクリルバインダーとしては、溶剤性アクリル、アクリルエマルジョン、純粋なアクリルコポリマーの水性アニオン性エマルジョン、水性アニオン性自己架橋スチレン-アクリルコポリマーエマルジョン、遊離ヒドロキシル基を含む水性アニオン性スチレン-アクリルエマルジョン、及び水性アニオン性自己架橋コポリマーエマルジョンが挙げられる。ポリウレタンバインダーとしては、脂肪族ポリカーボネートウレタンの水性アニオン性分散液、脂肪族ポリエーテルウレタンの水性無溶媒アニオン性分散液、脂肪族ポリエステルウレタンの水性非イオン性分散液、脂肪族ポリカーボネート-ポリエーテルウレタンの水性無溶媒アニオン性分散液などが挙げられる。
【0052】
低濃度の芳香族溶媒
芳香族溶媒の濃度が極めて低いことは、本発明の組成物の特徴である。芳香族溶媒の濃度は、組成物の重量に対して、1重量パーセント(重量%)以下、好ましくは0.75重量%以下、より好ましくは0.50重量%以下、更により好ましくは0.25重量%以下、0.10重量%以下、0.05重量%以下、又は更には0.00重量%である。芳香族溶媒の濃度を求めるために、上記のGC-FID法による組成物中の芳香族溶媒の重量%を求める。
【0053】
芳香族溶媒は、反応物を効率的に可溶化するため、本発明の縮合生成物を調製するために使用されるものなどの縮合反応において概ね使用される。しかし、縮合反応に芳香族溶媒が使用される場合、ポリオルガノシロキサンを分散させた後に芳香族溶媒を除去することがほとんど不可能であるため、ポリオルガノシロキサンを分散させる前に芳香族溶媒を除去する必要がある。芳香族溶媒を除去/低減するための方法は、以下の「方法」の項で「選択肢1」として記載される。
【0054】
本発明の一環として発見された特に望ましい解決策の1つは、縮合反応の反応溶媒として使用するのに好適な非芳香族溶媒を特定し、それによって、本発明の組成物を得るために除去する必要がある芳香族反応溶媒の必要性を排除することであった。この方法は、以下の「方法」の項で「選択肢2」として記載される。ポリシロキサン樹脂及びポリオキシアルキレンポリマーの縮合反応の反応溶媒として好適な非芳香族溶媒を特定することは容易ではない。芳香族溶媒は、ポリシロキサン樹脂及びポリオキシアルキレンポリマーの両方と混和して縮合反応を促進し、更に、共沸して副生成物である水を低濃度まで除去して縮合反応の駆動を更に促進するのに好適であるという点で、反応溶媒としてはむしろ特有である。これらの目的の両方を果たす非芳香族反応溶媒を特定することは困難である。
【0055】
以下に詳述するように、本発明の一環として、縮合反応は、第1の非芳香族溶媒中で実行できることが発見され、該第1の非芳香族溶媒は、101.325キロパスカルの圧力で50~200℃の範囲の沸点を有するが、但し、非芳香族溶媒は、δに関して15.0~22.6(MPa)1/2、δに関して2.8~7.0(MPa)1/2、δに関して4.0~7.5(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値を有する。第1の非芳香族溶媒と第2の非芳香族溶媒との組み合わせである非芳香族溶媒中で縮合反応を実行することが更に望ましいことが見出され、該第2の非芳香族溶媒は、101.325キロパスカルの圧力で50~200℃の範囲の沸点、δに関して12.5~18.7(MPa)1/2、δに関して0.0~1.5(MPa)1/2、δに関して0.0~3.4(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値、第2の非芳香族溶媒の重量に基づいて0.075重量パーセント未満の水の溶解度を有する。更により望ましいのは、第1の非芳香族溶媒と第2の非芳香族溶媒との組み合わせで、その組み合わせが、δに関して15.0~16.4(MPa)1/2、δに関して2.0~5.0(MPa)1/2、δに関して3.3~6.3(MPa)1/2の合計ハンセン溶解度パラメータ値を有するように、非芳香族溶媒で縮合反応を行うことであった。これらの非芳香族溶媒の選択肢のいずれかで縮合反応を実行した場合、非芳香族溶媒の少なくとも一部は、縮合生成物と共に残り、溶媒の全てを除去することはできないため、その溶媒を用いて縮合生成物が作られた「フィンガープリント」として本発明の組成物に持ち越される。したがって、縮合生成物(及び組成物自体)は、101.325キロパスカルの圧力で50~200℃の範囲の沸点を有する第1の非芳香族溶媒を含有し得るが、但し、非芳香族溶媒はδに関して15.0~22.6(MPa)1/2、δに関して2.8~7.0(MPa)1/2、δに関して4.0~7.5(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値を有し;第1の非芳香族溶媒と、101.325キロパスカルの圧力で50~200℃の範囲の沸点及びδに関して12.2~18.7(MPa)1/2、δに関して0.0~1.7(MPa)1/2、δに関して0.0~3.4(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値を有する第2の非芳香族溶媒とを含有し得;更には、δに関して15.0~16.4(MPa)1/2、δに関して2.0~6.0(MPa)1/2、δに関して3.3~6.3(MPa)1/2の合計ハンセン溶解度パラメータ値を有する組み合わせた第1及び第2の芳香族溶媒を含有し得る。これらの3つの「フィンガープリント」のいずれかを有する組成物は特に望ましく、なぜなら、それらは、組成物が、添加された芳香族溶媒が存在しない場合に作製されたものであり得ることを示し、その結果、縮合生成物は、縮合生成物100万重量部当たり5重量部未満の芳香族溶媒の濃度を有し得、本発明の最終組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒の濃度を有することになるからである。
【0056】
好適な第1の非芳香族溶媒の例としては、2-ヘプタノン、n-ブチルアセテート、ジエチルカーボネート、イソブチルイソブチレート、プロピルプロピオネート、及びメチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0057】
好適な第2の非芳香族溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、及びデカンが挙げられる。
【0058】
δに関して15.0~16.4(MPa)1/2、δに関して2.0~6.0(MPa)1/2、δに関して3.3~6.3(MPa)1/2の合計ハンセン溶解度パラメータ値を有する、第1及び第2の非芳香族溶媒のブレンドの例としては、2-ヘプタノンとヘプタンとの83:17(重量/重量)ブレンド、並びにn-ブチルアセテートとヘプタンとの75:25(重量/重量)ブレンドが挙げられる。
【0059】
典型的には、第1の非芳香族溶媒は、組成物の100万重量部に対しての重量部で、20,000重量部以下、好ましくは10,000重量部以下の濃度で組成物中に存在し、5,000重量部以下、3,000重量部以下、1,000重量部以下、900重量部以下、700重量部以下、更に500重量部以下の濃度で組成物中に存在し、同時に、存在する場合、典型的には、1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、25重量部以上、50重量部以上の濃度で存在し、100重量部以上であり得る。
【0060】
典型的には、第2の非芳香族溶媒は、組成物の100万重量部に対しての重量部で、20,000重量部以下、好ましくは10,000重量部以下の濃度で組成物中に存在し、5,000重量部以下、3,000重量部以下、1,000重量部以下、900重量部以下、700重量部以下、更に500重量部以下の濃度で組成物中に存在し、同時に、存在する場合、典型的には、1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、25重量部以上、50重量部以上の濃度で存在し、100重量部以上であり得る。
【0061】
触媒
本発明の別の利点は、スズ触媒を含まないことが可能であることである。縮合反応の中には、スズ触媒の使用を必要とするものがあり、スズ触媒は、ポリオルガノシロキサンの分散液を調製する際に使用すると、最終組成物まで持ち越されてしまう。スズ触媒は、一部の用途では望ましくない。本発明の縮合生成物を調製するために使用される縮合反応は、スズ触媒なしで実行することができ、それによってスズ触媒の導入を回避することができる。このように、縮合反応生成物及び最終組成物は、スズ触媒を含まないことが可能である。
【0062】
方法
本発明は、本発明の組成物を調製するための方法を含む。本方法は、
(a)縮合生成物を調製する工程であって、
(i)4,000~50,000の重量平均分子量を有し、以下の組成:
(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2
[式中、下付き文字a、b及びcは、分子中のケイ素原子の総モルに対する下付き文字を伴う基の平均モル比を指し、下付き文字aは0.30~0.60、下付き文字bは0.40~0.70、下付き文字cは0.05~0.20であり、下付き文字a及びbの合計は1であり、各出現におけるRは、水素、1~30個の炭素原子を含有するアルキル基及びアリール基からなる群から選択され、各出現におけるZは、H、及びC~Cアルキルからなる群から選択される]を有するポリシロキサン樹脂、及び、
(ii)以下の組成:
A-O-(CO)(CO)-A’
[式中、e/pの値は1より大きく9未満であり、A及びA’は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から独立して選択されるが、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つがHである]を有するポリオキシアルキレンポリマーの間において反応溶媒中で縮合反応を行うことによって、調製する工程と、
(b)縮合生成物に、ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアを添加して、混合物を形成する工程と、
(c)工程(a)の後及び工程(d)の前に、縮合反応生成物の重量に対して2重量パーセント未満の濃度まで反応溶媒を除去する工程であって、縮合生成物の100万重量部当たり5重量部未満の濃度までいずれの芳香族溶媒も除去することを含む、工程と、
(d)工程(c)の混合物に、少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、剪断下20℃で1,000,000センチポアズ以上の粘度を有するポリオルガノシロキサンを分散させて、工程(c)の混合物中に分散した0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有するポリオルガノシロキサン粒子の分散液を生成して、組成物を形成する工程と、を含み、
工程(b)で添加された非水性流体キャリアの、工程(a)で調製された縮合生成物に対する重量比は、0.5以上10以下であり、工程(a)で調製された縮合生成物と工程(b)で添加された非水性流体キャリアとの組み合わせの、工程(d)で分散されたポリオルガノシロキサンに対する重量比は、0.01以上0.5以下であり、組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有する。
【0063】
ポリオルガノシロキサン(a)、ポリシロキサン樹脂(b)(i)、ポリオキシアルキレンポリマー(b)(ii)、及び非水性流体キャリアは、組成物について上述したとおりである。
【0064】
望ましくは、ポリオキシアルキレンポリマー(b)(ii)のポリシロキサン樹脂(b)(i)に対する重量比は、0.5以上、好ましくは1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、更に6以上であると同時に、典型的には7以下であり、6以下、5以下、4以下、2以下、更に1以下であり得る。
【0065】
工程(c)での反応溶媒の除去は、工程(a)の後かつ工程(b)の前、又は工程(a)及び(b)の両方の後かつ工程(d)の前、に行うことができる。望ましくは、任意の芳香族反応溶媒の除去は、工程(b)におけるキャリア流体の添加の前に行われる。
【0066】
本発明の方法は、乳化した反応物からポリオルガノシロキサンを重合させる乳化重合法とは対照的に、ポリオルガノシロキサンを直接乳化させることができるので、他の方法よりも有利である。乳化重合は、ポリオルガノシロキサンを直接乳化するには界面活性剤系が不十分な場合に用いられる。残念ながら、乳化重合によってポリオルガノシロキサンを形成する際に反応物を乳化させるために使用される界面活性剤は、合体剤などの有機溶媒を含有するコーティング配合物中のポリオルガノシロキサンを安定化させるには不十分である傾向がある。本発明の方法は、煩雑な乳化重合プロセスを必要とせず、ポリオルガノシロキサンの安定したエマルジョンを直接形成することができる界面活性剤(縮合生成物)を提供する。
【0067】
本方法で特に課題となるのは、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有するように組成物を調製することである。縮合生成物及び非水性流体キャリアに分散したポリオルガノシロキサンを含有する組成物中に存在する芳香族溶媒を除去することは、可能であるとしても非常に困難である。芳香族溶媒は、ポリオルガノシロキサンと混和性である傾向があり、分散したポリオルガノシロキサン粒子に可溶化するため、除去が困難になる。加えて、芳香族溶媒を除去するために加熱すると、ポリオルガノシロキサンの分散液を安定化させる界面活性剤が不安定になる可能性がある。したがって、本発明の組成物を得るためには、ポリオルガノシロキサンをそれに分散させる前に、縮合生成物中の芳香族溶媒を除去するか、又は含まないようにする方法を発見することが重要であった。
【0068】
本発明の方法は、縮合反応生成物を調製することと、存在する場合には芳香族溶媒の量を、縮合生成物100万重量部当たり5重量部未満の濃度まで低減することと、縮合生成物に、縮合生成物を作製するために使用されるポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアを添加して、混合物を作製することと、次いで混合物にポリオルガノシロキサンを分散させて、本発明の組成物を提供することとを必要とする。このようにして、ポリオルガノシロキサンを分散させる前に芳香族溶媒の濃度を十分に低くすることで、最終組成物の100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒という所望の目標を達成することができる。
【0069】
本発明の方法を達成するためには、2つの主要な方法、すなわち、(1)芳香族溶媒の存在下で縮合生成物を調製し、次いで、芳香族溶媒を除去した後、ポリオルガノシロキサン成分を分散させること、又は、好ましくは、(2)芳香族溶媒を除去する必要なく、芳香族溶媒の濃度が本質的に縮合生成物100万重量部当たり5重量部未満であるように、非芳香族溶媒中で縮合生成物を調製すること、が存在する。
【0070】
選択肢1-芳香族溶媒を用いた縮合物の調製.縮合反応は、芳香族溶媒中で行うのが一般的である。しかし、本発明の目的は、分散組成物100万重量部当たり1重量部未満である芳香族溶媒の濃度を達成しながら、縮合生成物中のポリオルガノシロキサンの分散液を調製することである。分散液を調製した後、このような低濃度に芳香族溶媒を除去することは、可能だとしても困難である。したがって、縮合反応混合物が芳香族溶媒を含む場合、ポリオルガノシロキサンを分散させる前に好ましくは縮合反応生成物の100万重量部当たり5重量部以下の濃度に芳香族溶媒を除去する必要がある。
【0071】
芳香族溶媒を除去するための方法の1つは、バッチ容器内で縮合反応混合物を加熱して揮発性溶媒を留去することであり、任意選択で真空下で行うことができる。あるいは、縮合反応混合物は、高温でワイプフィルム蒸発装置を通過し、及び/又は減圧下で実行して、揮発性芳香族溶媒を除去することができる。
【0072】
芳香族溶媒を除去するための望ましい方法の1つは、二軸押出によるものであり、芳香族溶媒の存在下で縮合生成物を調製した後、得られた縮合生成物を、揮発性の芳香族溶媒を除去しながら、高温及び/又は減圧下で二軸押出機に通す。
【0073】
芳香族溶媒を除去すると、ポリオルガノシロキサンは、非水性流体キャリアと残りの縮合反応生成物との組み合わせに分散される。
【0074】
選択肢2-芳香族溶媒なしでの縮合物の調製.本発明の驚くべき結果は、芳香族溶媒を必要としない縮合反応を行うのに有用な好適な溶媒を発見したことである。芳香族溶媒は、特に望ましくは、代替溶媒の特定を困難にする特性を有する。例えば、縮合反応のための望ましい溶媒は、非芳香族であると同時に、以下:(a)縮合反応に用いられるポリシロキサン樹脂との混和性、(b)縮合反応に用いられるポリオキシアルキレンポリマーとの混和性、(c)必要に応じて縮合反応生成物から除去できるような十分な揮発性(すなわち、101.325kPaの圧力で200℃以下の沸点を有すること)、及び(d)望ましくは、水と共沸混合物を形成して、溶媒と共に水の除去を容易にできること、のうちの1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは4つ全てを有する必要がある。
【0075】
本発明者らは、ポリシロキサン樹脂、ポリオキシアルキレンポリマー及び非芳香族溶媒の合計重量100万重量部を基準にして、1重量部未満の芳香族溶媒を含有する(好ましくは芳香族溶媒を含まない)非芳香族溶媒中で、その溶媒が、101.325キロパスカルの圧力で50~200℃の範囲の沸点、及びδに関して15.0~22.6(MPa)1/2、δに関して2.8~7.0(MPa)1/2、δに関して4.0~7.5(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値を有する第1の非芳香族溶媒(上述)を含むか、又はそれからなることを条件として、本発明の縮合反応を行うことができることを発見した。好ましくは、非芳香族溶媒は、第1の非芳香族溶媒と第2の非芳香族溶媒(上述)とのブレンドを含むか又はそれらからなり、該第2の非芳香族溶媒は、101.325キロパスカルの圧力で50~200℃の範囲の沸点、δに関して12.2~18.7(MPa)1/2、δに関して0.0~1.7(MPa)1/2、δに関して0.0~3.4(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値、第2の非芳香族溶媒の重量に基づいて0.075重量パーセント未満の水の溶解度を有する。望ましくは、第1の非芳香族溶媒と第2の非芳香族溶媒とのブレンド(上述)は、δに関しては15.0~16.4(MPa)1/2、δに関しては2.0~6.0(MPa)1/2、δに関しては3.3~6.3(MPa)1/2のハンセン溶解度パラメータ値を有する。望ましくは、第1の非芳香族溶媒と第2の非芳香族溶媒とのブレンドは、第2の非芳香族溶媒の第1の非芳香族溶媒に対する重量比が0.05以上、好ましくは0.07以上であり、0.09以上、0.10以上、0.12以上、0.14以上、0.16以上、0.18以上、0.18以上、0.20以上、0.22以上、更に0.24以上であり得、同時に、典型的には0.5以下、0.48以下、0.46以下、0.44以下、0.42以下、0.40以下、0.38以下、0.36以下、0.34以下、0.32以下、0.30以下、0.28以下、0.26以下であり、更に0.24以下であり得る。
【0076】
望ましくは、縮合反応は、上記のように、第1の非芳香族溶媒、又は第1の非芳香族溶媒と第2の非芳香族溶媒との組み合わせからなる溶媒中で実行される。
【実施例
【0077】
ポリシロキサン樹脂「R4」の合成
3つ口丸底フラスコに、210.09gのテトラエトキシシラン(The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)Z-6697Silaneして入手可能)及び89.99gのトリメチルエトキシシラン(Gelest,Inc.から市販)を添加する。不活性雰囲気下で、反応の間、300回転/分で混合物を連続的に撹拌する。681マイクロリットルの37重量%塩酸水溶液(Fisher Scientificから入手可能)を添加し、50℃に加熱する。44.84gの脱イオン水を滴下し、混合物を還流(77.6℃)で2時間保持する。混合物を冷却し、110.18gの2-ヘプタノン(Sigma Aldrichから)を加え、Dean-Starkトラップをセットアップに取り付けて副生成物のエタノールを回収する。エタノールを除去しながら、混合物を100℃に加熱する。100℃になったら、反応物を冷却し、911マイクロリットルの45重量%水酸化カリウム水溶液(Fisher Scientificから入手可能)及び追加の11.65gの脱イオン水を加える。加熱して還流させ(151.8℃)、Dean-Starkトラップで水を回収しながら1時間保持する。混合物を冷却し、760マイクロリットルの37重量%塩酸水溶液を加える。混合物を再び加熱して1時間還流させ、Dean-Starkトラップで蒸留水を回収する。冷却し、5.21gの酸化マグネシウムを添加する。30分間混合する。得られた生成物(「R4」)を、公称孔径0.45マイクロメートルの濾材で濾過する。
【0078】
ポリオキシアルキレン「P2」の合成
500ミリリットル(mL)丸底フラスコに、233.58グラム(g)ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル、Aldrich、無水99.5%)、18.04gのトリエチレングリコールブチルエーテル、及び1.96gの50%水酸化カリウム水溶液を入れる。フラスコに、温度制御された加熱マントル、6枚プレートの真空ジャケット付き銀めっきOldershawカラム、及び水冷式の還流/蒸留ヘッドを取り付ける。ドライアイスで保護されたEdwards製真空ポンプを用いて真空を適用する。淡黄色の溶液を7トールの真空下で60~65℃のポット温度まで加熱して、30~52℃のヘッド温度で25.34gの留出物を回収する。真空下で溶液を冷却し、次いで窒素で真空を解放して、淡黄色の溶液を得る。
【0079】
コニカルボトム2リットル(L)Parr反応器に淡黄色の溶液を入れる。反応器を密閉し、圧力を確認し、窒素でパージした後、120℃に加熱する。2.04gのプロピレンオキシドと混合した618.6gのエチレンオキシドを、2グラム/分の添加速度で220分間添加し、次に1グラム/分で370分間添加する。混合物を120℃で一晩保持した後、60℃に冷却する。ヘッドスペースを15分間パージした後、1013.53gの反応生成物を取り出す。反応生成物を1.05gの酢酸と混合する。0.45マイクロメートルの公称粒径に生成物を濾過し、水銀柱5ミリメートルの減圧下で、120℃での回転蒸発によってジグリムから分離して、ポリオキシアルキレン「P2」を得る。
【0080】
縮合生成物B1~B15の調製
ガラス製の撹拌パドル及び撹拌シャフト、熱電対、並びに水冷凝縮器及び窒素パージに接続された溶媒で予め充填されたDean Starkトラップを備えた3つ口丸底フラスコからなる反応器を準備する。反応器内の反応溶媒(S)にポリシロキサン樹脂成分(R)を溶解させた後、混合しながらポリオキシアルキレン(P)を加える。10分後、反応触媒(C)を添加する。加熱して勢いよく還流させ、Dean Starkトラップで水を回収する。7時間後、混合物を冷却し、化学的中和により触媒を失活させ、濾過し、25℃まで冷却する。表5は、B1~B16の成分を示している。
【0081】
濾液から溶媒をストリッピングして、例えば二軸押出機を用いて縮合生成物を直接得ることができる。しかし、これらの実施例では、溶媒を除去する前に、非水性流体キャリア(キャリア流体)を濾液に添加した。下記の表6で示されているキャリア流体を、表6で明らかなキャリア流体の縮合生成物に対する質量比を達成するのに十分な濃度で添加する。縮合生成物の重量に基づいて2重量パーセント未満の濃度まで反応溶媒(S)を、水銀柱10ミリメートルで105℃で回転蒸発させることによって除去して、「縮合生成物」を得る。
【表5】
【0082】
スリップ助剤組成物の調製(実施例1~15)
表6に記載の組成で、2つの方法のうちの1つによる本発明のスリップ助剤組成物(実施例1~15)を調製し、次いで組成物中のポリオルガノシロキサンの粒径の評価を行う。実施例(Exs)1及び2は、方法2で作製される。実施例3~15は、方法1を使用して作製される。
【0083】
方法1:
FlackTek Inc.からのSpeedMixer(商標)DAC 150 FVCを用いて、組成物を調製する。DAC 150 FVZミキサーでの使用に適したMax-60カップに、17.5gのポリオルガノシロキサン(成分A)、Fisher Scientificからのガラスビーズ(11-312A)8g、及び縮合生成物(B)と非水性流体キャリア(C)との混合物6.25gを加える。カップをキャップし、ミキサー内のサンプルを3500回転/分で2分間スピンさせる。サンプルを室温まで冷却してから、再度3500回転/分で1分間スピンさせる。11.5gの水(あるいは、実施例3のThe Dow Chemical CompanyからのジプロピレングリコールLO+)を3段階で増量しながらサンプルに添加し、各添加後にサンプルをミキサー内で30秒間スピンさせる。
【0084】
方法2:
Charles Ross&Son Company製のRoss VMC-1ミキサーを用いて、以下の方法で組成物を調製する。ステンレス鋼容器に、縮合生成物(B)及び非水性流体キャリア(C)の混合物364gと、ポリオルガノシロキサン(成分A)565gとを入れる。内容物を、デュアルディスパーサでは1020回転/分、スクレーパでは35回転/分で20分間混合する。同じ成分Aを更に452g加え、続いて同じ条件で50分間混合する。619gの水を3段階で増量しながら添加し、各添加後に、均質に分散するまで混合する。
【0085】
Malvern Instruments製のMastersizer(商標)3000レーザー回折粒径分析器を用いて、各サンプル中のポリオルガノシロキサン(成分A)の平均粒径をDv50として求める。粒径の単位はマイクロメートル(μm)である。実施例1~6及び8~15はスズ触媒を含まない。
【表6】
【0086】
表6のデータは、本発明の縮合生成物が、ポリオルガノシロキサンを所望の粒径に好適に分散させることを明らかにしている。これらの分散液はそれぞれ水性連続であり、安定しており、それによって水性環境での安定性を示している。
【0087】
比較例(Comp Exs)A及びB
比較例A及びBは、先行技術の参考文献における類似の分散液の結果を示す。比較例Aは、米国特許第8877293号の実施例2に対応し、比較例Bは、国際公開第2016014609号の実施例1に対応する。
【0088】
比較例A.DAC 150 FVZ SpeedMixer(商標)での使用に適したMax-100カップ(150mLポリプロピレンカップ)に、35gのポリオルガノシロキサンA1、16gの直径3mmの球状ガラスビーズ(Fisher)、及び7gの界面活性剤(約14,600の数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール);Pluronic(商標)F-108として市販されている;PluronicはBASF Corporationの商標である)を添加する。カップを閉じ、ミキサーに入れ、3450回転/分で3分間スピンさせる。カップを開き、内容物をスパチュラで撹拌する。カップを閉じ、ミキサーで更に1分間、3450回転/分でスピンさせる。得られた混合物を28gの脱イオン水で4段階で増量(3g、5g、8g及び12g)しながら希釈し、各添加後、カップを3450回転/分で30秒間スピンさせる。得られた混合物は、水中のポリオルガノシロキサンの安定な水中油型エマルジョンからなり、エマルジョンの50重量パーセントのシリコーン含有量を有する。ポリオルガノシロキサンは、3.05マイクロメートル(Dv50)の平均粒径を有する。
【0089】
比較例B.DAC 150 FVZ SpeedMixer(商標)での使用に適したMax-100カップ(150mLポリプロピレンカップ)に、50gのポリオルガノシロキサンA1、28,000g/molの公称式重量を有する10gの水溶性分岐シリコーンポリエーテル(The Dow Chemical Company製のDOWSIL(商標)OFX-5247 Fluidとして入手可能)を添加する。カップの内容物をミキサーで60秒間、2500回転/分で混合する。3000回転/分で更に2回混合を繰り返す。40gの水を3段階で増量しながら添加し、各添加後に、同じミキサーで3000回転/分で60秒間混合する。得られた混合物は、6.88マイクロメートル(Dv50)の平均ポリオルガノシロキサン粒径を有する、均質な安定した白色水中油型エマルジョンである。
【0090】
溶媒安定性の特性評価
表7は、実施例及び比較例における溶媒安定性の特性評価の結果を示している。6つの異なる溶媒、すなわち、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DOWANOL(商標)DPMグリコールエーテル;DOWANOLは、The Dow Chemical Companyの商標である)、ブチルグリコール、プロピレングリコールn-ブチルエーテル(DOWANOL(商標)PnBグリコールエーテル)、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(DOWANOL(商標)DPnBグリコールエーテル)、エステルアルコール(TEXANOL(商標)エステルアルコール;TEXANOLは、Eastman Chemical Companyの商標である)での安定性を判定する。
【0091】
各溶媒について、5重量部の脱イオン水及び1重量部の溶媒をガラスバイアルに添加することによって、分散液のサンプルを希釈する。バイアル瓶を振盪して内容物を混合する。1重量部の分散液を添加し、振盪して混合する。バイアルを24時間放置した後、バイアルの内容物を視覚的に観察し、以下のカテゴリーに従って分散液の状態を評価する。安定:目に見える相分離は観察されない。相分離:目に見えるポリオルガノシロキサンの塊がエマルジョンから相分離している。クリーミング:エマルジョンの液滴が上部に拡散しているが、目に見えるポリオルガノシロキサンの塊は見えない。
【0092】
表7のデータは、本発明の分散組成物が溶媒に対して安定であるのに対し、2つの比較例はそうではないことを明らかにしている。
【表7】
【0093】
コーティング配合物
以下の方法で分散組成物をバインダーと組み合わせることによりコーティング配合物を調製する。100mLのガラスビーカー(第1のビーカー)に、10gの脱イオン水及び5gのイソプロピルアルコールを混合する。金属スパチュラを用いて混合する。別の250mLビーカー(第2のビーカー)では、50gの分散組成物と35gの脱イオン水とを混合し、標準的な3枚の上部ピッチブレードを備えたIKA撹拌機を用いて、800回転/分で5分間混合する。混合しながら、第1のビーカーの内容物を第2のビーカーに滴下する。第3のビーカー(100mLビーカー)に、18gのポリウレタン分散バインダー(表8参照)及び第2のビーカーからの内容物2gを加える。第3のビーカーの内容物を木製スパチュラで適度に攪拌しながら1分間混合して、コーティング配合物を得る。
【0094】
これらのコーティング用バインダーは、以下から選択される。
I-Stahl Polymers製のPERMUTEX(商標)RU-13-085バインダーとして入手可能な脂肪族ポリウレタン/ポリカーボネート系分散液。
II-80重量部のPRIMAL(商標)U-91バインダー(脂肪族ポリウレタンの水性分散液;Rohm and Haas Corporationから入手可能)、及び20重量部のEASAQUA(商標)XD 803バインダー(アルキルフェノールエトキシレートを含まない水分散性脂肪族ポリイソシアネート;Vecnorexから入手可能、EASAQUAはVecnorexの商標である)のブレンド。
【0095】
同じ手順及び分散組成物なしのバインダーIIを用いて、参照(「対照」)コーティングを作製する。
【0096】
コーティングの適用
ポリエステル基材.BYK製のギャップアプリケータを用いて、各コーティング配合物の60マイクロメートル厚のコーティングを、透明なポリエステルプラスチックフィルム上に適用する。80℃の通気オーブン中でコーティングを2分間乾燥させる。
【0097】
革基材.BYK製のギャップアプリケータを用いて、前処理を施した黒色の牛革上に、各34マイクロメートル厚の2つの層を適用する。第2の層を適用する前に、80℃の通気オーブン内で第1の層を2分間乾燥させる。通気オーブン内で、第2の層を80℃で2分間乾燥させる。
【0098】
コーティングの特性評価
以下の各方法でコーティングの特性を評価し、結果を表7に示す。
【0099】
外観:バインダー及びポリエステルフィルムとの分散液の相溶性は、ポリエステルフィルム上のコーティングの外観から明らかである。外観は1~5の値が割り当てられ、1は「欠陥がない」、5はクレーターが原因で約半分の領域が欠陥であることに対応する。1~3の値が許容可能である。
【0100】
耐摩耗性:ISO 17076-1:2012の方法に従って、テーブル法-重量1キログラムのCS-10ホイルを用いて、革基材上のコーティングの耐摩耗性を評価する。目に見える摩耗が観察されるまでに革が耐えたサイクル数を報告する。数値が大きいほど耐摩耗性が高く、望ましいことを意味する。
【0101】
湿潤摩擦:ISO 26082-1の方法に従って、マーティンデール法を用いて革基材上のコーティングの湿潤摩擦抵抗性を評価する。試験方法に従って、ΔEの値で数値を割り当てる。数値が低いほど望ましい。
【0102】
摩擦係数及びきしみ音防止:VDA 230-206の方法に従って、革基材のコーティングの摩擦係数及びきしみ防止性能を測定する。摩擦係数については、Ziegler Instruments製のSSP-04Test Benchを使用する。きしみ音については、値が1~3の場合、スティックスリップが発生せず、可聴ノイズが予想されないことを示す。4~5の値は、スティックスリップの問題が発生する可能性があり、可聴干渉を排除できないことを示す。6~10の値は、スティックスリップの問題が発生し、相対的な動きの際に可聴ノイズが予想されることを示している。摩擦係数及びきしみ音防止の両方とも低い値が望ましい。
【表8】
【0103】
表8の結果は、本発明の分散組成物が、コーティング配合物中のバインダーと組み合わせたときに、スリップ助剤として機能することを示している。
【要約】
【解決手段】 組成物は、ポリシロキサン樹脂及びポリオキシアルキレンポリマーの縮合生成物の組み合わせに分散させたポリオルガノシロキサンと、非水性流体キャリアとを含有し、非水性流体キャリアの縮合生成物に対する重量比は、0.5以上10以下であり、縮合生成物及び非水性流体キャリアの組み合わせの、ポリオルガノシロキサンに対する重量比は、0.01以上0.50以下であり、組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有する。
【選択図】なし