(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】金型組立体、及び、中空部を有する成形品の射出成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20220330BHJP
B29C 45/78 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/78
(21)【出願番号】P 2017095467
(22)【出願日】2017-05-12
【審査請求日】2020-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】508091649
【氏名又は名称】有限会社浦野技研
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100094363
【氏名又は名称】山本 孝久
(72)【発明者】
【氏名】浦野 隆実
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-110934(JP,A)
【文献】特開平08-243712(JP,A)
【文献】特開昭62-294514(JP,A)
【文献】特開2000-263187(JP,A)
【文献】特開2013-146890(JP,A)
【文献】特開平06-328551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に設けられたキャビティ内に、溶融熱可塑性樹脂導入部を介して溶融熱可塑性樹脂を射出する工程と、
加圧ガス導入・排出装置と液体導入・排出装置とを兼用する装置のノズルの先端を前記キャビティ内に位置させ、前記キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に前記ノズルから加圧ガスを導入して、前記キャビティ内に射出された前記溶融熱可塑性樹脂の内部に中空部を形成した後、前記中空部内に位置する前記ノズルから加圧ガスを外部に排出する工程と、
前記兼用する装置の前記ノズルを介して前記中空部内へ液体を導入し、導入された前記液体を、前記ノズルを介して排出し、外部への除去を複数回繰り返す工程と、から成ることを特徴とする中空部を有する成形品の射出成形方法。
【請求項2】
キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを導入し、前記キャビティ内に射出された前記溶融熱可塑性樹脂の内部に中空部を形成し、前記キャビティ内に射出された熱可塑性樹脂にスキン層が形成された後、前記中空部内の前記加圧ガスを外部に排出することを特徴とする請求項
1に記載の中空部を有する成形品の射出成形方法。
【請求項3】
前記中空部内への液体の導入、導入された前記液体の前記中空部からの排出、外部への除去を複数回繰り返す工程において、前記液体を再使用することを特徴とする請求項
1又は請求項
2に記載の中空部を有する成形品の射出成形方法。
【請求項4】
駆動口、吸込口及び吐出口を有するエジェクターによって、前記中空部内の前記液体を外部に除去することを特徴とする請求項
1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の中空部を有する成形品の射出成形方法。
【請求項5】
前記キャビティ内に射出される溶融熱可塑性樹脂の体積V
1は、前記キャビティの体積V
0未満であることを特徴とする請求項
1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の中空部を有する成形品の射出成形方法。
【請求項6】
0.7≦V
1/V
0<1
を満足することを特徴とする請求項
5に記載の中空部を有する成形品の射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型組立体、及び、中空部を有する成形品の射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融熱可塑性樹脂を用いて射出成形方法に基づき成形品を成形する際、ヒケや反りのない外観の美麗な成形品を得るために、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂に加圧ガスを導入してキャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の内部に中空部を形成し、型開きの前に中空部内の加圧ガスを大気中に解放する、中空部を有する成形品の射出成形方法が広く用いられている。キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂に導入された加圧ガスによって溶融熱可塑性樹脂が金型のキャビティ面に押し付けられる結果、得られる成形品にヒケや反りが発生することを防止し得る。
【0003】
ところで、このような従来の中空部を有する成形品の射出成形方法にあっては、キャビティ内の熱可塑性樹脂の内部に形成された中空部はほぼ断熱状態となる。その結果、キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化させるために長時間を要するといった問題がある。
【0004】
この問題点を解決する射出成形方法が、例えば、特開平9-85771号公報から周知である。この特許公開公報に開示された技術にあっては、複数の金型を合わせて密閉キャビティを形成し、密閉キャビティ内に1つの材料注入口から流動状の合成樹脂材を注入した後、材料注入口に近い第1噴射口から圧縮空気等の適宜圧力のガスをキャビティ内の合成樹脂材内に圧入して中空部を形成し、次いで、中空部に、材料注入口から遠い位置の第2噴射口から圧縮空気等の適宜圧力のガスを圧入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開平9-85771号公報に開示された技術にあっては、金型の構造が複雑になるし、キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化させるための時間の短縮化が十分には図れない。
【0007】
従って、本発明の目的は、簡素な構成、構造であるにも拘わらず、キャビティ内の熱可塑性樹脂を、効果的に短時間で冷却、固化させることができる金型組立体、及び、中空部を有する成形品の射出成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の中空部を有する成形品の射出成形方法は、
金型に設けられたキャビティ内に、溶融熱可塑性樹脂導入部を介して溶融熱可塑性樹脂を射出する工程と、
加圧ガス導入・排出装置と液体導入・排出装置とを兼用する装置のノズルの先端を前記キャビティ内に位置させ、前記キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に前記ノズルから加圧ガスを導入して、前記キャビティ内に射出された前記溶融熱可塑性樹脂の内部に中空部を形成した後、前記中空部内に位置する前記ノズルから加圧ガスを外部に排出する工程と、
前記兼用する装置の前記ノズルを介して前記中空部内へ液体を導入し、導入された前記液体を、前記ノズルを介して排出し、外部への除去を複数回繰り返す工程と、から成ることを特徴とする。
【0010】
ここで、複数回は、2回、好ましくは3回以上であることが望ましい。尚、第1回目に中空部内に液体を導入したとき、屡々、キャビティ内に射出された熱可塑性樹脂の熱によって、中空部内に導入された液体が気化し、蒸気となる。従って、この場合、中空部内に導入された液体が気化した蒸気を外部に除去するが、この工程も、「中空部内に導入された液体を外部に除去する工程」に含まれる。
【0011】
加圧ガスの導入は、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂を射出中、又は、射出完了と同時、又は、射出完了後とすればよい。
【0012】
本発明の中空部を有する成形品の射出成形方法において、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを導入し、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に中空部を形成し、キャビティ内に射出された熱可塑性樹脂にスキン層が形成された後、中空部内の加圧ガスを外部に排出する形態とすることができる。このようにスキン層が形成された後、中空部内の加圧ガスを外部に排出することで、熱可塑性樹脂の内部に形成された中空部の形状を安定に保つことができる。
【0013】
上記の好ましい形態を含む本発明の中空部を有する成形品の射出成形方法において、中空部内に液体を導入し、次いで、中空部内の液体を外部に除去する工程を、複数回、繰り返すとき、液体を再使用することが好ましい。
【0014】
本発明の金型組立体において、液体除去装置は、駆動口、吸込口及び吐出口を有するエジェクターから構成されている形態とすることができる。また、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の中空部を有する成形品の射出成形方法において、駆動口、吸込口及び吐出口を有するエジェクターによって、中空部内の液体を外部に除去する形態とすることができる。
【0015】
液体貯蔵容器(タンク)に貯蔵された液体が、ポンプ及び配管を介してエジェクターの駆動口の送出され、吐出口から液体貯蔵容器に戻される循環系が形成される。また、液体貯蔵容器(タンク)に貯蔵された液体が、ポンプ及び別の配管を介して、更には、液体導入・排出装置を介して中空部内に導入される。そして、所定の時間、中空部内に滞在した液体は、液体導入・排出装置を介して中空部から排出され、更に別の配管を介してエジェクターの吸込口に吸引され、吐出口から液体貯蔵容器に戻される排出系が形成される。このように、エジェクターの駆動口に送出された液体、及び、エジェクターの吸込口に吸引された液体は、エジェクターの吐出口を介して液体貯蔵容器に戻される。
【0016】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の金型組立体あるいは本発明の中空部を有する成形品の射出成形方法において、キャビティ内に射出すべき溶融熱可塑性樹脂の量は、キャビティを完全には充填しない量とすることが好ましい(ショートショット法)。即ち、キャビティ内に射出される溶融熱可塑性樹脂の体積V1は、キャビティの体積V0未満であることが好ましく、具体的には、限定するものではないが、
0.7≦V1/V0<1
を満足することが一層好ましい。次に述べるオーバーフローキャビティ部を備えている場合、キャビティ内に射出すべき溶融熱可塑性樹脂の量は、キャビティを完全には充填しない量であってもよいし、キャビティを完全に充填するが、オーバーフローキャビティ部を完全には充填しない量であってもよく、キャビティ内に射出される溶融熱可塑性樹脂の体積V1は、具体的には、限定するものではないが、
0.7≦V1/V0≦1.1
を満足することが一層好ましい。また、ショートショット法に限定するものではなく、キャビティ内に射出すべき溶融熱可塑性樹脂の量は、キャビティを完全に充填する量としてもよい(フルショット法)。
【0017】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の金型組立体あるいは本発明の中空部を有する成形品の射出成形方法において、金型には、キャビティに連通したオーバーフローキャビティ部(「捨てキャビティ部」とも呼ばれる)が設けられている形態とすることができる。即ち、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を射出中に、あるいは、射出完了と同時に、あるいは、射出完了後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを導入するが、この加圧ガスの導入によって押し退けられたキャビティ内の溶融熱可塑性樹脂をオーバーフローキャビティ部に流出させる。このように、オーバーフローキャビティ部を設けることで、より安定して成形品の射出成形を行うことができる。オーバーフローキャビティ部は、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の流動方向の末端に設けられている。但し、厳密に末端に相当する部分でなくともよい。即ち、溶融熱可塑性樹脂の流動方向の末端近傍に相当する部分であってもよい。また、キャビティとオーバーフローキャビティ部との間に開閉可能な弁機構を配設してもよく、これによって、溶融熱可塑性樹脂のオーバーフローキャビティ部への流入を正確に制御することができる。
【0018】
金型は、第1の金型部(例えば、固定金型部)と第2の金型部(例えば、可動金型部)から構成されている。第1の金型部や第2の金型部は、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金等の周知の金属材料から作製することができる。
【0019】
溶融熱可塑性樹脂導入部は、第1の金型部に配設されていてもよいし、第2の金型部に配設されていてもよいし、第1の金型部及び第2の金型部に配設されていてもよい。溶融熱可塑性樹脂導入部(具体的には、ゲート部)の構造は、公知の如何なる形式のゲート構造とすることもでき、例えば、ダイレクトゲート構造、サイドゲート構造、ジャンプゲート構造、ピンポイントゲート構造、トンネルゲート構造、リングゲート構造、ファンゲート構造、ディスクゲート構造、フラッシュゲート構造、タブゲート構造、フィルムゲート構造を例示することができる。
【0020】
加圧ガス導入・排出装置は、第1の金型部に配設されていてもよいし、第2の金型部に配設されていてもよいし、第1の金型部及び第2の金型部に配設されていてもよい。加圧ガス導入・排出装置において、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に中空部を形成するためにキャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを導入する部分と、中空部内の加圧ガスを外部に排出する部分を、同じ部品から構成してもよいし、異なる部品から構成してもよい。液体導入・排出装置も、第1の金型部に配設されていてもよいし、第2の金型部に配設されていてもよいし、第1の金型部及び第2の金型部に配設されていてもよい。液体導入・排出装置において、中空部内に液体を導入する部分と、中空部内の液体を排出する部分を、同じ部品から構成してもよいし、異なる部品から構成してもよい。更には、液体導入・排出装置を加圧ガス導入・排出装置と兼用してもよく、このような液体導入・排出装置と加圧ガス導入・排出装置とが兼用された装置を、以下、便宜上、『流体導入・排出装置』と呼ぶ。
【0021】
金型組立体への流体導入・排出装置の配設例として、流体導入・排出装置の先端部が、キャビティ内、あるいは金型のキャビティ面近傍に配置されるように、流体導入・排出装置を第1の金型部、あるいは、第2の金型部、あるいは、第1の金型部及び第2の金型部に配設する構成とすることができる。流体導入・排出装置は、例えば、周知のガス注入ノズルとすることができる。必要に応じて、先端部を加熱するための加熱手段(例えば、電気ヒータ)を先端部に取り付けてもよい。このように加熱手段を配することで、流体導入・排出装置の近傍における溶融熱可塑性樹脂の瞬時の固化の開始を回避でき、流体導入・排出装置を介してキャビティ内の溶融熱可塑性樹脂に加圧ガスを確実に導入することができるし、流体導入・排出装置を介して中空部内の加圧ガスを系外に確実に排出することができる。また、場合によっては、流体導入・排出装置を、その先端部が溶融熱可塑性樹脂導入部内に配置されるように配設してもよいし、あるいは又、その先端部が射出用シリンダーの先端部(ノズル部)に配置されるように配設してもよいし、射出用シリンダーと溶融熱可塑性樹脂導入部とを結ぶ樹脂流路にその先端部が配置されるように配設してもよい。
【0022】
加圧ガスは、常温及び常圧で気体の物質であり、使用する熱可塑性樹脂と反応や混合しないものが望ましい。具体的には、窒素ガス、空気、炭酸ガス、ヘリウムガス等が挙げられるが、安全性及び経済性を考慮すると、窒素ガスやヘリウムガスが好ましい。尚、高圧下で液化したガスも含み得る。中空部内に導入される液体として、適切な温度に設定された水(湯)を挙げることができる。
【0023】
本発明の射出成形方法を実施するにあたって、射出成形時の溶融熱可塑性樹脂の量、温度、圧力あるいは射出速度、中空部を形成するために導入すべき加圧ガスの量、圧力あるいは速度、金型の冷却時間等、種々の条件は、使用する熱可塑性樹脂の種類、金型の形状等に依存して、適宜選択、制御する必要があり、一義的に定めることはできない。
【0024】
金型組立体の構成を、成形品1個取りとしてもよいし、多数個取りとしてもよい。
【0025】
本発明の射出成形方法によって得られる成形品は、特に限定を受けるものではなく、例えば、取っ手形成形品、長尺成形品、あるいは又、部分的に肉厚部を有する肉薄成形品を例示することができる。ここで、取っ手形成形品は、肉厚の握り部と、少なくとも1つの取付部とが一体となったものであり、握り部が成形品の最肉厚部に該当し、係る最肉厚部(握り部)には中空構造が設けられている。この成形品は、その取付部において、自動車、電器製品あるいは建築物の扉等に取り付けられる。そして、使用者が握り部を握り、扉等の開閉を行う。成形品は、通常、ハンドルあるいはレバーの形状を有する。一方、長尺成形品として、自動車の屋根の部分に取り付けるルーフレール、各種パイプ類を挙げることができ、部分的に肉厚部を有する肉薄成形品として、ボンネット等の外板、各種カバー類を挙げることができる。但し、成形品は、これらに限定するものではない。
【0026】
本発明での使用に適した熱可塑性樹脂として、結晶性熱可塑性樹脂や非晶性熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;ポリオキシメチレン(ポリアセタール,POM)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;液晶ポリマーを例示することができる。
【0027】
更には、ポリマーアロイ材料から成る熱可塑性樹脂を用いることができる。ここで、ポリマーアロイ材料は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたもの、又は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を化学的に結合させたブロック共重合体若しくはグラフト共重合体から成る。ポリマーアロイ材料は、単独の熱可塑性樹脂のそれぞれが有する特有な性能を合わせ持つことができる高機能材料として広く使用されている。少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料を構成する熱可塑性樹脂として、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;メタクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;変性PPE樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂を挙げることができる。2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイ材料を例示することができる。尚、このような樹脂の組合せを、ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂と表記する。以下においても同様である。更に、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂/PET樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂/ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/HIPS樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミド系樹脂、変性PPE樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミドMXD6樹脂、ポリオキシメチレン樹脂/ポリウレタン樹脂、PBT樹脂/PET樹脂を例示することができる。
【0028】
尚、以上に説明した各種の熱可塑性樹脂に、添加剤や、充填剤、強化剤を加えることもできる。
【0029】
添加剤として、可塑剤;安定剤;酸化防止剤:紫外線吸収剤;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド等の有機ニッケル化合物、ヒンダードアミン系化合物等の紫外線安定剤;帯電防止剤;難燃剤;バイナジン、プリベントール、チアベンダゾール等の防かび剤;流動パラフィン、ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイド等の滑剤;ADCA等の有機発泡剤;透明核剤;有機顔料、無機顔料といった各種の着色剤;架橋剤;アクリルグラフトポリマー、MBS等の耐衝撃強化剤を挙げることができる。
【0030】
可塑剤として、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸-2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸類;リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリクレシル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類;オレイン酸ブチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸-n-ヘキシン、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル等の脂肪酸塩基エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート等のアルコールエステル類;クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸ジブチル等のオキシ酸エステル類;トリメリット系可塑剤;ポリエステル系可塑剤;エポキシ系可塑剤;塩化パラフィン系可塑剤を挙げることができる。
【0031】
安定剤として、ジ-n-オクチルスズ化合物、ジ-n-ブチルスズ化合物、ジメチルスズ化合物等の有機スズ系安定剤;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ケイ酸鉛等の鉛化合物系安定剤;カドミウム石けん、鉛石けん、亜鉛石けん等の金属石けん系安定剤;リン酸トリスノニル;リン酸トリスノニルフェニル等を挙げることができる。
【0032】
酸化防止剤として、ジブチルクレゾール、ブチルヒドロキシアニソール等のフェノール系酸化防止剤;メチレンビス(メチルブチルフェノール)、チオビス(メチルブチルフェノール)等のビスフェノール系酸化防止剤;トリス(メチルヒドロキシブチルフェニル)ブタン、トコフェノール等のポリフェノール系酸化防止剤;ジミリスチルチオジプロピオネート等の有機イオウ化合物;トリス(モノ/ジノニルフェニル)ホスファイト等の有機リン化合物を挙げることができる。
【0033】
紫外線吸収剤として、サリチル酸フェニル、サリチル酸ブチルフェニル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;(ヒドロキシメチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;アクリル酸エチルヘキシルシアノジフェノニル等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0034】
帯電防止剤として、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミン、ポリ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤系帯電防止剤;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等の陰イオン界面活性剤系帯電防止剤;第4級アンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤系帯電防止剤;両性系界面活性剤;電導性樹脂を挙げることができる。
【0035】
難燃剤として、テトラブロモビスフェノールA、ポリブロモビフェノール、ビス(ヒドロキシジブロモフェニル)プロパン、塩化パラフィン等のハロゲン系難燃剤;リン酸アンモニウム、リン酸トリクレジル等のリン系難燃剤;三酸化アンチモン;赤リン;酸化スズ等を挙げることができる。
【0036】
また、充填剤、強化剤として、無機系材料;ステンレス鋼繊維、高強度アモルファス金属繊維、ステンレス箔、スチール箔、銅箔等の金属系材料;高分子ポリエチレン繊維、高強力ポリアレート繊維、パラ系全芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維、PEEK繊維、PEI繊維、PPS繊維、フッ素樹脂繊維、フェノール樹脂繊維、ビニロン繊維、ポリアセタール繊維等の有機系材料;粉系材料を挙げることができる。
【0037】
ここで、無機系の充填剤、強化剤として、ガラス繊維、ガラス長繊維、石英ガラス繊維等のガラス系材料;PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、グラファイトウィスカ等の炭素系材料;炭化ケイ素繊維、炭化ケイ素連続繊維、炭化ケイ素ウィスカ、炭化ケイ素ウィスカシート等の炭化ケイ素系材料;ボロン繊維といったボロン系材料;Si-Ti-C-O繊維といったSi-Ti-C-O系材料;チタン酸カリウム繊維、チタン酸カリウムウィスカ、チタン酸カリウム系導電性ウィスカ等のチタン酸カリウム系材料;窒化ケイ素ウィスカ、窒化ケイ素ウィスカシート等の窒化ケイ素系材料;硫酸カルシウムウィスカといった硫酸カルシウム系材料を挙げることができる。
【0038】
また、粉末系の充填剤、強化剤として、マイカフレーク、マイカ粉末、シラスバルーン、シリカ粉末、タルク粉末、水酸化アルミニウム粉末、水酸化マグネシウム粉末、マグネシウムシリケート粉末、硫酸カルシウム粉末、球状中空ガラス粉末、金属化粉末、高純度合成シリカ粉末、二硫化タングステン粉末、タングステンカーバイト粉末、ジルコニア粉末、ジルコニア系粉末、部分安定化ジルコニア粉末、アルミナ-ジルコニア複合粉末、複合金属粉末、鉄粉末、アルミニウム粉末、モリブデン金属粉末、タングステン粉末、窒化アルミニウム粉末、ナイロン微粒子粉、シリコーン樹脂粉末、スピネル粉末、アモルファス合金粉末、アルミフレーク、ガラスフレークを挙げることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の金型組立体においては、中空部内に液体を導入し、排出する液体導入・排出装置、及び、中空部内から排出された液体を外部に除去する液体除去装置を備えているので、また、本発明の中空部を有する成形品の射出成形方法にあっては、中空部内に液体を導入し、次いで、中空部内に導入された液体を外部に除去する工程を、複数回、繰り返すので、簡素な構成、構造であるにも拘わらず、キャビティ内の熱可塑性樹脂を、効果的に、短時間で冷却、固化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、実施例1の金型組立体の概念図である。
【
図2】
図2A、
図2B及び
図2Cは、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を射出している状態、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを導入し、中空部を形成している状態、及び、中空部から加圧ガスを排出している状態を模式的に示す図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、中空部に液体を導入している状態、及び、中空部から液体を排出している状態を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施例1の金型組立体の変形例における金型の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。
【実施例1】
【0042】
実施例1は、本発明の金型組立体、及び、本発明の中空部を有する射出成形品の成形方法に関する。実施例1の金型組立体の概念図を
図1に示し、実施例1における射出成形方法を説明するための金型等の模式的な端面図を
図2A、
図2B、
図2C、
図3A及び
図3Bに示す。
【0043】
実施例1の成形方法によって得られる成形品は、具体的には、例えば、取っ手形成形品である。ここで、取っ手形成形品は、肉厚の握り部と、少なくとも1つの取付部とが一体となったものであり、握り部が成形品の最肉厚部に該当し、係る最肉厚部(握り部)には中空構造が設けられている。この取っ手形成形品は、その取付部において、自動車、電器製品あるいは建築物の扉等に取り付けられる。そして、使用者が握り部を握り、扉等の開閉を行う。取っ手形成形品はハンドル形状を有する。
【0044】
実施例1の金型組立体は、
キャビティ14が設けられた金型10、
キャビティ14内に溶融熱可塑性樹脂を射出する溶融熱可塑性樹脂導入部13、
キャビティ14内に射出された溶融熱可塑性樹脂16の内部に中空部17を形成するためにキャビティ14内に射出された溶融熱可塑性樹脂16の内部に加圧ガスを導入し、中空部17内の加圧ガスを外部に排出する加圧ガス導入・排出装置、
中空部17内に液体を導入し、排出する液体導入・排出装置、及び、
中空部17内から排出された液体を外部に除去する液体除去装置、
を備えている。
【0045】
ここで、金型10は、第1の金型部(固定金型部)11及び第2の金型部(可動金型部)12から構成されており、第1の金型部11と第2の金型部12とを型締めすることでキャビティ14が形成される。
【0046】
実施例1において、溶融熱可塑性樹脂導入部13は、より具体的には、キャビティ14に開口したサイドゲート構造を有する。溶融熱可塑性樹脂導入部13は、樹脂流路13Aを介して射出用シリンダー(図示せず)に連通している。
【0047】
加圧ガス導入・排出装置及び液体導入・排出装置は、第1の金型部11に配設されていてもよいし、第2の金型部12に配設されていてもよいし、第1の金型部11及び第2の金型部12に配設されていてもよいが、実施例1にあっては、加圧ガス導入・排出装置及び液体導入・排出装置は、1つの装置(流体導入・排出装置21)で兼用されており、流体導入・排出装置21は第2の金型部12に配設されている。流体導入・排出装置21は、キャビティ14に先端部が開口した周知の加圧ガス注入ノズルから成る。
【0048】
流体導入・排出装置(加圧ガス注入ノズル)21の先端部はキャビティ14内に配置されるように配設されている。流体導入・排出装置21には、油圧シリンダー(図示せず)が備えられており、油圧シリンダーの作動によって、流体導入・排出装置21は、前進位置及び後退位置に位置する。前進位置にあるとき、流体導入・排出装置21の先端部はキャビティ14内に位置する。後退位置にあるとき、流体導入・排出装置21の先端部は金型(具体的には、第2の金型部12)のキャビティ面と同じ面内に位置する。
【0049】
液体除去装置は、駆動口41、吸込口42及び吐出口43を有するエジェクター40から構成されている。
図5に、エジェクター40の原理図を示す。駆動口41には、配管62を介して、ポンプ31から加圧された液体(具体的には、所定の温度とされた水あるいは湯)が供給される。駆動口41の内部は、その開口端41Aから終端41Bに向かうに従い内径が徐々に小さくなるノズル状になっており、終端41Bで最小径となる。縮径部44は、駆動口41の終端41Bと同じ内径となっている。吸込口42は縮径部44に開口しており、配管68を経た液体、即ち、中空部17内に存在した液体が吸引される。吐出口43は、吸引した液体を、駆動口41からの液体と共に排出する。吐出口43は、駆動口41と逆の形状、即ち、吐出口43の縮径部側の端部43Bから開口端43Aに向かうに従い内径が徐々に大きくなる形状となっている。エジェクター40において、駆動口41から導入された液体は縮径部44に向かう。縮径部44の内径が絞られているため、縮径部44における液体の流速が増加する。そして、流速が増加することで、ベルヌーイの定理に基づき縮径部44の圧力が低下するため、縮径部44に開口した吸込口42における圧力が低下し、配管68を介して液体が吸引される。この吸引された液体は、駆動口41に供給された液体と共に、吐出口43から排出される。
【0050】
図1に概念図を示すように、流体導入・排出装置21(より具体的には、加圧ガス注入ノズルの後端部)は、ガス流路を構成する配管65,64を介して加圧ガス供給装置50に接続されている。加圧ガスは窒素ガスから成り、加圧ガス供給装置50における加圧ガス源(図示せず)は、例えば、PSA方式の窒素ガス発生装置から構成されている。
【0051】
また、配管64,65の途中には、加圧ガス供給装置側から、制御減圧弁70、第1切替弁71及び第1開閉弁73が配されている。第1切替弁71は、更に、配管63を介して、流量制御装置32の液体排出部と連通している。また、配管65の途中から、配管66が分岐しており、配管66は第2開閉弁74を介して第2切替弁72に接続されており、第2切替弁72と外部(系外)とは配管67によって接続されている。また、第2切替弁72とエジェクター40の吸込口42とは、配管68によって接続されている。
【0052】
液体貯蔵容器30に貯蔵された液体は、配管60、ポンプ31及び配管62を介してエジェクター40の駆動口41に送出される。また、液体貯蔵容器30に貯蔵された液体は、配管60、ポンプ31、配管61、流量制御装置32、配管63、第1切替弁71、配管65、第1開閉弁73を介して、更には、液体導入・排出装置(流体導入・排出装置21)を介して、キャビティ14内の熱可塑性樹脂16の内部に導入される。そして、所定の時間、中空部17内に滞在した液体は、液体導入・排出装置(流体導入・排出装置21)を介して中空部17から、配管66、第2開閉弁74、第2切替弁72、配管68を介して液体除去装置を構成するエジェクター40の吸込口42に吸引される。そして、エジェクター40の駆動口41に送出された液体、及び、エジェクター40の吸込口42に吸引された液体は、エジェクター40の吐出口43、配管69を介して液体貯蔵容器30に戻される。
【0053】
以下、
図2A、
図2B、
図2C、
図3A及び
図3Bを参照して、実施例1の中空部を有する射出成形品の成形方法を説明する。尚、実施例1においては、熱可塑性樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンS-3000)を使用し、射出条件を以下の表1のとおりとした。
【0054】
[表1]
溶融熱可塑性樹脂温度:280゜C
金型温度 : 80゜C
射出時間 :6秒
【0055】
[工程-100]
先ず、金型10に設けられたキャビティ14内に溶融熱可塑性樹脂導入部13を介して溶融熱可塑性樹脂16を射出する。具体的には、第1の金型部11と第2の金型部12とを型締めする(
図1参照)。そして、熱可塑性樹脂16を図示しない射出用シリンダー内で可塑化・溶融、計量した後、射出用シリンダーから樹脂流路13A、溶融熱可塑性樹脂導入部13を介してキャビティ14に溶融熱可塑性樹脂16を射出する(
図2A参照)。ここで、キャビティ14内に射出すべき溶融熱可塑性樹脂16の量は、キャビティ14を完全には充填しない量である(ショートショット法)。即ち、キャビティ14内に射出される溶融熱可塑性樹脂16の体積V
1は、キャビティ14の体積V
0未満であり、具体的には、
0.7≦V
1/V
0<1
を満足する。より具体的には、キャビティ14の容積を96cm
3、キャビティ14内に射出した溶融熱可塑性樹脂16の体積を67cm
3とした。
【0056】
流体導入・排出装置(加圧ガス注入ノズル)21の先端部はキャビティ14内に配置されるように配設されている。流体導入・排出装置21には、油圧シリンダー(図示せず)が備えられており、油圧シリンダーの作動によって、流体導入・排出装置21は、前進位置及び後退位置に位置する。前進位置にあるとき、流体導入・排出装置21の先端部はキャビティ14内に位置する。後退位置にあるとき、流体導入・排出装置21の先端部は金型(具体的には、第2の金型部12)のキャビティ面と同じ面内に位置する。
図2Aに示した状態では、流体導入・排出装置21は後退位置にあり、流体導入・排出装置21の先端部は金型(具体的には、第2の金型部12)のキャビティ面と同じ面内に位置する。第1切替弁71によって配管64と配管65とは連通状態にあるが、第1開閉弁73を閉状態とすることで、加圧ガス供給装置50からの加圧ガスが流体導入・排出装置21に流れ込まない状態となっている。第2開閉弁74は閉状態としておく。また、配管66と配管67とは、第2切替弁72を介して接続された状態としておく。
【0057】
[工程-110]
次いで、キャビティ14内に射出された溶融熱可塑性樹脂16の内部に加圧ガスを導入して、キャビティ14内に射出された溶融熱可塑性樹脂16の内部に中空部17を形成する。即ち、溶融熱可塑性樹脂16の射出中、射出完了と同時、あるいは、射出完了後、キャビティ14内の溶融熱可塑性樹脂16内に加圧ガスを導入し、溶融熱可塑性樹脂16の内部に中空部17を形成する。具体的には、流体導入・排出装置(加圧ガス注入ノズル)21を構成する油圧シリンダー(図示せず)を作動させて、前進位置に位置させる。同時に、第1開閉弁73を開状態とし、制御減圧弁70の動作によって、加圧ガス供給装置50からの加圧ガスが配管65に導入される状態とする。そして、流体導入・排出装置21を介してキャビティ14内の溶融熱可塑性樹脂16への加圧ガスの導入を開始し、キャビティ14内の溶融熱可塑性樹脂16の内部に中空部17を形成する(
図2B参照)。具体的には、実施例1にあっては、溶融熱可塑性樹脂16の射出完了と同時に、第1開閉弁73を開状態とし、制御減圧弁70を動作させる。また、第2開閉弁74は閉状態のままとしておく。
【0058】
[工程-120]
次いで、中空部17内の加圧ガスを外部に排出する(
図2C参照)。即ち、制御減圧弁70の動作を停止させ、第1開閉弁73を閉状態とし、第2開閉弁74を開状態とする。これによって、中空部17内の加圧ガスは、流体導入・排出装置21、配管66、第2開閉弁74、第2切替弁72、配管67を介して外部(系外)に排出される。
【0059】
尚、キャビティ14内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に中空部17を形成し、キャビティ14内に射出された熱可塑性樹脂にスキン層が形成された後、中空部17内の加圧ガスを外部に排出することが好ましく、これによって、熱可塑性樹脂の内部に形成された中空部17の形状を安定に保つことができる。
【0060】
[工程-130]
その後、中空部17内に液体を導入し、次いで、中空部17内に導入された液体を外部に除去する工程を、複数回(具体的には、実施例1にあって、例えば3回)、繰り返す。
【0061】
具体的には、第1切替弁71を切り替えて、配管63と配管65とを連通させる。また、第1開閉弁73を開状態とし、第2開閉弁74を閉状態とし、配管66と配管68とを、第2切替弁72を介して接続された状態とする。更には、ポンプ31を作動させる。液体貯蔵容器(タンク)30内の液体は、配管60、ポンプ31、配管61、流量制御装置32、配管63、第1切替弁71、配管65、流体導入・排出装置21を介して、中空部17内に送られ、キャビティ14内の熱可塑性樹脂を冷却する。一方、液体貯蔵容器(タンク)30内の液体は、配管60、ポンプ31、配管62を介して、エジェクター40の駆動口41に送出され、エジェクター40の吐出口43、配管69を介して液体貯蔵容器30に戻される。
【0062】
所定の時間が経過した後、第1開閉弁73を閉状態とし、第2開閉弁74を開状態とする。すると、中空部17内の液体は、エジェクター40の作動によって吸引される。具体的には、中空部17内の液体は、流体導入・排出装置21、配管66、第2開閉弁74、第2切替弁72、配管68を介して、エジェクター40の吸込口42に吸引される。そして、エジェクター40の駆動口41に送出された液体、及び、エジェクター40の吸込口42に吸引された液体は、エジェクター40の吐出口43、配管69を介して液体貯蔵容器30に戻される。
【0063】
このように、駆動口41、吸込口42及び吐出口43を有するエジェクター40によって、中空部17内の液体を外部に除去する。また、中空部17内に液体を導入し、次いで、中空部17内の液体を外部に除去する工程を、複数回、繰り返すとき([工程-130])、液体を再使用する。
【0064】
次いで、再び、第1開閉弁73を開状態とし、第2開閉弁74を閉状態とすることで、液体が中空部17内に送られ、キャビティ14内の熱可塑性樹脂を冷却する。更に、再び、第1開閉弁73を閉状態とし、第2開閉弁74を開状態とすることで、中空部17内の液体を外部に除去する。この操作を、所望の回数、実施例1にあって、具体的には3回、繰り返す。
【0065】
[工程-140]
その後、流体導入・排出装置21を後退位置に位置させ、金型を型開きし、成形品を取り出す。こうして、中空部17を有する成形品を得ることができる。
【0066】
得られた成形品(取っ手形成形品)には、ヒケ及び反りが全く認められず、その内部には所望の中空部17が形成されていた。
【0067】
中空部17の形成後、加圧ガスの導入を継続して、キャビティ14内の熱可塑性樹脂を冷却した後、流体導入・排出装置21を後退位置に位置させ、金型を型開きし、成形品を取り出すといった比較試験を行ったところ、比較試験における射出成形時間(溶融熱可塑性樹脂の射出開始から金型型開きまでに要した時間)を100%としたとき、実施例1の射出成形方法における射出成形時間は70%となり、キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化させるための時間の短縮化を図ることができた。
【0068】
以上のとおり、実施例1にあっては、中空部内に液体を導入し、排出する液体導入・排出装置、及び、中空部内から排出された液体を外部に除去する液体除去装置を備えているので、また、実施例1の成形品の射出成形方法にあっては、中空部内に液体を導入し、次いで、中空部内に導入された液体を外部に除去する工程を、複数回、繰り返すので、簡素な構成、構造であるにも拘わらず、キャビティ内の熱可塑性樹脂を、効果的に、短時間で冷却、固化させることができる。
【実施例2】
【0069】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2の金型組立体の概念図を
図4に示す。実施例2の金型組立体において、キャビティは、溶融熱可塑性樹脂が射出される主キャビティ部15A、及び、主キャビティ部15Aに連通したオーバーフローキャビティ部(捨てキャビティ部)15Bから構成されている。
【0070】
実施例2における射出成形方法にあっては、実施例1の[工程-100]と同様の工程において、主キャビティ部15A内に溶融熱可塑性樹脂を射出し、実施例1の[工程-110]と同様の工程において、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂16内に加圧ガスを導入し、溶融熱可塑性樹脂16の内部に中空部17を形成する。溶融熱可塑性樹脂16はオーバーフローキャビティ部15Bまで延びる。以降、実施例1の[工程-120]~[工程-140]と同様の工程を実行することで、中空部17を有する成形品を得ることができる。
【0071】
このようにオーバーフローキャビティ部15Bを備えている場合、主キャビティ部15A内に射出すべき溶融熱可塑性樹脂の量は、主キャビティ部15Aを完全には充填しない量であってもよいし、主キャビティ部15Aを完全に充填するが、オーバーフローキャビティ部15Bを完全には充填しない量であってもよい。
【0072】
以上の点を除き、実施例2の金型組立体の構成、構造は、実施例1において説明した金型組立体の構成、構造と同様とすることができるし、実施例2の金型組立体を用いた射出成形方法も、実施例1の金型組立体を用いた射出成形方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0073】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例にて説明した金型組立体や金型、加圧ガス導入・排出装置、液体導入・排出装置、液体除去装置等の構造、構成、実施例にて使用した熱可塑性樹脂、射出成形条件、冷却・固化条件、成形品の形状やキャビティの寸法等は例示であり、適宜変更することができる。実施例においては、金型組立体の構成を、成形品を1個取りとしたが、多数個取りとすることもできる。
【符号の説明】
【0074】
10・・・金型組立体、11・・・第1の金型部(固定金型部)、12・・・第2の金型部(可動金型部)、13・・・溶融熱可塑性樹脂導入部、13A・・・樹脂流路、14・・・キャビティ、15A・・・主キャビティ部、15B・・・オーバーフローキャビティ部(捨てキャビティ部)、16・・・溶融熱可塑性樹脂、17・・・中空部、21・・・流体導入・排出装置、30・・・液体貯蔵容器(タンク)、31・・・ポンプ、32・・・流量制御装置、40・・・エジェクター、41・・・駆動口、42・・・吸込口、43・・・吐出口、44・・・縮径部、50・・・加圧ガス供給装置、60,61,62,63,64,65,66,67,68,69・・・配管、70・・・制御減圧弁、71,72・・・切替弁、73,74・・・開閉弁