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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20220330BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20220330BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20220330BHJP
   B60R 21/216 20110101ALI20220330BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/68
B60R21/207
B60R21/216
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017152508
(22)【出願日】2017-08-07
(65)【公開番号】P2019031151
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 秀樹
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-185981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0341975(US,A1)
【文献】米国特許第09586552(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
B60R 21/16-33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション、シートバック及びヘッドレストを備えた乗物用シートであって、
前記シートバックが、
上下方向に延在する左右一対のサイドフレーム及び前記両サイドフレームの上端を互いに接続するアッパフレームを含むシートバックフレームと、
前記シートバックフレームの上半部に、ブラケットを介して支持されたエアバッグモジュールと、
前記シートバックフレーム、前記ブラケット及び前記エアバッグモジュールを背面から覆う表皮部材とを有し、
前記ヘッドレストは、ヘッドレスト本体と、前記ヘッドレスト本体から突出し、前記アッパフレームに接続されるヘッドレストピラーとを備え、
前記表皮部材の前記エアバッグモジュールに対応する部位に、エアバッグの膨張によって開口するべき脆弱部が設けられ
前記ブラケットは、前記エアバッグモジュールを収容するための凹部を有する板部材からなり、前記凹部の底壁が、前記ヘッドレストピラーの軸線方向に対して、下方に向かって後方に傾斜する平板状をなすことを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記エアバッグモジュールが、前記アッパフレームの下側であって、側面視で前記サイドフレームに重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記ブラケットは前記ヘッドレストピラーよりも後方に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記ブラケットは、上縁において前記アッパフレームに結合され、左右縁においてそれぞれ対応する前記サイドフレームに結合されていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記ブラケットの下縁に前方に延出する縁壁が設けられ、前記ブラケットの、上下方向について前記縁壁と、前記凹部の下縁との間の部分において、前記ブラケットが前記サイドフレームに結合されていることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記ブラケットの上縁に、互いに左右に間隔をおいて延出する一対の上側舌片が設けられ、前記上側舌片の上端が前記アッパフレームに結合されている請求項4又は請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記ブラケットが、乗員の背中を支持するための受圧部材の上方に配置されていることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記ブラケットの前面に送風するブロアが設けられることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグを備えた前席の乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、前席の乗物用シートに、後方に展開するエアバッグモジュールを備えたものがある(例えば、特許文献1)。このような乗物用シートにおいて、エアバッグモジュールはシートバックの背面に取り付けられ、前突時には、後方に展開されたエアバッグによって、後席の乗員が保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-87060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアバッグモジュールはシートバックの後方に突出しているため、前席と後席との空間が確保しにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、乗物用シートにおいて、後方に展開するエアバッグモジュールを搭載し、且つ、シートバック内にエアバッグモジュールを収容することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、シートクッション(3)及びシートバック(4)を備えた乗物用シート(1)であって、前記シートバックが、上下方向に延在する左右一対のサイドフレーム(11)及び前記両サイドフレームの上端を互いに接続するアッパフレーム(12)を含むシートバックフレーム(7)と、前記シートバックフレームの上半部に、ブラケット(31)を介して支持されたエアバッグモジュール(43)と、前記シートバックフレーム、前記ブラケット及び前記エアバッグモジュールを背面から覆う表皮部材(9)とを有し、前記表皮部材の前記エアバッグモジュールに対応する部位に、エアバッグ(45)の膨張によって開口するべき脆弱部(80)が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、シートバックフレームを覆う表皮部材によって、エアバッグモジュールが覆われるため、シートバック内にエアバッグモジュールを収容することができる。また、エアバッグモジュールを背面から覆う表皮材に脆弱部が形成されることによって、エアバッグを後方に展開することができる。
【0008】
また、前記エアバッグモジュールが、前記アッパフレームの下側であって、側面視で前記サイドフレームに重なる位置に配置されているとよい。
【0009】
この態様によれば、エアバッグモジュールが側面視でサイドフレームに重なる位置に配置されているため、シートバックの後方への突出量を抑えることができる。
【0010】
また、前記ブラケットはヘッドレストピラー(28)よりも後方に配置されるとよい。
【0011】
この態様によれば、ヘッドレストピラーの位置を変えることなく、ブラケットを設けることができる。
【0012】
また、前記ブラケットは、前記エアバッグモジュールを収容するための凹部(41)を有する板部材からなり、凹部の底壁(42)が、前記ヘッドレストピラーの軸線方向に対して、下方に向かって後方に傾斜する平板状をなすとよい。
【0013】
この態様によれば、ブラケットに形成された凹部の底壁が上部から下部にかけて後方に傾斜しているため、ブラケットが着座する乗員の背中に与える異物感を抑えることができる。
【0014】
また、前記ブラケットは、上縁において前記アッパフレームに結合され、左右縁においてそれぞれ対応する前記サイドフレームに結合されているとよい。
【0015】
この態様によれば、ブラケットがエアバッグの展開による荷重に対抗して、エアバッグモジュールを支持することができる。
【0016】
また、前記ブラケットの下縁に前方に延出する縁壁(36)が設けられ、前記ブラケットの、上下方向について前記縁壁と、前記凹部の下縁との間の部分において、前記ブラケットが前記サイドフレームに結合されているとよい。
【0017】
この態様によれば、ブラケットの剛性を高めることができる。両サイドフレームがより剛性の高いブラケットを介して互いに結合するため、シートバックフレーム全体の剛性を高めることができる。
【0018】
また、前記ブラケットの上縁に、互いに左右に間隔をおいて延出する一対の上側舌片(34)が設けられ、前記上側舌片の上端が前記アッパフレームに結合されているとよい。
【0019】
この態様によれば、ブラケットとアッパフレームとの結合がより強固になる。
【0020】
また、前記ブラケットが、乗員の背中を支持するための受圧部材(17)の上方に配置されているとよい。
【0021】
この態様によれば、ブラケットによって乗員の背中に異物感を与えることを防止することができる。
【0022】
また、上記の態様において、前記ブラケットの前面に送風するブロア(56)が設けられるとよい。
【0023】
この態様によれば、ブロアを支持するためのブラケットを乗物用シートの内部に設ける必要がなく、乗物用シートを簡素にすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の態様によれば、乗物用シートにおいて、後方に展開するエアバッグモジュールを搭載し、且つ、シートバック内にエアバッグモジュールを収容することができる。
【0025】
また、エアバッグモジュールが側面視でサイドフレームに重なる位置に配置されている態様によれば、シートバックの後方への突出量を抑えることができる。
【0026】
また、ブラケットはヘッドレストピラーよりも後方に配置されている態様によれば、ヘッドレストピラーの位置を変えることなく、ブラケットを設けることができる。
【0027】
また、ブラケットに形成された凹部の底壁が上部から下部にかけて後方に傾斜している態様によれば、ブラケットが着座する乗員の背中に与える異物感を抑えることができる。
【0028】
また、ブラケットは、上縁においてアッパフレームに結合され、左右縁においてそれぞれ対応するサイドフレームに結合されている態様によれば、ブラケットがエアバッグの展開による荷重に対抗して、ブラケットがエアバッグモジュールを支持することができる。
【0029】
また、ブラケットの下縁に前方に延出する縁壁が設けられている態様によれば、ブラケットの剛性を高めることができる。両サイドフレームがより剛性の高いブラケットを介して互いに結合するため、シートバックフレーム全体の剛性を高めることができる。
【0030】
また、ブラケットに設けられた一対の上側舌片の上端がアッパフレームに結合されている態様によれば、ブラケットとアッパフレームとの結合がより強固になる。
【0031】
また、ブラケットが、乗員の背中を支持するための受圧部材の上方に配置されている態様によれば、ブラケットによって乗員の背中に異物感を与えることを防止することができる。
【0032】
また、ブラケットの前面に送風するブロアが設けられている態様によれば、ブロアを支持するためのブラケットを乗物用シートの内部に設ける必要がなく、乗物用シートを簡素にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】乗物用シートにおけるエアバッグの展開を示す説明図
図2】乗物用シートのフレームの背面図
図3】乗物用シートの背面図
図4】第1実施形態における乗物用シートの図3のIV―IV断面図
図5】第2実施形態における乗物用シートの断面図
図6】第3実施形態における乗物用シートの断面図
図7】第1実施形態に比べて(A)第2力布の配置及び(B)第1力布の配置が異なる別実施形態に係る乗物用シートの断面図
図8】パッド部材に(A)交差する2本のスリット、及び(B)略H字状にスリットが設けられた場合の別実施形態に係る乗物用シートの背面図
図9】(A)薄肉部を有するバックボード、及び(B)スリットを有するバックボードが設けられた場合の別実施形態に係る乗物用シートの断面図
図10】(A)アウタケースを省略する場合、及び(B)リテーナ及び蓋体を省略する場合の別実施形態に係る乗物用シートの断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明に係る乗物用シートを自動車に適用した2つの実施形態を説明する。
【0035】
<<第1実施形態>>
図1に示されるように、本発明に係る第1実施形態の乗物用シート1は自動車の1列目の前部座席を構成している。シートは、自動車のフロア2に設けられたシートクッション3と、シートクッション3の後部に支持されたシートバック4と、各シートバック4の上部に設けられたヘッドレスト5を有する。
【0036】
図2に示されるように、シートバック4は、骨格としてのシートバックフレーム7と、シートバックフレーム7に支持されたパッド部材8と、パッド部材8の表面に設けられ、シートバック4の外面を構成する表皮部材9とを有する。
【0037】
シートバックフレーム7は、上下に延びる左右一対のサイドフレーム11と、左右に延びて左右のサイドフレーム11のそれぞれの上端に結合するアッパフレーム12と、左右に延びて左右のサイドフレーム11のそれぞれの下部に結合するロアフレーム13とを有する。左右の各サイドフレーム11の上部を構成する各サイドフレーム上部14とアッパフレーム12とは、1本の円形のパイプ材を逆U字状の枠形に屈曲させることによって形成されている。また、各サイドフレーム11の下部を構成する各サイドフレーム下部15はそれぞれ板金部材によって形成され、パイプ材の両端に溶接されている。左右のサイドフレーム11には支持部材16が上下に対をなして掛け渡されている。支持部材16の前側には、乗員の背中を後退可能に支持する板状の受圧部材17が結合している。
【0038】
図2に示されるように、シートバックフレーム7の上部は、アッパフレーム12、及び左右のサイドフレーム上部14によって形成され、背面視で略台形状をなしている。
【0039】
アッパフレーム12は、その左右における中間部の前側に平面状の前側面21を有する。前側面21は、円形のパイプ材を、断面が半円形となるように圧縮変形させることによって形成されている。前側面21には、左右一対のピラー支持ブラケット22が溶接されている。各ピラー支持ブラケット22は、両端が開口した四角筒形に形成されている。各ピラー支持ブラケット22は、それぞれの軸線が略上下に延び、互いに左右に間隔をおいて配置されている。ピラー支持ブラケット22には、ピラー支持部材23が挿入されている。ピラー支持部材23は、筒部24と、筒部24の上端から側方に張り出したフランジ部25とを有する。筒部24の軸線方向は、サイドフレーム11の延在方向に概ね平行をなしている。
【0040】
ヘッドレスト5は、ヘッドレスト本体27と、ヘッドレスト本体27から突出する左右一対のピラー28とを備えている。ピラー28を筒部24に嵌め込むことによって、ヘッドレスト5はシートバックフレーム7に筒部24の軸線に沿って変位可能に支持される。フランジ部25には、筒部24に対するピラー28の挿入位置を固定するための係止手段(図示せず)が設けられている。ヘッドレスト5は係止手段によって、所定の位置に固定される。
【0041】
両サイドフレーム11及びアッパフレーム12には、ブラケット31が結合されている。ブラケット31は、シートバックフレーム7の上半部に位置している。ブラケット31は概ね前後方向に向く板状をなしている。ブラケット31は一つの板金から絞り加工された単一の板部材からなり、前後に向く主面を有する板状の主部30と、主部30の上縁から上方に帯状に延出した左右一対の上側舌片34と、主部30の左右下部から外方に延出した左右一対の下側舌片35とを有する。主部30は、その上部を構成する中央部32と、中央部32の下側に設けられた底辺部33とからなる。
【0042】
中央部32は背面視で上方に向かって左右方向の幅が狭くなる略台形状をなしている。中央部32は概ねシートバックフレーム7の上部と概ね同形をなしている。
【0043】
上側舌片34は中央部32の上縁左右端からそれぞれ上方に延出し、左右に間隔をおいて形成されている。上側舌片34は、シートバックフレーム7の左右方向における中心線に対して左右対称に配置されている。上側舌片34は上端においてそれぞれ、アッパフレーム12の後面に沿うように湾曲し、アッパフレーム12に溶接されている。下側舌片35はそれぞれサイドフレーム上部14の後面に沿うように湾曲して、それぞれサイドフレーム11に溶接されている。本実施形態では、上側舌片34はアッパフレーム12の後面の上部(図2の破線部分)に、下側舌片35はサイドフレーム上部14の後面の左右外側部分(図2の破線部分)に溶接されている。
【0044】
図4に示されるように、底辺部33の下縁には、その下縁全体に渡って前方に延出する縁壁36が設けられている。底辺部33と下側舌片35との境界には、左右一対の脆弱部37が形成されている。本実施形態では、ブラケット31は脆弱部37において前方にU字状に突出するように折り曲げられている。底辺部33の適所には、複数の肉抜孔38が形成されて、ブラケット31が軽量化されている。
【0045】
中央部32の後面には、略中央において、前方に凹む凹部41が形成されている。凹部41の底部は、側面視でサイドフレーム11に重なっている。凹部41は概ね前後方向を向く平板状の凹部底壁42と、凹部底壁42を取り囲む側壁とによって画定されている。凹部底壁42は側面視でピラー28の軸線方向に対して、下方に向かって後方に傾斜している。凹部底壁42は背面視で左右に延びる略長方形状をなし、凹部41は略直方体状をなしている。
【0046】
凹部41には、樹脂製のアウタケース40が収容されている。アウタケース40は左右に延びる略直方体状をなしている。アウタケース40は、前後方向を向く底壁40Bと、底壁40Bを取り囲む側壁40Sとを備えている。アウタケース40には、底壁40B及び側壁40Sによって画定された収容凹部40Rが形成されている。収容凹部40Rは、前方に向かって凹み、後方に向けて開口している。アウタケース40の上面及び下面の所定の位置にはそれぞれ上下方向外方に突出する係止爪40Cが設けられている。凹部41の上壁及び下壁には、係止爪40Cに対応する位置に貫通し、係止爪40Cに係合する係止孔が設けられている。
【0047】
アウタケース40の前面の所定の位置には前方に突出する嵌合突起40Pが設けられ、凹部底壁42には、嵌合突起40Pに対応する位置に貫通する位置決め孔が設けられている。アウタケース40を凹部41に結合させるときに、係止爪40Cを係止孔に係合させ、嵌合突起40Pを位置決め孔に挿入することによって、アウタケース40を容易に適正な位置に配置させることができる。
【0048】
アウタケース40の開口縁には側壁40Sに対して略垂直に延びる延出部40Eが設けられている。延出部40Eはブラケット31の凹部41の開口部分を画定する開口縁よりも外方にまで延びている。凹部41の開口縁の少なくとも一部、好ましくは全ての開口縁が延出部40Eに後方から覆われている。
【0049】
収容凹部40Rには、エアバッグモジュール43が収容されている。エアバッグモジュール43は底壁40Bに当接し、エアバッグモジュール43は凹部41の内部に収められている。エアバッグモジュール43はエアバッグ45と、エアバッグ45を膨張させるインフレータ46と、エアバッグ45及びインフレータ46を収容するケース47とを備える。
【0050】
ケース47は、略直方体状をなし、後方に向けて開口する凹部を備えたリテーナ48と、その凹部の開口を閉じる蓋体49とを備える。
【0051】
インフレータ46は略円筒状をなしている。インフレータ46はリテーナ48の下半部、より詳細には、その前下隅に左右に延びるようにリテーナ48の凹部に収容されて、リテーナ48に結合されている。エアバッグ45は折り畳まれた状態でリテーナ48の凹部に収容されている。エアバッグ45はインフレータ46を上方から覆うように配置されている。
【0052】
リテーナ48は、その凹部を画定する上壁44を備える。上壁44は下方を向く面を有し、インフレータ46と上下に対向している。上壁44とインフレータ46との間にはエアバッグ45が配置されている。
【0053】
蓋体49は樹脂によって形成されている。蓋体49は前後方向に向く主面を有する略直方体状の板状の蓋体本体49Bと、蓋体本体49Bの上下左右端から前方に延出し、その端部に係止爪を備えた蓋体係止部49Lとを有する。リテーナ48の上下左右壁にはそれぞれ係止孔が設けられ、その係止孔に係止爪が係合することによって、蓋体49はリテーナ48に結合している。蓋体本体49Bの内側には左右に延びる溝が形成されている。蓋体本体49Bは溝53において、他の部分に比べて薄肉となっている。溝53は左右端部からそれぞれ上下方向に延びて、蓋体本体49Bの上下端にまで延びている。
【0054】
蓋体本体49Bと蓋体係止部49Lとの接続部分にはヒンジ49Hが形成されて、蓋体49はリテーナ48の開口の上縁及び下縁にヒンジ接続されている。エアバッグ45の膨張によって、蓋体49に荷重が加わると、蓋体49は溝53に沿って開裂する。よって、溝53は展開口として機能する。蓋体49が開裂すると、蓋体49の後部上側及び後部下側はそれぞれ、上縁及び下縁を軸線として回動し、ケース47が開かれる。ブラケット31の凹部41の開口縁は延出部40Eに後方から覆われているため、エアバッグ45が膨張するときに、エアバッグ45が凹部41の開口縁には直接当接せず、エアバッグ45の損傷が防止される。
【0055】
リテーナ48の前面には前方に突出する雄ねじ部50が設けられている。アウタケース40の底壁、及び、凹部底壁42にはそれぞれ雄ねじ部50に対応する位置に貫通する貫通孔51、44Tが設けられている。雄ねじ部50をアウタケース40及び凹部底壁42の2つの貫通孔51に通した後、雄ねじ部50にナット52を取り付けることによって、エアバッグモジュール43はアウタケース40と共に、ブラケット31に締結されている。締結後、ケース47は側面視でサイドフレーム11に重なる位置に配置されている。
【0056】
中央部32の上部且つ凹部41の上方には、厚み方向に貫通する左右一対の取付孔55が形成されている。
【0057】
凹部底壁42の前面には送風機であるブロア56が結合されている。ブロア56は、ブロアケース57と、ブロアケース57に収められたモータ58と、モータ58の回転軸59に結合するファン60とを備えている。
【0058】
ブロアケース57は前後方向に向く面を有する略直方体状をなしている。ブロアケース57の前壁には開口が形成されている。ブロアケース57には所定の位置に前後に貫通する貫通孔が形成され、凹部底壁42の貫通孔に対応する位置に螺子孔が形成されている。ブロアケース57は、貫通孔を通過し、螺子孔に結合する螺子によって、凹部底壁42の前面の左右方向における概ね中央に結合している。ブロアケース57の前壁は凹部底壁42に概ね平行をなし、ブロアケース57は左右のピラー28の間に配置されている。本実施形態では、ブロアケース57の前後方向の幅は十分薄く、ブロアケース57の前壁は側面視でピラー28より後方に位置している。
【0059】
モータ58には乗物用シート1の外部から電力が供給するためのケーブル(図示せず)が接続されている。モータ58は供給された電力によって駆動し、ファン60が回転する。ファン60の回転によって、エア(空気)が前方に噴射される。
【0060】
パッド部材8は、ポリウレタンフォーム等の可撓性を有するクッション材から形成されている。パッド部材8は、乗員の背中に対向する背もたれ面64を構成する前面部65と、前面部65の上縁から後方に延びる上面部66と、前面部65の左右側縁から後方に延びる側面部67と、上面部66の後端から下方に延びる後面部68とを備える。
【0061】
前面部65は上下に延び、前後に所定の厚みを有する略長方形状の板状をなしている。前面部65はその後面において両サイドフレーム11、アッパフレーム12及び受圧部材17の前面に当接している。前面部65には、ブロア56の前方に前後に貫通する通風孔69が形成されている。ブロア56から噴射されたエアは通風孔69を通って、背もたれ面64に到達する。
【0062】
上面部66は、側面視で、前面部65の上縁から、アッパフレーム12の後縁まで後方に延びている。上面部66には、左右のピラー支持ブラケット22の上端に対応する部分に上下に貫通する貫通孔70が形成されている。各貫通孔70には、対応するピラー支持ブラケット22が挿入されている。
【0063】
側面部67はそれぞれ、前面部65の左右側縁からサイドフレーム11の左右外面に沿って後方に延び、サイドフレーム11の後面に達している。
【0064】
後面部68は上面部66の後端から下方に延び、ブラケット31の下端に達している。後面部68には、凹部底壁42の後方、より詳しくは、溝53の後方において、厚さ方向に貫通する第1スリット71が形成されている。第1スリット71は、貫通方向に概ね凹部底壁42に垂直に延びている。図3に示されるように、第1スリット71は左右方向において、左側のサイドフレーム11と凹部41の左壁の間から、右側のサイドフレーム11と凹部41の右壁の間にまで延びている。第1スリット71の左右方向の幅は凹部41の左右方向の幅よりも大きく、中央部32の左右方向の幅よりも大きいことが好ましい。
【0065】
後面部68には、各取付孔55の後方において、厚さ方向に貫通する第2スリット72が2つ形成されている。第2スリット72はそれぞれ貫通方向において、後方に向かって第1スリット71の表面における開口部分に近づくように傾斜しているとよい。第2スリット72の左右方向の幅はそれぞれ、取付孔55と左右方向に概ね等しい。
【0066】
図3及び図4に示されるように、表皮部材9は、パッド部材8の前面部65、上面部66、側面部67、及び後面部68の表面を一体として覆う前シート材75と、シートバック4の後面を構成する後シート材76とを組み合わせることによって袋状に形成されている。
【0067】
前シート材75は布や皮等のシート状部材によって形成された複数のピースを縫合することによって形成されている。前シート材75は、前面部65の表面を覆う前部ピースと、左右の側面部67の表面を覆う側部ピース77と、上面部66及び後面部68の表面を覆う上部ピース78とを有している。前部ピースの上縁及び上部ピース78の前縁と、前部ピースの左右側縁及び側部ピース77の前縁と、側部ピース77の上縁及び上部ピース78の左右側縁とは互いに縫合されている。後シート材76はシート状部材によって形成された後部ピース79によって形成されている。後部ピース79は上下に延びた略長方形状をなしている。後部ピース79の上縁と上部ピース78の後端縁とは互いに縫合されて、縫合部80を形成している。縫合部80は、他の縫合部に比べて小さい荷重で破断する脆弱部として機能する。
【0068】
縫合部80は第1スリット71の後端側の開口の後方に配置されている。縫合部80は、凹部41の上半部の後方、より詳しくはリテーナ48の上壁44の略後方に位置している。よって、縫合部80はインフレータ46よりも上方に位置している。縫合部80は左右に延びるように形成されている。縫合部80の左端及び右端はそれぞれ凹部41の左右外方に位置している。縫合部80の左端及び右端はブラケット31の主部30の左右外方に位置していることが好ましい。
【0069】
後部ピース79の側縁上部と側部ピース77の側縁上部とは互いに縫合されている。後部ピース79の側縁下部と側部ピース77の側縁下部とは、ファスナや面ファスナ、スナップフィット等によって開閉可能に結合されている。これにより、表皮部材9をシートバックフレーム7及びパッド部材8に被せた後に、後部ピース79と側部ピース77とを結合させることによって、表皮部材9をシートバック4に結合させることができる。
【0070】
ブラケット31と表皮部材9との間には、エアバッグ45の展開方向を規制するための第1力布81及び第2力布82が設けられている。第1力布81及び第2力布82はそれぞれ、表皮部材9よりも伸縮性の小さいシート状部材によって形成されている。第1力布81及び第2力布82の一端側はそれぞれ、エアバッグモジュール43の上下において、ブラケット31に結合している。第1力布81の一端側には、左右一対のクリップ83が結合されている。各クリップ83はそれぞれ対応する取付孔55に嵌合されている。第2力布82の一端にはJ字状の掛止部材であるフック84が結合されている。各フック84は縁壁36に掛け止めされている。第1力布81は、各クリップ83から後方に延び、第2スリット72を通って、縫合部80の上側近傍に達している。第2力布82は後方に延びて後面部68の下縁及び後縁に沿って、上方に延びて縫合部80の下側近傍に達している。第1力布81の他端側と上部ピース78の下縁とは、縫合部80の近傍において互いに縫合されている。第2力布82の他端側と後部ピース79の上縁とは、縫合部80の近傍において互いに縫合されている。
【0071】
次に、乗物用シート1の動作について説明する。前突等によって、後席の乗員には前方に向く加速度や荷重が加わる。このような後席の乗員に加わる荷重を検出するため、例えば、後席の乗員が装着したシートベルト91に加わる荷重を検出するセンサ92が設けられていてもよい。
【0072】
後席の乗員の加速度やシートベルト91に加わる荷重が所定値以上となると、インフレータ46からガスが放出される。インフレータ46から放出されるガスによって上方に膨張したエアバッグ45は、リテーナ48の上壁44の下面によって、後方に案内される。よって、リテーナ48の上壁44はエアバッグ45の膨張方向を案内するガイド壁として機能する。エアバッグ45の後方への膨張によって、蓋体49に荷重が加わり、蓋体49が溝53において開裂して、エアバッグモジュール43のケース47が開かれる。エアバッグ45はケース47から突出し、第1力布81及び第2力布82に案内されて、第1スリット71を通過して、縫合部80に達する。このとき、エアバッグ45から荷重によって縫合部80が破断し、表皮部材9に開口が形成される。エアバッグ45は開口を通ってシートバック4の後面から突出し、後方且つ斜め上方に膨張した後、下後方へ延びるように展開する。エアバッグ45は展開時には上に凸なアーチ状をなしている(図1の破線)。そのため、乗物用シート1と後席との距離によらず、乗員の上半身の前側にエアバッグ45を展開することができる。後席が乗物用シート1に近い場合には、エアバッグ45が折り曲げられるため、エアバッグ45の展開によって乗員に加わる後方への荷重を低減することができる。
【0073】
次に、乗物用シート1の効果について説明する。図4に示されるように、エアバッグモジュール43が表皮部材9に覆われてシートバック4の内部に配置されている。エアバッグモジュール43がシートバック4の後面に露出しないため、乗物用シート1の意匠性を向上させることができる。また、エアバッグモジュール43がパッド部材8によって覆われているため、乗物用シート1の背面の触り心地が向上している。
【0074】
エアバッグモジュール43が凹部41に収容されているため、エアバッグモジュール43のシートバック4の後面からの突出量を抑えることができる。エアバッグモジュール43のケース47の前部はアッパフレーム12の下側、且つ、側面視でサイドフレーム11に重なる位置に配置されている。したがって、ケース47全体がサイドフレーム11の後方に位置する場合に比べて、エアバッグモジュール43がシートバックフレーム7に対してより前方に配置されている。よって、シートバック4の後方への突出量を抑えることができる。
【0075】
エアバッグ45はインフレータ46からのガスによって第1スリット71に沿って膨張する。その膨張によって、第1力布81には上方に向く荷重が加わり、第2力布82には下方に向く荷重が加わる。第1力布81及び第2力布82に加わった荷重は縫合部80に伝わり、表皮部材9の縫合部80の上側近傍及び下側近傍はそれぞれそ上方及び下方から引っ張られて、縫合部80は開口する。エアバッグ45は、第1スリット71及び開口した縫合部80を通って、シートバック4の後方に展開する。
【0076】
第2スリット72が形成されることによって、第1力布81を取付孔55の後方から縫合部80の前方に概ね直線的に延びるように配置することができる。そのため、第1力布81の前後方向の長さを短くすることができる。したがって、第1力布81に加わった荷重が縫合部80に伝わり易く、縫合部80が開口し易くなる。
【0077】
第2力布82はパッド部材8の下縁及び後縁に沿って延び、縫合部80の下側部分の近傍に達している。したがって、パッド部材8と表皮部材9とを組み付け、シートバックフレーム7に被せた後に、下方からフック84を縁壁36に掛け止めすることができる。よって、第2力布82の取り付けが容易である。
【0078】
第1力布81には一対のクリップ83が設けられ、クリップ83を取付孔55にそれぞれ挿入することによって、第1力布81をブラケット31に容易に結合することができる。また、第1力布81が左右に並ぶ2つの取付孔55に結合しているため、第1力布81のエアバッグ45の膨張による荷重を受ける領域が左右方向に広げられ、より縫合部80にエアバッグの膨張による荷重が加わり易くなる。
【0079】
第1力布81及び第2力布82の一端側がブラケット31のエアバッグモジュール43の近傍において係止されているため、第1力布81及び第2力布82に荷重が伝わりやすい。また、第1力布81及び第2力布82によって、エアバッグ45の展開による荷重を縫合部80により集中させることができ、縫合部80をエアバッグ45の展開時に確実に破断させることができる。
【0080】
エアバッグ45は凹部41に対して後方に膨張する。縫合部80は背面視で縫合部80の中央部分が凹部41に重なっているため、後方に膨張したエアバッグ45が縫合部80を通過し易い。
【0081】
図3に示されるように、縫合部80はシートバック4の後面に左右に延在している。したがって、展開時のエアバッグ45の左右方向の幅(横幅)を大きくすることができ、後席の乗員の左右方向の位置に幅広く対応できる。また、縫合部80の左端及び右端はそれぞれ凹部41の左右外方に位置し、好ましくは、縫合部80の左端及び右端はブラケット31の主部30の左右外方に位置している。このように、縫合部80の横幅を大きくすることによって、後方に膨張したエアバッグ45が縫合部80を通過し易くなる。また、展開時のエアバッグ45の横幅を大きくすることができ、後席の乗員の左右方向の位置により幅広く対応することが可能となる。
【0082】
図2に示されるように、ブラケット31は、左右の上側舌片34においてアッパフレーム12に左右に間隔をおいて結合されている。したがって、ブラケット31の上部の略上下方向を軸線とする回転が規制されている。そのため、ブラケット31がシートバックフレーム7から外れ難くなり、ブラケット31とシートバックフレーム7の結合をより強固にすることができる。
【0083】
ブラケット31は単一の板部材によって形成されているため、軽量、且つ安価に形成することができる。ブラケット31は上側に短辺を有する略台形状をなし、シートバックフレーム7の上部と概ね同形をなしている。そのため、上側舌片34及び下側舌片35を短くすることができる。また、ブラケット31の右上隅及び左上隅が省略されているため、ブラケット31が軽量化されている。
【0084】
エアバッグ45の展開、及び後席の乗員の衝突によって、ブラケット31には前方に向く荷重が加わる。上側舌片34がアッパフレーム12の後面に沿って配置され、下側舌片35がサイドフレーム上部14の後面に沿って配置されているため、上側舌片34及び下側舌片35にはアッパフレーム12の後面及びサイドフレーム上部14の後面から後方に向く荷重が加えられる。そのため、ブラケット31はシートバックフレーム7によって支持され、前方に向く荷重に対抗することができる。
【0085】
エアバッグモジュール43は凹部底壁42に締結されている。エアバッグ45の展開時には、エアバッグモジュール43に前方に向く荷重が加わる。エアバッグモジュール43は凹部底壁42に締結されているため、ブラケット31がその荷重に対抗し、エアバッグモジュール43がブラケット31に支持される。また、エアバッグモジュール43が凹部底壁42に締結されているため、エアバッグモジュール43をブラケット31に締結し易くなる。
【0086】
エアバッグモジュール43は、シートバックフレーム7の上半部に位置している。したがって、エアバッグモジュール43が後席の乗員の上半身の前方に配置されるため、エアバッグ45を後席の乗員の上半身の前側に展開することができ、後席の乗員の上半身を保護することができる。また、縫合部80は凹部41の上半部の後方に配置されているため、シートバック4のより高い位置からエアバッグ45を展開させることができる。
【0087】
ブラケット31はピラー28よりも後方に配置されている。そのため、ピラー28の位置を変更することなく、ブラケット31を取り付けることができる。
【0088】
着座時に加わる荷重によって、乗員の背中がピラー28の軸線の後方に移動することがある。この場合でも、凹部底壁42は下方に向かって後方に傾斜しているため、凹部底壁42は乗員の背中に干渉せず、乗員に与える異物感を抑えることができる。また、ブラケット31は受圧部材17の上方に配置されるため、ブラケット31によって乗員の背中に異物感を与えることを防止することができる。
【0089】
底辺部33が下側舌片35を介してサイドフレーム11を左右に繋いでいるため、シートバックフレーム7の剛性を高めるクロスメンバとして機能する。シートバックフレーム7の剛性を高めるため、底辺部33は、サイドフレーム11の上端から、サイドフレーム11の全長の5パーセント以上20パーセント以下の位置に結合されるとよい。サイドフレーム11に左右内方に屈曲する屈曲部93が形成されている場合には、底辺部33は屈曲部93の上方においてサイドフレーム11に結合されていることが好ましい。
【0090】
底辺部33の剛性は縁壁36によって高められている。凹部41を画定する下壁と縁壁36とが対向し、ブラケット31の下部は側面視で前方に向くコの字状をなしているため、その剛性が更に高められている。ブラケット31の下部の剛性が高められることによって、サイドフレーム11間の結合が強固になり、シートバックフレーム7の剛性をより高めることができる。
【0091】
乗物用シート1にブロア56が設けられることによって、シートバック4の通風孔69から着座する乗員に向けてエアが噴出されて、座り心地を向上させることができる。ブロア56はエアバッグ45を支持するブラケット31に結合されているため、ブロア56を支持するためのブラケット31を設ける必要がなく、部品点数を減らすことができ、乗物用シート1を簡素にすることができる。
【0092】
また、エアバッグ45の展開によって後席の乗員がエアバッグ45に衝突し、ブラケット31には前方に向く荷重が加わることがある。このとき、ブラケット31の脆弱部37における変形によって、ブラケット31に加わる前方に向く荷重が吸収される。そのため、後席の乗員に加わる荷重を低減することができる。また、後席の乗員の衝突によって乗物用シート1の乗員に荷重が加わることを防止することができる。
【0093】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係る乗物用シート1では、第1実施形態に比べて、エアバッグモジュール43が、図5に示されるように、凹部41の下部を画定し、上下方向を向く凹部下壁96に締結されている点が異なる。エアバッグモジュール43に設けられた雄ねじ部50は下方に延びている。凹部下壁96には雄ねじ部50に対応する位置に貫通孔51が設けられている。アウタケース40の側壁40Sには、雄ねじ部50に対応する位置に貫通孔40Tが設けられている。雄ねじ部50を貫通孔51、41Tのそれぞれに通して、ナット52を雄ねじ部50に結合させることによって、エアバッグモジュール43は凹部下壁96に締結されている。エアバッグモジュール43は、凹部底壁42を取り囲む側壁のいずれに締結されていてもよい。
【0094】
エアバッグ45はシートバック4の上後方に展開するため、エアバッグ45の展開時には、凹部41に下向きに荷重が加わる場合がある。エアバッグモジュール43を凹部下壁96に締結することによって、ブラケット31が展開時の下向きの荷重に対抗することができる。また、雄ねじ部50が前方に突出しないため、着座する乗員の背中に与える異物感を抑えることができる。
【0095】
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係る乗物用シート1では、図6に示されるように、第1実施形態に比べて、第2スリット72が設けられておらず、第1力布81及び第2力布82の配置のみが異なる。第1力布81は一端側でクリップ83によって取付孔55に固定され、パッド部材8の裏面に沿って下方に延びて、第1スリット71を通って縫合部80に達している。第2力布82は一端側でフック84によって縁壁36に掛け止めされ、パッド部材8の裏面に沿って上方に延びて、第1スリット71を通って縫合部80に達している。このように配置した場合でも、第1力布81及び第2力布82がそれぞれ、エアバッグ45の展開方向を上側及び下側から規制するため、エアバッグ45の展開方向が縫合部80に向くように制御される。
【0096】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、ブラケット31の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。上記実施形態では、第2力布82は一端側において底辺部33の縁壁36に掛け止めされていたが、例えば、クリップによって肉抜孔38に嵌め合わされていてもよい。上記実施形態では乗物用シート1に第1力布81及び第2力布82が設けられていたが、第1力布81及び第2力布82のいずれか一方が設けられている態様であってもよい。また、第1実施形態において、図7(A)に示されるように、第2力布82のみをパッド部材8の裏面に沿うように変更してもよく、また、第1力布81のみを、図7(B)に示されるように、パッド部材8の裏面に沿うように変更してもよい。
【0097】
上記実施形態では、縫合部80はシートバック4の後面に左右に延びるように形成されていたが、側部ピース77を上下に分けて縫合部80の左右両端を側面部67の左右外面に設けることによって、縫合部80をシートバック4の左右両側面から後面を通って左右に延びるように形成してもよい。
【0098】
また、上記実施形態では第1スリット71はパッド部材8に左右に延びるように形成されていたが、この態様には限定されない。パッド部材8に、第1スリット71に交差する第3スリット100を設けてもよい(図8(A))。また、第1スリット71の両端それぞれに、その両端から上下に延びる第3スリット101が更に設けられていてもよい(図8(B))。第3スリット100、101を設けることによって、パッド部材8が第1スリット71を中心に開かれ易くなり、エアバッグ45の展開に要する時間を短縮することができる。
【0099】
また、上記実施形態では、シートバック4の後面には、シート状部材によって形成された後シート材76が設けられていたが、図9(A)に示されるように、後シート材76の代わりに、樹脂等によって形成されたバックボード110が設けられていてもよい。バックボード110は前後に主面を有する板状に形成されている。バックボード110の上端は後面部68に沿って、上方に向かって後方に屈曲し、上方に延びている。バックボード110はサイドフレーム11に支持されている。バックボード110の上部には、その厚さが薄くなった薄肉部111が背面視で左右に延びるように形成されている。薄肉部111は、エアバッグモジュール43の溝53の概ね後方に形成されるとよい。エアバッグ45が展開するときには、エアバッグ45からバックボード110に荷重が加わる。その荷重によって、バックボード110は薄肉部111において後方に屈曲する。バックボード110の屈曲によって、バックボード110と後面部68を覆う表皮部材9との間に隙間が生じる。エアバッグ45は、その隙間を介してシートバック4の後方に展開する。
【0100】
また、図9(B)に示されるように、バックボード120にエアバッグ45の展開時にエアバッグ45から受ける荷重によって開裂するスリット121を設けてもよい。スリット121はエアバッグモジュール43の後方に配置されている。スリット121はバックボード120の前面に形成された溝であってもよい。スリット121は、背面視で、左右に延びる部分と、その両端から上下に延びる部分とを含み、略H字状をなしているとよい。エアバッグ45の展開によって、バックボード120が左右に延びる部分を境に後方に折り曲げられて、バックボード120に開口が形成される。エアバッグ45は、その開口を通って、シートバック4の後方に展開する。
【0101】
また、上記実施形態では、アウタケース40が凹部41に設けられていたが、図10(A)に示されるように、凹部41の開口縁130の曲率を大きくすることによって、膨張時のエアバッグ45の破損を防止してもよい。また、図10(B)に示されるように、凹部41にアウタケース40を嵌合させ、アウタケース40の収容凹部40Rにエアバッグ45及びインフレータ46を収容してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 :乗物用シート
3 :シートクッション
4 :シートバック
7 :シートバックフレーム
9 :表皮部材
11 :サイドフレーム
12 :アッパフレーム
17 :受圧部材
28 :ピラー(ヘッドレストピラー)
31 :ブラケット
34 :上側舌片
36 :縁壁
41 :凹部
42 :凹部底壁
43 :エアバッグモジュール
45 :エアバッグ
56 :ブロア
80 :縫合部(脆弱部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10