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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20220330BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20220330BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20220330BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 B
H05B3/00 310D
H05B3/00 370
H05B3/20 350
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017226877
(22)【出願日】2017-11-27
(65)【公開番号】P2019094011
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-185760(JP,A)
【文献】登録実用新案第3013387(JP,U)
【文献】国際公開第2010/137290(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0098891(US,A1)
【文献】特開2010-036751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックとを備え、前記シートクッションおよび前記シートバックの少なくとも一方が、左右方向の中央に位置する座面部と、当該座面部の左右両側に配置され、乗員の側部を支持するために乗員側に張り出した張り出し部と、を有する乗物用シートであって、
前記シートクッションおよび前記シートバックのうち前記座面部を加熱する第1ヒータと、
前記シートクッションおよび前記シートバックのうち前記張り出し部を加熱する第2ヒータと、
通電を遮断するサーモスタットと、
前記座面部の温度を検知する温度センサと、
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータへの通電を制御する制御装置と、を備え、
前記第1ヒータと前記第2ヒータは、それぞれ独立して制御可能に構成され、
前記サーモスタットは、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータに対して、グラウンド側に接続され
前記制御装置は、
単位時間当たりの通電期間を設定することによって、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータへ供給する電流を制御するPWM制御を実行可能であり、
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータに通電する際に、
前記PWM制御において、
前記単位時間内における前記第1ヒータへの通電期間である第1通電期間と、前記単位時間内における前記第2ヒータへの通電期間である第2通電期間をずらし、
乗物用シートの加熱の指示を受けたときに、前記第1ヒータのみに電流を供給する座面部加熱処理を実行し、
前記座面部加熱処理の後に、前記第1通電期間と前記第2通電期間の和が前記単位時間となるように前記第1通電期間および前記第2通電期間を設定する張り出し部加熱処理を実行し、
前記張り出し部加熱処理の後に、前記温度センサから取得した検知温度に基づいて、前記第1通電期間と前記第2通電期間を設定するフィードバック処理を実行し、
前記座面部加熱処理において、前記指示を受けてから前記検知温度が所定温度になるまでの時間を計測し、計測した時間に基づいて前記張り出し部加熱処理を実行する時間を設定することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータと前記サーモスタットとの接続部分は、シート状の支持体に挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第1ヒータの温度を検出するサーミスタを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
記制御装置は、
前記サーミスタで検知した信号に基づいて、前記第1ヒータまたは前記第2ヒータへの通電を停止することを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記シートクッションと前記シートバックは、互いに接触する接触部を有し、
前記サーモスタットが、前記接触部の前後方向の中心位置と重なるように配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記シートクッションと前記シートバックは、互いに接触する接触部を有し、
前記接触部に前記サーモスタットの前後方向の中心位置が重なるように、前記サーモスタットが配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記制御装置は、
記張り出し部加熱処理において、前記第1通電期間と前記第2通電期間の一方を他方よりも長い時間に設定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記制御装置は、前記張り出し部加熱処理において、前記第2通電期間を前記第1通電期間よりも長い時間に設定することを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記制御装置は、前記張り出し部加熱処理において、前記第1通電期間を前記第2通電期間よりも長い時間に設定することを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
ヘッドレストをさらに備え、
前記シートクッション、前記シートバックおよび前記ヘッドレストは、パッド材と、前記パッド材を覆う表皮材とを有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座面を加熱可能なヒータを備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒータと、ヒータを制御する制御装置とを備えた乗物用シートが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-157279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヒータを備える乗物用シートにおいては、ヒータに過剰な電流が流れないように、ヒータへの通電を機械的に遮断するサーモスタットをヒータに接続させることが望まれている。しかしながら、乗物用シートに複数のヒータを設けた場合には、各ヒータに個別にサーモスタットを設けなければならず、コストが高くなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、複数のヒータを備えた乗物用シートにおいて、サーモスタットの数を減らしてコストの低下を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決する本発明は、シートクッションとシートバックとを備えた乗物用シートであって、前記シートクッションおよび前記シートバックのうち第1の領域を加熱する第1ヒータと、前記シートクッションおよび前記シートバックのうち前記第1の領域とは異なる第2の領域を加熱する第2ヒータと、通電を遮断するサーモスタットと、を備える。
前記第1ヒータと前記第2ヒータは、それぞれ独立して制御可能に構成され、前記サーモスタットは、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータに対して、グラウンド側に接続されている。
【0007】
これによれば、複数のヒータに対してサーモスタットを1つ設けるだけで済むので、コストの低下を図ることができる。
【0008】
また、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータと前記サーモスタットとの接続部分は、シート状の支持体に挟まれていてもよい。
【0009】
これによれば、各ヒータとサーモスタットとの接続部分がグラウンドに短絡するのを抑えることができる。
【0010】
また、前記乗物用シートは、前記第1ヒータの温度を検出するサーミスタを備えていてもよい。
【0011】
また、前記乗物用シートは、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータへの通電を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記サーミスタで検知した信号に基づいて、前記第1ヒータまたは前記第2ヒータへの通電を停止するように構成されていてもよい。
【0012】
これによれば、第1ヒータに過剰な電流が流れそうになった場合には、サーモスタットを作動させることなく、サーミスタで検知した信号に基づいて制御装置によって通電を停止することができる。
【0013】
また、前記シートクッションと前記シートバックは、互いに接触する接触部を有し、前記サーモスタットが、前記接触部の前後方向の中心位置と重なるように配置されていてもよい。
【0014】
これによれば、グラウンド側に配置されたサーモスタットを、シートクッションとシートバックで挟んで保護することができる。
【0015】
また、前記シートクッションと前記シートバックは、互いに接触する接触部を有し、前記接触部に前記サーモスタットの前後方向の中心位置が重なるように、前記サーモスタットが配置されていてもよい。
【0016】
これによれば、グラウンド側に配置されたサーモスタットを、シートクッションとシートバックで挟んで保護することができる。
【0017】
また、前記乗物用シートは、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータへの通電を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、単位時間当たりの通電期間を設定することによって、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータへ供給する電流を制御するPWM制御を実行可能であり、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータに通電する際に、前記PWM制御において、前記単位時間内における前記第1ヒータへの通電期間である第1通電期間と、前記単位時間内における前記第2ヒータへの通電期間である第2通電期間をずらしてもよい。
【0018】
この構成によれば、第1ヒータの通電期間である第1通電期間と第2ヒータの通電期間である第2通電期間をずらすので、ピーク電力を抑えることができる。また、PWM制御の単位時間内において第1通電期間と第2通電期間をずらすので、細かな制御を行うことができ、各領域を効率良く加熱することができる。
【0019】
また、前記シートクッションおよび前記シートバックの少なくとも一方は、左右方向の中央に位置する座面部と、当該座面部の左右両側に配置され、乗員の側部を支持するために乗員側に張り出した張り出し部と、を有し、前記第1の領域は、前記座面部であり、前記第2の領域は、前記張り出し部であってもよい。
【0020】
これによれば、座面部および張り出し部を効率良く加熱することができる。
【0021】
また、前記乗物用シートは、前記座面部の温度を検知する温度センサを備え、前記制御装置は、乗物用シートの加熱の指示を受けたときに、前記第1ヒータのみに電流を供給する座面部加熱処理を実行し、前記座面部加熱処理の後に、前記第1通電期間と前記第2通電期間の和が前記単位時間となるように前記第1通電期間および前記第2通電期間を設定する張り出し部加熱処理を実行し、前記張り出し部加熱処理の後に、前記温度センサから取得した検知温度に基づいて、前記第1通電期間と前記第2通電期間を設定するフィードバック処理を実行し、前記張り出し部加熱処理において、前記第1通電期間と前記第2通電期間の一方を他方よりも長い時間に設定してもよい。
【0022】
これによれば、張り出し部加熱処理において、第1通電期間と第2通電期間の和が単位時間となるように第1通電期間および第2通電期間を設定するので、単位時間を無駄なく加熱に使用することができる。
【0023】
また、前記制御装置は、前記張り出し部加熱処理において、前記第2通電期間を前記第1通電期間よりも長い時間に設定してもよい。
【0024】
これによれば、座面部加熱処理によって座面部を優先して加熱した後の張り出し部加熱処理において、張り出し部を優先して加熱することができる。
【0025】
また、前記制御装置は、前記張り出し部加熱処理において、前記第1通電期間を前記第2通電期間よりも長い時間に設定してもよい。
【0026】
これによれば、座面部加熱処理によって座面部を優先して加熱した後の張り出し部加熱処理において、例えば座面部の温度が所定の温度より低い場合は、座面部を再度優先して加熱することができる。
【0027】
また、前記制御装置は、前記座面部加熱処理において、前記指示を受けてから前記検知温度が所定温度になるまでの時間を計測し、計測した時間に基づいて前記張り出し部加熱処理を実行する時間を設定してもよい。
【0028】
これによれば、張り出し部加熱処理を実行する時間を、適切な時間に設定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、複数のヒータに対してサーモスタットを1つ設けるだけで済むので、コストの低下を図ることができる。
【0030】
また、各ヒータとサーモスタットとの接続部分をシート状の支持体で挟むことで、各ヒータとサーモスタットとの接続部分がグラウンドに短絡するのを抑えることができる。
【0031】
また、各ヒータにサーミスタを接続することで、各ヒータに過剰な電流が流れそうになった場合には、サーモスタットを作動させることなく、各サーミスタで検知した信号に基づいて制御装置によって通電を停止することができる。
【0032】
また、サーモスタットを、シートクッションとシートバックとの接触部の前後方向の中心位置と重なるように配置することで、グラウンド側に配置されたサーモスタットをシートクッションとシートバックで挟んで保護することができる。
【0033】
また、シートクッションとシートバックとの接触部にサーモスタットの前後方向の中心位置が重なるように、サーモスタットを配置することで、グラウンド側に配置されたサーモスタットをシートクッションとシートバックで挟んで保護することができる。
【0034】
また、PWM制御の単位時間内において第1通電期間と第2通電期間をずらすので、ピーク電力を抑えることができるとともに、各領域を効率良く加熱することができる。
【0035】
また、第1の領域を座面部とし、第2の領域を張り出し部とすることで、座面部および張り出し部を効率良く加熱することができる。
【0036】
また、張り出し部加熱処理において、第1通電期間と第2通電期間の和が単位時間となるように第1通電期間および第2通電期間を設定することで、単位時間を無駄なく加熱用の時間に使用することができる。
【0037】
また、張り出し部加熱処理において第2通電期間を第1通電期間よりも長い時間に設定することで、座面部加熱処理によって座面部を優先して加熱した後の張り出し部加熱処理において、張り出し部を優先して加熱することができる。
【0038】
また、張り出し部加熱処理において第1通電期間を第2通電期間よりも長い時間に設定することで、座面部加熱処理によって座面部を優先して加熱した後の張り出し部加熱処理において、例えば座面部の温度が所定の温度より低い場合は、座面部を再度優先して加熱することができる。
【0039】
また、指示を受けてから検知温度が所定温度になるまでの時間を計測し、計測した時間に基づいて張り出し部加熱処理を実行する時間を設定することで、張り出し部加熱処理を実行する時間を適切な時間に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明に係る乗物用シートの一実施形態を示す車両用シートの斜視図である。
図2】車両用シートを左右方向から見た側面図(a)と、面状発熱体の構成を示す平面図(b)である。
図3】サーモスタットと接触部の関係を示す図(a)と、サーモスタットと接触部の関係の変形例を示す図(b)である。
図4】面状発熱体の構成と制御装置等との関係を示す回路図である。
図5】制御装置での各処理における電力の状態を示すタイムチャート(a)~(c)である。
図6】制御装置の処理を示すフローチャートである。
図7】制御装置での加熱処理中における座面部と張り出し部の温度変化の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る乗物用シートの一実施形態について説明する。一実施形態の乗物用シートは、例えば図1に示すように、自動車に搭載される車両用シートSとして構成されている。この車両用シートSは、ウレタンフォームなどのクッション材からなるパッド材が合成皮革や布地などの表皮材で覆われたシートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3を備えている。
【0042】
シートクッションS1は、左右中央に配置された、乗員の臀部および太ももを下から接触して支える座面部S11と、座面部S11の左右両方の外側に配置され、乗員の太ももおよび臀部の側部を支持するために乗員側に張り出した張り出し部S12を有する。
また、シートバックS2も同様に、左右中央に配置された、乗員の背中に接触して背中を後から支える座面部S21と、座面部S21の左右両方の外側に配置され、乗員の上体の側部を支持するために乗員側に張り出した張り出し部S22を有する。
【0043】
シートクッションS1の座面部S11と、シートバックS2の座面部S21には、表皮の内側に、それぞれ、第1ヒータ10として、センターヒータ11,12が配置されている。また、シートクッションS1の張り出し部S12と、シートバックS2の張り出し部S22には、表皮の内側に、それぞれ、第2ヒータ20として、サイドヒータ21,22が配置されている。すなわち、第1ヒータ10に加熱される部位は、座面部S11,S21であり、第2ヒータ20に加熱される部位は、張り出し部S12,S22である。つまり、座面部S11,S21は、第1の領域に相当し、張り出し部S12,S22は、第1の領域とは異なる第2の領域に相当する。
【0044】
シートクッションS1の座面部S11には、表皮の内側で、第1ヒータ10に対応する部分に、座面部S11の温度を検知する温度センサ30が内蔵されている。温度センサ30は、乗員の体温の影響を受けない位置に配置されている。例えば、温度センサ30は、シートバックS2の下部や、シートクッションS1の後部に配置することができる。なお、温度センサ30が検知した温度と、座面部S11の乗員が接触する部分の温度との間には略一定の相関がある。制御装置100は、温度センサ30が検知した温度そのものを検知温度として用いて制御を行ってもよいし、上述の相関に基づいて乗員が接触する部分の温度を推定し、この推定した温度を検知温度Tとして制御を行ってもよい。
【0045】
車両用シートSには、適宜な位置に、制御装置100が配置されている。前記した温度センサ30は、検知温度Tの信号を制御装置100に出力するように制御装置100に接続されている。また、第1ヒータ10および第2ヒータ20は、制御装置100に接続されている。そして、制御装置100は、車両に搭載されたバッテリにより駆動される電源装置90から電力が供給され、この電力を、温度センサ30から取得した検知温度Tに基づいて、第1ヒータ10および第2ヒータ20の出力を制御するように構成されている。電源装置90は、車両用シートSの第1ヒータ10および第2ヒータ20のためには、所定の上限出力の範囲内で電力を供給するように構成され、本実施形態では、第1ヒータ10に対する電力の上限値P1を、第2ヒータ20に対する電力の上限値P2よりも大きくしている。例えば、上限値P1は80W、上限値P2は60Wとすることができる。
【0046】
なお、各ヒータ10,20の電力の上限値は、大小関係や具体的な数値など、任意に設定することができる。例えば、各ヒータ10,20の電力の上限値を同じ値に設定してもよいし、第1ヒータ10の電力の上限値を、第2ヒータ20の電力の上限値よりも小さくしてもよい。
【0047】
図2(b)に示すように、シートクッションS1の表皮とパッドの間には、センターヒータ11およびサイドヒータ21を備えた面状発熱体50が設けられている。なお、このような面状発熱体は、シートバックS2にも設けられているが、シートクッションS1に設ける面状発熱体50と略同一の構造であるため、シートバックS2側の面状発熱体については説明を省略する。
【0048】
面状発熱体50は、各ヒータ11,21を備えるヒータ回路40と、ヒータ回路40を挟む2枚のシート状の支持体51とを備えている。支持体51は、不織布などの絶縁体からなり、ヒータ回路40を構成するすべての部品および配線を挟んでいる。これにより、各ヒータ11,21と後述するサーモスタット45との接続部分CPが、支持体51によって挟まれている。
【0049】
ヒータ回路40は、各ヒータ11,21の他、接続端子41と、サーミスタ43と、サーモスタット45とを備えている。
【0050】
接続端子41は、制御装置100から電力が供給される端子であり、ケーブルC1を介して制御装置100に接続されている。ケーブルC1は、接続端子41に着脱可能となっている。
【0051】
接続端子41は、面状発熱体50の後端における左右方向中央部に配置されている。
【0052】
サーミスタ43は、制御装置100に接続され、センターヒータ11の温度を検出できるように近くに配置される。望ましくは、センターヒータ11に接続されたサブヒータ13(図4参照)の温度を検出するように配置されているとなお良い。
【0053】
サーモスタット45は、制御装置100による制御によらずに、各ヒータ11,21への通電を、物理現象を利用して自発的に遮断する機能を有している。なお、サーモスタット45の構造は、後で詳述する。
【0054】
サーミスタ43およびサーモスタット45は、シートクッションS1の後端部において、それぞれ前後方向で同じ位置に配置されている。詳しくは、図2(a)に示すように、サーミスタ43およびサーモスタット45は、シートクッションS1とシートバックS2との接触部TPに配置されている。ここで、接触部TPは、シートクッションS1とシートバックS2とが互いに接触する部分である。シートクッションS1とシートバックS2は、それぞれ接触部TPを有している。
【0055】
以下に、サーモスタット45と接触部TPとの前後方向の位置関係を説明する。なお、サーモスタット45と前後方向の位置が同じであるサーミスタ43と接触部TPとの位置関係については説明を省略する。
【0056】
図3(a)に示すように、サーモスタット45は、接触部TPの前後方向の中心位置L1と重なるように配置されている。なお、サーモスタット45の位置はこれに限定されず、例えば図3(b)に示すように、接触部TPにサーモスタット45の前後方向の中心位置L2が重なるように、サーモスタット45を配置してもよい。
【0057】
図2(b)に戻って、サーミスタ43は、接続端子41よりも右側に配置され、サーモスタット45は、接続端子41よりも左側に配置されている。これにより、サーミスタ43とサーモスタット45との間には、ヒータ回路40の配線を設置するためのスペースが確保されている。なお、図2(b)は、ヒータ回路40の配線を簡略的に示す回路図であり、実際の配線は複雑な経路を通るように配置されるため、前述したようなスペースは有効活用される。
【0058】
次に、図2(b)の回路図をより簡略化した図4の回路図を用いて、ヒータ回路40の構成を詳細に説明する。
センターヒータ11とサイドヒータ21は、それぞれ個別の配線で制御装置100に接続されることで、制御装置100によって、それぞれ独立して制御可能に構成されている。サーモスタット45は、センターヒータ11およびサイドヒータ21に対して、グラウンド側に接続されている。
【0059】
サーモスタット45は、通電状態を切り替えるスイッチとして機能する通電遮断部45Aと、通電遮断部45Aを加熱する発熱抵抗体45Bとを備えている。通電遮断部45Aは、温度変化に応じて変形するバイメタルからなり、通常時は、各ヒータ11,21とグラウンドとを接続させ、温度が所定温度以上になると、各ヒータ11,21とグラウンドとの接続を切るように構成されている。センターヒータ11を流れた電流と、サイドヒータ21を流れた電流は、後述する制御装置100による制御により、サーモスタット45に同時に流れず、交互に供給される。このような電流がサーモスタット45に入ると、電流の大きさに応じた熱が発熱抵抗体45Bから発せられる。そして、この熱によって通電遮断部45Aの温度が所定温度以上になると通電遮断部45Aが切られて、各ヒータ11,21への通電が遮断されるようになっている。
【0060】
センターヒータ11の一端部は、制御装置100に接続され、他端部は、サブヒータ13に接続されている。このサブヒータ13の近傍には、サーミスタ43が配置されている。サーミスタ43は、制御装置100に接続されている。
【0061】
サブヒータ13の他端部は、サーモスタット45に接続されている。サイドヒータ21の一端部は、制御装置100に接続され、他端部は、サーモスタット45に接続されている。
【0062】
制御装置100は、サーミスタ43で検知した信号、詳しくはサブヒータ13の温度変化に応じて変化する電流に基づいて、センターヒータ11およびサイドヒータ21への通電を個別に停止する機能を有している。
【0063】
詳しくは、制御装置100は、サーミスタ43で検出した温度が所定値以上、言い換えると、サーミスタ43から出力される電流が所定の閾値以上である場合に、センターヒータ11への通電を停止する。そして、制御装置100は、過剰な電流がセンターヒータ11に流れそうになった場合には、サーモスタット45が切れる前に、サーミスタ43から出力される電流に基づいて通電を停止するように構成されている。また、サーミスタ43または制御装置100に異常が生じて、過剰な電流がセンターヒータ11に流れそうになった場合には、サーモスタット45が、制御装置100の制御に依存せずに、切れることで、通電を遮断することが可能となっている。なお、サーミスタ43を用いたサイドヒータ21の制御は、センターヒータ11の制御と同様であるため、説明は省略する。
【0064】
制御装置100は、車両に搭載されたヒータの操作スイッチと接続され、当該操作スイッチから車両用シートSの加熱の指示を受けて、第1ヒータ10および第2ヒータ20への通電を制御する。図5(a)~(c)に示すように、制御装置100は、操作スイッチから指示を受けたときに検知温度Tを目標温度T2へ向けて上昇させる加熱期間において、第1ヒータ10を集中的に加熱して乗員が接する座面部S11,S21の温度を速やかに上昇させる座面部加熱処理と、第2ヒータ20の加熱を開始して、張り出し部S12,S22の温度を座面部S11,S21の温度に近づける張り出し部加熱処理と、張り出し部S12,S22の温度がある程度上昇した後、検知温度Tを目標温度T2に合わせるように調整するフィードバック処理とを実行するように構成されている。
なお、暖かい時期や、操作スイッチの操作以前に一度ヒータを使用していた場合などにおいては、操作スイッチで加熱の指示を受けたときに、すでに検知温度Tが目標温度T2よりも高い場合がある。その場合には、制御装置100は、ここでいう加熱期間の制御は実行せず、フィードバック処理から制御を開始する。
【0065】
制御装置100は、座面部加熱処理、張り出し部加熱処理およびフィードバック処理の各処理において、単位時間Tu当たりの通電期間を設定することによって、第1ヒータ10および第2ヒータ20へ供給する電流を制御するPWM制御を実行可能となっている。そして、制御装置100は、張り出し部加熱処理およびフィードバック処理において、PWM制御を行って第1ヒータ10および第2ヒータ20に通電する際には、単位時間Tu内における第1ヒータ10への通電期間である第1通電期間Ts1と、単位時間Tu内における第2ヒータ20への通電期間である第2通電期間Ts2をずらしている。
【0066】
つまり、第1ヒータ10への通電をPWM制御によって行うときの単位時間と、第2ヒータ20への通電をPWM制御によって行うときの単位時間とが、同じ単位時間Tuとなっている。そして、この単位時間Tu内において、第1通電期間Ts1と第2通電期間Ts2が重ならないように、第1通電期間Ts1の開始時刻および終了時刻と、第2通電期間Ts2の開始時刻および終了時刻がそれぞれ設定されている。
【0067】
制御装置100は、車両用シートSの加熱の指示を受けたときに、図5(a)に示す座面部加熱処理を実行する。座面部加熱処理においては、第1通電期間Ts1が、単位時間Tuと同じ時間に設定され、第2通電期間Ts2が0に設定されている。つまり、座面部加熱処理においては、第1ヒータ10へ供給する電流のデューティ比(以下、「第1デューティ比」とも称する。)が100%に設定され、第2ヒータ20へ供給する電流のデューティ比(以下、「第2デューティ比」とも称する。)が0%に設定されている。これにより、制御装置100は、座面部加熱処理において、第1ヒータ10のみに電流を供給する。なお、第1ヒータ10に対する電力の上限値P1を80Wとした場合には、第1ヒータ10に80Wの電力が供給される。
【0068】
また、制御装置100は、座面部加熱処理において、指示を受けてから検知温度Tが、目標温度T2よりも低い所定温度T1になるまでの時間を計測し、この計測時間に基づいて張り出し部加熱処理を実行する時間を設定している。詳しくは、制御装置100は、計測時間が長ければ長いほど、張り出し部加熱処理を実行する時間を長い時間に設定する。車両用シートSの加熱を開始する際の車両用シートSの温度が低い場合には、座面部S11,S22および張り出し部S12,S22を温める時間として長い時間必要なので、座面部加熱処理において検知温度Tが所定温度T1になるまでにかかった長めの計測時間に応じて、張り出し部加熱処理の実行時間を長くすることで、座面部S11,S22および張り出し部S12,S22を良好に加熱することができる。
【0069】
制御装置100は、座面部加熱処理の後に、図5(b)に示す張り出し部加熱処理を実行する。張り出し部加熱処理においては、第1通電期間Ts1と第2通電期間Ts2の和が単位時間Tuとなるように、第1通電期間Ts1および第2通電期間Ts2がそれぞれ0よりも大きな期間に設定されている。また、本実施形態では、第2通電期間Ts2が第1通電期間Ts1よりも長い時間に設定されている。これにより、張り出し部加熱処理においては、第2デューティ比が、第1デューティ比よりも大きくなり、張り出し部S12を優先して加熱することが可能となっている。
【0070】
なお、一例として、張り出し部加熱処理においては、第1デューティ比を40%、第2デューティ比を60%とすることができる。この場合において、第1ヒータ10に対する電力の上限値P1を80W、第2ヒータ20に対する電力の上限値P2を60Wとした場合には、第1ヒータ10に32Wの電力が供給され、第2ヒータ20に36Wの電力が供給される。
【0071】
制御装置100は、張り出し部加熱処理の後に、図5(c)に示すフィードバック処理を実行する。制御装置100は、フィードバック処理において、温度センサ30から取得した検知温度Tに基づいて、第1通電期間Ts1と第2通電期間Ts2を設定する。具体的には、制御装置100は、フィードバック処理において、検知温度Tが目標温度T2になるように、第1通電期間Ts1と第2通電期間Ts2を設定する。例えば、制御装置100は、フィードバック処理において、PI制御を実行する。
【0072】
制御装置100は、検知温度Tと、目標温度T2とに基づいて、必要制御量mvを計算する。必要制御量mvは、例えば、いわゆるPI制御の必要制御量として、
mv=Kp×e+ie/Ki
により計算することができる。
【0073】
ここで、eは、目標温度T2と検知温度Tの差分であり、Kpは比例制御定数であり、ieは、過去の所定期間内のeの積分(積算)であり、Kiは、積分制御定数である。各定数Kp,Kiは、必要制御量mvが、検知温度Tが目標温度T2に近づいた後のフィードバック処理における出力の指示値(第1通電期間Ts1および第2通電期間Ts2を指示する値)として利用できるように設定されている。また、検知温度Tおよび目標温度T2は、ここでの計算上、「℃」などの単位である必要はなく、温度センサ30から出力される電圧を数値化したものでよい。各定数Kp,Kiは、これらの温度の値のスケールによっても適宜調整するとよい。
【0074】
以上のような車両用シートSにおける制御装置100の処理について、図6を参照しながら説明する。
制御装置100は、図6に示すスタートからエンドまでの処理を、制御サイクルごとに繰り返し行っている。制御装置100は、まず、ヒータの加熱指示を受けたか否かを判定し、指示がない場合(S41,No)、処理を終了し、指示がある場合(S41,Yes)、ステップS42に進んで、座面部加熱処理(S42~S45)を実行する。
【0075】
ステップS42では、制御装置100は、第1通電期間Ts1を単位時間Tuと同じ時間に設定することで、第1ヒータ10へ供給する電流のデューティ比を100%にして、第1ヒータ10を100%で出力する。ステップS43の後、制御装置100は、温度センサ30から検知温度Tを取得し(S43)、検知温度Tが所定温度T1以上になったか否かを判断する(S44)。
【0076】
ステップS44においてT≧T1でないと判断した場合には(No)、制御装置100は、ステップS42の処理に戻る。ステップS44においてT≧T1であると判断した場合には(Yes)、制御装置100は、加熱指示を受けてからT≧T1になるまでの時間に基づいて、張り出し部加熱処理の実行時間TM1を設定する(S45)。
【0077】
ステップS45の後、制御装置100は、第1通電期間Ts1と第2通電期間Ts2の和が単位時間Tuとなるように、第1通電期間Ts1および第2通電期間Ts2を設定することで、張り出し部加熱処理を開始する(S46)。具体的には、制御装置100は、ステップS46において、例えば、単位時間Tuの前半の40%を第1通電期間Ts1として割り当て、単位時間Tuの後半の60%を第2通電期間Ts2として割り当てることで、第1デューティ比40%、第2デューティ比60%で各ヒータ10,20に通電を行う。
【0078】
ステップS46の後、制御装置100は、張り出し部加熱処理の開始から実行時間TM1が経過したか否かを判断する(S47)。ステップS47において実行時間TM1が経過していないと判断した場合には(No)、制御装置100は、ステップS46の処理に戻る。ステップS47において実行時間TM1が経過したと判断した場合には(Yes)、制御装置100は、検知温度Tに基づいて第1通電期間Ts1と第2通電期間Ts2、つまり各デューティ比を設定することで、検知温度Tが目標温度T2となるようにフィードバック処理を実行する(S48)。
【0079】
ステップS48の後、制御装置100は、ヒータの停止の指示を受けたか否かを判断する(S49)。ステップS49において、制御装置100は、停止の指示を受けていない場合には(No)、ステップS48の処理に戻り、停止の指示を受けている場合には(Yes)、各ヒータ10,20への通電を停止して(S50)、処理を終了する。
【0080】
次に、制御装置100の動作の一例について図7を参照して説明する。図7において、実線は、座面部S11,S21の温度を示し、破線は、張り出し部S12,S22の温度を示す。
【0081】
図7に示すように、制御装置100は、加熱の指示を受けると(時刻t1)、座面部加熱処理を実行する。これにより、第1ヒータ10のみに電力が供給され、座面部S11,S21の温度が上昇していく。なお、張り出し部S12,S22については、車両用シートSに着座している乗員の体温によって、座面部S11,S21での温度勾配よりも小さな勾配で昇温されていく。
【0082】
検知温度Tが所定温度になると(時刻t2)、制御装置100は、座面部加熱処理を終了して、張り出し部加熱処理を開始する。張り出し部加熱処理においては、第2通電期間Ts2が第1通電期間Ts1よりも長い期間に設定されているので、張り出し部S12,S22が座面部S11,S21よりも優先的に加熱される。これにより、張り出し部S12,S22の温度勾配が、座面部S11,S21の温度勾配よりも大きくなり、張り出し部S12,S22の温度が、座面部S11,S21の温度に徐々に近づいていく。
【0083】
張り出し部加熱処理の開始から実行時間TM1が経過すると(時刻t3)、制御装置100は、張り出し部加熱処理を終了して、フィードバック処理を実行する。ここで、実行時間TM1は、加熱指示を受けてから検知温度Tが所定温度になるまでの時間、つまり座面部加熱処理の実行時間に基づいて決定されるので、張り出し部加熱処理の終了時には、張り出し部S12,S22の温度と座面部S11,S21の温度が、目標温度T2に近い値となる。そのため、この状態で、フィードバック処理を開始することで、張り出し部S12,S22の温度と座面部S11,S21の温度を目標温度T2に良好に維持することができる。
【0084】
次に、第1ヒータ10または第2ヒータ20に過剰な電流が流れそうになった場合における制御装置100またはサーモスタット45の動作について、図4を参照して説明する。
【0085】
図4に示すように、第1ヒータ10または第2ヒータ20に通電を行っている際に、サーミスタ43から出力される電流が所定の閾値以上になると、制御装置100は、サーモスタット45が切れる前に通電を停止する。また、通電時において、例えば制御装置100などの異常によって、第1ヒータ10または第2ヒータ20に過剰な電流が流れそうになった場合には、サーモスタット45が切れて、通電が遮断される。
【0086】
以上、本実施形態によれば、次の各効果を奏することができる。
複数のヒータ10,20に対してサーモスタット45を1つ設けるだけで済むので、コストの低下を図ることができる。
【0087】
各ヒータ10,20とサーモスタット45との接続部分がシート状の支持体51に挟まれているので、各ヒータ10,20とサーモスタット45との接続部分がグラウンドに短絡するのを抑えることができる。
【0088】
サーモスタット45の他、通電を停止するためのサーミスタ43を設けたので、各ヒータ10,20に過剰な電流が流れそうになった場合には、サーモスタット45を作動させることなく、サーミスタ43で検知した信号に基づいて制御装置100によって通電を停止することができる。
【0089】
サーモスタット45を接触部TPの前後方向の中心位置と重なるように配置したので、グラウンド側に配置されたサーモスタット45を、シートクッションS1とシートバックS2で挟んで保護することができる。
【0090】
第1ヒータ10の通電期間である第1通電期間Ts1と第2ヒータ20の通電期間である第2通電期間Ts2をずらすので、ピーク電力を抑えることができる。このようにピーク電力を抑えることで、各ヒータ10,20に流れた電流がそれぞれ供給されるサーモスタット45における電流のピーク値を抑えることができるので、1つのサーモスタット45であっても十分機能させることができる。また、PWM制御の単位時間Tu内において第1通電期間Ts1と第2通電期間Ts2をずらすので、細かな制御を行うことができ、座面部S11,S21と張り出し部S12,S22を効率良く加熱することができる。
【0091】
張り出し部加熱処理において、第1通電期間Ts1と第2通電期間Ts2の和が単位時間Tuとなるように第1通電期間Ts1および第2通電期間Ts2を設定するので、単位時間Tuを無駄なく加熱に使用することができる。
【0092】
張り出し部加熱処理において第2通電期間Ts2を第1通電期間Ts1よりも長い時間に設定したので、座面部加熱処理によって座面部S11,S21を優先して加熱した後の張り出し部加熱処理において、張り出し部S12,S22を優先して加熱することができる。
【0093】
座面部加熱処理において、加熱の指示を受けてから検知温度Tが所定温度T1になるまでの時間に基づいて張り出し部加熱処理の実行時間TM1を設定したので、張り出し部加熱処理を実行する時間を、適切な時間に設定することができる。
【0094】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以下の他の形態に示すように、適宜変形して実施することが可能である。
【0095】
前記実施形態では、第1の領域を座面部S11,S21とし、第2の領域を張り出し部S12,S22としたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1の領域は、シートクッションおよびシートバックのうち、どの部分であってもよく、第2の領域は、シートクッションおよびシートバックのうち、第1の領域と異なる領域であれば、どの部分であってもよい。例えば、シートクッションの一部を第1の領域とし、シートバックの一部を第2の領域としてもよい。
【0096】
前記実施形態では、張り出し部加熱処理において、第2通電期間Ts2を第1通電期間Ts1よりも長い時間に設定したが、本発明はこれに限定されず、張り出し部加熱処理において、第1通電期間を第2通電期間よりも長い時間に設定してもよい。
【0097】
ここで、例えば座面部加熱処理の終了条件を、加熱指示を受けてから所定時間が経過したこととした場合には、座面部加熱処理の終了時に座面部があまり温かくなっていないときがある。このようなときには、張り出し部加熱処理において、座面部を張り出し部よりも優先して強く加熱する必要が生じる。このような場合に、張り出し部加熱処理において、第1通電期間を第2通電期間よりも長い時間に設定することで、座面部を再度優先して加熱することができる。
【0098】
なお、張り出し部加熱処理において、第1通電期間と第2通電期間を同じ時間に設定してもよい。
【0099】
前記実施形態では、張り出し部加熱処理において、各通電期間Ts1,Ts2を固定値としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、座面部加熱処理の実行時間が長い程、第2通電期間Ts2の割合が多くなるように、各通電期間Ts1,Ts2を変化させてもよい。
【0100】
なお、サーミスタ43およびサーモスタット45の位置は、前記実施形態に限定されず、任意の位置に配置することができる。また、前記実施形態では、サーミスタ43は、1つであったが、ヒータ毎に複数設けてもよい。
【0101】
前記実施形態では、乗物用シートとして、自動車で使用される車両用シートSを例示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート、例えば、船舶や航空機などで使用されるシートに適用することもできる。また、前記実施形態においては、乗用車の運転席に採用されるような独立タイプのシートを例示したが、乗用車の後部座席によく採用されるようなベンチタイプのシートに本発明を採用することもできる。
【0102】
前記実施形態では、シートクッションS1の座面部S11に温度センサ30を設けたが、本発明はこれに限定されず、例えば、シートバックの座面部に温度センサを設けてもよいし、シートクッションとシートバックの各座面部に温度センサをそれぞれ設けてもよい。
【0103】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 第1ヒータ
20 第2ヒータ
45 サーモスタット
S 車両用シート
S1 シートクッション
S2 シートバック
S11 座面部
S12 張り出し部
S21 座面部
S22 張り出し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7