(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】塗布装置及び塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05C 11/06 20060101AFI20220330BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220330BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20220330BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220330BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B05C11/06
B05D3/00 C
B05D7/00 Z
B05C5/00 101
B05C13/02
(21)【出願番号】P 2018193223
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】508091649
【氏名又は名称】有限会社浦野技研
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100094363
【氏名又は名称】山本 孝久
(72)【発明者】
【氏名】浦野 隆実
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-234356(JP,A)
【文献】特公平06-035979(JP,B2)
【文献】特開平01-307468(JP,A)
【文献】特開昭62-087276(JP,A)
【文献】特開平02-177974(JP,A)
【文献】特開平01-293155(JP,A)
【文献】特開2012-192180(JP,A)
【文献】特開平03-018746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B37/00-47/04
B05B12/16-12/36
14/00-16/80
B05C 3/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体の直径より大きな直径を有し、
底部が閉塞され、球体を格納する円筒形の容器、
前記容器内に加圧流体を導入する加圧流体導入部が前記容器の底部に取り付けられ、前記加圧流体導入部から上方に噴射される加圧流体により前記球体を前記容器内で浮遊させる浮遊手段、及び、
前記容器内で浮遊した
前記球体の表面に塗布液を塗布するための塗布液導入部、
を備えている塗布装置。
【請求項2】
前記塗布液導入部は、
前記容器の上方に配置されている請求項
1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記容器の上方に乾燥装置を更に備えている請求項
2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記浮遊手段は、
前記容器内で
前記球体を浮遊させるために
前記容器内に加圧流体を導入する第2加圧流体導入部を更に備えている請求項
1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記第2加圧流体導入部は、
前記容器の底部に取り付けられている請求項
4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記加圧流体は、ガス状物質から成る請求項
1乃至請求項
5のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記加圧流体の圧力及び流量、並びに、
前記塗布液の供給量に基づき、
前記塗布液の厚さを制御する請求項
6に記載の塗布装置。
【請求項8】
塗布液導入部を兼ねた
前記加圧流体導入部は、
前記容器の底部に取り付けられており、
ガス状物質から成る
前記加圧流体及び塗布液は、
前記加圧流体導入部から
前記容器内に導入される請求項
1に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記加圧流体導入部の軸線は、
前記容器の軸線上には無い請求項
1乃至請求項
8のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記加圧流体導入部の軸線は、
前記容器の軸線と非平行である請求項
1乃至請求項
8のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項11】
球体は、浮遊した状態において回転させられる請求項1乃至請求項
10のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項12】
球体の直径より大きな直径を有する円筒形の容器内で、浮遊手段によって
前記容器内に噴射された加圧流体で浮遊させた球体と容器の側壁との間に形成された隙間の一部に塗布液の液溜りを生成させながら球体の表面に塗布液を塗布する塗布方法。
【請求項13】
前記容器内で浮遊した
前記球体の表面に
前記塗布液を塗布した後、
前記容器内において
前記球体が浮遊した状態で
前記塗布液を乾燥させる請求項1
2に記載の塗布方法。
【請求項14】
前記容器内で浮遊した
前記球体の表面に
前記塗布液を塗布した後、
噴射された加圧流体で前記球体を
前記容器の上方に移動させ、
前記容器の上方において
前記球体が浮遊した状態で
前記塗布液を乾燥させる請求項1
2に記載の塗布方法。
【請求項15】
前記加圧流体は、ガス状物質から成
る請求項1
2乃至請求項1
4のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項16】
複数箇所から
前記加圧流体が
前記容器内に導入される請求項1
5に記載の塗布方法。
【請求項17】
前記加圧流体の圧力及び流量、並びに、
前記塗布液の供給量に基づき、
前記塗布液の厚さを制御する請求項1
5又は請求項1
6に記載の塗布方法。
【請求項18】
前記容器内で球体を浮遊させるため
の加圧流体、及び、
前記塗布液が、
前記浮遊手段から
前記容器内に導入される請求項1
2乃至請求項1
4のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項19】
前記容器内に導入された
前記加圧流体の主たる流れは、
前記容器の軸線上には無い請求項1
5乃至請求項1
8のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項20】
前記容器内に導入された
前記加圧流体の主たる流れは、
前記容器の軸線と非平行である請求項1
5乃至請求項
18のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項21】
前記球体は、浮遊した状態において回転させられる請求項1
2乃至請求項2
0のいずれか1項に記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び塗布方法に関し、より具体的には、球体の表面への塗布を行うための塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小径の球体の表面に均一な塗布膜を形成するためには、例えば、球体を針等の治具で保持し、あるいは又、真空吸着装置等で保持し、球体を塗布液に浸漬した後、塗布液から引き上げ、塗布液を乾燥させる方法が知られている。しかしながら、このような方法では、球体を保持することが困難な場合が多いし、均一な塗布膜を得ることが難しい。
【0003】
微小な球体を浮遊させた状態で球体の表面に塗布膜を形成する方法が、例えば、特開平3-018746号公報から周知である。この特許公開公報に開示された技術においては、下方から気体を噴霧し、球状物質を浮遊させた状態でカーボンをスプレー塗布することで、シリコン融体対流観察用トレーサを作製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許公開公報には、カーボンをスプレー塗布する方法が具体的に開示されていない。また、スプレー塗布法に基づき球状物質を浮遊させた状態で均一な塗布膜を得ることは困難である。
【0006】
従って、本発明の目的は、球体の表面において均一な塗布膜を容易に得ることを可能とする塗布装置、及び、係る塗布装置を用いた塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の塗布装置は、
球体の直径より大きな直径を有し、球体を格納する円筒形の容器、
容器内で球体を浮遊させるための浮遊手段、及び、
容器内で浮遊した球体の表面に塗布液を塗布するための塗布液導入部、
を備えている。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の塗布方法は、球体の直径より大きな直径を有する円筒形の容器内で、浮遊手段によって球体を浮遊させながら球体の表面に塗布液を塗布する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗布装置あるいは塗布方法にあっては、容器内で浮遊した球体の表面に塗布液を塗布するので、浮遊した球体は容器内での動きに制約を受けるが、浮遊した球体は容器の側壁に接触することが無いので、球体の表面において均一な塗布膜を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1の塗布方法を説明するための、実施例1の塗布装置の模式的な端面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の塗布方法を説明するための、実施例1の塗布装置の模式的な端面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の塗布方法を説明するための、実施例1の塗布装置の模式的な端面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の塗布方法を説明するための、実施例1の塗布装置の模式的な端面図である。
【
図5】
図5は、実施例1の塗布装置の変形例の模式的な端面図である。
【
図6】
図6は、実施例1の塗布装置の別の変形例の模式的な端面図である。
【
図7】
図7は、実施例2の塗布装置の模式的な端面図である。
【
図8】
図8は、実施例3の塗布装置の模式的な端面図である。
【
図9】
図9は、実施例3の塗布装置の変形例の模式的な端面図である。
【
図10】
図10は、
図12の矢印A-Aに沿った、本発明の塗布装置での使用に適した塗布液・加圧流体導入ノズルの模式的な端面図である。
【
図11】
図11は、
図12の矢印A-Aに沿った、本発明の塗布装置での使用に適した塗布液・加圧流体導入ノズルの変形例の模式的な端面図である。
【
図13】
図13は、
図10に示すと同様の本発明の塗布装置での使用に適した塗布液・加圧流体導入ノズルの模式的な端面図である。
【
図14】
図14は、
図10に示すと同様の本発明の塗布装置での使用に適した塗布液・加圧流体導入ノズルの模式的な端面図において、加圧流体や塗布液の流れを模式的に示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の塗布装置での使用に適した塗布液・加圧流体導入ノズルを含む塗布液供給システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の塗布装置及び本発明の塗布方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の塗布装置及び本発明の塗布方法)
3.実施例2(実施例1の塗布装置の変形)
4.実施例3(実施例1~実施例2の塗布装置の変形)
5.実施例4(本発明の塗布装置での使用に適した塗布液・加圧流体導入ノズル及び塗布液供給システム)
6.その他
【0012】
〈本発明の塗布装置及び本発明の塗布方法〉
本発明の塗布装置において、浮遊手段は、容器内で球体を浮遊させるために容器内に加圧流体を導入する加圧流体導入部から成る形態とすることができる。そして、この場合、容器の底部は閉塞されており;加圧流体導入部は、容器の底部に取り付けられており;塗布液導入部は、容器の上方に配置されている形態とすることができ、更には、容器の上方に乾燥装置を更に備えている形態とすることができる。乾燥装置として、遠赤外線を照射する乾燥装置、熱風を吹き付ける乾燥装置を挙げることができる。塗布液に依っては、乾燥装置が無くとも、加圧流体導入部から導入された加圧流体によって、塗布液を乾燥させることができる。浮遊手段として、その他、球体の材質にも依るが、球体を磁気によって浮遊させ得る装置を挙げることもできる。
【0013】
更には、本発明の塗布装置の上記各種の好ましい形態において、浮遊手段は、容器内で球体を浮遊させるために容器内に加圧流体を導入する第2加圧流体導入部を更に備えている形態とすることができる。そして、この場合、容器の底部は閉塞されており;第2加圧流体導入部は、容器の底部に取り付けられている形態とすることができる。第2加圧流体導入部の数nは、1以上であればよい。n≧2の場合、第2加圧流体導入部を、容器の軸線を対称軸としたn回対称(360/n度対称)に配置することが望ましい。第2加圧流体導入部から導入される加圧流体の流れは、球体に向かって、且つ、容器の上方に向かって流れる方向である。
【0014】
更には、本発明の塗布装置の上記各種の好ましい形態において、加圧流体は、ガス状物質から成る形態とすることができる。そして、この場合、加圧流体の圧力及び流量、並びに、塗布液の供給量に基づき、塗布液の厚さを制御する形態とすることができる。ガス状物質として、具体的には、空気、窒素ガスを例示することができる。球体の表面と容器の側壁によって形成された隙間の間隔Gを制御することで、塗布液の厚さの制御を行うことができるが、隙間の間隔Gは、例えば、加圧流体の圧力及び流量によって行うことができる。隙間の間隔Gは、球体の表面に沿って不均一である形態とすることができるが、場合によっては均一である形態を含み得る。隙間の間隔Gは、球体の直径をR1、容器の直径をR2としたとき、
0<G<(R2-R1)
で表すことができるが、例えば、
0.01mm≦(R2-R1)/2≦0.5mm
を満足することが好ましい。
【0015】
あるいは又、容器内で球体を浮遊させるために容器内に加圧流体を導入する加圧流体導入部から浮遊手段が成る形態の本発明の塗布装置において、容器の底部は閉塞されており;塗布液導入部を兼ねた加圧流体導入部は、容器の底部に取り付けられており;ガス状物質から成る加圧流体及び塗布液は、加圧流体導入部から容器内に導入される形態とすることができる。そして、この場合、容器内に導入された塗布液は、容器の上部に設けられた塗布液排出部から排出される形態とすることができる。
【0016】
更には、本発明の塗布装置における以上に説明した各種の好ましい形態において、加圧流体導入部の軸線は、容器の軸線上には無い形態とすることができるし、あるいは又、加圧流体導入部の軸線は、容器の軸線と非平行である形態とすることができる。
【0017】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の塗布装置において、球体は、浮遊した状態において回転させられる形態とすることができる。球体の回転数として、1rpm乃至8000rpmを例示することができる。但し、これに限定するものではなく、球体は、浮遊した状態において回転していない形態とすることもできる。
【0018】
本発明の塗布方法にあっては、球体の表面と容器の側壁によって形成された隙間に塗布液の液溜りが生成される形態とすることができる。そして、球体の表面と容器の側壁によって形成された隙間の間隔Gを制御することで、塗布液の厚さの制御を行うことができる。間隔Gに関しては、上述したとおりである。
【0019】
上記の好ましい形態を含む本発明の塗布方法にあっては、容器内で浮遊した球体の表面に塗布液を塗布した後、容器内において球体が浮遊した状態で塗布液を乾燥させる形態とすることができるし、容器内で浮遊した球体の表面に塗布液を塗布した後、浮遊手段によって球体を容器の上方に移動させ、容器の上方において球体が浮遊した状態で塗布液を乾燥させる形態とすることができる。尚、乾燥には、水や有機溶媒といった溶媒の蒸発だけでなく、塗布液組成物の化学変化、化学反応等が含まれる。乾燥方法として、遠赤外線を照射する乾燥方法、熱風を吹き付ける乾燥方法を挙げることができる。塗布液に依っては、加圧流体導入部から導入された加圧流体によって塗布液を乾燥させることもできる。
【0020】
上記の各種好ましい形態を含む本発明の塗布方法にあっては、容器内で球体を浮遊させるために、ガス状物質から成る加圧流体が浮遊手段から容器内に導入される構成とすることができる。この場合の浮遊手段として、前述した加圧流体導入部を挙げることができる。そして、この場合、複数箇所から加圧流体が容器内に導入される構成とすることができる。複数箇所の浮遊手段として、前述した加圧流体導入部及び第2加圧流体導入部を挙げることができる。更には、これらの場合、加圧流体の圧力及び流量、並びに、塗布液の供給量に基づき、塗布液の厚さを制御する構成とすることができる。
【0021】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の塗布方法にあっては、容器内で球体を浮遊させるためのガス状物質から成る加圧流体、及び、塗布液が、浮遊手段から容器内に導入される構成とすることができる。そして、この場合、容器内に導入された塗布液は、容器の上部から排出される構成とすることもできる。
【0022】
更には、本発明の塗布方法の以上に説明した好ましい構成において、容器内に導入された加圧流体の主たる流れ(具体的には、球体に向かって、且つ、容器の上方に向かって流れる加圧流体の主たる流れであり、以下の説明においても同様)は、容器の軸線上には無い形態とすることができるし、あるいは又、容器内に導入された加圧流体の主たる流れは、容器の軸線と非平行である形態とすることができる。
【0023】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の塗布方法において、球体は、浮遊した状態において回転させられる形態とすることができるが、これに限定するものではなく、浮遊した状態において回転していない形態とすることもできる。
【0024】
本発明の塗布装置あるいは塗布方法において、球体の直径R1として、例えば、0.5mm乃至30mmを挙げることができる。また、球体を構成する材料として、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネートやポリスチレンといったポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、メラミン系樹脂等の各種プラスチック材料;酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ハフニウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化インジウム、酸化スズ、ITO、酸化亜鉛等の各種酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム等の各種窒化物;各種のガラス材料;SiC等の各種炭化物;水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、マグネシウムシリケート、シリコン(Si)、各種金属、各種合金を挙げることができる。あるいは又、球体を構成する材料として食品を挙げることもできる。
【0025】
容器を構成する材料として、ステンレス鋼(SUS304、SUS316等)、シリコン、石英を挙げることができるし、あるいは又、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド等のフッ素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂;ポリイミド(PI)系樹脂;ポリアミド(PA)系樹脂;ポリスルホン(PSF)系樹脂;ポリエーテルスルホン(PES)系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS)系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系樹脂;ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂;シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂といった各種樹脂を挙げることもできる。
【0026】
加圧流体導入部や第2加圧流体導入部は、周知の加圧流体用のノズルから構成することができる。また、塗布液導入部は、例えば、ディスペンサや注射器、小型ポンプ、マイクロポンプから構成することができるし、あるいは又、塗布液及び加圧流体を噴霧、吐出するノズルから構成することもできる。
【0027】
塗布液を構成する材料として、塗料、インク[銅(Cu)や銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、クロム(Cr)、これらの合金や化合物を含む導電性インクを含む]、ワックス状物質、レジスト材料、二酸化チタン(TiO2)を挙げることができる。これらの材料は、水や有機溶媒といった、塗布液を構成する材料に適した溶媒と共に、塗布液を構成する。塗布液の粘度として、1mPa・s乃至400mPa・sを例示することができる。塗布液の塗布量や供給量は、球体の表面積、要求される塗布膜の厚さ等から決定すればよい。塗布液を乾燥させた後の塗布膜の厚さとして、5×10-6m(5μm)乃至2×10-4m(200μm)を例示することができるし、塗布時の塗布液塗布量として0.004cm3乃至0.5cm3を例示することができる。塗布と乾燥を、所望の回数、繰り返すことで、所望の塗布膜の厚さを得ることもできる。
【0028】
塗料として、アクリル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル・シリコーン系樹脂等の各種塗料用バインダーを水や溶媒に分散、溶解させた樹脂溶液に、二酸化チタン、黒色酸化鉄、ベンガラ、クロムグリーン、カーボンブラック、銅フタロシアニン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレーの無機顔料や有機顔料、及び、分散剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、成膜助剤、防カビ剤等の添加剤を必要量添加し、混合及び分散させたものを挙げることができる。
【実施例1】
【0029】
実施例1は、本発明の塗布装置及び塗布方法(球体表面へのスピンコーティング法)に関する。
【0030】
模式的な端面図を
図1に示すように、実施例1の塗布装置は、
球体10の直径R
1より大きな直径R
2を有し、球体10を格納する円筒形の容器20、
容器20内で球体10を浮遊させるための浮遊手段、及び、
容器20内で浮遊した球体10の表面に塗布液を塗布するための塗布液導入部40、
を備えている。
【0031】
実施例1の塗布装置において、浮遊手段は、容器20内で球体10を浮遊させるために容器20内に加圧流体を導入する加圧流体導入部30から成る。そして、容器20の底部21は閉塞されており、加圧流体導入部30は容器20の底部の中心に取り付けられている。容器20の底部21は半球状の形状を有する。加圧流体導入部30の軸線は容器20の軸線と一致している。塗布液導入部40は容器20の上方に配置されている。塗布液導入部40は容器20の軸線上には位置していない。これによって、後述するように、球体10の表面に塗布液導入部40から球体10の表面に塗布液を滴下したとき、球体10の領域Bに向う移動が一層容易になる。塗布液導入部40はアーム部42の一端に取り付けられており、アーム部42の他端は、アーム部42を回動及び上下動させる駆動装置41に取り付けられている。
【0032】
加圧流体は、ガス状物質、具体的には、空気から成る。そして、加圧流体の圧力及び流量、並びに、塗布液の供給量に基づき、塗布液の厚さが制御される。球体10の表面と容器20の側壁20Aによって形成された隙間の間隔Gを制御することで、塗布液の厚さの制御を行う。ここで、隙間の間隔Gは、例えば、加圧流体の圧力及び流量によって行う。隙間の間隔Gは、
図1には、球体10の赤道面に沿って均一である状態を示しているが、実際には、
図2に示すように、不均一である。隙間の間隔Gは、
0<G<(R
2-R
1)
で表すことができるが、例えば、
0.01mm≦(R
2-R
1)/2≦0.5mm
を満足することが好ましい。ここで、具体的には、R
1を5.0mmとし、R
2を(R
1+0.01mm)乃至(R
1+0.5mm)とした。球体10は、浮遊した状態において回転させられる。球体10の回転数として、1rpm乃至8000rpmを例示することができる。
【0033】
実施例1において、球体10は直径R1=5.0mmのガラス球から成る。塗布液を構成する材料として、アセトン(粘度25mPa・s)を溶媒とするメタリック塗料(粘度50mPa・s)を塗布液(粘度200mPa・s)として用いた。また、容器20をステンレス鋼から作製した。加圧流体導入部30を、周知の加圧流体用のノズルから構成し、塗布液導入部40を、例えば、ディスペンサから構成した。厚さ0.1mmの塗布膜を得るために、塗布液の固形分を30%としたとき、塗布時の塗布量を約0.03cm3とした。
【0034】
実施例1の塗布方法は、球体10の直径より大きな直径を有する円筒形の容器20内で、浮遊手段によって球体10を浮遊させながら球体10の表面に塗布液を塗布する。
【0035】
以下、実施例1の塗布装置の模式的な端面図である
図1、
図2、
図3及び
図4を参照して、実施例1の塗布方法を説明する。尚、これらの図において、容器20の軸線及び加圧流体導入部30の軸線を一点鎖線で示し、球体10の中心を通り、容器20の軸線と平行な球体中心線を二点鎖線で示す。
【0036】
先ず、容器20の底部21に取り付けられた加圧流体導入部30から加圧空気を容器20の内部に導入する。そして、
図1に示すように、塗布液導入部40を容器20の上方に位置させない状態で、例えば、真空吸着装置(図示せず)を用いて球体を容器20の内部に配置する。容器20内で球体10を浮遊させるために、ガス状物質(具体的には、空気)から成る加圧流体を浮遊手段(加圧流体導入部30)から容器20内に導入する。球体10は、円筒形の容器20内で浮遊手段(具体的には、加圧流体導入部30)から導入された加圧流体によって、浮遊状態となる。具体的には、加圧流体導入部30から空気を噴射し、球体10の質量と浮遊力(揚力)のバランスを図示しないマスフローコントローラで制御して球体を浮遊させる。次いで、
図2に示すように、駆動装置41を作動させて、塗布液導入部40を容器20の上方に位置させる。そして、
図3に示すように、塗布液導入部40から球体10の表面に塗布液を滴下する。
【0037】
ところで、初期に加圧流体の吹き付けバランスを崩した状態で加圧流体導入部30から空気を球体10に吹き付けると、
図1の「A」で示す球体10と容器20の側壁20Aの領域Aにおける圧力と、
図1の「B」で示す球体10と容器20の側壁20Aの領域Bにおける圧力とが、等しくなくなる。その結果、球体10は、浮遊した状態において回転を開始し、マグナス効果が発生し、領域Aの圧力が高くなり、領域Bの圧力が低く成る。そして、球体10には力が働き、球体10は領域Bに向かって数十μm移動する(
図2参照)。
【0038】
そして、この状態において、球体10の表面に塗布液導入部40から球体10の表面に塗布液を滴下すると、領域Bには楔効果も働き、圧力が低下しても、球体10の赤道面よりも下方には塗布液は浸入し難く、球体10の表面と容器20の側壁20Aによって形成された隙間に余剰の塗布液の液溜りが生成され(
図3参照)、しかも、塗布液はレベリングされ、余剰の塗布液は押し戻され、塗布膜の膜厚が一定となるように働く。一方、領域Aは高圧吹き出し側であり、球体10の赤道面より下方には塗布液は浸入し難い。そして、塗布液は球体10の上面に万遍無く広がり、球体10の表面に塗布液が展開する(
図4参照)。球体10は回転しながらズレていくため、一定方向の回転ではなく、回転軸が種々の方向に徐々にずれるので(移動するので)、球体10の全表面に塗布液が行き渡る。しかも、球体10は浮遊しているが故に、塗布中及び塗布後にも球体10は容器20の側壁20Aに触れることがない。球体10の表面と容器20の側壁20Aによって形成された隙間の間隔Gを制御することで、塗布液の厚さの制御を行うことができるし、加圧流体の圧力及び流量、並びに、塗布液の供給量に基づき、塗布液の厚さを制御することができる。尚、塗布液の供給が完了したならば、駆動装置41を作動させて、塗布液導入部40を容器20の上方に位置しない位置に移動させる。
【0039】
容器20内で浮遊した球体10の表面に塗布液を塗布した後、容器20内において球体10が浮遊した状態で塗布液を乾燥させる。具体的には、塗布液の塗布完了後、加圧流体導入部30から導入された加圧流体によって、塗布液を乾燥する。このとき、加圧流体を加熱して、熱風乾燥を行ってもよい。また、容器20の上方に乾燥装置(図示せず)を更に備えている形態とすることもできる。乾燥装置として、遠赤外線を照射する乾燥装置、熱風を吹き付ける乾燥装置を挙げることができ、乾燥装置を用いた遠赤外線を照射する乾燥方法や熱風を吹き付ける乾燥方法によって、球体10を乾燥させてもよい。あるいは又、これらの両方を実行してもよい。
【0040】
あるいは又、容器20内で浮遊した球体10の表面に塗布液を塗布した後、加圧流体の流量や圧力を増加させることで浮遊手段によって球体10を容器20の上方に移動させ、容器20の上方において球体が浮遊した状態で塗布液を乾燥させることもできる。この場合には、容器20の上方に乾燥装置(図示せず)を配置すればよい。乾燥装置として、遠赤外線を照射する乾燥装置、熱風を吹き付ける乾燥装置を挙げることができ、乾燥装置を用いた遠赤外線を照射する乾燥方法や熱風を吹き付ける乾燥方法によって、球体10を乾燥させればよい。
【0041】
以上のとおり、本発明の塗布装置あるいは塗布方法にあっては、容器内で浮遊した球体の表面に塗布液を塗布するので、浮遊した球体は容器内での動きに制約を受けるが、浮遊した球体は容器の側壁に接触することが無いので、球体の表面において均一な塗布膜を容易に得ることができる。また、塗布液を乾燥するための乾燥部を特別に設ける必要が無いので、塗布装置の構造、構成の簡素化を図ることができる。
【0042】
加圧流体の吹き付けバランスを崩した状態で加圧流体導入部30から空気を球体10に吹き付けるために、
図5に示すように、加圧流体導入部30の軸線は、容器20の軸線上には無い状態で、即ち、加圧流体導入部30は、容器20の底部21に、但し、底部21の中心以外の所に取り付けられている形態とすることができる。加圧流体導入部30の軸線は容器20の軸線と平行である。そして、容器20内に導入された加圧流体の主たる流れ(具体的には、球体10に向かって、且つ、容器20の上方に向かって流れる加圧流体の主たる流れ)は、容器20の軸線上には無い。あるいは又、
図6に示すように、加圧流体導入部30の軸線は、容器20の軸線と非平行である形態とすることもできる。加圧流体導入部30は、容器20の底部21の中心に取り付けられていてもよいし、底部21の中心以外の所に取り付けられていてもよい。そして、容器20内に導入された加圧流体の主たる流れは、容器20の軸線と非平行である。
【実施例2】
【0043】
実施例2の塗布装置は、実施例1の塗布装置の変形である。模式的な端面図を
図7に示すように、浮遊手段は、容器20内で球体10を浮遊させるために容器20内に加圧流体を導入する第2加圧流体導入部31を更に備えている。そして、複数箇所から加圧流体が容器20内に導入される。容器20の底部21は閉塞されており、第2加圧流体導入部31は容器20の底部21に取り付けられている。第2加圧流体導入部31の数は、1以上であればよい。具体的には、加圧流体導入部30は容器20の底部21の中心に取り付けられており、第2加圧流体導入部31は容器20の底部21の中心から離れた所に取り付けられている。第2加圧流体導入部31の数を3とし、各第2加圧流体導入部31を、容器20の軸線を中心軸とした3回対称(120度対称)に配置した。但し、第2加圧流体導入部31の数、各第2加圧流体導入部31の配置状態は、これに限定するものではない。尚、
図7には、3つの第2加圧流体導入部31の内の1つを図示している。このように、第2加圧流体導入部31を配置することで、加圧流体の圧力、流量及び流れの方向の高精度、高精密な制御を一層容易に行うことができる。
【0044】
以上の点を除き、実施例2の塗布装置の構成、構造は、実施例1の塗布装置あるいはその変形の構成、構造と同様とすることができるし、実施例2の塗布装置を用いた塗布方法は、実施例1の塗布方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0045】
実施例3は、実施例1~実施例2の塗布装置の変形である。実施例3の塗布装置にあっても、浮遊手段は、容器20内で球体10を浮遊させるために容器20内に加圧流体を導入する加圧流体導入部から成る。そして、模式的な端面図を
図8に示すように、容器20の底部は閉塞されているが、実施例1の塗布装置と異なり、塗布液導入部を兼ねた加圧流体導入部32が容器20の底部に取り付けられており、ガス状物質から成る加圧流体及び塗布液は加圧流体導入部32から容器20内に導入される。場合によっては、容器20内に導入された塗布液は、容器20の上部に設けられた塗布液排出部から排出される。また、実施例3の塗布方法にあっては、容器20内で球体10を浮遊させるためのガス状物質から成る加圧流体、及び、塗布液が、浮遊手段から容器20内に導入される。場合によっては、容器20内に導入された塗布液は、容器20の上部から排出される。
【0046】
尚、実施例3においても、回転する球体10の下面に吹き付けられた塗布液は、球体10の回転に伴い、領域A側から回転する球体10の上面に展開されるが、楔効果が働く領域Bにおいて、球体10の赤道面よりも下方には塗布液は浸入し難い。そして、球体10の表面と容器20の側壁20Aによって形成された隙間に余剰の塗布液の液溜りが生成され(
図3参照)、しかも、塗布液はレベリングされ、余剰の塗布液は押し戻され、塗布膜の膜厚が一定となるように働く。そして、塗布液は球体10の表面に万遍無く広がり、球体10の表面に塗布液が展開する(
図4参照)。球体10は回転しながらズレていくため、一定方向の回転ではなく、回転軸が種々の方向に徐々にずれるので(移動するので)、球体10の全表面に塗布液が行き渡る。しかも、球体10は浮遊しているが故に、塗布中及び塗布後にも球体10は容器20の側壁20Aに触れることがない。球体10の表面と容器20の側壁20Aによって形成された隙間の間隔Gを制御することで、塗布液の厚さの制御を行うことができるし、加圧流体の圧力及び流量、並びに、塗布液の供給量に基づき、塗布液の厚さを制御することができる。
【0047】
場合によっては、模式的な端面図を
図9に示すように、容器20の上端部に加圧流体排出口23を有する蓋22を取り付けてもよい。蓋22を、図示しない開閉装置によって開閉すればよい。蓋22と球体10の上面とによって形成される空間を塗布液で満たしてもよい。容器20内に導入された塗布液は、加圧流体排出口23から排出することができるが、この排出された塗布液は、廃棄してもよいし、回収してもよい。
【0048】
以上の点を除き、実施例3の塗布装置の構成、構造は、実施例1~実施例2の塗布装置あるいはその変形の構成、構造と同様とすることができるし、実施例3の塗布装置を用いた塗布方法は、実施例1の塗布方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0049】
尚、模式的な端面図を
図9に示した蓋22を配する例では、加圧流体導入部30や第2加圧流体導入部31を容器20の底部21に取り付け、蓋22に塗布液供給口及び加圧流体排出口を設けてもよい。そして、蓋22と球体10の上面とによって形成される空間を塗布液で満たしてもよい。容器20内に導入された塗布液は、加圧流体排出口から排出することができるが、この排出された塗布液は、廃棄してもよいし、回収してもよい。場合によっては、容器20の底部21に塗布液排出口を設けてもよい。
【0050】
ところで、塗布液導入部を兼ねた加圧流体導入部32として、如何なる装置を用いることもできるが、以下、その一例を実施例4として説明する。尚、以下の説明において、塗布液導入部を兼ねた加圧流体導入部32を、『塗布液・加圧流体導入ノズル』と呼ぶ。
【実施例4】
【0051】
実施例4は、本発明の塗布装置に組み込まれる塗布液・加圧流体導入ノズル(加圧流体導入部32)に関する。実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズルの先端部を適切な方法で、実施例1~実施例3において説明した塗布装置における容器20の底部21に取り付ければよい。
【0052】
図12の矢印A-Aに沿った実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズルの模式的な端面図(任意の方向に延びる第2仮想平面で切断したときの塗布液・加圧流体導入ノズルの模式的な断面図)を
図10に示し、
図10の矢印B-Bに沿った模式的な端面図を
図12に示す。また、
図10に示すと同様の実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズルの模式的な端面図を
図13に示し、
図10に示すと同様の実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズルの模式的な端面図において、加圧流体や塗布液の流れを模式的に
図14に示す。更には、実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズルを含む塗布液供給システムの概念図を
図15に示す。尚、以下の説明において、ノズル部材の軸線をX軸、X軸に垂直であって、任意の方向に延びる軸をY軸、X軸及びY軸に垂直な軸線をZ軸とする。
【0053】
図10に示すように、実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズル120は、ケーシング部材130、及び、ケーシング部材130内に格納されたノズル部材140から成り、ノズル部材140の後端部から供給された塗布液(
図14において、白抜きの矢印で示す)をノズル部材140の先端部から吐出し、塗布膜を得る塗布液・加圧流体導入ノズルである。
【0054】
そして、ノズル部材140は、ノズル部材140の先端部からノズル部材140の後端部に向かって、第1領域141、第2領域142、第3領域143及び第4領域144から構成されており、
ノズル部材140は、
ノズル部材140(具体的には、ノズル部材140の中心部)をノズル部材140の軸線AXに沿って貫通する塗布液流路150、
塗布液流路150の後端部に設けられた塗布液供給口151、及び、
塗布液流路150の先端部に設けられた塗布液吐出口152、
を備えている。
【0055】
また、第1領域141の外面141’は円筒形状を有し、第1領域141と対向するケーシング部材130の内面131と、第1領域141の外面141’との間には、第1隙間部161が設けられており、
第3領域143と対向するケーシング部材130の内面133と、第3領域143の外面143’との間には、空間部145が設けられており、
第3領域143と対向するケーシング部材130には、空間部145に連通した加圧流体供給口135が設けられており、
第4領域144は、空間部145を閉塞している。
【0056】
更には、ノズル部材140の軸線AXに垂直な第1仮想平面と平行な仮想平面で切断したときの第3領域143の外面143’の断面の少なくとも一部は、第2領域142に向かって縮小しており、
第2領域142には、ノズル部材140の軸線AXを含む第2仮想平面に対して平行な仮想平面(便宜上、『第3仮想平面』と呼ぶ)内に含まれたスリット部163が形成されており(
図12参照)、
加圧流体供給口135から空間部145に導入された加圧流体は、第3領域143の外面143’と衝突して旋回流となり、旋回流となった加圧流体は、スリット部163から第1隙間部161を経由して外部に噴出(噴射、吐出)される。
【0057】
尚、より具体的には、第2領域142は第1領域側に切頭円錐形状の外面142’を有し、第2領域142と対向するケーシング部材130の内面132と、第2領域142の切頭円錐形状の外面142’との間には、第2隙間部162が設けられている。また、より具体的には、加圧流体供給口135から空間部145に導入された加圧流体は、第3領域143の外面143’と衝突して旋回流(
図14において、黒い矢印で示す)となり、旋回流となった加圧流体は、第2隙間部162及びスリット部163から第1隙間部161を経由して外部に噴出(噴射、吐出)される。尚、
図14において、外部に噴出(噴射、吐出)された加圧流体(便宜上、『噴出加圧流体』と呼ぶ)を矢印及び黒い矢印で示し、塗布液吐出口152から吐出された塗布液を白丸で示す。
【0058】
円筒形状を有する第1領域141の外面141’と、切頭円錐形状を有する第2領域142の外面142’とは、繋がっている。第3領域143の外面143’の断面の少なくとも一部は、第2領域142に繋がる部分である。即ち、第3領域143の外面143’の断面の縮小した部分は、第2領域に繋がる部分から第4領域に向かって延びている。スリット部163は、空間部145と連通し、且つ、第1隙間部161と連通している。スリット部163は、第2隙間部162と連通していてもよいし、第2隙間部162と連通していなくともよい。スリット部163は第3仮想平面内に含まれるが、第3仮想平面は第2仮想平面と厳密に平行である必要は無い。第1隙間部161は、第1領域141と対向するケーシング部材130の内面131と第1領域141の外面141’との間の全周に設けられていることが望ましいが、これらの間の一部分に設けられていてもよい。第2隙間部162は、第2領域142と対向するケーシング部材130の内面132と第2領域142の外面142’との間の全周に設けられていることが望ましいが、これらの間の一部分に設けられていてもよい。加圧流体供給口135は、第2仮想平面内に位置する。切頭円錐形状の外面142’のノズル部材後端部側の直径をR
TC-2、第2領域に繋がった第3領域143の外面143’の直径をR
30としたとき(
図13参照)、R
TC-2とR
30は、限定するものではないが、0.3≦R
30/R
TC-2≦0.7を満足することが好ましい。
【0059】
また、実施例4の塗布液供給システム110は、
図15に示すように、
上述した実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズル120、
ノズル部材140を構成する塗布液供給口151に塗布液を供給する塗布液供給装置170(塗布液供給系)、及び、
加圧流体供給口135に加圧流体を供給する加圧流体供給装置180(加圧流体供給系)、
を備えている。
【0060】
実施例4の塗布液供給システム110において、
図15に示すように、塗布液供給装置(塗布液供給系)170は、ポンプ171、塗布液供給口151とポンプ171とを結ぶ配管172、及び、配管172の途中に配設された2つのオリフィス173,174を備えている。更には、2つのオリフィス173,174の間の配管172には排出管175が接続されており、排出管175の途中にはトラップ部176が設けられており、排出管175は、圧力調整手段177を介して系外に繋がっている。
【0061】
ポンプ171は、如何なる形式のポンプからも構成することができ、例えば、サーボ機構付きのシリンジポンプを例示することができる。また、トラップ部176は、塗布液の流量調整のために設けられているし、塗布液に生じる圧力変動、圧力の脈動を吸収するために設けられており、コイル状に巻かれた細管(調圧コイル)から成る。2つのオリフィス173,174を設けることで、塗布液・加圧流体導入ノズル120を移動させたときに塗布液・加圧流体導入ノズル120内の塗布液に生じた圧力変動、圧力の脈動が塗布液供給系に及ぼす影響を小さくすることができる。圧力調整手段177は、具体的には、塗布液の圧力調整絞り弁及び排出弁から成る。圧力調整手段177の上流には圧力計178が配置されている。
【0062】
加圧流体供給装置(加圧流体供給系)180は、加圧流体源、加圧流体流量制御装置及び加圧流体圧力制御装置を備えており、具体的には、例えば、加圧流体源181、精密レギュレータ182、流量安定アキュムレータ183、マスフローコントローラ184、加圧流体流量制御装置185から構成されており、これらは配管187で結ばれている。精密レギュレータ182の下流には圧力計186が配置されている。加圧流体は、空気又は窒素ガスから成る。配管187は、加圧流体供給口135に繋がっている。
【0063】
実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズルにおいて、第1仮想平面と平行な仮想平面(YZ仮想平面)で切断したときの第3領域143の断面形状は円形であり、第2仮想平面(XY仮想平面)で切断したときの第3領域143の外面の断面形状はアーチ状(クラウン状)である。そして、(第3領域143の断面形状の最大半径)/(第3領域143の長さ)の値は0.01乃至0.5であることが好ましく、具体的には、0.2とした。加圧流体供給口135は、第1仮想平面と平行な仮想平面で切断したときの第3領域143の断面形状が最大である部分(便宜上、『最大半径部分143”』と呼ぶ場合がある)よりもノズル部材140の後端部側の部分に対応したケーシング部材130に設けられている。具体的には、加圧流体供給口135の中心は、最大半径部分143”よりも、1mm乃至5mm、ノズル部材140の後端部側に位置し、より具体的には、0.5mmノズル部材140の後端部側に位置する。加圧流体供給口135の数は、1以上であればよく、複数であってもよい。
【0064】
加圧流体供給口135の数が複数(M)の場合、第1仮想平面に加圧流体供給口135を正射影したときの正射影像は、対称軸(回転軸)をノズル部材140の軸線としたM回の回転対称に配置されていることが好ましく、これによって、空間部145に導入された加圧流体を一層容易に旋回流とすることができる。第2仮想平面で切断したときの第3領域143の外面の断面形状をアーチ状(クラウン状)とすることで、加圧流体供給口135から空間部145に導入された加圧流体を容易に旋回流とすることができるし、噴出加圧流体の旋回速度の増加を図ることができる。場合によっては、第2仮想平面で切断したときの第3領域143の外面の断面形状を、直線状(テーパー状)としてもよい。加圧流体供給口135の軸線は、ノズル部材140の軸線と交差していてもよいし、交差していなくともよい。後者の場合、空間部145に導入された加圧流体を一層容易に旋回流とすることができる。また、ノズル部材140の軸線と加圧流体供給口135の入り口中心部とを通る仮想平面への加圧流体供給口135の軸線の正射影像と、この仮想平面へのノズル部材140の軸線の正射影像は90度で交わっていてもよいし、90度以外の角度で交わっていてもよい。後者の場合、ノズル部材140の先端部へ向かうノズル部材140の軸線の方向を正方向としたとき、この仮想平面への加圧流体供給口135の軸線の正射影像と、この仮想平面へのノズル部材140の軸線の正射影像とは、鋭角で交わっていることが好ましい。
【0065】
更には、第1領域141と対向するケーシング部材130の先端面は、第1領域141の先端面よりもノズル部材140の後端部側に位置することが好ましく、この場合、第1領域141と対向するケーシング部材130の先端面から第1領域141の先端面までの距離L1として、限定するものではないが、0.1mm乃至1mmを挙げることができる。
【0066】
更には、スリット部163の数(N)は、使用する塗布液に依存して、適宜、決定すればよく、例えば、1乃至8とすることができる。スリット部163の幅として、限定するものではないが、0.05mm乃至0.5mmを例示することができる。N≧2の場合、第1仮想平面にスリット部163を正射影したときの正射影像は、対称軸(回転軸)をノズル部材140の軸線としたN回の回転対称に配置されていることが好ましい。第2隙間部162が設けられている場合、スリット部163は、第2隙間部162に連通していることが望ましいが、連通していなくともよい。複数のスリット部163を設ける場合、スリット部163の幅(あるいはスリット部163の断面積)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0067】
ケーシング部材130及びノズル部材140は、例えば、ステンレス鋼(SUS304、SUS316等)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、又は、全芳香族ポリイミド樹脂(具体的には、例えば、ベスペル(登録商標))から作製されている。
【0068】
第1領域141と対向するケーシング部材130の先端面130Aは、第1領域141の先端面141Aよりもノズル部材140の後端部側に位置する。ここで、第1領域141と対向するケーシング部材130の先端面130Aから第1領域141の先端面141Aまでの距離L
1を、具体的には、以下の表1のとおりとした。実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズルにおいて、スリット部163の数(N)を4とし、スリット部163の幅W
Slit(
図12参照)を、具体的には、以下の表1のとおりとした。第1仮想平面にスリット部163を正射影したときの正射影像は、対称軸をノズル部材140の軸線AXとした4回の回転対称に配置されている。ケーシング部材130及びノズル部材140を、全芳香族ポリイミド樹脂(具体的には、ベスペル)から、切削加工によって作製した。また、
(A)第1隙間部161の幅W
1
(B)第2隙間部162の幅W
2
(C)第3領域143の断面形状の最大半径r
max
(D)第3領域143と対向するケーシング部材130の内面の半径r
30
(E)塗布液流路150の後端部に設けられた塗布液供給口151の直径R
in
(F)塗布液流路150の先端部に設けられた塗布液吐出口152の直径R
out
(G)加圧流体供給口135の直径R
gas
(H)切頭円錐形状の外面142’のノズル部材先端部側の直径R
TC-1
(I)切頭円錐形状の外面142’のノズル部材後端部側の直径R
TC-2
(J)第2領域に繋がった第3領域143の外面143’の直径をR
30
(K)ノズル部材140の軸線AXを含む第2仮想平面と、スリット部163が設けられた仮想平面(第3仮想平面)との間の距離D
Slit(
図12参照)、
を以下の表1のとおりとした。以上に説明したL
1、 W
1 、W
2 、r
max 、r
30、R
in、R
out 、R
gas 、R
TC-1、R
TC-2及びR
30に関しては、
図13を参照のこと。
【0069】
〈表1〉
L1 :0.5mm
WSlit:0.3mm
DSlit:0.5mm
W1 :0.1mm
W2 :0.1mm
rmax :252mm
r30 :4.2mm
Rin :1.0mm
Rout :2.0mm
Rgas :2.4mm
RTC-1:3.2mm
RTC-2:7.0mm
R30 :4.0mm
【0070】
実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズルにあっては、スリット部が形成されているので、外部に噴出(噴射、吐出)される加圧流体(噴出加圧流体)は旋回流となり、しかも、噴出加圧流体によって、塗布液吐出口の近傍の空間は減圧状態あるいは真空状態となる。尚、噴出加圧流体を旋回流にすることで、より効率良く、塗布液吐出口の近傍の空間を減圧状態あるいは真空状態にすることができる。そして、以上の結果として、塗布液吐出口から吐出された塗布液は、旋回流となった噴出加圧流体と混合される。塗布液及び加圧流体の流量及び圧力を制御することで、塗布液吐出口から吐出される塗布液は均一・均質な微粒子状となり得るが故に、ミクロン・オーダーでの塗布液の厚さの制御を容易に行うことができる。
【0071】
しかも、塗布液の利用効率が高い。例えば、従来のスプレー装置を使用した場合と比較して塗料の使用量を約1/2とすることができた。例えば、塗料において、顔料や添加物の粒径等に制限、制約は余り無いし、使用する溶剤の制限も余り無い。幅広い厚さ範囲(例えば、5μm乃至200μm)の塗布膜の形成が可能である。
【0072】
実施例4の塗布液・加圧流体導入ノズルにあっては、スリット部が形成されているので、外部に噴出(噴射、吐出)される噴出加圧流体は旋回流となり、しかも、噴出加圧流体によって、塗布液吐出口の近傍の空間は減圧状態あるいは真空状態となる。その結果、塗布液吐出口から吐出された塗布液は、旋回流となった噴出加圧流体と混合される。
【0073】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にあっては、球体を回転している状態で塗布液を塗布したが、これに限定するものではなく、浮遊した状態ではあるが、回転していない状態で塗布液を塗布してもよい。複数の塗布装置を配設して、所謂多数個取りの方式を採用してもよい。容器の底部を半球状にしたが、平坦な形状としてもよい。加圧流体導入部や第2加圧流体導入部を容器の底部側に適切な方法で取り付けることができるのならば、容器の底部を閉塞することは必須ではない。
【0074】
実施例4において説明した塗布液・加圧流体導入ノズル、塗布液供給システムの構成、構造も例示であり、適宜、変更することができる。
図13の矢印A-Aに沿った塗布液・加圧流体導入ノズルの変形例の模式的な端面図を
図11に示すように、ノズル部材140の第3領域143とノズル部材140の第2領域142の境界近傍のノズル部材140の第3領域143の部分、及び/又は、ノズル部材140の第3領域143とノズル部材140の第4領域144の境界近傍のノズル部材140の第3領域143の部分に、旋回流の流れの制御のための凹部143aを形成してもよい。
【0075】
尚、本発明は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《塗布装置》
球体の直径より大きな直径を有し、球体を格納する円筒形の容器、
容器内で球体を浮遊させるための浮遊手段、及び、
容器内で浮遊した球体の表面に塗布液を塗布するための塗布液導入部、
を備えている塗布装置。
[A02]浮遊手段は、容器内で球体を浮遊させるために容器内に加圧流体を導入する加圧流体導入部から成る[A01]に記載の塗布装置。
[A03]容器の底部は閉塞されており、
加圧流体導入部は、容器の底部に取り付けられており、
塗布液導入部は、容器の上方に配置されている[A02]に記載の塗布装置。
[A04]容器の上方に乾燥装置を更に備えている[A03]に記載の塗布装置。
[A05]浮遊手段は、容器内で球体を浮遊させるために容器内に加圧流体を導入する第2加圧流体導入部を更に備えている[A02]乃至[A04]のいずれか1項に記載の塗布装置。
[A06]容器の底部は閉塞されており、
第2加圧流体導入部は、容器の底部に取り付けられている[A05]に記載の塗布装置。
[A07]加圧流体は、ガス状物質から成る[A02]乃至[A06]のいずれか1項に記載の塗布装置。
[A08]加圧流体の圧力及び流量、並びに、塗布液の供給量に基づき、塗布液の厚さを制御する[A07]に記載の塗布装置。
[A09]容器の底部は閉塞されており、
塗布液導入部を兼ねた加圧流体導入部は、容器の底部に取り付けられており、
ガス状物質から成る加圧流体及び塗布液は、加圧流体導入部から容器内に導入される[A02]に記載の塗布装置。
[A10]加圧流体導入部の軸線は、容器の軸線上には無い[A02]乃至[A09]のいずれか1項に記載の塗布装置。
[A11]加圧流体導入部の軸線は、容器の軸線と非平行である[A02]乃至[A09]のいずれか1項に記載の塗布装置。
[A12]球体は、浮遊した状態において回転させられる[A01]乃至[A11]のいずれか1項に記載の塗布装置。
[B01]《塗布方法》
球体の直径より大きな直径を有する円筒形の容器内で、浮遊手段によって球体を浮遊させながら球体の表面に塗布液を塗布する塗布方法。
[B02]球体の表面と容器の側壁によって形成された隙間に塗布液の液溜りが生成される[B01]に記載の塗布方法。
[B03]容器内で浮遊した球体の表面に塗布液を塗布した後、容器内において球体が浮遊した状態で塗布液を乾燥させる[B01]又は[B02]に記載の塗布方法。
[B04]容器内で浮遊した球体の表面に塗布液を塗布した後、浮遊手段によって球体を容器の上方に移動させ、容器の上方において球体が浮遊した状態で塗布液を乾燥させる[B01]又は[B02]に記載の塗布方法。
[B05]容器内で球体を浮遊させるために、ガス状物質から成る加圧流体が浮遊手段から容器内に導入される[B01]乃至[B04]のいずれか1項に記載の塗布方法。
[B06]複数箇所から加圧流体が容器内に導入される[B05]に記載の塗布方法。
[B07]加圧流体の圧力及び流量、並びに、塗布液の供給量に基づき、塗布液の厚さを制御する[B05]又は[B06]に記載の塗布方法。
[B08]容器内で球体を浮遊させるためのガス状物質から成る加圧流体、及び、塗布液が、浮遊手段から容器内に導入される[B01]乃至[B04]のいずれか1項に記載の塗布方法。
[B09]容器内に導入された加圧流体の主たる流れは、容器の軸線上には無い[B05]乃至[B08]のいずれか1項に記載の塗布方法。
[B10]容器内に導入された加圧流体の主たる流れは、容器の軸線と非平行である[B05]乃至[B08]のいずれか1項に記載の塗布方法。
[B11]球体は、浮遊した状態において回転させられる[B01]乃至[B10]のいずれか1項に記載の塗布方法。
[C01]《塗布液・加圧流体導入ノズル》
ケーシング部材、及び、ケーシング部材内に格納されたノズル部材から成り、ノズル部材の後端部から供給された塗布液をノズル部材の先端部から吐出し、塗布膜を得る塗布液・加圧流体導入ノズルであって、
ノズル部材は、ノズル部材の先端部からノズル部材の後端部に向かって、第1領域、第2領域、第3領域及び第4領域から構成されており、
ノズル部材は、
ノズル部材をノズル部材の軸線に沿って貫通する塗布液流路、
塗布液流路の後端部に設けられた塗布液供給口、及び、
塗布液流路の先端部に設けられた塗布液吐出口、
を備えており、
第1領域の外面は円筒形状を有し、第1領域と対向するケーシング部材の内面と、第1領域の外面との間には、第1隙間部が設けられており、
第3領域と対向するケーシング部材の内面と、第3領域の外面との間には、空間部が設けられており、
第3領域と対向するケーシング部材には、空間部に連通した加圧流体供給口が設けられており、
第4領域は、空間部を閉塞しており、
ノズル部材の軸線に垂直な第1仮想平面と平行な仮想平面で切断したときの第3領域の外面の断面の少なくとも一部は、第2領域に向かって縮小しており、
第2領域には、ノズル部材の軸線を含む第2仮想平面に対して平行な仮想平面内に含まれたスリット部が形成されており、
加圧流体供給口から空間部に導入された加圧流体は、第3領域の外面と衝突して旋回流となり、旋回流となった加圧流体は、スリット部から第1隙間部を経由して外部に噴出される塗布液・加圧流体導入ノズル。
[C02]第2領域は第1領域側に切頭円錐形状の外面を有し、第2領域と対向するケーシング部材の内面と、第2領域の切頭円錐形状の外面との間には、第2隙間部が設けられており、
加圧流体供給口から空間部に導入された加圧流体は、第3領域の外面と衝突して旋回流となり、旋回流となった加圧流体は、第2隙間部及びスリット部から第1隙間部を経由して外部に噴出される[C01]に記載の塗布液・加圧流体導入ノズル。
[C03]第1仮想平面と平行な仮想平面で切断したときの第3領域の断面形状は円形であり、
第2仮想平面で切断したときの第3領域の外面の断面形状はアーチ状である[C01]又は[C02]に記載の塗布液・加圧流体導入ノズル。
[C04](第3領域の断面形状の最大半径)/(第3領域の長さ)の値は0.01乃至0.1である[C03]に記載の塗布液・加圧流体導入ノズル。
[C05]加圧流体供給口は、第1仮想平面と平行な仮想平面で切断したときの第3領域の断面形状が最大である部分よりもノズル部材の後端部側の部分に対応したケーシング部材に設けられている[C03]又は[C04]に記載の塗布液・加圧流体導入ノズル。
[C06]加圧流体供給口の中心は、第1仮想平面で切断したときの第3領域の断面形状が最大である部分よりも、1mm乃至5mm、ノズル部材の後端部側に位置する[C05]に記載の塗布液・加圧流体導入ノズル。
[C07]第1領域と対向するケーシング部材の先端面は、第1領域の先端面よりもノズル部材の後端部側に位置する[C01]乃至[C06]のいずれか1項に記載の塗布液・加圧流体導入ノズル。
[C08]スリット部の数は1乃至8である[C01]乃至[C07]のいずれか1項に記載の塗布液・加圧流体導入ノズル。
[C09]ケーシング部材及びノズル部材は、ステンレス鋼、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、又は、全芳香族ポリイミド樹脂から作製されている[C01]乃至[C08]のいずれか1項に記載の塗布液・加圧流体導入ノズル。
[C10]加圧流体は、空気又は窒素ガスから成る[C01]乃至[C09]のいずれか1項に記載の塗布液・加圧流体導入ノズル。
[D01]《塗布液供給システム》
[C01]乃至[C10]のいずれか1項に記載の塗布液・加圧流体導入ノズル、
ノズル部材を構成する塗布液供給口に塗布液を供給する塗布液供給装置、及び、
加圧流体供給口に加圧流体を供給する加圧流体供給装置、
を備えている塗布液供給システム。
[D02]塗布液供給装置は、ポンプ、塗布液供給口とポンプとを結ぶ配管、及び、配管の途中に配設された2つのオリフィスを備えている[D01]に記載の塗布液供給システム。
[D03]2つのオリフィスの間の配管には、排出管が接続されており、
排出管の途中にはトラップ部が設けられており、
排出管は、圧力調整手段を介して系外に繋がっている[D02]に記載の塗布液供給システム。
[D04]加圧流体供給装置は、加圧流体源、加圧流体流量制御装置及び加圧流体圧力制御装置を備えている[D01]乃至[D03]のいずれか1項に記載の塗布液供給システム。
【符号の説明】
【0076】
10・・・球体、20・・・容器、20A・・・容器の側壁、21・・・容器の底部、22・・・蓋、23・・・加圧流体排出口、30・・・加圧流体導入部、31・・・第2加圧流体導入部、32・・・塗布液導入部を兼ねた加圧流体導入部、40・・・塗布液導入部、41・・・駆動装置、42・・・アーム部、110・・・塗布液供給システム、120・・・塗布液・加圧流体導入ノズル、130・・・ケーシング部材、130A・・・ケーシング部材の先端面、131・・・第1領域と対向するケーシング部材の内面、132・・・第2領域と対向するケーシング部材の内面、133・・・第3領域と対向するケーシング部材の内面、135・・・加圧流体供給口、140・・・ノズル部材、141・・・ノズル部材の第1領域、141’・・・第1領域の外面、141A・・・第1領域の先端面、142・・・ノズル部材の第2領域、142’・・・切頭円錐形状の外面、143・・・ノズル部材の第3領域、143’・・・第3領域の外面、143”・・・最大半径部分、143a・・・凹部、144・・・ノズル部材の第4領域、145・・・空間部、150・・・塗布液流路、151・・・塗布液供給口、152・・・塗布液吐出口、161・・・第1隙間部、162・・・第2隙間部、163・・・スリット部、170・・・塗布液供給装置、171・・・ポンプ、172・・・配管、173,174・・・オリフィス、175・・・排出管、176・・・トラップ部、177・・・圧力調整手段、178・・・圧力計、180・・・加圧流体供給装置、181・・・加圧流体源、182・・・精密レギュレータ、183・・・流量安定アキュムレータ、184・・・マスフローコントローラ、185・・・加圧流体流量制御装置、186・・・圧力計、187・・・配管、AX・・・ノズル部材の軸線