IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<図1>
  • -伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置 図1
  • -伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置 図2
  • -伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置 図3
  • -伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置 図4
  • -伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置 図5
  • -伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置 図6
  • -伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 9/00 20060101AFI20220330BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20220330BHJP
   B05B 5/14 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B21C9/00 M
B05B5/025 B
B05B5/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017248978
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019111574
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】柳田 建三
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 晃久
(72)【発明者】
【氏名】前田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 典明
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-275922(JP,A)
【文献】特開2008-023503(JP,A)
【文献】特開2011-156488(JP,A)
【文献】特開平11-005050(JP,A)
【文献】特開2010-167401(JP,A)
【文献】特開平11-128782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 1/00-19/00,
B05B 5/00-5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸線加工装置の上流側に配置され、走行する伸線加工線材の入口開口と出口開口を備える塗布チャンバーに、粉末潤滑剤を静電塗布する静電塗装ガンを設けた、伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置において、前記静電塗装ガンのガン先のノズル部を前記塗布チャンバー内に挿入し、前記静電塗装ガンのガン本体を前記塗布チャンバーの外部に設置し、前記塗布チャンバーが、走行する伸線加工線材の周囲を囲う円筒形のチャンバー本体と、この円筒形のチャンバー本体の入口側に設けられた入口壁と、チャンバー本体の出口側に設けられた出口壁とを有し、入口壁に、走行する伸線加工線材の入口開口を設け、出口壁に、走行する伸線加工線材の出口開口を設け、前記塗布チャンバーに設けられた伸線加工線材の入口開口と出口開口に、前記塗布チャンバー内からの粉末潤滑剤の漏れ出しを防止する漏れ出し防止部が設けられ、前記漏れ出し防止部が、円筒形のチャンバー本体を上下から挟んで、入口壁の入口開口と出口壁の出口開口を調整する上下2枚の円弧状の開口調整板からなることを特徴とする伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置。
【請求項2】
前記伸線加工装置とその上流部に配置した粉末潤滑剤塗布装置の間に、非接触式の膜厚計測手段あるいは粉末潤滑剤付着状態の光学的検出手段が配置されている請求項に記載の伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属線材をダイスによって伸線加工する際に、伸線加工線材の表面に粉末潤滑剤を塗布する粉末潤滑剤塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、伸線加工線材の表面に、粉末潤滑剤を均一に塗布することができる粉末潤滑剤塗布装置として、粉末潤滑剤を静電塗装ガンを使用して塗布するようにしたものがある(特許文献1)。
【0003】
この従来の粉末潤滑剤塗布装置11は、図7に示すように、伸線加工装置16の上流側に配置され、塗布チャンバー12内に収容された静電塗装ガン13によって走行する伸線加工線材Bに粉末潤滑剤Aを吹き付け、静電気力によって伸線加工線材Bの表面に粉末潤滑剤Aを付着させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-275922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の粉末潤滑剤塗布装置11においては、塗布チャンバー12内に、粉末潤滑剤Aを静電塗布する静電塗装ガン13全体を設置しているので、塗布チャンバー12が大型になる。
【0006】
塗布チャンバー12が大型になると、保守時の清掃作業に多大な労力と時間を要すると共に、塗布チャンバー12に設置する集塵装置も大型にしなければならず、駆動電力もそれだけ多くなる。
【0007】
また、従来の粉末潤滑剤塗布装置11は、大きな設置スペースが必要となるため、特に、複数段、例えば、6段の伸線加工を行うラインでは、設置スペースが広大になって、設備コストが巨額化するという問題があった。
【0008】
さらに、従来の大型の塗布チャンバー12では、走行する伸線加工線材Bが出入りする開口部14、15からの粉末潤滑剤Aの漏れ出しも多く、作業環境を汚染するという問題もあった。
【0009】
そこで、この発明は、塗布チャンバーを小型化すると共に、塗布チャンバーの開口部からの粉末潤滑剤の漏れ出しを少なくしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、この発明は、伸線加工装置の上流側に配置され、走行する伸線加工線材の入口開口と出口開口を備える塗布チャンバーに、粉末潤滑剤を静電塗布する静電塗装ガンを設けた、伸線加工線材への粉末潤滑剤塗布装置において、前記静電塗装ガンのガン先のノズル部を前記塗布チャンバー内に挿入し、前記静電塗装ガンのガン本体を前記塗布チャンバーの外部に設置したことを特徴とする。
【0011】
前記塗布チャンバーは、走行する伸線加工線材の周囲を囲う円筒形のチャンバー本体と、この円筒形のチャンバー本体の入口側に設けられた入口壁と、チャンバー本体の出口側に設けられた出口壁とを有し、入口壁に、走行する伸線加工線材の入口開口を設け、出口壁に、走行する伸線加工線材の出口開口を設けた構成とすることができる。
【0012】
前記塗布チャンバーに設けられた伸線加工線材の入口開口と出口開口には、前記塗布チャンバー内からの粉末潤滑剤の漏れ出しを防止する漏れ出し防止部を設けることが好ましい。
【0013】
前記漏れ出し防止部は、円筒形のチャンバー本体を上下から挟んで、入口壁の入口開口と出口壁の出口開口を調整する上下2枚の円弧状の開口調整板によって構成することができる。
【0014】
また、前記漏れ出し防止部は、入口壁の入口開口と出口壁の出口開口に設けたエアカーテンによって構成することもできる。
【0015】
また、前記漏れ出し防止部は、チャンバー本体の入口壁と出口壁の近傍に排気口を設けた構成とすることもできる。
【0016】
前記伸線加工装置とその上流部に配置した粉末潤滑剤塗布装置の間に、非接触式の膜厚計測手段あるいは粉末潤滑剤付着状態の光学的検出手段を配置することにより、伸線加工線材への粉末潤滑剤の塗布状態を非接触検出手段で判断し、塗布不良による伸線加工時のトラブル(線材の断線等)の予知・予防を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明の粉末潤滑剤塗布装置は、以上のように、静電塗装ガンのガン先のノズル部のみをチャンバー本体の上部に挿入することにより、塗布チャンバー全体の大きさを小型化することができる。
【0018】
塗布チャンバー全体の大きさを小型化すると、設置スペースも小さくなり、設備コストを抑制することが可能となる。
【0019】
また、塗布チャンバー全体の大きさを小型化することにより、保守時の清掃作業も容易になり、清掃時間も短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の粉末潤滑剤塗布装置の実施形態を示す概略断面図である。
図2】この発明の粉末潤滑剤塗布装置の塗布チャンバーに設けられた伸線加工線材の入口開口と出口開口に、塗布チャンバー内からの粉末潤滑剤の漏れ出しを防止する漏れ出し防止部を設けた実施形態を示す概略断面図である。
図3図2の実施形態における塗布チャンバーの側面図である。
図4】この発明の粉末潤滑剤塗布装置の塗布チャンバーに設けられた伸線加工線材の入口開口と出口開口に、塗布チャンバー内からの粉末潤滑剤の漏れ出しを防止する漏れ出し防止部を設けた他の実施形態を示す概略断面図である。
図5図4の実施形態における塗布チャンバーの側面図である。
図6】この発明の粉末潤滑剤塗布装置の塗布チャンバーに設けられた伸線加工線材の入口開口と出口開口に、塗布チャンバー内からの粉末潤滑剤の漏れ出しを防止する漏れ出し防止部を設けた他の実施形態を示す概略断面図である。
図7】従来の粉末潤滑剤塗布装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
粉末潤滑剤塗布装置1は、図1に示すように、伸線加工装置2の上流側に配置される塗布チャンバー3に静電塗装ガン4を設置したものである。伸線加工装置2は、塗布チャンバー3の出口開口5の下流側に設置されている。伸線加工装置2は、ダイス2aと、このダイス2aを保持するダイスホルダ2bとからなり、ダイスホルダ2bは、図示しない基台上に設置されている。
【0022】
この発明で使用する粉末潤滑剤Aとしては、例えば、金属石鹸、消石灰、リン酸塩、硼砂などである。
【0023】
この発明に係る粉末潤滑剤塗布装置1の特徴は、静電塗装ガン4のガン先のノズル部4aのみを、塗布チャンバー3内に挿入し、静電塗装ガン4のガン本体4bを塗布チャンバー3の外部に設置するようにして、塗布チャンバー3の大きさを最大限小型化したことである。
【0024】
図1に示す塗布チャンバー3は、走行する伸線加工線材Bの周囲を囲う円筒形のチャンバー本体3aと、この円筒形のチャンバー本体3aの入口側に設けられた入口壁3bと、チャンバー本体3aの出口側に設けられた出口壁3cとを有し、入口壁3bには、走行する伸線加工線材Bの入口開口6が設けられ、出口壁3cには、走行する伸線加工線材Bの出口開口5が設けられている。
【0025】
前記塗布チャンバー3は、絶縁材料で形成することが望ましい。
【0026】
円筒形のチャンバー本体3aの下部には、伸線加工線材Bに付着しなかった粉末潤滑剤Aを回収するホッパー部7が設けられ、ホッパー部7は、図示しない集塵装置に接続され、集塵装置によって回収された粉末潤滑剤Aが再利用されるようになっている。
【0027】
上記のように、静電塗装ガン4のガン先のノズル部4aのみをチャンバー本体3aの上部に挿入することにより、塗布チャンバー3全体の大きさを小型化することができる。
【0028】
塗布チャンバー3全体の大きさを小型化すると、設置スペースも小さくなり、設備コストを抑制することが可能となる。
【0029】
また、塗布チャンバー3全体の大きさを小型化することにより、保守時の清掃作業も容易になり、清掃時間も短縮することができる。
【0030】
静電塗装ガン4は、粉末潤滑剤Aが供給されるガン本体4bの先端に、ピン型放電電極4cを有するノズル部4aを備えている。ノズル部4aのピン型放電電極4cには、高圧発生器から直流の高電圧が印加され、ピン型放電電極4cのコロナ放電によってノズル部4aから吐出される粉末潤滑剤Aに電荷を付与している。
【0031】
電荷を付与された粉末潤滑剤Aは、塗布チャンバー3内を走行する伸線加工線材Bに付着する。
【0032】
伸線加工線材Bに付着しなかった粉末潤滑剤Aは、チャンバー本体3aの下方に設置されたホッパー部7から集塵機に送られて回収され、回収した粉末潤滑剤Aは再利用される。
【0033】
塗布チャンバー3内で吐出されて伸線加工線材Bに付着しなかった粉末潤滑剤Aは、上記のように、チャンバー本体3aの下方に設置されたホッパー部7から回収されるが、入口壁3bの入口開口6と出口壁3cの出口開口5から粉末潤滑剤Aが漏れ出すおそれがある。
【0034】
このため、図2及び図3の実施形態では、入口壁3bの入口開口6と出口壁3cの出口開口5に、粉末潤滑剤Aの漏れ出し防止部を設けている。
【0035】
図2及び図3の実施形態の漏れ出し防止部は、円筒形のチャンバー本体3aを上下から挟んで、入口壁3bの入口開口6と出口壁3cの出口開口5を調整する上下2枚の円弧状の開口調整板8a、8bからなる。上下2枚の円弧状の開口調整板8a、8bは、ボルト8cに円筒形のチャンバー本体3aに取り付けられ、入口壁3bの入口開口6と出口壁3cの出口開口5の大きさφDを、粉末潤滑剤Aが漏れ出さない大きさ(φd)にして、粉末潤滑剤Aの漏れ出しを防止している。
【0036】
図3は、入口壁3bの入口開口6と出口壁3cの出口開口5に装着された開口調整板8a、8bの側面図である。
【0037】
図4の実施形態は、入口壁3bの入口開口6と出口壁3cの出口開口5からの粉末潤滑剤Aの漏れ出しを防止する漏れ出し防止部として、入口壁3bの入口開口6と出口壁3cの出口開口5に、エアカーテン9を設置したものである。
【0038】
このエアカーテン9は、図5に示すように、入口壁3bの入口開口6と出口壁3cの出口開口5の接線方向に、エアを吹き出すエアノズル9aを入口壁3bの入口開口6と出口壁3cの出口開口5に周方向に複数設置して、粉末潤滑剤Aの漏れ出しを防止したものである。
【0039】
図6の実施形態は、チャンバー本体3aの入口壁3bと出口壁3cの近傍に、排気口10を設けて、チャンバー本体3aのエアの流れにより、入口壁3bの入口開口6と出口壁3cの出口開口5からの粉末潤滑剤Aの漏れ出しを防止したものである。
【0040】
この排気口10から流入した粉末潤滑剤は、ホッパー部7に流入した粉末潤滑剤と共に、集塵機に送られ、再利用される。
【符号の説明】
【0041】
1 :粉末潤滑剤塗布装置
2 :伸線加工装置
3 :塗布チャンバー
3a :チャンバー本体
3b :入口壁
3c :出口壁
4 :静電塗装ガン
4a :ノズル部
4b :ガン本体
4c :ピン型放電電極
5 :出口開口
6 :入口開口
7 :ホッパー部
8a、8b :開口調整板
8c :ボルト
9 :エアカーテン
9a :エアノズル
10 :排気口
A :粉末潤滑剤
B :伸線加工線材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7