(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】センサ取付具
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
A01K29/00
(21)【出願番号】P 2018057401
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591097702
【氏名又は名称】京都府
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】久保 聡
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174840(WO,A1)
【文献】特表平09-507389(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026416(WO,A1)
【文献】特開2018-007613(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183344(WO,A1)
【文献】特開2008-206412(JP,A)
【文献】国際公開第2015/175686(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四足歩行動物に生体情報センサを取付けるセンサ取付具であって、
四足歩行動物の尾部に嵌挿するように紐状または帯状の環状体で構成された嵌挿部と、
前記嵌挿部が尾部から離脱しないように反尾部方向に牽引して四足歩行動物の身体に装着する紐状または帯状の装着部と、
前記嵌挿部に直接または間接的に支持され、前記生体情報センサを尻尾の根元側で保持するように前記四足歩行動物の尻尾に巻き付けるセンサ保持部と、
を備えているセンサ取付具。
【請求項2】
前記嵌挿部の一部は非透水性素材で構成されている請求項1記載のセンサ取付具。
【請求項3】
前記センサ保持部は通気性素材で構成されている請求項1または2記載のセンサ取付具。
【請求項4】
前記嵌挿部と連結する前記装着部に紐状または帯状の弾性部材を備えている請求項1から3の何れかに記載のセンサ取付具。
【請求項5】
前記センサ保持部は前記嵌挿部に着脱自在に直接または間接的に支持されている請求項1から4の何れかに記載のセンサ取付具。
【請求項6】
前記環状体は少なくとも40cm以上の長さに形成されている請求項1から5の何れかに記載のセンサ取付具。
【請求項7】
前記センサ保持部の外面を被覆するシート状のセンサ被覆体を備えている請求項1から6の何れかに記載のセンサ取付具。
【請求項8】
前記センサ被覆体の外表面は非透水性素材で構成されている請求項7記載のセンサ取付具。
【請求項9】
前記センサ被覆体は、前記センサ保持部を被覆した状態で尻尾の一部が外気に開放されるように固定する固定部が設けられている請求項7または8記載のセンサ取付具。
【請求項10】
前記嵌挿部に前記センサ被覆体を着脱自在に取り付ける第1取付部材と、前記センサ被覆体に前記センサ保持部を着脱自在に取り付ける第2取付部材を備えている請求項7から9の何れかに記載のセンサ取付具。
【請求項11】
前記センサ被覆体は、尻尾の長手方向に少なくとも10cm以上の長さに形成されている請求項7から10の何れかに記載のセンサ取付具。
【請求項12】
前記センサ被覆体の内表面に凹凸が形成されている請求項7から11の何れかに記載のセンサ取付具。
【請求項13】
前記生体情報センサに検温センサと心拍センサが含まれ、前記センサ保持部は、前記検温センサを尻尾の根元側で保持する第1収容部と、前記心拍センサを前記検温センサより尻尾の先端側で保持する第2収容部を備えている請求項1から12の何れかに記載のセンサ取付具。
【請求項14】
前記生体情報センサからの信号を受信して外部に発信する信号処理部が前記嵌挿部から前記装着部の間の何れかに取り付けられている請求項1から13の何れかに記載のセンサ取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜などの四足歩行動物から体温などの生体情報を収集するために、四足歩行動物に生体センサを取り付けるセンサ取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類である四足歩行動物の体温を継続的に取得して、四足歩行動物の状態の推移を把握するために、例えば測温部を肛門に挿入した状態で保持する固定具を備えた測温器具が特許文献1,2,3に開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、先端部に温度センサを内装してなる動物体温測定用プロ-ブにおいて、動物の尻尾に装嵌する有端環状の剛性バンドと、該バンドの両端部に歯を有する係合片とからなる固定具を配設してなることを特徴とする動物体温測定用プロ-ブが開示されている。
【0004】
特許文献3には、固定具により尻尾が圧迫される不都合を回避して安全性を確保するために、動物の肛門から腸内に先端側の測温部が挿入され、腸内温度を測定するシース型温度計と、該動物の尻尾に装着されるコイルばねであって、シース型温度計の挿入される領域よりも基端側の所定の位置に尻尾の根元側となる端部が連結されるコイルばねとを備えた動物腸内温度測定装置が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献4には、肛門から体温センサを挿入する態様を採用した場合に動物が排泄物を出す際に体温センサが排泄物と一緒に排出されてしまう不都合を解消すべく、長時間にわたり安定した体温測定を可能にする取付具が提案されている。
【0006】
当該取付具は、体温を電気抵抗値に変換するセンサを、伸縮ベルトの一部に直接固定し、或いは、センサを固定した物体を伸縮ベルトに接続固定し、センサを前足付け根の内側と腹部に挟まれた部分に設置すべく、伸縮ベルトを動物の足部、胴部、首部、背部、胸部の一部を利用して固定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平07-3615号公報
【文献】特開2005-21418号公報
【文献】特許6164354号公報
【文献】特開2005-249765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4に記載された取付具は、体温を電気抵抗値に変換するセンサを用いる場合に限られ、心拍などの他の生体情報を取得するためのセンサを用いる場合には、それに見合った測定箇所にセンサを取り付ける必要があり、汎用性に欠けるという問題があった。
【0009】
そこで、排泄時に糞便とともに体外に排出されることなく、外気の影響を受けにくい部位として動物の尻尾の内側に着目したところ、尻尾の内側は尾部の体表面と接触して外気の影響を受けにくいばかりでなく体毛も薄いため、体温や心拍などを継続的に精度良く検出できるものの、尻尾が振られた場合にセンサの位置がずれ易く、また肛門に近いため排泄時に糞便で汚れ易く、その結果、正確な生体情報を取得することが困難になる場合があるという課題に行き当たった。
【0010】
本発明の目的は、上述の問題に鑑み、四足歩行動物の生体情報を継続的に測定でき、排泄時に糞便で汚れ難く、汚れた場合でも保守が容易なセンサ取付具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明によるセンサ取付具の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、四足歩行動物に生体情報センサを取付けるセンサ取付具であって、四足歩行動物の尾部に嵌挿するように紐状または帯状の環状体で構成された嵌挿部と、前記嵌挿部が尾部から離脱しないように反尾部方向に牽引して四足歩行動物の身体に装着する紐状または帯状の装着部と、前記嵌挿部に直接または間接的に支持され、前記生体情報センサを尻尾の根元側で保持するように前記四足歩行動物の尻尾に巻き付けるセンサ保持部と、を備えている点にある。
【0012】
尻尾に巻き付けられたセンサ保持部により生体情報センサが尻尾の根元側で保持される。紐状または帯状の環状体が四足歩行動物の尻尾を挿通して尾部に嵌挿された嵌挿部が、紐状または帯状の装着部により反尾部方向に牽引された状態で四足歩行動物の身体に装着され、当該嵌挿部にセンサ保持部が直接または間接的に支持される。従って、四足歩行動物の尻尾が振り回された場合でも嵌挿部に支持されたセンサ保持部は安定して尻尾に巻き付けた状態が維持され、排便時に糞便が付着しても生体情報センサ自体が汚れることがない。
【0013】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記嵌挿部の一部は非透水性素材で構成されている点にある。
【0014】
嵌挿部が非透水性素材で構成されていれば、仮に肛門から糞便が排泄されて付着し、或いは降雨にあった場合でも嵌挿部に糞便の水分が浸潤することがなく、清掃などの保守が容易に行なえる。
【0015】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記センサ保持部は通気性素材で構成されている点にある。
【0016】
センサ保持部が通気性素材で構成されていれば、装着された尻尾が蒸れることなく膚表面の良好な状態を維持できる。
【0017】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記嵌挿部と連結する前記装着部に紐状または帯状の弾性部材を備えている点にある。
【0018】
歩行したり座ったりすることで四足歩行動物の姿勢が変動することがあっても、嵌挿部と装着部が弾性部材を介して連結されていれば、嵌挿部が尾部から反尾部方向に牽引された状態が維持されるので、尾部から嵌挿部が離脱することなく安定して嵌挿状態が維持される。
【0019】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記センサ保持部は前記嵌挿部に着脱自在に直接または間接的に支持されている点にある。
【0020】
センサ保持部が嵌挿部に対して着脱自在に支持されているので、仮に生体情報センサが故障して取り換える必要があったり、センサ保持部が汚れて交換する必要があったりしても、嵌挿部からセンサ保持部のみを取り外せばよいので、装着部及び嵌挿部を取り外すような大掛かりな操作が不要になる。
【0021】
同第六の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記環状体は少なくとも40cm以上の長さに形成されている点にある。
【0022】
尾部に嵌挿する環状体の長さが短いと、尻尾の振り上げ動作や旋回動作によって尾部から嵌挿部が容易に離脱し、或いは回転してセンサの設置位置がずれることがあるが、環状体が少なくとも40cm以上(周長で80cm以上)の長さに形成されていると、尾部から嵌挿部が離脱するようなことが殆ど無くなる。
【0023】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記センサ保持部の外面を被覆するシート状のセンサ被覆体を備えている点にある。
【0024】
尻尾に巻き付けられるセンサ保持部の外面がシート状のセンサ被覆体で被覆されることにより、排便時の糞便がセンサ保持部に付着することなくセンサ被覆体で保護される。
【0025】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第七の特徴構成に加えて、前記センサ被覆体の外表面は非透水性素材で構成されている点にある。
【0026】
センサ被覆体の外表面が非透水性素材で構成されていれば、仮に肛門から糞便が排泄されて付着し、或いは降雨にあった場合でもセンサ被覆体に水分が浸潤してセンサ被覆体を汚すようなことが回避できる。
【0027】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第七または第八の特徴構成に加えて、前記センサ被覆体は、前記センサ保持部を被覆した状態で尻尾の一部が外気に開放されるように固定する固定部が設けられている点にある。
【0028】
尻尾に巻き付けたセンサ保持部がセンサ被覆体で被覆され、固定部で固定した状態で、尻尾の一部が外気に開放されていると、尻尾が蒸れることなく膚表面の良好な状態を維持できる。
【0029】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第七から第九の何れかの特徴構成に加えて、前記嵌挿部に前記センサ被覆体を着脱自在に取り付ける第1取付部材と、前記センサ被覆体に前記センサ保持部を着脱自在に取り付ける第2取付部材を備えている点にある。
【0030】
第1取付部材を介して嵌挿部に取り付けられたセンサ被覆体を嵌挿部から取り外すと、第2取付部材を介してセンサ被覆体に取付けられたセンサ保持部と一体的に取り外すことができ、清掃や部品交換などの保守作業の操作性が極めて良好になる。
【0031】
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第七から第十の何れかの特徴構成に加えて、前記センサ被覆体は、尻尾の長手方向に少なくとも10cm以上の長さに形成されている点にある。
【0032】
センサ被覆体の尻尾の長手方向に沿う方向の長さが10cm以上の長さであれば、排泄された糞便が多量に付着する場合でもセンサ保持部を十分に保護することができ、さらには尻尾或いはセンサ保持部と十分な摩擦力が得られる接触面積となるので、尻尾が振り上げられたり旋回されたりしても、位置ずれしたり離脱するようなことが回避できる。
【0033】
同第十二の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の第七から第十一の何れかの特徴構成に加えて、前記センサ被覆体の内表面に凹凸が形成されている点にある。
【0034】
センサ被覆体の内表面に形成された凹凸によって、尻尾の膚表面との間の通気性が確保され、蒸れによる悪影響を回避できる。
【0035】
同第十三の特徴構成は、同請求項13に記載した通り、上述の第一から第十二の何れかの特徴構成に加えて、前記生体情報センサに検温センサと心拍センサが含まれ、前記センサ保持部は、前記検温センサを尻尾の根元側で保持する第1収容部と、前記心拍センサを前記検温センサより尻尾の先端側で保持する第2収容部を備えている点にある。
【0036】
生体情報センサとして検温センサ及び心拍センサを用いる場合、第1収容部により胴部に近い尻尾の根元側の体毛の少ない部位に検温センサを保持することで正確な体温を計測することができ、第2収容部により検温センサより尻尾の先端側で心拍センサを保持すれば、十分に心拍を計測することができる。
【0037】
同第十四の特徴構成は、同請求項14に記載した通り、上述の第一から第十三の何れかの特徴構成に加えて、前記生体情報センサからの信号を受信して外部に発信する信号処理部が前記嵌挿部から前記装着部の間の何れかに取り付けられている点にある。
【0038】
生体情報センサによる検出値が信号処理部を介して取り出せるので、人が介在することなく継続的に生体情報を得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0039】
以上説明した通り、本発明によれば、四足歩行動物の生体情報を継続的に測定でき、排泄時に糞便で汚れ難く、汚れた場合でも保守が容易なセンサ取付具を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】(a)はセンサ取付具の説明図、(b)はセンサ取付具の要部説明図
【
図2】(a)はセンサ保持部の説明図、(b)はセンサ被覆体の説明図
【
図3】(a)はセンサ被覆体に固定されたセンサ保持部の説明図、(b)は嵌挿部に装着されたセンサ被覆体の説明図
【
図4】四足歩行動物である牝牛に取付けられたセンサ取付具の上面視の説明図、(b)は同センサ取付具の側面視の説明図
【
図5】四足歩行動物である牝牛に取付けられたセンサ取付具の尾部領域の説明図、(b)は同側面視の説明図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を適用したセンサ取付具を図面に基づいて説明する。
図1(a),(b)には、四足歩行動物の一例である牛に装着するセンサ取付具100が示されている。当該センサ取付具100は、体温や脈拍などの四足歩行動物の生体情報を収集するための生体情報センサを四足歩行動物の体表面に取付けるために用いられる。
【0042】
以下では、四足歩行動物として牝牛を例にセンサ取付具100の構造を詳述するが、当該センサ取付具100は牝牛に限らず牡牛に取付けることも可能であり、サイズを調整することにより牛以外の四足歩行の哺乳類、たとえば馬やラクダなどに装着でき、犬などの愛玩動物にも装着できる。
【0043】
図1(a),(b)及び
図4(a),(b)に示すように、センサ取付具100は、牝牛1の尻尾2を通して尾部3に嵌挿する帯状の環状体11を備えた嵌挿部10と、嵌挿部10が尾部3から離脱しないように反尾部方向、つまり頸部4へ向かう方向に牽引した状態で牝牛1の身体に装着する帯状の装着部20と、嵌挿部10に直接または間接的に支持され、生体情報センサを尻尾の根元側で保持するように尻尾2に巻き付けるセンサ保持部30と、センサ保持部30を被覆するセンサ被覆体40と、を備えている。
【0044】
嵌挿部10と装着部20との間に生体情報センサからの信号を受信して外部に発信する信号処理部50が着脱可能に取り付けられ、生体情報センサと信号処理部50との間に信号線が配されている。
【0045】
信号処理部50には、計時回路と、生体情報センサの出力信号を受信して生体情報を生成する信号処理回路と、信号処理回路で生成された生体情報を記憶する記憶回路と、記憶回路に記憶された生体情報を外部に無線発信する通信回路と、各回路ブロックに電力を供給するバッテリなどを備えている。
【0046】
通信回路に採用される無線通信規格として「IEEE 802.15.4」を採用したZigbeeが用いられる。多数の動物を飼養する大規模施設などでは、飼養エリアが広く、個体数も多くなるため、通信距離が長く、十分な接続ノード数も確保でき、電池寿命も数年と長いZigbeeが好適である。なお、無線通信規格「IEEE 802.15.1」を採用したBluetooth(Blue toothは登録商標)や無線通信規格「IEEE 802.11」を採用したWi-Fiなどを用いることも可能である。
【0047】
生体情報センサによる検出値が信号処理部50を介して取り出せるので、人が介在することなく継続的に生体情報を得ることができるようになる。例えば、サンプリングした生体情報の推移を示すトレンドデータを予め定めた時刻に出力したり、生体情報が通常と異なる異常値を示したときにその前後のトレンドデータを出力したり、定期的にその時の生体情報或いは生体情報の平均値を出力したりすることができる。また、外部機器のリクエストに応答してサンプリングした生体情報を出力することも可能である。
【0048】
信号処理部50に牝牛1の動きを検出する加速度センサを組み込み、尾部に設けられた生体情報センサと組合せて使用してもよい。この場合、加速度センサを用いた測定目的にもよるが、信号処理部50は尾部3の振れの影響を受けにくい尾部から20cm以上離した位置に取付けるのが好適である。
【0049】
嵌挿部10は、環状体11と、一端が環状体11に接合され他端側が連結具15を介して装着部20に連結された索状体13とを備え、環状体11及び索状体13は非伸縮性の帯状の厚手の布帛で構成されている。
【0050】
索状体13の他端側は連結具15で一端側に折り返され、係止具14により長さ調節自在に固定されている。係止具14を緩めて索状体13の重畳長さを大きくすると索状体13が短くなり、重畳長さを小さくすると索状体13が長くなる。
【0051】
環状体11の長さにもよるが、環状体11のうち索状体13の接合部とは反対側に、環状体11の長さの1/4~1/2程度の長さにわたって非透水性素材で布帛を覆った被覆部12が設けられている。尾部3への装着時に膚面に擦傷が生じないように、非伸縮性の布帛と被覆部12との間にはクッション部材が介装されている。被覆部12が非透水性素材で構成されているため、牝牛1から排泄された糞便の水分などが含浸することがなく、容易に清掃することができる。
【0052】
環状体11の長さは少なくとも40cm以上の長さに構成されていることが好ましい。環状体11の長さは環状体11を2つ折りにした長さをいい、上限は特に制限されないが、適用する動物の体調により決められる。例えば、牝牛であれば80cmから100cm程度まで許容される。尾部3に嵌挿する環状体11の長さが短いと、尻尾2の振り上げ動作や旋回動作によって尾部3から嵌挿部10が容易に離脱してしまう虞があるが、環状体11が少なくとも40cm以上の長さに形成されていると、尾部から嵌挿部が離脱するようなことが殆ど無くなる。
【0053】
装着部20は、非伸縮性の帯状の厚手の布帛で構成され、牝牛1の背部6から胴部7に垂下する索状体22と、索状体22の先端側に連結具26を介して連結された弾性ベルト23と、一端が連結具15を介して索状体13と連結され他端がカラビナフックなどの連結具27を介して索状体22に連結された弾性ベルト21とを備えて構成されている。
【0054】
索状体22には延在方向に沿って2か所に係止用の止輪25a,25bが設けられ、左右の弾性ベルト23を牝牛1の左右の前脚5にそれぞれ巻き付けた後、上方に引き上げ、弾性ベルト23の先端に設けられた
カラビナフック24を止輪25a,25bに掛け止めるように構成されている(
図1(b)、
図4(b)参照)。
【0055】
牝牛1の様々な動きに伴って嵌挿部10が緩んで尾部3から離脱することがないように、嵌挿部10は弾性ベルト21によって牝牛1の頸部4に向けて牽引され、その状態で左右一対の索状体22及び弾性ベルト23で前脚5に引掛けて固定される。
【0056】
嵌挿部10及び装着部20を構成する索状体13,22や環状体11は、幅30mmから50mmの範囲の平坦な帯状体で構成されている。なお、索状体13,22は帯状体に限るものではなく紐状体で構成されていてもよい。
【0057】
図2(a)には、センサ保持部30の外観が示されている。センサ保持部30は、伸縮性及び通気性を備えた厚手の布帛または編地で横長矩形形状に形成された基材31と、基材31に設けられた生体情報センサ収容部32と、センサ被覆体40にセンサ保持部30を着脱自在に取り付ける第2取付部材33と、牝牛1の尻尾2に巻き付けた基材31を固定する固定部34を備えている。
【0058】
基材31は速乾性、通気性、伸縮性を備えるべく、例えばポリエステル繊維などのフィラメント糸とウレタン糸を用いて織成または編成された生地で構成されていればよい。センサ保持部30が通気性素材で構成されていれば、装着された尻尾2が蒸れることなく膚表面の良好な状態を維持できる。
【0059】
生体情報センサ収容部32は、基材31の中央部上下方向に2か所設けられ、二種類の生体情報センサが収容可能に構成されている。生体情報センサとして、検温センサと心拍センサが好適に用いられ、第1収容部32aに検温センサが保持され、第2収容部32bに心拍センサが保持される。検温センサとしてサーミスタや熱電対が好適に用いられ、心拍センサとして脈を打つ血流を光で検出する反射型の光センサが好適に用いられるが、このような種類のセンサに限るものではない。
【0060】
尻尾2の内側膚面に生体情報センサ収容部32が位置するように、センサ保持部30が尻尾2に巻き付けられる。その状態で、尻尾2の根元側に検温センサが位置し、検温センサより尻尾の先端側に心拍センサが位置するようになる。第1収容部32aにより胴部に近い尻尾2の根元側の体毛の少ない部位に検温センサを保持することで正確な体温を計測することができ、第2収容部32bにより検温センサより尻尾2の先端側で心拍センサを保持すれば、十分に心拍を計測することができる。
【0061】
なお、生体情報センサ収容部32に収容される生体情報センサは検温センサや心拍センサに限るものではなく、他の生体情報を取得できるセンサを用いることも可能である。また、生体情報センサに限らず、牝牛の歩行動作や座り込み動作や尾の振りなどを検出するために加速度センサなどの動きを検出するセンサや、膚近傍の環境を検出する湿度センサなどを収容することも可能である。
【0062】
生体情報センサ収容部32を挟むようにして基材31の上辺に第2取付部材33となる一対の非伸縮性の帯状部33が設けられ、帯状部33の両端部に一対の面ファスナー33a,33bが設けられている。面ファスナー33aには係止部となる多数のループが植生され、面ファスナー33bには係合部となる多数のフックが植生されている。
【0063】
同様に、基材31のうち、生体情報センサ収容部32が設けられた側の面の長手方向一端部と、反対側の面の長手方向他端部には、固定部34となる一対の面ファスナー34a,34bが設けられている。
【0064】
図2(b)に示すように、センサ被覆体40は、センサ保持部30の外面を被覆するように用いられる逆台形形状のシート部材41と、シート部材41を上述した嵌挿部10の環状体11に着脱自在に取り付ける第1取付部材42と、上述したセンサ保持部30を保持するための一対の挿通部43と、尻尾2に巻き付けられたセンサ保持部30の外面を被覆して尾部2に固定する固定部44を備えている。
【0065】
シート部材41は、外表面が非透水性素材で構成され、内側が凹凸表面を備えた通気性部材で構成されている。非透水性素材として、例えば表面にウレタン樹脂がコーティングされて撥水性を備え、合成繊維糸で織成された非伸縮性の布帛などが用いられる。通気性部材として適度なクッション性を備えた厚みが数mmのウレタンフォームシートなどが用いられる。ともに軽量であり、装着された動物に大きなストレスを与えることがない。
【0066】
外表面が非透水性素材で構成されているため、仮に糞便が排泄されて付着し、或いは降雨にあった場合でもセンサ被覆体40の内部に水分が浸潤してセンサ保持部30を汚すようなことがない。また、内表面が凹凸に形成されているので尻尾2の膚表面との間の通気性が確保され、蒸れによる悪影響を回避できる。
【0067】
被覆部12やセンサ被覆体40に用いられる非透水性素材の表面に例えば牛脂や豚脂などの油分を付着させておくと、汚れ難く、汚れた場合の清掃などの保守作業が容易になる。
【0068】
固定部44として上下方向に分散配置された3本の帯状体44a,44b,44cが設けられ、各帯状体44a,44b,44cの先端には係合部となる多数のフックが植生された面ファスナー47が設けられている。さらに、シート部材41の裏面に縦長姿勢で配され係止部となる多数のループが植生された面ファスナー48が設けられている。
【0069】
図3(a)に示すように、上述したセンサ保持部30に備えた第2取付部材33となる一対の帯状部33をそれぞれ挿通部43に挿通して折り返すことにより、面ファスナー33a,33bが係合してセンサ被覆体40にセンサ保持部30が固定される。
【0070】
図3(a),(b)に示すように、第1取付部材42は非伸縮性の帯状体で構成され、上端側と下端側に一対の面ファスナー42a,42bが設けられている。環状体11に備えた被覆部12に第1取付部材42を巻き付けて折り返すことにより、面ファスナー42a,42bが係合して嵌挿部10にセンサ被覆体40が固定される。なお、
図3(b)には、センサ保持部30が描かれていないが、実際にはセンサ被覆体40の内側にセンサ保持部30が配置されている。
【0071】
図5(a),(b)に示すように、固定部44は、センサ保持部30を被覆した状態で尻尾2の一部が外気に開放される開口部49が形成されるようにシート部材41を尻尾2に固定可能に構成されている。従って、固定部44で固定した状態で、尻尾2の一部が外気に開放され、尻尾2が蒸れることなく膚表面の良好な状態が維持される。
【0072】
上述したように、尻尾2に巻き付けられたセンサ保持部30の外面がシート状のセンサ被覆体40で被覆されることにより、排便時の糞便がセンサ保持部30に付着することなくセンサ被覆体40で保護される。
【0073】
センサ被覆体40を構成する逆台形形状のシート部材41は、尻尾2の長手方向に少なくとも10cm以上の長さに形成されていることが好ましく、15cm以上の長さに形成されていることがさらに好ましい。
【0074】
この様な長さに形成されていると、排泄された糞便が多量に付着する場合でもセンサ保持部30を十分に保護することができ、さらには尻尾2或いはセンサ保持部30と十分な摩擦力が得られる接触面積となるので、尻尾2が振り上げられたり旋回されたりしても、位置ずれしたり離脱するようなことが回避できる。なお、長さの上限は特に制限されないが、尻尾2の可動範囲が制限され牝牛1にストレスを与えないように、20cmから30cm程度に制限される。
【0075】
なお、センサ被覆体40を構成するシート部材41の形状は、逆台形形状に限るものではなく、矩形形状など、尻尾2に巻き付けられたセンサ保持部30の外面を被覆して尾部2に固定可能な形状であればよい。
【0076】
以上、説明したように、センサ保持具は、四足歩行動物の尾部に嵌挿するように紐状または帯状の環状体で構成された嵌挿部と、嵌挿部が尾部から離脱しないように反尾部方向に牽引して四足歩行動物の身体に装着する紐状または帯状の装着部と、嵌挿部に直接または間接的に支持され、生体情報センサを尻尾の根元側で保持するように四足歩行動物の尻尾に巻き付けるセンサ保持部と、を備えている。
【0077】
そのため、四足歩行動物の尻尾が振り回された場合でも嵌挿部に支持されたセンサ保持部は安定して尻尾に巻き付けた状態が維持され、排便時に糞便が付着しても生体情報センサ自体が汚れ、或いは破損することがない。
【0078】
上述した実施形態では、嵌挿部10にセンサ被覆体40を着脱自在に取り付ける第1取付部材42と、センサ被覆体40にセンサ保持部30を着脱自在に取り付ける第2取付部材33を備えた例を説明したが、センサ保持部30が嵌挿部10に着脱自在に直接支持されるように構成されていてもよい。
【0079】
各取付部材の具体的構成は、上述した面ファスナー以外に、スナップボタン、カラビナフック、樹脂製の係止具などを適宜用いることができる。
【0080】
この様に、嵌挿部10にセンサ被覆体40を着脱自在に取り付けていることにより、仮に生体情報センサが故障して取り換える必要があったり、センサ保持部が汚れて交換する必要があったりしても、嵌挿部からセンサ保持部或いはセンサ保持部を取り付けたセンサ被覆体40のみを取り外せばよいので、装着部20及び嵌挿部10を取り外すような大掛かりな操作が不要になる。
【0081】
以上説明した実施形態は、何れも本発明の一例に過ぎず、当該記載により本発明が限定されるものではなく、センサ取付具を構成する各部の素材、形状サイズなどの具体的な構成は、本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、生体情報を継続的に測定でき、排泄時に糞便で汚れ難く、汚れた場合でも保守が容易なセンサ取付具として、様々な四足歩行動物に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
1:四足歩行動物(牝牛)
100:センサ取付具
2:尻尾
3:尾部
4:頸部
5:前脚
6:背部
7:胴部
10:嵌挿部
11:環状体
12:被覆部
20:装着部
21:弾性部材(弾性ベルト)
30:センサ保持部
33:第2取付部材
32:生体情報センサ収容部
34:固定部
40:センサ被覆体
41:シート部材
42:第1取付部材
44:固定部