(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】外壁板取付金具
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
E04F13/08 101D
E04F13/08 101F
(21)【出願番号】P 2018157224
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】595042944
【氏名又は名称】有限会社ユース北浦
(74)【代理人】
【識別番号】100076266
【氏名又は名称】大森 泉
(72)【発明者】
【氏名】北浦 秀明
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-147937(JP,A)
【文献】特開2002-138647(JP,A)
【文献】特開昭64-090356(JP,A)
【文献】特開平09-209543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板材を成形してなり、外壁板を建物躯体に取り付ける外壁板取付金具において、
プレス絞り加工部によって構成されており、前記外壁板によって構成されることとなる壁面と平行方向の一方向に凹陥する形状とされている底部絞り加工部と、
前記底部絞り加工部外に設けられており、当該外壁板取付金具を前記建物躯体側にビス留めするためのビス穴または/および釘留めするための釘穴を有する取付部と、
前記底部絞り加工部外に設けられており、前記外壁板の裏面に当接または対向される外壁板裏面受け部と、
前記底部絞り加工部外、かつ前記外壁板裏面受け部より前記建物躯体から遠い側、かつ前記底部絞り加工部の開口部付近に設けられた外壁板係合部とを有してなり、
前記外壁板係合部は、前記建物躯体と反対側に突出する前方突出部と、この前方突出部の先端部から折り曲げられた折り曲げ部とを有し、
前記外壁板の端部は、前記折り曲げ部と前記前方突出部と前記外壁板裏面受け部との間に挿入されて前記外壁板係合部に係合されるようになっている外壁板取付金具。
【請求項2】
前記底部絞り加工部は当該外壁板取付金具のほぼ全幅に渡って設けられている請求項1記載の外壁板取付金具。
【請求項3】
前記底部絞り加工部とは独立したプレス絞り加工部によって構成されており、前記建物躯体側または前記建物躯体と反対側に凹陥する背面側絞り加工部を有し、この背面側絞り加工部は当該外壁板取付金具の前記建物躯体側に設けられている請求項1または2記載の外壁板取付金具。
【請求項4】
前記取付部は前記背面側絞り加工部の底部に設けられている請求項3記載の外壁板取付金具。
【請求項5】
前記取付部の両側において前記建物躯体と反対側に突出する側辺部と、これらの側辺部の先端から直角方向に折り曲げられて形成された前面折り曲げ部とを有し、これらの前面折り曲げ部は前記外壁板裏面受け部の少なくとも一部を構成している請求項1乃至4のいずれか1項に記載の外壁板取付金具。
【請求項6】
複数の前記外壁板をこれらの外壁板の端部を互いに突き合わせた状態で前記建物躯体に取り付けるものであって、
前記外壁板係合部
は、前記前方突出部の先端部から互いに反対側にそれぞれ折り曲げられた第一の折り曲げ部と第二の折り曲げ部とを有し、
互いに突き合わされる前記外壁板の端部は、前記第二の折り曲げ部と前記前方突出部と前記外壁板裏面受け部との間および前記第一の折り曲げ部と前記前方突出部と前記外壁板裏面受け部との間にそれぞれ挿入されて前記外壁板係合部に係合され、前記外壁板同士の突き合わせ部に前記前方突出部が介在された状態となるようになっている請求項
5記載の外壁板取付金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル状をなす外壁板(外壁材、外装材等と称されることもある)を建物躯体に取り付けるための外壁板取付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、外壁板を建物躯体に取り付ける工法としては、外壁板を取付金具を介して建物躯体に取り付ける工法が一般的となっている。
【0003】
本出願人は、先に特許文献1において、建物躯体と反対側(すなわち、前方)に凹陥するプレス絞り加工部を設け、かつこの絞り加工部の一部を切り起こしてパネル状材係合部(外壁板係合部)を設けることにより、強度および剛性を従来より著しく高めることができ、施工時に大きな力が作用されたり、施工後、風や地震等により大きな力が作用しても変形し難く、外壁板の取付状態に異常を生じにくい、外壁板等のパネル状材の取付金具を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2968271号公報
【文献】特開2014-1535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記本出願人が特許文献1において提案した外壁板取付金具においては、該金具が外壁板を極めて剛に支持するため、強風等により外壁板に大きな力が作用したとき、外壁板が割れてしまったり、大きな地震等により大きな衝撃が作用した際、その衝撃を吸収することができない場合がある等の問題があった。
【0006】
また、本出願人は、このような特許文献1において提案した外壁板取付金具の問題を解消できる外壁板取付金具を特許文献2において提案した。この特許文献2において提案した外壁板取付金具は、特許文献1の外壁板取付金具とは逆にプレス絞り加工部を建物躯体側に凹陥するようにし、かつプレス絞り加工部の外部に外壁板係合部を設けるものである。
【0007】
この特許文献2において提案した外壁板取付金具によれば、外壁板をより柔軟に支持することにより、強風等により外壁板に大きな力が作用しても、外壁板が割れてしまう虞を低減するとともに、大きな地震等により大きな衝撃が作用しても、その衝撃を吸収することができ、しかも取付金具のうちの大きな強度および剛性が必要とされる部分には、要求される通りに大きな強度および剛性を確保することができる。
【0008】
しかしながら、この特許文献2において提案した外壁板取付金具においても、なお外壁板を十分に柔軟に支持できない場合があるという問題が残っていた。
【0009】
また、特許文献1の外壁板取付金具と同様に、プレス絞り加工部の加工に困難性が伴うとともに、材料(金属板)を多く要し、加工コストが高くなるという問題もあった。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、外壁板をさらに柔軟に支持することができ、しかも取付金具のうちの大きな強度および剛性が必要とされる部分には、要求される通りに大きな強度および剛性を確保することができる外壁板取付金具を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、プレス絞り加工部の加工を容易化することができるとともに、必要な材料(金属板)を少なくし、加工コストを低減することができる外壁板取付金具を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る本発明による外壁板取付金具は、
金属板材を成形してなり、外壁板を建物躯体に取り付ける外壁板取付金具において、
プレス絞り加工部によって構成されており、前記外壁板によって構成されることとなる壁面と平行方向の一方向に凹陥する形状とされている底部絞り加工部と、
前記底部絞り加工部外に設けられており、当該外壁板取付金具を前記建物躯体側にビス留めするためのビス穴または/および釘留めするための釘穴を有する取付部と、
前記底部絞り加工部外に設けられており、前記外壁板の裏面に当接または対向される外壁板裏面受け部と、
前記底部絞り加工部外、かつ前記外壁板裏面受け部より前記建物躯体から遠い側、かつ前記底部絞り加工部の開口部付近に設けられた外壁板係合部とを有してなり、
前記外壁板係合部は、前記建物躯体と反対側に突出する前方突出部と、この前方突出部の先端部から折り曲げられた折り曲げ部とを有し、
前記外壁板の端部は、前記折り曲げ部と前記前方突出部と前記外壁板裏面受け部との間に挿入されて前記外壁板係合部に係合されるようになっているものである。
【0014】
この請求項1に係る本発明の外壁板取付金具においては、底部絞り加工部は取付金具全体において比較的小さな部分を占めるプレス絞り加工部であり、かつ外壁板係合部のみならず取付金具を建物躯体に取り付ける取付部も底部絞り加工部の外部に設けられているので、外壁板をより柔軟に支持することができ、強風等により外壁板に大きな力が作用しても、外壁板が割れてしまう虞を低減するとともに、大きな地震等により大きな衝撃が作用しても、その衝撃を吸収することができる。
【0015】
その一方、取付金具のうちの大きな強度および剛性が必要とされる部分、すなわち取付部と外壁板係合部との間の部分にはプレス絞り加工部からなる底部絞り加工部が設けられているので、要求される通りに大きな強度および剛性を確保することができる。
【0016】
また、プレス絞り加工部(底部絞り加工部)を小さくすることができるので、プレス絞り加工部の加工が容易になるとともに、能力の小さなプレス機械を使用することも可能となり、かつ必要な材料(金属板)の量を少なくすることができ、加工コストを低減することができる。
【0017】
請求項3に係る本発明による外壁板取付金具は、請求項1または2記載の本発明において、
前記底部絞り加工部とは独立したプレス絞り加工部によって構成されており、前記建物躯体側または前記建物躯体と反対側に凹陥する背面側絞り加工部を有し、この背面側絞り加工部は当該外壁板取付金具1の前記建物躯体側に設けられているものである。
【0018】
この請求項3に係る本発明による外壁板取付金具においては、底部絞り加工部の他に背面側絞り加工部を設けられているので、プレス絞り加工部が底部絞り加工部のみである場合より、取付金具全体の剛性を高めることができる。
【0019】
その一方、背面側絞り加工部は底部絞り加工部とは独立したものであり、しかも取付金具全体に対して背面側絞り加工部が占める大きさは小さくなるので、取付金具全体の剛性が過度に大きくならないようにすることができる。したがって、やはり、より外壁板を柔軟に支持することができ、強風等により外壁板に大きな力が作用しても、外壁板が割れてしまう虞を低減するとともに、大きな地震等により大きな衝撃が作用しても、その衝撃を吸収することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の外壁板取付金具は、
(イ)特許文献1および特許文献2に提案された外壁板取付金具の問題点を解消できる。すなわち、特許文献2に提案された外壁板取付金具に比較しても、外壁板をより柔軟に支持することができ、強風等により外壁板に大きな力が作用しても、外壁板が割れてしまう虞を低減するとともに、大きな地震等により大きな衝撃が作用しても、その衝撃を吸収することができる、
(ロ)その一方、取付金具のうちの大きな強度および剛性が必要とされる部分には、要求される通りに大きな強度および剛性を確保することができる、
(ハ)プレス絞り加工部の加工が容易になるとともに、能力の小さなプレス機械を使用することも可能となり、かつ必要な材料(金属板)の量を少なくすることができ、加工コストを低減することができる、
等の優れた効果を得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による外壁板取付金具の実施例1を示す斜視図である。
【
図2】実施例1の取付金具を他の方向から見た斜視図である。
【
図3】実施例1の取付金具において、底部絞り加工部の範囲を明確にするため、
図1と同じ斜視図において、底部絞り加工部に網線を施した図である。
【
図4】実施例1の取付金具において、底部絞り加工部の範囲を明確にするため、
図2と同じ斜視図において、底部絞り加工部に網線を施した図である。
【
図11】実施例1の取付金具を用いた外壁板の取付作業の一例において、下段側の外壁板の上端部に係合した外壁板取付金具をビス止めする直前の状態を示す断面図である。
【
図12】実施例1の前記外壁板の取付作業例において、ビス止めを完了した後、上段側の外壁板の下端部を外壁板取付金具に係合した状態を示す断面図である。
【
図13】本発明による外壁板取付金具の実施例2を示す斜視図である。
【
図14】実施例2の取付金具を他の方向から見た斜視図である。
【
図15】実施例2の取付金具において、底部絞り加工部および背面側絞り加工部の範囲を明確にするため、
図13と同じ斜視図において、底部絞り加工部に細かい網線、背面側絞り加工部に粗い網線を施した図である。
【
図16】実施例2の取付金具において、底部絞り加工部および背面側絞り加工部の範囲を明確にするため、
図14と同じ斜視図において、底部絞り加工部に細かい網線、背面側絞り加工部に粗い網線を施した図である。
【
図22】
図17のXXII-XXII線における断面図である。
【
図23】実施例2の外壁板の取付作業例において、ビス止めを完了した後、上段側の外壁板の下端部を外壁板取付金具に係合した状態を示す断面図である。
【
図24】本発明による外壁板取付金具の実施例3を示す斜視図である。
【
図25】実施例3の取付金具において、底部絞り加工部および背面側絞り加工部の範囲を明確にするため、
図24と同じ斜視図において、底部絞り加工部に細かい網線、背面側絞り加工部に粗い網線を施した図である。
【
図28】
図26のXXVIII-XXVIII線における断面図である。
【
図29】実施例3の外壁板の取付作業例において、ビス止めを完了した後、上段側の外壁板の下端部を外壁板取付金具に係合した状態を示す断面図である。
【
図30】本発明による外壁板取付金具の実施例4を示す斜視図である。
【
図31】実施例4の取付金具において、底部絞り加工部および背面側絞り加工部の範囲を明確にするため、
図30と同じ斜視図において、底部絞り加工部に細かい網線、背面側絞り加工部に粗い網線を施した図である。
【
図34】
図32のXXXIV-XXXIV線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0023】
図1~10は本発明による外壁板取付金具1の実施例1、
図11および12は該実施例1の取付金具1を用いた外壁板2の取付構造の一例を示している。
【0024】
なお、外壁板2を建物躯体3(
図11および12参照)に取り付ける際には、一般に、外壁板2を横長とし、各外壁板2の上端部と下端部とを突き合わせて、順次下段側から上段側へと外壁板2を取り付けて行く方法(所謂横貼り)と、外壁板2を縦長とし、各外壁板2の左端部と右端部とを突き合わせて、順次左から右または右から左側に外壁板2を取り付けて行く方法(所謂縦貼り)とがある。以下の各実施例の説明においては、所謂横貼りを行う場合を基準として取付金具1の上下左右方向を説明するが、所謂縦貼りを行う場合は、取付金具1の向きが90度回転される(横貼りの場合の取付金具1の上下が縦貼りの場合には左右になる)ことになるので注意されたい。
【0025】
外壁板取付金具1は、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム合金板等からなる1枚の金属板をプレス加工により成形してなり、底部絞り加工部4と、取付部5と、側辺部6と、前面折り曲げ部7と、外壁板係合部8とを一体的に有している。
【0026】
前記底部絞り加工部4は、プレス絞り加工により形成されたプレス絞り加工部によって構成されており、外壁板2によって構成されることとなる壁面と平行方向の一方向(
図1,5および6における下向き)に凹陥する形状とされている。
図3および4は、本実施例における底部絞り加工部4の範囲を明確にするため、
図1、2と同じ斜視図において、底部絞り加工部4に網線を施した図である。
【0027】
底部絞り加工部4の底部には長穴からなる水抜き穴9が設けられている(
図7,8,10参照)。この水抜き穴9は、底部絞り加工部4がプレス絞り加工された後、ブレス打ち抜き加工により形成されている。この水抜き穴9は底部絞り加工部4内に侵入した雨水を外部に排出するためのものである。
【0028】
前記取付部5は、底部絞り加工部4の外部、上方に設けられており、底部絞り加工部4の平面状の背面部4aから連続する平面部5aと、外壁板取付金具1を建物躯体3側にビス留めするためのビス穴5bとを有している。取付金具1は、取付部5を建物躯体3自体または胴縁あるいは間柱等の下地材もしくは断熱材等の介装材10(
図11,12参照)に沿わされた状態で、ビス穴5bを用いてビス留めされることにより、直接または介装材10を介して建物躯体3に取り付けられるようになっている。
【0029】
前記側辺部6は、取付部5の平面部5aの両端から直角に折り曲げられて形成されており、建物躯体3と反対側(すなわち前方)に突出している。前記2つの側辺部6の先端からそれぞれ直角内方に折り曲げられて、1対の前面折り曲げ部7が形成されている。本実施例においては、これらの左右の前面折り曲げ部7と底部絞り加工部4の平面状の前面部4bとが外壁板2の裏面に当接または対向される外壁板裏面受け部を構成している。
【0030】
前記外壁板係合部8は、底部絞り加工部4の前面部4bの、該底部絞り加工部4の開口側端から建物躯体3と反対側(すなわち前方)に突出するように折り曲げられた前方突出部11と、前方突出部11の先端部から互いに反対側にそれぞれ折り曲げられた第一の折り曲げ部12と第二の折り曲げ部13とを有してなる。さらに詳しく言うと、前記第一の折り曲げ部12は前方突出部11の先端部から斜め上方に折り曲げられている一方、前記第二の折り曲げ部13は前方突出部11の先端部から斜め下方に折り曲げられている。
【0031】
次に、この取付金具1による外壁板2の取付方法の例を
図11および12を用いて説明する。
図11および12は、所謂横貼りを行う場合の取付方法を示している。また、この例では、胴縁または間柱等の下地材である介装材10を介して建物躯体3に取付金具1を取り付けることとしている。各外壁板2の上端部には、その外面側を切り欠くことにより第一の実部15が形成されている一方、外壁板2の下端部(
図12参照)には、その内面側を切り欠くことにより第二の実部16が形成されている。また、各外壁板2の下端部には、第二の実部16の内面に接するようにして係合溝17が形成されている。
【0032】
この場合、まず
図11に示されるように、取付金具1の外壁板係合部8の第二の折り曲げ部13と前方突出部11と底部絞り加工部4の前面部4b(外壁板裏面受け部)との間に下段側の外壁板2の上端部の第一の実部15が挿入されるようにして、下段側の外壁板2の上端部に取付金具1の外壁板係合部8を係合し、底部絞り加工部4の前面部4b(外壁板裏面受け部)を下段側の外壁板2の裏面に当接または対向する。なお、このとき、取付金具1は、前方突出部11が水平方向となる向きとするとともに、取付部5および底部絞り加工部4の背面部4aが介装材10に当接した状態となるようにする。
【0033】
次に、ビス穴5bを用いてビス18により、
図12に示されるように、取付金具1を介装材10にビス留めし、取付金具1を介装材10を介して建物躯体3に取り付ける。これにより、取付部5が介装材10に沿わされた状態で、取付金具1が介装材10に固定され、ひいてはこの取付金具1を介して下段側の外壁板2の上端部が建物躯体3に取り付けられる。
【0034】
続いて、
図12に示されるように、上段側の外壁板2の下端部の係合溝17内に取付金具1の第一の折り曲げ部12を侵入させるとともに、上段側の外壁板2の下端部の係合溝17より裏側の部分を外壁板係合部8の第一の折り曲げ部12と前方突出部11と左右の前面折り曲げ部7(外壁板裏面受け部)との間の部分に侵入させ、上段側の外壁板2の下端部が前方突出部11上に載置されるようにして、上段側の外壁板2の下端部に取付金具1の外壁板係合部8を係合し、上段側の外壁板2の下端部を下段側の外壁板2の上端部に突き合わせる。
【0035】
以後、同様にして順次下段側から上段側へと外壁板2を取り付けて行くことにより、外壁板2を互いに上下に突き合わせた状態で建物躯体3に取り付けて行くことができる(互いに突き合わされた外壁板2の上下端部間には取付金具1の外壁板係合部8の前方突出部11が介在されている状態となる)。
【0036】
このような取付状態において、前方突出部11は、外壁板2の上下端部に当接または対向され、上下方向の移動を防止する。また、左右の前面折り曲げ部7(外壁板裏面受け部)および底部絞り加工部4の前面部4b(外壁板裏面受け部)はそれぞれ外壁板2の裏面に当接または対向され、外壁板2の建物躯体3側への移動を防止するとともに、外壁板2の裏面と介装材10ひいては建物躯体3との間に一定の間隙を確保する。
【0037】
なお、ここでは、所謂横貼りを行う場合について説明したが、所謂縦貼りを行う場合には、
図11および12と比較し取付金具1を90度回転した向きにして、
図11および12の場合と同様に取付金具1を使用して外壁板2を介装材10を介して建物躯体3に取り付けることができる。
【0038】
前述したように、前記特許文献1の外壁板取付金具においては、建物躯体3と反対側(すなわち前方)に凹陥するプレス絞り加工部を設け、かつこの絞り加工部の一部を切り起こして外壁板係合部を設けていたので、外壁板2を極めて剛に支持するため、強風等により外壁板2に大きな力が作用したとき、外壁板2が割れてしまったり、大きな地震等により大きな衝撃が作用した際、その衝撃を吸収することができない場合がある等の問題があった。
【0039】
また、特許文献2の取付金具においては、特許文献1の外壁板取付金具とは反対方向にプレス絞り加工部を凹陥させ、かつプレス絞り加工部の外部に外壁板係合部を設けるが、依然として1つの大きなプレス絞り加工部が取付金具の大部分を占めるため、外壁板2の支持の柔軟性が十分でない場合があるという問題が残っていた。
【0040】
しかるに、この外壁板取付金具1においては、底部絞り加工部4は取付金具1全体において比較的小さな部分を占めるプレス絞り加工部であり、かつ外壁板係合部8のみならず取付金具1を建物躯体3に取り付ける取付部5も底部絞り加工部4の外部に設けられているので、外壁板2をより柔軟に支持することができ、強風等により外壁板2に大きな力が作用しても、外壁板2が割れてしまう虞を低減するとともに、大きな地震等により大きな衝撃が作用しても、その衝撃を吸収することができる。
【0041】
その一方、取付金具1のうちの大きな強度および剛性が必要とされる部分、すなわち取付部5と外壁板係合部8との間の部分にはプレス絞り加工部からなる底部絞り加工部4が設けられているので、要求される通りに大きな強度および剛性を確保することができる。
【0042】
また、特許文献1および2に提案されている外壁板取付金具1とは異なり、プレス絞り加工部(底部絞り加工部4)を小さくすることができるので、プレス絞り加工部の加工が容易になるとともに、能力の小さなプレス機械を使用することも可能となり、かつ必要な材料(金属板)の量を少なくすることができ、加工コストを低減することができる。
【実施例2】
【0043】
図13~22は、本発明による外壁板取付金具1の実施例2、
図23は該実施例2の取付金具1を用いた外壁板2の取付構造の一例を示している。本実施例においては、取付金具1全体の中の建物躯体3側(背面側)かつ底部絞り加工部4の上方に、プレス絞り加工部からなる背面側絞り加工部19が設けられている。この背面側絞り加工部19は、底部絞り加工部4とは独立したプレス絞り加工部によって構成されており、底部絞り加工部4の外部に存在し、建物躯体3側(すなわち後方)に凹陥している。
【0044】
図15および16は、本実施例における底部絞り加工部4および背面側絞り加工部19の範囲を明確にするため、
図13、14と同じ斜視図において、底部絞り加工部4に細かい網線、背面側絞り加工部19に粗い網線を施した図である。本実施例の場合、加工工程では、底部絞り加工部4をプレス絞り加工した後、背面側絞り加工部19をプレス絞り加工している。
【0045】
本実施例においては、前記背面側絞り加工部19の底部(取付金具1全体の最も背面側に位置している)に取付部5が設けられている。さらに詳しく言うと、背面側絞り加工部19の底部は取付部5の平面部5aとされており、この平面部5aに外壁板取付金具1を建物躯体3側にビス留めするためのビス穴5bを設けられている。
【0046】
他の構成は実施例1と同様である。本実施例の外壁板取付金具1においても、
図23に示されるように、実施例1の場合と同様に外壁板2を建物躯体3に取り付けることができる。
【0047】
本実施例においては、底部絞り加工部4の他に背面側絞り加工部19を設けられているので、実施例1の場合のようにプレス絞り加工部が底部絞り加工部4のみである場合より、取付金具1全体の剛性を高めることができる。
【0048】
その一方、背面側絞り加工部19は底部絞り加工部4とは独立したものであり、しかも特許文献1および2に提案されている取付金具のプレス絞り加工部の場合とは異なり、取付金具1全体に対して背面側絞り加工部19が占める大きさは小さくなるので、取付金具1全体の剛性が過度に大きくならないようにすることができる。したがって、実施例1の場合と同様に、特許文献2に提案されている取付金具と比較しても、外壁板2をより柔軟に支持することができ、強風等により外壁板2に大きな力が作用しても、外壁板2が割れてしまう虞を低減するとともに、大きな地震等により大きな衝撃が作用しても、その衝撃を吸収することができる。
【0049】
また、実施例2では、背面側絞り加工部19の深さを変えることにより、建物と外壁板の裏面との間の間隙をそれぞれ別の数値に規定する取付金具を容易に作成することができる。
【0050】
なお、前記各実施例においては、取付部5に外壁板取付金具1を建物躯体3側にビス留めするためのビス穴5bを設けているが、ビス穴5bに代えて、外壁板取付金具1を建物躯体3側に釘留めするための釘穴を設けてもよいし、取付部5にビス穴5bおよび釘穴の両方を設けてもよい。
【実施例3】
【0051】
図24~28は、本発明による外壁板取付金具1の実施例3、
図29は該実施例3の取付金具1を用いた外壁板2の取付構造の一例を示している。本実施例においては、背面側絞り加工部19が実施例2の場合と反対、すなわち建物躯体3と反対側(前方)に凹陥している。
【0052】
他の構成は実施例2と同様である。本実施例においても実施例2と同様の作用効果を得ることができる。
【実施例4】
【0053】
図30~34は、本発明による外壁板取付金具1の実施例4を示している。本実施例においては、側辺部6と底部絞り加工部4の側面とを連続させるとともに、前面折り曲げ部7と底部絞り加工部4の前面部4bとを連続させている。
【0054】
他の構成は実施例3と同様である。本実施例においても実施例3と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように本発明による外壁板取付金具は、外壁板を建物躯体に取り付けるための外壁板取付金具として有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 外壁板取付金具
2 外壁板
3 建物躯体
4 底部絞り加工部
4a 底部絞り加工部の背面部
4b 底部絞り加工部の前面部(外壁板裏面受け部)
5 取付部
5a 取付部の平面部
5b ビス穴
6 側辺部
7 前面折り曲げ部(外壁板裏面受け部)
8 外壁板係合部
9 水抜き穴
10 介装材
11 前方突出部
12 第一の折り曲げ部
13 第二の折り曲げ部
15 第一の実部
16 第二の実部
17 係合溝
18 ビス
19 背面側絞り加工部