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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】段差踏板
(51)【国際特許分類】
   E04G 27/00 20060101AFI20220330BHJP
   E04F 11/00 20060101ALI20220330BHJP
   E04F 15/00 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
E04G27/00
E04F11/00 100
E04F15/00 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019167103
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021042625
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】595099317
【氏名又は名称】株式会社トーテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】浅井 克則
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-207145(JP,A)
【文献】特開2019-124027(JP,A)
【文献】特開2021-8782(JP,A)
【文献】登録実用新案第3154296(JP,U)
【文献】特開2016-44529(JP,A)
【文献】特開2014-124495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 27/00
E04F 11/00
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段差のある上段と下段との境界部の下段側に設置される長方形の基台部と、
前記基台部の前端下部の軸支部を中心として、当該基台部の上方に回動自在に軸支される布板部と、
前記基台部と前記布板部との上段側の間に介在する傾動機構と、を備え、
前記傾動機構は、
前記基台部の後部に前後に架設した螺杆と、
前記螺杆に螺合したネジ部と、
前記ネジ部に当接自在に前記螺杆に遊嵌した支承コマ体と、
前記支承コマ体と前記布板部との間に介設した支承杆と、により構成され、
前記傾動機構の前記ネジ部の前記螺杆に対する回動操作により段差に応じて前記布板部の後部の傾斜角度を変化させることで、当該布板部により段差を解消するためのスロープを形成し、
前記布板部の下面に、当該布板部の変形を防止する複数の補強部材を配設したことを特徴とする段差踏板。
【請求項2】
前記布板部の傾斜始端部を前記布板部とは別体の始端布板とし、
前記始端布板の後端下部を前記基台部の先端部より突出して設けられた枢支部を中心に下方に回動自在に枢支することにより、前記始端布板を前記基台部の先端部の下面に回動可能としたことを特徴とする請求項1に記載の段差踏板。
【請求項3】
前記基台部の先端部には、前記始端布板の回動を規制する回動規制部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の段差踏板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差部分にスロープを形成するための段差踏板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場などにおいて、資材の移送作業を行う際に段差のある部分すなわち段差部が障害となる。例えば作業者が一輪車を押して資材を運搬する場合には、その段差部を乗り越えるのにバランスを崩すおそれがあった。そこで、必要に応じて段差部にはスロープを形成することにより楽に乗り越えられるようにしている。
【0003】
また、工事現場の段差部にスロープを形成する方法には、盛り土を傾斜状に積層し、固めてスロープを形成する方法があるが、屋内の現場では盛り土を行うのは不向きであり、かつスロープが不要となった場合には盛り土を撤去する手間が必要となる。他の方法としては、段差部にあわせて所定の傾斜角度に設定した側面視直角三角形状のスロープ台を用いることも可能である。しかし、スロープ台を段差部に配置した場合には、スロープ台の端部と段差部との間に隙間が生じてしまったり、さまざまな高さの段差に応じてスロープ台の傾斜角度を調節できなかったりするという不便さがあった。
【0004】
このため、段差部との間に通行の障害となる隙間が形成されることなく、段差に応じて無断階にスロープを形成することが可能な段差通路(本発明の段差踏板に相当)が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-207145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、布板の傾動支承機構としてネジ機構と螺杆を利用した伸縮機構としているため機構が複雑となり、しかも、伸縮機構における支承部材が傾斜状の螺杆とその収容部材の構成であるために布板の重量が直接的に螺杆とその収容部材を介してネジ部材にかかることになり、ネジの回動調整作動に支障をきたす可能性があり、さらに、操作性が悪く段差部への設置作業が煩雑となる欠点を有していた。
【0007】
本発明では、かかる課題を解消すべく、段差部の高さに応じて無断階にスロープを形成することができると共に、布板の重量がかかっても傾斜角度の調整が可能な機構とし、段差部への設置作業を短時間で容易に行うことができる段差踏板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、段差のある上段と下段との境界部の下段側に設置される長方形の基台部と、前記基台部の前端下部の軸支部を中心として、当該基台部の上方に回動自在に軸支される布板部と、前記基台部と前記布板部との上段側の間に介在する傾動機構と、を備え、前記傾動機構は、前記基台部の後部に前後に架設した螺杆と、前記螺杆に螺合したネジ部と、前記ネジ部に当接自在に前記螺杆に遊嵌した支承コマ体と、前記支承コマ体と前記布板部との間に介設した支承杆と、により構成され、前記傾動機構の前記ネジ部の前記螺杆に対する回動操作により段差に応じて前記布板部の後部の傾斜角度を変化させることで、当該布板部により段差を解消するためのスロープを形成し、前記布板部の下面に、当該布板部の変形を防止する複数の補強部材を配設したことを特徴とする段差踏板とした。
【0009】
また、前記布板部の傾斜始端部を前記布板部とは別体の始端布板とし、前記始端布板の後端下部を前記基台部の先端部より突出して設けられた枢支部を中心に下方に回動自在に枢支することにより、前記始端布板を前記基台部の先端部の下面に折り畳み自在としたことを特徴とする。
【0010】
また、前記基台部の先端部より突出して設けられた前記枢支部には、前記始端布板の回動を規制する回動規制部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、段差のある上段と下段との境界部の下段側に設置される長方形の基台部と、基台部の前端下部の軸支部を中心として、基台部の上方に回動自在に軸支される布板部と、基台部と布板部との上段側の間に介在する傾動機構と、を備え、傾動機構は、基台部の後部に前後に架設した螺杆と、螺杆に螺合したネジ部と、ネジ部に当接自在に螺杆に遊嵌した支承コマ体と、支承コマ体と布板部との間に介設した支承杆と、により構成され、傾動機構のネジ部の螺杆に対する回動操作により段差に応じて布板部の後部の傾斜角度を変化させることで、当該布板部により段差を解消するためのスロープを形成するためのものである。この構成により、傾動機構のネジ部の螺杆に対して回動操作するという簡易な作業により、螺杆にネジ結合されるネジ部の締結位置が変化して支承コマ体の位置を変位させる。これにより、支承杆の傾斜角度が変化して布板部の上段側を所定の傾斜角度で保持することができる。これにより、段差のある上段と下段との境界部への段差踏板の設置作業を短時間で容易に行うことができる。さらに、布板部の下面に当該布板部の変形を防止する複数の補強部材を配設したことにより、重量物を積載した台車等が、布板部の中央部や四側端近傍を通過する場合でも当該布板部の変形を防止して安全に通行することができる。
【0012】
また、布板部の傾斜始端部を布板部とは別体の始端布板とし、始端布板の後端下部を前記基台部の先端部より突出して設けられた枢支部を中心に下方に回動自在に枢支することにより、始端布板を基台部の先端部の下面に折り畳み自在としたので、段差踏板の未使用時には、始端布板を、枢支部を中心に下方に回動して全長を短くしたコンパクトな収納形態とすることができる。
【0013】
また、基台部の先端部より突出して設けられた枢支部には、始端布板の回動を規制する回動規制部を設けたことにより、始端布板の回動を規制した状態で作業者は段差踏板の運搬や設置を行うことができ、始端布板の回動により作業者の手や指等が始端布板と基台部の先端部の下面との間に挟まれる事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の段差踏板の設置状態を示す側面図である。
図2】本実施形態の段差踏板の構成を示す斜視図である。
図3】本実施形態の段差踏板の使用状態及び収納状態示す側面図である。
図4】本実施形態の段差踏板の傾動機構を示す平面拡大図である。
図5】本実施形態の段差踏板の終端布板の回動規制部を示す底面図である。
図6】本実施形態の段差踏板の終端布板の回動規制部を示す側面図である。
図7】本実施形態の段差踏板の布板部の下面に配設された複数の補強部材を示す側面及び底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の要旨は、段差のある上段と下段との境界部の下段側に設置される長方形の基台部と、前記基台部の前端下部の軸支部を中心として、当該基台部の上方に回動自在に軸支される布板部と、前記基台部と前記布板部との上段側の間に介在する傾動機構と、を備え、前記傾動機構は、前記基台部の後部に前後に架設した螺杆と、前記螺杆に螺合したネジ部と、前記ネジ部に当接自在に前記螺杆に遊嵌した支承コマ体と、前記支承コマ体と前記布板部との間に介設した支承杆と、により構成され、前記傾動機構の前記ネジ部の前記螺杆に対する回動操作により段差に応じて前記布板部の後部の傾斜角度を変化させることで、当該布板部により段差を解消するためのスロープを形成し、前記布板部の下面に、当該布板部の変形を防止する複数の補強部材を配設したところにある。
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき詳説する。図1は、本実施形態の段差踏板の設置状態を示す側面図である。図2は、本実施形態の段差踏板の構成を示す斜視図である。図3は、本実施形態の段差踏板の使用状態及び収納状態示す側面図である。図4は、本実施形態の段差踏板の傾動機構を示す平面拡大図である。図5は、本実施形態の段差踏板の始端布板の回動規制部を示す底面図である。図6は、本実施形態の段差踏板の始端布板の回動規制部を示す側面図である。図7は、本実施形態の段差踏板の布板の下面に配設された複数の補強部材を示す側面及び底面図である。
【0017】
図1図3に示すように、本実施形態の段差踏板Kは、上段B1に対して低い段差の下段B2に設置され、上段B1と下段B2との境界部Bに傾斜面を備えた布板部12の布板表面11により段差を解消するためのスロープSを形成するものである。
【0018】
段差踏板Kは、境界部Bの下段B2に配置される略長方形の基台部10と、同長方形の布板部12と、基台部10に対する布板部12の上段側の傾斜角度を調節する傾動機構Aとを備えたものである。なお、基台部10、布板部12としては、ある程度の重量に耐え得る鋼材や鋼板等が好適に用いられるが、特に素材が限定されるものではなく、スロープS上を通過する人や台車の重量により変形や破損しない素材であればよい。また、布板部12の布板表面11には滑り止め加工が施された縞鋼板が好適に用いられる。
【0019】
布板部12は、基台部10の先端の軸支部10aで、基台部10の上方に布板部12の後端(上段B1側)を回動自在に軸支されている。布板部12の後端(上段B1側)には、基台部10の後部よりも突設した架部12aを備えている。この架部12aは、境界部Bの上段B1に掛け渡して設置するためのものであり、スロープSの境界部Bにおける隙間(段差踏板Kと境界部Bとの間の空隙)が生じることを防止するためのものである。
【0020】
一方、基台部10の先端から突出した枢支部10bには、布板部12とは別体の側面視三角形状の始端布板13の後端下部13aが取り付けられる。このように、始端布板13の後端下部13aを基台部10の先端から突出した枢支部10bに枢支することにより、この始端布板13は枢支部10b(後端下部13a)を中心に下方に回動自在とする構成としている。
【0021】
このように、段差踏板Kの傾斜始端部(図中左端部)は、布板部12とは別体の始端布板13とし、さらに、始端布板13の後端下部13aを基台部10の枢支部10bを中心に下方に回動可能に枢支している。この構成により、図3(a)に示すように、段差踏板Kの使用時(つまり、設置時)には、始端布板13は、基台部10の枢支部10bの前方に水平に延長された状態に回動させて使用される。このとき、布板部12は、基台部10の先端の軸支部10aを中心として布板部12の後部(上段B1側)を後述の傾動機構Aを操作して上方に変位させて、布板部12の上段B1側の架部12aを上段B1に掛け渡たした状態で設置(図1参照)される。
【0022】
本実施形態の段差踏板Kは、図1に示すように、始端の始端布板13、布板部12の後部(上段B1側)を高くした布板表面11、終端の架部12aにより、段差部分に緩斜面のスロープSを形成することができる。これにより、例えば、工事現場においては、資材等を積んだ台車D(図3(a)参照)や作業者(図示せず)が段差部分に隙間なく形成された緩斜面のスロープSを安全に通行することができる。なお、本実施形態の段差踏板Kは、工事現場で使用されるだけではなく、段差のある場所に任意の設置することができ、例えば、公共施設の段差のある出入口に設置して、車椅子等が通行可能なスロープを形成することもできる。
【0023】
また、段差踏板Kの不使用時(つまり、保管収納時)には、図3(b)に示すように、布板部12は、基台部10の先端の軸支部10aを中心として布板部12の後部(上段B1側)を後述の傾動機構Aを操作して下方に変位させて、基台部10と布板部12とを一体に重ねる。さらに、図3(c)に示すように、始端布板13は枢支部10bを中心に下方に回動させて、基台部10の先端部の下面に当接するように折り畳むことで、段差踏板Kの保管収納時の全長を短くして、段差踏板Kの保管スペースの省スペース図るようにしている。
【0024】
このとき、布板部12の後端と基台部10の後端は係止機構により布板部12と基台部10とが一体に係止される。係止機構は、図3及び図4に示すように、布板部12の後端の略中央部に設けられた係止板43bと、基台部10の後端の略中央部に設けられた係止ピン43aとにより構成されている。係止ピン43aは、平面視でフック状に形成され、係止ピン43aのフック状のピンの先端を、係止板43bの略中央部に設けられた係止穴に挿入することで、保管収納時の段差踏板Kの布板部12と基台部10とが一体に係止される構成としている。
【0025】
また、基台部10の両側部10d,10dには、左右二個の運搬のための把持部15,15が設けられている。この把持部15は、不使用時には基台部10の両側部10d,10dに当接して収納され、使用時に基台部10の両側部10d,10dから使用者が把持可能なように引き出せる構成としている。
【0026】
以下、図4を参照して、傾動機構Aの構成及び動作を説明する。図4に示すように、傾動機構Aは、基台部10の後部10cの前後に架設した螺杆16と、螺杆16に螺合したネジ部17と、ネジ部17に当接自在に螺杆16に遊嵌した支承コマ体18と、支承コマ体18と布板部12との間に介設した支承杆19とより構成される。基台部10の後部10cには、螺杆16を架設するための前後取付片10f,10fを突設している。支承コマ体18は、螺杆16を挿通して遊嵌する挿通孔18aを穿設している。
【0027】
また、本実施形態の傾動機構Aは、基台部10の後部10cの左右2ヶ所に設ける構成としており、支承コマ体18,18同士は、連結体20を介して連結されている。支承杆19は、その両端のうち一端の支承先端部19aは、支承杆19を架設するために、布板部12の下面に突設された取付部12b,12b間に枢支しており、他端の支承基部19bは、支承コマ体18と連結体20との間に枢支している。
【0028】
基台部10の両側部10dには、布板部12の架部12aの高さを示す目盛Mが刻印されている。すなわち、本実施形態の傾動機構Aは、目盛Mに表示されている数値(図4(b)では、0~250)にネジ部17の中央の線を合わせるだけで、布板部12の架部12aの高さを調整可能な構成としている。これにより、基台部10の後部10cの左右2ヶ所に設けた傾動機構Aのネジ部17の中央の線を同じ数値に合わせるだけで、布板部12の後端側(上段B1側)の架部12aを水平に同じ高さに保つことができるようにしている。
【0029】
つまり、布板部12の傾斜角度は、螺杆16に螺合したネジ部17を、水平方向に変位させることで、支承コマ体18の位置が変化する。これにより、支承コマ体18に他端の支承基部19bが枢支された支承杆19の立ち上がりの角度が変化する。つまり、布板部12の傾斜角度は、ネジ部17の水平方向の移動に応じて変位し、布板部12の架部12aの高さが決まることになる。
【0030】
本実施形態の段差踏板Kを、段差のある上段B1と下段B2との境界部Bの下段B2側に設置用することによって、人力により境界部Bに容易にスロープを形成することができる。本実施形態の段差踏板Kの設置方法としては、左右の把持部15,15を把持して境界部Bの下段B2の所定の位置に基台部10を配置する。なお、基台部10の先端の下面に折り畳み収納された始端布板13は、基台部10の先端と水平状態になるように回動させる。
【0031】
そして、傾動機構Aの操作により段差に応じて布板部12の傾斜角度を変化させる。具体的には、傾動機構Aの螺杆16に螺着しているネジ部17を回動して、螺杆16の前後方向(図4では、左右方向)に変位させる。これにより、螺杆16に遊嵌している支承コマ体18が螺杆16に沿って前後変位する。これにより、支承杆19の傾斜角度も変化し、布板部12の傾斜角度も変化する。このように、本実施形態の傾動機構Aでは、螺杆16に螺着しているネジ部17を回動操作するだけで、支承杆19の傾斜角度を調整することができ、布板部12の架部12aの高さを調整することができる。
【0032】
このように、境界部Bの高さに応じて傾動機構Aを操作して、布板部12を最適な傾斜角度に設定することによりスロープSを形成することができる。次に、布板部12の架部12aを上段B1に架け渡すことによりスロープSが完成する。
【0033】
つまり、本実施形態の段差踏板Kを使用する際には、螺杆16に螺着しているネジ部17を螺進する方向(図4では、左方向)に回動操作して、ネジ部17の螺進にともない、螺杆16に遊嵌した支承コマ体18が変位する。これにより、支承杆19の傾斜角度も変化し、布板部12の傾斜角度を大とすることができる。なお、本実施形態においては、螺杆16に螺着しているネジ部17の前後方向の変位は、ネジ部17を回動操作しない限り変位しないものが好適に用いられるため、布板部12の使用時における布板部12の自重やその上部を通行する台車や作業者に重量によるネジ部17の螺進により、自動的に支承コマ体18は螺杆16に沿って変位して支承杆19の傾斜角度が小さくならないようにしている。なお、段差踏板Kを片付ける際には、上記設置方法と逆の手順を行うことにより短時間で片付けることができる。
【0034】
また、図5及び図6に示すように、本実施形態の段差踏板Kの基台部10の先端には、始端布板13の回動を規制する回動規制部21を設けている。この回動規制部21は、図5に示すように、基台部10の裏側の先端に突出して設けられた設置部10eの先端に設けられている。なお、図5は、始端布板13と基台部10の先端との接続部を裏面から見た図である。
【0035】
回動規制部21は、水平方向に楕円形状の長孔24bが形成された側面視L字状の移動板24と、この移動板24の水平方向の移動を規制する規制板22とを有し、移動板24と規制板22は、ボルト23bに蝶ナット23aを締めつけることで、設置部10eに移動板24と規制板22とを一体に固設する構成としている。そして、始端布板13の回動を規制しない状態では、図6(a)に示すように、移動板24の上部当接部24aと始端布板13の補強板13bとが離間した状態で、蝶ナット23aを締めつけて、設置部10eに移動板24と規制板22とを一体に固設している。この状態では、始端布板13は、基台部10の先端の枢支部10bを中心として下方に回動可能である。
【0036】
図6(a)に示す状態から、蝶ナット23aを緩め、図6(b)に示すように、移動板24を長孔24bに沿って右方向に移動させる。これにより、移動板24の上部当接部24aと始端布板13の補強板13bが当接する。さらに、図6(c)に示すように、規制板22を90度右回りに回動させて規制板22の先端22aを移動板24の一側端面24cに当接させる。規制板22の先端22aは、移動板24の側面21cに向かって屈折した形状としている。この状態で、蝶ナット23aを締めると、図6(c)に示すように、移動板24の上部当接部24aと始端布板13の補強板13bが当接した状態で固設されて、始端布板13は下方に回動することが規制される。
【0037】
この回動規制部21の構成により、例えば、図1に示す、段差踏板Kを上段B1と下段B2との境界部Bの下段B2に設置してスロープSを形成している状態では、図6(c)に示すように、始端布板13の下方への回動を規制した状態にしておくことが望ましい。これにより、始端布板13の回動を規制した状態で作業者は段差踏板Kの運搬や設置を行うことができるので、始端布板13の意図しない回動により、作業者の手や指等が始端布板13と基台部10の先端部の下面との間に挟まれる等の事故を防止することができ、段差踏板Kの取り扱いの安全性を高めることができる。
【0038】
そして、段差踏板Kの未使用状態(収納状態)では、図6(a)に示すように、始端布板13の下方への回動を規制しない状態として、図3(c)に示すように、始端布板13を基台部10の先端部の下面に当接するように折り畳んだ状態として、保管・収納することで、段差踏板Kの収納スペースを節約することができる。
【0039】
上述したように、本実施形態の段差踏板Kは、始端の始端布板13、布板部12の後部(上段B1側)を高くした布板表面11、終端の架部12aにより、段差部分に緩斜面のスロープSを形成する。このスロープSを形成する布板部12(布板表面11)は、スロープS上を通行する人や台車等の重量により変形やたわみが生じて通行に支障をきたす可能性がある。この対策として、布板表面11に用いられる縞鋼板を厚くすることが考えられるが、厚い縞鋼板を用いると段差踏板Kそのものの重量が嵩んでしまい、設置作業や運搬作業に支障が出る。このため、本実施形態では、布板表面11に用いられる縞鋼板を厚くする代わりに布板表面11の裏面11bに複数の補強部材を配設している。
【0040】
以下、図7を参照して布板表面11の裏面11bに配設された複数の補強部材の構成を説明する。以下、複数の補強部材(第一補強部材30、第二補強部材31、第三補強部材32、第四補強部材33等)は、U字鋼や中空の角鋼等が好適に用いられ、布板表面11の裏面11bにそれぞれ溶接(スポット溶接)されて取り付けられている。
【0041】
図7(b)に示すように、布板表面11の裏面11bの長手方向の両側端部には、始端部(始端布板13側)から略中央部にかけてそれぞれ第一補強部材30,30が配設されている。そして、第一補強部材30,30に続いて、布板表面11の裏面11bの両側端部の長手方向の略中央部からに布板表面11の終端部(架部12a側)にかけて、それぞれ第二補強部材31,31が配設されている。さらに、布板表面11の裏面11bの長手方向の略中央部には第三補強部材32,32が配設されている。また、布板表面11の裏面11bの短手方向の両側端部には、それぞれ第四補強部材33,33が配設されている。
【0042】
また、図7(a)に示すように、布板表面11の裏面11bの両側端部の長手方向にそれぞれ設けられている第一補強部材30,30と第二補強部材31,31とを比較すると、第二補強部材31、31のほうが第一補強部材30、30よりも垂直方向の厚みが薄い。これは、段差踏板Kの不使用時(つまり、保管収納時)に、布板部12を基台部10の先端の軸支部10aを中心として布板部12の終端部(架部12a側)を、傾動機構Aを操作して下方に変位させて、基台部10と布板部12とを一体に重ねた状態(図3(b)参照)とする場合に、第二補強部材31,31の下部が傾動機構Aの構成部材(螺杆16、ネジ部17、支承コマ体18等)に当接するのを防止するためである。
【0043】
また、第二補強部材31,31と第三補強部材32,32とは、布板表面11の裏面11bの短手方向に2枚の板状(鋼板)の連結板34で連結されている。連結板34は、第二補強部材31の略中央部とこの略中央部から終端部(架部12a側)に所定距離をおいて布板表面11の裏面11bの短手方向に2枚設けられている。2枚の板状の連結板34は、一端を第三補強部材32の側面に連結され、他端を第二補強部材31に形成された連結孔31aに挿入した状態で連結されている。この2枚の連結板34と第二補強部材31,31及び第三補強部材32,32との連結は溶接(スポット溶接)で行われる。このように、第二補強部材31,31と第三補強部材32,32とを2枚の連結板34で布板表面11の裏面11bの短手方向に連結することで、第一補強部材30,30よりも垂直方向の厚みが薄い第二補強部材31,31による布板表面11の裏面11bの補強を強化する構成としている。なお、この他、布板表面11の裏面11bの長手方向の略中央部に配設された2個の第三補強部材32,32間においても、所定間隔を置いて連結板34のように複数の鋼板を溶接して2個の第三補強部材32,32間を連結し、布板表面11の裏面11bの補強を強化してもよい。
【0044】
上記のように、布板表面11の裏面11bの四側端部及び長手方向の略中央部に複数の補強部材を配設したことにより、重量物を積載した台車等が、布板部12の布板表面11の中央部や長手方向の両側端近傍の脆弱な場所を通過する場合でも、当該布板部12として用いられる縞鋼板のたわみや変形を変防止することができ、作業者や荷物を載置した台車等が安全にスロープSを形成する布板部12の布板表面11を通過することができる。
【0045】
また、本実施形態の段差踏板Kの使用例としては、複数の段差踏板K,Kを一直線上に連ねてスロープを形成することによって、高低差の大きな境界部Bに傾斜角度の小さな、つまり、傾斜の緩やかなスロープを形成することができる。また、段差踏板Kは水平方向にも隣接して複数並設することもできるので、形成されるスロープの幅を大きくすることができ、幅広な作業通路を確保することができる。
【0046】
なお、本実施形態において傾動機構Aは、基台部10の後部10cの左右2ヶ所に設けるようにしたが、左右何れかにのみ設けるようにしてもよい。また、中央の一箇所に設けるようにしてもよい。
【0047】
以上、上述した実施形態を通して本発明を説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、上述した各種効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
K 段差踏板
A 傾動機構
B 境界部
B1 上段
B2 下段
M 目盛
10 基台部
10a 軸支部
10b 枢支部
10c 後部
10d 両側部
10e 設置部
10f 前後取付片
11 布板表面
12 布板部
12a 架部
13 始端布板
13a 後端下部
15 把持部
16 螺杆
17 ネジ部
18 支承コマ体
19 支承杆
19a 支承先端部
19b 支承基部
20 連結体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7