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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】FRP成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/06 20060101AFI20220330BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20220330BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20220330BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220330BHJP
   D04B 1/14 20060101ALI20220330BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C08J5/06 CFC
B32B27/12
B32B7/02
D03D1/00 A
D04B1/14
D04B21/00 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017169756
(22)【出願日】2017-09-04
(65)【公開番号】P2019044093
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】西川 康博
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-099537(JP,A)
【文献】特公昭47-011678(JP,B1)
【文献】特開平10-016070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0273161(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B29B 11/16
B29B 15/08 - 15/14
C08J 5/04 - 5/10
C08J 5/24
B29C 41/00 - 41/36
B29C 41/46 - 41/52
B29C 70/00 - 70/88
B32B 1/00 - 43/00
D03D 1/00 - 27/18
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝繊維材と、該緩衝繊維材を被覆する被覆材とを含み、
前記緩衝繊維材が、
繊維を含有する繊維基材と、該繊維基材の少なくとも一方の面上に、平面視において規則的又は不規則的なパターンで配置した緩衝材とを含み、
前記被覆材が、硬化型樹脂を含有し、
前記繊維が、強化繊維を含有し、
前記繊維基材の前記緩衝材が配置されている部分における前記緩衝材の占有率が、10~90%である、FRP成形品。
【請求項2】
前記緩衝繊維材を複数含み、前記複数の緩衝繊維材が積み重なった形態である、請求項1記載のFRP成形品。
【請求項3】
前記強化繊維が炭素繊維を含む、請求項1又は2記載のFRP成形品。
【請求項4】
前記繊維基材が布帛を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のFRP成形品。
【請求項5】
前記布帛が、織物、編物、及び不織布からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項4記載のFRP成形品。
【請求項6】
前記緩衝材が、衝撃吸収特性を有し、
前記強化繊維が炭素繊維を含み、
前記硬化型樹脂がエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載のFRP成形品。
【請求項7】
前記パターンが、点在する複数の突状体で構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のFRP成形品。
【請求項8】
前記突状体の形状が、平面視において円形状及び多角形状のいずれかである、請求項7記載のFRP成形品。
【請求項9】
前記パターンが、網状に形成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のFRP成形品。
【請求項10】
前記網状に形成されたパターンの網目が、円形状の形態及び多角形状の形態のいずれかである、請求項9記載のFRP成形品。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のFRP成形品を製造する方法であって、
強化繊維を含有する繊維基材の少なくとも一方の面に、緩衝材を平面視において規則的な又は不規則的なパターンで配置して緩衝繊維材を得る工程と、
前記緩衝繊維材を硬化型樹脂で被覆する工程と、を含み、
前記繊維基材の前記緩衝材を配置する部分における前記緩衝材の占有率が、10~90%である、FRP成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(以下、「FRP」という。)は、軽量かつ高い強度及び高い弾性率を有することから、浴槽などの生活品から航空宇宙分野、自動車等の移動体分野、スポーツ分野等に広く活用されている。FRPの中でも、繊維が炭素繊維である炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP」という。)は、弾性率、強度が特に優れていることから、注目されており利用が拡大している。
【0003】
近年、FRPは、ヘルメット等の保護具、スマートフォンケース等の家電分野等への用途拡大が検討されており、これらの用途に用いるためには、耐衝撃性の向上が重要となる。CFRPは、特に割れやすい脆性材料であるため、耐衝撃性を向上することが強く求められている。
【0004】
特許文献1には、深み感のある高い意匠性の模様が付与され、耐熱性、耐衝撃性、及び断熱性に優れたFRP成形品を提供することを目的として、最表面が透明ゲルコート層であり、その内側の層が特定の多色ゲルコート層であり、その内側の層が、所定の強化繊維を含有する強化繊維補強樹脂層であり、該樹脂層にさらに合成樹脂発泡層が積層されているFRP成形品が開示されている。この文献には、実施例1において、最表面側から内側に向かって、特定の透明ゲルコート層、特定の多色ゲルコート層、ガラス繊維を含有する強化繊維補強樹脂層、補強材、裏打ち層、及びウレタン樹脂発泡層が形成されたFRP製浴槽を作製したことが記載されている。また、この文献には、実施例1のFRP製浴槽について、110gの鋼球を2mの高さより浴槽中央部に落下させる落球衝撃試験を行った結果、浴槽表面に、クラック、欠け等の外観以上が生じなかったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-16070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の実施例1のように、強化繊維補強樹脂層に、比較的柔らかい合成樹脂発泡層を積層すると、強度及び弾性率が低下する。また、この文献の実施例1では、合成樹脂発泡層の厚さが増すだけでなく、十分な強度を確保するための補強材、及び該補強材を固定するための裏打ち層を形成する必要があり、これらの層の厚さも増すため、この文献に記載の方法では、厚さが薄い成形品を製造できない。さらに、この文献に記載の方法では、強化繊維補強樹脂層に合成樹脂発泡層が積層された積層体とするため、成形品の物性を部分的に制御することができない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、高い強度と、高い弾性率と、優れた耐衝撃性とを同時に満たすFRP成形品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、繊維を含有する繊維基材の少なくとも一方の面に、緩衝材を平面視において規則的な又は不規則的なパターンで配置して得られる緩衝繊維材を樹脂で被覆すると、得られるFRP成形品は、高い強度と、高い弾性率と、優れた耐衝撃性とを同時に満たすことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明のFRP成形品は、緩衝繊維材と、該緩衝繊維材を被覆する被覆材とを含み、前記緩衝繊維材が、繊維を含有する繊維基材と、該繊維基材の少なくとも一方の面上に、平面視において規則的又は不規則的なパターンで配置した緩衝材とを含み、前記被覆材が、硬化型樹脂を含有し、前記繊維が、強化繊維を含有し、前記繊維基材の前記緩衝材が配置されている部分における前記緩衝材の占有率が、10~90%である。本発明のFRP成形品は、緩衝繊維材を複数含み、前記複数の緩衝繊維材が積み重なった形態であることが好ましい。前記強化繊維は、炭素繊維を含むことが好ましい。前記繊維基材は、布帛を含むことが好ましく、前記布帛は、織物、編物、及び不織布からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。前記緩衝材は、衝撃吸収特性を有することが好ましい。前記パターンは、点在する複数の突状体で構成されていることが好ましく、前記突状体の形状は、平面視において円形状及び多角形状のいずれかであることが好ましい。前記パターンは、網状に形成されていることが好ましく、前記網状に形成されたパターンの網目は、円形状の形態及び多角形状の形態のいずれかであることが好ましい。前記硬化型樹脂は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0010】
本発明のFRP成形品の製造方法は、本発明のFRP成形品を製造する方法であって、強化繊維を含有する繊維基材の少なくとも一方の面に、緩衝材を平面視において規則的な又は不規則的なパターンで配置して緩衝繊維材を得る工程と、前記緩衝繊維材を硬化型樹脂で被覆する工程と、を含み、前記繊維基材の前記緩衝材を配置する部分における前記緩衝材の占有率が、10~90%である
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い強度と、高い弾性率と、優れた耐衝撃性とを同時に満たすFRP成形品及びその製造方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明のFRP成形品の一例を示す概略平面図である。
図2図2は、図1のFRP成形品のA-A’線による概略断面図である。
図3図3は、実施例1-1のCFRP成形品におけるパターンを示す概略図である。
図4図4は、実施例1-11のCFRP成形品におけるパターンを示す概略図である。
図5図5は、実施例1-12のCFRP成形品におけるパターンを示す概略図である。
図6図6は、実施例1-13のCFRP成形品におけるパターンを示す概略図である。
図7図7は、実施例1-14のCFRP成形品におけるパターンを示す概略図である。
図8図8は、落錘衝撃試験後の実施例2、比較例2、及び参考例のCFRP成形品の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
[1.FRP成形品]
本実施形態のFRP成形品は、緩衝繊維材と、該緩衝繊維材を被覆する被覆材とを含み、前記緩衝繊維材が、繊維を含有する繊維基材と、該繊維基材の少なくとも一方の面上に、平面視において規則的又は不規則的なパターン(以下、「特定のパターン」ともいう。)で配置した緩衝材とを含み、前記被覆材が、樹脂を含有する。本実施形態のFRP成形品の一例を図1及び図2に示す。図1は、そのFRP成形品を概略的に示す平面図(ただし、説明のために後述の緩衝繊維材3を透視させている。)であり、図2は、図1のA-A’線による断面を概略的に示す断面図である。図1及び図2に示すFRP成形品100は、繊維を含有するシート状の繊維基材1と、繊維基材1の片面に配置した緩衝材2とを有する緩衝繊維材3を5つ含み、5つの緩衝繊維材3が、片面を上面とし、片面と反対側の面を下面として、片面に対し直行する方向に積み重ねられており、この積み重ねられた5つの緩衝繊維材3を被覆材4が被覆している。緩衝材2は、平面視において円形状である複数の突状体5で構成されており、複数の突状体5は、互いに所定距離をおいて、繊維基材1の片面全体に均一に点在しており、平面視において、水玉模様のパターンを形成している。
【0015】
特許文献1に記載のFRP成形品のように、強化繊維補強樹脂層に柔らかい合成樹脂発泡層を積層すると、合成樹脂発泡層が衝撃を吸収する緩衝材としての役割を果たすことを主因として、FRP成形品の耐衝撃性を向上することができる。しかしながら、このFRP成形品では、高い強度及び弾性率を有する強化繊維補強樹脂層の表面に、全体的に亘って、低い強度及び弾性率を有する合成樹脂発泡層を配置していることを主因として、FRP成形品全体としての強度及び弾性率が十分ではない。このため、特許文献1記載のFRP成形品では、強度を補強するための補強材及びこの補強材を固定するための裏打ち層を形成する必要がある。これに対し、本発明のFRP成形品は、繊維基材の片面の一部に、衝撃を緩和する緩衝材が、特定のパターン形状を形成しながら配置しており、この形態を被覆材が被覆していることを主因として、高い強度と、高い弾性率と、優れた耐衝撃性を同時に満たすことができる。このため、本発明のFRP成形品は、強度を補強するための部材を備えなくても、簡易な構成により、高い強度及び弾性率を維持したまま耐衝撃性を向上できる。
【0016】
[1-1.緩衝繊維材]
緩衝繊維材は、繊維基材と、該繊維基材の少なくとも一方の面上に、特定のパターンで配置した緩衝材とを含む。
【0017】
[(A)繊維基材]
繊維基材は、例えば、繊維を含有するシート状の基材である。繊維としては、特に制限されず、例えば、FRP成形品の材料として、通常用いられる強化繊維が挙げられる。強化繊維としては、例えば、無機繊維(例えば、ガラス繊維及び炭素繊維)及び有機繊維(例えば、アラミド繊維及びポリエステル繊維)が挙げられる。これらの強化繊維は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。強化繊維は、これらの中でも、無機繊維であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。本明細書にいう「炭素繊維」とは、不活性気体中で加熱分解して得られる炭素を主成分とする繊維をいい、炭化繊維ともいう。
【0018】
炭素繊維は、比較的高い強度、高い弾性率、及び優れた軽量性を有しているため、FRP成形品の材料として特に有用であるが、割れやすい脆性材料であるため、炭素繊維を用いたFRP成形品(CFRP成形品)は、その用途が限定されるという問題点がある。これに対し、本実施形態のFRP成形品は、優れた耐衝撃性を有しており、繊維として炭素繊維を用いても、脆性破壊を十分に抑えることができるため、優れた特性(高い強度、高い弾性率、及び軽量性)を有する成形品を広範囲の用途に適用することができる。
【0019】
炭素繊維の種類としては、特に限定されないが、例えば、PAN系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、及びピッチ系炭素繊維が挙げられる。これらの炭素繊維は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、生産性の観点から、PAN系炭素繊維であることが好ましい。
【0020】
炭素繊維の引張強度(MPa)は、特に限定されないが、例えば、2500~6500MPaであり、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、3000~5000MPaであることが好ましく、3000~4000MPaであることがより好ましい。また、炭素繊維の引張弾性率(GPa)は、特に限定されないが、例えば、200~650GPaであり、本発明の作用効果をより一層確実にかつ有効に奏する観点から、200~400GPaであることが好ましく、200~300GPaであることがより好ましい。炭素繊維の引張強度及び引張弾性率は、JIS R 7606-2000の方法により測定することができる。また、ここでいう、炭素繊維の引張強度及び引張弾性率は、それぞれ23℃の温度で測定された引張強度及び引張弾性率をいう。
【0021】
炭素繊維のフィラメント数は、特に限定されず、例えば、1000~50000本であり、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、2000~24000本であることが好ましく、3000~6000本であることがより好ましい。
【0022】
繊維基材は、緩衝材を特定のパターンで配置可能な面(例えば、平面)を有する形態であれば、特に限定されず、例えば、シート状の形態が挙げられ、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、シート状の形態であることが好ましい。繊維基材がシート状の形態である場合、繊維基材は、緩衝材をより一層安定に配置できる観点から、布帛及び/又は紙を含むことが好ましく、布帛を含むことがより好ましい。本明細書において、「布帛」とは、布状の形態を包含する概念をいう。布帛は、例えば、織物、編物(ニット)、不織布、及びフェルトからなる群より選択される少なくとも1種を含み、緩衝材をより一層安定に配置できる観点から、織物、編物(例えば、緯編及び経編)、及び不織布からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、織物を含むことがより好ましい。織物の組織としては、例えば、三原組織(平織、綾織、及び朱子織)、変化組織、及び多重組織が挙げられ、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、三原組織であることが好ましく、平織組織であることがより好ましい。
【0023】
[(B)緩衝材]
本明細書において、「緩衝材」とは、例えば、外部からの衝撃を緩衝又は緩和するための衝撃緩衝材(衝撃緩和材)をいう。緩衝材は、耐衝撃性をより一層向上する観点から、衝撃吸収特性(例えば、ゴム弾性)を有することが好ましい。
【0024】
緩衝材は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、中身の詰まった中実状の形態であることが好ましい。ここでいう中実状の形態は、内部に隙間が形成されていない形態であってもよく、内部に少し(例えば50%未満、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下)隙間又は孔が形成された形態(例えば、多孔質状の形態)であってもよい。
【0025】
緩衝材は、例えば、外部からの衝撃を緩衝又は緩和するために、衝撃吸収特性(例えば、ゴム弾性)を有する軟質樹脂を含有する。前記軟質樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、及び合成ゴム、及び熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びスチレン系エラストマー)などの熱可塑性樹脂が挙げられ、半硬化又は硬化した状態であってもよい。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱可塑性樹脂は、これらの中でも、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、合成ゴムであることが好ましい。合成ゴムとしては、例えば、アクリル系ゴム、オレフィン系ゴム、ジエン系ゴム、ウレタン系ゴム、シリコン系ゴム及びフッ素系ゴムが挙げられ、これらの中でも、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、アクリル系ゴムであることが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、公知の方法で調製してもよく、市販品を用いてもよい。市販品としては、セイカプレンLX10、LX-20、LX-30White、LX-M1、LX-M2、LX-M3 White、ER-111C、ER-222M、ER-333W、SR-500W(K)、SR-510(K)、UD-900 White、UD-910(いずれも大日精化工業株式会社製製品)が挙げられる。
【0026】
緩衝材は、必要に応じて、慣用の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、耐衝撃改良剤、粘度調整剤、増粘剤、着色剤、安定化剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、防腐剤、及び防菌剤が挙げられる。
【0027】
本実施形態の緩衝繊維材では、緩衝材が繊維基材の少なくとも一方の面に配置されていればよく、他の面(例えば、片面と反対側の面)に配置されていてもよい。
【0028】
本実施形態の緩衝繊維材では、緩衝材が繊維基材の一方の面上に、規則的又は不規則的なパターンで配置している。パターンが、点在する複数の突状体で構成されている場合、「規則的なパターン」とは、突状体が一定の規則性をもって配置していることをいい、「不規則的なパターン」とは、複数の突状体が不規則的に又はランダムに配置していることをいう。一方、パターンが網状に形成されている場合、「規則的なパターン」とは、網状に形成されたパターンの網目が一定の規則性をもって配置していることをいい、「不規則的なパターン」とは、パターンの網目が不規則的に又はランダムに配置していることをいう。
いう。
【0029】
本実施形態の緩衝繊維材では、必ずしも、緩衝材が繊維基材の一方の面全体に亘って規則的又は不規則的なパターンで配置される必要はなく、面の一部に、すなわち部分的に規則的又は不規則的なパターンで配置されていてもよい。
【0030】
パターンは、強度及び弾性率をより一層高くできる観点から、点在する複数の突状体(例えば、棒状体)で構成されていることが好ましい。突状体は、例えば、ブロック状の形態であってもよく、その断面形状は特に限定されず、例えば、四角形状(例えば、台形状及び長方形状)、凹字状であってもよい。突状体の平面視における形状は、円形状及び多角形状のいずれかであることがより好ましい。円形状とは、例えば、真円状、楕円状、及び卵形状が挙げられ、これらの一部が切り欠かれた形状(例えば、半円状及び三日月状)であってもよい。多角形状とは、例えば、三角形状、四角形状、菱形状、五角形状、六角形状、五角星形状、及び六角星形状が挙げられる。複数の突状体は互いに同一の形状であってもよく、互いに異なる2種以上の形状であってもよく、円形状と多角形状とを組み合わせもよい。
【0031】
パターンは、強度及び弾性率をより一層高くできる観点から、網状に形成されていることが好ましく、網状に形成されたパターンの網目は、円形状の形態及び多角形状の形態のいずれかであることが好ましい。円形状とは、例えば、真円状、楕円状、及び卵形状が挙げられ、これらの一部が切り欠かれた形状(例えば、半円状及び三日月状)であってもよい。多角形状とは、例えば、三角形状、四角形状、菱形状、五角形状、六角形状、五角星形状、及び六角星形状が挙げられる。複数のパターンの網目は互いに同一の形状であってもよく、互いに異なる2種以上の形状であってもよく、円形状と多角形状とを組み合わせもよい。
【0032】
パターンは、点在する複数の突状体で構成されていてもよく、網状に形成されていてもよいが、点在する複数の突状体で構成する方が、強度及び弾性率をより高くできる傾向にあるため好ましい。
【0033】
緩衝材の占有率(繊維基材の一方の面の面積全体に対する、緩衝材が配置された面積の割合)は、特に限定されず、例えば、5~95%であり、高い強度と高い弾性率と優れた耐衝撃性とをより一層バランスよく向上する観点から、10~90%であることが好ましく、20~80%であることがより好ましく、30~70%であることがさらに好ましい。
【0034】
緩衝材の厚さ(高さ)は、特に限定されず、例えば、50~300μmであり、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、80~200μmであることが好ましく、100~150μmであることがより好ましい。
【0035】
本実施形態のFRP成形品における、緩衝繊維材の数は、1つであってもよく複数であってもよいが、高い強度と高い弾性率と優れた耐衝撃性とをより一層バランスよく向上する観点から、緩衝繊維材を複数含み、複数の緩衝繊維材が積み重なった形態であることが好ましい。
【0036】
[1-2.被覆材]
本実施形態のFRP成形品は、緩衝繊維材を被覆する被覆材を含む。本明細書において、「緩衝繊維材を被覆する」とは、例えば、1つの緩衝繊維材又は積み重なった複数の緩衝繊維材の外面全体を覆うことをいう。被覆材は、緩衝繊維材に形成される隙間、及び緩衝繊維材が積み重なることにより形成される隙間に含浸されていなくてもよいが、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、これらの隙間に含浸されることが好ましい。
【0037】
被覆材は、樹脂を含有する。ここでいう「樹脂」とは、例えば、半硬化状態にある樹脂及び硬化状態にある樹脂も含む。
【0038】
樹脂としては、例えば、成形のために用いられる成形用樹脂が挙げられる。成形用樹脂としては、例えば、硬化剤などにより反応硬化したり、加熱により硬化したりする硬化型樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、及び不飽和ポリエステル樹脂)が挙げられる。本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、成形用樹脂は硬化剤により反応硬化する硬化型樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びメラミン樹脂)であることが好ましく、エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0039】
[2.FRP成形品の製造方法]
本実施形態のFRP成形品の製造方法は、繊維を含有する繊維基材の少なくとも一方の面に、緩衝材を平面視において規則的な又は不規則的なパターン(以下、「特定のパターン」ともいう。)で配置して緩衝繊維材を得る工程(配置工程)と、前記緩衝繊維材を樹脂で被覆する工程(被覆工程)とを含む。本実施形態のFRP成形品の製造方法では、配置工程により、繊維基材の片面の一部に、衝撃を緩和する緩衝材を、特定のパターンが形成されるように配置し、それらを被覆材が被覆することを主因として、高い強度と、高い弾性率と、優れた耐衝撃性とを同時に満たすFRP成形品を製造できる。
【0040】
一般的なFRP成形品では、成形品の一部にのみ物性(例えば、強度、耐衝撃性、及び弾性率)を制御することが求められることが多い。例えば、スポーツ分野及びレジャー分野では、ラケット(例えば、テニスラケット)、ゴルフシャフト、釣竿などにおいて所定の部分にしなり(又は撓み)が必要となるため、低い弾性率を有する部分又は部位を形成する必要がある。この点、本発明では、例えば、配置工程により、繊維基材の所望の部位に緩衝材を配置した緩衝繊維材を得、被覆工程により、所定の部分に緩衝材が配置した緩衝繊維材を樹脂で被覆すれば、得られるFRP成形品の緩衝材が配置された部位のみ、弾性率を低くすることができる。このように、本発明のFRP成形品の製造方法を用いると、部分的に物性が制御されたFRP成形品を製造できる。
【0041】
また、一般的なFRP成形品では、その用途を拡大するにあたり、柄又は模様のバリエーションを増やしたりするなどの意匠性を向上することが求められていることが多い。ここで、意匠性を向上させるには、例えば、繊維基材の組織(例えば、織物組織)を変化させたりすることが考えられるが、組織で表現できる柄又は模様に制限があり、目的の柄又は模様を形成可能な繊維基材(例えば織物)を入手することが困難である。この点、本発明では、配置工程により緩衝材を所望のパターンで配置することができるので、被覆工程により、所望のパターンを形成した緩衝材を樹脂(例えば、透明性樹脂)で被覆すれば、得られるFRP成形品に所望の柄又は模様を付与することができる。このように、本発明のFRP成形品の製造方法を用いると、所望の柄又は模様を付与できるなど、優れた意匠性を有するFRP成形品を製造できる。
【0042】
また、特許文献1では、強化繊維補強樹脂層の一面全体に亘り、合成樹脂発泡層を積層することに起因して、強度及び弾性率が十分でないという問題点がある。このため、特許文献1の製造方法では、補強材及び裏打ち層を形成する必要があるが、この場合、層数が増えることに起因して厚さが薄い成形品を製造できない。この点、本発明では、繊維基材の一方の面の所望の部位にのみ緩衝材を配置すればよく、面全体に緩衝材を配置する必要がない。これにより、緩衝材を配置することに起因する強度及び弾性率の低下を抑制(低減)できるため、補強材及び裏打ち層を形成する必要がない。このため、本発明のFRP成形品の製造方法を用いることにより、成形品の厚さを薄くすることができる。
【0043】
このように、本実施形態のFRP成形品の製造方法では、得られるFRP成形品に高い強度と、高い弾性率と、優れた耐衝撃性とを付与でき、部分的に物性制御が可能であり、さらには優れた意匠性を付与でき、さらには得られる成形品の厚さを薄くできる。
【0044】
[1.配置工程]
配置工程では、繊維を含有する繊維基材の少なくとも一方の面に、緩衝材を平面視において規則的な又は不規則的なパターン(以下、「特定のパターン」ともいう。)で配置して緩衝繊維材を得る。
【0045】
配置工程に用いられる繊維基材としては、上記の[1-1.緩衝繊維材]の項で例示した繊維基材が挙げられ、好ましい繊維基材としては、上記の[1-1.緩衝繊維材]の項で例示した好ましい繊維基材が挙げられる。繊維基材は、上記の[1-1.緩衝繊維材]の項で例示した繊維基材をそのまま用いてもよく、繊維基材を樹脂に含浸させた、いわゆるプリプレグの形態で用いてもよい。
【0046】
緩衝材を特定のパターンで繊維基材の少なくとも一方の面に配置する方法としては、特に限定されないが、例えば、緩衝材を構成する成分を繊維基材に転写させる方法が挙げられる。緩衝材を構成する成分を繊維基材に転写させる方法としては、特に限定されないが、例えば、公知の印刷方法が挙げられ、具体的な印刷方法としては、スクリーン印刷法(スクリーンプリント法)、グラビア印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、活版印刷法、インクジェット印刷法、及びフレキソ印刷法が挙げられる。印刷方法は、これらの中でも、緩衝材を繊維基材により安定して転写させることができる観点から、スクリーンプリント法であることが好ましい。
【0047】
(スクリーンプリント法)
スクリーンプリント法を用いて、繊維基材表面の所定の部分に、緩衝材を構成する成分を転写する方法の一例を説明する。スクリーンメッシュに感光剤を塗布し、緩衝材を配置する繊維基材の領域に対応する、スクリーンメッシュの領域(以下、「特定領域」という。)をマスキングして露光する。次に、マスキングされた未露光領域(特定領域)に塗布した感光剤を水洗で除去することにより、特定領域に、特定のパターンに対応するパターンが形成されたスクリーンメッシュを作製する。次に、繊維基材の片面に作製したスクリーンメッシュを置いた状態で、スクリーンメッシュ上に緩衝材を構成する成分を塗布し、必要に応じてスキージを用いて押し付けることにより、繊維基材表面の所定の部分に、緩衝材を構成する成分を転写させることができる。
【0048】
スクリーンプリント法に用いるスクリーンメッシュは、一般的に用いられるスクリーンメッシュを用いることができる。スクリーンメッシュの素材としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル素材及びステンレス素材が挙げられ、スクリーンメッシュのメッシュサイズとしては、特に限定されず、例えば、10~100メッシュ程度であってもよい。また、感光剤としては、通常、スクリーンプリント法に用いられる感光剤を用いることができる。
【0049】
スクリーンプリント法では、繊維基材表面の所定の部分に、緩衝材を構成する成分を転写させた後、必要に応じて公知の加熱手段を用いて加熱することにより、成分を半硬化又は硬化させてもよい。加熱温度及び加熱時間は、使用する成分に応じて適宜選択できるが、例えば、100~150℃程度であってもよく、10秒~10分程度であってもよい。
【0050】
緩衝材を構成する成分(以下、「緩衝材構成成分」ともいう。)としては、特に限定されず、例えば、外部からの衝撃を緩衝又は緩和可能な成分が挙げられ、[(B)緩衝材]の項で例示した軟質樹脂などが挙げられる。スクリーンプリント法などの印刷法を用いる場合には、印刷時に0.1~500Pa.sの粘度を有することが好ましい。緩衝材構成成分の使用量は、特に限定されず、用いる繊維基材、占有率などに応じて適宜選択できる。
【0051】
[2.被覆工程]
被覆工程では、配置工程により得られた緩衝繊維材を樹脂で被覆してFRP成形品を得る。緩衝繊維材を樹脂で被覆する方法としては、特に限定されず、通常、FRP成形品を得るために樹脂で繊維基材を被覆したり、含侵したりする方法を用いることができるが、パターンが崩れないように安定に被覆できる観点から、樹脂含浸成形法(RTM法)、真空樹脂含浸成形法(VaRTM成形法)、オートクレーブ成形法、ハンドレイアップ成形法プレス成形法、及びシートワインディング成形法のいずれかを用いることが好ましく、樹脂含浸成形法及びオートクレーブ成形法のいずれかを用いることが好ましい。
【0052】
(樹脂含浸成形法及び真空樹脂含浸成形法)
樹脂含浸成形法では、例えば、緩衝繊維材に樹脂を含浸させ、樹脂を硬化させることにより成形する。これにより、緩衝繊維材が樹脂で被覆されたFRP成形品が得られる。真空樹脂含浸成形法では、所定の型内に緩衝繊維材を配置し、その型内に樹脂を充填した後に真空吸引することにより成形する。これらの硬化条件は、特に限定されず、例えば、硬化温度は、80~180℃程度であってもよく、硬化時間は、30分~3時間程度であってもよい。用いる樹脂としては、例えば、[1-2.被覆材]の項で例示した樹脂が挙げられ、樹脂に、各樹脂に対応する公知の硬化剤を配合してもよい。樹脂に対する硬化剤の配合比(質量基準)は、特に限定されず、例えば、0.01~1.00程度であってもよい。
【0053】
(オートクレーブ成形法)
オートクレーブ成形法では、例えば、繊維基材に樹脂を含浸させた状態で、緩衝材を配置し、得られる緩衝繊維材をオートクレーブ中で含浸硬化させる。これにより、緩衝繊維材が樹脂で被覆されたFRP成形品が得られる。含浸硬化条件は、特に限定されず、例えば、圧力1~10kg/cm2、温度80~180℃、硬化時間30分~3時間程度であってもよい。用いる樹脂としては、例えば、[1-2.被覆材]の項で例示した樹脂が挙げられ、樹脂に、各樹脂に対応する公知の硬化剤を配合してもよい。樹脂に対する硬化剤の配合比(質量基準)は、特に限定されず、例えば、0.01~1.00程度であってもよい。
【実施例
【0054】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0055】
[スクリーンプリント法]
本実施例及び比較例では、平織織物に水性アクリル系樹脂をプリントするためにスクリーンプリント法を用いた。スクリーンプリント法に用いるスクリーンメッシュは、以下のようにして作製した。すなわち、ポリエステル製の糸を50メッシュに織り込んだスクリーンメッシュに感光剤(株式会社ムラカミ製品「SP7000」)を塗布し、スクリーンメッシュの特定領域をマスキングして露光し、未露光領域(特定領域)に塗布した感光剤を水洗で除去することにより、特定領域に所定のプリントパターンが形成されたスクリーンメッシュを作製した。スクリーンメッシュは、後述する各実施例及び比較例に対応させるようにして、複数作製した。感光剤が付着した各スクリーンメッシュの厚さ(高さ)は140μmであった。次いで、平織織物の片面にスクリーンメッシュを置いた状態で、スクリーンメッシュ上に水性アクリル系樹脂を塗布することにより、平織織物の片面の特定領域に対応する部分に、水性アクリル系樹脂を付着させた。
【0056】
[実施例1]
[実施例1-1]
スクリーンメッシュを用いたスクリーン印刷法により、炭素繊維(東邦テナックス株式会社製品「テナックス(登録商標)HTA40、フィラメント数3000本)」の平織織物(150×100mm(使用時))の片面に水性アクリル系樹脂(大日精化工業株式会社製品「New Lacqutimine Color Seikaprene LX-20」)を印刷した。次に、水性アクリル系樹脂が印刷された平織織物を、加熱処理装置(アサヒ繊維機械株式会社製製品名「NAP-600」)を用いて、130℃で3分間加熱処理し、水性アクリル系樹脂を硬化させることにより、緩衝繊維材を作製した。この緩衝繊維材では、平織織物の平面視において、硬化した水性アクリル系樹脂が、図3に示すように、網目が正四角形状である網状(格子状)のパターンで、平織織物の片面全体に亘って配置されている。各網目は等間隔になるように配置されている。格子の網目の一辺の長さは1.0mmであり、格子の幅は2.5mmであり、占有率(平織織物の片面の面積全体に対する、硬化した水性アクリル系樹脂の配置面積の割合)は70%であった。この緩衝繊維材を合計8枚作製した。
作製した各緩衝繊維材を、水性アクリル系樹脂を配置した片面を上面とし、その片面と反対側の面を下面として、上記の片面に対し直行する方向に積み重ねた。積み重ねた8枚の緩衝繊維材を、エポキシ樹脂(日新レジン株式会社製製品「RT-400」)及び硬化剤(変性脂肪族ポリアミン、日新レジン株式会社製製品「HX-18」)の配合物を用いて、真空樹脂含浸成形法(VaRTM法)により含侵硬化させて、緩衝繊維材を硬化したエポキシ樹脂で被覆した。配合物中のエポキシ樹脂に対する硬化剤の配合比(重量)は1:0.2であり、硬化条件は常温で一晩放置後、100℃、1時間処理した。こうして、緩衝繊維材が被覆材で被覆した板状のCFRP成形品を作製した。
【0057】
[実施例1-2]
別のスクリーンメッシュを用いて、格子の網目の一辺の長さが0.5mmであり、格子の幅が1.5mmである緩衝繊維材を作製した以外は、実施例1-1と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0058】
[実施例1-3]
別のスクリーンメッシュを用いて、格子の幅が6.1mmであり、占有率が30%である緩衝繊維材を作製した以外は、実施例1-1と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0059】
[実施例1-4]
別のスクリーンメッシュを用いて、格子の網目の一辺の長さが0.5mmであり、格子の幅が3.7mmである緩衝繊維材を作製した以外は、実施例1-3と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0060】
[実施例1-5]
別のスクリーンメッシュを用いて、格子の幅が5mmであり、占有率が40%である緩衝繊維材を作製した以外は、実施例1-1と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0061】
[実施例1-6]
別のスクリーンメッシュを用いて、格子の網目の一辺の長さが0.5mmである格子の幅が3mmである緩衝繊維材を作製した以外は、実施例1-5と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0062】
[実施例1-7]
別のスクリーンメッシュを用いて、格子の幅が3.6mmであり、占有率が50%である緩衝繊維材を作製した以外は、実施例1-1と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0063】
[実施例1-8]
別のスクリーンメッシュを用いて、格子の網目の一辺の長さが0.5mmであり、格子の幅が2.2mmである緩衝繊維材を作製した以外は、実施例1-7と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0064】
[実施例1-9]
別のスクリーンメッシュを用いて、格子の幅が3mmであり、占有率が60%である緩衝繊維材を作製した以外は、実施例1-1と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0065】
[実施例1-10]
別のスクリーンメッシュを用いて、格子の網目の一辺の長さが0.5mmであり、格子の幅が1.8mmである緩衝繊維材を作製した以外は、実施例1-9と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0066】
[実施例1-11]
別のスクリーンメッシュを用いて、緩衝繊維材の配置パターンを、格子状のパターンに代えて、図4に示すように、正三角形に配列した円形状の網目のパターン(表1において、「円」と記載する。)とし、円形状の網目の直径を1.0mmとし、円形状の網目の中心間の距離を約1.5mmとした以外は、実施例1-1と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0067】
[実施例1-12]
別のスクリーンメッシュを用いて、緩衝繊維材の配置パターンを、格子状のパターンに代えて、図5に示すように、網目が小さい正三角形状と大きい逆正三角形状とを横方向に交互に組み合わせた網状のパターン(表1において、「三角」と記載する。)とし、小さい正三角形状の網目の一辺の長さを約1.8mmとし、大きい逆正三角形状の網目の一辺の長さを約3.0mmとし、正三角形状の網目と逆正三角形状の網目との距離を1.0mmとした以外は、実施例1-1と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0068】
[実施例1-13]
別のスクリーンメッシュを用いて、緩衝繊維材の配置パターンを、格子状のパターンに代えて、図6に示すように、網目が正六角形状である網状(ハニカム状)のパターン(表1において、「六角」と記載する。)とし、正六角形状の網目の一辺の長さを約1.0mmとし、正六角形状の網目間の距離を1.0mmとした以外は、実施例1-1と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0069】
[実施例1-14]
別のスクリーンメッシュを用いて、緩衝繊維材の配置パターンを、格子状のパターンに代えて、図7に示すように、平面視において円形状のブロック体が互いに所定距離をおいて、均一に点在した水玉模様のパターン(表1において「水玉模様」と記載する)とし、円形状のブロック体の直径を1.0mmとし、ブロック体間の距離を約0.2mmとした以外は、実施例1-1と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0070】
[比較例1-1]
実施例1-1の平織織物を8枚積み重ねた状態で、実施例1-1の配合物を用いて、VaRTM法により含侵硬化した。硬化条件は実施例1-1と同様にした。これにより、平織織物が被覆材で被覆した板状のCFRP成形品を作製した。
【0071】
[比較例1-2]
別のスクリーンメッシュを用いて、占有率が100%である緩衝繊維材、すなわち平織織物の片面全面に緩衝材が配置した緩衝繊維材を作製した以外は、実施例1-1と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0072】
(曲げ強度及び曲げ弾性率の測定)
得られた実施例1-1~1-14、比較例1-1、及び比較例1-2のCFRP成形品(長さ100mm×10mm)について、JIS K 7074に基づき、3点曲げ弾性率(Gpa)及び曲げ弾性率(MPa)の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
[実施例2]
スクリーンメッシュを用いたスクリーン印刷法により、熱硬化性樹脂が含侵した炭素繊維の平織織物(150×100mm(使用時))である、シート状プリプレグ(東レ株式会社製製品「TORAYCA(登録商標)F6343B-05P」)の片面に水性アクリル系樹脂(大日精化工業株式会社製品「New Lacqutimine Color Seikaprene LX-20」)を印刷した。次に、水性アクリル系樹脂が印刷されたシート状プリプレグを、加熱処理装置(アサヒ繊維機械株式会社製製品名「NAP-600」)を用いて、100℃で10秒間加熱処理し、水性アクリル系樹脂を硬化させることにより、緩衝繊維材を作製した。この緩衝繊維材では、シート状プリプレグの平面視において、硬化した水性アクリル系樹脂が格子状のパターンで、シート状プリプレグの片面に配置されており、格子の網目の一辺の長さが1.0mmであり、格子の幅が2.5mmであり、占有率(平織織物の片面の面積全体に対する、硬化した水性アクリル系樹脂の配置面積の割合)は70%であった。この緩衝繊維材を合計8枚作製した。
作製した各緩衝繊維材を、片面を上面とし、片面と反対側の面を下面として、片面に対し垂直な方向に積み重ねた。積み重ねた8枚の緩衝繊維材を、オートクレーブ(株式会社羽生田鉄工所製製品の「DL-2-1」)を用いて、オートクレーブ法により含侵硬化させて、緩衝繊維材を硬化したエポキシ樹脂で被覆した。含侵硬化条件は、圧力6kg/cm2、温度80℃、0.5時間処理した後、圧力6kg/cm2、温度135℃、1.5時間で処理した。これにより、緩衝繊維材が被覆材で被覆した板状のCFRP成形品を作製した。
【0075】
[比較例2]
実施例2のシート状プリプレグを8枚積み重ねた形態で、実施例2のオートクレーブを用いて、オートクレーブ法により含侵硬化した。これにより、平織織物が被覆材で被覆した板状のCFRP成形品を作製した。
【0076】
[参考例]
別のスクリーンメッシュを用いて、占有率が100%である緩衝繊維材、すなわち平織織物の片面全面に緩衝材が配置した緩衝繊維材を作製した以外は、実施例2と同様にして板状のCFRP成形品を作製した。
【0077】
(落錘型衝撃試験)
落錘式試験機(INSTRON社製製品名「CEAST 9310」)を用いて、質量3.09kg、直径20mmのストライカーを、高さ500mmからを示す。図8に示すように、比較例2のCFRP成形品の表面の一部が脆性破壊されていたが、実施例2のCFRP成形品は、参考例のCFRP成形品と同様に表面の破壊が観察されず、耐衝撃性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本実施形態のFRP成形品は、高い強度と、高い弾性率と、優れた耐衝撃性とを有するため、生活品分野、航空宇宙分野、移動体分野、スポーツ分野、家電分野等広範な用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1…繊維基材、2…緩衝材、3…緩衝繊維材、4…被覆材、5…突状体、100…FRP成形品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8