(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】糸切り具
(51)【国際特許分類】
D05B 89/00 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
D05B89/00
(21)【出願番号】P 2017195888
(22)【出願日】2017-10-06
【審査請求日】2020-08-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 本願発明の特許を受ける権利を有する者(出願人)である「クロバー株式会社」は、平成29年10月2日に、Clover Needlecraft,Inc.(クロバー株式会社の米国子会社)のウェブサイト(http://www.clover-usa.com/en/,http://www.clover-usa.com/en/home/684-rectractable-seam-ripper-.html)に証明書の添付書類に示す記事を掲載した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000105039
【氏名又は名称】クロバー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 千紘
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳之
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0099904(US,A1)
【文献】実開昭52-081339(JP,U)
【文献】実開昭58-104185(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00-97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部および当該軸部の先端に設けられた刃部を有する刃金具と、
上記刃金具を支持する柄と、
上記軸部が上記柄の内部に収納された収納位置と上記軸部の少なくとも一部および上記刃部が上記柄の外部にある進出位置との間で上記刃金具をスライド移動させるスライド手段と、を備え、
上記刃部は、上記軸部の先端につながる切断刃と、当該切断刃を間に挟んで二股状に設けられた針部および球状部と、を有し、
上記刃金具が上記収納位置をとるとき、上記針部はその全体が上記柄の内部に収納され、かつ上記切断刃の少なくとも一部が上記柄の外部に露出
しており、
上記スライド手段は、上記軸部の基端部を保持し、上記柄に設けられた第1ガイド部に沿って移動可能なスライドベースと、上記柄の外部に位置する摘み部を有し、上記柄に設けられた第2ガイド部に沿って移動可能な操作部材と、上記スライドベースおよび上記操作部材を連係させる連係機構と、を含み、
上記第1ガイド部は、直線状の第1方向に延びており、
上記第2ガイド部は、上記第1ガイド部に対して、上記第1方向に直角である第2方向に離間し、かつ外側に凸状となるように湾曲または屈曲しており、
上記連係機構は、上記スライドベースおよび上記操作部材のうちのいずれか一方に設けられた係合凸部と、上記スライドベースおよび上記操作部材のうちの他方に設けられ、上記係合凸部が係合する係合凹部と、を含み、
上記スライドベースの上記第1ガイド部に沿ったスライド動作の位置に応じて、上記係合凸部および上記係合凹部の係合深さが変化し、
上記刃金具が上記収納位置にあるときに上記刃金具のスライド動作に相対的に大きい動作抵抗を与える第1抵抗付与機構と、上記刃金具が上記進出位置にあるときに上記係合凸部の先端が上記係合凹部の底部に押圧接触することにより、上記刃金具のスライド動作に相対的に大きい動作抵抗を与える第2抵抗付与機構と、を備える、糸切り具。
【請求項2】
上記柄は、上記収納位置にある上記軸部を収納する本体部と、各々が上記本体部の先端につながり、上記針部を収納する第1先端収納部および上記球状部の少なくとも一部を収納する第2先端収納部と、を有し、
上記第1先端収納部は、上記針部が通過可能な第1開口を有する第1ガイド面を有し、
上記第2先端収納部は、上記球状部が通過可能な第2開口を有する第2ガイド面を有しており、
上記第1ガイド面および上記第2ガイド面は、上記本体部側に向かうにつれて互いに近づく、請求項1に記載の糸切り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば裁縫により形成された糸の縫い目をほどくために使用する糸切り具に関する。
【背景技術】
【0002】
裁縫時に糸の縫い目をほどくための道具として、いわゆるリッパーと呼ばれる糸切り具が知られている(たとえば特許文献1を参照)。当該糸切り具(リッパー)は、一般に、刃金具が柄に取り付けられた態様とされており、刃金具の先端に設けられた刃部を用いて縫い目をほどく。刃部は、切断刃を挟んで二股状に設けられた針部および球状部を有する。針部は、縫い目一つずつに差し込んで当該縫い目の糸を切るのに用いられる。球状部は、縫い目に沿って一気に糸を切るのに用いられ、球状部を布上で滑らせながら連続する縫い目に切断刃を差し込んでいく。特許文献1に開示された糸切り具においては、不使用時に刃金具に被せておくためのキャップが付属されている。
【0003】
また、この種の糸切り具については、不使用時に刃金具を柄に収納可能とされたものも知られている(たとえば特許文献2を参照)。特許文献2に開示された糸切り具において、刃金具は、ねじ機構を用いてスライド移動するように、柄に保持されている。当該糸切り具の使用時には、柄の操作部を回転させることで、内蔵されたねじ機構により刃金具の先端刃部を柄の外部に進出させる。糸切り具の不使用時には、先端刃部を含む刃金具全体を柄の内部に収納させる。このような構成によれば、刃金具に被せるためのキャップ(別部材)を準備する必要がなく、キャップの紛失などの不都合を回避することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献2に開示された糸切り具は、刃金具をスライドさせるためのねじ機構を具備するので全体構造が複雑になる傾向にあり、使い勝手の点においても改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】意匠登録第1201385号公報
【文献】実開昭52-81340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、使い勝手を改善するのに適した糸切り具を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明によって提供される糸切り具は、軸部および当該軸部の先端に設けられた刃部を有する刃金具と、上記刃金具を支持する柄と、上記軸部が上記柄の内部に収納された収納位置と上記軸部の少なくとも一部および上記刃部が上記柄の外部にある進出位置との間で上記刃金具をスライド移動させるスライド手段と、を備え、上記刃部は、上記軸部の先端につながる切断刃と、当該切断刃を間に挟んで二股状に設けられた針部および球状部と、を有し、上記刃金具が上記収納位置をとるとき、上記針部はその全体が上記柄の内部に収納され、かつ上記切断刃の少なくとも一部が上記柄の外部に露出する。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記柄は、上記収納位置にある上記軸部を収納する本体部と、各々が上記本体部の先端につながり、上記針部を収納する第1先端収納部および上記球状部の少なくとも一部を収納する第2先端収納部と、を有し、上記第1先端収納部は、上記針部が通過可能な第1開口を有する第1ガイド面を有し、上記第2先端収納部は、上記球状部が通過可能な第2開口を有する第2ガイド面を有しており、上記第1ガイド面および上記第2ガイド面は、上記本体部側に向かうにつれて互いに近づく。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記スライド手段は、上記軸部の基端部を保持し、上記柄に設けられた第1ガイド部に沿って移動可能なスライドベースと、上記柄の外部に位置する摘み部を有し、上記柄に設けられた第2ガイド部に沿って移動可能な操作部材と、上記スライドベースおよび上記操作部材を連係させる連係機構と、を含む。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記第1ガイド部は、直線状の第1方向に延びており、上記第2ガイド部は、上記第1ガイド部に対して、上記第1方向に直角である第2方向に離間し、かつ外側に凸状となるように湾曲または屈曲する。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記連係機構は、上記スライドベースおよび上記操作部材のうちのいずれか一方に設けられた係合凸部と、上記スライドベースおよび上記操作部材のうちの他方に設けられ、上記係合凸部が係合する係合凹部と、を含み、上記スライドベースの上記第1ガイド部に沿ったスライド動作の位置に応じて、上記係合凸部および上記係合凹部の係合深さが変化し得る。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記刃金具が上記収納位置にあるときに上記刃金具のスライド動作に相対的に大きい動作抵抗を与える第1抵抗付与機構と、上記刃金具が上記進出位置にあるときに上記刃金具のスライド動作に相対的に大きい動作抵抗を与える第2抵抗付与機構と、を備える。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に糸切り具の一実施形態を示し、刃金具が進出位置をとるときの斜視図である。
【
図6】
図5のVI-VI線に沿う拡大断面図である。
【
図7】
図1に示す糸切り具の刃金具が収納位置をとるときの正面図である。
【
図9】
図8のIX-IX線に沿う拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1~
図6は、本発明に係る糸切り具の一実施形態を示している。
図1~
図5に表れているように、本実施形態の糸切り具Aは、柄1、刃金具2、スライドベース3、操作部材4、および軸部支持体5を備える。柄1は、使用者が手で掴むものであり、後述する刃金具2の軸部21の少なくとも一部、スライドベース3、および軸部支持体5を収納している。詳細は後述するが、柄1は、スライドベース3および軸部支持体5を介して刃金具2を支持している。詳細な動作機構は後述するが、刃金具2は、
図7に示した収納位置と
図1、
図2に示した進出位置との間でスライド移動可能である。
【0018】
図1、
図2に示すように、刃金具2は、軸部21および刃部22を有する。軸部21は、所定の軸線方向に延びており、横断断形状が略楕円状である。刃部22は、軸部21の先端に設けられている。刃部22は、切断刃221、針部222、および球状部223を有する。切断刃221は、軸部21の先端につながっており、当該軸部21の先端側に刃先が向いている。針部222および球状部223は、切断刃221を間に挟んで二股状に設けられている。刃金具2は、たとえば鍛造により成形される。球状部223は、たとえば金属先端部が樹脂部で覆われた構成である。
【0019】
柄1は、本体部11、第1先端収納部12、および第2先端収納部13を有する。本体部11は、柄1の大半を占めており、収納位置にある軸部21を収納する。
【0020】
第1先端収納部12および第2先端収納部13は、本体部11の先端につながっている。
図8に示すように、第1先端収納部12は、針部222を収納する。
図2、
図4に示すように、第1先端収納部12は第1ガイド面121を有しており、第1ガイド面121には針部222が通過可能な第1開口122が形成されている。
図8に示すように、第2先端収納部13は、球状部223の少なくとも一部を収納する。
図2、
図4に示すように、
第2先端収納部13は第2ガイド面131を有しており、第2ガイド面131には球状部223が通過可能な第2開口132が形成されている。
図7、
図8に示すように、刃金具2が収納位置をとるとき、針部222はその全体が柄1の内部に収納される。また、刃金具2が収納位置をとるとき、切断刃221の少なくとも一部が柄1の外部に露出する。
【0021】
図5、
図6、
図9に示すように、本体部11には、第1ガイド部111および第2ガイド部112が設けられている。本実施形態において、第1ガイド部111は、スライドベース3を移動させるための一対の対向する凹溝であり、直線状の方向x(第1方向)に延びている。また、第2ガイド部112は、操作部材4を移動させるための一対の対向する帯状凸部である。第2ガイド部112は、第1ガイド部111に対して、方向xに直角である方向y(第2方向)に離間し、かつ外側に凸状となるように湾曲または屈曲する。本実施形態では、第2ガイド部112が緩やかに湾曲するとともに屈曲する態様を表す。
【0022】
柄1は、たとえば所定の強度を有する合成樹脂からなる。柄1は、たとえば方向z(方向xおよび方向yのいずれにも直角である方向)において2つ割れの分割片を、超音波溶着あるいは接着などの手法により一体的に接合したものである。
【0023】
図5、
図6、
図8、
図9に示すように、スライドベース3は、軸部保持孔31、スライド嵌合部32、係合凸部33、および収納用凸部34を有する。
【0024】
軸部保持孔31には、刃金具2における軸部21の基端部が圧入させられている。これにより、スライドベース3は、軸部21の基端部を保持している。スライド嵌合部32は、本体部11(柄1)の第1ガイド部111に嵌入しており、第1ガイド部111に沿って移動可能である。これにより、スライドベース3は、第1ガイド部111(方向x)に沿ってスライド移動可能である。
【0025】
係合凸部33は、スライド嵌合部32よりも操作部材4が位置する方向y一方側に突出している。係合凸部33は、後述する操作部材4の係合凹部43に係合する部分である。
【0026】
収納用凸部34は、刃金具2(軸部21)が収納位置にあるときに、本体部11(柄1)に設けられた収納用孔113に嵌入する部分である。収納用凸部34の外径寸法は、収納用孔113の内径寸法と同程度あるいは当該内径寸法よりも僅かに大きくされている。これにより、刃金具2が収納位置にあるときに、刃金具2をスライド動作させる際に相対的に大きい動作抵抗が生じる。上記の収納用凸部34および収納用孔113は、本発明で言う第1抵抗付与機構を担う。
【0027】
なお、刃金具2における軸部21の先端側の部位は、軸部支持体5を介して本体部11(柄1)に支持されている。軸部支持体5には、貫通孔51が形成されており、この貫通孔51に軸部21が挿通されている。軸部21の横断面サイズは、貫通孔51の横断面サイズと同程度である。また、上記のように、軸部21の基端部は、スライドベース3によって保持されている。これにより、軸部21(刃金具2)は、方向xに沿ってスライド移動可能である。
【0028】
操作部材4は、摘み部41、スライド嵌合部42、および係合凹部43を有する。摘み部41は、使用者が刃金具2についてスライド移動させる際に指で押さえて力を与える部分である。摘み部41は、柄1の外部に位置する。摘み部41は、糸切り具Aを正面から見て(方向zに見て)山形形状をなしており、また山形の傾斜部は細かい凹凸が連続している。これにより、摘み部41は、指で押さえる際に適度なグリップ力が確保される。なお、摘み部41は、本体部11(柄1)に形成されたスリット114を通じて柄1の外部において延びる。
【0029】
スライド嵌合部42は、摘み部41よりもスライドベース3が位置する方向y他方側につながっている。スライド嵌合部42は、本体部11(柄1)の第2ガイド部112が嵌入しており、第2ガイド部112に沿って移動可能である。これにより、操作部材4は、第2ガイド部112に沿ってスライド移動可能である。
【0030】
係合凹部43は、スライドベース3が位置する方向y他方側に臨む。この係合凹部43には、スライドベース3の係合凸部33が係合している。これにより、操作部材4(摘み部41)を第2ガイド部112に沿って移動させると、スライドベース3およびこのスライドベース3に保持された軸部21(刃金具2)は、方向xに沿ってスライド移動する。
【0031】
上記のように本体部11(柄1)の第1ガイド部111は直線状の方向xに延びており、スライドベース3は、第1ガイド部111(方向x)に沿ってスライド移動可能である。一方、第2ガイド部112は、外側に凸状となるように湾曲または屈曲する。本実施形態では、第1ガイド部111に対して、方向xに直角である方向yに離間し、かつ外側に凸状となるように緩やかに湾曲するとともに屈曲する。これにより、第2ガイド部112は、第1ガイド部111と平行ではない。
【0032】
そして、操作部材4の係合凹部43にスライドベース3の係合凸部33が係合しており、操作部材4を第2ガイド部112に沿って移動させると、スライドベース3は第1ガイド部111に沿って移動する。ここで、第1ガイド部111と第2ガイド部112とは平行ではないので、スライドベース3の第1ガイド部111に沿ったスライド動作の位置に応じて、係合凸部33および係合凹部43の係合深さが変化し得る。なお、上記の係合凸部33および係合凹部43は、本発明で言う連係機構を担う。
【0033】
また、本実施形態においては、操作部材4を第2ガイド部112に沿って移動させることで、刃金具2については、
図8に示した収納位置と
図5に示した進出位置との間でスライド移動可能である。
図5、
図8から理解されるように、刃金具2が収納位置にあるとき、係合凸部33および係合凹部43の係合深さが相対的に小さい。その一方、刃金具2が進出位置にあるとき、係合凸部33および係合凹部43の係合深さが相対的に大きい。そして、本実施形態においては、刃金具2が進出位置にあるとき、係合凸部33の先端が係合凹部43の底部に押圧接触している。これにより、刃金具2が進出位置にあるときに、刃金具2をスライド動作させる際に相対的に大きい動作抵抗が生じる。このように係合凸部33が係合凹部43に押圧圧接させられる構成は、本発明で言う第2抵抗付与機構を担う。
【0034】
次に、上記構成の糸切り具Aの使用方法および作用について説明する。
【0035】
本実施形態の糸切り具Aは、たとえば裁縫により形成された糸の縫い目をほどくのに利用される。糸の縫い目をほどく際には、まず、刃金具2について、
図7、
図8に示した収納位置から、操作部材4をスライドさせて
図1、
図2、
図5に示した進出位置をとらせる。このとき、刃金具2の先端に設けられた刃部22は全て柄1の外部に露出しており、この刃部22を用いて糸の縫い目をほどく。刃部22は、切断刃221を挟んで二股状に設けられた針部222および球状部223を有する。針部222を縫い目一つずつに差し込んで押し出すことで、切断刃221により当該縫い目の糸を切ることできる。球状部223は、縫い目に沿って一気に糸を切るのに用いられ、球状部223を布上で滑らせながら連続する縫い目に切断刃221を差し込む。
【0036】
本実施形態の糸切り具Aにおいて、刃金具2が
図7、
図8に示した収納位置をとるとき、針部222はその全体が柄1の内部に収納され、かつ切断刃221の少なくとも一部が柄1の外部に露出している。このような構成によれば、刃金具2が収納位置をとる場合においても、切断刃221の露出部分を用いて糸切りとして利用することができる。ここで、針部222は柄1の内部に収納されているので、針部222が指に突き刺さるなどの不都合を回避することできる。
【0037】
柄1は、本体部11と、各々が本体部11の先端につながる第1先端収納部12および第2先端収納部13を有する。
図5に示すように、本体部11は、収納位置にある軸部21を収納する。第1先端収納部12は、針部222が通過可能な第1開口122を有する第1ガイド面121を有し、針部222を収納する。また、第2先端収納部13は、球状部223が通過可能な第2開口132を有する第2ガイド面131を有し、球状部223の少なくとも一部を収納する。そして、第1ガイド面121および第2ガイド面131は、本体部11側に向かうにつれて互いに近づく。このような構成によれば、刃金具2が収納位置をとるとき、針部222と球状部223の少なくとも一部とを、柄1の内部に適切に収納することができる。また、糸切りとして利用する場合、第1ガイド面121および第2ガイド面131の間に糸を通し進めることで、当該糸は第1ガイド面121および第2ガイド面131によって露出する切断刃221まで適切にガイドされる。
【0038】
糸切り具Aは、第1ガイド部111に沿って移動可能なスライドベース3と、第2ガイド部112に沿って移動可能な操作部材4とを備える。スライドベース3は軸部21の基端部を保持しており、操作部材4は、柄1の外部に位置する摘み部41を有する。そして、スライドベース3および操作部材4は連係されている。このような構成によれば、柄1の外部に露出する摘み部41をスライド移動させるといった簡単な操作によって、柄1に支持された刃金具2をスライド移動させることができる。したがって、刃金具2をスライド移動させるときの操作性に優れる。
【0039】
本実施形態の糸切り具Aにおいては、刃金具2が
図7、
図8に示した収納位置にあるときに、刃金具2をスライド動作させる際に相対的に大きい動作抵抗が生じる。また、刃金具2が
図2、
図5等に示した進出位置にあるときにも、刃金具2をスライド動作させる際に相対的に大きい動作抵抗が生じる。このような構成によれば、刃金具2が進出位置にあるときと収納位置にあるときのいずれの使用状態においても、刃金具2が意図せずにスライド移動することを防止することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る糸切り具の各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
A 糸切り具
x 方向(第1方向)
y 方向(第2方向)
z 方向
1 柄
11 本体部
111 第1ガイド部
112 第2ガイド部
113 収納用孔
114 スリット
12 第1先端収納部
121 第1ガイド面
122 第1開口
13 第2先端収納部
131 第2ガイド面
132 第2開口
14 磁性部材
2 刃金具
21 軸部
22 刃部
221 切断刃
222 針部
223 球状部
3 スライドベース
31 軸部保持孔
32 スライド嵌合部
33 係合凸部
34 収納用凸部
4 操作部材
41 摘み部
42 スライド嵌合部
43 係合凹部
5 軸部支持体
51 貫通孔