(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】N-置換グリシン化合物のリチウム塩及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20220330BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220330BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220330BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220330BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220330BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220330BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20220330BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/14
A23L33/17
(21)【出願番号】P 2020500693
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 US2018041420
(87)【国際公開番号】W WO2019014207
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-03-09
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518343246
【氏名又は名称】シニュークス インターナショナル(タイワン)コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】クオチョアン エミル ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン チン-スン
(72)【発明者】
【氏名】シェイ ハン-イー
(72)【発明者】
【氏名】ホアン チン-チア
(72)【発明者】
【氏名】ワン チン-チョン
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】Chemical Engineering Science,2009年,Vol.64,p.59-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A23L 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-置換グリシン化合物のリチウム塩及び担体を含む
、対象における神経精神障害の症状の緩和に使用するための固体組成物であって、N-置換グリシンがN-メチルグリシン、N,N-ジメチルグリシン、又はN,N,N-トリメチルグリシンであ
り、
神経精神障害が、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、トゥレット症候群、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、パーキンソン病、レビー小体型認知症、老人性認知症、筋萎縮性側索硬化症、及びアルツハイマー症候群からなる群から選択され、神経精神障害の症状が、運動過剰、センサーモーター機能障害、学習及び記憶欠損、運動障害、筋力不足、疼痛の低感受性、及び社会的行動の欠損からなる群から選択される、上記固体組成物。
【請求項2】
N-置換グリシンがN-メチルグリシンである、請求項1に記載の
使用するための固体組成物。
【請求項3】
N-置換グリシンがN,N-ジメチルグリシンである、請求項1に記載の
使用するための固体組成物。
【請求項4】
N-置換グリシンがN,N,N-トリメチルグリシンである、請求項1に記載の
使用するための固体組成物。
【請求項5】
医薬組成物、栄養補助食品組成物、健康食品、又は医療食品である、請求項1に記載の
使用するための固体組成物。
【請求項6】
神経精神障害
が、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動性障害
、脆弱X症候群、パーキンソン病、レビー小体型認知症、老人性認知症、筋萎縮性側索硬化症、
及びアルツハイマー症候群
からなる群から選択される
、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用するための固体組成物。
【請求項7】
対象が、神経精神障害のための追加の医薬品によって治療される、請求項6に記載の使用するための固体組成物。
【請求項8】
追加の医薬品が、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定剤、抗不安薬、又は精神刺激薬からなる群から選択される、請求項7に記載の使用するための固体組成物。
【請求項9】
追加の医薬品が、ブチロフェノン、フェノチアジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、チオキサンテン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、アリピプラゾール、カンナビジオール、LY2140023、ドロペリドール、ピモジド、ブタペラジン、カルフェナジン、レモキシプリド、ピペラセタジン、スルピリド、アカンプロサート、タンニン酸、及びテトラベナジンからなる群から選択される抗精神病薬である、請求項8に記載の使用するための固体組成物。
【請求項10】
追加の医薬品が、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、三環系抗うつ剤(TCA)、四環系抗うつ剤(TeCA)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、ノルアドレナリン作動性及び特定のセロトニン作動性抗うつ薬(NASSA)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害薬、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害薬、
及びセロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)からなる群から選択される抗うつ剤である、請求項8に記載の使用するための固体組成物。
【請求項11】
追加の医薬品が、フルオキセチン、パロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、デュロキセチン、ミルタザピン、ミアンセリン、レボキセチン、ブプロピオン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、デシプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、ブプロピオン、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、トラゾドン、ネファゾドン、フェネルジン、ラマトロジン、リチウム、トピラメート、ガバペンチン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、バルプロ酸、マプロチリン、ブロファロミン、ゲピロン、モクロベミド、イソニアジド、及びイプロニアジドからなる群から選択される抗うつ剤である、請求項8に記載の使用するための固体組成物。
【請求項12】
追加の医薬品が、メチルフェニデート、右旋性メチルフェニデート、イソプロピルフェニデート、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、ペモリン、フェンメトラジン、ジエチルプロピオン、クロルフェンテルミン、ピプラドール、p-ヒドロキシモルフェドリン、フェンフルラミン、1-(2,5-ジメトキシ-4-メチルフェニル)-2-アミノプロパン、ブプロピオン、スタチン、モダフィニル、アレコリン、デクスメチルフェニデート、リスデキサンフェタミンジメシレート、混合塩アンフェタミン、アトモキセチン、塩酸クロニジン、塩酸グアンファシン、及びアレコリンからなる群から選択される精神刺激薬である、請求項8に記載の使用するための固体組成物。
【請求項13】
追加の医薬品が、リチウム、ラモトリジン、カルバマゼピン、トピラメート、ゾルピデム、カルバマゼピン、及びバルプロエートからなる群から選択される気分安定剤である、請求項8に記載の使用するための固体組成物。
【請求項14】
追加の医薬品が
、ジアゼパム、アルプラゾラム、トリアゾラム、インディプロン、ザレプロン、ブロマゼパム、オキサゼパム、ブスピロン、ヒドロキシジン、メクロカロン、メデトミジン、メトミデート、アジナゾラム、クロルジアゼポキシド、クロベンゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、クロナゼパム、ロプラゾラム、ミダゾラム、アルピデム、アルセロキソン、アンフェニドン、アザシクロノール、ブロミソバラム、クロラゼペート、カルシウムN-カルボアモイラスパルテート、カプトジアミン、カプリド、カルボクロラール、カルボマー、クロラールベタイン、エンシプラジン、フレシノキサン、イプサピラオン、イサピロン、レソピトロン、ロキサピン、メタクアロン、メトプリロン、プロパノロール、タンドスピロン、トラザドン、ゾピクロン、及びゾルピデムからなる群から選択される抗不安薬である、請求項8に記載の使用するための固体組成物。
【請求項15】
障害がアルツハイマー病(AD)であり、追加の薬剤が、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチン、セルホテル、ミダフォテル、タクリン、セレギリン、及びビタミンEからなる群から選択される、請求項8に記載の使用するための固体組成物。
【請求項16】
追加の医薬品が、N-置換グリシン化合物のリチウム塩の投与の前、同時、又は後に投与される、請求項8~15のいずれか1項に記載の使用するための固体組成物。
【請求項17】
N-置換グリシン化合物のリチウム塩が、約50mg/kg~約300mg/kgで対象に投与される、請求項8~15のいずれか1項に記載の使用するための固体組成物。
【請求項18】
N-置換グリシン化合物のリチウム塩が、約120mg/kg~約300mg/kgで対象に投与される、請求項17に記載の使用するための固体組成物。
【請求項19】
N-置換グリシン化合物のリチウム塩が、約50mg/kg~約120mg/kgで対象に投与される、請求項18に記載の使用するための固体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2017年7月10日に出願された米国出願第15/646,034号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
統合失調症などの神経精神障害は、患者の行動に影響を与え、患者の認知能力と学習能力を損なう。これらの障害は、妄想、幻覚、及び他の人からの患者の関心の広範な撤回などの認知プロセスの機能不全ももたらす。N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体を介した神経伝達の欠損を特徴とする神経精神障害は、N-メチルグリシンなどのグリシン取り込み阻害剤として作用する化合物によって緩和できる。
【0003】
N-メチルグリシンは、コリンの代謝で自然に生成されるアミノ酸である。大うつ病(Huang et al、Biological Psychiatry、2013 Nov 15; 74(10):734-41)及び統合失調症の治療に適用される。N-メチルグリシンは統合失調症の陰性及び認知症状を改善することが確認されている(Amiaz et al、Isr J Psychiatry Relat Sci。2015; 52(1):12-5;Strzelecki et al、Neurosci Lett。2015 Oct 8;606:7-12)。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、N-置換グリシン化合物のリチウム塩が、N-置換グリシン化合物の他の塩、例えば、化合物のナトリウム塩と比較して、精神分裂病の症状、例えば統合失調症の陽性症状及び統合失調症及び認知機能障害の陰性症状を緩和する効果が大きいという予想外の発見に基づいている。さらに、予想外に、N-置換グリシン化合物のリチウム塩(例えば、サルコシン)は、N-置換グリシン化合物単独及びLiCl単独と比較して、動物モデルでMK801によって誘発される運動過剰の減少においてより大きな効果を示すことがわかった。
【0005】
したがって、本明細書では、N-置換グリシン化合物のリチウム塩、及び神経精神障害の少なくとも1つの症状を緩和するためのその使用が提供される。
【0006】
一態様では、本発明は、N-置換グリシン化合物のリチウム塩及び担体を含む組成物を提供し、ここで、N-置換グリシン化合物のリチウム塩は、式(I):
【0007】
【0008】
[式中、
R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボシクリル、アリール、若しくはヘテロアリールであるか、又はR1、R2、及びR3の1つは存在しない]
で表されるものである。
【0009】
一部の実施形態では、N-置換グリシン化合物のリチウム塩は、式(I-A)のものである。
【0010】
【0011】
式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボシクリル、アリール、又はヘテロアリールである。
【0012】
一部の実施形態では、N-置換グリシン化合物のリチウム塩は、式(I-B)のものである。
【0013】
【0014】
式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボシクリル、アリール、又はヘテロアリールである。
【0015】
本明細書に記載されるN-置換グリシン化合物のリチウム塩のいずれにおいても、R1、R2、及びR3の少なくとも2つはそれぞれ独立して水素又はアルキルである。いくつかの実施形態では、アルキルは、C1-3アルキル、例えばメチルである。
【0016】
一部の実施形態では、R1及びR2はそれぞれメチルであり、R3は、本明細書に記載のN-置換グリシン化合物のリチウム塩に存在しない。他の実施形態では、R1はメチルであり、R2は水素であり、R3は存在しない。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、医薬組成物、栄養補助組成物、健康食品、又は医療食品であり得る。
【0018】
別の態様では、本開示は、神経精神障害の症状を緩和する方法を提供し、それを必要とする対象に、N-置換グリシン化合物のリチウム塩又はそれを含む組成物のいずれかの有効量を投与することを含む。
【0019】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細が本明細書に記載されている。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、詳細な説明、実施例、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0020】
定義
特定の官能基と化学用語の定義については、以下で詳しく説明する。化学元素は、元素周期表、CASバージョン、化学及び物理学ハンドブック、第75版、裏表紙に従って特定され、特定の官能基は一般的にそこに記載されているように定義される。さらに、有機化学の一般的な原理、及び特定の機能部分と反応性は、Thomas Sorrell,Organic Chemistry,University Science Books,Sausalito,1999;Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989;Carruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載されている。本明細書に記載の置換基の例示的なリストにより、本開示はいかなる形でも限定されることを意図するものではない。
【0021】
値の範囲がリストされている場合、範囲内の各値とサブ範囲を包含することを意図している。例えば、「C1-6」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1-6、C1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-5、C2-4、C2-3、C3-6、C3-5、C3-4、C4-6、C4-5、及びC5-6を包含することが意図される。
【0022】
「アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐飽和炭化水素基のラジカルを指す(「C1-10アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は1から9個の炭素原子を有する(「C1-9アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は1~8個の炭素原子を有する(「C1-8アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は1~7個の炭素原子を有する(「C1-7アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は1~6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は1~5個の炭素原子を有する(「C1-5アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は1から4個の炭素原子を有する(「C1-4アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は1から3個の炭素原子を有する(「C1-3アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は1~2個の炭素原子を有する(「C1-2アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は1個の炭素原子を有する(「C1アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルキル」)。C1-6アルキル基の例には、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)(例、n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(C4)(例、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル)、ペンチル(C5)(例えば、n-ペンチル、3-ペンタニル、アミル、ネオペンチル、3-メチル-2-ブタニル、第三級アミル)、及びヘキシル(C6)(例えば、n-ヘキシル)が含まれる。アルキル基の追加の例には、n-ヘプチル(C7)、n-オクチル(C8)などが含まれる。特に明記しない限り、アルキル基の各例は、独立して非置換(「非置換アルキル」)又は1つ以上の置換基(例えば、F、-OHなどのハロゲン)で置換(「置換アルキル」)されている。特定の実施形態では、アルキル基は、非置換C1-10アルキル(非置換C1-6アルキル又はC1-3アルキル、例えば-CH3など)である。特定の実施形態では、アルキル基は、置換C1-10アルキル(置換C1-6アルキル又はC1-3アルキル、例えば-CF3又はCH2OHなど)である。
【0023】
「アルケニル」とは、2~20個の炭素原子、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有し、三重結合を持たない直鎖又は分岐炭化水素基のラジカルを指す(「C2-20アルケニル」)。一部の実施形態において、アルケニル基は、2~10個の炭素原子を有する(「C2-10アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~9個の炭素原子を有する(「C2-9アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~8個の炭素原子を有する(「C2-8アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~7個の炭素原子を有する(「C2-7アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~5個の炭素原子を有する(「C2-5アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~4個の炭素原子を有する(「C2-4アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~3個の炭素原子を有する(「C2-3アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2個の炭素原子を有する(「C2アルケニル」)。1つ以上の炭素-炭素二重結合は、内部(2-ブテニルなど)又は末端(1-ブテニルなど)になる。C2-4アルケニル基の例には、エテニル(C2)、1-プロペニル(C3)、2-プロペニル(C3)、1-ブテニル(C4)、2-ブテニル(C4)、ブタジエニル(C4)などが含まれる。C2-6アルケニル基の例には、前述のC2-4アルケニル基、ならびにペンテニル(C5)、ペンタジエニル(C5)、ヘキセニル(C6)などが含まれる。アルケニルの追加の例には、ヘプテニル(C7)、オクテニル(C8)、オクタトリエニル(C8)などが含まれる。特に明記しない限り、アルケニル基の各例は独立して任意に置換、すなわち、1つ以上の置換基で非置換(「非置換アルケニル」)又は置換(「置換アルケニル」)である。特定の実施形態では、アルケニル基は非置換C2-10アルケニルである。特定の実施形態では、アルケニル基は置換C2-10アルケニルである。アルケニル基において、立体化学が指定されていないC=C二重結合(例えば、-CH=CHCH3又は
【0024】
【0025】
)が(E)-又は(Z)-二重結合であってもよい。
【0026】
「アルキニル」は、2~20個の炭素原子、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合、及び任意で1つ又は複数の二重結合を有する直鎖又は分岐炭化水素基のラジカルを指す(「C2-20アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~10個の炭素原子を有する(「C2-10アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~9個の炭素原子を有する(「C2-9アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~8個の炭素原子を有する(「C2-8アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~7個の炭素原子を有する(「C2-7アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~5個の炭素原子を有する(「C2-5アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~4個の炭素原子を有する(「C2-4アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~3個の炭素原子を有する(「C2-3アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2個の炭素原子を有する(「C2アルキニル」)。1つ又は複数の炭素-炭素三重結合は、内部(2-ブチニルなど)又は末端(1-ブチニルなど)になり得る。C2-4アルキニル基の例には、エチニル(C2)、1-プロピニル(C3)、2-プロピニル(C3)、1-ブチニル(C4)、2-ブチニル(C4)などが含まれるが、これらに限定されない。C2-6アルケニル基の例には、前述のC2-4アルキニル基、ならびにペンチニル(C5)、ヘキシニル(C6)などが含まれる。アルキニルの追加の例には、ヘプチニル(C7)、オクチニル(C8)などが含まれる。特に明記しない限り、アルキニル基の各例は独立して任意に置換、すなわち、非置換(「非置換アルキニル」)又は1つ以上の置換基で置換(「置換アルキニル」)されている。特定の実施形態では、アルキニル基は、非置換C2-10アルキニルである。特定の実施形態では、アルキニル基は置換C2-10アルキニルである。
【0027】
「アラルキル」は、アルキル及びアリールのサブセットであり、任意に置換されたアリール基によって置換された任意に置換されたアルキル基を指す。特定の実施形態において、アラルキルは、任意に置換されたベンジルである。特定の実施形態では、アラルキルはベンジルである。特定の実施形態において、アラルキルは、場合により置換されたフェネチルである。特定の実施形態では、アラルキルはフェネチルである。
【0028】
「カルボシクリル」又は「炭素環式」とは、非芳香族環系に3~10個の環炭素原子(「C3-10カルボシクリル」)及びゼロヘテロ原子を有する非芳香族環状炭化水素基のラジカルを指す。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は3~8個の環炭素原子を有する(「C3-8カルボシクリル」)。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は3~6個の環炭素原子を有する(「C3-6カルボシクリル」)。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は3~6個の環炭素原子を有する(「C3-6カルボシクリル」)。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は5から10個の環炭素原子を有する(「C5-10カルボシクリル」)。例示的なC3-6カルボシクリル基には、シクロプロピル(C3)、シクロプロペニル(C3)、シクロブチル(C4)、シクロブテニル(C4)、シクロペンチル(C5)、シクロペンテニル(C5)、シクロヘキシル(C6)、シクロヘキセニル(C6)、シクロヘキサジエニル(C6)などが含まれるが、これらに限定されない。例示的なC3-8カルボシクリル基には、これらに限定されないが、前述のC3-6カルボシクリル基、ならびにシクロヘプチル(C7)、シクロヘプテニル(C7)、シクロヘプタジエニル(C7)、シクロヘプタトリエニル(C7)、シクロオクチル(C8)、シクロオクテニル(C8)が含まれる、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル(C7)、ビシクロ[2.2.2]オクタニル(C8)などが挙げられる。例示的なC3-10カルボシクリル基には、前述のC3-8カルボシクリル基、ならびにシクロノニル(C9)、シクロノネニル(C9)、シクロデシル(C10)、シクロデセニル(C10)、オクタヒドロ-1H-インデニル(C9)が含まれるが、これらに限定されない。デカヒドロナフタレニル(C10)、スピロ[4.5]デカニル(C10)などが挙げられる。前述の例が示すように、特定の実施形態では、カルボシクリル基は単環式(「単環式カルボシクリル」)であるか、又は二環式系(「二環式カルボシクリル」)などの縮合、架橋、又はスピロ環系を含み、飽和であり得るか又は部分的に不飽和であり得る。「カルボシクリル」には、上記で定義した炭素環が1つ又は複数のアリール又はヘテロアリール基と縮合している環系も含まれ、結合点は炭素環上にあり、そのような場合、炭素の数は炭素環系の炭素数を継続して示す。特に明記しない限り、カルボシクリル基の各例は、独立して任意に置換、すなわち、非置換(「非置換カルボシクリル」)又は1つ以上の置換基で置換(「置換カルボシクリル」)されている。特定の実施形態では、カルボシクリル基は、非置換C3-10カルボシクリルである。特定の実施形態では、カルボシクリル基は置換C3-10カルボシクリルである。
【0029】
一部の実施形態では、「カルボシクリル」は、3~10個の環炭素原子を有する単環式飽和カルボシクリル基である(「C3-10シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は3~8個の環炭素原子を有する(「C3-8シクロアルキル」)。一部の実施形態において、シクロアルキル基は、3~6個の環炭素原子を有する(「C3-6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は5~6個の環炭素原子を有する(「C5-6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は5~10個の環炭素原子を有する(「C5-10シクロアルキル」)。C5-6シクロアルキル基の例には、シクロペンチル(C5)及びシクロヘキシル(C5)が含まれる。C3-6シクロアルキル基の例には、前述のC5-6シクロアルキル基、ならびにシクロプロピル(C3)及びシクロブチル(C4)が含まれる。C3-8シクロアルキル基の例には、前述のC3-6シクロアルキル基、ならびにシクロヘプチル(C7)及びシクロオクチル(C8)が含まれる。特に明記しない限り、シクロアルキル基の各例は独立して非置換(「非置換シクロアルキル」)又は1つ以上の置換基で置換(「置換シクロアルキル」)されている。特定の実施形態では、シクロアルキル基は非置換C3-10シクロアルキルである。特定の実施形態では、シクロアルキル基は置換C3-10シクロアルキルである。
【0030】
「アリール」とは、6~14個の環炭素原子を有し、芳香族環系で提供されるゼロヘテロ原子を有する、単環式又は多環式(例えば、二環式又は三環式)4n+2芳香環系(例えば、環状配列で共有される6、10、又は14個のπ電子を有する)のラジカルを指す(「C6-14アリール」)。一部の実施形態において、アリール基は、6個の環炭素原子を有する(「C6アリール」;例えば、フェニル)。一部の実施形態において、アリール基は、10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」;例えば、1-ナフチル及び2-ナフチルなどのナフチル)。一部の実施形態において、アリール基は、14個の環炭素原子を有する(「C14アリール」;例えば、アントラシル)。「アリール」には、上で定義したアリール環が、ラジカル又は結合点がアリール環上にある1つ又は複数のカルボシクリル又はヘテロシクリル基と縮合している環系も含まれ、そのような場合、炭素原子の数は続くアリール環系の炭素原子の数を指定する。特記しない限り、アリール基の各例は独立して任意に置換、すなわち、1つ以上の置換基で非置換(「非置換アリール」)又は置換(「置換アリール」)である。特定の実施形態では、アリール基は非置換C6-14アリールである。特定の実施形態では、アリール基は置換C6-14アリールである。
【0031】
「ヘテロアリール」は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員の単環式又は二環式4n+2芳香環系(例えば、環状配列で共有される6又は10個のπ電子を有する)のラジカルを指す各ヘテロ原子が窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される芳香環系である(「5-10員ヘテロアリール」)。1つ以上の窒素原子を含むヘテロアリール基では、結合点は、原子価が許す限り、炭素又は窒素原子であり得る。ヘテロアリール二環式環系は、一方又は両方の環に1つ又は複数のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロアリール」には、上で定義したヘテロアリール環が、結合点がヘテロアリール環上にある1つ又は複数のカルボシクリル又はヘテロシクリル基と縮合している環系が含まれ、そのような場合、環員の数はヘテロアリール環系の環員数を示すために続く。「ヘテロアリール」には、上記で定義したヘテロアリール環が1つ又は複数のアリール基と縮合している環系も含まれ、結合点はアリール又はヘテロアリール環のいずれかであり、そのような場合、環員の数は縮合(アリール/ヘテロアリール)環系の環員数を示す。1つの環がヘテロ原子(例えば、インドリル、キノリニル、カルバゾリルなど)を含まない二環式ヘテロアリール基は、いずれかの環、すなわち、ヘテロ原子を有する環(例えば、2-インドリル)又はヘテロ原子を含まない環上にあり得る(5-インドリルなど)。
【0032】
いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、環炭素原子及び芳香族環系で提供される1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員芳香族環系であり、各ヘテロ原子は窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5-10員のヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供される環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~8員芳香族環系であり、各ヘテロ原子は窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5-8員のヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供される環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員芳香族環系であり、各ヘテロ原子は窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5-6員ヘテロアリール」)。一部の実施形態では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。一部の実施形態では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。一部の実施形態では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。特に明記しない限り、ヘテロアリール基の各例は、独立して任意に置換、すなわち、1つ以上の置換基で非置換(「非置換ヘテロアリール」)又は置換(「置換ヘテロアリール」)である。特定の実施形態では、ヘテロアリール基は、非置換の5~14員ヘテロアリールである。特定の実施形態において、ヘテロアリール基は、置換された5~14員のヘテロアリールである。1個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基には、ピロリル、フラニル、及びチオフェニルが含まれるが、これらに限定されない。2つのヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基には、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、及びイソチアゾリルが含まれるが、これらに限定されない。3個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基には、トリアゾリル、オキサジアゾリル、及びチアジアゾリルが含まれるが、これらに限定されない。4個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基には、テトラゾリルが含まれるが、これに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基には、ピリジニルが含まれるが、これに限定されない。2つのヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基には、ピリダジニル、ピリミジニル、及びピラジニルが含まれるが、これらに限定されない。3又は4個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基には、それぞれトリアジニル及びテトラジニルが含まれるが、これらに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な7員ヘテロアリール基には、アゼピニル、オキセピニル、及びチエピニルが含まれるが、これらに限定されない。例示的な5,6-二環式ヘテロアリール基には、限定されるものではないが、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズチアジアゾリル、インドリジニル、及びプリニルが含まれる。例示的な6,6-二環式ヘテロアリール基には、ナフチリジニル、プテリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、及びキナゾリニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される「塩」という用語は、ありとあらゆる塩を指し、薬学的に許容される塩を包含する。
【0034】
用語「結晶」又は「結晶形態」は、実質的に三次元秩序を示す固体形態を指す。特定の実施形態において、固体の結晶形態は、実質的に非晶質ではない固体形態である。特定の実施形態において、結晶形態の粉末X線回折(XRPD)パターンは、1つ以上の鋭く定義されたピークを含む。
【0035】
「非晶質」又は「非晶質形態」という用語は、立体の形態(「固体形態」)を指し、その形態は実質的に三次元秩序を欠いている。特定の実施形態において、固体の非晶質形態は、実質的に結晶性ではない固体形態である。特定の実施形態では、アモルファス形態のX線粉末回折(XRPD)パターンは、CuKα放射線を使用して、例えば20°と70°との間の2θでのピークを有する広い散乱バンドを含む。特定の実施形態において、アモルファス形態のXRPDパターンは、結晶構造に起因する1つ以上のピークをさらに含む。特定の実施形態では、20°と70°との間の2θで観察される結晶構造に起因する1つ又は複数のピークのいずれか1つの最大強度は、広い散乱バンドの最大強度の300倍以下、100倍以下、30倍以下、10倍以下、又は3倍以下である。特定の実施形態において、アモルファス形態のXRPDパターンは、結晶構造に起因するピークを含まない。
【0036】
投与が企図される「対象」とは、ヒト(すなわち、あらゆる年齢層の男性又は女性、例えば、小児対象(例えば、乳児、子供、又は青年)又は成人対象(例えば、若年成人、中年)を指す。大人、又はシニア大人))又は非ヒト動物を指すことが意図される。「患者」とは、疾患の治療を必要とするヒト対象を指す。
【0037】
「投与する」、「投与すること」、又は「投与」という用語は、本明細書に記載のN-置換グリシン化合物のリチウム塩、又はその組成物を対象に埋め込み、吸収、摂取、注入、吸入、又は導入することを指す。
【0038】
「治療」、「治療する」及び「治療する」という用語は、本明細書に記載の疾患の逆転、緩和、発症の遅延、又は進行の阻害を指す。いくつかの実施形態では、疾患の1つ又は複数の徴候又は症状が発症したか観察された後に治療を施すことができる。他の実施形態では、疾患の徴候又は症状がない状態で治療を施すことができる。例えば、症状の発症に先立って(例えば、症状の病歴に照らして、及び/又は病原体への曝露に照らして)感受性のある対象に治療を施して、疾患の発生を遅延又は予防することができる。症状が解消した後、例えば再発を遅らせたり予防したりするために、治療を継続することもできる。
【0039】
「緩和」、「緩和」、及び「緩和」という用語は、本明細書に記載の疾患又は状態の1つ又は複数の症状の重症度又は程度を低下させることを指す。
【0040】
用語「状態」、「疾患」、及び「障害」は互換的に使用される。
【0041】
本明細書に記載のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の「有効量」は、所望の生物学的応答を誘発する、すなわち状態を治療するのに十分な量を指す。当業者によって理解されるように、本明細書に記載のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、N-置換グリシン化合物のリチウム塩の薬物動態、治療中の状態、投与方法、及び対象の年齢と健康などの要因に応じて変動し得る。特定の実施形態では、有効量は治療的有効量である。特定の実施形態では、有効量は予防的有効量である。特定の実施形態では、有効量は、単回投与における本明細書に記載のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の量である。特定の実施形態では、有効量は、複数回投与における本明細書に記載のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の合計量である。
【0042】
本明細書に記載のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の「治療有効量」は、状態の治療において治療的利益を提供するか、状態に関連する1つ以上の症状を遅延又は最小化するのに十分な量である。N-置換グリシン化合物のリチウム塩の治療有効量とは、単独で又は他の治療法と組み合わせて、状態の治療に治療的利益をもたらす治療薬の量を意味する。「治療有効量」という用語は、治療全体を改善し、状態の症状、兆候、又は原因を軽減又は回避し、及び/又は別の治療薬の治療効果を高める量を含むことができる。
【0043】
本明細書に記載のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の「予防有効量」は、状態、又は状態に関連する1つ又は複数の症状を予防する、又はその再発を予防するのに十分な量である。N-置換グリシン化合物のリチウム塩の予防的有効量は、単独又は他の薬剤と組み合わせた治療薬の量を意味し、状態の予防に予防的利益を提供する。「予防有効量」という用語は、全体的な予防を改善するか、別の予防薬の予防効果を高める量を含むことができる。
【0044】
神経疾患又は精神障害又はCNS(中枢神経系)障害のいずれかを含む「神経精神障害」という用語は、器質性脳障害によって引き起こされる精神症状又は症候群のいずれかを含む障害を指す。神経精神症状の主な特徴には、様々な精神症状の発生、認知障害、神経症状、又は初期の脳発達症状の可能性が含まれる。例えば、神経精神障害には、統合失調症、精神病性障害、大うつ病性障害、アルツハイマー病、認知症、前頭側頭型認知症、軽度認知障害、良性忘却、閉鎖性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、脆弱X症候群、注意欠陥多動性障害、注意欠陥多動性障害とチック障害、強迫性障害、チック障害、トゥレット症候群、小児学習障害、月経前症候群、うつ病、自殺念慮及び/又は行動、双極性障害、不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、慢性疼痛、摂食障害、依存症、人格障害、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、夜尿症、脳卒中、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、眼瞼痙攣、非てんかん発作が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で使用する場合、「多動性症状を伴う神経精神障害」という用語は、疾患症状として多動性を示す任意の神経精神障害を指し、これは日常的な医療手順により決定することができる。例には、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、トゥレット症候群、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、パーキンソン病、レビー小体型認知症、老人性認知症が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用する場合、「感覚運動障害を有する神経精神障害」という用語は、日常的な医療手順により決定することができる、感覚運動活動障害に関連する神経精神障害を指す。例には、統合失調症、大うつ病性障害、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、チック障害、強迫性障害、トゥレット症候群、眼pa痙攣、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、アスペルガー障害、アルツハイマーの軽度認知症、レビー小体型認知症、ハンチントン病、人格障害、夜尿症、非てんかん発作が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用される場合、「学習及び記憶の欠損を伴う神経精神障害」という用語は、日常的な医療手順により決定することができる学習及び/又は記憶欠損に関連する神経精神障害を指す。例には、統合失調症、うつ病、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、嗜癖障害、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脳卒中、及び脆弱X症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書で使用する場合、「統合失調症」という用語は、妄想、幻覚、言語障害、著しい混乱又は緊張性行動、又は陰性症状のうちの少なくとも2つを含む精神障害を指す。患者は、DSMIV基準を使用して統合失調症と診断できる(APA、1994、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(Fourth Edition)、Washington、D.C.)。
【0049】
本明細書で使用される「人格障害」という用語は、多くの状況にわたって示され、個人の文化によって受け入れられているものから著しく逸脱する、行動、認知、及び内的経験の永続的な不適応パターンによって特徴付けられる精神障害を指す。これらのパターンは早期に発達し、柔軟性がなく、重大な苦痛又は障害を伴う。人格障害には、妄想、統合失調症、統合失調症、反社会的、境界線、歴史的、自己陶酔的、回避的、依存的、強迫性人格障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
統合失調症の「陽性症状」には妄想と幻覚が含まれ、これはPANSS(陽性及び陰性症候群スケール;Kay et al.(1987)Schizophrenia Bulletin 13:261-276を参照)を使用して測定できる。
【0051】
統合失調症の「陰性症状」には、統合失調症の「ネガティブな症状」には、SANS(陰性症状の評価尺度;Andreasen (1983) Scales for the Assessment of Negative Symptoms(SANS),Iowa City,Iowaを参照)を使用して測定できる鈍化、無痛、失調、及び社会的引きこもりが含まれる。
【0052】
統合失調症の「認知症状」又は「認知機能障害」には、ポジティブ及びネガティブシンドロームスケール-認知サブスケール(PANSS-認知サブスケール)(Lindenmayer et al.(1994)J.Nerv.Ment.Dis.182:631-638)によって、又は統合失調症の認知を改善するためのウィスコンシンカードソートテストや一連の測定及び治療研究などの認知タスク(MATRICS,“www.matrics.ucla.edu/matrics-psychometrics-frame.htm”)を用いて測定できる知的知識の獲得、整理、及び使用の障害が含まれる。学習及び/又は記憶の不足は、統合失調症の典型的な認知症状である。
【0053】
「健康食品」又は「健康食品」という用語は、基本的な行動機能、多動、不安、抑うつ、感覚運動ゲーティング、痛み閾値、記憶及び/又は認知機能、体重を改善するために、又は本明細書に記載の標的疾患のいずれかの治療を促進するために、ヒト及び動物に栄養を与えるために使用されるあらゆる種類の液体及び固体/半固体材料を指す。「栄養補助食品組成物」という用語は、食物源からの成分を含み、食物に見られる基本的な栄養価に加えて追加の健康上の利益を与える組成物を指す。
【0054】
「医療用食品」又は「医療用食品」という用語は、本明細書に記載されているとおり、標的疾患の特定の食事管理のために医師の監督下で通常使用される食品を含む、経腸的に消費又は投与されるように処方された食品を指す。「医療用食品」組成物とは、治療を必要とする患者(例えば、病気に苦しむヒト患者、又は特定の食事管理を介して疾患又は状態を緩和するための主要な活性剤として製造物を使用する必要があるヒト患者)のために(自然状態で使用される自然発生食品とは対照的に)特別に処方及び加工される組成物を指す。
【0055】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細が本明細書に記載されている。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、詳細な説明、実施例、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、実施例で説明されているオープンフィールドタスクであり、次のグループ内のマウスが移動した合計距離を示す。対照(n=9)、MK801(n=9)、N-メチルグリシン
278mg/kg+MK801(n=7)、N-メチルグリシン
927mg/kg+MK801(n=7)、リチウムN-メチルグリシン
300mg/kg+MK801(n=8)及びリチウムN-メチルグリシン
1000mg/kg+MK801(n=8)。
【
図2】
図2は、実施例2Bで説明したプレパルス抑制タスクの次のグループ内のマウスが示すプレパルス抑制の割合を示す。対照(n=9)、MK801(n=9)、リチウムN-メチルグリシン
300mg/kg+MK801(n=7)及びリチウムN-メチルグリシン
1000mg/kg+MK801(n=8)、78dB、82dB、及び90dBのプレパルス。
【
図3】
図3は、実施例2Cで説明したBarnes迷路課題のトレーニングトライアルで、次のグループのマウスがターゲットホールに到達するのにかかった時間を示す。対照(n=9)、MK801(n=9)、リチウムN-メチルグリシン
300mg/kg+MK801(n=8)及びリチウムN-メチルグリシン1000mg/kg+MK801(n=8)。
【
図4】
図4は、次のグループのマウスが、実施例2Cで説明したBarnes迷路タスクのプローブテスト中にターゲットゾーンで費やした時間を示す。対照(n=9)、MK801(n=9)、リチウムN-メチルグリシン
300mg/kg+MK801(n=8)及びリチウムN-メチルグリシン
1000mg/kg+MK801(n=8)。
【
図5】
図5は、本明細書で説明するオープンフィールドタスクの次のグループのマウスの移動活動(ビームブレークの数で示される)を示す:対照(n=9)、MK801(n=9)、N-メチルグリシン+MK801(n=9)、N-メチルグリシンナトリウム
555mg/kg+MK801(n=9)、塩化リチウム(LiCl)
212mg/kg+MK801(n=9)及びリチウムN-メチルグリシン
480mg/kg+MK801(n=10)。
*P<0.05;
***P<0.001。
【
図6】
図6は、例5で説明されているオープンフィールドタスクの次のグループの野生型(WT)及びFmr1遺伝子ノックアウト(Fmr1 KO)マウスの移動活動(ビームブレークの数で示される)を示す:WT
生理食塩水(n=31)、Fmr1KO
生理食塩水e(n=20)、Fmr1 KOでのリチウムN-メチルグリシン化合物治療(n=24)。
*P<0.05Fmr1 KO
生理食塩水;
###WT
生理食塩水と比較してP<0.001。
【
図7】
図7は、実施例5で説明したホットプレートテストの次のグループのWT及びFmr1 KOマウスによる疼痛反応の潜伏時間を示す:WT
生理食塩水(n=31)、生理食塩水Fmr1 KO
生理食塩水(n=20)、Fmr1 KO
リチウムN-メチルグリシン(n=24)。
【
図8】
図8は、社交性と社会的新規性の嗜好の改善に対するリチウムN-メチルグリシンの活性を検証するための例示的な設計の概略図を示す。
【
図9】
図9は、例5で説明した社交性テストで、次のグループのマウスが見知らぬマウス(ストレンジャー1)又はオブジェクトをスニッフィングする期間を示す。WT
生理食塩水(n=31)、Fmr1 KO
生理食塩水(n=20)、Fmr1 KO
リチウムN-メチルグリシン
192mg/kg(n=24)。
*Fmr1 KO
生理食塩水と比較してP<0.05。
#WT
生理食塩水と比較してP<0.05。
【
図10】
図10は、次のグループのマウスが、実施例5で説明した社会的新規性の嗜好テストでストレンジャー1又はストレンジャー2のマウスをスニッフィングする期間を示す。WT
Sarin(n=31)、Fmr1 KO Salin(n=20)、Fmr1 KO リチウムN-メチルグリシン(n=24)。
**Fmr1 KO
生理食塩水と比較してP<0.01。
#WT
生理食塩水と比較してP<0.05。
【
図11】
図11は、実施例6で説明したロータロッド試験での次のグループのロッド滞在レイテンシを示す。WT
生理食塩水(n=9)、WT
lithium N-methylglycine
192mg/kg(n=7)、SOD1G93A
生理食塩水(n=9)、SOD1G93A
lithium N-メチルグリシン
192mg/kg(n=9)、SOD1G93A
炭酸リチウム
74mg/kg(n=9)。
【
図12】
図12は、実施例6に記載されているワイヤーハンギング試験における次のグループのマウスの浮遊時間を示す:WT
生理食塩水(n=9)、WT
lithium N-methylglycine
192mg/kg(n=7)、SOD1G93A
生理食塩水(n=9)、SOD1G93A
リチウムN-メチルグリシン
192mg/kg(n=9)、SOD1G93A
炭酸リチウム
74mg/kg(n=9)。
【
図13】
図13は、本書に記載されているオープンフィールドタスクの次のグループのマウスの移動活動(ビームブレークの数で示される)を示す:対照(n=9)、MK801(n=9)、塩化リチウム(LiCl)
125mg/kg+MK801(n=6)、塩化リチウム(LiCl)
430mg/kg+MK801(n=6)、N-メチルグリシン(278mg/kg)+MK801(n=7)、N-メチルグリシン(927mg/kg)+MK801(n=7)、リチウムN-メチルグリシン
300mg/kg+MK801(n=8)、及びリチウムN-メチルグリシン
1000mg/kg+MK801(n=8)。
*P<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本開示は、N-置換グリシン化合物のリチウム塩を含む組成物、及び神経精神障害に関連する症状を緩和することにおけるその使用を提供する。N-置換グリシン化合物のそのようなリチウム塩は、異なる塩形態のN-置換グリシン化合物と比較して、有利な物理的、化学的、生理学的、及び/又は治療的特徴を有すると予想される。例えば、N-置換グリシンリチウム塩は、吸湿性、溶解性、溶解速度、物理的安定性、化学的安定性、バイオアベイラビリティ、加工性、優れた薬物動態及び/又は治療特性の改善など、有利な特性を示すと予想される。
【0058】
I.N-置換グリシン化合物のリチウム塩及びそれを含む組成物
本開示の一態様は、N-置換グリシン化合物のリチウム塩を特徴とする。N-置換グリシン化合物のそのようなリチウム塩は、式(I)のものであり得る。
【0059】
【0060】
式中、R1、R2、又はR3はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボシクリル、アリール、又はヘテロアリールであるか、あるいはR1、R2、及びR3の1つは存在しない。
【0061】
一部の実施形態では、N-置換グリシン化合物のリチウム塩は、本明細書に記載の式(I-A)又は式(I-B)のものである。
【0062】
一部の実施形態では、N-置換化合物のリチウム塩のいずれかのR1、R2、又はR3の少なくとも2つは、それぞれ独立して、水素又はアルキルである。いくつかの実施形態において、N-置換化合物のリチウム塩のR1、R2、又はR3のうちの少なくとも2つは、それぞれ独立して、水素又はC1-6アルキルである。一部の実施形態では、R1、R2、又はR3の少なくとも2つはそれぞれ独立して水素又はC1-3アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル)である。一部の実施形態では、R1、R2、又はR3の少なくとも2つはそれぞれ独立して水素又はメチルである(例えば、N、N、N-トリメチルグリシン、N,N-ジメチルグリシン、N-メチルグリシン)。一部の実施形態では、R1及びR2はメチルであり、R3は存在しない(すなわち、N、N-ジメチルグリシン)。又は、R1はメチル、R2は水素、R3は存在しない(つまり、N-メチルグリシン)。
【0063】
本明細書に記載のN-置換化合物のリチウム塩のいずれかを製剤化して、医薬組成物、栄養補助組成物、健康食品、又は医療食品を形成することができる。
【0064】
いくつかの例では、本明細書に記載の組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤をさらに含む薬学的組成物である。Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000) Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hoover。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝液を含む場合がある。アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、ベンゾエート、ソルベート、m-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、セリン、アラニン又はリジンなどのアミノ酸、単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストランを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属錯体(Zn-タンパク質錯体など);及び/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれ得る。
【0065】
他の例では、本明細書に記載の医薬組成物は、持続放出形式で製剤化することができる。徐放性調製物の適切な例には、タンニン酸を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とエチル-Lのコポリマーが含まれる。L-グルタメート、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸共重合体、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸共重合体と酢酸リュープロリドからなる注射可能なミクロスフェア)、酢酸イソ酪酸スクロース、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0066】
インビボ投与に使用される医薬組成物は無菌でなければならない。これは、例えば、滅菌ろ過膜によるろ過により容易に達成される。治療用組成物は、一般に、無菌のアクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルに入れられる。
【0067】
本明細書に記載の医薬組成物は、経口、非経口又は直腸投与、又は吸入又は吹送、又は髄腔内又は脳内経路による投与のために、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、溶液又は懸濁液、又は坐剤などの単位剤形であり得る。
【0068】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な活性成分を医薬担体、例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又はゴムなどの従来の錠剤化成分、及び本発明の化合物又はその非毒性の薬学的に許容される塩の均一な混合物を含む固体予備処方組成物を形成するための他の医薬希釈剤、例えば水と混合することができる。これらの前製剤組成物を均質と呼ぶ場合、活性成分は組成物全体に均一に分散され、組成物が錠剤、丸剤及びカプセルなどの同等に有効な単位剤形に容易に再分割できることを意味する。次いで、この固体予備処方組成物は、本発明の活性成分0.1~約500mgを含有する上記タイプの単位剤形に細分される。新規組成物の錠剤又は丸剤をコーティングするか、さもなければ配合して、長期作用の利点を与える剤形を提供することができる。例えば、錠剤又は丸剤は、内部投与成分及び外部投与成分を含むことができ、後者は前者を覆う外皮の形である。2つの成分は、胃での崩壊に抵抗し、内部成分を無傷で十二指腸に通過させるか、放出を遅らせる腸溶層によって分離することができる。そのような腸溶性層又はコーティングには様々な材料を使用することができ、そのような材料には、多くのポリマー酸及びポリマー酸とシェラック、セチルアルコール、セルロースアセテートなどの材料の混合物が含まれる。
【0069】
適切な界面活性剤には、特に、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、Tween(商標)20、40、60、80又は85)及び他のソルビタン(例えば、Span(商標)20、40、60、80又は85)などの非イオン性薬剤が含まれる。界面活性剤を含む組成物は、好都合には0.05~5%の界面活性剤を含み、0.1~2.5%であり得る。必要に応じて、他の成分、例えばマンニトール又は他の薬学的に許容されるビヒクルを添加してもよいことが理解されよう。
【0070】
適切な乳剤は、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)、Lipiphysan(商標)などの市販の脂肪乳剤を使用して調製できる。活性成分は、予め混合されたエマルジョン組成物に溶解するか、あるいは油(例えば、大豆油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油又はアーモンド油)に溶解し、リン脂質(卵リン脂質、大豆リン脂質、大豆レシチンなど)と水を用いた混合時に形成されるエマルジョンのいずれかであり得る。エマルジョンの張度を調整するために、他の成分、例えばグリセロール又はグルコースを加えてもよいことが理解されよう。適切なエマルジョンは、典型的には、20%まで、例えば5~20%の油を含む。
【0071】
吸入又は吹送用の医薬組成物には、薬学的に許容される水性又は有機溶媒、又はそれらの混合物中の溶液及び懸濁液、及び粉末が含まれる。液体又は固体組成物は、上記の適切な薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、局所的又は全身的効果のために経口又は鼻呼吸経路により投与される。
【0072】
好ましくは無菌の薬学的に許容される溶媒中の組成物は、ガスの使用により噴霧されてもよい。噴霧された溶液は、噴霧装置から直接呼吸されてもよいし、噴霧装置をフェイスマスク、テント又は間欠的陽圧呼吸装置に取り付けられてもよい。溶液、懸濁液又は粉末組成物は、適切な方法で製剤を送達するデバイスから、好ましくは経口又は経鼻で投与され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、N-置換グリシンのリチウム塩を含む組成物のいずれかは、組成物の意図される治療用途、例えば本明細書に記載のものに基づく第2の治療剤としてタンニン酸をさらに含み得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、健康食品又は健康食品製品であり得る。これは、ヒトと動物に栄養を与えるために使用されるあらゆる種類の液体及び固体/半固体材料であり、基本的な行動機能、多動、不安、抑うつ、感覚運動ゲーティング、疼痛閾値、記憶及び/又は認知機能の改善、又は本明細書で言及される標的疾患(例えば、本明細書に記載されるものを含む神経精神障害)のいずれかの治療を促進するためである。健康食品は、食品(例えば、茶ベースの飲料、ジュース、清涼飲料、コーヒー、ミルク、ゼリー、クッキー、シリアル、チョコレート、スナックバー、ハーブエキス、乳製品(例えば、アイスクリーム、ヨーグルト))、食品/栄養補助食品、又は栄養補助食品製剤であり得る。
【0075】
本明細書に記載の健康食品は、本明細書に記載の製品に1つ以上の利益を与える1つ以上の食用担体を含んでもよい。食用担体の例には、デンプン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、及びそれらの水溶液が含まれる。他の例には、溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、香料が含まれ、当業者に知られているような同様の材料及びそれらの組み合わせなどの染料であり得る。いくつかの例では、本明細書に記載の健康食品は、魚油、亜麻仁油、及び/又は安息香酸塩などの神経保護食品をさらに含んでもよい。
【0076】
いくつかの例では、健康食品は栄養補助食品組成物であり、食品源の成分を含み、食品に見られる基本的な栄養価に加えて追加の健康上の利益をもたらす組成物を指す。本明細書に記載の栄養補助食品組成物は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩と、式(I)N-置換グリシン化合物のリチウム塩の良好な健康を促進し、及び/又は安定性と生物活性を高める追加の成分とサプリメントを含む。
【0077】
栄養補助食品組成物の作用は、高速又は/及び短期的であるか、又は本明細書に記載されているような長期の健康目標の達成に役立つ可能性がある。例えば、基本的な行動機能、多動、不安、抑うつ、感覚運動ゲーティング、疼痛閾値、記憶及び/又は、例えば、精神神経障害を有するか、又は精神神経障害のリスクがあるヒト対象における認知機能が挙げられる。栄養補助食品組成物は、例えば栄養補助食品又は医薬製剤として食用材料に含まれていてもよい。栄養補助食品として、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの追加の栄養素が含まれている場合がある。組成物は、飲料又は食品、例えば、茶、清涼飲料、ジュース、ミルク、コーヒー、クッキー、シリアル、チョコレート、及びスナックバーでもあり得る。必要に応じて、ソルビトール、マルチトール、水素化グルコースシロップ及び水素化デンプン加水分解物、高果糖コーンシロップ、サトウキビ、甜菜糖、ペクチン、又はスクラロースなどの甘味料を添加することにより、組成物を甘味化することができる。
【0078】
本明細書に開示される栄養補助組成物は、溶液の形態であり得る。例えば、栄養補助食品製剤は、緩衝液、溶媒、希釈剤、不活性担体、油、又はクリームなどの媒体で提供され得る。いくつかの例では、製剤は、アルコールなどの非水性共溶媒を任意に含む水溶液中に存在する。栄養補助食品組成物は、粉末、ペースト、ゼリー、カプセル、又は錠剤の形でもあり得る。乳糖とコーンスターチは、一般的にカプセルの希釈剤や錠剤の担体として使用される。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤は、通常、錠剤を形成するために添加される。
【0079】
健康食品は、適切な投与経路、例えば経口投与用に処方されてもよい。経口投与の場合、組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、乳糖、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカなど);崩壊剤(例えば、馬鈴starch澱粉又は澱粉グリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの許容される賦形剤とともに従来の手段により調製される錠剤又はカプセルの形態をとることができる。錠剤は、当技術分野で周知の方法によりコーティングすることができる。バー及びその他のチュアブル製剤も含まれる。
【0080】
いくつかの例では、健康食品は液体の形態であり得、1つ以上の食用担体は、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用によって;例えば液体ポリオール又は脂質などの担体への分散による必要な粒子サイズの維持によって;例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤の使用によって、又はその組み合わせによって維持できる。多くの場合、例えば、糖、塩化ナトリウム、又はそれらの組み合わせなどの等張剤を含めることが有利である。
【0081】
経口投与用の液体製剤は、例えば溶液、シロップ又は懸濁液の形をとることができ、又は使用前に水又は他の適切なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供することができる。一実施形態では、液体製剤は、フルーツジュースとともに投与するために製剤化することができる。そのような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂肪)などの薬学的に許容される添加剤;乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール又は分画された植物油);及び防腐剤(例えば、メチル又はプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、ベンゾエート又はソルベート)を用いて従来の手段により調製することができる。
【0082】
特定の実施形態では、組成物は医療用食品であり、これは消費されるか又は経腸的に投与されるように処方された食品であり得る。そのような食品は通常、本明細書に記載されているような標的疾患の特定の食事管理のために医師の監督の下で使用される。いくつかの例では、そのような医療食品組成物は、治療を必要とする患者(例えば、病気に苦しんでいるか、又は特定の食事管理を介して疾患又は状態を緩和するための主要な活性剤として製品の使用を必要とするヒト患者)のために特別に処方及び処理される。いくつかの例では、本明細書に記載の医療食品組成物は、症状を管理するため、又は疾患又は状態のリスクを減らすために、食事全体の一部として医師によって単に推奨されるものではない。
【0083】
本明細書に記載の医療食品組成物はいずれも、式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩及び少なくとも1つの担体(例えば、本明細書に記載のもの)を含み、以下に詳述するように、液体;粉末、棒、ウェーハ、適切な液体又は適切なエマルジョンの懸濁液の形態であり得る。天然又は合成(非天然)の少なくとも1つの担体は、組成物中の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩に1つ又は複数の利点、例えば、安定性、バイオアベイラビリティ、及び/又は生物活性を付与する。本明細書に記載の担体のいずれかを使用して、医療食品組成物を作製してもよい。いくつかの実施形態では、医療食品組成物は、天然香味料、人工香味料、主要微量及び超微量ミネラル、ミネラル、ビタミン、オート麦、ナッツ、スパイス、牛乳、卵、塩、小麦粉、レシチン、キサンタンガム及び/又は甘味料を含むが、これらに限定されない群から選択される1つ又は複数の追加成分をさらに含んでもよい。医療食品組成物は、本明細書に記載されているものなどの少なくとも追加の治療薬をさらに含むことができる適切な容器に入れることができる。
【0084】
医薬組成物中に有効量で提供される。特定の実施形態において、有効量は、治療有効量(例えば、それを必要とする対象の神経精神障害の治療及び/又はリスク低減に有効な量)である。特定の実施形態では、神経精神障害は、神経障害、例えばアルツハイマー病である。特定の実施形態では、神経精神障害は統合失調症である。特定の実施形態では、有効量は予防的有効量(例えば、それを必要とする対象の神経精神障害を予防するのに有効な量)である。
【0085】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬理学の分野で知られている任意の方法により調製することができる。一般に、そのような準備方法は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩(すなわち、「活性成分」)を担体又は賦形剤、及び/又は1つ以上の他の付属成分と結合させることを含み、必要に応じて、及び/又は望ましい場合は、製品を成形し、及び/又は製品を所望の単回又は複数回用量単位に包装することができる。
【0086】
医薬組成物は、単一の単位用量として、及び/又は複数の単一の単位用量として、大量に調製、包装、及び/又は販売することができる。「単位用量」は、所定量の活性成分を含む個別量の医薬組成物である。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投与量及び/又はそのような投与量の半分又は3分の1などのそのような投与量の便利な画分に等しい。
【0087】
本明細書に記載の医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/又は任意の追加成分の相対量は、治療される対象の同一性、サイズ、及び/又は状態、さらには経路によって異なる組成物が投与される。組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含んでもよい。
【0088】
提供される医薬組成物の製造に使用される薬学的に許容される賦形剤には、不活性希釈剤、分散剤及び/又は造粒剤、界面活性剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、潤滑剤、及び/又は油が含まれる。カカオバター及び坐剤ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び香料などの賦形剤も組成物中に存在してもよい。
【0089】
経口及び非経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤が含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば水又は他の溶媒、可溶化剤、及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(綿実、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ、ゴマ油など)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及び脂肪酸エステルソルビタン、及びそれらの混合物などの当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含んでもよい。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、香味料、及び香料などのアジュバントを含むことができる。非経口投与の特定の実施形態では、本明細書に記載のコンジュゲートは、Cremophor(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、及びそれらの混合物などの可溶化剤と混合される。
【0090】
注射可能な調製物、例えば、無菌の注射可能な水性又は油性の懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用製剤は、例えば1,3-ブタンジオールの溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液、又はエマルジョンであり得る。使用できる許容される媒体と溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.、及び等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。加えて、無菌の固定油が溶媒又は懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノ又はジグリセリドを含む、刺激の少ない固定油を使用できる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に使用される。
【0091】
注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターでの濾過により、又は使用前に滅菌水又は他の滅菌注射用媒体に溶解又は分散できる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより滅菌することができる。
【0092】
薬物の効果を長引かせるために、皮下又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることがしばしば望ましい。これは、水への溶解度が低い結晶性又はアモルファスの液体懸濁液を使用することで実現できる。その場合、薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、溶解速度は結晶サイズと結晶形に依存する可能性がある。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解又は懸濁することにより達成され得る。
【0093】
経口投与用の固体剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、及び顆粒が含まれる。そのような固体剤形では、活性成分は、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な薬学的に許容される賦形剤又は担体、及び/又は以下のものと混合される;(a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸などの増量剤又は増量剤;(b)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖、アカシアなどの結合剤、(c)グリセロールなどの保湿剤、(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ、タピオカなどの崩壊剤デンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム、(e)パラフィンなどの溶液遅延剤、(f)第4アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(g)湿潤剤、例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアレート、(h)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤、及び(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物などの潤滑剤。カプセル、錠剤、及び丸薬の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0094】
同様のタイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖などの賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟及び硬充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒の固体剤形は、腸溶コーティング及び薬理学の分野で周知の他のコーティングなどのコーティング及びシェルで調製することができる。それらは、任意に乳白剤を含んでもよく、消化管の特定の部分でのみ、又は優先的に、任意に遅延様式で活性成分を放出する組成物であってもよい。使用できるカプセル化組成物の例には、ポリマー物質及びワックスが含まれる。同様のタイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖などの賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟及び硬充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用することができる。
【0095】
活性成分は、上記のように1つ又は複数の賦形剤を含むマイクロカプセル化形態であり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒の固体剤形は、腸溶性コーティング、放出制御コーティング、及び医薬製剤技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティング及びシェルで調製することができる。そのような固体剤形では、活性成分は、スクロース、ラクトース、又はデンプンなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混合することができる。そのような剤形は、通常の慣行であるように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、錠剤化滑沢剤及びステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロースなどの他の錠剤化助剤を含んでもよい。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよい。それらは、任意に乳白剤を含んでもよく、消化管の特定の部分でのみ、又は優先的に、任意に遅延様式で活性成分を放出する組成物であってもよい。使用可能なカプセル化剤の例には、ポリマー物質及びワックスが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は、主にヒトへの投与に適した医薬組成物に向けられているが、そのような組成物は一般にあらゆる種類の動物への投与に適している。組成物を様々な動物への投与に適したものにするためのヒトへの投与に適した医薬組成物の修飾はよく理解されており、通常の獣医薬理学者は通常の実験でそのような修飾を設計及び/又は実施することができる。
【0097】
本明細書で提供される式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩は、典型的には、投与の容易さ及び投薬量の均一性のために投薬単位形態で処方される。しかしながら、本明細書に記載の組成物の毎日の合計の使用は、健全な医学的判断の範囲内で医師によって決定されることが理解されるであろう。特定の対象又は生物に対する特定の治療上有効な用量レベルは、様々な要因に依存し、例えば、治療される疾患及び障害の重症度;使用される特定の有効成分の活性;採用された特定の組成;対象の年齢、体重、一般的な健康、性別、及び食事;投与時間、投与経路、及び使用される特定の活性成分の排出速度;治療期間;使用される特定の有効成分と組み合わせて、又は同時に使用される薬物;そして医学の分野でよく知られている同様の要因が挙げられる。
【0098】
II.治療方法
本発明の別の態様は、式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩又はそれを含む組成物の有効量を必要とする対象に投与することを含む、神経精神障害の少なくとも1つの症状を緩和する方法を提供することである。
【0099】
本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩は、神経精神障害の治療及び/又は予防に有用である。いくつかの実施形態では、神経精神障害には、統合失調症、精神病性障害、大うつ病性障害、アルツハイマー病、認知症、前頭側頭型認知症、軽度認知障害、良性忘却、閉鎖性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、脆弱X症候群、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、注意欠陥多動性障害とチック障害の組み合わせ、強迫性障害、チック障害、トゥレット症候群、小児期学習障害、月経前症候群、うつ病、自殺念慮及び/又は行動、双極性障害、不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、慢性疼痛、摂食障害、嗜癖障害、人格障害、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、夜尿症、脳卒中、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、眼瞼痙攣及び非癲癇性発作が含まれる。
【0100】
いくつかの実施形態において、神経精神障害は、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動障害、強迫神経症、トゥレット症候群、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、パーキンソン病、レビー体伴う認知症、及び老人性認知症などの活動亢進症状を伴う神経精神障害である。
【0101】
いくつかの実施形態では、神経精神障害は、感覚運動障害、例えば、統合失調症、大鬱病性障害、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、チック障害、強迫性障害、トゥレット症候群、眼瞼痙攣、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、アスペルガー障害、アルツハイマーの軽度認知症、レビー小体型認知症、ハンチントン病、人格障害、夜尿症、非てんかん発作、を有する神経精神障害である。
【0102】
いくつかの実施形態において、神経精神障害は、統合失調症、鬱病、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、嗜癖障害、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脳卒中、及び脆弱X症候群などの学習及び記憶の欠損を伴う神経精神障害である。
【0103】
いくつかの実施形態では、治療又は緩和される症状は、統合失調症の陽性症状、統合失調症の陰性症状、又は統合失調症の認知症状である。いくつかの実施形態では、統合失調症の陽性症状は妄想又は幻覚である。いくつかの実施形態では、統合失調症の負の症状には、感情の鈍化、言語及び思考の貧困、無関心、無快感、社会的衝動の低下、動機の喪失、社会的関心の欠如、又は社会的又は認知的入力に対する不注意が含まれる。いくつかの実施形態では、統合失調症の認知症状は、学習及び/又は記憶の不足である。
【0104】
本明細書で提供される式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩、又はそれを含む組成物は、経腸(例えば、経口)、非経口を含む、当業者に知られている適切な経路によって投与することができる。例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、皮下、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、クリーム、及び/又はドロップなど)である。特に考えられる経路には、経口投与、静脈内投与(例えば、全身静脈内注射)、血液及び/又はリンパ供給を介した局所投与、及び/又は患部への直接投与が含まれる。一般に、最も適切な投与経路は、薬剤の性質(例えば、胃腸管の環境におけるその安定性)、及び/又は対象の状態(例えば、対象経口投与に耐えることができる)に依存する。
【0105】
有効量を達成するために必要な前述の組成物に含まれる式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の正確な量は、患者ごとで、例えば、種、年齢、及び一般的な状態、副作用又は障害の重症度、式(I)のN-置換グリシン化合物の特定のリチウム塩の同一性、投与様式などに応じて異なる。有効量は、単回投与(例えば、単回経口投与)又は複数回投与(例えば、複数回経口投与)に含まれてもよい。特定の実施形態では、複数の用量が対象に投与されるか、生体試料、組織、又は細胞に適用される場合、複数の用量の任意の2用量は、異なる又は実質的に同じ量の本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を含む。特定の実施形態では、複数の用量が対象に投与されるか、生体試料、組織、又は細胞に適用される場合、複数の用量を対象に投与する頻度、又は組織又は細胞に複数の用量を適用する頻度は1日3回の用量であり、1日2回、1日1回、1日おきに1回、3日ごとに1回、毎週1回、隔週に1回、毎月1回、又は隔月に1回である。特定の実施形態では、対象への複数回投与の投与又は組織又は細胞への複数回投与の適用の頻度は、1日1回である。特定の実施形態では、複数回投与を対象に投与する頻度、又は複数回投与を組織又は細胞に適用する頻度は、1日当たり2回の投与である。特定の実施形態では、複数回投与が対象に投与されるか、生体試料、組織、又は細胞に適用される場合、複数回投与の最初の投与と最後の投与の間の期間は、1日、2日、4日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、6か月、9か月、1年、2年、3年、4年、5年、7年、10年、15年、20年、又は対象、生体サンプル、組織、又は細胞の寿命である。特定の実施形態では、複数回投与の最初の投与と最後の投与との間の期間は、3ヶ月、6ヶ月、又は1年である。特定の実施形態では、複数回投与の最初の投与と最後の投与との間の期間は、対象、生体試料、組織、又は細胞の寿命である。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量(例えば、単回用量、又は複数回用量の任意の用量)は、独立して、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の1mg~3mg、3mg~10mg、10mg~30mg、30mg~100mg、100mg~300mg、300mg~1000mg、又は1g~10g(両端を含む)を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して3mg~10mg含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して10mg~30mg含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して30mg~100mg含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して100mg~300mg含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して300mg~1000mg含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の用量は、対象のkgあたり投与される式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の質量(kg/mg)を指す。特定の実施形態において、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して約50mg/kg~約300mg/kg含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して約120mg/kg~約300mg/kgを含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して約150mg/kg~約300mg/kg含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して約50mg/kg~約120mg/kg含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して約50mg/kg~約100mg/kg含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して約75mg/kg~約100mg/kg含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の用量は、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を独立して約90mg/kg~約120mg/kg含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の用量は、独立して、120本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、約110mg/kg、約112mg/kg、約115mg/kg、又は約120mg/kgを含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の用量は、独立して、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、約105mg/kg、約110mg/kg、約115mg/kg、約120mg/kg、約125mg/kg、約130mg/kg、約135mg/kg、約140mg/kg、約145mg/kg、約150mg/kg、約155mg/kg、約160mg/kg、約165mg/kg、約170mg/kg、約175mg/kg、約180mg/kg、約185mg/kg、約190mg/kg、約195mg/kg、約200mg/kg、約205mg/kg、約210mg/kg、約215mg/kg、約220mg/kg、約225mg/kg、約230mg/kg、約235mg/kg、約240mg/kg、約245mg/kg、約250mg/kg、約255mg/kg、約260mg/kg、約265mg/kg、約270mg/kg、約275mg/kg、約280mg/kg、約285mg/kg、約290mg/kg、ab295mg/kg、約300mg/kg、約305mg/kg、約310mg/kg、約315mg/kg、約320mg/kg、約325mg/kg、約330mg/kg、約335mg/kg、約340mg/kg、約345mg/kg、約350mg/kg、約355mg/kg、約360mg/kg、約365mg/kg、約370mg/kg、約375mg/kg、約380mg/kg、約385mg/kg、約390mg/kg、約395mg/kg、約400mg/kg、約405mg/kg、約410mg/kg、約415mg/kg、約420mg/kg、約425mg/kg、約430mg/kg、約435mg/kg、約440mg/kg、約445mg/kg、又は約450mg/kgを含む。
【0106】
本明細書に記載の用量範囲は、提供された医薬組成物を成人に投与するための指針を提供する。例えば、小児又は青年に投与される量は、開業医又は当業者により決定され得、成人に投与される量よりも少ないか又は同じであり得る。
【0107】
III.併用治療
本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩は、神経精神障害の治療及び/又はそのリスクの低減に有用な1つ又は複数の追加の医薬品(例えば、治療及び/又は予防活性剤)と組み合わせて投与することができる。追加の医薬品は、それを必要とする対象の神経精神障害の治療及び/又はそのリスクの低減におけるN-置換グリシン化合物のリチウム塩の活性(例えば、活性(例えば、効力及び/又は効力)を改善し得る)、バイオアベイラビリティの向上、安全性の向上、薬剤耐性の低減、代謝の低減及び/又は修正、排出の抑制、及び/又は対象、生体試料、組織、又は細胞におけるN-置換グリシン化合物のリチウム塩の分布の修飾を行い得る。また、採用される治療法は、同じ障害に対して望ましい効果を達成できること、及び/又は異なる効果を達成できることも理解されよう。特定の実施形態において、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩及び追加の医薬品は、式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩の及び追加の医薬品(ただし両方ではない)の1つが関与する治療に存在しない相乗効果を示す。
【0108】
式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩は、例えば治療及び治療における併用療法として有用であり得る1つ又は複数の追加の医薬品と同時に、前に、一緒に、又はその後に投与することができる/又は対象の神経精神障害のリスクを減らす。いくつかの例では、N-置換グリシン化合物のリチウム塩及び追加の薬剤は、1つの組成物に製剤化される。他の例では、N-置換グリシン化合物のリチウム塩及び追加の薬剤は、別々の組成物に製剤化される。
【0109】
医薬品には治療上有効な薬剤が含まれる。薬剤には予防的に活性な薬剤も含まれる。医薬品には、薬物化合物(連邦規則集(CFR)で規定されているように、米国食品医薬品局によってヒト又は獣医用に承認された化合物)、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖、オリゴ糖、多糖類、核タンパク質、粘膜タンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチド又はタンパク質、抗体、抗体、糖タンパク質、ステロイドなどのタンパク質に結合した小分子、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、ビタミン、及び細胞などの小さな有機分子が含まれる。特定の実施形態では、追加の医薬品は、対象の神経精神障害の治療及び/又はリスク低減に有用な医薬品である。特定の実施形態では、追加の医薬品は、対象の神経精神障害の治療及び/又はリスク低減のために規制当局(例えば、米国FDA)によって承認された医薬品である。追加の各薬剤は、その薬剤について決定された用量及び/又はタイムスケジュールで投与されてもよい。追加の薬剤はまた、互いに一緒に及び/又は本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を含む組成物と一緒に単回投与又は異なる用量で別々に投与してもよい。レジメンで使用する特定の組み合わせは、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩と追加の医薬品及び/又は所望の治療及び/又は達成されるべき予防効果との適合性を考慮する。一般に、組み合わせた追加の医薬品は、それらが個別に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが期待される。いくつかの実施形態では、組み合わせて利用されるレベルは、個別に利用されるレベルよりも低くなる。
【0110】
特定の実施形態では、追加の医薬品は、神経精神障害のリスクを治療及び/又は低減するための薬剤、又はそれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態では、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を含む医薬組成物は、神経精神障害のリスクを治療及び/又は低減する治療と組み合わせて投与できる。
【0111】
特定の実施形態において、追加の医薬品は、神経精神障害を治療及び/又はそのリスクを低減するための薬剤であり、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定剤、抗不安薬、精神刺激薬、及び注意欠陥多動性障害の治療薬(ADHD)、又はアルツハイマー病(AD)の治療薬であり得る。
【0112】
抗精神病薬の例には、限定されないが、ブチロフェノン、フェノチアジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メゾリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、チオキサンテン、クロルプロチキセン、クロペンチオン、チオン、チオン、チオン、チオン、チオン、チオン、チオン、チオン、チオン、チオン、チオン、チオチエン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、アリピプラゾール、カンナビジオール、LY2140023、ドロペリドール、ピモジド、ブタペラジン、カルフェナジン、レモキシプリド、ピペラセタジン、スルピリド、アカンプロセート、タンニン酸、及びテトラベナジンが挙げられる。
【0113】
抗うつ薬は、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)、三環系抗うつ薬(TCA)、四環系抗うつ薬(TeCA)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ノルアドレナリン及び特定のセロトニン作動性抗うつ薬(NASSA)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)レプチン阻害薬、再取り込み阻害剤、又はセロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)であり得る。抗うつ剤の例には、限定されないが、フルオキセチン、パロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、デュロキセチン、ミルタザピン、ミアンセリン、レボキセチン、ブプロピオン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、デシプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、ブプロピオン、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、トラゾドン、ネファゾドン、フェネルジン、ラマトロジン、リチウム、トピラマート、ガバペンチン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、バルプロ酸、マプロチリン、ブロファロミン、ゲピロン、モクロベミド、イソニアジド、及びイプロニアジドが含まれる。
【0114】
精神刺激薬又は注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療薬は、メチルフェニデート、デキストロ-トレオ-メチルフェニデート、イソプロピルフェニデート、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、ペモリン、フェンメトラジン、ジエチルプロピオン、クロルフェンテルミン、 p-ヒドロキシモルフェドリン、フェンフルラミン、1-(2,5-ジメトキシ-4-メチルフェニル)-2-アミノプロパン、ブプロピオン、スタチン、モダフィニル、アレコリン、デキスメチルフェニデート、リスデキサンフェタミンジメシレート、混合塩アンフェタミン、アトモキセチン、塩酸クロニジン、塩酸グアンファシン、及びアレコリンであり得る。
【0115】
気分安定剤は、リチウム、ラモトリギン、カルバマゼピン、トピラメート、ゾルピデム、カルバマゼピン、及びバルプロ酸であり得る。
【0116】
抗不安薬は、ジアゼパム、アルプラゾラム、トリアゾラム、インディプロン、ザレプロン、ブロマゼパム、オキサゼパム、ブスピロン、ヒドロキシジン、メクロクアロン、メデトミジン、メトミデート、アジナゾラム、クロルジアゼポキシド、クロベンゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、クロナゼピオン、ロマゼパム、ロナゼパム、ロナゼパム、ロナゼパム、ロナゼパム、ロナゼパム、クロラゼピオンアザシクロノール、ブロミソバラム、クロラゼペート、N-カルボアモイラスパルテートカルシウム、カプトジアミン、カプリド、カルボクロラール、カルボマール、クロラールベタイン、エンシプラジン、フレシノキサン、イプサピラオン、イプサピロン、レソピトロン、ロキサピン、メタウアロン、メチプリロン、プロパノロル、タンドスピロン、トラゾドン、ゾピクロン、及びゾルピデムであり得得る。
【0117】
アルツハイマー病(AD)の治療薬は、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチン、セルフォテル、ミダフォテル、タクリン、セレギリン、及びビタミンEであり得る。
【0118】
IV.治療キット
本開示には、本明細書に記載の標的障害のいずれかの治療に使用するキットも含まれる。本明細書で提供されるキットは、本明細書で説明される式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩、又はそれを含む組成物を含み得る。任意選択で、キットは、本明細書に記載の1つ又は複数の追加の医薬品をさらに含み得る。
【0119】
本明細書に記載されるキットのいずれかは、本明細書に記載される有効成分が入れられる1つ以上の容器(例えば、バイアル、アンプル、ボトル、シリンジ、及び/又はディスペンサーパッケージ、又は他の適切な容器)を含み得る。いくつかの実施形態では、提供されるキットは、本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を含む医薬組成物の希釈又は懸濁のための医薬賦形剤を含む追加の容器、及び任意で追加の医薬品をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の容器に提供される本明細書に記載の式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を含む医薬組成物を組み合わせて、1つの単位剤形を形成する。
【0120】
特定の実施形態では、本明細書に記載のキットは、キットに含まれる式(I)のN-置換グリシン化合物のリチウム塩を含む組成物を使用するための説明書をさらに含む。本書に記載されているキットには、米国食品医薬品局(FDA)などの規制機関が必要とする情報も含まれる。特定の実施形態では、キットに含まれる情報は処方情報である。特定の実施形態では、キット及び説明書は、神経精神病のリスクを治療及び/又は低減するために提供される。本明細書に記載されるキットは、別個の組成物として本明細書に記載される1つ以上の追加の医薬品を含み得る。
【0121】
さらに詳述することなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用できると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる形であれ本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用されるすべての出版物は、本明細書で参照される目的又は主題のために参照により組み込まれる。
【実施例】
【0122】
実施例1:リチウムN-メチルグリシンの合成及び調製
200mLの水中の49.1gのN-メチルグリシンの溶液を撹拌しながら0℃に冷却し、次いで50mLの水中の23.1gのLiOHの溶液を加えた。混合物を0~25℃で3時間撹拌し続け、次いで真空で濃縮して水を除去し、リチウムN-メチルグリシン塩を得て、これをイソプロピルアルコールで再結晶化してリチウムN-メチルグリシンの結晶形態を得た(49.6g、収率94%)。これを次の実施例で使用した。
【0123】
実施例2:MK801処理マウスの行動に対するリチウムN-メチルグリシンの効果
すべてのC57BL/6J雄マウスは、国立台湾大学医学部の実験動物センターから購入した。マウスは、国立台湾大学の心理学部の動物室のポリスルホン換気ケージ(代替デザイン、AR、米国)で自由に食物と水が利用できるグループ飼育(ケージあたり3-5マウス)であった。コロニーは温度22±2℃の12/12時間の明暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実施された。この研究で使用された動物はすべて成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。すべての動物の手順は、国立台湾大学の動物管理使用委員会によって承認されたプロトコルに従って実行された。
【0124】
マウスは、6つのグループにランダムに割り当てられた。
グループ1:PBS+生理食塩水(n=9)(対照グループ);
グループ2:PBS+MK801(n=9)(MK801グループ);
グループ3:N-メチルグリシン 278mg/kg+MK801(n=7);
グループ4:N-メチルグリシン 927mg/kg+MK801(n=7);
グループ5:リチウムN-メチルグリシン 300mg/kg+MK801(n=8);
グループ6:リチウムN-メチルグリシン 1000mg/kg+MK801(n=8)。
【0125】
ジゾシルピンとしても知られるMK801は、NMDA受容体の拮抗薬である。グループ2~6のマウスには、行動試験の20分前に、MK-801(通常の生理食塩水に溶解したNMDA受容体拮抗薬、0.1又は0.2mg/kg、i.p.)を急性投与した。グループ3~6のマウスには、MK801投与の15分前にそれぞれN-メチルグリシン又はリチウムN-メチルグリシンの経口強制飼養(PBSに溶解)を投与した。リチウムN-メチルグリシンの高モル濃度と低モル濃度(300mg/kgと1000mg/kg)は、それぞれN-メチルグリシンのモル濃度(278mg/kgと927mg/kg)に等しかった。
【0126】
本研究では、マウスの2つのコホート(48マウス)を使用し、コホート1(48マウス)をオープンフィールド(MK801誘発過運動)及びプレパルス阻害(センサー-モーターギャップ機能)タスクで順次テストした。コホート2のマウス(34匹のマウス)は、バーンズ迷路(空間学習及び記憶)タスクで順次テストされた。
【0127】
リチウムN-メチルグリシンはマウスのオープンフィールドタスクでMK801が誘発する運動過剰を減少させた
オープンフィールドタスクは、マウスとラットの両方で、環境によって誘発される新しい探索行動と一般的な活動の一般的な尺度である。本研究では、マウスをプレキシグラスケージ(37.5cm×21.5cm×18cm)に50~65ルクスの光強度で配置し、EthoVisionビデオ追跡システム(Noldus Information Technology,the Netherlands)を使用して、自発的な運動活動を60分間測定した。各マウスの移動距離は、運動活動の指標として測定された。結果を
図1に示す。
【0128】
対照群と比較して、MK-801はオープンフィールドテストで運動過剰を誘発した。MK-801が誘発する多動性を含む動物モデルは、様々な神経精神障害の研究、及び統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、トゥレット症候群、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、パーキンソン病、レビー小体型認知症、老人性認知症を含むがこれらに限定されない状態の分析の開発によく使用される(Rubia et al.,2010;Sheppard and Bradshaw,1999;Bent et al.,2014;Powell and Miyakawa,2006;Nestler and Hyman,2010;Bubenkova-Valesova et al.,2008;Gobira et al.,2013;Lai et al.,2014;Maio et al.,2014;Sontag et al.,2010; Ding et al.,2014; Walitza et al.,2007;Finestone et al.,1982;Golimstok et al.,2011参照)。
【0129】
高用量のN-メチルグリシンとリチウムN-メチルグリシンの両方の投与量は、MK-801が誘発する運動過剰活動を改善した。用量依存効果は、リチウムN-メチルグリシン+MK-801群で観察された。運動過剰は統合失調症の典型的な陽性症状とみなされており、この結果は、N-メチルグリシンの高用量(927mg/kg)がわずかに有効である一方で、リチウムN-メチルグリシンの両方の用量(300mg/kg及び1000mg/kg)がわずかに有効であることを示す)は、陽性症状の治療に有効である。したがって、リチウムN-メチルグリシンは、N-メチルグリシンよりもMK-801によって誘発される多動性の低減にはるかに効果的である。
【0130】
リチウムN-メチルグリシンはMK801によるセンサーモーター機能障害を軽減した
プレパルス抑制タスク事前注意プロセスは自動かつ迅速であり、意識的意識の外で動作する傾向があるが、意図的な注意プロセスはリソースが限られ、労力がかかり、動作が遅くなる。事前注意処理の一般的な尺度は、プレパルス抑制である。このパラダイムは、いくつかの精神疾患のマウスモデルで一般的に検査され、これには、限定されないが、統合失調症、大うつ病性障害、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、チック障害、強迫性障害、トゥレット症候群、眼瞼痙攣、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、アスペルガー障害、アルツハイマー病の軽度認知症、認知症レビー小体、ハンチントン病、人格障害、夜尿症、非てんかん性発作が挙げられる(McAlonan et al.,2002 Braff et al.,2001;Giakoumaki et al.,2007;Ueki et al.,2006;Perriol et al.,2005;Ludewig et al.,2002;Castellanos et al.,1996;Cadenhead et al.,2000;Matsuo et al.,2017;Lai et al.,2014参照)。これは、欠陥がヒトの症状と同様の方法で現れるためです。
【0131】
プレパルス阻害は、SR-LABスタートル装置(米国カリフォルニア州サンディエゴのサンディエゴインスツルメンツ)を使用した感覚運動ゲーティング機能の指標として使用された。バックグラウンドノイズが72dBの場合、各セッションは5分間の蓄積期間とそれに続く4ブロックでの64回の試行で構成された。パルス単独(PA)トライアルは、40ms、120dBのホワイトノイズバーストであった。プレパルス(pp)+パルストライアルでは、40ms 120dBパルスの100ms前に、78dB(pp6)、82dB(pp10)、又は90dB(pp18)の20msホワイトノイズプレパルス刺激が提示された。非刺激(NS)トライアルでは、バックグラウンドノイズのみが提示された。最初と最後のブロックは、それぞれ6つのPAトライアルで構成されている。2つの中央ブロックは、PA、pp+パルス、及びNS試行で構成される。これらの試験は、疑似ランダムに提示され、平均15秒の部族間間隔(10~20秒の間で変化)で区切られている。プレパルス抑制の割合は、次の式によって評価された。%PPI=100×[(PAスコア)-(pp-Pスコア)]/(PAスコア)。ここで、PAスコアは、真ん中のブロックPA値の平均である。結果を
図2に示す。
【0132】
対照群と比較して、MK-801はプレパルス抑制試験で感覚運動ゲーティング機能の欠損を誘発した。プレパルス阻害は、特に高パルスのプレパルス(90dB)で、MK-801注射後のリチウムN-メチルグリシン処理によって緩和された。この研究から得られた結果は、リチウムN-メチルグリシンがCNS障害のプレパルス抑制モデルの欠損を軽減するのに有効であることを示す。
【0133】
リチウムN-メチルグリシンはMK801による空間学習と記憶障害を軽減した
バーンズ迷路タスク以前に説明したように、バーンズ迷路でマウスをテストして、空間学習と記憶を調べた(Barnes, 1979)。このバーンズ迷路パラダイムは、統合失調症、うつ病、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、嗜癖障害、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脳卒中、及び脆弱X症候群などのCNS障害のマウスモデルで一般的に検査されている(Cook et al.,2014;Gotz and Ittner,2008;Hendriksen and Vles,2008;Conklin et al.,2000;Song et al.,2006;Lai et al.,2014;Vasterling et al.,2002;Hyman,2005;Schaar et al.,2010;Santos et al.,2014;Zhu et al.,2007;Deckersbach et al.,2000)。試験装置は、20穴(直径7cm、穴間7cm)が周囲に均等に配置された高架(床から50cm)の円形プレキシガラスプレート(直径100cm)であった。マウスをプレート上で訓練して、Morris水迷路タスクの隠されたプラットフォームの類似物として指定されたターゲット穴の後ろに隠されたエスケープボックス(25×8×6cm)を特定した。ターゲット穴の位置は、特定のマウスに対して選択されたが、マウス全体でランダム化された。マウスは不透明なシリンダーで覆われたプレートの中央に最初に置かれ、試行の開始から10秒後に嫌悪トーン(440Hz、85dB)と光(100ルクス)の両方がオンになったシリンダーが取り外された。マウスは、周囲の視覚的手がかりに従って標的穴の位置を特定し、3日間連続して1日3回の訓練試行で嫌悪口調から逃れるよう訓練された。空間記憶は「プローブテスト」によって測定された。すべてのトレーニングトライアルとプローブテストは3分間ビデオ録画され、その後、トレーニングトライアルのエスケープレイテンシと異なる象限の時間の割合(ターゲット、左、右、反対)プローブテスト中に分析された。トレーニング試行でマウスがターゲット穴に到達するのにかかる時間を
図3に示し、プローブテスト中にマウスがターゲットゾーンで費やした時間の割合を
図4に示す。
【0134】
対照群と比較して、MK-801で処理したマウス(生理食塩水に溶解、0.2mg/kg、i.p.)は、Barnes迷路課題による学習能力の低下と記憶障害を示した。学習段階では、高用量のリチウムN-メチルグリシン(1000mg/kg)により、MK-801が学習障害を誘発した後の学習が強化される。記憶期では、高用量のリチウムN-メチルグリシン治療により、記憶障害が完全に改善されたが、N-メチルグリシンは効果的でなかった。したがって、リチウムN-メチルグリシン治療は、N-メチルグリシンと比較して、MK-801治療によって誘発された記憶障害を回復するのにはるかに優れている。
【0135】
実施例3:N-メチルグリシンの異なる塩の運動活性に対する効果
MK801処理マウスこの実験の目的は、上記の実施例2に記載のオープンフィールドタスク測定を使用して、N-メチルグリシンの異なる塩で処理したマウスの運動活性に対するN-メチルグリシンの異なる塩の効果を評価することであった。マウスの自発運動活性は、Photobeam Activity System(PAS)-オープンフィールド(San Diego Instruments、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して60分間測定した。各マウスの光線切断の総数を、運動活動の指標として測定した。
【0136】
C57BL/6Jオスのマウスは、6つのグループにランダムに割り当てられた(グループ1~5の9匹マウス、グループ6の10匹マウス):
グループ1:対照グループ
グループ2:MK801(0.2mg/kg)
グループ3:N-メチルグリシン(445mg/kg)+MK801(0.2mg/kg)
グループ4:N-メチルグリシンナトリウム(555mg/kg)+MK801(0.2mg/kg)
グループ5:LiCl(212mg/kg)+MK801(0.2mg/kg)、及び
グループ6:リチウムN-メチルグリシン(480mg/kg)+MK801(0.2mg/kg)
【0137】
化合物は、i.p.注入による急性MK801投与の20分前に経口強制飼養によりマウスに与えられた。投与量は、グループ3、4、及び6のマウスに与えられるN-メチルグリシンの量が実質的に同じであり、グループ5及び6のマウスに与えられるLiの量が実質的に同じになるように選択された。各グループのマウスの数は、
図5の括弧内に示されている。
【0138】
図5に示すように、MK801グループ(グループ2)は、対照グループ(グループ1)と比較して、超運動活動を示した。MK801グループ(グループ2)と比較して、塩化リチウム(グループ5)とリチウムN-メチルグリシン(グループ6)の両方はより低い運動活性を示したが、N-メチルグリシン(グループ3)とナトリウムN-メチルグリシン(グループ4)は示さなかった。さらに、リチウムN-メチルグリシンは、
図5に示すように、塩化リチウムよりもMK801が誘発する運動過剰な活動に対してより良いレスキュー/保護効果を示した。
【0139】
C57BL/6J雄マウスは、8つのグループ(グループ1及び2の9マウス、グループ3及び4の6マウス、グループ5及び6の7マウス、グループ7及び8の8マウス)にランダムに割り当てられた:
グループ1:対照グループ
グループ2:MK801(0.2mg/kg)
グループ3:LiCl(212mg/kg)+MK801(0.2mg/kg)
グループ4:LiCl(430mg/kg)+MK801(0.2mg/kg)、及び
グループ5:N-メチルグリシン(278mg/kg)+MK801(0.2mg/kg)
グループ6:N-メチルグリシン(927mg/kg)+MK801(0.2mg/kg)
グループ7:リチウムN-メチルグリシン(300mg/kg)+MK801(0.2mg/kg)
グループ8:リチウムN-メチルグリシン(1000mg/kg)+MK801(0.2mg/kg)
【0140】
図5について上述したように、化合物は、i.p.注入による急性MK801投与の20分前に経口強制飼養によりマウスに与えられた。結果を
図13に示す。MK801による過運動活性の低下に対するサルコシンのリチウム塩の優れた効果は、低用量でより顕著になった。サルコシン単独の278mg/kgの投与では、MK801による運動過剰活動の減少に効果がほとんどないか又はまったくなかった(~0%減少)。驚くべきことに、300mg/kgのサルコシンのリチウム塩の投与は、MK801によって誘発された運動過剰活動の約28%の減少を示した。これは、サルコシンとLiClの合計の効果よりも大きい。
図5及び13。
【0141】
実施例4:リチウムN-メチルグリシンの急性毒性試験
この研究の目的は、リチウムN-メチルグリシンの有害作用を評価し、経口強制飼養による単回投与後の炭酸リチウム(Alfa Aesar)及びリチウムN-メチルグリシンの最大耐量(MTD)を決定することであった(p.o.)、7日間の観察期間が続く。
【0142】
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスをグループ飼育し(ケージあたり3-5マウス)、動物室のポリスルホン換気ケージ(Alternative Design、AR、USA)で自由に食物と水を利用できた。コロニーは22±2℃の温度で12時間/12時間の明暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実施される。この研究で使用された動物はすべて成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0143】
薬物投与
リチウムN-メチルグリシンの場合、成体マウスはランダムに4つのグループに割り当てられた:(1)対照、(2)低用量(1429mg/kg)、(3)中用量(1690mg/kg)、及び(4)高投与量(1949mg/kg)、それぞれ、ビヒクル対照(生理食塩水)、1429mg/kgのリチウムN-メチルグリシン、1690mg/kgのリチウムN-メチルグリシン、及び1949mg/kgのリチウムN-メチルグリシンkgで処理された。炭酸リチウムの場合、成体マウスは5つのグループにランダムに割り当てられた:(1)対照、(2)低用量(550mg/kg)、(3)中用量(650mg/kg)、及び(4)高用量(750mg/kg)、それぞれ、低、中、高用量のリチウムN-メチルグリシンについて、ビヒクル対照(生理食塩水)、550mg/kgの炭酸リチウム、650mg/kgの炭酸リチウム、及び等量のリチウムを含む750mg/kgの炭酸リチウムで処理された。
【0144】
炭酸リチウムの場合、炭酸リチウムの3つの用量群で死亡が観察され、炭酸リチウムの最大耐量(MTD)が550mg/kg未満であることを示す。リチウムN-メチルグリシンの場合、1429mg/kgのリチウムN-メチルグリシンを投与されたマウスは、経口投与の1時間後に運動活性の低下を示し、24時間で回復した。1429mg/kgのリチウムN-メチルグリシンを投与されたマウスでは、有害な影響は観察されず、肉眼解剖では有意な所見は認められなかった。マウスのリチウムN-メチルグリシンのMTDは1429mg/kgであると決定された(これは、体表面積に基づいて、ヒトでは約116mg/kgに相当する)。
【0145】
実施例5:脆弱なX精神遅滞タンパク質(FMRP)欠損マウスの行動に対するリチウムN-メチルグリシンの効果
脆弱X症候群(FXS)は、知的障害及び自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、感覚過敏症、過覚醒、及び不安を含む特徴的な行動プロファイルをもたらす遺伝性障害である。Fmr1のエピジェネティックなサイレンシングとその結果として生じるタンパク質産物FMRPの欠如は、脆弱なXの最も一般的な原因である。Fmr1ノックアウト(KO)マウスは、C57BL/6Jバックグラウンドで維持された。
【0146】
野生型(WT)同腹子とFmr1 KOマウスは、次のグループとしてランダムに割り当てられた:
グループ1:WT 生理食塩水(n=31;雄=17及び雌=14);
グループ2:Fmr1 KO 生理食塩水(n=20;雄=8及び雌=12);
グループ3:Fmr1 KO リチウムN-メチルグリシン 192mg/kg(n=24;雄=11及び雌=13)
【0147】
グループ3のFmr1 KOマウスには、行動タスク前の連続28日間、i.p.注入によってリチウムN-メチルグリシン(生理食塩水に溶解、192mg/kg)が投与された。グループ1の野生型同腹仔及びグループ2のFmr1 KOマウスには、対照として、i.p.注入により通常の生理食塩水が与えられた。
【0148】
リチウムN-メチルグリシンはオープンフィールドタスクでのFmr1 KOマウスの運動過剰を軽減する
Fmr1 KOマウスは、オープンフィールドタスクで運動活動の増加を示した(Kazdoba et al.,Intractable Rare Dis Res,3:118-133;2014)。これは脆弱X症候群(FXS)患者の多動症状に類似している。この研究では、マウスをプレキシグラスケージ(37.5cm×21.5cm×18cm)に50~65ルクスの光強度で配置した。マウスの自発運動量は、Photobeam Activity System(PAS)-オープンフィールド(San Diego Instuments、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して60分間測定した。各マウスの光線切断の総数を、運動活動の指標として測定した。結果を
図6に示した。
【0149】
WT対照群と比較して、Fmr1 KOマウスはオープンフィールドテストで運動過剰を示した。Fmr1 KO生理食塩水群と比較して、リチウムN-メチルグリシン処理を行ったFmr1 KOマウスでは、移動距離の指標であるビームブレークの数が著しく減少した(P<0.05)。この結果は、リチウムN-メチルグリシンがFmr1 KOマウスの運動過剰活動を軽減することを示した。
【0150】
リチウムN-メチルグリシン化合物はFmr1 KOマウスの疼痛の低感受性を軽減した
疼痛の非感受性は、Fmr1 KOマウスの表現型(Veeraragavan et al.,Behav Brain Res 228:1-8;2012)、FXSヒト患者の一般的な症状(Lozano et al.,Intractable Rare Dis Res 5:145-157;2016)及び自閉症の人々(Gillberg,Aspects of Autism:Biological Research.London, UK:Gaskell/The National Autistic Society;pp.31-37;1988)として報告された。さらに、高い疼痛耐性が多数の疾患で報告されており、疾患には、糖尿病(Joharchi and Jorjani,Int J Endocrinol Metab 4:136-146;2006;Kambiz et al.,PLoS One 10(5):e0126892;2015)、過敏性腸症候群(Gosselin et al.,Gastroenterology 138(7):2418-25;2010)、Prader-Willi症候群(Priano et al.,Eur J Pain 13:829-835;2009)、先天性鎮痛(Schon et al,Congenital Insensitivity to Pain Overview,GeneReviews[Internet].Initial Posting:February 8,2018)、および脆弱X症候群(Spencer et al.,Autism Res 4(1):40-56; 2011)が挙げられる。
【0151】
ホットプレート試験から得られた疼痛反応潜時は、痛みを伴う刺激に対する感受性の評価に使用された。55℃の予熱ホットプレート上にマウスを置いた。各マウスが足をなめる、足をなめる、又はジャンプで最初の反応を示すまでの時間を、痛みの潜時として記録した。このホットプレートテストの結果を
図7に示します。
【0152】
Fmr1 KOマウスはWTマウスよりも高い潜伏期を示し(P<0.01)、Fmr1 KOマウスは痛みを伴う刺激に対する感受性が低いことを示す。リチウムN-メチルグリシンの投与は、Fmr1 KOマウスの疼痛潜時を同レベルのWTマウスに回復させた。結果は、リチウムN-メチルグリシンがFmr1 KOマウスの感覚刺激知覚を改善できることを示した。
【0153】
Fmr1 KOマウスの社会的行動の欠損はリチウムN-メチルグリシンによって改善された
処理の3つのチャンバーの社会的能力テストを実行して、新しいストレンジャーの社交性とマウスの好みを評価した(Nadler et al.,Genes Brain Behav 3:303-314;2004)。装置は長方形のプレキシガラスケージ(37.5cm×21.5cm×18cm)で、3つの隣接するチャンバーが2つの透明なプラスチック製仕切りで区切られ、開いた出入口で接続された。テストは、1つの5分間の慣れ段階と2つの10分間の実験段階、社会的嗜好及び新規性段階から構成された。馴化段階では、対象のマウスは3つのチャンバーを自由に探索することができた。最初の実験段階(社会的嗜好段階)では、対象マウスが以前に会ったことのないマウス(ストレンジャー1)をサイドチャンバーの1つにある通気性のアクリル製シリンダーに入れ、別の同じ空のアクリル製シリンダーを反対側のチャンバーに入れた。2番目の実験段階(ソーシャルノベルティフェーズ)では、以前のストレンジャー1マウスがサイドチャンバーの1つのアクリルシリンダーに入れられ、対象マウスが以前に会ったことのない2番目の未体験のマウス(ストレンジャー2)が反対側のチャンバーのアクリル製シリンダーに入れた。ビデオ記録を使用して、各マウスが各シリンダーのスニッフィングに費やした時間を記録した。この研究の典型的な例を
図8に示す。
【0154】
社会的行動の欠損は、FXS患者及び自閉症の個人の一般的な症状である。社会能力の不足は、自閉症スペクトラム障害(Yang et al.,Curr Protoc Neurosci.Chapter 8:Unit 8.26;2011;Kim et al.,Sci Rep 7(1):16503;2017)、アルツハイマー症候群(Faizi et al.,Brain Behav.2(2):142-54;2012)、不安障害(Felix-Ortiz and Tye,J Neurosci.34(2):586-95;2014;Lopatina et al.,Front Behav Neurosci.8:133;2014)、双極性障害(Han et al.,Nature.503(7474):72-7;2013)、小児崩壊性障害(ヘラー症候群とも呼ばれる)(Kim et al.,Sci Rep.7(1):16503;2017;Gupta et al.,Mol Autism.8:19;2017)、前頭側頭型認知症(Shiihashi et al.,EBioMedicine 24:102-115;2017)、ダウン症候群(Faizi et al.,Neurobiol Dis.43(2):397-413;2011)、Fragile-X症候群(Hebert et al.,Orphanet J Rare Dis.9:124;2014;Pietropaolo et al.,PLoS One.6(2):e17073;2011;Kazdoba et al., Intractable Rare Dis Res.3(4):118-33; 2014)、クラインフェルター症候群(Liu et al.,Am J Physiol Endocrinol Metab.299(3):E446-55;2010)、気分障害(Felix-Ortiz and Tye,J Neurosci.34(2):586-95;2014)、Prader-Willi症候群(Fountain et al.,Genes Brain Behav.16(6):592-600;2017)、レット症候群(Wu et al.,J Neurodev Disord.8:23;2016)を含むがこれに限定されない様々な神経精神障害でも報告されている。
【0155】
WT対照群と比較して、Fmr1 KOマウスは、3室社会能力テストの最初の実験段階でストレンジャー1に、2番目の実験段階でストレンジャー2にスニッフィング時間の短縮を示した(P<0.05)。リチウムN-メチルグリシンの投与は、
図9及び10に示すように、Fmr1 KOマウスの探知期間をストレンジャー1及びストレンジャー2(P<0.05)に増加させ、リチウムN-メチルグリシンがFmr1 KOマウスの社交性を改善したことを示す。
【0156】
実施例6:筋萎縮性側索硬化症(ALS)トランスジェニックマウスモデルの神経筋挙動に及ぼすリチウムN-メチルグリシンの影響
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンの選択的死をもたらす進行性の神経変性疾患であり、筋萎縮、筋肉の障害、麻痺などの神経筋異常のプロファイルを有する。スーパーオキシドラジカルを分解する抗酸化酵素であるスーパーオキシドジスムターゼタイプ1(SOD1)の変異は、ALS患者の最も一般的な病因である。SOD1G93A(B6.Cg-Tg(SOD1*G93A)1Gur/J系統)トランスジェニックマウス(一般的に使用されるALSマウスモデル)は、Jackson LabからC57BL/6Jバックグラウンドで入手し、SyneuRxのマウスルームで飼育した。飼育及び給餌条件は、前述の条件と同一であった。すべての実験室手順は、国立衛生研究所の実験動物の使用ガイドラインに従って実行され、SyneuRx(台湾台北市)の施設内動物管理使用委員会によって承認された。
【0157】
雄野生型(WT)同腹子とSOD1G93Aマウスは、次のグループとしてランダムに割り当てられた:
グループ1:WT 生理食塩水(n=9);
グループ2:WT リチウムN-メチルグリシン 192mg/kg(n=7);
グループ3:SOD1G93A
生理食塩水(n=9);
グループ4:SOD1G93A
リチウムN-メチルグリシン 192mg/kg(n=9);
グループ5:SOD1G93A
炭酸リチウム74mg/kg(n=9)
【0158】
グループ2及び4の各動物には、生理食塩水に溶解した192mg/kgのリチウムN-メチルグリシンが投与された。グループ5の各動物には、192mg/kgのリチウムN-メチルグリシンと同等のリチウム含有量を含む74mg/kgの炭酸リチウムが投与された。物質は、出生後8週目から13週目まで、1日1回腹腔内(i.p.)注射により投与された。グループ1及びグループ3の動物は、i.p.注入によりビヒクル対照グループとして通常の生理を受けた。以下に説明するロータロッドとワイヤーハンギングのテストは、出生後8週目から13週目までの神経筋の挙動を評価するために毎週行われた。
【0159】
リチウムN-メチルグリシン化合物はALSマウスの運動障害の進行を遅らせた
運動機能障害はSOD1G93Aトランスジェニックマウスで観察され、ALSの典型的な症状でもある(Olivian et al., Exp Anim. 64: 147-153; 2015; Glas et al., Exp Neurol. 2007 Oct; 207(2): 350-6; Mead et al., PLoS One. 2011; 6(8): e23244)。運動異常はまた、様々な神経筋疾患(Swash and Desai,Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord 1:105-112;2000)で報告され、例えば、パーキンソン病 (Rozas et al.,J Neurosci Methods.1998 Sep 1;83(2):165-75;Shiotsuki et al.,J Neurosci Methods.2010 Jun 15;189(2):180-5;Lauretti et al.,Transl Psychiatry.2016 Feb 9;6:e733)、 多発性硬化症(Gilli et al.,J Vis Exp.2016 Nov 14;(117);van de Berg et al.,J Neurosci Methods.2016 Mar 15;262:66-76)、ハンチントン病(Ramaswamy et al.,ILAR J.2007;48(4):356-73)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Dossena et al.,Neuron.2008 Nov 26;60(4):598-609)、進行性延髄麻痺(Shetty et al.,Enliven Archive 2014,Volume 1,Issue 1,p.1-9)、進行性筋萎縮症(Katsuno et al.,Neuron.2002 Aug 29;35(5):843-54)、原発性側索硬化症(Gros-Louis et al.,Hum Mol Genet.2008 Sep 1;17(17):2691-702)、運動ニューロン疾患(Swash and Desai,Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord 1:105-112; 2000;Hamm et al.,J Neurotrauma.1994 Apr;11(2):187-96;Kuribara et al.,Jpn J Pharmacol.1977 Feb;27(1):117-26)、単量体運動ニューロン疾患(Moglia et al.,Amyotroph Lateral Scler.2011 Jul;12(4):307-8.;Hamm et al.,J Neurotrauma.1994 Apr;11(2):187-96;Kuribara et al.,Jpn J Pharmacol.1977 Feb;27(1):117-26)、前頭側頭型認知症-運動ニューロン疾患(Le et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2016 Nov 22;113(47))が含まれる。
【0160】
運動の調整、計画、バランス、及び身体状態は、8週齢から始まる「ロータロッド」試験のためにRota Rod(Panlab-Harvard Apparatus, Barcelona,Spain)で測定された。実験計画は、テスト段階の1週間前に9回のトレーニング試行(3日間連続で1日3回の試行)で構成され、その後8週から13週の週に3回のテスト試行が続いた。最初の6回のトレーニングトライアルでは、マウスを8rpmの一定速度で300秒間回転ロッドに乗せた。最後の3回のトレーニングトライアルでは、マウスを300秒間、16rpmの一定速度の回転ロッドに乗せた。テスト段階では、30分間の間隔で3回試行して、16rpmの一定速度で回転ロッドにマウスを置いた。動物のロッド滞在潜伏期間は、試験ごとに最大300秒まで記録された。週ごとのテスト段階の最高の性能を各動物に使用して、各時点でグループごとの平均を取得した。
【0161】
WT対照群と比較して、SOD1
G93Aマウスは、9週齢のロッド滞在潜時の有意な減少を示し、その後は常に低下した(P<0.05)。リチウムN-メチルグリシン(192 mg/kg)はSOD1
G93Aマウスの潜時を増加させ、WTマウスと同様の性能を示したが、炭酸リチウム(74mg/kg)はSOD1
G93Aマウスの運動障害を救済しなかった(
図11に示される)。さらに、ビヒクル対照群と炭酸リチウム群のSOD1
G93Aマウスの9分の5で明らかな減少が観察され、潜伏期間は11週齢から150秒未満であり、実験期間中に回復しなかった。リチウムN-メチルグリシン処理されたSOD1
G93Aマウスはいずれも、研究全体で150秒未満の潜伏時間を示さなった。これらの結果は、リチウムN-メチルグリシンによる治療が、ALSマウスモデルのSOD1
G93Aマウスにおける運動障害の進行を遅らせることを示した。
【0162】
リチウムN-メチルグリシンはALSマウスの筋力不足の重症度を軽減した
ワイヤー吊りテストのサスペンション時間を使用して、運動調整、バランス、及び筋力のパフォーマンスを評価しまた。マウスを地面から30cmの高さで4本の手足で金属ワイヤーメッシュ(厚さ2mm)に吊るした。吊り下げ時間又は180秒の最大期間は、ワイヤハングテストのパフォーマンスとして記録された。
【0163】
ワイヤハンギングテストで測定された筋力不足は、ALS患者の筋ジストロフィーに似ているALSモデルで観察された(Zhang et al,J Biomed Biotechnol.2011:831092,2011)(Alves et al.,Brain Res 1394:90-104;2011)。さらに、筋ジストロフィーは、神経筋疾患の一般的な症状であり、例えば、パーキンソン病(Rafie et al.,Ann Appl Sport Sci,5(2):81-86, 2017)、多発性硬化症(Abramow-Newerly et al.,Amyotrophic Lateral Sclerosis.7:112-118,2006)、ハンチントン病(Manfre et al.,Front Behav Neurosci.11:218,2017)、クロイツフェルト-ヤコブ病(Skinner et al.,PLoS One.10(7):e0131993, 2015)、進行性延髄麻痺(Olivan et al.,Exp Anim.64(2):147-53,2015;Krivickas,Phys Med Rehabil Clin N Am.14(2):327-45,2003;Wijesekera and Leigh,Orphanet J Rare Dis.3;4:3,2009)、進行性筋萎縮症(Badders et al.,Nat Med.24(4):427-437,2018)、原発性側索硬化症(Gros-Louis et al.,Hum Mol Genet.17(17):2691-702,2008)、マドラス運動ニューロン疾患、単発性運動ニューロン疾患、脊髄筋萎縮(Clayton et al.,Human Molecular Genetics,Vol.26,No.5 873-887,2017)、前頭側頭型認知症-運動ニューロン疾患(Le et al.,Proc Natl Acad Sci USA.22;113(47),2016)が含まれる。
【0164】
WTマウスと比較して、SOD1
G93Aマウスはワイヤー吊るし試験の性能が次第に低下し、ワイヤー吊るし試験で11週から13週までの懸垂時間の有意な短縮を示した(P<0.05)。
図12に示すように、リチウムN-メチルグリシンはSOD1
G93Aマウスの浮遊時間を延長し、研究期間中にWTマウスと同様の性能を示した。さらに、13週齢で、リチウムN-メチルグリシン処理されたSOD1
G93Aマウスの3分の2が最大サスペンション時間(180秒)を達成したが、ビヒクル対照グループのSOD1
G93Aマウスの3分の1のみが最大サスペンション時間を達成できた。結果は、リチウムN-メチルグリシンがALSマウスモデルで筋力不足を緩和し、運動不足の進行を遅らせることを示した。
【0165】
同等物及び範囲
請求項において、「a」、「an」、「the」などの記事は、反対の指示がない限り、又は文脈から明白でない限り、1つ又は複数を意味する場合がある。グループの1つ以上のメンバー間の「又は」を含むクレーム又は説明は、示されていない限り、特定の製品又はプロセスに1つ、複数、又はすべてのグループメンバーが存在、採用、又は関連している場合、満たされていると見なされ、反対に又は文脈から明らかである。本発明は、グループの正確に1つのメンバーが、所与の製品又はプロセスに存在するか、使用されるか、そうでなければ関連する実施形態を含む。本発明は、複数の、又はすべてのグループメンバーが、所与の製品又はプロセスに存在する、使用される、又は他の方法で関連する実施形態を含む。
【0166】
さらに、本発明は、列挙された請求項の1つ又は複数からの1つ又は複数の制限、要素、条項、及び説明用語が別の請求項に導入されるすべての変形、組み合わせ、及び置換を包含する。例えば、別の請求項に依存する請求項を修正して、同じ基本請求項に依存する他の請求項に見られる1つ以上の制限を含めることができる。要素がリストとして表示されている場合、例えば、マーカッシュグループ形式では、要素の各サブグループも開示されており、グループから任意の要素を削除できる。一般に、本発明又は本発明の態様が特定の要素及び/又は特徴を含むと呼ばれる場合、本発明の特定の実施形態又は本発明の態様は、からなる、又は本質的になることを理解されたい。そのような要素や機能。簡単にするために、これらの実施形態は、本明細書ではヘック語で具体的に説明されていない。「含む」及び「含む」という用語は、オープンであることを意図しており、追加の要素又はステップの包含を許可することにも留意されたい。範囲が指定されている場合、エンドポイントが含まれる。さらに、別段の指示がない限り、又は文脈及び当業者の理解から明白でない限り、範囲として表現される値は、本発明の異なる実施形態において述べられた範囲内の特定の値または下位範囲、範囲の下限の単位の10分の1まで、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、想定できる。
【0167】
この出願は、様々な発行された特許、公開された特許出願、雑誌記事、及び他の出版物を指し、それらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合、仕様が支配するものとする。加えて、先行技術に含まれる本発明の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つ以上から明示的に除外され得る。そのような実施形態は、当業者に知られているとみなされるため、除外が本明細書で明示的に示されていなくても、除外されてもよい。本発明の特定の実施形態は、先行技術の存在に関連するかどうかにかかわらず、いかなる理由でも、いかなる請求からも除外することができる。
【0168】
当業者は、本明細書に記載の特定の実施形態に対する多くの同等物を日常的な実験のみを使用して認識又は確認することができるであろう。本明細書に記載される本実施形態の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲に記載されるものである。当業者は、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、この説明に対する様々な変更及び修正を行うことができることを理解するであろう。