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  • 特許-温室用カーテン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】温室用カーテン
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20220330BHJP
   A01G 9/20 20060101ALI20220330BHJP
   A01G 13/02 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
A01G9/24 H
A01G9/20 B
A01G13/02 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021148561
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2021005513
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390010814
【氏名又は名称】株式会社誠和
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】日向野 基
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-032464(JP,A)
【文献】特開2020-179643(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150165(WO,A1)
【文献】特開2020-068684(JP,A)
【文献】特開2007-295858(JP,A)
【文献】特許第4724598(JP,B2)
【文献】特開2017-000094(JP,A)
【文献】登録実用新案第3076721(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/24
A01G 9/20
A01G 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室内に開閉可能に配設され、遮熱機能及び遮光機能を有する温室用カーテンであって、
波長400~700nmの光の平均透過率が80%未満であると共に、波長400~700nmの光の平均透過率をC、波長700~1000nmの光の平均透過率をDとしたときに、次式:
(D-C)/C・・・(1)
により求められる割合が-10%以下-80%以上であることを特徴とする温室用カーテン。
【請求項2】
前記波長400~700nmの光の平均透過率が80%未満20%以上である請求項1記載の温室用カーテン。
【請求項3】
波長600~700nm間の光の極大透過率をP、波長400~550nmの光の平均透過率をAとしたときに、次式:
(P-A)/A・・・(2)
により求められる割合が2.5%以上である請求項1又は2記載の温室用カーテン。
【請求項4】
波長550~700nmの光の平均透過率をB、波長400~550nmの光の平均透過率をAとしたときに、次式:
(B-A)/A・・・(3)
により求められる割合が5%以上である請求項1~3のいずれか1に記載の温室用カーテン。
【請求項5】
波長600~700nmの光の平均透過率をR、波長700~800nmの光の平均透過率をFRとしたときに、FR/Rが1未満である請求項1~4のいずれか1に記載の温室用カーテン。
【請求項6】
複数の帯状のフィルムが糸を用いて連結された編物、織物又は縫物からなる請求項1~5のいずれか1に記載の温室用カーテン。
【請求項7】
前記糸がマルチフィラメントである請求項6記載の温室用カーテン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室内に開閉可能に配設され、植物への熱及び光の供給を調整する遮熱機能及び遮光機能を備えた温室用カーテンに関する。
【背景技術】
【0002】
温室で栽培されている植物の上方には、巻き取り軸に巻き取られたり巻き戻されたりして、温室内に配設された棚線上を、先端縁に連結された先導パイプが移動することで開閉動作する温室用カーテンが配置されている。温室用カーテンは、植物への熱及び光の供給を制御するため、特許文献1及び2に示されているように、温室内温度を上昇させる近赤外線の遮蔽効果が高い一方で、光合成に必要な可視光の透過性の高いものが選択される。
具体的には、特許文献1では、ポリ塩化ビニル系樹脂に遮熱材料が良好に分散された遮熱フィルムの製造方法が記載されている。得られた遮熱フィルムは、波長380~780nmの可視光線透過率が40%以上、より好ましくは55%以上で、波長900~2500nmの赤外線吸収率が30%以上、より好ましくは55%以上の特性を備えている旨が開示されている。また、特許文献2には、波長400~700nmの光の平均透過率が80%以上で、波長800~1200nmの光の平均反射率が70%以上の熱線反射フィルムを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-17221号公報
【文献】特開2017-153475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1,2のいずれも、近赤外線の透過性は低く、光合成に有効な波長380~780nmあるいは波長400~700nmの可視光の透過性は高いほどよいということを前提として上記各フィルムを提案している。しかしながら、植物の成長にとって良好な環境とするためには、遮熱による温度管理だけでなく、光線強度も重要な管理項目である。植物の光飽和点を大きく超える環境下での栽培は、却って植物の成長を妨げる場合がある。多くの植物の光飽和点は、植物の成長過程にもよるが晴天時光線強度の80%未満であり、光飽和点の高い植物であっても幼少時には弱光環境が求められる場合が多い。しかるに、この光線強度に関して上記特許文献1,2では特に開示はない。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、遮熱による温度管理に加え、植物に供給される光線強度を、従来と比較してより植物の成長効率を高めるのに適したものとすることができる温室用カーテンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明の温室用カーテンは、
温室内に開閉可能に配設され、遮熱機能及び遮光機能を有する温室用カーテンであって、
波長400~700nmの光の平均透過率が80%未満であると共に、波長400~700nmの光の平均透過率をC、波長700~1000nmの光の平均透過率をDとしたときに、次式:
(D-C)/C・・・(1)
により求められる割合が-5%以下であることを特徴とする。
【0007】
前記波長400~700nmの光の平均透過率が80%未満20%以上であることが好ましい。
波長600~700nm間の光の極大透過率をP、波長400~550nmの光の平均透過率をAとしたときに、次式:
(P-A)/A・・・(2)
により求められる割合が2.5%以上であることが好ましい。
また、波長550~700nmの光の平均透過率をB、波長400~550nmの光の平均透過率をAとしたときに、次式:
(B-A)/A・・・(3)
により求められる割合が5%以上であることが好ましい。
【0008】
また、波長600~700nmの光の平均透過率をR、波長700~800nmの光の平均透過率をFRとしたときに、FR/Rが1未満であることが好ましい。
複数の帯状のフィルムが糸を用いて連結された編物、織物又は縫物からなることが好ましい。
前記糸がマルチフィラメントであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の温室用カーテンは、近赤外線領域の光の遮蔽効果が所定以上である一方で、可視光領域の波長400~700nmの光の平均透過率が80%未満とした構成である。このため、所定の遮熱効果が得られると共に、波長400~700nmの光の平均透過率が高すぎるということがなく、植物の光飽和点を大きく超えることによる植物の成長を阻害することが抑制される。
また、可視光領域の中でも、波長400~550nmの光の平均透過率を基準とした場合の、波長600~700nm間の光の極大透過率あるいは波長550~700nmの光の平均透過率を高くした構成とすることにより、植物の成長に不可欠な領域の光線をより効率的に透過させることができる。
さらに、波長600~700nmの光の平均透過率に対する波長700~800nmの光の平均透過率の比を1未満とすることにより、遮熱機能をより効率的に高めることができると共に、徒長を抑制する効果が期待できる。
以上のように本発明によれば、可視光領域の光の透過性を高めるだけでなく、植物の成長への貢献度を考慮して各波長の光の透過性が制御されるため、植物に供給される光線強度の管理がより適切となり、植物の適切な成長をより促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の温室用カーテンを開閉する温室用カーテン開閉機構の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。温室用カーテン110,120は、例えば、図1に示したような温室用カーテン開閉機構100に用いられる。なお、本発明の温室用カーテンは、温室内において開閉可能な内張として配設されればよく、開閉機構の構成などは何ら限定されるものではないことはもちろんである。
【0012】
図1に示した温室用カーテン開閉機構100は、棚線130、駆動ロープ140、駆動モータ200を有している。例えば、妻面方向から見て、頂部を中心として山形の形状の温室において、栽培植物の上方に、棚線130が、一方の側部と他方の側部との間に掛け渡されている。そして、この棚線130に下面が支えられるように、温室用カーテン110,120が配設される。
【0013】
一方の温室用カーテン110の基端縁が一方の側部付近に固定され、その反対側の端縁(先端縁)が、温室の頂部の下方である幅方向中央部方向に向かうことができるようになっており、他方の温室用カーテン120の基端縁が他方の側部付近に固定され、その反対側の端縁(先端縁)が同じく温室の幅方向中央部方向に向かうことができるようになっている。
【0014】
各温室用カーテン110,120の先端縁にはそれぞれ先導パイプ111,121が取り付けられている。駆動ロープ140は、各温室用カーテン110,120の開閉方向である棚線130に沿って、温室の各側部付近に配置された滑車部材を介して張設されている。そして、その適宜部位が各先導パイプ111,121に、連結部品(図示せず)を介して連結されている。これにより、駆動モータ200を駆動して、駆動ロープ140を一方向又は他方向に走行させると、先導パイプ111,121が棚線上を該駆動ロープ140の動作方向に移動する。先導パイプ111,112同士が互いに接近する方向に移動していくと、温室用カーテン110,120が展開されていく。すなわち。栽培植物の上方を仕切る閉鎖方向に移動していく。逆に、先導パイプ111,112が離間する方向に、すなわち、各側部方向に移動していくと、温室用カーテン110,120は、先導パイプ111,112に押され、各側部に向かって寄せ集められていき、栽培植物の上方を開放する。
【0015】
温室用カーテン110,120は、このようにして栽培植物の上方で展開又は寄せ集められることで開閉され、栽培植物に遮熱、遮光機能を果たす。本実施形態の温室用カーテン110,120は、展開状態で、波長400~700nmの光の平均透過率が80%未満であると共に、波長400~700nmの光の平均透過率をC、波長700~1000nmの光の平均透過率をDとしたときに、次式:(D-C)/C・・・・(1)
により求められる割合が-5%以下である。
【0016】
光強度を光飽和点を超える場合には、植物の成長効率を却って阻害する可能性があるが、多くの植物の光飽和点は、晴天時光線強度の80%未満である。そこで、温室用カーテン110,120の可視光領域の波長400~700nmの光の平均透過率を80%未満とした。但し、20%を下回る場合には、光強度が不足する植物が多くなるため、波長400~700nmの光の平均透過率は、80%未満20%以上とすることが好ましい。
【0017】
また、波長400~700nmの可視光領域の平均透過率Cと、近赤外線領域の波長700~1000nmの平均透過率Dとの対比で、上記式(1)により求められる割合が-5%より大きい場合には、両者の光強度の差が小さくなり、近赤外線を遮蔽することによる遮熱効果が低下する。また、上記式(1)の値が0若しくは正の値である場合には、近赤外線領域の波長700~1000nmの平均透過率Dが、波長400~700nmの可視光領域の平均透過率C以上となり、近赤外線領域の波長の遮蔽が不十分となる。
【0018】
なお、1000nmを超える赤外域の光は、そもそも強度が弱いため、その範囲を遮蔽する構成としても遮熱効果はあまり期待できない。逆に言えば、本実施形態の温室用カーテン110,120は、1000nmを超える赤外域の光の平均透過率は700~1000nmの範囲の光の平均透過率よりも高くてもよい。本実施形態では、後述のように、温室用カーテン110,120を形成するフィルムへの添加剤の調整等により、遮蔽すべき光の波長の調整を行っているが、近赤外線の中でも、波長700~1000nmを遮蔽することを考慮すればよく、波長1000nmを超える光の遮蔽を考慮する必要がない。
波長700~1000nmの光の遮蔽率は基本的には高いほど好ましい。そのため、上記(1)式で求められる割合の下限値に理論上制限はない。中でも、後述のように、可視光領域との境界付近の波長700~800nmの光の遮蔽率が高いほど、効率よく遮熱効果が得られる。
その一方、波長700~750nmの光は、作物によっては成長の促進に貢献する場合もあることが知られている。そこで、波長700~750nmの光の透過率をある程度確保する構成とする場合、例えば、波長700~750nmの光を全て透過させ、波長750~1000nmの光を全て遮蔽とし、波長400~700nmの光の平均透過率を80%とすると、上記(1)式の解は-79.166%となる。よって、このような場合まで含めたとして、上記(1)式の下限値は-80%となる。これらを考慮すると、上記(1)式の割合は、好ましくは-5%以下-80%以上であり、より好ましくは-10%以下-80%以上である。
【0019】
また、本実施形態の温室用カーテン110,120は、波長600~700nm間の光の極大透過率をP、波長400~550nmの光の平均透過率をAとしたときに、次式:(P-A)/A・・・(2)
により求められる割合が2.5%以上であることが好ましい。
【0020】
可視光領域の光の中でも、波長600~700nmの光線域に極大透過率を有する光線は、植物の成長に特に有効な効果を示す一方、式(2)の割合が2.5%以上であることにより、その効果が顕著である。「極大透過率」は、波長600~700nmの光線域において最も透過性の高い光線の透過率である。
例えば、赤色光を用いた栽培法の場合、波長400~550nmの光は全て遮蔽することも可能であり、その場合、上記(2)式において、理論上、上限値は無限大となる。しかしながら、赤色光を用いた栽培法の中でも、青色光が赤色光の10~30%含まれると、作物によっては成長が促進されることが知られている。そこで、この青色光の割合を10%と仮定して、上記(2)式の割合を求めると900%となる。よって、上記式(2)の割合の上限値は、作物によりあるいはその栽培法により、無限大もあり得るが、多くの場合900%以下となる。
【0021】
また、波長550~700nmの光の平均透過率をB、波長400~550nmの光の平均透過率をAとしたときに、次式:(B-A)/A・・・(3)
により求められる割合が5%以上であることがより好ましい。
【0022】
式(2)で用いた波長600~700nmに極大透過率を有する場合及び有しない場合のいずれであっても、式(3)の割合が5%以上の場合には、上記と同様に、植物の成長に特に有効な効果を示す600nm前後の光の透過率が高くなる。なお、式(3)の割合の上限値は式(2)と同じである。
【0023】
また、可視光領域と近赤外線領域の境界付近、すなわち、波長600~700nmの光の平均透過率をR、波長700~800nmの光の平均透過率をFRとしたときに、FR/Rが1未満であることが好ましい。近赤外線領域の中でも波長700~800nmは比較的強度が高く、この領域を遮蔽した場合には、遮熱効果が効率よく得られる。その一方、波長700~800nmの平均透過率を下げた影響で、それに隣接する可視光領域の波長600~700nmの平均透過率が下がったものを温室用カーテンとして長時間展開すると、植物の徒長を促すおそれがある。そこで、境界領域に位置する波長700~800nmの平均透過率を下げた場合であっても、波長600~700の平均透過率がそれを上回っていることが重要であり、それにより徒長を抑制できる。
【0024】
本実施形態の温室用カーテン110,120は、複数の帯状のフィルムと糸を用いて編物や織物として製作される。具体的には、1枚のフィルムを、幅数mm~数十mmの所定長さの帯状に裁断し、この帯状のフィルムを並列させて配置し、その長手方向に直交する方向に糸を交差させて織物としたり、帯状のフィルムに糸をループ状に絡めて編成して編物としたりして製作できる。また、帯状のフィルム同士を縦横に交差させて織物としたり、これに、さらに糸で縫製したりすることもできる。また、これらの場合において、隣接する帯状のフィルム同士はできるだけ隙間が生じないように密に配置して製作してもよいし、例えば部分的に隙間が生じるように配置して製作してもよい。また、フィルムに部分的に孔が形成されたものであってもよい。隙間や孔の有無に拘わらず、温室用カーテン110,120を張ったときに、上記の特性を有していればよい。
【0025】
また、温室用カーテン110,120は、帯状のフィルムを糸を用いて縫製したものを1枚のみから構成することもできるし、複数層積層した構成とすることもできる。また、機能の異なる他のフィルムを積層した構造とすることもできる。
【0026】
糸としては、モノフィラメントを用いることも可能であるが、マルチフィラメントを用いることが好ましい。マルチフィラメントの場合には、毛管現象により水分の移動がなされ、温室内の湿気の吸収を期待できる。
【0027】
帯状のフィルムや糸は、ベースの合成樹脂材料に、上記の特性を得られる添加剤を所定量添加し、公知のフィルムや糸の製造方法を用いて製造することができ、特に制限されるものではない。また、製膜後のフィルムの厚さ、糸の直径等も上記の特性を得られるものであれば、制限されるものではない。
【0028】
波長700~1000nmの光の透過量を効果的に低下させる添加剤としては、例えば、次のようなものがある。
無機系物質:酸化チタン被覆雲母、セシウムドープ酸化タングステン、錫ドープ酸化インジウム
有機系物質:[2,3,9,10,16,17,23,24-オクタキス(2-メチルフェノキシ)-C,C,C,1-テトラキス(2,6-ジメチルフェノキシ)-C,C,C,4-テトラフルオロ-29H,31H-フタロシアニナト(2-)-N29,N30,N31,N32]バナジウムオキサイド
【0029】
波長550~700nmの光の透過量を効果的に向上させる添加剤としては、例えば、次のようなものがある。
トリス(4,4,4-フルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト-0,0’-)ビス(トリフェニルホスフィンオキシド-0-)ユウロピウム
また、700~1000nmや400~550nmといった任意の波長域の光の透過率を効果的に低下させるフィルムとしては、光学干渉反射積層構造フィルムがある。
【0030】
(実施例及び比較例)
次に、実施例及び比較例を説明する。
(製造方法)
(実施例1)
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂96重量部及び東京インキ社製耐酸性HALSマスターバッチ「PEX UVT-56」4重量部に酸化チタン被覆雲母を適量配合しフィルムを作成した。
作成したフィルムを、幅約10mmの帯状に裁断し、隣接するもの同士隙間なく並列させ、無着色ポリエステルマルチフィラメント(白糸)を用いて、帯状フィルムの長手方向に直交する方向に縫製した。
【0031】
(実施例2)
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂96重量部及び東京インキ社製耐酸性HALSマスターバッチ「PEX UVT-56」4重量部に酸化チタン被覆雲母を適量配合しフィルムを作成した。
作成したフィルムを、幅約4mmの帯状に裁断し、隣接するもの同士隙間なく並列させ、これに、無着色ポリエステルマルチフィラメント(白糸)をループ状に絡めて編成した。
【0032】
(比較例1~5)
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂96重量部及び東京インキ社製耐酸性HALSマスターバッチ「PEX UVT-56」4重量部を用いてフィルムを作成した。
作成したフィルムを、幅約10mmの帯状に裁断して隙間なく並列させ、無着色ポリエステルマルチフィラメント(白糸)を用いて、実施例1と同様に、帯状フィルムの長手方向に直交する方向に縫製した。
【0033】
(比較例6)
ポリ塩化ビニル樹脂86質量部、エチレン・酢酸ビニル共重合体4質量部、三菱レイヨン株式会社製コア・シェルゴム「メタブレンW-300A」10質量部、BASFジャパン株式会社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「TINUVIN326」1質量部にアンチモンドープ酸化錫(平均一次粒子径200nm)を6質量部配合しフィルム(厚さ100μm)を作成した。これは、特許文献1の実施例1のフィルムを再現したものである。また、このフィルム、400~1600nmの光線透過率が90%の透明ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)、及び、400~1600nmの光線透過率が30%の白色ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)の合計3種類のフィルムをそれぞれ幅約4mmの帯状に裁断し、裁断した帯状のフィルムに、実施例2と同様に、無着色ポリエステルマルチフィラメント(白糸)をループ状に絡めて編成した。編成したものは、特許文献1の実施例6の加工フィルムに相当する。
【0034】
遮熱の程度は、実施例2の比率2(700~1000nmの300nm分)に対して比率3(1000~1600nmの600nm分)を約半量になるように光線透過率を設定した(近赤外線波長域違に対する遮蔽量を実施例2と同程度に設定)。
【0035】
(比較例7)
アルミニウム薄膜及びポリエステルフィルムの合計2種類のフィルムを幅約4mmの帯状に裁断して隙間なく並列させ、これに、無着色ポリエステルマルチフィラメント(白糸)をループ状に絡めて編成した。
【0036】
なお、上記のうち、比較例1~5及び7は400~1600nmにかけての平均透過率が一定の通常タイプであり、比較例6は遮熱機能の高い遮熱タイプである。
【0037】
上記のように製造された温室用カーテンについて、積分球を介した紫外可視近赤外分光光度計を用いて全光線透過スペクトルを測定し、光線各波長域の光線透過率及び上記式(1)~(3)及びFR/Fの各比率を算出した。
結果を表1~3に示す。なお、表中、「比較例0」は、温室用カーテンを取り付けない状態での測定値である。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
表1~3から明らかなように、実施例1及び実施例2は、光線透過率及び上記式(1)~(3)及びFR/Fの各比率に関する上記の条件を満足するものであった。
但し、式(2)で示される表1中の比率1は、実施例1及び実施例2とも満足していたが、式(3)で示される表1中の比率2は、実施例2のみが満たされていた。式(1)で示される表2中の比率3は、実施例1及び実施例2のいずれも満足しており、また、FR/Rで示される表3中の比率5もいずれも満足していた。
以上のとおり、実施例1及び実施例2の温室用カーテン110,120は、いずれも本発明の条件を満たすものであった。
【0042】
(遮熱実験1)
室温25℃の室内に、内径23cm、高さ10cmの内面白色の円筒の実験用の筒体を設置した。また、温室の一部を換気のために開放したことを想定し、筒体の側面に、高さ5cm、幅7.5cmの切り欠きを形成して、筒体内外が連通する解放構造とした。筒体の底面に黒色に着色したアルミニウム板を設置(黒ぼく土壌を想定)し、アルミニウム板には温度測定用の被覆熱電対の接点を接着した。上記の実施例1、比較例0~5の各温室用カーテンの試験片を、筒体の上部開口を被覆し、テープで留めた。
【0043】
疑似太陽光(セリック社製、ソーラーシミュレータ XIL-05B80KPV1)を温室用カーテンの試験片の上方から照射した。照射後約30分から1時間後における上昇しきった温度を、被覆熱電対に接続したオムロン社製、ポータブルマルチロガー ZR-RX40により測定した。光線強度は、プリード社製、光量センサー PAR-02Dで測定した。
【0044】
なお、基準昇温度は、比較例0及び比較例5の実測昇温度より次式を用いて算出した。基準昇温度(℃)={[透過光線量(μmol/m2s)-591]/369}×11+23.5
結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
表4から明らかなように、実施例1の実測昇温度は、基準昇温度に対して-1.5℃であり、比較例1~4と比較して低く、遮熱性が高い。
【0047】
(遮熱実験2)
間口6m、奥行き20mの温室2棟に、実施例2と比較例7(通常タイプ)の温室用カーテンを地面から2.0mの高さで展張し、15日間の温室内最高温度の平均値を算出した。同様に、間口6m、奥行き18mの温室2棟に比較例6(遮熱タイプ)及び比較例7(通常タイプ)の温室用カーテンを地面から2.25mの高さで展張し、15日間の温室内最高温度の平均値を算出した。
結果を表5及び表6に示す。
【0048】
【表5】

【表6】
【0049】
表5及び表6より、温室内最高温度の平均値は、通常タイプの比較例7の値を0とした場合に、実施例2は-0.4℃、遮熱タイプの比較例6は+2.8℃であり、実施例2の遮熱効果が高いことがわかった。
【符号の説明】
【0050】
100 温室用カーテン開閉機構
110,120 温室用カーテン
130 棚線
140 駆動ロープ
200 駆動モータ

【要約】
【課題】遮熱効果が高いと共に、光線強度を植物の成長効率を高めるのにより適した温室用カーテンを提供する。
【解決手段】本発明の温室用カーテン110,120は、近赤外線領域の光の遮蔽効果が所定以上である一方で、可視光領域の波長400~700nmの光の平均透過率が80%未満とした構成である。このため、所定の遮熱効果が得られると共に、波長400~700nmの光の平均透過率が高すぎるということがなく、植物の光飽和点を大きく超えることによる植物の成長を阻害することが抑制される。
【選択図】 図1
図1