(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】排水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/28 20060101AFI20220330BHJP
E03C 1/20 20060101ALI20220330BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
E03C1/28 A
E03C1/20 E
E03C1/12 E
(21)【出願番号】P 2018086553
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】笹川 知久
(72)【発明者】
【氏名】青 和幸
(72)【発明者】
【氏名】上田 恭平
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224383(JP,A)
【文献】特開2010-156098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、前記浴槽が載置される浴槽パンと、前記浴槽パンの横に配置される洗い場パンと、を備える浴室の排水装置であって、
前記浴槽からの排水が流入する浴槽排水流入口と、前記浴槽排水流入口から流入した排水を貯留する浴槽封水部と、前記浴槽封水部からオーバーフローした排水が流出する浴槽封水流出口とを有する浴槽排水トラップと、
前記浴槽パンからの排水が流入する浴槽パン排水流入口と、前記浴槽パン排水流入口から流入した排水を貯留する浴槽パン封水部と、前記浴槽パン封水部からオーバーフローした排水が流出する浴槽パン封水流出口とを有する浴槽パン排水トラップと、
前記洗い場パンからの排水が流入する洗い場パン排水流入口と、前記洗い場パン排水流入口から流入した排水を貯留する洗い場パン封水部と、前記洗い場パン封水部からオーバーフローした排水が流出する洗い場パン封水流出口とを有する洗い場パン排水トラップと、
長手方向一端側に外部へ排水を排出する排水管に接続される排出口を有し、長手方向他端側が閉塞された、前記浴槽封水流出口、前記浴槽パン封水流出口、及び前記洗い場パン封水流出口から流出した排水が流入する排水筒部と、
を備え、
前記排水筒部が、前記浴槽排水トラップ及び前記浴槽パン排水トラップと、前記洗い場パン排水トラップとの間に設けられ、
前記排水筒部の長手方向側面側の一方に前記浴槽封水流出口及び前記浴槽パン封水流出口が設けられ、他方に前記洗い場パン封水流出口が設けられたことを特徴とする排水装置。
【請求項2】
前記排水筒部の内部に、前記浴槽封水流出口及び前記浴槽パン封水流出口から流入した排水の流路である第1通水部と、前記洗い場パン封水流出口から流入した排水の流路である第2通水部とを隔てる第1隔壁が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
前記第1通水部に、前記浴槽封水流出口から流入した排水の流路である第3通水部と、前記浴槽パン封水流出口から流入した排水の流路である第4通水部とを隔てる第2隔壁が設けられ、
前記第2隔壁によって隔てられた前記第3通水部と前記第4通水部とが合流する第2合流部は、前記第1隔壁によって隔てられた前記第1通水部と前記第2通水部とが合流する第1合流部より上流側に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の排水装置。
【請求項4】
前記浴槽パン封水部に貯留できる封水の上限の高さである浴槽パン封水上限が、前記浴槽封水部に貯留できる封水の上限の高さである浴槽封水上限よりも低いことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の排水装置。
【請求項5】
前記排水筒部は、長手方向の両端が開口した筒状の筒部本体と、前記筒部本体の長手方向の端部に固定されて前記排出口を有する排出口部材と、前記筒部本体の長手方向の端部に固定されて該端部を閉塞する閉塞蓋部材とを有し、
前記排出口部材及び前記閉塞蓋部材が、前記筒部本体の長手方向の端部に選択的に取り付け可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の排水を行う排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、浴室は、浴槽と、浴槽が載置される浴槽パンと、浴槽パンの横に配置される洗い場パンとから構成される。浴槽は、上部が開口して内部に水を貯留可能な槽であり、通常、内部に水や湯を貯留して入浴者が入浴するために使用される。浴槽パンは、浴槽から万が一水漏れが発生した場合等に、その漏水を受けるための受け台であって、建物内に水が漏れだすことを防ぐ。洗い場パンは、通常、その上で入浴者が身体を洗う等を行う場所である。浴槽パンと洗い場パンとによって浴室の床面が構成される。そして、浴室で生じた排水は、浴槽、浴槽パン、及び洗い場パンのそれぞれの底面に設けられた排水口から、浴槽パン及び洗い場パンの下の床下空間に設置される排水装置を通して、下水等の外部へと排出される。排水装置は、臭気や害虫等が下水等の外部から浴室に入ってこないように、浴室から排出される排水を貯留し、貯留した排水(封水という)によって、浴室側と下水側との通気を遮断する排水トラップを備えている。
【0003】
このような排水装置としては、例えば、本出願人の1人によって以前に提案された特許文献1が既に公知となっており、この排水装置の排水の流れは以下のようになっている。洗い場パン上の排水は、洗い場パンに開口した排水口から洗い場パン排水トラップへと排水され、排出口から下水へと排水される。浴槽パン上の排水は、浴槽パンに開口した排水口からエルボ部内を通過し、洗い場パン排水トラップの下流で洗い場パンの排水流路と合流して下水へと排水される。浴槽内の排水は、浴槽に開口した排水口から浴槽パンの排水流路とは別個の独立した流路としてエルボ部内を通過し、洗い場パン排水トラップの下流で洗い場パン及び浴槽パンの排水流路と合流して下水へと排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の排水装置は、浴槽、浴槽パン、及び洗い場パンのそれぞれの排水流路が浴槽パン側の上流側から洗い場パン側の下流側へ直列で配列されており、浴槽及び浴槽パンの排水流路は洗い場パン排水トラップの下に配置されていた。排水トラップにおける封水深は所定の高さを確保する必要があり、排水トラップの下に別の排水流路を配置すると、その分、床下空間の高さが高くなってしまうという問題があった。マンション等の多層住宅においては、階層高さを低くするために、床下空間の高さを低くすることが求められる。従来の排水装置において、浴槽及び浴槽パンの排水流路を洗い場パン排水トラップの下ではなく横に通して高さを低くすることも考えられるが、この場合、部材点数が増えて施工性が低下し、また、配管構造も複雑になるので、排水性能が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、浴室の床下空間の高さを低くすることができ、また、簡素な配管構造で施工性の高い排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る排水装置は、浴槽と、浴槽が載置される浴槽パンと、浴槽パンの横に配置される洗い場パンと、を備える浴室の排水装置であって、浴槽からの排水が流入する浴槽排水流入口と、浴槽排水流入口から流入した排水を貯留する浴槽封水部と、浴槽封水部からオーバーフローした排水が流出する浴槽封水流出口とを有する浴槽排水トラップと、浴槽パンからの排水が流入する浴槽パン排水流入口と、浴槽パン排水流入口から流入した排水を貯留する浴槽パン封水部と、浴槽パン封水部からオーバーフローした排水が流出する浴槽パン封水流出口とを有する浴槽パン排水トラップと、洗い場パンからの排水が流入する洗い場パン排水流入口と、洗い場パン排水流入口から流入した排水を貯留する洗い場パン封水部と、洗い場パン封水部からオーバーフローした排水が流出する洗い場パン封水流出口とを有する洗い場パン排水トラップと、長手方向一端側に外部へ排水を排出する排水管に接続される排出口を有し、長手方向他端側が閉塞された、浴槽封水流出口、浴槽パン封水流出口、及び洗い場パン封水流出口から流出した排水が流入する排水筒部と、を備え、排水筒部が、浴槽排水トラップ及び浴槽パン排水トラップと、洗い場パン排水トラップとの間に設けられ、排水筒部の長手方向側面側の一方に浴槽封水流出口及び浴槽パン封水流出口が設けられ、他方に洗い場パン封水流出口が設けられたことを特徴とする。
【0008】
さらに、排水筒部の内部に、浴槽封水流出口及び浴槽パン封水流出口から流入した排水の流路である第1通水部と、洗い場パン封水流出口から流入した排水の流路である第2通水部とを隔てる第1隔壁が設けられたことを特徴とする。
【0009】
さらに、第1通水部に、浴槽封水流出口から流入した排水の流路である第3通水部と、浴槽パン封水流出口から流入した排水の流路である第4通水部とを隔てる第2隔壁が設けられ、第2隔壁によって隔てられた第3通水部と第4通水部とが合流する第2合流部は、第1隔壁によって隔てられた第1通水部と第2通水部とが合流する第1合流部より上流側に設けられたことを特徴とする。
【0010】
浴槽パン封水部に貯留できる封水の上限の高さである浴槽パン封水上限が、浴槽封水部に貯留できる封水の上限の高さである浴槽封水上限よりも低いことを特徴とする。
【0011】
また、排水筒部は、長手方向の両端が開口した筒状の筒部本体と、筒部本体の長手方向の端部に固定されて排出口を有する排出口部材と、筒部本体の長手方向の端部に固定されて該端部を閉塞する閉塞蓋部材とを有し、排出口部材及び閉塞蓋部材が、筒部本体の長手方向の端部に選択的に取り付け可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る排水装置によると、浴槽排水トラップ及び浴槽パン排水トラップと、洗い場パン排水トラップとの間に排出口が設けられているため、浴槽パン側からの排水の流路を洗い場パン側の排水トラップの下に設ける必要が無く、また、配管構造も簡素になるため、床下空間の高さを低くすることができ、また、施工性も向上する。
【0013】
さらに、排水筒部の内部に、浴槽封水流出口及び浴槽パン封水流出口から流入した排水の流路である第1通水部と、洗い場パン封水流出口から流入した排水の流路である第2通水部とを隔てる第1隔壁が設けられているので、浴槽及び浴槽パン側から洗い場パン側へ、もしくは洗い場パン側から浴槽及び浴槽パン側へ排水が直接流れ込むことを防止できる。
【0014】
さらに、第1通水部に、浴槽封水流出口から流入した排水の流路である第3通水部と、浴槽パン封水流出口から流入した排水の流路である第4通水部とを隔てる第2隔壁が設けられており、第2隔壁によって隔てられた第3通水部と第4通水部とが合流する第2合流部は、第1隔壁によって隔てられた第1通水部と第2通水部とが合流する第1合流部より上流側に設けられているので、浴槽からの排水時に排水の流路が負圧になった場合でも、洗い場パン排水トラップ側へその影響が及ぶことを軽減することができる。
【0015】
また、浴槽パン封水部に貯留できる封水の上限の高さである浴槽パン封水上限が、浴槽封水部に貯留できる封水の上限の高さである浴槽封水上限よりも低いので、浴槽からの排水時に排水の流路が負圧になり、浴槽パン封水部の封水が引き込まれた場合でも、浴槽からの排水の勢いが弱まった時に浴槽パン封水部へ一部の排水が流れ込むため、浴槽パン排水トラップの破封を防止できる。
【0016】
また、排水筒部は、長手方向の両端が開口した筒状の筒部本体と、筒部本体の長手方向の端部に固定されて排出口を有する排出口部材と、筒部本体の長手方向の端部に固定されて該端部を閉塞する閉塞蓋部材とを有し、排出口部材及び閉塞蓋部材が、筒部本体の長手方向の端部に選択的に取り付け可能なため、筒部本体に取り付けられる排出口部材と閉塞蓋部材とを入れ替えることによって排出口の位置を変更することができる。そのため、排水管の取り回しが簡単になる方を排出口とすることができるので施工性が向上し、また、排水管の長さを短くできるので施工コストを下げることができ、さらに排水管の長さが短くなって取り回しが簡単になって排水管の曲がりが減ることによって排水性能も向上する。また、排出口が排出口部材に備えられているため、排水管の接続部の形状等が異なる場合でも、排出口部材を取り換えることによって対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排水装置の一例を示す正面図である。(a)は排水装置が浴室に取り付けられた様子を示す一部断面正面図である。(b)は排水装置の断面正面図であり、
図2のA-A’矢視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る排水装置の断面平面図であり、
図1のB-B’矢視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る排水装置の排水筒部の断面正面図であり、
図2のC-C’矢視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る排水装置が浴室に取り付けられた様子を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る排水装置の一実施形態について、以下、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る排水装置1は、
図1(a)に示すように、浴槽7と、浴槽7が載置される浴槽パン8と、浴槽パン8の横に配置される洗い場パン9とを備える浴室において、浴槽パン8と洗い場パン9の下の床下空間に設置される。浴室で生じた排水は、排水装置1を経由して下水等の外部へと排出される。
【0019】
排水装置1は、
図1(a)、
図1(b)、
図2に示すように、浴槽排水トラップ2と、浴槽パン排水トラップ3と、洗い場パン排水トラップ4と、排水筒部5と、を有する。浴槽排水トラップ2及び浴槽パン排水トラップ3は浴槽パン8の下に配置されてそれぞれ排水筒部5に接続されており、洗い場パン排水トラップ4は洗い場パン9の下に配置されて排水筒部5に接続されている。排水筒部5は浴槽パン8と洗い場パン9との境目である堰部の下に配置される。
【0020】
排水筒部5は排出口50を有し、排出口50には下水等の外部へと繋がる排水管6が接続される。
図4に示すように、浴槽7で生じた排水は、浴槽7の底面に設けられた浴槽排水口71から浴槽排水トラップ2及び排水筒部5を経由して排出口50から排水管6へと排出される。浴槽パン8で生じた排水は、浴槽パン8の底面に設けられた浴槽パン排水口81から浴槽パン排水トラップ3及び排水筒部5を経由して排出口50から排水管6へと排出される。洗い場パン9で生じた排水は、洗い場パン9の底面に設けられた洗い場パン排水口91から洗い場パン排水トラップ4及び排水筒部5を経由して排出口50から排水管6へと排出される。以下、排水装置1の各部について
図1(a)、
図1(b)、
図2、及び
図3に基づいて、さらに詳細に説明する。
【0021】
浴槽排水トラップ2は、浴槽排水流入口21と、浴槽封水部22と、浴槽封水流出口23と、を有する。
【0022】
浴槽封水部22は、底面と、底面の周縁から略垂直上方に延出する側面と、側面の延出端を閉塞する上面とを有する内部が中空の箱体であり、内部に水を貯留できるようになっている。
【0023】
浴槽排水流入口21は、浴槽封水部22の上面に設けられた開口部の周縁から浴槽封水部22の底面に対して略垂直下方に延出し、その延出下端が浴槽封水部22の内部で浴槽封水部22の底面から一定の距離を隔てた上方の位置となるように設けられた、内部が中空の筒状の部位である。
図1(b)に示すように、浴槽排水流入口21の上端の浴槽封水部22の上面の開口部には、浴槽排水口71に接続される浴槽排水管72が嵌着されており、浴槽7で生じた排水は、浴槽排水口71及び浴槽排水管72を通って、浴槽排水流入口21の下端の開口部から浴槽封水部22の内部へと流入するようになっている。浴槽排水口71から浴槽排水流入口21の下端までの間の排水の流路は水密性が保たれている。
【0024】
浴槽封水流出口23は、浴槽封水部22の側面の上部に設けられた開口部である。浴槽7から排水が流入して浴槽封水部22の内部の水位が浴槽封水流出口23の下端の浴槽封水上限23aよりも高くなると、浴槽封水流出口23からオーバーフローして流出する。浴槽封水上限23aは、浴槽封水部22の内部に水が貯留できる上限の高さである。
【0025】
通常、浴槽封水部22には、
図1(b)に示すように、浴槽封水上限23aまで水が貯留された状態となっている。このとき、浴槽排水流入口21の下端は、浴槽封水上限23aよりも低い位置にあるため、浴槽封水部22に貯留された水の中に浸かった状態になっている。従って、浴槽7から下水等の外部までの排水の流路において、上流側である浴槽7側の流路と、下流側である下水等の外部側の流路とは、この浴槽封水部22に貯留された水(封水という)によって通気が遮断された状態となっている。この封水は、下水等の外部からガス、臭気、害虫等が浴槽7、すなわち、室内空間側に侵入することを防ぐ。
【0026】
封水が、吸出し作用、蒸発、毛管現象等の何らかの理由によって失われ、封水の水面(封水面という)が浴槽排水流入口21の下端よりも下がり、浴槽排水流入口21の下端が封水から露出した状態になった場合、浴槽7から下水等の外部までが通気可能な状態となり、封水の機能が失われる(破封という)。従って、封水の機能を果たすのは、封水面が浴槽排水流入口21の下端から浴槽封水流出口23の下端、つまり浴槽封水上限23aまでの間にある場合である。この封水の機能を果たす高さの幅(浴槽排水流入口21の下端から浴槽封水上限23aまでの垂直距離)を封水深といい、一般的に排水トラップにおいて封水深は5cm以上10cm以下とすることが定められている。このように封水深は、定められた最低の高さ分は確保する必要があるため、浴槽排水流入口21の下端から浴槽封水部22の底面までの距離を大きくしすぎると、その分、排水装置1の高さが高くなってしまう。また、小さくしすぎると、浴槽7からの排水速度が遅くなってしまうので、排水速度と高さのバランスを考慮して適宜設計すればよい。本実施形態では、浴槽排水流入口21の下端から浴槽封水部22の底面までの距離を1cm程度としている。
【0027】
浴槽パン排水トラップ3は、浴槽パン排水流入口31と、浴槽パン封水部32と、浴槽パン封水流出口33と、を有する。浴槽パン排水トラップ3は、下水等の外部からガス、臭気、害虫等が浴槽パン8に侵入することを防ぐ。
【0028】
浴槽パン封水部32は、底面と、底面の周縁から略垂直上方に延出する側面と、側面の延出端を閉塞する上面とを有する内部が中空で、内部に水を貯留できる箱体である。浴槽パン排水流入口31は、浴槽パン封水部32の上面に設けられた開口部の周縁から浴槽パン封水部32の底面に対して略垂直下方に延出し、その延出下端が浴槽パン封水部32の内部で浴槽パン封水部32の底面から一定の距離を隔てた上方の位置となるように設けられた、内部が中空の筒状の部位である。浴槽パン封水流出口33は、浴槽パン封水部32の側面の上部に設けられた開口部である。
【0029】
浴槽パン排水流入口31は、
図1(a)、
図1(b)に示すように、浴槽パン排水管82を介して浴槽パン排水口81に接続されており、浴槽パン8上で生じた排水は、浴槽パン排水口81及び浴槽パン排水管82を通って、浴槽パン排水流入口31から浴槽パン封水部32へと流入するようになっている。浴槽パン排水口81から浴槽パン排水流入口31の下端までの間の排水の流路は水密性が保たれている。浴槽パン封水部32には、浴槽パン封水流出口33の下端の浴槽パン封水上限33aまで封水を貯留することができ、封水面の高さが浴槽パン封水上限33aを超えると、浴槽パン封水流出口33からオーバーフローして流出する。封水面が浴槽パン排水流入口31の下端より下がると破封となる。
図3に示すように、浴槽パン封水上限33aは、浴槽封水上限23aよりも低い位置となっている。
【0030】
本実施形態では、
図2に示すように、浴槽封水部22の浴槽封水流出口23が設けられた側面を除いて、浴槽パン封水部32が、浴槽封水部22の側面の周囲を覆うように平面略U字形状に設けられている。浴槽パン封水流出口33は、浴槽封水流出口23が設けられた側面と同じ側の、浴槽パン封水部32の浴槽封水部22を挟んだ両側の端部にそれぞれ設けられている。また、浴槽パン封水部32の浴槽封水部22を挟んだ両側の底面は、
図1(a)に示すように、それぞれ浴槽パン封水流出口33に向かって上向きに傾斜する傾斜部32aとなっている。傾斜部32aを除く浴槽パン封水部32の底面は、浴槽封水部22の底面と略等しい高さとなっており、浴槽排水トラップ2が浴槽パン排水トラップ3の内側に配置されるようにして、浴槽排水トラップ2と浴槽パン排水トラップ3とが一体となるように形成されており、浴槽排水トラップ2及び浴槽パン排水トラップ3の中心を通る底面に垂直な面に対して略面対称となっている。
【0031】
また、本実施形態では、
図1(b)に示すように、浴槽パン排水流入口31の下端から浴槽パン封水部32の底面までの距離の方が、浴槽排水流入口21の下端から浴槽封水部22の底面までの距離よりも短くなっている。これによって浴槽パン封水上限33aを浴槽封水上限23aよりも低くしても浴槽パン封水部33の封水深を確保できる。本実施形態では、浴槽パン排水流入口31の下端から浴槽パン封水部32の底面までの距離は5mm程度としており、また、浴槽パン封水上限33aと浴槽封水上限23aとの垂直距離も5mm程度としている。ここでは浴槽パン排水流入口31の下端の高さを下げた距離と略同じだけ浴槽パン封水上限33aの高さも下げているが、浴槽パン封水部33の封水深が確保できて浴槽パン封水上限33aが浴槽封水上限23aよりも低くなっていればよい。
【0032】
浴槽7は浴槽パン8の上に載置され、排水装置1は浴槽パン8及び洗い場パン9の下の床下空間に設置されるため、浴槽7の浴槽排水口71から排水装置1の浴槽排水流入口21に接続される浴槽排水管72は、浴槽パン8を貫通する必要がある。そのため、
図1(a)、
図1(b)に示すように、浴槽パン8の浴槽パン排水口81は、浴槽排水管72の外径よりも大きくなっており、浴槽排水管72は浴槽パン排水口81に挿通されることで浴槽パン8を貫通するようになっている。本実施形態では、浴槽排水トラップ2及び浴槽パン排水トラップ3が一体となるように形成されているため、浴槽排水流入口21の上端の浴槽封水部22の上面の開口部と、浴槽パン排水流入口31の上端の浴槽パン封水部32の上面の開口部とが内側に囲まれるような浴槽封水部22及び浴槽パン封水部32の上面から上方に延出する略円筒状の囲い壁を設けて、この囲い壁に内嵌されるようにして浴槽パン排水管82が取り付けられている。従って、浴槽排水流入口21の上端の浴槽封水部22の上面の開口部と、浴槽パン排水流入口31の上端の浴槽パン封水部32の上面の開口部とは、浴槽パン排水管82を構成する管壁の内側に存在する形になっている。浴槽排水管72は、浴槽パン排水口81から浴槽パン排水管82の内側を通って、浴槽排水流入口21に接続されている。また、浴槽パン排水管82と囲い壁との間は水密性が保たれており、浴槽パン8上で生じた排水は、浴槽パン排水口81から浴槽パン排水管82の内壁と浴槽排水管72の外壁の間の流路を流れて、浴槽パン排水流入口31の上端の浴槽パン封水部32の上面の開口部から浴槽パン排水流入口31を介して浴槽パン封水部32へ流れ込む。このように、浴槽7から浴槽排水トラップ2までの流路と、浴槽パン8から浴槽パン排水トラップ3までの流路とは、互いに水密性が保たれた独立した流路となっている。
【0033】
洗い場パン排水トラップ4は、洗い場パン排水流入口41と、洗い場パン封水部42と、洗い場パン封水流出口43と、を有する。洗い場パン排水トラップ4は、下水等の外部からガス、臭気、害虫等が洗い場パン9、すなわち、室内空間側に侵入することを防ぐ。
【0034】
洗い場パン封水部42は、底面と、底面の周縁から略垂直上方に延出する側面と、側面の延出端を閉塞する上面とを有する内部が中空で、内部に水を貯留することができる箱体である。洗い場パン排水流入口41は、洗い場パン封水部42の上面に設けられた開口部の周縁から洗い場パン封水部42の底面に対して略垂直下方に延出し、その延出下端が洗い場パン封水部42の内部で洗い場パン封水部42の底面から一定の距離を隔てた上方の位置となるように設けられた、内部が中空の筒状の部位である。洗い場パン封水流出口43は、洗い場パン封水部42の側面の上部に設けられた開口部である。
【0035】
洗い場パン排水流入口41は、
図1(a)、
図1(b)に示すように、洗い場パン排水管92を介して洗い場パン排水口91に接続されており、洗い場パン9上で生じた排水は、洗い場パン排水口91及び洗い場パン排水管92を通って、洗い場パン排水流入口41から洗い場パン封水部42へと流入するようになっている。洗い場パン排水口91から洗い場パン排水流入口41の下端までの間の排水の流路は水密性が保たれている。洗い場パン封水部42には、通常、
図1(b)に示すように、洗い場パン封水流出口43の下端の洗い場パン封水上限43aまで封水が貯留されており、封水面の高さが洗い場パン封水上限43aを超えると、洗い場パン封水流出口43からオーバーフローして流出する。封水面が洗い場パン排水流入口41の下端より下がると破封となる。洗い場パン封水部42の容積は浴槽パン封水部32の容積よりも大きくなっており、洗い場パン封水部42に貯留できる封水の容量は浴槽パン封水部32に貯留できる封水の容量よりも大きくなっている。本実施形態では、洗い場パン排水流入口41の下端から洗い場パン封水部42の底面までの距離は浴槽排水トラップ2と略等しく1cm程度としており、また、洗い場パン封水上限43aを浴槽封水上限23aと略等しい高さとしているが、洗い場パン9からの排水の流量や封水深等を考慮して適宜設計すればよい。
【0036】
排水筒部5は、
図2に示すように、筒部本体51と、筒部本体51の長手方向端部に選択的に取り付け可能な排出口部材52及び閉塞蓋部材53と、を有する。筒部本体51は、内部が中空で長手方向の両端部が開口した筒状部材である。排出口部材52及び閉塞蓋部材53は、筒部本体51の長手方向端部に選択的に取り付け可能となっており、筒部本体51の長手方向一端側の端部に排出口部材52が取り付けられる場合には、長手方向他端側の端部には閉塞蓋部材53が取り付けられる。そして、筒部本体51の長手方向一端側の端部に閉塞蓋部材53が取り付けられる場合には、長手方向他端側の端部には排出口部材52が取り付けられる。排出口部材52は、下水等の外部に繋がる排水管6が接続される排出口50を有し、筒部本体51内の排水は排出口50から排出される。閉塞蓋部材53は、閉塞蓋部材53が取り付けられた側の筒部本体51の端部からの通気及び通水を遮断する。このような排出口部材52及び閉塞蓋部材53を筒部本体51の長手方向端部に選択的に取り付け可能としていることによって、排水筒部5の排水口50の位置を排水筒部5の長手方向のどちらかに変更することができる。なお、排水筒部5の排水口50の位置を決定した後は、排出口部材52及び閉塞蓋部材53は、筒部本体51に接着等によって固定し、排水時等に外れないようにする。本実施形態では、排出口部材52及び閉塞蓋部材53を筒部本体51と別体として構成しているが、筒部本体51と一体的に構成しても良い。
【0037】
排水筒部5は、
図1(a)に示すように、浴槽パン8と洗い場パン9との境目である堰部の下で略水平に、堰部に沿うようにして排水筒部5の長手方向と堰部とが略平行になるように設けられている。浴槽パン8の下には浴槽排水トラップ2及び浴槽パン排水トラップ3が設けられており、洗い場パン9の下には洗い場パン排水トラップ4が設けられているので、排水筒部5は、浴槽パン排水トラップ2及び浴槽パン排水トラップ3と、洗い場パン排水トラップ4との間に位置する。
図2に示すように、筒部本体51の長手方向側面側の一方(浴槽パン8側)には、浴槽封水流出口23と浴槽パン封水流出口33とが設けられ、筒部本体51の長手方向側面側の他方(洗い場パン9側)には、洗い場パン封水流出口43が設けられている。浴槽7、浴槽パン8、及び洗い場パン9で生じた排水は、それぞれ浴槽排水トラップ2、浴槽パン排水トラップ3、及び洗い場パン排水トラップ4を経由して排水筒部5に流入し、排出口50から排出されて、排水管6を通って下水等の外部へと排出される。
【0038】
筒部本体51の内部には、
図2に示すように、筒部本体51の長手方向に延伸する第1隔壁54が設けられている。第1隔壁54は、浴槽排水トラップ2及び浴槽パン排水トラップ3から筒部本体51に流入した排水の流路である第1通水部56と、洗い場パン排水トラップ4から筒部本体51に流入した排水の流路である第2通水部57とを隔てる壁である。さらに、第1通水部56には、筒部本体51の長手方向に延伸する第2隔壁55が設けられている。第2隔壁55は、浴槽排水トラップ2から筒部本体51に流入した排水の流路である第3通水部58と、浴槽パン排水トラップ3から筒部本体51に流入した排水の流路である第4通水部59とを隔てる壁である。第1通水部56と第2通水部57とは、筒部本体51の内部の、第1隔壁54の排出口50側の端部の第1合流部54aで合流する。また、第3通水部58と第4通水部59とは、筒部本体51の内部の、第2隔壁55の排出口50側の端部の第2合流部55aで合流する。そして、第2合流部55aは、第1合流部54aよりも上流側に設けられている。
【0039】
本実施形態では、排出口部材52及び閉塞蓋部材53を取り換えることによって排出口50の位置を変更できるようになっているので、筒部本体51の両端部で、第1隔壁54及び第2隔壁55の、第1合流部54a及び第2合流部55aの距離関係は等しくなっており、閉塞蓋部材53は、その形状に合うように形成され、第1通水部56、第2通水部57、第3通水部58、第4通水部59をそれぞれ閉塞できるようになっている。
【0040】
筒部本体51の洗い場パン9側の長手方向側面と第1隔壁54との間が第2通水部57、第1隔壁54と第2隔壁55との間が第3通水部58、第2隔壁55と筒部本体51の浴槽パン8側の長手方向側面との間が第4通水部59になっている。
【0041】
浴槽排水トラップ2の浴槽封水流出口23は、第2隔壁55の上部に第2隔壁55の長手方向に長い略矩形状に設けられ、第3通水部58に対して開口している。そのため、第4通水部59は、浴槽封水部22によって分断された形になっている。
【0042】
浴槽パン排水トラップ3の浴槽パン封水流出口33は、浴槽封水部22の両側で、この分断された第4通水部59にそれぞれ開口するように、筒部本体51の浴槽パン8側の長手方向側面に設けられている。浴槽パン封水流出口33の下端は浴槽封水流出口23の下端よりも低くなるように設けられており、浴槽パン封水上限33aは浴槽封水上限23aよりも低くなっている。
【0043】
第1通水部56及び第3通水部58の底面の高さは、筒部本体51の底面と略等しい高さとなっているが、第4通水部59の底面は、
図3に示すように、浴槽パン封水上限33aと略等しい高さとなっており、排水筒部51の底面よりも高くなっている。また、第4通水部59の筒部本体51の長手方向に垂直な断面積は、第3通水部58の筒部本体51の長手方向に垂直な断面積よりも小さく、第1通水部56の筒部本体51の長手方向に垂直な断面積は、第3通水部58及び第4通水部59の筒部本体51の長手方向に垂直な断面積の和よりも大きくなっている。
【0044】
洗い場パン排水トラップ4の洗い場パン封水流出口43は、筒部本体51の洗い場パン9側の長手方向側面に設けられ、第2通水部57に開口している。洗い場パン封水流出口43の下端は、浴槽封水流出口23の下端の高さと略等しく、洗い場パン封水上限43aと浴槽封水上限23aは略等しい高さとなっている。また、第2通水部57の底面の高さは筒部本体51の底面の高さと略等しくなっている。
【0045】
排水装置1は、排水筒部5の排出口部材52及び閉塞蓋部材53を除いて、中心を通る筒部本体51の長手方向に垂直な面に対して略面対称となっている。
【0046】
本実施形態では、排水筒部5が堰部の下に配置されるようになっているが、これは、一般的に堰部の下の空間がデッドスペースになっていることが多いためであって、堰部でなくても、浴槽排水トラップ2及び浴槽パン排水トラップ3と、洗い場パン排水トラップ4との間に排水筒部5が配置されていればよい。また、排水口部材52及び閉塞蓋部材53を筒部本体51に取り付けることによって排出口50の位置を排水筒部5の長手方向両端部のどちらかに変更できるようにしているが、排出口50の位置の変更が不要な場合等には、排水口部材52及び閉塞蓋部材53を用いずに筒部本体51の長手方向一端側に排出口50を形成して他端側を閉塞したものを排水筒部5として用いてもよい。また、排水筒部5は略水平になるように設けられているが、これも排出口50の位置を変更できるようにしているためであって、変更不要な場合等には、排出口50を設けた側の端部の方がやや下がる下り勾配となるように排水筒部5を設けるようにしてもよい。また、中心を通る筒部本体51の長手方向に垂直な面に対して略面対称となっており、浴槽排水トラップ2及び浴槽パン排水トラップ3も一体となるように形成されているが、対称な形状になっていなくてもよいし、浴槽排水トラップ2及び浴槽パン排水トラップ3を別々に分離して設けるようにしてもよい。第3通水部58及び第4通水部59についても、第2隔壁55に対して逆の位置になるようにしてもよい。
【0047】
次に、浴室で生じた排水が、本実施形態に係る排水装置1によって下水等の外部へ排出される時の流れについて説明する。
【0048】
浴槽7で生じた排水は、浴槽排水口71から浴槽排水管72を流れ、浴槽排水トラップ2の浴槽排水流入口21から浴槽封水部22に流入し、浴槽封水流出口23から排水筒部5の第3通水部58に流出し、第2合流部55a、第1通水部56、第1合流部54aを経て、排出口50から排出され、排出口50に接続された排水管6を通って下水等の外部へ排出される。
【0049】
浴槽パン8で生じた排水は、浴槽パン排水口81から浴槽パン排水管82を流れ、浴槽パン排水トラップ3の浴槽パン排水流入口31から浴槽パン封水部32に流入し、浴槽パン封水流出口33から排水筒部5の第4通水部59に流出し、第2合流部55a、第1通水部56、第1合流部54aを経て、排出口50から排出され、排出口50に接続された排水管6を通って下水等の外部へ排出される。
【0050】
洗い場パン9で生じた排水は、洗い場パン排水口91から洗い場パン排水管92を流れ、洗い場パン排水トラップ4の洗い場パン排水流入口41から洗い場パン封水部42に流入し、洗い場パン封水流出口43から排水筒部5の第2通水部57に流出し、第1合流部54aを経て、排出口50から排出され、排出口50に接続された排水管6を通って下水等の外部へ排出される。
【0051】
排水筒部5内で、第1通水部56と第2通水部57とは第1隔壁54によって分断されて独立した流路を構成し、また、排水筒部5内の第1通水部56内で、第3通水部58と第4通水部59とは第2隔壁55によって分断されて独立した流路を構成している。浴槽7からの排水流路と、浴槽パン8からの排水流路とは、浴槽7からの排水が流入する第3通水部58と、浴槽パン8からの排水が流入する第4通水部59とが合流する第2合流部55aまでは独立した流路となっており、第1通水部56は浴槽7からの排水と浴槽パン8からの排水との共通の流路となる。第1通水部56の下流の第1合流部54aでは、さらに洗い場パン9からの排水が流入する第2通水部57が合流し、そこから下流側は全流路の共通の流路となる。洗い場パン9からの排水流路は、第1合流部54aまでは独立した流路となっている。第1隔壁54を構成していることによって、浴槽7からの排水時に洗い場パン9側へ排水が流入するといった逆流が起こらず、また、洗い場パン9からの排水時に浴槽7側及び浴槽パン8側へ排水が流入するといった逆流が起こらないようになっている。
【0052】
浴槽7は、主に、内部に水や湯を貯留して入浴するために使用され、入浴後に不要となった貯留された水が排水となる。従って、浴槽7からの排水は大量であることが多い。浴槽7に水を貯留する際は、浴槽排水口71に排水栓を装着することによって浴槽排水口71を閉塞して貯留し、水を排出する際は、浴槽排水口71に装着された排水栓を取り外すことによって排出する。この時、浴槽排水口71には大気圧に加えて浴槽7に貯留された水の高さの分の圧力がかかり、排水の流量は大きくなる。このような大流量の排水が排水流路に流れ込んできた場合、排水流路内の空気が排水の流れに引き込まれるようにして下流へと流れるため、排水流路内の空気が失われ、負圧が発生する。
【0053】
浴槽7からの排水時に、浴槽7からの排水流路の下流で負圧が発生すると、浴槽パン8からの排水流路と、洗い場パン9からの排水流路にも負圧の影響が及ぶ。下流側が負圧となっているのに対して、上流の浴槽パン8側及び洗い場パン9側は略大気圧であるため、その圧力差に応じて浴槽パン封水部32及び洗い場パン封水部42の封水が下流側に引き込まれる。しかし、このような封水の引き込みが発生した場合、浴槽パン封水部32の容積は洗い場パン封水部42の容積よりも小さくなっているため、浴槽パン封水部32の封水が先に破封する。浴槽パン封水部32が破封すると、浴槽パン8上の空気が引き込まれ、浴槽パン8からの排水流路を通って第2合流部55aで浴槽7からの排水中に空気が混ざり込む。ここで、第2合流部55aは第1合流部54aよりも上流側に設けられているため、浴槽7からの排水時の負圧は、第2合流部55aより下流から第1合流部54aまでの間の第1通水部56内で発生するが、浴槽パン8から吸引された空気が第2合流部55aで第1通水部56内に混ざり込むため、第1合流部54aより下流では負圧が解消されている。従って、第1通水部56内の負圧が第2通水部57に影響されることがなく、それ以上洗い場パン封水部42の封水が引き込まれなくなるので、洗い場パン排水トラップ4の破封を防ぐことができる。また、浴槽7からの排水が続いている状態では、浴槽パン8の空気が常に吸引された状態となるので、浴槽7からの排水が浴槽パン8へ逆流することが防止される。
【0054】
浴槽7からの排水の勢いが弱まり、負圧が発生しなくなると、浴槽パン8からの空気の吸引が無くなり、また、浴槽パン封水上限33aが浴槽封水上限23aよりも低くなっているため、浴槽7からの排水の一部が第4通水部59を通って浴槽パン封水流出口33から浴槽パン封水部32へと流れ込む。そのため、浴槽7からの排水時に浴槽パン排水トラップ3が破封しても、浴槽7の排水の完了時には、浴槽パン封水部32に封水が再び貯留された状態となり、浴槽パン排水トラップ3の破封が防止される。
【0055】
浴槽パン8は、その上に載置される浴槽7が万が一破損する等して浴槽7から漏れ出た水が床下に漏れることを防ぐために設けられているものであり、通常、浴槽パン8上で排水を生じることはほとんど無く、生じた場合でもごく少量である。従って、浴槽パン8からの排水によって負圧が発生するようなことは無く、浴槽パン8からの排水によって浴槽排水トラップ2や洗い場パン排水トラップ4が破封することは少ない。
【0056】
洗い場パン9は、通常、入浴者が身体を洗う等を行う場所であり、洗い場パン9に水が貯留されることはほとんど無く、シャワーや掛け湯等によって洗い場パン9で使用した水がそのまま排水されることになり、浴槽7からの排水ほど流量が大きくならない。従って、洗い場パン9からの排水によって浴槽7からの排水時のような負圧が発生することは無く、浴槽排水トラップ2や浴槽パン排水トラップ3が破封することは少ない。
【0057】
上記はあくまで本発明に係る排水装置の一実施形態を示したものであるため、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 排水装置 2 浴槽排水トラップ
21 浴槽排水流入口 22 浴槽封水部
23 浴槽封水流出口 23a 浴槽封水上限
3 浴槽パン排水トラップ 31 浴槽パン排水流入口
32 浴槽パン封水部 33 浴槽パン封水流出口
33a 浴槽パン封水上限 4 洗い場パン排水トラップ
41 洗い場パン排水流入口 42 洗い場パン封水部
43 洗い場パン封水流出口 43a 洗い場パン封水上限
5 排水筒部 50 排出口
51 筒部本体 52 排出口部材
53 閉塞蓋部材 54 第1隔壁
54a 第1合流部 55 第2隔壁
55a 第2合流部 56 第1通水部
57 第2通水部 58 第3通水部
59 第4通水部 6 排水管
7 浴槽 8 浴槽パン
9 洗い場パン