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特許7049043電子装置および経路探索方法、経路探索プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】電子装置および経路探索方法、経路探索プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20220330BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20220330BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
G01C21/34
G09B29/00 A
G09B29/10 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018173199
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020046236
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】工藤 信範
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-321360(JP,A)
【文献】特開2015-141126(JP,A)
【文献】特開2006-133090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G09B 29/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション機能を備えた電子装置であって、
ノードおよびリンクを有する地図データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した地図データに基づき、現在位置または任意の地点から目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
ノードへ進入するリンクを進入リンク、ノードから脱出可能な1または複数のリンクを脱出リンクとした場合に、当該脱出リンクのリンク情報を前記取得手段から取得して、当該脱出リンクごとに脱出コストを設定する設定手段とを有し、
前記設定手段は、脱出リンクを通行する際に考慮が必要な勘定方向の数に応じて脱出コストを設定するものであって、ノードに接続されている脱出リンクのリンク情報から当該ノードへ他車両が進入できない脱出リンクが存在する場合に、当該他車両が進入できない脱出リンクを勘案して脱出リンクごとの脱出コストを設定し、
さらに前記経路探索手段は、前記設定手段により設定された前記脱出コストを考慮して目的地までの通行コストの計算を行う、電子装置。
【請求項2】
前記設定手段は、ノードに接続されている脱出リンクのうち少なくとも1つのリンク情報が一方通行であった場合に、当該脱出リンクごとの脱出コストを変動させる、請求項に記載の電子装置。
【請求項3】
前記設定手段は、ノードに接続されている脱出リンクのうち少なくとも1つのリンク情報が通行禁止に関する情報であった場合に、当該脱出リンクごとの脱出コストを変動させる、請求項に記載の電子装置。
【請求項4】
前記経路探索手段はさらに、探索された複数の経路から誘導経路を決定する決定手段を含み、前記経路探索手段は、現在地から目的地に至る経路上に設定されたリンクのリンクコストと、各ノードにおけるリンク情報を考慮して設定された脱出リンクの前記脱出コストとを順次加算して通行コストを算出し、前記決定手段は、当該通行コストが最小の経路を誘導経路として決定する、請求項1ないしのいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項5】
ノードおよびリンクを有する地図データを用いてナビゲーション機能を実行する電子装置における経路探索方法であって、
地図データに基づき、現在位置または任意の地点から目的地までの経路を探索するステップと、
ノードへ進入するリンクを進入リンク、ノードから脱出可能な1または複数のリンクを脱出リンクとした場合に、当該脱出リンクのリンク情報に基づいて当該脱出リンクごとに脱出コストを設定するステップとを有し、
前記設定するステップはさらに、脱出リンクを通行する際に考慮が必要な勘定方向の数に応じて脱出コストを設定するものであって、ノードに接続されている脱出リンクのリンク情報から当該ノードへ他車両が進入できない脱出リンクが存在する場合に、当該他車両が進入できない脱出リンクを勘案して脱出リンクごとの脱出コストを設定するステップと、
前記探索するステップはさらに、設定された前記脱出コストを考慮して目的地までの通行コストの計算を行うステップと、を有する経路探索方法。
【請求項6】
ノードへ他車両が進入できない脱出リンクとは、一方通行道路または通行禁止道路を含む、請求項5に記載の経路探索方法。
【請求項7】
ノードおよびリンクを有する地図データを用いてナビゲーション機能を実行する電子装置における経路探索プログラムであって、
地図データに基づき、現在位置または任意の地点から目的地までの経路を探索するステップと、
ノードへ進入するリンクを進入リンク、ノードから脱出可能な1または複数のリンクを脱出リンクとした場合に、当該脱出リンクのリンク情報に基づいて当該脱出リンクごとに脱出コストを設定するステップとを有し、
前記設定するステップはさらに、脱出リンクを通行する際に考慮が必要な勘定方向の数に応じて脱出コストを設定するものであって、ノードに接続されている脱出リンクのリンク情報から当該ノードへ他車両が進入できない脱出リンクが存在する場合に、当該他車両が進入できない脱出リンクを勘案して脱出リンクごとの脱出コストを設定するステップと、
前記探索するステップはさらに、設定された前記脱出コストを考慮して目的地までの通行コストの計算を行うステップと、を有する経路探索プログラム。
【請求項8】
ノードへ他車両が進入できない脱出リンクとは、一方通行道路または通行禁止道路を含む、請求項7に記載の経路探索プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置を備えた電子装置に関し、特に交差点の通行コストを考慮して誘導経路を探索する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の典型的な車載用ナビゲーション装置は、自律航法センサやGPS(Global Positioning System)受信機などを用いて車両の現在位置を検出し、その近傍の地図データを記憶媒体から読み出して画面上に表示する。そして、画面上の所定箇所に自車位置を示す自車位置マークを重ね合わせて表示を行うことにより、車両の現在位置を一目で分かるようにしている。
【0003】
車載用ナビゲーション装置には、通常、ユーザが目的地に向けて道路を間違うことなく容易に走行できるように案内する機能(経路誘導機能)が搭載されている。この経路誘導機能によれば、地図データを用いて出発地(典型的には自車の現在位置)から目的地までを結ぶ最適な経路(典型的にはコストが最も低い経路)を、横型探索法やダイクストラ法等のシミュレーション計算を行って自動探索し、その探索した経路を誘導経路として記憶しておき、走行中、地図画像上にその誘導経路を他の道路とは識別可能に(例えば、色を変えたり、線幅を太くして)表示したり、また、自車が誘導経路上で進路を変更すべき交差点まで所定距離に近づいたときに、地図画像上にその交差点の案内図(交差点拡大図、該交差点での進行方向を示す矢印、該交差点までの距離、交差点名など)を表示したりすることで、いずれの道路を走行すればよいか、また、交差点でどの方向に進んだらよいかをユーザが把握できるようになっている。
【0004】
なお、コストとは、誘導経路としての適性の程度を数値化したものであり、ノード(経緯度で表現された点)に係るコストと、リンク(2つのノードを連結した部分、すなわち道路の一部分)に係るコストの2種類がある。リンクに係るコストは、距離(道路長)を基に、一般道か高速道路かなどを示す道路種別(道路クラス)、車線数、道路幅員などに応じてそれぞれ一定の規則に基づき定められた係数(所定の重み付けがなされた係数)を乗じた値(相対値)や車両の走行予測時間などである。一方、ノードに係るコストは、交差点を通過する際に他車両が向かってくることを考慮しないといけない方向の数(以下、勘定方向と称す)、右左折等通過方向の角度、交差点での信号機の有無などに応じて、それぞれ一定の規則に基づき定められた係数(所定の重み付けがなされた係数)を乗じた値(相対値)が設定される。
【0005】
従来の車載用ナビゲーション装置において、目的地までの経路の計算は、走行する実際の道路をノードとリンクに抽象化したネットワークを用いて行われている。目的地までの「最適な経路」とは、出発地から目的地に至るまでの各リンク毎のリンクコストと、各ノード毎の交差点通過方向コストとを合計した値(つまり、目的地までのトータルの通行コスト)が最小になるようなリンク列である。
【0006】
1つ1つのリンクを通行した場合の通行コストは、例えば、以下の式(1)により算出される。
【0007】
通行コスト=リンクコスト+交差点通過方向コスト …(1)
ここに、リンクコストは、道路長が含まれており、ノード間における道路長が短いほど小さくなるように定められた値である。交差点通過方向コストは、勘定方向の数が含まれており、交差点を通過する際に考慮するべき他車両が向かってくる方向の数に応じて、一定の規則に基づき定められた値(相対値)が含まれる。従来の技術では、出発地から目的地までの各リンクについて、上記の式(1)に基づいて通行コストを加算することでトータルの通行コストを求めている。
【0008】
このような経路探索に関連する技術として、特許文献1には、時刻や曜日などに対応した道路幅員係数や道路種別係数を用いて、リンクの評価値を算出し、経路設定時点の時刻・曜日・日時に応じた適切な経路を設定する技術が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、経路設定において、交差点に設置された信号機の有無や、設置されている信号機が右折矢印信号が表示されるようなものであった場合に、右折コストを小さい値に設定し、通行コストの合計値が小さくなる経路を探索する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-148065号公報
【文献】特開2005-321360公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の車載用ナビゲーション装置では、基本的に、出発地から目的地までのトータルの通行コストが最小になる経路を誘導経路(推奨経路)として案内している。
【0012】
ここで、図1は本発明の課題を示す図である。図1(a)は、本発明の課題の1つを具体的に示したもので、現在地と目的地までの間に施設へ進入するために整備された道路(道路リンク2)が存在する場合である。なお、図1(a)におけるGは、目的地のことを指す。また、このような道路状態としては、例えば、駅前のロータリーなどがある。なお、ノードであるXとYは交差点を示しており、道路リンク2は交差点Xから交差点Yへの一方通行となっている。また、道路リンク1は、交差点Xから交差点Yを結ぶリンクの中で、最も道路長が短いリンクである。
【0013】
ここで、現在地から目的地までの経路を探索すると図1(b)に示すような2つのルートが候補として算出される。ルート1は、道路リンク1を通る現在地と目的地間の最短距離ルートであり、ルート2は、道路リンク2を通る経路である。ルート2は、ルート1に比べて移動距離が長くなるが、現在のナビゲーション装置では、移動距離が長く、かつ、施設の道路に進入するルート2が誘導経路として選定されてしまうのである。
【0014】
ここで、ルート2が選定されてしまう理由について、図2の交差点の通行コストの設定方法を示す図を用いて詳細に説明する。図2(a)は、図1における交差点Xを模式的に表した図である。リンクAは、現在位置から交差点Xへ進入する進入リンクであり、リンクB、リンクC、リンクDは、進入リンクAにおける交差点Xの脱出リンクである。つまり、進入リンクがリンクAであったとき、脱出リンクはリンクB,リンクC、リンクDの3つとなる。また、矢印S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42は、進入リンクAから交差点Xを通過する際の勘定方向を表している。なお、勘定方向の数と実際の車線の数は同じものではなく、勘定方向はあくまで交差点を通行の際に他車両の進行を考慮する必要のある方向のことである。また、以下の説明において、進入リンクであるリンクAは進入リンクA、脱出リンクであるリンクB、リンクC、リンクDは脱出リンクB、脱出リンクC、脱出リンクDと称する。
【0015】
図2(b)は、進入リンクAにおける脱出リンクB,C、Dそれぞれの通行コストを示す図である。なお、以下の説明では、脱出リンクにおける通行コストのことを脱出コストと称す。脱出コストは、勘定方向の数によって設定される。例えば、脱出リンクBの左折方向へは、勘定方向はS12のみであるため、勘定方向1つ分の脱出コスト15が付加させる。なお、勘定方向1つ分の脱出コストの値は実施態様によって変更されるものであってよい。次に、脱出リンクCの直進方向へは、勘定方向はS12、S21の2つであるため、勘定方向2つ分の脱出コスト30が付加させる。そして、脱出リンクDの右折方向へは、勘定方向はS12、S21、S42の3つであるため、勘定方向3つ分の脱出コスト45が付加させる。
【0016】
図2(c)は、交差点Xにおける現在地からも目的地までの交差点の脱出コストとリンクコスト(距離によるコスト)を加算したコストの合計値の比較を表す図である。まず、交差点Xにおいて、直進した場合(ルート2)、交差点Xの脱出コストは30、リンクコストは、距離を考慮して例えば通行コストが137と設定され、交差点Yにおいても同様の脱出コストの算出方法より脱出コスト30となり、ルート2の通行コストの合計値は197となる。次に、交差点Xにおいて、右折した場合(ルート1)、交差点Xの脱出コストは45、リンクコストは距離を考慮して例えば通行コストが113と設定され、交差点Yにおいても同様の脱出コストの算出方法より脱出コスト45となり、ルート1の通行コストの合計値は203となる。よって、誘導経路は通行コストが最小となる経路が自動的に選定されてしまうため、通行コストの合計値が低いルート2の経路が選定されてしまう。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ノードの脱出コストを考慮して、適切な誘導経路を探索し、提供できる電子装置、経路探索方法および経路案内プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る電子装置は、ナビゲーション機能を備えた電子装置であって、ノードおよびリンクを有する地図データを取得する取得手段と、前記取得手段により取得した地図データに基づき、現在位置または任意の地点から目的地までの経路を探索する経路探索手段と、ノードへ進入するリンクを進入リンク、ノードから脱出可能な1または複数のリンクを脱出リンクとした場合に、当該脱出リンクのリンク情報を前記取得手段から取得して、当該脱出リンクごとに脱出コストを設定する設定手段と、前記経路探索手段は、前記設定手段により設定された前記脱出コストを考慮して目的地までの通行コストの計算を行う。
【0019】
ある実施態様では、前記設定手段は、脱出リンクを通行する際に考慮が必要な勘定方向の数に応じて前記脱出コストを設定するものであって、ノードに接続されている脱出リンクのうち少なくとも1つのリンク情報に基づき、当該脱出リンクの方向から当該交差点へ他車両が進入できないことが想定される場合に、前記脱出コストを変動させる。ある実施態様では、前記設定手段は、ノードに接続されている脱出リンクのうち少なくとも1つのリンク情報が一方通行であった場合に、当該脱出リンクごとの脱出コストを変動させる。ある実施態様では、前記設定手段は、ノードに接続されている脱出リンクのうち少なくとも1つのリンク情報が通行禁止に関する情報であった場合に、当該脱出リンクごとの脱出コストを変動させる。ある実施態様では、前記設定手段は、前記勘定方向における車線の数および/または種類を前記取得手段から取得し、前記車線の数および/または種類を考慮して当該脱出リンクごとに脱出コストを設定する。ある実施態様では、前記経路探索手段はさらに、探索された複数の経路から誘導経路を決定する決定手段を含み、前記経路探索手段は、現在地から目的地に至る経路上に設定されたリンクのリンクコストと、各ノードにおけるリンク情報を考慮して設定された脱出リンクの前記脱出コストとを順次加算して通行コストを算出し、前記決定手段は、当該通行コストが最小の経路を誘導経路として決定する。
【0020】
本発明に係る経路探索方法は、ノードおよびリンクを有する地図データを用いてナビゲーション機能を実行する電子装置における経路探索方法であって、地図データに基づき、現在位置または任意の地点から目的地までの経路を探索するステップと、ノードへ進入するリンクを進入リンク、ノードから脱出可能な1または複数のリンクを脱出リンクとした場合に、当該脱出リンクのリンク情報に基づいて当該脱出リンクごとに脱出コストを設定するステップと、前記探索するステップはさらに、設定された前記脱出コストを考慮して目的地までの通行コストの計算を行うステップとを有する。
【0021】
本発明に係る経路探索プログラムは、ノードおよびリンクを有する地図データを用いてナビゲーション機能を実行する電子装置における経路探索プログラムであって、地図データに基づき、現在位置または任意の地点から目的地までの経路を探索するステップと、ノードへ進入するリンクを進入リンク、ノードから脱出可能な1または複数のリンクを脱出リンクとした場合に、当該脱出リンクのリンク情報に基づいて当該脱出リンクごとに脱出コストを設定するステップと、前記探索するステップはさらに、設定された前記脱出コストを考慮して目的地までの通行コストの計算を行うステップとを有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、脱出リンクのリンク情報から脱出リンクそれぞれの脱出コストを設定するようにしたので、現在地から目的地までの最適な経路を誘導経路として提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の課題を示す図である。
図2】本発明の課題における交差点の通行コストの設定方法を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る地図データの内容を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る経路探索プログラムの機能的な構成を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の動作を説明するフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る交差点の通行コストの設定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る電子装置は、自動車等の移動体上に固定的に搭載される車載装置、または移動体内に持ち込み可能なポータブルタイプのコンピュータ装置等であることができる。本発明の電子装置は、ナビゲーション機能を搭載するが、これ以外の機能、例えば、オーディオ・ビデオデータを再生する機能、テレビ・ラジオ放送を受信する機能、アプリケーションソフトウェアを実行する機能などを統合的に備えるものであってもよい。
【0025】
本発明の電子装置は、ナビゲーション機能を有するものであり、当該ナビゲーション機能を実行するために地図データを用いる。この地図情報はDVD-ROM等の記憶媒体に記憶されている地図データを用いるものであってもよいし、データ通信手段を介して配信サイトもしくは配信サーバなどから必要な地図データを取得するものであってもよい。以下の説明では、電子装置の一例として、車両に搭載された車載装置を例示する。
【実施例
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係る車載装置の構成を示すブロック図である。車載装置100は、入力部110、自車位置検出部120、通信部130、音声出力部140、表示部150、記憶部160および制御部170を含んで構成される。
【0027】
入力部110は、ユーザが車載装置に対して各種情報を入力することを可能にする。入力部110は、例えば、入力キーデバイス、音声入力認識装置、タッチパネル等を含み、ユーザは、入力部110を介してメニュー選択操作、地図スクロール、目的地の設定、ルート探索の指示などを入力することができる。
【0028】
自車位置検出部120は、自車の現在位置を測定する。自車位置検出部120は、例えば、GPS測位による絶対位置検出、自律航法センサに基づく相対位置検出により自車位置を検出する。自律航法センサは、例えば、角速度センサや地磁気センサなどである方位センサや車速パルスセンサ等の車速センサなどを備える。なお、位置情報取得部110は、ネットワークを介して位置情報配信サイトや配信サーバにアクセスすることで、自車位置情報を取得するものであってもよい。その際のネットワークとの通信は通信部130を介して行われる。
【0029】
通信部130は、外部機器や外部ネットワーク等との間で有線または無線によるデータの送受信を可能にする。通信部130は、例えば、車載装置100が通信機能を内蔵するものであってもよいし、そのような通信機能を有する端末を車載装置100に接続するものであってもよい。通信部130は、ネットワークを介して、自車位置情報や地図データ、充電施設に関する詳細な情報を配信サイト(または配信サーバ)にアクセスし、取得することができる。また、WiFi、LAN、赤外線通信、電話回線などを利用した有線または無線によるデータ通信が可能である。
【0030】
音声出力部140は、制御部によって算出された経路を案内する音声案内を出力したり、運転者に対して運転支援情報の音声案内を行ったりする。表示部150は、経路探索プログラム200の実行に基づき、決定した誘導経路に基づく道路地図を表示する。表示部150は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、投射ディスプレイ等の表示装置を含み、地図の画像データを表示したり、利用者設定を行うための設定画面やメニュー画面を表示したりする。
【0031】
記憶部160は、ナビゲーションの各種機能を実行するために必要なプログラム及びデータベースを記憶する。ある実施態様では、記憶部160には地図データベース162が格納してあり、当該地図データベース162は、地図データ、道路データおよび施設データ等を含んでいる。ここで、地図データベース162の記憶媒体としては、DVD-ROM、CD-ROM、ハードディスクなどの記憶媒体を用いてもよい。なお、実施態様によっては、記憶媒体を用いず、通信部130を介して外部から各種地図情報を取得するようにしてもよい。
【0032】
ここで、地図データベース162に記憶されているデータの内容について、図4を参照して説明する。地図データベース162には、道路網を表す道路ユニットと、地名やその他の、地図上に表示する道路以外のオブジェクトを表す描画ユニットと、交差点ユニットとを有する。ここで、道路ユニットでは、ノードと、ノード間を連結するリンクの集合として道路網を定義しており、道路ユニットは、ノード毎に設けられたノード情報を含むノードテーブルと、リンク毎に設けられたリンク情報を含むリンクテーブルとを有する。なお、交差点などの道路の連結点には、必ずノードが設けられる。また、道路種別が異なる点などにもノードが設けられている。
【0033】
そして、各ノード情報には、対応するノードの識別子となるノード番号、対応するノードの各種属性を表すノード属性、対応するノードの位置を表すノード座標、対応するノードに接続するリンクを表す接続リンク情報、対応するノードに一本のリンクを介して接続する他のノードを表す接続ノード情報、当該ノードが交差点を構成するノードである場合に当該交差点の交差点番号が登録される対応交差点番号を含む。
【0034】
また、各リンク情報には、対応するリンクの識別子となるリンク番号、対応するリンクが道路区間を表す道路の識別などの各種属性を表すリンク属性、対応するリンクの一方の端点となるノードである第1ノードのノード番号を表す第1ノード番号、対応する他方の端点となるノードである第2ノードのノード番号を表す第2ノード番号、当該リンク上を車両が走行できる方向を表す通行方向、当該リンクに接続する他のリンクを表す接続リンク情報とを含む。
【0035】
ここで、リンク情報の通行方向には、当該リンクが上り/下り方向に走行可能な道路の区間を表すリンクである場合には双方向が登録され、当該リンクが一方通行の道路の区間を表す場合には、第1ノードから第2ノードに向かう方向と、第2ノードから第1ノードに向かう方向のいずれが走行可能な方向であるかを表す情報が登録される。なお、上り/下り方向に走行可能な一本の道路を、上り/下り方向のそれぞれを走行方向とする二本の道路の集合と捉えて、二本の道路の各々について各道路を形成するリンクを設ける場合があり、この場合、これらのリンクのリンク情報の通行方向には、当該リンクが道路区間を表す道路の走行方向が、第1ノードから第2ノードに向かう方向と、第2ノードから第1ノードに向かう方向のいずれが走行可能な方向であるかを表す情報が登録される。
【0036】
次に、交差点ユニットは、交差点毎に対応して設けた交差点データを有し、各交差点データには交差点の識別番号である交差点番号、交差点の名称等を表す交差点属性、交差点を構成するノードを登録した交差点構成ノードテーブル、交差点に接続するリンクを登録した交差点接続リンクテーブル、交差点内のリンクを登録した交差点内リンクテーブル、通過情報が登録される。図2(a)の交差点Xの拡大図を例にすると、交差点Xにおいて交差点に接続するリンクは、リンクA、リンクB、リンクC、リンクDの4つである。
【0037】
次に、交差点データの通過情報には、進入リンクごとの脱出リンクが格納される。図2(a)の交差点Xの拡大図を例にすると、進入リンクがリンクAのとき、脱出リンクは、リンクB、リンクC、リンクDとして格納される。なお、ある実施形態では、脱出リンクを格納すると同時に、進入リンクに対する脱出リンクの通過方向も一緒に格納する。つまり、脱出リンクBは左折方向、脱出リンクCは直進方向、脱出リンクDは右折方向のように対応させて記憶するものでもよい。
【0038】
次に、制御部170は、ROM/RAM等を備えたマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを含み、ROM、RAMに記憶された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、車載装置100の各部の動作を制御する。本実施形態に係る制御プログラムには、経路探索プログラム200が含まれる。
【0039】
制御部170は、経路探索プログラム200を実行する。図5は、本発明の実施形態に係る経路探索プログラム200の機能的な構成を示す図である。経路探索プログラム200は、交差点特定部202、進入リンク識別部204、脱出リンク識別部206、リンク情報取得部208、脱出コスト設定部210、通行コスト算出部212、誘導経路決定部214を備えている。
【0040】
交差点特定部202は、現在地から目的地までの経路探索において、通行する可能性のある交差点を特定する。進入リンク識別部204は、交差点特定部202にて特定された交差点へ進入するリンクを識別する。脱出リンク識別部206は、交差点特定部202にて、特定された交差点における進入リンクに対する脱出リンクを識別する。なお、脱出リンクごとに進入リンクに対する通過方向(左折、直進、右折)も識別する。
【0041】
リンク情報取得部208は、脱出リンク識別部206により識別された脱出リンクにおけるリンク情報を取得する。本実施形態では、地図データベースに記憶されているリンクテーブルよりリンク情報を取得する。ある実施態様では、通信部130を介して外部より取得するようにしてもよい。脱出コスト設定部210は、脱出リンクごとの脱出コストを当該脱出リンクのリンク情報に基づいて設定する。本実施形態では、脱出リンクのうちどれか1つのリンク情報が、交差点を脱出する方向への一方通行であった場合に、脱出リンクごとの脱出コストの値を変動させる。
【0042】
通行コスト算出部212は、少なくとも設定された脱出コストと目的地までのリンクコストを含むコストの総和を算出する。誘導経路決定部214は、トータルの通行コストが最小になる経路を誘導経路(推奨経路)として決定し、経路案内を行う。
【0043】
本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の動作について図6のフローチャートと図7の本発明の実施形態に係る交差点の通行コストの設定方法を示す図を参照して説明する。なお、図7は、図1と同様の交通状況であり、図7(a)は、図1における交差点Xを模式的に表した図である。そして、図7(a)におけるリンクCは、交差点Xからの脱出方向への一方通行のリンク情報を有している。まず、ユーザからの指示に応じて目的地の設定を行う(S100)。この目的地が設定されると、経路探索プログラム200が起動する(S102)。経路探索とは、例えば、地図データベース162に格納されているリンクデータおよびノードデータを用いて、現在地もしくは指定の地点から目的地に至るまでの連続したリンクにおいて、各リンクのリンクコストの総和が最小となる経路を探索する。その過程において、まず、交差点特定部202は、通行が想定される交差点(ノード)を特定する(S104)。ここで、交差点が特定されない(経路上に交差点が含まれない)場合は、後述のS114へ移行する。交差点が特定された場合は、S106へ移行する。図7(a)においては、交差点Xが特定される。
【0044】
特定された交差点に対して、進入リンク識別部204および、進入リンク識別部206は、それぞれの交差点における進入リンクおよび、進入リンクに対する退出リンクを識別する(S106)。図7(a)においては、進入リンクがリンクA、退出リンクがリンクB、リンクC、リンクDで識別される。リンク情報取得部208は、識別された脱出リンクにおけるリンク情報を地図データベース162より取得する(S108)。図7(a)においては、リンクB、リンクC、リンクDのリンク情報を取得する。
【0045】
次に、脱出コスト設定部210は、当該交差点において、脱出リンクの中で条件に合致するリンク情報を有する脱出リンクがあるかを判定する(S110)。上記条件とは、脱出リンクの方向から他車両が当該交差点へ進入しないことを示すリンク情報か否かである。本実施形態では、交差点を脱出する方向への一方通行か否かを判定している。つまり、図7(a)において、本実施例のように、リンクB、リンクC、リンクDのうち、リンクCが一方通行であったときに、条件に合致するリンク情報を有する脱出リンクがあると判定し、S112へ移行する。また、リンクB、リンクC、リンクDのうち条件に合致するリンク情報を有した脱出リンクがない場合は、S114へ移行する。
【0046】
脱出コスト設定部210は、勘定方向の数に応じた脱出コストを設定する。設定値はデフォルトとして持っており、勘定方向の数に応じて設定する。これは図2で示したように、例えば、左折して脱出リンクBを通行する場合は、勘定方向は1つであるため脱出リンクBへの脱出コストは15と設定される。直進は、勘定方向は2つであるため脱出リンクCへの脱出コストは30と設定され、右折は、勘定方向は3つであるため脱出リンクDへの脱出コストは45と設定される。しかし、S110において、条件に合致するリンク情報を有した脱出リンクが存在していた場合は、脱出コスト設定部210は、デフォルトで設定される脱出コストの値を変動させる(S112)。
【0047】
図7(a)に示すように、脱出リンクCが一方通行であった場合、脱出リンクCから交差点Xへ進入する他車両は存在しないため、S42を勘定する必要がなくなる。ここで、図7(b)は、進入リンクAにおける脱出リンクB,C、Dそれぞれの通行コストを示す図である。図7(b)に示すように、脱出コストが変動する。まず、左折して脱出リンクBを通行する場合は、S42はもともと勘定していないため、勘定方向は1つ(S12)で変わらず脱出コストは15で設定される。直進も、S42はもともと勘定していないため、勘定方向は2つ(S12、S21)で変わらず脱出コストは30と設定される。右折は、勘定方向は本来3つ(S12、S21、S42)であるが、S42は勘定する必要がなく除外されるため、勘定方向は2つ(S12、S21)となり、脱出コストは30に変動して設定される。
【0048】
なお、条件に合致するリンク情報を有した脱出リンクがない場合は、デフォルトの脱出コストがそのまま設定される(S114)。通行コスト算出部212は、S112または、S114にて設定された脱出コストに、さらに道路の距離に基づくリンクコストや、他の交差点の通行コストなど、目的地に至るまでのコストを加算していき、通行コストの合計値を算出する(S116)。交差点X、Yにおける脱出コストは上記の方法にて、それぞれ算出する。道路リンク1および、道路リンク2のリンクコストは距離に対応して決定され、例えば、道路リンク1が113、道路リンク2が137と設定されるものとする。
【0049】
図7(c)は、ルート1およびルート2のそれぞれにかかる通行コストの詳細と、合計値を示した図である。まず、ルート2は、交差点Xにおいて直進のため通行コストは30となり、その後、道路リンク2を走行するため通行コスト137が加算され、さらに交差点Yを直進するため通行コスト30が加算される。よって通行コストの合計は197となる。次に、ルート1は、交差点Xにおいて右折であり、前述したように勘定方向が減少するため、通行コストは30に変動となり、その後、道路リンク1を走行するため通行コスト113が加算され、さらに交差点Yを直進するため通行コスト45が加算される。よって通行コストの合計は188となる。
【0050】
次に、誘導経路決定部214は、通行コスト算出部212により算出されたトータルの通行コストが最小になる経路を誘導経路(推奨経路)として決定する(S118)。図7(c)のルート1および、ルート2の合計値を比較すると、ルート1の方がルート2に比べて通行コストの合計が少なくなり、これ以上小さい値の経路候補が存在しないため、ルート1を誘導経路(推奨経路)として決定する。
【0051】
上記実施例により、図2(c)のように通行コストの合計から、施設への侵入のために整備された道路を経由した遠回りの経路(ルート2)が誘導経路として選定されてしまっていたが、交差点における脱出リンクのリンク情報を考慮して脱出コストを設定するようにしたことで、図7(c)に示すように、施設への侵入のために整備された道路を経由せず、かつ、目的地まで最短距離の経路(ルート1)が誘導経路として選定されるようになる。これにより、目的地まで最短距離であり、かつ、施設などの道路へ進入しない経路を利用者へ提供することができるようになる。
【0052】
上記実施例では、脱出リンクの中に一方通行が存在していた場合に、脱出コストの値を変動させるようにしていたが、ある実施態様では、一方通行以外にも工事や一時的な交通規制、事故による通行禁止などの通行禁止に関する情報が取得された場合に、当該取得された脱出リンクの方向から車両の進入はないため、同様に脱出コストを変動するようにしてもよい。また、脱出リンクの中に複数上記の条件を満たす脱出リンクがあった場合であっても本発明は適応可能であり、勘定方向を考慮して脱出コストを設定させることができる。
【0053】
さらに、本実施例の説明では、勘定方向の数だけに着目して脱出コストを設定するようにしていたが、ある実施態様では、勘定方向ごとの脱出リンクの有する車線の数と、当該車線の種類を考慮して、脱出コストを設定するようにしてもよい。例えば、図7におけるS21が左折専用レーンと直進右折レーンの2車線から構成されていた場合、脱出リンクCは、S21の2車線分を考慮した脱出コスト値になる。同条件において、脱出リンクDは、リンクB方向から向かってくる車両は1車線分であるため、1車線分の脱出コスト値となり、さらに他の勘定方向によるコストが加算されてそれぞれの脱出コストが決定する。このように、車線数および車線の種類を考慮して脱出コストを設定することで、より最適な経路の算出ができるようになる。
【0054】
本実施例では、車が搭載する車載装置100にて、上記経路探索プログラム200を実行したが、これに限らず、目的地と現在地の情報を外部の演算機能を備えたサーバに通信部130を介して送信し、当該外部サーバが経路探索プログラム200を実行して、探索した誘導経路を通信部130から受信し、それに基づいて車載装置100にて経路案内を行うようにしてもよい。
【0055】
また、本発明と他の経路探索に係る技術とを併用して目的地までの最小コストの経路を算出するようにしてもよい。
【0056】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
X、Y:交差点
S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42:勘定方向
100:車載装置 110:入力部
120:自車位置検出部 130:通信部
140:音声出力部 150:表示部
160:記憶部 162:地図DB
170:制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7