(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】時計のカレンダーシステム
(51)【国際特許分類】
G04B 19/253 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
G04B19/253 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016228504
(22)【出願日】2016-11-25
【審査請求日】2019-10-29
(32)【優先日】2015-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルダズ, デニス
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6108278(US,A)
【文献】特開2012-98284(JP,A)
【文献】特開昭54-70867(JP,A)
【文献】特開昭57-108783(JP,A)
【文献】特開2012-173292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する日付表示部材を含む日車(1)と、
月表示部材を含む
環状タイプの月カム(300)と、
前記月カムの動きを前記日車が駆動するよう配置される、動的接続要素(8)と、
窓を具備する文字盤と、
を含み、
前記開口部が前記窓から見える状態のとき、前記窓から、前記日付表示部材に表示された所定の日付を表示しながら前記開口部を介して前記月表示部材に表示された月を表示する、
時計のカレンダーシステム(200)。
【請求項2】
前記月カムの動きの駆動は、前記日車(1)が、前記動的接続要素(8)経由で、排他的に行う、
請求項1に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項3】
前記月表示部材は、月表示板である、
請求項1または2に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項4】
前記動的接続要素は、前記月カムを、一月にわたり、1ステップ、駆動可能に配置される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項5】
前記動的接続要素は、前記日車が1ステップ駆動されるとき、前記月カムを1ステップの最大1/n駆動可能に配置され、ここでnは1より大きい自然数である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項6】
前記動的接続要素は、前記月表示部材(30)が前記窓から見えない状態のとき、前記月カムを駆動するよう配置され、及びまたは、前記カレンダーシステムによって表示される月の2日目と30日目の間に駆動するよう配置される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項7】
前記動的接続要素は、前記日車(1)のn本の歯(1b)と協働する複数の突起(8a)を具備するマルタ十字(8)を有し、該マルタ十字は月車と噛み合う歯車部(8b)を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項8】
前記動的接続要素は、前記月カムと噛み合い、かつ前記日車とも噛み合う一つ以上の中間車を含む装置を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項9】
前記日車及び前記月カムは、一つの同一軸(P)の周りを旋回される、
請求項1から8のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項10】
前記時計のカレンダーシステムは瞬間ジャンプタイプである、
請求項1から9のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項11】
前記月カムは内周または外周に配置されるカム表面を有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項12】
前記月カムは、
前記日車が「30」日を表示する位置にあるとき、前記カレンダーシステムの駆動要素(7)の動作により前記日車が2ステップ進む、前記カレンダーシステムの第一状態と、
前記日車が「30」日を表示する位置にあるとき、前記カレンダーシステムの駆動要素(7)の動作により前記日車が1ステップ進む、前記カレンダーシステムの第二状態と、
を定義するよう配置される、
請求項1から11のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム(200)を含む、時計ムーブメント(210)。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム(200)、または請求項13に記載の時計ムーブメント(210)を含む、時計(220)。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の時計のカレンダー、または請求項1から12のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステムを含む時計ムーブメント、または請求項1から12のいずれか一項に記載の時計のカレンダーシステムを含む時計、の作動方法であって、当該方法は
前記日車が「30」日を表示する位置にあるとき、前記カレンダーシステムの駆動要素(7)の動作により前記日車が2ステップ進む、前記カレンダーシステムの第一状態を定義する第一位置に前記月カムを位置させるステップと、
前記日車が「30」日を表示する位置にあるとき、前記カレンダーシステムの駆動要素(7)の動作により前記日車が1ステップ進む、前記カレンダーシステムの第二状態を定義する第二位置に前記月カムを位置させるステップと、
を含む、作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計のカレンダーシステムに関する。さらに本発明は、そのようなカレンダーシステムを有する時計のムーブメントに関する。最後に本発明は、そのようなカレンダーシステムまたはムーブメントを有する時計、特に腕時計に関する。
【0002】
特許文献1には、月を表示する表示装置であって、月板上の印が文字盤上の12個の窓のうちの一つと協働するよう設計されているものが開示されている。視覚上は瞬間的であるものの、この機構はいくつかのステップによって駆動されるため、月のジャンプに必要なエネルギーが最小となりかつ何日かにわたって行われ、時計の精度が保証される。このように永続的に月を表示する機構は特に目立たないものの、時計の文字盤は非常に特有な外観を有することになる。
【0003】
特許文献2は、時折、時間情報を表示する装置に関し、装着者の指示に基づいて、カレンダー情報の二つの部分の間に配置される日付板の窓の中に表示が現れるよう構成された電気光学表示部材を有する装置を提供する。好ましい実施例において、隠された情報は月の数字に対応し、年間または万年カレンダーを設定するときなどに表示させることができる。この装置は特に目立たないという利点を有するものの、他方では、窓の角度位置に対応して、日付板を1角度ステップまたは2角度ステップ分駆動するようプログラムされる必要のある、複雑な作動手段を必要とする。これらは例えば、電子手段である。日付板と表示部材との間には運動学的な連結はなく、後者は固定されている。
【0004】
特許文献3は、日付板を駆動する第一運動学的連鎖と、月カムの運動量のもとで動作される日付板を補正するための第二連鎖とを有する、年間カレンダー機構を開示する。この目的のため、日付板は3つの異なる歯車部を有する。31本の歯からなる第一歯車部は、従来の方法で日付駆動板により駆動されるよう設計される。1本の歯からなる第二歯車部は、日付補正車により駆動されるよう設計される。1本の歯からなる第三歯車部は、現在の月の31日目から次の月の1日目に移行するとき、月表示を常に表示する部材を有する月カムを駆動するよう設計される。
【0005】
特許文献4は、トレイル年間カレンダー機構を開示し、該カレンダー機構は、小の月の最後に30日目から「31日目」に進むときは、日付板の付加的な歯によって、「31日目」から次の月の1日目に進むときには日車の付加的な爪によって、駆動される月車を有する。この解決法は、2本の異なる歯群のみを有する、特に簡単な構造を有する日付板を使用するという利点を有する。しかしながら、このような順序付けは複雑な機構を必要とし、月車の駆動は該カレンダーがトレーリングカレンダーであるということによって可能となる。これらの各要素を駆動すること、特に日付板と月車を駆動することにより、装置がロックアップを起こしてしまう。そのため、上述の機構に基づいて、年間カレンダーと共に日付の瞬間ジャンプ機能を作動することはできない。さらに月車は、月表示を常に表示する部材を有する。月車をダブルジャンプさせるには月表示を二重にする必要があり、そのために月表示を縮小することとなり、文字盤の外観的魅力を減少させてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許明細書第2428856号(EP2428856B1)
【文献】スイス特許第681673号(CH681673B5)
【文献】欧州特許明細書第0987609号(EP0987609)
【文献】欧州特許明細書第1666991号(EP1666991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した問題点を解消することを可能とするカレンダーシステムを提供することにより、従来から知られる時計のカレンダー装置を向上することにある。特に第一の態様によると、本発明は、簡単かつ信頼性の高い構造を有し、同時に少なくとも時折月を表示することを可能とした、時計のカレンダーシステムを提案する。さらに、第二の態様によると、本発明は、月カムが動的接続要素を介在して日車によって駆動される、年間または万年時計を提案する。
【0008】
本発明の第一の態様によると、時計のカレンダーシステムは、
‐開口部を有する日付表示部材と、
‐特に前記開口部が前記カレンダーシステムのユーザから見える状態のとき、およびまたは、前記カレンダーシステムが所定の月の所定の日、特に所定の月の1日目、を表示しているとき、前記開口部に月を表示するように配置される、月表示部材と、
からなる。
【0009】
前記時計のカレンダーシステムは、前記月表示部材およびまたは前記開口部がユーザから見えない状態のときに、前記月表示部材を駆動するよう配置され、特に前記月表示部材を前記カレンダーシステムによって表示される月の2日目と30日目の間に駆動するよう配置され、さらに特に前記カレンダーシステムによって表示される月の10日目と20日目の間に駆動するよう配置される、前記月表示部材を駆動する駆動要素を有してもよい。
【0010】
前記時計のカレンダーシステムは、前記日付表示部材が1ステップで駆動される間に、前記月表示部材を1ステップで駆動するよう配置される、前記月表示部材を駆動する駆動要素を有してもよい。
【0011】
前記駆動要素は、月車のいくつかの歯と噛み合う少なくとも1つの歯、特に前記月車の12本の歯と噛み合う1つの歯、を具備する日車を有してもよい。
【0012】
前記駆動要素は前記日付表示部材を前記月表示部材に接続する動的接続要素を有してもよく、前記接続要素は、前記日付表示部材が1ステップ駆動される間に前記月表示部材を最大1/nステップ駆動するよう配置され、ここでnは1より大きい自然数であり、特にn=2またはn=3またはn=4またはn=5である。
【0013】
前記接続要素は、日車のn本の歯と協働する複数の突起を具備するマルタ十字を有し、該マルタ十字は月車のn本の歯と噛み合う歯車部を有する。または前記動的接続要素は月カムと噛み合い、かつ日車とも噛み合う一つ以上の中間車を含む装置を有する。
【0014】
前記日付表示部材および前記月表示部材は一つの同一軸の周りを旋回されてよく、およびまたは、日車と月車は一つの同一軸の周りを旋回されてよい。
【0015】
前記日付表示部材は日車であってよく、およびまたは、前記月表示部材は月車であってよい。
【0016】
前記日付表示部材およびまたは前記月表示部材は、板または板の環状部であってよい。
【0017】
前記時計のカレンダーシステムは、月の日付を表示するための窓を具備する文字盤を有してもよく、前記開口部は前記窓を通して見えるよう配置される。
【0018】
前記時計のカレンダーシステムは瞬間ジャンプタイプであってよい。
【0019】
日車の少なくとも1本の歯は、30日より少ない日数を有する月およびまたは30日からなる月の末に、前記日付表示部材の追加ジャンプを許可するよう配置されてよい。
【0020】
月車は、年間または万年カレンダーをプログラムするためのカムを有してもよい。
【0021】
本発明の第一の態様によると、時計のムーブメントは上述したカレンダーシステムを有する。
【0022】
本発明の第一の態様によると、時計、特に腕時計は、上述したカレンダーシステムを有し、または前記ムーブメントを有する。
【0023】
本発明の第二態様によると、時計のカレンダーシステムは以下を有する。
‐日車、
‐月カム、および
‐月カムの動きを日車が駆動するよう配置された、動的接続要素。
【0024】
月カムの動きは、日車のみによって駆動され、より詳しくは、動的接続要素を介して日車のみによって駆動され、およびまたは、日車は日付表示部材を有してもよく、特に日付表示板を有してもよい。
【0025】
月カムは月表示部材を有してもよく、特に月表示板を有してもよく、月カムは月表示部材、特に月表示板に固定されてもよい。
【0026】
動的接続要素は、ひと月の間に、特に1/12回転である月カムの1ステップを駆動するよう配設されてよい。
【0027】
該動的接続要素は、日車が1ステップで駆動される間に月カムが最大1/nステップ分駆動されるよう配置されてよい。ここで、nは1より大きい自然数であり、特にn=2、またはn=3、またはn=4、またはn=5である。
【0028】
前記動的接続要素は、月表示部材が使用者に見えない状態の間または情報を表示していないとき月カムを駆動するよう配置されてもよく、およびまたは、月カムをカレンダーシステムによって表示される月の2日目から30日目までの間駆動するよう、特にカレンダーシステムによって表示される月の10日から20日の間駆動するよう、配置されてもよい。
【0029】
前記動的接続要素は、日車のn本の歯と協働する複数の突起を具備するマルタ十字を有してもよく、該マルタ十字は月カムと噛み合う歯車部を有する。
【0030】
前記動的接続要素は、月カムと噛み合い、かつ日車と噛み合う、一つ以上の中間車を含む装置を有してもよい。
【0031】
日車および月カムは、一つの同一軸の周りを旋回してもよい。
【0032】
前記時計のカレンダーシステムは、瞬間ジャンプタイプであってよい。
【0033】
前記月カムは年間タイプであってよく、およびまたは、月カムは内周または外周に配置されるカム表面を有してもよい。
【0034】
月カムは以下を定義するように配置される。
‐カレンダーシステムの第一状態であって、日車が「30」日を表示する位置にあるとき、カレンダーシステムの駆動要素の動作により日車が2ステップ進み;
‐カレンダーシステムの第二状態であって、日車が「30」日を表示する位置にあるとき、カレンダーシステムの駆動要素の動作により日車が1ステップ進む。
【0035】
本発明の第二態様によると、時計のムーブメントは上記に定義したカレンダーシステムを有する。
【0036】
本発明の第二態様によると、時計、特に腕時計は、上記に定義したカレンダーシステムまたは上記に定義したムーブメントを有する。
【0037】
本発明の第二態様によると、本発明は、上記に定義した時計のカレンダーシステムまたは時計のムーブメントまたは時計の作動方法に関し、その方法は以下のステップを有する。
‐日車が「30」日を表示する位置にあるとき、カレンダーシステムの駆動要素の動作により日車が2ステップ進む、カレンダーシステムの第一状態を定義する第一位置に月カムを位置させるステップと、
‐日車が「30」日を表示する位置にあるとき、カレンダーシステムの駆動要素の動作により日車が1ステップ進む、カレンダーシステムの第二状態を定義する第二位置に月カムを位置させるステップ。
【0038】
両者が論理的または技術的に矛盾しない限り、本発明の第一態様の特徴のあらゆる組み合わせは、第二態様の特徴のあらゆる組み合わせと組み合わせ可能である。
【0039】
好ましくは本発明は、例えば月のある特定の日を表示するとき、特にカレンダーシステムを設定するときなどの、時折の特定の時期にしか装着者に見えない、という特徴を有する月表示を表示する部材を有する月表示装置を含むカレンダーシステムに関する。
【0040】
該カレンダーシステムは、特に現在の月の1日目と31日目との間に月表示を表示する表示部材を少なくとも部分的に駆動するという特徴を有する。
【0041】
このようなシステムは、時計の文字盤情報を過剰にする可能性のある、月表示を常に表示する装置に置き換えるのに有利な技術を提案する。本システムはまた、年間日付または万年日付タイプのムーブメントの構造を簡素化することを可能とする。ある実施例において、本システムは、月表示または月カムを表示する部材を駆動するのに必要なエネルギーを最小限にして分配することを可能とする。
【0042】
そのため、好ましくは、本カレンダーシステムにおいて、月表示部材は日付表示部材が特定の構成にあるとき、例えば所定の月の1日目、にのみ見ることが可能であり、およびまたは、月表示部材は、現在の月の1日目と31日目との間に、少なくとも部分的に、駆動される。
【0043】
上述した通り、月表示を所定のときにのみ表示することにより、月表示車を日付表示車と少なくとも部分的に非同期にすることができる優位点があり、それにより、月車が運動学的に日車に連結される、特に月車が日車にのみ運動学的に連結される構造を有する、年間または万年日付カレンダーシステムの構造を簡易化およびまたは最適化することが可能となる。このようなカレンダーシステムは、特に、2つの別個の歯群のみを有する日車の特に簡易な構造を提供することを可能とする。
【0044】
添付の図面は、例示により、本発明にかかる時計のカレンダーシステムの2つの実施例を表す。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第一実施例を示す。
【
図2】
図2は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第一実施例を示す。
【
図3】
図3は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第一実施例を示す。
【
図4】
図4は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第一実施例を示す。
【
図5】
図5は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第一実施例を示す。
【
図6】
図6は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第一実施例を示す。
【
図7】
図7は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第一実施例を示す。
【
図8】
図8は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第一実施例を示す。
【
図9】
図9は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第一実施例を示す。
【
図10】
図10は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第一実施例を示す。
【
図11】
図11は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第二実施例を示す。
【
図12】
図12は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第二実施例を示す。
【
図13】
図13は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第二実施例を示す。
【
図14】
図14は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第二実施例を示す。
【
図15】
図15は、本発明に係る時計のカレンダーシステムの第二実施例を示す。
【発明の詳細な説明】
【0046】
本発明の第一の態様を、時計120の第一実施例として、
図1から10を参照しつつ説明する。時計は、例えば腕時計である。
【0047】
時計は、時計のムーブメント110、特に機械式ムーブメントを有してよい。
【0048】
時計のムーブメントは、本発明に係るカレンダーシステム100の第一実施例を有する。有利には、本カレンダーシステムは年間日付タイプまたは万年カレンダータイプである。
【0049】
時計のカレンダーシステム100は、
‐開口部10aを有する日付表示部材10と、
‐特に前記開口部10aが前記カレンダーシステムのユーザから見える状態のとき、およびまたは、前記カレンダーシステムが所定の月の1日目を表示しているとき、前記開口部10aに月を表示するように配置される、月表示部材30と
を有する。
【0050】
好ましくは、前記開口部10aは、日付表示に面しまたは日付表示と並置され、特に日付「1」に面しまたは日付「1」と並置される、第一窓である。つまり、ここで説明する第一実施例において、開口部10aは月の1日目の表示と並置される。当然のことながら、開口部10aを他の日付と面するように配置してもよい。
【0051】
同じく好ましくは、月表示部材30は、カレンダーシステムが所定の月の1日目を表示しているときに、開口部10a中に月を表示するように配置される。
【0052】
第一実施例において、月表示車は、現在の月の1日目と31日目の間に行われる日付板の独立した一つの角度ステップにわたって作動される。
【0053】
本発明の第一実施例は、プログラムアセンブリ2の歯車部2aと噛み合うよう設計された第一外部歯車部1aを有する日車1を具備するという特徴を有する。日車1は、
図2に示すプログラムアセンブリ2の歯車部2bおよび
図3に示す月車3の歯車部3aの両方と噛み合うよう設計される一つの歯1bのみを有する歯車部1bを有する。歯車部1aおよび1bはこの例において、二つの異なる高さに配置されている。
【0054】
日付表示部材10は月表示部材30の上に配置される。つまり、部材10の上に形成される開口部10aが、
図4に図示されるように第二窓4に面して配置されていない場合、月表示は時計のガラスを通して、特に例えば文字盤99(
図6に部分的に図示される)に形成される第二窓4を通して、ユーザから見える状態にはない。このため、この時計のカレンダーシステムは、ユーザから見える状態とするため、開口の形成される第2日付表示窓を具備する文字盤を有することができる。
【0055】
車1および3が動かない段階の状態では、これらの車は従来の方法で、
図3に示すとおり、それぞれ歯車部1aおよび3aと協働するよう設計されたヘッドまたは突出部5a、6aを有するジャンパー5、6を使用して、割出しされる。
【0056】
アセンブリ2は、カレンダーシステムが大の月と小の月とを区別することができるように配置される。そのために、アセンブリ2の歯車部2aおよび2bは共に、それぞれが歯車部2aおよび2bのみを駆動する二つの駆動爪7aおよび7bを有するカレンダーシステムの駆動要素7によって、毎日駆動されるよう設計される。爪7bは歯車部2cを介して歯車部2bを駆動し、これら二つの歯車部2bおよび2cは、
図5に示すように、ピン200により一体となって回転する。
【0057】
アセンブリ2の歯車部2aの歯と車1の歯車部1aの歯との相互作用は、日付が変わるごとに発生する。これに対して、アセンブリ2の歯車部2bの1本の歯と車1の歯1bとの相互作用は、各小の月の終わりの時にのみ、より詳しくは各小の月の30日目から「31」日目に表示が移行する間に、発生する。例示として、
図6から8に、11月の末における機構を図示する。
図6は、30日目から「31」日目に表示が移行する間のカレンダーシステムの状態を示す。この構成において、爪7bは歯車部2bを導き、歯車部2bは日車の第一角度ステップにわたって歯1bを駆動する。
図7は、月の31日目から12月の1日目に表示が移行する間のカレンダーシステムの状態を図示する。この構造において、爪7aは歯車部2aを導き、歯車部2aは日車の第二角度ステップにわたって歯車部1aを駆動する。このため、カレンダーシステムの駆動要素7が一回動くことにより、特に一度回転することにより、日車1は2ステップ分進み、日付表示部材10は「30」を表示する状態から「1」を表示する状態に移行する。その結果、このシステムは、30日で終わる月の末に日付表示部材10が追加ジャンプすることを可能とする、日車1の少なくとも一つの歯1bを有する。
図8は、上述した二つの移行を実行した後のカレンダーシステムの最終状態を図示する。
【0058】
月末に日付を変えるこれらのフェーズの間、月車3、特に月表示部材30は、動かないままである。
図6から8における動作シーケンスにおいて、月車3は、部材10によって表示される月の1日目に対応する表示を月表示部材30が表示するよう、配置される。例として、
図8は12月の1日目におけるカレンダーシステムの構成を示す。この構成において、時計の装着者は、特に必要な場合にカレンダーシステムを設定する目的のために、各月の1日に現在の月を知ることができる。
【0059】
月車3の作動は、歯1bが歯車部3aに作動したときに月を移行する間に実行され、より詳細には、
図9および10に示すように、現在の月の11日目から12日目に移行する間に、実行される。わかりやすさのため、「10」「11」および「12」の日付は日付表示板10に図示されない。有利には、文字盤99の第二窓4に開口部10aが位置していないことから、月表示部材30のムーブメントは時計の装着者には見えない。本実施例によると、現在の月の12日目以降、
図10に示されるように、月表示部材30が次の月を表示するように月車3は配置される。このため、月車を駆動する駆動要素1は、ユーザに月表示部材およびまたは開口部10aが見えない状態で、月車または月表示部材を駆動するよう配置される。特に駆動要素は、月車または月表示部材がカレンダーシステムによって表示される月の2日目から31日目までの間に、特にカレンダーシステムによって表示される月の10日から20日の間に、駆動されるよう配置される。
【0060】
また好ましくは、月表示部材を駆動する駆動要素は、日付表示部材が1ステップによって駆動される間に、月表示部材を1ステップによって駆動するよう配置される。
【0061】
駆動要素は、有利には日車である。駆動要素は、月車3のいくつかの歯3aと噛み合う少なくとも一つの歯1b、特に月車3の12本の歯3aと噛み合う一つの歯1bを有する。
【0062】
このような実施例により、歯車部1aおよび1bを並べて配置するための二つの異なる高さのみを有する簡単な構造の日車を使用することができる。このことにより、カレンダーモジュールの厚さが最小となるような、よりコンパクトなデザインが可能となる。他の例として、歯車部1bは、歯車部1aとは異なる外形を有する歯車部1bを使用することにより、歯車部1aと同じ高さに配置可能である。
【0063】
時計220の第二実施例を、
図11から15を参照しつつ、説明する。時計は、例えば腕時計である。
【0064】
時計は、ムーブメント210、特に機械式ムーブメントを有してもよい。
【0065】
時計のムーブメントは、本発明に係るカレンダーシステム200の第二実施例を有する。有利には、本カレンダーシステムは年間日付タイプまたは万年カレンダータイプである。
【0066】
時計のカレンダーシステム200は、
‐開口部10aを有する日付表示部材10と、
‐前記開口部10a中に月表示を表示するように配置される月表示部材30
を有する。
【0067】
本カレンダーシステムの第一実施例と第二実施例において、同じ構造または同じ機能を有する各要素には、同じ符号を付す。
【0068】
本発明の第一態様は、ここに説明する第二実施例によって、さらに説明される。この第二実施例は、主に以下の点で第一実施例と異なる。
‐月車は日車を駆動するため、1ステップまたは複数のステップで駆動される;およびまたは
‐日付表示部材および月表示部材は、一つの同一軸Pの周りを、すなわち同軸に、旋回し、およびまたは、日車および月車は、一つの同一軸Pの周りを、すなわち同軸に、旋回する。
【0069】
第二実施例において、
図11から13に示すように、月表示車は日付板のいくつかの角度ステップにわたって駆動される。カレンダーシステムは特に、日車と月車をつなぐ動的接続要素8を有する。例えば、この接続要素は中間車の形であってもよく、または一つ以上の中間車が一方では日車の少なくとも歯部を形成された部分と噛み合い、もう一方では月車と噛み合うシステムの形であってもよい。カレンダーシステムの従来的な動作において、日車の角度位置は、日車の歯車部と協働するよう設計される突出部5aを有するジャンパー5によって割り出されてもよい。月車3の角度位置は、日車および月車と噛み合う接続要素を介して、歯のラッシュ分の誤差はあるとしても、保証される。
【0070】
日車1は、日付駆動爪7aによって駆動されるよう設計される内部歯車部1aを有する。本実施例において、この日車はさらに、車1の外周に配置されて動的接続要素8を介して月車3の歯車部3aと噛み合うよう設計された歯車部1bを有する。この接続要素は軸Pに平行な軸の周りを旋回する。
【0071】
接続要素8は、例えば
図11から13に示されるマルタ十字8を有してもよい。マルタ十字は、日車のn個の歯1bと噛み合う複数の突起8aを有してもよい。マルタ十字は、月車3の歯車部3aと噛み合う歯車部8bを有する。nは好ましくは1以上の自然数であり、特にn=2またはn=3またはn=4またはn=5である。このため、接続要素8は、月車をステップの最大1/nによって駆動するよう配置され、日付表示部材は1ステップによって駆動される。
【0072】
カレンダーシステムの従来的動作によると、車1の角度位置はジャンパー5によって割り出され、ジャンパー5の突出部5aは歯車部1aと噛み合うよう設計される。接続要素の多角形またはほぼ多角形の外形8cと噛み合うよう設計される車1の外周円形状1cによって、車3の角度位置は、歯のラッシュ分の誤差はあるとしても、保証される。月車の作動は、歯車部1bを接続要素8の歯車部8aと噛み合わせ、歯車部3aを歯車部8bと噛み合わせることにより実施される。そのため、日車の特定のステップの間、月車はステップの最大1/nによっておよび日車の他のステップによって駆動され、月車は駆動されない。
【0073】
この実施例において、日車は4つの歯1bを有する。歯1bが接続要素と相互作用するとき、日付ジャンプは月車3を角度ステップの1/4にわたって駆動する。しかしながら、日付がジャンプしても、歯1bが接続要素と相互作用していない場合、月車3は動かない。言い換えるなら、月車は日付板の4つの角度ステップにわたって駆動される。例えば、これらの作動または駆動は、月の2日目から3日目、月の10日目から11日目、月の17日目から18日目、および月の25日目から26日目に移行する時に実施され、文字盤99の窓4に表示される(
図13にその一部を示す)。あるいは、日車、月車および接続要素を適切に構成することにより、月車3は月全体にわたって、つまり日車の31角度ステップにわたって、駆動される。
【0074】
第二実施例において、月を変えるために必要なエネルギーはいくつかの瞬間日付ジャンプにわたって分布してもよく、これは追加ジャンパーを設けることなく達成可能である。月表示を変化させるためのエネルギーはとても少なくて済み、時計の精度に対して悪影響はない。
【0075】
第一実施例と同じく、部材10に形成された開口部10aが窓4に位置しない限り、月表示は好ましくは窓4から見えない。第二実施例において、開口部10aは、
図11から13に示すように、第1日目「1」の表示と並置される。
【0076】
図11から13に示す構造はさらに、ムーブメントの中心を空けておくことを可能とし、そのためムーブメントの中心に別の時間や日付表示を表示することができる。
【0077】
図14および15に示すように、様々な実施例において、月車3は年間または万年カレンダーをプログラムするために使用される月カムまたはプログラミングカム300に固定されてもよい。カムおよび月車は一体アセンブリを形成してもよいし、一つの部材から形成されてもよい。あるいは、カムと車は相互に接合されていてもよい。カムと月車が相互に固定されている構成は、特に年間または万年カレンダーシステムに有利である。なぜならば、そのようなカレンダーシステムの構造により、そのプログラミングカムは所定の月の31日目から次の月の1日目までの間、実行されることができないからである。有利には、カムは環状カムである。月カムは、月を表示する部材、特に月表示板を有してよい。あるいは、月カムは月を表示する部材、特に月表示板に固定される。月カムは内周または外周に配置されるカム表面を有してもよい。
【0078】
このようにして、月表示部材30とカレンダープログラミングカム300は同時にまたは一緒に駆動可能である。
【0079】
例として、
図15に、最大30日を有する小の月と31日を有する大の月とを区別するよう設計された月カム300を使用して日車の位置を割り出す機構を示す。この機構において、割出される日付板と駆動レバー9は、レバーに旋回する第一ローラ9aを介してカム300によって位置を制御され、それによりレバーに旋回する第二ローラ9bが歯車部1dを割り出す日付板の軌道上に位置してもよいし位置しなくてもよい。したがって、小の月の末であって第二ローラが歯車部1dの軌道に干渉するとき、割出し歯車部は駆動され、日付板割出しジャンパー91は駆動されない。その後、日車が「30」を表示するよう位置され、駆動爪が日車を駆動するよう作用しているとき、日付板により安定して表示される次の日付が「1」であるように、レバーと歯車部は協働する。それに対して、大の月の末であって、第二ローラが歯車部1dの軌道に干渉しないとき、割出し歯車部1dは駆動されず、ジャンパー91を割出す日付板は駆動される。その後、日車が「30」を表示するように位置され、駆動爪が日車を駆動するよう作用しているとき、日付板により安定して表示される次の日付は「31」であるように、ジャンパー91と歯車部1aは協働する。
【0080】
図15に示す例において、カム300と協働するよう設計されるレバー9は、時計のムーブメントのムーブメント枠組上で旋回される。あるいは、レバー9は時計車、例えば日車上で、旋回される。
【0081】
図15に示す例において、レバー9は日車の歯車部1dと協働するよう設計される。あるいはレバー9は、日車の追加駆動要素と協働するよう設計される日車の格納可能な歯車部の形をとることもできる。
【0082】
図15に示す例において、レバー9はカム300の外周と協働するよう設計される。もちろん、レバー9はカム300の内周と協働してもよい。
【0083】
したがって、月カムは以下を定義するように配置される。
‐カレンダーシステムの第一状態であって、日車が「30」日を表示する位置にあるとき、カレンダーシステムの駆動要素7の動作により日車が2ステップ進み;
‐カレンダーシステムの第二状態であって、日車が「30」日を表示する位置にあるとき、カレンダーシステムの駆動要素7の動作により日車が1ステップ進む。
【0084】
言い換えると、本発明は、時計のカレンダーシステムまたは時計のムーブメントまたは時計の作動方法に関し、その方法は以下のステップを有する。
‐日車が「30」日を表示する位置にあるとき、カレンダーシステムの駆動要素7の動作により日車が2ステップ進む、カレンダーシステムの第一状態を定義する第一位置に月カムを位置させるステップと、
‐日車が「30」日を表示する位置にあるとき、カレンダーシステムの駆動要素7の動作により日車が1ステップ進む、カレンダーシステムの第二状態を定義する第二位置に月カムを位置させるステップ。
【0085】
本カレンダーシステムの第二実施例に示される本発明の第二態様によると、時計のカレンダーシステム200は好ましくは以下を有する。
‐日車1、
‐月カム300、および
‐月カムの動きを日車が駆動するよう配置された、動的接続要素8。
【0086】
好ましくは、月カムの動きは、日車1のみによって駆動される。より詳しくは、月カムの動きは、動的接続要素8を介して日車1のみによって駆動される。
【0087】
上述した通り、日車は日付表示部材を有してもよく、特に日付表示板を有してもよい。
【0088】
同様に、月車は月表示部材を有してもよく、特に月表示板を有してもよい。
【0089】
動的接続要素は好ましくは、ひと月の間に、特に1/12回転である月カムの1ステップを駆動、特に排他的に駆動するよう配設される。特に、該動的接続要素は日車が1ステップで駆動される間に月カムが最大1/nステップ分駆動されるよう配置されてよい。ここで、nは1より大きい自然数であり、特にn=2またはn=3またはn=4またはn=5である。
【0090】
前述した通り、動的接続要素は月カムと噛み合いかつ日車と噛み合う、中間車を有してもよい。
【0091】
様々な実施例において、日車と日付表示部材は、一体アセンブリを構成してもよいし、または一つの部品として形成されてもよい。あるいは、部材と車は互いに連結されてもよい。同様に、月車と月表示部材は、一体アセンブリを構成してもよいし、または一つの部品として形成されてもよい。あるいは、部材と車は互いに連結されてもよい。
【0092】
様々な実施例において、この部材10に形成される開口部10aは、当然、同じ部材の透明領域からなってもよく、特に、より広範囲の、半透明な第二領域の中に組み込みこまれた第一透明領域であってもよい。文字盤がない時計、特に「スケルトン」タイプの時計において、開口部10aは月表示を表示するのに充分である。
【0093】
様々な実施例において、月の1日目の表示または月の表示と共に表示されるよう意図された他の日付は、さらには、月表示部材30に含まれてもよい。
【0094】
好ましくは、本発明に係るカレンダーシステムは、ラピッド修正システムを伴っている。そのようなカレンダーシステムは、例えば時計のムーブメントをセットするのに使用する巻真の軸上の位置の機能として、該カレンダーシステムをセットするモードのときのみ、開口部10aが現れるような機構を有してもよい。
【0095】
各実施例において、時計のカレンダーシステムは好ましくは瞬間ジャンプ型である。
【0096】
各実施例において、日付表示部材およびまたは月表示部材は、好ましくは板または板の環状部である。あるいは、これらの表示部材の一方およびまたは他方は、アームと協働するよう意図された針を有してもよい。
【0097】
この明細書においては、動的接続要素の主な実施例を詳細に説明した。しかしながら、前述した通り、代わりとなる動的接続要素を使用してもよい。例えば、動的接続要素は、日車と月カムとの両者と噛み合ういかなる減速装置であってもよく、該減速装置の歯車は、月カムを1回転の1/12回転させつつ日車を1回転以上させることにより、月カムをひと月の間に1ステップ駆動することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 日車
3 月車
4 窓
8 動的接続要素
10 日付表示部材
10a 開口部
30 月表示部材
99 文字盤
100 カレンダーシステム
110 ムーブメント
120 時計
200 カレンダーシステム
210 ムーブメント
220 時計