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特許7049078シミュレータドーム及びスクリーン把持治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】シミュレータドーム及びスクリーン把持治具
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/58 20140101AFI20220330BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20220330BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20220330BHJP
   G09B 9/05 20060101ALN20220330BHJP
【FI】
G03B21/58
G03B21/00 D
H04N5/74 C
G09B9/05 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017140222
(22)【出願日】2017-07-19
(65)【公開番号】P2019020626
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 壮志
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-197329(JP,A)
【文献】特開2003-121942(JP,A)
【文献】米国特許第06128130(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0052438(US,A1)
【文献】特表昭56-501386(JP,A)
【文献】実開平06-044966(JP,U)
【文献】特開2000-045531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/58
G03B 21/00
H04N 5/74
G09B 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視円環状に形成されたスクリーン部と、
前記スクリーン部の上部に設置された天井部と、を備え、
前記スクリーン部が、該スクリーン部の周方向に配列された複数のスクリーン分割体によって構成され、
少なくとも一つの前記スクリーン分割体の上端部と前記天井部の外周端部との間に、隙間が形成され
前記隙間が、前記スクリーン部の上端部と前記天井部の外周端部との間に設けられたスペーサによって形成され、
前記スペーサは、前記スクリーン部の周方向に間隔をあけて複数配列されているシミュレータドーム。
【請求項2】
前記スペーサが、前記スクリーン部の上端部上に配され、前記スクリーン部の内周面に光を投射するプロジェクタを支持する支持フレーム部によって構成されている請求項1に記載のシミュレータドーム。
【請求項3】
前記スクリーン分割体と前記支持フレーム部とが、介在プレートを介して着脱可能に連結されている請求項2に記載のシミュレータドーム。
【請求項4】
前記天井部から前記支持フレーム部まで延び、前記支持フレーム部を天井部の下方に吊下げる吊り治具を備える請求項2又は請求項3に記載のシミュレータドーム。
【請求項5】
前記天井部から前記支持フレーム部に至る前記吊り治具の長さが、調整可能とされている請求項4に記載のシミュレータドーム。
【請求項6】
前記隙間に配されて、前記スクリーン分割体及び前記天井部に対して着脱可能に連結される支柱を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシミュレータドーム。
【請求項7】
前記隙間を前記スクリーン部及び前記天井部の外側から覆うカバー部を備え、
前記カバー部は、前記スクリーン部及び前記天井部に対して着脱自在に取り付けられる請求項1に記載のシミュレータドーム。
【請求項8】
前記スクリーン部及び前記天井部の少なくとも一方に着脱可能に設けられて、前記スクリーン部及び前記天井部の他方に向けて突出する突起部を備え、
前記突起部の先端が前記スクリーン部及び前記天井部の他方に接触する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のシミュレータドーム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシミュレータドームのうち一つの前記スクリーン分割体を他の前記スクリーン分割体及び前記天井部に対して着脱するために用いるスクリーン把持治具であって、
前記スクリーン分割体を前記シミュレータドームの外側から把持する把持部を備え
前記把持部は、前記隙間に挿入可能とされ、前記スクリーン分割体の上端部に取り付けられる上側取付部を有するスクリーン把持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレータドーム及びスクリーン把持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗物の運転練習や研究開発等においては、シミュレータドームが用いられている。シミュレータドームの内部には、乗物に相当するコクピット等の各種機材が配される。コクピット等の各種機材は、必要に応じてシミュレータの内部に対して出し入れすることがある。
特許文献1には、コクピットの側面周囲に配されたスクリーン及び背面板と、スクリーン及び背面板の上部に設けた天井と、を備えるシミュレータドームが開示されている。特許文献1のシミュレータドームでは、背面板にコクピット等の各種機材を出し入れするための機材搬入用扉を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2781755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のシミュレータドームのようにスクリーン及び背面板によって構成される円環状のスクリーン部は、パネル状に形成された複数の分割体を周方向に配列することで構成されることが多い。しかしながら、特許文献1のシミュレータドームのように、スクリーン部に機材搬入用扉を設けた場合には、機材搬入用扉を設けるための幾つかの分割体の形状が、残りの分割体の形状と異なってしまう。このため、多種類の分割体を製造する必要があり、その結果として、シミュレータドームの製造コストが高くなる、という問題がある。
【0005】
また、スクリーン部に機材搬入用扉を設けた場合には、シミュレータドーム(特にスクリーン部)の形状が複雑となるため、シミュレータドームの製造(例えば複数の分割体の組み立て)が面倒である、という問題もある。
【0006】
また、機材搬入用扉とスクリーン部の他の部分との継ぎ目は、スクリーン部の分割体同士の継ぎ目と比較して目立ちやすい。このため、機材搬入用扉とスクリーン部の他の部分との継ぎ目によってスクリーン部の内面に投影される映像のリアル感が低下する、という問題もある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、製造コストを低く抑えながら、容易に製造でき、さらにスクリーン部に投影される映像のリアル感低下を抑制できるシミュレータドーム及びこれに用いるスクリーン把持治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるシミュレータドームは、平面視円環状に形成されたスクリーン部と、前記スクリーン部の上部に設置された天井部と、を備え、前記スクリーン部が、該スクリーン部の周方向に配列された複数のスクリーン分割体によって構成され、少なくとも一つの前記スクリーン分割体の上端部と前記天井部の外周端部との間に、隙間が形成され、前記隙間が、前記スクリーン部の上端部と前記天井部の外周端部との間に設けられたスペーサによって形成され、前記スペーサは、前記スクリーン部の周方向に間隔をあけて複数配列されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成のシミュレータドームでは、スクリーン分割体と天井部との隙間を利用して、シミュレータドームの外側からスクリーン分割体をシミュレータドームの他の部分(他のスクリーン分割体や天井部)に対して容易に着脱することができる。例えば、シミュレータドームの外側から、着脱用の治具(例えば後述するスクリーン把持治具)を上記隙間に挿入してスクリーン分割体の上端部に取り付けることで、スクリーン分割体をシミュレータドームの外側に引き抜くことができる。すなわち、映像が投影されるスクリーン分割体の内面に触れることなく、スクリーン分割体を簡単にシミュレータドームの他の部分に対して取り外すことができる。
【0011】
上記構成のシミュレータドームによれば、隙間がスクリーン部や天井部とは別個のスペーサによって形成されることで、スクリーン部の上端部や天井部の外周端部の形状を凹凸の無い単純な形状に形成することができる。すなわち、スクリーン部や天井部の形状を単純化でき、スクリーン部(スクリーン分割体)や天井部を安価かつ容易に製造することができる。
【0012】
また、前記シミュレータドームでは、前記スペーサが、前記スクリーン部の上端部上に配され、前記スクリーン部の内周面に光を投射するプロジェクタを支持する支持フレーム部によって構成されてもよい。
【0013】
上記構成のシミュレータドームによれば、隙間を形成するための専用のスペーサを設ける必要がないため、シミュレータドームの構成部品点数を少なく抑えることができる。
【0014】
さらに、前記シミュレータドームでは、前記スクリーン分割体と前記支持フレーム部とが、介在プレートを介して着脱可能に連結されてもよい。
【0015】
上記構成のシミュレータドームでは、スクリーン分割体と支持フレーム部とを連結した状態において、スクリーン分割体と支持フレーム部とが相互に固定される。これにより、シミュレータドームの剛性を高めることができる。
一方、スクリーン分割体と支持フレーム部との連結を解除し、さらに、介在プレートをスクリーン分割体と支持フレーム部との間から取り除いた状態では、スクリーン分割体と支持フレーム部とが間隔をあけて位置する。これにより、スクリーン分割体と支持フレーム部との間に生じる摩擦を軽減したり無くしたりして、スクリーン分割体を容易に着脱することができる。
【0016】
また、前記シミュレータドームは、前記天井部から前記支持フレーム部まで延び、前記支持フレーム部を天井部の下方に吊下げる吊り治具を備えてもよい。
【0017】
上記構成のシミュレータドームによれば、支持フレーム部が吊り治具によって天井部の下方に吊下げられることで、スクリーン分割体にかかる支持フレーム部の荷重を軽減できる。このため、所定のスクリーン分割体の上端部上に支持フレーム部が配されていても、所定のスクリーン分割体をシミュレータドームの他の部分に対して簡単に取り外すことができる。
また、所定のスクリーン分割体を取り外した状態であっても、吊り治具によって支持フレーム部の高さ位置を維持することができる。このため、所定のスクリーン分割体を取り付ける際に、所定のスクリーン分割体が支持フレーム部と干渉することを防止できる。すなわち、所定のスクリーン分割体の取付作業が支持フレーム部によって阻害されることも防止できる。
【0018】
さらに、前記シミュレータドームでは、前記天井部から前記支持フレーム部に至る前記吊り治具の長さが、調整可能とされてもよい。
【0019】
上記構成のシミュレータドームによれば、吊り治具の長さを調整することで、スクリーン分割体にかかる支持フレーム部の荷重を変化させることができる。
例えば所定のスクリーン分割体が他のスクリーン分割体と共にスクリーン部を構成している状態では、所定のスクリーン分割体にかかる支持フレーム部の荷重が大きくなるように吊り治具の長さを調整することで、支持フレーム部を所定のスクリーン分割体により安定的に支持できる。
一方、所定のスクリーン分割体をシミュレータドームの他の部分に対して取り外す際には、所定のスクリーン分割体にかかる支持フレーム部の荷重を小さくするように又は無くすように吊り治具の長さを調整することで、所定のスクリーン分割体を簡単に取り外すことができる。
【0020】
また、前記シミュレータドームは、前記隙間に配されて、前記スクリーン分割体及び前記天井部に対して着脱可能に連結される支柱を備えてもよい。
【0021】
上記構成のシミュレータドームによれば、天井部をスクリーン分割体の上端部上に配された支柱によって支持できるため、シミュレータドームの剛性を高めることができる。また、支柱が着脱可能であることで、隙間を利用したスクリーン分割体の着脱作業が支柱によって阻害されることを防止できる。
【0022】
さらに、前記シミュレータドームは、前記隙間を前記スクリーン部及び前記天井部の外側から覆うカバー部を備え、前記カバー部は、前記スクリーン部及び前記天井部に対して着脱自在に取り付けられてもよい。
【0023】
上記構成のシミュレータドームによれば、隙間をカバー部によって閉じることができるため、シミュレータドームを使用する際に、隙間からシミュレータドームの内部に光や音が入り込むことを防止できる。すなわち、シミュレータドームの遮光性や遮音性を向上できる。
また、カバー部がスクリーン部及び天井部に対して着脱自在とされているため、スクリーン分割体の着脱作業がカバー部によって阻害されることを防止できる。また、カバー部はスクリーン部及び天井部の外側から隙間を覆うため、カバー部の着脱作業をシミュレータドームの外側から簡単に行うことができる。
【0024】
また、前記シミュレータドームは、前記スクリーン部及び前記天井部の少なくとも一方に着脱可能に設けられて、前記スクリーン部及び前記天井部の他方に向けて突出する突起部を備え、前記突起部の先端が前記スクリーン部及び前記天井部の他方に接触してもよい。
【0025】
上記構成のシミュレータドームにおいて、スクリーン部及び天井部の一方に設けられた突起部の先端がスクリーン部及び天井部の他方に接触した状態では、突起部とスクリーン部及び天井部の他方との間に生じる摩擦によって、天井部に対するスクリーン分割体の移動を規制できる。
一方、突起部をスクリーン部及び天井部の一方から取り外した状態では、スクリーン分割体と天井部との接触面積が減る。このため、スクリーン分割体と天井部との間に生じる摩擦をさらに軽減し、スクリーン分割体を容易に着脱することができる。
なお、突起部が天井部に設けられる場合、突起部は例えば着脱されないスクリーン分割体のみに接触するように天井部に設けられてもよい。また、突起部がスクリーン部に設けられる場合、突起部は例えば着脱されないスクリーン分割体のみに設けられてもよい。
【0026】
本発明の一態様によるスクリーン把持治具は、前記シミュレータドームのうち一つの前記スクリーン分割体を他の前記スクリーン分割体及び前記天井部に対して着脱するために用いるスクリーン把持治具であって、前記スクリーン分割体を前記シミュレータドームの外側から把持する把持部を備え、前記把持部は、前記隙間に挿入可能とされ、前記スクリーン分割体の上端部に取り付けられる上側取付部を有することを特徴とする。
【0027】
上記構成のスクリーン把持治具を用いることで、スクリーン分割体をシミュレータドームの他の部分に対して簡単に着脱することができる。また、取り外したスクリーン分割体を上記構成のスクリーン把持治具に保持させることで、スクリーン分割体の内面を保護した状態で、スクリーン分割体を保管することもできる。
また、スクリーン把持治具がスクリーン分割体を把持した状態で移動したり、スクリーン把持治具をクレーンで吊るしたりすることで、スクリーン分割体の運搬性向上を図ることもできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、スクリーン分割体を取り外すことで、コクピット等の各種機材を出し入れする搬入口をシミュレータドームに形成することができる。すなわち、本発明のシミュレータドームでは、従来のようにスクリーン部に機材搬入用扉を設ける必要がない。これにより、製造すべきスクリーン分割体の種類を減らし、シミュレータドームの製造コストを低く抑えることができる。
また、スクリーン部に機材搬入用扉を設けないことで、シミュレータドーム(特にスクリーン部)の形状が単純となるため、シミュレータドームを容易に製造することができる。
また、スクリーン部に機材搬入用扉を設けないことで、スクリーン部に投影される映像のリアル感低下を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係るシミュレータドームのうち一部のカバー部を削除した概略斜視図である。
図2図1のシミュレータドームのうち一部の天井分割体及びカバー部を削除した概略斜視図である。
図3図1,2のシミュレータドームを構成するスクリーン分割体、天井分割体、及び、これらに対応する支持フレーム部の部位を示す斜視図である。
図4図1,2のシミュレータドームのうちプロジェクタ、並びに、一部の天井分割体及びカバー部を削除した要部拡大斜視図である。
図5図1,2のシミュレータドームにおいて、スクリーン分割体と天井分割体との隙間を外側から見た要部拡大図である。
図6図1,2のシミュレータドームにおいて、スクリーン分割体を着脱する方法の一例を示す概略斜視図である。
図7図1,2のシミュレータドームにおいて、スクリーン分割体を着脱する方法の一例を示す概略斜視図である。
図8】本発明の他の実施形態に係るシミュレータドームの要部を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1-7を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、本実施形態に係るシミュレータドーム1は、スクリーン部2と、天井部3と、を備える。また、シミュレータドーム1は、複数のプロジェクタ4と、支持フレーム部5と、を備える。
【0031】
スクリーン部2は、平面視円環状に形成されている。スクリーン部2は、平面視円環の筒状に形成されたスクリーン本体11を有する。スクリーン本体11は、例えば単純な円筒状に形成されてもよいが、本実施形態では中空の楕円体の一部をなすように形成されている。より具体的に説明すれば、本実施形態のスクリーン本体11は、その軸方向(図1,2において上下方向)の中途部が、径方向においてスクリーン本体11の軸方向の両端部よりも外側に膨らむように形成されている。スクリーン部2の下方の開口は、シミュレータドーム1の床面を構成する床板部6によって覆われている。スクリーン本体11の内周面は、プロジェクタ4の光(映像又は画像)が投射される投射領域となっている。
【0032】
スクリーン本体11には、人がシミュレータドーム1に出入りするためのドア12が取り付けられている。本実施形態において、スクリーン本体11のうちドア12を取り付ける部位(ドア12を囲む部位)には、径方向においてスクリーン本体11の外側に突出する突出部13が形成されている。ドア12及び突出部13は、軸方向におけるスクリーン本体11の下端部に寄せて位置している。
突出部13は、径方向において床板部6よりも外側に突出している。突出部13は、径方向において床板部6の外周から突出して突出部13の下側に配される支持部14によって支持される。支持部14は、床板部6の外周に対して着脱自在に固定される。
【0033】
本実施形態のスクリーン部2は、上記したスクリーン本体11の上端部から径方向においてスクリーン本体11の内側に延びる天板部15を、さらに有する。
天板部15は、スクリーン本体11の周方向全体に形成されている。すなわち、天板部15は、平面視円環の板状に形成されている。径方向における天板部15の長さは、任意であってよいが、例えばプロジェクタ4が径方向において天板部15よりも内側に位置できるように設定されてよい。
【0034】
スクリーン部2は、スクリーン部2の周方向に配列された複数のスクリーン分割体20によって構成されている。図2,3に示すように、各スクリーン分割体20は、スクリーン本体11を構成する本体分割部21と、天板部15を構成する天板分割部22と、を備える。
周方向における各スクリーン分割体20の両端には、スクリーン側フランジ部23が形成されている。スクリーン側フランジ部23は、本体分割部21の外面(スクリーン部2の外周面)から突出すると共に本体分割部21の下端部から上端部まで延びている。スクリーン側フランジ部23は、スクリーン分割体20(スクリーン部2)の剛性を向上させる役割を果たす。
【0035】
図2-4に示すように、各スクリーン側フランジ部23の上端部は、天板分割部22の上面から突出すると共に、径方向において天板分割部22の外周縁から内側に延びる天板部上側フランジ部24を含む。スクリーン側フランジ部23の上端部が天板部上側フランジ部24を含むことで、スクリーン側フランジ部23は、スクリーン本体11に対する天板部15の剛性を向上させる役割も果たす。
周方向に隣り合う二つのスクリーン分割体20,20は、互いのスクリーン側フランジ部23,23を、周方向に重ね合せた上でネジ止め等により相互に連結することで、互いに固定される。
【0036】
図1,3に示すように、複数のスクリーン分割体20のうち一つは、前述したドア12が取り付けられるドア付きスクリーン分割体20Aとなっている。ドア付きスクリーン分割体20Aのうちドア12が取り付けられる部位(突出部13)は、周方向においてスクリーン分割体20の両端に形成されたスクリーン側フランジ部23,23の間に位置する。
【0037】
ドア付きスクリーン分割体20Aの突出部13を除き、複数のスクリーン分割体20の各部の形状や寸法(例えばスクリーン分割体20の周方向の寸法、スクリーン側フランジ部23の形状や寸法など)は、例えば互いに異なっていてもよいが、本実施形態では互いに等しい。このため、スクリーン部2においては、複数のスクリーン側フランジ部23が周方向に等間隔で配列されている。
【0038】
図1,2に示すように、天井部3は、上記したスクリーン部2の上方の開口を覆うように、スクリーン部2の上部に設置される。天井部3は、平面視円形状に形成されている。天井部3は、スクリーン部2の径方向における天井部3の中央部が、スクリーン部2の上端部に対向する天井部3の外周端部に対して上方に膨らむように形成されている。すなわち、天井部3は、内側に空間を有し、下方に向けて開口する椀状に形成されている。
さらに、本実施形態の天井部3は、スクリーン本体11と共に中空の楕円体(球体を含む)の一部を構成している。このため、天井部3の内面及び外面は、それぞれスクリーン本体11の内周面及び外周面に滑らかに連なる。
【0039】
径方向における天井部3の中央部(頂部)には、図示例のように天井部3を貫通する孔16が形成されてもよいが、例えば形成されなくてもよい。また、天井部3の孔16には、例えばシミュレータドーム1内の空気を換気する換気装置などが設けられてもよい。
図4に示すように、本実施形態の天井部3には、その外周端部から径方向において天井部3の内側に突出する突出板部17が形成されている。突出板部17は、スクリーン部2の天板部15に対向するように配される。突出板部17は、例えば天井部3の周方向全体に形成されてもよい。本実施形態の突出板部17は、天井部3の周方向に間隔をあけて複数配列されている。
【0040】
天井部3の具体的構成は、任意であってよい。本実施形態の天井部3は、図1,2に示すように、スクリーン部2と同様に、周方向に配列された複数の天井分割体30によって構成されている。
図1,3,4に示すように、周方向における各天井分割体30の両端には、天井側フランジ部31が形成されている。天井側フランジ部31は、天井分割体30(天井部3)の外面から突出すると共に、天井部3の外周端部から中央部まで延びている。周方向に隣り合う二つの天井分割体30,30は、互いの天井側フランジ部31,31を周方向に重ね合せた上でネジ止め等により相互に連結することで、互いに固定される。
前述した天井部3の突出板部17は、周方向における天井分割体30の両端部及び中間部の計三か所に形成されている。
【0041】
複数の天井分割体30の各部の形状や寸法(例えば天井分割体30の周方向の寸法、天井側フランジ部31の形状や寸法など)は、例えば互いに異なっていてもよいが、本実施形態では互いに等しい。このため、天井部3においては、複数の天井側フランジ部31が周方向に等間隔で配列されている。
また、周方向における天井分割体30の外周端部の寸法は、周方向におけるスクリーン分割体20の上端部の寸法と等しい。
【0042】
図2-4に示すように、本実施形態のシミュレータドーム1は、周方向に隣り合う二つの天井分割体30,30の間に着脱可能に配される天井側リブ7を備える。本実施形態において、天井側リブ7は、全ての天井分割体30同士の間に配される。このため、天井側リブ7は周方向に間隔をあけて複数配列されている。
各天井側リブ7は、天井部3の外周端部から中央部まで延びる板材である。天井側リブ7は、天井部3の外周端部から中央部まで延びる円弧状に形成されている。天井側リブ7の長手方向の中途部には、天井部3の内側に突出する拡幅部41が形成されている。
【0043】
図4,5に示すように、本実施形態の天井側リブ7は、周方向に隣り合う二つの天井分割体30,30の天井側フランジ部31,31の間に挟まれる。天井側リブ7は、例えば周方向に隣り合う二つの天井分割体30,30の天井側フランジ部31,31同士の連結状態を解除することで、天井部3に対して着脱することができる。
天井側リブ7の一部は、天井部3の外周端部からスクリーン部2に向けて突出している。すなわち、本実施形態の天井側リブ7は、天井部3の外周端部からスクリーン部2に向けて突出する突起部42を含む。突起部42の先端は、スクリーン部2に接触する。
拡幅部41及び突起部42を含む天井側リブ7は、図示例のように一体に形成されてもよいが、例えば、拡幅部41を含む天井側リブ7の部位と、突起部42を含む天井側リブ7の部位とが、別個に形成されてもよい。
【0044】
前述した天井部3は、例えば周方向におけるスクリーン分割体20及び天井分割体30の位置が互いにずれるように、スクリーン部2の上部に設置されてもよい。図1-5に示すように、本実施形態において、天井部3は、周方向におけるスクリーン分割体20及び天井分割体30の位置が互いに一致するように、スクリーン部2の上部にスクリーン部2の上部に設置される。すなわち、天井部3における複数の天井側フランジ部31は、周方向において複数のスクリーン側フランジ部23に各々対応して位置する。また、天井部3の外周端部からスクリーン部2に向けて突出する突起部42の先端は、スクリーン部2のうちスクリーン側フランジ部23の上端部(天板部上側フランジ部24の先端)に接触する。
【0045】
本実施形態において、突起部42は全ての天井側リブ7に形成されているが、これに限ることは無い。突起部42は、例えば一部の天井側リブ7のみに形成されてもよい。例えば、突起部42は、スクリーン部2のうちシミュレータドーム1に対して着脱されないスクリーン分割体20のみに接触するように、着脱されないスクリーン分割体20に対応する天井側リブ7のみに形成されてよい。言い換えれば、スクリーン部2のうち着脱されるスクリーン分割体20(例えばドア付きスクリーン分割体20A)に対応する天井側リブ7には、突起部42が形成されなくてもよい。
【0046】
図2に示すように、プロジェクタ4は、スクリーン本体11の内周面に光を投射する。スクリーン本体11においてプロジェクタ4の光が投射される投射領域は、例えば周方向におけるスクリーン本体11の内周面の一部であってもよい。本実施形態における投射領域は、周方向におけるスクリーン本体11の内周面全体である。このため、本実施形態のシミュレータドーム1は、複数のプロジェクタ4を備える。
【0047】
支持フレーム部5は、複数のプロジェクタ4を支持する。すなわち、複数のプロジェクタ4は、支持フレーム部5上に配されている。支持フレーム部5は、スクリーン部2の上端部に配される。本実施形態において、支持フレーム部5は、前述したスクリーン部2の天板部15の上面に配される。
【0048】
支持フレーム部5の具体的構成は、任意であってよい。本実施形態の支持フレーム部5は、図2-4に示すように、環状枠部51と、複数の梁部52と、を備える。
環状枠部51は、平面視環状に形成されると共に径方向においてスクリーン部2(特に天板部15)の内側に配され、複数のプロジェクタ4を支持する。環状枠部51は、例えば平面視円形の環状に形成されてもよいが、本実施形態では平面視正多角形の環状に形成されている。
環状枠部51は、例えば径方向に所定の幅寸法を有する環状の板材によって構成されてもよい。本実施形態の環状枠部51は、径寸法が互いに異なる二つの環状枠53,53によって構成されている。プロジェクタ4は、二つの環状枠53,53によって支持されるように環状枠部51上に配される。
【0049】
各梁部52は、環状枠部51からスクリーン部2の上端部まで径方向に延びている。径方向における各梁部52の外側端部は、スクリーン部2の上端部(天板部15の上面)上に配される。複数の梁部52は、環状枠部51の周方向に間隔をあけて配されている。複数の梁部52は、等間隔で配列されている。本実施形態における梁部52の数は、スクリーン分割体20の数と等しい。複数の梁部52は、各スクリーン分割体20の上端部上に一つずつ配されている。
【0050】
本実施形態において、複数の梁部52は、それぞれネジ止め等によって各スクリーン分割体20に着脱可能に連結されている。本実施形態において、各梁部52は、図4,5に示すように、対応するスクリーン分割体20との間に配される介在プレート54を介してスクリーン分割体20に着脱可能に連結されている。具体的に、各梁部52は、周方向においてスクリーン分割体20の一方の天板部上側フランジ部24との間に介在プレート54を挟み込んだ上で、一方の天板部上側フランジ部24に連結されている。
【0051】
図3,4に示すように、本実施形態のシミュレータドーム1は、上記の支持フレーム部5を天井部3の下方に吊下げる吊り治具8をさらに備える。吊り治具8は、天井部3から支持フレーム部5まで延びている。
吊り治具8の長手方向の第一端部は、天井部3に接続されている。吊り治具8の第一端部は、図示例のように天井側リブ7の拡幅部41に接続されてもよいし、例えば天井部3(天井分割体30)の内面から一体に突出する突起に接続されてもよい。
吊り治具8の長手方向の第二端部は、支持フレーム部5に接続されている。吊り治具8の第二端部は、例えば環状枠部51に接続されてもよいが、本実施形態では梁部52に接続されている。吊り治具8は、例えば全ての梁部52に接続されてもよいが、本実施形態では一部の梁部52に接続されている。具体的に、吊り治具8は、周方向におけるドア付きスクリーン分割体20Aの両端に位置する天板部上側フランジ部24,24に連結される二つの梁部52に接続されている。
【0052】
本実施形態では、天井部3から支持フレーム部5に至る吊り治具8の長さが、調整可能とされている。吊り治具8の長さを調整する具体的な構成は任意であってよい。本実施形態の吊り治具8は、天井部3から支持フレーム部5まで延びる棒ねじと、天井部3及び支持フレーム部5の少なくとも一方に取り付けられて棒ねじが螺着する雌ねじ部と、によって構成されている。本実施形態では、棒ねじを回転させることで、吊り治具8の長さを調整することができる。
【0053】
図1-5に示すように、本実施形態のシミュレータドーム1では、スクリーン分割体20の上端部と天井部3の外周端部との間に隙間Gが形成されている。隙間Gは、少なくとも一つのスクリーン分割体20と天井部3との間に形成されていればよい。本実施形態では、隙間Gが、全てのスクリーン分割体20と天井部3(全ての天井分割体30)との間に形成されている。また、本実施形態において、隙間Gは、周方向に間隔をあけて配列された複数のスクリーン側フランジ部23によって複数に分割されている。
【0054】
本実施形態において、隙間Gは、スクリーン部2の上端部と天井部3の外周端部との間に設けられたスペーサによって形成されている。隙間Gを形成するスペーサの具体的な構成は任意であってよい。図5に示すように、本実施形態のスペーサは、前述した支持フレーム部5によって構成されている。具体的に、本実施形態のスペーサは、スクリーン部2の上端部上(天板部15の上面上)に配される支持フレーム部5の梁部52である。
【0055】
梁部52は、スクリーン部2の上端部と天井部3の外周端部との間に挟み込まれている。本実施形態では、スクリーン本体11の軸方向(シミュレータドーム1の高さ方向)における梁部52の高さ寸法が、スクリーン分割体20と天井部3との間の隙間Gの寸法となっている。これにより、天井部3は、スクリーン部2の上端部上に配された梁部52によって支持されている。
また、梁部52の高さ寸法は、天板部上側フランジ部24及び突起部42に作用する天井部3の荷重が小さくなるように又は無くなるように設定されている。梁部52の高さ寸法は、例えば軸方向に配列された天板部上側フランジ部24及び突起部42の高さ寸法を足し合わせた寸法よりも微小に大きく設定されている。
【0056】
梁部52と梁部52の上側に配される天井部3とは、ネジ止め等によって相互に連結される。具体的に、梁部52上には、図3,4に示すように、天井部3の外周端部に形成された突出板部17が重ねて配される。より具体的に、梁部52上には、周方向において天井分割体30の一方の端部に形成された第一突出板部17Aが重ねて配される。これにより、天井部3を梁部52上に安定に配することができる。梁部52は、ネジ止め等によって第一突出板部17Aに連結される。
【0057】
図1,3-5に示すように、本実施形態のシミュレータドーム1は、上記した隙間Gに配されて、スクリーン分割体20及び天井部3に対して着脱可能に連結される支柱9をさらに備える。支柱9は、支持フレーム部5の梁部52と同様に、スクリーン部2の上端部(天板部15の上面)上に配され、天井部3を支持する。
具体的に、支柱9は、図4に示すように、各スクリーン分割体20の上端部とこれに対応する天井分割体30の突出板部17との間に一つずつ挟まれる。すなわち、本実施形態のシミュレータドーム1は複数の支柱9を備える。本実施形態において、各支柱9は、周方向におけるスクリーン分割体20や天井分割体30の中間部に配されている。各支柱9は、天板分割部22の上面のうち周方向の中間領域と、周方向において天井分割体30の中間部に形成された第二突出板部17Bと、の間に挟まれる。
【0058】
図1に示すように、本実施形態のシミュレータドーム1は、上記した隙間Gをスクリーン部2及び天井部3の外側から覆うカバー部10をさらに備える。カバー部10は、スクリーン部2及び天井部3に対してネジ止め等によって着脱自在に取り付けられる。前述したように、本実施形態の隙間Gは複数に分割されている。このため、隙間Gを覆うカバー部10も、周方向に複数に分割して構成されている。
【0059】
次に、本実施形態のシミュレータドーム1において、一部のスクリーン分割体20を、他のスクリーン分割体20や天井部3に対して着脱する方法の一例について説明する。以下では、主に図6,7を参照し、スクリーン把持治具100を用いてドア付きスクリーン分割体20Aを着脱する方法について説明する。
【0060】
はじめに、スクリーン把持治具100の構成について説明する。図6,7に示すように、スクリーン把持治具100は、ドア付きスクリーン分割体20Aをシミュレータドーム1の外側から把持するように構成されている。スクリーン把持治具100は、本体部101と、本体部101に設けられてスクリーン分割体20を把持する把持部102と、を備える。
【0061】
本体部101は、図示例のように複数の棒状部材を組み合わせて構成した枠体であってもよいが、これに限ることは無い。
把持部102には、ドア付きスクリーン分割体20Aを上下方向(軸方向)から把持する第一把持部102Aと、ドア付きスクリーン分割体20Aを左右方向(幅方向)から把持する第二把持部102Bと、がある。
【0062】
第一把持部102Aは、ドア付きスクリーン分割体20Aの下端部を支持する下側支持部103と、ドア付きスクリーン分割体20Aの上端部にネジ止め等によって取り付けられる上側取付部104と、を有する。下側支持部103及び上側取付部104は、いずれも本体部101から離れる方向に延びている。また、下側支持部103及び上側取付部104は、それぞれの長手方向において本体部101に対して移動可能とされている。本実施形態において、本体部101に対して下側支持部103及び上側取付部104を移動させる機構は、棒ねじ105を利用して構成されている。
【0063】
第二把持部102Bは、任意に構成されてよいが、本実施形態では本体部101から離れる方向に延びる複数の帯板106によって構成されている。各帯板106の長手方向の第一端は、ネジ止め等によって本体部101に対して着脱可能に固定される。各帯板106の長手方向の第二端は、ネジ止め等によってドア付きスクリーン分割体20Aの両端に位置するスクリーン側フランジ部23に対して着脱可能に固定される。
【0064】
また、スクリーン把持治具100は、ドア付きスクリーン分割体20Aを把持した状態で移動できるように構成されている。すなわち、スクリーン把持治具100は、本体部101の下端に配される複数の転動部材107も備える。転動部材107は、例えば円盤状の車輪であってもよいが、本実施形態では車輪と比較してスクリーン把持治具100の移動方向が規制されないボールキャスター(ボールベアリング)である。
【0065】
次に、ドア付きスクリーン分割体20Aを取り外す手順の一例について説明する。
ドア付きスクリーン分割体20Aを取り外す場合には、はじめに、図6に示すようにドア付きスクリーン分割体20Aとこれに対応する天井分割体30との隙間Gを覆うカバー部10を取り外す。
次いで、ドア付きスクリーン分割体20Aと天井分割体30との間に配された支柱9(図1参照)を取り外す。また、ドア付きスクリーン分割体20Aの突出部13を支持する支持部14(図1参照)を床板部6から取り外す。
【0066】
その後、スクリーン把持治具100によりドア付きスクリーン分割体20Aを把持する。この際、第一把持部102Aの下側支持部103を突出部13の下側に配し、下側支持部103によって突出部13(ドア付きスクリーン分割体20Aの下端部)を支持する。また、第一把持部102Aの上側取付部104を、ドア付きスクリーン分割体20Aと天井部3との隙間Gに挿入し、ドア付きスクリーン分割体20Aの上端部(天板分割部22)に対してネジ止め等により取り付ける。これにより、ドア付きスクリーン分割体20Aがスクリーン把持治具100によって支持される。
【0067】
その後、ドア付きスクリーン分割体20Aとその両側に隣り合う他のスクリーン分割体20との連結状態、及び、ドア付きスクリーン分割体20Aと支持フレーム部5の梁部52(図5参照)との連結状態をそれぞれ解除する。この際、ドア付きスクリーン分割体20Aと支持フレーム部5の梁部52との間に介在する介在プレート54(図5参照)も取り外す。
【0068】
ドア付きスクリーン分割体20Aと支持フレーム部5との連結状態を解除した後には、例えば、天井部3から支持フレーム部5に至る吊り治具8(図4参照)の長さを短くして、ドア付きスクリーン分割体20Aにかかる支持フレーム部5の荷重を小さく又は無くしてもよい。
また、上記した全ての工程の前後又は途中において、例えば、ドア付きスクリーン分割体20A(特にその天板部上側フランジ部24)に接触する突起部42を含む天井側リブ7(図5参照)を天井部3から取り外してもよい。
【0069】
上記した工程が全て完了した後には、図7に示すように、スクリーン把持治具100により、ドア付きスクリーン分割体20Aを、シミュレータドーム1の他の部分(他のスクリーン分割体20、天井部3、床板部6等)に対し、径方向におけるシミュレータドーム1の外側に移動させる。
【0070】
ここで、ドア付きスクリーン分割体20A上に配される梁部52は、前述したように周方向においてドア付きスクリーン分割体20Aの天板部上側フランジ部24に隣り合せて配されている(図4,5参照)。このため、ドア付きスクリーン分割体20Aは、梁部52の長手方向に平行するように移動させるとよい。この際、ドア付きスクリーン分割体20Aの移動は、例えばスクリーン把持治具100全体の移動によって行われてもよいし、例えば下側支持部103及び上側取付部104を本体部101に対して移動させることで行われてもよい。
【0071】
その後は、例えば、ドア付きスクリーン分割体20Aを、シミュレータドーム1の他の部分から完全に離れた位置まで移動させることで、ドア付きスクリーン分割体20Aの取り外し作業が完了してもよい。
本実施形態では、ドア付きスクリーン分割体20Aのスクリーン側フランジ部23が、径方向において隣り合う他のスクリーン分割体20のスクリーン側フランジ部23よりも外側に位置した状態で、ドア付きスクリーン分割体20Aの移動を一旦停止する。その上で、第二把持部102Bによりドア付きスクリーン分割体20Aを左右方向(幅方向)から把持する。これにより、ドア付きスクリーン分割体20Aを安定した状態で保持することができる。その後、ドア付きスクリーン分割体20Aを、シミュレータドーム1の他の部分から完全に離れた位置まで移動させることで、ドア付きスクリーン分割体20Aの取り外し作業が完了する。
【0072】
ドア付きスクリーン分割体20Aを取り外した後には、例えば、ドア付きスクリーン分割体20Aに隣り合う他のスクリーン分割体20を、ドア付きスクリーン分割体20Aの場合と同様に、スクリーン把持治具100に把持させて取り外してもよい。この際、他のスクリーン分割体20には、ドア付きスクリーン分割体20Aの突出部13に対応する構成が無いため、他のスクリーン分割体20を第一把持部102Aで把持することは難しい。ただし、他のスクリーン分割体20を周方向に移動させる余地があるため、他のスクリーン分割体20をスクリーン把持治具100の第二把持部102Bのみで把持させて取り外すことができる。
取り外されたドア付きスクリーン分割体20Aや他のスクリーン分割体20は、スクリーン把持治具100に把持された状態で保管することができる。
【0073】
ドア付きスクリーン分割体20Aや他のスクリーン分割体20を取り付ける作業は、上記した取り外し作業の工程を逆順で実施すればよい。
【0074】
以上説明したように、本実施形態のシミュレータドーム1では、スクリーン分割体20の上端部と天井部3の外周端部との間に隙間Gが形成されている。このため、この隙間Gを利用して、シミュレータドーム1の外側からスクリーン分割体20をシミュレータドーム1の他の部分(他のスクリーン分割体20、天井部3、床板部6等)に対して容易に着脱することができる。すなわち、映像が投影されるスクリーン分割体20の内面(スクリーン部2の内周面)に触れることなく、スクリーン分割体20を簡単にシミュレータドーム1の他の部分に対して取り外すことができる。
なお、隙間Gを利用してスクリーン分割体20を着脱する方法は、上記したスクリーン把持治具100を用いた方法に限らず、例えばクレーン等の別の治具を用いた方法などであってもよい。クレーンを用いる場合には、例えば、クレーンの吊り具をスクリーン分割体20と天井部3との隙間Gに挿入してスクリーン分割体20の上端部に引っ掛けることで、スクリーン分割体20を着脱できる。
【0075】
そして、スクリーン分割体20を取り外すことで、コクピット等の各種機材を出し入れする搬入口をシミュレータドーム1に形成することができる。すなわち、本実施形態のシミュレータドーム1では、従来のようにスクリーン部2に機材搬入用扉を設ける必要がない。これにより、製造すべきスクリーン分割体20の種類を減らし、シミュレータドーム1の製造コストを低く抑えることができる。
【0076】
また、スクリーン部2に機材搬入用扉を設けないことで、シミュレータドーム1(特にスクリーン部2)の形状が単純となるため、シミュレータドーム1を容易に製造することができる。
また、スクリーン部2に機材搬入用扉を設けないことで、スクリーン部2に投影される映像のリアル感低下を抑制することもできる。
【0077】
また、スクリーン分割体20と天井部3との間に隙間Gが形成されていることで、スクリーン分割体20と天井部3との接触面積を減らすことができる。これにより、スクリーン分割体20と天井部3との間に生じる摩擦を軽減して、スクリーン分割体20を容易に着脱することができる。
【0078】
また、本実施形態のシミュレータドーム1では、スクリーン分割体20と天井部3と隙間Gが、スクリーン部2と天井部3との間に設けられたスペーサによって形成されている。この場合、スクリーン部2の上端部や天井部3の外周端部に、隙間G用の凹凸形状を形成する必要がなくなる。このため、スクリーン部2の上端部や天井部3の外周端部の形状を凹凸の無い単純な形状に形成することができる。すなわち、スクリーン部2や天井部3の形状を単純化でき、スクリーン部2(スクリーン分割体20)や天井部3(天井分割体30)を安価かつ容易に製造することができる。
【0079】
また、本実施形態のシミュレータドーム1では、スクリーン部2と天井部3との間に設けられたスペーサが、スクリーン部2の上端部上に配され、プロジェクタ4を支持する支持フレーム部5によって構成されている。この場合、隙間Gを形成するための専用のスペーサを設ける必要がないため、シミュレータドーム1の構成部品点数を少なく抑えることができる。
【0080】
また、本実施形態のシミュレータドーム1では、スクリーン分割体20と支持フレーム部5とが介在プレート54を介して着脱可能に連結されている。
このため、スクリーン分割体20と支持フレーム部5とを連結した状態では、スクリーン分割体20と支持フレーム部5とが相互に固定される。これにより、シミュレータドーム1の剛性を高めることができる。
一方、スクリーン分割体20と支持フレーム部5との連結を解除し、さらに、介在プレート54をスクリーン分割体20と支持フレーム部5との間から取り除いた状態では、スクリーン分割体20と支持フレーム部5とが間隔をあけて位置する。これにより、スクリーン分割体20と支持フレーム部5との間に生じる摩擦を軽減したり無くしたりして、スクリーン分割体20を容易に着脱することができる。
【0081】
また、本実施形態のシミュレータドーム1では、支持フレーム部5が吊り治具8によって天井部3の下方に吊下げられている。このため、スクリーン分割体20にかかる支持フレーム部5の荷重を軽減できる。これにより、所定のスクリーン分割体20の上端部上に支持フレーム部5が配されていても、所定のスクリーン分割体20をシミュレータドーム1の他の部分に対して簡単に取り外すことができる。
また、所定のスクリーン分割体20を取り外した状態であっても、吊り治具8によって支持フレーム部5の高さ位置を維持することができる。このため、所定のスクリーン分割体20を取り付ける際に、所定のスクリーン分割体20が支持フレーム部5と干渉することを防止できる。すなわち、所定のスクリーン分割体20の取付作業が支持フレーム部5によって阻害されることも防止できる。
【0082】
さらに、本実施形態のシミュレータドーム1では、天井部3から支持フレーム部5に至る吊り治具8の長さが調整可能とされている。このため、スクリーン分割体20にかかる支持フレーム部5の荷重を変化させることができる。
例えば所定のスクリーン分割体20が他のスクリーン分割体20と共にスクリーン部2を構成している状態では、所定のスクリーン分割体20にかかる支持フレーム部5の荷重が大きくなるように吊り治具8の長さを調整することで、支持フレーム部5を所定のスクリーン分割体20により安定的に支持できる。
一方、所定のスクリーン分割体20をシミュレータドーム1の他の部分に対して取り外す際には、所定のスクリーン分割体20にかかる支持フレーム部5の荷重を小さくするように又は無くすように吊り治具8の長さを調整することで、所定のスクリーン分割体20を簡単に取り外すことができる。
【0083】
また、本実施形態のシミュレータドーム1では、支柱9がスクリーン分割体20と天井部3との間の隙間Gに配され、スクリーン分割体20及び天井部3に対して着脱可能に連結されている。このため、周方向における隙間Gの寸法が大きくても、天井部3を支柱9によって支持することで、シミュレータドーム1の剛性を高めることができる。
また、支柱9が着脱可能であることで、隙間Gを利用したスクリーン分割体20の着脱作業が支柱9によって阻害されることも防止できる。
【0084】
また、本実施形態のシミュレータドーム1では、スクリーン分割体20と天井部3との間の隙間Gがカバー部10によって覆われる。このため、シミュレータドーム1を使用する際に隙間Gからシミュレータドーム1の内部に光や音が入り込むことを防止できる。すなわち、シミュレータドーム1の遮光性や遮音性を向上できる。
また、カバー部10がスクリーン部2及び天井部3に対して着脱自在とされているため、スクリーン分割体20の着脱作業がカバー部10によって阻害されることを防止できる。また、カバー部10はスクリーン部2及び天井部3の外側から隙間Gを覆うため、カバー部10の着脱作業をシミュレータドーム1の外側から簡単に行うことができる。
【0085】
また、本実施形態のシミュレータドーム1では、天井部3の外周端部からスクリーン部2に向けて突出してスクリーン部2に接触する突起部42が、天井部3に対して着脱可能に設けられている。このため、突起部42が天井部3に取り付けられてスクリーン分割体20に接触した状態では、突起部42とスクリーン分割体20との間に生じる摩擦によって、天井部3に対するスクリーン分割体20の移動を規制できる。一方、突起部42を天井部3から取り外した状態では、スクリーン分割体20と天井部3(天井分割体30)との接触面積が減る。このため、スクリーン分割体20と天井部3との間に生じる摩擦をさらに軽減し、スクリーン分割体20を容易に着脱することができる。
【0086】
また、本実施形態のシミュレータドーム1において、天井部3から突出する突起部42が、スクリーン部2のうち着脱されないスクリーン分割体20のみに接触する場合には、スクリーン分割体20(例えばドア付きスクリーン分割体20A)の着脱時に突起部42(又はこれを含む天井側リブ7)を天井部3から取り外す必要が無くなる。これにより、スクリーン分割体20をより少ない工程で着脱することが可能となる。
【0087】
また、本実施形態のシミュレータドーム1では、支持フレーム部5が、スクリーン分割体20の天板部上側フランジ部24に対して着脱可能に連結されている。天板部上側フランジ部24を含むスクリーン側フランジ部23は、スクリーン分割体20の他の部分と比較して強度が高い。このため、支持フレーム部5を介して天井部3の荷重を安定してスクリーン分割体20によって支えることができる。
【0088】
また、本実施形態では、一つのスクリーン分割体20を把持するスクリーン把持治具100を用いて、スクリーン分割体20をシミュレータドーム1の他の部分に対して簡単に着脱することができる。また、取り外したスクリーン分割体20をスクリーン把持治具100に保持させることで、スクリーン分割体20の内面を保護した状態で、スクリーン分割体20を保管することもできる。
さらに、本実施形態のスクリーン把持治具100によれば、スクリーン分割体20を把持した状態で転動部材107を利用して移動したり、スクリーン把持治具100をクレーンで吊るしたりすることで、スクリーン分割体20の運搬性向上を図ることもできる。
【0089】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0090】
本発明のシミュレータドームでは、例えば図8に示すように、支持フレーム部5の梁部52が環状枠部51や吊り治具8に対して径方向(梁部52の長手方向)に移動可能に取り付けられてよい。図示例では、梁部52に形成されて梁部52の長手方向に延びる溝状のレール部54に、環状枠部51や吊り治具8の第二端部に設けられた係止部55,56を係止させている。係止部55,56は、例えば環状枠部51や吊り治具8に一体に形成されてもよいが、図示例では梁部52を環状枠部51や吊り治具8に取り付けるための取付金具57,58によって構成されている。取付金具57,58のボルト59を締めることで梁部52を環状枠部51や吊り治具8に対して移動不能に固定できる。また、取付金具57,58のボルト59を緩めることで、梁部52を環状枠部51や吊り治具8に対して径方向(梁部52の長手方向)に移動させることができる。複数の梁部52のうち環状枠部51や吊り治具8に対して移動可能な梁部52の数は、任意であってよい。
【0091】
このような構成のシミュレータドームでは、梁部52を環状枠部51や吊り治具8に対して径方向に移動させることで、梁部52を径方向において天板部上側フランジ部24よりも内側に位置させることができる。この状態では、梁部52が周方向において天板部上側フランジ部24と干渉しない位置に配される。このため、所定のスクリーン分割体20(図8においてドア付きスクリーン分割体20A)を径方向に移動させて着脱する際に、スクリーン分割体20を梁部52の長手方向に平行に移動させる必要が無くなる。すなわち、スクリーン分割体20の移動方向の制限が緩和され、所定のスクリーン分割体20をシミュレータドームの他の部分に対して容易に着脱することができる。
【0092】
本発明のシミュレータドームにおいて、径方向においてスクリーン本体の外側に突出する突出部は、ドア付きスクリーン分割体に形成されることに限らず、他のスクリーン分割体に形成されてもよい。
【0093】
本発明のシミュレータドームにおいて、天井部に着脱可能に設けられてスクリーン部に向けて突出する突起部は、天井側リブによって構成されることに限らず、例えば天井部の外周端部にネジ止め等によって着脱可能に設けられてもよい。
また、本発明のシミュレータドームにおいて、上記の突起部は、例えばスクリーン部に着脱可能に設けられて、天井部に向けて突出すると共に天井部の外周端部に接触してもよい。この場合、突起部は、例えば天井側リブと同様に、周方向に隣り合う二つのスクリーン分割体(例えばスクリーン側フランジ部)の間に着脱可能に配されるスクリーン側リブによって構成されてもよい。また、突起部は、例えば着脱されないスクリーン分割体のみに設けられてもよい。
【0094】
本発明のシミュレータドームにおいて、介在プレートは、例えば梁部とスクリーン分割体のうち天板分割部の上面との間に配されてもよい。この場合でも、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0095】
本発明のシミュレータドームにおいて、支持フレーム部の各梁部は、例えば周方向において各スクリーン分割体の天板部上側フランジ部と間隔をあけた位置において、各スクリーン分割体の天板分割部に連結されてもよい。また、各梁部は、例えば径方向において天板部上側フランジ部の内側に配された上で、天板部上側フランジ部や天板部に連結されてもよい。
このような構成では、梁部が周方向において天板部上側フランジ部と干渉しない位置に配されることになる。このため、所定のスクリーン分割体を径方向に移動させて着脱する際に、梁部とスクリーン分割体の天板部上側フランジ部とが干渉することを抑制又は防止できる。したがって、所定のスクリーン分割体をシミュレータドームの他の部分に対して容易に着脱することができる。
【0096】
本発明のシミュレータドームにおいて、スクリーン分割体と天井部との間に形成される隙間は、スペーサによって形成されることに限らない。隙間は、例えば、周方向における天井部の外周端部の一部がスクリーン部に支持され、かつ、天井部の外周端部の残部がスクリーン部の上端部と間隔をあけて位置することで形成されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 シミュレータドーム
2 スクリーン部
3 天井部
4 プロジェクタ
5 支持フレーム部
7 天井側リブ
8 吊り治具
9 支柱
10 カバー部
11 スクリーン本体
12 ドア
13 突出部
15 天板部
20 スクリーン分割体
20A ドア付きスクリーン分割体
23 スクリーン側フランジ部
24 天板部上側フランジ部
31 天井側フランジ部
42 突起部
51 環状枠部
52 梁部
54 介在プレート
G 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8