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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】含油排水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20220330BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20220330BHJP
   B01D 61/22 20060101ALI20220330BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220330BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20220330BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20220330BHJP
   B01D 61/20 20060101ALI20220330BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C02F1/44 F
B01D61/14 500
B01D61/22
B01D61/58
B01D65/02
B01D61/02 500
B01D61/20
G01N21/59 K
G01N21/59 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017247813
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019111503
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000101042
【氏名又は名称】アクアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(74)【復代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】特許業務法人 日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 真治
(72)【発明者】
【氏名】坂井 光宏
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-279769(JP,A)
【文献】特開平9-225204(JP,A)
【文献】特開2009-233559(JP,A)
【文献】特開2006-17523(JP,A)
【文献】特開2010-58019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
G01N 21/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化油分含有の排水を油水分離性のUF膜を備えたUF膜ろ過処理装置に通水してUF膜ろ過処理を行い、より油分の少ないUF膜ろ過処理水を得る方法において、
該UF膜ろ過処理水の出口配管に油分の流出を検知する濁り検知機構としてサイトグラスと非接触式の光電センサを組み合わせて設置し、
該濁り検知機構で濁りを検知した時点で前記UF膜ろ過処理装置を停止し、
前記UF膜ろ過処理装置内の濃縮油水を排出し、
UF膜を洗浄または交換した後、前記UF膜ろ過処理装置への通水を再開・制御する含油排水の処理方法であって、
前記サイトグラスが、分岐ねじ栓を備えたサイトグラスであることを特徴とする含油排水の処理方法。
【請求項2】
前記濁りの検知が、前記光電センサによる前記UF膜ろ過処理水の連続測定で濁りの測定値またはレベルが、予め決められた基準値またはレベルより低下した場合に、前記サイトグラスを通して目視により濁りを確認することである請求項1に記載の含油排水の処理方法。
【請求項3】
前記光電センサが、レーザ光によるセンサであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の含油排水の処理方法。
【請求項4】
前記分岐ねじ栓は、分岐ねじ栓を備えたサイトグラスのサイトグラス本体から分岐した分岐管と、該分岐管の先端部の開口を閉塞するねじ栓とからなり、
該ねじ栓が前記開口に脱着自在に設けられており、かつ、該ねじ栓を取り外した前記開口より前記サイトグラス窓部の前記サイトグラス本体内側の洗浄が可能としたことを特徴とする請求項1 から請求項3のいずれか一項に記載の含油排水の処理方法。
【請求項5】
前記UF膜ろ過処理水を更にRO膜処理することにより高度処理水を得る方法であって、
前記濁り検知機構が濁りを検知した時点で該RO膜処理装置への前記UF膜ろ過処理水の供給停止及び前記UF膜ろ過処理装置の停止を行い、
前記UF膜ろ過処理装置内の濃縮油水を排出し、UF膜を洗浄または交換した後、通水を再開・制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の含油排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業排水、生活排水などの油分を含有する含油排水を静置または凝集剤により油層、水層、汚泥層に凝集分離し、次いで水層水に含まれる乳化油を油水分離装置で処理して膜ろ過処理水を得る含油排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械工業や金属工業等における切削、研削、鋳造、圧延、研磨等の金属加工で使用する切削油、機械油、潤滑油等を含有する排水、化学プラントからの可塑剤などの油状化成品を含有する排水、及び植物油、動物油等を含有する食品工業の排水等の工業排水、および生活排水などの排水は、河川、海に排出可能な状態まで処理するか、再利用可能な状態まで処理する必要がある。
【0003】
従来、乳化油等の乳化有機物含有排水は、蒸発、沈殿等の方法の他に、限外濾過膜等を用いた膜分離装置により処理する方法が用いられている(特許文献1、2、3)。
【0004】
しかしながら、産業排水、生活排水などの油分を含有する排水の膜処理工程では、時間経過とともに膜の劣化や原排水中にある微細金属片等によって膜破損が発生して原水の一部が処理水側に漏れ出すという問題や、工場の製造品種の変動で排液の油分乳化状態や油分含有量が変動し、油分の一部が処理水側に漏れ出すという問題がある。
【0005】
膜処理時の膜破損を検出する方法として、特許文献4には、サイトグラス装置内に流れこむ液体を仕切り壁に衝突させて流路を変更することにより、検出長を長くして異物の混入による液体の混濁の視認性を改良しながら、サイトグラス装置のサイトグラス窓部と流れる液体を衝突させてサイトグラス窓部の汚れを防止する技術が開示されており、視認が容易ではない軽度の混濁の場合には流体の光透過量を検出するセンサにより混濁を検出することが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献4には膜分離装置からのろ過水の監視に関する記載はなく、特に含油排水処理における膜欠損等によるろ過水への排水漏れ監視においてはサイトグラス窓部の汚れ防止が不十分であり、サイトグラス装置が複雑なこともあってサイトグラス窓部を分解して清掃するのに手間がかかる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-38004号公報
【文献】特開昭60-68005号公報
【文献】特開2008-183470号公報
【文献】特開2006-17523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、乳化油分を含有する排水のUF膜ろ過処理における膜異常等による油分の流出を簡易な濁り検知機構により検出し、濁り異常時に迅速に対応することで規定外の排水の流出や後処理工程でのトラブルを防止してUF膜ろ過処理水を外部に排水可能な状態や再利用可能な状態に維持したり、更にUF膜ろ過処理水をRO膜(逆浸透膜)により再処理可能な状態に維持したりするようにろ過処理を制御する含油排水の処理方法であり、濁り検知機構の洗浄が容易な含油排水の処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の含油排水の処理方法は、次の特徴を有するものである。
【0010】
(1)
乳化油分含有の排水を油水分離性のUF膜を備えたUF膜ろ過処理装置に通水してUF膜ろ過処理を行い、より油分の少ないUF膜ろ過処理水を得る方法において、
該UF膜ろ過処理水の出口配管に油分の流出を検知する濁り検知機構としてサイトグラスと非接触式の光電センサを組み合わせて設置し、
該濁り検知機構で濁りを検知した時点で前記UF膜ろ過処理装置を停止し、
前記UF膜ろ過処理装置内の濃縮油水を排出し、
UF膜を洗浄または交換した後、前記UF膜ろ過処理装置への通水を再開・制御する含油排水の処理方法であって、
前記サイトグラスが、分岐ねじ栓を備えたサイトグラスであることを特徴とする含油排水の処理方法。
【0012】
(2)
(1)において、濁り検知機構による濁りの検知が、光電センサによるUF膜ろ過処理水の連続測定で濁りの測定値またはレベルが予め決められた基準値またはレベルより低下した場合に、サイトグラスから目視により濁りを確認することである含油排水の処理方法。
【0013】
(3)
(1)または(2)において、濁り検知機構で用いる光電センサが、レーザ光によるセンサである含油排水の処理方法。
【0014】
(4)
(1)から(3)のいずれかにおいて、前記分岐ねじ栓は、分岐ねじ栓を備えたサイトグラス本体から分岐した分岐管と、該分岐管の先端部の開口を閉塞するねじ栓とからなり、該ねじ栓が前記開口に脱着自在に設けられており、かつ、ねじ栓を取り外した開口より前記サイトグラス窓部本体内側の洗浄が可能とした含油排水の処理方法。
【0015】
(5)
(1)から(4)のいずれかにおいて、UF膜ろ過処理水を更にRO膜処理することにより高度処理水を得る方法であって、
前記濁り検知機構が濁りを検知した時点でRO膜処理装置へのUF膜ろ過処理水の供給停止と、UF膜ろ過処理装置の停止を行い、UF膜ろ過処理装置内の濃縮油水を排出し、UF膜を洗浄または交換した後、通水を再開・制御する含油排水の処理方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の含油排水の処理方法によれば、産業排水、生活排水などの油分を含有する排水、特に金属加工系の金型離型剤や鉄系切削油等の乳化した油分含有排水を、油水分離性を有するUF膜に通水し、より油分の少ないUF膜ろ過処理水を得る方法において、UF膜ろ過処理水の出口配管に膜の破損を感知する濁り検知機構として特に分岐ねじ栓を備えたサイトグラスと光電センサを組み合わせて設置・制御することで、膜の劣化や破損、排水性状変化に起因する膜の排水漏れを早期に発見できるほか、サイトグラス窓部内面の汚れを簡単に清掃できる。
その結果、UF膜ろ過処理水の異常検出時には警報を発報し、設備を一時停止するなどによって、UF膜ろ過処理水を外部へ排出する場合の水質低下防止や内部で再利用する場合の水質安定化、後段でRO膜により再処理する場合の安定処理が可能となる。
【0017】
本発明で、レーザ光による光電センサを用いることにより膜破損等による処理水の汚れを精度よく検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の含油排水の処理方法を説明する模式図である。
図2】本発明の後段でのRO処理を含む含油排水の処理方法を説明する模式図である。
図3】本発明で使用する分岐ねじ栓を備えたサイトグラスと光電センサが組み合わせられた濁り検知機構の斜視図(a)、B-B断面図(b)、C-C断面図(c)、および左側面図(d)である。
図4】本発明の実施例である経時による濁り計測値の変化を表すグラフである。
図5】本発明の実施例である経時による濁り計測値の変化を表すグラフである。
図6】本発明の実施である経時による濁り計測値の変化を表すグラフである。
図7】本発明で使用する簡易型サイトグラスの斜視図(a)、およびD-D断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、乳化油分を含む排水を油水分離性のUF膜を備えたUFろ過膜装置に通水し、得られるUF膜ろ過処理水の濁りを濁り検知機構により計測しながら乳化油分を分離処理し、濁りを検知した時点で排水のUF膜ろ過処理装置への通水を停止し、UF膜ろ過処理装置の洗浄や膜交換を行う含油排水の処理方法である。
この含油排水の処理方法によってUF膜ろ過処理水の水質を外部に排水可能な状態に維持したり再利用可能な状態に維持したりすることや、UF膜ろ過処理水を更にRO膜等により再処理する場合でも各々の処理装置の安定操業が可能となる。
【0020】
本発明で、濁り検知機構は、基本的にはサイトグラスと測定対象に接触しない非接触式の光電センサの組み合わせであり、好ましくは分岐ねじ栓を備えたサイトグラスと非接触式の光電センサの組み合わせで構成される。
UF膜ろ過処理水が光電センサによる連続測定で濁りの数値またはレベルが予め決められた基準値またはレベルを越えた場合に、目視により濁りを確認した後で警報等を発報して設備を一時停止し、UF膜ろ過装置の洗浄や膜交換した後で設備を稼働する。
そのように稼働制御することで、外部への排出水の漏洩による水質低下防止、再利用水の水質安定化や後段のRO膜処理設備等の安定処理が可能となる。
【0021】
本発明で使用するサイトグラスは、各種産業の製造工程や水処理工程等で使用される配管内を流れる流体の有無や流体の混合状態等の変化を確認したり、流量変化を目視確認したりするための透明のガラス製継手で使用されるものと同様のものが使用可能である。
例えば、図7のように配管内の流体の流れ方向に連結するサイトグラス本体4と、その流れ方向に対して直行する方向から監視する構造のサイトグラス窓部3を備える簡易型サイトグラス7が、サイトグラス窓部3の汚れ洗浄が容易であるので好ましい。
さらには、図3のように、サイトグラス本体4に分岐ねじ栓2及びサイトグラス窓部3を備えたサイトグラス1aにおいて、サイトグラス本体4から分岐した分岐管2aの先端の開口を閉塞するためのねじ栓2bが着脱自在に設けられている構造が好ましい。その構造であれば、サイトグラス窓部3の内面に汚れが発生した場合には、ねじ栓2bを取り外して開口から掃除具を差し込んでサイトグラス窓部3の内部汚れを落とすことが容易となる。さらに、サイトグラス窓部3に向け光電センサ(光電センサ投光部1b、及び光電センサ受光部1c)を、サイトグラス本体4に連設する枠4aなどに固定してサイトグラス窓部3に非接触に備えることで、本願発明の濁り検知機構1となる。
【0022】
図1に、本発明に係る含油排水の処理方法についての模式図を示す。原水槽の乳化油分含有排水(原水)を濃縮循環槽に送水して特定量を蓄えた後、油水分離性のチューブラー型UF膜ろ過装置(油水分離膜)で処理して濃縮油水と処理水に分離し、濃縮油水は濃縮循環槽に返送し、処理水は濁り検知機構により濁りを連続測定しながら下水に放水するか再利用するため後段設備へ送られる。
乳化油含有排水を濃縮循環槽とチューブラー型UF膜ろ過装置との間で循環させることで濃縮油水に含まれる油分が特定濃度以上になったら濃縮油水を排出して濃縮循環槽を空にし、再度乳化油含有排水を濃縮循環槽に注入して特定量を蓄えた後、チューブラー型UF膜ろ過装置による循環処理を再開する。
【0023】
本発明で用いる油水分離性を有するUF膜ろ過装置には、UF膜(限外ろ過膜)が用いられる。例えば、チューブラー型UF膜ろ過の場合、水溶性の含油排水を、多孔性ファイバーの内面に密着されたUF膜に通過させることで、乳化された油や、固形物、金属粉、廃油分などはチューブ内に残り、濃縮循環槽に戻される。
被処理水はUF膜ろ過処理装置から水が透過するにしたがって濃縮される。基本的にはUF膜ろ過処理装置から排出される処理水はオイルフリーで、固形分は含んでいない。
【0024】
本発明で用いるRO膜(逆浸透膜)は、NF膜も含まれ、水を通しイオンや塩類など水以外の不純物は透過しない性質を持つ膜のことで、孔の大きさは概ね2ナノメートル以下でUF膜よりも小さいものが使用可能である。イオンや塩類などの不純物を含んだ排水等の処理用水側を加圧することによりRO膜を通過して不純物を含まない処理水が得られる。
【0025】
本発明の好ましい光電センサ(光電センサ投光部及び光電センサ受光部)は、分岐ねじ栓を備えたサイトグラスと一体構造となって濁り検知機構を構成する。それにより光電センサを取り外さずに、サイトグラスの分岐管の先端部のねじ栓を取り外すことで開口から容易にサイトグラス窓部内部面の洗浄を行うことが可能となる。
単に光電センサと従来の分岐ねじ栓が無いサイトグラスを一体に組み合せた場合では配管からサイトグラス窓部を取り外して洗浄を行う必要があるため、図7のような内部構造が簡単である液体の流れを直角方向から監視する一般的な簡易型サイトグラス7が好ましく、光電センサも容易に取り外せる構造が好ましい。
【0026】
本発明で用いる光電センサは、濁りを検知するセンサであり、好ましくはレーザ光を用いることで指向性が高く、可干渉性が良好となるので濁りの発生を検知する精度が向上する。
一般的には、濁りが大きい場合では透過光検出センサが用いられ、濁りが小さい場合では散乱光検出センサが用いられるが、本発明におけるろ過膜の破損等による排水の漏れを測定する場合には一般的には濁りが大きくなるので、装置が小さく簡便な透過光検出センサが好ましく用いられる。
例えば、本発明の実施例等における濁りの監視計測値は透過光検出光電センサによる理想状態における透明液体の光透過量に対する監視対象液体の実測光透過量の割合を数値化したものであって、装置等による透過光減衰要因により監視対象液体が透明な液体の場合は2500前後の数値となる。しかし、処理水の特性変化による漏れが発生した場合には1000程度以下まで低下し、ろ過膜の破損により排液漏れが発生した場合には500程度以下まで低下する。
【実施例
【0027】
(実施例1)
機械部品加工工場からの切削油を含有する排水(COD1000mg/L、n-ヘキサン抽出物量100mg/L)にポリアクリル酸(質量平均分子量2.5万)凝集剤を200mg/Lとなるように添加処理して油層、水層、汚泥層に凝集分離した。
得られた水層水を硫酸溶液でpH4.5に調整し、ダイセン・メンブレン・システムズ社製のチューブラーモジュール(MH-25)を用いたチューブラー型UF膜ろ過処理装置により高濃度乳化油含有水(濃縮油水)と処理水に分離した。
処理水の出口には分岐ねじ栓を備えたサイトグラスとレーザ式光電センサが組み合わされた濁り検知機構が設置されており、光電センサと目視により処理水に濁りを検知したため、UF膜ろ過処理装置を停機してUF膜の洗浄を行い、UF膜の破損が確認されたために膜の交換を行った。
UF膜の洗浄作業と併せて、サイトグラスの分岐部先端のねじ栓を取り外し、開口から洗浄具を差し込んでサイトグラス窓部を洗浄した。
UF膜の交換とサイトグラス窓部の洗浄が完了した後UF膜ろ過処理装置を再稼働した。膜破損発生から停機までに乳化油含有の処理水は殆ど排出されず、停機時間は約1時間であった。図4に経時による濁り計測値の変化を表すグラフを示す。
【0028】
(実施例2)
実施例2では、実施例1におけるチューブラー型UF膜ろ過処理装置により得られた処理水をさらにRO膜分離装置(ダウケミカル社製BW30XFR400)で処理して乳化油含有層と高度処理水に分離する工程を有している。
そして、チューブラー型UF膜ろ過処理装置の処理水出口に設置された分岐ねじ栓を備えたサイトグラスとレーザ式光電センサが組み合わされた濁り検知機構が光電センサと目視により処理水に濁りを検知したためRO膜分離装置とチューブラー型UF膜ろ過処理装置を停機して、チューブラー型UF膜の洗浄を行った。濁りの原因が凝集分離の水層水の過濃縮であることが確認されたためにUF膜を交換しなかった。
UF膜の洗浄作業と併せて、サイトグラスの分岐管先端のねじ栓を取り外し、開口から洗浄具を差し込んでサイトグラス窓部内側を洗浄した。UF膜の洗浄と濁り原因の確認、及びサイトグラス窓部の洗浄が完了した後UF膜ろ過装置を再稼働し、RO膜分離装置を再稼働した。
排水漏れから停機までに乳化油含有の処理水は殆ど排出されず、RO膜分離装置は膜に異常はなく正常に再稼働した。停機時間は約1時間であった。図5に経時による濁り計測値の変化を表すグラフを示す。
【0029】
(実施例3)
実施例1で濁り検知機構として分岐ねじ栓を備えたサイトグラスに換えて一般的な簡易型サイトグラスとレーザ式光電センサを用いてUF膜ろ過処理装置を稼動させた。
光電センサにより濁りを検知し、目視で濁りを確認したのでUF膜ろ過処理装置を停機してUF膜を確認すると膜破損が見出されたので膜を交換して再稼働したが、サイトグラス窓部の汚れにより濁り計測値のベースデータが低下した。UF膜ろ過処理装置を停機してサイトグラスを分解してサイトグラス窓部の洗浄を行った後再稼働した。
膜破損から停機までに乳化油含有の処理水は殆ど排出されず、停機時間は約12時間となった。図6に経時による濁り計測値の変化を表すグラフを示す。
【0030】
(比較例1)
実施例3で光電センサを用いずに一般的な流れ直交監視型の簡易サイトグラスを用いて6時間毎にUF膜ろ過処理水の濁りを目視確認しながらUF膜ろ過処理装置を稼動させた。目視で濁りを確認したのでUF膜ろ過処理装置を停機してUF膜を確認すると膜破損が見出された。そしてサイトグラス窓部の汚れが酷いのでサイトグラスを分解してサイトグラス窓部の洗浄を行った後再稼働した。しかしUF膜破損発生から停機までに乳化油含有の処理水が多量に排出され、停機時間は約1日となった。
【0031】
(比較例2)
実施例1で濁り検知機構の代わりにUF膜ろ過処理水出口に可視フィルターを設置して6時間毎に目視確認を行い、フィルター汚れを視認したためチューブラー型UF膜ろ過処理装置を停機してフィルターの取り外しと洗浄、及びUF膜の洗浄と膜破損確認による取り換えを行った。両者の取り外しと洗浄に約2日掛かった他、膜破損発生からフィルター汚れが視認されるまでに乳化油含有の処理水が多量に排出されていた。
【0032】
以上、実施例1~3、比較例1、2の結果より、本発明の含油排水の処理方法によれば、UF膜破損等によるUF膜ろ過処理水への排水漏れが発生しても迅速な対応が可能である。そして、乳化油含有の処理水が排出されることは殆どなく、特に分岐ねじ栓を備えたサイトグラスを用いた実施例1,2では含油排水処理装置は短時間の停機で再稼働が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る含油排水の処理方法によれば、産業排水、生活排水などの油分を含有する排水の乳化油分の除去をUF膜の膜ろ過処理により行い、UF膜ろ過処理水の濁りを簡単で洗浄が容易な検知機構による連続測定と異常データ発生時の目視確認によりUF膜からの排水漏れを監視することができる。その結果、UF膜ろ過処理水を安定な水質に維持でき、処理水の外部への排水時や再利用時、後段でのRO膜による再処理時等におけるトラブルを防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1 濁り検知機構
1a サイトグラス
1b 光電センサ投光部
1c 光電センサ受光部
2 分岐ねじ栓
2a 分岐管
2b ねじ栓
3 サイトグラス窓部
4 サイトグラス本体
4a 枠
5 検知機構への通水入口
6 検知機構からの通水出口
7 簡易型サイトグラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7