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特許7049112水ガラスを含有するバインダーを用いて鋳型および中子を逐次層構築するための方法ならびに水ガラスを含有するバインダー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】水ガラスを含有するバインダーを用いて鋳型および中子を逐次層構築するための方法ならびに水ガラスを含有するバインダー
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/02 20060101AFI20220330BHJP
   B22C 1/18 20060101ALI20220330BHJP
   B22C 9/10 20060101ALI20220330BHJP
   B22C 9/12 20060101ALI20220330BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220330BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20220330BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20220330BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20220330BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220330BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220330BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220330BHJP
【FI】
B22C9/02 101
B22C1/18 B
B22C9/10 E
B22C9/12 J
B29C64/153
B29C64/165
B29C64/209
B29C64/264
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
【請求項の数】 53
(21)【出願番号】P 2017529333
(86)(22)【出願日】2015-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-12-28
(86)【国際出願番号】 DE2015000589
(87)【国際公開番号】W WO2016091249
(87)【国際公開日】2016-06-16
【審査請求日】2018-09-21
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】102014118577.3
(32)【優先日】2014-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516319588
【氏名又は名称】アーエスカー ケミカルズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ASK CHEMICALS GMBH
【住所又は居所原語表記】Reisholzstrasse 16-18, 40721 Hilden (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】デーテルス,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ツッパン,ヘニング
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】田々井 正吾
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-508941(JP,A)
【文献】特開平09-239485(JP,A)
【文献】特表2011-500330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/00 - 9/30
B22C 1/00 - 1/26
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
a)構築材料混合物の成分として耐火成形基材を準備するステップと;
b)0.05mmから3mmの層厚を有する前記構築材料混合物の薄層を塗布するステップと;
c)前記薄層の選ばれた区域に、
0.4超のNa O/M Oのモル比と、1.4超から2.8未満のSiO /M Oのモル比と、を有するアルカリケイ酸塩水溶液の形の水ガラスと、
- 少なくとも1種のリン酸塩、またはリン酸塩およびホウ酸塩と
を含み、1mPasより大きくかつ25mPasより小さな25℃における動粘度を有するバインダーを、3-D印刷用の印刷ヘッドのノズルを通して印刷するステップと;
d)ステップb)およびc)を繰り返し反復するステップと
を含む、3-D印刷によって物体を逐次層構築するための方法。
【請求項2】
0.1mmから1mmの層厚で前記構築材料混合物の薄層を塗布する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記印刷された区域を硬化させるステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化は温度上昇によって行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記温度上昇はマイクロ波および/または赤外光によって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記印刷された区域を硬化させる前記ステップは、1層から10層の印刷された層の前記構築材料混合物を構築した後にそれぞれ行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記印刷された区域の前記硬化は、3から8層の印刷された層の前記構築材料混合物を構築した後にそれぞれ行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
i)前記逐次層構築の完了後に前記物体を炉の中でまたはマイクロ波を用いて硬化させるステップと、それに続く
ii)少なくとも部分的に硬化した鋳型から、結合していない前記構築材料混合物を取り除くステップと
をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記耐火成形基材は、ケイ砂、ジルコン砂またはクロム鉱砂、橄欖石、バーミキュライト、ボーキサイト、耐火粘土、ガラスビーズ、粒状ガラス、中空ケイ酸アルミニウムマイクロスフェアおよびそれらの混合物を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記耐火成形基材は50重量%超えのケイ砂からなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記構築材料混合物の80重量%超が耐火成形基材である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記構築材料混合物が95重量%超えの耐火成形基材である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記耐火成形基材は、篩分分析によって決定される50μmから600μmの平均結晶粒直径を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記耐火成形基材は、篩分分析によって決定される80μmから300μmの平均結晶粒直径を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記水ガラスは、溶媒/希釈剤を含めて、前記成形基材を基準として0.5重量%から7重量%の間の量で用いられる、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記水ガラスは、溶媒/希釈剤を含めて、前記成形基材を基準として1重量%から5.0重量%の間の量で用いられる、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記構築材料混合物に水ガラス系バインダー用無機硬化剤が加えられる、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記無機硬化剤はリン酸塩である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バインダーに対する前記硬化剤の割合は5重量%以上から25重量%未満である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記バインダーに対する前記硬化剤の割合は10重量%以上から15重量%未満である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記成形基材を基準として0.05重量%から2重量%の間の前記無機硬化剤が用いられる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記成形基材を基準として0.1重量%から0.6重量%の間の前記無機硬化剤が用いられる、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記印刷するステップは、複数のノズルを有する印刷ヘッドを用いて行われる、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ノズルは個別選択的に制御可能である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記印刷ヘッドは、コンピューター制御により少なくとも1つの面内で移動可能であり、
前記ノズルは液体バインダーを逐次層施用する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記印刷ヘッドは、バブルジェット(登録商標)技術または圧電技術によるドロップ・オン・デマンド印刷ヘッドである、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1種のリン酸塩は、ヘキサメタリン酸ナトリウムまたはポリリン酸ナトリウムである請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1種のリン酸塩はアルカリリン酸塩である、請求項に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1種のリン酸塩はポリリン酸ナトリウムもしくはメタリン酸ナトリウムまたはその両方である、請求項に記載の方法。
【請求項30】
前記バインダーは、リン酸塩を含有する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記バインダーは、リン酸塩を、0.01超かつ0.5未満のP/SiOのモル比(前記バインダー中のSiOに対するPとして計算される)で含有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記バインダーはホウ酸塩を含有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記バインダーは、ホウ酸塩を、0.01から0.5のB/SiOのモル比(前記バインダー中のSiOに対するBとして計算される)で含有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つのホウ酸塩は、アルカリホウ酸塩である、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つのホウ酸塩は、四ホウ酸二ナトリウム十水和物である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
バインダーであって、
- 0.4超のNaO/MOのモル比と、1.4超から2.8未満のSiO/MOのモル比と、を有する水ガラスを含み
いずれの場合も、Mの含量は、前記バインダー中に含有され非晶質アルカリケイ酸塩、アルカリ酸化物、アルカリ水酸化物、アルカリリン酸塩および/またはアルカリホウ酸塩に基づいて酸化物として計算されたリチウム、ナトリウムおよびカリウムモル量の質量の和であり、
- 前記バインダーは、少なくとも1種のリン酸塩もしくは少なくとも1種のホウ酸塩またはリン酸塩およびホウ酸塩を含有し;
- 前記バインダーは、1mPasより大きくかつ25mPas未満の25℃における動粘度を有する
バインダー。
【請求項37】
前記バインダー中の任意の粒子成分は、70μm未満のD90の値を有する、請求項36に記載のバインダー。
【請求項38】
前記バインダーは、0.7超のNaO/MOのモル比と、1.9超かつ2.4未満のSiO/MOのモル比とを有する水ガラスを含有する、請求項36または37に記載のバインダー。
【請求項39】
前記バインダーは、22重量%超から40重量%未満の固形分を有する、請求項36に記載のバインダー。
【請求項40】
前記バインダーは、28重量%超から35重量%未満の固形分を有する、請求項39に記載のバインダー。
【請求項41】
前記バインダー中の粒子は、
- 40μm未満のD90値を有し、および/または
- 250μm未満のD100値を有する、
請求項36~40のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項42】
前記バインダー中の粒子は、
- 20μm未満のD90値を有し、および/または
- 30μm未満のD100値を有する、
請求項36~40のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項43】
前記少なくとも1種のリン酸塩は、ヘキサメタリン酸ナトリウムまたはポリリン酸ナトリウムである、請求項36~42のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項44】
前記少なくとも1種のリン酸塩は、ポリリン酸ナトリウムもしくはメタリン酸ナトリウムまたはその両方である、請求項36に記載のバインダー。
【請求項45】
前記バインダーは、リン酸塩を含有する、請求項36~44のいずれか一項に記載のバインダー。
【請求項46】
前記バインダーは、リン酸塩を、0.01超から0.5未満のP/SiOのモル比(前記バインダー中のSiOに対するPとして計算される)で含有する、請求項45に記載のバインダー。
【請求項47】
前記バインダーはホウ酸塩を含有する請求項36~46のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項48】
前記バインダーは、0.01から0.5のB/SiOのモル比(前記バインダー中のSiOおよびBとして計算される)で、ホウ酸塩を含有する、請求項47に記載のバインダー。
【請求項49】
前記少なくとも1種のホウ酸塩は、アルカリホウ酸塩である、請求項36~48のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項50】
前記少なくとも1つのホウ酸塩は、四ホウ酸二ナトリウム十水和物である、請求項49に記載のバインダー。
【請求項51】
前記バインダーは、界面活性物質をさらに含有する、請求項36~50のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項52】
前記バインダーは、0.01重量%から3.0重量%の間の界面活性物質を含有する、請求項51に記載のバインダー。
【請求項53】
前記バインダーは請求項36~52のいずれか1項によってさらに定義される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型および中子を逐次層構築するための方法であって、鋳型および中子は、耐火成形基材と、小なくとも1種のアルカリケイ酸塩水溶液およびさらにリン酸塩もしくはホウ酸塩または両方を含むバインダーと、を含有する方法に関する。鋳型および中子を3-D印刷において逐次層製造するために、耐火成形基材を逐次層施用することと、それぞれにバインダーを選択的に印刷することとが必要である。さらに、本発明は、このようにして製造された鋳型または中子に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳型は、基本的に中子および鋳型からなり、中子および鋳型は、製造される鋳物のネガ形を表す。これらの中子および鋳型は、耐火材料、たとえばケイ砂と、成形用の型から取り外した後の鋳型に十分な機械的強度を付与する適当なバインダーとからなる。したがって、型の製造のために、耐火成形基材が用いられ、耐火成形基材は、適当なバインダーで被覆される。耐火成形基材は、好ましくは、適当な中空の型に満たすことができるように、フリーフロー形である。バインダーは、必要な機械的安定性が鋳型に付与されるように、成形基材の粒子/結晶粒の間の強固な凝集を作り出す。
【0003】
鋳型は、さまざまな要件を満たさなければならない。鋳造プロセスそれ自体において、鋳型は、第1に、1個以上の鋳型(の部品)によって形成される中空空間内に液体金属を収容するのに十分な安定性および耐熱性を有しなければならない。固化の開始後、鋳型の機械的安定性は、鋳型の壁に沿って形成される固化金属層によって確保される。次に、鋳型の材料は、その機械的強度を失うように、すなわち耐火材料の個々の粒子/結晶粒の間の凝集力が失われるように、金属によって放出される熱の作用により分解しなければならない。理想的な場合に、鋳型は、再び崩壊して鋳造の鋳型から注ぐことができる細かな砂を残す。
【0004】
呼称「ラピッド・プロトタイピング」は、逐次層構築による3次元物体の製造のためのさまざまな公知の方法を含む。これらの方法の利点は、アンダーカットおよび空洞を有する複雑な単一物体をも製造する可能性である。従来の方法ではこれらの物体は、いくつかの個別に製造された部品から組み立てなければならないだろう。別の利点は、これらの方法が、成形用金型なしでCADデータから物体を直接製造することができることである。
【0005】
3次元印刷方法の結果として、印刷ヘッドのノズルを通してバインダーまたはバインダー成分が施用されるとき、鋳型を一体に保持する新規な要件がバインダーに課される。次に、バインダーは、十分な強度レベルおよび金属鋳造後の良好な崩壊特性を生じなければならず、また十分な熱安定性および貯蔵安定性を有しなければならないだけでなく、今や「印刷可能」でもなければならない。すなわち、印刷ヘッドのノズルがバインダーによって閉塞してはならず、他方でバインダーは、印刷ヘッドから直接流れ出してもならず、代りに個別の液滴を形成するべきである。
【0006】
さらに、環境を保全し、炭化水素、主として芳香族炭化水素による環境の臭気汚染を規制するために、鋳型の製造時ならびに鋳造および冷却時にCOまたは炭化水素の形の排出物が発生しないことが必要な場合がますます多くなっている。これらの要件を満たすために、近年、無機バインダーシステムが開発されるかまたはさらに開発中である。無機バインダーシステムを使用すると、金属型の製造時のCOおよび炭化水素の排出が回避されるかまたは少なくとも最小限になる。
【0007】
特許文献1は、十分な安定性を有する鋳型を製造することが可能な無機バインダーシステムを開示している。しかし、このバインダーシステムは、事前に混合された成形材料混合物(耐火材料とバインダーとの混合物)が加熱された成形用の型の中に圧力を用いて送られる中子焼成機械内の熱硬化に特に適している。
【0008】
特許文献2は、モールドを逐次層構築するための方法であって、無機バインダーシステムが用いられる方法を開示している。逐次層施用される粒状材料は、粒状構築材料とスプレー乾燥されたアルカリケイ酸塩溶液とを含む。硬化の選択的な活性化は、水を含む溶液を用いて行われ、この溶液は、印刷ヘッドによって加えられる。純水とレオロジー添加物を含有する調節水との両方が開示されている。言及したレオロジー添加物は、増粘剤、たとえばグリセロール、グリコールまたは層状ケイ酸塩によって例を示され、層状ケイ酸塩が特に強調されている。特許文献2は、アルカリケイ酸塩水溶液の使用を開示していない。バインダーまたは水ガラス溶液は、印刷ヘッドを介して与えられるのではなく、逐次層施用される粒状材料中に既に含有されている。特許文献2によると、バインダーを用いて逐次層施用された材料の選択的な濡れまたは硬化は、遠回りしない限り実現されず、アルカリケイ酸塩水溶液を用いて直接実現されない。特許文献2に記載されているプロセスは、バインダー、スプレー乾燥されたアルカリケイ酸塩溶液を、意図される目的箇所だけなくそれが必要でない区域にも供給する。したがって、バインダーが必要もなく消費される。
【0009】
特許文献3は、堆積技術において部品を製造するための方法であって、多数の他の選択肢に加えてとりわけ水ガラスが印刷液体として用いられる方法を開示している。したがって、水ガラスは、印刷ヘッドを用いて与えられ、それぞれ最上層の予め定められたセクションに施用することができる。しかし、特許文献3は、どの水ガラス組成物が用いられ得るかについて情報を提供していない。当業者はまた、化学組成を示すことができただろう、用いられる水ガラスの物理的性質に関するいかなる情報も与えられない。記載されている従来技術においてのみ無機バインダー(たとえばフリーフロー性の水ガラスなど)がごく一般的に言及され、無機バインダーは、一般的に大量の水分を含有し-例として最大60重量%の水が言及されているだけである。大量の水(たとえば最大60重量%の水)は、取り扱うのが難しいので不利と考えられる。
【0010】
当業者は、特許文献3によって、どの水ガラス組成物が3-D印刷に適しているかに関するいかなる情報も与えられない。
【0011】
特許文献4は、20℃において45mPa・s以下の粘度を有するアルカリケイ酸塩水溶液を開示し、この水溶液は、アルカリケイ酸塩に対して39重量%の固形分を有する。SiOとMOとの間の比(MOは、NaOおよび/またはKOである)は、重量比として記載されている。最も狭いこの重量比の範囲は、1.58から3.30の間である。特許文献4の実施例に、ボールミルを用いて水ガラスバインダーの粘度を低くすることが可能と思われる方法が開示されている。しかし、そのような方法は、非常に複雑であり、かつ費用が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許第1802409号公報
【文献】国際公開第2012/175072号公報
【文献】独国特許出願公開第102011053205号公報
【文献】国際公開第2013/017134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明者らは、鋳型の3次元印刷に適した水ガラスバインダーまたはアルカリケイ酸塩水溶液を開発するという目的に取り組んだ。すなわち水ガラスバインダーは、印刷ヘッドのノズルまたはモジュールの閉塞または目詰まりなく印刷ヘッドを通して選択的に直接与えられることができる。さらに、バインダーは、微細に、点状にかつ精密に定められた用量で施用されるべきである。その上、本発明による水ガラスを使用すると、それによって製造された鋳型の性質は改善される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、独立請求項の特徴を有するバインダーによって実現される。本発明による方法の有利なさらなる進展は、従属請求項の主題であるかまたは下記に記載される。物体を逐次層構築するための方法は、少なくとも、
a)構築材料混合物の成分として耐火成形基材を準備するステップと;
b)0.05mmから3mm、好ましくは0.1mmから2mm、特に好ましくは0.1mmから1mmの構築材料混合物の層厚を有する構築材料混合物の薄層を塗布するステップと;
c)薄層の選ばれた区域に、
-アルカリケイ酸塩水溶液の形の水ガラスと、
-好ましくは、少なくとも部分的な、特に完全な水溶液中に溶解した形の少なくとも1種のリン酸塩もしくは少なくとも1種のホウ酸塩またはリン酸塩およびホウ酸塩と、
を含むバインダーを印刷するステップと;
d)ステップb)およびc)を繰り返し反復するステップと
を含む。
【0015】
本発明による水ガラスバインダーが用いられるとき、それを用いて製造された鋳型は、次の特性を有する。
1.特に熱硬化後の良好な強度
2.鋳造プロセス時に鋳型の変形を防ぐのに十分な、特に金属鋳造に適した熱安定性
3.良好な貯蔵安定性
4.金属鋳造後の良好な崩壊特性
5.逐次層施用された粒状材料または水ガラスバインダーの中に有機添加物が存在しないかぎり、鋳造操作および冷却時にCOまたは他の有機熱分解生成物の排出がない。
【0016】
驚くべきことに、本発明によるバインダーは非常に容易に「印刷可能」である、すなわち、印刷ヘッドのノズルはバインダーによって急速に閉塞しないことが見いだされた。同時に、バインダーは、非常に精密に施用することができる。印刷ヘッドのノズルの目詰まりは、思わしくない印刷結果を生じる。これは、本発明によるバインダーによって避けられる。
【0017】
ノズルの急速な目詰まりまたは印刷ヘッドのモジュールにおける急速な膜形成は、バインダーの反応性増加に起因する。バインダーの反応性は、その化学的組成ならびにバインダーの熱安定性によって制御することができる。一方で3-D印刷方法の分野における用途からみれば、印刷ヘッドの減損を避けるためおよびバインダーの硬化を制御するために、バインダーの低い反応性が必要であるが、また、他方で製造された鋳型が鋳造操作時に変形し、したがって思わしくない鋳造の寸法安定性という結果となることを防ぐために、高い熱安定性が望ましい。バインダーの熱安定性および反応性は、バインダーの化学的組成に同じように依存する。すなわち、反応性が高いほど熱安定性が高い。十分に低いバインダーの反応性において十分に高い鋳型の熱安定性を確保する適当なバインダー組成物を開示することが本発明の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によるバインダーは、鋳型の3次元印刷のために提供される。バインダーは、印刷液として使用され、まとめて構築材料混合物と呼ばれるたとえば耐火成形基材(たとえばケイ砂)などの逐次層施用された材料と任意選択として1種以上の添加物とに、この印刷液が選択的に印刷される。構築材料混合物は、まだバインダーを含んでいない。通常、構築材料混合物の逐次層施用の後に選択印刷操作-この操作は、印刷操作全体が完了し、鋳型を得ることができるまで繰り返される-が続く。
【0019】
バインダーの硬化は、従来の方法で行うことができる。したがって、一方で、逐次層施用された構築材料混合物に1種以上の水ガラス硬化剤を加えることが可能であり、これは、印刷された水ガラス含有バインダーの化学的手段による即時硬化を作り出す。
【0020】
施用された水ガラスを酸性ガス、たとえばCOによって硬化させることも可能であるが、この変化形は、それほど好ましくない。
【0021】
他方で、熱硬化も行うことができる。たとえば、印刷操作の完了後に(構築材料混合物の次の層が施用される直前に、その時にまたは後に)、たとえば赤外光を用いて構築材料混合物と結合剤との混合物を照射することによって、熱硬化を行うことが可能である。この逐次層硬化において、たとえばスポットの形の赤外光が印刷ヘッドを追ってもよい。
【0022】
もちろん、いくつかの層が施用された後に、このタイプの熱硬化を段階的に行うことも可能である。最後の印刷操作の完了後にだけ熱硬化を行うことも可能である。鋳型を完全に製造するために必要な最後の層が印刷されるまで、「構築材料混合物の層を施用する」ステップと、それに続く「印刷操作」ステップとが交互する。この目的で、施用され、部分的に印刷された層は、たとえばいわゆる「作業ボックス」内に残り、後で作業ボックスをマイクロ波オーブンへ移動させて熱硬化を行うことができる。
【0023】
熱硬化は、特に、マイクロ波オーブン内で、マイクロ波による乾燥を、好ましくは印刷操作全体の完了後にするのが好ましい。
【0024】
鋳型の製造のための耐火成形基材として、慣習的な材料および公知の材料を用いることができる。適当な材料は、たとえば、ケイ砂、ジルコン砂もしくはクロム鉱砂、橄欖石、バーミキュライト、ボーキサイト、耐火粘土ならびに人工成形基材、特に、耐火成形基材を基準として50重量%より多いケイ砂である。コストを低く保つために、耐火成形基材のケイ砂の割合は、70重量%超、好ましくは80重量%超、特に好ましくは90重量%超である。しかし、新しい砂だけを用いる必要はない。資源を節約し、埋め立てコストを避けるという意味で、使用済みの形からリサイクルによって取得することができるだけの高い割合の再生された古い砂を用いることは有利でさえある。
【0025】
耐火成形基材とは、高い融点(融解温度)を有する物質を意味すると理解される。耐火成形基材の融点は、好ましくは600℃超、好ましくは900℃超、特に好ましくは1200℃超、非常に特に好ましくは1500℃超である。
【0026】
耐火成形基材は、好ましくは構築材料混合物の80重量%超、特に90重量%超、特に好ましくは95重量%超を占める。
【0027】
たとえば、国際公開第2008/101668A1号公報(=米国特許出願公開第2010/173767号公報)に、適当な耐火成形基材が記載されている。粉砕された使用済み鋳型の洗浄とその後の乾燥とによって得ることができる再生材も同様に適している。一般に、再生材は、耐火成形基材の70重量%、好ましくは少なくとも約80重量%、特に好ましくは90重量%超を占めることができる。
【0028】
本発明の一実施態様によると、純粋に機械的な処理によって得られる再生材を用いると有利である。機械的な処理とは、古い砂の中に残っているバインダーの少なくとも一部が研削原理または衝撃原理によって砂粒から除去されることを意味すると理解される。これらの再生材は、必要に応じて用いることができる。これらの再生材の割合は、たとえば、耐火成形基材の5重量%超、好ましくは20重量%超、より好ましくは50重量%超、特に好ましくは70重量%超、特に非常に好ましくは80重量%超であってよい。そのような再生材は、たとえば、施用されたバインダーの(予備または部分)硬化を行うために用いられる。
【0029】
本発明の一実施態様によると、成形基材として塩を用いると有利である。塩とは、アルカリハロゲン化物およびアルカリ土類ハロゲン化物を意味すると理解される。アルカリハロゲン化物が好ましく、そのうちでアルカリ金属塩化物がより好ましい。特に好ましくは、塩化ナトリウムが用いられる。塩類または塩の割合は、たとえば、耐火成形基材の5重量%超、好ましくは20重量%超、より好ましくは50重量%超、より好ましくは80重量%超を占めてよい。この実施態様において、耐火成形基材として塩だけを用いると特に好ましい。たとえば、金属鋳造後に水によって鋳型が除去されるとき、塩が用いられる。
【0030】
耐火成形基材の平均結晶粒直径は、一般に50μmから600μmの間、好ましくは70μmから400μmの間、好ましくは80μmから300μmの間、特に好ましくは100μmから200μmの間である。結晶粒直径は、たとえばDIN ISO 3310に従う篩分によって決定することができる。たとえば、1:1から1:5または1:1から1:3の最小縦長さに対する最大縦長さ(互いに直角であり、それぞれすべての空間方向で)を有する粒子形状/結晶粒、すなわち繊維状でないものが特に好ましい。
【0031】
耐火成形基材は、フリーフロー状態である。
【0032】
本発明によるバインダーは、たとえばガラス状のリチウム、ナトリウムおよび/またはカリウムのケイ酸塩を水に溶かすことによって調製される水ガラスを含有する。好ましい水ガラスは、少なくともケイ酸ナトリウムを含有するものである。
【0033】
バインダー中の比NaO/MOは、好ましくは0.4超、好ましくは0.5超、より好ましくは0.6超、特に好ましくは0.7超であり、ここでMOは、酸化物として計算されるバインダー中のリチウム、ナトリウムおよびカリウムの質量の和である。
【0034】
本発明によると、酸化物MOとして計算されるアルカリ金属の量は、バインダー中に存在する非晶質アルカリケイ酸塩、アルカリ酸化物、アルカリ水酸化物、アルカリリン酸塩およびアルカリホウ酸塩のモル量だけから計算される。これは、MO(MOは、前の段落でそれぞれ定義されたとおりである)の計算において水ガラス溶液へのアルカリ塩化物またはアルカリ炭酸塩などのいかなる添加も含まれないことを意味する。
【0035】
水ガラスは、1.4超、好ましくは1.6超、好ましくは1.8超、より好ましくは1.9超、特に好ましくは2.0超であるモル率SiO/MOを有する。水ガラスは、好ましくは、2.8未満、好ましくは2.6未満、好ましくは2.5未満、特に好ましくは2.4未満のモルモジュラスSiO/MOを有する。この状況において、本発明による水ガラス溶液のそのような低いモル比SiO/MOが、特に金属鋳造において鋳型の十分に高い熱安定性を生じることは、当業者にとって驚くべきことである。
【0036】
バインダーは、40重量%未満、好ましくは38重量%未満、好ましくは36重量%未満、特に好ましくは35重量%未満の固形分を有する。バインダーの残余は、好ましくは水からなる。
【0037】
バインダーは、22重量%超、好ましくは24重量%超、好ましくは26重量%超、特に好ましくは28重量%超、特に非常に好ましくは29重量%超、特に好ましくは29.5重量%超の固形分を有する。
【0038】
固形分は、穏やかに液体を蒸発させ、バインダーを乾燥させてからそれを空気雰囲気中600℃で1時間加熱することによって決定される。残留酸化物材料を秤量して固形分を決定する。
【0039】
これとは別に、バインダー中のSiOおよびMOの材料の量(モル%として計算)は、16モル%未満、好ましくは15モル%未満、好ましくは14モル%未満、特に好ましくは13.5モル%未満である。さらに、材料のこの量は、7モル%超、好ましくは8モル%超、好ましくは9モル%超、特に好ましくは10モル%超、特に非常に好ましくは10.5モル%超である。
【0040】
バインダーの粘度は、あまり低くてはならず、あまり高くてはならない。動粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)回転粘度計を用いて測定される。25℃の温度において、本発明によるバインダーは、25mPas未満、好ましくは20mPas未満、好ましくは18mPas未満、特に好ましくは16mPas未満の粘度を有する。25℃の温度において、バインダーは、1mPas超、好ましくは2mPas超、好ましくは3mPas超、特に好ましくは4mPas超の粘度を有する。
【0041】
本発明によるバインダーは、透明な溶液であるべきであり、可能なら、最大限として数マイクロメートルから数ミリメートルの間のサイズを有し、たとえば不純物に由来し得る粗い粒子を含むべきでない。市販水ガラス溶液は、一般に、これらの粗い粒子を有する。
【0042】
粒子または結晶粒サイズは、DIN/ISO 13320に従って動的光散乱(たとえば堀場のLA950)によって決定される。
【0043】
決定されたD90値(それぞれ体積を基準とする)は、より大きな粒子のための指標である-それは、粒子の90%が指定された値より小さいことを意味する。本発明による水ガラスは、70μm未満、好ましくは40μm未満、好ましくは30μm未満、特に好ましくは25μm未満、特に非常に好ましくは20μm未満のD90値(動的光散乱またはレーザ回折法によって決定される)を有する。
【0044】
これとは別に、本発明による水ガラスは、250μm未満、好ましくは120μm未満、好ましくは50μm未満、より好ましくは40μm未満、特に好ましくは35μm未満、特に非常に好ましくは30μm未満のD100値(それぞれ体積を基準として)を有する。
【0045】
水ガラスを含有する上記バインダーは、たとえば適当な濾過によって得ることができる。たとえば、50μm、好ましくは25μm、好ましくは10μm、特に好ましくは5μmの篩いの目直径を有するフィルターが適している。好ましいバインダーは、少なくとも1μmのサイズを有する粒子を含まないバインダーである。
【0046】
一実施態様において、本発明によるバインダーは、さまざまな割合のリチウムイオンを有してよい。LiO/MOのモル比は、広い範囲、たとえば0.01から0.3の間で変化してよい。好ましくは、この比は、0.03から0.17の間、好ましくは0.035から0.16の間、特に好ましくは0.04から0.14の間の範囲にある。
【0047】
一実施態様において、本発明によるバインダーは、さまざまな割合のカリウムイオンを有してよい。KO/MOのモル比は、広い範囲にわたって、たとえば0.01から0.3の間で変化してよい。好ましくは、この比は、0.01から0.17の間、好ましくは0.02から0.16の間、特に好ましくは0.03から0.14の間の範囲にある。
【0048】
驚くべきことに、ケイ酸塩以外のネットワーク形成剤を添加すると熱安定性を増加させることと反応性を低下させることとの両方が可能であることが示された。したがって、リン酸塩の群からのネットワーク形成剤がバインダーに加えられ、バインダー中に溶解され、特にアルカリリン酸塩(たとえばヘキサメタリン酸ナトリウムまたはポリリン酸ナトリウム)が有用であることが見いだされた。アルカリリン酸塩の中で、リン酸三ナトリウム(NaPO)などのアルカリオルトリン酸塩は、好ましくない。ポリリン酸ナトリウムおよび/またはメタリン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0049】
代替としてまたは追加としてバインダーに加えることができる他のネットワーク形成剤は、ホウ酸塩、特にアルカリホウ酸塩、たとえば四ホウ酸二ナトリウム10水和物である。これらも、バインダー中に溶解される。
【0050】
バインダーの総量(希釈剤を含む)中のアルカリホウ酸塩および/またはアルカリリン酸塩の割合の結果として生じるアルカリ金属の量は、酸化物として計算され、水溶液全体の中のリチウム、ナトリウムおよびカリウム酸化物の材料の総量(すなわち材料の個々の量の和である)に寄与する。したがって、モルモジュラスSiO/MOも、アルカリホウ酸塩および/またはアルカリリン酸塩の添加の影響を受ける。
【0051】
バインダー中のホウ酸塩の含量、特にアルカリホウ酸塩の含量は、Bとして計算される。B/SiOのモル比は、広い範囲、たとえば0から0.5にわたって変化してよい。この比は、好ましくは0.3未満、好ましくは0.2未満、特に好ましくは0.1未満、特に非常に好ましくは0.08未満、特に最も好ましくは0.06未満である。好ましくは、この比は、0以上である。さらに別の実施態様において、この比は、好ましくは0.01超、特に好ましくは0.02超である。本発明の状況におけるホウ酸塩は、酸化状態IIIのホウ素化合物であり、酸素とだけ直接結合している。すなわち、酸素原子が化合物中のホウ素の直接の結合相手である。
【0052】
バインダー中のリン酸塩の含量、特にアルカリリン酸塩の含量は、Pとして計算される。P/SiOのモル比は、広い範囲、たとえば0から0.5にわたって変化してよい。この比は、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満、より好ましくは0.25未満、特に好ましくは0.2未満、特に非常に好ましくは0.15未満である。この比は、好ましくは0超、好ましくは0.01超、特に好ましくは0.02超である。
【0053】
本発明の状況において、リン酸塩は、酸化状態Vのリン化合物であり、酸素とだけ直接結合している。すなわち酸素原子が化合物中のリンの直接の結合相手である。
【0054】
さらに別の実施態様において、バインダーは、アルミニウムも含有してよく、アルミニウムの割合は、Alとして計算される。その場合、Alの割合は、バインダーの全重量を基準として通常2重量%未満である。
【0055】
好ましい実施態様において、バインダーの表面張力に影響を及ぼすために、本発明によるバインダーに界面活性物質が加えられる場合がある。これらの界面活性物質の割合は、一般的には0.01重量%から4.0重量%の間、好ましくは0.1重量%から3.0重量%の間である。
【0056】
たとえば、独国特許出願公開第102007051850A1号公報に、バインダー中の適当な界面活性物質が、好ましくは硫酸塩基および/またはスルホン酸塩基を有する陰イオン界面活性剤を含めて記載されている。さらに別の適当な界面活性物質は、たとえばポリアクリル酸塩(たとえばナトリウムの-たとえばディスペックス(Dispex)N40-チバ(Ciba))または水系用シリコーン界面活性剤(たとえばByk 348、アルタナ(Altana))である。トリシロキサンまたはグリコールに基づく界面活性物質(たとえばポリエチレングリコール)を用いることができる。
【0057】
用途および所望の強度レベルに応じて、各ケースにおいて成形基材を基準として、好ましくは0.5重量%から7重量%の間、好ましくは0.75重量%から6重量%の間、特に好ましくは1重量%から5.0重量%の間、特に好ましくは1重量%から4.0重量%の間の水ガラスバインダーが用いられる。データは、水ガラスバインダーの総量に関し、(特に、水)溶媒または希釈剤および固形分(あれば)を含む(全体=100重量%)。
【0058】
好ましい実施態様において、構築材料混合物は、鋳型の強度レベルを増強するためにある割合の粒状非晶質シリカを含有する場合がある。鋳型の強度の増加、特に高温強度の増加は、自動化生産プロセスにおいて利点となり得る。合成的に製造された非晶質シリカが特に好ましい。
【0059】
非晶質シリカの平均粒子サイズ(凝塊物も含む)は、好ましくは300μm未満、好ましくは200μm未満、特に好ましくは100μm未満である。粒状非晶質SiOの篩分残留物は、125μmメッシュ(120メッシュ)の篩いを通すとき、好ましくは10重量%を超えず、特に好ましくは5重量%を超えず、特に非常に好ましくは2重量%を超えない。
【0060】
これとは別に、63μmメッシュを有する篩い上の篩分残留物は、10重量%未満、好ましくは8重量%未満である。篩分残留物は、DIN 66165(第2部)に記載されている機械篩分法によって決定され、この場合、篩分補助としてチェーンリングがさらに用いられる。
【0061】
好ましくは本発明により用いられる粒状非晶質二酸化ケイ素は、15重量%未満、特に5重量%未満、特に好ましくは1重量%未満の含水率を有する。
【0062】
粒状非晶質SiOは、粉体(ダストを含む)として用いられる。
【0063】
合成法によって製造されたケイ酸と天然ケイ酸との両方を非晶質SiOとして用いることができる。後者は、たとえば独国特許出願公開第102007045649号公報から公知であるが、通常あまり多くない結晶部分を含有し、したがって発癌物質として分類されているので、好ましくない。合成物とは、天然ではない非晶質SiOを意味すると理解される。すなわち非晶質SiOの調製物は、人によって故意に実行される化学反応、たとえばアルカリケイ酸塩溶液からのイオン交換プロセス、アルカリケイ酸塩溶液からの沈殿、四塩化ケイ素の火炎加水分解、フェロシリコンおよびシリコンの製造におけるアーク炉中でのコークスによるケイ砂の還元によるシリカゾルの製造を含む。最後に言及した2つの方法によって製造される非晶質SiOは、焼成SiOとも呼ばれる。
【0064】
時に、沈殿ケイ酸(CAS番号112926-00-8)および火炎加水分解によって製造されたSiO(焼成シリカ、ヒュームドシリカ、CAS番号112945-52-5)だけが合成非晶質二酸化ケイ素を意味すると理解され、フェロシリコンまたはシリコンの製造において形成される製品の方は、単に非晶質二酸化ケイ素(シリカヒューム、マイクロシリカ、CAS番号69012-64-12)と呼ばれる。本発明については、フェロシリコンまたはシリコンの製造において形成される製品も非晶質SiOとみなす。
【0065】
好ましくは、沈殿ケイ酸および焼成による、すなわち火炎加水分解によるかまたは電気アーク中で製造された二酸化ケイ素が用いられる。特に好ましくは、ZrSiOの熱分解によって製造される非晶質二酸化ケイ素(独国特許出願公開第102012020509号公報に記載)および酸素含有ガスを用いる金属Siの酸化によって製造されるSiO(独国特許出願公開第102012020510号公報に記載)が用いられる。結晶石英から融解および急再冷によって製造され、それによって粒子が球状であり、割れていない石英ガラス粉体(主に非晶質二酸化ケイ素)(独国特許出願公開第102012020511号公報に記載)も好ましい。
【0066】
粒状非晶質二酸化ケイ素の平均一次粒子サイズは、0.05μmから10μmの間、特に0.1μmから5μmの間、特に好ましくは0.1μmから2μmの間であってよい。一次粒子サイズは、たとえば動的光散乱(たとえば堀場のLA950)を用いて、ならびに走査電子顕微鏡像(たとえばFEIのノバ(Nova)ナノSEM(NanoSEM)230によるSEM像)によって決定することができる。さらに、これらのSEM像を用いて一次粒子形状の詳細を最大0.01μmのオーダーで視覚化することができた。SEM測定のために二酸化ケイ素試料を蒸留水中に分散させ、次に銅テープで貼り付けられたアルミニウムホルダーに施用した後に水を蒸発させた。
【0067】
さらに、DIN 66131に従う気体吸着測定(BET法)によって粒状非晶質二酸化ケイ素の比表面積を決定した。粒状非晶質SiOの比表面積は、1m/gから200m/gの間、特に1m/gから50m/gの間、特に好ましくは1m/gから30m/gの間である。任意選択として、たとえば特定の粒子サイズ分布を有する混合物を得るためにこれらの生成物をブレンドすることもできる。
【0068】
製造法および製造者のタイプに応じて、非晶質SiOの純度は、広く変化してよい。適当なタイプは、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%の二酸化ケイ素含量を有する。
【0069】
用途および所望の強度レベルに応じ、それぞれ成形基材を基準として0.1重量%から2重量%の間、好ましくは0.1重量%から1.8重量%の間、特に好ましくは0.1重量%から1.5重量%の間の非晶質SiO粒子が用いられる。
【0070】
粒状非晶質二酸化ケイ素に対する水ガラス系バインダーの比は、広い範囲内で変化してよい。
【0071】
バインダー(希釈剤または溶媒を含む)の全重量を基準として、非晶質SiOは、好ましくは1重量%から80重量%、好ましくは2重量%から60重量%、特に好ましくは3重量%から55重量%、非常に特に好ましくは4重量%から50重量%の割合で存在する。あるいは、これとは別に、10:1から1:1.2(重量部)という非晶質SiOに対する水ガラス系バインダーの固体(酸化物、すなわちアルカリ金属酸化物MOおよび二酸化ケイ素の全質量を基準として)の割合の比に基づくのが好ましい。
【0072】
非晶質SiOは、バインダーを添加する前に耐火固体または構築材料混合物に加える。
【0073】
したがって、本発明による方法は、さらに、非晶質SiOを用いるとき次の特徴の1つ以上を特徴とする。
(a)非晶質二酸化ケイ素は、構築材料混合物にだけ加えられる。
(b)非晶質二酸化ケイ素は、1m/gから200m/gの間、好ましくは1m/g以上かつ30m/g以下、特に好ましくは15m/g以下のBET表面積を有する。
(c)非晶質シリカは、沈殿ケイ酸、火炎加水分解によるかまたは電気アーク中で製造される焼成二酸化ケイ素、ZrSiOの火炎分解によって製造される非晶質二酸化ケイ素、酸素含有ガスを用いる金属ケイ素の酸化によって製造される二酸化ケイ素、石英結晶の融解および急再冷によって製造される球状粒子を有する石英ガラス粉体、およびそれらの混合物からなる群から選ばれ、好ましくはZrSiOの熱分解によって製造される非晶質二酸化ケイ素である。
(d)非晶質二酸化ケイ素は、それぞれ耐火成形基材を基準として好ましくは0.1重量%から2重量%、特に好ましくは0.1重量%から1.5重量%の量で用いられる。
(e)非晶質二酸化ケイ素は、5重量%未満、特に好ましくは1重量%未満の含水率を有する。
(f)非晶質二酸化ケイ素は、好ましくは0.05μmから10μmの間、特に0.1μmから5μmの間、特に好ましくは0.1μmから2μmの間の動的光散乱によって決定された平均一次粒子直径を有する、粒状非晶質二酸化ケイ素である。
【0074】
さらに別の実施態様において、バインダーの添加の前に、水ガラス系バインダー用の無機硬化剤が構築材料混合物に加えられる。そのような無機硬化剤は、例として、たとえばリソピックス(Lithopix)P26(ズヒマー・アンド・シュバルツ(Zschimmer and Schwarz)GmbH & Co KGヘミッシェ・ファブリケン(Chemsche Fabriken)のリン酸アルミニウム)またはファブチト(Fabutit)748(ヘミッシェ・ファブリーク・ブデンハイム(Chemische Fabrik Budenheim)KGのリン酸アルミニウム)などのリン酸塩である。他の水ガラス系バインダー用無機硬化剤は、たとえばケイ酸カルシウム類およびそれらの水和物、アルミン酸カルシウム類およびそれらの水和物、硫酸アルミニウム、炭酸マグネシウムおよびカルシウムである。
【0075】
バインダーに対する硬化剤の比は、構築材料混合物の所望の特性、たとえば加工時間および/または解体時間に応じて変化する場合がある。有利には、硬化剤の割合(バインダー、水ガラスの場合はケイ酸塩溶液または溶媒に取り込まれた他のバインダーの全重量に対する硬化剤の重量比)は、それぞれバインダーを基準として5重量%以上、好ましくは8重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。上限値は、バインダーを基準として25重量%以下、好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。
【0076】
これとは別に、それぞれ成形基材を基準として0.05重量%から2重量%の間、好ましくは0.1重量%から1重量%の間、特に好ましくは0.1重量%から0.6重量%の間の無機硬化剤が用いられる。
【0077】
次に、強度が許せば直ちに、結合していない構築材料混合物を鋳型から取り外すことができ、鋳型をさらに別の処理、たとえば金属鋳造のための準備に回すことができる。結合した構築材料混合物からの結合していない構築材料混合物の除去は、たとえば、結合していない構築材料混合物がこぼれ出ることができるように出口を用いて実現される。結合した構築材料混合物(鋳型)は、たとえば、圧搾空気またはブラッシングによって結合していない構築材料混合物の残留物を取り除くことができる。
【0078】
結合していない構築材料混合物は、新しい印刷操作のために再利用することができる。
【0079】
印刷は、たとえば複数のノズルを有する印刷ヘッドを用いて行われ、ノズルは、好ましくは個別に選択的に制御可能である。さらに別の実施態様によると、印刷ヘッドは、コンピュータによって制御されて少なくとも1つの面内で動かされ、ノズルは液体バインダーを逐次層施用する。印刷ヘッドは、たとえばバブルジェット(登録商標)、または好ましくは圧電技術によるドロップ・オン・デマンド印刷ヘッドであってよい。