(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20220330BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20220330BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20220330BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220330BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20220330BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20220330BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220330BHJP
C09D 183/08 20060101ALI20220330BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20220330BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220330BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L65/00
C08F2/46
C08F2/44 C
C09D4/02
C09D5/24
C09D7/65
C09D183/08
H01B1/20 A
H01B13/00 Z
H01B13/00 503C
C08F299/00
(21)【出願番号】P 2018017409
(22)【出願日】2018-02-02
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/118643(WO,A1)
【文献】特開2009-040969(JP,A)
【文献】国際公開第2011/142433(WO,A1)
【文献】特開2011-235444(JP,A)
【文献】特開2014-091776(JP,A)
【文献】特開2011-025438(JP,A)
【文献】特開2010-285501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0196892(US,A1)
【文献】特開2015-131890(JP,A)
【文献】特開2017-210501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 65/00
C08L 101/00
C08F 299/00
C08F 2/44
C08F 2/46
H01B 1/20
H01B 13/00
C09D 5/24
C09D 4/02
C09D 183/08
C09D 7/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、下記式(1)で表される、パーフルオロポリエーテル基を有するアクリレート化合物と、分散媒とを、含有する導電性高分子分散液。
【化1】
[式(1)中、Rfは2価の分子量500以上30000以下のパーフルオロポリエーテル基であり、途中分岐を含んでいてもよく、
X
1は互いに独立に、下記式(2)で表わされる基であり、
【化2】
(式(2)中、a及びcはそれぞれ独立に0以上4以下、bは1以上4以下の整数、但しa+b+cは2、3、又は4であり、R
1は互いに独立に、下記式(3)で表される基であり、
【化3】
(式(3)中、d、e、f、gはR
1の分子量が30以上600以下となる範囲において、互いに独立に0以上20以下の整数であり、各繰り返し単位の配列はランダムであってもよく、R
3は炭素数1以上10以下の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基である。)
R
2は下記式(4)で表されるアクリル基又はα置換アクリル基含有基であり、
【化4】
(式(4)中、R
4は、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、R
5は炭素数1以上18以下のエーテル結合及びエステル結合の少なくとも一方を含んでいてもよい2価又は3価の連結基である。nは1又は2の整数である。)
Q
1及びQ
2は、互いに独立に、炭素数3以上20以下のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
X
2は互いに独立に、下記式(5)で表わされる基であり、
【化5】
(式(5)中、R
1、R
2、Q
1、Q
2は式(2)と同様であり、h、i、jはそれぞれ独立に0以上3以下の整数であり、かつh+i+jは1以上3以下のいずれかの値であり、繰り返し単位の配列はランダムであってもよい。)
Zは2価の有機基であり、酸素原子、窒素原子、フッ素原子を含んでいてもよく、また、環状構造、不飽和結合を有する基であってもよく、vは0以上5以下の整数である。]
【請求項2】
前記アクリレート化合物の式(1)におけるRfが下記式(6)で表される繰り返し単位を1個以上500個以下含む、請求項1に記載の導電性高分子分散液。
-C
iF
2iO- (6)
(iは、単位毎に独立に、1以上6以下の整数である。)
【請求項3】
前記アクリレート化合物の式(1)におけるRfが下記式(7)~(9)のいずれかで表わされる基から選ばれる、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
【化6】
(式(7)中、Yは互いに独立にF又はCF
3基、rは2以上6以下の整数、m、nはそれぞれ独立に0以上200以下の整数、但しm+nは2以上200以下である。sは0以上6以下の整数であり、各繰り返し単位はランダムに結合されていてもよい。)
【化7】
(式(8)中、jは1以上3以下の整数、kは1以上200以下の整数である。)
【化8】
(式(9)中、YはF又はCF
3基、jは1以上3以下の整数、m、nはそれぞれ独立に0以上200以下の整数、但し、m+nは2以上200以下である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【請求項4】
前記アクリレート化合物の式(1)におけるZが下記式(10)~(14)のいずれかの基である、請求項1から3のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
【化9】
【請求項5】
前記アクリレート化合物の式(2)におけるQ
1及びQ
2が、互いに独立して、下記式(15)~(20)のいずれかの基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
【化10】
【請求項6】
前記アクリレート化合物の式(2)におけるR
2が下記式(21)~(24)のいずれかの基である、請求項1から5のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
【化11】
【請求項7】
前記アクリレート化合物の式(2)におけるR
1が下記式(25)で表される基である、請求項1から6のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
【化12】
(式(25)におけるp、qはそれぞれ独立に0以上20以下の整数であり、p+qは1以上40以下であり、式中のプロピレン基は分岐していてもよく、各繰り返し単位はランダムに結合されていてもよい。)
【請求項8】
前記分散媒が有機溶剤である、請求項1から7のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
【請求項9】
前記ポリアニオンのアニオン基の一部にアミン化合物が結合している、請求項1から8のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
【請求項10】
前記ポリアニオンのアニオン基の一部にエポキシ化合物が結合している、請求項1から8のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
【請求項11】
請求項9に記載の導電性高分子分散液を製造する導電性高分子分散液の製造方法であって、
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水分散液にアミン化合物を添加し、前記導電性複合体を析出させて析出物を形成させる工程と、
前記析出物を回収する工程と、
回収した前記析出物に前記アクリレート化合物及び有機溶剤を添加する工程と、
を有する、導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載の導電性高分子分散液を製造する導電性高分子分散液の製造方法であって、
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水分散液を凍結乾燥して凍結乾燥体を得る工程と、
前記凍結乾燥体にアミン化合物、前記アクリレート化合物及び有機溶剤を添加する工程と、
を有する、導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の導電性高分子分散液を製造する導電性高分子分散液の製造方法であって、
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水分散液にエポキシ化合物を添加し、前記導電性複合体を析出させて析出物を形成させる工程と、
前記析出物を回収する工程と、
回収した前記析出物に前記アクリレート化合物及び有機溶剤を添加する工程と、
を有する、導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液をフィルム基材に塗布する、導電性フィルムの製造方法。
【請求項15】
導電性高分子分散液をフィルム基材に塗布した後、乾燥し、活性エネルギー線を照射する、請求項14に記載の導電性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含有する導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック基材の表面に導電層を形成した導電性フィルムは、帯電防止が求められる用途、例えば、電子部品の包装又は容器、食品の包装又は容器等に使用されている。
前記導電層に含まれる導電材料としては、導電性及び透明性に優れ、しかも導電性が湿度に依存することなく安定していることから、π共役系導電性高分子が使用されることがある。
導電性フィルムの製造方法としては、例えば、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が水中に分散している導電性高分子分散液をフィルム基材に塗工し、乾燥させ、導電層を形成して、導電性フィルムを得る方法が知られている(特許文献1)。
導電性フィルムの導電層には、防汚性が求められることがある。防汚性を高める方法として、導電性高分子分散液において、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体に加えてシリコーン変性アクリル樹脂を配合することが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/108001号
【文献】特開2008-156452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2に記載の導電性高分子分散液では、導電性と防汚性とが共に充分に優れた導電層を形成できなかった。すなわち、特許文献2に記載の導電性高分子分散液では、防汚性を高めるためにシリコーン変性アクリル樹脂の量を増やすと、導電性が低下する傾向にあり、導電性を高めるためにシリコーン変性アクリル樹脂の量を減らすと、防汚性が低下する傾向にあった。
本発明は、導電性及び防汚性が共に優れた導電層を容易に形成できる導電性高分子分散液及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、導電性及び防汚性が共に優れた導電層を備える導電性フィルムを容易に製造できる導電性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、下記式(1)で表される、パーフルオロポリエーテル基を有するアクリレート化合物と、分散媒とを、含有する導電性高分子分散液。
【0006】
【0007】
[式(1)中、Rfは2価の分子量500以上30000以下のパーフルオロポリエーテル基であり、途中分岐を含んでいてもよく、
X1は互いに独立に、下記式(2)で表わされる基であり、
【0008】
【0009】
(式(2)中、a及びcはそれぞれ独立に0以上4以下、bは1以上4以下の整数、但しa+b+cは2、3、又は4であり、R1は互いに独立に、下記式(3)で表される基であり、
【0010】
【0011】
(式(3)中、d、e、f、gはR1の分子量が30以上600以下となる範囲において、互いに独立に0以上20以下の整数であり、各繰り返し単位の配列はランダムであってもよく、R3は炭素数1以上10以下の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基である。)
R2は下記式(4)で表されるアクリル基又はα置換アクリル基含有基であり、
【0012】
【0013】
(式(4)中、R4は、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、R5は炭素数1以上18以下のエーテル結合及びエステル結合の少なくとも一方を含んでいてもよい2価又は3価の連結基である。nは1又は2の整数である。)
Q1及びQ2は、互いに独立に、炭素数3以上20以下のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
X2は互いに独立に、下記式(5)で表わされる基であり、
【0014】
【0015】
(式(5)中、R1、R2、Q1、Q2は式(2)と同様であり、h、i、jはそれぞれ独立に0以上3以下の整数であり、かつh+i+jは1以上3以下のいずれかの値であり、繰り返し単位の配列はランダムであってもよい。)
Zは2価の有機基であり、酸素原子、窒素原子、フッ素原子を含んでいてもよく、また、環状構造、不飽和結合を有する基であってもよく、vは0以上5以下の整数である。]
【0016】
[2]前記アクリレート化合物の式(1)におけるRfが下記式(6)で表される繰り返し単位を1個以上500個以下含む、[1]に記載の導電性高分子分散液。
-CiF2iO- (6)
(iは、単位毎に独立に、1以上6以下の整数である。)
[3]前記アクリレート化合物の式(1)におけるRfが下記式(7)~(9)のいずれかで表わされる基から選ばれる、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
【0017】
【0018】
(式(7)中、Yは互いに独立にF又はCF3基、rは2以上6以下の整数、m、nはそれぞれ独立に0以上200以下の整数、但しm+nは2以上200以下である。sは0以上6以下の整数であり、各繰り返し単位はランダムに結合されていてもよい。)
【0019】
【0020】
(式(8)中、jは1以上3以下の整数、kは1以上200以下の整数である。)
【0021】
【0022】
(式(9)中、YはF又はCF3基、jは1以上3以下の整数、m、nはそれぞれ独立に0以上200以下の整数、但し、m+nは2以上200以下である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0023】
[4]前記アクリレート化合物の式(1)におけるZが下記式(10)~(14)のいずれかの基である、[1]から[3]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
【0024】
【0025】
[5]前記アクリレート化合物の式(2)におけるQ1及びQ2が、互いに独立して、下記式(15)~(20)のいずれかの基である、[1]から[4]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
【0026】
【0027】
[6]前記アクリレート化合物の式(2)におけるR2が下記式(21)~(24)のいずれかの基である、[1]から[5]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
【0028】
【0029】
[7]前記アクリレート化合物の式(2)におけるR1が下記式(25)で表される基である、[1]から[6]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
【0030】
【0031】
(式(25)におけるp、qはそれぞれ独立に0以上20以下の整数であり、p+qは1以上40以下であり、式中のプロピレン基は分岐していてもよく、各繰り返し単位はランダムに結合されていてもよい。)
【0032】
[8]前記分散媒が有機溶剤である、[1]から[7]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
[9]前記ポリアニオンのアニオン基の一部にアミン化合物が結合している、[1]から[8]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
[10]前記ポリアニオンのアニオン基の一部にエポキシ化合物が結合している、[1]から[8]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
【0033】
[11][9]に記載の導電性高分子分散液を製造する導電性高分子分散液の製造方法であって、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水分散液にアミン化合物を添加し、前記導電性複合体を析出させて析出物を形成させる工程と、前記析出物を回収する工程と、回収した前記析出物に前記アクリレート化合物及び有機溶剤を添加する工程と、を有する、導電性高分子分散液の製造方法。
[12][9]に記載の導電性高分子分散液を製造する導電性高分子分散液の製造方法であって、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水分散液を凍結乾燥して凍結乾燥体を得る工程と、前記凍結乾燥体にアミン化合物、前記アクリレート化合物及び有機溶剤を添加する工程と、を有する、導電性高分子分散液の製造方法。
[13][10]に記載の導電性高分子分散液を製造する導電性高分子分散液の製造方法であって、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水分散液にエポキシ化合物を添加し、前記導電性複合体を析出させて析出物を形成させる工程と、前記析出物を回収する工程と、回収した前記析出物に前記アクリレート化合物及び有機溶剤を添加する工程と、を有する、導電性高分子分散液の製造方法。
[14][1]から[10]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液をフィルム基材に塗布する、導電性フィルムの製造方法。
[15]導電性高分子分散液をフィルム基材に塗布した後、乾燥し、活性エネルギー線を照射する、[14]に記載の導電性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明の導電性高分子分散液によれば、導電性及び防汚性が共に優れた導電層を容易に形成できる。
本発明の導電性高分子分散液の製造方法によれば、前記導電性高分子分散液を容易に製造できる。
本発明の導電性フィルムの製造方法によれば、導電性及び防汚性が共に優れた導電層を備える導電性フィルムを容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<導電性高分子分散液>
本発明の導電性高分子分散液の一態様について説明する。
本態様の導電性高分子分散液は、導電性複合体と、前記式(1)で表されるアクリレート化合物(以下、「アクリレート化合物(A)」)と、分散媒とを、含有する。
【0036】
(導電性複合体)
本態様における導電性複合体は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む。
本態様において、前記ポリアニオンは前記π共役系導電性高分子に配位し、ポリアニオンのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープするため、導電性を有する導電性複合体を形成する。
ポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、余剰のアニオン基を有している。本態様においては、前記の余剰のアニオン基の少なくとも一部に、アミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方が結合していることが好ましい。余剰のアニオン基にアミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方が結合すれば、導電性複合体を疎水化できる。疎水化した導電性複合体は、アクリレート化合物(A)との親和性に優れる。
【0037】
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0038】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0039】
[ポリアニオン]
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、又はカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。ポリアニオンの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて溶出時間を測定し、分子量既知のポリスチレン標準物質から予め得た、溶出時間対分子量の校正曲線に基づいて求めた質量基準の分子量のことである。
【0040】
ポリアニオンのアニオン基の一部にアミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方が結合すると、疎水性置換基を形成できる。アミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方によってポリアニオンに疎水性置換基を形成することにより、導電性複合体の疎水性が高くなる。前記結合は、共有結合、イオン結合、配位結合又は水素結合のいずれであってもよい。
なお、導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、ポリアニオンのアニオン基とアミン化合物との反応によって、-HNR1R2R3で示される疎水性置換基が形成されると推測される。前記R1,R2,R3は、後述するアミン化合物に由来する置換基である。例えば、R1,R2,R3の少なくとも1つは炭化水素基(但し、その炭化水素基の水素原子の少なくとも一つがアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。)である。R1,R2,R3のうち炭化水素基でないものは水素原子である。
ポリアニオンのアニオン基とエポキシ化合物との反応によって、-CH2CHOHR4で示される疎水性置換基が形成されると推測される。前記R4は、後述するエポキシ化合物に由来する置換基である。例えば、R4は炭化水素基(但し、その炭化水素基の水素原子の少なくとも一つがアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。)である。
前記疎水性置換基は、アニオン基の酸素原子に結合する。
【0041】
アミン化合物は、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。アミン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第一級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物のうち、本態様の導電性高分子分散液を容易に製造できることから、第三級アミンが好ましく、トリブチルアミン及びトリオクチルアミンの少なくとも一方がより好ましい。
【0042】
エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ以上有する化合物である。凝集又はゲル化を防止する点では、エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ有する化合物が好ましい。
エポキシ化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
1分子中にエポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物としては、例えば、プロピレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert-ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシエイコサン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシ-9-デカン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシブタン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2-エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2-エポキシシクロドデカン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタデカン、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-ヘプタデカフルオロブタン、3,4-エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシコハク酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α-ピネンオキサイド、2,3-エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-[2-(パーフルオロヘキシル)エトキシ]-1,2-エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(3-グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10-エポキシ-1,5-シクロドデカジエン、4-tert-ブチル安息香酸グリシジル、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、2-tert-ブチル-2-[2-(4-クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-フェニルプリピレンオキサイド、コレステロール-5α,6α-エポキシド、スチルベンオキサイド、p-トルエンスルホン酸グリシジル、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル、N-プロピル-N-(2,3-エポキシプロピル)ペルフルオロ-n-オクチルスルホンアミド、(2S,3S)-1,2-エポキシ-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4-フェニルブタン、3-ニトロベンゼンスルホン酸(R)-グリシジル、3-ニトロベンゼンスルホン酸-グリシジル、パルテノリド、N-グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4-グリシジルオキシカルバゾール、7,7-ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0044】
1分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7-オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2:3,4-ジエポキシブタン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジルネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2:3,4-ジエポキシブタン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート等が挙げられる。
【0045】
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるから、充分な導電性を確保できる。
【0046】
(アクリレート化合物(A))
本態様におけるアクリレート化合物(A)は、前記式(1)で表される、パーフルオロポリエーテル基を有するアクリレート化合物である。
式(1)において、Rfは2価の分子量500以上30000以下のパーフルオロポリエーテル基であり、途中分岐を含んでいてもよい。
Rfは、下記式(6)で表される繰り返し単位を1個以上500個以下含む2価のパーフルオロポリエーテル残基であることが好ましい。
-CiF2iO- (6)
式(6)におけるiは、単位毎に独立に、1以上6以下の整数である。
より好ましくは、Rfは、前記式(7)~(9)のいずれかで表されるパーフルオロポリエーテル残基である。
式(7)において、Yはそれぞれ独立にF又はCF3基である。rは2以上6以下の整数、m、nはそれぞれ独立に0以上200以下の整数、但しm+nは2以上200以下である。sは0以上6以下の整数である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてもよい。
式(8)において、jは1以上3以下の整数、kは1以上200以下の整数である。
式(9)において、YはF又はCF3基である。jは1以上3以下の整数、m、nはそれぞれ独立に0以上200以下の整数、但し、m+nは2以上200以下である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてもよい。
【0047】
式(1)において、X1は互いに独立に、前記式(2)で表わされる基である。
式(2)において、a及びcはそれぞれ独立に0以上4以下、bは1以上4以下の整数、但しa+b+cは2、3、4のいずれかである。
【0048】
式(2)において、Q1及びQ2は、互いに独立に、炭素数3以上20以下のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Q1及びQ2としては、互いに独立して、前記式(15)~(20)のいずれかの基であることが好ましい。
【0049】
R1は互いに独立に、前記式(3)で表される基である。
式(3)において、d、e、f、gは、R1の分子量が30以上600以下、好ましくは60以上300以下となる範囲において、互いに独立に0以上20以下、好ましくは1以上10以下の整数である。各繰り返し単位の配列はランダムであってもよい。
式(3)におけるR3は炭素数1以上10以下の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基である。
飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基等が挙げられる。これらのなかでも、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0050】
前記R1のなかでも、前記式(25)で表される基が好ましい。
式(25)において、p、qはそれぞれ独立に0以上20以下の整数であり、p+qは1以上40以下である。式(25)におけるプロピレン基は分岐していてもよい。各繰り返し単位はランダムに結合されていてもよい。
【0051】
R2は前記式(4)で表されるアクリル基又はα置換アクリル基のいずれかを有する炭素数1以上20以下の一価の有機基である。
式(4)において、R4は、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基のいずれかであり、なかでも、水素原子又はメチル基が好ましい。
式(4)におけるR5は、炭素数1以上18以下の、2価もしくは3価の連結基であり、エーテル結合及びエステル結合の少なくとも一方を含んでいてもよい。
式(4)におけるnは1又は2の整数である。
R2としては、前記式(21)~(24)のいずれかの基であることが好ましく、それらのなかでも、エチレン基を有する基が好ましい。
【0052】
式(2)において、a>1の場合、R1とQ1との好ましい組み合わせは、次の通りである。R1が、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれかと、Q1が、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基のいずれかとの組み合わせが好ましい。
式(2)において、b>1の場合、R2とQ2との好ましい組み合わせは、次の通りである。R2が、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれかと、Q2が、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基のいずれかとの組み合わせが好ましい。
式(2)において、c>1の場合、好ましいQ2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基のいずれかである。
式(2)において、a>1,b>1の場合、前記の好ましいR1とQ1との組み合わせと、前記の好ましいR2とQ2との組み合わせとをさらに組み合わせた化合物が好ましい。
式(2)において、a>1,c>1の場合、前記の好ましいR1とQ1との組み合わせと、前記の好ましいQ2とをさらに組み合わせた化合物が好ましい。
式(2)において、b>1,c>1の場合、前記の好ましいR2とQ2との組み合わせと、前記の好ましいQ2とをさらに組み合わせた化合物が好ましい。
式(2)において、a>1,b>1,c>1の場合、前記の好ましいR1とQ1との組み合わせと、前記の好ましいR2とQ2との組み合わせと、前記好ましいQ2とをさらに組み合わせた化合物が好ましい。
【0053】
式(1)において、X2は互いに独立に、前記式(5)で表わされる基である。
式(5)において、R1、R2、Q1、Q2は、式(2)と同様である。
式(5)におけるh、i、jはそれぞれ独立に0以上3以下の整数であり、かつh+i+jは1、2、3のいずれかの値である。繰り返し単位の配列はランダムであってもよい。)
【0054】
式(1)において、Zは2価の有機基であり、酸素原子、窒素原子、フッ素原子を含んでいてもよい。また、Zは、環状構造、不飽和結合を有する基であってもよく、vは0以上5以下の整数である。
Zは、アクリル基の重合を阻害するようなものでなければ、構造は特に制限されない。好ましいZとしては、前記式(10)~(14)のいずれかの基が挙げられる。
Zのより好ましい例としては、下記式(26)~(33)のいずれかで表される基が挙げられる。より好ましいZとしては、下記式(28)又は式(29)で表される基が挙げられる。
【0055】
【0056】
アクリレート化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリレート化合物(A)の合成方法は、例えば、特開2010-285501号公報に記載されている。
【0057】
本態様の導電性高分子分散液において、アクリレート化合物(A)の含有量は、導電性複合体100質量部に対して0.01質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上500質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。アクリレート化合物(A)の含有量が前記下限値以上であれば、導電層の防汚性をより向上させることができ、前記下限値以上であれば、充分な導電性を確保できる。
【0058】
(その他のアクリレート化合物)
本態様の導電性高分子分散液は、前記アクリレート化合物(A)以外の他のアクリレート化合物(以下、「アクリレート化合物(B)」という。)を含有してもよい。アクリレート化合物(B)は、フッ素原子を含むアクリレート化合物であってもよいし、フッ素を含まないアクリレート化合物であってもよい。入手容易で、導電性の硬度を容易に高めることができる点では、フッ素を含まないアクリレート化合物が好ましい。
【0059】
フッ素を含まないアクリレート化合物(B)としては、例えば、ウレタンアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素-(2,2,2-トリ-(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の2官能以上6官能以下の(メタ)アクリル化合物が挙げられる。
また、フッ素を含まないアクリレート化合物(B)は、前記(メタ)アクリル化合物をエポキシ化合物に反応させて得たエポキシアクリレート、アクリル酸エステル共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入した共重合体等であってもよい。
アクリレート化合物(B)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記アクリレート化合物(B)のなかでも、アクリレート化合物(A)との反応性に優れ、導電層の硬度を容易に高くできることから、ウレタンアクリレートが好ましい。
ウレタンアクリレートは、イソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネートにヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られた化合物、ポリイソシアネートと末端ジオールのポリエステルにヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られた化合物、ポリオールに過剰のジイソシアネートを反応させて得られたポリイソシアネートにヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られた化合物等が挙げられる。
ウレタンアクリレートのなかでも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、及びペンタエリスリトートリアクリレートから選ばれるヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるポリイソシアネートとを反応させて得られたウレタンアクリレートが好ましい。
【0061】
本態様の導電性高分子分散液がアクリレート化合物(B)を含有する場合、アクリレート化合物(B)の含有量は、アクリレート化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以上1000質量部以下であることがさらに好ましい。アクリレート化合物(B)の含有量が前記下限値以上であれば、アクリレート化合物(A)と充分に反応して導電層の硬度を高めることができる。アクリレート化合物(B)の含有量が前記上限値以下であれば、導電層の導電性を確保できる。
【0062】
(分散媒)
本態様の導電性高分子分散液において、導電性複合体が疎水化されている場合には、分散媒の主成分として有機溶剤を使用することが好ましい。但し、分散媒は有機溶剤のみでなくてもよく、水を含有してもよい。
有機溶剤としては、導電性複合体の分散性を高くできることから、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を用いることが好ましく、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の少なくとも一方を用いることがより好ましい。また、有機溶剤は、フッ素を含まない溶剤が好ましい。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノールともいう)、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0063】
導電性高分子分散液における有機溶剤の含有量は、具体的には、導電性高分子分散液を100質量%とした際、50質量%以上100質量%未満であることが好ましく、80質量%以上100質量%未満であることがより好ましく、90質量%以上100質量%未満であることがさらに好ましい。導電性高分子分散液は水を全く含まなくてもよい。
本態様の導電性高分子分散液において、導電性高分子分散液の総質量に対する、前記導電性複合体の含有量は、例えば、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下がさらに好ましい。
【0064】
(高導電化剤)
導電性高分子分散液は、導電層の導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。ここで、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、アミン化合物、エポキシ化合物、アクリレート化合物(A)、アクリレート化合物(B)及び有機溶剤は、高導電化剤に分類されない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
導電性高分子分散液に含有される高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
高導電化剤の含有割合は導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上2500質量部以下であることがさらに好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
【0065】
(添加剤)
導電性高分子分散液には、公知のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、重合開始剤、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、アミン化合物、エポキシ化合物、アクリレート化合物(A)、アクリレート化合物(B)、有機溶剤及び高導電化剤以外の化合物からなる。
重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられる。前記アクリレート化合物(A)及び前記アクリレート化合物(B)は、光重合開始剤の存在下、活性エネルギー線を照射された際に、ラジカル重合が生じて硬化可能である。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体の固形分100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
【0066】
(導電性高分子分散液の製造方法)
本態様において使用する導電性高分子分散液は、下記(a)又は(b)の方法によって製造することができる。
(a)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水分散液にアミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を添加し、前記導電性複合体を析出させて析出物を形成させる工程と、前記析出物を回収する工程と、回収した前記析出物に前記アクリレート化合物(A)及び有機溶剤を添加する工程と、を有する方法。
(b)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水分散液を凍結乾燥して凍結乾燥体を得る工程と、前記凍結乾燥体にアミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方、前記アクリレート化合物(A)及び有機溶剤を添加する工程と、を有する方法。
【0067】
前記(a)及び(b)の方法において使用する導電性複合体の水分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、水とを含有する水分散液である。前記水分散液は有機溶剤を含んでもよいが、この時点では導電性複合体は疎水化されていないため、導電性複合体の分散性を高める観点から、有機溶剤の含有量が少ないことが好ましい。具体的には、前記水分散液中の有機溶剤の含有量は、0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0068】
導電性複合体の水分散液を製造する方法としては、例えば、ポリアニオンの水溶液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合する方法が挙げられる。
また、導電性複合体の水分散液は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの導電性複合体を含む市販の水分散液を使用しても構わない。
前記化学酸化重合には、公知の触媒を適用してもよい。例えば、触媒及び酸化剤を用いることができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
導電性複合体の水分散液に含まれる導電性複合体の固形分濃度は、水分散液の総質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0069】
(a)の方法において、前記水分散液にアミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を添加した場合には、前記導電性複合体を構成するポリアニオンの一部のアニオン基、具体的にはπ共役系導電性高分子へのドープに関与しないアニオン基にアミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方が付加して前記アニオン基が消失する。これにより、導電性複合体が疎水化される。
但し、π共役系導電性高分子へのドープに関与しないアニオン基の全てにアミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方が付加しなくてもよく、ドープに関与しないアニオン基が一部残留してもよい。
疎水化された導電性複合体は、水系分散媒中で分散することができないため、析出して析出物となる。
【0070】
アミン化合物を添加する場合、アミン化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50000質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上10000質量部以下であることがさらに好ましい。アミン化合物の添加量が前記下限値以上であれば、導電性複合体の疎水性を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、導電層の導電性低下を防止できる。
【0071】
エポキシ化合物を添加する場合、エポキシ化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、200質量部以上500質量部以下であることがさらに好ましい。エポキシ化合物の添加量が前記下限値以上であれば、導電性複合体の疎水性を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、導電層の導電性低下を防止できる。
【0072】
導電性複合体を析出させる際には、有機溶剤を添加してもよい。析出の際に添加する有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。析出の際に添加する有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
導電性高分子水分散液にアミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を添加する前、添加している最中、又は添加した後には、反応促進のために加熱してもよい。
【0074】
(a)の方法における、析出物を回収する工程では、例えば、ろ過、沈殿、抽出等の公知の分取方法を適用できる。これらの分取方法のなかでも、ろ過が好ましく、導電性複合体の形成に用いたポリアニオンがろ液とともに通過する程度に粗い目のフィルターを用いてろ過することが好ましい。このろ過方法によれば、析出物を分取するとともに、導電性複合体を形成していない余剰のポリアニオンをろ液側に残して、析出物と余剰のポリアニオンとを分離することができる。余剰のポリアニオンを除くことにより、析出物の導電性を高めることができる。
【0075】
ろ過に使用するフィルターとしては、化学分析分野で用いられるろ紙が好ましい。このろ紙としては、例えば、アドバンテック社製ろ紙、保留粒子径7μm等が挙げられる。ここで、ろ紙の保留粒子径は目の粗さの目安であり、JIS P 3801〔ろ紙(化学分析用)〕で規定された硫酸バリウムなどを自然ろ過したときの漏えい粒子径により求められる。ろ紙の保留粒子径は、例えば2μm以上20μm以下とすることができる。この保留粒子径は、余剰のポリアニオンを透過させて容易に分離できることから、5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0076】
(a)の方法における、析出物にアクリレート化合物(A)及び有機溶剤を添加する工程では、析出物にアクリレート化合物(A)及び有機溶剤を添加した後、析出物及びアクリレート化合物(A)を含む有機溶剤に分散処理を施すことが好ましい。
分散処理においては、分散機を用いることが好ましい。分散機としては、例えば、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ビーズミル等が挙げられる。分散機のなかでも、有機溶剤への析出物の分散性を高くできる点では、高圧ホモジナイザーが好ましい。
高圧ホモジナイザーは、例えば、分散処理する被処理液を加圧する高圧発生部と、分散を行う対向衝突部、オリフィス部又はスリット部とを備える装置が挙げられる。高圧発生部としては、プランジャーポンプ等の公知の高圧ポンプが用いられる。高圧ホモジナイザーの具体例としては、例えば、吉田機械興業製の商品名ナノマイザー、マイクロフルイディスク製の商品名マイクロフルイダイザー、スギノマシン製のアルティマイザーなどが挙げられる。
【0077】
(b)の方法における凍結乾燥では、導電性複合体の水分散液中の水分を凍結させ、真空乾燥する。これにより、凍結乾燥体を得る。
凍結乾燥の際の温度は、-60~60℃とすることが好ましく、-40~40℃とすることがより好ましい。凍結乾燥温度が前記下限値以上であれば、温度調整しやすく、前記上限値以下であれば、導電性複合体の水分散液を容易に凍結乾燥できる。
【0078】
凍結乾燥体に、アミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方、アクリレート化合物(A)及び有機溶剤を添加する際、それらの添加の順序に特に制限はない。
凍結乾燥体にアミン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方、アクリレート化合物(A)及び有機溶剤を添加した後には、分散処理を施すことが好ましい。分散処理を施せば、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性を向上させることができる。分散処理は、(a)の方法における分散処理と同様である。
【0079】
(a)及び(b)の方法において、アクリレート化合物(B)、高導電化剤及び添加剤は適宜添加すればよいが、有機溶剤と共に添加することが好ましい。
【0080】
(作用効果)
本態様の導電性高分子分散液は、導電性複合体に加えて、パーフルオロポリエーテル基を有するアクリレート化合物(A)を含有する。このアクリレート化合物(A)は、ラジカル重合可能な二重結合を有するため、導電層形成時に重合して硬化することができる。アクリレート化合物(A)の硬化物は、フッ素樹脂である。
一般にフッ素樹脂は撥水性及び撥油性が高く、防汚性に優れる。本態様におけるアクリレート化合物(A)の硬化物は、特に高い撥水性及び撥油性を有し、防汚性に特に優れる。
また、本態様におけるアクリレート化合物の硬化物は、導電層内において導電性複合体により発揮される導電性を阻害しにくい。したがって、本態様の導電性高分子分散液から形成される導電層は導電性に優れる。
また、アクリレート化合物(A)は、フッ素を含有しないアクリレート化合物(B)及びフッ素を含まない有機溶剤との親和性に優れ、フッ素を含有しないアクリレート化合物(B)及びフッ素を含まない有機溶剤に対して分離しにくく、使用しやすい。
さらに、アクリレート化合物(A)は、光重合開始剤の存在下で活性エネルギー線を照射することにより硬化することができる。
【0081】
<導電性フィルム>
本発明の導電性フィルムの製造方法の一態様について説明する。
本態様における導電性フィルムは、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備える。
【0082】
フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-αオレフィン共重合樹脂、プロピレン-αオレフィン共重合樹脂等が挙げられる。
また、フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
【0083】
フィルム基材の平均厚みとしては、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の厚さは、任意の10箇所以上について厚さを、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて測定し、その測定値を平均した値である。
【0084】
本態様における導電層は、前記態様の導電性高分子分散液が塗工されて形成された層である。したがって、本態様における導電層は、少なくとも、前記導電性複合体と、前記アクリレート化合物(A)の硬化物とを含有する。
導電性高分子分散液が、前記アクリレート化合物(B)をさらに含有する場合には、本態様における導電層は、前記アクリレート化合物(B)の硬化物、前記アクリレート(A)と前記アクリレート化合物(B)との硬化物を含有する。
また、導電性高分子分散液が、高導電化剤及び添加物の少なくとも一方をさらに含有する場合には、導電層も高導電化剤及び添加物の少なくとも一方をさらに含有する。
【0085】
前記導電層の平均厚さとしては、10nm以上20000nm以下であることが好ましく、20nm以上10000nm以下であることがより好ましく、30nm以上5000nm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性及び防汚性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
導電層の厚さは、任意の10箇所以上について厚さを、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて測定し、その測定値を平均した値である。
【0086】
導電層は、前記導電性高分子分散液をフィルム基材の少なくとも一方の面に塗工することにより形成される。
導電性高分子分散液を塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、導電性高分子分散液を簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
【0087】
導電性高分子分散液を塗工した後には、塗工した導電性高分子分散液を乾燥することが好ましい。
その乾燥方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、通常は50℃以上150℃以下の範囲であり、好ましくは60℃以上130℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
また、充分に分散媒を除去する点で、乾燥時間は5分以上であることが好ましい。
【0088】
導電性高分子分散液に含まれるアクリレート化合物(A)は、光重合開始剤の存在下では、活性エネルギー線を照射することにより硬化する。そのため、導電性高分子分散液が光重合開始剤を含有する場合には、塗工した導電性高分子分散液を乾燥した後に活性エネルギー線を照射してもよい。
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いることができる。
紫外線照射における照度は100mW/cm2以上が好ましい。照度が100mW/cm2未満であると、活性エネルギー線硬化性のバインダ成分が充分に硬化しないことがある。また、積算光量は50mJ/cm2以上が好ましい。積算光量が50mJ/cm2未満であると、充分に架橋しないことがある。なお、本明細書における照度、積算光量は、トプコン社製UVR-T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD-T36、測定波長範囲;300nm以上390nm以下、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
【0089】
本態様の導電性フィルムの製造方法では、フィルム基材に塗工する導電性高分子分散液として、導電性複合体に加えて前記アクリレート化合物(A)を含有する分散液を使用する。そのため、導電性高分子分散液から形成される導電層は、導電性及び防汚性が共に充分に優れる。
したがって、本態様の導電性フィルムの製造方法によれば、導電性及び防汚性が共に充分に優れた導電層を備える導電性フィルムを容易に製造できる。
【実施例】
【0090】
(製造例1)
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃にて攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、その溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の1000mlの溶媒を除去した。残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶媒を除去し、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0091】
(製造例2)
14.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。これにより得られた混合溶液を20℃に保ち攪拌を行いながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくりと添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。次に、得られた溶液に、200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶媒を除去した。残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶媒を除去し、ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT-PSS)を水洗した。この操作を8回繰り返して、固形分濃度1.2質量%のPEDOT-PSS水分散液を得た。
【0092】
(製造例3)
2.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、12.5gの製造例1のポリスチレンスルホン酸を500mlのイオン交換水に溶かした溶液とを30℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を30℃に保ち、掻き混ぜながら、44.35mlのイオン交換水に溶かした5.5gの過硫酸アンモニウムと0.15gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、8時間攪拌して反応させた。これにより、2.7質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)水分散液(PEDOT-PSS水分散液)を得た。
前記PEDOT-PSS水分散液565.0gに、トリオクチルアミン53.0gとイソプロパノール500gの混合液を添加し、PEDOT-PSSのトリオクチルアミン付加物を析出させた。析出したPEDOT-PSSのトリオクチルアミン付加物をろ過により分取し水100gで洗浄した後、アセトン100gで洗浄してPEDOT-PSSのトリオクチルアミン付加物18.8gを固体として取り出した。
得られた固体に3760gのイソプロパノールを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散処理して、導電性高分子分散液を得た。
【0093】
(製造例4)
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液1000gを凍結乾燥して、12gの凍結乾燥体を得た。
イソプロパノール1000gに前記凍結乾燥体5.0gとトリブチルアミン1.4gとを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散処理して、導電性高分子分散液を得た。
【0094】
(製造例5)
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液100gに、メタノール300gとエポキシ化合物(共栄社化学株式会社製、エポライトM-1230、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル)25gを添加し、60℃で4時間加熱攪拌した。このとき、前記エポキシ化合物のエポキシ基がPSSのスルホン酸基に反応するため、フリーのスルホン酸基が消失し、PEDOT-PSSの水分散性が低下してPEDOT-PSSが析出した。これにより得られた析出物をろ過により回収した。前記析出物1.575gを315gのメチルエチルケトンに添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散処理して、導電性高分子分散液を得た。
【0095】
(製造例6)
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液100gに、メタノール300gとブチレンオキシド25gを添加し、60℃で4時間加熱攪拌した。このとき、ブチレンオキシドのエポキシ基がPSSのスルホン酸基に反応するため、フリーのスルホン酸基が消失し、PEDOT-PSSの水分散性が低下してPEDOT-PSSが析出した。これにより得られた析出物をろ過により回収した。前記析出物1.45gを290gのメチルエチルケトンに添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散処理して、導電性高分子分散液を得た。
【0096】
(製造例7)
乾燥窒素雰囲気下で、還流装置と攪拌装置を備えた2000ml三口フラスコに、下記式(34)で示される両末端にα-不飽和結合を有するパーフルオロポリエーテル500g、m-キシレンヘキサフロライド700g、及びテトラメチルシクロテトラシロキサン361gを投入し、攪拌しながら90℃まで加熱した。これにより得られた混合物に、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.442g(白金単体として1.1×10-6モルを含む。)を投入し、内温を90℃以上に維持したまま4時間攪拌を継続した。1H-NMRによって原料のアリル基が消失したのを確認した後、溶剤及び過剰のテトラメチルシクロテトラシロキサンを減圧溜去し、活性炭処理を行った。これにより、下記式(35)で表される無色透明の液体パーフルオロポリエーテル含有化合物498gを得た(化合物I)。
【0097】
【0098】
【0099】
乾燥空気雰囲気下で、化合物(I)50.0gに対して、2-アリルオキシエタノール7.05g、m-キシレンヘキサフロライド50.0g、及び、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0442g(白金単体として1.1×10-7モルを含む。)を混合し、100℃で4時間攪拌した。1H-NMR及びIRでSi-H基が消失したのを確認した後、溶剤及び過剰の2-アリルオキシエタノールを減圧留去し、活性炭処理を行った。これにより、下記式(36)で表される、淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル含有化合物55.2gを得た(化合物II)。
【0100】
【0101】
乾燥空気雰囲気下で、化合物(II)50.0gに対して、テトラヒドロフラン50.0gとアクリロイルオキシエチルイソシアネート9.00gを混合し、50℃に加熱した。これにより得られた混合物に、ジオクチル錫ラウレート0.05gを添加し、50℃で24時間攪拌した。加熱終了後、80℃、2Torrで減圧留去を行った。これにより、淡黄色のペースト状物質58.7gを得た(化合物III)。1H-NMR及びIRの結果から下記式(37)に示すアクリレート化合物であることを確認した。
【0102】
【0103】
(製造例8)
化合物(I)50gに対して、2-アリルオキシエタノールに代えて、下記式(38)で表される化合物11.9g、及びアクリロイルオキシエチルイソシアネート7.05gを使用した以外は、実施例1と同様の手順で、下記式(39)で表されるアクリレート化合物56.1gを得た(化合物IV)。
【0104】
【0105】
【0106】
(製造例9)
乾燥窒素雰囲気下で、還流装置と攪拌装置を備えた100mlの三口フラスコに、下記式(40)で表される含フッ素環状シロキサン50.0g及びトルエン20.0gを仕込み、攪拌しながら90℃まで加熱した。これにより得られた混合物に、下記式(41)に示されるポリオキシエチレンメチルアリルエーテル9.75gと、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0110g(白金単体として2.73×10-8モルを含む。)の混合溶液を1時間かけて滴下し、90℃で12時間攪拌して反応溶液を得た。
別途、乾燥窒素雰囲気下で還流装置と攪拌装置を備えた100ml三口フラスコに、アリルアルコール16.9gを仕込み90℃まで加熱し、得られた混合液に一旦室温まで冷却した前記の反応溶液を3時間かけて滴下した後に、90℃で16時間攪拌した。得られた溶液において、未反応のアリルアルコールを100℃、6Torrで2時間減圧留去しして、化合物(V)を得た。
乾燥空気雰囲気下で、得られた化合物(V)60.0gに対して2-イソシアナトエチルアクリレート7.01g、ジオクチル錫ラウレート0.010gを混合し、25℃で12時間攪拌して、下記式(42)に示す平均組成を有するアクリレート化合物を得た(化合物VI)。なお、式(42)におけるRFは式(40)におけるRFと同様である。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
(実施例1)
製造例3の導電性高分子分散液40gと製造例7の前記式(37)で表されるアクリレート化合物1.4gとウレタンアクリレート(根上工業株式会社製アートレジンUN904M、固形分濃度80質量%、メチルエチルケトン溶液)45.5gと光重合開始剤(BASF社製イルガキュア184)1.5gとジアセトンアルコール11.6gとを混合して、導電性高分子分散液を得た。
得られた導電性高分子分散液を、No.6のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラーT-60)の片面に塗布し、100℃で1分間乾燥させた後、400mJの紫外線を照射した。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗工した導電性高分子分散液を硬化させて導電層を形成して、導電性フィルムを得た。
【0111】
(実施例2)
製造例3の導電性高分子分散液を製造例4の導電性高分子分散液に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
【0112】
(実施例3)
製造例3の導電性高分子分散液を製造例5の導電性高分子分散液に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
【0113】
(実施例4)
製造例3の導電性高分子分散液を製造例6の導電性高分子分散液に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
【0114】
(実施例5)
製造例7の前記式(37)で表されるアクリレート化合物を製造例8の前記式(39)で表されるアクリレート化合物に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
【0115】
(比較例1)
製造例7の前記式(37)で表されるアクリレート化合物を製造例9の前記式(42)で表されるアクリレート化合物に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
【0116】
(比較例2)
製造例7の前記式(37)で表されるアクリレート化合物をトリフロロエチルメタクリレートに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
【0117】
<評価>
各例の導電性フィルムの表面抵抗値を、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ)を用い、印加電圧10V、印加時間10秒の条件で測定した。表面抵抗値が小さい程、導電性に優れる。
各例の導電性フィルムにおいて、自動接触角計DMs-200(協和界面科学株式会社製)を用いて、水の接触角及びオレイン酸の接触角を測定した。接触角が大きい程、防汚性に優れる。
【0118】
【0119】
<結果>
アクリレート化合物(A)を含有する導電層を備える各実施例の導電性フィルムは、表面抵抗値が小さく、水の接触角及びオレイン酸の接触角が大きかった。
導電層がアクリレート化合物(A)の代わりに製造例9の前記式(42)で表されるアクリレート化合物を含有する比較例1の導電性フィルムは、表面抵抗値が大きく、導電性が低かった。
導電層がアクリレート化合物(A)の代わりにトリフロロエチルメタクリレートを含有する比較例2の導電性フィルムは、水の接触角及びオレイン酸の接触角が小さく、防汚性が低かった。
これらの結果より、本発明の導電性高分子分散液から形成された導電層は導電性及び防汚性が共に優れていることが示された。