(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置
(51)【国際特許分類】
B63B 1/32 20060101AFI20220330BHJP
B63H 25/00 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B63B1/32 A
B63H25/00 Z
(21)【出願番号】P 2018022874
(22)【出願日】2018-02-13
【審査請求日】2020-02-13
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】504387425
【氏名又は名称】梅 正新
(74)【代理人】
【識別番号】100087918
【氏名又は名称】久保田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】梅正新
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-042399(JP,U)
【文献】米国特許第01708803(US,A)
【文献】特開昭59-014591(JP,A)
【文献】実開平06-049874(JP,U)
【文献】中国実用新案第202953159(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第105217003(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/32
B63H 1/26
B63H 25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船首喫水線下の前端位置に1台の三方向管が設けられ、前記三方向管は、外形略逆Y字形に形成された構造であり、それぞれ船首喫水線下の前端と、両舷の船体外板とへ連通し、前記三方向管内に、船舶航行のメインシステム体系が装着されずに、船舶の方向転換補助のためのストッパーのみが設けられており、前記ストッパーは、水流偏向を制御可能であり、水流が前方の流路に流入し、前記ストッパーによって水流偏向を前記三方向管の左向き流路に向ける場合には、船舶の右向きの方向転換を補助可能であり、前記ストッパーによって水流偏向を前記三方向管の右向き流路に向ける場合には、船舶の左向きの方向転換を補助可能であり、
前記ストッパーの形状が三角形であることを特徴とする船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置に関するものであり、さらに詳しくは、船首に設けられ、方向転換補助の機能を兼ね備えた航行抵抗低減機構を有する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶の前進時には、船舶の前端に最大圧力抵抗を受けるが、前記圧力抵抗は、船速の低下及び消費エネルギーの増加を引き起こす原因となっている。従って、伝統的な改良方式としては、船舶を流線形に改修することが一般的であるが、船舶最先端の最大圧力抵抗を依然として回避することができない。
【0003】
図6に示すように、従来の船舶100は、通常、船舶100の船尾部下方に螺旋推進器101が設けられると共に、その後方に方向舵板102が設けられ、前記方向舵板102の回転角度を制御することにより、船舶100の進行方向を変更することから、船舶100の航行方向を制御する目的を達成することができる。しかしながら、従来の船舶100は、後方の螺旋推進器101で推進することにより、その推進力を船尾に付与し、船舶100が舵板102を回転することで、方向転換を行う場合に、水流衝撃を舵板102に与えて生じる水流衝撃力は、船の船尾部に対して横方向分力を生じるが、それと同時に縦方向分力(つまり、逆方向の推進力)も生じることにより、船速を低下させることになる。船舶の航行中に、風、水流及び波浪の影響を受けて、常に一定方向を保持することができずに、「之」字形に前進することから、随時舵を用いて方向修正する必要があるので、前述の逆方向の推進力を避けることができないという問題がある。しかも、船舶の最大舵角にそれなりの制限があるため、最小回転半径に限度があり、緊急状況の場合に、他の船舶や水中障害物を避けるために、より急な方向転換を行うことができない。よって、現有の船舶の方向転換システムには、依然として多大な改善の余地を残している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、船舶の航行抵抗の低減の機能及び航行方向の制御の補助機能を併せ有する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は、前記の本発明の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、船首喫水線下の前端位置に1台の三方向管が設けられ、各自に船首前方と、左右両舷の般体外板とへ連通させることにより、前記課題を解決することができる点に着目し、本発明に想到するに至った。
【0006】
すなわち、上記課題を達成するために、本発明によれば、下記の技術手段を採用する。
かかる船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置は、船首水線下の前端位置に1台の三方向管が設けられ、前記三方向管は、外形略逆Y字形に形成された構造であり、それぞれ船首の前端と、両舷の船体外板とへ連通し、三方向管内に、少なくとも1つのバルブ(または整流案内装置)が設けられており、当該バルブ(または整流案内装置)は、水流偏向を制御可能であり、水流が前方の流路に流入し、バルブ(または整流案内装置)によって水流偏向を三方向管の左向き流路に向ける場合には、船舶の右向きの方向転換を補助可能であり、バルブ(または整流案内装置)によって水流偏向を三方向管の右向き流路に向ける場合には、船舶の左向きの方向転換が補助可能な構造としたものである。
【0007】
かくして、本発明の要旨は、次の(1)~(6)に記載の通りのものである。
・ 船首喫水線下の前端位置に1台の三方向管が設けられ、前記三方向管は、外形略逆Y字形に形成された構造であり、それぞれ船首水線下の前端と、両舷の船体外板とへ連通し、前記三方向管内に、船舶航行のメインシステム体系が装着されずに、船舶の方向転換補助のための少なくとも1つのバルブのみが設けられており、当該バルブは、水流偏向を制御可能であり、水流が前方の流路に流入し、当該バルブによって水流偏向を前記三方向管の左向き流路に向ける場合には、船舶の右向きの方向転換を補助可能であり、当該バルブによって水流偏向を前記三方向管の右向き流路に向ける場合には、船舶の左向きの方向転換を補助可能であることを特徴とする船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置。
【0008】
(2) 船首喫水線下の前端位置に1台の三方向管が設けられ、前記三方向管は、外形略逆Y字形に形成された構造であり、それぞれ船首水線下の前端と、両舷の船体外板とへ連通し、前記三方向管内に、船舶航行のメインシステム体系が装着されずに、船舶の方向転換補助のための整流案内装置のみが設けられており、前記整流案内装置は、水流偏向を制御可能であり、水流が前方の流路に流入し、前記整流案内装置によって水流偏向を前記三方向管の左向き流路に向ける場合には、船舶の右向きの方向転換を補助可能であり、前記整流案内装置によって水流偏向を前記三方向管の右向き流路に向ける場合には、船舶の左向きの方向転換を補助可能であることを特徴とする船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置。
【0009】
(3) 船首水線下の前端位置に1台の三方向管が設けられ、前記三方向管は、外形略逆Y字形に形成された構造であり、それぞれ船首水線下の前端と、両舷の船体外板とへ連通し、前記三方向管内に、船舶航行のメインシステム体系が装着されずに、船舶の方向転換補助のためのストッパーのみが設けられており、前記ストッパーは、水流偏向を制御可能であり、水流が前方の流路に流入し、前記ストッパーによって水流偏向を前記三方向管の左向き流路に向ける場合には、船舶の右向きの方向転換を補助可能であり、前記ストッパーによって水流偏向を前記三方向管の右向き流路に向ける場合には、船舶の左向きの方向転換を補助可能であることを特徴とする船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置。
【0010】
(4)前記ストッパーの形状が三角形であることを特徴とする前記(2)に記載の船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置。
【0011】
(5)船首喫水線下の前端位置に1台の三方向管が設けられ、前記三方向管は、外形略逆Y字形に形成された構造であり、それぞれ船首水線下の前端と、両舷の船体外板とへ連通し、前記三方向管内に、船舶航行のメインシステム体系が装着されずに、船舶の前進運転時に、前方の水が前記三方向管を通過した後に両舷へ分岐して流れ込むことで、船舶全体の抵抗を低減させることを特徴とする船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置。
【0012】
(6)前記三方向管は、外形略逆T字形に形成された構造であることを特徴とする、前記(1)、(2)、(3)、(5)のいずれか1項に記載の船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、前記の通りの構成からなるものであり、船舶の正常な前進航行時に、前方の水が三方向管に進入した後に両舷へ分岐して流れ込むことにより、船舶全体の抵抗を低減させることができることから、燃料油の節約や消費エネルギーの軽減が図られるものであり、方向転換が必要な場合に、三方向管中から両舷への通水流量を調整することにより、方向転換補助の効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置(以下、本段落において、「装置」という。)を備えた船舶の側面構造図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る「装置」の第1実施例の構造図である。
【
図2-1】本発明の一実施例形態に係る「装置」の第1実施例の舳先の左折状態の模式図である。
【
図2-2】本発明の一実施形態に係る「装置」の第1実施例の舳先の右折状態の模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る「装置」の第2実施例の構造図である。
【
図3-1】本発明の一実施形態に係る「装置」の第2実施例の舳先の左折状態の模式図である。
【
図3-2】本発明の一実施形態に係る「装置」の第2実施例の舳先の右折状態の模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る「装置」の第3実施例の構造図である。
【
図4-1】本発明の一実施形態に係る「装置」の第3実施例の舳先の左折状態の模式図である。
【
図4-2】本発明の一実施形態に係る「装置」の第3実施例の舳先の右折状態の模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る「装置」の第4実施例の構造図である。
【
図5-1】本発明の一実施形態に係る「装置」の第4実施例の舳先の左折状態の模式図である。
【
図5-2】本発明の一実施形態に係る「装置」の第4実施例の舳先の右折状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本発明の船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置は、船舶10の尾部下方に本来の螺旋推進器101や方向舵板102などの操舵システムを保留するほか、本発明は、別途に船舶10の船首水線下の前端位置に1台の三方向管11が設けられ、各自に船首の真正面側と、左右両舷の船体外板とへ連通し、船舶10の正常な前進航行時に、前方の水が三方向管11を通過した後に両舷へ分岐して流れ込むことにより、船舶10全体の抵抗を低減させることができることから、燃料油の節約や消費エネルギーの軽減が図られるもので、方向転換が必要な場合に、三方向管11中から両舷への通水流量を調整することにより、方向転換補助の目的を達成することができる。
【0016】
図2~
図5を併せて参照し、前記三方向管11は、外形略逆Y字形あるいは逆T字形に形成された構造であり、流体力学の原理に基づき、船舶10の進行途中に、舳先最先端の水流が三方向管11に進入した後に船舶10の両舷へ分岐して流れ込んで排出されることで、船舶10全体の抵抗を低減させることができるため、船舶10の進行速度の向上や燃料油の節約が図られて消費エネルギーを軽減させることができる。
【第1実施例】
【0017】
図2に示すように、本発明の船舶10の進行方向を変更しようとする第1実施例において、
図1に示すような後方の舵板102によって方向転換を制御するほか、本発明の方向転換補助装置を起動して方向転換を補助することもできる。実際の操作上、船舶10を左向きに方向転換させる場合では、
図2-1を併せて参照し、船舶10内部の制御台12によって駆動器13を起動して、三方向管11の中間に位置するバルブ14を左に偏向させるように駆動することにより、三方向管11の左側の流路を閉塞するので、三方向管11の前方流路から分岐して流れる水流が、左側に変位するバルブ14による制限を受けて全ての水流を右側の流路に流すこととなるため(矢印参照)、進行中の船舶10を左向きに方向転換させるように駆使することができる。一方、船舶10を右向きに方向転換させる場合では、
図2-2を併せて参照し、船舶10内部の制御台12によって駆動器13を起動して、三方向管11の中間に位置するバルブ14を右に偏向させるように駆動することにより、三方向管11の右側の流路を閉塞するので、三方向管11の前方流路から分岐して流れる水流が、右側に変位するバルブ14による制限を受けて全ての水流を左側の流路に流すこととなるため(矢印参照)、進行中の船舶10を右向きに方向転換させるように駆動することができる。
【第2実施例】
【0018】
図3に示すように、本発明の船舶10の進行方向を変更しようとする第2実施例において、
図1に示すような後方の舵板102によって方向転換を制御するほか、本発明の方向転換補助装置を起動して方向転換を補助することもできる。実際の操作上、船舶10を左向きに方向転換させる場合では、
図3-1を併せて参照し、船舶10内部の制御台12によって駆動器13を起動して、三方向管11の中央に位置する三角形のストッパー15を左に偏向させるように駆動することにより、三方向管11の左側の流路を閉塞するので、船舶10前方の三方向管11に流れ込まれる水流が、左側に変位するストッパー15による制限を受けて全ての水流を右側の流路に流すこととなるため(矢印参照)、船舶10の左側の流路がストッパー15によって水流の抵抗を阻止することができるので、進行中の船舶10を左向きに偏向回転させるように駆動することができる。一方、船舶10を右向きに方向転換させる場合では、
図3-2を併せて参照し、船舶10内部の制御台12によって駆動器13を起動して、三方向管11の中央に位置するストッパー15を右に偏向させるように駆動することにより、三方向管11の右側の流路を閉塞するので、船舶10前方の三方向管11に流れ込まれる水流が、右側に変位するストッパー15による制限を受けて全ての水流を左側の流路に流すこととなるため(矢印参照)、船舶10の右側の流路がストッパー15によって水流の抵抗を阻止することができるので、進行中の船舶10を右向きに偏向回転させるように駆動することができる。
【第3実施例】
【0019】
図4に示すように、本発明の船舶10の進行方向を変更しようとする第3実施例において、
図1に示すような後方の舵板102によって方向転換を制御するほか、本発明の方向転換補助装置を起動して方向転換を補助することもできる。実際の操作上、船舶10を左向きに方向転換させる場合では、
図4-1を併せて参照し、船舶10内部の制御台12によって駆動器13を起動して、三方向管11の両側管壁上に位置する左側のバルブ16を右側に偏向させるように駆動することにより、三方向管11の左側の流路を閉塞するので、三方向管11の前方流路から分岐して流れる水流が、左側に変位するバルブ16による制限を受けて全ての水流を右側の流路に流すこととなるため(矢印参照)、進行中の船舶10を左向きに方向転換させるように駆動することができる。一方、船舶10を右向きに方向転換させる場合では、
図4-2を併せて参照し、船舶10内部の制御台12によって駆動器13を起動して、三方向管11の両側管壁上に位置する右側のバルブ16’を左側に偏向させるように駆動することにより、三方向管11の右側の流路を閉塞するので、三方向管11の前方流路から分岐して流れる水流が、右側に変位するバルブ16’による制限を受けて全ての水流を左側の流路に流すこととなるため(矢印参照)、進行中の船舶10を右向きに方向転換させるように駆動することができる。
【第4実施例】
【0020】
図5に示すように、本発明の船舶10の進行方向を変更しようとする第4実施例において、
図1に示すような後方の舵板102によって方向転換を制御するほか、本発明の方向転換補助装置を起動して方向転換を補助することもできる。実際の操作上、船舶10を左向きに方向転換させる場合では、
図5-1を併せて参照し、船舶10内部の制御台12によって駆動器13を起動して、三方向管11の中央に位置する整流案内装置17を右側の流路に導くように駆動するので、三方向管11の前方流路から分岐して流れる水流が、整流案内装置17の案内を受けて大量の水流を右側の流路に流すこととなるため(矢印参照)、進行中の船舶10を左向きに方向転換させるように駆動することができる。一方、船舶10を右向きに方向転換させる場合では、
図5-2を併せて参照し、船舶10内部の制御台12によって駆動器13を起動して、三方向管11の中央に位置する整流案内装置17を左側の流路に導くように駆動するので、三方向管11の前方流路から分岐して流れる水流が、整流案内装置17の案内を受けて大量の水流を左側の流路に流すこととなるため(矢印参照)、進行中の船舶10を右向きに方向転換させるように駆使することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
上記を総合すると、本発明の船舶の航行抵抗低減及び船舶の方向転換補助が可能な装置は、船首喫水線下の前端位置に1台の三方向管が設けられ、前記三方向管内に、少なくとも1つのバルブ(または整流案内装置)が設けられており、船舶の前方に向かう進行時に、バルブ(または整流案内装置)が三方向管の中央に位置する場合、水流が平均的に三方向管を通過して分岐して流れることで、船舶の抵抗を低減させ、進行速度を向上させ、または消費燃料油を減少させることができる。船舶の進行方向を変更しようとする時に、伝統式方向舵板によって方向転換を制御するほか、駆動器を起動することにより、三方向管内のバルブ(または整流案内装置)を駆動することで、水流を一側の出口に向けて流すことから、進行中の船舶を反対側の方向に転換させるように補助することもできる。
本発明は、前記の通り、船舶の航行抵抗を低減させ、また、方向制御を効率的補助可能な装置を提供することができるので、燃料消費量を低減させることができ、産業上の利用可能性も極めて大きい。
【符号の説明】
【0022】
10:船舶
11:三方向管
12:制御台
13:駆動器
14:バルブ
15:ストッパー
16,16’:バルブ
17:整流案内装置
100:船舶
101:螺旋推進器
102:舵板