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7049139ワイヤ構造体で形成された混合要素を有する自動車のパイプライン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】ワイヤ構造体で形成された混合要素を有する自動車のパイプライン
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20220330BHJP
【FI】
G01F1/00 G
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018038286
(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公開番号】P2018155741
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】10 2017 002 086.8
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517449763
【氏名又は名称】エムアーエヌ トラック アンド バス エスエー
【氏名又は名称原語表記】MAN Truck & Bus SE
【住所又は居所原語表記】Dachauer Strasse 667, 80995 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 光治
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハインドル
(72)【発明者】
【氏名】フランク タックスホルン
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0269583(US,A1)
【文献】特許第2511992(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンにガスを供給するためのパイプライン(1)であって、
前記ガス用の流路を形成するパイプライン断面(D)と、ガス流量を測定するためのガス測定装置(2)とを有し
前記パイプライン(1)は、前記ガス測定装置(2)の上流にワイヤ構造体で形成された混合要素(3)を含み、
前記混合要素(3)は、前記混合要素(3)の上流に存在する不均質な流れプロファイル(S1)を均質化するために、前記ガスに影響を与えるのに、好ましくは前記ガスを充分に混合するのに、役立つものであり、
特徴として、
前記ワイヤ構造体は、前記混合要素(3)を形成するための、ワイヤ編物またはワイヤ織物の巻き取られたバンド(B)を含んでいる、および/または
ワイヤ編物チューブが平坦にプレスされてバンド(B)が形成されこのバンド(B)が巻き取られて前記混合要素(3)が形成される、
パイプライン。
【請求項2】
前記混合要素(3)は、前記パイプライン断面(D)にわたって実質的に均質な流れプロファイル(S2)に変換されるように、前記不均質な流れプロファイル(S1)を均質化するものであることを特徴とする、請求項1に記載のパイプライン(1)。
【請求項3】
前記ワイヤ構造体が少なくとも1つのワイヤ編物または少なくとも1つのワイヤ織物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のパイプライン(1)。
【請求項4】
前記バンド(B)にエンボス(3.3)が施されており、好ましくは、前記エンボス(3.3)が前記バンド(B)の転がり面(RE)に関して傾斜しおよび/または非垂直に配向していることを特徴とする、請求項に記載のパイプライン(1)。
【請求項5】
前記エンボス(3.3)は、エンボス加工された波形として形成されておりおよび/または傾斜したV字状またはW字状のパターンを形成するものであることを特徴とする、請求項に記載のパイプライン(1)。
【請求項6】
前記混合要素(3)が均一な厚さおよび/または均質な構造を有することを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項7】
前記バンド(B)は、反転する重なり配置で巻き取られ、好ましくは互いに上下に重ねて配置された前記バンド(B)の少なくとも2つの層が一緒に巻き取られたものであることを特徴とする、請求項乃至のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項8】
前記巻き取られた状態のバンド(B)が個々の層を形成し、前記個々の層が互いに異なる方向および/または反対方向に配向されたエンボス(3.3)を有することを特徴とする、請求項乃至のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項9】
前記バンド(B)の巻き取られた状態において、
前記バンド(B)の2つの開放端部(E1、E2)が、前記バンド(B)の各外側に配置され、好ましくは180°±40°、±30°または±20°だけ互いにずらして配置され、または
前記バンド(B)の2つの開放端部(E1、E2)が、好ましくは前記バンド(B)内の中心部に配置される、
ことを特徴とする、請求項乃至のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項10】
前記混合要素(3)が前記パイプライン断面(D)全体を満たしていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項11】
前記混合要素(3)が渦流生成装置として作用して、前記ワイヤ構造体のワイヤ部における前記ガスの渦流によって前記ガスの充分な混合および前記不均質な流れプロファイル(S1)の均質化が確保されるようになることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項12】
前記混合要素(3)の出口(3.2)におけるガス流は複数の渦流を有し、および/または前記混合要素(3)の出口(3.2)におけるガス流は前記混合要素(3)の入口(3.1)におけるガス流よりも激し渦巻き、
前記混合要素(3)によって形成された渦流を減衰させるために、前記混合要素(3)の下流に、前記渦流を低減するために線状に伸びる沈静化部(4)および/または少なくとも1つの整流装置(5.1、5.2)が形成されている
ことを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項13】
前記ガス測定装置(2)のガス入口にまたはこのガス入口の直前に、渦流を低減するための整流装置(5.2)が配置されることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項14】
- 前記ワイヤ編物のワイヤ部は、ランダムに配置されおよび/または前後で互いに交差するよう配置されて、好ましくは前記ガスは前記混合要素(3)を通って流れる間に複数回偏向され、または
- 少なくとも2つのワイヤ織物層のワイヤ部は、前後で互いに交差するよう配置されて、好ましくは前記ガスが前記混合要素(3)を通って流れる間に複数回偏向されるものである
ことを特徴とする、請求項1乃至13のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項15】
前記混合要素(3)の上流の前記パイプライン(1)は、
外乱要素を有し、前記外乱要素によって、前記ガスが、前記混合要素(3)の上流で前記パイプライン断面(D)にわたって不均質な流れプロファイル(S1)を有するものとなり、または
湾曲していて、前記混合要素(3)の上流に前記パイプライン断面(D)にわたって不均質な流れプロファイル(S1)を有するようになっている
ことを特徴とする、請求項1乃至14のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項16】
前記混合要素(3)、前記沈静化部(4)および/または少なくとも1つの整流装置(5.1、5.2)が、前記パイプライン(1)において前記ガス測定装置(4)の上流に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項17】
- 前記ワイヤ構造体は、金属またはプラスチック材料で形成され、特に精錬鋼または特殊鋼で形成され、および/または
- 前記ワイヤ編物は、少なくとも複数の部分において単一ワイヤで編まれている
ことを特徴とする、請求項1乃至16のいずれかに記載のパイプライン(1)。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれかに記載のパイプライン(1)を有する、自動車、好ましくはユティリティ・ビークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを、特に空気を、内燃エンジン機関)に供給するためのパイプラインであって、ガス用の流路を形成するパイプライン断面と、ガス流量を測定するためのガス測定装置(好ましくはガス質量測定装置)とを有するパイプラインに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンに関する現在の排気ガス規格に準拠させるために、内燃エンジンに供給される空気量は可能な限り正確に決定されなければならない。このために、加熱ワイヤまたは加熱フィルムの原理によって動作するパイプラインにおいて主に空気質量計を使用する。空気の流速は、通常、パイプライン断面内の或る複数の点においてだけ測定される。僅かな頻度で使用される低い超音波センサでは、通常、測定はパイプライン断面におけるライン(線)に沿って行われる。測定がパイプライン断面の非常に小さい領域でのみ行われるので、その測定結果は、パイプライン断面に存在する流れプロファイル(分布外形)に大きく依存する。しかし、流れプロファイルは、通常、不均一または不均質であり、それは、例えば、湾曲したパイプライン部、各部品の設置公差、各部品の経年劣化(エージング)および変形のような外乱要因(perturbing factors:擾乱、妨害、干渉)に起因する。
【0003】
流れ分布に対する或る少数の外乱(例えば、パイプ・レイアウト、空気質量計の上流の断面変化、エア・フィルタの設計、等)の影響は、機関(エンジン)制御装置に格納された特性曲線を使用することによって、補正することができる。一方、例えば、各部品の設置公差、各部品の経年劣化および変形によって生じる外乱の影響、ユティリティ・ビークル(特定用途車、実用車)における圧縮空気供給ための空気取入れによる影響、未承認のエア・フィルタの使用による影響、等に起因する或る多数の外乱の影響を補正することができない。
【0004】
国際公開第2014/088487号で、パイプラインの断面形状を意図的に変更することによって或る外乱要因の改善を達成する方法が知られている。しかし、このようにして達成された改善は、現在の排気ガス基準に準拠するのに充分ではない。さらに、層流状の空気流を達成するために、例えば独国特許出願公開第10027831号のような従来技術で、整流(直線化)格子が知られている。従って、そのような整流格子は主に渦流をなくすのに役立って、乱流の空気流がより層流状の空気流に変換されるが、流れプロファイルに対する有意な影響はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/088487号
【文献】独国特許出願公開第10027831号
【発明の開示】
【0006】
本発明が解決しようとする1つの課題は、内燃エンジンにガスを供給するためのパイプライン内のガス流量の測定精度を高めることである。
【0007】
発明の概要
この課題は、独立請求項の特徴によって解決することができる。本発明の有利な変形は、従属請求項および以下の説明において見出される。
【0008】
本発明は、実質的に剛性または柔軟性のパイプラインに関し、好ましくは自動車の、特にユティリティ・ビークル(例えばバスまたはトラック)の内燃エンジンに、例えばガス(特に空気)を供給するための実質的に剛性または柔軟性のパイプラインに関する。
【0009】
パイプラインは、ガス用の流路または通路を形成するパイプライン断面と、ガス流量(gas mass flow)を測定するためのガス測定装置(例えばガス質量測定装置)(例えば、ガス質量センサ、加熱ワイヤまたは加熱フィルムの原理によって動作する測定装置、または少なくとも1つの超音波センサ、等)とを有する。
【0010】
ガス測定装置は、好ましくはガス流量を測定するのに、特にガス流量の流速を測定するのに、役立つ。本発明は、特徴として、特に、パイプラインが、ガス測定装置の上流にワイヤ構造体で形成された混合要素(混合手段)を含み、その混合要素は、混合要素の上流に存在する不均質な(ガス)流れプロファイルを均質化するために、ガスに影響を与えるのに、好ましくはガスを充分に(徹底的に、完全に)混合するのに役立ち、即ち、不均質性が、少なくとも低減できることが好ましく、または実質的に完全に除去できることが好ましい。
【0011】
このようにして、混合要素の上流の不均質な流れプロファイルを、少なくとも実質的に均質な流れプロファイルに適切に変換することができる。
【0012】
混合要素は、例えばパイプライン断面の少なくともより大きい部分にわたって、不均質な流れプロファイルが適切に実質的に均質な流れプロファイルに変換されるように、不均質な流れプロファイルを均質化することができることが、好ましい。
【0013】
従って、混合要素は、特に、ガス流を充分に混合すること(好ましくは実質的に完全に混合すること)によってパイプライン断面にわたる流れプロファイルにおける不均一な分布が少なくとも減少するように作用し、その結果、ガスが混合要素を通って流れた後で、最も均質な可能な流れプロファイルが(好ましくは実質的にパイプライン断面全体にわたって)存在するようになる。
【0014】
最も均質な可能な流れプロファイルは、特に、ワイヤ構造体の各ワイヤ部分におけるガスの意図的に形成された渦流(swirling:旋回流、乱流)によって達成することができる。
【0015】
ワイヤ構造体は、少なくとも1つのワイヤ編物(メッシュ)または少なくとも1つのワイヤ織物を含むことが、可能である。
【0016】
混合要素を形成するために、ワイヤ構造体は、ワイヤ編物またはワイヤ織物の巻き取られたバンド(帯状体)を含んでもよい。従って、ワイヤ編物またはワイヤ織物の巻き取られたバンドは、混合要素の形成に役立つことができる。
【0017】
そのバンドは、例えば、編まれまたは織られたストリップ(細長い一片)を含むことができ、および/または、例えば、実質的に水平に配向した形状および/または実質的に平坦な(平面状の)元の形状を有してもよい。
【0018】
特に、ワイヤ編物は、ワイヤ編物チューブを含むことが可能である。ワイヤ編物チューブは、好ましくは平坦にプレス(押圧)されてバンドにされ、そのバンドは、混合要素を形成するように巻き取られる。
【0019】
好ましくは直線状の(線状に伸びる)エンボス(加工)をバンドに施すことが可能であり、例えばバンドの転がり面(平面)(rolling plane、Rollebene、転動面)(転がる方向、長手方向)に関して(対して)斜め方向におよび/または非垂直(直角)方向に配向したエンボスを施すことができる。例えばバンドの転がり面に関して(対して)垂直に配向したエンボスは、バンドが巻き取られたときに各エンボス隆起部(elevations:増大部、突出部)が互いに一致して重なる(嵌り込む、落ち込む)可能性があるので、不利である。
【0020】
エンボスは、例えば幅広のバンドの場合、特に安定性を高めるために、例えば、実質的に傾斜したパターン、V字状パターン(特にシェブロン・パターン(杉綾模様))、または実質的にW字状パターンを形成してもよい。
【0021】
エンボスは、エンボス加工された波形(corrugation)として形成されることが好ましい。
【0022】
ガスの最も均一な可能な混合を達成するために、混合要素は実質的に均一な厚さおよび/または実質的に均質な構造を有する。
【0023】
このために、1つのバンドは、例えば、反転する(裏返す)重なり配置で(in reversed lay、im Gegenschlag)巻き取られてもよく、適切に、1つのバンドが少なくとも2つの層に互いに上下に重ねて配置されて、それらの層がそのバンドの一端部から一緒に適切に巻き取られるようにしてもよい。
【0024】
巻き取られた状態のバンドは、例えば個々の層を形成していてもよく、例えば、個々の層は、好ましくは相異なる向きおよび/または反対向きの複数のエンボスを有することができる。
【0025】
反転する重なり配置で巻き取られるとき、そのバンドを最初に少なくとも1回、好ましくはその長さの概ね半分の位置で、折り返し、次いでその少なくとも2つの層を一緒に巻き取るようにする。このようにして、バンドの巻き取られた個々の層におけるエンボス加工された各隆起部は、相異なる向き、特に反対の向きを有することができ、従って好ましくは互いに重ならず(嵌り込まず)、その結果、実質的に均一な厚さおよび/または実質的に均質な構造を有する混合要素を形成できることが、好ましい。
【0026】
バンドを、反転のない(順次)同じ面方向の重なり配置で(in parallel lay、im Gleichschlag)巻き取るとき、1つのバンドを1つの層のみにしてそのバンドの一端部から巻き取っても、その結果、バンドにおける巻き取られた個々の層のエンボス加工された各隆起部は、互いに同じ配向を有することがあり、それによって互いに一致して重なる(嵌り込む)ことがある。
【0027】
バンドの巻き取られた状態において、バンドの2つの開放端部(自由端部)がバンドの各外側で、例えば、180°±40°、±30°または±20°だけ互いにずらして配置されて、例えば、混合要素は実質的に対称な端縁領域を有するようにされる。
【0028】
しかし、バンドの巻き取られた状態において、バンドの2つの開放端部がバンドの内側に(好ましくは実質的に中心部に)配置されて、例えば混合要素が非対称な端縁領域を有するようにされることも、可能である。
【0029】
混合要素、従って特にワイヤ構造体は、パイプライン断面全体を実質的に充填するまたは満たすものであってもよい。
【0030】
混合要素は渦流生成(旋回)装置として作用することが可能であって、その結果、ワイヤ構造体の複数のワイヤ部におけるガスの渦流によって、ガスの充分な(徹底的な)混合と、不均質な流れプロファイルの均質化が確実に得られるようにされる。
【0031】
従って、混合要素の出口におけるガス流は、例えば、好ましくは小さい複数の渦流を有し得る。代替的にまたは追加的に、混合要素の出口におけるガス流は、混合要素の入口における場合よりも強く渦巻かせることができる。渦流が形成されるにもかかわらずまたは実際のところ渦流のおかげで、均質な流れプロファイルを得ることができる。
【0032】
渦流を減衰させる(および特に減少させる)ために、ガス用の1つの実質的に線状に伸びるまたは直線状の(好ましくは真っすぐな)沈静化部および/または少なくとも1つの整流装置または手段(例えば整流格子)を形成して、渦流を減少させるよう、従って混合要素の下流で実質的に層流状のガス流を達成するようにすることが、可能である。
【0033】
渦流を減少させるための整流装置は、例えば、ガス測定装置のガス入口(例えば測定チューブのガス入口)にまたはその直前に配置することができる。
【0034】
好ましくはガスが混合要素を通って流れている期間中にガスが数回偏向されるように、ワイヤ編物の複数のワイヤ部を、任意の所与の角度で互いに適切に前後で交差するようにおよび/またはランダム(無秩序)な配向で、配置することが可能である。その偏向は、好ましくは、空間的な全ての三方向で生じてもよい。
【0035】
好ましくはガスが混合要素を通って流れている期間中にガスが数回偏向されるように、少なくとも2つのワイヤ織物層の複数のワイヤ部を、任意の所与の角度で互いに適切に前後で交差するように、配置することが可能である。その偏向は、好ましくは、空間的な全ての三方向で生じてもよい。
【0036】
パイプラインは、混合要素の上流に少なくとも1つの外乱要素を有してもよく、その外乱要素によって、結果的に、ガスは、混合要素の上流にパイプライン断面にわたる不均質な/不均一な流れプロファイルを有する。代替的にまたは追加的に、パイプラインは、混合要素の上流で湾曲していてもよく、その湾曲によって、結果的に、ガスは、混合要素の上流にパイプライン断面にわたる不均質な/不均一な流れプロファイルを有する。
【0037】
混合要素、沈静化部および/または少なくとも1つの整流装置は、好ましくはガス測定装置の上流のパイプライン内に配置される。
【0038】
混合要素の上流には、例えば、ガスを濾過するためにガス・フィルタを配置することができる。
【0039】
ワイヤ構造体は、好ましくは金属材料で、特に精錬鋼または特殊鋼で形成される。しかし、本発明の文脈では、ワイヤ構造体は、例えば、プラスチック材料で形成されてもよい。
【0040】
ワイヤ編物は、好ましくは単一ワイヤで編まれ、少なくとも各部において、特に金属および/またはプラスチックの糸(スレッド)で編まれる。
【0041】
既に述べたように、ガスは空気であることが好ましい。
【0042】
従って、ガス測定装置は空気測定装置であることが好ましい。
【0043】
ガス測定装置は、(ガス)流速を測定するのに役立つことが、好ましい。
【0044】
本発明の文脈において、“均質化”(homogenize)および/または“均質な”(homogeneous)という特徴は、好ましくは、不均質性が実質的に完全に除去された実施形態を意味するが、不均質性が単に適切に実質的に低減された実施形態をも意味することが好ましい。従って、“均質化”および/または“均質な”という特徴は、不均質な流れプロファイルの完全な均質化に限定されないことが、好ましい。また、例えば、パイプの中心軸の周りで(中心軸を中心として)実質的に回転対称である流れプロファイルも、本発明の文脈において“均質な”および/または“均質化”という特徴の下に適切に包含されてもよい。
【0045】
また、本発明は、先行する請求項の1つに記載のパイプラインを有する、自動車、好ましくはユティリティ・ビークル(例えばバスまたはトラック)に関する。
【0046】
本発明の上述の好ましい実施形態および特徴は、互いに組み合わせることができる。本発明の他の有利な変形は、従属請求項に開示されおり、または図面と併せて本発明の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、本発明の一実施形態によるパイプラインの図を示している。
図2図2は、本発明の一実施形態によるワイヤ編物製の混合要素のセグメント(断片、一区画)を示している。
図3図3は、本発明の一実施形態による混合要素を形成するためのワイヤ織物のセグメントを示している。
図4図4は、本発明の一実施形態による混合要素を形成するためのワイヤ編物のセグメントを示している。
図5図5は、本発明の一実施形態による混合要素を形成するためのバンドの各図を示している。
図6図6は、本発明の一実施形態による混合要素を形成するための巻き取られたバンドの図を示している。
図7図7は、本発明の別の実施形態による混合要素を形成するための巻き取られたバンドの図を示している。
図8図8は、本発明の一実施形態による混合要素の作用モードを概略的に示している。
図9図9は、本発明の一実施形態による混合要素のためのエンボスを形成する方法を示している。
図10図10は、本発明の一実施形態による混合要素の傾斜したエンボスの相異なる図を示している。
図11図11は、本発明の一実施形態による混合要素のV字状エンボスの相異なる図を示している。
図12図12は、本発明の一実施形態による混合要素のW字状のエンボスの相異なる図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
その複数の図に示された実施形態は、部分的に互いに一致するので、同じまたは同様の部分には同じ参照番号が付され、それらの説明として、繰り返しを避けるために他の実施形態の記載をも参照すべきである。
【0049】
図1は、本発明の一実施形態による、内燃エンジン機関)(図示せず)に空気の形態のガスを供給するためのパイプライン1の図を示している。矢印Pは、パイプライン1中を通るガスの流れ方向を示している。図1におけるパイプライン1の左側部分は、ガス・フィルタ(図示せず)から通じる清浄空気パイプを形成し、図1のパイプライン1の右側部分は、内燃エンジンへ向かう清浄空気パイプを形成する。
【0050】
パイプライン1は、ガス用の流路を形成するパイプライン断面Dと、ガス流量を測定するためのガス測定装置2とを含んでいる。ガス測定装置2は、加熱フィルムまたは加熱ワイヤの原理で、または少なくとも1つの超音波センサとともに、動作することが、好ましい。従来技術で知られている他の測定装置を使用してもよい。ガス測定装置2は、パイプライン断面Dにわたる(を横切る)最も均質な可能な流れプロファイルが正確な測定に有利である形態で、或る複数の点においてだけ流速を適切に測定する。
【0051】
参照符号S1は、以下でより詳細に説明する、混合要素3の上流の流れプロファイル(分布外形)を示している。図1は、特に図1に示されたパイプライン1の左側部分の湾曲に起因して、流れプロファイルS1が不均質であり従って不均一であることを示している。また、例えば、部品の、設置公差、経年劣化(エージング)および変形、ユティリティ・ビークルにおける圧縮空気供給のための空気取入れによる影響、未承認の空気フィルタの使用による影響、等のような他の外乱要素によって、結果的に、不均質な流れプロファイルS1が生じ得る。不均質な流れプロファイルS1における質量または流速の測定によって、不正確な結果が得られるであろう。
【0052】
従って、ガス測定装置2の上流のパイプライン1には、ガス用の入口3.1および出口3.2を有する混合要素3が設置される。混合要素3は、金属またはプラスチックのワイヤ構造体で形成され、また、混合要素3の上流に存在する不均質な流れプロファイルS1を均質化するために、ガスを充分に混合するのに役立って、その結果、その不均質性が少なくとも低減されまたは好ましくは実質的に除去されるようにされる。混合要素3は、不均質な流れプロファイルS1がパイプライン断面Dにわたって実質的に均質な流れプロファイルS2に変換される形態で、作用しまたは機能する。
【0053】
混合要素3は、パイプライン断面D全体を充填しまたは満たし、特に渦流生成装置として機能して、ガスの混合、従って均質化が、ワイヤ構造体の複数のワイヤ部におけるガスの渦流によって生じる。従って、混合要素3の出口3.2におけるガス流は、多数の相対的に小さい渦流を有する。混合要素3の出口3.2におけるガス流が、混合要素3の入口3.1における場合よりも激しく渦巻くような実施形態も可能である。
【0054】
パイプライン1は、混合要素3の下流の渦流(eddies)を減衰させるために、内部で渦流が徐々に消滅し得る実質的に直線状の(線状に伸びる)沈静化部4を含んでいる。さらに、パイプライン1は、任意の2つの整流格子(グリッド)5.1および5.2を含み、これ(整流格子)は、同様に混合要素3の下流の渦流を低減するのに役立つ。整流格子5.2は、ガス測定装置2のガス入口にまたはそのガス入口の直前に適切に配置され、その測定チューブ中にまたはその測定チューブの直前に配置されるのが好ましい。
【0055】
従って、混合要素3の目的は、ガス流の混合によって(例えば、実質的に完全な混合によって)パイプライン断面Dにわたる流れプロファイルにおける不均等な分布を除去することであって、その結果、混合要素3を通って流れた後で、最も均質な可能な流れプロファイルS2が、好ましくは実質的にパイプライン断面D全体にわたって存在するようにされることである。これは、特に、ワイヤ構造体の複数のワイヤ部上のガスの意図的に誘発された渦流によって、達成することができる。
【0056】
その結果、混合要素3は、特に、不均質な流れプロファイルの均質化に役立ち、従来技術の慣習的な渦流抑制装置とは異なり、好ましくは乱流ガス流をより層流状のガス流に変換するためのものではない。
【0057】
ガスの最も均一な可能な混合を可能にするため、従って最も均質な可能な流れプロファイルS2を可能にするために、混合要素3は、実質的に均一な厚さおよび実質的に均質な構造体で構成される。
【0058】
混合要素3は、沈静化部4および2つの任意の整流格子5.1および5.2の上流のパイプライン1中に配置される。混合要素3、沈静化部4、および任意の2つの整流格子5.1および5.2は、パイプライン1内のガス測定装置2の上流に配置される。
【0059】
図2は、本発明の一実施形態によるワイヤ編物(ワイヤ・メッシュ)で形成された混合要素3のセグメント(断片、一区画)を示している。
【0060】
図2から明らかなように、ワイヤ編物の複数のワイヤ部はランダム(無秩序)形態で互いに前後で交差するように配置されていて、その結果、ガスは、混合要素3中を通って流れる間に、好ましくは空間的な全ての三方向に、繰り返し偏向され、従って混合要素3内の各矢印で図2に概略的に示されているように、効果的に渦巻かせおよび/または混合させることができるようにされる。
【0061】
図3は、本発明の一実施形態による混合要素3を形成するためのワイヤ織物のセグメントを示している。
【0062】
そのような少なくとも2つのワイヤ織物が、互いに前後に配置されてもよく、例えば、それらのワイヤ部が互いに交差するように、また、このようにして、ガスは、混合要素3を通って流れる間に繰り返し偏向させることができ、従って効果的に渦巻かせるおよび/または混合させて均質化させることができるように、される。
【0063】
図4は、本発明の一実施形態による混合要素3を形成するためのワイヤ編物のセグメントを示している。ワイヤ編物は、少なくとも一部が単一の(金属またはプラスチック製の)糸で編まれる。
【0064】
図5は、本発明の一実施形態による混合要素3を形成するための1つのバンドBの図を示しており、図5は、バンドBの側面図を上側に、その上面図を下側に示している。バンドBは、例えば図3に示されているようなワイヤ織物で適切に形成されても、または例えば図4に示されているようなワイヤ編物で適切に形成されてもよい。
【0065】
混合要素3は、特にバンドBを巻き取る(巻き上げる)ことによって製造することができる。
【0066】
バンドBにはエンボス3.3が施されており、それ(エンボス)はバンドBの転がり面(転がる方向、長手方向)REに対して傾斜しおよび/または非垂直に配向している。エンボス3.3は、転がり面REに対して垂直に配向するべきではなく、そうしないと、エンボス加工された各隆起部は、バンドBを巻き取るときに不適切に整列し得るであろう。
【0067】
図5は、上下に互いに重ねて配置された1つのバンドBの少なくとも2つの層が一緒に巻き取られる形態での、反転する(裏返しのある)重なり配置でのバンドBの巻き取りを示している。混合要素3を、反転する重なり配置で形成するとき、バンドBは、特にその長さの概ね半分に(概ね半分の位置で)折り返されて重ねて配置されることが好ましく、次いでその結果的に得られた2つの層が一緒に巻き取られる。
【0068】
巻き取られた状態では、バンドB、従って混合要素3は、個々の層を有し、個々の層は相異なる、特に反対向きのエンボス3.3を有してもよい。このようにして、エンボス加工された各隆起部は、もはや互いに整列することができず、それが、混合要素3の実質的に均一な厚さおよび実質的に均質な構造体の形成に寄与する。
【0069】
特に相対的に幅広のバンドBの場合において安定性を高めるために、エンボス3.3は他のパターンを有してもよく、例えば、実質的にV字形(特にシェブロン形)またはW字形であってもよい。
【0070】
一方、同じ面方向の重なりで巻き取る場合では、バンドBは、一端部から単一層で巻き取られる。その時、個々の層のエンボス3.3は同じ配向を有する。従って、エンボス加工された各隆起部は、不適切に互いに整列することがある。
【0071】
ワイヤ編物で形成された混合要素3は、特に以下のように形成してもよい。即ち、ワイヤ編物はワイヤ編物チューブの形態に形成される。ワイヤ編物チューブは、最初に平坦にプレスされてバンドBにされて、エンボス加工され、その後、バンドBは、例えば図5に示された原理によって巻き取られて、混合要素3を形成することができる。
【0072】
図6は、本発明の一実施形態による混合要素3を形成するための巻き取られたバンドBの図を示している。
【0073】
図6に示された実施形態では、バンドBの2つの開放端部E1およびE2が、巻き取られたバンドB内部の実質的に中心部に配置されて、混合要素3が非対称な端縁領域を有するようにされる。混合要素3によって、パイプライン断面Dの大部分にわたって実質的に均質な流れプロファイルが確実に得られるが、不均質な流れプロファイルが、混合要素3のその端縁領域に、従ってパイプライン断面Dの端縁領域に存在し得る。
【0074】
図7は、本発明の一実施形態による混合要素3を形成するための巻き取られたバンドBの図を示している。
【0075】
図7に示された実施形態では、バンドBの2つの開放端部E1およびE2が、巻き取られたバンドBの各外側に配置され、実質的に180°の角度で互いにずれていて、その結果、混合要素3は対称な端縁領域を有するようにされて、それが、パイプライン断面Dにわたる流れプロファイルの均質性の向上に寄与する。
【0076】
図8は、本発明の一実施形態による混合要素3の作用原理を概略的に示している。
【0077】
図8は、混合要素3がガスを充分に混合するのに役立って、混合要素3の上流の不均質な流れプロファイルS1が少なくとも大部分の均質な流れプロファイルS2に変換されるようにされること、を示している。この目的のために、混合要素3は、渦流生成装置として設計されることが好ましく、その結果、ガスの混合および均質化が、ワイヤ構造体の複数のワイヤ部におけるガスの渦流によって行われるようにされる。特に、ガスは、混合要素3内で空間的な全ての三方向に偏向され、これが、流れプロファイルの効果的な均質化に寄与する。
【0078】
図9は、本発明の一実施形態による混合要素3用のバンドB上にエンボス3.3を形成する方法を示している。バンドBは、エンボス3.3を形成するために、2つのエンボス加工ローラを通して搬送される。
【0079】
ワイヤ構造体、即ち、特に編物は、通常、円形状の編み工程でチューブとして(環状に)形成される。チューブは、編み機から出てきたときに、平坦にプレスされてバンドBにされる。代替的に、平坦編み処理(プロセス)が使用される場合、この工程は省略されて、編物は、直ちに平坦バンドBとして存在する。その時、このバンドBは、2つのエンボス加工ローラ中を通って移動し、その両表面にエンボス構造、例えば、斜めのV字形またはW字形の波型構造が施される。このようにして、バンドBは、例えば、斜めのV字形またはW字型のエンボス3.3(波形)を有するようにエンボス加工される。エンボス3.3の深さは、両エンボス加工ローラの相互の間隔によって調整することができる。
【0080】
図10は、斜めのエンボス3.3を有する混合要素3用のバンドBの斜視図を上側に、その上面図を下側に示している。
【0081】
図11は、V字状のエンボス3.3を有する、混合要素3用のバンドBの斜視図を上側に、その上面図を下側に示している。
【0082】
図12は、W字状のエンボス3.3を有する、混合要素3用のバンドBの斜視図を上側に、その上面図を下側に示している。従って、W字状のエンボス3.3は、少なくとも2つのV字状のエンボスを有することが好ましい。
【0083】
本発明によって、特に、ガス測定装置の上流でほぼ理想的な均質な流れ分布を達成することができる。均質化によって生成される渦流は、ガス測定装置までの配置によって大部分を除去することができる。これによって、実質的に外乱の影響のない、ガス質量の非常に正確な測定が可能になる。
【0084】
混合要素によって生じる圧力損失は、吸気システム全体の圧力損失に比べて相対的に僅かである。
【0085】
混合要素をパイプラインに単純に組み込むまたは統合することによって、既存の吸気システムの設計を、ガス質量測定装置を追加して、容易に拡張することができる。
【0086】
混合要素の特性は、主として、幾何学的寸法、ワイヤ太さ、ワイヤ密度、巻き取りの種類(タイプ)、編物の編み目(メッシュ)数または織物の格子パターン、エンボスの種類(タイプ)およびエンボスの深さ、並びに混合要素の長さ、によって決定される。これらのパラメータの1つまたは複数を使用することによって、圧力損失および混合度合をガス流量に適合化させることができる。
【0087】
本発明は、上述の好ましい実施形態に限定されない。その代わりに、本発明の思想を同様に利用し従ってその保護範囲に入る多数の変形例および変更が可能である。また、特に、本発明は、引用された特定の請求項にかかわらず、特に主要な請求項の特徴がなくても、従属請求項の構成および特徴に対する保護をも求めるものである。従って、本発明は、互いに独立して保護を享受する発明の種々の態様を包含する。
【符号の説明】
【0088】
1 パイプライン
2 ガス測定装置、特に空気測定装置
3 混合要素
3.1 入口
3.2 出口
3.3 エンボス
D パイプライン断面
B 混合要素を形成するためのバンド
E1 バンドの開放端部
E2 バンドの開放端部
RE 転がり面
4 沈静化部
5.1 渦流を減少させるための整流装置
5.2 渦流を減少させるための整流装置
S1 不均質ガス質量分布
S2 均質ガス質量分布
P ガスの流れ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12