(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20220330BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20220330BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20220330BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20220330BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220330BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20220330BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220330BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J35/04 301E
B01J23/44 A ZAB
B01D39/20 D
B01D46/00 302
B01D53/94 241
B01D53/94 222
F01N3/035 A
F01N3/28 301Q
F01N3/022 C
(21)【出願番号】P 2018066812
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 文彦
(72)【発明者】
【氏名】畠山 由章
(72)【発明者】
【氏名】増満 仙考
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515445(JP,A)
【文献】特開2010-167366(JP,A)
【文献】特開2002-177794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 39/20,46/00,53/86-53/90,53/94-53/96
F01N 3/022,3/035,3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、
前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部を封止するように配置された目封止部と、を備え、
前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設され、前記流入端面側が開口した前記セルを、流入セルとし、
前記流入端面側の端部に前記目封止部が配設され、前記流出端面側が開口した前記セルを、流出セルとし、
前記ハニカム構造体は、白金族元素を含有する排ガス浄化触媒によって構成された白金族元素含有触媒層
(ただし、選択的触媒還元触媒を含むものを除く)を更に有し、
前記白金族元素含有触媒層は、前記流出セルを取り囲む前記隔壁の内表面側にのみ配設され、且つ、
前記白金族元素含有触媒層は、前記ハニカム構造体の前記セルの延びる方向において、前記流出端面を起点として前記セルの全長に対して少なくとも35%までの範囲に配設され、前記流入端面を起点として前記セルの全長に対して少なくとも30%までの範囲には配設されていない、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記白金族元素含有触媒層の気孔率が、50~90%である、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記白金族元素含有触媒層の厚さが、10~40μmである、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記白金族元素含有触媒層が、アルミニウム、ジルコニウム、及びセリウムのうちの少なくとも一種の元素の酸化物を含む触媒層である、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記ハニカム構造体の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記断面の重心から当該断面の外周縁までの長さの60%以内の範囲を、当該断面の中央部とし、
前記白金族元素含有触媒層が、前記断面の前記中央部に存在する前記隔壁に配設されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記ハニカム構造体の前記セルの延びる方向に直交する断面において、
前記白金族元素含有触媒層が、前記断面の全域の前記流出セルを取り囲む前記隔壁に配設されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する捕集性能に優れるとともに、排ガス中に含まれる有害成分を浄化する浄化性能に優れたハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンエンジンから排出される排ガス中に含まれる粒子状物質の除去に関する規制は世界的に厳しくなっており、粒子状物質を除去するためのフィルタとして、ハニカム構造を有するハニカムフィルタが用いられている。以下、粒子状物質を、「PM」ということがある。PMは、「Particulate Matter」の略である。
【0003】
例えば、ハニカムフィルタとしては、複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、セルのいずれか一方の端部を目封止する目封止部と、を備えたものを挙げることができる。このようなハニカムフィルタは、多孔質の隔壁がPMを除去するフィルタの役目を果たす構造となっている。具体的には、PMを含有する排ガスを、ハニカムフィルタの流入端面から流入させ、多孔質の隔壁でPMを捕集することによって濾過した後に、浄化された排ガスを、ハニカムフィルタの流出端面から排出する。このようにして排ガス中のPMを除去することができる。
【0004】
このようなハニカムフィルタの浄化性能を向上させることを目的として、多孔質の隔壁に、排ガス浄化用の触媒を担持することが行われている(例えば、特許文献1参照)。排ガス浄化用の触媒としては、例えば、白金族元素を含有する排ガス浄化触媒によって構成された白金族元素含有触媒を挙げることができる。以下、白金族元素含有触媒を、「PGM触媒」ということがある。「PGM」とは、「Platinum Group Metal」の略である。PGMには、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガソリンエンジン用のハニカムフィルタでは、圧力損失の上昇を抑制するために、隔壁の気孔率が高いハニカム構造体を使用することが検討されている。このようなハニカム構造体の隔壁に対してPGM触媒を担持する際には、PGM触媒を、多孔質の隔壁の細孔内に充填させるようにして担持することが行われていた。
【0007】
従来、高気孔率のハニカム構造体を用いたハニカムフィルタは、PGM触媒を担持した場合に、PMを捕集する捕集性能が低下するという問題があった。捕集性能が低下する原因としては、以下のような理由が考えられる。気孔率の高い隔壁に対してPGM触媒を担持した場合、隔壁の細孔のうち、相対的に細孔径の小さな細孔から順にPGM触媒が充填される。このため、一定量のPGM触媒を担持した隔壁は、相対的に細孔径の小さな細孔がPGM触媒によって塞がれてしまい、相対的に細孔径の大きな細孔が残ってしまう。以下、相対的に細孔径の小さな細孔を「小細孔」といい、相対的に細孔径の大きな細孔を「大細孔」という。高気孔率のハニカム構造体において、隔壁の小細孔が優先的にPGM触媒により塞がれてしまうと、隔壁の大細孔の比率が多くなり、隔壁を透過する排ガスの流れが大細孔に集中してしまう。即ち、捕集性能の向上に寄与するような小細孔には、排ガスが流れ難くなってしまい、結果として、ハニカムフィルタの捕集性能が低下してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、排ガス中に含まれるPMを捕集する捕集性能に優れるとともに、排ガス中に含まれる有害成分を浄化する浄化性能に優れたハニカムフィルタが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す、ハニカムフィルタが提供される。
【0010】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、
前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部を封止するように配置された目封止部と、を備え、
前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設され、前記流入端面側が開口した前記セルを、流入セルとし、
前記流入端面側の端部に前記目封止部が配設され、前記流出端面側が開口した前記セルを、流出セルとし、
前記ハニカム構造体は、白金族元素を含有する排ガス浄化触媒によって構成された白金族元素含有触媒層(ただし、選択的触媒還元触媒を含むものを除く)を更に有し、
前記白金族元素含有触媒層は、前記流出セルを取り囲む前記隔壁の内表面側にのみ配設され、且つ、
前記白金族元素含有触媒層は、前記ハニカム構造体の前記セルの延びる方向において、前記流出端面を起点として前記セルの全長に対して少なくとも35%までの範囲に配設され、前記流入端面を起点として前記セルの全長に対して少なくとも30%までの範囲には配設されていない、ハニカムフィルタ。
【0011】
[2] 前記白金族元素含有触媒層の気孔率が、50~90%である、前記[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0012】
[3] 前記白金族元素含有触媒層の厚さが、10~40μmである、前記[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0013】
[4] 前記白金族元素含有触媒層が、アルミニウム、ジルコニウム、及びセリウムのうちの少なくとも一種の元素の酸化物を含む触媒層である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0014】
[5] 前記ハニカム構造体の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記断面の重心から当該断面の外周縁までの長さの60%以内の範囲を、当該断面の中央部とし、
前記白金族元素含有触媒層が、前記断面の前記中央部に存在する前記隔壁に配設されている、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0015】
[6] 前記ハニカム構造体の前記セルの延びる方向に直交する断面において、
前記白金族元素含有触媒層が、前記断面の全域の前記流出セルを取り囲む前記隔壁に配設されている、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハニカムフィルタは、排ガス中に含まれるPMを捕集する捕集性能に優れるとともに、排ガス中に含まれる有害成分を浄化する浄化性能に優れるという効果を奏するものである。
【0017】
即ち、本発明のハニカムフィルタは、ガス流れが多いハニカム構造体の流出端面側に「白金族元素含有触媒層」を有しているため、この白金族元素含有触媒層によってPMを捕集することができ、捕集性能の向上を図ることができる。また、白金族元素含有触媒層がハニカム構造体の流出端面側に配置されることで、白金族元素含有触媒層と排ガスとの接触が多くなり、浄化性能を向上させることができる。また、隔壁内部に白金族元素含有触媒層が配置しないことで、隔壁の透過抵抗が低くなり、圧力損失を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のハニカムフィルタの第一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すハニカムフィルタの流入端面側の平面図である。
【
図3】
図1に示すハニカムフィルタの流出端面側の平面図である。
【
図4】
図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明のハニカムフィルタの第二実施形態を模式的に示す流入端面側の平面図である。
【
図6】
図5のB-B’断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
(1)ハニカムフィルタ(第一実施形態):
本発明のハニカムフィルタの第一実施形態は、
図1~
図4に示すようなハニカムフィルタ100である。ここで、
図1は、本発明のハニカムフィルタの第一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すハニカムフィルタの流入端面側の平面図である。
図3は、
図1に示すハニカムフィルタの流出端面側の平面図である。
図4は、
図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【0021】
図1~
図4に示すように、本実施形態のハニカムフィルタ100は、ハニカム構造体4と、目封止部5と、を備えたものである。ハニカム構造体4は、流入端面11から流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配設された多孔質の隔壁1を有するものである。
図1~
図4に示すハニカム構造体4は、流入端面11及び流出端面12を両端面とする円柱形状に構成され、その外周側面に、外周壁3を更に有している。即ち、外周壁3は、格子状に配設された隔壁1を囲繞するように配設されている。
【0022】
目封止部5は、セル2の流入端面11側又は流出端面12側のいずれか一方の端部を封止するように配置されたものである。以下、複数のセル2のうち、流出端面12側の端部に目封止部5が配設され、流入端面11側が開口したセル2を、「流入セル2a」とする。また、複数のセル2のうち、流入端面11側の端部に目封止部5が配設され、流出端面12側が開口したセル2を、「流出セル2b」とする。本実施形態のハニカムフィルタ100において、流入セル2aと流出セル2bは、隔壁1を挟んで交互に配置されていることが好ましい。
【0023】
ハニカムフィルタ100は、ハニカム構造体4が、以下のように構成されている点に特徴を有する。即ち、ハニカム構造体4は、白金族元素を含有する排ガス浄化触媒によって構成された白金族元素含有触媒層14を更に有する。そして、この白金族元素含有触媒層14は、流出セル2bを取り囲む隔壁1の内表面側にのみ配設されている。更に、白金族元素含有触媒層14は、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向において、流出端面12を起点として、セル2の全長に対して少なくとも35%までの範囲に配設されている。そして、この白金族元素含有触媒層14は、流入端面11を起点として、セル2の全長に対して少なくとも30%までの範囲には配設されていない。セル2の全長とは、ハニカム構造体4の流入端面11から流出端面12まで(別言すれば、ハニカム構造体4の流出端面12から流入端面11まで)の長さのことをいう。「隔壁1の内表面側のみに配設されている」とは、隔壁1の厚さ方向において、隔壁1の内表面から隔壁1の厚さ方向に0.1T(但し、Tは、隔壁1の厚さを示す)を起点として1.0Tまでの間に、白金族元素含有触媒が存在しないことを意味する。
【0024】
ここで、白金族元素とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金のことである。以下、白金族元素のことを「PGM」ということがある。
【0025】
白金族元素含有触媒層14は、流出セル2bを取り囲む隔壁1の内表面側のみ、そして、流出端面12を起点としてセル2の全長に対して少なくとも35%までの範囲に配置されている。白金族元素含有触媒層14は、白金族元素含有触媒を、隔壁1の所定の表面上に塗工(コート;coat)して形成された、触媒コート層である。
【0026】
ハニカムフィルタ100は、上記のような白金族元素含有触媒層14を更に有するハニカム構造体4を備えたものであり、PMを捕集する捕集性能に優れるとともに、排ガス中に含まれる有害成分を浄化する浄化性能に優れるという効果を奏するものである。また、隔壁1の内部に白金族元素含有触媒層14が配置されないことで、隔壁1の透過抵抗が低くなり、圧力損失を低減させることができる。
【0027】
即ち、ハニカムフィルタ100は、ガス流れが多いハニカム構造体4の流出端面12側に「白金族元素含有触媒層14」を有しているため、この白金族元素含有触媒層14によってPMを捕集することができ、捕集性能の向上を図ることができる。また、白金族元素含有触媒層14がハニカム構造体4の流出端面12側に配置されることで、白金族元素含有触媒層14と排ガスとの接触が多くなり、浄化性能を向上させることができる。例えば、白金族元素含有触媒層14によって捕集されたPMは、白金族元素含有触媒層14の触媒性能によって、比較的低温にて連続的に酸化除去される。
【0028】
なお、白金族元素含有触媒層14を、流出セル2bを取り囲む隔壁1の内表面以外にも配設すると、ハニカムフィルタ100の圧力損失が増大することがある。また、白金族元素を含有する触媒は、排ガス浄化に対して優れた触媒性能を有しているものの、希少性が高く、工業的な価値も高い。このため、白金族元素含有触媒層14を、隔壁1の所定の表面のみに配設することで、ハニカムフィルタ100の製造コストを低減することもできる。
【0029】
白金族元素含有触媒層14の気孔率が、50~90%であることが好ましく、60~80%であることが更に好ましく、60~70%であることが特に好ましい。白金族元素含有触媒層14の気孔率が50%未満であると、圧力損失が上昇することがある。一方、白金族元素含有触媒層14の気孔率が90%を超えると、捕集効率が悪化することがある。
【0030】
白金族元素含有触媒層14の平均細孔径は、1~7μmであることが好ましく、1~5μmであることが更に好ましく、1~3μmであることが特に好ましい。
【0031】
白金族元素含有触媒層14の気孔率及び平均細孔径は、以下の方法で測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう)によって、白金族元素含有触媒層の断面部分を観察して、そのSEM画像を取得する。なお、SEM画像は200倍に拡大して観測するものとする。SEMとは、「Scanning Electron Microscope」の略である。走査型電子顕微鏡としては、例えば、日立ハイテクノロジー社製の走査型電子顕微鏡「型番:S3200-N」を用いることができる。次に、取得したSEM画像を画像解析することにより、白金族元素含有触媒層の実体部分と、白金族元素含有触媒層中の空隙部分とを二値化する。そして、白金族元素含有触媒層の実体部分と空隙部分との合計面積に対する、白金族元素含有触媒層中の空隙部分の比の百分率を算出し、その値を、白金族元素含有触媒層14の気孔率とする。また、別途、SEM画像中の各粒子径間の空壁を二値化して、その大きさを、直接、スケール(scale)にて測定し、測定した値から、白金族元素含有触媒層中の細孔径を算出する。算出した細孔径の平均値を、白金族元素含有触媒層14の平均細孔径とする。
【0032】
また、白金族元素含有触媒層14は、粒径が1~10μmの白金族元素含有触媒によって構成された触媒層であることが好ましい。このように構成することによって、隔壁1の表面に配設された白金族元素含有触媒層14によって、排ガス中のPMを有効に捕集することができる。捕集されたPMは、白金族元素含有触媒層14の触媒性能によって、比較的低温にて連続的に酸化除去される。
【0033】
白金族元素含有触媒層14の厚さが、10~40μmであることが好ましく、20~35μmであることが更に好ましく、20~30μmであることが特に好ましい。白金族元素含有触媒層14の厚さが10μm未満であると、捕集効率の向上代が低くなることがある点で好ましくない。一方、白金族元素含有触媒層14の厚さが40μmを超えると、圧力損失が上昇することがある点で好ましくない。
【0034】
白金族元素含有触媒層14の厚さは、以下の方法で測定することができる。走査型電子顕微鏡によって、白金族元素含有触媒層の断面部分を観察して、そのSEM画像を取得する。次に、取得したSEM画像から、直接、スケールを用いて白金族元素含有触媒層の厚さを測定する。
【0035】
白金族元素含有触媒層14が、アルミニウム、ジルコニウム、及びセリウムのうちの少なくとも一種の元素の酸化物を含む触媒層であることが好ましい。なお、このような酸化物を含む触媒層には、触媒層の総質量に対して、1~3質量%の白金族元素を含むことが好ましい。白金族元素含有触媒層14の組成は、例えば、蛍光X線分析(XRF;X-ray Fluorescence)によって測定することができる。具体的には、試料にX線を照射することにより発生する、各元素に固有な蛍光X線を検出することで、白金族元素含有触媒層14の組成分析を行うことができる。
【0036】
白金族元素含有触媒層14は、流出端面12を起点としてセル2の全長に対して少なくとも35%までの範囲に配設され、流入端面11を起点としてセル2の全長に対して少なくとも30%までの範囲には配設されていない。白金族元素含有触媒層14が配置されている範囲は、例えば、流出端面12を起点としてセル2の全長に対して、40%までであってもよいし、50%までであってもよいし、60%までであってもよい。また、白金族元素含有触媒層14が配置されていない範囲は、流入端面11を起点としてセル2の全長に対して、少なくとも35%であることが好ましく、少なくとも40%であることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタ100の圧力損失の増大を有効に抑制することができる。
【0037】
図1~
図4に示すハニカムフィルタ100においては、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向に直交する断面において、白金族元素含有触媒層14が、上記断面の全域の流入セル2aを取り囲む隔壁1の内表面側に配設されている。ただし、白金族元素含有触媒層14は、上記断面における、少なくとも1つの流出セル2bを取り囲む隔壁1の内表面側に配設されていればよい。即ち、少なくともハニカム構造体4の流出端面12から全長の40%までの範囲において、少なくとも1つの流出セル2bを取り囲む隔壁1の内表面側に白金族元素含有触媒層14が配設されていればよい。
【0038】
ハニカム構造体4の隔壁1の気孔率は、50~70%であることが好ましく、55~65%であることが更に好ましく、60~65%であることが特に好ましい。隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定した値である。隔壁1の気孔率は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて測定することができる。隔壁1の気孔率が、50%未満であると、隔壁透過抵抗が上昇し、圧力損失が上昇する点で好ましくない。隔壁1の気孔率が、70%を超えると、強度が著しく低下する点で好ましくない。
【0039】
隔壁1の平均細孔径は、10~25μmであることが好ましく、10~20μmであることが更に好ましく、15~20μmであることが特に好ましい。隔壁1の平均細孔径は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の平均細孔径は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて測定することができる。隔壁1の平均細孔径が、10μm未満であると、隔壁透過抵抗が上昇し、圧力損失が上昇することがある点で好ましくない。隔壁1の平均細孔径が、25μmを超えると、大細孔の部分にガス流れが集中し捕集効率が悪化することがある点で好ましくない。
【0040】
ハニカム構造体4は、隔壁1の厚さが、0.15~0.38mmであることが好ましく、0.18~0.33mmであることが更に好ましく、0.20~0.31mmであることが特に好ましい。隔壁1の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡又はマイクロスコープ(microscope)を用いて測定することができる。隔壁1の厚さが0.15mm未満であると、十分な強度が得られない場合がある。一方、隔壁1の厚さが0.38mmを超えると、隔壁1に触媒を担持した際に、圧力損失が増大することがある。
【0041】
ハニカム構造体4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルとが混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。なお、本発明において、セルとは、隔壁によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0042】
隔壁1によって区画形成されるセル2のセル密度が、31~54個/cm2であることが好ましく、39~47個/cm2であることが更に好ましい。このように構成することによって、自動車等のエンジンから排出される排ガス中のPMを捕集するためのフィルタとして好適に利用することができる。
【0043】
ハニカム構造体4の外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものであってもよいし、隔壁1を囲繞するように外周コート材を塗工することによって形成した外周コート層であってもよい。図示は省略するが、外周コート層は、製造時において、隔壁と外周壁とを一体的に形成した後、形成された外周壁を、研削加工等の公知の方法によって除去した後、隔壁の外周側に設けることができる。
【0044】
ハニカム構造体4の形状については特に制限はない。ハニカム構造体4の形状としては、流入端面11及び流出端面12の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。
【0045】
ハニカム構造体4の大きさ、例えば、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向の長さ(以下、「全長」ともいう)や、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさ(以下、「断面積」ともいう)については、特に制限はない。ハニカムフィルタ100の使用時に最適な浄化性能が得るように、各大きさを適宜選択すればよい。ハニカム構造体4の全長は、90~160mmであることが好ましく、120~140mmであることが更に好ましい。また、ハニカム構造体4の断面積は、8000~16000mm2であることが好ましく、10000~14000mm2であることが更に好ましい。
【0046】
隔壁1の材料が、コージェライト、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素-コージェライト系複合材料から構成される群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。隔壁1を構成する材料は、上記群に列挙された材料を、30質量%以上含む材料であることが好ましく、40質量%以上含む材料であることが更に好ましく、50質量%以上含む材料であることが特に好ましい。本実施形態のハニカムフィルタ100において、隔壁1を構成する材料は、特に、コージェライトが好ましい。
【0047】
(2)ハニカムフィルタ(第二実施形態):
次に、本発明のハニカムフィルタの第二実施形態について説明する。本発明のハニカムフィルタの第二実施形態は、
図5及び
図6に示すようなハニカムフィルタ200である。ここで、
図5は、本発明のハニカムフィルタの第二実施形態を模式的に示す流入端面側の平面図である。
図6は、
図5のB-B’断面を模式的に示す断面図である。
【0048】
図5及び
図6に示すように、本実施形態のハニカムフィルタ200は、ハニカム構造体24と、目封止部25と、を備えた、ハニカムフィルタ200である。ハニカム構造体24は、流入端面31から流出端面32まで延びる流体の流路となる複数のセル22を取り囲むように配設された多孔質の隔壁21を有するものである。ハニカム構造体24は、その外周側面に、隔壁21を囲繞するように配設された外周壁23を更に有している。
【0049】
目封止部25は、セル22の流入端面31側又は流出端面32側のいずれか一方の端部を封止するように配置されたものである。流出端面32側の端部に目封止部25が配設されたセル22が「流入セル22a」となり、流入端面31側の端部に目封止部25が配設されたセル22が「流出セル22b」となる。
【0050】
ハニカムフィルタ200においても、ハニカム構造体24は、白金族元素を含有する排ガス浄化触媒によって構成された白金族元素含有触媒層34を更に有する。そして、この白金族元素含有触媒層34は、流出セル22bを取り囲む隔壁21の内表面側にのみ配設されている。更に、白金族元素含有触媒層34は、流出端面32を起点としてセル22の全長に対して少なくとも35%までの範囲に配設され、流入端面31を起点としてセル22の全長に対して少なくとも30%までの範囲には配設されていない。
【0051】
ハニカムフィルタ200においては、白金族元素含有触媒層34が、ハニカム構造体24の中央部38に存在する隔壁21に配設されている。即ち、白金族元素含有触媒層34が、この中央部38に存在する隔壁21のうち、流出セル22bを取り囲む隔壁21の内表面側にのみ配設されている。ここで、中央部38とは、ハニカム構造体24のセル22の延びる方向に直交する断面において、この断面の重心から当該断面の外周縁までの長さの60%以内の範囲のことをいう。即ち、本実施形態のハニカムフィルタ200では、上記したハニカム構造体24の断面における「中央部38」のみに、白金族元素含有触媒層34が優先的に配設され、中央部38以外の部分については、白金族元素含有触媒層34が配設されていない。
【0052】
ハニカムフィルタ200においては、排ガスの流量が多くなる中央部38のみに白金族元素含有触媒層34が配設されているため、ハニカムフィルタ200の捕集性能を良好に維持しつつ、圧力損失の上昇を抑制し、更に、製造コストをより低減することができる。
【0053】
なお、
図1~
図4に示すハニカムフィルタ100においては、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向に直交する断面において、白金族元素含有触媒層14が、上記断面の全域の流出セル2bを取り囲む隔壁1の内表面側に配設されている。
図5及び
図6に示すハニカムフィルタ200は、白金族元素含有触媒層34が配設される範囲が、ハニカム構造体24の中央部38に限定されていること以外は、
図1~
図4に示すハニカムフィルタ100と同様に構成されていることが好ましい。
【0054】
(3)ハニカムフィルタの製造方法:
本発明のハニカムフィルタを製造する方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法を挙げることができる。
【0055】
まず、ハニカム構造体の隔壁を作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカム構造体の隔壁を作製するための坏土は、前述の隔壁の好適な材料を作製するための原料粉末に、適宜、バインダ等の添加剤、造孔材、及び水を添加することによって調製することができる。原料粉末としては、例えば、アルミナ、タルク、カオリン、シリカの粉末を用いることができる。バインダとしては、例えば、メチルセルロース(Methylcellulose)や、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methylcellulose)等を挙げることができる。また、添加剤としては、界面活性剤等を挙げることができる。
【0056】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を作製する。次に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥する。
【0057】
次に、乾燥したハニカム成形体に、目封止部を形成する。目封止部を形成する方法については、従来公知のハニカムフィルタの製造方法に準じて行うことができる。例えば、まず、ハニカム成形体の流入端面に、流入セルが覆われるようにマスクを施す。その後、マスクの施されたハニカム成形体の端部を、目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていない流出セルの開口部に目封止スラリーを充填する。その後、ハニカム成形体の流出端面についても、上記と同様の方法で、流入セルの開口部に目封止スラリーを充填する。その後、目封止部を形成したハニカム成形体を、更に、熱風乾燥機で乾燥する。
【0058】
次に、目封止部を形成したハニカム成形体を焼成することにより、白金族元素含有触媒層が配設される前のハニカムフィルタ前駆体を作製する。なお、ハニカム成形体を焼成する際の、焼成温度及び焼成雰囲気については、ハニカム成形体を作製する原料によって異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【0059】
次に、白金族元素含有触媒層を作製するための白金族元素含有触媒を用意する。白金族元素含有触媒としては、例えば、粒径が1~10μmのアルミニウム酸化物に白金族元素を担持した触媒を用いることができる。このようなアルミニウム酸化物を、ハニカムフィルタ前駆体の流出端面を起点として、セルの全長に対して少なくとも35%までの範囲に、ゾーンコート(Zone coat)で塗布する。ゾーンコートの具体的な方法としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。まず、白金族元素を担持したアルミニウム酸化物等の触媒粉末と、適当な溶媒(例えば、イオン交換水)及び分散剤を含む触媒層形成用スラリーを用意する。次に、ハニカムフィルタ前駆体の流出端面から触媒層形成用スラリーを流し込み、流入端面から吸引することで、ハニカムフィルタ前駆体の流出端面側が開口している流出セルを取り囲む隔壁の表面に白金族元素含有触媒を塗布する。その後、ゾーンコートした白金族元素含有触媒を、500℃で焼成して白金族元素含有触媒層を作製する。触媒層形成用スラリーの粘度、及び吸引時の圧力の少なくとも一方を調整することで、白金族元素含有触媒層を隔壁の表面にのみ配設する。また、ゾーンコートの方法として、触媒層形成用スラリーをディッピング(Dipping)することでも白金族元素含有触媒層を隔壁の表面に塗布することができる。以上のようにして、本発明のハニカムフィルタを製造することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
まず、ハニカム構造体の隔壁を作製するためのアルミナ、タルク、カオリン、シリカ原料を用意した。用意したアルミナ、タルク、カオリン、シリカ原料に、分散媒を2質量部、有機バインダを7質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。分散媒としては、水を使用した。有機バインダとしては、メチルセルロースを使用した。分散剤としては、界面活性剤を使用した。
【0062】
次に、ハニカム成形体作製用の口金を用いて坏土を押出成形し、全体形状が円柱形状のハニカム成形体を得た。ハニカム成形体のセルの形状は、四角形とした。
【0063】
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0064】
次に、乾燥したハニカム成形体に、目封止部を形成した。具体的には、まず、ハニカム成形体の流入端面に、流入セルが覆われるようにマスクを施した。その後、マスクの施されたハニカム成形体の端部を、目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていない流出セルの開口部に目封止スラリーを充填した。その後、ハニカム成形体の流出端面についても、上記と同様の方法で、流入セルの開口部に目封止スラリーを充填した。その後、目封止部を形成したハニカム成形体を、更に、熱風乾燥機で乾燥した。
【0065】
次に、乾燥したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、白金族元素含有触媒層が配設される前のハニカムフィルタ前駆体を製造した。
【0066】
次に、以下の方法で、ハニカムフィルタ前駆体の流出セルを取り囲む隔壁の内表面側に、白金族元素含有触媒層を作製した。まず、白金族元素としてのパラジウムを担持したアルミニウム酸化物の粉末、イオン交換水、及び分散剤を含む触媒層形成用スラリーを用意した。次に、ハニカムフィルタ前駆体の流出端面から触媒層形成用スラリーを流し込み、流入端面から、流し込んだ触媒層形成用スラリーを、白金族元素含有触媒層が隔壁の内表面のみに塗布されるよう、吸引時の圧力を調整しながら吸引した。このようにすることで、ハニカムフィルタ前駆体の流出端面側が開口している流出セルを取り囲む隔壁の表面に白金族元素含有触媒を塗布した。その後、隔壁の表面に塗布した白金族元素含有触媒を500℃で焼成して白金族元素含有触媒層を作製した。
【0067】
実施例1のハニカムフィルタは、流入端面及び流出端面の形状が円形の、円柱形状のものであった。また、ハニカムフィルタのセルの延びる方向の長さは、127mmであった。ハニカムフィルタの端面の直径は、118mmであった。ハニカムフィルタを構成するハニカム構造体は、隔壁の厚さが、0.22mmであり、セル密度が、47個/cm2であった。ハニカム構造体の隔壁は、気孔率が63%であった。
【0068】
また、白金族元素含有触媒層は、流出セルを取り囲む隔壁の内表面側にのみ配設されていた。白金族元素含有触媒層は、ハニカム構造体の流出端面からセルの全長の60%までの範囲(即ち、流出端面を起点としてセルの全長に対して60%の範囲)に配置されていた。白金族元素含有触媒層は、気孔率が65%であった。表1に、白金族元素含有触媒の配設範囲及び配設箇所を示す。
【0069】
【0070】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、「捕集効率性能」、「圧力損失性能」、及び「排ガス浄化性能」の評価を行った。結果を表2に示す。
【0071】
[捕集効率性能]
まず、各実施例のハニカムフィルタを排ガス浄化用フィルタとした排ガス浄化装置を作製した。1.2L直噴ガソリンエンジン車両のエンジン排気マニホルドの出口側に、作製した排ガス浄化装置を接続して、排ガス浄化装置の流出口から排出されるガスに含まれる煤の個数を、PN測定方法によって測定した。「PN測定方法」とは、国際連合(略称UN)の欧州経済委員会(略称ECE)における自動車基準調和世界フォーラム(略称WP29)の排出ガスエネルギー専門家会議(略称GRPE)による粒子測定プログラム(略称PMP)によって提案された測定方法のことである。なお、具体的には、煤の個数判定においては、WLTC(Worldwide harmonized Light duty Test Cycle)モード走行後に排出された煤の個数の累計を、判定対象となる排ガス浄化装置の煤の個数とし、捕集効率を測定する。測定された各捕集効率の値を元に、以下の評価基準に基づいて、捕集効率性能の評価を行った。表2の「捕集効率比(%)」の欄に、比較例1のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の捕集効率の値を100%とした場合に、各実施例のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の捕集効率の値(%)を示す。
評価「優」:比較例1のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の捕集効率の値を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の捕集効率の値が、130%以上である場合、その評価を「優」とする。
評価「良」:比較例1のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の捕集効率の値を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の捕集効率の値が、120%を超え、130%未満である場合、その評価を「良」とする。
評価「可」:比較例1のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の捕集効率の値を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の捕集効率の値が、100%を超え、120%以下である場合、その評価を「可」とする。
【0072】
[圧力損失性能]
1.4L直噴ガソリンエンジンから排出される排気ガスを、各実施例のハニカムフィルタに流入させて、ハニカムフィルタの隔壁にて、排気ガス中の煤を捕集した。煤の捕集は、ハニカムフィルタの単位体積(1L)当たりの煤の堆積量が1g/Lとなるまで行った。そして、煤の堆積量が1g/Lとなった状態で、200℃のエンジン排ガスを1.0Nm3/minの流量で流入させて、ハニカムフィルタの流入端面側と流出端面側との圧力を測定した。そして、流入端面側と流出端面側との圧力差を算出することにより、ハニカムフィルタの圧力損失(kPa)を求めた。測定された各圧力損失の値を元に、以下の評価基準に基づいて、圧力損失性能の評価を行った。表2の「圧力損失比(%)」の欄に、比較例1のハニカムフィルタの圧力損失の値を100%とした場合における、各実施例のハニカムフィルタを圧力損失の値(%)を示す。
評価「優」:比較例1のハニカムフィルタの圧力損失の値を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタの圧力損失の値が、90%未満である場合、その評価を「優」とする。
評価「良」:比較例1のハニカムフィルタの圧力損失の値を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタの圧力損失の値が、90%以上であり、95%未満である場合、その評価を「良」とする。
評価「可」:比較例1のハニカムフィルタの圧力損失の値を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタの圧力損失の値が、95%以上であり、100%未満である場合、その評価を「可」とする。
【0073】
[排ガス浄化性能]
まず、各実施例のハニカムフィルタを排ガス浄化用フィルタとした排ガス浄化装置を作製した。1.2L直噴ガソリンエンジン車両のエンジン排気マニホルドの出口側に、作製した排ガス浄化装置を接続して、排ガス浄化装置の流出口から排出されるガスに含まれるNOx濃度を測定し、NOxの浄化率を求めた。測定された各NOxの浄化率の値を元に、以下の評価基準に基づいて、排ガス浄化性能の評価を行った。表2の「NOxの浄化率比(%)」の欄に、比較例1のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置のNOxの浄化率の値を100%とした場合に、各実施例のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置のNOxの浄化率の値(%)を示す。
評価「優」:比較例1のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置のNOx浄化率の値を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置のNOx浄化率の値が、120%以上である場合、その評価を「優」とする。
評価「良」:比較例1のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置のNOx浄化率の値を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置のNOx浄化率の値が、110%を超え、120%未満である場合、その評価を「良」とする。
評価「可」:比較例1のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置のNOx浄化率の値を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置のNOx浄化率の値が、100%を超え、110%以下である場合、その評価を「可」とする。
評価「不可」:比較例1のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置のNOx浄化率の値を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置のNOx浄化率の値が、100%以下である場合、その評価を「不可」とする。
【0074】
【0075】
(実施例2~5)
白金族元素含有触媒の配設範囲及び配設箇所を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。実施例2~5のハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「捕集効率性能」、「圧力損失性能」、及び「排ガス浄化性能」の評価を行った。結果を表2に示す。
【0076】
(比較例1~2)
白金族元素含有触媒の配設範囲及び配設箇所を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。なお、比較例1~2においては、以下の方法、白金族元素含有触媒を、ハニカム構造体の隔壁の細孔の内部に担持した。比較例1においては、まず、白金族元素を担持したアルミニウム酸化物の触媒粉末と、イオン交換水及び分散剤を含む触媒層形成用スラリーを用意した。次に、触媒層形成用スラリーをハニカムフィルタ前駆体の流入端面及び流出端面から含浸させることで、ハニカムフィルタ前駆体の隔壁全面に白金族元素含有触媒を塗布した。その後、500℃で焼成して白金族元素含有触媒層を作製した。比較例2においては、上述した触媒層形成用スラリーをハニカムフィルタ前駆体の流出端面から含浸させることで、白金族元素含有触媒を、ハニカムフィルタ前駆体の流出端面から60%の範囲の隔壁の細孔の内部に担持した。
【0077】
(結果)
実施例1~5のハニカムフィルタは、「捕集効率性能」、「圧力損失性能」、及び「排ガス浄化性能」の全て評価において、基準となる比較例1のハニカムフィルタの各性能を上回るものであることが確認できた。従って、実施例1~5のハニカムフィルタは、捕集性能に優れるとともに、浄化性能にも優れ、且つ、従来のハニカムフィルタに比して、圧力損失の上昇を抑制することができることが分かった。一方、比較例2のハニカムフィルタは、比較例1のハニカムフィルタと比較して、「捕集効率性能」及び「圧力損失性能」の向上が殆ど見られず、その一方で、「排ガス浄化性能」の極めて劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のハニカムフィルタは、排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1,21:隔壁、2,22:セル、2a,22a:流入セル、2b,22b:流出セル、3,23:外周壁、4,24::ハニカム構造体、5,25:目封止部、11,31:流入端面、12,32:流出端面、14,34:白金族元素含有触媒層、38:中央部、100,200:ハニカムフィルタ。