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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】エンジンの排気ダクト接続装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/02 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
G01M15/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018069968
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019179004
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】黒川 欣士
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-206937(JP,A)
【文献】実開平07-041338(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0002229(KR,A)
【文献】特開平08-075376(JP,A)
【文献】特開平02-259357(JP,A)
【文献】特公平03-034816(JP,B2)
【文献】特開2002-161742(JP,A)
【文献】特開2017-053643(JP,A)
【文献】実開平04-134272(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 15/00 -15/14
G01M 17/00 -17/10
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に鉛直上下方向の軸心を備えた下向きの開口をもち途中に排気ファンを有する排気ダクトと、
該排気ダクトの開口と前記軸心回りに回動自在に連結され排気流れを90度曲げる旋回エルボと、
一端が旋回エルボと連結され、水平方向に延び、他端にエンジンの排気口との接続口が設けられる水平管と、
前記排気ダクトの下向きの開口端部周囲に固定された前記軸心を中心とする大径ギヤと、
前記旋回エルボの側面に前記軸心に平行に回転自在に軸支されて、前記大径ギヤと噛み合う小径ギヤと、
その小径ギヤを下方から多回転往復回転操作する旋回操作部とからなり、
前記大径ギヤが前記排気ダクトに固定され、前記小径ギヤが前記旋回エルボの側面に回転自在に軸支されて設けられており、
前記旋回操作部と前記小径ギヤの間に、減速機と、該減速機の出力部の回転を前記小径ギヤに伝達する伝達部材とが介在され、
前記減速機の出力部が鉛直方向の軸回りに回転する従動スプロケットであり、
前記減速機の入力部が、減速機内部で直交するかさ歯車で方向転換された水平方向の軸回りに回転する駆動スプロケットであり、
前記伝達部材は、前記従動スプロケットと、前記小径ギヤと同軸に固定された2次従動スプロケットとに巻き掛けられた無端チェーンとからなり、
前記駆動スプロケットに該駆動スプロケットを下方から操作するための操作チェーンが巻き掛けられている
ことを特徴とするエンジンの排気ダクト接続装置。
【請求項2】
前記減速機内部のかさ歯車の方向転換機構の代替として、
出力部が鉛直方向の軸回りに回転するウォームホイールであり、
前記減速機の入力部が、前記ウォームホイールと噛み合い、水平方向の軸回りに回転するウォームである方向転換機構を採用することを特徴とする
請求項記載のエンジンの排気ダクト接続装置。
【請求項3】
末端に鉛直上下方向の軸心を備えた下向きの開口をもち途中に排気ファンを有する排気ダクトと、
該排気ダクトの開口と前記軸心回りに回動自在に連結され排気流れを90度曲げる旋回エルボと、
一端が旋回エルボと連結され、水平方向に延び、他端にエンジンの排気口との接続口が設けられる水平管と、
前記排気ダクトの下向きの開口端部周囲に固定された前記軸心を中心とする大径ギヤと、
前記旋回エルボの側面に前記軸心に平行に回転自在に軸支されて、前記大径ギヤと噛み合う小径ギヤと、
その小径ギヤを下方から多回転往復回転操作する旋回操作部とからなり、
前記水平管が、旋回エルボに連結される第1パイプと、その第1パイプに伸縮自在に嵌合される第2パイプとからなる二重構造を有し、
第1パイプと第2パイプの間に両者の伸縮をもたらすボールネジ機構が介在されており、
該ボールネジ機構を下方から遠隔操作するための伸縮操作部を備えていて、
前記ボールネジ機構は、
前記第1パイプの下方に第1パイプの延長方向に平行に延長され、自身の中央軸周りに回動可能に両端を第1パイプに軸支されるボールネジ軸と、
該ボールネジ軸に外嵌され前記ボールネジ軸の回動により前記ボールネジ軸に沿って動く遊嵌子と、
該遊嵌子を前記第2パイプの下方に離れるように固定する前記第2パイプに固定される金具とで構成され、
前記伸縮操作部は、前記ボールネジ軸の旋回エルボ側の端部にボールネジスプロケットが固定され、該ボールネジスプロケットに該ボールネジスプロケットを下方から操作するための操作チェーンが巻き掛けられて設けられている
エンジンの排気ダクト接続装置。
【請求項4】
前記ボールネジスプロケットとボールネジ軸の間に、操作していないときはブレーキがかかり、操作のときはブレーキが解除されるブレーキ機構が介在されている請求項記載のエンジンの排気ダクト接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン試験室におけるエンジン排気管の排気ダクト接続装置に関し、とくに舶用エンジンや建機エンジンのように排気管が上方へ延びるエンジンの試験室において建屋の排気ダクトと排気管とを位置調整しながら連結するためのエンジンの排気ダクト接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
舶用エンジン、建機用エンジン、またはトラック・トラクターエンジンなどの排気管が上向きに突出される大型ディーゼルエンジンなどの内燃機関(以降舶用エンジンという。)を、エンジンベンチに仮設置して各種運転試験を行うとき、試験装置の一部を構成するエンジンダイナモメータにエンジンの出力軸を連結すると共に、エンジンの排気管の出口を建屋側である試験室に設置される排気ダクトに連結して、内燃機関へ取り込む空気の組成が変化したり、試験作業者の健康被害が出たりすることを防止する。エンジンの排気管と建屋側の排気ダクトとは、建屋側排気ダクトの途中にある排気ファンの耐熱や、ダクトの耐熱、各種試験装置の耐熱のため、エンジン排気管よりもかなり大径の排気ダクトの端部の内部にエンジン排気管の出口端部を挿入し、連結部周囲の空気を誘引しながら排気ガスを冷却希釈して漏れ出ないようにする間接接続が良く行われる。この間接接続の場合、異径の管の2つの中央芯を合わせる必要がある。
【0003】
舶用エンジンの排気管出口の位置はエンジンの形式・トランスミッションとの位置関係・容量によって異なるので、建屋側に固定されている排気ダクトの端部に旋回機能・伸縮機能を備えた接続ダクトを用意して排気ダクトと排気管出口とを接続する必要がある。しかし接続ダクトは高温の排気に対応するため鋼板製であり、小型船舶の排気管に対応するとしても内径300mm以上の大径であるので相当の重量がある。薄肉のフレキシブル配管では耐熱上耐えられない。そのため、旋回するエルボ上部の直管部にシムリングを入れて回転しやすくしたりする工夫をするものの、天井クレーンを用いずに人力で接続ダクトを動かすのは至難の業である。
【0004】
そのため、本来はエンジンベンチに被試験体である試験エンジンを搬入据え付けするための天井クレーンを、用途外の使用ではあるが、やむを得ず天井クレーン玉掛け部をエンジンから掛け換えて、排気ダクトの先の接続ダクト伸縮部の先端を吊りながら天井クレーンを作動させ作業せざるを得ない。しかし排気管出口と接続ダクト末端部とは高い位置にあり、正確に合わせる必要があるので、作業者は脚立に登り、不安定な体勢で微調整をしている。
【0005】
特許文献1に開示されている技術は、エンジンベンチにてエンジンの排気管と設備側排気管の接続部分で、排気ダクトを回転可能としている。また、この文献では、エンジンに連結される3種類の排気ダクト(接続口)を設けており、いずれも接続位置と待避位置の間でロータリシリンダなどの回転駆動装置で回転駆動することを提案している。さらにシリンダ装置で軸方向に移動させる構成も提案している。ただし具体的な構成については言及していない。
【0006】
特許文献2には、油圧ショベルやブルドーザなどの建機のディーゼルエンジンからの排気を車体上部に誘導する排気管において、経年劣化に応じて排気音量が大きくならないように、排気管のフレキシブルホース部分の伸縮を、リンク機構やラック-ピニオンとモータ駆動で行う技術が開示されている(図21、段落[0144]参照)。
【0007】
特許文献3は、工作機械のマシニングセンタ内の液体用ホースや電線などを、チップアタッチメントの移動に合わせてガイドする装置を開示している。この装置は、リンク機構とスプリングを組み合わせてホースや電線を伸縮・回動することにより、ホースや電線を折れ曲がらないように、また、他の物と干渉しないようにガイドすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公平03-034816号公報
【文献】特開2002-161742号公報
【文献】実公平07-044874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、ロータリシリンダでダクトを旋回したり、直動のシリンダでダクトを軸方向に移動することが提案されているが、具体的な構成は記載されていない。また、舶用エンジンのような大きいエンジンの場合は機種によりエンジンの排気管出口の場所が大きく異なるため、この機構での対応は限られる。
【0010】
特許文献2には二重パイプを伸縮駆動する装置がある程度具体的に記載されている。しかしパンタグラフ式のリンク機構では可動域が小さく、ラック-ピニオン機構はずれに弱い。しかも旋回用の回転駆動装置については記載されていない。特許文献3には、ホースや電線を保護しながら湾曲させるガイドが記載されているが、ダクトの旋回や伸縮には採用できない。
【0011】
本発明は舶用エンジンなどの排気管が上向きに突出する大型のエンジンの排気管出口と建物の排気ダクトを連結する作業を、容易かつ安全に行うことができるエンジンの排気ダクト接続装置を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のエンジンの排気ダクト接続装置10は、末端に鉛直上下方向の軸心Cを備えた下向きの開口11aをもち途中に排気ファンを有する排気ダクト11と、該排気ダクト11の開口11aと前記軸心C回りに回動自在に連結され排気流れを90度曲げる旋回エルボ12と、一端が旋回エルボ12と連結され、水平方向に延び、他端にエンジンの排気口との接続口13cが設けられる水平管13と、前記排気ダクト11の下向きの開口端部周囲に固定された前記軸心Cを中心とする大径ギヤ(ギヤの歯の代わりに、チェーン駒がラック的に小径スプロケット24と噛み合うローラーチェーン23あるいはラックを、軸心Cを中心とした円弧として貼り付けてもよい)と、前記旋回エルボ12の側面に前記軸心Cに平行に回転自在に軸支されて、前記大径ギヤと噛み合う小径ギヤ(ローラーチェーン23に代替された場合は小径スプロケット24)と、その小径ギヤを下方から多回転往復回転操作する旋回操作部(30)とからなることを特徴としている。
【0013】
このようなエンジンの排気ダクト接続装置10においては、前記大径ギヤ(23)が前記排気ダクト11に固定され、前記小径ギヤ(24)が前記旋回エルボ12の側面に回転自在に軸支されて設けられており、前記旋回操作部(30)と前記小径ギヤ(24)の間に、減速機26と、該減速機26の出力部(25)の回転を前記小径ギヤ(24)に伝達する伝達部材(31)とが介在されているものが好ましい。
【0014】
また、前記減速機26の出力部が鉛直方向の軸回りに回転する従動スプロケット27であり、前記減速機26の入力部が、減速機26内部で直交するかさ歯車26c、26dで方向転換された水平方向の軸回りに回転する駆動スプロケット29であり、前記伝達部材は、前記従動スプロケット27と、前記小径ギヤ(24)と同軸に固定された2次従動スプロケット25とに巻き掛けられた無端チェーン31とからなり、前記駆動スプロケット29に下方から操作するための操作チェーン30が巻き掛けられているものが一層好ましい。
【0015】
前記水平管13が、旋回エルボ12に連結される第1パイプ13aと、その第1パイプ13aに伸縮自在に嵌合される第2パイプ13bとからなる二重構造を有し、第1パイプ13aと第2パイプ13bの間に両者の伸縮をもたらすボールネジ機構(34、38)が介在されており、該ボールネジ機構(34、38)を下方から遠隔操作するための伸縮操作部(40)を備えているものが好ましい。また、前記ボールネジ機構(34、38)は、前記第1パイプ13aの下方に第1パイプ13aの延長方向に平行に延長され、自身の中央軸周りに回動可能に両端を第1パイプ13aに軸支されるボールネジ軸34と、該ボールネジ軸34に外嵌され前記ボールネジ軸34の回動により前記ボールネジ軸34に沿って動く遊嵌子38と、該遊嵌子38を前記第2パイプ13bの下方に離れるように固定する金具とで構成され、前記伸縮操作部(40)は、前記ボールネジ軸34の旋回エルボ12側の端部にボールネジスプロケット39が固定され、該ボールネジスプロケット39に下方から操作するための操作チェーン40が巻き掛けられて設けられているものが好ましい。前記ボールネジスプロケット39とボールネジ軸34の間に、操作していないときはブレーキがかかり、操作のときはブレーキが解除されるブレーキ機構が介在されているものが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエンジンの排気ダクト接続装置は、排気ダクトと旋回エルボの連結部で中心軸の周りに摺動回転する部分のそれぞれに設けた大径ギアと小径ギヤを噛み合わせ、下方から小径ギヤを多回転往復回転させながら大径ギヤに沿って移動操作できるので、作業者は天井クレーン玉掛けの掛け換えすることなく、脚立などに登ることもなく安全に接続作業および分離作業ができる。そして小径ギヤから大径ギヤに回転力を伝達するときに減速(増力)作用を奏するので、旋回ダクトや水平管の重量が大きい場合でも、天井クレーンで水平管を吊り下げずに旋回させることができる。そのため、作業者は一層容易かつ安全に作業することができる。
【0017】
前記大径ギヤが前記排気ダクトに固定され、前記小径ギヤが前記旋回エルボの側面に回転自在に軸支されて設けられており、前記旋回操作部と前記小径ギヤの間に、減速機と、該減速機の出力部の回転を前記小径ギヤに伝達する伝達部材とが介在されている場合は、旋回エルボや水平管の旋回に伴って、減速機および旋回操作部も一緒に大径ギヤ周囲を旋回する。そのため、作業者は水平管の先端位置を確認しながら旋回操作部の操作をすることができる。さらに水平管が旋回するときに旋回操作部と干渉しないので、操作が容易である。
【0018】
前記減速機の出力部が鉛直方向の軸回りに回転する従動スプロケットであり、前記減速機の入力部が、減速機内部で直交するかさ歯車で方向転換された水平方向の軸回りに回転する駆動スプロケットであり、前記伝達部材は、前記従動スプロケットと、記小径ギヤと同軸に固定された2次従動スプロケットとに巻き掛けられた無端チェーンとからなり、前記駆動スプロケットに下方から操作するための操作チェーンが巻き掛けられている場合は、かさ歯車の鉛直方向回転側の歯数を、水平方向回転側の歯数より多く3倍、4倍と大きくなるように設定して噛み合わせれば、減速比を3倍、4倍と大きくすることができ、下方からの操作をスムーズに旋回へ変換することができる。また、操作者が床面から操作するのが容易である。
【0019】
さらに前記水平管が、旋回エルボに連結される第1パイプと、その第1パイプに伸縮自在に嵌合される第2パイプとからなる二重構造を有し、第1パイプと第2パイプの間に両者の伸縮をもたらすボールネジ機構が介在されており、そのボールネジ機構を下方から遠隔操作するための伸縮操作部を備えている場合は、エンジンの排気管出口との接続口の位置の調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1Aおよび図1Bはそれぞれ本発明の排気ダクト接続装置の一実施形態を示す平面図および側面図である。
図2図2Aおよび図2B図1Aおよび図1Bの要部拡大図である。
図3図3Aおよび図3Bは排気ダクト接続装置の伸縮作用を示す側面図である。
図4】本発明に関わる大径ギヤと小径ギヤの他の実施形態を示す要部平面図である。
図5図5Aおよび図5B図1の減速器内のかさ歯車による方向転換機構を示す平面図および側面図である。
図6図5A図5Bのかさ歯車による方向転換機構の代替として採用されるウォームギヤ機構を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1A図1Bに示す排気ダクト接続装置10は、エンジン試験室を含む建物に固定して設けられている排気ダクト11と、その排気ダクト11に対し、鉛直上下方向の軸心Cまわりに回動自在に連結される旋回エルボ12と、その旋回エルボ12を往復旋回駆動する旋回駆動機構Rと、旋回エルボ12に対し、水平方向に伸縮自在に連結される水平管13と、水平管13の伸縮を駆動する伸縮駆動機構Eとを備えている。水平管13は、旋回エルボ12に連結される第1パイプ13aと、その第1パイプ13a内に摺動自在に収容され、第1パイプ13aに対して伸縮自在の第2パイプ13bとからなる。排気ダクト11は、排気ファン(排気ブロワを含む)で試験体である内燃機関から排出される排気ガスを建物の外部に直接排気して希釈したり、あるいは排ガス処理器を介して排気したりするものである。第2パイプ13bの先端に、試験体のエンジンから上向きに延長される排気管出口を挿入する接続口13cが下向きに設けられている。
【0022】
第1パイプ13aの先端部と排気ダクト11の間には、水平管13の重量を支える吊り全ねじボルト15が長さ調整用のターンバックル16を介して接続されている。吊り全ねじボルト15の上端部に取り付けられた連結部材15aは首振り機構を持ち、排気ダクト11に対し軸心C回りに回動自在に連結されている。吊り全ねじボルト15に代えてロッドやワイヤを採用してもよい。第1パイプ13aの両側面には一対の溝部材18がガイド部材として設けられており、それらの溝部材18は第1パイプ13aの先端より前に突出している。そして第2パイプ13bの両側面には、それらの溝部材18内を転動するローラーまたは摺動するスライド19などが張り出して取り付けられている。それにより想像線のように伸び出した第2パイプ13bの重量を支えることができ、伸縮がスムーズになる。溝部材18の先端同士は連結部材18aで連結されている。
【0023】
図2A図2Bに示すように、排気ダクト11の末端部の開口11aは鉛直下方を向いており、その開口11aの周囲にフランジ11bが水平に設けられている。旋回エルボ12の上端には、2枚のフランジ間の多数のボルト穴が開設された内方にリング状のベアリング21が排気ダクト11のフランジ11bを水平に相対的に自転回転させる方向に埋め込まれ、ベアリング21の摺動部から旋回エルボ12内の排気が漏れないよう短管が旋回エルボ12の内面に嵌合されている。このように、旋回エルボ12の上端に回動自在機構20が備えられ、その下方にフランジ12aが設けられている。また、旋回エルボ12に固定フランジと挟圧フランジを設け、それらの間に排気ダクト11の先端のフランジ11bを挟み込み、旋回可能に挟持してもよい。いずれの場合も排気ダクト11と旋回エルボ12は内部の通気性を維持しながら回動自在に結合されている。ベアリング21はスラストボールベアリングなどが用いられる。メタルブッシュを介在させて摺動自在に連結することもできる。フランジ11bとフランジ12aとは少し離れて向かい合って回動自在機構20だけでは重量に耐えられないところ、水平管13の重量を支える吊り全ねじボルト15が長さ調整用のターンバックル16を介して接続されているので噛み込むことなくスムーズに動作する。排気ダクト11内は、排気ファンまたはブロワが先にあって負圧であり、排気ガスが漏れ出ることはないので、排気ダクト11と旋回エルボ12の間の気密性はそれほど高くする必要はない。
【0024】
前記旋回駆動機構Rは、大きくは旋回エルボ12側と、水平管13側と、両者を連結する伝達部材とに分けられる。旋回エルボ12側は、排気ダクト11のフランジ11aの周囲にほぼ半周に渡って配置されたローラーチェーン23と、そのローラーチェーン23と噛み合い、旋回エルボ12の側面に回転自在に軸心Cと平行に軸支される小径スプロケット24と、その小径スプロケット24と一体に回転する2次従動スプロケット(図2B参照)25とからなる。この実施形態では約半周のローラーチェーン23が大径ギヤとして作用し、そのローラーチェーン23と噛み合いながら公転転動する小径スプロケット24が小径ギヤとして作用する。
【0025】
なお、ローラーチェーン23に代えて、図4に示すような金属製または合成樹脂製のフレキシブルなラック41、あるいは円弧状の剛性ラックを大径ギヤとして採用することができる。さらにセクタギヤあるいは全周のギヤを採用することもできる。それらの場合は小径スプロケット24に代えて、小径のピニオンギヤ42を採用する。
【0026】
上記旋回駆動機構Rでは、まず大径ギヤであるラックまたはローラーチェーン23と、小径ギヤであるまたはピニオンギヤまたは小径スプロケット24の間で歯数比の割合で減速作用が奏される。ピニオンギヤまたは小径スプロケット24と2次従動スプロケット25が取り付けられている回転軸25aは、旋回エルボ12の側面に取り付けた鉛直上下方向の前記軸心Cと平行な軸を軸支するピローブロック25b、25bによって回転自在に支持されている。
【0027】
旋回駆動機構Rの水平管側は、水平管13の第1パイプ13aの上面に取り付けられる減速機26と、その減速機26の出力軸26aに固着される従動(出力)スプロケット27と、減速機26の入力軸26bに取り付けられる駆動(入力)スプロケット(ハンドチェーンホイール)29とからなる。さらに減速器26上端の従動スプロケット27と旋回エルボ12側の2次従動スプロケット25との間は、それらに巻き掛けられた無端状のローラーチェーン(伝達部材)31によって動力伝導される。他方、前記駆動スプロケット29には無端状の操作チェーン(ハンドチェーン)30が巻き掛けられている。操作チェーン30としては小判状のリンクを90°ずつずらして連結したリンクチェーンを用いており、駆動スプロケット29としてはディスクの周囲にリンク列が噛み合う溝を形成したチェーンホイールを採用している。
【0028】
駆動スプロケット(チェーンホイール)29は、減速機構が内蔵されたものを採用することができる。また、ブレーキ機構Bが内蔵されているもの、あるいは連結されているものがさらに好ましい。ブレーキ機構Bとしては、駆動スプロケット29の操作中はブレーキ作用が解除され、操作していないときに自動的にブレーキがかかるものが好ましい。このような駆動スプロケット29はチェーンブロックの操作用として公知である。この実施形態では操作チェーン30は床から操作者が操作する旋回操作部を構成している。
【0029】
前記減速機26の出力軸26aは、旋回エルボ12側との動力伝導に都合がよいように旋回エルボ12の回転中心(軸心C)と平行である。また入力軸26bは操作チェーン30の配置に都合がよいように水平の軸心回りに回転自在である。そのため出力軸26aと入力軸26bとは90°の角度で交差している。この実施形態では、図5A図5Bに示すように、入力軸26bと一体に回転する小径のかさ歯車26cと、出力軸26aと一体に回転し、小径のかさ歯車26cと噛み合う大径のかさ歯車26dとを減速機26内部に備えている。そのため、軸同士を直角(あるいは捩れの位置を含む)に交差させる方向転換機構を実現しながら減速比を大きくすることができる。
【0030】
また、異なる実施形態では高価になるが、図6に示すように、減速機26として、入力軸26bと一体に回転するウォーム43と、そのウォーム43と噛み合い、出力軸26aと一体に回転するウォームホイール44とを採用してもよい。この場合、ウォームとウォームホイール44の加工精度のため高価になり、特にウォーム43に強大な力がかかるため金属硬化処理などに費用がかかるが、軸同士を直角に交差(ねじれの位置を含む)させながら減速比を非常に大きく取ることが可能となる。
【0031】
図1A図1Bに戻って、上記のごとく構成される旋回駆動機構13は、床上の操作者が操作チェーン30の片方を引き下げると、駆動スプロケット29が一方向に回転し、減速機26の入力軸26bが回転する。そして出力軸26aが減速回転し、従動スプロケット27およびローラーチェーン31を介して2次従動スプロケット25が回転し、同時に小径スプロケット(またはピニオンギヤ)24が回転する。小径スプロケット(またはピニオンギヤ)24は約半周のローラーチェーン23と噛み合っているので、その周囲を公転転動する。そのため、旋回エルボ12および水平管13が軸心C回りにゆっくり旋回する。なお、小径スプロケット24とローラーチェーン23の関係は、第1スプロケット24を遊星ギヤとし、ローラーチェーン23を太陽ギヤとする遊星ギヤ機構と考えることもできる。その場合は旋回エルボ12と水平管13はキャリアに該当する。操作チェーン30の他方を引き下げると、上記とは逆に、旋回エルボ12および水平管13が逆方向に旋回する。
【0032】
ローラーチェーン23の巻き付け角度は、求められる水平管13の旋回角度に応じて増減でき、全周に巻き付けてもよい。ローラーチェーン23を採用すると、既設の設備に対する工事が容易である。ただし小径スプロケット24に代えてピニオンを採用し、ローラーチェーン23に代えて外歯ギヤ、とくに半円ないし扇状のリングギヤを採用することもできる(図4参照)。なお、減速機26は旋回エルボ12に取り付けることもできる。その場合は後述する伸縮操作用の操作チェーンと旋回操作用のチェーンの位置が離れるため、いくらか操作しにくくなるが、伝達部材としてのローラーチェーン31が不要で、部品点数が少なくなる利点がある。また、減速機26や小径ギヤ(スプロケットを含む)を排気ダクト11に設け、大径ギヤ(ローラーチェーン、ラックを含む)を旋回エルボ12に設けることも可能である。その場合は伸縮操作用の操作チェーン40のみが旋回するので操作しにくくなるが、可動部分の重量が軽くなるので、操作力が少なくて済む。
【0033】
つぎに水平管13の伸縮駆動機構14について説明する。図3Aに示すように、第1パイプ13aの下面に沿って補強部材を兼ねるガイドレール32が前後方向に延びるように設けられている。駆動部材としてのボールネジ軸(雄ねじ軸)34の前端と後端には、それぞれブラケットを介して軸受け33が設けられており、それらの軸受け33の間にボールネジ軸34が回転自在に軸支されている。他方、第2パイプ13bの先端の下部には、角パイプ状の保持部材35の先端が連結され、その保持部材35の後端近辺にブラケットを介してボールネジ軸34の雄ねじと、自身の雌ねじとを同一位置に合わせ、それで生じた溝の中にボールを入れてそのボールが循環できるように戻り溝を設けたボールネジ(雌ねじ)を有する遊嵌子(ボールナット)38が取り付けられている。遊嵌子38はブラケット36に固定され、ブラケット36に開設された穴によりスライドガイド37を摺動して移動するように構成され、前述のボールネジ機構のボールネジ軸34に沿って前後移動自在に吊り下げられている。
【0034】
保持部材35の上面は軸受け33のブラケットとの干渉を避けるため、開放されているか、あるいはスリットが形成されている。保持部材35の後部の内部には、ボールネジ軸34と螺合する前述の遊嵌子38が固定されている。遊嵌子38はブラケット36を介して保持部材35に取り付けてもよい。保持部材35の後端をブラケット36を介してガイドレール32で案内することにより、遊嵌子38を回転しないように保持することができ、雄ねじ軸34の回転に対して遊嵌子38をスムーズに前進または後退させることができる。
【0035】
前記ボールネジ軸34の後端には、前記駆動スプロケット29と同様の、チェーン駆動のボールネジスプロケット(チェーン従動ホイール)39が固着されており、そのボールネジスプロケット39の周囲には無端状の操作チェーン40が係合されている。ボールネジスプロケット39および操作チェーン40は、旋回駆動機構Rのものと同様である。ボールネジスプロケット39は、減速機構およびブレーキ機構Bが内蔵されているものが好ましい。ボールネジスプロケット39とブラケット36との間に介在させてもよい。ブレーキ機構Bは、操作するときにブレーキ作用が解除され、操作しないときは自動的にブレーキがかかるものが好ましい。このような減速機構およびブレーキ機構を備えたチェーン従動ホイールは公知であり、市販のチェーンブロックに用いられているものを転用することができる。
【0036】
上記のように構成される伸縮駆動機構Eは、操作チェーン40の片側を引き下げるとボールネジスプロケット39が回転し、ボールネジ軸34が操作された方向に回転し、それに伴い遊嵌子38が前進する。それにより第2パイプ13bが第1パイプ13aから伸び出す(図3B参照)。操作チェーン40の他方を引き下げると、ボールネジスプロケット39が反対方向に回転し、前述とは逆に第2パイプ13bが第1パイプ13a内に引っ込む(図3A参照)。
【0037】
第2パイプ13bの伸縮のとき、ボールネジ軸34の回転で遊嵌子38を前進、後退させるので、減速作用が奏され、操作力は少なくて済む。また、第1パイプ13aに設けた溝部材18によって第2パイプ13bに設けたローラーまたはスライド19がガイドされるので、第2パイプ13bが第1パイプ13a内で回転せず、接続口13cの向きがずれない。保持部材35のブラケット36がガイドレール32によって案内されることも寄与する。
【0038】
上記実施形態では、操作チェーン40は水平管13の旋回中心(軸心C)の近くにある。そのため水平管13を旋回させても操作者が大きく移動する必要がない。さらに伸縮用の操作チェーン40が旋回用の操作チェーン30の近くにあるので、操作者は両方の操作チェーン30、40を同時に、または交互に操作することができる。そして旋回エルボ12の旋回と水平管13の伸縮により、いわば極座標の角度と半径のように、第2パイプ13bの先端の接続口13cを任意の位置に移動させることができる。
【0039】
前記実施形態では手動により旋回エルボ12の旋回と水平管13の伸縮を操作するようにしているので、既設の排気ダクト接続装置に旋回機構や伸縮機構を追加し、改良することができる。しかしいずれか一方、あるいは両方をモータ駆動とすることもできる。前記実施形態では、第1パイプ13aにボールネジ軸34を設け、第2パイプ13bに遊嵌子38を設けているが、これとは逆に、第1パイプ13aに遊嵌子38を設け、第2パイプ13bにボールネジ軸34を設けることもできる。ボールネジ機構は摩擦が少ないので操作力が軽い利点がある。操作力が重くなるが、通常の雄ねじとナットとからなるネジ機構を採用することもできる。さらにネジによる減速作用は生じないが、ラック・ピニオン機構により伸縮させることもできる。
【0040】
前記減速機26の出力軸26aに垂直方向の軸回りに回転するウォームホイール44が結合され、前記入力軸26bが、前記ウォームホイール44と噛み合い、水平方向の軸回りに回転するウォーム43であり、前記ウォーム43に駆動スプロケット(チェーンホイール)29が連結されると共に、駆動スプロケット29を下方から操作するための操作チェーン30が巻き掛けられている場合は、減速比を大きくすることができ、下方からの操作をスムーズに旋回へ変換することができる。また、操作者が床面から操作するのが容易である。
【符号の説明】
【0041】
10 排気ダクト接続装置
11 排気ダクト
11a 開口
11b フランジ
C (旋回の)軸心
12 旋回エルボ
12a フランジ
R 旋回駆動機構
13 水平管
13a 第1パイプ
13b 第2パイプ
13c 接続口
E 伸縮駆動機構
15 吊り全ねじボルト
15a 連結部材
16 ターンバックル
18 溝部材
18a 連結部材
19 スライド
20 回動自在機構
21 ベアリング
23 (約半周の)ローラーチェーン(大径ギヤ)
24 小径スプロケット(小径ギヤ)
25 二次従動スプロケット
25a 回転軸
25b ピローブロック
26 減速機
26a 出力軸
26b 入力軸
26c 小径のかさ歯車
26d 大径のかさ歯車
27 従動スプロケット(出力軸)
29 駆動スプロケット(入力軸)
30 操作チェーン(旋回用)
31 ローラーチェーン(伝達部材)
32 ガイドレール
33 軸受け
34 ボールネジ軸(雄ねじ軸)
35 保持部材
36 ブラケット
37 スライドガイド
38 遊嵌子
39 ボールネジスプロケット(チェーン従動ホイール)
40 操作チェーン(伸縮用)
B ブレーキ機構
41 ラック
42 ピニオンギヤ
43 ウォーム
44 ウォームホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6