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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】産生改善のためのタンパク質分解の阻害
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20220330BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220330BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20220330BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220330BHJP
【FI】
C12N5/10
C12P21/02 C
C07K14/435
C12N15/12
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2018535041
(86)(22)【出願日】2017-01-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2017050259
(87)【国際公開番号】W WO2017118726
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-12-26
(31)【優先権主張番号】62/275,691
(32)【優先日】2016-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/276,339
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502336151
【氏名又は名称】ロンザ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ジェイクス,コリン・マーク
(72)【発明者】
【氏名】スモールズ,クリストファー・マーク
(72)【発明者】
【氏名】ナイト,タンヤ・ジェーン
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104818309(CN,A)
【文献】GELMAN M. S. et al.,J. Biol. Chem.,Vol.277 No.14 (2002),pp.11709-11714
【文献】WEN Jia-ming et al.,China Biotechnology,Vol.35 No.9 (2015),pp.1-6
【文献】WANG Q. et al.,J. Biol. Chem.,Vol.283 No.12(2008),pp.7445-7454
【文献】CHONDROGIANNI N. et al.,J. Biol. Chem.,Vol.278 No.30(2003),pp.28026-28037
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-5/28
C12N 1/00-1/21
C12P 21/00-21/08
C07K 14/00-14/825
C12N 15/09-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)細胞の集団をタンパク質分解経路阻害薬と接触させること;
b)前記阻害薬と接触していない同じ型の細胞と比較して、前記細胞の集団中の1または複数の細胞によって産生されたポリペプチドの量またはポリペプチドの品質において、前記阻害薬の効果を評価すること;
c)前記阻害薬と接触していない同じ型の細胞と比較して、細胞またはその子孫細胞がポリペプチド産物の増大した産生能および/または増大した品質を有する場合に、該細胞またはその子孫細胞を選択すること;
d)該細胞またはその子孫細胞を培養し、細胞株を得ること;および
e)組換えポリペプチド産物をコードする外因性核酸を、該細胞株へ導入することを含む、該組換えポリペプチド産物の増大した産生能を有する、および/または、組換えポリペプチド産物の増大した品質を生ずる細胞株を作製する方法であって、但し、ヒト体内において実施する方法を除く前記方法
【請求項2】
前記阻害薬がプロテアソーム阻害薬、ユビキチン経路阻害薬またはERAD阻害薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)のポリペプチドが、外因性核酸にコードされた組換えタンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
阻害薬に接触していない細胞によって産生されたレベル、量または数量に比較して、阻害薬の存在下において産生された工程(b)におけるポリペプチド産物の量が増加しており、および/または、産物の改善された品質が、所望の産物の増大したレベル、量もしくは割合の1以上を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ポリペプチド産物が、
a.適正にフォールディングされたポリペプチドの増大したレベル、量もしくは割合、
b.機能的ポリペプチドの増大したレベル、量もしくは割合、
c.凝集したポリペプチドの減少したレベル、量もしくは割合、または
d.断片化アイソフォームまたは不要なアイソフォームの減少したレベル、量もしくは割合、
の状態で産生される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記bの状態で産生された機能的ポリペプチドが酵素的に活性である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該阻害薬がプロテアソーム阻害薬である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該プロテアソーム阻害薬が、20Sコアサブユニット、19S調節サブユニット、11S調節粒子、またはプロテアソームの集合を支援するシャペロンタンパク質のうちの1種類以上の活性を阻害または低下させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該プロテアソームの集合を支援するシャペロンタンパク質が、Hsm3/S5b、Nas2/p27、Rpn14/PAAF1またはNas6/ガンキリンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該プロテアソーム阻害薬がMG132、エポキソミシン、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、カルフィルゾミブ、ジスルフィラム、CEP-18770、ONX 0912、サリノスポラミド、LLnV、CEP1612、ラクタシスチン、PS-341およびエポノミシンから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
該阻害薬がERAD阻害薬である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
該ERAD阻害薬が、カルネキシン/カルレティキュリン、UDP-グルコース-糖タンパク質グルコシルトランスフェラーゼ、ER分解促進α-マンノシダーゼ様タンパク質(EDEM)、ERマンノシダーゼI、Sec61、CDC48p(VCP/p97)、Hrd1、Doa10、Ubc6、Ubc1、Cue1またはUbc7のうちの1種類以上の活性を阻害または低下させる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ERAD阻害薬がイーヤレスタチン(eeyarestatin)Iである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該阻害薬がユビキチン経路阻害薬である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
該ユビキチン経路阻害薬が、E1ユビキチン活性化酵素、E2ユビキチン結合酵素またはE3ユビキチンリガーゼのうちの1種類以上の活性を阻害または低下させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細胞を第2のタンパク質分解経路阻害薬と接触させることを更に含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
細胞を、第1および第2のタンパク質分解阻害薬と接触させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(i)第1のタンパク質分解阻害薬および第2のタンパク質分解経路阻害薬が、MG132、エポキソミシンまたはイーヤレスタチン1から選択される;
(ii)第1の阻害薬がプロテアソーム阻害薬であり、第2の阻害薬がプロテアソーム阻害薬である;
(iii)第1の阻害薬がプロテアソーム阻害薬であり、第2の阻害薬がERAD阻害薬もしくはユビキチン経路阻害薬である;
(iv)第1の阻害薬がERAD阻害薬であり、第2の阻害薬がERAD阻害薬である;
(v)第1の阻害薬がERAD阻害薬であり、第2の阻害薬がユビキチン経路阻害薬もしくはプロテアソーム阻害薬である;
(vi)第1の阻害薬がユビキチン経路阻害薬であり、第2の阻害薬がユビキチン経路阻害薬である;または
(vii)第1の阻害薬がユビキチン経路阻害薬であり、第2の阻害薬がERAD阻害薬もしくはプロテアソーム阻害薬である、
請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
細胞をタンパク質分解阻害薬と接触させ、培養物のバイアビリティが該培養物を該タンパク質分解阻害薬と接触させる前の該培養物のバイアビリティと比べて、または該阻害薬と接触させない培養物と比べて約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%低下する、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
タンパク質分解阻害薬の濃度が、0.5 μM未満 MG-132または、0.05 μM未満 エポキソミシンである、請求項1~10および16~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
該細胞を、該タンパク質分解阻害薬と24、48、72、96時間またはそれ以上接触させる、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
該細胞が、マウス、ラット、チャイニーズハムスター、シリアンハムスター、サル、ヒト、イヌ、ラクダ、ウマ、フェレットまたはネコに由来するものである、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
該細胞が、CHO細胞である、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
該細胞が、HeLa、HEK293、H9、HepG2、MCF7、ジャーカット、NIH3T3、PC12、PER.C6、BHK、VERO、SP2/0、NS0、YB2/0、EB66、C127、L細胞、COS、QC1-3、CHOK1、CHOK1SV、Potelligent CHOK1SV、CHO GSノックアウト型、CHOK1SV GS-KO、CHOS、CHO DG44、CHO DXB11ならびにCHOZNから選択される、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
COSが、COS1またはCOS7である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(b)のポリペプチド産物を、物理的または機能的特性に関するパラメータについて評価する、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
物理的または機能的特性が、一次配列、グリコシル化、一次、二次、三次もしくは四次構造、活性、グリコシル化度、凝集度、事前に選択した特性を有する発現産物の割合もしくはレベルである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
特性が、凝集度、発現産物の割合またはレベルであり、かつ、事前に選択した特性が、事前に選択した単量体型、二量体型もしくは三量体型構造であるか、または、発現された産物の割合もしくはレベルが、事前選択した非変性型もしくは非凝集型構造を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
該細胞株、細胞集団またはその子孫細胞から該組換えペプチドを発現させることを更に含む、請求項1~29のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産物、例えば組換えタンパク質の産生のための細胞および細胞株、例えば、真核細胞および細胞株に関する。また、本開示は、産物、例えば組換えタンパク質の産生の改善のためのタンパク質分解経路のモジュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
高産生性の組換えCHO細胞株の作成および選択は、細胞株の開発プロセスにおける障壁として際立っている。したがって、組換えタンパク質の高産生のための受容能力を有する細胞株を同定および作成するための方法の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、一部において、細胞、例えば、真核細胞、例えば哺乳動物細胞または哺乳動物細胞以外の細胞が産物、例えば組換えポリペプチドを産生する能力と、タンパク質分解経路の阻害薬、例えば、プロテアソーム阻害薬、ユビキチン経路阻害薬およびERAD阻害薬に対する感受性との間に相関性があるという知見に基づいている。理論に拘束されることを望まないが、タンパク質分解経路の阻害薬を、高産生細胞、例えば、高収率で産物、例えば組換えポリペプチドを産生し得る細胞を選択するために使用することができると考えられる。したがって、本明細書において、産物、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞を評価、選択、分類または同定するための方法およびプロセスを開示する。また、本明細書において、高産生能を有する細胞を同定または選択することにより、産物、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または細胞株を作製するための方法およびプロセスを提供する。本明細書に記載のこのような方法およびプロセスは、細胞をタンパク質分解阻害薬(例えば、タンパク質分解経路の活性を阻害または低下させる)と接触させることを含むものである。したがって、本明細書において、例えば、産物、例えば組換えポリペプチドの産生のための高産生能を有する、よりよい品質の細胞を同定するための方法を提供するだけでなく、よりよい品質の産物、例えば、組換えポリペプチド産物、例えばモノクローナル抗体および発現が困難なタンパク質、例えば二重特異性分子を産生する細胞も提供する。
【0004】
一態様では、本開示において、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法を取り上げて記載する。一実施形態では、該方法が:
a)随意に、細胞を準備すること;
b)該細胞(または該細胞の子孫)をタンパク質分解阻害薬、例えば、プロテアソーム阻害薬、ユビキチン経路阻害薬または小胞体関連分解(ERAD)阻害薬と接触させること;
c)該細胞(または該細胞の子孫)において、細胞機能に関する1つ以上のパラメータに対する該タンパク質分解阻害薬、例えば、プロテアソーム阻害薬、ユビキチン経路阻害薬またはERAD阻害薬の効果を評価すること;
d)随意に、該1つ以上のパラメータに対する該タンパク質分解阻害薬、例えばプロテアソーム阻害薬の該効果の値を参照値と比較すること;および
e)随意に、該細胞(または該細胞の子孫)から産物、例えば組換えポリペプチドを発現させ;
それにより、細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択することを含むものである。一実施形態では、該方法が、細胞を準備することを含むものである。一実施形態では、該方法が、該1つ以上のパラメータに対する該タンパク質分解阻害薬、例えばプロテアソーム阻害薬の該効果の値を参照値と比較することを含むものである。一実施形態では、該方法が、該細胞(または該細胞の子孫)から産物、例えば組換えポリペプチドを発現させることを含むものである。
【0005】
本明細書に記載の細胞および方法によって産生される産物は分子、核酸、ポリペプチド、またはその任意の融合体もしくはハイブリッドであり得る。一実施形態では、産物が、天然に存在しない物質または分子である。別の実施形態では、産物が、天然に存在する物質または分子である。本明細書に記載の産物を産生する細胞は、発現を制御する、例えば増大させるように、または本明細書に記載の産物を産生する、例えばコードするように操作または修飾されている。一実施形態では、細胞は、内因的に発現される産物の発現を制御する、例えば増大させる外来性核酸を含むように操作または修飾されている。別の実施形態では、細胞は、産物、例えば、内因的に発現される産物、細胞によって内因的に産生されない産物または天然に存在しない産物をコードしている外来性核酸を含むように操作または修飾されている。
【0006】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価することを含むものである。
【0007】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を分類することを含むものである。
【0008】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を同定することを含むものである。
【0009】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を作製することを含むものである。
【0010】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を選択することを含むものである。
【0011】
一実施形態では、例えば、産物、例えばポリペプチド、組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、さらに、例えば、工程(b)の一部として、該タンパク質分解阻害薬と接触状態の該細胞(または該細胞の子孫)を培養することを含むものである。
【0012】
本明細書に記載の方法は、改善された、例えば増大した産生能、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生能を有する細胞を同定または選択することを含むものである。一実施形態では、同定または選択された該細胞によって産生される産物のレベル、量または数量は、タンパク質分解阻害薬と接触させていない細胞によって産生されるレベル、量または数量と比べて例えば1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍または100倍またはそれ以上増大する。
【0013】
本明細書に記載の方法は、改善された、例えば増大した品質の産物、例えば、組換えポリペプチドを有する細胞を同定または選択することを含むものである。一実施形態では、同定または選択された該細胞によって産生される産物の品質は、タンパク質分解阻害薬と接触させていない細胞によって産生される産物の品質と比べて例えば1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍または100倍またはそれ以上増大する。一実施形態では、産物の改善された品質が、以下:例えば、不要なアイソフォーム形態、断片化形態もしくは切断型形態と比べて所望の産物のレベル、量もしくは割合の増大;適正にフォールディングされた産物のレベル、量もしくは割合の増大;機能性産物、例えば酵素活性な産物のレベル、量もしくは割合の増大;凝集した産物のレベル、量もしくは割合の低下;または断片化された、もしくは不要なアイソフォームのレベル、量もしくは割合の低下のうちの1つ以上を含む。
【0014】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、タンパク質分解阻害薬、例えばプロテアソーム阻害薬の効果の値を参照値と比較することを含むものである。該値が参照値と所定の関係を有する実施形態では、該方法が、細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を、例えば、培養物、例えばバンク登録細胞の確立のために分類または選択することを含むものである。該値が参照値と合っているかまたは超えているいくつかの実施形態では、該方法が、細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を、例えば、培養物、例えばバンク登録細胞の確立のため、またはポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のために分類または選択することを含むものである。該値が参照値と所定の関係を有する実施形態では、該方法が、細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のために分類または選択することを含むものである。該値が参照値と合っているかまたは超えている実施形態では、該細胞または子孫細胞または子孫細胞集団は産生細胞または子孫細胞または子孫細胞集団として分類、同定または選択される。該値が参照値と所定の関係を有するいくつかの実施形態では、該方法が、該細胞(または該細胞の子孫)を、例えば、細胞株または細胞集団の作製のために選択することを含むものである。
【0015】
一実施形態では、細胞機能に関するパラメータは:
i)細胞生存、
ii)培養物のバイアビリティ、
iii)産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生能、
iv)プロテアソーム活性;または
v)発現産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの質、例えば、より均質な産物
を含む、例えば、これらから選択される。
【0016】
一実施形態では、該方法が、1つより多くのパラメータを評価することを含むものである。一実施形態では、該方法が1つより多くのパラメータを評価することを含むものであり、測定されたパラメータは参照値と比較される。
【0017】
また、本明細書において、本明細書に記載の細胞または該細胞の子孫細胞に由来する細胞株を確立するための方法を提供する。一実施形態では、該方法がさらに、培養細胞集団、例えば子孫細胞集団を得るために該細胞を培養することを含むものである。一実施形態では、該方法がさらに、該培養細胞集団、例えば子孫細胞集団から細胞を選択することを含むものである。一実施形態では、該方法が、選択された細胞(または該細胞の子孫)を、細胞機能に関するパラメータについて評価すること、例えば、本明細書に記載のパラメータ、例えば細胞機能に関するパラメータの値を得ることを含むものである。該値が参照値と所定の関係を有するかかる実施形態では、該細胞(または該細胞の子孫)を、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のために選択する。該値が参照値と合っているかまたは超えている実施形態では、該細胞(または該細胞の子孫)が産生細胞として選択される。一実施形態では、該方法がさらに、前記細胞から細胞株を確立することを含むものである。
【0018】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、さらに、該細胞内に外来性核酸を導入することを含むものである。一実施形態では、該外来性核酸が、産物、例えば組換えポリペプチドをコードしているもの、または産物、例えば内因性ポリペプチドの発現を制御する、例えば増大させる外来性核酸である。一実施形態では、該外来性核酸が、工程a)、b)、c)およびd)のうちの1つ以上の後に導入される。一実施形態では、該外来性核酸が、工程a)、b)、c)およびd)のうちの1つ以上の前に導入される。一実施形態では、該外来性核酸が、表1または2から選択されるポリペプチド、例えば、組換えポリペプチド、例えば治療用ポリペプチドまたは抗体分子をコードしているものである。一実施形態では、該方法がさらに、該細胞内に1種類以上のさらなる外来性核酸、例えば第2の外来性核酸を導入することを含むものである。一実施形態では、第2の外来性核酸は、工程a)、b)、c)およびd)のうちの1つ以上の後に導入される。一実施形態では、第2の外来性核酸は、工程a)、b)、c)およびd)のうちの1つ以上の前に導入される。一実施形態では、第2の外来性核酸が第1の外来性核酸の導入後に導入される。一実施形態では、第2の外来性核酸が第1の外来性核酸の導入前に導入される。一実施形態では、第2の外来性核酸が第1の外来性核酸と同時に導入される。一実施形態では、第2の外来性核酸は、選択マーカー、例えばグルタミンシンターゼをコードしているものである。一実施形態では、該方法がさらに、トランスフェクション、エレクトロポレーションまたは形質導入を含む外来性核酸の導入を含むものである。
【0019】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、さらに、該細胞を第2の特性について評価すること、例えば、該細胞に、外来性成分、例えば、1種類以上の外来性核酸、例えば該細胞の核酸内に組み込まれた、例えば該細胞の染色体ゲノム内に組み込まれた1種類以上の外来性核酸が含まれているかどうかを調べることを含むものである。一実施形態では、該方法が、該細胞に、該細胞の核酸内に組み込まれた、例えば該細胞の染色体ゲノム内に組み込まれた1種類以上の外来性核酸が含まれているかどうかを調べることを含み、MSX選択、MTX選択(例えば、DHFR系)、抗生物質選択、酵母増殖選択、マーカーの色の変化もしくは表面発現に基づいた選択、Selexis系に基づいた選択、またはCatalant系に基づいた選択を含むものである。一実施形態では、抗生物質選択は、ハイグロマイシン、ネオマイシン(G418)、ゼオシン、ピューロマイシンまたはブラストサイジンから選択される抗生物質に対する耐性での選択を含む。
【0020】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、細胞機能に関するパラメータ、例えば、生存、バイアビリティ、または増殖能、もしくは産物、例えば、ポリペプチド、例えば外来性核酸から発現されるポリペプチドの産生能に対する該タンパク質分解阻害薬、例えばプロテアソーム阻害薬の効果を評価すること;および例えばMSX選択によって、該細胞に、該細胞の染色体ゲノム内に組み込まれた外来性核酸が含まれているかどうかを調べることを含むものである。該タンパク質分解阻害薬の効果の評価工程および細胞に、該細胞の染色体ゲノム内に組み込まれた外来性核酸が含まれているかどうかを調べる工程に応答性の一実施形態では、細胞、子孫細胞または子孫細胞集団が評価、分類、同定または選択される。
【0021】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、さらに、さらなる選択工程、例えば、FACS、磁気分離、例えば、磁性ビーズ、コロニーピッキング、マイクロ流路内細胞分取またはマイクロ流路内細胞破壊による選択を含むものである。諸実施形態において、該選択工程は、該細胞に1種類以上の外来性核酸が含まれているかどうかを調べることを含むものである。諸実施形態において、該選択工程は、該細胞に、該細胞の核酸内に組み込まれた、例えば該細胞の染色体ゲノム内に組み込まれた1種類以上の外来性核酸が含まれているかどうかを調べることを含むものである。
【0022】
一実施形態では、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生のための細胞または子孫細胞または子孫細胞集団を評価、分類、同定、作製または選択する方法は、さらに、該細胞に、タンパク質のフォールディングを補助する因子、例えば、シャペロン分子または小分子化学物質を導入することを含むものである。一実施形態では、タンパク質のフォールディングを補助する因子は、シャペロンタンパク質またはタンパク質フォールディング経路の成分、例えば、XBP1、SRP14、BiP/GRP78、PDI、カルネキシンもしくはシクロフィリンBをコードしている核酸を含む。一実施形態では、タンパク質のフォールディングを補助する因子は、DMSO、グリセロールまたはPBAから選択される小分子を含む。
【0023】
別の態様では、本開示において、本明細書に記載の方法によって細胞を同定すること;および該細胞または細胞集団を培養し、細胞株または細胞集団を得ることを含む、細胞株または細胞集団の作製方法を取り上げて記載する。別の態様では、本開示において、本明細書に記載の方法によって細胞を同定または選択すること;および該細胞または細胞集団を培養し、細胞株または細胞集団を得ることを含む、細胞株または細胞集団の作製方法を取り上げて記載する。
【0024】
別の態様では、本開示において:本明細書に記載の方法によって作製された細胞または細胞集団を準備すること;該細胞または細胞集団を培養培地中で培養すること;および、随意に、該産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを、該細胞または該細胞を培養した培地から回収することを含む、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの作製方法を取り上げて記載する。
【0025】
別の態様では、本開示において、本明細書に記載の任意の方法によって評価、分類または選択される細胞、子孫細胞または子孫細胞集団を取り上げて記載する。
【0026】
別の態様では、本開示において、本明細書に記載の任意の方法によって作製される細胞、子孫細胞または子孫細胞集団を取り上げて記載する。
【0027】
別の態様では、本開示において、本明細書に記載の任意の方法によって作製され得る細胞、子孫細胞または子孫細胞集団を取り上げて記載する。
【0028】
別の態様では、本開示において、本明細書に記載の任意の方法または本明細書に記載の任意の細胞によって産生される、または産生され得る産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを取り上げて記載する。
【0029】
別の態様では、本開示において、本明細書に記載の任意の方法または本明細書に記載の任意の細胞によって産生される、または産生され得る本明細書に記載の産物、例えば、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを含む調製物を取り上げて記載する。
【0030】
別の態様では、本開示において、本明細書に記載の細胞および本明細書に記載の産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを含む混合物を取り上げて記載する。
【0031】
別の態様では、本開示において、本明細書に記載の細胞、子孫細胞または子孫細胞集団、例えば、本明細書に記載の細胞、子孫細胞または子孫細胞集団の培養によって馴化させた培地調製物を取り上げて記載する。
【0032】
別の態様では、本開示において、組換えタンパク質(例えば、治療用組換えタンパク質、例えば治療用組換え抗体)を産生する細胞または細胞の子孫の作製方法であって:
a)随意に、細胞を準備すること;
b)該細胞または該細胞の子孫を、外来性のタンパク質分解阻害薬、例えば、プロテアソーム阻害薬、ユビキチン経路阻害薬または小胞体関連分解(ERAD)阻害薬の存在下で培養すること(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50回もしくはそれ以上の継代で、または少なくとも12、24、48、72時間あるいは1、2、4、8、16、32週間もしくはそれ以上);
c)該細胞または該細胞の子孫を該外来性のタンパク質分解阻害薬の非存在下で培養すること(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回もしくはそれ以上の継代で、または少なくとも12、24、48、72時間);
d)随意に、該細胞または該細胞の該子孫によって産生された組換えタンパク質のレベルに対する該タンパク質分解阻害薬の効果を、例えば、該細胞または該細胞の該子孫によって産生された組換えタンパク質の値を得るために評価すること;および
e)随意に、d)で得られた値を参照値と比較すること、ここで、該参照値は、該外来性のタンパク質分解阻害薬の非存在下で培養した、a)で準備した細胞と同じ型の細胞によって産生された組換えタンパク質のレベルである;
それにより、該細胞または細胞の子孫を作製すること
を含む方法を取り上げて記載する。
【0033】
本明細書に記載の任意の方法または組成物のさらなる特徴または実施形態としては以下のうちの1つ以上が挙げられる:
タンパク質分解阻害薬
本明細書に記載の任意の方法または組成物の諸実施形態では、タンパク質分解阻害薬がプロテアソーム阻害薬である。一実施形態では、プロテアソーム阻害薬は、20Sコアサブユニット、19S調節サブユニット、11S調節粒子、またはプロテアソームの分子集合を支援するシャペロンタンパク質、例えば、Hsm3/S5b、Nas2/p27、Rpn14/PAAF1およびNas6/ガンキリンのうちの1種類以上の活性を阻害または低下させるものである。一実施形態では、プロテアソーム阻害薬は、MG132(Z-LLL-al、Z-Leu-Leu-Leu-al、Z-Leu-Leu-Leu-CHO)、エポキソミシン、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、カルフィルゾミブ、ジスルフィラム、CEP-18770、ONX 0912、サリノスポラミド、LLnV、CEP1612、ラクタシスチン、PS-341およびエポノミシン(eponomicin)から選択される。
【0034】
本明細書に記載の任意の方法または組成物の諸実施形態では、タンパク質分解阻害薬がERAD阻害薬である。一実施形態では、ERAD阻害薬は、カルネキシン/カルレティキュリン、UDP-グルコース-糖タンパク質グルコシルトランスフェラーゼ、ER分解促進α-マンノシダーゼ様タンパク質(EDEM)、ERマンノシダーゼI、Sec61、CDC48p(VCP/p97)、Hrd1、Doa10、Ubc6、Ubc1、Cue1またはUbc7のうちの1種類以上の活性を阻害または低下させるものである。一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬がイーヤレスタチン(eeyarestatin)Iである。
【0035】
本明細書に記載の任意の方法または組成物の諸実施形態では、タンパク質分解阻害薬がユビキチン経路阻害薬である。一実施形態では、ユビキチン経路阻害薬は、E1ユビキチン活性化酵素、E2ユビキチン結合酵素またはE3ユビキチンリガーゼのうちの1種類以上の活性を阻害または低下させるものである。
【0036】
本明細書に記載の任意の方法の諸実施形態では、該方法がさらに、候補細胞を第2のタンパク質分解阻害薬と、例えば、プロテアソーム阻害薬、ERAD阻害薬またはユビキチン経路阻害薬と接触させることを含むものである。一実施形態では、該細胞を第1および第2のタンパク質分解阻害薬と、例えば並行して、または逐次接触させる。一実施形態では、第1のタンパク質分解阻害薬および第2のタンパク質分解阻害薬が、MG132、エポキソミシンまたはイーヤレスタチン1から選択される。一実施形態では、該細胞を第1および第2のタンパク質分解阻害薬と、例えば並行して、または逐次接触させ、第1の阻害薬がプロテアソーム阻害薬であり、第2の阻害薬がプロテアソーム阻害薬である。一実施形態では、該細胞を第1および第2のタンパク質分解阻害薬と、例えば並行して、または逐次接触させ、第1の阻害薬がプロテアソーム阻害薬であり、第2の阻害薬がERAD阻害薬またはユビキチン経路阻害薬である。一実施形態では、該細胞を第1および第2のタンパク質分解阻害薬と、例えば並行して、または逐次接触させ、第1の阻害薬がERAD阻害薬であり、第2の阻害薬がERAD阻害薬である。諸実施形態において、第1の阻害薬は第2の阻害薬と異なるものである。一実施形態では、該細胞を第1および第2のタンパク質分解阻害薬と、例えば並行して、または逐次接触させ、第1の阻害薬がERAD阻害薬であり、第2の阻害薬がユビキチン経路阻害薬またはプロテアソーム阻害薬である。一実施形態では、該細胞を第1および第2のタンパク質分解阻害薬と、例えば並行して、または逐次接触させ、第1の阻害薬がユビキチン経路阻害薬であり、第2の阻害薬がユビキチン経路阻害薬である。一実施形態では、該細胞を第1および第2のタンパク質分解阻害薬と、例えば並行して、または逐次接触させ、第1の阻害薬がユビキチン経路阻害薬であり、第2の阻害薬がERADまたはプロテアソーム阻害薬である。
【0037】
本明細書に記載の任意の方法の諸実施形態では、該細胞を、培養物のバイアビリティを例えば、該培養物を該阻害薬と接触させる前の培養物のバイアビリティと比べて、または該阻害薬と接触させない培養物と比べて約10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%、80%、85%、90、95%またはそれ以上低下させるのに充分な濃度の該タンパク質分解阻害薬と接触させる。一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度は、該タンパク質分解阻害薬と接触させた後、総細胞の50%未満、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%または0.05%が培養状態で生存している濃度である。一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度は、1つ以上の細胞が増殖し続ける濃度である。一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度が0.5μM未満のMG-132である。一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度が約0.0625μMのMG-132である。一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度が0.05μM未満のエポキソミシンである。一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度が約0.025μMのエポキソミシンである。一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度が低濃度、例えば0.1μMのイーヤレスタチンIである。一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度が0.5μM未満のイーヤレスタチンI、例えば約0.1μMのイーヤレスタチンIである。
【0038】
本明細書に記載の任意の方法の諸実施形態では、該細胞を該タンパク質分解阻害薬と24、48、72、96または168時間接触させる。本明細書に記載の任意の方法の諸実施形態では、該細胞(または該細胞の子孫)を該タンパク質分解阻害薬の存在下で24、48、72、96時間またはそれ以上培養する。本明細書に記載の任意の方法の諸実施形態では、該細胞(または該細胞の子孫)を該タンパク質分解阻害薬の存在下で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回もしくはそれ以上の継代で、または少なくとも12、24、48、72時間培養する。本明細書に記載の任意の方法の諸実施形態では、該細胞を、選択工程後、例えばMSX選択後に該タンパク質分解阻害薬と24、48、72、96または168時間接触させる。本明細書に記載の任意の方法の諸実施形態では、該細胞を、選択工程前、例えばMSX選択前に該タンパク質分解阻害薬と24、48、72、96または168時間接触させる。本明細書に記載の任意の方法の諸実施形態では、該細胞を、選択工程、例えばMSX選択と同時に、または並行して該タンパク質分解阻害薬と接触させる。
【0039】
細胞
本明細書に記載の任意の方法または組成物のいくつかの実施形態では、該方法は、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを発現する細胞、例えば、該産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドをコードしている外来性核酸を含む細胞またはポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの発現を制御する外来性核酸を含む細胞を準備することを含むものである。
【0040】
本明細書に記載の任意の方法または組成物の諸実施形態では、該細胞に、該産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドをコードしている外来性核酸またはポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの発現を制御する、例えば増大させる外来性核酸が含まれている。諸実施形態において、該外来性核酸は、1種類以上、例えば2種類の組換えポリペプチドをコードしている核酸配列を含むものである。一実施形態では、該細胞が、ポリペプチド産物を産生させるために商業的に使用されている型のもの、前臨床研究用のポリペプチドを産生させるために使用されている型のもの、または臨床試験用の産物、例えばポリペプチドを産生させるために使用されている細胞である。一実施形態では、該細胞が、表1または2から選択されるポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを発現するものである。
【0041】
本明細書に記載の任意の方法または組成物の諸実施形態では、該細胞が真核細胞である。一実施形態では、該細胞が哺乳動物細胞である。一実施形態では、該細胞が、マウス、ラット、チャイニーズハムスター、シリアンハムスター、サル、類人猿(例えば、ヒトなど)、イヌ、ウマ、ラクダ、フェレットまたはネコに由来するものである。一実施形態では、該細胞がCHO細胞、例えば、CHOK1、CHOK1SV、Potelligent CHOK1SV、CHO GSノックアウト型、CHOK1SV GS-KO、CHOS、CHO DG44、CHO DXB11、CHOZN、またはCHOに由来する細胞である。一実施形態では、該細胞が、HeLa、HEK293、H9、HepG2、MCF7、ジャーカット、NIH3T3、PC12、PER.C6、BHK、VERO、SP2/0、NS0、YB2/0、EB66、C127、L細胞、COS、例えばCOS1およびCOS7、QC1-3、CHOK1、CHOK1SV、Potelligent CHOK1SV、CHO GSノックアウト型、CHOK1SV GS-KO、CHOS、CHO DG44、CHO DXB11ならびにCHOZNから選択される。
【0042】
本明細書に記載の任意の方法または組成物の諸実施形態では、該細胞が哺乳動物細胞以外の真核細胞である。一実施形態では、該細胞が、昆虫、植物、アヒル、オウム、魚類、酵母または真菌に由来するものである。
【0043】
産物
本明細書に記載のように、本開示の細胞および方法によって産生される産物は分子、核酸、ポリペプチド、またはその任意の融合体もしくはハイブリッドであり得る。一実施形態では、産物が、天然に存在しない物質または分子である。別の実施形態では、産物が、天然に存在する物質または分子である。本明細書に記載の産物を産生する細胞は、発現を制御する、例えば増大させるように、または本明細書に記載の産物を産生する、例えばコードするように操作または修飾されている。一実施形態では、細胞は、内因的に発現される産物の発現を制御する、例えば増大させる外来性核酸を含むように操作または修飾されている。別の実施形態では、細胞は、産物、例えば、内因的に発現される産物、細胞によって内因的に産生されない産物または天然に存在しない産物をコードしている外来性核酸を含むように操作または修飾されている。
【0044】
一実施形態では、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドが、例えば、疾患または障害を有する被験体に投与するための治療用ポリペプチドである。一実施形態では、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドが診断用ポリペプチドである。
【0045】
本明細書に開示の任意の方法または組成物では、産物が、抗体分子、二重特異性分子、血液凝固因子、抗凝固因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキンまたは酵素のうちの1種類以上を含む。
【0046】
一実施形態では、産物が、抗体分子、例えば、完全長抗体または抗体断片を含む。一実施形態では、産物が、第2の因子、例えば、ポリペプチド、例えば毒素に例えば共有結合または非共有結合によってカップリングされた抗体分子またはその断片を含む。一実施形態では、該抗体分子がモノクローナル抗体である。一実施形態では、該抗体分子が腫瘍またはがん関連抗原に結合するものである。一実施形態では、該抗体分子が腫瘍関連糖タンパク質(TAG72)に結合するものである。一実施形態では、産物が、例えば表2に示す二重特異性分子を含む。
【0047】
一実施形態では、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドが、アミノ酸配列がそのヒトポリペプチドの天然に存在するアイソフォームと異なっていないヒトポリペプチドである。
【0048】
別の実施形態では、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドが、そのヒトポリペプチドの天然に存在するアイソフォームと1、2、3、4、5、10、15または20個以下のアミノ酸残基が異なっているものである。
【0049】
また別の実施形態では、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドが、そのヒトポリペプチドまたはタンパク質の天然に存在するアイソフォームと1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または15%以下のアミノ酸残基が異なっているものである。
【0050】
本明細書に開示の任意の方法または組成物では、産物が、表1または表2から選択されるポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを含む。一実施形態では、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドが表1または表2のポリペプチドである。
【0051】
別の実施形態では、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドが、表1または表2のポリペプチドと1、2、3、4、5、10、15または20個以下のアミノ酸残基が異なるものである。
【0052】
また別の実施形態では、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドが、表1または表2のポリペプチドと1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または15%以下のアミノ酸残基が異なるものである。
【0053】
本明細書に記載の任意の方法または組成物では、産物の発現を制御する核酸配列または産物、例えば組換えポリペプチドをコードしている核酸配列を含む外来性核酸が細胞に導入される。本明細書に記載の任意の方法または組成物では、該細胞に、産物、例えば組換えポリペプチドをコードしている核酸配列を含む外来性核酸が含まれている。一実施形態では、外来性核酸が該細胞の核酸内、例えば、該細胞の染色体ゲノム内に組み込まれている。別の実施形態では、外来性核酸が該細胞の染色体ゲノム内に組み込まれていないが、例えば、該外来性核酸が該細胞または該細胞の子孫に維持されるように人工染色体またはプラスミドに組み込まれている。
【0054】
本明細書に記載の任意の方法または組成物では、該外来性核酸がさらに、例えば、産物または産物の発現を制御するための他の配列もしくはポリペプチドをコードしている1つ以上、例えば、2、3、4または5つのさらなる核酸配列を含むものであり得る。
【0055】
本明細書に記載の任意の方法または組成物では、該外来性核酸が、プラスミドまたはベクター、例えば、発現ベクターまたはウイルスベクターを含む。一実施形態では、該外来性核酸が、グルタミンシンテターゼ(GS)発現ベクターを含む。一実施形態では、該外来性核酸がさらに、選択マーカーをコードしている核酸配列を含むものである。一実施形態では、該選択マーカーが、グルタミンシンテターゼ、DHFR、または抗生物質耐性を付与する遺伝子を含む。一実施形態では、選択マーカーをコードしている該核酸配列が第1のプロモーターに作動可能に連結されており、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドをコードしている該核酸配列が第2のプロモーターに作動可能に連結されている。一実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターが異なるものである。一実施形態では、選択マーカーに作動可能に連結されるプロモーターは弱いプロモーター、例えばSV40Eプロモーターである。一実施形態では、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドをコードしている該核酸配列に作動可能に連結されるプロモーターが強いプロモーター、例えばCMVプロモーター、例えばhCMV-MIEプロモーターである。
【0056】
本明細書に記載の任意の方法では、該方法が、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを細胞または子孫細胞から発現させることを含むものである。一実施形態では、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを、細胞または子孫細胞から例えば培養培地中に分泌させる。
【0057】
本明細書に記載の任意の方法または組成物では、発現産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを、物理的または機能的特性に関するパラメータ、例えば、一次配列、グリコシル化、一次、二次、三次もしくは四次構造、活性、グリコシル化度、凝集度、事前に選択した特性を有する、例えば、事前に選択した単量体型、二量体型もしくは三量体型構造を有する発現タンパク質の割合もしくはレベル、または事前に選択した構造、例えば、非変性型もしくは非凝集型構造を有する発現ポリペプチドのレベルもしくは割合について評価する。諸実施形態において、該方法は、該パラメータの値を得ることを含むものである。諸実施形態において、該方法は、該パラメータの値を参照値と比較することを含むものである。
【0058】
本明細書に記載の任意の方法または組成物の諸実施形態では、細胞機能に関するパラメータに対するタンパク質分解阻害薬、例えばプロテアソーム阻害薬の効果の値が、参照値を5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上、上回るものである。諸実施形態では、細胞機能に関するパラメータに対するタンパク質分解阻害薬、例えばプロテアソーム阻害薬の効果の値が、参照値を1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍もしくは8倍またはそれ以上、上回るものである。諸実施形態において、参照値は、参照細胞での細胞機能に関するパラメータに対する該タンパク質分解阻害薬の効果の値、またはタンパク質分解阻害薬と接触させていない細胞の細胞機能に関するパラメータの値である。諸実施形態において、該パラメータは、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチド、例えば外来性核酸から発現される組換えポリペプチドの産生能を含む。諸実施形態において、該パラメータは、産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生能を含み、ここで、その増大は、細胞内の、または細胞によって分泌された該産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを測定もしくは定量することにより調べる。諸実施形態において、該パラメータは細胞生存を含み、ここで、その増大もしくは低減は、アポトーシス細胞の数を測定もしくは定量することにより調べる。諸実施形態において、該パラメータは培養物のバイアビリティを含み、ここで、その増大もしくは低減は、生細胞数を測定もしくは定量することにより調べる。
【0059】
組換えポリペプチドが細胞から分泌される実施形態では、該方法は、組換えポリペプチドを細胞、細胞集団、または細胞を培養した培養培地から回収、収集または分離するための工程を含むものであり得る。
【0060】
本明細書に記載の任意の調製物の一部の特定の実施形態では、調製物中のポリペプチドの重量基準または個数基準で少なくとも70、80、90、95、98もしくは99%が適正にフォールディングされているか、または機能的に活性である。
【0061】
本明細書に記載の任意の混合物の一部の特定の実施形態では、
産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドが、タンパク質分解阻害薬と接触させていない細胞でみられるであろう濃度より高い濃度で、例えば重量基準もしくは個数基準で少なくとも1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%もしくはそれ以上高い濃度で存在している;または
混合物中の産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの重量基準もしくは個数基準で少なくとも70、80、90、95、98もしくは99%が適正にフォールディングされているか、もしくは機能的に活性である。
【0062】
本明細書に記載の任意の培地調製物の一部の特定の実施形態では、
産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドが、タンパク質分解阻害薬と接触させていない細胞でみられるであろう濃度より高い濃度で、例えば重量基準もしくは個数基準で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20もしくは30%もしくはそれ以上高い濃度で存在している;または
混合物中の産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの重量基準もしくは個数基準で少なくとも70、80、90、95、98もしくは99%が適正にフォールディングされているか、もしくは機能的に活性である。
【0063】
諸実施形態では、本明細書に記載の任意の方法が、さらに、工程(f)、(g)のいずれかまたは(f)と(g)の両方:
f)該細胞または該細胞の子孫を該外来性のタンパク質分解阻害薬の非存在下で培養すること(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回もしくはそれ以上の継代で、または少なくとも12、24、48、72時間);
g)該細胞または該細胞の子孫によって産生された組換えタンパク質のレベルを、例えば、該細胞または該細胞の子孫によって産生された組換えタンパク質の値を得るために評価すること;および
h)随意に、g)で得られた値を参照値と比較すること、ここで、該参照値は、該外来性のタンパク質分解阻害薬の非存在下で培養した、a)で準備した細胞と同じ型の細胞によって産生された組換えタンパク質のレベルである
を含むものであり得る。
【0064】
諸実施形態では、例えば、本明細書における作製方法の諸実施形態では、該方法はさらに、組換えタンパク質(例えば、治療用組換えタンパク質)を製造する方法における使用のための細胞を選択することを含むものである。諸実施形態では、該方法はさらに、該細胞内に外来性核酸を導入することを含み(例えば、工程c)の後、工程d)の後、工程e)の後または工程f)の後)、ここで、該外来性核酸の導入はトランスフェクション、エレクトロポレーションまたは形質導入を含んでもよい。
【0065】
特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好適な方法および材料を以下に説明する。本明細書において挙げた刊行物、特許出願、特許および他の参考文献はすべて、引用によりその全体が組み込まれる。また、材料、方法および実施例は実例を示したものにすぎず、限定を意図するものではない。見出し、小見出しまたは番号もしくは文字を付した要素、例えば(a)、(b)、(i)などは読みやすさのために示したものにすぎない。この文書における見出しまたは番号もしくは文字を付した要素の使用は、その工程もしくは要素がアルファベット順に行われること、またはその工程もしくは要素が必ず互いに別個であることを要するものではない。本発明の他の特徴、目的および利点は、本説明および図面ならびに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1A図1Aは、組換えCHO細胞株の増殖パラメータに対する種々の濃度の表示したタンパク質分解阻害薬の最初の評価を示す一連のグラフである。試料は、表示した時間点に採取し、細胞濃度とともに培養物のバイアビリティをViCell機器で測定した(%)。
図1B図1Bは、組換えCHO細胞株の増殖パラメータに対する種々の濃度の表示したタンパク質分解阻害薬の最初の評価を示す一連のグラフである。試料は、表示した時間点に採取し、細胞濃度とともに培養物のバイアビリティをViCell機器で測定した(%)。
図1C図1Cは、組換えCHO細胞株の増殖パラメータに対する種々の濃度の表示したタンパク質分解阻害薬の最初の評価を示す一連のグラフである。試料は、表示した時間点に採取し、細胞濃度とともに培養物のバイアビリティをViCell機器で測定した(%)。
図2A図2Aは、組換えCHO細胞株の増殖パラメータに対する種々の濃度の表示したタンパク質分解阻害薬のさらなる評価を示す一連のグラフである。試料は、表示した時間点に採取し、細胞濃度とともに培養物のバイアビリティをViCell機器で測定した(%)。
図2B図2Bは、組換えCHO細胞株の増殖パラメータに対する種々の濃度の表示したタンパク質分解阻害薬のさらなる評価を示す一連のグラフである。試料は、表示した時間点に採取し、細胞濃度とともに培養物のバイアビリティをViCell機器で測定した(%)。
図2C図2Cは、組換えCHO細胞株の増殖パラメータに対する種々の濃度の表示したタンパク質分解阻害薬のさらなる評価を示す一連のグラフである。試料は、表示した時間点に採取し、細胞濃度とともに培養物のバイアビリティをViCell機器で測定した(%)。
図2D図2Dは、組換えCHO細胞株の増殖パラメータに対する種々の濃度の表示したタンパク質分解阻害薬のさらなる評価を示す一連のグラフである。試料は、表示した時間点に採取し、細胞濃度とともに培養物のバイアビリティをViCell機器で測定した(%)。
図2E図2Eは、組換えCHO細胞株の増殖パラメータに対する種々の濃度の表示したタンパク質分解阻害薬のさらなる評価を示す一連のグラフである。試料は、表示した時間点に採取し、細胞濃度とともに培養物のバイアビリティをViCell機器で測定した(%)。
図2F図2Fは、組換えCHO細胞株の増殖パラメータに対する種々の濃度の表示したタンパク質分解阻害薬のさらなる評価を示す一連のグラフである。試料は、表示した時間点に採取し、細胞濃度とともに培養物のバイアビリティをViCell機器で測定した(%)。
図3A図3Aは、MG132の存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。0.5μMのMG132(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図3B図3Bは、MG132の存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。0.5μMのMG132(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図3C図3Cは、MG132の存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。0.5μMのMG132(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図3D図3Dは、MG132の存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。0.5μMのMG132(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図4A図4Aは、エポキソミシンの存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブルな培養物の細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。0.05μMのエポキソミシン(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図4B図4Bは、エポキソミシンの存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブルな培養物の細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。0.05μMのエポキソミシン(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図4C図4Cは、エポキソミシンの存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブルな培養物の細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。0.05μMのエポキソミシン(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図4D図4Dは、エポキソミシンの存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブルな培養物の細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。0.05μMのエポキソミシン(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図5A図5Aは、イーヤレスタチンIの存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。10μMのイーヤレスタチンI(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図5B図5Bは、イーヤレスタチンIの存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。10μMのイーヤレスタチンI(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図5C図5Cは、イーヤレスタチンIの存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。10μMのイーヤレスタチンI(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図5D図5Dは、イーヤレスタチンIの存在下で培養した場合のCHO抗体産生細胞株パネルのバイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティを示す一連のグラフである。10μMのイーヤレスタチンI(斜線のバー)またはDMSO(点線の斜線のバー)の存在下で24および48時間培養後の平均バイアブル細胞濃度および培養物のバイアビリティ。エラーバーは、各時間点で採取した三連の試料の標準偏差を示す。
図6A図6Aは、1つのプロテアソーム阻害薬濃度およびERAD阻害薬濃度におけるモノクローナル抗体産生CHO細胞株パネルのフェドバッチ培養およびバイオリアクターでの培養でのプロテアソーム阻害薬およびERAD阻害薬に対する感受性(例えば、阻害薬の存在下での培養物のバイアビリティおよび/またはバイアブル細胞濃度)と産生性データ間の相関を示す一連のプロットである。データをプロットし、線形回帰解析によって最良適合線を特定した。パラメータ間の関係を、ピアソンの積率相関係数を用いて評価した。統計学的に有意(p<0.05)であることがわかった相関を示す。
図6B図6Bは、1つのプロテアソーム阻害薬濃度およびERAD阻害薬濃度におけるモノクローナル抗体産生CHO細胞株パネルのフェドバッチ培養およびバイオリアクターでの培養でのプロテアソーム阻害薬およびERAD阻害薬に対する感受性(例えば、阻害薬の存在下での培養物のバイアビリティおよび/またはバイアブル細胞濃度)と産生性データ間の相関を示す一連のプロットである。データをプロットし、線形回帰解析によって最良適合線を特定した。パラメータ間の関係を、ピアソンの積率相関係数を用いて評価した。統計学的に有意(p<0.05)であることがわかった相関を示す。
図6C図6Cは、1つのプロテアソーム阻害薬濃度およびERAD阻害薬濃度におけるモノクローナル抗体産生CHO細胞株パネルのフェドバッチ培養およびバイオリアクターでの培養でのプロテアソーム阻害薬およびERAD阻害薬に対する感受性(例えば、阻害薬の存在下での培養物のバイアビリティおよび/またはバイアブル細胞濃度)と産生性データ間の相関を示す一連のプロットである。データをプロットし、線形回帰解析によって最良適合線を特定した。パラメータ間の関係を、ピアソンの積率相関係数を用いて評価した。統計学的に有意(p<0.05)であることがわかった相関を示す。
図6D図6Dは、1つのプロテアソーム阻害薬濃度およびERAD阻害薬濃度におけるモノクローナル抗体産生CHO細胞株パネルのフェドバッチ培養およびバイオリアクターでの培養でのプロテアソーム阻害薬およびERAD阻害薬に対する感受性(例えば、阻害薬の存在下での培養物のバイアビリティおよび/またはバイアブル細胞濃度)と産生性データ間の相関を示す一連のプロットである。データをプロットし、線形回帰解析によって最良適合線を特定した。パラメータ間の関係を、ピアソンの積率相関係数を用いて評価した。統計学的に有意(p<0.05)であることがわかった相関を示す。
図6E図6Eは、1つのプロテアソーム阻害薬濃度およびERAD阻害薬濃度におけるモノクローナル抗体産生CHO細胞株パネルのフェドバッチ培養およびバイオリアクターでの培養でのプロテアソーム阻害薬およびERAD阻害薬に対する感受性(例えば、阻害薬の存在下での培養物のバイアビリティおよび/またはバイアブル細胞濃度)と産生性データ間の相関を示す一連のプロットである。データをプロットし、線形回帰解析によって最良適合線を特定した。パラメータ間の関係を、ピアソンの積率相関係数を用いて評価した。統計学的に有意(p<0.05)であることがわかった相関を示す。
図6F図6Fは、1つのプロテアソーム阻害薬濃度およびERAD阻害薬濃度におけるモノクローナル抗体産生CHO細胞株パネルのフェドバッチ培養およびバイオリアクターでの培養でのプロテアソーム阻害薬およびERAD阻害薬に対する感受性(例えば、阻害薬の存在下での培養物のバイアビリティおよび/またはバイアブル細胞濃度)と産生性データ間の相関を示す一連のプロットである。データをプロットし、線形回帰解析によって最良適合線を特定した。パラメータ間の関係を、ピアソンの積率相関係数を用いて評価した。統計学的に有意(p<0.05)であることがわかった相関を示す。
図6G図6Gは、1つのプロテアソーム阻害薬濃度およびERAD阻害薬濃度におけるモノクローナル抗体産生CHO細胞株パネルのフェドバッチ培養およびバイオリアクターでの培養でのプロテアソーム阻害薬およびERAD阻害薬に対する感受性(例えば、阻害薬の存在下での培養物のバイアビリティおよび/またはバイアブル細胞濃度)と産生性データ間の相関を示す一連のプロットである。データをプロットし、線形回帰解析によって最良適合線を特定した。パラメータ間の関係を、ピアソンの積率相関係数を用いて評価した。統計学的に有意(p<0.05)であることがわかった相関を示す。
図7A図7Aは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連のゲル画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400機器で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図7Aと7BはMV151プローブ、図7Cと7DはMVB003プローブ、および図7Eと7FはMVB072プローブを示す。右側の画像(図7B、7Dおよび7F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図7B図7Bは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連のゲル画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400機器で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図7Aと7BはMV151プローブ、図7Cと7DはMVB003プローブ、および図7Eと7FはMVB072プローブを示す。右側の画像(図7B、7Dおよび7F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図7C図7Cは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連のゲル画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400機器で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図7Aと7BはMV151プローブ、図7Cと7DはMVB003プローブ、および図7Eと7FはMVB072プローブを示す。右側の画像(図7B、7Dおよび7F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図7D図7Dは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連のゲル画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400機器で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図7Aと7BはMV151プローブ、図7Cと7DはMVB003プローブ、および図7Eと7FはMVB072プローブを示す。右側の画像(図7B、7Dおよび7F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図7E図7Eは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連のゲル画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400機器で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図7Aと7BはMV151プローブ、図7Cと7DはMVB003プローブ、および図7Eと7FはMVB072プローブを示す。右側の画像(図7B、7Dおよび7F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図7F図7Fは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連のゲル画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400機器で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図7Aと7BはMV151プローブ、図7Cと7DはMVB003プローブ、および図7Eと7FはMVB072プローブを示す。右側の画像(図7B、7Dおよび7F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図8A図8Aは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連の画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図8Aと8BはRUB1001プローブ、図8Cと8DはRUB1018プローブ、および図8Eと8Fはプローブなしの対照を示す。右側の画像(図8B、8Dおよび8F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図8B図8Bは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連の画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図8Aと8BはRUB1001プローブ、図8Cと8DはRUB1018プローブ、および図8Eと8Fはプローブなしの対照を示す。右側の画像(図8B、8Dおよび8F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図8C図8Cは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連の画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図8Aと8BはRUB1001プローブ、図8Cと8DはRUB1018プローブ、および図8Eと8Fはプローブなしの対照を示す。右側の画像(図8B、8Dおよび8F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図8D図8Dは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連の画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図8Aと8BはRUB1001プローブ、図8Cと8DはRUB1018プローブ、および図8Eと8Fはプローブなしの対照を示す。右側の画像(図8B、8Dおよび8F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図8E図8Eは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連の画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図8Aと8BはRUB1001プローブ、図8Cと8DはRUB1018プローブ、および図8Eと8Fはプローブなしの対照を示す。右側の画像(図8B、8Dおよび8F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図8F図8Fは、活性プロファイリングプローブおよび蛍光強度を用いたプロテアソーム活性の解析を示す一連の画像である。プロテアソーム活性は一連の抗体産生細胞株において、異なる反応性基を有する蛍光タグ化活性プローブを用いて測定した。このプローブとともにインキュベートした細胞ライセートを14%SDS-PAGEで解析し、次いで蛍光をTyphoon 9400で、Cy3およびCy2フィルターを用いて測定した。図8Aと8BはRUB1001プローブ、図8Cと8DはRUB1018プローブ、および図8Eと8Fはプローブなしの対照を示す。右側の画像(図8B、8Dおよび8F)はローディングコントロールとしてのクマシーブルー染色の画像を示す。
図9A図9Aは、活性ベースのプロファイリング方法およびその後のバンド強度の定量を用いて測定したプロテアソームの異なる触媒サブユニットの活性を示す一連のグラフである。図7A、7Cおよび7E、8A、8Cおよび8Eのゲルのバンドのデンシトメトリーは、Life Technologies ImageQuant(登録商標)を用いて行った。グラフは、試験した各プローブでのバンドの強度ならびに全プロテアソームグラフにまとめた全プローブの総和を示す。
図9B図9Bは、活性ベースのプロファイリング方法およびその後のバンド強度の定量を用いて測定したプロテアソームの異なる触媒サブユニットの活性を示す一連のグラフである。図7A、7Cおよび7E、8A、8Cおよび8Eのゲルのバンドのデンシトメトリーは、Life Technologies ImageQuant(登録商標)を用いて行った。グラフは、試験した各プローブでのバンドの強度ならびに全プロテアソームグラフにまとめた全プローブの総和を示す。
図9C図9Cは、活性ベースのプロファイリング方法およびその後のバンド強度の定量を用いて測定したプロテアソームの異なる触媒サブユニットの活性を示す一連のグラフである。図7A、7Cおよび7E、8A、8Cおよび8Eのゲルのバンドのデンシトメトリーは、Life Technologies ImageQuant(登録商標)を用いて行った。グラフは、試験した各プローブでのバンドの強度ならびに全プロテアソームグラフにまとめた全プローブの総和を示す。
図9D図9Dは、活性ベースのプロファイリング方法およびその後のバンド強度の定量を用いて測定したプロテアソームの異なる触媒サブユニットの活性を示す一連のグラフである。図7A、7Cおよび7E、8A、8Cおよび8Eのゲルのバンドのデンシトメトリーは、Life Technologies ImageQuant(登録商標)を用いて行った。グラフは、試験した各プローブでのバンドの強度ならびに全プロテアソームグラフにまとめた全プローブの総和を示す。
図9E図9Eは、活性ベースのプロファイリング方法およびその後のバンド強度の定量を用いて測定したプロテアソームの異なる触媒サブユニットの活性を示す一連のグラフである。図7A、7Cおよび7E、8A、8Cおよび8Eのゲルのバンドのデンシトメトリーは、Life Technologies ImageQuant(登録商標)を用いて行った。グラフは、試験した各プローブでのバンドの強度ならびに全プロテアソームグラフにまとめた全プローブの総和を示す。
図9F図9Fは、活性ベースのプロファイリング方法およびその後のバンド強度の定量を用いて測定したプロテアソームの異なる触媒サブユニットの活性を示す一連のグラフである。図7A、7Cおよび7E、8A、8Cおよび8Eのゲルのバンドのデンシトメトリーは、Life Technologies ImageQuant(登録商標)を用いて行った。グラフは、試験した各プローブでのバンドの強度ならびに全プロテアソームグラフにまとめた全プローブの総和を示す。
図10図10は、CHOK1 GS-KO細胞株を用いた細胞株構築のプロトコルを示す図式である。一連の濃度のメチオニンスルホキシイミン(MSX)選択を、40μgの線状DNAでのトランスフェクション後24時間目に行った。次いで、プロテアソーム阻害薬をトランスフェクション後24、96または168時間目のいずれかで、実験計画のデザインに従う一連の濃度および組合せで添加した。
図11図11は、MSXおよびいろいろなプロテアソーム阻害薬の選択圧を伴う細胞株構築プロセスを用いて作成した細胞集団の増殖の特徴を示すグラフである。モデルモノクローナル抗体(抗体A)を発現するGSKO細胞プールの培養物のバイアビリティおよびバイアブル細胞濃度を、MSXに加えてプロテアソーム阻害薬を伴う細胞株構築後、48~72時間毎に調べた。
図12図12は、いろいろな選択圧とともにMSXおよびいろいろなプロテアソーム阻害薬の選択圧を伴う細胞株構築プロセスを用いて作成した細胞集団で得られた抗体濃度を示すグラフである。抗体Aを発現するGSKO細胞株をバッチ培養条件下で培養し、MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築後、192時間の培養後に収集した上清みでELISAアッセイを行った。
図13図13は、細胞株構築の際における本明細書に記載の例示的なプロテアソーム阻害薬の使用を評価するための実験デザインを示す。
図14図14は、種々の阻害薬を使用し、阻害薬の存在下で連続培養した細胞のバッチ培養セットアップでの組換えGS-CHO細胞株構築プロセス後に得られた平均モノクローナル抗体産物濃度を示す棒グラフである。MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種後、20mLでのバッチ培養の48、96および168時間目に採取した上清み試料のcB72.3モノクローナル抗体濃度の評価。産物の力価を、OctetシステムのプロテインAセンサーを用いて評価した(37.5μMのMSX対照はn=3、阻害薬処理はn=2だが25nMエポキソミシンはn=1)。
図15図15は、種々の阻害薬を使用し、阻害薬の存在下で連続培養した細胞のバッチ培養セットアップでの組換えGS-CHO細胞株構築プロセス後に得られたモノクローナル抗体産物のウエスタンブロット解析を示す。MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種後、培養の168時間目に採取した上清み試料のcB72.3濃度の評価。ウエスタンブロットは、抗重鎖抗体(Sigma)を用いてプローブ結合させた。
図16図16は、種々の阻害薬を使用し、2回の継代は該阻害薬の非存在下で培養した細胞のバッチ培養セットアップでの組換えGS-CHO細胞株構築プロセス後に得られた平均モノクローナル抗体産物濃度を示す棒グラフである。MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種後、20mLでのバッチ培養の48、96および168時間目に採取した上清み試料のcB72.3モノクローナル抗体濃度の評価。産物の力価を、OctetシステムのプロテインAセンサーを用いて評価した(37.5μMのMSX対照はn=3、阻害薬処理はn=2だが25nMエポキソミシンはn=1)。
図17図17は、種々の阻害薬を使用し、2回の継代は該阻害薬の非存在下で培養した細胞のバッチ培養セットアップでの組換えGS-CHO細胞株構築プロセス後のモノクローナル抗体産物のウエスタンブロット解析を示す。MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種後、培養の168時間目に採取した上清み試料のcB72.3濃度の評価。細胞プールを該阻害薬の非存在下で2回継代した後、バッチ培養液の試料採取を行った。ウエスタンブロットは、抗重鎖抗体(Sigma)を用いてプローブ結合させた。
図18図18は、細胞株構築プロセス後、阻害薬での処理の直後に計算した平均比産生性を示す棒グラフである。比産生性は、MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個の細胞/mlで播種後、培養の48、96および168時間目に採取した上清み試料でバイアブル細胞数(Vicellで測定)および産物濃度(octetシステムのプロテインAプローブを用いて誘導)に関して収集したデータから計算した。各細胞プールの個々の比活性を計算し、次いで、各処置での平均を求めた(37.5μMのMSX対照はn=3、阻害薬処理はn=2だが25nMエポキソミシンはn=1)。
図19図19は、種々の阻害薬を使用し、2回の継代は該阻害薬の非存在下で培養した細胞のバッチ培養セットアップでの組換えGS-CHO細胞株構築プロセス後に得られた細胞の平均モノクローナル抗体比産生性の計算値を示す棒グラフである。比産生性は、MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個の細胞/mlで播種後、バッチ培養の48、96および168時間目に採取した上清み試料で測定された細胞数(Vicell機器で測定)および産物濃度(octetシステムのプロテインAプローブを用いて誘導)から計算した。各細胞プールの個々の比活性を計算し、次いで、各処置での平均を求めた(37.5μMのMSX対照はn=3、阻害薬処理はn=2だが25nMエポキソミシンはn=1)。
図20図20は、プロテアソームまたはERAD阻害薬のいずれかの存在下で培養後の宿主細胞プールのバッチ培養での一過性トランスフェクション後に得られた抗体産物濃度を示す棒グラフである。20μgのDNAでの1×10個の細胞のエレクトロポレーションおよび20mlの培養液中への再懸濁後、トランスフェクション後48、96および168時間目に採取した上清み試料のcB72.3濃度の評価。エレクトロポレーションの前に、宿主細胞株を、表示した濃度の表示したプロテアソーム阻害薬およびERAD阻害薬の存在下で培養した。産物の力価は、OctetシステムのプロテインAセンサーを用いて評価した。
図21図21は、最初にプロテアソームまたはERAD阻害薬のいずれかの存在下での培養、次いで、2回の継代を該阻害薬の非存在下での後続の継代培養後、一過性バッチ培養後のCHO宿主細胞プールの一過性トランスフェクション後に得られた抗体産物濃度を示す棒グラフである。20μgのDNAでの1×10個の細胞のエレクトロポレーションおよび20mlのバッチ培養液中への再懸濁後、トランスフェクション後48、96および168時間目に採取した上清み試料のcB72.3濃度の評価。エレクトロポレーションの前に、宿主細胞株を最初にプロテアソーム阻害薬およびERAD阻害薬の存在下で培養し、次いで阻害薬の存在なしで2回継代した。産物の力価は、OctetシステムのプロテインAセンサーを用いて評価した。
図22図22は、プロテアソームもしくはERAD阻害薬のいずれかの存在下での培養の直後(左側のゲル)または2回の継代は該阻害薬の非存在下で継代培養後(右側のゲル)の両方の宿主細胞プールの一過性トランスフェクション後のバッチ培養液の上清み中の抗体のウエスタンブロット解析を示す。20μgのDNAでの1×10個の細胞のエレクトロポレーションおよび20mlのバッチ培養液中への再懸濁後、トランスフェクション後168時間目に採取した上清み試料のcB72.3濃度の評価。エレクトロポレーションの前に、宿主細胞株を最初にプロテアソーム阻害薬およびERAD阻害薬の存在下で培養し、次いで該阻害薬の非存在下で2回継代した。ウエスタンブロットは、抗重鎖抗体(Sigma)を用いてプローブ結合させた。
図23図23は、タンパク質分解阻害薬を用いて異なる継代回数で作成した組換え細胞プールの常套的な培養の際に採取した上清み試料で測定した、推定される細胞の比産生性を示す棒グラフである。プロテアソーム阻害薬の添加を伴う細胞株構築プロセスの成功裡のプールの復活後、常套的な継代培養の際に3~4日毎に採取した上清み試料のcB72.3濃度の評価。産物の力価を、OctetシステムのプロテインAセンサーを用いて評価し、次いで、細胞毎の産生レベルを、ViCellで測定される細胞の計数を用いて調べた。
【発明を実施するための形態】
【0067】
組換えタンパク質またはポリペプチドは組換えDNA技術によって作製され得るか、宿主細胞によって発現され得、宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))から精製されるか、または宿主細胞を培養している液中、例えば細胞培地中に分泌され、該液から精製されるかのいずれかであり得る。高収率で適切な品質の組換えタンパク質またはポリペプチドを産生し得る細胞は、当該技術分野において非常に所望されている。組換えポリペプチドの産生のための細胞を評価、分類、同定、作製または選択するための本明細書に開示の方法は、高収率で組換えポリペプチド産物を得るため、または組換えポリペプチド産物の高品質調製物を提供するために、高産生細胞の同定または作製のために有用である。本明細書に開示の方法は、効率的な細胞株の開発、大量数の治療用組換えポリペプチド産物および患者における治療的使用のための高級品質に対する需要がある治療用組換えポリペプチドの産生のために特に有用である。
【0068】
定義
特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語はすべて、本発明が関係する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の任意の方法および材料が、本発明の実施および/または試験において使用され得るが、好ましい材料および方法を本明細書において説明する。本発明の説明および請求項の記載において、以下の用語を、定義が示されている場合は定義されているとおりに用いる。
【0069】
また、本明細書で用いている用語は、具体的な実施形態を説明する目的のためのものにすぎず、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0070】
単数形を表す冠詞(a、an)は、本明細書において、該冠詞の文法上の目的語のものが1または1より多い(すなわち、少なくとも1である)ことを示すために用いている。一例として、「細胞(a cell)」は1つの細胞または1つより多くの細胞を意味し得る。
【0071】
本明細書で用いる場合、互換的に、用語「タンパク質分解阻害薬」または「タンパク質分解経路の阻害薬」は、細胞内でのタンパク質の合成中および分泌中における部分的または完全のいずれかでのタンパク質の分解、例えば、タンパク質のそのポリペプチド、ペプチドまたはアミノ酸構成成分への細分化を低減させる(例えば、遅滞、減弱、変化させる)因子、例えば化合物をいう。一例として、タンパク質分解阻害薬は、以下:分解対象タンパク質の同定;分解対象タンパク質のタグ化;ERからサイトゾルへのタンパク質の逆輸送;プロテアソームとのタンパク質の会合もしくはタンパク質とのプロテアソームの会合;プロテアソームへのタンパク質の進入;プロテアソーム内への進入のためのタンパク質のアンフォールディング;プロテアソームによるタンパク質のプロセッシング;プロテアソームからのプロセッシングされたペプチドの放出;小胞体とのプロテアソームの会合;および/または細胞のプロテアソームの受容能力のうちの1つ以上を;例えば、候補阻害薬で処理された細胞において、候補阻害薬で処理されていない同様の細胞と比べて抑制または低減させる(例えば、遅滞、減弱または変化させる)能力によって同定され得る。別の実施形態では、タンパク質分解阻害薬は、細胞内において、例えば、候補阻害薬で処理された細胞において、候補阻害薬で処理されていない同様の細胞と比べてプロテアソームの活性が抑制または低下する条件が生じることを引き起こすものである。また別の実施形態では、タンパク質分解阻害薬は、例えば、候補阻害薬で処理された細胞において、候補阻害薬で処理されていない同様の細胞と比べて細胞のプロテアソームの活性を飽和させるものである。タンパク質、例えば内因的または外来性的に発現されたタンパク質のプロテアソームによる分解は、重/軽同位体パルス標識アプローチ、例えば、培養細胞内のアミノ酸の安定同位体標識(SILAC)の後、質量分析(MS)によって測定または定量され得る。タンパク質分解を評価するための当該技術分野で利用可能なさらなる方法論は、Alvarez-Castelao et al.,Biochemistry Research International,Volume 2012(2012),Article ID 823597,11 pages(引用により本明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。
【0072】
本明細書で用いる場合、用語「タンパク質分解経路」は、部分的または完全のいずれかでのタンパク質のそのポリペプチド、ペプチドまたはアミノ酸構成成分への細分化、例えば、ミスフォールディング型、余剰、切断型または非機能性のタンパク質の分解がもたらされる細胞プロセスをいう。タンパク質分解経路の例示的な要素としては、限定されないが、プロテアソーム(例えば、26Sプロテアソームもしくはその成分、例えば、20Sコアあるいは触媒サブユニット、19S調節サブユニットもしくは11S調節サブユニット)、分解もしくはユビキチン化されるタンパク質の同定を助長する酵素(例えば、E1ユビキチン活性化酵素、E2ユビキチン結合酵素もしくはE3ユビキチンリガーゼ);またはERからタンパク質分解経路の別の要素、例えば、サイトゾルもしくはプロテアソームへのタンパク質の輸送もしくは逆輸送を助長する酵素(例えば、逆輸送酵素/複合体)が挙げられる。
【0073】
本明細書で用いる場合、用語「プロテアソーム阻害薬」は、プロテアソームまたはプロテアソームの成分の活性を抑制または低下させる分子をいう。一実施形態では、プロテアソームは、20S触媒またはタンパク質分解コアサブユニット、ならびに1つ以上調節サブユニット、例えば、1つ以上の19S調節粒子および/または1つ以上の11S調節粒子を含むものである。諸実施形態において、プロテアソームまたはプロテアソームの成分の活性としては、以下:プロテアソームとのタンパク質の会合またはタンパク質とのプロテアソームの会合;プロテアソームへのタンパク質の進入;プロテアソーム内への進入のためのタンパク質のアンフォールディング;プロテアソームによるタンパク質のプロセッシング(例えば、部分的または完全なタンパク質のペプチドまたはアミノ酸構成成分への細分化);タンパク質のプロセッシングによって生じたプロセッシングされたペプチドまたはアミノ酸のプロテアソームからの放出;および小胞体とのプロテアソームの会合のうちの1つ以上が挙げられる。一実施形態では、プロテアソーム阻害薬はプロテアソームまたはプロテアソームの成分の活性を、該阻害薬の非存在下でのプロテアソームまたはその成分の活性と比べて約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%低下させるものである。
【0074】
本明細書で用いる場合、用語「ユビキチン経路阻害薬」は、ユビキチン経路の1つ以上の成分の活性を抑制または低下させる分子をいう。ユビキチン経路は、分解対象の標的タンパク質が同定され、分解のためにプロテアソームによって認識されるためにユビキチン分子でタグ化されるプロセスである。ユビキチン経路の成分としては、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)およびユビキチンリガーゼ(E3)が挙げられる。諸実施形態において、ユビキチン経路の1つ以上の成分の活性としては、以下:例えばE3ユビキチンリガーゼまたは基質同定複合体による分解対象タンパク質の同定;例えばE1活性化酵素によるユビキチンの活性化;E1酵素からE2酵素へのユビキチンの輸送;および例えばE3ユビキチンリガーゼによるユビキチンとタンパク質またはタンパク質上のユビキチン分子もしくはユビキチン鎖との結合(例えば、ユビキチン鎖の伸長);脱ユビキチン化酵素による脱ユビキチン化のうちの1つ以上が挙げられる。一実施形態では、ユビキチン経路阻害薬はユビキチン経路の1つ以上の成分の活性を、ユビキチン経路阻害薬の非存在下でのユビキチン経路の1つ以上の成分の活性と比べて約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%またはそれ以上低下させるものである。
【0075】
本明細書で用いる場合、用語「ERAD阻害薬」は、小胞体関連分解(ERAD)経路の1つ以上の成分の活性を抑制または低下させる分子をいう。ERAD経路は、ユビキチン化およびその後のプロテアソームによる分解のために小胞体のミスフォールディング型、変異型または非機能性のタンパク質を標的化するものである。ERAD経路の成分としては、シャペロンタンパク質、例えば、Hsp70ファミリーの構成員、Hsp40ファミリーの構成員、Hsp90ファミリーの構成員、ヌクレオチド交換因子、小分子の熱ショックタンパク質、レクチン様シャペロン;ミスフォールディング型のタンパク質を同定またはタグ化する酵素、例えば、α-マノシダーゼ(manosidase);ミスフォールディング型のタンパク質の逆輸送を補助する酵素またはタンパク質複合体、例えば、逆輸送複合体(RTC);逆輸送されたタンパク質をユビキチン化する酵素またはタンパク質複合体、例えば、Hrd-Derユビキチンリガーゼ複合体;およびユビキチン化タンパク質をプロテアソームに送達する酵素またはタンパク質複合体、例えば、Cdc48-Ufd1-Np14複合体が挙げられる。諸実施形態において、ERAD経路の1つ以上の成分の活性としては、以下:分解対象のミスフォールディング型の非機能性タンパク質の同定もしくはタグ化;ERからサイトゾルへのタンパク質の逆輸送;ER膜にある、例えばER膜内に組み込まれたタンパク質のユビキチン化;ユビキチン化タンパク質のプロテアソームへの送達;またはタンパク質の脱ユビキチン化のうちの1つ以上が挙げられる。一実施形態では、ERAD阻害薬はERAD経路の1つ以上の成分の活性を、ERAD阻害薬の非存在下でのERAD経路の1つ以上の成分の活性と比べて約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%またはそれ以上低下させるものである。
【0076】
本明細書で用いる場合、表現「低濃度」は、タンパク質分解阻害薬との関連において用いる場合、例えば、「低濃度のプロテアソーム阻害薬」、「低濃度のユビキチン化経路阻害薬」または「低濃度のERAD阻害薬」は、タンパク質分解阻害薬で処理した場合、該タンパク質分解阻害薬で処理しなかった培養物と比べて培養物のバイアビリティの低下をもたらす、例えば、培養物のバイアビリティの30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%の低下をもたらす濃度のタンパク質分解阻害薬をいう。タンパク質分解阻害薬を使用する目的は、改善された産生能または改善された産生品質を有する細胞を同定または選択することであるため、低濃度のタンパク質分解阻害薬は、治療有益性のために疾患細胞、例えばがん細胞を死滅させるために使用される濃度より低い濃度である。培養物のバイアビリティが30%未満、例えば20%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%でもなお、改善された産生受容能力を有し、良好な品質の産物を産生する選択された細胞の集団がもたらされ得、同様に本開示の範囲に含まれることは理解されよう。別の実施形態では、低濃度のタンパク質分解阻害薬は、タンパク質分解を、例えば、タンパク質分解と関連しているタンパク質またはプロセスを完全ではなく一部阻害する濃度である。一例として、低濃度のプロテアソーム阻害薬は、タンパク質分解を完全ではなく一部阻害する濃度である。プロテアソーム活性、例えばプロテアソーム活性の阻害をアッセイするための方法は本明細書に記載している。
【0077】
本明細書で用いる場合、用語「内因性の」とは、生物体、細胞、組織または系に由来しているか、またはこれらの内部で天然に産生される任意の物質をいう。
【0078】
本明細書で用いる場合、用語「外来性の」とは、生物体、細胞、組織または系に導入された、またはこれらの外部で産生された任意の物質をいう。したがって、「外来性核酸」は、生物体、細胞、組織または系に導入された核酸またはこれらの外部で産生された核酸をいう。ある実施形態では、外来性核酸の配列は、該外来性核酸が導入される生物体、細胞、組織または系内部において、天然に産生されない、または天然にはみられ得ないものである。一実施形態では、外来性核酸の配列は天然に存在しない配列、または天然に存在しない産物をコードしているものである。
【0079】
本明細書で用いる場合、用語「異種の」とは、異なる種の生物体、細胞、組織または系に導入される場合の1つの種に由来する任意の物質をいう。
【0080】
本明細書で用いる場合、用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」は互換的に用いており、デオキシリボ核酸(DNA)もしくはリボ核酸(RNA)またはDNAもしくはRNAの組合せ、および一本鎖形態または二本鎖形態いずれかのそのポリマーをいう。用語「核酸」には、限定されないが、遺伝子、cDNAまたはmRNAが包含される。一実施形態では、核酸分子は合成のもの(例えば、化学合成されたものもしくは人工のもの)または組換え型である。特に限定していない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドまたは天然に存在しないヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドのアナログまたは誘導体を含有している分子を包含している。特に記載のない限り、具体的な核酸配列は、明記された配列の他に、その保存的修飾バリアント(例えば、縮重コドン置換体)、対立遺伝子、オーソログ、SNPおよび相補配列もまた黙示的に包含している。具体的には、縮重コドン置換体は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が混合型塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより得られ得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);およびRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。
【0081】
本明細書で用いる場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は互換的に用いており、ペプチド結合によって、またはペプチド結合以外の手段によって共有結合により連結されたアミノ酸残基で構成された化合物をいう。タンパク質またはペプチドは少なくとも2個のアミノ酸を含有しているものでなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に対して制限はない。一実施形態では、タンパク質は、1つより多く、例えば、2、3、4、5つまたはそれ以上のポリペプチドで構成されたものであり得、ここで、各ポリペプチドは別のポリペプチドに対して共有結合または非共有結合/相互作用のいずれかによって会合している。ポリペプチドには、ペプチド結合によって、またはペプチド結合以外の手段によって互いに連接された2個以上のアミノ酸を含むものである任意のペプチドまたはタンパク質が包含される。本明細書で用いる場合、この用語は、短鎖のもの(これは、当該技術分野で一般的に例えばペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも称される)および長鎖のもの(これは、当該技術分野で一般的に、タンパク質(多くの型がある)と称される)のどちらも示す。「ポリペプチド」には、とりわけ、例えば、ポリペプチドの生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、バリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質が包含される。
【0082】
本明細書で用いる場合、「産物」は、当該産物が産生されるように修飾または操作されている細胞によって産生される、例えば発現される分子、核酸、ポリペプチドまたはその任意のハイブリッドをいう。一実施形態では、産物は、天然に存在する産物または天然に存在しない産物、例えば合成産物である。一実施形態では、産物の一部分は天然に存在するものであるが、該産物の別の一部分は天然に存在しないものである。一実施形態では、産物はポリペプチド、例えば組換えポリペプチドである。一実施形態では、産物は、診断使用または前臨床使用に適したものである。別の実施形態では、産物は、治療的使用、例えば疾患の処置に適したものである。一実施形態では、産物は表1または表2から選択される。一実施形態では、修飾または操作された細胞が、発現を制御する外来性核酸または産物をコードしている外来性核酸を含むものである。他の実施形態では、修飾または操作された細胞が、例えば、核酸ではない、細胞内での産物の発現または構築を制御する他の分子を含むものである。
【0083】
一実施形態では、細胞の修飾は、内因性核酸配列、例えば内因性遺伝子の発現を制御または改変する、例えば増大させる核酸配列を含む外来性核酸の導入を含む。かかる実施形態では、修飾された細胞は、該細胞によって天然に、または内因的に発現される内因性ポリペプチド産物を産生するが、この修飾によって該産物の産生および/または該産物の品質が非修飾細胞と比べて、例えば、該ポリペプチドの内因的産生または品質と比べて増大する。
【0084】
別の実施形態では、細胞の修飾は、本明細書に記載の組換えポリペプチドをコードしている外来性核酸の導入を含む。かかる実施形態では、修飾された細胞は、天然に存在するものであっても天然に存在しないものであってもよい組換えポリペプチド産物を産生する。かかる実施形態では、修飾された細胞は、該細胞によって同様に内因的に発現されるものであってもそうでなくてもよい組換えポリペプチド産物を産生する。組換えポリペプチド産物が細胞によって同様に内因的に発現されるものである実施形態では、この修飾によって該産物の産生および/または該産物の品質が非修飾細胞と比べて、例えば、該ポリペプチドの内因的産生または品質と比べて増大する。
【0085】
本明細書で用いる場合、「組換えポリペプチド」または「組換えタンパク質」は、本明細書に記載の細胞によって産生され得るポリペプチドをいう。組換えポリペプチドは、該ポリペプチドをコードしている配列の少なくとも1個のヌクレオチド、または該ポリペプチドの発現を制御する配列の少なくとも1個のヌクレオチドが(該細胞または前駆細胞の)遺伝子操作によって形成されたもの;例えば、少なくとも1個のヌクレオチドが改変されたもの、例えば、これが該細胞内に導入されたもの、またはこれが遺伝子操作された再編成体の産物であるものである。ある実施形態では、組換えポリペプチドの配列は、該ポリペプチドまたはタンパク質の天然に存在するアイソフォームと異なっていないものである。ある実施形態では、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、該ポリペプチドまたはタンパク質の天然に存在するアイソフォームの配列と異なるものである。ある実施形態では、組換えポリペプチドと細胞は同じ種に由来する。ある実施形態では、組換えポリペプチドが細胞に対して内因性である、換言すると、細胞は第1の種に由来するものであり、組換えポリペプチドがこの第1の種に対して天然状態である。ある実施形態では、組換えポリペプチドのアミノ酸配列が、細胞の内在ゲノムにコードされたポリペプチドと同じである、または実質的に同じである、または1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%以下が異なっている。ある実施形態では、組換えポリペプチドおよび細胞は異なる種に由来し、例えば、組換えポリペプチドはヒトポリペプチドであり、該細胞は非ヒト細胞、例えば、齧歯類の細胞、例えばCHO細胞または昆虫細胞である。ある実施形態では、組換えポリペプチドは細胞に対して外来性である、換言すると、該細胞は第1の種に由来するものであり、組換えポリペプチドは第2の種に由来するものである。一実施形態では、ポリペプチドは合成ポリペプチドである。一実施形態では、ポリペプチドは、天然に存在しない供給源から誘導されるものである。ある実施形態では、組換えポリペプチドは、アミノ酸配列が、そのヒトポリペプチドまたはタンパク質の天然に存在するアイソフォームと異なっていないヒトポリペプチドまたはタンパク質である。ある実施形態では、組換えポリペプチドは、そのヒトポリペプチドまたはタンパク質の天然に存在するアイソフォームと1、2、3、4、5、10、15もしくは20個以下のアミノ酸残基が異なっている。ある実施形態では、組換えポリペプチドは、そのヒトポリペプチドの天然に存在するアイソフォームとアミノ酸残基の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または15%以下が異なっている。
【0086】
本明細書において挙げた特許、特許出願および刊行物の1つ1つの開示内容は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明を具体的な態様に関して開示しているが、本発明の他の態様および変形例が当業者により、本発明の真の趣旨および範囲を逸脱することなく考案され得ることは明らかであろう。添付の特許請求の範囲には、かかる態様および均等な変形例すべてが包含されていると解釈すべきであることを意図している。
【0087】
タンパク質分解経路のモジュレーション
細胞株構築、例えば、組換え細胞株構築の際、細胞プロセスは、細胞内で該細胞のフォールディング能および修飾能を超えた場合に誘発される。ERストレスおよびER関連分解(ERAD)時の異常タンパク応答(UPR)は、タンパク質合成時にミスフォールディング型または非集合型のタンパク質に対処する枢要な細胞プロセスである。このようなプロセスによって活性化される枢要な応答としては、ERシャペロン上方調節、翻訳開始の低減による総体的なタンパク質合成の低減、およびストレスが持続する場合は最終的にアポトーシスが挙げられる(Schroder & Kaufman 2005;Chakrabarti et al.2011)。おそらくミスフォールディングの結果、新たに翻訳されたポリペプチドの30%が分解の標的になることが提案されている(Du et al.2013;Schubert et al.2000;Yewdell & Nicchitta 2006)。このようなプロセスは、タンパク質の品質の維持を補助するだけでなく、新たなポリペプチド合成のための新たな構成単位としての重要な「リサイクル」アミノ酸源ももたらすと考えられる。したがって、細胞は、不正確にフォールディングされたポリペプチドの成分に対処してリサイクルして品質管理プロセスを維持するためのしかるべき機構を有することが重要である。
【0088】
ERADは、破壊される運命のER内のポリペプチド/タンパク質がERからサイトゾルに逆行輸送、例えば逆輸送され、そこでプロテアソームによって分解されることを要する(Olzmann et al.2013)。ホメオスタシスが回復し得なければ、UPRによって活性化されたプロセスによって最終的にアポトーシスがもたらされ得る。UPRにより、高需要期間中にER容量を調整する能力を有する細胞がもたらされ、UPR誘導要素は組換えタンパク質の収率に有益であると考えられるが、過度な長期間の活性化は細胞および培養物のバイアビリティに有害であり得る。
【0089】
本開示は、一部において、ERによるタンパク質のターンオーバーを開始させる細胞の能力が組換えポリペプチドを産生する細胞の能力と関連しているかどうか、さらに、例えば、プロテアソーム活性またはERAD時のERからのポリペプチド輸送を阻害することによるタンパク質分解経路の阻害が、組換えタンパク質の産生能を反映しているであろうこのようなプロセスの能力が向上した細胞を選択するために使用され得るかどうかを調べるための試験の結果に基づいている。本開示により、産物、例えば組換えポリペプチドの高産生のための受容能力を有する細胞を同定または選択するため、ならびに高産生性を有する、例えば高収率で組換えポリペプチド産物を産生する、および/または高品質の組換えポリペプチド産物を産生し得る組換え細胞株を作成するために、タンパク質分解阻害薬を使用するための方法および組成物を提供する。
【0090】
タンパク質分解阻害薬
本明細書に記載の方法は、細胞または細胞集団をタンパク質分解阻害薬と接触させることを含むものである。ある実施形態では、本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬は、タンパク質分解経路、例えば、プロテアソーム分解、ER関連分解経路および/またはユビキチン経路に関与しているプロセスまたはタンパク質の活性を阻害または低下させるものである。本明細書に記載のように、該タンパク質分解阻害薬としては、限定されないが、プロテアソーム阻害薬、ユビキチン経路阻害薬またはERAD阻害薬が挙げられ得る。ある実施形態では、該阻害薬は可逆的または不可逆的であり得る。諸実施形態において、該阻害薬は小分子、核酸またはポリペプチドであり得る。
【0091】
プロテアソームは、1つ以上のタンパク質消化酵素、例えばプロテアーゼを含むものである大きな多酵素複合体である。26Sプロテアソームは、20Sタンパク質分解コアサブユニットと1つまたは2つの19S調節粒子を含むものである。20Sコアには3つの型の活性部位、例えば、タンパク質分解部位またはペプチダーゼ部位が含まれている。諸実施形態において、本明細書に記載のプロテアソーム阻害薬は、プロテアソームのいずれかの成分の活性を阻害または低下させ得るものである。ある実施形態では、プロテアソーム阻害薬は、プロテアソームの成分の1つ以上の活性部位、例えば、20Sタンパク質分解コアの1つ以上の活性部位に結合する、および/または該活性部位を阻害するものである。ある実施形態では、プロテアソーム阻害薬は20Sタンパク質分解コアの活性を阻害または低下させるものである。ある実施形態では、プロテアソーム阻害薬は19S調節粒子の活性を阻害または低下させるものである。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害薬は、プロテアーゼ、例えば、トリプシンプロテアーゼ、キモトリプシンプロテアーゼまたはカルパインの活性を阻害または低下させるものである。一実施形態では、プロテアソーム阻害薬は、プロテアソームの活性またはプロテアソームの成分の活性を、該阻害薬の非存在下でのプロテアソームまたはその成分の活性と比べて約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%低下させるものである。
【0092】
ある実施形態では、プロテアソーム阻害薬は、MG132またはエポキシミシン(epoximicin)から選択される。他の例示的なプロテアソーム阻害薬は当該技術分野で知られているものであり、限定されないが、Z-Leu-Leu-Leu-B(OH)2(MG262)、ボルテゾミブ(PS-341、Velcade、ピラジルカルボニル-Phe-Leu-ボロネート)、カルフィルゾミブ(PR-171)、マリゾミブ、MLN9708(Ninlaro)、イキサゾミブ(MLN2238)、オプロゾミブ(ONX 0912)、デランゾミブ(delanzomib)(CEP-18770)、CEP1612、セラストロール、ONX-0914(PR-957)、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガレート、サリノスポラミドA、AM114、ラクタシスチン、ps-341、エポノミシン、Z-Leu-Leu-LeuVS、MG115、カルペプチン、PSIおよびカルパイン阻害薬IIが挙げられる。他の例示的なプロテアソーム阻害薬としては、NVLS、PS-519、アンチプロテアリド(antiprotealide)、フルオロサリノスポラミドおよびシンナバラミド(cinnabaramide)(例えば、シンナバラミドA~G)が挙げられる。
【0093】
プロテアソーム阻害薬は、Dick,et al.,Biochem.30:2725(1991);Goldberg,et al.,Nature 357:375(1992);Goldberg,Eur.Biochem.203:9(1992);Orlowski,Biochem.29:10289(1989);Rivett,et al.,Archs.Biochem.Biophys.218:1(1989);Rivett,et al.,J.Biol.Chem.264:12,215(1989);Tanaka,et al.,New Biol.4:1(1992)および米国特許第5,693,617号に記載のいずれか1つであってもよい。
【0094】
プロテアソーム阻害薬は、Vinitsky,et al.(Biochem.31:9421(1992)、また、Orlowski,et al.,Biochem.32:1563(1993)も参照のこと)に記載のような、P1位に疎水性残基を含有しているペプチドアルデヒドまたはペプチドα-ケトエステルであってもよく、これは、プロテアソームのキモトリプシン様活性の阻害薬として特性評価されたものである。プロテアソーム阻害薬は、トリペプチド、例えばAc-Leu-Leu-Leu-H、Ac-Leu-Leu-Met-OR、Ac-Leu-Leu-Nle-OR、Ac-Leu-Leu-Leu-OR、Ac-Leu-Leu-Arg-H、Z-Leu-Leu-Leu-H、Z-Arg-Leu-Phe-HおよびZ-Arg-Ile-Phe-Hであってもよく、ここで、ORは、前のアミノ酸残基のカルボニルとともにエステル基を表す。
【0095】
プロテアソーム阻害薬は、Siman,et al.(国際公開第01/13904号)に開示されているようなキモトリプシン様プロテアーゼの阻害薬であってもよい。このような阻害薬は式R-A4-A3-A2-Yを有するものであり、式中、Rは水素またはN末端ブロック基であり;A4は共有結合、アミノ酸またはペプチドであり;A3は共有結合、D-アミノ酸、Phe、Tyr、ValまたはValの保存的アミノ酸置換体であり;A2は疎水性アミノ酸もしくはリシンもしくはその保存的アミノ酸置換体であるか、またはA4が少なくとも2つのアミノ酸を含む場合は、A2は任意のアミノ酸であり;Yは、前記プロテアーゼの活性部位と反応性の基である。また、プロテアソーム阻害薬は、Powers(国際公開第92/12140号)に記載のような、セリンプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼの阻害に有用なペプチドケトアミド、ケト酸またはケトエステルであってもよい。また、プロテアソーム阻害薬は、Bartus,et al.(国際公開第92/1850号)に記載のようなカルパイン阻害化合物であってもよい。
【0096】
他のプロテアソーム阻害薬としては、限定されないが:カルパイン阻害薬I、MG101、カルパイン阻害薬II、画分I(FrI、Hela)、画分II(FII)、clasto-ラクタシスチンβ-ラクトン(オムラリド)、ラクタシスチン、MG-115、NEDD8に対する抗血清、PA28アクチベータ、20Sプロテアソーム、プロテアソーム20Sα-1型サブユニットに対するポリクローナル抗体、プロテアソーム26SサブユニットS10Bに対するポリクローナル抗体、プロテアソーム26SサブユニットS2に対するポリクローナル抗体、プロテアソーム26SサブユニットS4に対するポリクローナル抗体、プロテアソーム26SサブユニットS5Aに対するポリクローナル抗体、プロテアソーム26SサブユニットS6に対するポリクローナル抗体、プロテアソーム26SサブユニットS6’に対するポリクローナル抗体、プロテアソーム26SサブユニットS7に対するポリクローナル抗体、プロテアソーム26SサブユニットS8に対するポリクローナル抗体、プロテアソームアクチベータPA28αに対するポリクローナル抗体、プロテアソームアクチベータPA28γに対するポリクローナル抗体、プロテアソームアクチベータPA700サブユニット10Bに対するポリクローナル抗体、26Sプロテアソーム画分、プロテアソーム阻害薬I、プロテアソーム阻害薬II、プロテアソームの基質I(蛍光発生性)、プロテアソームの基質II(蛍光発生性)、プロテアソームの基質III(蛍光発生性)、プロテアソームの基質IV(蛍光発生性)、S-100画分、SUMO-1/セントリン(Sentrin)-1(1-101)、SUMO-1/セントリン-1(1-97)、SUMO-1/セントリン-1に対する抗血清、Ubc10、Ubc5b、Ubc5c、Ubc6、Ubc7、Ubc9に対する抗血清、Ubc9、UbCH2/E2-14K、UbCH3/Cdc34、UbCH5a、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチンアルデヒド、ユビキチン結合酵素画分、ユビキチンC末端加水分解酵素、ユビキチンK48R、メチル化ユビキチン、GST-ユビキチン、(His)6ユビキチン、ユビキチン-AMC、ユビキチン-セファロースが挙げられる。
【0097】
既知のプロテアソーム阻害薬に加えて、本明細書に記載の方法において有用なプロテアソーム阻害薬は、そのプロテアソーム活性の阻害能について常套的に試験され得る。かかる阻害薬の同定のための種々のストラテジーが当該技術分野において例示されている。例えば、小分子ライブラリー(多くの場合、植物またはより単純な生物体の抽出物を含むものである)が、そのプロテアソームまたは特定のプロテアーゼ型の阻害能についてスクリーニングされ得る。あるいはまた、例えば、プロテアソーム成分の活性部位と相互作用するように特異的に設計されたペプチドまたはペプチド模倣化合物を使用する合理的設計アプローチを適用してもよい(例えば、Siman,et al.,WO91/13904;Powers,et al.,in Proteinase Inhibitors,Barrett,et al.(eds.),Elsevier,pp.55-152(1986)参照)。該阻害薬は、触媒性遷移状態の安定なアナログ、例えばZ-Gly-Gly-Leu-H(これは、プロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害する)であってもよい(Orlowski,Biochemistry 29:10289(1990);また、Kennedy and Schultz,Biochem.18:349(1979)も参照のこと)。
【0098】
また、文献に報告されたさまざまな天然および化学的プロテアソーム阻害薬またはそのアナログが本発明に包含されていることを意図し、限定されないが、α-ジケトンまたはα-ケトンエステルを含有しているペプチド、ペプチドクロロメチルケトン、ペプチドエポキシケトン、ペプチドビニルスルホン、β-ラクトン含有化合物、ペプチドボロネートイソクマリン、ペプチドスルホニルフルオリド、ペプチジルボロネート、ペプチドエポキシド、およびペプチジルジアゾメタンが包含される。Angelastro,et al.,J.Med.Chem.33:11(1990);Bey,et al.,EPO 363,284;Bey,et al.,EPO 363,284;Bey,et al.,EPO 364,344;Grubb,et al.,国際公開第88/10266号;Higuchi,et al.,EPO 393,457;Ewoldt,et al.,Mol.Immunol.29(6):713(1992);Hernandez,et al.,J.Med.Chem.35(6):1121(1992);Vlasak,et al.,J.Virol.63(5):2056(1989);Hudig,et al.,J.Immunol.147(4):1360(1991);Odakc,et al.,Biochem.30(8):2217(1991);Vijayalakshmi,et al.,Biochem.30(8):2175(1991);Kam,et al.,Thrombosis and Haemostasis 64(1):133(1990);Powers,et al.,J.Cell.Biochem.39(1):33(1989);Powers,et al.,Proteinase Inhibitors,Barrett et al.,Eds.,Elsevier,pp.55-152(1986);Powers,et al.,Biochem 29(12):3108(1990);Oweida,et al.,Thrombosis Res.58(2):391(1990);Hudig,et al.,Mol.Immunol.26(8):793(1989);Orlowski,et al.,Arch.Biochem.and Biophys.269(1):125(1989);Zunino,et al.,Biochem.et Biophys.Acta 967(3):331(1988);Kam,et al.,Biochem.27(7):2547(1988);Parkes,et al.,Biochem.J.230:509(1985);Green,et al.,J.Biol.Chem.256:1923(1981);Angliker,et al.,Biochem.J.241:871(1987);Puri,et al.,Arch.Biochem.Biophys.27:346(1989);Hanada,et al.,Proteinase Inhibitors:Medical and Biological Aspects,Katunuma,et al.,Eds.,Springer-Verlag pp.25-36(1983);Kajiwara,et al.,Biochem.Int.15:935(1987);Rao,et al.,Thromb.Res.47:635(1987);Tsujinaka,et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1201(1988))。
【0099】
プロテアソーム活性は、当該技術分野で知られており本明細書、例えば実施例1および4に記載のプロテアソーム活性アッセイによって測定され得る。
【0100】
ユビキチン化はタンパク質分解において極めて重要な役割を果たす。ユビキチンは、小分子の8.5kDaのタンパク質であり、基質タンパク質に、該基質タンパク質内のユビキチンのグリシンのカルボン酸基とリシンのεアミノ基間のイソペプチド結合により結合する。基質タンパク質のユビキチン化は、主要な3つの工程:1)ATP依存性E1ユビキチン活性化酵素(本明細書においてE1とも称する)によるユビキチンの活性化;2)E1からE2ユビキチン結合酵素(本明細書においてE2とも称する)の活性部位へのユビキチンの転移;および3)E3ユビキチンリガーゼ(本明細書においてE3とも称する)による基質タンパク質へのユビキチンのライゲーション、例えば、ユビキチン分子と基質タンパク質間のイソペプチド結合の形成で行われる。ユビキチン化タンパク質は、プロテアソームによる分解の標的となる。一実施形態では、ユビキチン経路阻害薬は、ユビキチン経路の1つ以上の成分の活性を、ユビキチン経路阻害薬の非存在下でのユビキチン経路の1つ以上の成分の活性と比べて約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%またはそれ以上低下させるものである。
【0101】
ある実施形態では、本明細書に記載のユビキチン経路阻害薬は、ユビキチン化カスケードに関与しているいずれかの段階または酵素を阻害し得るものである。例えば、ユビキチン化阻害薬は、E1、E2またはE3のうちの1種類以上、例えば、1種類、2種類または全部の活性を阻害または低下させ得るものである。ある実施形態では、ユビキチン経路阻害薬は、当該技術分野で知られた任意のE1、E2またはE3の活性を阻害または低下させるものである。例えば、E3ユビキチンリガーゼとしては、限定されないが、APC/Cユビキチンリガーゼ、HECT E3ユビキチンリガーゼ、β-TrCP1 リガーゼ、MDM2およびSCFユビキチンリガーゼが挙げられる。
【0102】
ある実施形態では、ユビキチン経路阻害薬は(-)-パルテノリド、サリドマイド、TAME、A01(Tocris,カタログ番号5397)、Apcin(R&D Systems,カタログ番号I-444)、GS143(Tocris,カタログ番号5636)、Heclin(Tocris,カタログ番号5433)、HLI373(Tocris,カタログ番号3503)、NSC 66811(Tocris,カタログ番号2936)、NSC-687852(Biovision,カタログ番号2021-5)、NAB 2(R&D Systems,カタログ番号5131)、Nutlin-3(Tocris,カタログ番号3984)、PRT 4165(Tocris,カタログ番号5047)、PTC 209(Tocris,カタログ番号5191)、RITA(Tocris,カタログ番号2443)、SKPin C1(Tocris,カタログ番号4817)、SMER3(Tocris,カタログ番号437)、SP141(Tocris,カタログ番号5332)、SZL P1-31(Tocris,カタログ番号5076)、TAME塩酸塩(Tocris,カタログ番号4506)、proTAME(R&D Systems,カタログ番号I-440)またはTCID(Biovision,カタログ番号2204-5)である。
【0103】
ユビキチン化は、当該技術分野で知られたユビキチン化アッセイによって測定され得る。
【0104】
ER関連分解によるERからのミスフォールディング型のタンパク質の排除は、例えば、分解対象のミスフォールディング型のタンパク質の特定およびタグ化、このミスフォールディング型のタンパク質のER内腔からサイトゾル内への逆輸送、このタンパク質のユビキチン化、および分解のためのプロテアソームへの送達を伴うものである。タンパク質複合体であるp97-Ufd1-Npl4 ATPase複合体はATPを加水分解し、ユビキチン化タンパク質をサイトゾル内に移動させる。p97関連脱ユビキチン化酵素は、p97-Ufd1-Npl4 ATPase複合体自体の成分が標的化されること、例えば、ユビキチン化され、プロテアソームによって分解されることを妨げる。したがって、ある実施形態では、ERAD阻害薬は、p97-Ufd1-Np14 ATPase複合体の成分うちの1つ以上の活性を阻害または低下させるもの、例えば、p97-Ufd1-Np14 ATPase複合体のATPaseの活性を阻害または低下させるものである。一実施形態では、ERAD阻害薬は、ERAD経路の1つ以上の成分の活性を、ERAD阻害薬の非存在下でのERAD経路の1つ以上の成分の活性と比べて約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%またはそれ以上低下させるものである。
【0105】
一実施形態では、ERAD阻害薬は、ERAD経路の1つ以上の成分の活性を阻害または低下させるものである。ERAD経路の成分としては、限定されないが、Hsp70ファミリーの構成員、Hsp40ファミリーの構成員、Hsp90ファミリーの構成員、ヌクレオチド交換因子(NEF)(例えば、Nhs、Bag-1)、Rot1、カルネキシン、アルレチクリン(alreticulin)、α-マンノシダーゼ(Mns1)、ER分解促進α-マンノシダーゼ様タンパク質(EDEM)、Kar2、Sec61複合体(成分としては、例えば、Sec61αおよびSec61γが挙げられる)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、Yos9、Cdc48p、p97、VCP/p97複合体、Hrd1、Doa10、Ubc1、Cue1、Ubc6およびUbc7が挙げられる。
【0106】
ある実施形態では、ERAD阻害薬としては、限定されないが、イーヤレスタチンI(ESIとも称される)、コトランシン(cotransin)、CAM741、アプラトキシンA、エキソトキシンA、HUN-7293、デカトランシン(decatransin)、バリノマイシン、マイコラクトン、NSC 630668-R/1(R/1とも称される)、MAL3-39、MAL3-101、E6ベルバミン、オフィオボリンA、CADAシクロトリアザジスルホニアミド(sulfoniamide)、例えば、Kalies et al.,2015,Traffic,16:1027-1038(引用により本明細書に組み込まれる)に記載の阻害薬が挙げられる。
【0107】
一実施形態では、1種類以上の本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬が本明細書に記載の方法において使用される。例えば、2、3、4または5種類またはそれ以上の本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬が使用される。ある実施形態では、2種類以上の該タンパク質分解阻害薬によってタンパク質分解経路の同じプロセスが破壊され得、例えば、2種類以上の該阻害薬によってプロテアソーム活性が阻害される、または低下する。代替的な一実施形態では、2種類以上の該タンパク質分解阻害薬によってタンパク質分解経路の異なるプロセスが破壊され、例えば、1つの阻害薬はプロテアソーム活性を阻害するもの、または低下させるものであるが、別の阻害薬はERAD活性またはユビキチン経路を阻害するもの、または低下させるものである
該タンパク質分解阻害薬の適切な濃度の決定は当業者の技能の範囲内である。かかる阻害薬の濃度を決定するため、例えば、所望の培養物のバイアビリティおよび/またはタンパク質分解の阻害、例えばプロテアソームの阻害のための該阻害薬の適切な濃度を決定するためのアッセイは本明細書および本明細書の実施例に記載している。本明細書に記載の方法における使用のための該タンパク質分解阻害薬の適切な濃度は、細胞型が異なると異なり得、細胞が由来する種が異なると異なり得る。本明細書に記載の諸実施形態において、プロテアソーム活性の阻害または低下は、該プロテアソーム阻害薬と接触させていない細胞と比べて、または該プロテアソーム阻害薬と接触させた参照細胞と比べて測定される。
【0108】
いくつかの実施形態では、低濃度の該タンパク質分解阻害薬が本明細書に記載の方法において使用される。低濃度の該タンパク質分解阻害薬は、本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬と接触させる前、例えば曝露する前に1つ以上の選択工程を受けた細胞に好ましい場合があり得る。一例として、低濃度の該タンパク質分解阻害薬が細胞に、外来性核酸がゲノム内に安定的に組み込まれた細胞を同定するための選択が行われた後に投与される。
【0109】
一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度は、タンパク質分解の阻害または低減、例えば、本明細書に記載のプロテアソーム、ユビキチン経路またはERAD経路の1つ以上の成分の活性の阻害または低下がもたらされる濃度である。ある実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度は、該タンパク質分解阻害薬と接触させた、例えば該タンパク質分解阻害薬の存在下で培養した培養物または細胞集団において、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%またはそれ以上の培養物のバイアビリティがもたらされる(例えば、本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬と接触させた、例えば該タンパク質分解阻害薬の存在下で培養した細胞集団において20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%もしくはそれ以上の細胞がバイアブルである、または生存している)濃度である。ある実施形態では、該タンパク質分解阻害薬の該濃度は、該タンパク質分解阻害薬と接触させた場合、例えば該タンパク質分解阻害薬の存在下で培養した場合、該タンパク質分解阻害薬と接触させた細胞のうちの一部のものが増殖し続ける、例えば、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%またはそれ以上の細胞が増殖し続ける濃度である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬の該濃度は、細胞を該タンパク質分解阻害薬と接触させた後、例えば、細胞を該タンパク質分解阻害薬の存在下で培養した後、総数の20%未満、例えば、15%、10%、5%、1%、0.5%または0.1%の細胞の残存をもたらすものである。
【0110】
一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬がMG-132である。MG-132は、アポトーシスを誘導するために1.5μMで使用されている(Meriin et al.1998)。ある実施形態では、本明細書に記載の方法に適したMG-132の濃度は1.5μM未満、1.25μM未満、1.0μM未満、0.9μM未満、0.8μM未満、0.7μM未満、0.6μM未満、0.5μM未満、0.4μM未満、0.3μM未満、0.2μM未満、0.1μM未満、0.09μM未満、0.08μM未満、0.07μM未満、0.06μM未満、0.05μM未満、0.04μM未満、0.03μM未満、0.02μM未満、0.01μM未満または0.005μM未満である。ある実施形態では、MG-132の濃度は約0.1μMまたは0.0625μMである。
【0111】
一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬がエポキソミシンである。0.04~0.08μMの濃度のエポキソミシンはプロテアソームのキモトリプシン活性を阻害することが示されている(Meng et al.1999)。ある実施形態では、本明細書に記載の方法に適したエポキソミシンの濃度は0.08μM未満、0.07μM未満、0.06μM未満、0.05μM未満、0.04μM未満、0.03μM未満、0.02μM未満、0.01μM未満、0.009μM未満、0.008μM未満、0.007μM未満、0.006μM未満、0.005μM未満、0.004μM未満、0.003μM未満、0.002μM未満、0.001μM未満、0.009μM未満、0.008μM未満、0.007μM未満、0.006μM未満、0.005μM未満、0.004μM未満、0.003μM未満、0.002μMまたは0.001μM未満である。ある実施形態では、エポキソミシンの濃度は約0.05μMまたは0.025μMである。
【0112】
一実施形態では、該タンパク質分解阻害薬がイーヤレスタチンIである。8μMの濃度のイーヤレスタチンIがERの輸送をブロックするのに充分であることが以前にインビボで示されている(Cross et al.2009)。ある実施形態では、本明細書に記載の方法に適したイーヤレスタチンIの濃度は20μM未満、15μM未満、14μM未満、13μM未満、12μM未満、11μM未満、10μM未満、9μM未満、8μM未満、7μM未満、6μM未満、5μM未満、4μM未満、3μM未満、2μM未満、1μM未満または0.5μM未満である。
【0113】
特定の特徴、例えば該タンパク質分解阻害薬に対する感受性を有する細胞の評価または同定のための本明細書に記載の任意の方法において、1個以上の細胞が同時にハイスループット形式でスクリーニングされ得る。例えば、細胞は個別のアリコートで、例えばマルチウェルプレートの異なるウェル内で培養され得、この場合、個々の各アリコートの細胞は異なる条件下で培養または選択される。該異なる条件としては、異なるタンパク質分解阻害薬濃度、さらなる選択工程、または異なる外来性核酸の導入が挙げられ得る。かかる実施形態では、各アリコートで測定された細胞機能に関する1つ以上のパラメータの値の比較は、高産生体としての、または高産生細胞株としてさらに展開するための細胞としての細胞を同定、選択または分類するために使用され得る。
【0114】
産物およびこれをコードしている核酸
本明細書において、高収率で産物を産生し得る細胞または細胞株を同定、選択または作製するための方法を提供する。本開示に包含される産物としては、限定されないが、細胞内で産生され得る、例えば発現され得る分子、核酸、ポリペプチド(例えば、組換えポリペプチド)またはそのハイブリッドが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞は、該産物を産生するように操作または修飾される。かかる修飾としては、産物の産生を制御する分子または産物の産生をもたらす分子の導入が挙げられる。例えば、細胞は、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドをコードしている外来性核酸を導入することにより修飾され、該細胞が、該ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドの産生、例えば発現および分泌に適した条件下で培養される。別の例では、細胞は、該細胞によって内因的に発現されるポリペプチドの発現を制御する、例えば増大させる外来性核酸を導入することにより、該細胞が、例えば非修飾細胞において内因的に産生されるレベルまたは数量より高いレベルまたは多くの数量の該ポリペプチドを産生するように修飾される。
【0115】
諸実施形態において、本明細書に記載の方法によって同定、選択または作製された細胞または細胞株は、疾病状態、障害または疾患の処置に有用な産物、例えば組換えポリペプチドを産生するものである。疾病状態、障害または疾患の例としては、限定されないが、代謝病または代謝障害(例えば、代謝酵素欠損症)、内分泌障害(例えば、ホルモン欠損症)、止血、血栓症、造血障害、呼吸器障害、胃腸障害、免疫調節(例えば、免疫不全)、不妊、移植、がんおよび感染性疾患が挙げられる。
【0116】
いくつかの実施形態では、産物が外来性タンパク質、例えば、細胞によって天然に発現されないタンパク質である。産物は、例えば薬物スクリーニングに有用な治療用タンパク質または診断用タンパク質であってもよい。治療用または診断用タンパク質は抗体分子、例えば、抗体もしくは抗体断片、融合タンパク質、ホルモン、サイトカイン、成長因子、酵素、糖タンパク質、リポタンパク質、レポータータンパク質、治療用ペプチド、あるいはこれらのいずれかの構造断片および/または機能性断片またはハイブリッドであり得る。
【0117】
一実施形態では、産物、例えば組換えポリペプチドが抗体分子である。本明細書に包含される産物は診断用抗体分子および治療用抗体分子を含む。診断用抗体分子としては、イメージング手法に有用な抗体、例えば、モノクローナル抗体またはその抗体断片が挙げられる。治療用抗体分子は、被験体への投与に適したもの、例えば、疾患または障害の処置または予防に適したものである。
【0118】
抗体分子は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子から誘導されるタンパク質またはポリペプチド配列である。ある実施形態では、抗体分子は完全長抗体または抗体断片である。抗体およびマルチフォーマット(multiformat)タンパク質は、ポリクローナルまたはモノクローナルの多重鎖もしくは短鎖またはインタクトな免疫グロブリンであり得、天然供給源から誘導されるものであっても組換え供給源から誘導されるものであってもよい。抗体は四量体の免疫グロブリン分子であってもよい。ある実施形態では、抗体がモノクローナル抗体である。抗体はヒト抗体であってもヒト化抗体であってもよい。一実施形態では、抗体がIgA、IgG、IgDまたはIgE抗体である。一実施形態では、抗体がIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体である。
【0119】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の少なくとも1つの一部分またはその組換えバリアントをいい、標的、例えば抗原に対する抗体断片の認識および特異的結合を付与するのに充分なインタクトな抗体の抗原結合ドメイン、例えば、抗原決定可変領域をいう。抗体断片の例としては、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)およびFv断片、scFv抗体断片、線状抗体、単一ドメイン抗体、例えばsdAb(VLまたはVHいずれか)、ラクダVHHドメイン、ならびに抗体断片で形成された多重特異的抗体、例えば、ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片、および抗体の単独のCDRまたは他のエピトープ結合断片が挙げられる。また、抗原結合断片を、単一ドメイン抗体、マキシボディ(maxibody)、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NARおよびビス-scFv内に組み込んでもよい(例えば、Hollinger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136,2005参照)。また、抗原結合断片をポリペプチドベースの骨格、例えばフィブロネクチンIII型(Fn3)にグラフト化してもよい(フィブロネクチンのポリペプチドミニボディが記載された米国特許第6,703,199号参照)。
【0120】
本明細書に記載の方法または細胞において産生される例示的な産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを以下の表に示す。
【表1】



【0121】
別の実施形態では、産物が二重特異性分子である。本明細書に記載の二重特異性分子には、2種類以上の相違する抗原または標的に結合し得る分子が包含される。ある実施形態では、二重特異性分子が抗体断片を含む。一実施形態では、二重特異性分子が、二重特異性抗体、二重特異性抗体融合タンパク質もしくは二重特異性抗体コンジュゲート、二重特異性T細胞エンゲージャー(Engager)(BiTE)分子、二相親和性再標的化(Dual Affinity Re-Targeting)(DART)分子、二相作用Fab(DAF)分子、ナノボディ、または相違する2つの抗原を認識する能力もしくは相違する2つの抗原に結合する能力を有する分子をもたらす他の構成の抗体断片を含む。
【表2】







【0122】
他の例示的な治療用または診断用タンパク質としては、限定されないが、Leader et al.,「Protein therapeutics:a summary and pharmacological classification」,Nature Reviews Drug Discovery,2008,7:21-39(引用により本明細書に組み込まれる)の表1~10に記載の任意のタンパク質;または本明細書に記載の組換えポリペプチドの任意のコンジュゲート、バリアント、アナログもしくは機能性断片が挙げられる。
【0123】
他の組換え産物としては、非抗体骨格または代替タンパク質骨格、例えば、限定されないが:DARPin、アフィボディおよびアドネクチンが挙げられる。かかる非抗体骨格または代替タンパク質骨格は、1種類または2種類またはそれ以上、例えば、1、2、3、4または5種類またはそれ以上の異なる標的または抗原を認識するように、または該標的または抗原に結合するように操作され得る。
【0124】
また、本明細書において、本明細書に記載の産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドをコードしている核酸、例えば、外来性核酸を提供する。所望の組換えポリペプチドをコードしている核酸配列は、当該技術分野で知られた組換え方法を用いて、例えば、所望の核酸配列、例えば遺伝子を発現する細胞のライブラリーをスクリーニングすること、核酸配列を、これが含まれていることがわかっているベクターから誘導すること、または細胞およびこれを含む組織から標準的な手法を用いて直接単離することなどによって得られ得る。あるいはまた、該組換えポリペプチドをコードしている核酸を、クローニングではなく合成により作製してもよい。組換えDNA手法および技術は高度に進んでおり、当該技術分野において充分に確立されている。したがって、本明細書に記載の組換えポリペプチドのアミノ酸配列の知識を有する当業者は、該組換えポリペプチドをコードしているであろう核酸配列を容易に構想または作成することができよう。
【0125】
いくつかの実施形態では、該外来性核酸が、宿主細胞によって内因的に発現される産物の発現を制御するものである。かかる実施形態では、該外来性核酸が、内因性産物の発現を増大させる1つ以上の核酸配列(本明細書において「内因性産物トランス活性化配列」とも称する)を含むものである。例えば、内因性産物の発現を増大させる核酸配列は、構成的に活性なプロモーター、またはより強力である、例えば、所望の部位において転写を増大させる、例えば、所望の内因性遺伝子産物の発現を増大させるプロモーターを含むものである。内因性産物トランス活性化配列を含む外来性核酸の導入後、前記外来性核酸は細胞の染色体ゲノム内に、例えば、該内因性産物をコードしているゲノム配列に近位の事前に選択した位置に、内因性産物トランス活性化配列によって所望の内因性産物のトランス活性化または発現が増大するように組み込まれる。内因性産物の発現を増大させるために細胞を修飾する、例えば外来性核酸を導入するための他の方法は、例えば米国特許第5,272,071号に記載されており;引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0126】
本明細書に記載の産物の発現は、典型的には、該組換えポリペプチドまたはその一部分をコードしている核酸をプロモーターに作動可能に連結させ、この構築物を発現ベクター内に組み込むことにより行われる。該ベクターは、真核生物または原核生物での複製および組込みに適したものであり得る。典型的なクローニングベクターには、他の調節エレメント、例えば、転写ターミネーターおよび翻訳ターミネーター、開始配列ならびに所望の核酸配列の発現の調節に有用なプロモーターが含有されている。
【0127】
産物、例えば組換えポリペプチドをコードしているか、または内因性産物の発現を制御し得る核酸配列を含むものである本明細書に記載の核酸配列は、いくつかの型のベクター内にクローニングされ得る。例えば、該核酸は、限定されないが、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドなどのベクター内にクローニングされ得る。特に重要なベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ作成ベクターおよびシークエンシングベクターが挙げられる。諸実施形態において、発現ベクターは細胞にウイルスベクターの形態で供給され得る。ウイルスベクター技術は当該技術分野でよく知られており、例えば、Sambrook et al.,2012,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,volumes 1-4,Cold Spring Harbor Press,NY)ならびに他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスが挙げられる。一般に、好適なベクターは、少なくとも1種類の生物体において機能性である複製起点、プロモーター配列、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位および1種類以上の選択可能マーカーを含有しているものである(例えば、国際公開第01/96584号;国際公開第01/29058号;および米国特許第6,326,193号)。ウイルスから誘導されるベクターは、導入遺伝子の長期の安定な組込みおよび娘細胞内での増殖が可能であるため、長期の遺伝子導入を行うための好適なツールである。
【0128】
また、ベクターには、例えば、分泌を助長するシグナル配列、ポリアデニル化シグナルおよび転写ターミネーター(例えば、ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子のもの)、エピソーム複製および原核生物での複製を可能にするエレメント(例えば、SV40起点およびColE1もしくは当該技術分野で知られた他のもの)および/または選択を可能にするエレメント、例えば、選択マーカーもしくはレポーター遺伝子も含められ得る。
【0129】
一実施形態では、ポリペプチド、例えば、LMMまたは組換えポリペプチドをコードしている核酸配列を含むベクターには、さらに、該ポリペプチド、例えば、該LMMまたは組換えポリペプチドの発現のための転写開始を可能にするためのポリメラーゼの動員を担うプロモーター配列を含める。一実施形態では、本明細書に記載の方法に適したプロモーター配列は、通常、高量の転写を駆動し、したがって、大量コピー数の目的の外来性mRNAを送達させるためにエンハンサーと関連している。ある実施形態では、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)の主要前初期プロモーター(Xia,Bringmann et al.2006)およびSV40プロモーター(Chernajovsky,Mory et al.1984)(どちらも、その同名ウイルスから誘導される)またはこれらから誘導したプロモーターを含むものである。あまり一般的でないいくつかの他のウイルスプロモーター、例えば、ラウス肉腫ウイルス長末端反復配列(RSV-LTR)およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)のLTRも、発現ベクター内に含めて転写を駆動するために成功裡に使用されている(Papadakis,Nicklin et al.2004)。別の実施形態では、特定の哺乳動物内因性プロモーターが、目的遺伝子の構成的転写を駆動するために使用され得る(Pontiller,Gross et al.2008)。CHO特異的(specific)チャイニーズハムスター伸長因子1-α(CHEF1α)プロモーターでは高収率がもたらされており、ウイルスベースの配列に代わるものである(Deer,Allison 2004)。プロモーターに加えて、本明細書に記載のベクターには、さらに、上記のエンハンサー領域;コアプロモーターに近位であり、転写因子を動員して転写速度を上方調節し得る特定のヌクレオチドモチーフ領域が含められる(Riethoven 2010)。プロモーター配列と同様、このような領域は多くの場合、ウイルスから誘導されたものであり、プロモーター配列、例えばhCMVおよびSV40エンハンサー配列内に包含されているか、または追加で含めたもの、例えばアデノウイルス由来配列であってもよい(Gaillet,Gilbert et al.2007)。
【0130】
一実施形態では、本明細書に記載の産物、例えば、ポリペプチド、例えば組換えポリペプチドをコードしている核酸配列を含むベクターには、さらに、選択マーカーをコードしている核酸配列を含める。一実施形態では、選択可能マーカーは、グルタミンシンテターゼ(GS);ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、例えば、メトトレキサート(MTX)に対する耐性を付与する酵素;または抗生物質マーカー、例えば、抗生物質、例えば:ハイグロマイシン、ネオマイシン(G418)、ゼオシン、ピューロマイシンもしくはブラストサイジンに対する耐性を付与する酵素を含む。別の実施形態では、選択マーカーは、Selexis選択系(例えば、SUREtechnology Platform(商標)およびSelexis Genetic Elements(商標),Selexis SAから市販)またはCatalant選択系を含むもの、または該選択系と適合性であるものである。
【0131】
一実施形態では、本明細書に記載の組換え産物をコードしている核酸配列を含むベクターに、本明細書に記載の組換え産物をコードしている核酸を含む(1または複数の)細胞の同定に有用な選択マーカーを含める。別の実施形態では、選択マーカーは、本明細書に記載のような、組換え産物をコードしている核酸配列のゲノム内への組込みを含む(1または複数の)細胞の同定に有用なものである。組換えタンパク質をコードしている核酸配列が組み込まれた(1または複数の)細胞の同定は、産物を安定的に発現する細胞または細胞株の選択および操作に有用であり得る。
【0132】
使用のための好適なベクターは市販されており、GS Expression System(商標)、GS Xceed(商標) Gene Expression System、またはPotelligent(登録商標)CHOK1SV技術(Lonza Biologics,Incから入手可能)と関連しているベクター、例えば、Fan et al.,Pharm.Bioprocess.(2013);1(5):487-502(これは、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のようなベクターが挙げられる。GS発現ベクターは、GS遺伝子またはその機能性断片(例えば、GSミニ遺伝子)と、1つ以上、例えば、1つ、2つまたは3つまたはそれ以上の目的遺伝子、例えば、本明細書に記載の組換えポリペプチドをコードしている核酸の発現のための非常に効率的な転写カセットとを含むものである。GSミニ遺伝子は、ゲノムCHO GS遺伝子のイントロン6を含むもの、例えば該イントロン6からなるものである。一実施形態では、GSベクターは、SV40Lプロモーターに作動可能に連結されたGS遺伝子と1つまたは2つのポリAシグナルを含むものである。別の実施形態では、GSベクターは、SV40Eプロモーターに作動可能に連結されたGS遺伝子、SV40スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナルを含むものである。かかる実施形態では、例えば、目的遺伝子または本明細書に記載の組換えポリペプチドの発現のための転写カセットは、hCMV-MIEプロモーターおよび第1イントロンを含むhCMV-MIE遺伝子由来の5’非翻訳配列を含むものである。GS発現ベクターベースの他のベクターを構築してもよく、例えば、この場合、GS遺伝子の代わりに他の選択マーカーが本明細書に記載の発現ベクターにおいて使用される。
【0133】
本明細書に記載の方法における使用に適したベクターとしては、限定されないが、他の市販のベクター、例えばpcDNA3.1/Zeo、pcDNA3.1/CAT、pcDNA3.3TOPO(Thermo Fisher,以前はInvitrogen);pTarget、HaloTag(Promega);pUC57(GenScript);pFLAG-CMV(Sigma-Aldrich);pCMV6(Origene);pEE12もしくはpEE14(Lonza Biologics)またはpBK-CMV/pCMV-3Tag-7/pCMV-Tag2B(Stratagene)が挙げられる。
【0134】
細胞および細胞培養
一態様では、本開示は、本明細書に記載の産物、例えば組換えポリペプチドを産生する細胞または細胞株を評価、分類、同定、選択または作製するための方法に関する。別の態様では、本開示は、産生性および産物の品質が改善された、例えば増大した細胞または細胞株を評価、分類、同定、選択または作製するための方法および組成物に関する。
【0135】
諸実施形態において、該細胞は哺乳動物細胞である。他の実施形態では、該細胞が哺乳動物細胞以外の細胞である。ある実施形態では、該細胞が、マウス、ラット、チャイニーズハムスター、シリアンハムスター、サル、類人猿、イヌ、ウマ、フェレットまたはネコに由来するものである。諸実施形態において、該細胞は哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞または齧歯類の細胞、例えば、ハムスター細胞、マウス細胞またはラット細胞である。別の実施形態では、該細胞が、アヒル、オウム、魚類、昆虫、植物、真菌または酵母に由来するものである。一実施形態では、該細胞がアルケオバクテリア(Archaebacteria)である。ある実施形態では、該細胞がアクチノバクテリア(Actinobacteria)の一種、例えば、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)である。
【0136】
一実施形態では、該細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。一実施形態では、該細胞がCHO-K1細胞、CHO-K1 SV細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHOS、CHO GSノックアウト細胞、CHO FUT8 GSノックアウト細胞、CHOZN、またはCHOに由来する細胞である。CHO GSノックアウト細胞(例えば、GSKO細胞)は、例えば、CHO-K1SV GSノックアウト細胞(Lonza Biologics,Inc.)である。CHO FUT8ノックアウト細胞は、例えば、Potelligent(登録商標)CHOK1 SV(Lonza Biologics,Inc.)である。
【0137】
別の実施形態では、該細胞がHeIa、HEK293、HT1080、H9、HepG2、MCF7、ジャーカット、NIH3T3、PC12、PER.C6、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞)、VERO、SP2/0、NS0、YB2/0、Y0、EB66、C127、L細胞、COS、例えばCOS1およびCOS7、QC1-3、CHOK1、CHOK1SV、Potelligent CHOK1SV、CHO GSノックアウト型、CHOK1SV GS-KO、CHOS、CHO DG44、CHO DXB11ならびにCHOZN、またはこれらから誘導される任意の細胞である。一実施形態では、該細胞が幹細胞である。一実施形態では、該細胞が本明細書に記載の任意の細胞の分化形態である。一実施形態では、該細胞が任意の初代培養細胞から誘導される細胞である。
【0138】
ある実施形態では、該細胞が、組換えポリペプチドをコードしている外来性核酸を含む、例えば、組換えポリペプチド、例えば表1または2から選択される組換えポリペプチドを発現する、本明細書に記載の細胞のいずれか1種類である。
【0139】
ある実施形態では、細胞培養がバッチ培養、フェドバッチ培養、ドロー・アンド・フィル(draw and fill)方式の培養または連続式培養として行われる。ある実施形態では、細胞培養物が浮遊培養物である。一実施形態では、該細胞または細胞培養物が、組換えポリペプチドの発現のためにインビボで配される、例えば、モデル生物体内またはヒト被験体内に配される。
【0140】
一実施形態では、培養培地は無血清である。無血清およびタンパク質フリー培地は、例えばLonza Biologicsで市販されている。
【0141】
哺乳動物細胞株のための好適な培地および培養方法は、例えば米国特許第5,633,162号に記載のように、当該技術分野でよく知られている。具体的な細胞型のニーズに適合されている実験用フラスコまたは低密度での細胞培養のための標準的な細胞培養培地の例は、例えば:ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地(Morre,G.,The Journal of the American Medical Association,199,p.519 f.1967)、L-15培地(Leibovitz,A.et al.,Amer.J.of Hygiene,78,1p.173 ff,1963)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(MEM)、ハムF12培地(Ham,R.et al.,Proc.Natl.Acad.Sc.53,p288 ff.1965)またはアルブミン、トランスフェリンおよびレシチンなしのイスコフ改変DMEM(Iscoves et al.,J.Exp.med.1,p.923 ff.,1978)である。例えば、ハムF10またはF12培地は、CHO細胞培養のために特別に設計されたものである。CHO細胞培養に特別に適合させた他の培地は欧州特許第481791号に記載されている。かかる培養培地にはウシ胎仔血清(fetal bovine serum)(FBS,fetal calf serum FCSとも称される)が補給されている場合があり得ることが知られており、後者は、多くのホルモンおよび成長因子の天然供給源となる。哺乳動物細胞の細胞培養は、最近では科学教本およびマニュアルに充分に説明された常套作業であり、例えば、R.Ian Fresney,Culture of Animal cells,manual,4th edition,Wiley-Liss/N.Y.,2000に詳細に示されている。
【0142】
他の好適な培養方法は当業者にわかり、組換えポリペプチド産物および使用される宿主細胞に依存し得る。細胞によって発現される組換えポリペプチドの発現および産生に適した条件を決定または最適化することは当業者の技能の範囲内である。
【0143】
一態様では、該細胞または細胞株は、産物、例えば組換えポリペプチドをコードしている外来性核酸を含むものである。ある実施形態では、該細胞または細胞株は、該産物、例えば、治療用産物または診断用産物を発現するものである。所望のポリペプチドまたはタンパク質を発現するように細胞を遺伝子修飾または遺伝子操作するための方法は当該技術分野でよく知られており、例えば、トランスフェクション、形質導入(例えば、ウイルスによる形質導入)またはエレクトロポレーションが挙げられる。
【0144】
本明細書に記載の核酸、例えば、外来性核酸またはベクターを宿主細胞内に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子ボンバードメント、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクターおよび/または外来性核酸を含む細胞を産生させるための方法は当該技術分野でよく知られている。例えば、Sambrook et al.,2012,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,volumes 1-4,Cold Spring Harbor Press,NY)を参照のこと。
【0145】
本明細書に記載の核酸、例えば、外来性核酸またはベクターを宿主細胞内に導入するための化学的手段としては、コロイド分散系、例えば、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビーズ、ならびに脂質ベースの系、例えば、水中油型エマルジョン、ミセル、混合型ミセルおよびリポソームが挙げられる。インビトロおよびインビボでの送達媒体としての使用のための例示的なコロイド系はリポソーム(例えば、人工膜ベシクル)である。当該技術分野の水準の核酸の標的化送達の他の方法、例えば、標的化ナノ粒子を用いるポリヌクレオチドの送達または他の適当なサブミクロンサイズの送達系も利用可能である。
【0146】
諸実施形態において、宿主細胞の核酸内、例えば、宿主細胞のゲノムまたは染色体核酸内への外来性核酸の組込みが所望される。宿主細胞のゲノム内への外来性核酸の組込みが起こったかどうかを調べるための方法としてはGS/MSX選択法が挙げられ得る。GS/MSX選択法は、組換えGS遺伝子によるグルタミン栄養要求性の相補を使用し、細胞からのタンパク質の高レベル発現により選択するものである。簡単には、GS/MSX選択法は、グルタミンシンテターゼをコードしている核酸を、組換えポリペプチド産物をコードしている外来性核酸を含むベクターに含めることを含むものである。メチオニンスルホキシイミン(MSX)の投与により、該組換えポリペプチドとGSの両方をコードしている外来性核酸がゲノム内に安定的に組み込まれた細胞が選択される。GSは一部の宿主細胞、例えばCHO細胞によって内因的に発現され得るため、MSXでの選択の濃度および持続期間は、組換えポリペプチド産物をコードしている外来性核酸の宿主ゲノム内への安定な組込みを有する高産生性細胞が同定されるように最適化され得る。GS選択およびその系は、Fan et al.,Pharm.Bioprocess.(2013);1(5):487-502(これは、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)にさらに説明されている。
【0147】
外来性核酸が宿主細胞のゲノム内に安定的に組み込まれた細胞を同定および選択するための他の方法としては、限定されないが、該外来性核酸にレポーター遺伝子を含めて細胞内における該レポーター遺伝子の存在を評価し、PCR解析して該外来性核酸の検出を行うことが挙げられ得る。
【0148】
一実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて選択、同定または作成される細胞は、組換えポリペプチドをコードしている外来性核酸の安定な発現、例えば組込みについて選択法のみを用いて選択された細胞より高収率でタンパク質産物を産生し得るものである。ある実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて選択、同定または作成される細胞は、タンパク質分解阻害薬と接触させていない細胞、または組換えポリペプチドをコードしている外来性核酸の安定な発現、例えば組込みでのみ選択した細胞と比べて2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍またはそれ以上の産物、例えば組換えポリペプチドを産生する。
【0149】
細胞の評価、分類、選択または同定
一態様では、本開示において、細胞、例えば候補細胞を、産物の産生能、例えば組換えポリペプチドの産生能について評価するための方法を取り上げて記載する。かかる評価の結果により、高産生の細胞または細胞株である細胞または細胞株を作成するための細胞の選択または同定に有用な情報がもたらされ得る。別の実施形態では、本明細書に記載の評価に応答して、該細胞または細胞株が、例えば、高産生能を有する細胞または細胞株であると分類され得る。
【0150】
高産生の細胞または細胞株は、参照細胞または本明細書に記載の方法によって選択もしくは作成されたものでない細胞と比べてより高収率で組換えポリペプチド産物を産生し得るものである。ある実施形態では、高産生細胞株は、25mg/L、50mg/L、100mg/L、200mg/L、300mg/L、400mg/L、500mg/L、600g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1g/L、2g/L、3g/L、4g/L、5g/L、10g/L、15g/L、20g/L、25g/L、30g/L、35g/L、40g/L、45g/L、50g/L、55g/L、60g/L、65g/L、70g/L、75g/L、80g/L、85g/L、90g/L、95g/Lまたは100g/Lまたはそれ以上の産物、例えば組換えポリペプチド産物を産生し得るものである。ある実施形態では、高産生細胞株は、100mg/L、200mg/L、300mg/L、400mg/L、500mg/L、600g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1g/L、2g/L、3g/L、4g/L、5g/L、10g/L、15g/L、20g/L、25g/L、30g/L、35g/L、40g/L、45g/L、50g/L、55g/L、60g/L、65g/L、70g/L、75g/L、80g/L、85g/L、90g/L、95g/Lまたは100g/Lまたはそれ以上の産物、例えば組換えポリペプチド産物を産生するものである。産生される産物の数量は、細胞の型、例えば種および発現される組換えポリペプチドに応じて異なり得る。一例として、高産生細胞は、少なくとも1g/L、2g/L、5g/L、10g/L、15g/L、20g/Lまたは25g/Lまたはそれ以上の例えば本明細書に記載の組換えポリペプチドを産生し得るものである。
【0151】
産物の発現が困難な実施形態では、高産生細胞が産生する産物の濃度が低くなる、例えば1g/L未満となる場合があり得るが、産生性は、タンパク質分解阻害薬と接触させていない細胞で観察されるものより高い、または増大する。例えば、同定または選択された該細胞によって産生される産物のレベル、量または数量は、タンパク質分解阻害薬と接触させていない細胞によって産生されるレベル、量または数量と比べて例えば1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍または100倍またはそれ以上増大する。
【0152】
細胞を評価するための本明細書に記載の方法は、細胞機能に関する1つ以上のパラメータに対するタンパク質分解阻害薬の効果を評価することを含むものである。細胞機能に関するパラメータとしては、限定されないが、細胞生存、培養物のバイアビリティ、増殖能、産物の産生能、およびタンパク質分解が挙げられる。諸実施形態において、細胞機能に関する1つ以上のパラメータに対するタンパク質分解阻害薬の効果の値は、細胞機能に関するパラメータに対する該阻害薬の効果を測定するための、例えば、細胞を該阻害薬と接触させることによって該細胞機能に関するパラメータのうちの1つの増大または低下がもたらされるかどうかを調べるための参照値と比較される。一実施形態では、細胞は、細胞機能に関するパラメータのうちの1つ以上の増大または低下の測定に応じて産生細胞株として開発するために選択または同定され得る。一実施形態では、細胞は、細胞機能に関するパラメータのうちの1つ以上の増大または低下の測定に応じて高産生細胞として、例えば、高収率で産物を産生し得る細胞として同定され得る。
【0153】
本明細書に記載の任意の実施形態において、参照値は、参照細胞、例えば所定の産生性を有する細胞の細胞機能に関するパラメータに対するタンパク質分解阻害薬の効果の値であり得る。代替的または付加的に、本明細書に記載の任意の実施形態において、参照値は、試験対象のものと同じ細胞であって、該阻害薬と接触させていない細胞の細胞機能に関するパラメータの値(例えば、該パラメータの値は、細胞をタンパク質分解阻害薬と接触させる前に測定されたものである)、またはタンパク質分解阻害薬と接触させていない個別のアリコートの細胞の細胞機能に関するパラメータの値であり得る。
【0154】
一実施形態では、細胞生存は、細胞のアポトーシス、例えば、本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬の濃度に応答して致死または死滅した細胞の数または量を測定または定量することによって測定され得る。細胞生存の増大は、タンパク質分解阻害薬と接触させた後に残存している細胞、例えばインタクトな細胞または生細胞の数の1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍または5倍またはそれ以上の増大を含む。あるいはまた、細胞生存の増大は、タンパク質分解阻害薬と接触させた後のアポトーシス細胞の数の1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の減少を含む。細胞生存またはアポトーシスを検出するための方法は当該技術分野で知られており(例えば、Annexin Vアッセイ)、本明細書において実施例に記載している。
【0155】
一実施形態では、培養物のバイアビリティは、生細胞、例えば、培養物もしくは細胞集団中の生細胞、またはバイアビリティと関連する特徴を有する細胞、例えば、増殖マーカー、インタクトなDNAを有する細胞、もしくはアポトーシスマーカーを示さない細胞の数または量を測定または定量することによって測定され得る。培養物のバイアビリティの増大は、タンパク質分解阻害薬と接触させた後に残存している細胞、例えばインタクトな細胞または生細胞の数の1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍または5倍またはそれ以上の増大を含む。培養物のバイアビリティを調べるための方法は当該技術分野で知られており、本明細書において実施例1および3に記載している。培養物のバイアビリティを評価するための他の方法としては、限定されないが、トリパンブルー排除法の後、血球計算器またはVi-CELL(Beckman-Coulter)を用いた計数が挙げられる。培養物のバイアビリティを評価するための他の方法はバイアブルなバイオマスの測定を含むものであってもよく、高周波のインピーダンスまたは静電容量の使用(例えば、Carvell and Dowd,2006,Cytotechnology,50:35-48に記載のような)、またはラマン分光法の使用(例えば、Moretto et al.,2011,American Pharmaceutical Review,Vol.14に記載のような)を含むものである。
【0156】
一実施形態では、細胞の増殖能は、細胞の数、細胞の倍加または細胞の増殖速度を定量または計数することによって測定され得る。あるいはまた、増殖している細胞は、細胞のゲノム内容物(例えば、複製中のDNA)の解析、例えばフローサイトメトリー解析によって、または細胞周期に関与している増殖マーカー、例えば、Ki67、リン酸化サイクリン-CDK複合体の存在によって同定され得る。増殖能の増大は、細胞をタンパク質分解阻害薬と接触させた後の細胞の数または増殖マーカーを発現している細胞の数の1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍または5倍またはそれ以上の増大を含む。あるいはまた、増殖能の増大は、細胞をタンパク質分解阻害薬と接触させた後の細胞の倍加または増殖速度の1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍または5倍またはそれ以上の増大を含む。
【0157】
本明細書において提供する方法は、組換えポリペプチド、例えば産物の産生能が改善された細胞または細胞株の同定、選択または作製に有用である。一実施形態では、本明細書において提供する方法はまた、改善された品質の組換えポリペプチドを産生する細胞または細胞株の同定、選択または作製にも有用である。
【0158】
一実施形態では、細胞の産物産生能は、産生された産物の量または濃度を測定または定量することによって測定され得る。産物の産生能の増大は、細胞をタンパク質分解阻害薬と接触させた後のタンパク質産生の1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍または5倍またはそれ以上の増大を含む。
【0159】
一実施形態では、産物、例えば発現された組換えポリペプチドの品質は、適正にフォールディングされた産物、機能性産物または非凝集産物の量または濃度を測定または定量することによって測定され得る。細胞によって産生された産物の品質アップは、細胞をタンパク質分解阻害薬と接触させた後の適正にフォールディングされた産物、機能性産物または非凝集産物、例えば発現された組換えポリペプチドの量または濃度の1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍または5倍またはそれ以上のアップを含む。
【0160】
タンパク質産生の増大の測定方法は当業者によく知られている。例えば、組換えタンパク質産生の増大は、組織培養培地中における力価をELISAによって測定することにより小規模で測定され得よう(Smales et al.2004 Biotechnology Bioengineering 88:474-488)。また、これを、例えば培地中の組換えモノクローナル抗体(mAb)濃度のハイスループット測定のためのForteBio Octetによって定量的に(Mason et al.2012 Biotechnology Progress 28:846-855)またはプロテインA HPLCによって大規模で(Stansfield et al.2007 Biotechnology Bioengineering 97:410-424)測定することもできる。本明細書に記載の産物、例えば組換えポリペプチドの産生の測定のための他の方法としては、細胞内の産物、特に組換えポリペプチドの比生成速度(qP)および/またはバイアブル細胞濃度(IVC)の時間積分が挙げられ得る。培養培地中のポリペプチドの濃度で規定される組換えポリペプチドの産生または産生性は、Porter et al.(Porter et al.2010 Biotechnology Progress 26:1446-1455)に従って計算されるこれらの2つのパラメータ(qPとIVC)の関数である。また、タンパク質産生を測定するための方法は、本明細書に示した実施例、例えば実施例1および5にもさらに詳細に記載している。
【0161】
本明細書に記載のようにして作成された細胞株によって産生された産物の品質の改善を測定するための方法は当該技術分野で知られている。一実施形態では、発現された組換えポリペプチド産物の一次配列の忠実度を調べるための方法、例えば質量分析が当該技術分野で知られている。適正にフォールディングされた産物、例えば、発現された組換えポリペプチドの量または濃度の増大は円偏光二色性によって、または発現された組換えポリペプチドの内部蛍光を評価することによって測定され得る。機能性産物の量または濃度の増大は、組換えポリペプチドの実体に応じて種々の機能アッセイを用いて試験され得る。例えば、抗体は、ELISAまたは他の免疫親和性アッセイによって試験され得る。
【0162】
細胞株の作製および組換えポリペプチドの産生のための方法
哺乳動物選択系および微生物選択系の両方における当該技術分野の現在の水準は、DNAからRNAへの転写レベルで選択圧を加えることである。目的遺伝子は選択マーカーと緊密に関連していて選択マーカーを高レベル発現させ、目的遺伝子の高発現がもたらされる可能性が高い。選択マーカーを高レベルで発現する細胞は生存可能および増殖可能であり、発現しない細胞は生存および増殖する可能性が低い、例えば、アポトーシスを受ける、および/または死滅する。このようにして、細胞集団は、選択マーカーを発現し、暗に目的遺伝子を高レベルで発現する細胞が富化され得る。この方法は、まっすぐな(straightforward)タンパク質を発現させるのに非常に成功裡であることが示されている。
【0163】
しかしながら、一部のタンパク質では、発現の障壁はDNAからRNAへの転写ではなく、むしろタンパク質の正しいフォールディングおよび必要な場合は翻訳後修飾である。転写を標的とする現在の選択系は、タンパク質の産生および正しいプロセッシングが良好な細胞株の選択のために圧力を加えるものではない。実際、高レベルの転写は、このようなタンパク質を産生およびプロセッシングする細胞の能力に過負荷となることにより、下流のタンパク質合成工程に問題が生じ得る。タンパク質産生の別の段階で選択圧を加える選択系の使用により、選択のストリンジェンシーが大きく改善され得る。かかる選択系は、その作用様式が、遺伝子の転写レベルで機能する当該技術分野の現在の水準の選択系とは独立しているため、オルトゴナル選択系と称され得る。また、このような代替的な選択系は互いに独立して機能し得、したがって互いにオルトゴナルであり得る。例えば、転写、翻訳、翻訳後修飾および分泌を標的とする選択系はすべて、作用様式において互いに独立しているものであり得よう。選択のストリンジェンシーを高めるため、および選択において多数の標的をヒットさせるためにオルトゴナル選択系を一緒に使用してもよい。
【0164】
本発明は、タンパク質のフォールディングレベルおよび翻訳後修飾レベルで機能するオルトゴナル選択系の一例である。しかしながら、転写の下流のタンパク質発現工程における機能発揮が不充分な集団の細胞の増殖を阻害するという同じ広い原理で作用するオルトゴナル選択系の他の例も構想され得る。
【0165】
一態様では、本開示により、産物、例えば組換えポリペプチドを産生させるための細胞または細胞株を作成するための方法を提供する。別の態様では、本開示により、本明細書に記載の方法を用いて同定、分類、選択または作成された細胞を用いて本明細書に記載の産物、例えば組換えポリペプチドを産生させるための方法を提供する。前述の方法はいずれも、本明細書に記載の細胞を、例えば該細胞をタンパク質分解阻害薬と接触させ、産物、例えば組換えポリペプチドの高産生のための受容能力を有する細胞を同定または作製することにより評価、同定、分類または選択することを含むものである。本明細書に記載の方法により、組換えポリペプチドの産生、例えば、発現および/または分泌が増大する。
【0166】
理論に拘束されることを望まないが、高産生性の能力を有する細胞はタンパク質分解阻害薬に対する感受性が低いと考えられ、したがって、該細胞を、本明細書に記載の外来性核酸を含むタンパク質分解阻害薬と接触させることにより、高産生性の能力を有する細胞の選択がもたらされると考えられる。
【0167】
一態様では、2つ以上の選択工程、例えば、外来性核酸の安定な組込みでの選択およびタンパク質分解の阻害に対する感受性での選択を使用することにより、1つの選択工程によって得られた細胞より高産生性の細胞および細胞株がもたらされる。したがって、本開示において:
i)組換えポリペプチド産物をコードしている外来性核酸を含む細胞を準備すること;
ii)第1選択圧を与えること、例えば、第1特性での選択、例えば該外来性核酸の安定な組込みを有する細胞の選択;および
iii)第2選択圧を与えること、例えば、第2の特性での選択、例えばタンパク質分解の阻害に対して低感受性を有する細胞の選択を行うこと
を含む、高産生性の細胞を作成するための方法を取り上げて記載する。
【0168】
諸実施形態において、第1選択圧を、第2選択圧を与える前、与えると同時または与えた後に与える。一実施形態では、第1選択圧を第2選択圧の前に与える。一実施形態では、第1選択圧を第2選択圧の開始前に終了させる。一実施形態では、第2選択圧を第1選択圧の前に与える。一実施形態では、第2選択圧を第1選択圧の開始前に終了させる。一実施形態では、第1選択圧と第2選択圧を同時に与える。一実施形態では、第1および第2選択圧を与えることが完全に、または一部重複する。一実施形態では、第2選択圧が、第1選択圧の終了の12時間、24時間、48時間、72時間、96時間または168時間またはそれ以上前に開始される。一実施形態では、第2選択圧が、第1選択圧の終了の12時間、24時間、48時間、72時間、96時間または168時間またはそれ以上後に開始される。
【0169】
ある実施形態では、第1選択圧は、外来性核酸の安定な組込みでの選択、例えばGS/MSX選択を含む。ある実施形態では、第2選択圧は、タンパク質分解の阻害に対する感受性での選択を含み、該細胞をタンパク質分解阻害薬と接触させることを含む。ある実施形態では、タンパク質分解阻害薬は、外来性核酸のゲノム組込みを含む細胞の同定を含む選択圧の前、該選択圧と同時または該選択圧の後に投与される。ある実施形態では、タンパク質分解阻害薬は、外来性核酸のゲノム組込みを含む細胞を同定するための先の選択工程の終了の12時間、24時間、48時間、72時間、96時間または168時間またはそれ以上後に投与される。
【0170】
選択圧は、組換えポリペプチドを産生する改善された受容能力を有する、および/または改善された品質を有する組換えポリペプチドを産生する能力を有する細胞が選択される様式で与えられる。一実施形態では、各選択圧、例えば本明細書に記載の第1および/または第2選択圧は少なくとも24時間、48時間、72時間、96時間または120時間または168時間、与えられる。本明細書に記載のように、タンパク質分解阻害薬の濃度は、本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬の存在下で培養した後、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%の培養物のバイアビリティをもたらすもの、例えば、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%の数の細胞を残存、例えば生存させるものである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法により、例えば、特に2つ以上の選択圧を与えた後、該選択後、総細胞の20%未満、例えば、15%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%またはそれより少ない残存がもたらされる。本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬の存在下での選択後の培養物のバイアビリティまたは細胞生存のパーセンテージは、タンパク質分解阻害薬の存在なしでの培養物のバイアビリティまたは細胞生存のパーセンテージと比較して測定される。本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬の存在下での培養後の残存バイアブル細胞は、細胞株を作成するためにさらに培養され得る。
【0171】
諸実施形態において、2つの選択圧、例えば、外来性核酸を含む安定な組込みの選択およびタンパク質分解阻害薬に対する低感受性での選択の後に残存するバイアブル細胞は、タンパク質産生について増大した受容能力を有する。例えば、タンパク質産生について増大した受容能力を有する細胞は、1つしか選択圧を与えなかった細胞またはなんらの選択圧も与えなかった細胞と比べて2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍またはそれ以上、あるいは少なくとも1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上の産物、例えば組換えポリペプチドを産生する。
【0172】
諸実施形態において、本明細書に記載の2つの選択圧後に残存するバイアブル細胞は、改善された品質で発現される組換えポリペプチドを産生する。例えば、産物の改善された品質は:より均質な産物、適正にフォールディングされて発現された組換えポリペプチドの割合の増加、または機能性組換えポリペプチドの割合の増加、凝集した組換えポリペプチドの割合の低下のうちの1つ以上を含む。例えば、改善された品質の産物を産生する細胞は、1つしか選択圧を与えなかった細胞またはなんらの選択圧も与えなかった細胞と比べて2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍またはそれ以上、あるいは少なくとも1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上の適正にフォールディングされた組換えポリペプチドまたは機能性組換えポリペプチドを産生する。
【0173】
一実施形態では、改善された産生能を有する、または改善された品質の産物の産生を有する細胞株を作成するための本明細書において使用される方法は、本明細書に記載の、例えば表1または2から選択される組換えポリペプチドを発現する既存の細胞株または市販の細胞株で有用である。かかる方法では、細胞は、改善された産生能または改善された品質の産物を有する細胞が同定されるのに適した有効濃度の本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬の存在下で、例えば、本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬の存在下で培養した後に少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%の培養物のバイアビリティがもたらされる濃度、例えば、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%の数の細胞を残存、例えば生存させる濃度のタンパク質分解阻害薬の存在下で培養される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬の存在下での細胞の培養により、総細胞の20%未満、例えば、15%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%またはそれより少ない残存が、本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬の存在下での培養後にもたらされる。本明細書に記載のタンパク質分解阻害薬の存在下での培養後の残存バイアブル細胞は、細胞株、例えば改善された細胞株を作成するためにさらに培養され得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、産物の発現、例えば産物の転写、翻訳、および/または分泌、あるいは産物の品質、例えば一次配列の適正なフォールディングおよび/または忠実度を改善するためのさらなる工程が行われ得る。かかるさらなる工程としては、産物の発現または産物の品質を改善する因子を導入することが挙げられる。ある実施形態では、産物の発現または産物の品質を改善する因子は、タンパク質のフォールディングを改善する小分子、ポリペプチドまたは該ポリペプチド、例えばシャペロンタンパク質をコードしている核酸であり得る。一実施形態では、該核酸は、阻害性核酸、例えば、マイクロRNAまたはlncRNAを含む。ある実施形態では、タンパク質のフォールディングを補助する因子は、シャペロンタンパク質、例えば、BiP、PD1またはERO1をコードしている核酸を含む(Chakravarthi & Bulleid 2004;Borth et al.2005;Davis et al.2000)。産物の収率および品質を改善するための他のさらなる工程としては、転写因子、例えばSBP1およびATF6の過剰発現(Tigges & Fussenegger 2006;Cain et al.2013;Ku et al.2008)ならびにレクチン結合シャペロンタンパク質、例えばカルネキシンおよびカルレティキュリンの過剰発現(Chung et al.2004)が挙げられる。タンパク質のフォールディングおよび産物の品質およびタンパク質の収率を補助または改善する本明細書に記載の因子の過剰発現は、該タンパク質をコードしている外来性核酸の導入によって行われ得る。別の実施形態では、産物の発現または産物の品質を改善する因子は、産物の発現または産物の品質を高めるために細胞培養物に添加され得る小分子である。一実施形態では、細胞の培養は、該細胞が通常培養される温度より低い温度、例えば、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃低い温度である。
【0175】
本明細書に記載の任意の方法はさらに、高産生を有する細胞または高品質の産物を産生する細胞を同定するためのさらなる選択工程を含むものであり得る。例えば、FACS選択が、所望の特徴、例えば、タンパク質フォールディングタンパク質、例えばシャペロンの高発現;または産物の改善された発現を有する特定の細胞を選択および単離するために使用され得る。
【0176】
一態様では、本開示により、組換えポリペプチド産物を回収する(「recover」または「retrieve」)ための工程を含む方法を提供する。組換えポリペプチドが細胞から分泌される実施形態では、該方法が、組換えポリペプチドを細胞、細胞集団、または細胞を培養した培養培地から回収、収集または分離するための工程を含むものであり得る。組換えポリペプチドが細胞内に存在している実施形態では、組換えポリペプチド産物の精製は、細胞によって産生された組換えポリペプチドを、以下の任意のもの:宿主細胞内のタンパク質、宿主細胞内の核酸、宿主細胞内の脂質および/または宿主細胞由来の他の残屑のうちの1種類以上から分離することを含む。
【0177】
諸実施形態において、本明細書に記載の方法により実質的に純粋なタンパク質産物がもたらされる。本明細書で用いる場合、「実質的に純粋な」とは、発熱性物質が実質的にないこと、核酸が実質的にないこと、および/または内因性細胞内タンパク質酵素ならびに宿主細胞由来の成分、例えば、ポリメラーゼ、リボソームタンパク質およびシャペロンタンパク質が実質的にないことを意図する。実質的に純粋なタンパク質産物に含有されている宿主細胞由来の内因性タンパク質、核酸または他の巨大分子の夾雑は、例えば25%未満、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%である。
【0178】
産物、例えば組換えポリペプチドの回収および精製のための方法は当該技術分野で充分に確立されている。組換えポリペプチド産物の回収には、物理的または化学的または物理化学的方法が使用される。物理的または化学的または物理化学的方法は、濾過法、遠心分離法、超遠心分離法、抽出法、凍結乾燥法、沈降法、晶析法、クロマトグラフィー法またはこれらの2種類以上の方法の組合せであり得る。ある実施形態では、クロマトグラフィー法は、サイズ排除クロマトグラフィー(もしくはゲル濾過)、イオン交換クロマトグラフィー、例えばアニオンもしくはカチオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび/またはマルチモードクロマトグラフィーのうちの1種類以上を含む。
【0179】
[実施例]
本発明を、以下の実験による実施例を参照することにより詳細にさらに説明する。本実施例は例示の目的で示しているにすぎず、特に記載のない限り、限定を意図するものではない。したがって、本発明は、以下の実施例に対する限定であると決して解釈されるべきでなく、本明細書に示した教示の結果、明らかとなる任意のあらゆる変形例を包含していると解釈されたい。
【0180】
さらに記載しないが、当業者は、先の説明および以下の実例を示す実施例を用いて、本発明の化合物を作製および使用すること、ならびに請求項に記載の方法を実施することができると考える。以下の実際の実施例は、本発明の種々の態様を具体的に示すものであり、本開示の残部をなんら限定するものと解釈されるべきでない。
【0181】
[実施例1]:方法
本実施例において示す方法およびアッセイは、細胞機能に関するパラメータ、例えば細胞生存および培養物のバイアビリティに対するタンパク質分解阻害薬の効果の評価に関するものである。この方法およびアッセイを、以下の実施例に記載する実験で使用した。
【0182】
96DWP形式での阻害薬殺菌曲線
深型96ウェルプレート(Nunc)に4×10個の細胞/mlを300μl/ウェルでプロテアソームおよびERAD阻害薬の解析のために播種した。各阻害薬について各細胞株パネルに対して三連のウェルを調製し、1μlの各阻害薬ストック液を各ウェルに添加し、0.05μMのエポキソミシン、0.5μMのMG-132および10μMのイーヤレスタチンIの終濃度にした。プレートを36.5℃にて5%CO2および90%湿度で、375rpmの振盪速度を用いて適切な24時間の時間点までインキュベートした。ウェル容量のうちの100μlを900μlのPBSと合わせ、細胞の計数を、ViCell装置を用いて行った。残りの200μlを1000rpmで5分間、遠心分離し、上清みおよびペレットを、さらなる解析の前に-20℃で保存した。
【0183】
プロテアソーム活性の解析
細胞ペレットを所要の細胞株の5×10個の細胞で、所要の培養液量の1000rpmでの5分間の遠心分離によって調製した。次いでペレットを、活性の評価を行うまで-20℃で保存した。ペレットを溶解バッファー(20mM HEPES NaOH pH 7.2,100mM NaCl,10mM Na β-グリセロホスフェート,0.5% w/v Triton X-100)中に再懸濁させた。次いでBradfordアッセイを行い、ライセート材料中の総タンパク質を調べ、各反応で100μgの総タンパク質を得るための所要容量を計算した。活性プローブ評価およびその後の阻害薬刺激のために充分な材料を確保する必要がある場合は複数のペレットをプールした。Bradfordアッセイをプールした材料で繰り返した。100μgのタンパク質を1μlのプローブまたはDMSOと合わせ、反応容量を溶解バッファーで200μlにした。混合物をボルテックスし、暗所で(ホイルで覆った)室温にて1時間、振盪した。次いで1mlの氷冷100%アセトンを添加し、ボルテックスし、次いで13000rpmにて5分間スピンした。アセトンを除去し、ペレットを20μlの2×SDS試料バッファー中に再懸濁させた。試料を、時々振盪しながら95℃で5分間加熱した後、13000rpmで短時間の遠心分離を行い、次いで、さらなる解析の前に-20℃で保存した。エポキソミシンでの阻害薬刺激を、同じライセート材料由来の試料に対して繰り返した。先のものと同じ様式で100μgのタンパク質と1μlのプローブを用いて最終反応容量200μlで反応ミックスを調製した。しかしながら、反応液へのプローブの添加の前に、1μlのエポキソミシンを50μMまたは20μMで添加し、反応液を、振盪しながら暗所で室温にて30分間インキュベートした。阻害薬とのプレインキュベーション後、活性プローブ評価のために先のようにプローブを添加し、反応を継続した。試料は、先のようにアセトン沈殿法を用いて調製し、解析を行うまで-20℃で保存した。20μl容量を、5%の濃縮ゲルを有する14%SDS-PAGE分離ゲル上にロードした。ゲルにロードする前に、試料を95℃で5分間、再加熱し、13,000rpmで短時間の遠心分離を行った。ゲルで200Vにておよそ1時間、終了するまで分離を行った。次いでゲルを、蛍光についてTyphoon 9400を用いて解析した。RUB1001プローブをCy2解析に使用(フィルター:520BP40,レーザー:Blue 2(488nm)、感度:ノーマル)。プローブMV151、MVB003、MVB072、RUB1018およびプローブなしをCy3解析に使用(フィルター:580BP30,レーザー:Green(532nm)、感度:ノーマル)、典型的な画像解像は100ミクロンおよび600PMT。蛍光分析後、ゲルをクマシー染色液中に一晩入れ、翌日、脱色液中に入れ、総タンパク質のローディングコントロールを得た。
【0184】
細胞株構築実験のための安定なポリクローナルプールの作成
エレクトロポレーションをGSKO浮遊細胞株において行った。対数増殖期中期の培養物の計数を行い、残りの培養物は1000rpmで遠心分離し、上清みを除去した。700μlの容量のエレクトロポレーションキュベットあたり1×10個の細胞が必要であった。したがって、ペレットを再懸濁させ、必要とされる回数のエレクトロポレーションのための細胞濃度を得た。エレクトロポレーションは、20μgの線状プラスミドを用いて、300V、静電容量900μFにて、キュベットを4mm間隔で用いて行った。各キュベットに20mlの新鮮培地(この容量のうち2mlはキュベットのすすぎ洗浄に使用した)を添加した。細胞株構築実験のため、次いで、全エレクトロポレーションを一緒にプールし、最終容量300mlを得た。これを充分に混合し、次いで、30×T75組織培養フラスコに10ml容量ずつ分配した。次いで、フラスコを36.5℃および5%COで静的にインキュベートした。トランスフェクションの24時間後、グルタミンシンテターゼ阻害薬(MSX)を添加し、成功裡にプラスミドを取り込んで選択マーカーGSを発現している細胞の選択をもたらした。CD-CHO培地を含む5ml容量のMSXストック液を添加し、25、37.5または50μMのいずれかのMSXであるいずれかの最終培養濃度を得た。次いで、プロテアソーム阻害薬の添加を、表3に詳述した実験レイアウトのデザインによって定めたMSX選択後の適切な時間点で行った。濾過滅菌したDMSOを、組合せに薬物を必要としない対照として添加した。次いで、MSXの添加後、培養物を36.5℃および5%COでおよそ2週間、静的にインキュベートした。培養物で細胞濃度の増大が観察された場合または少なくとも週に1回、バイアビリティの計数を行った。少なくとも0.2×10個の細胞/mlのバイアブル細胞濃度に達したら、培養物を、140rpmで振盪しながら36.5℃および5%COでの20ml容振盪フラスコでの培養に移した。この時点から先は、常套的な継代培養を3~4日毎に行った。
【表3】

【0185】
抗体濃度を調べるための上清み試料の酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)
AffiniPure F(ab’)2断片であるヤギ抗ヒトIgGの特異的Fc断片(ウシ、ウマ、マウス血清タンパク質との交差反応は最小限)(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc)をコーティングバッファー(15mM NaCOおよび35mM NaHCO,pH9.7)中で希釈し、2.2μg/mlの濃度を得た。次いで、100μlのストック液を使用し、96ウェルプレート(Nunc)の各ウェルをコーティングした。プレートをホイルで覆い、4℃で一晩保存した。プレートを洗浄バッファー(0.1M NaCl,8.1mM NaHPO,2.4mM NaHPO.HO,12.7mM EDTA,0.02%v/v Tween-20および1% L-butanol,pH7.2)中で2回洗浄した後、200μlのブロック液(0.5%w/vのカゼイン含有15mM NaCO/35mM NaHCO,pH9.7)を各ウェルに添加し、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。試薬等級のヒトIgG(Sigma)IgG標準品を、試料バッファー(0.1M Tris-HCl、0.1M NaClおよび0.02%v/v Tween-20,pH7.0)中での段階希釈によって調製し、250ng/ml~3.9ng/mlの範囲を得た。また、試料バッファー中での上清み試料の段階希釈も行った。ブロッキング後、プレートを洗浄バッファー中で2回洗浄した後、100μlの試料/標準品を該当ウェルに添加した。次いでプレートを、振盪しながら室温でさらに1時間インキュベートした。プレートを2回洗浄した後、100μl/ウェルの二次抗体溶液(ヤギで生成させた抗ヒトκ軽鎖(結合型および遊離型)HRPコンジュゲート(Sigma),洗浄バッファー中で1:10000に希釈)を添加した。二次抗体の添加後、プレートを、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。プレートを再度洗浄し、既製品のTMB基質(Cell signalling technology #7004)を添加した(100μl/ウェル)。標準品の有意な青色発色が生じたら、50μl/ウェルの2.5M HSOを用いて反応を停止した。次いで、各ウェルの光学密度を450nmにおいて測定した。次いで上清み試料の濃度を、既知濃度のIgGの標準曲線から求めた。
【0186】
抗体濃度を調べるためのプロテインA高速液体クロマトグラフィー
HPLCを、プロテインAカラムでChemstationソフトウェアおよびAgilent 1260機器を用いて、Lonzaの標準的な操作手順に従って行った。1008mg/Lの濃度のプロテインA HPLCの標準品(ロット番号L27336/07/02)を使用し、結合バッファーで1対2に希釈した。また、3700mg/Lの濃度のジェネリックIAC(ロット番号L27336/7/1)も使用し、結合バッファーで1対10に希釈し、対照を得た。IACの結果は、プロトコルによって求められる設定限界の範囲内であることがわかった。上清み試料を結合バッファーで1対2に希釈した後、カラムで分離した。
【0187】
[実施例2]:いろいろな阻害薬に対する細胞株の感受性を調べるための適切な濃度の決定
初期評価を、2つの実験において1つのモデル組換えCHO抗体産生細胞株(CHO149)を用いて行い、全パネル(図1A~1Cおよび2A~2F)の評価に使用するための各阻害薬の適切な濃度を決定した。文献で以前に報告され、使用された濃度付近の濃度に基づいた一連の濃度を解析した;8μMのイーヤレスタチンは、ERの輸送をブロックするのに充分であることがインビボで以前に示されている(Cross et al.2009);0.04~0.08μMのエポキソミシンはプロテアソームのキモトリプシン活性を阻害することが示されている(Meng et al.1999);1.5μMのMG-132はアポトーシスを誘導することが示されている(Meriin et al.1998)。
【0188】
0.5および1μMのMG-132とのCHO149細胞株のインキュベーション後、観察された効果はほぼ同じであり、薬物添加の48時間後、対照試料と比較すると、培養物のバイアビリティはおよそ50%まで低下し、バイアブル細胞数は概算で40%減少した(図2A~2F)。0.1μM濃度のMG-132によってもたらされた培養物のバイアビリティおよび細胞数に対する効果はそれほどでもなかったが、5および10μM濃度によってもたらされた効果は大きく、細胞数および培養物のバイアビリティはどちらも薬物添加の48時間後、劇的に低下した(図1A~1Cおよび2A~2F)。
【0189】
0.5および1μM濃度のエポキソミシンにより、薬物添加の48時間後、バイアブル細胞数の90%の減少がもたらされた(図1A~1C)が、0.01、0.005および0.001μM濃度ではバイアブル細胞数の増加がもたらされ、薬物は、薬物添加の72時間後までなんら有害効果を示さなかった(図2A~2F)。0.05μM濃度のエポキソミシンにより、薬物添加の48時間後までにこの2つの実験において、30~60%の範囲の培養物のバイアビリティの低下および30~50%のバイアブル細胞数の減少がもたらされた(図1A~1Cおよび2A~2F)。
【0190】
阻害薬イーヤレスタチンIの添加により、この2つの実験においてさまざまな効果がもたらされ、1μM濃度での添加の48時間後、15~30%の範囲のバイアブル細胞数の減少がもたらされた。10μM濃度では一貫して、この2つの実験において培養物のバイアビリティのパラメータに対する効果が示されたが、その効果の大きさは大きかった。図1A~1Cおよび2A~2Fの結果に基づくと、さらなる試験で決定された濃度はMG-132では0.5μM、エポキソミシンでは0.05μMおよびイーヤレスタチンIでは10μMであった。これらの濃度では、対照試料と比較すると30~60%の低下という細胞濃度および培養物のバイアビリティに対する効果が観察された。
【0191】
[実施例3]:産生細胞株パネルにおけるERADおよびプロテアソーム阻害薬の評価
実施例2で決定された阻害薬濃度を使用し、この設定濃度の阻害薬の効果をCHO mAb産生細胞株パネルにおいて調べた。使用した細胞株はすべてCHOK1SV宿主細胞株から誘導されたものであり、モデルIgG4分子をいろいろな収率で発現していた。該細胞株の産生性は以前に測定されており、このような過去の力価を用いて一連の産生性をカバーしているパネルを選択し、該阻害薬に対する感受性を調べた。次いで、該阻害薬を深型96ウェルプレート形式において添加したら、阻害薬の添加後、毎日の細胞の計数を行い、細胞を評価した。
【0192】
培養物のバイアビリティおよびバイアブル細胞数は、48時間の培養後、いろいろな産生性の細胞株毎にさまざまであった。該阻害薬の最大の大きさの効果は添加の48時間後に観察され、したがって、この時間点を、相関分析を行うために使用した。
【0193】
細胞株のバイアビリティに対する該薬物の効果を細胞の産生性と比較し、産生性および感受性と測定対象の薬物濃度との間に強い相関があるかどうか調べた。フェドバッチでの産物濃度および比生成速度の過去の予備産生)データならびにバイオリアクターでのデータを使用し、線形回帰を用いた96DWP形式における該阻害薬の効果での相関分析およびピアソンの相関分析を行った。細胞株の産生性および感受性とプロテアソーム阻害薬との間に統計学的に有意な相関(p<0.05)が測定された。
【0194】
0.5μMのMG-132の存在下で48時間後、フェドバッチ培養で測定されたバイアブル細胞濃度と比生成速度との間、ならびにフェドバッチ培養およびバイオリアクターでの培養で測定された培養物のバイアビリティと比生成速度との間に正の相関が測定された(図3A~3Dおよび6A~6G;ならびに表4)。細胞を0.05μMのエポキソミシンの存在下で培養した場合、この場合も、フェドバッチ培養およびバイオリアクターでの培養で測定されたバイアブル細胞数と比生成速度との間、ならびにフェドバッチ培養およびバイオリアクターでの培養で測定されたバイアブル細胞数と産物濃度に正の相関がみられた(図4A~4Dおよび6A~6G;ならびに表4)。0.05μMのエポキソミシンでの培養物のバイアビリティと産生性データとの間に統計学的に有意な相関は測定されなかった。また、細胞をイーヤレスタチンIの存在下で培養した場合も、細胞培養パラメータと産生性特徴との間に有意な相関はみられなかった。
【表4】

【0195】
[実施例4]:産生細胞株のプロテアソーム活性の測定
実施例3に記載のように、調べた細胞株パネルは、プロテアソーム阻害薬に対するその感受性において差異を示した。したがって、これをさらに解析するため、プロテアソーム活性レベルを該細胞株パネルにおいて測定した。これは、van der Hoornラボラトリーのプロテアソーム活性プロファイリングプローブ(Kolodziejek et al.2011)を用いて行った。このプローブは蛍光タグを有し、阻害薬分子ベースにして、いろいろな反応性基で設計される。重要なことには、このプローブは、活性状態である場合のみ、その標的に結合することができ、したがって、活性なプロテアソームが測定され得る。この試験で使用したプローブにはMV151(これはビニルスルホン反応性基を含む)ならびにMVB003およびMVB072(これらはどちらも、阻害薬分子エポキソミシンベースであり、エポキシケトン反応性基を有する)を含めた。このようなプローブの反応性基はプロテアソームの触媒サブユニットのN末端活性部位Thrに、相違する機構によって結合する。このようなプローブは、プロテアソームの3つの触媒サブユニット;β1、β2およびβ5の活性を示すものである(Kolodziejek et al.2011)。また、エポキシケトン反応性基を含み、β1活性が際立つプローブRUB1001、およびビニルスルホン反応性基を有し、β5触媒サブユニット活性が際立つRUB1018を使用した。この活性プローブを用いた解析により、プロテアソーム活性を該細胞株パネルにおいて測定すること、およびプロテアソームの種々の触媒サブユニットの活性がこのような細胞株パネルにおいて異なっていることがわかるかどうかに関して調べることが可能になる。
【0196】
該活性は、方法の章に記載のような試料の標識後に観察された種々のバンドの蛍光強度によって調べる。蛍光レベルの測定後、ゲルをクマシー染色してローディングコントロールを得た。観察された図7A~7Fの上側のおよそ27kDaのバンドはβ2触媒活性を表す。下側のおよそ24kDaのバンドはβ5触媒活性およびβ1触媒活性を示し(図7A~7F)、RUB1018はβ5活性のみを示す。MV151プローブはβ2活性およびβ5/β1活性の両方を示す。この細胞株パネルにおいて、下側のβ5/β1バンドの強度は一般的にβ2バンドより大きな強度のものであり(図7A~7Fおよび9A~9F)、これらのサブユニットの高活性が示された。しかしながら、MVB003プローブを使用した場合、いくつかの抗体産生細胞株ではCHOK1SVと比較するとβ5/β1バンドの強度、したがって活性が低いようであった(図7A~7Fおよび9A~9F)。組換え抗体産生細胞株のβ2活性は一般的に、CHOK1SV宿主細胞株で観察されたものと同等であった。予測され得たように、MVB072プローブを使用した場合、MVB003プローブのものと同様の活性パターンが観察された(図7A~7F)が、観察されたβ5/β1バンドの差異は小さかった。
【0197】
RUB1001プローブを用いてプロテアソーム活性を調べた場合(これにより、β5活性およびβ1活性を個別に評価することが可能になり得る)、これらの2つのサブユニットの触媒活性は該細胞株パネルにおいて互いに酷似していた(図8A~8F)。RUB1018プローブを用いて測定されたプロテアソーム活性レベルは、いくつかの組換え細胞株においてCHOK1SV対照と比較した場合、低いことがわかった(図8A~8Fおよび9A~9F)。また、ライセート試料へのプローブの添加なし、およびプローブの添加前でのエポキソミシン阻害による蛍光分析も行い、得られるバンドパターンが非特異的結合の結果ではなく触媒サブユニットに対するプローブの結合によって決定されることを確認した。これは、このような処理試料ではゲル上にバンドが存在しないことによって確認した(図8A~8F)
また、各プローブについて測定された「総」活性も、デンシトメトリー解析を用いて各プローブで観察されたすべてのバンドの強度を合わせることにより求めた。したがって、総プロテアソーム活性は、すべてのプローブのすべての強度の和から誘導した。細胞株CHO142、CHO71、CHO77、CHO137およびCHO46はすべて、非産生対照CHOK1SV宿主よりも高レベルの総プロテアソーム活性を示した(図9A~9F)。細胞株はすべて、最初にCHOK1SV細胞株から誘導したものであり、そのため、これは、組換えタンパク質産生の圧力がないプロテアソーム活性の好適なベースラインを示しているはずである。総プロテアソーム活性の増大を示す細胞株は一般に、調べたものの産生性範囲が中程度から高度であった。しかしながら、他の細胞株、例えばCHO149、CHO42およびCHO150はすべて、宿主において観察されたものと比較すると総プロテアソーム活性の低下を示し、典型的には高産生体と分類された。
【0198】
[実施例5]:細胞株構築プロセスに対するプロテアソーム選択圧の付加の適用
細胞株の産生性および細胞株の感受性とプロテアソーム阻害薬との間に相関が観察された(実施例3参照)。したがって、細胞株構築の際に高産生性の組換え細胞株を選択するためにプロテアソーム阻害薬を使用できるかもしれないという仮説を調べた。したがって、モデル抗体Aを産生するCHOK1 GS-KO組換え細胞株を作成するための、メチオニンスルホキシイミン(MSX)に対するさらなる選択圧としてプロテアソーム阻害薬の添加を含めた細胞株構築プロセスをデザインした。細胞株構築プロセスのデザインの概略を図10に示す。MSXは、トランスフェクトされたプラスミドを成功裡に発現する細胞を、グルタミンシンテターゼ(GS)発現での選択によって選択するために使用される。CHO細胞は少量のGSを内因的に発現するが、MSXが、GS含有構築物がゲノム内に安定的に組み込まれた細胞を選択するための阻害薬として使用され得る(Fan et al.2012)。さらに、この実施例で使用した宿主は、いずれの内因性GSタンパク質の発現もないCHOK1 GS-KO宿主細胞株であった。典型的な選択に加えてプロテアソーム阻害薬を添加し、プロテアソーム阻害に基づいた選択を含めることによって、抗体産物の高産生体である細胞集団が選択されるかどうかを試験した。実施例3に示したデータにより、高産生性を有する細胞はプロテアソーム阻害薬に対する感受性が低く、したがって、該阻害薬の存在下で選択されるはずであることが示唆された。この仮説を試験するため、一連のMSXとプロテアソーム阻害薬の濃度の組合せを、測定対象の阻害薬の濃度を調べるための実験アプローチのデザインを用いて、抗体AをコードしているプラスミドでトランスフェクトしたCHOK1 GS-KO宿主細胞株に対して使用した。これを図10に記載する。プロテアソーム阻害薬を、MSXの添加後24、96または168時間目のいずれかで添加し、プラスミドの取込みに基づいた選択がプロテアソームの阻害の前に起こるようにした。
【0199】
細胞株構築プロセスの目的のため、使用したMG-132の濃度は、実施例2に報告したデータ生成で使用したものより低くした。実施例2に報告したデータにおいて先に調べた濃度では、エレクトロポレーションおよび細胞株構築プロセス後、不充分なバイアブル細胞計数がもたらされた。その結果、細胞株構築の評価のために濃度を下げた。
【0200】
評価した30の細胞株構築プロセスのうち8種類が細胞株構築プロセスで生き残った。これらは、異なる濃度のMSXのみで処理した(すなわち、プロテアソーム阻害薬を添加しなかった)4つの対照およびプロセスにMSXを含めることに加えてMG-132またはエポキソミシンのいずれかを含めた4種類であった。これらの細胞集団を培養し、浮遊バッチ培養物の状態に増殖するまで拡大培養し、これらの細胞集団の増殖および抗体濃度を評価した。この目的のため、細胞を0.2×10個の細胞/mlの濃度で三連のフラスコ内に、プロテアソーム阻害薬の添加なしで播種し、振盪しながら37℃で140rpmにてKuhnerインキュベータ内でインキュベートし、細胞濃度および培養物のバイアビリティをViCell機器で測定するために48~72時間毎に試料採取した。一般に、増殖の特徴は、図11に示されるように、すべての細胞集団間で同様であった。細胞株構築を0.025μMのエポキソミシンおよび37.5μMのMSXの存在下で行ったCLC18は、その他の培養物より遅い増殖速度を有し、それほど高いバイアブル細胞数は得られず、5.328×10個の細胞/mlの最大バイアブル細胞数が得られたのに対してその他の細胞株構築集団では8~10×10個の細胞/mlが得られた。MSX単独の存在下で作成されたCLC6およびCLC27細胞株構築では、その他の集団と比較すると、培養物のバイアビリティは早期の時間点で低下し、バイアビリティは、培養の192時間目においてそれぞれ5.8%および24.2%であった。
【0201】
いろいろな細胞プールの上清み中の抗体濃度を解析した場合、タンパク質分解阻害薬を用いて、またはタンパク質分解阻害薬の使用なしで構築した場合のいろいろな細胞株間で産物の濃度に大きな差がみられた。抗体濃度は、バッチ培養の192時間目に採取した上清みで測定し、ELISA(図12)およびプロテインA HPLCによって測定した。プロテインA HPLCで得られた結果は、ELISA アッセイによって観察されたものと同様であった。通常のMSX選択に加えてプロテアソーム阻害薬のさらなる選択圧を伴って調製した培養物はすべて、MSX単独作成プールで観察されたものと比べて抗体濃度の増大を示した。実際、MSX単独を用いて作成されたいろいろな対照プールと比べると、0.0625μMのMG-132と37.5μMのMSXを用いて作成したプールは、細胞培養上清み中に存在する抗体量の概算で4倍の増加を示し、一方、0.025μMのエポキソミシンと37.5μMのMSXを用いて作成したものは抗体濃度の3~7倍の増大を示した。したがって、このようなデータは、MSX選択とともにプロテアソーム阻害薬を使用することにより、高収率でモデル組換えモノクローナル抗体を産生する細胞プールの作成がもたらされることを示す。
【0202】
プロテアソーム阻害薬MG-132およびエポキソミシンに対するモデルモノクローナル抗体を発現する組換えCHO細胞株の感受性は、産業上重要なモデル抗体産生GS-CHO組換え細胞株パネル(実施例2に記載のような)において異なることがわかった。細胞を測定対象濃度のプロテアソーム阻害薬の存在下で培養した場合、培養物のバイアビリティまたはバイアブル細胞数と産生性と間に正の相関があることがわかった。
【0203】
本明細書に開示のデータは、高産生性の細胞株のプロテアソームが阻害効果によってあまり影響されなかったことを示し、おそらくミスフォールディング型のタンパク質の存在が少ない結果、分解を必要とするポリペプチドまたはタンパク質が少なく、したがって高収率がもたらされることを示唆する。高産生細胞株は先のように、組換えタンパク質を発現する哺乳動物細胞株における高値量のシャペロンと関連しており、したがって、このような細胞におけるフォールディングの忠実度が改善され得、場合によってはERストレスの結果としてのUPR活性化によって高レベルの組換えタンパク質産生がより良好に助長されることが可能になる(Smales et al.2004;Dinnis et al.2006)。
【0204】
実施例3で観察されたプロテアソームの阻害と抗体の産生性との間の正の相関のため、プロテアソームの阻害の影響を、細胞株構築の際に組換えタンパク質高産生集団を選択するために使用できるのではないかという仮説をたてた。MSXは現在、CHO細胞の内因性グルタミンシンテターゼ(GS)を阻害し、導入組換えプラスミド上の外来性GSを発現する細胞を選択して、さまざまな組換えタンパク質発現レベルの不均一集団を得るために使用される主要な選択系のうちの1つである。図6A~6Gに報告した相関データに基づき、MSXに加えてプロテアソーム阻害薬の添加によって、産生性および場合によっては産物の品質が向上した不均一細胞集団の出現および選択が助長され得るかどうかを調べた。したがって、エポキソミシンおよびMG-132を、GS遺伝子ならびにモデルIgG4抗体Aの重鎖と軽鎖を含むモデル抗体Aプラスミドでトランスフェクトした場合のGSKO細胞株の細胞株構築プロセスに加えた。MSXとエポキソミシンおよびMG-132の濃度の組合せの大部分は、トランスフェクションの選択プロセスに適用した場合、この選択プロセスおよびその後の培養で生き残らなかった。この実験の培養物では、本明細書に記載の実験の最後まで進んだ8つの培養物を除き、<6%の細胞バイアビリティが得られた。しかしながら、37.5μMのMSXとともに0.0625μMのMG-132または0.025μMのエポキソミシンのいずれかの存在下で出現した集団は、ELISAまたはプロテインA HPLCのいずれかによって解析したとき、192時間のバッチ培養後、MSX単独で培養したものと比較した場合、より高値量のcB72.3抗体を産生した。したがって、このさらなる選択圧により、先に報告した相関データと整合して、高産生集団が選択されるようであった。このデータは産業現場での細胞株構築プロセスにおける使用のための潜在的有益性を有し、高産生GS-CHO組換え細胞集団の開発が補助される。
【0205】
[実施例6]細胞株構築の際におけるプロテアソーム阻害薬とERAD阻害薬の使用
20μgの線状GS cB72.3モノクローナル抗体含有構築物での複数回のエレクトロポレーションを、1×10個のバイアブルなGS KO Lonza宿主細胞で行い、プールした。次いでこのプールを10mlの培養物(各々には、およそ0.25×10個の細胞と10μgのDNAが含まれている)にセットアップし、即座に37℃で5%COの静的インキュベータ内に入れた。細胞培地は、グルタミンなしで、MSXおよび阻害薬を以下に概略を示したとおりに添加した市販のCD-CHO培地からなるものであった。トランスフェクション後24時間目、MSXを培地に添加し、培養液量を15mlにして最終MSX濃度を37.5μMにした。次いで、MSXの添加のさらに24時間後、異なる阻害薬をこれらのプールに添加した。各阻害薬に対して一連の濃度で添加し、フラスコ内の終濃度を図13に記載のとおりにした。フラスコ1つあたり1種類だけの阻害薬での処理を行い(併用処理なし)、すべて、37.5μMのMSXとの組合せで、図13に概略を示したとおりに行った。
【0206】
次いで、細胞プールを静的インキュベータ内に37℃および5%CO2で、フラスコ内のバイアブル細胞濃度が約0.2×10個の細胞/mlに達するまで放置した。このバイアブル細胞数に達したら、細胞プールを125mL容エルレンマイヤー振盪フラスコ内に移し、MSXおよび適切な濃度の阻害薬を含む20mL容量のCD-CHO中、37℃で、大気環境中5%CO2下で140rpmにて振盪しながら培養した。最終的に、33のうち24のトランスフェクト体/プールを、上記の所要のバイアブル細胞濃度を超えたため振盪フラスコに移した。37.5μMのMSXとともに細胞プールの出現をもたらした最終阻害薬濃度は以下のとおり:MG-132:15.625および31.25nM;エポキソミシン:6.25、12.5および25nM;イーヤレスタチンI:0.1、0.5および1μM濃度であった。
【0207】
次いで、細胞プールを適切な阻害薬(ならびに阻害薬濃度および37.5μMのMSX)の存在下で、20mLのCD-CHO中にて数回の継代(各々、0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種した)で培養した後、各々で、該プールの増殖を評価するため、および培養持続期間にわたって産物濃度のための試料採取するためにバッチ培養液をセットアップした。この目的のため、20mlのバッチ培養液(0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種)を48、96および168時間目に、増殖および力価情報のために試料採取した。また、次いで、細胞プールをさらに2回の継代では該阻害薬の非存在下(だがMSXを含む)で継代し、増殖または産生性の変化(あれば)が観察されるかどうか、すなわち、該阻害薬が継続的に存在する場合のみ、培養物の力価の改善が維持されるのかどうかを調べた。得られた所見およびデータを図13~18に示す。
【0208】
第1に、種々の阻害薬を使用し、阻害薬の存在下で連続培養した細胞のバッチ培養セットアップでの組換えGS-CHO細胞株構築プロセス後に得られた平均モノクローナル抗体産物濃度を評価した(図14)。MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種後、20mlでのバッチ培養の48、96および168時間目に採取した上清み試料のcB72.3モノクローナル抗体濃度の評価。産物の力価を、OctetシステムのプロテインAセンサーを用いて評価した(37.5μMのMSX対照はn=3、阻害薬処理はn=2だが25nMエポキソミシンはn=1)。図14に示されるように、31.25nMのMG-132および37.5μMのMSXの存在下で構築された細胞プールはモノクローナル抗体力価の向上を示し、168時間のバッチ培養後、対照プールで観察されたものよりほぼ4倍高かった。
【0209】
第2に、種々の阻害薬を使用し、阻害薬の存在下で連続培養した細胞のバッチ培養セットアップでの組換えGS-CHO細胞株構築プロセス後に得られたモノクローナル抗体産物の解析をウエスタンブロットによって行った(図15)。MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種後、培養の168時間目に採取した上清み試料のcB72.3濃度を測定した(as determined)。ウエスタンブロットは、抗重鎖抗体(Sigma)を用いてプローブ結合させた。図15に示されるように、いろいろな阻害薬の存在下で作成した細胞プールは一般的に、対照のMSX単独作成細胞プールのものより強い抗体バンド、したがって、より高い抗体産生性を示した。
【0210】
第3に、種々の阻害薬を使用し、2回の継代は該阻害薬の非存在下で培養した細胞のバッチ培養セットアップでの組換えGS-CHO細胞株構築プロセス後に得られた平均モノクローナル抗体産物濃度を評価した(図16)。MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種後、20mLでのバッチ培養の48、96および168時間目に採取した上清み試料のcB72.3モノクローナル抗体濃度の評価。産物の力価を、OctetシステムのプロテインAセンサーを用いて評価した(37.5μMのMSX対照はn=3、阻害薬処理はn=2だが25nMエポキソミシンはn=1)。図16に示されるように、31.25nMのMG-132および37.5μMのMSXの存在下で構築された細胞プールはモノクローナル抗体力価の向上を示し、168時間のバッチ培養後、対照プールで観察されたものよりほぼ4倍高かった。
【0211】
第4に、種々の阻害薬を使用し、2回の継代は該阻害薬の非存在下で培養した細胞のバッチ培養セットアップでの組換えGS-CHO細胞株構築プロセス後のモノクローナル抗体産物の解析をウエスタンブロットによって行った(図17)。MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種後、培養の168時間目に採取した上清み試料のcB72.3濃度の評価。細胞プールを該阻害薬の非存在下で2回継代した後、バッチ培養液の試料採取を行った。ウエスタンブロットは、抗重鎖抗体(Sigma)を用いてプローブ結合させた。図17に示されるように、いろいろな阻害薬の存在下で作成した細胞プールは一般的に、対照のMSX単独作成細胞プールのものより強い抗体バンド、したがって、より高い抗体産生性を示した。
【0212】
第5に、細胞株構築プロセス後、阻害薬での処理の直後に計算した平均比産生性を評価した(図18)。比産生性は、MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個の細胞/mlで播種後、培養の48、96および168時間目に採取した上清み試料でバイアブル細胞数(Vicellで測定)および産物濃度(octetシステムのプロテインAプローブを用いて誘導)に関して収集したデータから計算した。各細胞プールの個々の比活性を計算し、次いで、各処置での平均を求めた(37.5μMのMSX対照はn=3、阻害薬処理はn=2だが25nMエポキソミシンはn=1)。図18に示されるように、細胞の比産生性は、MG-132、特に31.25nM濃度ならびに種々の濃度のエポキソミシンおよびイーヤレスタチンの存在下で細胞プールを作成した場合、MSX対照プールと比べて向上した。
【0213】
第6に、種々の阻害薬を使用し、2回の継代は該阻害薬の非存在下で培養した細胞のバッチ培養セットアップでの組換えGS-CHO細胞株構築プロセス後に得られた細胞の平均モノクローナル抗体比産生性の計算値を評価した(図19)。比産生性は、MSX選択圧に加えてプロテアソーム阻害薬を用いた細胞株構築により作成した細胞プールの0.2×10個の細胞/mlで播種後、バッチ培養の48、96および168時間目に採取した上清み試料で測定された細胞数(Vicell機器で測定)および産物濃度(octetシステムのプロテインAプローブを用いて誘導)から計算した。各細胞プールの個々の比活性を計算し、次いで、各処置での平均を求めた(37.5μMのMSX対照はn=3、阻害薬処理はn=2だが25nMエポキソミシンはn=1)。図19に示されるように、細胞の比産生性は、MG-132、特に31.25nM濃度ならびに種々の濃度のエポキソミシンおよびイーヤレスタチンの存在下で細胞プールを作成した場合、MSX対照プールと比べて向上した。
【0214】
結論
全体として、図14~19に示されたデータは、プロテアソームおよびERAD阻害薬の選択圧を加えた細胞プールでは、MSX選択単独による対応する対照と比べて向上した産生性を有する細胞プールが作成され得ることを示す。これは、プロテアソームまたはERAD阻害薬を細胞株構築プロセスに加えるとさらなる選択圧が付与され、改善された比産生性およびさらなる(over)組換え産物力価を有する培養物集団の出現がもたらされるというさらなる証拠を示す。
【0215】
[実施例7]細胞株構築プロセスにおいて阻害薬を用いて作成された組換えCHO細胞プールの安定性
さらなる選択圧としてのプロテアソーム阻害薬およびGS選択系を用いたMSXの存在下で作成した先の細胞株構築による細胞プールを低温保存後に復活させた。次いで、このプールを3~4日毎に15回継代し、このさらなる選択圧の有益な効果が経時的に維持されるかどうかを調べた。常套的な継代培養を3~4日毎に行い、後期の継代物から試料を採取し、産物の収率に対するこの効果が経時的に維持されるかどうかを調べた。各継代では、モデルモノクローナル抗体を発現している組換え細胞プールのバッチ培養を(0.2×10個のバイアブル細胞/mLを使用)、20mlのCD-CHOおよびMSX中(以下に概略を示したとおり)で、125ml容エルレンマイヤー振盪フラスコ内で37℃にて大気環境中5%COで、140rpmで振盪しながらセットアップした。図23に示されるように、異なる細胞プール間の相対的な細胞の比産生性は異なる継代回数でも保持された。
【0216】
[実施例8]向上した産生性の特徴を有する新たな宿主を作成するためのプロテアソームまたはERAD阻害薬の存在下で培養することによるGS-KO CHO細胞宿主の選択/適合.
収率および品質の向上を伴って組換えタンパク質を産生する能力を有する適合された/選択された宿主細胞が、Lonza GS-KO CHO宿主細胞株をタンパク質分解阻害薬の存在下で培養することによって作成され得るかどうかを確認するため、GS-KO宿主細胞株を、種々のタンパク質分解阻害薬の存在下で一連の継代で培養した。したがって、宿主細胞株は、20mlのCD-CHO+6mMグルタミン+適切な阻害薬(以下に概略を示したとおり)中、125ml容エルレンマイヤー振盪フラスコ内で37℃にて大気環境中5%COで、140rpmで振盪しながら培養した。各継代では、新たな培養物を0.2×10個のバイアブル細胞/mlで播種した。細胞は、細胞数が1×10個のバイアブル細胞/mLを超えた場合、継代した。
【0217】
以下の濃縮および継代を行った:宿主細胞をDMSOを用いて、または終濃度15.6nMのMG132、終濃度1および0.1μMのイーヤレスタチンI、ならびに終濃度6.25nMのエポキソミシンを用いて、宿主への薬物の添加後、9回の継代に供した。最終MG132濃度62.5nMの宿主細胞を薬物の添加後、5回の継代に供し、終濃度25nMのエポキソミシンの宿主細胞を薬物の添加後、8回の継代に供した。次いで、上記のものをすべて、一過性発現実験のために薬物の非存在下でさらに2回継代し、このとき選択圧/適合圧は除いた。終濃度125nMのMG132の存在下で培養した宿主細胞の場合、モデルモノクローナル抗体を含むベクターのトランスフェクションを薬物の存在下での培養の直後に行った第1の実験では充分な細胞が存在しなかった。しかしながら、この濃度のMG132の存在下の細胞をこの濃度で4回、次いで薬物の非存在下でさらに2回の継代に供した。この時点で、薬物なしでの細胞の継代(2つのうち2回目の実験)後にトランスフェクションを行うのに充分な細胞が存在した。
【0218】
次いで、出現した上記の細胞宿主プールの一過性トランスフェクションを、エレクトロポレーションにより、20μgのモデルcB72.3プラスミドおよび1×10個のバイアブル細胞を用いて行い、細胞を125ml容エルレンマイヤー振盪フラスコ内の20mlの新鮮CD-CHO培地+6mMグルタミン中に入れ、37℃にて大気環境中5%COで、140rpmで振盪しながら培養した。これは、阻害薬の存在下に継続的に存在させた宿主細胞プールおよびさらに2回の継代は該阻害薬の非存在下で継代した宿主細胞プールに対して行った。このバッチ培養液から試料を採取し、トランスフェクション後48、96および168時間目に増殖および抗体力価をモニタリングした。得られた所見およびデータを図20~23に示す。
【0219】
第1に、プロテアソームまたはERAD阻害薬のいずれかの存在下で培養後の宿主細胞プールのバッチ培養での一過性トランスフェクション後に得られた抗体産物濃度を評価した(図20)。20μgのDNAでの1×10個のバイアブル細胞のエレクトロポレーションおよび20mlの培養液中への再懸濁後、トランスフェクション後48、96および168時間目に採取した上清み試料のcB72.3濃度の評価。エレクトロポレーションの前に、宿主細胞株を、表示した濃度の表示したプロテアソームおよびERAD阻害薬の存在下で培養した。産物の力価を、OctetシステムのプロテインAセンサーを用いて評価した。図20に示されるように、終濃度0.1μMのイーヤレスタチンIの存在下で培養した細胞ではDMSO対照細胞より高い一過性力価が得られ、プロテアソーム阻害薬の存在下での宿主細胞の培養は、高い組換えタンパク質産生能を有する細胞を適合させる/選択するために使用され得るという証拠を示す。
【0220】
第2に、最初にプロテアソームまたはERAD阻害薬のいずれかの存在下での培養、次いで、2回の継代は該阻害薬の非存在下での後続の継代培養後、一過性バッチ培養後のCHO宿主細胞プールの一過性トランスフェクション後に得られた抗体産物濃度を評価した(図21)。20μgのDNAでの1×10個のバイアブル細胞のエレクトロポレーションおよび20mlのバッチ培養液中への再懸濁後、トランスフェクション後48、96および168時間目に採取した上清み試料のcB72.3濃度の評価。エレクトロポレーションの前に、宿主細胞株を最初にプロテアソームおよびERAD阻害薬の存在下で培養し、次いで阻害薬の存在なしで2回継代した。産物の力価を、OctetシステムのプロテインAセンサーを用いて評価した。図21に示されるように、最初にイーヤレスタチンIまたは6.25nMのエポキソミシンの存在下で培養した細胞ではDMSO対照細胞より高い一過性力価が得られ、プロテアソーム阻害薬の存在下での宿主細胞の培養は、高い組換えタンパク質産生能を有する細胞を適合させる/選択するために使用され得るという証拠を示す。
【0221】
第3に、プロテアソームもしくはERAD阻害薬のいずれかの存在下での培養の直後または2回の継代は該阻害薬の非存在下で継代培養後の両方の宿主細胞プールの一過性トランスフェクション後のバッチ培養液の上清み中の抗体をウエスタンブロットによって評価した(図22)。20μgのDNAでの1×10個のバイアブル細胞のエレクトロポレーションおよび20mlのバッチ培養液中への再懸濁後、トランスフェクション後168時間目に採取した上清み試料のcB72.3濃度の評価。エレクトロポレーションの前に、宿主細胞株を最初にプロテアソームおよびERAD阻害薬の存在下で培養し、次いで該阻害薬の非存在下で2回継代した。ウエスタンブロットは、抗重鎖抗体(Sigma)を用いてプローブ結合させた。図22に示されるように、種々の組合せのタンパク質分解阻害薬によりDMSO対照細胞より強い抗体バンドが得られ、プロテアソーム阻害薬の存在下での宿主細胞の培養は、高い組換えタンパク質産生能を有する細胞を適合させる/選択するために使用され得るという証拠を示す。
【0222】
結論
トランスフェクション前の宿主細胞集団の培養中におけるプロテアソームまたはERAD阻害薬の存在の効果は、とりわけ、低濃度のイーヤレスタチンI(0.1μM)を細胞の選択/適合のために培養培地に添加した場合、細胞の比産生性および力価の増大を示す。これは、タンパク質分解阻害薬の存在下でのCHO宿主細胞株の選択/適合が、向上した組換えタンパク質産生能を有する宿主集団を作成するために使用され得ることを示唆する。しかしながら、プロテアソームまたはERAD阻害薬での選択が最も有効であるためには、組換え産物の産生の需要が必要とされる。安定な表現型(例えば、産物の向上した力価および品質)を有する集団が出現するためには、宿主は長期間および高世代数で培養するのがよい。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23