(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】幹細胞および/または前駆細胞からT前駆細胞を作製する方法ならびに該T前駆細胞の使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20220330BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220330BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220330BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20220330BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220330BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220330BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220330BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
A61P7/00
A61P35/00
A61P31/18
A61P37/06
A61P43/00 107
A61K35/17 A
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2018552760
(86)(22)【出願日】2017-04-07
(86)【国際出願番号】 CA2017050428
(87)【国際公開番号】W WO2017173551
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-03-30
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501318567
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ザンストラ,ピーター ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】シュクラ,シュレヤ
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】Reimann C. et al.,Human T-lymphoid progenitors generated in a feeder-cell-free delta-like-4 culture system promote T-cell reconstitution in NOD/SCID/γc-/- mice,Stem Cell,2012年,Vol. 30, No. 8,pp. 1771-1780
【文献】Lehnert K. et al.,MAdCAM-1 costimulates T cell proliferation exclusively through integrin α4β7, whereas VCAM-1 and CS-1 peptide use α4β1: evidence for "remote" costimulation and induction of hyperresponsiveness to B7 molecules,European Journal of Immunology,1998年,Vol. 28, No. 11,pp. 3605-3615
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞および/または前駆細胞からT前駆細胞を作製する方法であって、
NotchリガンドであるDelta-like-4(DL4)の少なくとも一部および血管細胞接着分子-1(VCAM-1)の少なくとも一部の存在下において、無血清条件で幹細胞および/または前駆細胞を培養し、T前駆細胞を作製することを含み、前記培養がフィーダー細胞の非存在下で行われる方法。
【請求項2】
前記培養工程が、前記作製されたT前駆細胞から分化細胞を作製することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DL4の一部が、DL4の細胞外ドメインを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記DL4の一部が、基材に吸着または固相化されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記VCAM-1の一部が、配列番号4の25番目のPheから698番目のGluまでの領域にヒトIgG1のFc領域が融合されたものを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記VCAM-1の一部が、基材に固相化されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記DL4の一部が、7.5~20μg/mLの濃度で提供される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記DL4の一部が、約15~20μg/mLの濃度で提供される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記VCAM-1の一部が、0.15~5.3μg/mLの濃度で提供される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記VCAM-1の一部が、約2.5~5.3μg/mLの濃度で提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記幹細胞および/または前駆細胞の培養が、SCF、FLT3LおよびIL-7を含む造血細胞分化培地に前記幹細胞および/または前駆細胞を暴露させることを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記幹細胞および/または前駆細胞がヒト細胞である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、多能性幹細胞または造血幹細胞/前駆細胞である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
T細胞数の増加を必要とする対象においてT細胞数を増加させるための医薬の製造における、請求項
1~
13のいずれか一項に記載の
方法によって作製されたT前駆細
胞の使用。
【請求項15】
前記対象がヒトである、請求項
14に記載の使用。
【請求項16】
前記T前駆細
胞が自己由来のT前駆細
胞である、請求項
15に記載の使用。
【請求項17】
前記T前駆細
胞が、同種異系T前駆細
胞である、請求項
15に記載の使用。
【請求項18】
T細胞数の増加を必要とする前記対象が、リンパ球減少症を伴う病態またはリンパ球減少症を引き起こす病態を有している、請求項
14~
17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記病態が、がん、HIV感染症、胸腺の部分切除、自己免疫疾患および/または臓器移植である、請求項
18に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願の相互参照
本出願は、パリ条約に基づき、2016年4月8日に出願された米国仮特許出願第62/320,005号の優先権を主張するものであり、この出願は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して、インビトロにおいてT前駆細胞を作製する方法に関する。より具体的には、本発明は、インビトロにおいて幹細胞および/または前駆細胞からヒトT前駆細胞を作製する方法ならびに該ヒトT前駆細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
T細胞は、細胞性免疫において中心的な役割を果たすリンパ球の1種である。たとえば、T細胞は、免疫応答の制御や、生体内に再侵入してきた病原体を排除するための免疫記憶の維持を担っている。T細胞欠損は生命に危険が及ぶ可能性があり、特に、化学療法を受けた患者は日和見感染のリスクが高く、T細胞欠損は致命的である。
【0004】
従来、インビトロにおける造血幹細胞/前駆細胞(HSPC)からのT細胞の作製は、Notchを活性化させるDL4タンパク質を発現するように遺伝子組換えされたマウスOP9フィーダー細胞を使用して血清含有培地中で行われている1,2。しかし、この培養系は、培地組成が不明であり、異種由来の成分を使用していることから、内分泌因子やマトリックス成分の役割を調査することが難しく、臨床解釈も限定的にしか行えない。OP9フィーダー細胞層を使用せずとも、Notchリガンドを組織培養プレートに非特異的に吸着させることによって培養を行えることが報告されている3。しかし、OP9フィーダー細胞を使用しないこの培養系は、培地中に多量の動物血清を添加する必要がある。また、DL4を磁気マイクロビーズに固相化することにより構築された人工的なNotchシグナル伝達系も報告されている。しかし、この方法では、一部の細胞が非T細胞(B細胞系列)に分化してしまうという欠点があった4。別の研究では、微細加工された柱状の構造体をチオール化PEGヒドロゲル薄膜上に直立させ、この柱状構造体にマレイミド修飾プロテインAをつなぎ、この柱状構造体上にNotchリガンドとしてJagged1-Fcを自動機器で播種することにより、単一の神経幹細胞の自己複製に対するJagged1-Fcの作用が調査された5。しかし、このような単一細胞を使用した小規模実験が、臨床で使用されるT細胞の作製に適していることを示唆するような証拠は得られていない。現在までに、T細胞を作製するための、既知成分からなる培養系は報告されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、幹細胞および/または前駆細胞からT前駆細胞を作製する方法が提供される。この方法は、NotchリガンドであるDelta-like-4(DL4)の少なくとも一部および血管細胞接着分子-1(VCAM-1)の少なくとも一部の存在下において、無血清条件で幹細胞および/または前駆細胞を培養し、T前駆細胞を作製することを含む。
【0006】
一実施形態において、前記培養工程は、前記作製されたT前駆細胞から分化細胞を作製することをさらに含む。
【0007】
一実施形態において、前記DL4の一部は、DL4の細胞外ドメインを含む。一実施形態において、前記DL4の一部は、基材に吸着または固相化されている。
【0008】
一実施形態において、前記VCAM-1の一部は、配列番号4の25番目のPheから698番目のGluまでの領域にヒトIgG1のFc領域が融合されたものを含む。
【0009】
一実施形態において、前記DL4の一部は、7.5~20μg/mLの濃度で提供される。一実施形態において、前記DL4の一部は、約15~20μg/mLの濃度で提供される。
【0010】
一実施形態において、前記VCAM-1の一部は、0.15~5.3μg/mLの濃度で提供される。一実施形態において、前記VCAM-1の一部は、約2.5~5.3μg/mLの濃度で提供される。
【0011】
一実施形態において、前記幹細胞および/または前駆細胞の培養は、前記幹細胞および/または前駆細胞を、SCF、FLT3LおよびIL-7を含む造血細胞分化培地に暴露させることを含む。
【0012】
一実施形態において、前記幹細胞および/または前駆細胞はヒト細胞である。一実施形態において、前記幹細胞および/または前駆細胞は、多能性幹細胞または造血幹細胞/前駆細胞である。
【0013】
一態様において、本明細書で開示された方法によって作製され、単離されたT前駆細胞集団が提供される。
【0014】
一実施形態において、前記単離された集団は、前記T前駆細胞から分化した細胞を含む。
【0015】
一実施形態において、前記単離された細胞集団は、CD7+T前駆細胞を少なくとも20%含む。一実施形態において、前記単離された細胞集団は、CD7+T前駆細胞を少なくとも60%含む。
【0016】
一実施形態において、前記T前駆細胞は、CD7発現ヒトT前駆細胞である。一実施形態において、前記ヒトT前駆細胞は、CD34、CD45RAおよびCD5の1つ以上を発現するヒトT前駆細胞である。
【0017】
一態様において、T細胞数の増加を必要とする対象においてT細胞数を増加させる方法が提供される。この方法は、本発明おいて提供されるT前駆細胞を前記対象に有効量で投与することを含む。
【0018】
一実施形態において、前記対象はヒトである。
【0019】
一実施形態において、前記投与されるT前駆細胞は、自己由来のT前駆細胞である。
【0020】
一実施形態において、前記投与されるT前駆細胞は同種異系T前駆細胞である。
【0021】
一実施形態において、T細胞数の増加を必要とする前記対象は、リンパ球減少症を伴う病態またはリンパ球減少症を引き起こす病態を有している。一実施形態において、前記病態は、がん、HIV感染症、胸腺の部分切除、自己免疫疾患および/または臓器移植である。
【0022】
本開示の前記特徴およびその他の特徴を、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明においてさらに詳しく述べる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1a~
図1cは、HEK293T細胞においてリガンドであるDL4-Fcを作製することが可能であること、およびダブルネガティブ(DN)T細胞を使用して、このリガンドの結合能を確認できることを示す。
【0024】
【
図1a】トランスフェクトしていないHEK293T細胞(コントロール)の溶解物およびトランスフェクトしたHEK293T細胞(DL4-Fc)の溶解物各10μgをヒトIgG(抗hIgG)で検出することによりDL4-Fcの発現を測定した免疫ブロットを示す。
【0025】
【
図1b】DL4-Fcを安定に発現するHEK293T細胞の培養物から得た上清を、アフィニティー精製プロテインGカラムで精製し、クマシーブルーで染色して評価した結果を示す。
【0026】
【
図1c】DL4-Fcがリガンドとして、ダブルネガティブ(DN;CD4-CD8-)胸腺細胞に結合するが、ダブルポジティブ(DP;CD4+CD8+)胸腺細胞には結合しないことを示す。
【0027】
【
図2】
図2a~
図2oは、T細胞を効率的に分化誘導するための、既知成分からなる無血清培地の特定を示す。
【0028】
【
図2a】2DコーティングDL4アッセイの概要を示す。このアッセイでは、まず、E13.5のマウス胎仔の肝細胞をソーティングしてsca1+ckit+HSPCを得る。次に、リガンドであるDL4でコーティングした標準的な平底96ウェルプレートに、25ng/mL SCF、5ng/mL Flt3Lおよび1ng/mL IL-7をサイトカインとして含む試験培地200μlを入れ、sca1+ckit+HSPCを1000個/ウェルの密度で播種する。4日目に、サイトカインを含む新鮮培地を細胞に再供給し、7日目に、フローサイトメトリーを使用して細胞の表面マーカーの発現を分析する。
【0029】
【
図2b】2DコーティングしたDL4の存在下または非存在下での培養により増殖した7日目のCD45+7AAD-生細胞の総数を、ソーティング後0日目に播種したHSPCに対する相対値として示したグラフである。
【0030】
【
図2c】プレートに吸着させた10μg/mL DL4の存在下または非存在下での培養により増殖した7日目のCD45+7AAD-生細胞の総数を、ソーティング後0日目に播種したHSPCに対する相対値として示し、OP9細胞存在下の血清培地(αMEM+16%FBS)と無血清培地組成物(αMEM+BITまたはIMDM+BIT)とで比較したグラフである(n=3)。培地組成物はいずれも、同量のサイトカイン(1ウェルあたり200μLの培地中に25ng/mL SCF、5ng/mL Flt3Lおよび1ng/mL IL-7)を含んでおり、4日目に培地の半量を交換した。
【0031】
【
図2d】様々な培地組成物中において、DL4の存在下または非存在下での培養により増殖した7日目のCD25+CD90+T前駆(pro-T)細胞の数を、ソーティング後0日目に播種したHSPCに対する相対値として示したグラフである(n=3)(
図2cおよび
図2dのデータは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±95%CIを示す;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
【0032】
【
図2e】CD45+7AAD-の発現をゲーティングし、血清培地(OP9細胞を用いた培地;αMEM+16%FBS)と無血清培地(IMDM+BIT)とで比較した代表的なフローサイトメトリープロットである。上パネルは、横軸にCD25の発現、縦軸にCD44の発現をプロットしたものであり、下パネルは、横軸にCD25表面マーカーの発現、縦軸にCD90表面マーカーの発現をプロットしたものである。エラーバーはs.d.を示す(n=3)。
【0033】
【
図2f】OP9細胞存在下の血清培地におけるポジティブコントロールの分化誘導をベースラインとして定量した代表的なフローサイトメトリープロットである(n=3)。
【0034】
【
図2g】10μg/mLのリガンドDL4を吸着させたプレートを使用して、IMDM+BIT無血清培地中で分化誘導した7日目の細胞を定量した代表的なフローサイトメトリープロットである。データは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±標準偏差を示す。
【0035】
【
図2h】様々な無血清培地組成物におけるCD19+B前駆細胞の収率を横軸に、CD11b+骨髄系細胞の収率を縦軸にプロットし、コントロールとしての血清培地と比較したグラフである(グラフの凡例は下パネル(i)に記載の培地条件を示す)。塗りつぶしたマーカーは、2DコーティングしたDL4を使用した条件を示し、白抜きのマーカーは、DL4を使用していない条件を示す。αMEM+BIT無血清培地における骨髄系細胞の収率およびB細胞の収率が最も高く、コントロールとしての血清培地と同程度であった。
【0036】
【
図2i】様々な無血清培地組成物中で培養後7日目に定量したCD45+7AAD-生細胞の総収率を縦軸に、DN1(CD25-CD44+CD45+)T前駆細胞の頻度を横軸にプロットし、コントロールとしての血清培地と比較したグラフである。
【0037】
【
図2j】様々な無血清培地組成物中で分化誘導した7日目に定量したCD25+CD90+T前駆細胞の収率を縦軸に、CD25+CD90+T前駆細胞の頻度を横軸にプロットしたグラフである。IMDM+BIT培地における頻度と収率の関係は、コントロールとしてのOP9細胞を用いた血清培地とよく似ていた。
【0038】
【
図2k】様々な無血清培地組成物中で培養後7日目に定量したCD25+CD90+T前駆細胞の収率を縦軸に、DN2(CD25+CD44+CD45+)T前駆細胞の頻度を横軸にプロットし、コントロールとしての血清培地と比較したグラフである。
【0039】
【
図2l】様々な無血清培地組成物中で培養後7日目に定量したCD25+CD90+T前駆細胞の収率を縦軸に、T細胞系列へと分化決定されたDN3(CD25+CD44-CD45+)T前駆細胞の頻度を横軸にプロットし、コントロールとしての血清培地と比較したグラフである。
【0040】
【
図2m】様々な無血清培地組成物(αMEM+BITまたはIMDM+BIT)中で培養後7日目に定量したCD45+7AAD-生細胞の総収率を縦軸に、DN1(CD25-CD44+CD45+)T前駆細胞の頻度を横軸にプロットし、OP9細胞存在下の血清培地(αMEM+16%FBS)と比較したグラフである。
【0041】
【
図2n】様々な無血清培地組成物中で培養後7日目に定量したCD25+CD90+pro-T細胞の収率を縦軸に、DN2(CD25+CD44+CD45+)細胞の頻度を横軸にプロットし、コントロールとしてのOP9細胞存在下の血清培地と比較したグラフである。
【0042】
【
図2o】様々な無血清培地組成物中で培養後7日目に定量したCD25
+CD90
+pro-T細胞の収率を縦軸に、DN3(CD25
+CD44
-CD45
+)細胞の頻度を横軸にプロットし、コントロールとしてのOP9細胞存在下の血清培地と比較したグラフである(
図2m~
図2o中の影をつけた部分は二次元カーネル密度推定を使用してプロットした;データポイントはいずれも、生物学的反復をn=3として行った実験のデータを示す)。
【0043】
【
図3】
図3a~
図3dは、様々な無血清培地組成物中における骨髄系細胞とB細胞の増殖を定量し、コントロールとしてのOP9細胞を用いた血清培地と比較した結果を示す。
【0044】
【
図3a】2DコーティングしたDL4の存在下または非存在下における7日目のCD19+B細胞の増殖を、0日目に播種したHSPCに対する相対値として示したグラフである。αMEM+BIT無血清培地における骨髄系細胞の収率およびB細胞の収率が最も高く、コントロールとしての血清培地と同程度であった。
【0045】
【
図3b】様々な培地組成物中でのDL4の存在下または非存在下における7日目のCD19+B細胞の増殖を、ソーティング後0日目に播種したHSPCに対する相対値として示したグラフである(n=3)。データは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±95%CIを示す(*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
【0046】
【
図3c】2DコーティングしたDL4の存在下または非存在下における7日目のCD11b+骨髄系細胞の増殖を、0日目に播種したHSPCに対する相対値として示したグラフである。
【0047】
【
図3d】様々な培地組成物中でのDL4の存在下または非存在下における7日目のCD19+B細胞の増殖を、ソーティング後0日目に播種したHSPCに対する相対値として示したグラフである(n=3)。データは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±95%CIを示す(*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
【0048】
【
図4】
図4a~
図4gは、胸腺ニッチを構築するための、アッセイの基本的な設計基準の最適化を示す。
【0049】
【
図4a】0日目に、1cm
2あたりの播種密度を徐々に増加させて、ソーティング後のHSPCを播種し、7日目に、増殖したCD45+7AAD-生細胞の総細胞数を定量し、0日目に播種したHSPC数で標準化した相対値として示したグラフである(n=3)(データは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±95%CIを示す;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。HSPCの播種密度を3.1×10
3個/cm
2よりも多くすると、培養物中で増殖した総細胞数が有意に低下したが、HSPCの播種密度を3.1×10
3個/cm
2未満とすると、培養物中で増殖した総細胞数のばらつきが大きくなることが観察された。
【0050】
【
図4b】ソーティングにより得られたHSPCを、吸着させるDL4の量を徐々に増加させた無血清IMDM+BIT培地に播種し、7日目にpro-T細胞集団、B細胞集団および骨髄系細胞集団を含む様々な細胞集団の頻度を分析した結果を示すグラフである(n=3)。7日間の培養後に、コントロールとしてのOP9細胞存在下の血清培地で培養した場合と同程度に、無血清IMDM+BIT培地中でDN3 pro-T細胞の発生を支持することのできたDL4の最低濃度は7.5μg/mLであった。
【0051】
【
図4c】ソーティングにより得られたHSPCを、10μg/mLの可溶性リガンドDL4を加えた無血清IMDM+BIT培地、10μg/mLまたは20μg/mLのリガンドDL4を吸着させたプレートを使用した無血清IMDM+BIT培地、または吸着させたリガンドと可溶性リガンドの組み合わせを使用した無血清IMDM+BIT培地に播種し、7日目に細胞の頻度を定量した結果を示すグラフである(n=3)。可溶性DL4の存在下で培養したHSPCから分化したDN3細胞は有意に少なく、DN1の表現型が維持されていた。これに対して、吸着させたDL4の存在下では、分化細胞集団の大部分をDN3細胞が占めていた。吸着させたリガンドDL4と可溶性DL4を組み合わせた条件では、可溶性DL4の存在によって、吸着させたDL4のDN3細胞分化誘導作用が抑制された。
【0052】
【
図4d】培地の消費を削減するために4日目の培地交換を省略することを示した模式図である。基準となる「再供給」条件での分化誘導方法では、培地を1ウェルあたり200μl使用して細胞を播種し、4日目に培地の半量を交換し、0日目に2倍の濃度としたサイトカインは同じ濃度のまま維持した。最適化された「供給なし」の条件での分化誘導方法では、基準よりも高い濃度のサイトカインを添加した培地を1ウェルあたり50μl使用して細胞を播種し、4日目に培地交換を行わなかった。
【0053】
【
図4e】「供給なし」の条件での分化誘導方法におけるSCF、FLT3LおよびIL-7の濃度を最適化するために実施した応答曲面法による実験計画法(DOE)の結果を示す。キューブプロットは、DOEを利用して、使用するサイトカインの濃度をモデル化して予測した最適なサイトカイン濃度を示す。
【0054】
【
図4f-g】無血清IMDM+BIT培地を使用して培養した7日目のDN2細胞(
f)またはDN3細胞(
g)の頻度を、ポジティブコントロール(25-5-1の再供給条件)と、最適化された供給なしの条件とで比較したグラフである。IL-7の濃度を単純に2ng/mLから10ng/mLに増加したところ(50-10-10の供給なしの条件)、コントロールと比較して、DN2細胞が有意に高い収率で得られ、T細胞系列に分化決定されたDN3細胞も高頻度および高収率で得られた(影をつけた部分は二次元カーネル密度推定を使用してプロットした;データポイントはいずれも、生物学的反復をn=3として行った実験のデータを示す)。
【0055】
【
図5】
図5a~
図5gは、HSPCの播種密度、リガンドの選択およびウェルの形状からなる設計パラメータの最適化を示す。
【0056】
【
図5a】0日目に、1cm
2あたりの播種密度を徐々に増加させて、ソーティング後のHSPCを播種し、7日目にDN1細胞サブセット、DN2細胞サブセット、DN3細胞サブセット、CD19+B細胞サブセット、CD11b+骨髄系細胞サブセットおよびCD25+CD90+pro-T細胞サブセットの頻度を定量した結果を示すグラフである(n=3)。データは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±95%CIを示す(*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
【0057】
【
図5b】リガンドであるDL1のコーティング濃度を徐々に増加させて培養を行い、7日目にDN1細胞サブセット、DN2細胞サブセット、DN3細胞サブセット、CD19+B細胞サブセット、CD11b+骨髄系細胞サブセットおよびCD25+CD90+pro-T細胞サブセットの頻度を定量した結果を示すグラフである(n=3)。(データは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±95%CIを示す;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。このNotchリガンドDL1は、DL4よりもNotch経路を活性化させる能力が低いことから、T細胞を誘導する効率がDL4よりも低いことがわかった。この結果は過去の報告と一致していた
6。
【0058】
【
図5c】0日目に、コーティングなしの条件(-DL4)または10μg/ml DL4でコーティングを行った条件(+DL4)でU底プレートまたは平底プレートに細胞を播種し、7日目にDN1細胞サブセット、DN2細胞サブセット、DN3細胞サブセット、CD19+B細胞サブセット、CD11b+骨髄系細胞サブセットおよびCD25+CD90+pro-T細胞サブセットの頻度を定量し、各条件でのU底プレートまたは平底プレートにおける培養を比較した結果を示すグラフである(n=3)。(データは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±95%CIを示す;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。過去に報告されているように
7、ウェルの形状(U底または平底)は、骨髄系細胞およびB細胞の運命決定に有意な影響を与えたが、T細胞の分化決定への影響は見られなかった。
【0059】
【
図5d】10μg/mLまたは20μg/mLの濃度のDL1-Fcの活性を試験するため、CBF-1ホタルルシフェラーゼプラスミドを使用して、24時間後にNotch経路の転写因子であるCBF-1の活性化を測定し、構成的に活性なウミシイタケプラスミドで標準化して、0μg/mL DL4-Fc(リガンドなし;ネガティブコントロール)と10μg/mL DL4-Fc(ポジティブコントロール)とを比較したグラフである(n=3)。吸着させたリガンドDL1は、リガンドDL4と同等のコーティング濃度において、T前駆細胞の発生を維持することができず、Notch経路を活性化することもできなかった。(データは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±95%CIを示す;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
【0060】
【
図5e】リガンドの非存在下、または可溶性DL4、吸着させたDL4、もしくは可溶性DL4と吸着させたDL4の組み合わせの存在下において、核内におけるCBF-1ホタルルシフェラーゼの活性化を介してNotchシグナル伝達経路の活性化を測定し、構成的に活性なウミシイタケプラスミドで標準化した結果を示すグラフである(n=3)。
【0061】
【
図5f】DN3 T前駆細胞に分化決定された細胞の頻度を最大とすることを目的として、IL-7を最適濃度に固定し、SCFとFLT3Lの試験濃度を同時に様々に変えた場合の望ましさを示した、実験計画法(DOE)による3D応答曲面プロットである。
【0062】
【
図5g】DN3 T前駆細胞に分化決定された細胞の頻度を最大とすることを目的として、FLT3Lを最適な濃度に固定し、SCFとIL-7の試験濃度を様々に変えた場合の望ましさを示した、実験計画法(DOE)による2D応答曲面プロットである。
【0063】
【
図6】
図6a~
図6nは、本発明において構築した胸腺ニッチにおいて、細胞マトリックスであるVCAM-1がDN3細胞の収率を向上させることを示す。
【0064】
【
図6a】胎仔肝臓由来HSPCにおけるα
4β
1インテグリン、α
4β
7インテグリンおよびα
5β
1インテグリンの発現のフローサイトメトリー分析の結果を示す。ソーティングしていないTer119
-細胞集団からSca-1
+c-kit
+7AAD
-細胞(HSPCコンパートメント)を選択した。HSPCはα
4β
1およびα
5β
1を発現していたが、α
4β
7インテグリンの発現量は低かった。
【0065】
【
図6b】Ter-119+細胞を除去した0日目の細胞集団からSca-1+cKit+細胞(HSPCコンパートメント)をゲーティングし、次いでα
4β
1インテグリンおよびα
4β
7インテグリンの発現を定量したフローサイトメトリー分析の結果を示す(n=3)。
【0066】
【
図6c】10μg/mLのDL4-Fcのみを吸着させたプレート、または10μg/mLのDL4-Fcと徐々に濃度を上げたVCAM-1(0.24μg/mL、0.47μg/mLおよび2.32μg/mL)とを吸着させたプレートにおいて、ソーティングにより得られたSca-1+cKit+HSPCを培養した結果を示すグラフである。7日目にDN1細胞、DN2細胞、DN3細胞、CD19+B細胞、CD11b+骨髄系細胞およびCD25+CD90+pro-T細胞の頻度を定量した(n=3)。
【0067】
【
図6d】10μg/mLのDL4-Fcのみを吸着させたプレート、または10μg/mLのDL4-Fcと徐々に濃度を上げたVCAM-1(0.24μg/mL、0.47μg/mLおよび2.32μg/mL)とを吸着させたプレートにおける培養によって得られた7日目のDN3 T前駆細胞の総収率を定量した結果を示すグラフである。データは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±95%CIを示す(*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
【0068】
【
図6e】培養7日目の、T細胞系列に分化決定されたDN3細胞の頻度に対する効果について、いくつかのサイトカイン(IL-6、可溶性IL-6R(sIL6R)、IL-11、IL-7、白血病抑制因子(LIF))、ケモカイン(CCL25、SDF1α)およびマトリックスタンパク質(VCAM-1)を様々な濃度で評価するために行ったスクリーニング研究の結果を示したグラフである(n=3)。データは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±95%CIを示す(*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
【0069】
【
図6f】10μg/mL DL4-Fcのみを吸着させた基材、10μg/mL DL4+フィブロネクチンを吸着させた基材、または10μg/mL DL4+VCAM-1を吸着させた基材上で培養した5日目~7日目のDN1細胞、DN2細胞およびDN3細胞の移動速度(μm/分)を測定した結果を示すグラフである。
【0070】
【
図6g】10μg/mL DL4-Fcのみを吸着させた基材、または10μg/mL DL4+VCAM-1を吸着させた基材上で培養した6日目~7日目のDN1細胞およびDN3細胞の平均移動速度(μm/分)を測定した結果を示すグラフである(n=3)。
【0071】
【
図6h】コーティングしていない基材、またはフィブロネクチン(FN)、VCAM-1、DL4、DL4+FNもしくはDL4+VCAM-1でコーティングした基材上で、ソーティングにより得られたHSPCの培養を開始してから24時間後および48時間後のDN2細胞(CD25+CD44+)の発生頻度を評価した結果を示すグラフである。DL4+VCAM-1は、他のどのコーティング条件と比較してもDN2細胞の発生が最も早かった。
【0072】
【
図6i】ソーティングにより得られたSca-1+cKit+HSPCを、コーティングしていない基材、または2.32μg/mL VCAM-1、10μg/mL DL4もしくはDL4+VCAM-1でコーティングした基材上に播種した結果を示すグラフである。培養の0時間後、24時間後および48時間後にDN2細胞の頻度を定量した(n=4)。
【0073】
【
図6j】コーティングしていない基材、またはFN、VCAM-1、DL4、DL4+FNもしくはDL4+VCAM-1でコーティングした基材上で、ソーティングにより得られたHSPCの培養を開始してから24時間後および48時間後のDN3細胞(CD25+CD44-)の発生頻度を評価した結果を示すグラフである。DL4+VCAM-1は、他のどのコーティング条件と比較してもDN3細胞の発生が最も早かった。
【0074】
【
図6k】ソーティングにより得られたSca-1+cKit+HSPCを、コーティングしていない基材、または2.32μg/mL VCAM-1、10μg/mL DL4もしくはDL4+VCAM-1でコーティングした基材上に播種した結果を示すグラフである。培養の0時間後、24時間後および48時間後にDN3細胞の頻度を定量した(n=4)。
【0075】
【
図6l】DL4でコーティングした基材またはDL4+VCAM-1でコーティングした基材上でHSPCを培養した24時間後および48時間後に、これらの基材上での培養を比較した代表的なフローサイトメトリープロットである(n=4)。
【0076】
【
図6m】Notch1受容体の細胞内ドメイン(NICD)の核内移行と、いくつかのフィードバックネットワークモチーフを含むT細胞発生遺伝子ネットワークの活性化とを示す図である。
【0077】
【
図6n】コーティングしていない基材、または2.32μg/mL VCAM-1、10μg/mL DL4もしくはDL4+VCAM-1でコーティングした基材上で、ソーティングにより得られたHSPCを24時間または48時間培養した後に、Notch経路の下流遺伝子(Hes1、Deltex、Notch1、Bcl11b、Gata3、Tcf7)、HSPC遺伝子(E2a)および骨髄系遺伝子(PU.1)の発現をqRT-PCRで測定した結果を示すグラフである(n=3)。qRT-PCRデータは、生物学的反復をn=3として行った実験の平均値±標準誤差を示し、それ以外のデータは、生物学的反復をn≧3として行った実験の平均値±95%CIを示す(*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
【0078】
【
図7】細胞外マトリックスによる刺激と組み合わせたDL4上における生細胞の増殖を示す。分化7日目に、フローサイトメトリーを使用してCD45+7AAD-をゲーティングすることによって生細胞を定量した。DL4のみを吸着させたプレート、またはDL4と徐々に用量を増加したVCAM-1とを吸着させたプレートにおいて細胞を分化誘導した。
【0079】
【
図8】
図8a~
図8hは、本発明において構築した胸腺ニッチにおいて、ヒトCD34+HSPCからT前駆細胞を作製できることを示す。
【0080】
【
図8a】各培養を開始する前に、播種される臍帯血由来HSPC中のCD34
+細胞の純度が95%を超えることを確認した。CD34+細胞の頻度は7AAD
-生細胞集団として評価した(n=3)。
【0081】
【
図8b】0日目の臍帯血由来CD34+細胞(HSPCコンパートメント)における、α4β1インテグリンおよびα4β7インテグリンの発現を分析した(n=3)。
【0082】
【
図8c-d】10μg/mL DL4のみを吸着させた基材、または10μg/mL DL4とフィブロネクチン(FN)、レトロネクチン(RN)もしくはVCAM-1とを吸着させた基材上で、ヒト臍帯血由来CD34+細胞を9日間(
図8c)または14日間(
図8d)培養し、CD7、CD34、CD45RAおよびCD5の発現をフローサイトメトリーで分析した結果を示すグラフである。DL4+VCAM-1培養では、9日目までに、CD7+CD34-T前駆細胞の表現型、CD7+CD45RA+T前駆細胞の表現型およびCD7+CD5+T前駆細胞の表現型が発生した(n=3)。
【0083】
【
図8e】本発明で構築した胸腺ニッチにおいて9日間または14日間培養したヒトCD34+HSPCの代表的なFACSプロットである。CD5およびCD45RAを共発現するCD7+細胞の発生が早くも培養9日目に見られた。
【0084】
【
図8f】10μg/mL DL4のみを吸着させた基材、または10μg/mL DL4とフィブロネクチン(FN)、レトロネクチン(RN)もしくはVCAM-1とを吸着させた基材上で培養した14日目のCD7+CD34-細胞の増殖を、0日目に播種したCD34+HSPCで標準化した相対値として示したグラフである(n=3)。
【0085】
【
図8g】DL4のみを吸着させた基材またはDL4+VCAM-1を吸着させた基材上で14日間培養したヒトCD34+HSPCの代表的なフローサイトメトリープロットである(n=3)。
【0086】
【
図8h】コーティングしていない基材、または2.32μg/mL VCAM-1、10μg/mL DL4もしくはDL4+VCAM-1でコーティングした基材上でヒトCD34
+HSPCを24時間培養した後に、Notch経路の下流遺伝子(Hes1、Deltex、Notch1、Bcl11b、Gata3、Tcf7)、HSPC遺伝子(E2a)および骨髄系遺伝子(PU.1)の発現をqRT-PCRで測定した結果を示すグラフである(n=5)。データは、生物学的反復をn=5として行った実験の平均値±標準誤差を示す(*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
【0087】
【
図9】
図9a~
図9cは、本発明において構築した胸腺ニッチおよびコントロールとしてのOP9-DL4培養系におけるヒトT前駆細胞の作製を示す。
【0088】
【
図9a】本発明において構築したDL4+VCAM-1胸腺ニッチまたはコントロールとしてのOP9-DL4共培養系での培養によって増殖した14日目の総細胞数を、0日目に播種したCD34+HSPCで標準化した相対値として示したグラフである(n=6)。
【0089】
【
図9b】本発明において構築したDL4+VCAM-1胸腺ニッチまたはコントロールとしてのOP9-DL4共培養系における14日目のCD7+の発現を示したグラフである(n=6)。OP9-DL4共培養系および本発明において構築した胸腺ニッチの間で有意差は見られなかった。
【0090】
【
図9c】OP9-DL4共培養系または本発明において構築した胸腺ニッチにおいて14日間培養した後に、CD7+CD34+集団、CD7+CD34-集団およびCD7+CD5+集団を定量した結果を示すグラフである。フローサイトメトリープロットは、各マウス群(n=3)における平均値±標準偏差を示し、それ以外のデータは、生物学的反復をn=6として行った実験の平均値±95%CIを示す(*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;n.s.=有意差なし)。
【0091】
【
図10】
図10a~
図10gは、本発明において構築した胸腺ニッチにおいて作製したヒトT前駆細胞のインビボでの成熟を示す。
【0092】
【
図10a】本発明において構築した胸腺ニッチまたはコントロールとしてのOP9-DL4培養系からソーティングされたCD7+細胞を使用して行ったインビボ研究の概要を示す。CD7+細胞を新生仔SRGマウスの肝臓内に注射し、4日ごとにヒトIL-7およびIL-7抗体(M25)を輸注した。4週間後に胸腺から細胞を採取し、10~12週間後に末梢血および脾臓から細胞を採取した。ヒトCD45+の発現をコンピュータ上でゲーティングして、成熟T細胞表面マーカーの発現を分析した。
【0093】
【
図10b】本発明において構築した胸腺ニッチまたはコントロールとしてのOP9-DL4培養系からソーティングされたCD7+細胞を新生仔SRGマウスに注射したところ、4週間後にインビボにおいて細胞が血中に循環した後に胸腺へと戻り(ホーミング)、胸腺に定着したことを示すグラフである。この評価は、マウス胸腺中のヒトCD45+の発現を定量することによって行った。
【0094】
【
図10c】SRGマウスのインビボ胸腺から細胞を採取し、ヒトCD45+の発現でゲーティングしたところ、CD3、CD4およびCD8を共発現するダブルポジティブT細胞に分化した細胞であったことを示す代表的なフローサイトメトリープロットである。
【0095】
【
図10d】OP9-DL4共培養系または本発明で構築した胸腺ニッチから得たCD7+細胞を注入してから4週間後にSRGマウスの胸腺から採取した成熟T細胞における、CD7、CD5、CD1a、CD4およびCD8の共発現を示す代表的なフローサイトメトリープロットである(各マウス群:n=3)。
【0096】
【
図10e】OP9-DL4共培養系または本発明で構築した胸腺ニッチから得たCD7+細胞を注入してから10~12週間後に末梢血から採取した成熟細胞傷害性循環T細胞におけるCD8およびCD3の発現を示す代表的なフローサイトメトリープロットである(各マウス群:n=3)。
【0097】
【
図10f】インビトロにおいてPMAおよびイオノマイシンで6時間刺激した成熟CD3+T細胞の細胞内において産生されたサイトカインIL-2、IFN-γおよびTNF-αの分泌を示す代表的なフローサイトメトリープロットである(各マウス群:n=3)(OP9-DL4共培養系または本発明において構築した胸腺ニッチから得たCD7+細胞を注入してから10~12週間後に脾臓から採取した細胞を使用した)。(
図10d~
図10fのフローサイトメトリープロットは、各マウス群(n=3)の平均値±標準偏差を示す;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;n.s.=有意差なし;OP9-DL4および本発明において構築した胸腺ニッチの間で有意差は見られなかった。)
【0098】
【
図10g】本発明で提案された機構の模式図を示す。
【0099】
【
図11】
図11a~
図11oは、フェドバッチ培養により増殖させたCD34+臍帯血細胞からのT前駆細胞の作製を示す。
【0100】
【
図11a】バイオリアクター技術を使用したフェドバッチ培養またはフェドバッチ+低分子化合物UM729培養によって、0日目の臍帯血由来CD34+HSPCを増殖させる方法の概要を示す。12日目に、これら2種の培養系から細胞を回収し、CD34+集団とCD34-集団にソーティングした。20μg/mL DL4および2.3μg/mL VCAM-1を使用して一晩かけてコーティングした96ウェルプレートに、SCF、Tpo、Flt3LおよびIL-7(各100ng/mL)を含む無血清IMDM+BIT培地を入れ、前記2種の培養方法で得られたソーティング後のCD34+細胞もしくはCD34-細胞、または増殖させていない0日目の解凍CD34+HSPCをそれぞれ4000個/ウェルの密度でプレートに播種した。7日後に培地を1回供給し、14日後に細胞を回収して、リンパ系細胞および骨髄系細胞の細胞表面マーカーをFACSで分析した。
【0101】
【
図11b】増殖させていない0日目のMACS濃縮CD34+細胞、12日目のフェドバッチ培養(FB)または12日目のフェドバッチ+UM729培養(FB+UM)(各100,000個)から得たCD34+細胞の総収率を示したグラフである。
【0102】
【
図11c】12日目のFB培養および12日目のFB+UM培養から得たCD34-細胞の総収率を示したグラフである。
【0103】
【
図11d】0日目の臍帯血由来CD34+細胞、12日目のFB培養由来CD34+細胞または12日目のFB+UM培養由来CD34+細胞を、DL4+VCAM-1アッセイにおいて分化誘導した14日目(総培養期間26日目)のリンパ系細胞集団および骨髄系細胞集団の頻度を示したグラフである。各細胞集団として、NK細胞(CD7+CD56+)、proB細胞(CD34+CD19+)、preB/B細胞(CD34-CD19+)、B細胞(CD5+CD19+)、骨髄系細胞(CD34-CD14/33+)、好中球(CD14/33+CD16+)およびpro-T細胞(CD7+)を評価した。UMを添加せずにFB培養した12日目のCD34+細胞は、CD7+pro-T細胞の発生頻度が最も高く、骨髄系細胞への分化に傾倒した細胞が最も少なかった。
【0104】
【
図11e】12日目のFB培養由来CD34-細胞または12日目のFB+UM由来CD34-細胞を、DL4+VCAM-1アッセイにおいて分化誘導した14日目(総培養期間26日目)のリンパ系細胞集団および骨髄系細胞集団の頻度を示したグラフである。いずれの培養から得た細胞も、骨髄系細胞の発生頻度が高かった。
【0105】
【
図11f】0日目の臍帯血由来CD34+細胞、12日目のFB培養由来CD34+細胞または12日目のFB+UM培養由来CD34+細胞から分化誘導されたCD7+細胞におけるT前駆細胞マーカーの共発現を示したグラフである。12日目のFB培養由来CD34+細胞からの分化誘導では、CD7+CD5+pro-T細胞およびCD7+CD45RA+pro-T細胞の発生頻度が最も高く、0日目のCD34+細胞からの分化誘導では、CD7+CD34+幼若前駆細胞の発生頻度が最も高かった。
【0106】
【
図11g】0日目のCD34-細胞または12日目のFB培養由来CD34-細胞から分化誘導されたCD7発現細胞
を評価したところ、T前駆細胞マーカーの共発現が見られな
かったことを示したグラフである。
【0107】
【
図11h】pro-T細胞アッセイにおける、播種したCD34+細胞(0日目の臍帯血由来CD34+細胞、12日目のFB培養由来CD34+細胞および12日目のFB+UM培養由来CD34+細胞)1個あたりのCD7+細胞の収率を示したグラフである。pro-Tアッセイにおいて、播種したCD34+細胞1個あたりのCD7+細胞の収率は、12日目のFB培養由来CD34+細胞を使用した場合に最も高かった(n=3)。
【0108】
【
図11i】0日目の臍帯血、12日目のFB培養または12日目のFB+UM培養から得られた全CD34+細胞数に対するCD7+細胞の収率を示したグラフである。各培養方法で得られた全CD34+細胞数に対するCD7+細胞の収率も、12日目のFB培養由来CD34+細胞を使用した場合に最も高かった(n=3)。
【0109】
【
図11j】0日目の臍帯血または12日目のフェドバッチ増殖培養(12日目FB)から回収したCD34+細胞を、DL4+VCAM-1で2Dコーティングしたプレート上で14日間分化誘導した場合の、全CD34+細胞数に対するCD7+pro-T細胞の収率を示したグラフである(n=3)。
【0110】
【
図11k】0日目の臍帯血または12日目のフェドバッチ増殖培養(12日目FB)から回収したCD34+細胞を、DL4+VCAM-1で2Dコーティングしたプレート上で14日間分化誘導した場合の、播種したCD34+細胞1個あたりのCD7+pro-T細胞の収率を示したグラフである(n=3)。
【0111】
【
図11l】pro-T細胞アッセイにおける、播種したCD34+細胞(0日目の臍帯血由来CD34+細胞、12日目のFB培養由来CD34+細胞および12日目のFB+UM培養由来CD34+細胞)1個あたりのCD7+CD56+NK細胞の収率を示したグラフである。pro-Tアッセイにおいて、播種したCD34+細胞1個あたりのNK細胞の収率は、12日目のFB培養由来CD34+細胞を使用した場合に最も高い傾向があった(n=2)。
【0112】
【
図11m】0日目の臍帯血、12日目のFB培養または12日目のFB+UM培養から得られた全CD34+細胞数に対するNK細胞の収率を示したグラフである。各培養方法で得られた全CD34+細胞数に対するNK細胞の収率も、12日目のFB培養由来CD34+細胞を使用した場合に最も高い傾向があった(n=2)。
【0113】
【
図11n】pro-T細胞アッセイにおける、播種したCD34+細胞(0日目の臍帯血由来CD34+細胞、12日目のFB培養由来CD34+細胞および12日目のFB+UM培養由来CD34+細胞)1個あたりのCD33+/CD14+骨髄系細胞の収率を示したグラフである。pro-Tアッセイにおいて、12日目のFB+UM培養由来CD34+細胞を使用した場合、播種したCD34+細胞1個あたりの骨髄系細胞分化能は、0日目の臍帯血由来CD34+細胞のものと同程度である傾向が見られたが、12日目のFB培養由来CD34+細胞では骨髄系細胞への分化が抑制されていた(n=2)。
【0114】
【
図11o】0日目の臍帯血、12日目のFB培養または12日目のFB+UM培養から得られた全CD34+細胞数に対する骨髄系細胞の収率を示したグラフである。各培養方法で得られた全CD34+細胞数に対する骨髄系細胞の収率は、12日目のFB+UM培養由来CD34+細胞を使用した場合に最も高い傾向があった(n=2)。
【0115】
【
図12】
図12a~
図12dは、ヒト多能性幹細胞(hPSC)に由来する造血内皮(HE)細胞からのT前駆細胞(CD7+CD56-)の作製を示す。
【0116】
【
図12a】培養6日目に発生したhPSC由来HE細胞の表現型を示す。CD43とCD73を共発現するCD34+発現細胞を示した代表的なフローサイトメトリープロットを示す。
【0117】
【
図12b】6日目に行ったhPSC由来CD34+HE細胞の磁気濃縮および濃縮後のCD34+の発現の評価を示す。
【0118】
【
図12c】6日目に濃縮したCD34+細胞をOP9-DL4共培養系またはDL4+VCAM-1無血清培養系に播種し、2週間後にフローサイトメトリーを使用してT前駆細胞マーカーを分析した結果を示した代表的なフローサイトメトリープロットである。DL4+VCAM-1プレートに播種したPSC由来CD34+細胞から、CD5を低発現するCD7+CD34-細胞が発生した。
【0119】
【
図12d】0日目の臍帯血由来CD34+HSPCを複数のDL4+VCAM-1プレートに同時に播種してポジティブコントロール培養を行った結果を示した代表的なフローサイトメトリープロットである。6日目のPSC由来HE細胞から得たCD34-分画もDL4+VCAM-1上に播種し、T前駆細胞の発生を分析した。
【0120】
【0121】
【
図13a】臍帯血(UCB)由来CD34+細胞を、OP9-DL4間質共培養系(n=6)で培養すると同時に、DL4+VCAM-1でコーティングした96ウェルプレート(n=6)、6ウェルプレート(n=3)または接着培養用バイオリアクターバッグ(n=1)を使用した無血清条件での培養系においても培養を行うことによって、14日間かけて分化誘導し、増殖した総細胞数を相対値として示したグラフである。
【0122】
【
図13b】CD7+T前駆細胞、CD7+CD34+T前駆細胞、CD7+CD34-T前駆細胞およびCD7+CD5+T前駆細胞の頻度を示すグラフである。
【0123】
【
図13c】OP9-DL4間質共培養系、DL4+VCAM-1でコーティングした6ウェルプレート、またはDL4+VCAM-1でコーティングした接着培養用バイオリアクターバッグで作製した14日目のCD7+T前駆細胞、CD7+CD34+T前駆細胞、CD7+CD34-T前駆細胞およびCD7+CD5+T前駆細胞を示す代表的なフローサイトメトリープロットである。
【発明を実施するための形態】
【0124】
別段の記載がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有すると見なされる。
【0125】
用語の定義
【0126】
本明細書において「幹細胞」は、さらに特化した細胞に分化することが可能な、自己複製能を有する細胞を指す。幹細胞としては、胚性幹細胞(ESC)や人工多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞(PSC);および臍帯血幹細胞や成体幹細胞などの、様々な組織で見出され、複数の細胞種に分化可能な幹細胞が挙げられる。
【0127】
本明細書において「前駆細胞」は、1種以上の細胞に分化することが可能であるが、通常は自己複製能を有していない細胞を指す。前駆細胞は幹細胞から分化した細胞であり、元となった幹細胞と比べてその能力は限定的である。たとえば、造血幹細胞(HSC)は、成体の骨髄、末梢血および臍帯血で見出され(ただし、末梢血中のHSC数は少ない)、あらゆる種類の血球に分化する能力を有する。造血前駆細胞は、より限られた種類の血球または特定の種類の血球のみに分化可能な、HSC由来多能性細胞または特定の細胞系列に分化決定されたHSC由来細胞を指す。造血幹細胞/前駆細胞(HSPC)は、インビボにおいて通常、不均一な集団として存在し、本明細書に記載されているように、不均一集団として使用される。
【0128】
本明細書において「T前駆細胞」および「pro-T細胞」は、多能性幹細胞またはCD34+の造血幹細胞および/もしくは前駆細胞に由来する細胞であり、CD7+(ヒト免疫系)またはCD25+CD90+(マウス免疫系)を発現し、1種以上の成熟T細胞に分化する能力を有している。成熟T細胞は、細胞表面マーカーとしてCD4、CD8およびCD3の組み合わせを発現する細胞を含む。
【0129】
本明細書において「既知成分からなる培地」は、化学組成の明らかな成分のみで構成された化学組成の明らかな培地処方を指す。既知成分からなる培地は、化学組成が知られている成分を含んでいてもよい。培地成分は、合成成分であってもよく、かつ/または天然の公知の供給源に由来する成分であってもよい。たとえば、既知成分からなる培地は、公知の組織または細胞から分泌される1種以上の成長因子を含んでいてもよい。しかし、既知成分からなる培地には、細胞培養から得られる馴化培地は含まれない。既知成分からなる培地には、動物から単離された公知の特定の血清成分(ヒト由来の血清成分など)が含まれていてもよいが、血清は含んでいない。既知成分からなる培地に添加される血清成分(たとえばウシ血清アルブミン(BSA)など)はいずれも、実質的に均質な成分であることが好ましい。
【0130】
本明細書において「無血清培地」は、動物血清を含んでいない細胞培養培地を指す。無血清培地には、動物(ヒトを含む)から単離された公知の特定の血清成分(たとえばBSAなど)が含まれていてもよい。
【0131】
本明細書において「Delta-like-4」、「DL4」および「NotchリガンドであるDL4」は、ヒトのDLL4遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。DL4はNotchシグナル伝達経路のメンバーであり、当技術分野では「Delta like ligand 4」や「DLL4」とも呼ばれる。本明細書においてDL4について述べる場合、DL4はDL4タンパク質全体に限定されず、DL4のシグナル伝達ペプチド部分を少なくとも含む。本発明での使用に適したDL4タンパク質としては、たとえば、ヒトIgG1のFc領域のC末端に、ヒトDLL4(完全長DLL4;アクセッション番号:NP_061947.1;配列番号1)の細胞外ドメイン(1番目のMetから524番目のProまでの領域)が融合された融合タンパク質を含む市販品(Sino Biologicals)が挙げられる。
【0132】
本明細書において「血管細胞接着分子-1」および「VCAM-1」は、ヒトのVCAM1遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。VCAM-1は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーであるI型膜貫通タンパク質として細胞表面に存在するシアロ糖タンパク質である。VCAM-1は当技術分野において「血管細胞接着タンパク質1」や「分化抗原(CD)106」とも呼ばれる。本明細書においてVCAM-1について述べる場合、VCAM-1は、VCAM-1タンパク質全体に限定されず、VCAM-1のシグナル伝達ペプチド部分(QIDSPL(配列番号2)またはTQIDSPLN(配列番号3))を少なくとも含む。本発明での使用に適したVCAM-1タンパク質としては、たとえば、マウスVCAM-1(完全長マウスVCAM-1;アクセッション番号:CAA47989;配列番号4)の25番目のPheから698番目のGluまでの領域にヒトIgG1のFc領域が融合された融合タンパク質を含む市販のマウスVCAM-1-Fcキメラタンパク質(R&D)が挙げられる。ヒトVCAM-1(完全長ヒトVCAM-1;アクセッション番号:P19320、NP001069、EAW72950;配列番号5)の少なくとも一部の使用も、本発明によって提供される方法での使用に適している場合がある。
【0133】
本発明の概要
【0134】
本明細書で述べるように、本発明者らは、インビトロの無血清培養系においてT前駆細胞(pro-T細胞)を作製する方法を確立した。この方法は、NotchリガンドであるDelta-like-4(DL4)とVCAM-1の存在下において、無血清培地中で幹細胞および/または前駆細胞を培養し、pro-T細胞を作製することを含む。一実施形態において、本発明者らは、DL4およびVCAM-1が相乗的にNotchシグナル伝達を増強し、pro-T細胞の分化および遊走を促進することを見出した。
【0135】
本発明によって提供される方法を使用して作製されたpro-T細胞が提供される。本発明によって提供されるpro-T細胞は、たとえば、後述するように、pro-T細胞および/または該細胞よりも成熟したT細胞を必要とする対象を治療するために使用してもよい。たとえば、pro-T細胞および/または成熟T細胞の移入を必要とする宿主に、本発明によって提供されるpro-T細胞の有効量を含む細胞移植を実施してもよく、あるいは本発明によって提供されるpro-T細胞の有効量と幹細胞(たとえばHSPC)とを併用した細胞移植を実施してもよい。
【0136】
インビトロにおいてT前駆細胞を作製する方法
【0137】
インビトロにおいてpro-T細胞を作製するための本発明の方法は、通常、pro-T細胞への分化に適した条件および培養時間で、DL4およびVCAM-1の存在下、無血清培地中で幹細胞および/または前駆細胞を培養することを含む。pro-T細胞が誘導されたことを確認するため、pro-T細胞であることを示す1つ以上の特徴について培養細胞を分析してもよく、たとえば1つ以上の細胞表面マーカーを分析してもよい。
【0138】
一実施形態において、前記幹細胞および/または前駆細胞は、ESCやiPSCなどの多能性幹細胞である。一実施形態において、前記幹細胞および/または前駆細胞はHSPCである。HSPCは、たとえば、臍帯血、末梢血または骨髄から得てもよく、あるいは、インビトロにおいて、ESC、iPSCまたはその他の中間的な幹細胞から作製してもよい。好ましい一実施形態において、前記幹細胞および/または前駆細胞はヒト細胞である。
【0139】
一実施形態において、前記方法は2次元(2D)培養系で実施される。たとえば、標準的な組織培養プレートの1つ以上のウェルをDL4およびVCAM-1でコーティングする。一実施形態において、DL4およびVCAM-1は吸着させたタンパク質として提供される。次に、DL4およびVCAM-1で2Dコーティングしたウェルに無血清の造血細胞分化培地を入れ、各ウェルに幹細胞および/または前駆細胞を播種し、pro-T細胞の誘導に適した条件下で一定時間培養する。造血細胞の分化全般に適した培地は当業者に知られており、市販品が入手可能である。一実施形態において、本発明によって提供される方法における使用に適した造血細胞分化培地としては、本明細書に記載されたものが好ましい。
【0140】
一実施形態において、7.5~20μg/mL(好ましくは約15~20μg/mL)の濃度のDL4-Fcと、0.15~5.3μg/mL(好ましくは約2.3~5.3μg/mL)の濃度のVCAM-1-Fcとを含む液を、標準的な96ウェル組織培養プレートの各ウェルに約50μLずつ加え、一晩かけてコーティングする。その後、結合しなかったリガンドを除去するため、コーティングしたウェルを洗浄し、無血清の造血細胞分化培地を入れ、所定の密度の幹細胞、たとえば96ウェルプレートにおいて約1000~4000個/ウェルの密度の幹細胞を各ウェルに播種する。好ましい一実施形態において、無血清の造血細胞分化培地は既知成分からなる培地であり、たとえば、20%ウシ血清アルブミンとインスリンとトランスフェリンとからなる血清代替品を添加したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM+BIT)である。好ましい一実施形態においては、pro-T細胞の分化を促進する成長因子、たとえば、幹細胞因子(SCF)、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン7(IL-7)などの成長因子の存在下において、播種した細胞を培養する。播種した細胞は、pro-T細胞を誘導するのに十分な時間、たとえば9~21日間(ヒト)または7~14日間(マウス)にわたって適温(たとえば37℃)で培養する。pro-T細胞が誘導されたことを確認するため、pro-T細胞であることを示す1つ以上の特徴ついて、2D培養系で培養した細胞を分析してもよく、たとえば特異的な分子マーカーを分析してもよい。
【0141】
通常、胸腺におけるpro-T細胞の発生は、DN1、DN2、DN3およびDPと一般に呼ばれる4つの段階を順に経ることを特徴とする(DN=ダブルネガティブ;DP=CD4とCD8を発現するダブルポジティブ)。マウスのpro-T細胞は、細胞表面のCD25およびCD44の発現によって追跡することができる。マウスのT細胞の分化は、一連のダブルネガティブ段階(DN;CD4-CD8-)、すなわちDN1(CD25-CD44+CD90-)、DN2(CD25+CD44+CD90+)、DN3(CD25+CD44-CD90+/-)を順に経て進み、最終的にダブルポジティブT細胞(DP;CD4+CD8+)およびシングルポジティブT細胞(SP;CD4+CD3+またはCD8+CD3+)に成熟する。ヒトのpro-T細胞は、細胞表面のCD4およびCD8の発現によって追跡することができる。ヒトのT細胞の分化は、一連のダブルネガティブ段階(DN;CD4-CD8-)、すなわち、CD7+CD34+幼若T前駆細胞からCD7+および/またはCD34-および/またはCD5+および/またはCD45RA+のpro-T細胞へと進み、最終的にダブルポジティブT細胞(DP;CD4+CD8+)およびシングルポジティブT細胞(SP;CD4+CD3+またはCD8+CD3+)に成熟する。一実施形態において、本発明によって提供される方法は、マウスCD25+CD90+pro-T細胞を作製するために使用してもよい。一実施形態において、本発明によって提供される方法は、ヒトCD7+pro-T細胞を作製するために使用してもよい。
【0142】
本発明によって提供されるインビトロの方法を使用して作製されたT前駆細胞
【0143】
本発明によって提供される方法を使用して作製されたpro-T細胞が提供される。このpro-T細胞はヒトpro-T細胞であることが好ましい。一実施形態において、ヒトpro-T細胞は、細胞表面のCD4およびCD8の発現の表現型に基づいて識別してもよく、より具体的には、一連のダブルネガティブ段階(DN;CD4-CD8-)、すなわちCD7+CD34+幼若T前駆細胞からCD7+および/またはCD34-および/またはCD5+および/またはCD45RA+のpro-T細胞へと進み、最終的にダブルポジティブT細胞(DP;CD4+CD8+)およびシングルポジティブT細胞(SP;CD4+CD3+またはCD8+CD3+)に成熟するという表現型に基づいて識別してもよい。一実施形態において、本発明によって提供されるヒトpro-T細胞はCD7の発現に基づいて識別してもよい。一般に、リンパ系細胞は、小さな円形の形態であること、およびギムザ染色で青色に染まることから同定することができる。一実施形態において、本発明によって提供されるpro-T細胞は、その機能に基づいて識別してもよい。たとえば、CD7+pro-T細胞をインビボ移植すると、移植された細胞は胸腺へと移動(ホーミング)して胸腺に定着し、急速に分裂してDP T細胞およびSP T細胞を産生する。
【0144】
一実施形態において、前記幹細胞および/または前駆細胞は、ESCやiPSCなどの多能性幹細胞である。一実施形態において、前記幹細胞および/または前駆細胞はHSPCである。HSPCは、たとえば、臍帯血、末梢血または骨髄から得てもよく、あるいは、インビトロにおいて、ESC、iPSCまたはその他の中間的な幹細胞から作製してもよい。好ましい一実施形態において、前記幹細胞および/または前駆細胞はヒト細胞である。
【0145】
一実施形態において、本発明によって提供される方法を使用して作製されるpro-T細胞は、自己由来のpro-T細胞である。
【0146】
一実施形態において、本発明によって提供される方法を使用して作製されるpro-T細胞は、同種異系pro-T細胞である。
【0147】
さらに、放射線療法を受け、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)不適合を引き起こさないpro-T細胞を必要とする対象に、本発明によって提供される同種異系pro-T細胞を移入することも考えられる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、pro-T前駆細胞は、胸腺において分化が完了して初めて宿主のMHCに拘束され、宿主に寛容されるTリンパ球になることができ、少なくともこの理由から、pro-T細胞は、成熟したT細胞とは異なり、移植片対宿主病(GVHD)を引き起こさないと考えられる。したがって、本発明によって提供されるpro-T細胞の治療的使用において、厳密な組織適合性は必要とされない。
【0148】
本発明によって提供されるpro-T細胞は、たとえば、pro-T細胞および/または該細胞よりも成熟したT細胞を必要とする対象を治療するために使用してもよい。「治療」とは、対象においてT細胞数を増加させるのに適した条件下において、本発明によって提供される細胞の有効量を対象に投与し、その結果、T細胞の欠乏を伴う病態の予防、抑制および/または治療がもたらされることを意味する。「有効量」とは治療有効量を意味し、たとえば、対象への投与によって意図した目的(たとえば治療など)を達成するのに十分な量の細胞を指す。有効量は対象ごとに異なっていてもよく、たとえば対象の性別、年齢、体重もしくは健康歴、ならびに/または予防、抑制および/もしくは治療が行われる病態の根本的な原因などの、1つ以上の因子に左右されてもよい。
【0149】
本明細書に記載のpro-T細胞の移植による恩恵を受けることのできる対象は、たとえば、リンパ球減少症を伴う病態またはリンパ球減少症を引き起こす病態に罹患している対象であってもよい。本発明によって提供されるpro-T細胞の投与による恩恵を受けることのできる対象は、たとえば、化学療法を受けた対象および/または放射線照射を受けた対象(たとえば、がんの治療を受けている対象など)、またはHIV感染症、胸腺の部分切除歴、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデスや関節リウマチなど)もしくは糖尿病を有する対象であってもよい。一実施形態において、投与される前記細胞は自己由来細胞であってもよい。一実施形態において、投与される前記細胞は同種異系細胞であってもよい。一実施形態において、本発明によって提供される細胞は、臓器移植時に宿主の免疫寛容を誘導するために使用してもよい。
【0150】
T前駆細胞を作製するためのキット
【0151】
本開示は、本発明によって提供される方法を実施するためのキットを包含する。このようなキットは、通常、pro-T細胞の作製に必要とされる2つ以上の構成要素を含む。前記キットに含まれる構成要素としては、化合物、試薬、容器、機器、および該キットを使用するための説明書のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本明細書に記載の方法は、本発明によって提供されるあらかじめパッケージ化されたキットを使用して実施してもよい。
【0152】
一実施形態において、インビトロにおけるPSCまたはHSPCからのpro-T細胞の作製に使用するためのキットが提供される。このキットはDL4およびVCAM-1を含む。一実施形態において、DL4は基材に吸着または固相化されている。一実施形態において、VCAM-1は基材に吸着または固相化されている。一実施形態において、前記キットは造血細胞分化培地をさらに含み、該造血細胞分化培地は、SCF、Flt3L、IL-7および/またはTPOなどの成長因子を、造血細胞の誘導が可能な量で含むことが好ましい。各成長因子の量は、たとえば、10~50ng/mL(マウス細胞の培養)または約100ng/mL(ヒト細胞の培養)であってもよい。いくつかの実施形態において、インビトロおいて幹細胞および/または前駆細胞(PSCまたはHSPCなど)からpro-T細胞を作製するためのキットの使用説明書が提供される。この使用説明書は、DL4成分と、任意で使用されるVCAM-1成分とを調製するためのプロトコル;培養系にDL4成分および/またはVCAM-1成分を提供するためのプロトコル;時間、温度、および/または培養時のガス濃度などの培養条件に関するプロトコル;回収プロトコル;pro-T細胞と、任意で得られる、pro-T細胞よりも成熟したT細胞とを同定するためのプロトコルのうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0153】
前記キットは、本発明の方法の実施に有用な材料、たとえば、培養プレート、ウェルプレート、ペトリディッシュなどをさらに含んでいてもよい。
【0154】
以下の実施例を参照しながら本発明の実施形態をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0155】
実施例1:方法
【0156】
後述の実施例において使用する方法を実施例1にて説明する。
【0157】
胎仔肝臓の採取およびHSPCのソーティング
【0158】
交配日が確認されていない妊娠(E13~14)雌性CD-1マウスを、チャールス・リバー・ラボラトリーズ社(マサチューセッツ州ウィルミントン)から購入した。動物実験計画書は、Canadian Council on Animal Careのガイドラインに従ったものであり、トロント大学の動物実験委員会によって承認された。外科用鉗子を使用してマウス胚(E14~15)を断頭し、胎仔肝臓を採取した。2%ウシ胎仔血清(FBS;インビトロジェン)を含むハンクス平衡塩類溶液(HBSS;インビトロジェン、カリフォルニア州カールスバッド)(またはHF培地)に胎仔肝臓を入れ、針先が鈍角な16ゲージ針(Stemcell Technologies)を使用して破砕した。21ゲージ針に細胞を緩やかに3回通して単一細胞懸濁液を得た。細胞を4℃、1500rpmで5分間スピンダウンし、HF培地で2回洗浄した。次いで、EasySepTM magnetic sorting(Stemcell Technologies、カナダ国ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)をメーカーの説明書に従って使用して、Ter119+細胞の除去を2回行った。HSPCのソーティングを行うため、1×107個/mLの密度のTer119-胎仔肝細胞を氷冷HF培地中で以下のようにして染色した。1%抗Fc受容体抗体(Fc-block、BDバイオサイエンス、カリフォルニア州サンノゼ)で細胞の非特異的結合をブロッキングし、抗Sca-1-PE抗体および抗cKit-APC抗体(BDバイオサイエンス、カリフォルニア州サンノゼ)を使用して氷上で20分間染色した。7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD;インビトロジェン)を使用した生細胞ソーティングによって死細胞を除去した。FACSAriaTM IIフローサイトメーター(ベクトン・ディッキンソン)、MoFlo(登録商標)AstriosTMフローサイトメーター(ベックマン・コールター)またはMoFloTM XDPフローサイトメーター(ベックマン・コールター)を使用して、1×106個/mLの細胞をソーティングした。アイソタイプコントロールおよび単染色した補正コントロールを使用して、陰性コントロールに含まれる細胞の99.5%が陰性細胞となるように、ソーティングに使用する閾値を設定した。
【0159】
DL4-Fcの作製およびDL4-Fcでコーティングしたプレートの作製
【0160】
実験に使用するDL4-Fcとして、Sino Biologicals社(Cedarlane Labs、カナダ国オンタリオ州バーリントン)から購入した市販品、または後述の方法で作製した自家製のものを使用した。氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で10μg/mLまたは20μL/ウェルの濃度に希釈したDL4-Fc 50μLを、標準的な96ウェル組織培養プレートの各ウェルに入れて4℃で一晩かけてコーティングした。細胞を播種する前に各ウェルをPBSで1回洗浄し、結合しなかったリガンドを除去した。いくつかの実験では、本明細書に記載の濃度でDL4-FcおよびVCAM-1-Fc(R&D)を含むPBSまたは本明細書に記載の濃度でフィブロネクチン(シグマ)を含むPBSを各50μL使用して、各ウェルを一晩かけてコーティングした。
【0161】
遺伝子組換えDL4-Fcは以下のようにして作製した。まず、マウスDll4の細胞外ドメイン(配列番号1の1番目~529番目のアミノ酸領域)をコードする配列をヒトIgG1のFc部分(ヒンジ領域を含む)に融合させ、哺乳動物発現プラスミドpIRESpuro2(クロンテック、カリフォルニア州マウンテンビュー)に挿入した。標準的なCaPO4トランスフェクション法を使用して、このプラスミドをHEK-293T細胞にトランスフェクトした。DMEM培地[10%(v/v)FBS、2mM Glutamax、ペニシリン(100U/ml)/ストレプトマイシン(100mg/ml)(いずれもサーモフィッシャーサイエンティフィック社(イリノイ州ロックフォード)の製品)、2mM 2-メルカプトエタノール(シグマ アルドリッチ、ミシガン州セントルイス)を添加したもの]に2μg/mLピューロマイシンを加え、ピューロマイシン耐性に基づいて、プラスミドが安定に組み込まれた細胞を選択した。細胞を増殖させ、FreeStyleTM 293発現培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック)に移して培養した。AKTAprime plusTM(GEヘルスケア)自動クロマトグラフィーシステムに装着したHiTrapTM Protein Gアフィニティーカラム(GEヘルスケアライフサイエンス、マサチューセッツ州モールバラ)を使用して、培地中に分泌されたDL4-Fc融合タンパク質を精製した。いくつかの実験では、過去の報告に従ってDL1-Fcを作製した8。
【0162】
ソーティングにより得られたHSPCの播種およびインビトロ培養
【0163】
DL4でコーティングした96ウェルプレートに、20%ウシ血清アルブミンとインスリンとトランスフェリンからなる血清代替品(BIT;Stemcell Technologies)、1%GlutaMAXTM(Gibco)および1μg/mL低密度リポタンパク質(Calbiochem、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)を添加した無血清イスコフ改変ダルベッコ培地(Gibco、メリーランド州ロックビル)[IMDM+BIT]を入れ、ソーティングにより得られたsca1+ckit+HSPCを1000個/ウェルの密度(3.1×103個/cm2に相当)で播種して培養した。ポジティブコントロール培養として、αMEM培地(Gibco)および16%FBS(HycloneTM、GEヘルスケア)を含む血清培地中のOP9細胞上に播種した。無血清αMEM+BIT培地は、基礎培地としてαMEM(Gibco)を使用したこと以外はIMDM+BIT培地と同様にして調製した。25ng/mL幹細胞因子(SCF;R&Dシステムズ、ミネソタ州ミネアポリス)、5ng/mL FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L;R&Dシステムズ)および1ng/mLインターロイキン-7(IL-7;R&Dシステムズ)を添加した、OP9細胞存在下の血清培地、無血清αMEM+BIT培地または無血清IMDM+BIT培地200μLを各ウェルに加え、4日目に、過去に報告されている方法と同様にして9、2倍の濃度のサイトカインを含む培地と培地の半量を交換した。Design-Expert(登録商標)(v.10)を使用して応答曲面法を実施することによりin silicoモデル化による実験計画法(DOE)を行い、DN3 T細胞の収率が最大となり、IMDM+BIT培地の使用量が最小となるような、SCF、Flt3LおよびIL-7の濃度の望ましい組み合わせを調査した。DOEによる最適化後、本明細書に特に記載がない限り、50ng/mL SCF(R&Dシステムズ)、10ng/mL Flt3L(R&Dシステムズ)および10ng/mL IL-7(R&Dシステムズ)を添加した無血清IMDM+BIT培地50μLを各ウェルに加え、アッセイ期間中、培地を交換しなかった。無血清IMDM+BIT培地中における候補因子のスクリーニングに使用したタンパク質または低分子化合物およびそれらの濃度を以下に示す:JAK阻害剤I(50nM;EMDミリポア)、IL-11(10ng/mL、50ng/mLおよび100ng/mL;R&Dシステムズ)、IL-6(10ng/mL、50ng/mLおよび100ng/mL;R&Dシステムズ)、IL-6R(100ng/mL;R&Dシステムズ)、Ccl25(1.5μg/mL;R&Dシステムズ)、IL-7(50ng/mL、100ng/mLおよび200ng/mL;R&Dシステムズ)、SDF1α(Cxcl12;200ng/mL;R&Dシステムズ)、および白血病抑制因子(LIF;0.1ng/mL、1ng/mLおよび10ng/mL;EMDミリポア)。
【0164】
ヒトHSPCの培養は、マウントサイナイ病院において、倫理承認を受けた手順に従い、同意が得られたドナーから臍帯血試料を採取して行った。CD34+細胞は、EasySepTM Human CD34 Positive Selection Kit(Stemcell Technologies)をメーカーの説明書に従って使用して、赤血球(RBC)を溶解した臍帯血分画から単離した。濃縮を行うごとにフローサイトメトリーを実施し、CD34+細胞の頻度が95%を超えていることを確認した。DL4とVCAM-1でコーティングした96ウェルプレートにCD34+HSPCを12,500個/cm2(4000個/ウェルに相当)という高い播種密度で播種し、14日間培養した。培養7日目に培地の全量交換を1回行い、同じDL4+VCAM-1コーティングプレートに細胞を戻した。いくつかの実験では、後述するように、DL4-Fcのみでコーティングしたプレート、DL4-FcとRetroNectin(登録商標)(宝酒造)でコーティングしたプレート、またはDL4-Fcとフィブロネクチン(シグマ アルドリッチ)でコーティングしたプレートを使用した。CD34+細胞の培養は、20%ウシ血清アルブミンとインスリンとトランスフェリンからなる血清代替品(BIT;Stemcell Technologies)、1%GlutaMAXTM(Gibco)および1μg/mL低密度リポタンパク質(Calbiochem)を添加した無血清イスコフ改変ダルベッコ培地(Gibco)中で行った。この培地に、100ng/mL SCF(R&Dシステムズ、ミネソタ州ミネアポリス)、100ng/mL Flt3L(R&Dシステムズ)、100ng/mL Tpo(R&Dシステムズ)および100ng/mL IL-7(R&Dシステムズ)を加え、調製した培地50μLを各ウェルに加えた。
【0165】
フローサイトメトリー
【0166】
表面マーカーの染色は、標識ラット抗マウス抗体(BDバイオサイエンス、カリフォルニア州サンノゼ、表1)を使用して行った。試料はすべて、FACSCanto
TMフローサイトメーターまたはFACS LSRFortessa
TMフローサイトメーター(BDバイオサイエンス)で分析した。培養7日目に、細胞をHF培地で複数回リンスしてプレートから剥がし、1:400に希釈した抗CD45抗体、抗CD25抗体、抗CD44抗体、抗CD90抗体、抗CD11b抗体および抗CD19抗体を使用して氷上で20分間染色した。ヒトT前駆細胞は、1:100に希釈した抗CD34抗体、抗CD7抗体、抗CD5抗体および抗CD45RA抗体で染色した。Sca-1+cKit+マウスHSPCおよびCD34+ヒト臍帯血細胞におけるインテグリンの発現は、インテグリンサブユニットに対する抗体である抗α4鎖抗体、抗β1鎖抗体および抗β7鎖抗体を使用して分析した。細胞内サイトカインを染色するため、脾細胞を採取し、洗浄した後、蛍光色素で標識した抗ヒトCD45抗体および抗ヒトCD3抗体で染色し、次いでCytofix/Cytoperm
TMキット(BDバイオサイエンス)を使用して固定および細胞膜透過処理を行い、IL-2特異的抗体、IFN-γ特異的抗体およびTNF-α特異的抗体で染色した。表1に記載のマウス抗ヒト抗体を購入して使用した。細胞をHF培地で2回洗浄し、1:1000に希釈した7-AAD(ライフテクノロジーズ)を使用して死細胞を除去した。FlowJo(登録商標)ソフトウェアを使用してフローサイトメトリーデータの分析およびバッチ処理を行い、Python(バージョン2.7.10)を使用してさらに分析を行った。
【表1】
【0167】
NIH3T3細胞を使用したルシフェラーゼアッセイによる、Notch活性化の測定
【0168】
トランスフェクションの前日に、NIH3T3細胞を6ウェルプレートに125,000個/ウェルの密度で播種し、FuGENE(登録商標)HDトランスフェクション試薬(プロメガ社、米国マディソン州ウイスコンシン)をメーカーの説明書に従って使用して、Notch1プラスミド、CBF1-ホタルルシフェラーゼプラスミドおよび構成的に活性なウミシイタケルシフェラーゼプラスミドを一晩かけて一時的にトランスフェクトさせた。トランスフェクトしたNIH3T3細胞をDL4コーティングプレートまたはDL4標識マイクロチャンバー(MC)に播種し、24時間培養した後、dual-luciferase reporter assay system(プロメガ社、米国マディソン州ウイスコンシン)をメーカーの説明書に従って使用して、ホタルルシフェラーゼの活性化を測定し、ウミシイタケルシフェラーゼの発現で標準化した。
【0169】
生細胞イメージング
【0170】
様々な基材でコーティングした96ウェルプレートに、ソーティングにより得られたSca-1+cKit+HSPCを低密度(200個/ウェル)で3連ずつ播種した。6日間培養後、APC標識抗CD25抗体およびPE標識抗CD44抗体(1:500希釈)を使用して細胞を37℃で1時間染色した。次いで、細胞を洗浄せずに、5%CO2下、37℃の管理条件下でAxio Observer Z1(Zeiss)顕微鏡を使用して生細胞イメージングを行った。10×0.3NAの乾燥系対物レンズを使用して、明視野画像を5分間隔(または10分間隔)で24時間撮影した。蛍光色素APCおよびPEの画像は、光毒性および光退色を最小限に抑えるために撮影間隔をより長くして、30分間隔(または60分間隔)で撮影した。画像取得および画像処理はZEN 2012 blue editionソフトウェア(Zeiss)を使用して行った。手動での追跡はImage-Jソフトウェアを使用して行った。DL4のみの条件において3つの独立したウェルの細胞を追跡し、DL4+VCAM-1の条件においても3つの独立したウェルの細胞を追跡した。手動での追跡は、DL4のみの条件では合計43個の細胞(各ウェル中の細胞数:15個、10個および18個)に対して行い、DL4+VCAM-1条件では合計69個の細胞(各ウェル中の細胞数:30個、14個および25個)に対して行った。
【0171】
定量リアルタイムPCR
【0172】
ソーティングにより得られたSca-1+cKit+マウスHSPCを、コーティングしていない96ウェルプレート、10μg/mL DL4でコーティングした96ウェルプレート、2.32μg/mL VCAM-1でコーティングした96ウェルプレート、またはDL4+VCAM-1でコーティングした96ウェルプレートに20,000個/ウェルの密度で播種し、培養開始から24時間後および48時間後にPBSで複数回リンスして回収した。同じ条件でCD34+ヒト臍帯血細胞を播種し、培養開始から24時間後、48時間後および96時間後に回収した。PureLink
TM RNA Microキット(インビトロジェン)をメーカーのプロトコルに従って使用して、細胞を溶解し、RNAを単離した。SuperScript
TM III逆転写酵素(インビトロジェン)をメーカーのプロトコルに従って使用して、RNAをcDNAに変換し、FastStart SYBR Green Master Mix(ロシュ)中で各プライマーを使用して増幅した。QuantStudio
TM 6 Flex(アプライドバイオシステムズ)を使用してサーマルサイクル処理および定量を行った。内部標準としてβ-アクチンの発現を使用し、Δサイクル閾値(Δ-Ct)法によって各遺伝子の相対発現量を算出した。PCRプライマーの配列を表2に示す。
【表2】
【0173】
マウス
【0174】
hSIRPαtg RAG2-/- γc-/-(SRG)マウスをジャクソン研究所(メイン州バーハーバー)から購入し、無菌室に収容して飼育した。動物実験はいずれも、Sunnybrook Health Sciences Centreの動物実験委員会の承認を受けた手順に従って行った。
【0175】
フェドバッチバイオリアクターにおけるヒトCD34+HSPCの増殖培養
【0176】
マウントサイナイ病院(カナダ国オンタリオ州トロント)において、倫理承認を受けた手順に従い、同意が得られたドナーから臍帯血試料を採取した。HetaSep(StemCell Technologies)を過去の報告に従って使用して10、臍帯血試料から赤血球(RBC)を除去した。EasySepシステムのヒトCD34+濃縮キット(StemCell Technologies)をメーカーのプロトコルに従って使用してCD34+前駆細胞を選択した。このようにして新たに単離したCD34+細胞を、総細胞数が1×105個/mLとなるように播種した。100ng/mL幹細胞因子(SCF;R&DシステムズまたはCellGenix)、100ng/mL FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L;R&DシステムズまたはCellGenix)、50ng/mLトロンボポイエチン(TPO;R&DシステムズまたはCellGenix)、2mM GlutaMAX(GIBCO)および/または500nM低分子化合物UM729を添加したStemSpan-ACF培地(StemCell Technologies)に細胞を播種した。過去の報告に従って11、培養期間中のマニュアル操作を最小限に抑えながら細胞を12日間培養した。
【0177】
12日目に、UM729を使用していないフェドバッチ培養またはUM729を使用したフェドバッチ培養から細胞を回収し、CD34+集団とCD34-集団にソーティングした。20μg/mL DL4と2.3μg/mL VCAM-1で一晩かけてコーティングした96ウェルプレートに、SCF、Tpo、Flt3LおよびIL-7(各100ng/mL)を含む無血清IMDM+BIT培地を入れ、前記2種の培養方法で得られたソーティング後のCD34+細胞もしくはCD34-細胞、または増殖させていない0日目の解凍CD34+HSPCをそれぞれ4000個/ウェルの密度でプレートに播種した。7日後に培地を1回供給し、14日後に細胞を回収して、リンパ系細胞および骨髄系細胞の細胞表面マーカーをFACSで分析した。
【0178】
免疫不全マウスへのヒトT前駆細胞の移植
【0179】
本発明において構築した胸腺ニッチにおいてヒトCD34+HSPCを14日間培養した。CD7+T前駆細胞をソーティングし、組換えヒトインターロイキン7(rhIL-7;0.5μg)とIL-7抗体M25(2.5μg)とをPBS中に含む混合物に再懸濁し、2~5日齢の新生仔SRGマウスの肝臓内に注射した。4×105個のCD7+T前駆細胞を含む全量30μlを各マウスに移植した。コントロールとして、過去の報告に従って2、14日目のHSPC/OP9-DL4共培養から得たCD7+細胞をマウスに注射した。IL-7/M25混合物を4日ごとにマウスの腹腔内に注射して追加免疫を行った。肝内移植の4~12週間後に胸腺、脾臓および末梢血を採取し、抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD1a抗体、抗ヒトCD7抗体、抗ヒトCD5抗体、抗ヒトCD4抗体、抗ヒトCD8抗体および抗ヒトCD45抗体を使用して細胞を分析した。細胞内サイトカインの染色を行うため、OP9-DL4培養またはDL4-VCAM培養から得たCD7+細胞を肝臓内に注射してから10~12週間後に、脾細胞をSRGマウスから採取した。OP9細胞を用いた培地に1×105個/ウェルの密度で細胞を播種し、50ng/mLホルボール-12-ミリスタート-13-アセタート(PMA;シグマ アルドリッチ)、500ng/mLイオノマイシン(シグマ アルドリッチ)および3μg/mLブレフェルジンA(eBioscience)とともに6時間インキュベートした。刺激終了後に細胞をPBSで洗浄し、前記と同様にして細胞内サイトカインを染色した。
【0180】
ヒト多能性幹細胞(hPSC)からの、造血能を持つ内皮細胞の作製
【0181】
過去の報告に従って(Ungrinら,2008)、シリコーン製の鋳型から400μmの径のポリジメチルシロキサン製インサートを作製し、これを使用してAggrewellTM(24ウェル、StemCell Technologies)を自家作製し、滅菌して実験に使用した。造血能を持つ内皮細胞へと分化させるため、MEF細胞上で培養したhPSCをTrypLETM Expressで5分間処理して分散させ、Geltrex(登録商標)(1:50希釈)またはマトリゲル(登録商標)(1:30希釈)でコーティングした6ウェルプレートに1:3の継代比率で播種し、48時間培養してMEF細胞を除去した。MEF細胞を除去後、hPSCをTrypLETM Expressで処理して細胞を掻き取り、機械的に分散させた。ROCK阻害剤(RI)Y-27632(1:1000;シグマ アルドリッチ)を添加した造血内皮細胞誘導培地を入れたAggrewellTMプレートに単一細胞懸濁液を移し、プレートを1500rpmで5分間遠心分離して、各マイクロウェル中で細胞凝集塊を形成させた。造血内皮細胞誘導培地は、BMP4(40ng/ml;R&D)、VEGF(50ng/ml;R&D)、SCF(40ng/ml;R&D)およびbFGF(5ng/ml;Peprotech)を含んでいた。基礎培地は、StemPro(登録商標)-34(インビトロジェン)、アスコルビン酸(50μg/ml;シグマ)、L-グルタミン(1%v/v;インビトロジェン)、ペニシリン/ストレプトマイシン(1%v/v)、1-モノチオグリセロール(4×10-4M;シグマ)およびトランスフェリン(150μg/ml;ロシュ)を含んでいた。
【0182】
培養6日目に細胞を回収し、TrypLETM Expressを使用して分散させた。EasySepTM Human CD34 Positive Selection Kit(StemCell Technologies)を使用してCD34+細胞を濃縮した。選択された細胞のCD34+発現を分析した。BIT 9500血清代替品(20%v/v、StemCell Technologies)、ペニシリン/ストレプトマイシン(1%v/v)、GlutaMAXTM(1%v/v、Gibco)、低密度リポタンパク質(1μg/mL、Calbiochem、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)、ならびにSCF、Flt3L、TpoおよびIL-7(R&D)(各100ng/mL)を含む無血清IMDM基礎培地(Gibco、メリーランド州ロックビル)を、DL4-FcとVCAM-Fcでコーティングしたプレートに入れ、このプレートに細胞を播種して2週間培養した。培養7日目に培地の再供給を1回行い、14日間の培養終了時に細胞を回収して、T前駆細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析した。
【0183】
T前駆細胞の分化誘導のスケールアップ
【0184】
臍帯血由来CD34+細胞をOP9-DL4間質共培養系で分化誘導するとともに、DL4+VCAM-1でコーティングした96ウェルプレートまたは6ウェルプレートを使用して既知成分からなる無血清培地での分化培養を行い、これらの培養系を比較した。96ウェルプレートの半分(15.4cm2)を、6ウェルプレートの2つのウェル(19.0cm2)または接着培養用バイオリアクターバッグの内面を12cm×2cmのサイズで一部を切り取ったもの(24cm2)と比較した。14日後に、CD7+T前駆細胞、CD7+CD34+T前駆細胞、CD7+CD34-T前駆細胞およびCD7+CD5+T前駆細胞の頻度を分析した。
【0185】
実施例2:T細胞を効率的に分化誘導するための、既知成分からなる無血清培地の特定
【0186】
胸腺におけるT前駆細胞の発生は、DN1、DN2、DN3およびDPと一般に呼ばれる4つの段階を順に経ることを特徴とする(DN=ダブルネガティブ;DP=CD4とCD8を発現するダブルポジティブ)。既知成分のみを使用したT前駆細胞分化アッセイは、Tリンパ球系列のみに分化することが運命づけられたDN3 T細胞の増殖が支持されるように構築することが理想的である。さらに、T前駆細胞に分化させるためには、DN2 T細胞およびDN3 T細胞においてCD90がアップレギュレートされ、CD25が共発現されていなければならない。インビトロにおけるT細胞の分化誘導は、従来、血清含有培地中でOP9間質フィーダー細胞層を使用して行われている。既知成分のみを使用したT細胞分化誘導アッセイの開発の第1のステップは、言うまでもなく、血清やフィーダー細胞を使用する必要のない条件を確立することである。DN T細胞は差次的にNotch-1受容体を発現していることから、OP9フィーダー細胞層の代替としてDL4-Fcタンパク質を作製し、このDL4-Fcタンパク質の純度を確認するとともに、このDL4-Fcタンパク質がリガンドとしてDN T細胞に結合するがDP T細胞には結合しないという機能を備えているかどうかを確認した(
図1a~
図1c)。次に、E13.5のマウス胎仔から得た肝細胞をソーティングしてsca1+ckit+HSPCを精製し、リガンドとしてDL4-Fcを吸着させたプレートにこのHSPCを播種して、3種の無血清培地組成物のT細胞分化誘導能を試験した。アッセイ開発の第2のステップは、マウスHSPCを使用した培養系を、臨床的意義のあるヒトT前駆細胞の作製に適用することを目的として行った。スケールアップ可能なヒト臍帯血由来HSPCの増殖培養や無血清培地を使用した多能性幹細胞からの中胚葉への分化誘導を行った過去の経験に基づいて
12,13、IMDM+BIT培地およびD2SFD培地を選択した。4日後に培地を再供給し、7日後にT前駆細胞表面マーカーを分析した(
図2a)。非処理表面(ネガティブコントロール)における培養と、OP9-DL4間質共培養(ポジティブコントロール
9;この共培養系を使用してSCF、Flt3LおよびIL-7の添加濃度を決定した)とを同時に行った。NotchリガンドであるDL4-Fcの非存在下において、3種の無血清培地での生きた血球(CD45+7AAD-)の増殖は同程度となり、予想外にも、血清含有培地を使用したポジティブコントロールと比べて増殖が有意に増加した(OP9間質共培養培地;αMEM+16%FBS)(
図2b,
図2c)。DL4-Fcで表面処理した場合、IMDM+BIT無血清培養におけるCD45+血球の増殖は、OP9細胞を用いたポジティブコントロール培養と同程度であり、試験した他の無血清培地よりもCD45+細胞の増殖量が有意に高かった(
図2b,
図2c)。また、胸腺において順次分化したDN T前駆細胞の各サブセットを詳しく調べたところ、IMDM+BIT培地においてDN1 T細胞、DN2 T細胞およびDN3 T細胞の各サブセットが生じ、有意に高いCD25+CD90+の共発現が見られ、T前駆細胞に分化したことが示された(
図2d~
図2g)。Notchリガンドの非存在下においてT細胞以外の細胞系列への分化に傾倒した細胞も定量し、Notchリガンドを添加しない場合の使用したすべての種類の培地における細胞分化を評価した。DL4の非存在下において、CD11b+骨髄系細胞およびCD19+B細胞の収率はαMEM+BIT無血清培地において最も高く、他の培地と比べても有意に高かった(
図2h;
図3a,
図3b)。D2SFD培地およびIMDM+BIT培地は、リガンドであるDL4の非存在下において骨髄系細胞系列およびB細胞系列への分化に傾倒した細胞が最も少なく、T前駆細胞誘導培地の候補としてより優れており、実験を進めるに当たり適したものであった。また、αMEM+BIT培地は、リガンドであるDL4の存在下であっても、OP9細胞を用いた培地と同程度の骨髄系細胞の増殖が見られた(
図3c,
図3d)。
【0187】
次に、各DNサブセットの頻度を定量し、各DNサブセットが生細胞の収率に寄与するかどうかを判断することによって、各培地のT前駆細胞分化誘導能を評価した。無血清培地候補のうち、7日間の分化誘導後のDN1細胞の頻度はIMDM+BIT培地において最も低く、コントロールとしてのOP9間質共培養培地と同程度であった(
図2i)。さらに、IMDM+BIT培地におけるCD25+CD90+細胞の頻度および収率は、コントロールとしてのOP9間質共培養培地と同程度であり、他の無血清培地よりも有意に高かった(
図2j)。次に、DN2細胞およびDN3細胞が、CD25+CD90+コンパートメントに寄与するかどうかをそれぞれ試験した。コントロールとしてのOP9間質共培養培地と比較して、IMDM+BIT培地におけるCD25+CD90+コンパートメントへのDN2細胞の頻度の寄与の程度は小さかったが、CD25+CD90+の総収率への寄与はOP9間質共培養培地と同程度であり、他の培地よりも有意に高かった(
図2k)。T細胞系列へと分化決定されたDN3細胞の頻度および収率は、IMDM+BIT培地とOP9間質共培養培地で同程度であり、他の無血清培地よりも有意に高かった(
図2l)。T細胞系列へと分化決定されたCD90を共発現するDN3細胞の収率のばらつきは、IMDM+BIT無血清培地よりも、他のDL4表面処理培養およびOP9細胞存在下の血清培地で高かった(
図2m~
図2o)。これらの結果から、IMDM+BIT培地は、幼若DN1 T細胞コンパートメントの増殖を促進し、DN2段階の細胞の頻度を減らしてDN3 T細胞の増殖を促進し、これらの作用はOP9細胞を用いた培地と同程度であることが示唆された。これを踏まえ、次の段階であるアッセイの基本的な設計基準の最適化は、IMDM+BIT無血清培地を使用して行った。
【0188】
実施例3:胸腺ニッチを構築するための、アッセイの基本的な設計基準の最適化
【0189】
アッセイ開発の次の段階として、インビトロでのT細胞の作製において様々に変更される重要な培養パラメータの効果を評価した。培養系でのT細胞の作製におけるロバストネス(堅牢性)、再現性および収率を向上させるための戦略を構築するため、播種密度、リガンドであるDL4の濃度および提示、ならびに培養の使用を最適化した。
【0190】
まず、無血清IMDM+BIT培地中において、10μg/mLのリガンドDL4を吸着させたプレートに播種するソーティング後のsca1+ckit+HSPCの細胞密度を調整した。1000個/ウェル(3125個/cm
2)未満の細胞密度では、増殖した総細胞数のばらつきが大きいことが観察された(
図4a)。さらに、3.1×10
3個/cm
2よりも細胞密度を高くすると、増殖した総細胞数は有意に低下した(
図4a)。これは、HSPCコンパートメントが本質的にばらつきを持っていることに起因すると考えられ、供給源として播種する細胞をさらに精製することによって、このようなばらつきを排除することができると考えられる。しかし、播種密度を1000個/ウェル以上とすると、増殖した総細胞数の相対値のばらつきは最小となった。播種する細胞密度を様々に変えて試験を行ったところ、各DNサブセットの頻度に有意差は見られなかった(
図5a)。さらに、播種密度を1000個/ウェル(3125個/cm
2)とすると、別の細胞
種である骨髄系細胞およびB細胞への分化に傾倒した細胞が最も少なくなった(
図5a)。また、播種密度を1000個/ウェルよりも多くすると、細胞増殖が低下することが観察された。これらを踏まえ、アッセイ最適化の次の段階では、最初に播種するHSPCの播種密度を1000個/ウェル(3125個/cm
2)とした。
【0191】
次に、アッセイにおいて吸着させるリガンドDL4の濃度を様々に変えて、ロバストなT細胞の分化誘導に必要とされるNotchリガンドの最低濃度を決定した。7日間の培養後に、標準的な濃度である10μg/mLのDL4を使用した場合と同程度に、T細胞系列に分化決定されたDN3細胞の発生を支持することのできたDL4の最低濃度は7.5μg/mLであった(
図4b)。さらに、吸着させたリガンドDL4の濃度が増加するに従って、DN1細胞の頻度が減少し、DN2細胞およびDN3細胞の頻度ならびにCD25+CD90+の共発現が増加したことから、Notchの活性化がT細胞の発生を促進することがさらに確認できた。これらの結果から、以降の実験では、吸着させるDL4の濃度を10μg/mLに設定した。別のNotch-1リガンドとしてDelta-like-1(DL1)をOP9間質共培養系において使用したことが報告されており
6、このDelta-like-1(DL1)を別のNotch-1リガンドとして使用することも検討した。同じコーティング濃度範囲でDL1リガンドを吸着させたが、DN2 T前駆細胞やDN3 T前駆細胞を発生させることはできず、DN1の表現型が維持された(
図5b)。興味深いことに、このNotchリガンドDL1は、DL4よりもNotch経路を活性化させる能力が低いことから、T細胞を誘導する効率がDL4よりも低いことがわかった(
図5d)。これらの結果は、Notch-1と受容体との相互作用においてDL4がDL1よりも強い親和性を示すリガンドとして機能することが示された過去の報告からも裏付けられた
14,15。さらに、過去の研究では、特定のウェル形状によって、B前駆細胞同士の相互作用が増加することから、Bリンパ球系列の発生を選択的に誘導できることも示されている
7。DL4の非存在下においてU底ウェルを使用した場合、CD19+B細胞の発生が増加する傾向が観察されたが、DL4でコーティングしたU底ウェルを使用しても、T細胞の発生に影響は見られなかった(
図5c)。
【0192】
C2C12筋芽細胞において可溶形態のDL1がNotchの機能に抑制的に作用することが過去に報告されている
8。これを踏まえて、可溶性DL4がT細胞の発生に対して阻害作用を起こすかどうかを評価した。DL4を吸着させたプレート上での培養、可溶性DL4を加えた培養、または吸着させたDL4と可溶性DL4とを組み合わせた培養を7日間行った後、各DNサブセットの頻度と骨髄系細胞およびBリンパ系細胞の頻度を測定した。可溶性リガンドDL4は、DN2サブセットおよびDN3サブセットへのT細胞分化を誘導することができなかっただけではなく、意外にも、可溶性リガンドDL4の存在によって、吸着させたリガンドDL4のT細胞分化誘導作用も完全に抑制された(
図4c)。10μg/mLの可溶性リガンドDL4の存在下においてHSPCからの分化誘導を行った場合、吸着させた10μg/mLのリガンドDL4を使用した場合と比較してDN3細胞は発生せず、細胞の表現型はDN1のまま維持された(
図4c)。したがって、Notchシグナル伝達を維持することによってT細胞の発生を促すためには、リガンドDL4を表面に固相化する必要があることがわかった。吸着させたリガンドDL4と可溶性DL4を組み合わせた効果を評価したところ、可溶性DL4の存在によって、吸着させたDL4のDN3細胞分化誘導作用が完全に抑制されることがわかった。しかし、吸着させたリガンドDL4と可溶性DL4を組み合わせた場合と同じ総濃度の固相化リガンドDL4(20μg/mL)を可溶性リガンドの非存在下で使用した場合、HSPCから分化誘導されたDN3細胞の頻度は、10μg/mLのDL4をコーティングしたコントロールと同程度であった(
図4c)。これらの結果から、可溶性DL4と固相化DL4の両方を含む培養において観察されたDN3細胞の発生の抑制は、可溶性DL4の存在によるものであり、DL4の濃度の増加とは無関係であることが確認できた。T細胞の分化誘導に対する可溶性DL4の抑制作用の機構を調べるため、NIH3T3細胞株を使用したサロゲートアッセイを構築し、核内におけるCBF1-ルシフェラーゼの発現を介してNotch経路の活性化を定量した。このアッセイの結果から、可溶性DL4の添加によって、固相化DL4上で細胞を培養した場合であっても、Notch1受容体の細胞内ドメインの核内移行が活発に抑制されることがわかった(
図5e)。実験の結果、可溶性のDL4は微量であってもT細胞の発生を抑制することが示されたことから、本発明において構築した胸腺ニッチにおいては、固相化していない可溶性DL4を添加すべきではないと結論付けられた。
【0193】
次に、実験者による操作を減らして再現性を向上させ、かつT前駆細胞の収率を維持または向上させながら培地にかかるコストを減らすことを目的として、4日目の培地交換を省くことができるかどうかを検討した(
図4d)。モデル化による実験計画法(DOE)法を利用して(
図4e)、培養系に添加する外因性サイトカインの濃度を様々に変えて、培地の消費を削減できるかどうかを試験した。過去に報告されているOP9間質共培養系に基づいて
9、基準コントロールとして、1ウェルあたり培地200μL中に25ng/mL SCF、5ng/mL Flt3Lおよび1ng/mL IL-7を加えて使用した(25-5-1の再供給条件;
図4f~
図4g)。サイトカインの濃度を変更せずに培地の量を可能な限り減らすと(96ウェルプレート中50μL/ウェル)、増殖した総細胞数の相対値が基準コントロールと比較してほぼ3分の1減少した(25-5-1の供給なしの条件;
図4f~
図4g)。これに対して、サイトカインの濃度を2倍量、すなわち、50ng/mL SCF、10ng/mL Flt3Lおよび2ng/mL IL-7にした場合、コントロールと同程度まで細胞増殖能が回復したが、DN2 T細胞またはDN3 T細胞への有意な分化は見られなかった(50-10-2の供給なしの条件;
図4f~
図4g)。IL-7の濃度を単純に2ng/mLから10ng/mLに増加させると(50-10-10の供給なしの条件;
図4f~
図4g)、T細胞系列への分化が決定されたDN3細胞の収率がコントロールと比べて有意に高くなった。DOEを使用して、SCF、Flt3LおよびIL-7の組み合わせをモデル化し、これらの非線形応答を試験することによって、DN3細胞を高頻度および高収率で作製するための望ましさ関数を最適化することができた(
図5f,
図5g)。したがって、培地の消費を削減しながら、外因性サイトカインの濃度を調整することによって、T細胞の分化誘導の効率を上昇させ、培養系に添加する必要のあるサイトカインの総量を減少させ、アッセイ期間中の実験者による操作の必要性を排除することができた。
【0194】
実施例4:細胞マトリックスVCAM-1は、既知成分からなる本発明のT細胞分化誘導アッセイにおいてDN3細胞の収率を増加させることができる
【0195】
本発明の胸腺ニッチの構築の次の段階として、細胞外マトリックスタンパク質であるフィブロネクチンまたは胸腺上皮細胞によって提示されるマトリックスタンパク質であるVCAM-1を組み込むことによって、既知成分からなる本発明のT細胞分化誘導アッセイにおいてDN3細胞の収率を向上させることができるかどうかを検討した。いずれのマトリックスタンパク質も、T前駆細胞の増殖、生存率、ホーミングおよび分化において多面的な役割を果たすことが示されている
16,17。フィブロネクチンおよびVCAM-1は、β1またはβ7インテグリンサブユニットと会合したα4またはα5インテグリンサブユニットのリガンドとして機能することから
17、ソーティングにより得られたsca1+ckit+HSPCコンパートメントにおけるこれらのインテグリン受容体の発現を最初に確認した。その結果、HSPCにおいてα4β1およびα5β1は非常に高レベルで発現されていたが、α4β7の発現は低かった(
図6a,
図6b)。
【0196】
次に、既知成分からなる本発明のT細胞分化誘導アッセイにおいて、固相化されたVCAM-1の濃度の増加による効果を検討した。VCAM-1の濃度を増加させたところ、用量依存的に、DN1細胞の頻度が有意に低下し、CD25+CD90+細胞の頻度は増加した(
図6c~
図6d)。より具体的には、VCAM-1の用量を増加させるに従い、DN3細胞の頻度が増加したが、DN2細胞、骨髄系細胞およびB細胞の各コンパートメントに変化は見られなかった(
図6c)。VCAM-1を併用してもCD45+7AAD-細胞の総収率に変化は見られなかったことから(
図7)、VCAM-1は、既知成分からなる本発明のT細胞分化誘導アッセイにおいてDN3細胞の純度および総収率を向上させたことがわかった。インビボにおける胸腺細胞の発生に重要な役割を果たすことが知られているサイトカイン候補、ケモカイン候補およびマトリックスタンパク質候補のスクリーニングにおいて
18,19,20,21、T細胞系列に分化決定されたDN3細胞の発生を増強する効果はVCAM-1が有意に最も高かった(
図6e)。
【0197】
次に、VCAM-1はインビボにおける胸腺への遊走に利用される間質マトリックスであることが示されていることを踏まえ
22、生細胞イメージングを使用して、DN T細胞の運動性に対するVCAM-1の作用を調査した。既知成分からなる本発明のT細胞分化誘導アッセイにおいて、単一細胞のランダムな遊走パターンを5日目から7日目まで手動で追跡し、CD25およびCD44の表面マーカー染色を行って、DN1細胞、DN2細胞およびDN3細胞の表現型を識別した(データ示さず)。VCAM-1は、吸着させたDL4のみで培養したものと比較して、3種のDN1~3サブタイプすべての移動速度を有意に増加させることがわかった(
図6f,
図6g)。VCAM-1がDN3細胞の発生を増強する機構を調査するため、ソーティングにより得られたHSPCをDL4およびVCAM-1と相互作用させ、24時間後および48時間後に、アップレギュレートされた表面マーカーの発現および重要なNotch経路遺伝子を調べた。DL4およびVCAM-1と相互作用させたところ、他のコーティング条件と比較して、24時間後にDN2細胞の発生が早まり、48時間後にはDN3細胞の発生が早まった(
図6h~
図6l)。ソーティング後にDL4およびVCAM-1と相互作用させた最初の48時間以内のHSPCを使用して、T細胞発生の遺伝子調節ネットワークにおいて重要な役割を果たすいくつかの遺伝子を試験した(
図6m)。DL4のみの条件と比較して、DL4およびVCAM-1の存在下においてHes1、Gata3、Tcf7、DeltexなどのNotch経路の下流遺伝子も有意に増加することがわかった(
図6n)。さらに、DL4およびVCAM-1の存在下の骨髄系遺伝子PU.1は、DL4のみの条件と比較して、48時間後に急速にダウンレギュレートされた(
図6n)。これに対して、Notch1受容体遺伝子の発現および幹細胞因子E2aの発現は、すべてのコーティング条件において変化が見られなかった(
図6n)。これらの結果から、このアッセイにおいて、VCAM-1はDL4と相乗的に相互作用して、Notch経路遺伝子の活性化と細胞運動とを増強させ、DN3 T細胞の収率を増加させたことがわかった。細胞運動が増強されたことによりNotchリガンドへの結合が増加してNotch経路の下流遺伝子の活性化が増強され、それによってT細胞発生の遺伝子調節ネットワーク(GRN)が急速に活性化されるとともに、別の細胞系列への分化が抑制される。
【0198】
実施例5:本発明において構築した胸腺ニッチにおいてヒトCD34+HSPCからT前駆細胞を作製することができる
【0199】
ここまで述べてきた、既知成分からなるT細胞分化誘導アッセイの開発とは、T細胞への分化が決定されたDN3細胞へとマウスHSPCを分化誘導するために最適化された「胸腺ニッチ」の構築を指す。本発明において構築した胸腺ニッチをヒト細胞の培養系として使用できるかどうかを、ヒト臍帯血由来のCD34+HSPCをT前駆細胞へと分化させることによって確認した。T細胞系列に分化決定されたマウスDN3 T細胞に相当するヒト細胞としては、CD34+HSPCと比べて免疫不全マウスの胸腺に速やかに定着することが示されているCD7+CD5+CD45RA+共発現T前駆細胞が望ましい
1。現在、CD34+細胞からT前駆細胞を作製するために使用されている培養系としては、間質共培養系か、培地組成が不明の血清含有培地しか存在しない
23,24。本実験において、各培養を開始する前に、播種するHSPC中のCD34+細胞の純度が95%を超えていることを確認した(
図8a)。CD34+HSPCにおいて、α4β1は非常に高発現されていたが(96.9±1.1%)、α4β7の発現は低かった(5.5±1.0%)(
図8b)。無血清IMDM+BIT培地中でDL4を単独で使用することによって、最も初期の胸腺内前駆表現型であるCD7+CD34+細胞を作製できることが示されたが、これらの前駆細胞をT細胞発生の後期段階まで分化させるには、DL4単独では不十分であることがわかった(
図8c,
図8d)。これを踏まえ、DL4と組み合わせて、細胞外マトリックスタンパク質であるレトロネクチン、フィブロネクチンおよびVCAM-1を使用して、これらのタンパク質がT前駆細胞を誘導できるかどうかを検討した。DL4にレトロネクチンまたはフィブロネクチンを組み合わせても、CD7+CD34+前駆細胞をT細胞系列へとさらに分化誘導することは不可能であることがわかった(
図8d)。これに対して、マウス細胞の培養系で観察された結果と同様に、DL4+VCAM-1のみが、CD34の発現が消失しCD5およびCD45RAが共発現された後期段階のCD7+T前駆細胞集団を分化誘導できることがわかった(
図8d)。DL4+VCAM-1培養のCD7+T前駆細胞は、早くも培養9日目でCD45RA+およびCD5+の発現がアップレギュレートし始め、14日目まで発現量が増加した(
図8d)。さらに、DL4+VCAM-1培養では、DL4単独またはDL4とフィブロネクチンまたはレトロネクチンとを併用した場合と比較して、より成熟したCD7+CD34-ヒトT前駆細胞の増殖が増加した(
図8f)。フローサイトメトリーにおいても、この既知成分からなるアッセイにおける後期段階のT細胞の発生は、DL4のみの存在下よりも、DL4+VCAM-1の存在下でより顕著であることが示された(
図8g)。
【0200】
DL4のみを使用した場合と比較して、DL4とVCAM-1の併用はNotchの標的遺伝子の発現を相乗的に増強した(
図8i~
図8j)。ヒト細胞において観察されたアップレギュレーションの動態は、マウス細胞において観察されたものとは異なっていた。DeltexおよびGata3は、24時間以内に急速にアップレギュレートされ、96時間まで持続的に発現が増加した。一方、Bcl11bのアップレギュレーションは、96時間刺激して初めてDL4単独との有意差が観察された(
図8h)。
【0201】
次に、本発明において構築した胸腺ニッチと、標準的なOP9-DL4間質共培養アッセイとを比較した。OP9-DL4共培養によって増殖した総生細胞数は、本発明において構築した胸腺ニッチでの培養によって増殖した総生細胞数とほぼ同じであることがわかった(
図9a)。いずれの培養系も、CD5を共発現するCD7+T前駆細胞集団を同程度に分化誘導することができた(
図9b,
図9c)。しかし、幼若なCD7+CD34+T前駆細胞コンパートメントの頻度において、2つの培養系間で差が観察された(
図9b,
図9c)。次いで、これらの2つの培養系から得られた培養14日目のCD7+T前駆細胞をそれぞれソーティングし、新生仔SRGマウスの肝臓内に注射し、インビボ移植が可能かどうかを評価した(
図10a)。4週間後に各マウスから胸腺を採取したところ、高い割合でヒトCD45+細胞が定着していることが見出された(
図10b)。いずれの培養系でも同様に、CD3を共発現するDP T細胞が高頻度で発生した(
図10c,10d)。移植の10~12週間後に、末梢血中を循環しているCD3+CD8+成熟T細胞が検出され、このことから、DL4+VCAM-1培養由来のT前駆細胞が免疫不全SRGマウスの末梢においてリンパ系を再構築できることが示された(
図10e)。機能成熟を確認するため、移植の10~12週間後に免疫不全SRGマウスからインビボCD3+T細胞を採取し、インビトロにおいてPMAおよびイオノマイシンで刺激した。免疫調節サイトカインであるヒトIL-2、IFN-γおよびTNF-αが多量に分泌されていることが観察された(
図10f)。これらの結果から、本発明において構築した胸腺ニッチにおいて作製されたヒトCD7+T前駆細胞は機能性を有し、インビボにおいて血中を循環して胸腺に戻り(ホーミング)、胸腺に定着することができると結論付けられた。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、DL4は、HSPC上のNotch-1受容体を活性化し、それによってNotchの細胞内ドメイン(NICD)の核内移行が起こり、Notch遺伝子の調節ネットワークが活性化されると予測された(
図10g;上パネル)。DL4とVCAM-1を併用してHSPCに作用させた場合(
図10g;下パネル)、HSPC上に発現されているα4インテグリン受容体がVCAM-1と会合し、その結果、Notchの下流標的遺伝子の活性化が増強され、細胞の運動性が増加し、T細胞系への分化決定が促進される。
【0202】
実施例6:本発明において構築した胸腺ニッチにおいてCD34+細胞を培養することによりT前駆細胞を作製することができる
【0203】
本発明において構築した胸腺ニッチにおいて、ヒト臍帯血由来CD34+細胞(すなわち0日目のCD34+細胞)から機能的なT前駆細胞を作製できる方法が確立されたことから、培養を経たCD34+細胞でも0日目のCD34+細胞と同等のTリンパ系細胞分化能を有しているかどうかを調べるため、CD34+細胞の培養を試験した。CD34+細胞の培養方法の1つとして、フェドバッチ培養用バイオリアクターを使用した培養方法がある。より具体的に説明すると、フェドバッチ培養用バイオリアクター技術を使用することによって、自己を複製する能力と複数の細胞系列へと分化する能力とを有するCD34+HSPCを(12日間で)11倍の数にまで急速に増殖させられることが過去の研究において実証されている。フェドバッチ培養(FB)または低分子化合物UM-729を添加したフェドバッチ培養(FB+UM)で12日間培養後ソーティングされたCD34+細胞からのT前駆細胞の発生と、培養開始時に播種した0日目のCD34+細胞集団からのT前駆細胞の発生とを比較した(
図11a)。フェドバッチ培養用バイオリアクターシステムに低分子化合物UM-729を添加したところ、コントロールとしてのFB培養と比較して、12日間増殖させた後のCD34+細胞の総収率が増加し、CD34-細胞の収率が最も小さくなった(
図11b,
図11c)。
【0204】
FB培養からソーティングされたCD34+細胞を、本発明において構築した胸腺ニッチで14日間培養したところ、0日目のCD34+細胞およびFB+UM培養した12日目のCD34+細胞と比較して、CD7+pro-T細胞およびCD7+CD56+NK細胞の発生頻度が最も高かった(
図11d)。また、FB培養由来CD34+細胞は、骨髄系細胞(CD34-CD14/CD33+)への分化に傾倒した細胞が最も少なく、これに対して、0日目のCD34+細胞および12日目のFB+UM培養由来CD34+細胞は、骨髄系細胞の発生頻度が同程度であった(
図11d)。いずれの条件でも、proB細胞(CD34+CD19+)、preB/B細胞(CD34-CD19+)、B細胞(CD5+CD19+)および好中球(CD14/CD33+CD16+)は発生しなかった(
図11d)。FB培養またはFB+UM培養からソーティングされたCD34-細胞から分化誘導したところ、骨髄系細胞が発生した細胞の大部分を占めたことから、CD34+細胞のみがTリンパ系細胞への分化能を有することが示された(
図11e)。また、CD7+細胞上に共発現されたpro-T細胞系列表面マーカーを評価したところ、0日目のCD34+細胞からの分化誘導ではCD7+CD34+幼若前駆細胞の発生頻度が最も高いが、12日目のFB培養由来CD34+細胞からの分化誘導では、CD5+およびCD45RA+を共発現するCD7+pro-T細胞の発生頻度が最も高いことがわかった(
図11f)。FB培養由来CD34-細胞では、少ない存在比率でCD7+細胞集団が発生したが(
図11e)、この細胞集団はCD34、CD5およびCD45RAを共発現していなかった(
図11g)。
【0205】
次に、CD34+細胞から発生したCD7+pro-T細胞の収率を定量した。播種したCD34+細胞1個あたりのCD7+細胞の収率は、12日目のFB培養由来CD34+細胞を本発明において構築した胸腺ニッチにおいて分化誘導した場合に最も高くなり、0日目のCD34+細胞をこのpro-Tアッセイ(胸腺ニッチ)で分化誘導した場合と、12日目のFB+UM培養由来CD34+細胞をこのpro-Tアッセイ(胸腺ニッチ)で分化誘導した場合とでは、播種したCD34+細胞1個あたりのCD7+細胞の収率は同程度となった(
図11h,
図11k)。また、これらのフェドバッチ培養で作製したCD34+細胞(
図11b)を、本発明において構築した胸腺ニッチ中で分化誘導した場合、CD34+細胞から発生するCD7+pro-T細胞の総数は、12日目のFB+UM培養由来CD34+細胞や0日目のCD34+細胞と比較して、12日目のFB培養由来CD34+細胞からの分化誘導において最大となる(
図11I,
図11j)。同様に、12日目のFB培養由来CD34+細胞を、本発明において構築した胸腺ニッチにおいて分化誘導すると、播種したCD34+細胞1個あたりから得られるNK細胞の数が最も多くなり、FB培養系由来の全CD34+細胞からのNK細胞の総収率も最も高くなる(
図11l,
図11m)。これに対して、12日目のFB培養由来CD34+細胞を、本発明において構築した胸腺ニッチで分化誘導すると、播種したCD34+細胞1個あたりに対する骨髄系細胞数は最小となる(
図11n)。また、12日目のFB+UM由来CD34+細胞を分化誘導すると、0日目のCD34+細胞および12日目のFB培養由来CD34+細胞からの分化誘導と比較して、全CD34+細胞からの骨髄系細胞の収率が最も高くなる(
図11o)。したがって、フェドバッチ培養用バイオリアクター技術を使用して作製したCD34+細胞は、骨髄系細胞への分化が最小限に抑えられているとともに、リンパ球系列への分化が優位となっていることから、最初に播種した0日目のCD34+細胞と比べて、CD7+pro-T細胞およびNK細胞が高収率で得られることが示された。また、フェドバッチ培養用バイオリアクターシステムにUM-729を添加することによって、最初に播種した0日目のCD34+細胞と同等のリンパ系細胞分化能および骨髄系細胞分化能を維持したCD34+細胞の総発生数を増加させることができる。
【0206】
実施例7:多能性幹細胞(PSC)由来のCD34+細胞は、本発明において構築した胸腺ニッチにおいてCD7+細胞に分化する
【0207】
既知成分からなる無血清中胚葉分化誘導プロトコルを使用してPSCを凝集塊サイズで6日間分化誘導し、CD43とCD73を共発現するCD34+造血内皮細胞を作製した(
図12a)。磁気を利用した細胞濃縮を行い、CD34+細胞集団を選択し、フローサイトメトリーを使用して、濃縮した細胞集団の純度を確認した(
図12b)。基準となるOP9-DL4培養系または本発明において構築したDL4+VCAM-1胸腺ニッチにPSC由来CD34+細胞を播種して2週間培養した。OP9-DL4培養系では、CD7+CD34+T細胞、CD7+CD34-T細胞およびCD7+CD5+T細胞を含む、すべての段階のT細胞が発生した(
図12c)。本発明において構築した胸腺ニッチでは、CD7+CD34+T細胞およびCD7+CD34-T細胞が発生し、少量のCD7+CD5+T細胞も発生したが、骨髄系細胞系列(CD33/CD14)への分化は見られなかった(
図12c)。しかし、このCD7+細胞集団は高レベルのCD56も共発現していたことから、NK細胞系列への分化傾向が示された(
図12c)。この研究では、ポジティブコントロールとして0日目の臍帯血由来CD34+細胞を使用し、ネガティブコントロールとしてPSC由来CD34-細胞を使用した。この細胞からも、CD56を共発現するCD7+CD34+細胞が高頻度に発生した(
図12d)。したがって、この実験から、PSC由来のCD34+細胞およびCD34-細胞を使用して、骨髄系細胞への分化を最小限に抑えつつ、NK細胞系列への高い分化能を有する細胞を含むCD7+細胞集団を作製することができることが示唆された。
【0208】
実施例8:スケールアップ可能なT前駆細胞の分化誘導
【0209】
臍帯血由来CD34+細胞を、OP9-DL4間質共培養系で分化誘導すると同時に、DL4+VCAM-1でコーティングした96ウェルプレート、6ウェルプレートまたは接着培養用バイオリアクターバッグを使用して無血清条件での分化培養を行い、各培養系を比較した。DL4+VCAM-1でコーティングしたこれらの表面、すなわち、96ウェルプレートの半分(15.4cm
2)と、6ウェルプレートの2つのウェル(19cm
2)と、バイオリアクターバッグから切り取った12cm×2cm片(24cm
2)とを比較したところ、ほぼ同じ状態で培養が進んでいた。14日後までに増殖した総細胞数は、いずれの試験条件でもほぼ同じであり、DL4+VCAM-1でコーティングした96ウェルプレート、6ウェルプレート、バイオリアクターのいずれにおいても、約25倍の細胞数まで増殖したことがわかった(
図15a)。14日後に、CD7+T前駆細胞、CD7+CD34+T前駆細胞、CD7+CD34-T前駆細胞およびCD7+CD5+T前駆細胞の頻度を分析したところ、最も幼若なCD7+CD34+コンパートメントを除いて、OP9-DL4間質共培養系、96ウェルコーティングプレートおよび6ウェルコーティングプレートのいずれの条件においても、ほぼ同じ結果が得られた(
図15b,
図15c)。したがって、既知成分からなる本発明のDL4+VCAM-1培養を、6ウェルプレートでの培養に問題なくスケールアップすることができた。しかしながら、DL4+VCAM-1でコーティングした接着培養用バイオリアクターバッグから得られたCD34-CD7+CD5+T前駆細胞の数は他の培養よりも少なく(
図15b,15c)、これは、7日目に、96ウェルプレート培養および6ウェルプレート培養では培地全量を交換したのに対して、バイオリアクターバッグではサイトカイン含有培地を灌流させたことの違いによると考えられる。
【0210】
特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、当業者であれば、これらの実施形態の様々な変更も可能であることを容易に理解するであろう。本明細書において提供された実施例はいずれも、本発明を例示することのみを目的として記載されたものであり、本発明をなんら限定するものではない。また、本明細書において提供された図面はいずれも、本発明の様々な態様を例示することのみを目的として提供されたものであり、本発明を規定または限定するために作製されたものではない。本明細書に添付の請求項の範囲は、前記詳細な説明に記載された好ましい実施形態によって限定されるものではなく、本明細書全体と矛盾しない最も広い範囲で解釈されるべきである。本明細書において引用により開示された先行技術は、本明細書の一部を構成するものとしてその全体が援用される。
【0211】
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【配列表】