(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】結合組織成長因子を標的とするRNA複合体を用いた特発性肺胞線維症の治療
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220330BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20220330BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220330BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220330BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220330BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220330BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C12N15/113 120Z
A61K31/713 ZNA
A61P43/00 111
A61P11/00
A61K45/00
A61K48/00
A61K9/72
(21)【出願番号】P 2018553128
(86)(22)【出願日】2017-04-10
(86)【国際出願番号】 IB2017000470
(87)【国際公開番号】W WO2017178883
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-10
(32)【優先日】2016-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518028055
【氏名又は名称】オリックス ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,ドン,キ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,スン,ウー
(72)【発明者】
【氏名】リー,テ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー,セ-ロ-オーム
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ,ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ナ,ユ,ラン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-ドン
【審査官】池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518721(JP,A)
【文献】特開2013-094071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTGF mRNA配列に対する配列相補性を有するアンチセンス鎖、及び前記アンチセンス鎖に対する配列相補性を有するセンス鎖を含むRNA複合体であって、前記アンチセンス鎖及び前記センス鎖が、前記アンチセンス鎖の5'末端及び前記センス鎖の3'末端が平滑末端を形成する複合体を形成し、
前記センス鎖が配列番号29のヌクレオチド配列
からなり、前記アンチセンス鎖が
配列番号30のヌクレオチド配列からなる、前記RNA複合体。
【請求項2】
前記RNA複合体が、細胞によるCTGF発現を阻害することができ、かつ前記細胞は上皮細胞、肺胞細胞、A549細胞、HaCaT細胞、又はHs68細胞であってよい、請求項
1に記載のRNA複合体。
【請求項3】
前記RNA複合体が化学修飾を含む、請求項
1に記載のRNA複合体。
【請求項4】
前記化学修飾が、2'-O-メチル化ヌクレオシド、ホスホロチオエート結合又は疎水性部分である、請求項
3に記載のRNA複合体。
【請求項5】
前記RNA複合体が疎水性部分を含み、前記疎水性部分はコレステロール部分であってもよく、前記コレステロール部分は、前記センス鎖の3'末端に結合していてもよい、請求項
4に記載のRNA複合体。
【請求項6】
前記RNA複合体が2'-O-メチル化ヌクレオシドを含み、
前記2'-O-メチル化ヌクレオシドが前記センス鎖上に位置し、及び/又は
前記2'-O-メチル化ヌクレオシドが前記アンチセンス鎖の3'末端に位置し、及び/又は
前記アンチセンス鎖の前記3'末端領域が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含み、及び/又は
前記2'-O-メチル化ヌクレオシドが前記センス鎖上;及び前記アンチセンス鎖の前記3'末端に位置し、及び/又は
前記センス鎖が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含み、前記アンチセンス鎖の3'末端領域が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む、
請求項
3~5のいずれか1項に記載のRNA複合体。
【請求項7】
前記RNA複合体が少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む、請求項
6に記載のRNA複合体であって、
前記RNA複合体の前記センス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも5%がホスホロチオエート結合であってもよい、又は
前記RNA複合体の前記センス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも10%がホスホロチオエート結合であってもよい、又は
前記RNA複合体の前記センス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも15%がホスホロチオエート結合であってもよい、又は
前記RNA複合体の前記センス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも20%がホスホロチオエート結合であってもよい、又は
前記RNA複合体の前記アンチセンス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも5%がホスホロチオエート結合であってもよい、又は
前記RNA複合体の前記アンチセンス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも10%がホスホロチオエート結合であってもよい、又は
前記RNA複合体の前記アンチセンス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも15%がホスホロチオエート結合であってもよい、又は
前記RNA複合体の前記アンチセンス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも20%がホスホロチオエート結合であってもよい、
請求項
6に記載のRNA複合体。
【請求項8】
前記修飾RNA複合体は、
【化1】
のヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖を有し、ここで前記ヌクレオチド配列中のmは2'-O-メチル化ヌクレオシドを表し、アスタリスク(*)はホスホロチオエート結合を表す、請求項
3に記載のRNA複合体。
【請求項9】
前記修飾RNA複合体は、
【化2】
のヌクレオチド配列を有するセンス鎖を有し、ここで前記ヌクレオチド配列中のmは2'-O-メチル化ヌクレオシドを表し、アスタリスク(*)はホスホロチオエート結合を表し、cholはコレステロールトリエチレングリコールを表す、請求項
3に記載のRNA複合体。
【請求項10】
前記RNA複合体が、送達ビヒクルの非存在下で細胞の細胞膜を透過することができる、請求項
8又は
9に記載のRNA複合体。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載のRNA複合体及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項12】
特発性肺線維症の治療用の、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記RNA複合体を、特発性肺線維症の治療用の第2の薬剤とともに使用し、その第2の薬剤が増殖因子阻害剤であってもよい、請求項
11又は
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
細胞によるCTGF発現を阻害するための、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記RNA複合体が気道に投与される、請求項
11~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記RNA複合体が非経口的、静脈内、又は吸入により投与される、請求項
11~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月11日出願の米国仮特許出願第62/320,944号の優先権の利益を主張し、その出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景技術
特発性肺線維症(IPF)は、肺組織の重篤かつ進行性の瘢痕(線維症)を特徴とする。多くの人々は診断後約3~5年しか生きられず、死亡は主に呼吸不全によるものである。米国及び欧州連合の患者約7万人がIPFに苦しんでいる。肺移植以外の有効な治癒は存在せず、1%未満の患者が肺移植の対象となる。したがって、効果的に患者の肺線維症を阻害し、または低減することができる新規で臨床的に有効なIPF治療薬の重要な必要性が、依然として残っている。
【0003】
IPFの病因にはいくつかの増殖因子が関与している。これらの増殖因子のうち結合組織成長因子(CTGF)は、複数の細胞型の筋線維芽細胞への形質転換に関与しているようであり、重要な抗線維化及び再生促進修復因子を損なう。CTGFレベルは、IPF患者の血漿、経気管支生検標本及び気管支肺胞洗浄液中で上昇する。
【0004】
したがって、CTGFを標的とした特発性肺線維症の治療のための新規かつ改善された治療薬が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
特定の態様では、本明細書は、CTGFを標的とし、特発性肺線維症(IPF)の治療及び/または予防に有用であるRNA複合体を提供する。特定の態様では、本明細書は、そのようなRNA複合体を含む医薬組成物、及びそのようなRNA複合体及び医薬組成物を使用する方法を提供する。
【0006】
特定の態様では、本明細書は、CTGF mRNA配列に対する配列相補性を有するアンチセンス鎖及びアンチセンス鎖に対する配列相補性を有するセンス鎖を含むRNA複合体を提供する。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、細胞(例えば、肺胞細胞、上皮細胞、Hs68、HaCaT、またはA549細胞)におけるCTGF発現を阻害することができる。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、非対称短鎖干渉RNA(asiRNA)である。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、細胞膜透過非対称短鎖干渉RNA(cp-asiRNA)である。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、表1、表2、表3、または表6に列挙されるRNA複合体である。
【0007】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供するRNA複合体は化学修飾を含み、この修飾は、送達ビヒクルの非存在下での細胞膜の透過を促進する。いくつかの実施形態では、修飾は、2’-O-メチル化ヌクレオシド、ホスホロチオエート結合または疎水性部分である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するRNA複合体は、疎水性部分を含む。いくつかの実施形態では、疎水性部分は、疎水特性を有する任意の化学構造であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、疎水性部分は、脂質、親油性ペプチド及び/または親油性タンパク質である。いくつかの実施形態では、疎水性部分は、コレステロール、トコフェロールまたは10個以上の炭素原子を有する長鎖脂肪酸(例えば、ステアリン酸またはパルミチン酸)などの脂質である。いくつかの実施形態では、疎水性部分は、コレステロールである。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、表2、表3、または表6に列挙される修飾RNA複合体である。特定の実施形態では、RNA複合体は細胞毒性ではない。
【0008】
特定の態様では、本明細書は、記載のRNA複合体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口、静脈内、または経口送達用に製剤化する。他の実施形態では、医薬組成物は、吸入用に製剤化する。
【0009】
特定の態様では、本明細書は、細胞(例えば、肺胞細胞、上皮細胞、Hs68、HaCaT、またはA549細胞)におけるCTGF発現を阻害する方法であって、この細胞を本明細書に記載のRNA複合体と接触させることを含む、方法を提供する。
【0010】
特定の態様では、本明細書は、ヒト対象におけるCTGF遺伝子発現を阻害する方法であって、本明細書で提供するRNA複合体または医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を記載する。特定の態様では、本明細書は、IPFのヒト対象を治療する方法であって、本明細書に記載のRNA複合体または医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
本発明は以下の態様も提供する。
[1]CTGF mRNA配列に対する配列相補性を有する、少なくとも19ヌクレオチド(nt)の長さのアンチセンス鎖、及び前記アンチセンス鎖に対する配列相補性を有する、15~17ntの長さのセンス鎖を含むRNA複合体であって、前記アンチセンス鎖及び前記センス鎖が、前記アンチセンス鎖の5'末端及び前記センス鎖の3'末端が平滑末端を形成する複合体を形成する、前記RNA複合体。
[2]前記アンチセンス鎖が19~21ntの長さである、上記[1]のRNA複合体。
[3]前記アンチセンス鎖が19ntの長さである、上記[1]に記載のRNA複合体。
[4]前記アンチセンス鎖が20ntの長さである、上記[1]に記載のRNA複合体。
[5]前記アンチセンス鎖が21ntの長さである、上記[1]に記載のRNA複合体。
[6]前記アンチセンス鎖が少なくとも24ntの長さである、上記[1]に記載のRNA複合体。
[7]前記センス鎖が15ntの長さである、上記[1]から[6]のいずれかに記載のRNA複合体。
[8]前記センス鎖が16ntの長さである、上記[1]から[6]のいずれかに記載のRNA複合体。
[9]前記センス鎖が17ntの長さである、上記[1]から[6]のいずれかに記載のRNA複合体。
[10]前記センス鎖が、表1、表2及び表3に列挙されるセンス鎖配列から選択される配列を有する、上記[1]から[9]のいずれかに記載のRNA複合体。
[11]前記アンチセンス鎖が、表1、表2及び表3に列挙されるアンチセンス鎖配列から選択される配列を有する、上記[1]から[9]のいずれかに記載のRNA複合体。
[12]CTGF mRNA配列に対する配列相補性を有する、少なくとも21ヌクレオチド(nt)の長さのアンチセンス鎖、及び前記アンチセンス鎖に対する配列相補性を有する、16ntの長さのセンス鎖を含むRNA複合体であって、前記アンチセンス鎖及び前記センス鎖が、前記アンチセンス鎖の5'末端及び前記センス鎖の3'末端が平滑末端を形成する複合体を形成する、前記RNA複合体。
[13]前記アンチセンス鎖が21~31ntの長さである、上記[12]に記載のRNA複合体。
[14]前記アンチセンス鎖が21ntの長さである、上記[12]に記載のRNA複合体。
[15]前記アンチセンス鎖が23ntの長さである、上記[12]に記載のRNA複合体。
[16]前記アンチセンス鎖が25ntの長さである、上記[12]に記載のRNA複合体。
[17]前記アンチセンス鎖が27ntの長さである、上記[12]に記載のRNA複合体。
[18]前記アンチセンス鎖が29ntの長さである、上記[12]に記載のRNA複合体。
[19]前記アンチセンス鎖が31ntの長さである、上記[12]に記載のRNA複合体。
[20]前記センス鎖が16ntの長さである、上記[12]から[19]のいずれかに記載のRNA複合体。
[21]前記センス鎖が、表6に列挙されるセンス鎖配列から選択される配列を有する、上記[12]から[20]のいずれかに記載のRNA複合体。
[22]前記アンチセンス鎖が、表6に列挙されるアンチセンス鎖配列から選択される配列を有する、上記[12]から[20]のいずれかに記載のRNA複合体。
[23]前記RNA複合体が、細胞におけるCTGF発現を阻害することができる、上記[1]から[22]のいずれかに記載のRNA複合体。
[24]前記細胞が上皮細胞である、上記[23]に記載のRNA複合体。
[25]前記細胞が肺胞細胞である、上記[23]に記載のRNA複合体。
[26]前記細胞がA549細胞である、上記[23]に記載のRNA複合体。
[27]前記細胞がHaCaT細胞である、上記[23]に記載のRNA複合体。
[28]前記細胞がHs68細胞である、上記[23]に記載のRNA複合体。
[29]前記RNA複合体が化学修飾を含む、上記[1]から[28]のいずれかに記載のRNA複合体。
[30]前記化学修飾が、2'-O-メチル化ヌクレオシド、ホスホロチオエート結合又は疎水性部分である、上記[29]に記載のRNA複合体。
[31]前記RNA複合体が疎水性部分を含む、上記[30]に記載のRNA複合体。
[32]前記疎水性部分がコレステロール部分である、上記[31]に記載のRNA複合体。
[33]前記コレステロール部分が、前記センス鎖の3'末端に結合している、上記[32]に記載のRNA複合体。
[34]前記RNA複合体が2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む、上記[29]から[30]のいずれかに記載のRNA複合体。
[35]前記2'-O-メチル化ヌクレオシドが前記センス鎖上に位置する、上記[34]に記載のRNA複合体。
[36]前記センス鎖が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む、上記[35]に記載のRNA複合体。
[37]前記2'-O-メチル化ヌクレオシドが前記アンチセンス鎖の3'末端に位置する、上記[34]に記載のRNA複合体。
[38]前記アンチセンス鎖の前記3'末端領域が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む、上記[37]に記載のRNA複合体。
[39]前記2'-O-メチル化ヌクレオシドが前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖の前記3'末端に位置する、上記[34]に記載のRNA複合体。
[40]前記センス鎖が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含み、前記アンチセンス鎖の3'末端領域が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む、上記[39]に記載のRNA複合体。
[41]前記RNA複合体がホスホロチオエート結合を含む、上記[29]から[40]のいずれかに記載のRNA複合体。
[42]前記RNA複合体の前記センス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも5%がホスホロチオエート結合である、上記[41]に記載のRNA複合体。
[43]前記RNA複合体の前記センス鎖中の前記リボヌクレオチド間の結合の少なくとも10%がホスホロチオエート結合である、上記[41]に記載のRNA複合体。
[44]前記RNA複合体の前記センス鎖中の前記リボヌクレオチド間の結合の少なくとも15%がホスホロチオエート結合である、上記[41]に記載のRNA複合体。
[45]前記RNA複合体の前記センス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも20%がホスホロチオエート結合である、上記[41]に記載のRNA複合体。
[46]前記RNA複合体の前記アンチセンス鎖中のリボヌクレオチド間の結合の少なくとも5%がホスホロチオエート結合である、上記[41]から[45]のいずれかに記載のRNA複合体。
[47]前記RNA複合体の前記アンチセンス鎖中の前記リボヌクレオチド間の結合の少なくとも10%がホスホロチオエート結合である、上記[41]から[45]のいずれかに記載のRNA複合体。
[48]前記RNA複合体の前記アンチセンス鎖中の前記リボヌクレオチド間の結合の少なくとも15%がホスホロチオエート結合である、上記[41]から[45]のいずれかに記載のRNA複合体。
[49]前記RNA複合体の前記アンチセンス鎖中の前記リボヌクレオチド間の結合の少なくとも20%がホスホロチオエート結合である、上記[41]から[45]のいずれかに記載のRNA複合体。
[50]前記RNA複合体が、表2、表3、又は表6に列挙される修飾RNA複合体である、上記[49]に記載のRNA複合体。
[51]前記RNA複合体が、送達ビヒクルの非存在下で細胞の細胞膜を透過することができる、上記[41]から[50]のいずれかに記載のRNA複合体。
[52]前記RNA複合体が、細胞毒性ではない、上記[1]から[51]のいずれかに記載のRNA複合体。
[53]上記[1]から[52]のいずれかに記載のRNA複合体と前記細胞を接触させることを含む、細胞においてCTGF発現を阻害する方法。
[54]前記細胞がA549、Hs68、HaCaT、上皮細胞又は肺胞細胞である、上記[53]に記載の方法。
[55]前記細胞が、ヒト対象の気道に存在する、上記[53]に記載の方法。
[56]対象における特発性肺線維症を治療する方法であって、上記[1]から[52]のいずれかに記載のRNA複合体を前記対象に投与することを含む、前記方法。
[57]前記RNA複合体を前記対象の気道に投与することを含む、上記[56]に記載の方法。
[58]前記RNA複合体を静脈内投与する、上記[56]に記載の方法。
[59]前記RNA複合体を非経口的に投与する、上記[56]に記載の方法。
[60]前記RNA複合体を吸入により投与する、上記[56]又は[57]に記載の方法。
[61]上記[1]から[52]のいずれかに記載のRNA複合体及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
[62]前記医薬組成物が、吸入による投与のために製剤化される、上記[61]に記載の医薬組成物。
[63]前記医薬組成物が、吸入器を使用する投与のために製剤化される、上記[61]に記載の医薬組成物。
[64]上記[61]から[63]のいずれかに記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、前記対象における特発性肺線維症の治療方法。
[65]前記医薬組成物を、前記対象の気道に投与することを含む、上記[64]に記載の方法。
[66]前記医薬組成物が吸入器中にある、上記[65]に記載の方法。
[67]前記医薬組成物を、非経口的に又は静脈内に投与することを含む、上記[64]に記載の方法。
[68]前記医薬組成物を、経口投与することを含む、上記[64]に記載の方法。
[69]前記対象が、前記医薬組成物を自己投与する、上記[64]から[68]のいずれかに記載の方法。
[70]特発性肺線維症の前記治療のための第2の薬剤を投与することをさらに含む、上記[64]から[69]のいずれかに記載の方法。
[71]前記第2の薬剤が増殖因子阻害剤である、上記[70]に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】CTGFを標的とする100の例示的なasiRNAの遺伝子サイレンシング効力を示す。
【
図2】CTGFを標的とする18の例示的なasiRNAの遺伝子サイレンシング効力を示す。
【
図3】CTGFを標的とする13の例示的なasiRNAの遺伝子サイレンシング効力を示す。
【
図4】CTGFを標的とする18の例示的なasiRNAの血清ヌクレアーゼ安定性を示す。
【
図5】CTGFを標的とする18の例示的な裸のasiRNA及び修飾asiRNAの遺伝子サイレンシング効力を示す。
【
図6】例示的なCTGF標的化細胞透過asiRNA(cp-asiRNAまたはcp-asiCTGF)の遺伝子サイレンシング効力を示す。
【
図7】例示的なcp-asiRNAによるCTGFタンパク質発現の阻害を示す。
【
図8】ラット皮膚における例示的なcp-asiRNAによるCTGFタンパク質発現の阻害を示す。
【
図9】ブレオマイシン処理マウス(BLM処理マウス)におけるCTGFを標的とするcp-asiCTGF93の遺伝子サイレンシング効力を示す。
【
図10】BLM処理マウスにおけるcp-asiCTGF93による線維症関連遺伝子発現の阻害を示す。
【
図11】BLM処理マウスにおけるcp-asiCTGF93による線維症関連タンパク質産生の阻害を示す。
【
図12A】A549細胞におけるCTGF標的化cp-asiRNAの遺伝子サイレンシング活性を示す。
【
図12B】HaCaT細胞におけるCTGF標的化cp-asiRNAの追加の遺伝子サイレンシング活性を示す。
【
図12C】Hs68細胞におけるCTGF標的化cp-asiRNAの遺伝子サイレンシング活性を示す。
【
図13】CTGF標的化cp-asiRNAの標的遺伝子サイレンシング活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要
特定の態様では、本明細書は、CTGFを阻害し、したがってIPFの治療に有用な非対称RNA複合体(例えば、asiRNAまたはcp-asiRNA)を提供する。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、化学修飾され、トランスフェクションビヒクルを必要とせずに細胞を浸透することができる。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、表1、表2、表3、または表6に列挙されるRNA複合体である。特定の態様では、本明細書は、そのようなRNA複合体を含む医薬組成物、及びそのようなRNA複合体及び医薬組成物を使用する方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA複合体は、asiRNAまたはcp-siRNAである。本明細書で使用するとき、asiRNAという用語は、19~21ntのアンチセンス鎖及び13~17ntのセンス鎖を有する2本鎖非対称短鎖干渉RNA分子を意味する。asiRNAについてのさらなる情報は、米国特許出願公開第2012/0238017号及びChang et al., Mol. Ther. 17:725-732 (2009)に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA複合体は、リポソーム、カチオン性ポリマー、細胞膜透過ペプチド(CPP)、タンパク質導入ドメイン(PTD)、抗体及び/またはアプタマーなどの送達ビヒクルを使用して、細胞に送達される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA複合体は、細胞におけるCTGF阻害を媒介するためにそのような送達ビヒクルの使用を必要としないように、化学修飾される。そのようなRNA複合体は、本明細書では細胞膜透過asiRNA(cp-asiRNA)と称する。
【0015】
定義
便宜上、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲で使用する特定の用語をここに収集する。
【0016】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、その冠詞の文法的対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用する。例として、「ある要素」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、「投与する」という用語は、医薬品または組成物を対象に提供することを意味し、医療従事者による投与及び自己投与を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書で使用するとき、「干渉核酸」及び「阻害核酸」という用語は、互換的に使用する。干渉核酸は、一般に、それぞれが塩基対形成部分を有し、塩基対形成部分が、ワトソン・クリック型塩基対形成により核酸(典型的にはRNA)中の標的配列にハイブリダイズして、標的配列内に核酸:オリゴマーヘテロ二本鎖を形成する、サブユニット間結合によって連結した、環状サブユニット配列を含む。干渉RNA分子には、アンチセンス分子、siRNA分子、asiRNA分子、cp-asiRNA分子、一本鎖siRNA分子、miRNA分子及びshRNA分子が含まれるが、これらに限定されない。そのような干渉核酸は、mRNAの翻訳をブロックもしくは阻害するか、または天然のプレmRNAスプライシングプロセシングを阻害するか、または標的mRNAの分解を誘導するように設計することができ、この干渉核酸がハイブリダイズする標的配列を「ターゲットにする」または「標的化する」と言ってもよい。干渉核酸は、例えば、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、2’-O-メチルオリゴヌクレオチド及びRNA干渉剤(siRNA剤)を含み得る。RNAi分子は、一般に、標的分子とヘテロ二本鎖を形成することによって作用し、標的分子は選択的に分解または「ノックダウン」され、それにより標的RNAを不活性化する。いくつかの条件下では、干渉RNA分子は、転写物翻訳を抑制することによって、及び/または転写物の転写を阻害することによって、標的転写物を不活性化することもできる。干渉核酸は、より一般的には、上記の方法で標的の核酸を標的化する場合、タンパク質などの生物学的に関連する標的を「標的化」すると言われる。
【0019】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、互換的に使用する。ポリヌクレオチド及び核酸とは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれであっても、任意の組み合わせ及び任意の長さの、ポリマー形態のヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、任意の機能を果たし得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である、すなわち、遺伝子または遺伝子フラグメントのコード領域または非コード領域、連鎖解析から定義される遺伝子座(loci 複数)(locus 単数)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマーである。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド構造の修飾は、存在する場合には、ポリマーアセンブリの前または後に付与し得る。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーションなどにより、さらに修飾してもよい。本明細書で提供する全ての核酸配列において、U核酸塩基はT核酸塩基と互換性がある。
【0020】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒カプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。
【0021】
Tmが実質的に45℃よりも高く、または少なくとも50℃もしくは少なくとも60℃~80℃以上である生理学的条件下で、オリゴヌクレオチドが標的にハイブリダイズする場合、オリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドに「特異的にハイブリダイズする」。そのようなハイブリダイゼーションは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に対応する。所与のイオン強度及びpHにおいて、Tmは、標的配列の50%が相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。ここでもまた、そのようなハイブリダイゼーションは、標的配列に対するアンチセンスオリゴマーの「おおよその」または「実質的な」相補性ならびに完全な相補性により生じ得る。
【0022】
本明細書中で使用するとき、「対象」という用語は、治療または療法のために選択されたヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0023】
本明細書中で使用する「治療有効量」及び「有効量」という語句は、任意の医学的治療に適用可能な妥当な利益/リスク比で、対象における少なくとも細胞亜集団における所望の治療効果をもたらすのに有効な薬剤の量を意味する。
【0024】
対象における疾患を「治療する」または疾患を有する対象を「治療する」とは、疾患の少なくとも1つの症状を軽減させるか、またはその悪化を防ぐために、対象に医薬的治療、例えば薬物の投与を施すことを意味する。
【0025】
本明細書中で使用するとき、障害または状態を「予防する」治療薬は、疾患または状態の発症前に統計的試料に投与する場合、非治療対照試料と比較して、治療試料における障害または状態の発生を低減するか、または非治療対照試料と比較して、障害または状態の1種または複数の症状の発症を遅らせるかまたは重篤度を低減する化合物を意味する。
【0026】
RNA複合体
特定の態様では、本明細書は、それぞれ、CTGF mRNAを標的とし、細胞におけるCTGF発現を阻害するRNA複合体を提供する。ヒトCTGF cDNAの核酸配列を以下に示す。
ヒトCTGF mRNA配列。(NM_001901.2)
ホモサピエンス結合組織成長因子(CTGF)、mRNA
【0027】
【0028】
特定の態様では、本明細書は、CTGF mRNA配列(例えば、ヒトCTGF mRNA配列)に対する配列相補性を有するアンチセンス鎖、及びアンチセンス鎖に対する配列相補性を有するセンス鎖を含むRNA複合体を提供する。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、細胞(例えば、肺胞細胞、上皮細胞、Hs68、HaCaT、またはA549細胞)におけるCTGF発現を阻害することができる。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、非対称短鎖干渉RNA(asiRNA)である。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、表1、表2、表3、または表6に列挙されるRNA複合体である。本明細書に記載のRNA複合体は、RNA塩基、非RNA塩基、またはRNA塩基と非RNA塩基との混合物を含有することができる。例えば、本明細書で提供する特定のRNA複合体は、主にRNA塩基から構成され得るが、DNA塩基または天然に存在しないヌクレオチドも含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は少なくとも19ヌクレオチド(nt)の長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、19~21ntの長さ(すなわち、19、20または21ntの長さ)である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は少なくとも21ヌクレオチド(nt)の長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、21~31ntの長さ(すなわち、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31ntの長さ)である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖の少なくとも13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または31ntは、CTGF mRNA配列に相補的である。完璧な相補性は必須ではない。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖はCTGF mRNA配列に完全に相補的である。
【0030】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも24ntの長さ(例えば、少なくとも25ntの長さ、少なくとも26ntの長さ、少なくとも27ntの長さ、少なくとも28ntの長さ、少なくとも29ntの長さ、少なくとも30ntの長さ、または少なくとも31ntの長さ)である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、124nt以下の長さ(例えば、100nt以下の長さ、90nt以下の長さ、80nt以下の長さ、70nt以下の長さ、60nt以下の長さ、50nt以下の長さ、または40nt以下の長さ)である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は21ntの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は23ntの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は25ntの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は27ntの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は29ntの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は31ntの長さである。いくつかの実施形態では、少なくとも16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または 31ntのアンチセンス鎖は、CTGF mRNA配列に相補的である。完璧な相補性は必須ではない。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖はCTGF mRNA配列に完全に相補的である。
【0031】
いくつかの実施形態では、センス鎖は、15~17ntの長さ(すなわち、15ntの長さ、16ntの長さまたは17ntの長さ)である。いくつかの実施形態では、少なくとも15nt、少なくとも16nt、少なくとも17ntのセンス鎖は、アンチセンス鎖の配列に相補的である。いくつかの実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の配列に完全に相補的である。いくつかの実施形態では、センス鎖は16ntの長さである。
【0032】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖及びセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端及びセンス鎖の3’末端が平滑末端を形成する複合体を形成する。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖及びセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端がセンス鎖の3’末端にオーバーハングする(例えば、1、2、3、4または5ntで)複合体を形成する。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖及びセンス鎖は、センス鎖の5’末端がアンチセンス鎖の3’末端にオーバーハングする(例えば、1、2、3、4または5ntで)複合体を形成する。
【0033】
いくつかの実施形態では、RNA複合体のアンチセンス鎖及び/またはセンス鎖は、表1、表2、表3または表6に列挙される配列から選択されるセンス鎖配列及び/またはアンチセンス鎖配列を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供するRNA複合体は化学修飾を含み、この修飾は、送達ビヒクルの非存在下での細胞膜の透過を促進する。いくつかの実施形態では、修飾は、2’-O-メチル化ヌクレオシド、ホスホロチオエート結合または疎水性部分である。いくつかの実施形態では、化学修飾は疎水性部分である。いくつかの実施形態では、疎水性部分は、コレステロール部分である。いくつかの実施形態では、RNA複合体は、表2、表3、または表6に列挙される修飾RNA複合体である。特定の実施形態では、RNA複合体は細胞毒性ではない。
【0035】
本明細書に記載のRNA複合体は、種々のオリゴヌクレオチド化学を使用することができる。オリゴヌクレオチド化学の例としては、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、ホスホロチオエート、2’-O-Me修飾オリゴヌクレオチド、及びモルフォリノ化学、上記のいずれかの組み合わせを含む例が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、PNA化学は、2’-O-Meオリゴヌクレオチドと比較して比較的高い標的結合強度のために、より短い標的配列を利用することができる。多くの場合、ホスホロチオエート及び2’-O-Me修飾化学を組み合わせて、ホスホロチオエート骨格を有する2’-O-Me修飾オリゴヌクレオチドを生成する。例えば、PCT国際公開番号WO/2013/112053及びWO/2009/008725を参照のこと、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
ペプチド核酸(PNA)は、その骨格がピリミジンまたはプリン塩基が結合しているN-(2-アミノエチル)グリシン単位からなるデオキシリボース骨格と、構造的に同形であるDNAの類似体である。天然ピリミジン及びプリン塩基を含むPNAは、ワトソン-クリック塩基対形成規則に従い相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、塩基対認識の点でDNAを模倣する。PNAの骨格は、ホスホジエステル結合ではなくペプチド結合によって形成され、これにより、アンチセンス用途に非常に好適なものになっている(下記の構造を参照)。この骨格は荷電しておらず、結果としてPNA/DNAまたはPNA/RNA二本鎖が通常より高い熱安定性を示す。PNAは、ヌクレアーゼまたはプロテアーゼによって認識されない。
【0037】
天然構造に対する根本的な構造変化にもかかわらず、PNAはヘリックス形態でDNAまたはRNAに配列特異的に結合することができる。PNAの特徴としては、相補的DNAまたはRNAに対する高い結合親和性、一塩基ミスマッチによって生じる不安定化効果、ヌクレアーゼ及びプロテアーゼに対する耐性、塩濃度とは無関係のDNAまたはRNAとのハイブリダイゼーション及びホモプリンDNAとの三重鎖形成が挙げられる。
【0038】
PANAGENE.TM.は、独自のBts PNAモノマー(Bts;ベンゾチアゾール-2-スルホニル基)及び独自のオリゴマー化プロセスを開発した。Bts PNAモノマーを使用するPNAオリゴマー化は、脱保護、カップリング及びキャッピングの反復サイクルからなる。PNAは、当該分野で公知の任意の技術を用いて合成的に製造することができる。例えば、米国特許第6,969,766号、第7,211,668号、第7,022,851号、第7,125,994号、第7,145,006号及び第7,179,896号を参照のこと。また、PNAの調製のための、米国特許第5,539,082号、第5,714,331、及び第5,719,262号も参照のこと。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al., Science, 254:1497-1500, 1991に見出すことができる。上記のそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる。
【0039】
干渉核酸はまた、「ロックド核酸」サブユニット(LNA)を含み得る。「LNA」は架橋核酸(BNA)と呼ばれる修飾クラスのメンバーである。BNAは、C3-エンド(ノーザン)糖パッカーのリボース環の配座をロックする共有結合を特徴とする。LNAでは、架橋は、2’-O位と4’-C位間のメチレンからなる。LNAは、骨格の事前組織化(preorganization)及び塩基スタッキングを強化して、ハイブリダイゼーション及び熱安定性を高める。
【0040】
LNAの構造は、例えば、Wengel, et al., Chemical Communications (1998) 455、Tetrahedron (1998) 54:3607, 及び Accounts of Chem.Research (1999) 32:301)、Obika, et al., Tetrahedron Letters (1997) 38:8735、(1998) 39:5401、及びBioorganic Medicinal Chemistry (2008) 16:9230に見出すことができる。本明細書で提供する化合物は、1つまたは複数のLNAを組み込んでもよい。場合によっては、化合物は完全にLNAからなっていてもよい。個々のLNAヌクレオシドサブユニットの合成方法及びオリゴヌクレオチドへそれらを組み込む方法は、例えば、米国特許第7,572,582号、第7,569,575号、第7,084,125号、第7,060,809号、第7,053,207号、第7,034,133号、第6,794,499号、及び第6,670,461号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。典型的なサブユニット間リンカーには、ホスホジエステル及びホスホロチオエート部分が含まれ、あるいは、リン非含有リンカーを使用してもよい。一実施形態は、各LNAサブユニットがDNAサブユニットによって分離されるLNA含有化合物である。特定の化合物は、サブユニット間リンカーがホスホロチオエートである、交互になっているLNAサブユニット及びDNAサブユニットからなる。
【0041】
特定の実施形態では、RNA複合体は、コレステロール部分に連結している。いくつかの実施形態では、コレステロール部分はセンス鎖の3’末端に結合している。いくつかの実施形態では、コレステロール部分はアンチセンス鎖の3’末端に結合している。いくつかの実施形態では、コレステロール部分はセンス鎖の5’末端に結合している。いくつかの実施形態では、コレステロール部分はアンチセンス鎖の5’末端に結合している。
【0042】
いくつかの実施形態では、RNA複合体は、2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む。2’-O-メチル化ヌクレオシドは、リボース分子の2’-OH残基にメチル基を有する。2’-O-Me-RNAはRNAと同じ(または同様の)挙動を示すが、ヌクレアーゼ分解から保護される。さらなる安定化のために、2’-O-Me-RNAをホスホチオエートオリゴヌクレオチド(PTO)と組み合わせることもできる。2’-O-Me-RNA(ホスホジエステルまたはホスホチオエート)は、当技術分野のルーチン技術に従って合成することができる(例えば、Yoo et al., Nucleic Acids Res. 32:2008-16, 2004、を参照のこと、これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0043】
いくつかの実施形態では、2’-O-メチルヌクレオシドは、センス鎖上に位置する。いくつかの実施形態では、2’-O-メチルヌクレオシドは、センス鎖上の3’末端に位置する。いくつかの実施形態では、センス鎖は、複数の2’-O-メチル化ヌクレオシド(例えば、2、3、4、5または6個の2’-O-メチル化ヌクレオシド)を含む。いくつかの実施形態では、2’-O-メチルヌクレオシドは、アンチセンス鎖上の3’末端に位置する。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖の3’末端領域は、複数の2’-O-メチル化ヌクレオシド(例えば、3’末端の6ヌクレオシド内に、2、3、4、5または6個の2’-O-メチル化ヌクレオシド)を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端領域の両方は、複数の2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、非修飾ヌクレオシドと交互になっている2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は非修飾ヌクレオシドと交互になっている2、3、4、5、6、7または8個の2’-O-メチル化ヌクレオシドの連続配列を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、非修飾ヌクレオシドと交互になっている2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は非修飾ヌクレオシドと交互になっている2、3、4、5、6、7または8個の2’-O-メチル化ヌクレオシドの連続配列を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、RNA複合体は、ホスホロチオエート結合を含む。「ホスホロチオエート」(またはS-オリゴ)は、非架橋酸素の1つが硫黄で置換された、正常DNAの変異体である。ヌクレオチド間結合の硫化は、5’から3’方向及び3’から5’方向DNA POL1エキソヌクレアーゼ、ヌクレアーゼS1及びP1、RNアーゼ、血清ヌクレアーゼならびにヘビ毒ホスホジエステラーゼを含むエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼの作用を低下させる。ホスホロチオエートは、2つの主な経路、すなわち、ハイドロゲンホスホネート上の二硫化炭素中の元素状硫黄の溶液の作用によって、またはテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)もしくは3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン1,1-ジオキシド(BDTD)により、亜リン酸トリエステルを硫化する方法によって、製造する(例えば、Iyer et al.,J. Org. Chem. 55, 4693-4699, 1990を参照のこと)。後者の方法は、ほとんどの有機溶媒中の元素状硫黄の不溶性及び二硫化炭素の毒性の問題を回避する。TETD及びBDTD法はまた、より高純度のホスホロチオエートをもたらす。
【0045】
いくつかの実施形態では、RNA複合体のセンス鎖のリボヌクレオチド間結合の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、RNA複合体のセンス鎖のリボヌクレオチド間結合のすべてが、ホスホロチオエート結合である。
【0046】
いくつかの実施形態では、RNA複合体のアンチセンス鎖のリボヌクレオチド間結合の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、RNA複合体のアンチセンス鎖のリボヌクレオチド間結合のすべてが、ホスホロチオエート結合である。
【0047】
本明細書に記載のRNA複合体は、細胞と接触させるか、または生物(例えば、ヒト)に投与してもよい。あるいは、RNA複合体をコードする構築物及び/またはベクターを、細胞または生物と接触させるか、または細胞または生物に導入してもよい。特定の実施形態では、ウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを使用する。
【0048】
本明細書に記載のRNA複合体は、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって調製することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA複合体は、化学合成またはインビトロ転写によって調製する。
【0049】
特定の態様では、本明細書は、本明細書に開示されるRNA複合体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、医薬組成物は、肺への送達用に(例えば、吸入器として)製剤化する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口または非経口送達用に製剤化する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、IPFの治療のための第2の薬剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は増殖因子阻害剤である。増殖因子阻害剤の例としては、ニンテダニブ、ピルフェニドン、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、オシメラルビブ、ネシツムマブ、及びバンデタニブが挙げられる。いくつかの実施形態では、第2の薬剤はステロイドである。ステロイドの例としては、ヒドロコルチゾン、フルチカゾン、ブデソニド(mudesonide)、モメタゾン、ベクロメタゾン、シクレソニド、フルニソリドコルチゾン及びプレドニゾンが挙げられる。2つ以上の増殖因子阻害剤及び/またはステロイドを医薬組成物に取り込み得る。
【0050】
特定の実施形態では、医薬組成物は、トランスフェクションビヒクルを含まない。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、送達ビヒクル(例えば、リポソーム、カチオン性ポリマー、細胞膜透過ペプチド(CPP)、タンパク質導入ドメイン(PTD)、抗体及び/またはアプタマー)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の複数(例えば2つ以上)のRNA複合体の組み合わせを含む。
【0051】
これらの製剤または組成物を調製する方法としては、本明細書に記載のRNA複合体を、担体及び任意に1つまたは複数の補助成分と会合させる工程が挙げられる。
一般に、製剤は、本明細書に記載の薬剤を、液体担体と均一かつ緊密に会合させることによって調製する。
【0052】
治療方法
特定の態様では、本明細書は、細胞におけるCTGF発現を阻害する方法であって、この細胞を本明細書に記載のRNA複合体と接触させることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、RNA複合体は修飾RNA複合体であり、トランスフェクションビヒクルの非存在下で細胞をRNA複合体と接触させる。いくつかの実施形態では、送達ビヒクル(例えば、リポソーム、カチオン性ポリマー、細胞膜透過ペプチド(CPP)、タンパク質導入ドメイン(PTD)、抗体及び/またはアプタマー)の存在下で、細胞をRNA複合体と接触させる。いくつかの実施形態では、細胞はヒト対象の気道に存在する。いくつかの実施形態では、対象はIPFを有する。いくつかの実施形態では、対象は女性である。いくつかの実施形態では、対象は男性である。
【0053】
特定の態様では、本明細書は、IPFのヒト対象を治療する方法であって、本明細書に記載のRNA複合体または医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
特定の実施形態では、RNA複合体または医薬組成物は、対象の気道に投与する。
いくつかの実施形態では、RNA複合体または医薬組成物は、対象によって自己投与する。
【0054】
本発明の方法において、本明細書に記載のRNA複合体は、例えば送達ビヒクルなしの核酸(例えば、cp-asiRNAの場合)として、送達試薬との組み合わせで、及び/または本明細書中に記載のRNA複合体を発現する配列を含む核酸として提供することができる。いくつかの実施形態では、当該分野で公知の任意の核酸送達方法を、本明細書に記載の方法で使用することができる。好適な送達試薬としては、例えば、Mirus Transit TKO親油性試薬、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、ポリカチオン(例えば、ポリリシン)、アテロコラーゲン、ナノプレックス及びリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。核酸分子の送達ビヒクルとしてのアテロコラーゲンの使用は、Minakuchi et al. Nucleic Acids Res., 32(13):e109 (2004)、Hanai et al. Ann NY Acad Sci., 1082:9-17 (2006)、及び Kawata et al. Mol Cancer Ther., 7(9):2904-12 (2008)に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が本明細書に組み込まれる。例示的な干渉核酸送達システムは、米国特許第8,283,461号、第8,313,772号、第8,501,930号、第8,426,554号、第8,268,798号及び第8,324,366号において提供されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、リポソームを用いて、本明細書に記載のRNA複合体を対象に送達する。本明細書に記載の方法での使用に好適なリポソームは、一般に中性または負に荷電したリン脂質及びコレステロールなどのステロールを含む、標準的な小胞形成脂質から形成することができる。脂質の選択は、一般に、所望のリポソームサイズ及び血流中のリポソームの半減期などの因子を考慮することによって導かれる。リポソームを調製するための種々の方法が知られており、例えば、Szoka et al. (1980), Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467,及び米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号及び同第5,019,369号に記載されているが、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
本方法で使用するためのリポソームは、単核マクロファージ系(「MMS」)及び細網内皮系(「RES」)によるクリアランスを回避するように修飾することもできる。そのような修飾リポソームは、表面上にオプソニン化阻害部分を有するか、またはリポソーム構造に組み込まれている。
【0057】
本明細書に記載のリポソームの調製に使用するためのオプソニン化阻害部分は、典型的には、リポソーム膜に結合した大きな親水性ポリマーである。本明細書中で使用するとき、オプソニン化阻害部分は、例えばリポソーム膜自体への脂溶性アンカーのインターカレーションによって、または膜脂質の活性基に直接結合することによって、それが膜に化学的にまたは物理的に付着している場合、リポソーム膜に「結合して」いる。これらのオプソニン化阻害親水性ポリマーは、MMS及びRESによるリポソームの取り込みを有意に減少させる保護表面層を形成する。例えば、これは米国特許第4,920,016号に記載され、その全体の開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
いくつかの実施形態では、リポソームを修飾するのに好適なオプソニン化阻害部分は、約500~約40,000ダルトンまたは約2,000~約20,000ダルトンの数平均分子量を有する水溶性ポリマーである。そのようなポリマーとしては、例えばメトキシPEGまたはPPG、及びPEGまたはPPGステアレートなどの、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体、ポリアクリルアミドまたはポリN-ビニルピロリドン、直鎖状、分枝状またはデンドリマー状のポリアミドアミン、ポリアクリル酸、カルボキシル基またはアミノ基が化学的に結合しているポリビニルアルコール及びポリキシリトールなどのポリアルコール、ならびにガングリオシドGM1などのガングリオシドなどの合成ポリマーが挙げられる。PEG、メトキシPEG、またはメトキシPPGのコポリマー、またはその誘導体もまた好適である。さらに、オプソニン化阻害ポリマーは、PEGと、ポリアミノ酸、多糖、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミンまたはポリヌクレオチドのいずれかとのブロックコポリマーであり得る。オプソニン化阻害ポリマーはまた、ガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラギナンなどのアミノ酸またはカルボン酸を含む天然多糖、アミノ化多糖またはオリゴ糖(直鎖状または分枝状)、または、例えば、カルボン酸誘導体と反応してカルボキシル基結合を得る、カルボキシル化多糖またはオリゴ糖であり得る。いくつかの実施形態では、オプソニン化阻害部分は、PEG、PPG、またはその誘導体である。PEGまたはPEG誘導体で修飾されたリポソームは、「PEG化リポソーム」と呼ばれることがある。
【0059】
本明細書に開示される医薬組成物は、任意の好適な投与経路、吸入によって、経口的及び非経口的に投与してもよい。特定の実施形態では、医薬組成物は、全身的に(例えば、経口または非経口投与によって)送達される。特定の他の実施形態では、医薬組成物は、肺への吸入により局所的に送達される。
【0060】
医薬組成物中のRNA複合体の実際の用量レベルは、特定の患者、組成及び投与方法について、患者に有毒でなく所望の治療応答を達成するのに有効な量のRNA複合体を得るように、変えてよい。
【0061】
選択される用量レベルは、使用される特定の薬剤の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度または代謝速度、治療期間、使用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態及び以前の病歴を含む種々の要因、及び医学分野においてよく知られている同様の要因に依存する。
【0062】
当業者である医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師であれば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで、医薬組成物に用いられている薬剤の用量を処方及び/または投与し、所望の効果が達成されるまで徐々に用量を増加させることができる。
【0063】
一般的に本明細書に記載のRNA複合体の好適な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最低用量であるRNA複合体の量である。そのような有効用量は、一般に上記の因子に依存する。
【実施例】
【0064】
例示
実施例1:CTGF特異的非対称低分子干渉RNAのスクリーニング
結合組織成長因子(CTGF)を阻害する非対称低分子干渉RNA(asiRNA)を同定するために、100のasiRNAを合成し、スクリーニングした。例示的なasiRNAの核酸配列を、表1に示す。
【0065】
【0066】
表1に列挙したasiRNAを、1×二本鎖siRNA緩衝液(Bioneer Inc.,Korea)中、95℃で2分間、37℃で1時間インキュベートした。適切な鎖アニーリングをゲル電気泳動により確認した。スクリーニングのために、10%ウシ胎仔血清(Gibco)及び100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で培養した2.5×104個のA549細胞(ATCC)を、24ウェルプレートに播種した。A549細胞を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、製造者の指示に従って、0.3nMのasiRNAでトランスフェクトした。
【0067】
トランスフェクションの24時間後、リアルタイムRT-PCRによってCTGF mRNAレベルを測定した。Isol-RNA Lysis Reagent(5PRIME)を用いて全RNAを抽出し、次いで抽出した500ngのRNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems社)を用いて、製造者の指示に従ってcDNA合成に使用した。合成したcDNAを希釈し、次いでStepOne RT- PCR system(Applied Biosystems)を用いて、製造者の指示に従って、定量的RT-PCRを行った。100のasiRNAのそれぞれによるCTGF阻害のレベルを
図1に示す。
【0068】
実施例2:CTGF標的化asiRNAを用いたCTGF mRNA発現の阻害
18のasiRNA配列、asiCTGF 4、9、16、25、30、32、33、34、39、40、48、49、81、92、93、96、97及び99を、CTGF発現を阻害する能力について試験した。
【0069】
選択したasiRNAを、1× 二本鎖siRNA緩衝液(Bioneer Inc., Korea)中、95℃で2分間、37℃で1時間インキュベートした。適切な鎖アニーリングをゲル電気泳動により確認した。スクリーニングのために、2.5×104個のA549(ATCC)細胞を、24ウェルプレートに播種した。A549細胞を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、製造者の指示に従って、0.3または0.1nMのasiRNAでトランスフェクトした。
【0070】
トランスフェクトした細胞のCTGF mRNAレベルを、トランスフェクションの24時間後にRT-PCRを用いて測定した。具体的には、Isol-RNA Lysis Reagent(5PRIME)を用いて全RNAを抽出し、次いで抽出した500ngのRNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems社)を用いて、cDNA合成に使用した。合成したcDNAを希釈し、次いでStepOne RT- PCR system(Applied Biosystems)を用いて、定量的RT-PCRを行った。CTGF遺伝子の増幅は、Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を用いて検出した。GAPDHを内部対照として増幅した。下のプライマー配列を使用した:
【0071】
ヒトGAPDH-フォワード:5’-GAG TCA ACG GAT TTG GTCGT-3’
ヒトGAPDH-リバース:5’-GAC AAG CTT CCC GTT CTC AG-3’
ヒトCTGF-フォワード:5’-CAA GGG CCT CTT CTG TGA CT-3’
ヒトCTGF-リバース:5’-ACG TGC ACT GGT ACT TGC AG-3’
【0072】
18の例示的なasiRNAのCTGF阻害のレベルを
図2に示す。
図2に示すように、4、9、16、30、33、34、48、49、81、92、93、96及び97のasiRNAは、CTGF発現を阻害した。
【0073】
実施例3:CTGF標的化asiRNAを用いたCTGF mRNA発現の阻害
13のasiRNA配列、asiCTGF4、9、16、30、33、34、48、49、81、92、93、96及び97を、トランスフェクションによるCTGF発現を阻害する能力について試験した。
【0074】
asiRNAを、1×二本鎖siRNA緩衝液(Bioneer)中、95℃で5分間、37℃で1時間インキュベートした。適切な鎖アニーリングをゲル電気泳動により確認した。スクリーニングのために、A549細胞(ATCC)を、100mm細胞培養皿中の、10%ウシ胎仔血清(Gibco)及び100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含む最小必須培地(Gibco)で培養した。トランスフェクションの1日前に、2.5×10
4個のA549細胞を、24ウェルプレートに播種した。A549細胞を、0.1、0.03及び0.001nMのasiRNA濃度でasiRNAによりトランスフェクトした。RNAiso Plus (TaKaRa)を用いて全RNAを抽出し、次いで抽出した500ngのRNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems)を用いて、製造者の指示に従って、cDNA合成に使用した。CTGF遺伝子の増幅は、Power SYBR Premix Ex Taq (TaKaRa)を用いて検出した。GAPDHを対照として使用した。13のasiRNAのCTGF阻害のレベルを
図3に示す。
【0075】
実施例4:CTGF標的化asiRNAを用いた血清ヌクレアーゼ安定性
実施例1から選択したasiRNA(0.1nmole)を、50μLの10%ウシ胎仔血清溶液中でインキュベートした。指示された時点で、各試料7マイクロリットルを採取し、直ちに-70℃で凍結させた。次いで、各試料のアリコート3μLを、10%(wt/vol)の非変性ポリアクリルアミドゲルで分離し、エチジウムブロマイドで染色し、UV透過照明によって視覚化した。血清ヌクレアーゼに対するasiCTGFの安定性を
図4に示す。
【0076】
実施例5:スクリーニングのためのasiRNAの初期化学修飾
2’-O-メチルRNAの化学修飾を、実施例1から選択したasiRNAに適用し、修飾asiRNAの遺伝子サイレンシング効力を、裸のasiRNAの効率とともにA549細胞で試験した。修飾asiRNA(表2)を、CTGF mRNA阻害A549細胞についてスクリーニングし、CTGF mRNAレベルをリアルタイムPCRによって測定した。
【0077】
【0078】
表2に列挙した2’-O-メチルRNA修飾asiRNAを、1×二本鎖siRNA緩衝液(Bioneer Inc.、Korea)中、95℃で2分間、37℃で1時間インキュベートした。適切な鎖アニーリングをゲル電気泳動により確認した。スクリーニングのために、100mm細胞培養皿中の、10%ウシ胎仔血清(Gibco)及び100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で培養した2.5×104個のA549細胞(ATCC)を、24ウェルプレートに播種した。A549細胞を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、製造者の指示に従って、0.1nMの修飾及び裸のasiRNAでトランスフェクトした。
【0079】
トランスフェクトした細胞のCTGF mRNAレベルを、トランスフェクションの24時間後にRT-PCRを用いて測定した。Isol-RNA Lysis Reagent(5PRIME)を用いて全RNAを抽出し、次いで抽出した500ngのRNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems)を用いて、製造者の指示に従って、cDNA合成に使用した。合成したcDNAを希釈し、次いで、StepOne リアルタイム-PCR system(Applied Biosystems)を用いて、製造者の指示に従って、定量的RT-PCRを行った。裸のasiRNAまたは2’-O-メチルRNA修飾asiRNAのasiRNAのCTGF阻害のレベルを
図5に示す。
【0080】
実施例6:自己送達のためのasiRNA化学修飾
選択したasiRNAに化学修飾を適用し、修飾asiRNAの細胞送達を他の送達試薬の非存在下で試験した。以下に記載するように、特定の修飾は、エンドサイトーシス及びasiRNAの安定性を改善した。そのような細胞膜透過asiRNA(cp-asiRNA)は、送達試薬の非存在下で細胞に送達することができる。
【0081】
4つのポテンシャルcp-asiRNA(表3)を、A549細胞におけるCTGF mRNA阻害についてスクリーニングした。cp-asiRNAを、送達試薬なしでA549細胞とともに3μMでインキュベートした。リアルタイムPCRによってCTGF mRNAレベルを測定した。
【0082】
【0083】
A549細胞を、100mm細胞培養皿中の、10%ウシ胎仔血清(Gibco)及び100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で培養した。表3に列挙したポテンシャルcp-asiRNAを、OPTI-MEM緩衝液(Gibco)中、95℃で5分間、37℃で1時間インキュベートした。適切な鎖アニーリングをゲル電気泳動により確認した。cp-asiRNA処理の1日前に、2.5×104個の細胞を、24ウェルプレートに播種した。処理前に、A549細胞をダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で洗浄し、次いで、OPTI-MEM緩衝液中で、ポテンシャルcp-asiRNAの存在下で24時間培養した。各時点で、asiRNA含有OPTI-MEM培地を、血清含有培地と交換した。CTGF mRNA発現のレベルは、asiRNA処理の48時間後にリアルタイムPCRを用いて測定した。
【0084】
実施例7:CTGF標的化cp-asiRNAを用いたCTGF mRNA発現の阻害
cp-asiRNAによるCTGF mRNAの阻害を試験した。各ポテンシャルcp-asiRNAを、送達試薬なしでA549細胞とともに3μMでインキュベートした。リアルタイムPCRによってCTGF mRNAレベルを測定した。
【0085】
CTGF細胞(ATCC)を、100mm細胞培養皿中の、10%ウシ胎仔血清(Gibco)及び100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で培養した。cp-asiRNAを、OPTI-MEM緩衝液(Gibco)中、95℃で5分間、37℃で1時間インキュベートした。適切な鎖アニーリングをゲル電気泳動により確認した。トランスフェクションの1日前に、2.5×104個のA549細胞を、24ウェルプレートに播種した。処理直前に、A549細胞をダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で洗浄し、次いで、OPTI-MEM緩衝液中で、ポテンシャルcp-asiRNAの存在下で24時間培養した。その時点で、asiRNA含有OPTI-MEM培地を、血清含有培地と交換した。CTGF mRNA発現のレベルは、asiRNA処理の48時間後にリアルタイムPCRを用いて測定した。RNAiso Plus (TaKaRa)を用いて全RNAを抽出し、次いで抽出した500ngのRNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems)を用いて、製造者の指示に従って、cDNA合成に使用した。CTGF遺伝子の増幅は、Power SYBR Premix Ex Taq (TaKaRa)を用いて検出した。GAPDHを内部対照として増幅した。
【0086】
4つのポテンシャルcp-asiRNAのそれぞれによるCTGF mRNA阻害のレベルを
図6に示す。全てのcp-asiCTGFインキュベート細胞株において、45%のCTGFタンパク質阻害が観察され、cp-asiCTGF93はmRNAの阻害レベルにおいて最も高い有効性を有していた。
【0087】
実施例8:CTGF標的化cp-asiRNAを用いたCTGFタンパク質発現の阻害
cp-asiRNAによるCTGFタンパク質の阻害を試験するために、各ポテンシャルcp-asiRNAを、送達試薬なしでA549細胞とともに3μMでインキュベートした。A549細胞(ATCC)を、100mm細胞培養皿中の、10%ウシ胎仔血清(Gibco)及び100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で培養した。
【0088】
cp-asiRNAを、OPTI-MEM緩衝液(Gibco)中、95℃で5分間、37℃で1時間インキュベートした。適切な鎖アニーリングをゲル電気泳動により確認した。
【0089】
トランスフェクションの1日前に、9×104個のA549細胞を、6ウェルプレートに播種した。処理直前に、A549細胞をダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で洗浄し、次いで、OPTI-MEM緩衝液中で、cp-asiRNAの存在下で24時間培養した。その時点で、asiRNA含有OPTI-MEM培地を、血清含有培地と交換した。
【0090】
CTGFタンパク質発現のレベルは、asiRNA処理の48時間後にウエスタンブロットを用いて測定した。要約すると、処理済みCTGF細胞を、SDS溶解緩衝液(1%SDS、100mMトリス(pH8.8))で溶解した。全タンパク質抽出物20μgを、10%SDS-PAGEゲルに充填し、120Vで電気泳動させた。電気泳動後、タンパク質を、300mAで1時間、メタノール(Merck)で既に活性化したPVDF膜(Bio-rad)に移した。膜を室温で1時間、3%BSA(Bioworld)でブロックし、次いで、抗CTGF抗体(Santa Cruz)及び抗γチューブリン抗体(Bethyl)を含む3%BSA中で、4℃で一晩インキュベートした。次いで膜を1xTBSTで10分間3回洗浄し、室温で1時間、1xTBST中でHRPコンジュゲート二次抗体と共に1時間インキュベートした。膜を1×TBSTで10分間洗浄し、1×ECLで1分間処理した。次いで、CTGF及びγ-チューブリンバンドを、Chemidoc装置(Bio-rad)を用いて画像化した。
ウエスタンブロットアッセイの結果を
図7に示す。
【0091】
実施例9:動物モデルにおけるcp-asiCTGFによるCTGFの阻害
CTGF発現の阻害についてのcp-asiCTGF93の有効性を、動物モデルで評価した。Orient Bio (Korea)から、SDラット(雄型、6~8週齢)を購入した。ラットの皮膚に0.4、0.7または1mgの濃度のcp-asiRNAを注射し、72時間後に注射部位から皮膚生検試料を採取し、qRT-PCR分析にかけ、CTGFのタンパク質レベルを評価した。
【0092】
cp-asiRNA処理の72時間後、Mammalian Protein Extraction Buffer(GE Healthcare)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を用いて全タンパク質を抽出した。タンパク質濃度はブラッドフォードアッセイキットを用いて測定した。等量のタンパク質を、SDS-PAGEゲル電気泳動で分離した。電気泳動後、タンパク質を、メタノール(Merck)で既に1時間活性化したPVDF膜(Bio-rad)に移した。膜を室温で1時間、5%スキムミルクでブロックし、次いで特異的抗体(抗CTGF抗体:Novus及びSanta Cruz、抗β-アクチン抗体:Santa Cruz、抗GAPDH抗体:Santa Cruz)を含む5%スキムミルク中で、4℃で一晩インキュベートした。膜を、1%Tween-20を含むトリス緩衝生理食塩水で洗浄し、HRPコンジュゲート二次抗体(Santa Cruz)を含む5%スキムミルク中で、室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、膜をECL基質(Thermo scientific)で処理した。次いで、標的タンパク質バンドを、Chemidoc装置(Bio-rad社)を用いて画像化した。
【0093】
図8に示すように、0.4mg/注射のcp-asiCTGF93は、CTGFタンパク質レベルの80%超の減少をもたらした。
【0094】
実施例10:ブレオマイシン誘発肺線維症動物モデルにおけるCTGFの発現に対するcp-asiCTGF93の効果
CTGF発現の阻害についてのcp-asiCTGF93の有効性を、ブレオマイシン誘発(BLM)肺線維症動物モデルで評価した。
【0095】
7週齢雄C57BL/6マウスを、Orient Bio(Seongnam,Korea)から購入した。マウスを、Zoletil 50の腹腔内投与により麻酔にかけた。
ブレオマイシン硫酸(Enzo、Farmingdale,NY)を1X生理食塩水に溶解し、体重1kgあたり2mgの単回用量として気管内投与した。対照動物には生理食塩水のみを投与した。
【0096】
7日後、cp-asiCTGF93を、0.6×生理食塩水中、95℃で5分間、37℃で30分間インキュベートした。続いて、cp-asiCTGF93をブレオマイシン処置マウス(BLM処置マウス)に気管内投与した。30匹のマウスを無作為に6群に分けた、すなわち、0.6×生理食塩水を投与した陰性対照マウス(n=4)、ブレオマイシンを投与したBLMマウス(n=5)、ブレオマイシン及び6.2mg/kgのcp-asiCTGF 93を投与した6.2mpkマウス(n=5)、ブレオマイシン及び3.1mg/kgのcp-asiCTGF 93を投与した3.1mpkマウス(n=6)、ブレオマイシン及び1.5mg/kgのcp-asiCTGF 93を投与した1.5mpkマウス(n=5)、及びブレオマイシン及び0.75mg/kgのcp-asiCTGF 93を投与した0.75mpkマウス(n=5)、である。
【0097】
ブレオマイシン投与の14日後、マウスを犠死させ、CTGF mRNAのレベルを定量的RT-PCRを用いて測定した。右肺をリアルタイムPCR(RT-PCR)に使用して、mRNAレベルを測定した。
【0098】
RNAiso Plus(TaKaRa、Japan)を用いて、肺組織から全RNAを抽出し、抽出した500ngのRNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems)を用いて、製造者の指示に従って、cDNA合成に使用した。使用したプライマー及びプローブ配列を表4に示す。リアルタイムRT-PCRは、CTGF用にpower SYBR Premix Ex Taq (TaKaRa, Japan)を、または18S用にTHUNDERBIRD(登録商標) Probe qPCR Mix (TOYOBO, Japan)を、製造者の指示に従って用いて実施した。ハウスキーピング遺伝子18Sを内部対照として使用し、遺伝子特異的mRNA発現を18S発現に対して正規化した。
【0099】
【0100】
図9に示すように、CTGF発現のBLM誘発アップレギュレーションは、cp-asiCTGF 93の単回気管内投与によって有意に阻害された。cp-asiCTGF 93の単回気管内投与は、BLM処置群と比較して、BLM処置マウスにおけるCTGF mRNAを>60%減少させた。
【0101】
実施例11:ブレオマイシン誘発肺線維症動物モデルにおける線維症関連遺伝子発現に対するcp-asiCTGF93の効果
線維症関連遺伝子発現に対するcp-asiCTGF93の効果を、ブレオマイシン誘発肺線維症動物モデルにおいて評価した。
【0102】
ブレオマイシン投与の7日後に、cp-asiCTGF93を気管内投与した(2mg/kg体重)。ブレオマイシン投与の14日後に、リアルタイムPCRを用いて線維症関連遺伝子の発現レベルを測定した。
【0103】
製造業者のプロトコールに従って、RNAiso Plus(TaKaRa,Japan)を用いて、肺組織から全RNAを抽出した。使用したプライマー配列を表5に示す。リアルタイムRT-PCRは、power SYBR Premix Ex Taq (TaKaRa,Japan)を、またはTHUNDERBIRD(登録商標) Probe qPCR Mix (TOYOBO,Japan)を用いて実施し、反応は、Applied Biosystems社のStepOne Real-Time PCR装置(Applied Biosystems,USA)を用いて実施した。ハウスキーピング遺伝子18Sを内部対照として使用し、遺伝子特異的mRNA発現を18S発現に対して正規化した。
【0104】
【0105】
図10に示すように、フィブロネクチン、I型コラーゲン、III型コラーゲン発現のBLM誘発アップレギュレーションは、cp-asiCTGF 93の投与によって有意に阻害された。
【0106】
実施例12:ブレオマイシン誘発肺線維症動物モデルにおけるフィブロネクチンタンパク質の産生に対するcp-asiCTGF93の効果
フィブロネクチンタンパク質レベルに対するcp-asiCTGF93の効果を、ブレオマイシン誘発肺線維症動物モデルにおいて評価した。
【0107】
ブレオマイシン投与(2mg/kg体重)の7日後に、cp-asiCTGF93(6.2~0.75mg/kg体重)を気管内投与した。ブレオマイシン投与の14日後、マウスを犠死させ、評価した。線維性肺組織におけるフィブロネクチンの発現を、ウエスタンブロット分析を用いて測定した。
【0108】
試料を、500μLの哺乳動物タンパク質抽出緩衝液(GE healthcare)中でホモジナイズして、フィブロネクチン及びγチューブリンを検出した。タンパク質濃度は ブラッドフォードアッセイを用いて測定した。全タンパク質抽出物20μgを、10%ゲルSDS-PAGEにより電気泳動させ、メタノール(Merck)で既に300mAで1時間活性化したポリビニリデンジフルオリド(PVDF)フィルター(Bio-Rad,USA)に移した。膜を室温で1時間、5%スキムミルクでブロックし、次いでマウス抗フィブロネクチン抗体(Abcam Inc,Cambridge,MA)または抗γチューブリン抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を含む5%BSA(Bioword)で、4℃で一晩インキュベートした。一次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスまたは抗ウサギIgG二次抗体及びChemidoc機器(Bio-Rad)を用いて検出した。
【0109】
図11に示すように、フィブロネクチンタンパク質の発現のBLM誘発アップレギュレーションは、cp-asiCTGF93の投与によって有意に阻害された。
【0110】
実施例13:異なるアンチセンス鎖を有するcp-asiRNAによる標的遺伝子ノックダウンの効果
異なるアンチセンス鎖長を有する、結合組織成長因子(CTGF)標的化cp-asiRNAを、効力について試験した。CTGF標的化cp-asiRNAの配列及び化学修飾は、以下の表6に見出すことができる。
【0111】
【0112】
種々のアンチセンス鎖長を有する、CTGF標的化cp-asiRNAの標的遺伝子サイレンシング活性を、
図12Aに見出すことができる。A549細胞を、CTGF標的化cp-asiRNAでトランスフェクトし、A549細胞をcp-asiRNAとインキュベートした。全RNAを細胞溶解物から抽出し、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により分析した。cp-asiRNAの強力な標的遺伝子サイレンシングが観察された。NTは非処理の対照を示す。
【0113】
HaCaT細胞における、異なるアンチセンス鎖長を有するCTGF標的化cp-asiRNAの標的遺伝子サイレンシング活性を、
図12Bに見出すことができる。HaCaT細胞を、CTGF標的化cp-asiRNAでトランスフェクトした。HaCaT細胞を、CTGF標的化cp-asiRNAでインキュベートした。全RNAを細胞溶解物から抽出し、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により分析した。cp-asiRNAの強力な標的遺伝子サイレンシングが観察された。NTは非処理の対照を示す。Hs68細胞における、CTGF標的化cp-asiRNAの標的遺伝子サイレンシング活性を、
図12Cに見出すことができる。Hs68細胞を、上記のCTGF標的化cp-asiRNAを用いてトランスフェクト/インキュベートした。全RNAを細胞溶解物から抽出し、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により処理した。cp-asiRNAの強力な標的遺伝子サイレンシングが観察された。
【0114】
実施例14:皮内注射によるインビボ標的遺伝子ノックダウンの効果
異なるアンチセンス鎖長を有する、結合組織成長因子(CTGF)標的化cp-asiRNAを、効力について試験した。CTGF標的化cp-asiRNAの配列及び化学は、表6に示す。
【0115】
異なるアンチセンス鎖長を有する、CTGF標的化cp-asiRNAの標的遺伝子サイレンシング活性を、ラットの皮膚で試験した(表6)。0.6X生理食塩水中の0.5mgのCTGF標的化cp-asiRNAを、ラットの皮膚に注射した(皮内注射)。
図13は、cp-asiRNA投与後の標的mRNA及びタンパク質レベルを示す。cp-asiRNAの強力な標的遺伝子サイレンシングが観察された。さらに、より長いアンチセンス鎖を有するcp-asiRNAは、最大の標的遺伝子ノックダウンを示した。NTは非処理の対照を示す。0.6X生理食塩水は、試薬のみの対照を表す。これらの結果は、インビボでのcp-asiRNA処置による標的遺伝子ノックダウンを示す。
【0116】
参照による組み込み
本明細書に記載された全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が、参照により組み込まれるように、具体的かつ個々に示される場合と同様に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。抵触する場合には、本明細書一切の定義を含めて、本出願が優先する。
【0117】
均等物
当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載された発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識し、または確認できるであろう。そのような均等物は、添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【配列表】