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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】電極用保護層および電気化学電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20220330BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20220330BHJP
   H01M 50/497 20210101ALI20220330BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20220330BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220330BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220330BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20220330BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20220330BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220330BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20220330BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220330BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20220330BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20220330BHJP
   B32B 27/14 20060101ALI20220330BHJP
   B32B 5/16 20060101ALI20220330BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALN20220330BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/1395
H01M50/497
H01M50/489
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/443 C
H01M50/443 E
H01M50/491
H01M50/463 A
H01M50/414
H01M50/451
H01M50/403 D
B32B5/18 101
B32B7/025
B32B27/14
B32B5/16
H01M10/0566
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2018560820
(86)(22)【出願日】2017-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017033488
(87)【国際公開番号】W WO2017201376
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】62/339,340
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500287732
【氏名又は名称】シオン・パワー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジー・ララミー
(72)【発明者】
【氏名】ユーリー・ブイ・ミハイリク
(72)【発明者】
【氏名】ホイ・ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】イェルン・クリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】マリナ・ザフォント-ゼンペレ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ライトナー
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・シュナイダー
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-127275(JP,A)
【文献】特開2015-153638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02- 4/62
H01M50/40-50/497
B32B 5/16- 5/20
B32B 7/025
B32B27/14
C23C 4/00- 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層;
該第1の層上に配置した第2の層;および
液体電解質
を含み、
該第2の層が多孔性であり、かつ元の表面を有する複数の粒子を含み、
該粒子の元の表面の少なくとも一部が、もはや互いに融着した複数の粒子から識別することができないように、該複数の粒子の少なくとも一部が互いに融着しており、
該複数の粒子の少なくとも一部が、非イオン伝導性材料を含み、
該第2の層が、10-6[S/cm]未満のイオン伝導率を有し、
該第2の層が、0.1~5μmの平均厚さを有し、
該第2の層が、該液体電解質に対して透過性である、電気化学電池。
【請求項2】
第1の層;および
該第1の層上に付着させた第2の層;
を含み、
該第2の層が元の表面を有する複数の粒子を含み、かつ多孔性であり、
該複数の粒子の少なくとも一部が、少なくとも部分的に該第1の層内に埋め込まれており、
該粒子の元の表面の少なくとも一部が、もはや互いに融着した複数の粒子から識別することができないように、該複数の粒子の少なくとも一部が、互いに融着しており、
該第2の層が、0.1~5μmの平均厚さを有する、電気化学電池に用いるための物品。
【請求項3】
コーティングを含む第1の層;および
該第1の層のコーティング上に付着させた第2の層
を含み、
該コーティングが第1の材料を含み、
該第2の層が、第2の材料から形成された元の表面を有する複数の粒子を含み、
該第1の材料が、該第2の材料の硬度より高い硬度を有し、
該粒子の元の表面の少なくとも一部が、もはや互いに融着した複数の粒子から識別することができないように、該複数の粒子の少なくとも一部が、互いに融着しており、
該第2の層が、0.1~5μmの平均厚さを有する、電気化学電池に用いるための物品。
【請求項4】
金属リチウムを含む第1の層;および
該第1の層上に配置した非イオン伝導性材料を含む第2の層
を含み、
該非イオン伝導性材料が、該第2の層の少なくとも80重量%の量で該第2の層中に存在し、
該第2の層の少なくとも一部が、少なくとも部分的に該第1の層の金属リチウム内に埋め込まれており、
該第2の層が、0.1~5μmの平均厚さを有する、電気化学電池に用いるための物品。
【請求項5】
第1の層;および
該第1の層上に配置した第2の層
を含み、
該第2の層が、元の表面を有する粒子を含み、多孔性であり、かつ非イオン伝導性材料を含み、
該粒子の元の表面の少なくとも一部が、もはや互いに融着した複数の粒子から識別することができないように、該複数の粒子の少なくとも一部が互いに融着しており、
該非イオン伝導性材料が、該第2の層の少なくとも80重量%の量で該第2の層中に存在し、
該第2の層が、0.1~5μmの平均厚さを有する、電気化学電池に用いるための物品。
【請求項6】
金属リチウムを含む第1の層を、少なくとも200m/秒の速度を有する複数の粒子に暴露する工程;
該粒子の少なくとも一部を該第1の層の金属リチウム内に埋め込む工程;および
第2の材料を含む第2の層を形成する工程
を含み、
該粒子が、該第1の層材料と異なる第2の材料を含み、
該第2の層が多孔性であり、かつ10-6[S/cm]未満のイオン伝導率を有する、電気化学電池に用いるための物品を形成する方法。
【請求項7】
第1の材料を含む第1の層を、元の表面を有し、かつ少なくともいくつかの粒子を融着させるのに十分な速度を有する複数の粒子に暴露する工程;
該粒子の元の表面の少なくとも一部が、もはや互いに融着した複数の粒子から識別することができないように、少なくともいくつかの粒子を融着させる工程;
該粒子の少なくとも一部を該第1の層内に埋め込む工程;および
第2の材料を含む第2の層を形成する工程
を含み、
該粒子が第2の材料を含み、
該第2の層が多孔性であり、かつ10-6[S/cm]未満のイオン伝導率を有する、電気化学電池に用いるための物品を形成する方法。
【請求項8】
前記第2の層が複数の粒子を含む、請求項4記載の物品。
【請求項9】
前記複数の粒子の少なくとも一部が非イオン伝導性材料を含む、請求項2~3、5および8のいずれか1項記載の物品。
【請求項10】
前記非イオン伝導性材料がセラミック材料を含む、請求項9記載の物品。
【請求項11】
前記第2の層がイオン伝導性材料を更に含むか、または前記複数の粒子の少なくとも一部がイオン伝導性材料を含む、請求項2~3、5および8~10のいずれか1項記載の物品。
【請求項12】
前記複数の粒子の少なくとも一部がポリマー粒子である、請求項2~3、5および8~11のいずれか1項記載の物品。
【請求項13】
前記ポリマー粒子が、第2の層組成物の合計に対して、少なくとも10重量%の量で第2の層中に存在する、請求項12記載の物品。
【請求項14】
前記非イオン伝導性材料が、第2の層組成物の合計に対して、少なくとも20重量%、または少なくとも80重量%の量で第2の層中に存在する、請求項4~5および9~10のいずれか1項記載の物品。
【請求項15】
前記第2の層が多孔性である、請求項2~5および8~14のいずれか1項記載の物品。
【請求項16】
前記第2の層が、少なくとも25%の気孔率を有する、請求項15記載の物品。
【請求項17】
前記第1の層と接触していない第2の層の表面の少なくとも一部は、0.1μm以上、1μm以上、または2μm以上の表面粗さを有する、請求項2~5および8~16のいずれか1項記載の物品。
【請求項18】
前記第2の層の少なくとも10体積%、少なくとも30体積%、少なくとも50体積%、または少なくとも70体積%が、イオン伝導性材料を含む1つ以上の連続経路を含む
、請求項2~5および8~17のいずれか1項記載の物品。
【請求項19】
前記複数の粒子が、0.5~20μm、または1.0~15μmの平均最大断面寸法を有する、請求項2~3、5および8~12のいずれか1項記載の物品。
【請求項20】
前記複数の粒子の少なくとも一部が互いに融着している、請求項2~3、5、8~12および19のいずれか1項記載の物品。
【請求項21】
前記複数の粒子の少なくとも50%が互いに融着している、請求項20記載の物品。
【請求項22】
前記イオン伝導性材料がセラミックを含む、請求項11および18のいずれか1項記載の物品。
【請求項23】
前記セラミックがLi24SiP19である、請求項22記載の物品。
【請求項24】
前記イオン伝導性材料の少なくとも一部が結晶性である、請求項11、18および22のいずれか1項記載の物品。
【請求項25】
前記第2の層が、少なくとも1.5g/cm、または1.5~6g/cmの密度を有する、請求項2~5および8~24のいずれか1項記載の物品。
【請求項26】
前記第2の層がポリマーを含む、請求項2~5および8~25のいずれか1項記載の物品。
【請求項27】
前記ポリマーがゲル中に存在する、請求項26記載の物品。
【請求項28】
前記ポリマーが、液体電解質に暴露されるとポリマーゲルを形成するように構成される、請求項26記載の物品。
【請求項29】
前記第1の層が電気活性材料を含む、請求項2~5および8~28のいずれか1項記載の物品。
【請求項30】
前記電気活性材料が金属リチウムを含む、請求項29記載の物品。
【請求項31】
前記第1の層がセパレータである、請求項2~5および8~29のいずれか1項記載の物品。
【請求項32】
前記第2の層が液体電解質に対して透過性である、請求項2~5および8~31のいずれか1項記載の物品。
【請求項33】
前記非イオン伝導性材料がアルミナまたはシリカを含む、請求項4~5、9~10および14のいずれか1項記載の物品。
【請求項34】
請求項2~5および8~33のいずれか1項記載の物品を含む電気化学電池。
【請求項35】
液体電解質を含む、請求項34記載の電気化学電池。
【請求項36】
前記第1の層を前記複数の粒子に暴露する工程が、エアロゾル沈着法を用いて前記複数の粒子を前記第1の層上に噴霧する工程を含む、請求項6または7記載の方法。
【請求項37】
前記暴露する工程が、少なくとも10mTorrの圧力で行われる、請求項6、7および36のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記暴露する工程が、500℃未満の温度で行われる、請求項6、7、36および37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記第1の層を500~2000m/秒の速度を有する前記複数の粒子に暴露する工程を含む、請求項6、7および36~38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記第1の層が、該第1の層の表面上に材料のコーティングを含む、請求項2~5および8~33のいずれか1項記載の物品。
【請求項41】
前記コーティングが非リチウムイオン伝導性材料を含む、請求項40記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
保護層、例えば、電気化学電池における電極の保護のための保護層を含む物品および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
リチウム系電池(または他のアルカリ金属系電池或いはアルカリ土類金属系電池)のサイクル寿命を減少させる要因の1つは、電極中に存在する金属リチウムの電解質との反応による電池のサイクル時の電解質の消費である。この反応を最小化、または実質的に防止し、その結果、電池のサイクル寿命を増加させるために、電解質から金属リチウムを単離することが望ましい。これは、しばしば、金属リチウムの表面上にコーティングされたリチウムイオン伝導性材料層の使用を含む。電解質がリチウムの表面に接触することを排除し、従ってリチウムと電解質との間の任意の副反応を防止するが、この材料は、リチウムイオンが金属リチウム表面へ、および金属リチウム表面から拡散することを可能にする。特定の保護構造体が製造されてきたが、リチウムと他のアルカリ金属電極用の保護構造体における改良は有益であり、そのような電池および電極の使用を含む多数の異なる技術分野における用途を有する。
【発明の概要】
【0003】
第1の層および第1の層上に付着させた第2の層(例えば、電気化学電池における電極の保護のための保護層などの保護層)を含む物品および方法を提供する。いくらかの態様では、電極構造体および/またはリチウム金属またはリチウム合金を含むアノードと本明細書中に記載される複数の粒子(例えば、融着された無機粒子)を含む保護層の形の第2の層を含む電極構造体を製造する方法が提供されている。本明細書中に開示される要件は、いくつかの場合、相互に関連する製品、別の特定の問題に対する解決策、および/または1つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用を含む。
【0004】
1つの態様では、電気化学電池に用いるための物品を提供する。いくつかの実施形態では、上記物品は、第1の層および上記第1の層上に付着された第2の層を含み、上記第2の層は複数の粒子を含み、上記第2の層が多孔性であり、上記複数の粒子の少なくとも一部が上記第1の層内に少なくとも部分的に埋め込まれており、上記複数の粒子の少なくとも一部が互いに融着されており、上記第2の層が、約0.1~約5μmの平均厚さを有する。
【0005】
いくつかの実施形態では、電気化学電池に用いるための物品は、コーティングを含む第1の層、および上記第1の層のコーティング上に付着された第2の層を含み、上記コーティングが第1の材料を含み、上記第2の層は第2の材料から形成された複数の粒子を含む。第1の材料は、第2の材料の硬度よりも高い硬度を有する。複数の粒子の少なくとも一部は、互いに融着している。第2の層は、約0.1μm~約5μmの平均厚さを有する。
【0006】
いくつかの実施形態では、物品は、第1の層および上記第1の層上に配置された非イオン伝導性材料を含む第2の層を含み、上記非イオン伝導性材料が第2の層の少なくとも80重量%の量で第2の層中に存在し、第2の層の少なくとも一部は、少なくとも部分的に第1の層内に埋め込まれており、上記第2の層は、約0.1μm~約5μmの平均厚さを有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、物品は、第1の層および第1の層上に配置された第2の層を含み、上記第2の層が粒子を含み、上記第2の層が多孔性であり、かつ非イオン伝導性材料を含み、上記非イオン伝導性材料が第2の層の少なくとも80重量%の量で第2の層中に存在し、上記第2の層は約0.1μm~約5μmの平均厚さを有する。
【0008】
別の態様では、電気化学電池が提供される。いくつかの実施形態では、電気化学電池は、第1の層および上記第1の層上に配置された第2の層、並びに液体電解質を含み、第2の層は多孔性であり、かつ複数の粒子を含み、上記複数の粒子の少なくとも一部は非イオン伝導性材料を含み、上記第2の層は約10-6[S/cm]未満のイオン伝導率を有し、上記第2の層は約0.1μm~約5μmの平均厚さを有し、上記第2の層は液体電解質に対して透過性である。
【0009】
更に別の態様では、電気化学電池に用いるための物品を形成する方法を提供する。1つの例において、上記方法は、第1の層材料を含む第1の層を、少なくとも200m/秒の速度を有する複数の粒子に暴露する工程;上記粒子の少なくとも一部を上記第1の層内に埋め込む工程;および第2の材料を含む第2の層を形成する工程を含み、上記粒子が、上記第1の層材料と異なる第2の材料を含み、上記第2の層が多孔性であり、かつ10-6[S/cm]未満のイオン伝導率を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記方法は、第1の材料を含む第1の層を、少なくともいくつかの粒子を融着させるのに十分な速度を有する複数の粒子に暴露する工程;上記粒子の少なくとも一部を該第1の層内に埋め込む工程;および第2の材料を含む第2の層を形成する工程を含み、上記粒子が第2の材料を含み、上記第2の層が多孔性であり、かつ10-6[S/cm]未満のイオン伝導率を有する。
【0011】
本発明の他の優位性および新規な特徴が、添付の図面と併せて考慮する場合に、以下の発明の様々な非限定的態様の詳細な説明から明らかとなる。本明細書および参照により組み込まれた文献が、対立するおよび/または矛盾する開示を含む場合、本明細書中により統制すべきである。参考として援用される二つ以上の文書が互いに相反するおよび/または矛盾する開示を含む場合には、遅い有効日を有する文書が支配するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の非限定的な実施形態は、概略的であり、一定の縮尺で描かれることを意図されていない添付の図面を参照して一例として説明する。図面において、図示の同一またはほぼ同一の各構成要素は、通常、単一の数字で表される。明瞭にするために、必ずしもすべての構成要素は、すべての図においてラベル付け、また図は、当業者が本発明を理解できるようにする必要がない場合に示された本発明の各実施形態の全ての構成要素である。図面において:
図1A】いくらかの態様に従った、下地層(例えば、第1の層)上に付着させた保護層/結果として生じる付着層(例えば、第2の層)の概略図である。
図1B】いくらかの態様に従った、下地層(例えば、第1の層)上に付着させた保護層/結果として生じる付着層(例えば、第2の層)の別の概略図である。
図1C】いくらかの態様に従った、下地層上に付着させた保護層/結果として生じる付着層(例えば、第2の層)および電解質層(例えば、第1の層)の概略図である。
図2A】~
図2B】いくらかの態様に従った、電極構造体の製造方法の概略図である。
図3A】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の断面SEM画像を示す。
図3B】いくらかの態様に従った、図3Aの保護層/結果として生じる付着層の上面SEM画像を示す。
図4A】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の上面SEM画像を示す。
図4B】いくらかの態様に従った、図4Aの保護層/結果として生じる付着層の断面SEM画像を示す。
図5A】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の断面SEM画像を示す。
図5B】いくらかの態様に従った、図5Aの保護層/結果として生じる付着層の別の断面SEM画像を示す。
図6A】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の断面SEM画像を示す。
図6B】いくらかの態様に従った、図5Aの保護層/結果として生じる付着層の別の断面SEM画像を示す。
図7A】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の上面SEM画像を示す。
図7B】いくらかの態様に従った、図7Aの保護層/結果として生じる付着層の別の上面SEM画像を示す。
図8】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層を含む例示的電気化学電池の概略図である。
図9】いくらかの態様に従った、Bi‐電池に対する初期インピーダンス(Ω)のプロットである。
図10】いくらかの態様に従った、カソード中心電池に対する初期インピーダンス(Ω)のプロットである。
図11】いくらかの態様に従った、いくつかの例示的なBi‐電池の充電/放電サイクル数の関数としての放電容量のプロットである。
図12】いくらかの態様に従った、いくつかの例示的なカソード中心電池の充電/放電サイクル数の関数としての放電容量のプロットである。
図13A】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の形状測定プロットを示す。
図13B】いくらかの態様に従った、図13Aの保護層/結果として生じる付着層の三次元形状測定プロットを示す。
図13C】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の形状測定プロットを示す。
図13D】いくらかの態様に従った、図13Cの保護層/結果として生じる付着層の三次元形状測定プロットを示す。
図14A】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の断面SEM画像を示す。
図14B】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の断面SEM画像を示す。
図14C】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の断面SEM画像を示す。
図14D】いくらかの態様に従った、保護層/結果として生じる付着層の上面SEM画像を示す。
図15A】いくらかの態様に従った、いくつかの例示的なカソード中心電池の充電/放電サイクル数の関数としての放電容量のプロットである。
図15B】いくらかの態様に従った、いくつかの例示的なカソード中心電池の充電/放電サイクル数の関数としての放電容量のプロットである。
図15C】いくらかの態様に従った、いくつかの例示的なカソード中心電池の充電/放電サイクル数の関数としての放電容量のプロットである。
図15D】いくらかの態様に従った、いくつかの例示的なカソード中心電池の充電/放電サイクル数の関数としての放電容量のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
電気化学電池内の電極および/または他の構成要素を保護するための層を含む物品および方法を提供する。本明細書中に記載されるように、電極(第1の層)のための保護層(第2の層)などの層は、複数の粒子(例えば、結晶性無機粒子、非晶質無機粒子)を含んでもよい。いくつかの態様では、複数の粒子(例えば、無機粒子)の少なくとも一部は、互いに融着している。例えば、いくつかの態様では、第2の層は、エアロゾル沈着法;または粒子の融着が沈着中に生じるように粒子を比較的高速度にすることを含む他の好適な方法によって形成してもよい。いくつかの態様では、付着層(例えば、複数の粒子を含む層)、即ち、第2の層は、イオン伝導性層または非イオン伝電性層である。いくつかの場合において、付着層(例えば、イオン伝導性層または非イオン伝導性層)、即ち、第2の層は、ポリマー材料(例えば、上記層の総体積分率に対して約20体積%より多いポリマー)を含む。複数の粒子の少なくとも一部は、別の層(第1の層、例えば、電極などの基材)内に埋め込まれていてもよい。いくらかの態様では、複数の粒子は、第1の材料(例えば、アニオン伝導性材料)から形成され、上記層は、必要に応じて第1の材料とは異なる第2の材料(例えば、イオン伝導性材料)を含んでもよい。他の実施形態では、単一の材料を使用する(例えば、非イオン伝導性材料またはイオン伝導性材料)。例えば、複数の粒子は、単一の材料から形成されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、非イオン伝導性材料と呼ばれる材料は、上記材料を横切る電子の流れを実質的に妨げる可能性があり、例えば、それらは約10-10[S/cm]未満または本明細書中に記載の別の好適な範囲の電子伝導率を有する。
【0015】
いくつかの場合において、保護層および/または結果として生じる付着層は、多孔性層であってもよい。いくつかの実施形態では、保護層(例えば、多孔性保護層)は、イオン伝導性材料(例えば、イオン伝導性セラミック)を含む。いくらかの実施形態では、保護層(例えば、多孔性保護層)は、イオン伝導性材料および非イオン伝導性材料(例えば、非イオン伝導性セラミック)などの第2の材料および/またはポリマー(例えば、球状ポリマーなどのポリマー粒子)を含む。いくつかの場合において、保護層(例えば、多孔性保護層)は、非イオン伝導性材料を含んでもよい。
【0016】
有利には、本明細書中に記載された保護層および/または/結果として生じる付着層は、上記層を形成するために使用される材料のバルク特性(例えば、結晶性、イオン伝導性)を維持することができ、伝統的な真空蒸着法の下では一般的に実行可能でない材料(例えば、セラミック、非イオン伝導性材料)の組み込みを可能にすることができ、電極表面および/またはセパレータ表面上に直接、保護層/付着層を形成し、および/または保護層を電気化学電池に組み込むことができるように、基材からの別の剥離工程の必要性を排除する。
【0017】
上記保護層および/または結果として生じる付着層が実質的にイオン伝導性材料を含まない場合(または保護層がイオン伝導性材料を含む実施形態においてでさえ)、保護層が保護層を横切るイオンの移動を可能にするように、上記層は十分に多孔性であってもよい。保護層を含むいくらかの従来の電気化学電池では、電解質が電極に到達することを可能にして望ましくない反応を起こすため、保護層における気孔率は一般的に望ましくないものであった。しかしながら、いくらかの既存の保護層を含む電気化学電池に比較して、そのような層を含む電気化学電池がかなり増加したサイクル寿命および/または減少した初期抵抗を示す一方、そのような多孔性層が上記層を横切るイオンの移動を可能にすることができることを、本発明者らは本開示の文脈内で発見した。
【0018】
理論に束縛されるものではないが、多孔性保護層(例えば、非イオン伝導性材料、ポリマー粒子、および/またはイオン伝導性材料を含む)は、バルク電解質の電荷濃度と比較して、電解質および保護層内の細孔の表面の間の固液界面で、より高い電荷濃度となることができると考えられている。例えば、たとえ知覚電流経路が多孔性ネットワークによって制限されていても、より高い電流レベルが電気化学電池によって取り扱うことができるように、イオン電流は表面成分とバルク電解質成分に分割することができる。有利には、このような多孔性保護層は、従って、保護されていない電極および/またはいくらかの従来の保護層(例えば、非多孔性保護層)を有する電極と比較して、(理論に束縛されるものではないが、例えば、より低い全体抵抗を提供するように細孔内の表面伝導要素の結果として、)より低い初期インピーダンスおよび/またはイオン輸率(即ち、所定のイオンによって電解質中に運搬された全電流の割合)の増加を有してもよい。いくつかのこのような実施形態では、上記層を横切るイオン伝導を可能にするために、電解質への電極のいくらかの暴露を可能にしながら、保護層は、電極を電解質と直接接触させることを制限することによって(例えば、それによって、電池のサイクル寿命を増加する)、電極を保護するのに役立つことができる。
【0019】
更に、保護層を横切って良好なイオン伝導性を可能にし、電気活性層を電解質中の有益な種への暴露を可能にしながら、本明細書中に記載の多孔性保護層は、同時に、(例えば、有害な種への電気活性層の暴露量を減少させることによって)電気活性層の保護を可能にすることができ、それによって、このような多孔性保護層を含まない電気化学電池と比較して、電気化学電池の全体的な性能を向上させることができる。
【0020】
開示された保護層(例えば、イオン伝導性層、非イオン伝導性層)は、リチウム系電気化学電池(例えば、リチウム‐硫黄電気化学電池、リチウムイオン電気化学電池)などの電気化学電池に組み込まれてもよい。本明細書中に記載のいくつかの態様は、電極用保護層のような層の使用を含むが、上記層は、電気化学電池内の任意の他の好適な成分として使用してもよいと認識すべきである。
【0021】
電気化学電池がリチウム‐硫黄電気化学電池であるいくつかの態様において、本明細書中に記載の保護層を電気化学電池に組み込むことによって、いくらかの従来の保護層に比べて、電気化学電池のサイクル寿命をかなり増加させ、および/または電解質中の種(例えば、電解質中含まれるものなどのポリスルフィド)およびアノードの電気活性材料(例えば、金属リチウムなどのリチウムを含むアノード)の間の化学反応の発生を防止または低減する。本明細書中に記載されるような保護層の使用により、電気化学電池内の硫黄の利用の増加、シャトル効果の低減または排除、および/または電解質の枯渇の低減または排除を含むいくらかの従来の保護層を超えるいくつかの優位性を提供することができる。本明細書中により詳細に記載されるように、複数の粒子を含む保護層および/または複合構造体は、いくつかの場合には、選択的にリチウムカチオンを伝導することができる。いくつかの態様では、複数の粒子を含む保護層は、ポリスルフィドアニオンなどのいくらかのイオンに対して伝導性ではない。いくつかの実施形態において、保護層は、(例えば、液体電解質がアノードおよび/またはカソードの電気活性材料に接触してもよいように)多孔性および/または電解質に対して透過性であってもよい。
【0022】
更に、本明細書中に記載されるように、保護層は、例えば、リチウムアノードと電解質との間に、改善された化学的安定性および/または全体イオン伝導性を含むいくらかの従来の保護層を超える追加の利点を提供することができる。例えば、複数の融着粒子を含む多孔性保護層は上記層を形成するために使用される材料のバルク特性を維持することができ、(例えば、サイクル寿命を減少させることなく)従来の真空蒸着法の下で一般的に実現可能ではない材料(例えば、セラミック)の組み込みを可能にし、および/または製造コストを下げる。
【0023】
加えて、いくつかの場合には、上記層内の粒子が比較的高いイオン伝導性を有してもよいので、本明細書中に記載される層のイオン伝導率は、いくらかの従来の保護層のものと同等であってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の付着層(第2の層)は、セパレータであってもよい。有利なことに、本明細書中に記載の付着層(例えば、少なくとも3μm、または少なくとも5μmの厚さを有する多孔性層)は、電気化学電池内の独立したセパレータ層の必要性を排除することができる。いくつかの実施形態では、上記付着層は、保護層およびセパレータ層の両方として機能する。
【0025】
開示された保護層および/または結果として生じる付着層を、何度も充電および放電することができる電気化学電池、例えば、一次電池または二次電池に組み込んでもよい。いくつかの態様において、本明細書中に記載される材料、システム、および方法を、リチウム電池(例えば、リチウム‐硫黄電池、リチウムイオン電池)に関連して使用することができる。本明細書中に記載の電気化学電池は、様々な用途、例えば、自動車、コンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、携帯電話、時計、ビデオカメラ、デジタルカメラ、温度計、電卓、ラップトップBIOS、通信機器または自動車遠隔操作錠の製造或いは操作に採用してもよい。本明細書中の記載の多くは、リチウム‐硫黄電池および/またはリチウムイオン電池に関するものであるが、本明細書中に記載された保護層を他のリチウム系電池、並びに他のアルカリ金属系電池に適用してもよいと認識すべきである。
【0026】
ここで図面を参照して、本開示の様々な態様を、以下により詳細に記載する。図面に示されたいくらかの層が互いの上に直接配置されているが、他の中間層はまた、いくらかの実施形態において示された層の間に存在してもよいと解されるべきである。従って、本明細書中で使用される場合、層が別の層の「上に配置」される、別の層の「上に付着」される、または別の層の「上に」と記載される場合、上記層の上に直接配置される、上記層の上に直接付着される、または直接上記層の上に、を意味するか、或いは介在層も存在してもよいことを意味する。これに対して、別の層「上に直接配置」されている、別の層「と接触している」、別の層「上に直接付着」されている、別の層「の直接上」である層は、介在層が存在しないことを示す。
【0027】
図1Aには、電極構造体10の1つの実施形態を示す。上記電極構造体には、第1の層20(例えば、電気活性層)および第1の表面30’の第1の層上に配置された第2の層30(例えば、イオン伝導性層などの保護層、または非イオン伝導性層)を含む。本明細書中に記載されるように、第2の層30は、例えば、下地層を(例えば、電解質または電解質内の種との反応から)保護するための保護層として用いられてもよい。いくつかの例では、第2の層の少なくとも一部は、少なくとも部分的に第1の層内に埋め込まれている。いくらかの実施形態では、第2の層30は、多孔性であってもよく、電解質および/または電解質内の種と下地層との接触を可能にすることができるが、以下でより詳細に説明するように、上記層は、サイクル寿命の全体的な増加を促進することができる。第2の層30は、いくつかの場合、複数の粒子を含んでいてもよい。以下でより詳細に説明するように、複数の粒子は、単一のタイプの、または複数のタイプのものであってもよい。いくつかの態様では、第1の層は第1の層の材料(例えば、電気活性材料、セパレータ、基材、または他の構成要素を形成するために使用される材料)を含み、第2の層は第1の層の材料とは異なる1つ以上の材料(例えば、第1の層を形成するために使用される材料とは異なる無機材料を含む複数の粒子)を含む。いくらかの実施形態では、第2の層は2つ以上の材料(例えば、イオン伝導性材料および非イオン伝導性材料)を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2の層の少なくとも一部は、少なくとも部分的に第1の層内に埋め込まれている。例えば、図1Bに示すように、電極構造体10は、第1の層20(例えば、電気活性層または本明細書中に記載の他の層)および第2の層30(例えば、保護層)を含む。第2の層の少なくとも一部は、第1の層の表面に埋め込まれていてもよい。いくつかの場合において、第1の層への第2の層の埋め込みは、本明細書中に記載の付着プロセスによって生じてもよい。
【0029】
いくつかの態様では、複数の粒子(例えば、無機粒子)を融着させる。例えば、図1Bに示すように、複数の粒子40が示されている。いくつかのこのような態様では、上記図に例示的に示されるように、複数の粒子40の少なくとも一部が融着している。いくつかの実施形態では、複数の粒子(例えば、融着無機粒子)は、少なくとも部分的に第1の層に埋め込まれている。以下でより詳細に説明するように、1つの例として、粒子が接触時に第1の層に衝突し、および/または衝突時に互いに融着するように、ある一定の速度で移動する粒子を第1の層に当てることによって、第2の層が少なくとも部分的に形成されてもよい。この実施態様に示すように、第2の層30は、第1の層20に隣接していてもよい第1の表面30’を有する。複数の粒子(例えば、融着された複数の粒子)は、いくつかの場合、接触してもよく、および/または第1の表面30’の第1の層20の少なくとも一部内に埋め込まれていてもよい。
【0030】
いくつかの態様では、(例えば、融着前または融着がない)粒子の平均最大断面寸法は、例えば、20μm以下、約10μm以下、約5μm以下、約2μm以下、約1μm以下、または約0.75μm以下であってもよい。いくつかの態様では、(例えば、前融着または任意の融着がない)複数の粒子の平均最大断面寸法は、約0.5μm以上、約0.75μm以上、約1μm以上、約1.5μm以上、約2μm以上、約3μm以上、約5μm以上、約10μm以上、または約15μm以上であってもよい。上記範囲の組み合わせもまた可能である(例えば、約20μm未満および約0.5μmよりも大きい最大断面寸法、約15μm未満および約1μmよりも大きい最大断面寸法)。複数の粒子タイプが1つの層中に含まれるいくつかの態様では、各粒子タイプが、上記範囲の1つ以上における平均最大断面寸法の値を有してもよい。
【0031】
前述したように、いくつかの実施形態では、層中の複数の粒子の少なくとも一部が融着していてもよい。用語「融着する」と「融着した」(および「融着」)は、当技術分野においてその一般的な意味を与えられ、一般的に、それらが単一の物体を形成するように、2つの以上の物体(例えば、粒子)の物理的接合を意味している。例えば、いくつかの場合において、融着前に単一粒子が占める体積(例えば、粒子の外表面内の全体積)は、2個の融着した粒子によって占められる体積の半分に実質的に等しい。当業者であれば、用語「融着する」、「融着した」および「融着」により、単に1つ以上の表面で互いに接触する粒子を指すのではなく、個々の粒子の元の表面の少なくとも一部は、もはや他の粒子から識別することはできないことを指すと理解する。いくつかの実施形態では、融着粒子(例えば、融着前に粒子の等価体積を有する融着粒子)が1μm未満の最小断面寸法を有してもよい。例えば、融着された後の複数の粒子は、1μm未満、0.75μm未満、0.5μm未満、0.2μm未満、または0.1μm未満の平均最小断面寸法を有してもよい。いくらかの実施形態では、融着された後の複数の粒子は、0.05μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.5μm以上、または0.75μm以上の平均最小断面寸法を有している。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、1μm未満および0.05μm以上)。他の範囲も可能である。
【0032】
いくつかの場合において、複数の粒子の少なくとも一部が第2の層を横切って(例えば、第2の層の第1の表面および第2の層の第2の表面の間に)連続経路を形成するように、上記粒子は融着される。連続経路には、例えば、上記経路内に途切れ、破損箇所、または不連続部が実質的にない、上記層の第1の表面から第2の対向面へのイオン伝導性経路を含む。1つの層を横切る融着粒子は連続経路を形成するのに反して、充填された未融着粒子を含む経路は、上記経路を連続にさせない粒子間に途切れまたは不連続部を有する。いくらかの態様では、上記層は、上記層を横切る連続経路を含む。いくつかの態様において、第2の層の少なくとも10体積%、少なくとも30体積%、少なくとも50体積%、または少なくとも70体積%が、(例えば、イオン伝導性材料を含んでもよい)融着粒子を含む1つ以上の連続経路を含む。いくらかの態様では、第2の層の約100体積%以下、約90体積%以下、約70体積%以下、約50体積%以下、約30体積%以下、約10体積%以下、または約5体積%以下は、融着粒子を含む1つの以上の連続経路を含む。上記範囲の組合せも可能である(例えば、少なくとも約10体積%および約100体積%以下)。いくつかの場合において、第2の層の100体積%が融着粒子を含む1つ以上の連続経路を含む。即ち、いくつかの態様では、第2の層は本質的に融着粒子から成る(例えば、第2の層は実質的に未融着粒子を含まない)。他の態様において、実質的にすべての粒子が融着していない。
【0033】
当業者は、例えば、共焦点ラマン顕微鏡法(CRM)を含む、粒子が融着されているかどうかを決定するための好適な方法を選択することができる。本明細書中に記載の層内の融着領域の割合を決定するために、CRMを使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、融着領域は、層内の非融着領域(例えば、粒子)と比較して、より少ない結晶性(より多い非晶質)であってもよく、非融着領域のものとは異なるラマン特性分光バンドを提供することができる。いくらかの実施形態では、融着領域は非晶質であってもよく、かつ上記層内の非融着領域(例えば、粒子)は結晶性であってもよい。非晶質ピークは結晶性領域のピークよりブロードで/強度が小さいかもしれないが、結晶性および非晶質領域は、同一/類似の波長にピークを有してもよい。いくつかの例では、非融着領域は、上記層を形成する前のバルク粒子の分光バンド(バルクスペクトル)と実質的に類似の分光バンドを含んでもよい。例えば、非融着領域は、同一または類似の波長にピークを含み、層の形成前の粒子の分光バンド内のピークとしてピーク(積分信号)の下で類似の面積を有する。非融着領域は、例えば、バルクスペクトルの対応する最大ピークに対する積分信号の値の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも97%の範囲内であってもよいスペクトルにおける最大ピーク(最大積分信号を有するピーク)積分信号(ピーク下面積)を有してもよい。対照的に、融着領域は、上記層を形成する前の粒子の分光バンドと異なる分光バンドを含んでもよい(例えば、同一または類似の波長であるが、実質的に異なる/より低い積分信号より有するピーク)。融着領域は、例えば、バルクスペクトルの対応する最大ピークに対する積分信号の値の50%未満、60%未満、70%未満、75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満、または97%未満であってもよいスペクトルにおける最大ピーク(最大積分信号を有するピーク)に対する積分信号(ピーク下面積)を有してもよい。いくつかの実施形態では、CRMの2次元または3次元のマッピングを、上記層中の融着領域の割合(例えば、前述のように、上記層を形成する前の粒子に対するスペクトルとは異なるスペクトルの最大ピークに対する積分信号を有する、最小断面積内の領域の割合)を決定するために用いてもよい。そのような分析のために使用される上記層の最小断面積は、例えば、少なくとも600μm、少なくとも900μm、少なくとも1000μm、少なくとも2000μm、少なくとも3000μm、少なくとも5000μm、少なくとも7000μm、または少なくとも10,000μmであってもよく、上記面積範囲内の測定間隔(空間分解能)は、例えば、1μm以下、2μm以下、4μm以下、6μm以下、または9μm以下であってもよい。(3次元画像が得られた場合、このような分析のために使用される層の最小体積は、例えば、少なくとも600μm、少なくとも900μm、少なくとも1000μm、少なくとも2000μm、少なくとも3000μm、少なくとも5000μm、少なくとも7000μm、または少なくとも10,000μmであってもよく、上記体積範囲内の測定間隔(空間分解能)は、例えば、1μm以下、4μm以下、8μm以下、16μm以下、27μm以下、または64μm以下であってもよい。)少なくとも3.5画像、または7画像の平均を、特定のサンプルに対する融着領域の割合を決定するために用いてもよい。
【0034】
他の態様において、イオン伝導性材料を含む層中の融着粒子の存在は、層の伝導率を測定することによって決定してもよい。例えば、融着粒子を含む層は、粒子が融着されておらず、他のすべての要因が等しい層の平均伝導率よりも大きい平均伝導率を有してもよい。少なくとも3、5、または7つの測定値の平均を、特定のサンプルに対する伝導率を決定するために用いてもよい。
【0035】
任意の好適な方法を用いて、複数の粒子を付着および/または融着してもよい。いくつかの実施形態では、方法には、第1の層(例えば、リチウムを含むアノード、(例えば、本明細書中に記載のように、硫黄または他の好適な基材を含む)カソードなどの電気活性材料))の一部に隣接して、またはその上にイオン伝導性層(例えば、第2の層)を形成する工程を含んでもよい。1組の実施形態では、複数の粒子は、エアロゾル沈着法によって付着および/または融着される。エアロゾル沈着法は、当技術分野で既知であり、一般的に表面上に比較的高い速度で粒子(例えば、無機粒子、ポリマー粒子)を付着(例えば、噴霧)する工程を含む。例えば、いくつかの実施形態では、複数の粒子は、複数の粒子の少なくとも一部が融着するように、第1の層(例えば、電気活性材料層)上に比較的高い速度で付着される(例えば、第1の層上に第2の層を形成する工程)。粒子の融着のために必要な速度は、粒子の材料組成、粒子のサイズ、粒子のヤング率、および/または粒子または粒子を形成する材料の降伏強さなどの要因に依存し得る。
【0036】
本明細書中に記載されているように、いくつかの実施形態では、粒子は、粒子の少なくともいくつかの融着を引き起こすのに十分な速度で付着される。しかしながら、いくつかの実施形態では、粒子は、粒子の少なくともいくつかが融着されないような速度で付着されると理解されるべきである。いくらかの実施形態では、粒子の速度は、少なくとも約150m/秒、少なくとも約200m/秒、少なくとも約300m/秒、少なくとも約400m/秒、少なくとも約500m/秒、少なくとも約600m/秒、少なくとも約800m/秒、少なくとも約1000のm/秒、または少なくとも約1500m/秒である。いくつかの実施形態では、速度は、約2000m/秒以下、約1500m/秒以下、約1000m/秒以下、約800m/秒以下、約600m/秒以下、約500m/秒以下、約400m/秒以下、約300m/秒以下、または約200m/秒以下である。前述した範囲の組み合わせ(例えば、約150m/秒~約2000m/秒、約150m/秒~約600m/秒、約200m/秒~約500m/秒、約200m/秒~約400m/秒、約500m/秒~約2000m/秒)もまた可能である。他の速度もまた可能である。複数の粒子タイプが1つの層中に含まれるいくつかの実施形態では、各粒子タイプは、上記範囲の1つ以上における速度で付着させてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、上記付着法は、粒子とキャリアガスを加圧することにより、第1の層の表面上に(例えば、エアロゾル沈着法によって)粒子を噴霧する工程を含む。いくつかの実施形態では、キャリアガスの圧力は、少なくとも約5psi、少なくとも約10psi、少なくとも約20psi、少なくとも約50psi、少なくとも約90psi、少なくとも約100psi、少なくとも約150psi、少なくとも約200psi、少なくとも約250psi、または少なくとも約300psiである。いくらかの実施形態では、キャリアガスの圧力は、約350psi以下、約300psi以下、約250psi以下、約200psi以下、約150psi以下、約100psi以下、約90psi以下、約50psi以下、約20psi以下、または約10psi以下である。上記範囲の組み合わせ(例えば、約5psi~約350psi)も可能である。他の範囲も可能であり、当業者は、本明細書の教示に基づいて、キャリアガスの圧力を選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、キャリアガスの圧力は、第1の層上に付着した粒子の速度が、粒子の少なくともいくつかを互いに融着するのに十分であるようにする。
【0038】
いくつかの実施形態では、キャリアガス(例えば、粒子を含むキャリアガス)が付着前に加熱される。いくつかの実施形態では、キャリアガスの温度は、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約50℃、少なくとも約75℃、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、少なくとも約300℃、または少なくとも約400℃である。いくらかの実施形態では、キャリアガスの温度は、約500℃以下、約400℃以下、約300℃以下、約200℃以下、約150℃以下、約100℃以下、約75℃以下、約50℃以下、約30℃以下、または約20℃以下である。上記範囲の組み合わせ(例えば、約20℃~約500℃)も可能である。他の範囲も可能である。
【0039】
いくらかの実施形態において、粒子は、真空環境下で付着される。例えば、いくつかの実施形態では、粒子を、(例えば、粒子流に対する大気の抵抗を除去するために、粒子の高い速度を可能にするために、および/または汚染物質を除去するために)容器内を真空にする容器中で第1の層上に付着させてもよい。いくらかの実施形態では、容器内の真空圧は、少なくとも約0.5mTorr、少なくとも約1mTorr、少なくとも約2mTorr、少なくとも約5mTorr、少なくとも約10mTorr、少なくとも約20mTorr、または少なくとも約50mTorrである。いくらかの実施形態では、容器内の真空圧力は、約100mTorr以下、約50mTorr以下、約20mTorr以下、約10mTorr以下、約5mTorr以下、約2mTorr以下、または約1mTorr以下である。上記範囲の組み合わせ(例えば、約0.5~約100mTorr)も可能である。他の範囲も可能である。
【0040】
本明細書中に記載されるように、いくつかの実施形態では、層(例えば、イオン伝導性層などの第2の層)を、粒子のエアロゾル沈着法を含む方法によって形成する。本明細書中に記載されるように、エアロゾル沈着は、一般的に複数の粒子の少なくともいくつかの衝突および/または弾性変形をもたらす。いくつかの実施形態では、エアロゾル沈着は、複数の粒子の少なくとも別の部分に複数の粒子の少なくともいくつかの融着を引き起こすのに十分な条件下で(例えば、速度を用いて)実施することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、第2の層を形成するための本明細書中に記載された方法は、このような前駆体材料(例えば、粒子)のバルク特性(例えば、結晶性、イオン伝導性)を得られる層内に維持することを実施することができる。いくつかの場合、エアロゾル沈着法の使用は、他の付着技術(例えば、真空蒸着法)を用いて実現可能ではない特定の材料(例えば、セラミック)から形成された粒子の付着を可能にする。例えば、(スパッタリング、電子ビーム蒸着などの)真空蒸着は、典型的には、いくつかのセラミック材料を、付着時に、そのバルク特性(例えば、結晶性および/またはイオン伝導性)を失わせる比較的高い温度を含む。他の実施形態では、いくらかの材料の真空蒸着は、このような材料は(例えば、非晶質膜として)真空蒸着中に失われ、(例えば、基材と層との間の強度および/または熱的特性の不一致の結果として)層中に形成される亀裂の形成および/または機械的応力が生じる結晶状態において望ましい機械的特性を有してもよいので、得られる層の割れにつながる。ある場合には、材料の焼戻しは、少なくとも前述の理由のために真空蒸着した後には可能ではないかもしれない。エアロゾル沈着は、例えば、いくらかの真空蒸着技術と比較して、比較的低い温度で実施することができるので、一般的にイオン伝導性層/保護層を形成することと矛盾するいくらかの材料(例えば、結晶性材料)をここで使用することができる。
【0042】
1つの例示的な方法において、および図2Aを参照して、第2の層(例えば、イオン伝導性層)を形成する工程には、第2の層の形成のための基材としての第1の層120(例えば、電気活性層、または本明細書中に記載の他の層)を提供する工程を含んでもよい。粒子140(例えば、無機粒子)は、任意の好適な方法(例えば、エアロゾル沈着法)によって付着させてもよい。ここで図2Bを参照すると、(矢印によって示されるように)粒子140を第1の層120上に付着させてもよい。粒子の付着により、粒子を、少なくとも部分的に第1の層内に埋め込んでもよい。いくらかの実施形態において、粒子は、少なくとも粒子の一部がと直接接触し、および/または少なくとも部分的に第1の層内に埋め込まれるように十分な速度で付着される。いくつかの実施形態において、粒子は、十分な速度で付着されるような複数の粒子の少なくとも一部は、少なくとも部分的に第1の層内に埋め込まれており、粒子の少なくとも一部が融着している(図2B)。
【0043】
有利なことに、いくつかの実施形態では、(例えば、保護層などの第2の層を形成するための)第1の層上への粒子の付着は、本明細書中に記載されるように、第1の層の表面上に存在してもよい任意のパッシベーション層を破壊し、結果として、(例えば、第1の層上に移行し、化学蒸着法によって付着させた保護層と比較して)付着層(例えば、第2の層)および第1の層の表面の間の直接的接触を増加させることができる。例として、いくつかの実施形態では、例えば、塩化リチウムを含むパッシベーション層は、第1の層(例えば、リチウム金属)の表面上に存在してもよく、本明細書中に記載されるように、粒子の第1の層上への付着時に、付着粒子の少なくとも一部が第1の層と直接接触するように、パッシベーション層の少なくとも一部を除去してもよい。
【0044】
いくつかの態様では、保護層などの第2の層の複数の粒子の少なくとも一部、または複数の粒子の表面の少なくとも一部は、第1の層(例えば、電気活性層または本明細書中に記載の他の層)と接触(例えば、直接接触)している。この構成は、上記粒子から第1の層への直接のイオン(例えば、リチウムイオンなどの金属イオン)の輸送を可能にすることができる。いくつかの場合、複数の粒子の少なくとも一部が、第1の層内に埋め込まれている。例えば、いくつかの場合、層(例えば、第2の層)の粒子の少なくとも約0.1体積%は、第1の層内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、上記粒子の少なくとも約1体積%、少なくとも約5体積%、少なくとも約10体積%、または少なくとも20体積%は、第1の層内に埋め込まれている。いくらかの実施形態では、上記粒子の約25体積%以下、約20体積%以下、約15体積%以下、または約10体積%以下は、第1の層内に埋め込まれている。上記範囲の組み合わせ(例えば、約0.1体積%~約25体積%)も可能である。他の範囲も可能である。層内の粒子の体積百分率を決定する方法は、当技術分野で既知であり、いくつかの実施形態において、イオン伝導性層を分析する工程、および例えば、走査型電子顕微鏡を用いて画像形成する工程を含んでもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、第1の層(例えば、電気活性層、セパレータ、または本明細書中に記載の他の層)が、第1の層上への複数の粒子の付着の前に、コーティング(例えば、プレコーティング)されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第1の層は、ポリマー、セラミック(例えば、Al、一般式AlO(OH)を有するものなどのベーマイトまたはそれらの誘導体)またはそれらの組合せでプレコーティングされてもよい。1つの例では、第1の層はポリマー材料を含むセパレータであってもよく、本明細書中に記載されるように、セパレータの表面上にコーティングを含んでもよい。いくつかの実施形態では、コーティングは、ポリマー中に埋め込まれた複数のセラミック粒子を含んでいてもよい。いくつかの場合において、第1の層上のコーティングの存在により、プレコーティングではなく、他のすべての要因が等しい第1の層上に付着させた粒子と比較して、相対的に高い硬度を有する粒子の付着を可能にすることができる。追加的にまたは代替的に、第1の層上のコーティングの存在により、複数の粒子の付着により引き起こされる第1の層への望ましくない損傷を防止または低減することができる。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の方法によって付着させた複数の粒子の少なくとも一部は、少なくとも部分的に第1の層のコーティング内および/または第1の層自体の中に埋め込まれてもよい。
【0046】
第1の層上のコーティングは、存在する場合、任意の好適な材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、コーティングを形成するために使用される材料は、(例えば、約10-6[S/cm]以下、約10-7[S/cm]以下、または約10-8[S/cm]以下のリチウムイオン伝導率を有する)実質的に非リチウムイオン伝導性材料または低リチウムイオン伝導性材料から形成されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の層上にコーティングを形成するために使用される材料(例えば、第1の材料)は、第2の層の粒子を形成するために使用される材料(例えば、第2の材料)の硬度より高い硬度を有する。例えば、第1の材料の硬度は、第2の材料の硬度より少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、または少なくとも500%高い。いくつかの実施形態では、第1の材料の硬度は、第2の材料の硬度の1000%以下、700%以下、500%%以下、200%以下、100%%以下、または50%%以下である。上記範囲の組み合わせも可能である。他の範囲も可能である。
【0048】
1つの特定の例において、電気化学電池に用いるための物品は、第1の材料を含むコーティングを含む第1の層、および上記第1の層上に付着された第2の層を含み、上記第2の層が第2の材料から形成された複数の粒子を含む。第1の材料は、第2の材料の硬度よりも(例えば、少なくとも10%および1000%以下)高い硬度を有する。複数の粒子の少なくとも一部は、互いに融着している。第2の層は、約0.1μm~約5μmの平均厚さを有してもよい。上記コーティングは、本明細書中に記載されるような他の特徴および特性の範囲(例えば、低いリチウムイオン伝導率、第1の層に対して低い重量百分率)を有してもよい。
【0049】
第1の層(例えば、プレコーティングされている第1の層)上のコーティングは、任意の好適な技術を用いて形成してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、真空蒸着法(例えば、スパッタリング法、CVD法、熱蒸着法または電子ビーム蒸着法)を用いることができる。他の実施形態では、第1の層は、スラリーまたはゲルからの材料を引き伸ばすおよび注型することによってコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、コーティングを、本明細書中に記載されるような(例えば、第1の複数の粒子の付着による第1の層をプレコーティングする)付着方法を用いて形成することができ、次いで、(例えば、プレコーティング中の複数の粒子と異なる)第2の複数の粒子を含むび第2の層は、第1の複数の粒子を含む上記コーティング上に付着させてもよい。
【0050】
その上にコーティングを付着させる第1の層の総重量と比較したコーティング(例えば、存在する場合、プレコーティング)の総重量の百分率は、任意の好適な値であってもよい。いくつかの実施形態では、コーティング(例えば、プレコーティング)の総重量は、第1の層の総重量の少なくとも0.00001%、少なくとも0.0001%、少なくとも0.001%、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも1%、または少なくとも10%である。いくつかの実施形態では、コーティング(例えば、プレコーティング)の総重量は、第1の層の総重量の20%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下、0.1%以下、0.01%以下、0.001%以下、または0.0001%以下である。上記範囲の組み合わせも可能である。他の範囲も可能である。いくつかの実施形態では、上記百分率は、上記構成要素を含む電池のサイクル試験前に(または上記電池の2サイクル目、4サイクル目、6サイクル目、8サイクル目、または10サイクル目の前に)測定される。
【0051】
いくらかの従来の電極および/または電気化学電池は、電気活性層および/または(例えば、サイクル試験前に)可能な限り平滑である保護層を含むように製造されており、このような平滑性が(例えば、孔食または他の有害な影響を低減することにより)サイクル寿命を増加させるのに役立つと考えられていた。本明細書中に記載の特定の態様において、保護層を形成するために使用される粒子の少なくとも一部は、電気活性材料層中に埋め込まれ、電気活性材料層および/または保護層の特定の粗さをもたらす結果となる。電気活性材料層および/または保護層は、(例えば、サイクル試験前に)本明細書中に記載されるように、ピークから谷までの平均粗さの特定の値または範囲を有してもよい。いくつかの実施形態では、このような粗さは、実質的にサイクル寿命に悪影響を与えない。
【0052】
本明細書中に記載されるように、いくつかの態様では、第2の層は、保護層および/または付着層である。保護層または結果として生じる付着層は、(例えば、電気活性層などの第1の層と接触して)第1の表面および第1の表面に対向する第2の表面を含んでもよい。いくらかの態様では、保護層または結果として生じる付着層の表面(例えば、第2の表面)は、電極または電気化学電池の追加の層(例えば、図1Cにおける任意の電解質層50)に接触している。いくつかの態様において、少なくともいくつかの粒子(例えば、融着粒子)は、保護層/結果として生じる付着層の第1の表面で電気活性層と直接接触する第1の部分、および保護層/結果として生じる付着層の第2の表面の第2部分を含む。例えば、第2の表面での少なくともいくつかの融着粒子の第2の部分は、電解質材料(例えば、電解質層)と直接接触していてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、保護層および/または結果として生じる付着層(第2の層)は、液体電解質(例えば、保護層を含む電気化学電池に使用される液体電解質)に対して透過性である。例えば、いくつかの態様では、保護層/結果として生じる付着層は、保護層の総重量に対して、液体電解質の約1重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約20重量%以上、または約25重量%以上を(例えば、保護層の気孔内に)吸収する。いくらかの態様では、保護層/結果として生じる付着層は、保護層の総重量に対して、液体電解質の約30重量%未満、約20重量%未満、約10重量%未満、または約5重量%未満を吸収する。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約1重量%以上および約30重量%以下)。他の範囲も可能である。当業者であれば、例えば、液体電解質を吸収した後(例えば、周囲温度および圧力で1時間、上記層を電解質に暴露した後)、液体電解質を吸収する前の保護層/結果として生じる付着層の重量に対する、保護層/結果として生じる付着層の重量差を測定する工程を含む保護層/結果として生じる付着層によって吸収された液体電解質を決定するための好適な方法を選択することができる。
【0054】
保護層および/または結果として生じる本明細書中に記載された付着層の粒子は、様々な種類の材料から形成することができる。いくらかの態様では、粒子が形成される材料は、イオン(例えば、リチウムイオンなどの電気化学的に活性なイオン)を上記材料に通過させることを可能にするが、電子が上記材料を横切って通過するのを実質的に妨害するように選択してもよい。本明細書中において「実質的に妨害する」とは、この形態において、上記材料が、電子の通過よりも少なくとも10倍大きくリチウムイオンが流出することを可能にすることを意味する。上記粒子は、(例えば、イオン伝導性層のいずれかの側の材料間のイオンの移動を容易にするために)例えば、イオン伝導性材料を含んでもよい。有利なことに、このような粒子は、特定のアニオン(例えば、ポリスルフィドアニオン)を伝導しないが、特定のカチオン(例えば、リチウムカチオン)を伝導することが可能であってもよく、および/または電解質および/または電気活性層用のポリスルフィド種に対するバリアとして作用することが可能であってもよい。
【0055】
いくらかの実施形態では、複数の粒子は、イオン伝導性粒子(例えば、イオン伝導性材料を含むか、またはイオン伝導性材料からなる粒子)を含む。いくつかの実施形態では、複数の粒子は、(例えば、非イオン伝導性材料を含むか、または非イオン伝導性材料からなる)非イオン伝導性粒子を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、複数の粒子の第1の部分は、第1のタイプの材料を含み、複数の粒子の第2の部分は、第2のタイプの材料を含む。例えば、1つの実施形態では、複数の粒子の第1の部分はイオン伝導性粒子(例えば、イオン伝導性材料を含むか、またはイオン伝導性材料から成る粒子)を含み、複数の粒子の第2の部分は非イオン伝導性粒子(例えば、非イオン伝導性材料を含む、または非イオン伝導性材料から成る粒子)を含む。別の実施形態では、複数の粒子の第1の部分はイオン伝導性粒子(例えば、無機粒子)を含み、複数の粒子の第2の部分はポリマー粒子を含む。更に別の実施形態では、複数の粒子の第1の部分は非イオン伝導性粒子(例えば、無機粒子)を含み、複数の粒子の第2の部分はポリマー粒子を含む。いくつかの例では、2つの異なるイオン伝導性材料を用いてもよい。他の実施形態では、2つの非イオン伝導性材料が存在してもよい。いくつかの場合において、複数の粒子は、第3のタイプの材料を含む第3の部分を含んでもよい。いくつかのこのような実施形態では、複数の粒子の第1の部分がイオン伝導性粒子を含んでもよく、複数の粒子の第2の部分がポリマー粒子を含み、複数の粒子の第3の部分は、非イオン伝導性粒子を含む。複数のタイプの材料の他の組み合わせも可能である。いくつかの態様では、複数の粒子は、1つ以上、2つ以上、または3つ以上のタイプの粒子(例えば、無機、ポリマー、またはそれらの組み合わせ)を含む。例えば、層は、粒子のタイプのそれぞれが異なる、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つのタイプの粒子を含んでもよい。
【0057】
いくらかの実施形態では、保護層および/または結果として生じる付着層は、融着粒子を含む第1の部分および未融着粒子を含む第2の部分を含んでもよい。例えば、いくつかのこのような実施形態では、複数の粒子の第1の部分の少なくとも一部が融着し、複数の粒子の第2の部分が実質的に融着しないように、複数の粒子は下地層の上に付着させてもよい。例示的な実施形態では、イオン伝導性粒子およびポリマー粒子を含む複数の粒子は、イオン伝導性粒子の少なくとも一部が融着するが、ポリマー粒子は融着しないように、下地層の上に付着させてもよい。
【0058】
いくつかの形態において、本明細書中に記載の粒子および/または保護層および/または結果として生じる付着層イオン伝導性層は、無機材料を含み、および/または無機材料から形成されている。いくらかの態様では、上記無機材料は、セラミック材料(例えば、ガラス、ガラス‐セラミック材料)を含む。好適なセラミック材料の非限定的な例としては、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化リチウム)、窒化物、および/またはアルミニウム、ケイ素、亜鉛、スズ、バナジウム、ジルコニウム、マグネシウム、インジウム、およびそれらの合金の酸窒化物、LiMP(ここで、x、yおよびzは整数、例えば32未満の整数であり、M=Sn、GeまたはSiである。)、例えばLi22SiP18、Li24MP19、またはLiMP12(例えばここで、M=Sn、Ge、Siである。)およびLiSiPS、ザクロ石、結晶性またはガラス硫化物、ホスフェート、ペロブスカイト、抗ペロブスカイト、他のイオン伝導性無機材料およびその混合物が挙げられる。LiMP粒子を、例えば原料成分LiS、SiSおよびP(または代わりにLiS、Si、SおよびP)を用いて形成することができる。例示的な実施形態では、上記セラミック材料はLi24MP19である。別の例示的な実施形態では、上記セラミック材料はLi22SiP18である。
【0059】
いくつかの態様では、保護層の粒子、保護層自体、および/または結果として生じる付着層は、窒化リチウム、硝酸リチウム(例えば、LiNO)、ケイ酸リチウム、ホウ酸リチウム(例えば、リチウムビス(オキサレート)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート)、アルミン酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸リチウム(例えば、LiPO、LiPO)、窒化リン酸リチウム、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、酸化リチウム(例えば、LiO、LiO、LiO、LiRO、ここでRは希土類金属である)、フッ化リチウム(例えば、LiF、LiBF、LiAlF、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiSiF、LiSOF、LiN(SOF)、LiN(SOCF))、酸化リチウムランタン、酸化リチウムチタン、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、およびリチウムホスホスルフィドの内の1つ以上、オキシスルフィド(例えば、リチウムオキシスルフィド)並びにそれらの混合物のなどの材料を含んでいてもよい。いくつかの形態では、複数の粒子は、Al、ZrO、SiO、CeO、および/またはAlTiOを(例えば、単独または上記材料の1つ以上との組み合わせで)含んでいてもよい。特殊な態様において、複数の粒子は、Li‐Al‐Ti‐PO(LATP)を含んでいてもよい。材料(例えば、セラミック)の選択は、それらに限定されないが、電池内で使用される電解質、アノードおよびカソードの特性などの多数の要因に依存する。
【0060】
いくつかの態様では、保護層の粒子、保護層自体、および/または結果として生じる付着層は、ポリマー材料(例えば、非イオン伝導性ポリマー材料および/またはイオン伝導性ポリマー材料)を含んでもよく、またはから成ってもよい。保護層および/または結果として生じる付着層に(または保護層および/または結果として生じる付着層を形成するための粒子として)使用するのに好適なポリマー材料は、以下でより詳細に記載されている。例示的な実施形態では、ポリマー材料はポリエチレンである。
【0061】
いくつかの態様では、保護層の粒子、保護層自体、および/または結果として生じる付着層は、実質的に非晶質である。いくらかの態様では、本明細書中に記載される粒子、保護層および/または結果として生じる付着層は、実質的に結晶性である。いくつかの場合において、本明細書中に記載される粒子、保護層および/または結果として生じる付着層は半結晶性であってもよい。例えば、いくつかの態様では、本明細書中に記載される粒子、保護層および/または結果として生じる付着層は、少なくとも約1%結晶性、少なくとも約2%結晶性、少なくとも約5%結晶性、少なくとも約10%結晶性、少なくとも約25%結晶性、少なくとも約50%結晶性、少なくとも約75%結晶性、少なくとも約80%結晶性、少なくとも約90%結晶性、少なくとも約95%結晶性、少なくとも約98%結晶性、少なくとも約99%結晶性であってもよい。いくらかの態様において、本明細書中に記載される粒子、保護層、および/または結果として生じる付着層は、100%結晶性であってもよい。いくつかの態様において、本明細書中に記載される粒子、保護層および/または結果として生じる付着層は、約99.9%以下結晶性、約99.5%以下結晶性、約99%以下結晶性、約98%以下結晶性、約95%以下結晶性、約90%以下結晶性、約80%以下結晶性、約75%以下結晶性、約50%以下結晶性、約25%以下結晶性、約10%以下結晶性、約5%以下結晶性、または約2%以下結晶性であってもよい。上記範囲の組み合わせ(例えば、約1%結晶性~約100%結晶性、約1%結晶性~約99.9%結晶性)も可能である。当業者であれば、例えば、粒子、保護層、および/または結果として生じる付着層のX線回折スペクトルを含むパーセント結晶化度を決定するための好適な方法を選択することができる。
【0062】
いくつかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層の粒子は、望ましいイオン伝導率を有するように選択することができる。例えば、いくらかの態様において、上記粒子は、電気活性材料(例えば、リチウム)のイオンに対して伝導性であってもよい。いくつかの場合において、上記粒子は、少なくとも約10-6[S/cm]の平均イオン伝導率(例えば、リチウムイオン伝導率)を有してもよい。いくらかの態様において、保護層および/または結果として生じる付着層内の粒子の平均イオン伝導率(例えば、リチウムイオン伝導率などの、金属イオン伝導率)は、少なくとも約10-6[S/cm]、少なくとも約10-5[S/cm]、少なくとも約10-4[S/cm]、または少なくとも約10-3[S/cm]である。いくつかの態様では、上記粒子の平均イオン伝導率は、約10-2[S/cm]未満、約10-3[S/cm]未満、または約10-4[S/cm]未満である。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約10-2~約10-6[S/cm]、約10-3~約10-5[S/cm]のイオン伝導率)。他のイオン伝導率も可能である。伝導率は、室温(例えば、25℃)で測定してもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、しかしながら、保護層および/または結果として生じる付着層は、実質的に非イオン伝導性であってもよい。いくつかのこのような実施形態では、保護層および/または結果として生じる付着層の粒子は、約10-6[S/cm]未満、約10-7[S/cm]未満、約10-8[S/cm]未満、または約10-9[S/cm]未満の平均イオン伝導率(例えば、リチウムイオン伝導率)を有してもよい。いくつかの実施形態では、保護層および/または結果として生じる付着層の粒子は、約10-10[S/cm]より大きい、約10-9[S/cm]より大きい、約10-8[S/cm]より大きい、または約10-7[S/cm]より大きい平均イオン伝導率を有してもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約10-10[S/cm]~約10-6[S/cm]のイオン伝導率)。他の範囲も可能である。
【0064】
いくらかの態様において、上記粒子は、約10-10[S/cm]未満の電子伝導率を有してもよい。例えば、いくつかの態様では、上記粒子の電子伝導性は、約10-11[S/cm]以下、約10-12[S/cm]以下、約10-13[S/cm]以下、約10-14[S/cm]以下、約10-15[S/cm]以下、約10-17[S/cm]以下、または約10-19[S/cm]以下である。電子伝導率の他の値および範囲も可能である。
【0065】
いくつかの態様では、上記粒子を保護層に組み込む前に、上記粒子の平均イオン伝導率を決定することができる。平均イオン伝導率は、3t/cm以下の圧力で2つの銅シリンダ間の粒子をプレスすることによって測定することができる。いくらかの態様では、平均イオン伝導率(即ち、平均抵抗率の逆数)は、1kHzで動作する導電ブリッジ(すなわち、インピーダンス測定回路)を用いて500kg/cm増分で測定することができる。いくつかのこのような実施形態では、上記試料において平均イオン伝導率の変化がもはや観察されなくなるまで、圧力を上昇させる。
【0066】
上記粒子は、電気化学電池の1つ以上の層と接触する時に、化学的に安定である材料を含むことが有利であるかもしれない。一般に、粒子を形成する材料が粒子と直接接触することができる1つ以上の材料の成分と化学的に反応(例えば、副生成物を形成)しない場合、粒子は化学的に安定である。例えば、いくらかの態様において、電気活性材料と接触、ポリマー材料と接触、電解質材料と接触、および/またはポリスルフィドと接触する場合、上記粒子は化学的に安定である。
【0067】
いくつかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層は、約50重量%~約100重量%のイオン伝導性材料を含む。いくらかの態様では、保護層は、保護層の全組成物の約50重量%以上、約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上、約95重量%以上、約97重量%以上、約98重量%以上、または約99重量%以上の量で、イオン伝導性粒子(例えば、イオン伝導性材料を含み、上記粒子の少なくとも一部が融着していてもよい)を含む。いくつかの態様では、保護層中のイオン伝導性粒子(例えば、イオン伝導性材料を含み、上記粒子の少なくとも一部が融着していてもよい)の重量百分率は、保護層の全組成物の約99.9重量%以下、約99.5重量%以下、約99重量%以下、約98重量%以下、約97重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約75重量%以下、約70重量%以下、約65重量%以下、または約60重量%以下である。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約50重量%~約99.9重量%、約70重量%~約95重量%、約75重量%~約90重量%)。他の範囲も可能である。層内の粒子の重量百分率を決定する方法は、当技術分野で既知であり、いくつかの態様において、保護層および/または結果として生じる付着層を形成する前に粒子を秤量する工程を含んでもよい。
【0068】
いくらかの実施形態では、保護層および/または結果として生じる付着層は、実質的に任意の非イオン伝導性材料を含まない(例えば、保護層は、100重量%イオン伝導性材料を含む)。いくつかの実施形態では、しかしながら、保護層は、実質的にイオン伝導性材料および/または結果として生じる付着層を含まない。
【0069】
いくつかの実施形態では、保護層および/または結果として生じる付着層は、約10重量%~約99.9重量%の非イオン伝導性材料を含む。いくらかの態様では、保護層は、保護層および/または結果として生じる付着層(第2の層)の全組成物の約10重量%以上、約20重量%以上、約30重量%以上、約40重量%以上、約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、約90重量%以上、約95重量%以上、約97重量%以上、約98重量%以上、または約99重量%以上の量で、非イオン伝導性粒子(例えば、イオン非伝導性材料を含み、上記粒子の少なくとも一部が融着していてもよい)を含む。いくらかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層は、保護層および/または結果として生じる付着層の全組成物の約99.9重量%以下、約99.5重量%以下、約99重量%以下、約98重量%以下、約97重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、または約20重量%以下の量で、非イオン伝導性粒子(例えば、イオン非伝導性材料を含み、上記粒子の少なくとも一部が融着していてもよい)を含む。上記範囲の組み合わせも可能である約25重量%の間、(例えば、約10重量%~約99.9重量%、約20重量%~約30重量%、約25重量%~約50重量%、約25重量%~約75重量%、約70重量%~約95重量%、約75重量%~約90重量%)。他の範囲も可能である。
【0070】
いくつかの態様において、ポリマー材料は、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、または少なくとも約25重量%の量で、保護層および/または結果として生じる付着層中に存在する。いくらかの態様では、ポリマー材料は、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、または約10重量%以下の量で、保護層および/または結果として生じる付着層中に存在する。上記で範囲の組み合わせも可能である(例えば、約5重量%~約30重量)。他の範囲も可能である。いくつかの場合において、保護層および/または結果として生じる付着層は、実質的にポリマー材料を含まない。
【0071】
本明細書中に記載されているように、粒子のエアロゾル沈着法を、本明細書中に記載のように、基材上に保護層および/または結果として生じる付着層を形成するために使用してもよい。いくらかの態様では、粒子の硬度およびその上に粒子が付着される基材(例えば、第1の層、第1の層の上のコーティング)の硬度差は、500%以下、400%以下、300%以下、200%以下、100%以下、80%以下。60%以下、40%以下、20%以下、10%以下、または5%以下であってもよい。いくつかの態様では、上記硬度の差は、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%であってもよい。上記範囲の組み合わせも可能である。上記硬度差は、硬度のより大きい値から硬度のより小さい方の値を減算し、硬度のより大きい値で除算し、100を掛けることによって計算することができる。当業者であれば、例えば、ナノインデンテーション法などの本明細書中に記載された材料の硬度を決定するための好適な方法を選択することができる。
【0072】
得られた付着層がポリマー材料を含むいくつかの態様において、ポリマー材料を、第1の層上に付着(例えば、エアロゾル沈着)する。いくらかの態様では、ポリマー材料を含む粒子(例えば、ポリマー粒子)を、第1の層上に付着させる。ポリマー材料は、イオン伝導性材料および/またはイオン非伝導性材料の付着(例えば、粒子を、付着前に混合してもよく、または同じ基材上に異なるソースから導入してもよい)と実質的に同時に付着させてもよい。
【0073】
他の態様では、ポリマー粒子を、イオン伝導性材料および/または非イオン伝導性材料の粒子の付着前に、第1の層上に付着させてもよい。例えば、(エアロゾル沈着法によって、または、コーティング法などのポリマー層を形成するための任意の他の好適な方法によって付着させることができる)ポリマー材料を含む第1の層を形成した後、無機粒子を、ポリマー材料上および/またはポリマー材料中に付着させてもよい。いくらかの態様では、無機粒子の少なくとも一部を融着させるように、無機粒子を、ポリマー材料の後およびポリマー材料の上/中に付着させてもよい。
【0074】
ポリマー層上に無機(例えば、セラミック)粒子を付着させる工程を含むいくつかの態様では、上記層の厚さを横切る無機材料/粒子の密度勾配を形成してもよい。例えば、1つの方法および/または物品において、ポリマー層を、第1の層(例えば、基材)上に配置する。ポリマー材料は、任意の好適な形態(例えば、ゲル、固体)であってもよい。次いで、無機粒子を(例えば、エアロゾル沈着法によって)ポリマー層の上に付着させてもよい。得られる構造体(第2の層)は、第1の層から得られた構造体(第2の層)の外側表面までの得られた構造体の厚さの少なくとも一部(または実質的にすべて)を横切って増加する無機材料の密度を有する無機粒子およびポリマー材料の複合材料であってもよい。そのような構造体は、いくつかの態様において、徐々に付着を通じて無機粒子の速度を増加させることによって、形成してもよい。いくつかの例では、付着は、無機粒子の少なくとも一部が融着するように生じる。例えば、第1の表面と隣接する粒子/無機材料を第1の表面が実質的に融着していないままであっても、部分的に融着されていても、または、外表面における融着に比べてより少ない程度に融着されていてもよいが、得られる構造体の外表面における粒子/無機材料を、実質的に融着させてもよい。他の態様では、逆の勾配を形成することができる。
【0075】
材料を付着するための方法および条件(例えば、速度、圧力など)が、本明細書中に詳細に記載されている。
【0076】
任意の好適なポリマー材料は、保護層および/または結果として生じる付着層に含めることができる。いくつかの態様において、ポリマー材料は、1つの以上のポリマー材料を含んでいても、または本質的に1つの以上のポリマー材料から成っていてもよい。ポリマー材料は、いくつかの態様では、モノマー、共重合体の混合物、ブロックコポリマー、または相互侵入網目または半相互侵入網目である2つ以上のポリマーの組み合わせであってもよい。別の態様では、ポリマー材料は、充填剤および/または固体の添加剤を含んでもよい。充填剤および/または固体の添加剤は、ポリマーに強度、可撓性、および/または改善された接着特性を付与することができる。いくつかの態様において、ポリマーは、可塑剤または固相変化材料などの他の添加剤を含んでもよい。可塑剤の添加により、ポリマーの可撓性を高め、チキソトロ-プ性を向上させることができる。固相変化材料の添加により、高温で溶融する材料の添加をもたらし、それによって、ヒートシンクとして作用し、熱暴走を防止することができる。
【0077】
いくつかの態様において、ポリマー材料は、可撓性であるように選択してもよい。ナノ硬度試験は、クリープおよび/または硬度を測定し、それによってポリマー材料の可撓性および/または脆性を評価するために行ってもよい。いくらかの場合、ポリマー材料は、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、または400℃を超える温度で熱的に安定であるように選択してもよい。熱安定性は、示差走査熱量測定(DSC)によって評価してもよい。高温で熱安定性を示すことができるポリマー材料の非限定的な例としては、ポリシロキサン、ポリシアヌレート、およびポリイソシアヌレートが挙げられる。
【0078】
上記ポリマー材料は、いくらかの場合、電解質および/またはリチウムポリスルフィドの腐食に対して実質的に不活性であるように選択してもよい。電解質中のポリマー材料の安定性を決定する手段は、電解質溶媒の蒸気に、または電解質溶媒自体にポリマー材料の小試料を暴露することを含む。電解質溶液中で安定であることができるポリマー材料の例には、それらに限定されないが、ポリウレタンおよびポリシロキサンが挙げられる。種々の特性を調べるためにポリマー材料に実施することができる追加の試験には、ポリマー材料が硬化または架橋されたことを確認するためのフーリエ変換赤外分光法(FTIR)、ポリマー材料が亀裂を有するかどうかを決定するためのエネルギー分散型X線分光法を備える走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)が挙げられる。このような試験および他の試験を、保護層および/または結果として生じる付着層が不連続層、相互侵入網目または半相互侵入網目を含むかどうかを決定するためにも用いることができる。プロフィロメトリーは、ポリマー材料の表面がどれくらい粗いかを評価するために使用することができる。
【0079】
(例えば、保護層の形成時に融着される粒子として)保護層および/または結果として生じる付着層に用いるのに好適である他のクラスのポリマー材料には、それらに限定されないが、ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI));ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66))、ポリイミド(例えば、ポリイミド、ポリニトリル、およびポリ(ピロメリットイミド‐1,4‐ジフェニルエーテル)(Kapton));ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(2‐ビニルピリジン)、ポリ(N‐ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(2‐ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート));ポリアセタール;ポリオレフィン(例えば、ポリ(ブテン‐1)、ポリ(n‐ペンテン‐2)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン);ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート);ポリエーテル(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO));ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニリデン)、およびポリ(フッ化ビニリデン));ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ‐1,3‐フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ‐1,4‐フェニレンイミノテレフタロイル));ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT));多複素環化合物(例えば、ポリピロール);ポリウレタン;フェノール系ポリマー(例えば、フェノール‐ホルムアルデヒド);ポリアルキン(例えば、ポリアセチレン);ポリジエン(例えば、1,2‐ポリブタジエン、シスまたはトランス‐1,4‐ポリブタジエン);ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS));並びに無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)が挙げられる。いくつかの態様において、上記ポリマー材料は、ポリビニルアルコール、ポリイソブチレン、エポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択してもよい。これらのポリマーの機械的特性および電子的特性(例えば、伝導率、抵抗率)は既知である。
【0080】
従って、当業者は、それらの機械的特性および/または電子的特性(例えば、イオン伝導率および/または電子伝導率)に基づいて、好適なポリマーを選択することができ、および/または本明細書中の記載と組み合わせて、当該技術分野の知識に基づいて、このようなポリマーをイオン伝導性(例えば、単一のイオンに対して伝導性)および/または電子的に非伝導性に変性することができる。本明細書中に記載されているように、いくつかの態様では、上記ポリマー材料は実質的に非イオン伝導性である。しかしながら、ポリマー材料がイオン伝導性であることが望ましい他の態様(例えば、このようなイオン伝導性ポリマー材料を含む粒子)では、例えば、前述のポリマー材料は、イオン伝導性を向上させるために、更に塩、例えば、リチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO、LiAsF、LiSOCF、LiSOCH、LiBF、LiB(Ph)、LiPF、LiC(SOCF)、およびLiN(SOCF))を含んでもよい。塩は、例えば、0~50モル%の範囲で材料に添加してもよい。いくらかの態様において、塩は、上記材料の少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、または少なくとも50モル%含まれる。いくらかの態様において、追加の塩は、上記材料の50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、または10モル%以下である。上記範囲の組み合わせも可能である。モル%の他の値も可能である。
【0081】
いくらかの態様では、上記ポリマー材料の平均イオン伝導率は、約10-3[S/cm]以下、約10-4[S/cm]以下、約10-5[S/cm]以下、約10-6[S/cm]以下、または約10-7[S/cm]以下であってもよい。いくつかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層のポリマー材料の平均イオン伝導率は、少なくとも約10-8[S/cm]、少なくとも約10-7[S/cm]、少なくとも約10-6[S/cm]、少なくとも約10-5[S/cm]、少なくとも約10-4[S/cm]、または少なくとも約10-3[S/cm]である。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、少なくとも約10-8[S/cm]および約10-6[S/cm]以下の電解質中での平均イオン伝導率)。伝導率は、室温(例えば、25℃)で測定されてもよい。
【0082】
いくつかの態様において、ポリマー材料は、実質的に非イオン伝導性および実質的に非電気伝導性であってもよい。例えば、本明細書中に記載のものなどの非電気伝導性材料(例えば、電気絶縁材料)を用いることができる。他の形態では、上記ポリマー材料は、イオン伝導性であるが、実質的に非電気伝導性であってもよい。このようなポリマー材料の例としては、アクリレート、ポリエチレンオキシド、シリコーン、およびポリ塩化ビニルなどの、リチウム塩でドープされた非電気伝導性材料(例えば、電気絶縁性材料)が挙げられる。
【0083】
いくつかの態様において、複合材料に含まれるポリマー材料は、このような保護層および/または結果として生じる付着層を含む電気化学電池に使用する電解質溶媒に実質的に非膨潤性である。例えば、上記ポリマー材料および/または層は、このような保護層を含む電気化学電池に使用される(存在する任意の塩または添加剤を含む)電解質溶媒と少なくとも24時間接触した時に、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、2%未満、または1%未満の体積変化を生じてもよい。いくつかの態様では、ポリマー材料(例えば、ポリマー材料を含むゲル)および/または層は、液体電解質の存在下で、少なくとも約0.01体積%、少なくとも約0.1体積%、少なくとも約0.2体積%、少なくとも約0.5体積%、少なくとも約1体積%、または少なくとも約2体積%だけ体積を増加(即ち、膨潤)してもよい。上記範囲の組み合わせ(例えば、約0.01体積%~約5体積%)も可能である。このようなポリマーの簡単なスクリーニングテストは、(存在する任意の塩または添加剤を含む)電解質溶媒中にポリマー片を配置し、24時間前と後のポリマー片の重量または体積変化を測定し、溶媒中に配置する前の体積に対する体積変化率を決定することによって行うことができる。
【0084】
ポリマー材料が、電気化学電池の1つ以上の層(例えば、電解質層)と接触した時に、化学的に安定である材料を含む、またはそのような材料から形成されることが、いくつかの態様では、有利である。例えば、上記材料が、ポリマー材料と直接接触している電気化学電池の1つ以上の追加の層の成分と化学的に反応しない(例えば、副生成物を形成する)場合、ポリマー材料は化学的に安定であることができる。例えば、いくらかの態様において、上記ポリマー材料は、電気活性材料と接触している場合、電解質材料と接触している場合、および/またはポリスルフィドと接触している場合に、化学的に安定である。いくらかの態様では、上記ポリマー材料は、電気化学電池用電極の成分(例えば、電気活性材料、電解質材料(例えば、電解質内の種)、および/またはポリスルフィド)との反応生成物を形成してもよい。しかしながら、そのような態様において、上記反応生成物は、ポリマー材料を含む層の機能を妨害しない(例えば、層は、イオン伝導性のままである)。
【0085】
いくらかの態様では、ポリマー材料は、実質的に非架橋であってもよい。しかしながら、他の態様では、ポリマー材料は架橋されている。いくつかのこのような態様では、ポリマー材料は、複数の粒子の一部と架橋してもよい。例えば、いくつかの態様では、複数の粒子の一部は、(例えば、複数の粒子の一部の表面に結合した)架橋ポリマーでコーティングされてもよい。架橋は、例えば、ポリマーに架橋剤を添加して架橋反応を行うことによって、例えば、熱的または光化学的硬化によって、例えば、UV照射/可視光照射によって、γ線照射、電子ビーム、または加熱(熱架橋)によって、達成することができる。架橋剤の例には、2個以上の炭素‐炭素二重結合を有する分子から選択されたもの、例えば、2個以上のビニル基を有するものが挙げられる。特に有用な架橋剤は、グリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3‐プロパンジオール、1,4‐ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラプロピレングリコールなどのジオールのジ(メタ)アクリレート;シクロペンタジエンダイマー、1,3‐ジビニルベンゼンおよび1,4‐ジビニルベンゼンから選択される。いくつかの好適な架橋剤は、例えば、ビスフェノールF、ビスフェノールA、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテルなど、分子中に2つの以上のエポキシ基を含んでもよい。
【0086】
いくつかの態様では、ポリマー材料および/または結果として生じる付着層は、ゲルの形態であってもよい。いくつかの態様では、液体電解質に暴露された時、ポリマー材料および/または結果として生じる付着層はポリマーゲルを形成する。いくらかの態様では、ポリマー材料は、液体電解質の存在下で膨潤してもよい。例えば、いくつかの態様では、ポリマー材料(例えば、ポリマー材料を含むゲル)および/または層は、液体電解質の存在下で、少なくとも約20体積%、少なくとも約30体積%、少なくとも約40体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約80体積%、または少なくとも約90体積%だけ体積を増加(即ち、膨潤)してもよい。いくらかの実施形態では、ポリマー材料および/または層は、液体電解質の存在下で、約200体積%以下、約100体積%以下、約80体積%以下、約60体積%、約40体積%以下、または約20体積%以下だけ体積を増加(即ち、膨潤)してもよい。上記範囲の組み合わせ(例えば、約50体積%~約100体積%)も可能である。このようなポリマーゲルの簡単なスクリーニングテストは、(存在する任意の塩または添加剤を含む)電解質溶媒中にポリマーゲル片を配置し、24時間前と後のゲル片の重量または体積変化を測定し、溶媒中に配置する前の体積に対する体積変化率を決定することによって行うことができる。
【0087】
いくつかの態様では、複数の粒子は、特定のヤング率を有する材料を含む。いくつかの態様では、複数の粒子のヤング率は、少なくとも約0.1GPa、少なくとも約0.5GPa、少なくとも約1GPa、少なくとも約2GPa、少なくとも約5GPa、少なくとも約10GPa、少なくとも約20GPa、少なくとも約50GPa、少なくとも約100GPa、少なくとも約200GPa、または少なくとも約400GPaである。いくらかの態様では、複数の粒子のヤング率は、約500GPa以下、約400GPa以下、約200GPa以下、約100GPa以下、約50GPa以下、約20GPa以下、約10GPa以下、約5GPa以下、約2GPa以下、約1GPa以下、または約0.5GPa以下である。上記範囲の組み合わせ(例えば、約0.1GPa~約500GPa)も可能である。特定の態様において、上記粒子のヤング率は、少なくとも約1GPaである。いくらかの態様において、融着粒子のヤング率は、融着する前の粒子としてのヤング率と実質的に同じである。ヤング率は、ナノインデンテーション法(AFM)により測定してもよい。
【0088】
いくらかの態様において、第2の層(例えば、保護層/結果として生じる付着層)に含まれる追加の材料または第2の材料(例えば、ポリマー材料)は、保護層および/または結果として生じる付着層を形成するために使用される、および/または上記層中に存在する粒子(例えば、融着粒子)のヤング率より、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、または少なくとも約100倍低いヤング率を有する。上記追加の材料または第2の材料(例えば、ポリマー材料)は、保護層および/または結果として生じる付着層を形成するために使用される、および/または上記層中に存在する粒子(例えば、融着粒子)のヤング率の約100倍以下、約50倍以下、約10倍以下であるヤング率を有してもよい。上記範囲の組み合わせも可能である。当業者であれば、本明細書中に記載の材料のヤング率を決定するための好適な方法を選択することができる。
【0089】
いくらかの態様において、追加の材料または第2の材料(例えば、ポリマー材料)は、保護層および/または結果として生じる付着層を形成するために使用される、および/または上記層中に存在する粒子(例えば、融着粒子、および/または無機粒子)の降伏強さより少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約100倍低い降伏強さを有する。上記追加の材料または第2の材料(例えば、ポリマー材料)は、保護層および/または結果として生じる付着層を形成するために使用される、および/または上記層中に存在する粒子(例えば、融着粒子)の降伏強さの約100倍以下、約50倍以下、約10倍以下である降伏強さを有してもよい。上記範囲の組み合わせも可能である。当業者であれば、本明細書中に記載の材料の降伏強さを決定するための好適な方法、例えば、ナノインデンテーション法を選択することができる。
【0090】
いくつかの態様では、保護層/結果として生じる付着層中に存在する非イオン伝導性材料(例えば、複数の粒子を含む)およびイオン伝導性材料(例えば、ポリマー材料などの第2の材料を含む)の重量比は、他の範囲も可能であるが、約80:20~約95:5である。いくつかの態様において、非イオン伝導性材料およびイオン伝導性材料の重量比は、少なくとも約70:30、少なくとも約80:20、少なくとも85:15、または少なくとも約90:10である。いくつかの態様において、非イオン伝導性材料およびイオン伝導性材料の重量比は、約95:5以下、約90:10以下、または約85:15以下である。上記範囲の組み合わせ(例えば、約80:20~約95:5)も可能である。
【0091】
複数の粒子(例えば、融着粒子)を含む保護層および/または結果として生じる付着層(第2の層)は、任意の好適な厚さを有してもよい。いくつかの態様では、本明細書中に記載の保護層および/または結果として生じる付着層は、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.2μm、少なくとも約0.4μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約0.6μm、少なくとも約0.8μm、少なくとも約1μm、少なくとも約3μm、少なくとも約5μm、少なくとも約10μm、少なくとも約15μm、または少なくとも約20μmの平均厚さを有してもよい。いくつかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層の平均厚さは、約25μm以下、約20μm以下、約10μm以下、約5μm以下、約3μm以下、約1μm以下、約0.8μm以下、約0.6μm以下、約0.5μm以下、約0.4μm以下、または約0.2μm以下である。他の範囲も可能である。上記範囲の組み合わせ(例えば、約0.1μm~約25μm、約0.1μm~約3μm、約1μm~約5μm、約3μm~約25μm、約5μm~約10μm)も可能である。上記保護層の平均厚さは、前述のように、例えば、ドロップゲージまたは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて決定することができる。
【0092】
いくつかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層は、実質的に多孔性(例えば、比較的高い気孔率を有する)であってもよい。例えば、いくつかの場合、複数の粒子は、(必要に応じて追加の材料/第2の材料を有する)第1の層上に付着され、実質的に多孔性である保護層および/または結果として生じる付着層を形成する。いくらかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層は、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.5%の気孔率を有してもよい。いくつかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層は、約99.9%以下、約99.5%以下、約99%以下、約98%以下、約97%以下、約95%以下、約90%以下、約80%以下、約75%以下、または約50%以下の気孔率を有してもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、少なくとも約25%および約99.9%以下)。気孔率は、例えば、水銀圧入法(例えば、Brunauer‐Emmett‐Teller気孔率)によって決定することができる。
【0093】
保護層および/または結果として生じる付着層が多孔性である実施形態では、上記層は、任意の好適な細孔径を有してもよい。いくつかの実施形態では、保護層および/または結果として生じる付着層の細孔径は、2μm以下、1μm以下、500nm以下、300nm以下、100nm以下、50nm以下、または25nm以下である。いくつかの実施形態では、上記細孔径は、10nm以上、50nm以上、100nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、または1μm以上であってよい。他の値も可能である。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、1μm未満および10nm以上の細孔径)。
【0094】
いくつかの態様において、本明細書中に記載の保護層および/または結果として生じる付着層を含む電気化学電池は、特定の初期インピーダンスを有してもよい。いくつかの実施形態では、保護層を含む電気化学電池は、5Ω未満、4Ω未満、3Ω未満、2Ω未満、1Ω未満、0.75Ω未満、または0.5Ω未満の初期インピーダンスを有してもよい。いくらかの実施形態では、保護層を含む電気化学電池は、0.25Ω以上、0.5Ω以上、1Ω以上、2Ω以上、3Ω以上、または4Ω以上の初期インピーダンスを有していてもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、5Ω未満および0.25Ω以上、2Ω未満および0.25Ω以上)。他の範囲も可能である。本明細書中に記載されているような初期インピーダンスは、サイクル試験の開始前であるが電池形成後に、1kHzで動作する導電ブリッジ(すなわち、インピーダンス測定回路)を用いて測定してもよい。
【0095】
いくらかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層を含む電気化学電池は、保護層/結果として生じる付着層を含まない、その他の点で実質的に同一の電気化学電池の初期インピーダンスよりも小さい初期インピーダンスを有する。例えば、いくつかの実施形態において、保護層および/または結果として生じる付着層を含む電気化学電池は、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、または少なくとも10倍である、保護層/結果として生じる付着層を含まない、その他の点で実質的に同一の電気化学電池の初期インピーダンスを有する。いくらかの実施形態では、保護層および/または結果として生じる付着層を含む電気化学電池は、20倍未満、10倍未満、7倍未満、5倍未満、または3倍未満である、保護層を含まない、その他の点で実質的に同一の電気化学電池の初期インピーダンスを有する。上記範囲の組合せも可能である(例えば、少なくとも2倍および20倍未満)。他の範囲も可能である。
【0096】
保護層および/または結果として生じる付着層は、任意の好適な密度を有してもよい。いくらかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層の密度は、約1.5g/cm~約6g/cmである。例えば、いくつかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層は、少なくとも約1.5g/cm、少なくとも約2g/cm、少なくとも約2.5g/cmで、少なくとも約3g/cmの、少なくとも約4g/cm、または少なくとも約5g/cmの密度を有する。いくらかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層は、約6g/cm以下、約5g/cm以下、約4g/cm以下、約3g/cm以下、約2.5g/cm以下、または約2g/cm以下の密度を有する。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約1.5g/cm~約6g/cm)。他の範囲も可能である。
【0097】
いくらかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層は、少なくとも約10-7[S/cm]、少なくとも約10-6[S/cm]、少なくとも約10-5[S/cm]、少なくとも約10-4[S/cm]、または少なくとも約10-3[S/cm]の全体的なイオン伝導率(例えば、リチウムイオン伝導率)を有する。いくらかの態様では、保護層および/または結果として生じる付着層の平均イオン伝導率(例えば、リチウムイオン伝導性)は、約10-2[S/cm]以下、約10-3[S/cm]以下、約10-4[S/cm]以下、約10-5[S/cm]以下、または約10-6[S/cm]以下であってもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、少なくとも約10-7[S/cm]および約10-2[S/cm]以下の平均イオン伝導率、少なくとも約10-6[S/cm]および約10-2[S/cm]以下の平均イオン伝導率、少なくとも約10-5[S/cm]および約10-3[S/cm]以下の平均イオン伝導率)。伝導率(例えば、乾燥伝導率)は、電解質および/または溶媒の不存在下で(即ち、乾燥保護層および/または付着層に対して)、例えば、1kHzで動作する導電ブリッジ(すなわち、インピーダンス測定回路)を用いて室温(例えば、25℃)で測定してもよい。
【0098】
いくつかの態様では、(例えば、付着または融着前の)粒子と(例えば、上記粒子を含む)得られた層の間のイオン伝導率の差異率は、約1000%未満、約700%未満、約500%未満、約200%未満、約100%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5未満%、約3%未満、約1%未満、または約0.5%未満であってもよい。いくつかの場合において、(例えば、付着または融着前の)粒子と(例えば、上記粒子を含む)得られた層の間のイオン伝導率の差異率は、約0.1%以上、約0.5%以上、約1%以上、約3%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約50%以上、約100%以上、約200%以上、約500%以上、約700%以上、または約1000%以上であってもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約0.1%~約10%)。いくつかの態様において、粒子および得られた層の間のイオン伝導率の差は実質的に存在しない。上記差異率は、イオン伝導率のより高い値からイオン伝導率のより低い値を減算し、イオン伝導性のより高い値で割ることによって計算することができる。
【0099】
いくつかの態様では、本明細書中に記載されるように、(例えば、ポリマーおよび複数の粒子を含む)保護層および/または結果として生じる付着層の少なくとも一部(例えば、第1の層に接していない第2の層の少なくとも一部)は、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下、に等しいの)を約5μm以下、約2μm以下、約1.5μm以下、約1μm、、約0.9μm以下、約0.8μm以下、約0.7μm以下、約0.6μm以下、約0.5μm以下、または任意の他の好適なピークから谷までの平均粗さ(Rz)を有していてもよい。いくつかの態様において、保護層および/または結果として生じる付着層の少なくとも一部は、約50nm以上、約0.1μm以上、約0.2μm以上、約0.4μm以上、約0.6μm以上、約0.8μm以上、約1μm以上、約2μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約15μm以上、または任意の他の好適な粗さのRzを有する。上記範囲の組合せが可能である(例えば、約0.1μm~約20μmのRz)。他の範囲も可能である。
【0100】
ピークから谷までの平均粗さ(Rz)は、例えば、非接触3次元光学顕微鏡(例えば、光学プロファイラ)で表面の画像を形成することによって、計算してもよい。簡単に言えば、画像は約5倍~約110倍の倍率(例えば、約50μm×50μmおよび約1.2mm×1.2mmの間の領域)で、全体の表面粗さに依存して、取得してもよい。当業者であれば、試料の画像を形成するための好適な倍率を選択することができる。上記ピークから谷までの平均粗さは、試料上のいくつかの異なる場所での(例えば、試料上の5つの異なる領域で取得した画像)所定の試料サイズに対して最も高いピークおよび最も低い谷の間の高低差の平均を取る(例えば、試料の画像形成領域を横切る5つの最も高いピークおよび5つの最も低い谷の間の高低差を平均化する)ことによって決定することができる。
【0101】
いくつかの態様では、その上に第2の層(保護層および/または結果として生じる付着層)を付着させる第1の層(例えば、電気活性層などの基材)は、保護層および/または付着層に対する上記範囲の1つ以上内にピークから谷までの平均粗さを有してもよい。いくつかの場合、上記粗さは、少なくとも一部分第1の層内に埋め込まれた粒子によって生じる可能性がある。
【0102】
本明細書中に記載されるように、(例えば、融着された複数の粒子を含有する)保護層および/または結果として生じる付着層が、保護層(例えば、ポリマー材料単独から形成された保護層、イオン伝導性材料単独から形成された保護層、またはそれらの組み合わせ)として使用される他の材料と比較して、特定の電気化学システムに対して有利な特性を有するかどうかを決定することが望ましい。従って、簡単なスクリーニングテストは、候補材料間の選択を助けるために使用することができる。1つの簡単なスクリーニングテストは、例えば、電池中の保護層または他の構成要素として、(例えば、融着された複数の粒子を含有する)保護層および/または結果として生じる付着層を電気化学電池中に配置することを含む。電気化学電池には、次いで、複数の放電/充電サイクルを行ってもよく、阻害または他の破壊的挙動が、対照系に比べて生じているかどうかに関して、電気化学電池を観察してもよい。阻害またはその他の破壊的挙動が、対照系と比較して、上記電池のサイクル試験中に観察された場合、組み立てられた電気化学電池内の保護層および/または結果として生じる付着層の劣化メカニズムを示すことができる。同様の電気化学電池を用いて、保護層および/または結果として生じる付着層の電気伝導率およびイオン伝導率を当業者に既知の方法を用いて、評価することも可能である。同様の電気化学電池は、保護層および/または結果として生じる付着層の存在下または非存在下で、サイクル寿命を決定するためにサイクル試験してもよい。測定値は、候補物質間で選択するために比較されてもよく、対照のベースライン材料との比較のために使用してもよい。
【0103】
いくつかの態様では、(存在する任意の塩または添加剤を含む)電気化学電池に使用される特定の電解質や溶媒の存在下で膨潤するための保護層および/または結果として生じる付着層を試験することが望ましい場合があります。簡単なスクリーニングテストは、例えば、任意の好適な時間(例えば、24時間)、電気化学電池に使用されるために、、秤量し、次いで溶媒または電解質中に配置された保護層および/または結果として生じる付着層の部分を含んでいてもよい。溶媒または電解質の添加前および添加後の保護層の重量(または体積)の差異率により、電解質または溶媒の存在下で、保護層の膨潤量を決定してもよい。
【0104】
別の簡単なスクリーニングテストには、第2の層(保護層および/または結果として生じる付着層)の(例えば、リチウム‐硫黄電気化学電池に使用するための)ポリスルフィドおよび/または(例えば、リチウムイオン電気化学電池に使用のするための)電解質に対する安定性(即ち、完全性)を決定することを含む。簡潔には、保護層または付着層を、ポリスルフィド溶液/混合物または液体電解質に任意の好適な時間(例えば、72時間)暴露し、ポリスルフィド溶液または液体電解質への暴露後の保護層のパーセント重量損失を、暴露前後の保護層または付着層の重量差を計算することによって決定してもよい。例えば、いくつかの態様では、ポリスルフィド溶液または液体電解質への暴露後の保護層および/または付着層のパーセント重量損失は、約15重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、約2重量%以下まで、約1重量%以下、または約0.5重量%以下であってもよい。約2重量%以下~約5重量%以下。いくらかの態様では、ポリスルフィド溶液または液体電解質への暴露後の保護層および/または付着層のパーセント重量損失は、約0.1重量%、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、約5重量%、または約10重量%より大きくてもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約0.1重量%~約5重量%)。いくつかの場合において、X線回折を、保護層および/または結果として生じる付着層のポリスルフィドまたは液体電解質に対する安定性を決定するために用いてもよい。
【0105】
前述のスクリーニングテストをまた、保護層の個々の成分(例えば、ポリマー材料/ポリマー層および/または複数の粒子)の特性を決定するために、適合させ、および用いてもよい。使用することができる。
【0106】
本明細書中に記載の多くの態様は、リチウム‐硫黄電気化学電池および/またはリチウムイオン電気化学電池に関するが、(アルカリ金属アノードを含む)任意の類似したアルカリ金属/硫黄電気化学電池を使用することができると解されるべきである。前述のようにおよび本明細書でより詳細に説明されているように、いくつかの態様では、保護層を、電極の保護層として電気化学電池に組み込む。いくつかの態様において、本明細書中に開示された保護層を、少なくとも1つの電極構造体を含む電気化学電池に含んでもよい。いくつかの場合、電気化学電池は、電極構造体、1つ以上の保護層、および電解質層を設けることにより製造することができる。電極構造体は、電気活性層(例えば、アノードまたはカソード)および1つの以上の保護層を含んでもよい。保護層は、電気活性材料イオンに対しての高伝導性であってもよく、前述のように、下層の電気活性材料の表面を、電解質中の成分との反応から保護してもよい。いくつかの実施形態では、しかしながら、保護層は、本明細書中に記載のように、電解質中の成分との反応から下層の電気活性材料の表面を保護しながら、電気活性材料イオンに対して非伝導性であってもよい。いくつかの態様において、保護層は、アノードに隣接していてもよい。いくつかの態様において、保護層は、カソードに隣接していてもよい。いくらかの態様では、保護層は、セパレータに隣接および/またはセパレータ上に付着していてもよい。他の構成も可能である。
【0107】
電気化学電池または電気化学電池に用いるための物品は、電気活性材料層を含んでもよい。いくつかの態様において、本明細書中に記載の第1の層(例えば、その上に保護層および/または結果として生じる付着層を形成する層)は、(例えば、第1の層は電気活性層である)電気活性材料を含む。いくつかの場合において、第1の層は、アノード(例えば、電気化学電池のアノード)であってもよい。
【0108】
本明細書中に記載の電気化学電池におけるアノード活性材料として使用するのに好適な電気活性材料には、それらに限定されないが、リチウム金属(例えば、リチウム箔および伝導性基材上に付着させたリチウム)、およびリチウム合金(例えば、リチウム‐アルミニウム合金およびリチウム‐錫合金)が挙げられる。リチウムは、必要に応じて、本明細書中に記載のセラミック材料またはイオン伝導性材料などの保護材料によって分離された、一枚の膜、またはいくつかの膜として含有されることができる。好適なセラミック材料には、シリカ、アルミナ、或いはリン酸リチウム、アルミン酸リチウム、ケイ酸リチウム、リン酸窒化リチウム、リチウム酸化タンタル、リチウムアルミノスルフィド、リチウム酸化チタン、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムボロスルフィド、およびリチウムホスホスルフィドなどのリチウム含有ガラス状物質、並びにそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。本明細書中に記載の態様で使用するのに好適なリチウム合金には、リチウムとアルミニウム、マグネシウム、ケイ素、インジウムおよび/または錫との合金が挙げられる。これらの材料は、いくつかの態様において好ましいかもしれないが、他の電池化学もまた意図される。いくつかの態様では、アノードは、1つ以上のバインダー材料(例えば、ポリマーなど)を含んでもよい。
【0109】
1つ以上の電気活性層(例えば、電気活性材料を含む)は、本明細書中に記載のように、約50nm以上、約0.1μm以上、約0.2μm以上、約0.4μm以上、約0.6μm以上、約0.8μm以上、約1μm以上、約2μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約15μm以上、または任意の他の好適な粗さのピークから谷までの平均粗さ(Rz)を有してもよい。いくつかの実施形態では、(例えば、電気活性材料を含む)1つ以上の電気活性層は、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下、約2μm以下、約1.5μm以下、約1μm以下、約0.9μm以下、約0.8μm以下、約0.7μm以下、約0.6μm以下、約0.5μm以下、または任意の他の好適な粗さのRzを有してもよい。上記範囲の組み合わせが可能である(例えば、約0.1μm~約20μmのRz、約0.1μm~約5μmのRz)。他の範囲も可能である。いくつかの態様では、1つ以上の電気活性層のピークから谷までの平均粗さは、電気化学電池の充電/放電前に決定される。1つ以上の電気活性層の上記ピークから谷までの平均粗さ(Rz)は、本明細書中に記載されているように、例えば、非接触3次元光学顕微鏡(例えば、光学プロファイラ)で表面の画像を形成することによって、決定してもよい。
【0110】
いくつかのこのような態様では、本明細書中に記載された第1の層(例えば、その上に第2の層、例えば保護層および/または結果として生じる付着層を形成する層)はカソード(例えば、電気化学電池のカソード)であってもよい。本明細書中に記載された電気化学電池のカソードにおいてカソード活性材料として使用するのに好適な電気活性材料には、それらに限定されないが、電気活性遷移金属カルコゲン化物、電気活性伝導性ポリマー、硫黄、炭素、および/またはそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書中で使用されるように、用語「カルコゲン化物」は、酸素、硫黄、およびセレンの元素の1つ以上を含む化合物に関する。好適な遷移金属カルコゲン化物の例には、それらに限定されないが、マンガン、バナジウム、クロム、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウムおよびイリジウムからなる群から選択される遷移金属の電気活性酸化物、硫化物、およびセレン化物が挙げられる。1つの態様において、上記遷移金属カルコゲン化物は、ニッケル、マンガン、コバルト、およびバナジウムの電気活性酸化物、並びに鉄の電気活性硫化物からなる群から選択される。いくらかの態様において、上記カソードは、電気活性種として硫黄元素、硫化物、および/またはポリスルフィドを含んでもよい。他の態様において、インターカレーション型電極(例えば、リチウムインターカレーション型カソード)を用いてもよい。電気活性材料のイオン(例えば、アルカリ金属イオン)を挿入することができる好適な材料の非限定的な例には、酸化物、硫化チタン、および硫化鉄が挙げられる。更なる例には、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiCoPO、LiMnPO、およびLiNiPO(ここで、0<x≦1)、並びにLiNiMnCo(ここで、x+y+z=1)が挙げられる。
【0111】
1つの態様では、カソードは、以下の材料:二酸化マンガン、ヨウ素、クロム酸銀、酸化銀および五酸化バナジウム、酸化銅、オキシリン酸銅、硫化鉛、硫化銅、硫化鉄、鉛ビスマス、三酸化ビスマス、二酸化コバルト、塩化銅、二酸化マンガン、および炭素:の1つ以上を含む。別の態様では、カソード活性層は、電気活性伝導性ポリマーを含む。好適な電気活性伝導性ポリマーの例としては、それらに限定されないが、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンからなる群から選択される、電気活性伝導性ポリマーおよび電子伝導性ポリマーが挙げられる。伝導性ポリマーの例としては、ポリピロール、ポリアニリン、およびポリアセチレンが挙げられる。
【0112】
いくつかの態様において、本明細書中に記載の電気化学電池におけるカソード活性材料として使用するための電気活性材料は、電気活性硫黄含有材料(例えば、リチウム‐硫黄電気化学電池)を含む。本明細書中で使用される「電気活性硫黄含有材料」は、電気化学的活性が硫黄原子または硫黄部分の酸化または還元を含む、任意の形態の硫黄元素を含むカソード活性材料に関する。本発明の実施において有用な電気活性硫黄含有材料の性質は、当技術分野で知られているように、広く変化してもよい。例えば、1つの態様では、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素を含む。別の態様では、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素および硫黄含有ポリマーの混合物を含む。従って、好適な電気活性硫黄含有材料には、それらに限定されないが、硫黄元素、並びにポリマーであってもなくてもよい、硫黄原子および炭素原子を含む有機材料が挙げられる。好適な有機材料には、ヘテロ原子、伝導性ポリマーセグメント、複合材、および伝導性ポリマーを更に含むものが挙げられる。
【0113】
いくらかの態様において、(例えば、酸化された形態での)硫黄含有材料は、共有結合性Sm部分、イオン性Sm部分およびイオン性Sm‐部分からなる群から選択されるポリスルフィド部分Smを含む(ここで、mは3以上の整数である。)。いくつかの態様では、硫黄含有ポリマーのポリスルフィド部分Smのmは、6以上の整数、または8以上の整数である。いくつかの場合、硫黄含有材料は、硫黄含有ポリマーであってもよい。いくつかの態様では、硫黄含有ポリマーはポリマー主鎖を有し、ポリスルフィド部分Smを、側基としての末端硫黄原子の一方または両方によって、上記ポリマー主鎖に共有結合する。いくらかの態様では、硫黄含有ポリマーはポリマー主鎖を有し、ポリスルフィド部分Smを、上記ポリスルフィド部分の末端硫黄原子の共有結合によって、上記ポリマー主鎖に組み込む。
【0114】
いくつかの態様において、電気活性硫黄含有材料は、50重量%より多い硫黄を含む。いくらかの態様において、電気活性硫黄含有材料は、75重量%より多い硫黄(例えば、90重量%より多い硫黄)を含む。
【0115】
当業者に知られているように、本明細書中に記載の電気活性硫黄含有材料の性質は広範囲に変化する。いくつかの実施形態では、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素を含む。いくらかの実施形態において、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素および硫黄含有ポリマーの混合物を含む。
【0116】
いくらかの態様では、本明細書中に記載の電気化学電池は、カソード活性種として硫黄を含む1つの以上のカソードを含む。いくつかのこのような態様では、カソードは、カソード活性種として硫黄元素を含む。
【0117】
いくつかの態様において、本明細書中に記載の第1の層(例えば、その上に第2の層、例えば、保護層および/または結果として生じる付着層が形成された層)はセパレータである。例えば、いくつかの態様では、複数の粒子を、(例えば、エアロゾル沈着法によって)セパレータ上に付着させる。このようなセパレータは、一般に、ポリマー材料(例えば、電解質への暴露時に膨潤するか、または膨潤しないポリマー材料)を含む。いくつかの態様において、セパレータを、保護層と電極(例えば、アノード、カソード)の間に配置する。いくつかの場合、セパレータを、セラミック材料などの材料でコーティング(例えば、プレコーティング)してもよい。
【0118】
上記セパレータは、電気化学電池の短絡をもたらす可能性がある、第1の電極と第2の電極との間の物理的接触を阻害(例えば、防止)するように構成することができる。セパレータは、実質的に電子的に非伝導性であるように構成することができ、それによって電気化学電池の短絡を引き起こす程度を抑制することができる。いくらかの態様では、セパレータの全てまたは一部は、少なくとも約10[Ω・m]、少なくとも約10[Ω・m]、少なくとも約1010[Ω・m]、少なくとも約1015[Ω・m]、または少なくとも約1020[Ω・m]のバルク電気抵抗率を有する材料から形成することができる。バルク電気抵抗率は、室温(例えば、25℃)で測定してもよい。
【0119】
他の態様では、セパレータは実質的にイオン非伝導性であるが、いくつかの実施形態では、セパレータはイオン伝導性であってもよい。いくつかの態様では、セパレータの平均イオン伝導率は、少なくとも約10-7[S/cm]、少なくとも約10-6[S/cm]、少なくとも約10-5[S/cm]、少なくとも約10-4[S/cm]、少なくとも約10-2[S/cm]、または少なくとも約10-1[S/cm]である。いくらかの態様では、セパレータの平均イオン伝導率は、約1[S/cm]以下、約10-1[S/cm]以下、約10-2[S/cm]以下、約10-3[S/cm]以下、約10-4[S/cm]以下、約10-5[S/cm]以下、約10-6[S/cm]以下、約10-7[S/cm]以下、または約10-8[S/cm]以下であってもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、少なくとも約10-8および約10-1[S/cm]以下の平均イオン伝導率)。
【0120】
いくつかの態様では、セパレータは、固体であってもよい。セパレータは、電解質溶媒がそれを通過できるように多孔性であってもよい。いくつかの場合、セパレータは、セパレータの細孔を通過またはセパレータの細孔中に存在してもよい溶媒を除いて、実質的に(ゲル中のような)溶媒を含まない。他の態様では、セパレータは、ゲルの形態であってもよい。
【0121】
本明細書中に記載のセパレータは、様々な材料から形成されてもよい。セパレータは、いくつかの場合にはポリマー、または他の場合には、無機材料(例えば、ガラス繊維濾紙)から形成されてもよい。好適なセパレータ材料の例としては、それらに限定されるものではないが、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリ(ブテン‐1)、ポリ(n‐ペンテン‐2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI));ポリアミド類(例えば、ポリアミド(Nylon)、ポリ(ε-カプロラクタム)(Nylon 6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(Nylon 66))、ポリイミド類(例えば、ポリイミド、ポリニトリル、およびポリ(ピロメリットイミド‐1,4‐ジフェニルエーテル)(Kapton;登録商標)(NOMEX;登録商標)(KEVLAR;登録商標));ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2‐ビニルピリジン)、ポリ(N‐ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(2‐ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート));ポリアセタール;ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート);ポリエーテル(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO));ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン));ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ‐1,3‐フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ‐1,4‐フェニレンイミノテレフタロイル));ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT));多複素環化合物(例えば、ポリピロール);ポリウレタン;フェノール系ポリマー(例えば、フェノール‐ホルムアルデヒド);ポリアルキン(例えば、ポリアセチレン);ポリジエン(例えば、1,2‐ポリブタジエン、シスまたはトランス‐1,4‐ポリブタジエン);ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS));並びに無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)が挙げられる。いくつかの態様において、上記ポリマーは、ポリ(n‐ペンテン‐2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド類(例えば、ポリアミド(Nylon)、ポリ(ε-カプロラクタム)(Nylon 6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(Nylon 66))、ポリイミド類(例えば、ポリニトリル、およびポリ(ピロメリットイミド‐1,4‐ジフェニルエーテル)(Kapton;登録商標)(NOMEX;登録商標)(KEVLAR;登録商標));ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0122】
これらのポリマーの機械的および電子的特性(例えば、伝導率、抵抗率)は既知である。従って、当業者であれば、本明細書中の記載と組み合わせて、それらの機械的および/または電子的特性(例えば、イオン伝導率および/または電子伝導率/抵抗率)に基づいて好適な材料を選択することができ、および/または当該技術分野の知識に基づいて、そのようなポリマーをイオン伝導性(例えば、単一イオンに対して伝導性)に変性することができる。例えば、前述のおよび本明細書中に記載されたポリマー材料は、所望であれば、イオン伝導性を向上させるために、更に塩、例えばリチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO、LiAsF、LiSOCF、LiSOCH、LiBF、のLiB(Ph)4、LiPF、LiC(SOCF)、およびLiN(SOCF))を含んでもよい。
【0123】
本開示を提供された当業者は、セパレータとして使用するための好適な材料を選択することができる。そのような選択を行う際に考慮されるかもしれない関連する要因には、セパレータ材料のイオン伝導性;セパレータ材料を電気化学電池内の他の材料上にまたは他の材料を用いて付着または形成する能力;セパレータ材料の可撓性;セパレータ材料の気孔率(例えば、全体的な気孔率、平均細孔径、細孔径分布、および/または屈曲度);電気化学電池を形成するのに用いられる製造方法とのセパレータ材料の適合性;電気化学電池の電解質とのセパレータ材料の適合性;および/またはイオン伝導材料にセパレータ材料を付着させる能力;を含む。いくらかの態様では、セパレータ材料は、機械的欠陥なしにエアロゾル沈着法を切り抜ける能力に基づいて選択することができる。例えば、比較的高い速度を複数の粒子(例えば、無機粒子)を付着するのに使用している態様では、セパレータ材料を、そのような付着に耐えるように選択または構成することができる。
【0124】
第1の層(例えば、セパレータ)は多孔性であってもよい。いくつかの態様では、第1の層の細孔径(例えば、セパレータ細孔径)は、例えば、5μm未満であってもよい。いくらかの態様では、セパレータの細孔径は、50nm~5μm、50nm~500nm、100nm~300nm、300nm~1μm、500nm~5μmであってもよい。いくつかの態様では、上記細孔径は、5μm以下、1μm以下、500nm以下、300nm以下、100nm以下、または50nm以下であってもよい。いくつかの態様では、上記細孔径は、50nm、100nm、300nm、500nm、または1μmより大きくてもよい。他の値も可能である。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、300nm未満および100nmより大きい細孔径)。いくらかの態様では、第1の層(例えば、セパレータ)は、実質的に非多孔性であってもよい。
【0125】
本明細書中に記載されるように、いくらかの態様において、電気化学電池は電解質を含む。電気化学電池またはバッテリセルに使用される電解質は、イオンの貯蔵および輸送のための媒体として機能することができ、固体電解質およびゲル電解質の特殊な場合には、これらの材料は更に、アノードとカソードとの間のセパレータとして機能してもよい。上記材料が、アノードおよびカソードの間のイオン(例えば、リチウムイオン)の輸送を促進する限り、イオンを貯蔵および輸送することができる任意の好適な液体、固体、またはゲル材料を用いてもよい。上記電解質は、アノードとカソードとの間の短絡を防止するために、電子的に非伝導性である。いくつかの態様では、電解質は、非固体電解質を含んでもよい。
【0126】
いくつかの態様では、電解質は、特定の厚さを有する層の形態である。電解質層は、例えば、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、少なくとも15μm、少なくとも20μm、少なくとも25μm、少なくとも30μm、少なくとも40μm、少なくとも50μm、少なくとも70μm、少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも500μm、または少なくとも1mmの厚さを有してもよい。いくつかの態様では、電解質層の厚さは1mm以下、500μm以下、200μm以下、100μm以下、70μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、または5μm以下である。他の値も可能である。上記範囲の組み合わせも可能である。
【0127】
いくつかの態様では、電解質は非水性電解質を含む。好適な非水性電解質には、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および固体高分子電解質などの有機電解質が挙げられる。これらの電解質は、本明細書中に記載されるように、(例えば、イオン伝導性を付与するまたは高めるために)1つ以上のイオン性電解質塩を必要に応じて含んでもよい。有用な非水性液体電解質溶媒の例には、それらに限定されないが、非水性有機溶媒、例えばN‐メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カーボネート、スルホン、スルフィット、スルホラン、脂肪族エーテル、非環式エーテル、環式エーテル、グライム、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、ジオキソラン、N‐アルキルピロリドン、それらの置換した形、およびそれらのブレンドが挙げられる。使用してもよい非環式エーテルの例としては、それらに限定されないが、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシプロパン、および1,3-ジメトキシプロパンが挙げられる。使用されてもよい環状エーテルの例としては、それらに限定されないが、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、およびトリオキサンが挙げられる。使用してもよいポリエーテルの例としては、それらに限定されないが、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、高級グライム、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびブチレングリコールエーテルが挙げられる。使用してもよいスルホンの例としては、それらに限定されないが、スルホラン、3-メチルスルホラン、および3-スルホレンが挙げられる。上記のもののフッ素化誘導体も、液体電解質溶媒として有用である。
【0128】
いくつかの場合において、本明細書中に記載の溶媒の混合物を使用してもよい。例えば、いくつかの態様では、溶媒の混合物は、1,3‐ジオキソランおよびジメトキシエタン、1,3‐ジオキソランおよびジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3‐ジオキソランおよびトリエチレングリコールジメチルエーテル、並びに1,3‐ジオキソランおよびスルホランからなる群から選択される。混合物中の上記2つの溶媒の重量比は、いくつかの場合、約5重量%:95重量%~95重量%:5重量%の範囲であってもよい。
【0129】
好適なゲルポリマー電解質の非限定的な例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、全フッ素化膜(NAFION樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、それらの誘導体、それらの共重合体、それらの架橋構造体および網目状構造体、並びにそれらのブレンドが挙げられる。
【0130】
好適な固体高分子電解質の非限定的な例としては、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、それらの誘導体、それらの共重合体、それらの架橋構造体および網目状構造体、並びにそれらのブレンドが挙げられる。
【0131】
いくつかの態様では、上記電解質は、リチウム塩などの少なくとも1つの電解質添加剤を含む。例えば、いくつかの場合、上記少なくとも1つのリチウム塩は、LiNO、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiSbF、LiAlCl、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、LiCFSO、LiN(SOF)、LiC(C2n+1SO)(ここで、nは1~20の整数である。)および(C2n+1SO)XLi(ここで、nは1~20の整数であり、Xが酸素または硫黄から選択される場合にmは1であり、Xが窒素またはリンから選択される場合にmは2であり、Xが炭素またはケイ素から選択される場合にmは3である。)からなる群から選択される。
【0132】
いくつかの実施形態において、電解質は、硝酸塩または他のN‐O化合物などの少なくとも1つの電解質添加剤を含む。NO化合物の例としては、それらに限定されないが、無機硝酸塩、有機硝酸塩、無機亜硝酸塩、有機亜硝酸塩、有機ニトロ化合物、負荷電、中性および正荷電したNOx基を有する化合物、並びに他の有機NO化合物などのグループが挙げられる。使用してもよい無機硝酸塩の例としては、それらに限定されないが、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸バリウム、および硝酸アンモニウムが挙げられる。使用してもよい有機硝酸塩の例としては、それらに限定されないが、ジアルキルイミダゾリウムニトレート、硝酸グアニジン、ピリジン硝酸塩が挙げられる。使用してもよい無機亜硝酸塩の例としては、それらに限定されないが、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸セシウムおよび亜硝酸アンモニウムが挙げられる。使用してもよい有機亜硝酸塩の例としては、それらに限定されないが、亜硝酸エチル、亜硝酸プロピル、亜硝酸ブチル、亜硝酸ペンチル、および亜硝酸オクチルが挙げられる。使用してもよい有機ニトロ化合物の例としては、それらに限定されないが、ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロトルエン、ジニトロトルエン、ニトロピリジン、およびジニトロピリジンが挙げられる。使用してもよい他の有機N‐O化合物の例としては、それらに限定されないが、ピリジンN‐オキシド、アルキルピリジンN‐オキシド、およびテトラメチルピペリジンN‐オキシル(TEMPO)が挙げられる。
【0133】
いくつかの実施形態において、電解質添加剤(例えば、リチウム塩、硝酸塩または他の他のN‐O化合物)は、電解質中に、総電解質重量に対して、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、または少なくとも約15重量%の量で含まれる。いくらかの実施形態において、電解質添加剤(例えば、リチウム塩、硝酸塩または他の他のN‐O化合物)は、電解質中に、総電解質重量に対して、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.1重量%以下、または約0.05重量%以下の量で含まれる。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、少なくとも約0.01重量%および約20重量%以下)。他の範囲も可能である。
【0134】
本明細書中に記載される1つ以上の添加剤を含む電気化学電池は、それらに限定されないが、サイクル寿命を増加させること、改善されたリチウムの形態を提供すること、リチウムの密度を増加させること、および/または電気化学電池の充電/放電時のリチウムの消耗を低減することなど、このような添加剤を含まない電気化学電池を超える1つ以上の利点を提供することができる。いくつかの場合において、添加剤は、電気活性材料(例えば、アノード、第1の層)上にパッシベーション層を形成することができる。
【0135】
有利には、本明細書中に記載の多孔性保護層(例えば、第2の層)を含む電気化学電池は、電解質中の1つ以上の電解質添加剤を電気活性層(例えば、第1の層)の表面に接触させる(例えば、直接接触させる)ことを可能にする。本明細書中に記載されるように、これらの1つ以上の添加剤は、電気活性層および/または電気化学電池全体に役に立つことができる。いくつかの場合、添加剤および電気活性層の間のこの接触によって、電気活性層(例えば、第1の層)上のパッシベーション層の形成を促進することができる。これに対し、電解質中の有害な種(例えば、電気活性層の表面と有害に反応する種)への電気活性層の暴露を防止または低減するいくらかの従来の非多孔性保護層は、電気活性層および/または電気化学電池全体のために有益である、電解質添加剤への電気活性層の暴露を同様に防止または低減することができる。従って、保護層を横切る良好なイオン伝導性および電気活性層の電解質中の有益な種への暴露を可能にし、それによってこのような多孔性保護層を含まない電気化学電池と比較して、電気化学電池の全性能を向上させながら、本明細書中に記載の多孔性保護層は、同時に、(例えば、有害な種への電気活性層の暴露量を減少させることによって)電気活性層の保護を可能にすることができる。
【0136】
いくつかの態様において、本明細書中に記載の第1の層(例えば、その上に第2の層、例えば保護層および/または得られる付着層を形成する層)は、電気化学電池と共に使用される電解質中に、または任意の他の好適な溶媒(例えば、非電解質溶媒)中に溶解することができる材料を含む。保護層および/または得られる付着層を電気化学電池内に配置する前、または保護層を電気化学電池内に配置した後に、第1の層の少なくとも一部またはすべてを除去してもよい。いくつかの場合、除去は、電気化学電池のサイクル中に行うことができる。電解質または任意の他の好適な溶媒中に溶解することができる材料の非限定的な例としては、例えば、ポリスルホン、ポリエチレンオキシド、Kynar(登録商標)、およびポリスチレンが挙げられる。
【0137】
例えば、いくつかの態様において、第1の層の少なくとも約10体積%、少なくとも約20体積%、少なくとも約30体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約70体積%、または少なくとも約90体積%を、保護層および/または得られる付着層から除去してもよい。いくらかの態様では、第1の層の約100体積%以下、約90体積%以下、約70体積%以下、約50体積%以下、約30体積%以下、または約20体積%以下を、保護層および/または得られる付着層から除去してもよい。上記範囲の組み合わせ(例えば、約10~約100体積%)も可能である。いくつかの場合、第1の層の実質的に全て(例えば、100%)を、保護層および/または得られる付着層から除去してもよい。
【0138】
いくつかの態様において、本明細書中に記載の電極構造体は、少なくとも1つの集電体を含む。集電体の材料は、いくつかの場合、金属(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、不動態化金属、および他の好適な金属)、金属化ポリマー、導電性ポリマー、その中に分散された導電性粒子を含むポリマー、および他の好適な材料から選択されてもよい。いくらかの態様では、集電体は、物理蒸着、化学蒸着、電気化学蒸着、スパッタリング、ドクターブレード法、フラッシュ蒸着、または選択された材料のための任意の他の好適な付着技術を用いて、電極層上に付着させる。いくつかの場合、集電体は、別々に形成され、電極構造体に結合してもよい。しかしながら、いくつかの態様では、電気活性層とは別個の集電体は必要でない可能性があると解されるべきである。
【0139】
以下の実施例は、本発明のいくらかの態様を説明することを意図しているが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例
【0140】
(実施例1)
この実施例には、基材上にエアロゾル沈着法によって複数の粒子を付着させ、融着させることによる保護層の形成を示した。
エアロゾル沈着法を使用して、電極上に種々の材料の多孔性層を付着させた。例えば、10μm以下の平均最大断面積を有する粒子を、粒子を高速度(例えば、少なくとも約200m/秒)で加速し、リチウム表面との衝突時に、互いとの衝突および融着によって層を形成し始めるエアロゾル沈着法によって、リチウム表面(例えば、第1の表面)上に付着させた。粒子による衝撃によって、リチウム表面上に形成された任意のパッシベーション層を崩壊し、結果的に付着された層とリチウムとの間のより緊密な接触を次々にもたらした。理論に束縛されるものではないが、このように得られる付着した保護層は、サイクル寿命を増加させることにより電池性能を向上させ、構築された電池の初期抵抗値を低下させる。
【0141】
イオン伝導性材料
エアロゾル沈着法によって付着させたイオン伝導性材料を含む、数例の多孔性保護層/付着層を形成し、試験した。得られた保護層は多孔性であり、イオン伝導性材料の少なくとも一部を、融着させるおよび/またはリチウムの表面に埋め込んだ。そのような付着された保護層を有する電気化学電池は、対照電池(電気化学電池は、実質的に類似した特徴を有するが、電極上に付着させた粒子を含まない)よりも低い初期インピーダンスを示し、対照電池を超えてサイクル寿命性能を増大した。1つの例では、Li24SiP19(Li24とも呼ばれる)は、3~5μmの粒子の形態で、イオン伝導性材料として使用し、Li24粒子の少なくとも一部が融着するように1.5μm厚のリチウム層(第1の層)上に付着させた。図3Aには、リチウム表面上にLi24を含むサブミクロンの保護層(第2の層)を示す。得られた保護層は、約0.65μmの厚さであった。リチウム表面上に粒子を付着させる効果は、図3Bに見ることができる。(付着前のリチウム層の表面の表面粗さと比較して)リチウム層の表面の粗さが増大しているが、この変化に伴う電池のサイクル寿命への悪影響は認められなかった。
【0142】
別の例では、Li22SiP18は、5~10μmの間の平均最大断面寸法を有する粒子の形態で、アルミナまたはベーマイトでコーティング(例えば、プレコーティング)したポリエチレンを含むセパレータ(例えば、第1の層)上に付着させたイオン伝導性材料として使用した。更に別の例では、Li22SiP18は、5~10μmの粒子の形態で、25μmの厚さを有するリチウム層(例えば、第1の層)上にエアロゾル沈着法により付着させた。
【0143】
イオン伝導性材料およびポリマー粒子の混合物
少なくとも1つのイオン伝導性材料およびエアロゾル沈着法によって付着させたポリマー球の混合物を含む多孔性保護層/付着層のいくつかの例を作製し、試験した。1つの例では、70体積%のLi24および30体積%のポリエチレン(PE)球(1μmの平均最大断面寸法を有する)の混合物を作製し、Li24粒子の少なくとも一部が融着するように、25μmの厚さのリチウム層(第1の層)上にエアロゾル沈着法により付着させた。得られた付着層(第2の層)は、多孔性であり、平均厚さ約1μmであり、図4A図4Bに示されている。
【0144】
アルミナおよびシリカ単独などの非伝導性セラミック
エアロゾル沈着法によって付着させた非伝導性セラミック(およびイオン伝導性材料を含まない)を含む多孔性保護層/付着層のいくつかの例を作製し、試験した。1つの例では、Α1粒子の少なくとも一部分が融着し、多孔性保護層(第2の層)を形成するように、(0.5μm~5μmの平均最大断面寸法を有する)Α1粒子を25μmの厚さのリチウム層(第1の層)上にエアロゾル沈着法により付着させた。これらの多孔性保護層の例を、図5A図6Bに示す。注釈:図5A図5Bには、リチウム層上にΑ1を含む0.4μmの厚さの保護層を示す。図5Bには、付着層中の融着Α1と比較するため(付着工程後に)保護層の上部に配置された非融着Α1粒子を示す。図6A図6Bには、リチウム層上に付着させた約0.75μm厚さを有するΑ1を含む多孔性保護層を示す。付着に起因する波状の/粗い表面形態は、図6A図6Bに見ることができる。
【0145】
イオン伝導性材料、非イオン伝導性材料、および/またはポリマー粒子の混合物
少なくとも1つのイオン伝導性材料、少なくとも1つの非イオン伝導性材料、および/またはエアロゾル沈着法により付着させたポリマー粒子の混合物を含む多孔性保護層/付着層のいくつかの例を作製し、試験した。1つの例では、75体積%のLi24および25体積%のΑ1を含む混合物を作製し、25μmの厚さのリチウム層(第1の層)上にエアロゾル沈着法により付着させて、リチウム上に多孔性付着層(第2の層)を形成した(図示せず)。
【0146】
70体積%のLi24、20体積%のΑ1、および10体積%のポリエチレン(PE)球を含む別の混合物を作製し、リチウム層(第1の層)上にエアロゾル沈着法により付着させて、リチウム層上に、約1μm厚さの多孔性保護層(第2の層)を形成し、図7A図7Bに示した。保護層の表面の波状の/粗い性質は、図7A図7Bに見ることができ、Li24およびΑ1の部分融解が図7Bにおいて容易に観察可能である。
【0147】
等しい体積%のΑ1、シリカ、およびリチウムビス(オキサレート)ボレートを含む別の混合物を作製し、厚さ25μmのリチウム層(例えば、第1の層)上にエアロゾル沈着法により付着させて、約1.66μmの厚さの多孔性の保護層(例えば、第2の層)をリチウム層上に形成し、図14A図14Cの断面図および図14Dの上面図に示した。
【0148】
等しい体積%のΑ1およびLi22SiP18を含む更に別の混合物を作製し、厚さ25μmのリチウム層(例えば、第1の層)上にエアロゾル沈着法により付着させて、厚さ0.3~1.2μmの多孔性保護層(例えば、第2の層)をリチウム層上に形成した。
【0149】
セルデータ
前述の層を、液体電解質を有する2種の試験用電気化学電池、第1の電気化学電池(バイセル)および第2の電気化学電池(カソード中心電池)に組み込んだ。
第1の電気化学電池を形成するために:
1.カソードを、43.45mm幅×45mm(36.83mm有効幅を確保)にカットする。スポット溶接機を使用して、裸箔に沿ってNiのタブをほぼ全長(45mm)に取り付ける(約10箇所以上)。
2.アノードを、43.45mm×50mmにカットする。スポット溶接機を使用してNiのタブをほぼ全長(50mm)に取り付ける(約10箇所以上)。
3.付着させた保護層を上にして保護されたアノードを敷き、セパレータ(ポリプロピレン;41.91mm×52.5mm)を保護されたアノードの全ての上にタブの約1mmを露出させて配置する。
4.片面リン酸鉄リチウム(LFP)カソードを、活性面を下に、アノードとの関係で上下をセンタリングするセパレータ上に配置する。
5.上部にすべて一緒にテープで束ね、次いで、タブをスポット溶接機に取り付けるようにタブをより短い長さに切る。
【0150】
第2の電気化学電池を形成するために:
1.LFPカソードを、片面カソード用に43.45mm幅×90mm(36.83mm有効幅を確保)にカットし、両面用に45mm長さにカットする。スポット溶接機を使用して、裸箔に沿ってNiのタブをちょうど45mm手前で取り付ける(約10箇所以上)。
2.アノードを、43.45mm×100mmにカットする。スポット溶接機を使用して、Niのタブをちょうど50mm手前で取り付ける(約10箇所以上)。
3.付着させた保護層を上にして保護されたアノードを敷き、セパレータ(ポリプロピレン;43.45mm×105mm)を保護されたアノードの全ての上にタブの約1mmを露出させて配置する。
4.カソードを、アノードとの関係で上下をセンタリングするセパレータ上に配置する。カソードの裸箔を、Liのタブを付けていない端部上に約1mm重なることを確実にする。
5.セパレータを、カソードの底部および折り目まで折り曲げる。アノードと同じ操作を行う。
6.上部にすべて一緒にテープで束ね、次いで、タブをスポット溶接機に取り付けるようにタブをより短い長さに切る。
【0151】
第1の電気化学電池の構成を説明する図を図8に示す。
図9は、保護層なしのリチウムアノードを含む例示的な電気化学電池(対照)、およびエアロゾル沈着法によりアノード上に付着および形成された多孔性保護層を含む例示的な試料の初期インピーダンスを示す。上記多孔性保護層は、Li24/Al/PE(70/20/10体積%)を含んだ。対照電池は、5.52±0.44Ωの平均初期インピーダンスを有した。多孔性保護層を含む電気化学電池は、1.99±0.268Ωの平均初期インピーダンスを有した。初期インピーダンスは1kHzで測定した。
【0152】
図10は、大容量のカソード中心電池に対するの初期電池インピーダンスを示す。対照電池は、7.52±1.433Ωの平均初期インピーダンスを有した。(前述のように)Li24を含む多孔性保護層を含む電気化学電池は、0.75±0.081Ωの平均初期インピーダンスを有した。(前述のように)Alを含む多孔性保護層を含む電気化学電池は、1.04±0.42Ωの平均初期インピーダンスを有した。
【0153】
どちらの場合も、上記電池の初期インピーダンスへの保護層の影響は非常に大きかった。バイセルに対して、多孔性保護層を含む電気化学電池は、対照の2.5倍の初期インピーダンスの減少を示した一方、カソード中心電池において、多孔性保護層を含む電気化学電池は、対照と比較して、Alを含む保護層に対して7倍の減少を示し、Li24を含む保護層に対して一桁の減少を示した。
【0154】
サイクル試験データ
図11および図12は、多孔性保護層を含まない以外は同一のLFPカソード電気化学電池と比較した、本明細書中に記載の多孔性保護層を含む液体電解質を有するリチウムリン酸鉄カソード電気化学電池の充電/放電サイクル試験性能を示す。図11は、保護層なしの対照電池を比較して、(前述のように)リチウムアノード上にエアロゾル沈着法により付着させるLi24/Α1/PE多孔性保護層を含むバイセルの放電容量(mAh)を示す。多孔性保護層を含む電気化学電池は、対照電気化学電池と比較して(例えば、放電容量の著しい変化なしに500充電/放電サイクル越える)電池サイクル試験寿命におけるかなりの増加を示した。
【0155】
図12は、LiNO電解質添加剤(電解質の総重量の4重量%未満)の存在下または非存在下で、Li24、Α1、またはそれらの組み合わせを含む多孔性保護層を含む液体電解質を有するカソード中心電気化学電池の放電容量(mAh)を示す。多孔性保護層を含む電気化学電池は、対照電気化学電池(例えば、200サイクル未満)と比較して、電池サイクル試験寿命におけるかなりの増加(例えば、200~400サイクル)を示した。理論に束縛されるものではないが、電解質添加物を組み込むことによって、サイクル性能および保護層の多孔性に関して相乗効果を示した。
【0156】
図15Aには、等しい体積%のΑ1、シリカ、およびリチウムビス(オキサレート)ボレートを含有する多孔性保護層を含むカソード中心電気化学電池の放電容量(mAh)を示す。この多孔性保護層を含む液体電解質を有する電気化学電池は、多孔性保護層を含まない(すべての他の要因は等しい)対照電気化学電池(例えば、約150サイクル)と比較して、電池サイクル試験寿命をかなり増大すること(例えば、200~300サイクル)を示した。
【0157】
図15Bには、等しい体積%の5μmΑ1および0.5μmΑ1を含有する多孔性保護層を含むカソード中心電気化学電池の放電容量(mAh)を示す。この多孔性保護層を含む液体電解質を有する電気化学電池は、多孔性保護層を含まない(すべての他の要因は等しい)対照電気化学電池(例えば、約300サイクル)と比較して、電池サイクル試験寿命をかなり増大すること(例えば、350~400サイクル)を示した。
【0158】
図15Cには、25μmの厚さのリチウム層上に付着させたLi22SiP18を含有する多孔性保護層を含むカソード中心電気化学電池の放電容量(mAh)を示す。
【0159】
図15Dには、等しい体積%のLi22SiP18およびΑ1を含有する多孔性保護層を含むカソード中心電気化学電池の放電容量(mAh)を示す。この多孔性保護層を含む液体電解質を有する電気化学電池は、Li22SiP18のみを含有する多孔性保護層を含む電気化学電池(例えば、200~250サイクル)と比較して、電池サイクル試験寿命を増大すること(例えば、250~300サイクル)を示した。
【0160】
表面粗さ
図13A図13Dには、前述のように、リチウム(第1の層)上にエアロゾル沈着法によって付着させたLi24/Α1層(第2の層)に対する形状測定データを示す。標準ノズルを用いてコーティングされた試料は、11.2μmのRz値を有した。ラバルノズルを用いてコーティングされた試料は、16.2μmのRz値を有した。
【0161】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書中に記載および例示されたが、当業者は、機能を実行し、および/または結果および/または前述の1つ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に予測し、そのような変形および/または改良はそれぞれ、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的に、当業者は、本明細書中に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であることを意味することを容易に理解し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、そのために本発明の教示が用いられる特定の用途に依存することを容易に理解する。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書中に記載された本発明のいくらかの実施形態に対する多くの同等物を認識し、または確認することができる。従って、前述の実施形態は、例示のためだけに示され、かつ添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内で、本発明は、具体的に説明され、特許請求の範囲に記載された以外の方法で実施することができると理解されるべきである。本発明は、本明細書中に記載された、個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関する。また、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しない場合には、本発明の範囲内に包含されている。
【0162】
すべての定義は、本明細書中で定義され、使用されるように、辞書の定義、参照により組み込まれた文献における定義、および/または定義された用語の通常の意味を管理すると解されるべきである。
【0163】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、不定冠詞「a」および「an」は、明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると解されるべきである。
【0164】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、句「および/または」は、結合した要素、即ち、ある場合には結合して存在し、他方で分離して存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると解されるべきである。明らかに反対に示されない限り、具体的に識別されたそれらの要素に関連するかまたは関連しないかを、「および/または」の文節によって具体的に識別された要素以外に、他の要素が任意に存在してもよい。従って、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」は、「~を含む」などのオープンエンドの語と合わせて使用される場合、1つの実施形態において、BなしのA(任意にB以外の要素を含む);別の実施形態において、AなしのB(任意にA以外の要素を含む);更に別の実施形態において、AおよびBの両方(任意に他の要素を含む);などを意味する。
【0165】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、「または」は、上記定義した「および/または」と同じ意味を有すると解されるべきである。例えば、1つのリスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は包括的である、即ち、
多くの要素または要素のリストの、1つより多いも含む少なくとも1つ、任意に、リストに挙げられていない更なる項目を含むと解釈されるべきである。明確に示されている項目のみ、例えば、「~の内の1つのみ」または「~の内の正確に1つ」、或いは特許請求の範囲において使用される場合の「~から成る」は、多くの要素または要素のリストの内の正確に1つを含むことを意味する。一般的に、本明細書中で用いられる用語「または」は、「どちらか」、「~の内の1つ」、「~の内の1つのみ」または「~の内の正確に1つ」などの排他性を有する用語が先行する場合、排他的選択肢(即ち、「一方、または両方でない他方」)を示すものとして解釈されるのみである。特許請求の範囲において使用される場合の「本質的に~から成る」は、特許法の分野で使用されるようなその通常の意味を有する。
【0166】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、1つ以上の要素の1つのリストに関する語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト中の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると解されるべきであるが、要素のリスト内に具体的に挙げられたそれぞれの要素の少なくとも1つを必ずしも含んでおらず、かつ要素のリスト中の要素どうしの組み合わせを必ずしも除外しない。この定義はまた、語句「少なくとも1つ」が、具体的に識別されたそれらの要素に関連するかまたは関連しないかを意味する要素のリスト内で具体的に識別された要素以外に、要素が任意に存在してもよいことを可能にする。従って、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、或いは同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態において、任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、Bが存在しないA(任意にB以外の要素を含む);別の実施形態において、任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、Aが存在しないB(任意にA以外の要素を含む);更に別の実施形態において、任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、Aおよび任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、B(任意に他の要素を含む);などを意味することができる。
【0167】
また、明らかに反対に示されない限り、1つ以上の工程または行為を含む特許請求の範囲に記載された方法において、上記方法の工程または行為の順序は、上記方法の工程または行為が列挙された順序に必ずしも限定されない、と解されるべきである。
【0168】
明細書中と同様に特許請求の範囲において、このような「~を含有する(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を有する(carrying)」、「~を有する(having)」、「~を含有する(containing)」、「~を含む(involving)」、「~を含む(holding)」、「~から構成される(composed of)」などのすべての移行句は、オープンエンドである、即ち、それらに限定されないことを含むことを意味すると解される。移行句「~から成る」および「本質的に~から成る」だけは、それぞれクローズまたはセミクローズな移行句である。本明細書中に記載の本発明の任意の態様の内の2つ以上の組み合わせは、本願の開示の範囲内である。
【符号の説明】
【0169】
10 … 電極構造体
20 … 第1の層
30 … 第2の層
30’ … 第1の表面
40 … 複数の粒子
50 … 電解質層
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D