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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】可撓性継手管
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/06 20060101AFI20220330BHJP
   F16L 47/04 20060101ALI20220330BHJP
   F16L 33/00 20060101ALI20220330BHJP
   F16L 21/035 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
F16L47/06
F16L47/04
F16L33/00 B
F16L21/035
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019008784
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020118211
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2020-10-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月24,25,26日に、第50回管工機材・設備総合展(東京都立産業貿易センター 台東館)で「可撓性継手管」の製品として展示して公開しました。
(73)【特許権者】
【識別番号】594203841
【氏名又は名称】タイフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】小澤 隆治
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-180386(JP,A)
【文献】実開昭58-009590(JP,U)
【文献】特開2004-183793(JP,A)
【文献】特開2006-292028(JP,A)
【文献】特開2014-122697(JP,A)
【文献】特開2002-106770(JP,A)
【文献】特開平05-180388(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0044766(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 47/06
F16L 47/04
F16L 33/00
F16L 21/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力によって折曲げ変形可能な金属製の波形管でなる可撓管の一端部及び他端部に、相手方配管要素に接続される第1継手及び第2継手が離脱不能に各別に連結されている可撓性継手管であって、
上記第1継手が、上記相手方配管要素に具備された熱融着継手の樹脂製の受け口に挿入されてこの受け口の内周面に熱融着される外周面を備えた筒状の熱可塑性樹脂製の挿し口と上記可撓管の一端部に連結された筒状の熱可塑性樹脂製の連結口部とを一体に有し
上記可撓管の一端部と上記連結口部との連結箇所において、
可撓管を形成している波形管の一端部から延出されてこの波形管と一体に形成された直管部が、上記第1継手の連結口部に内嵌合状態で結合された金属製の筒状コアに挿入されていると共に、この筒状コアの内周面と上記直管部の外周面とに密着する水密シール用の弾性リングが、上記直管部に形成された環状の凹入溝に収容され、
筒状コアに挿入されている上記直管部の先端部に径外方向に突き出た膨出部が形成され、この膨出部が、上記筒状コアに圧入状態で外嵌合されて端拡がり形状に変形した上記連結口部のテーパ内周面と上記第1継手の連結口部に内嵌合されている上記筒状コアの端部との間に軸方向で挟まれていることを特徴とする可撓性継手管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性継手管、特に、狭い配管スペース内においても相手方配管要素との接続を熱融着などによって容易に行うことができるだけでなく、管路の引き廻しの自由度を向上させることのできる対策が講じられた可撓性継手管に関する。
【背景技術】
【0002】
導水・送水・排水などの配水管路の耐震性を向上させ得る管体として可撓性に優れたポリエチレン管が知られている。また、ポリエチレン管は、高い耐震性を発揮し得るだけでなく、耐久性や耐食性に優れ、切断加工などが容易で軽量であるために施工性にも優れていると云った多くの長所を有している。さらに、ポリエチレン管は、ポリエチレン樹脂などの樹脂製の継手との熱融着による接続が可能であるので、ポリエチレン管を採用した配管系では、ポリエチレン管と樹脂製の継手とを熱融着によって接続することが多く行われている。
【0003】
図9はポリエチレン管を採用した従来例による配管系を例示した説明図である。同図は、マンションなどの中高層建築物のパイプスペース(PS)と呼ばれる配管スペース内で立て管100と水道メータ200とを接続している配管系を示している。同図のように、この配管系では、立て管100に介在されたT形分岐継手111の横向き接続口112とT形分岐継手111よりも低位に設置された水道メータ200の横向き接続口201とが、複数個の継手113,114,115、116や複数本の直管でなる接続短管117、118,119などを用いて接続されている。また、立て管100や接続短管117~119にはポリエチレン管が採用され、T形分岐継手111や他の継手113~116にポリエチレン製の熱融着継手が採用されている。熱融着継手とは、接合面に電熱線を埋め込
んだ継手(受け口)に管(挿し口)をセットした後、コントローラから通電して電熱線を発熱させ、受け口の内周面と挿し口の外周面とを加熱溶融して融着して一体化させるという接合方式を採用した継手のことであり、EF(エレクトロフュージョン)継手とも称されている。
【0004】
一方、上記の配管系では、T形分岐継手111の横向き接続口112と水道メータ200の横向き接続口201とを管路で接続するのに、他の継手113~116などの複数個の継手類と、複数本の接続短管117~119とを使用している。また、この配管系では、T形分岐継手111の横向き接続口112と接続短管117とを熱融着継手でなる継手113を介して略水平に接続して管路を横向きに伸ばし、接続短管116と接続短管118とをエルボ形の熱融着継手でなる継手114を介して接続して管路を下向きに伸ばし、さらに、接続短管118と接続短管119とをエルボ形の熱融着継手でなる継手115を介して接続して管路を横向きに伸ばすといった施工が行われている。
【0005】
他方、先行例には、可撓性樹脂で形成された主管と分岐管とを熱融着継手を使用して接続することが示されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-45684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図9を参照して説明した従来例の配管系では、高さの異なるT形分岐継手111の横向き接続口112と水道メータ200の横向き接続口201とを接続するのに、個々に独立した配管要素である複数個の継手113~116や複数本の接続短管117~119が必要になるだけでなく、熱融着継手でなる継手113~116の融着箇所の数が多くなって熱融着に多くの手間及び時間と労力が必要になるという問題があり、この問題点は、狭い配管スペース内での作業を余儀なくされる場合に特に顕著に現れる傾向があった。また、従来例では、接続短管117~119に一定の可撓性を備える直管でなるポリエチレン管が採用されているとしても、直管でなるポリエチレン管による曲がり性能はそれほど大きくなく、狭い配管スペース内で用い得る長さのポリエチレン管では地震などの振動を吸収し得る程度に過ぎない。したがって、1本のポリエチレン管を湾曲状やループ状に曲げて施工(曲げ施工)することには無理があり、適切ではない。このため、他の配管やガスメータといった機器などの配管要素が混在する狭い配管スペース内で、それらの配管要素を迂回する管路を構成することが要求される場合に従来例に準じた配管系を採用すると、さらに多くの接続短管や多くの種類の継手類が必要になるだけでなく、管路の取り回し(引き回し)も複雑になり、熱融着にもさらに多くの手間及び時間と労力が必要になるという問題が生じる。
【0008】
また、中高層建築物の区画壁などを貫通する管路の施工にポリエチレン管を用いると、壁貫通箇所で防火区画専用の処理材をポリエチレン管に巻き付けてポリエチレン管の熱による溶融を回避させることが必要になる。そのため、管路の壁貫通箇所にポリエチレン管を用いると、防火区画専用の処理材をポリエチレン管に巻き付けることに伴う多くの手間と労力を要するという問題もあった。
【0009】
本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであり、高さだけでなく向きの異なる接続口同士を、他の配管要素が混在する狭い配管スペース内で接続する際に、継手や接続短管といった配管要素の必要数を最少限度に抑え、かつ、融着箇所の数も可及的少なく抑えることが可能であり、しかも、施工に要する手間及び時間と労力を可及的少なくすることので
きる可撓性継手管を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、中高層建築物の区画壁などを貫通する管路を施工する際に、防火区画専用の処理材を用いることの必要性を無くして多くの手間と労力を不要にすることが可能な可撓性継手管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る可撓製継手管は、人力によって折曲げ変形可能な金属製の波形管でなる可撓管の一端部及び他端部に、相手方配管要素に接続される第1継手及び第2継手が離脱不能に各別に連結されている。そして、上記第1継手が、上記相手方配管要素に具備された熱融着継手の樹脂製の受け口に挿入されてこの受け口の内周面に熱融着される外周面を備えた筒状の熱可塑性樹脂製の挿し口と上記可撓管の一端部に連結された筒状の熱可塑性樹脂製の連結口部とを一体に有し、上記可撓管の一端部と上記連結口部との連結箇所において、可撓管を形成している波形管の一端部から延出されてこの波形管と一体に形成された直管部が、上記第1継手の連結口部に内嵌合状態で結合された金属製の筒状コアに挿入されていると共に、この筒状コアの内周面と上記直管部の外周面とに密着する水密シール用の弾性リングが、上記直管部に形成された環状の凹入溝に収容され、筒状コアに挿入されている上記直管部の先端部に径外方向に突き出た膨出部が形成され、この膨出部が、上記筒状コアに圧入状態で外嵌合されて端拡がり形状に変形した上記連結口部のテーパ内周面と上記第1継手の連結口部に内嵌合されている上記筒状コアの端部との間に軸方向で挟まれている
【0012】
この発明に係る可撓性継手管は、第1継手及び第2継手が可撓管に離脱不能に連結されていることにより独立した単一の配管要素として取り扱われる。この点で、第1継手及び第2継手が可撓管にただ単に設けられている配管要素とは区別される。ここで、「第1継手及び第2継手が可撓管にただ単に設けられている」の意味は、第1継手又は第2継手と可撓管との連結構造が、ねじ合わせによる連結構造、抜き差し可能な嵌合による連結構造などのように、第1継手及び第2継手が可撓管に対して着脱可能になっている連結構造のことである。
【0013】
また、この発明に係る可撓性継手管は、可撓管として、管路が座屈による閉塞を起こすことなく湾曲状やループ状に曲げることが容易で、かつ、許容される曲げ角度の大きなものとして周知されている金属製の波形管を採用している。このため、当該可撓性継手管による管路の取り回しの自由度が格段に向上し、可撓管を所要形状に曲げることによって、可撓管の一端部及び他端部に各別に設けられている第1継手や第2継手の向きを、それらを接続する相手方配管要素の向きに応じて適切にかつ容易に定めることが可能である。したがって、高さや向きの異なる2箇所の相手方配管要素に第1継手及び第2継手を無理なく接続することが可能になる。しかも、高さや向きの異なる2箇所の相手方配管要素に第1継手及び第2継手を接続するときに、可撓管を曲げて他の配管要素を迂回させることも容易に可能になる。さらに、第1継手に、相手方配管要素である熱融着継手の受け口に熱融着される挿し口を具備させていることにより、第1継手の挿し口を相手方配管要素である熱融着継手の受け口に熱融着するだけで、第1継手と相手方配管要素とを接続することが可能である。したがって、高さや向きの異なる2箇所の相手方配管要素を接続する管路の施工に要する手間及び時間や労力を可及的少なくすることが可能になる。
【0014】
さらに、中高層建築物の区画壁などを貫通する管路を施工する際には、当該可撓性継手管の金属製の波形管でなる可撓管によってその管路を形成すると、可撓管自体が防火性を備える金属製であるために、防火区画専用の処理材を用いる必要性が無くなり、防火区画専用の処理材を用いることに伴う多くの手間と労力が不要になる。
【0015】
本発明では、上記可撓管の一端部に第1継手の上記連結口部が水密状態で回転可能に連結されていることが望ましい。本発明に係る可撓性継手管がこの構成を有していると、上記した管路の取り回しの自由度がいっそう向上する。
【0016】
本発明では、上記可撓管の一端部と第1継手の上記連結口部との連結箇所において、可撓管を形成している波形管の一端部に具備された直管部が、上記第1継手の連結口部に内嵌合状態で結合された金属製の筒状コアに挿入されていると共に、この筒状コアの内周面
と上記直管部の外周面とに摺動可能に密着する水密シール用の弾性リングが、上記直管部に形成された環状の凹入溝に収容されている。このため、弾性リングが位置ずれすることなく定位置で確実な水密シール性を発揮する。
【0017】
本発明では、上記直管部の先端部に径外方向に突き出た膨出部が形成され、この膨出部が、上記第1継手の連結口部に内嵌合されている上記筒状コアの端部に軸方向で対向していることにより、可撓管を形成している波形管の直管部に具備された膨出部が、筒状コアの端部に軸方向で係合して第1継手の連結口部からの上記直管部の脱落が確実に防止されるため、第1継手が可撓管に離脱不能に連結される。
【0018】
本発明では、上記直管部の先端部に径外方向に突き出た膨出部が形成され、この膨出部が、上記筒状コアに圧入状態で外嵌合されて端拡がり形状に変形した上記連結口部のテーパー内周面と上記第1継手の連結口部に内嵌合されている上記筒状コアの端部との間に軸方向で挟まれている。このため、筒状コアに圧入状態で外嵌合されて端拡がり形状に変形した上記連結口部のテーパー内周面と上記第1継手の連結口部に内嵌合されている上記筒状コアの端部とによって、上記膨出部が軸方向に変位することを阻止する作用を発揮するため、第1継手と可撓管とががたつきなく連結され、しかも、第1継手の連結口部からの上記直管部の脱落が確実に防止されて第1継手が可撓管に離脱不能に連結される。このことは、独立した単一の当該可撓性継手管自体の取扱性を高めることに役立つ。この作用は、熱可塑性樹脂製の連結口部のテーパー内周面が、筒状コアに圧入された連結口部が端拡がり形状に変形するのに伴って自然に形成されることによって発揮される作用である。したがって、あらかじめ連結口部の内周面をテーパー内周面に加工しておく必要がないという利点がある。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る可撓性継手管によると、高さや向きの異なる接続口同士を他の配管要素が混在する狭い配管スペース内で接続する際に、継手や接続短管といった配管要素の必要数を最少限度に抑えられ、しかも、熱融着継手の受け口と相手方配管要素の挿し口との融着箇所の数も可及的少なく抑えることが可能になる。また、中高層建築物の区画壁などを貫通する管路を施工する際に、防火区画専用の処理材を用いることの必要性を無くすることが可能である。このため、防火区画専用の処理材を用いることに伴う多くの手間と労力が不要になるという効果も奏される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る可撓性継手管の一部省略側面図である。
図2図1の可撓性継手管を曲げた状態の一例を示した一部省略側面図である。
図3図1の可撓管と第1継手との連結構造を示した部分縦断側面図である。
図4図1の可撓管と第2継手との連結構造を示した部分縦断側面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る可撓性継手管Aの一部省略側面図である。
図6図5の可撓性継手管に採用されている可撓管と第1継手との連結構造を示した部分縦断側面図である。
図7図1の可撓性継手管Aを採用した配管系を例示した説明図である。
図8図1の可撓性継手管を採用した他の配管系を例示した説明図である。
図9】従来例による配管系を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る可撓性継手管Aの一部省略側面図、図2図1の可撓性継手管Aを曲げた状態の一例を示した一部省略側面図である。
【0022】
図1の可撓性継手管Aは、可撓管10の一端部及び他端部に、相手方配管要素(不図示)に接続される第1継手20及び第2継手50が各別に離脱不能に設けられてなる。このように第1継手20及び第2継手50が可撓管10に離脱不能に連結されていると、当該可撓性継手管Aが独立した単一の配管要素として取り扱われる。この点で、第1継手及び第2継手が可撓管にただ単に設けられていて、第1継手及び第2継手が可撓管から容易に取り外すこのできる態様で可撓管に連結されている配管要素とは区別される。第1継手20及び第2継手50を可撓管10に対して離脱不能にするために採用されている具体的構成については後述する。
【0023】
可撓管10は折曲げ変形可能な金属製、具体的には、耐食性に富むステンレス製の波形管壁を備える波形管でなる。この種の波形管は、フレキシブルパイプとも称されていて、リング状の凹部と凸部が交互に並んで形成された波形管壁を持つものや、螺旋状に連続する凹部又は凸部を有する波形管壁をもつもの、などが知られている。ステンレス製の波形管壁を備える波形管によって形成された可撓管10は、当該可撓管10によって形成される管路が座屈による閉塞を起こすことなく湾曲状やループ状に人力等で曲げることが容易であり、許容される曲げ角度を大きく確保することも容易である。可撓管10の長さは、施工箇所で要求される管路の長さに応じて、たとえば10~50cm程度に定められている。中高層建築物の配管スペース内や区画壁の貫通孔に配備される水用配管に用いられる可撓性継手管Aの可撓管10では、たとえば、管壁厚さが1mm以内の波形管の山部外径が20~30mm、谷部外径が20~25mm、山部外径と谷部外径との寸法差が2~4mm程度に定まっているものが多い。長さ、管壁厚さ、波形管の山部外径、谷部外径、山部外径と谷部外径との寸法差が上記の範囲に収まっている可撓管10では、図2に例示したように、180度を超える角度に湾曲状又はループ状に曲げた状態でも、可撓管10によって形成されている管路(内部空間)が座屈して閉塞されるという事態が起こらず、また、管路の口径が縮小することもほとんどない。可撓管10の長さは上記した範囲に限定されるものではなく、必要に応じて上記範囲より長くされる場合もある。また、可撓管10の管壁厚さや山部外径、谷部外径、山部外径と谷部外径との寸法差も上記各範囲に限定されないことは勿論である。
【0024】
図3は可撓管10と第1継手20との連結構造を示した部分縦断側面図、図4は可撓管10と第2継手50との連結構造を示した部分縦断側面図である。
【0025】
図3のように、第1継手20は、筒状の挿し口21と筒状の連結口部22とを同軸上に一体に有していて、これらが熱可塑性樹脂であるポリエチレンによって一体に成形されている。この第1継手20の挿し口21は、相手方配管要素に具備された熱融着継手の樹脂製の受け口に挿入されてこの受け口の内周面に熱融着される外周面を備えている。図示していないけれども、周知のように、相手方熱融着継手の受け口には、電熱線が埋め込まれていると共に、この電熱線に通電するための電極ピンや溶融状態を検出するためのインジケータなどが備わっている。
【0026】
第1継手20の連結口部22は、金属製の筒状コア30に圧入状態で外嵌合されて端拡がり形状に変形している。筒状コア30は、連結口部22の端面に当接している鍔形部31と、外周面に形成されている鋸歯状の係合爪32とを有している。そして、筒状コア30に圧入されている連結口部22の外周面に金属製の締め輪33が装着されていて、この締め輪33によって締め付けられた連結口部22の内周面に、筒状コア30の上記係合爪32が喰い込むことによって筒状コア30が抜け止めされている。また、筒状コア30の外周面と連結口部22の内周面とは水密状態で密着している。
【0027】
可撓管10の一端部と第1継手20の連結口部22との連結箇所では、上記した筒状コア30に、可撓管10を形成している波形管の一端部から延出されてこの波形管と一体に形成された直管部11が挿入されていると共に、この筒状コア30の内周面と上記直管部11の外周面とに摺動可能に密着する水密シール用の弾性リングであるOリング40が、上記直管部11に形成された環状の凹入溝12に収容されている。凹入溝12の溝形面は直管部11の外周面でもある。この構成により、第1継手20が可撓管10に対して水密に結合されている。図例では、水密シール用のOリング40が、筒状コア30の内周面と直管部11の外周面とに1箇所で密着しているけれども、2つの水密シール用のOリング40を、筒状コア30の内周面と直管部11の外周面とに軸方向の2箇所で密着させておいてもよい。
【0028】
さらに、図3によって判るように、上記直管部11の一端側の先端部に、径外方向に突き出た膨出部13が形成され、この膨出部13が筒状コア30の端部に軸方向で対向している。具体的には、膨出部13が、上記筒状コア30に圧入状態で外嵌合されて端拡がり形状に変形した上記連結口部22のテーパー内周面23と上記第1継手の連結口部22に内嵌合されている上記筒状コアの端部35との間に軸方向で挟まれている。ここで、「連結口部22のテーパー内周面23」は、筒状コア30に圧入された熱可塑性樹脂製の連結口部22が端拡がり形状に変形するのに伴って自然に形成されることになる。したがって、あらかじめ連結口部の内周面をテーパー内周面に加工しておく必要はない。符号aは連結口部のテーパー内周面23と膨出部13との接触箇所、符号bは筒状コアの端部35と膨出部13との接触箇所を、それぞれ示している。上記のように膨出部13が連結口部22のテーパー内周面23と筒状コア30の端部35との間に軸方向で挟まれていると、テーパー内周面23と筒状コア30の端部35とによって膨出部13の軸方向変位が阻止され、第1継手20と可撓管10とががたつきなく連結されるだけでなく、第1継手20の連結口部22からの直管部11の脱落が確実に防止されて第1継手20が可撓管10に離脱不能に連結される。このことは、独立した単一の当該可撓性継手管自体の取扱性を高めることに役立つ。さらに、水密シール用のOリング40が波形管の一端部に具備された直管部11の環状の凹入溝12に収容されているために、このOリング40が位置ずれすることなく定位置で確実な水密シール性を発揮する。
【0029】
なお、第1継手20の挿し口21を相手方配管要素である受け口(不図示)に差し込んで熱融着処理を行うと、挿し口21は受け口と溶融して一体化する。
【0030】
図4のように、第2継手50は金属製のナット体によって形成されている。可撓管10の他端部と第2継手50との連結箇所では、可撓管10を形成している波形管の他端部に具備された直管部15がナット体でなる第2継手50に挿入されていると共に、直管部15の他端側の先端部を折り返すことによって形成されて径外方向に突き出た鍔形部16が第2継手50に具備されている内向きの鍔形部51に係合している。この構成により、第2継手50が可撓管10に離脱不能に連結される。
【0031】
図5は本発明の他の実施形態に係る可撓性継手管Aの一部省略側面図、図6図5の可撓性継手管Aに採用されている可撓管10と第1継手20との連結構造を示した部分縦断側面図である。
【0032】
図5に示した他の実施形態に係る可撓性継手管Aでは、可撓管10の一端部及び他端部に設けられた第1継手20及び第2継手50として、同一の構成を有する継手が採用されている。図6によって判るように、この実施形態に採用されている第1継手20は、第1継手20の連結口部22に圧入されている筒状コア30に、突出部34が設けられている。その他の点は、図3に示したものとほぼ同一であるので、同一又は相応する要素に同一符号を付すことによって説明が重複することを回避する。また、第2継手50及び可撓管10と第2継手50との連結構造は、図6で説明した可撓管10と第1継手20との連結構造と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0033】
次に、図1を参照して説明した可撓性継手管Aを採用した配管系を説明する。図7は同配管系を例示した説明図である。同図は、マンションなどの中高層建築物のパイプスペース(PS)と呼ばれる配管スペース内で立て管100と水道メータ200とを接続している配管系を示している。同図のように、この配管系では、立て管100に介在されたT形
分岐継手111の横向き接続口112と可撓性継手管Aの第1継手20とが、熱融着継手130を介して接続されている。また、第2継手50が水道メータ200の横向き接続口201に接続されている。すなわち、この配管系では、T形分岐継手111の横向き接続口112によって形成されている挿し口と、可撓性継手管Aの第1継手20に備わっている挿し口21とが熱融着継手130の受け口に挿入されて融着により一体化されている。また、第2継手50が、水道メータ200の横向き接続口201にねじ結合によって接続されている。さらに、可撓管10を曲げることによって、第1継手20や第2継手50の向きを、相手方配管要素である熱融着継手130の受け口や水道メータ200の横向き接続口201の向きに合わせている。
【0034】
図8は可撓性継手管Aを採用した他の配管系を例示している。この事例では、他の配管要素(配管、枠組み、機器など)120,121を迂回するように可撓管10を曲げて可撓性継手管Aを施工している。このように、可撓性継手管Aを用いることによって他の配管要素120,121を迂回させることも容易に可能になる。
【0035】
ところで、中高層建築物の区画壁などを貫通する管路を施工する際には、当該可撓性継手管Aの金属製の波形管でなる可撓管10によってその管路を形成することが可能であるので、そのようにすることにより、金属製の波形管でなる可撓管10自体が備える防火性が有効に利用される。したがって、防火区画専用の処理材を用いる必要性が無くなり、防火区画専用の処理材を用いることに伴う多くの手間と労力が不要になる。
【0036】
図5を参照して説明した他の実施形態に係る可撓性継手管Aについても上記に準じた施工が可能である。
【符号の説明】
【0037】
A 可撓性継手管
10 可撓管
11 直管部
12 凹入溝
13 膨出部
20 第1継手
21 挿し口
22 連結口部
25 テーパー内周面
30 筒状コア
35 筒状コアの端部
40 Oリング
50 第2継手
130 熱融着継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9