(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】電気接続構造及び電気接続方法
(51)【国際特許分類】
C23F 13/06 20060101AFI20220330BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20220330BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20220330BHJP
C23F 13/02 20060101ALI20220330BHJP
H01R 4/66 20060101ALI20220330BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20220330BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C23F13/06
E04G23/02 A
E01D22/00 A
C23F13/02 B
C23F13/02 L
H01R4/66 C
G01N27/26 351A
G01N33/38
(21)【出願番号】P 2019044026
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000211891
【氏名又は名称】株式会社ナカボーテック
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】大谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】堀越 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岩本 靖
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-041968(JP,A)
【文献】特開2008-297593(JP,A)
【文献】特開2015-145524(JP,A)
【文献】特開2003-268577(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158836(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/006539(WO,A1)
【文献】特開平06-136572(JP,A)
【文献】実開昭61-163854(JP,U)
【文献】特開2017-171948(JP,A)
【文献】特開平09-296526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/00-13/22
E04G 23/00-23/08
E01D 22/00
H01R 4/58-4/72
G01N 27/26-27/49
G01N 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材と該コンクリートの外部に設置された設置物との電気接続構造であって、
導電性の接続端子を備え、
該接続端子は、頭部と該頭部から延出し周面にネジ山を有する軸部とを有するネジ部材であり、
前記接続端子の
前記軸部の軸線方向の
先端が
、前記コンクリート中にて前記鋼材と
溶接せずに接触し、該接続端子の
前記頭部が
、該コンクリートの外部に位置し
且つ前記設置物と電気的に接続される
、電気接続構造。
【請求項2】
前記接続端子
の前記頭部に、該接続端子と前記設置物とを電気的に接続するリード線が接続されている請求項1に記載の電気接続構造。
【請求項3】
前記コンクリートに、該コンクリートの表面から前記鋼材にわたって延びる長孔が穿設され、該長孔に前記接続端子
の前記軸部が挿入されており、
前記長孔内の前記
軸部を包囲する該長孔の周壁面と該
軸部との間に、電気絶縁性のスペーサーが介在配置され、該スペーサーによって、該
軸部の少なくとも一部が該周壁面に対して非接触になされている請求項1又は2に記載の電気接続構造。
【請求項4】
前記接続端子の前記軸部における、前記長孔の前記周壁面に対して非接触になされている部位が、該長孔内の該軸部の全体である請求項3に記載の電気接続構造。
【請求項5】
前記スペーサーは、軸線方向の両端が開口した中空の筒状をなし、該スペーサーの中空部に前記接続端子
の前記軸部が挿入されている請求項3
又は4に記載の電気接続構造。
【請求項6】
前記接続端子におけるコンクリート中に位置する部分の周囲に樹脂が配されている請求項1~
5の何れか1項に記載の電気接続構造。
【請求項7】
前記コンクリートの表面に、前記接続端子に一体に固定された電気絶縁性のワッシャーが配されている請求項1~6の何れか1項に記載の電気接続構造。
【請求項8】
前記コンクリートの表面に、前記接続端子における該コンクリートの外部に位置する部分を覆うカバー体が配されている請求項1~7の何れか1項に記載の電気接続構造。
【請求項9】
前記接続端子を複数備える請求項1~8の何れか1項に記載の電気接続構造。
【請求項10】
コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材と該コンクリートの外部に設置された設置物との電気接続方法であって、
前記コンクリートに、該コンクリートの表面から前記鋼材にわたって延びる長孔を穿設する工程と、
導電性の接続端子
として、頭部と該頭部から延出し周面にネジ山を有する軸部とを有するネジ部材を用い、
前記接続端子
の前記軸部を前記長孔に挿入し、該
軸部の軸線方向の
先端が前記鋼材に
溶接せずに接触するとともに、該接続端子の
前記頭部が前記コンクリートの外部に位置するように、該接続端子を該コンクリートに設置する工程とを有する
、電気接続方法。
【請求項11】
更に、前記接続端子
の前記頭部に、該接続端子と前記設置物とを電気的に接続するリード線を接続する工程を有する請求項10に記載の電気接続方法。
【請求項12】
前記長孔に前記接続端子を挿入する前に、中空の筒状に形成された電気絶縁性のスペーサーを、該軸線方向の一端を挿入方向先端として該長孔に挿入し、しかる後、該長孔内の該スペーサーの中空部に該接続端子を挿入する請求項10又は11に記載の電気接続方法。
【請求項13】
前記長孔に前記スペーサーを挿入する前に、該長孔内に樹脂を充填する請求項12に記載の電気接続方法。
【請求項14】
前記長孔に前記接続端子を挿入する前に、該接続端子における該長孔内に設置される部分の表面に樹脂を塗布する請求項10~13の何れか1項に記載の電気接続方法。
【請求項15】
前記接続端子を前記長孔に挿入する前に、該接続端子の軸線方向の任意の位置で前記軸部を該軸線方向と直交する方向に切断し、その切断面を前記鋼材との接触部分として用いる請求項10~14の何れか1項に記載の電気接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート中に埋設された鋼材等の鋼材と、該コンクリートの外部に設置された電位測定装置、電源、陽極等の設置物との電気接続構造及び電気接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート中に鋼材が埋設されたコンクリート構造物において、酸素、水、塩化物イオン等の内部浸透によって、鋼材が腐食することが大きな問題となっている。コンクリート中の鋼材の腐食状況の把握及び防食効果の確認の方法として、電気化学測定が従来採用されている。電気化学測定には、電位測定法、分極抵抗法、電気化学インピーダンス法などがあり、いずれの方法も、コンクリート中の鋼材とコンクリートの外部に設置された測定器とを電気接続して、該測定器により該鋼材の電気化学特性を測定する。また、コンクリート中の鋼材の腐食防止手段の1つとして、電気化学的防食方法が採用されている。電気化学的防食方法は、鋼材の腐食に関わるコンクリート構造物の劣化を電気化学的反応の利用によって防止する方法である。電気化学的防食方法には、電気防食方法、塩化物除去方法、再アルカリ化方法、電着方法などがあり、いずれの方法も、コンクリート中の鋼材と別に設けた陽極とを電気接続して、該陽極から該鋼材に直流電流を供給する。斯かる鋼材と陽極との電気接続には様々な形態があり、両者をリード線で電気接続する形態の他、例えば、陽極が犠牲陽極の場合は、リード線を使用せずに鋼材と犠牲陽極とを直接的に電気接続する形態が採用される場合がある。
【0003】
コンクリート中の鋼材と外部電源との電気接続に関し、特許文献1には、鋼材と外部電源とを電気接続するリード線の接続端子として、タッピングネジなどのネジ部材を用いることが記載されている。特許文献1記載技術において、接続端子としてのネジ部材は、該ネジ部材の側面のネジ山がコンクリート中の鋼材の表面と接触するように、コンクリートに設置され、該ネジ部材の頭部にリード線が接続される。また、このネジ部材の頭部は、コンクリートの表面に穿設された埋設孔に収容され、且つ該埋設孔内に充填材が充填される。したがって、特許文献1記載技術では、ネジ部材はコンクリートの外部に露出せず、リード線だけがコンクリートの表面から延出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載技術は、コンクリートの表面からその内部の鋼材表面にわたる部分のコンクリートに、接続端子としてのネジ部材の全体を埋設するため、ネジ部材の埋設作業に多大な手間を要する、既設のコンクリートに比較的大きな孔を設けることからコンクリート構造物に与える損傷度が比較的大きい、といった問題がある。また、特許文献1記載技術では、コンクリートに穿設された孔にネジ部材を挿入し、該ネジ部材の周面のネジ山をコンクリート中の鋼材の表面に接触させるところ、このネジ山と鋼材表面との接触を可能にする、孔の位置決めには、例えばネジ部材の挿入方向先端を鋼材表面に接触させる場合に比べて高い精度が要求され、また、そのような高い精度を確保するためにコンクリートに穿設する孔を大きくせざるを得ない場合もあり、この点でも、ネジ部材の埋設作業に多大な手間を要する。更に、特許文献1記載技術では、ネジ部材とリード線との接続部がコンクリート中に埋設されていて露出していないため、例えば該接続部に問題が生じた場合、該接続部の補修作業に先立って、該接続部を露出させる作業が必要であり、接続作業のみならず、その後のメンテナンス作業にも多大な手間を要する。
【0006】
本発明の課題は、コンクリート中に埋設された鋼材と該コンクリートの外部に設置された設置物とを電気的に接続する場合に、該コンクリートの損傷を最小限に抑えつつ、その接続作業を効率良く行うことができ、メンテナンス作業も容易に行うことができる電気接続構造及び電気接続方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材と該コンクリートの外部に設置された設置物との電気接続構造であって、導電性の接続端子を備え、該接続端子の軸線方向の一端が前記コンクリート中にて前記鋼材と接触し、該接続端子の軸線方向の他端側が該コンクリートの外部に位置し、その接続端子におけるコンクリートの外部に位置する部分が、前記設置物と電気的に接続される電気接続構造である。
【0008】
また本発明は、コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材と該コンクリートの外部に設置された設置物との電気接続方法であって、前記コンクリートに、該コンクリートの表面から前記鋼材にわたって延びる長孔を穿設する工程と、導電性の接続端子を前記長孔に挿入し、該接続端子の軸線方向の一端が前記鋼材に接触するとともに、該接続端子の軸線方向の他端側が前記コンクリートの外部に位置するように、該接続端子を該コンクリートに設置する工程とを有する電気接続方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気接続構造及び電気接続方法によれば、コンクリート中に埋設された鋼材と該コンクリートの外部に設置された設置物とを電気的に接続する場合に、該コンクリートの損傷を最小限に抑えつつ、その接続作業を効率良く行うことができ、メンテナンス作業も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の電気接続構造の一実施形態の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のI-I線断面、すなわちコンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材の軸線方向と直交する方向に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の電気接続構造の他の実施形態の
図2相当図である。
【
図4】
図4は、本発明の電気接続構造の更に他の実施形態の
図2相当図である。
【
図5】
図5は、本発明の電気接続構造の更に他の実施形態の概略構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の電気接続構造の更に他の実施形態の概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の電気接続構造の更に他の実施形態の概略構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の電気接続方法の一実施態様の説明図であり、
図8(a)は、コンクリート構造物に長孔を穿設する工程を示す図、
図8(b)は、長孔に接続端子(ネジ部材)を設置する工程を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の電気接続方法の他の実施態様の説明図であり、
図9(a)は、コンクリート構造物に穿設された長孔に樹脂を充填する工程を示す図、
図9(b)は、樹脂が充填された長孔にスペーサー及び接続端子(ネジ部材)を設置する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0012】
図1及び
図2には、本発明の電気接続構造の一実施形態である電気接続構造1Aが示されている。電気接続構造1Aは、コンクリート構造物90のコンクリート91中に埋設された鋼材92と、コンクリート91の外部に設置された設置物100とが電気的に接続された構造を有する。コンクリート構造物90は、コンクリート91と鋼材92とを含んで構成される。コンクリート構造物90は、典型的には鉄筋コンクリート構造物であり、その場合の鋼材92は鉄筋である。コンクリート構造物90は、例えば、橋、橋桁、橋脚、ボックスカルバート、擁壁、桟橋、護岸等であり得る。
【0013】
設置物100は、鋼材92とリード線3を介して電気接続し得るものであればよく、その種類や構成は特に制限されない。設置物100の具体例として、鋼材92の電気化学特性の測定に利用されるものと、鋼材92の電気防食に利用されるものとが挙げられる。すなわち電気接続構造1Aの用途として、コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材の電気化学特性の測定又は電気防食が挙げられる。
図1に示す形態の設置物100は前者であり、より具体的には電位測定装置であり、鋼材92の電位を測定してその腐食状況の把握や防食効果の確認等を行うのに利用される。
図1中の符号110は、電位測定の基準となる基準電極である。基準電極110は、コンクリート91の表面91S上に設置され、リード線3を介して設置物100(電気測定装置)と電気的に接続されている。基準電極110としては、この種の基準電極として従来使用されているものを特に制限なく用いることができる。
【0014】
電気防食方法には、外部電源方式と流電陽極方式とがある。外部電源方式は、コンクリート構造物中の鋼材を陰極とし、直流電源を用いて、別に設置した電気防食用電極から該陰極に直流電流を供給することにより該陰極の電位を卑方向に変化させ防食する方式である。電気接続構造1Aが外部電源方式の電気防食に利用される場合、設置物100は電源(直流電源)であり得る。一方、流電陽極方式は、コンクリート構造物中の鋼材に対して電気化学的に卑な電位を有する金属を流電陽極とし、該鋼材と該流電陽極との電位差を利用して両者の間に電池を構成させて該鋼材に直流電流を供給する方式である。電気接続構造1Aが流電陽極方式に利用される場合、設置物100は陽極であり得る。本発明の電気接続構造の電気防食用途の実施形態については後で説明する。
【0015】
電気接続構造1Aにおいては、接続端子2はネジ部材20であり、
図2に示すように、頭部21と、該頭部21から一方向に延出し、周面にネジ山23を有する軸部22とを有する。頭部21は、軸部22よりも、ネジ部材20の軸線方向(長手方向)と直交する方向の差し渡し長さ(直径)が長い。なお、図中符号Xで示す方向は、接続端子2(ネジ部材20)の軸線方向であり、通常は接続端子2(ネジ部材20)の長手方向でもある。ネジ部材20としては、導電性を有することを前提として、他の用途でネジ部材として利用されているものを特に制限無く用いることができ、例えば、タッピングネジ、木ネジ、ネジ、ボルト類を例示できる。ここに例示したネジ部材は何れも金属製が好ましい。
【0016】
接続端子2は、
図2に示すように、軸線方向Xの一端2aが、コンクリート91中にて鋼材92と接触し、軸線方向Xの他端側(すなわち接続端子2の軸線方向Xの他端2b及びその近傍)が、コンクリート91の外部に位置している。すなわち接続端子2において、コンクリート91中に位置しているのは、軸線方向Xの一端2a側の一部のみである。接続端子2は、鋼材92の表面からコンクリート91の表面91Sに向かって真っすぐに延び、更に表面91Sから外方に突出しており、接続端子2全体として直線状である。
【0017】
電気接続構造1Aにおいては、接続端子2がネジ部材20であり、
図2に示すように、ネジ部材20の軸部22の軸線方向Xの先端が鋼材92と接触し、ネジ部材20の頭部21がコンクリート91の外部に位置している。頭部21のみならず、軸部22の頭部21寄りの部分もコンクリート91の外部に位置している。
【0018】
外部に位置する部分には、接続端子2と設置物100とを電気的に接続するリード線3が接続されている。接続端子2とリード線3との接続方法は特に制限されず、従来公知の方法を適宜採用することができる。例えば、図示の形態のように、接続端子2にリード線3を巻き付け、その接続端子2におけるリード線3の巻き付け部分を、熱硬化性樹脂等の樹脂で被覆する方法が挙げられる。
【0019】
接続端子2の軸線方向Xの全長に対する、コンクリート91の外部に位置する部分の割合は特に制限されないが、接続端子2のコンクリートに対する固定安定性、リード線3の接続安定性等の観点から、好ましくは1~50%、より好ましくは10~20%である。
【0020】
以上の構成を有する電気接続構造1Aによれば、コンクリート構造物90を構成するコンクリート91の損傷を最小限に抑えつつ、コンクリート91中の鋼材92と外部に設置された設置物100との電気接続作業を効率良く行うことができ、メンテナンス作業も容易に行うことができる。
【0021】
すなわち、電気接続構造1Aによれば、接続端子2の一部のみがコンクリート中に設置されるので、特許文献1に記載の如くに、接続端子2の全体がコンクリート中に設置される形態に比して、接続端子2の設置作業の負担が軽減されるとともに、その設置作業に伴う既設コンクリートの損傷を最小限に抑えることができる。特に、接続端子2としてネジ部材20を用いた場合に、特許文献1に記載の如くに、ネジ部材20の頭部21をコンクリート中に埋設するとなると、コンクリートに頭部21が収容可能な比較的大きな孔を設ける必要があるため、コンクリートの損傷度合いが大きくなってしまうが、電気接続構造1Aによれば、
図2に示すように、頭部21に比して小径の軸部22を先端側の一部のみをコンクリート中に埋設すればよく、そうすることでコンクリートに穿設する孔が頭部21を埋設する場合の孔よりも小径となるので、コンクリートの損傷を最小限とすることができる。
【0022】
また、特許文献1に記載の如くに、接続端子の軸線方向をコンクリート中の鋼材の接線方向に一致させて該接続端子の周面(ネジ部材のネジ山)を該鋼材の表面に接触させるとなると、接続端子を設置する際の位置決めに高い精度が要求され、接続端子の設置作業に多大な手間を要する。これに対し、電気接続構造1Aによれば、接続端子2の一端(ネジ部材20の軸部22の先端)2aがコンクリート91中の鋼材92と接触しさえすればよく、該一端2aは鋼材92の表面のどこに接触しても構わないので、接続端子2の位置決め精度はある程度粗くてもよく、そのため、接続端子2の設置作業を効率良く行うことができる。
【0023】
また、特許文献1に記載の如くに、接続端子とリード線との接続部がコンクリート中に埋設されコンクリートの外部に位置していないと、例えば、該接続部からリード線が外れる、該接続部又はその近傍でリード線が損傷するなどして補修作業が必要となった場合に、その補修作業に先立って、該接続部の周辺のコンクリートや充填材などを取り除いて該接続部を露出させる作業が必要となり、メンテナンス作業に多大な手間を要する。これに対し、電気接続構造1Aによれば、接続端子2とリード線3との接続部がコンクリート構造物の外部に位置しているので、該接続部の露出作業は不要であり、メンテナンス作業が容易である。
【0024】
なお、前述したように、接続端子2における鋼材92との接触部分を軸線方向Xの一端(ネジ部材20の軸部22の先端)2aとすることによって、接続端子2を設置する際の位置決め精度のレベル低下に伴う設置作業の効率向上というメリットが得られる反面、該一端2aの面積は通常かなり小さいことから、接続端子2と鋼材92との接触面積が低下して両者の導通安定性が低下するというデメリットが懸念される。しかしながらこのデメリットは、接続端子2の一端2aの面積がある程度大きくなるように、該一端2aの形状を工夫することで解消できる。例えば
図2に示す形態では、接続端子2の一端2a側(ネジ部材20の軸部22の先端側)は、軸線方向Xの内方から外方に向かうに従って径(差し渡し長さ)が漸次縮小する先細り形状をなしているところ、この先細り部分あるいはその近傍など、軸線方向Xの任意の位置で接続端子2を軸線方向Xと直交する方向に切断して一端2aを新たに形成すればよい。こうして形成された新たな接続端子2の一端2aの面積、すなわち接続端子2の切断面の面積は、切断前の接続端子2の一端2aの面積よりも大きいので、この切断面を鋼材92との接触部分として用いることで、接続端子2と鋼材92との導通が一層安定し得る。
【0025】
尤も、電気接続構造1Aが鋼材92の電気化学特性(例えば自然電位)の測定に利用される場合、接続端子2と鋼材92との間を流れる電流は、電気接続構造1Aが鋼材92の電気防食に利用される場合に比して小さくても構わないので、前記のように鋼材92と接続端子2との接触面積を積極的に増加させる必要はない場合が多い。斯かる点を考慮すると、本発明の電気接続構造は、コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材の電気化学特性の測定用途に特に有用であると言える。
【0026】
電気接続構造1Aにおいては、
図1に示すように、コンクリート91の表面91Sに、接続端子2におけるコンクリート91の外部に位置する部分(図示の形態では、ネジ部材20の頭部21及びその近傍)を覆うカバー体4が配されている。カバー体4は、コンクリート91の表面91Sから立設する周壁部41と、周壁部41の上端に着脱自在に係合される蓋部42とを含んで構成されている。カバー体4の周壁部41の下端部は、ビス、ボルトなどの固定具5によってコンクリート91の表面91Sに固定されている。接続端子2とリード線3との接続部をコンクリート91の外部に位置させると、該接続部の破損等の不都合が懸念されるが、カバー体4の採用により斯かる懸念が払拭される。カバー体4の素材は、それによって覆われる物体(接続端子2とリード線3との接続部など)を風雨などから防護し得るものが好ましく、金属、樹脂等が挙げられる。
【0027】
図3~
図7には、本発明の電気接続構造の他の実施形態が示されている。後述する実施形態については、前記実施形態(電気接続構造1A)と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施形態についての説明が適宜適用される。
【0028】
図3に示す電気接続構造1Bにおいては、コンクリート91に、その表面91Sから鋼材92にわたって延びる長孔6が穿設され、該長孔6に接続端子2の一部、より具体的には、ネジ部材20の軸部22の先端側が挿入されている。長孔6の延在方向(深さ方向)は、接続端子2の軸線方向Xと一致している。そして、長孔6内の接続端子2を包囲する該長孔6の周壁面6aと接続端子2との間に、電気絶縁性のスペーサー7が介在配置されている。長孔6の周壁面6aはコンクリート91から形成されている。
【0029】
スペーサー7は、
図3に示すように、その軸線方向(長手方向)の両端が開口した中空の筒状をなし、そのスペーサー7の中空部71に接続端子2が挿入されている。スペーサー7の軸線方向は、接続端子2の軸線方向Xと一致している。スペーサー7の外周面は長孔6の周壁面6aと接触し、スペーサー7の内周面は接続端子2と接触している。スペーサー7の外周面は凹凸を有している。スペーサー7の素材としては、電気絶縁性を有することに加えて撥水性を有するものが好ましい。スペーサー7が撥水性を有することで、コンクリート91から接続端子2への水分移行が効果的に防止され、鋼材92と接続端子2との導通安定性が一層向上し得る。スペーサー7の素材として好ましいものとして、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を例示できる。
【0030】
電気接続構造1Bにおいては、スペーサー7によって、接続端子2の少なくとも一部が長孔6の周壁面6aに対して非接触になされている。長孔6は、典型的には、コンクリート91の表面91Sから鋼材92にわたって直線状に延在し、且つその延在方向(深さ方向)の全長にわたって該延在方向と直交する方向の長さ(径)が略一定であるところ、そのような典型的な長孔6であれば、
図3に示すように、スペーサー7によって接続端子2の全体が長孔6の周壁面6aに対して非接触となる。
【0031】
電気接続構造1Bによれば、前述した電気接続構造1Aと同様の作用効果に加えて更に別の効果が奏される。この別の効果は、主としてスペーサー7の採用によるものである。すなわち、スペーサー7の採用によって接続端子2が長孔6の周壁面6aに対して非接触となることで、接続端子2と周壁面6aを形成するコンクリート91との導通が抑制ないし阻害されるので、特に鋼材92の電気化学特性を測定する場合において、その測定値に接続端子2自体の電気化学的な値が取り込まれる不都合が防止され、鋼材92についての真の測定値を安定して得ることが可能となる。つまり、スペーサー7の採用によって、接続端子2は、コンクリート91中の鋼材92に対する導通確保と、コンクリート91に対する非接触とを兼ね備えることができる。したがって、電気接続構造1Bによれば、鋼材92に対する腐食状態又は防食状態の評価測定を一層正確に行うことができる。電気接続構造1Bの斯かる測定精度の向上効果は、電気化学的測定に適用された場合のみならず、例えば、電気化学的防食工法の防食電流通電用の排流端子、防食効果確認用の測定端子などに適用された場合にも奏され得る。
【0032】
また、スペーサー7の採用による、前記の測定精度の向上効果以外の他の作用効果としては、接続端子2の設置作業の容易化、接続端子2のコンクリート構造物90への固定性の向上などが挙げられる。すなわち、電気接続構造1Bにおける接続端子2の設置作業は、後述するように、コンクリート91に長孔6を穿設し、該長孔6にスペーサー7を挿入した後、該スペーサー7の中空部71に接続端子2を挿入するだけであり、このような比較的少ない工数で設置が完了し、しかも、接続端子2がスペーサー7の中空部71に挿入されることで、スペーサー7は接続端子2と密着しつつ拡開されて長孔6の周壁面6aに圧着されるので、接続端子2のコンクリート91への固定がより強固なものとなる。
【0033】
前述したスペーサー7による作用効果をより確実に奏させるようにする観点、例えば、接続端子2の全体が長孔6の周壁面6aに対して非接触となるようにする観点から、スペーサー7の軸線方向(長手方向)の長さ7L(
図3参照)は、長孔6の深さ6L(
図3参照)に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上であり、100%すなわち長孔6の周壁面6aの全域がスペーサー7で被覆されていてもよい。長孔6の深さ6Lは、典型的には、鋼材92の表面とこれを覆うコンクリート91の表面91Sまでの最短距離(いわゆるかぶり厚さ)に相当する。
【0034】
図4に示す電気接続構造1Cは、前述した電気接続構造1Bと同様の構成を有し、更に、長孔6内に樹脂8が充填されている。樹脂8は、少なくとも、接続端子2と鋼材92との接触部分に存在し、更には、接続端子2とスペーサー7との間及び/又はスペーサー7と長孔6の周壁面6aとの間にも存在し得る。樹脂8は、後述するように、長孔6にスペーサー7を挿入するのに先立って長孔6内に充填されたものである。樹脂8によって、コンクリート91から接続端子2への水分移行が効果的に防止され、鋼材92と接続端子2との導通安定性が一層向上し得る。樹脂8としては、撥水性のものが好ましく、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0035】
また、電気接続構造1Cにおいては、
図4に示すように、コンクリート91の表面91Sに、接続端子2に一体に固定された電気絶縁性のワッシャー9が配されている。
図4に示す形態では、ワッシャー9は扁平であり、平面視における中央部に被固定部材(接続端子2)が挿入される貫通孔9aを有し、該貫通孔9aに接続端子2(ネジ部材20の軸部22)が挿入されている。ワッシャー9の採用により、接続端子2のコンクリート91への固定がより強固なものとなる。また、ワッシャー9の採用により、接続端子2とリード線3との接続部やリード線3がコンクリート91と接触する不都合が防止され、特に電気化学測定用途において測定精度の向上が期待できる。更に、ワッシャー9の採用により止水効果が向上し、コンクリート91の表面91Sにおける長孔6の開口端からの水分の流入が効果的に防止されるので、接続端子2と鋼材92との接触部の腐食の防止が図られる。ワッシャー9は状況に応じて複数枚を重ねて配置することもでき、これによりワッシャー9の採用による効果がより一層向上し得る。ワッシャー9の素材としては、電気絶縁性を有することを前提として、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0036】
図5に示す電気接続構造1Dは、接続端子2を複数、具体的には2個備えている。複数の接続端子2は互いに同様に構成され設置されている。このように接続端子2を複数具備することによるメリットとして、例えば、複数の接続端子2の一部に不具合が発生しても、残りの接続端子2が正常である可能性が確保されるため、鋼材92と接続端子2との導通が確保されやすい点が挙げられる。また例えば、電気接続構造1Dのメンテナンス作業の一環として鋼材92と接続端子2との導通状態を検査する場合に、1個の接続端子2による測定値と他の1個の接続端子2による測定値とを比較することが可能となり、導通状態の良否を容易に判定することができる。したがって、電気接続構造1Dが接続端子2を複数具備することにより、鋼材92と接続端子2との導通が一層安定するとともに、電気接続構造1Dのメンテナンスに要する費用の低廉化を図ることができる。
【0037】
接続端子2を複数具備する電気接続構造1Dにおいて、隣り合う2個の接続端子2の間隔W(
図5参照)は、特に制限されず任意に設定できるが、鋼材92と接続端子2との導通状態の検査を精度良く実施する等の観点から、間隔Wは比較的短く、複数の接続端子2どうしは互いに干渉しない範囲で近接することが好ましい。
【0038】
前述した電気接続構造1A及び1Dは、コンクリート中の鋼材の電気化学特性の測定用であったが、後述する電気接続構造1E及び1Fは、コンクリート中の鋼材の電気防食用である。
【0039】
図6に示す電気接続構造1Eは、流電陽極方式の電気防食用であり、コンクリート91中の鋼材92と接続端子2を介して電気的に接続される、コンクリート外部の設置物は、流電陽極(犠牲陽極)100Aである。流電陽極100Aは平板状をなし、コンクリート91の表面91S上に配置されている。流電陽極100Aと表面91Sとの間にはバックフィル111が介在配置されている。バックフィル111は、流電陽極100Aの接地抵抗の低下や電気化学的特性の向上等を目的として配置されるもので、典型的には、電解液とこれを保持する保持材とを含んで構成されている。流電陽極100A及びバックフィル111としては、流電陽極方式の電気防食で通常用いられるものを特に制限無く用いることができる。電気接続構造1Eでは、接続端子2と流電陽極100A(コンクリート外部の設置物)とが、リード線を介さずに電気的に接続されている。具体的には
図6に示すように、流電陽極100A及びバックフィル111には接続端子2の挿入孔(図示せず)が穿設されており、該挿入孔に接続端子2が挿入されることで、該挿入孔内の接続端子2を包囲する該挿入孔の周壁面と接続端子2とが接触し、これによって、接続端子2におけるコンクリート91の外部に位置する部分と流電陽極100Aとがリード線無しで電気的に接続されている。
【0040】
図7に示す電気接続構造1Fは、外部電源方式の電気防食用であり、コンクリート91中の鋼材92と接続端子2を介して電気的に接続される、コンクリート外部の設置物は、被防食体である鋼材92に電流を流す外部電源(例えば直流電源装置)100Bである。コンクリート91中における鋼材92の近傍には複数(3個)の外部電源用電極112が配され、各電極112の周囲には充填材113が配されている。電極112及び充填材113としては、外部電源方式の電気防食で通常用いられるものを特に制限無く用いることができる。複数の電極112は、それぞれ、リード線3を介して外部電源100Bのプラス極に電気的に接続され、鋼材92は、接続端子2及びリード線3を介して外部電源100Bのマイナス極に電気的に接続されている。
【0041】
次に、本発明の電気接続方法について説明する。本発明の電気接続方法は、コンクリート構造物のコンクリート中に埋設された鋼材と該コンクリートの外部に設置された設置物とを電気的に接続する方法であり、前述した本発明の電気接続構造(電気接続構造1A、1B、1C、1D、1E、1F)は、本発明の電気接続方法によって製造することができる。本発明の電気接続方法は、本発明の電気接続構造の製造方法とも言える。なお、後述する本発明の電気接続方法については、前述した本発明の電気接続構造の説明では言及しなかった点を主に説明する。本発明の電気接続方法については、特に断らない限り、前述した本発明の電気接続構造の説明が適宜適用される。
【0042】
図8には、本発明の電気接続方法の一実施態様(第1実施態様)が示されている。第1実施態様の電気接続方法では、先ず、
図8(a)に示すように、コンクリート構造物90のコンクリート91に、その表面91Sから鋼材92にわたって延びる長孔6を穿設する。
図8(a)に示す態様では、ドリルを具備する削孔手段101を用い常法に従ってコンクリート91に長孔6を穿設しているが、長孔6の穿設方法はこれに限定されない。削孔手段101としては、公知のものを特に制限無く用いることができ、例えば、電動ドリル、エアドリルが挙げられる。穿設作業は通常、削孔手段101のドリルの先端101aが鋼材92に接触するまで行われる。
【0043】
次に、長孔6を用いて、接続端子2(ネジ部材20)をコンクリート91に設置する。具体的には、接続端子2を長孔6に挿入し、該接続端子2の軸線方向Xの一端(ネジ部材20の軸部22の先端)2aが鋼材92に接触するとともに、該接続端子2の軸線方向Xの他端2b側(ネジ部材20の頭部21側)がコンクリート91の外部に位置するように、すなわち
図2に示す如くに、接続端子2をコンクリート91に設置する。
【0044】
次に、接続端子2(ネジ部材20)におけるコンクリート91の外部に位置する部分、
図8(b)に示す態様ではネジ部材20の頭部21側に、リード線3を接続する。前述したとおり、リード線3の接続方法は特に制限されず、従来公知の方法を適宜採用することができる。このようにリード線3を接続端子2に接続するとともに、リード線3における接続端子2との接続側とは反対側の端部を設置物100(
図1参照)に接続することで、鋼材92と設置物100とが接続端子2及びリード線3を介して導通する。以上の工程を有する第1実施態様の電気接続方法によれば、接続端子2におけるコンクリート91の外部に位置する部分にリード線3が接続された構成の電気接続構造、すなわち電気接続構造1A(
図2参照)、1D(
図5参照)及び1F(
図7参照)が得られる。なお、
図6に示す電気接続構造1Eの如き、リード線3不要の電気接続構造の場合は、前述したリード線3の接続工程は不要である。
【0045】
第1実施態様の電気接続方法において、長孔6に接続端子2を挿入する前に、接続端子2における長孔6内に設置される部分の表面、例えば
図2に示す電気接続構造1Aであればネジ部材20の軸部22の先端側の表面に、樹脂を塗布してもよい。これによって、コンクリート91から接続端子2への水分移行が効果的に防止され、鋼材92と接続端子2との導通安定性が一層向上し得る。接続端子2に塗布する樹脂としては、撥水性のものが好ましく、前述した樹脂8(
図4参照)と同様のものを用いることができる。
【0046】
図9には、本発明の電気接続方法の他の実施態様(第2実施態様)が示されている。第2実施態様の電気接続方法では、第1実施態様と同様の方法でコンクリート91に長孔6を穿設した後、先ず、
図9(a)に示すように、長孔6内に樹脂8を充填する。
図9(a)に示す態様では、ノズル102を用いて樹脂8を充填しているが、樹脂8の充填方法はこれに限定されず、使用する樹脂8の種類等に応じて公知の充填方法を適宜採用できる。樹脂8は、充填時においては常温常圧で流動性を有し、一定の時間が経過する、あるいは加熱することにより、硬化する性質を有する。樹脂8の充填量は特に制限されず、長孔6の一部が樹脂8で埋まる程度でもよく、長孔6の全体が樹脂8で埋まる程度でもよい。
【0047】
次に、樹脂8が充填された長孔6にスペーサー7を挿入する。スペーサー7は、その軸線方向の一端を挿入方向先端として長孔6に挿入される。スペーサー7については前述したとおりであり、中空の筒状に形成されており、電気絶縁性を有する。スペーサー7が有する中空部71は、スペーサー7の軸線方向の全長にわたって延在し、中空部71に接続端子2が挿入される。なお、目的の電気接続構造が完成した状態では、
図3及び
図4に示すように、スペーサー7の軸線方向(長手方向)の両端は開口端であり、その両開口端それぞれから接続端子2が延出するが、最終的にこのように構成されていればよく、電気接続構造の製造段階ではスペーサー7の軸線方向の両端は開口していなくてもよい。例えば、軸線方向の一端が開口端、他端が閉塞端であるスペーサー7を、該閉塞端を挿入方向先端(該開口端を挿入方向後端)として長孔6に挿入し、次に挿入する接続端子2の先端で該閉塞端を破断し開口するようにすることもできる。
【0048】
次に、長孔6内のスペーサー7の中空部71に接続端子2(ネジ部材20)を挿入する。このとき、
図9(b)に示すように、接続端子2をワッシャー9の貫通孔9aに挿通させ、その状態で接続端子2をスペーサー7の中空部71に挿入してもよい。そうすることで、
図4に示す電気接続構造1Cのように、コンクリート91の表面91Sに、接続端子2に一体に固定されたワッシャー9が配された状態が得られる。また、スペーサー7の中空部71に接続端子2を挿入する前に、接続端子2における長孔6内に設置される部分の表面に樹脂を塗布してもよく、該樹脂については前述したとおりである。
【0049】
次に、接続端子2(ネジ部材20)におけるコンクリート91の外部に位置する部分にリード線3を接続する。以上の工程を有する第2実施態様の電気接続方法によれば、電気接続構造1C(
図4)が得られる。また、第2実施態様の電気接続方法において、長孔6内への樹脂8の充填を行わず、ワッシャー9を使用しなければ、電気接続構造1B(
図3参照)が得られる。
【0050】
以上、本発明をその好ましい実施形態及び実施態様に基づき説明したが、本発明は前記実施形態及び実施態様に制限されない。一の実施形態又は実施態様が具備する構成は、他の実施形態又は実施態様が具備し得る。
例えば電気接続構造1A、1D、1E及び1Fそれぞれにおいて、接続端子2は、
図3又は
図4に示すように、コンクリート91に穿設された長孔6に挿入されていてもよく、また、該長孔6内にスペーサー7が配置されていてもよく、該長孔6内に樹脂8が充填されていてもよい。また、電気接続構造1A、1D、1E及び1Fそれぞれにおいて、コンクリート91の表面91Sに、接続端子2に一体に固定された電気絶縁性のワッシャー9(
図4参照)が配されていてもよい。
また、図示の形態では、接続端子2が鉛直方向(例えば
図2の上下方向)に沿って配置されていたが、鉛直方向に交差する方向に沿って配置されていてもよい。
また、接続端子をコンクリートに設置するに際し、コンクリートに接続端子挿入用孔を予め穿設せず、コンクリートの表面から接続端子を直接打ち込んでもよい。
【符号の説明】
【0051】
1A,1B,1C,1D,1E,1F 電気接続構造
2 接続端子
2a 接続端子の軸線方向の一端
2b 接続端子の軸線方向の他端
20 ネジ部材
21 頭部
22 軸部
23 ネジ山
3 リード線
4 カバー体
5 固定具
6 長孔
6a 長孔の周壁面
7 スペーサー
71 中空部
8 樹脂
9 ワッシャー
90 コンクリート構造物
91 コンクリート
91S コンクリートの表面
92 鋼材
100 設置物(電位測定装置)
100A 設置物(流電陽極)
100B 設置物(外部電源)