(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】被洗浄物の洗浄装置及びこれを用いた被洗浄物の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
B08B3/02 A
(21)【出願番号】P 2019176712
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000143961
【氏名又は名称】株式会社桜川ポンプ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 慎介
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-283166(JP,A)
【文献】特開昭63-110731(JP,A)
【文献】特開2005-237701(JP,A)
【文献】特開平10-113626(JP,A)
【文献】特開2005-349380(JP,A)
【文献】特開2016-073934(JP,A)
【文献】特開平06-315667(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110064614(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110013988(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109570119(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液が貯留される洗浄槽と、
前記洗浄槽内に支持され、水位低下用の排水口を有する上面が開放された有底筒状の洗浄ドラムと、
前記洗浄ドラムの上端に気密状に支持載置され、被洗浄物を収容する底面が網状に形成された筒状の洗浄かごと、
前記洗浄槽内に配置される水中ポンプと、
前記水中ポンプから供給される前記洗浄液を前記洗浄かご内の被洗浄物に向けて噴射する洗浄ノズルと、を備えた被洗浄物の洗浄装置であって、
前記洗浄ドラムの前記排水口の開口面積は、前記水中ポンプからの洗浄液の送水量が前記排水口から排水される洗浄液の排水量よりも多くなるように設定したことを特徴とする被洗浄物の洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄ノズルを、上方へ開閉可能な蓋体を備えた前記洗浄槽の前記蓋体の内壁面に配置し、前記洗浄ノズルから前記洗浄かご内の被洗浄物に向けて前記洗浄液を噴射するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄ノズルを、前記洗浄ドラム内に配置し、前記洗浄ノズルから前記洗浄かご内の被洗浄物に向けて前記洗浄液を噴射するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の被洗浄物の洗浄装置を用いた被洗浄物の洗浄方法であって、
前記被洗浄物を収容した前記洗浄かごを前記洗浄槽内の前記洗浄ドラム上にセットすると共に、前記洗浄槽内に前記洗浄液を前記水中ポンプが運転でき且つ前記洗浄かごが前記洗浄液に浸からない量だけ貯留する工程と、
前記水中ポンプを運転して前記洗浄ノズルから前記洗浄かご内の被洗浄物に向って洗浄液を噴射し、前記洗浄かご内の被洗浄物を気中洗浄する工程と、
前記洗浄ノズルから噴射される前記洗浄液を前記洗浄ドラム内及び前記洗浄かご内に順次溜めて行き、前記洗浄かご内の被洗浄物を前記洗浄液に完全に浸漬し、前記洗浄ノズルからの前記洗浄液の噴射により発生する水流によって前記洗浄かご内の被洗浄物を液中洗浄する工程と、
前記水中ポンプの運転を停止し、前記洗浄ドラムの排水口から前記洗浄ドラム内及び前記洗浄かご内の前記洗浄液を前記洗浄槽内に排水して前記洗浄かご内の被洗浄物を水切りする工程と、を含むことを特徴とする被洗浄物の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建設機械の部品、自動車等の車両部品、各種工作機械の部品、歯車やネジ等の機械加工された部品、航空機の部品等の被洗浄物を洗浄液により洗浄する被洗浄物の洗浄装置及びこれを用いた被洗浄物の洗浄方法に係り、特に、被洗浄物の気中洗浄と液中洗浄を2段階に亘って自動的に行えるようにした被洗浄物の洗浄装置及びこれを用いた被洗浄物の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両部品や各種工作機械の部品等の被洗浄物の洗浄には、洗浄装置を用いて被洗浄物をノズルから噴射される洗浄液により気中で洗浄する気中洗浄方式が主に採用されている(特許文献1~6参照)。
【0003】
即ち、特許文献1~6に記載された被洗浄物の洗浄装置は、車両部品等の被洗浄物を金属製の洗浄かごに収容し、洗浄かごの周囲に配設したノズルから洗浄かご内の被洗浄物に向って洗浄液を噴射し、被洗浄物を気中で洗浄するようにしたものであり、気中洗浄により被洗浄物に付着した油分や固形物等の汚れを落とすようにしている。
【0004】
一方、被洗浄物の洗浄には、上述した気中洗浄方法の他に、洗浄装置を用いて被洗浄物を洗浄液に浸漬した状態で洗浄する液中洗浄方式がある(特許文献7~9参照)。
【0005】
即ち、特許文献7~9に記載された被洗浄物の洗浄装置は、車両部品等の被洗浄物を収容した金属製の洗浄かごを洗浄槽内の洗浄液に浸漬し、この状態でノズルから洗浄液を噴射して洗浄槽内に水流を発生させ、被洗浄物を液中で洗浄するようにしたものであり、液中洗浄により被洗浄物に付着した油分や固形物等の汚れを落とすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭51-040169号公報
【文献】実開昭55-147891号公報
【文献】実開昭57-119787号公報
【文献】実開昭57-152984号公報
【文献】実開平04-022081号公報
【文献】特開平06-099145号公報
【文献】特開平06-343931号公報
【文献】特開平07-256221号公報
【文献】特開平10-113626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した気中洗浄を行う洗浄装置は、ノズルから噴射される洗浄液の噴流が強いため、洗浄能力が高くて被洗浄物に付着した油分や固形物等の汚れを落し易いが、洗浄かご内の被洗浄物にノズルから噴射された洗浄液が当たらない箇所が発生し、被洗浄物に付着した油分や固形物等の汚れを完全に落とせないという問題がある。
【0008】
そして、気中洗浄を行う洗浄装置においては、ノズルからの洗浄液が当たらない箇所を減らすために、ノズルの本数を増やしたり、或いは、洗浄かごやノズルを回転させる構造としているが、この場合には、洗浄装置自体の部品点数が多くなって構造が複雑になる。しかも、洗浄かごやノズルを回転させる構造とした場合、洗浄かごを回転させるテーブルの回転駆動部やノズルの回転駆動部が洗浄槽の槽外にあるため、回転駆動部を形成する回転駆動用のモータから洗浄槽内に動力伝達するために軸封装置が必要となる。その結果、気中洗浄を行う洗浄装置は、部品点数が多くなってメンテナンス箇所が多くなると共に、コスト高になるという問題が発生する。
【0009】
また、気中洗浄を行う洗浄装置においては、ノズルからの洗浄液の噴射の威力を強くするためにノズル径を細くしているが、この場合には、ノズルに異物が詰まり易いという問題が発生する。
【0010】
更に、気中洗浄を行う洗浄装置においては、洗浄かご内の被洗浄物を洗浄かごの半径方向から洗浄するためには、洗浄かごの側面を網状にする必要があるが、この場合には、洗浄かごの強度が低下し、洗浄かごを吊り上げるための強度が得られ難くなり、洗浄槽内に配置した洗浄かご内に被洗浄物を個々に投入しなければならず、作業時間が長くなるという問題が発生する。
【0011】
一方、上述した液中洗浄を行う洗浄装置は、洗浄かご内に収容した被洗浄物を洗浄液に浸漬した状態で洗浄するため、被洗浄物の全面を洗浄することができるが、ノズルからの洗浄液の噴射により発生する水流が気中洗浄のノズルから噴射される噴流に比べて弱いため、気中洗浄に比較して洗浄能力が低いという問題がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、被洗浄物の気中洗浄と液中洗浄を2段階に行えて洗浄能力を大幅に高めることができるようにした被洗浄物の洗浄装置及びこれを用いた被洗浄物の洗浄方法を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る被洗浄物の洗浄装置は、洗浄液が貯留される洗浄槽と、前記洗浄槽内に支持され、水位低下用の排水口を有する上面が開放された有底筒状の洗浄ドラムと、前記洗浄ドラムの上端に気密状に支持載置され、被洗浄物を収容する底面が網状に形成された筒状の洗浄かごと、前記洗浄槽内に配置される水中ポンプと、前記水中ポンプから供給される前記洗浄液を前記洗浄かご内の被洗浄物に向けて噴射する洗浄ノズルと、を備えた被洗浄物の洗浄装置であって、前記洗浄ドラムの前記排水口の開口面積は、前記水中ポンプからの洗浄液の送水量が前記排水口から排水される洗浄液の排水量よりも多くなるように設定したことに特徴がある。
【0014】
前記洗浄ノズルを、上方へ開閉可能な蓋体を備えた前記洗浄槽の前記蓋体の内壁面に配置し、前記洗浄ノズルから前記洗浄かご内の被洗浄物に向けて前記洗浄液を噴射するようにすることが好ましい。
【0015】
前記洗浄ノズルを、前記洗浄ドラム内に配置し、前記洗浄ノズルから前記洗浄かご内の被洗浄物に向けて前記洗浄液を噴射するようにすることが好ましい。
【0016】
本発明に係る被洗浄物の洗浄方法は、請求項1~3の何れかに記載の被洗浄物の洗浄装置を用いた被洗浄物の洗浄方法であって、前記被洗浄物を収容した前記洗浄かごを前記洗浄槽内の前記洗浄ドラム上にセットすると共に、前記洗浄槽内に前記洗浄液を前記水中ポンプが運転でき且つ前記洗浄かごが前記洗浄液に浸からない量だけ貯留する工程と、前記水中ポンプを運転して前記洗浄ノズルから前記洗浄かご内の被洗浄物に向って洗浄液を噴射し、前記洗浄かご内の被洗浄物を気中洗浄する工程と、前記洗浄ノズルから噴射される前記洗浄液を前記洗浄ドラム内及び前記洗浄かご内に順次溜めて行き、前記洗浄かご内の被洗浄物を前記洗浄液に完全に浸漬し、前記洗浄ノズルからの前記洗浄液の噴射により発生する水流によって前記洗浄かご内の被洗浄物を液中洗浄する工程と、前記水中ポンプの運転を停止し、前記洗浄ドラムの排水口から前記洗浄ドラム内及び前記洗浄かご内の前記洗浄液を前記洗浄槽内に排水して前記洗浄かご内の被洗浄物を水切りする工程と、を含むことに特徴がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る被洗浄物の洗浄装置は、洗浄槽内に配置される水中ポンプ、水位低下用の排水口を有する上面が開放された有底筒状の洗浄ドラム、洗浄ドラムの上端に気密状に支持載置され、被洗浄物を収容する底面が網状に形成された筒状の洗浄かご、水中ポンプから供給される洗浄液を洗浄かご内の被洗浄物に向って噴射する洗浄ノズル等を備え、洗浄ドラムの排水口の開口面積を、水中ポンプからの洗浄液の送水量が洗浄ドラムの排水口から排水される洗浄液の排水量よりも多くなるように設定しているため、被洗浄物の気中洗浄と液中洗浄を2段階に亘って自動的に行うことができ、気中洗浄や液中洗浄を単独で行う洗浄装置に比較して洗浄能力を大幅に高めることができる。
【0018】
本発明に係る被洗浄物の洗浄方法は、洗浄かご内の被洗浄物を気中洗浄する工程と、洗浄かご内の被洗浄物を洗浄液に浸漬して液中洗浄する工程とを含んでいるため、気中洗浄や液中洗浄を単独で行う洗浄方法に比較して洗浄能力を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄装置を示し、蓋体を開放した状態の斜視図である。
【
図2】同じく被洗浄物の洗浄装置を示し、洗浄槽等を透明化した状態の
図1と同様の斜視図である。
【
図3】同じく被洗浄物の洗浄装置の縦断正面図である。
【
図4】同じく被洗浄物の洗浄装置を示し、洗浄かごを取り外して蓋体を開放した状態の斜視図である。
【
図5】同じく被洗浄物の洗浄装置に用いる洗浄ノズルの斜視図である。
【
図6】洗浄ノズルのスイベルジョイントの縦断面図である。
【
図7】同じく被洗浄物の洗浄装置の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1~
図4は本発明の実施形態に係る被洗浄物の洗浄装置1を示し、当該洗浄装置1は、例えば、自動車等の車両部品、各種工作機械の部品、歯車やネジ等の機械加工された部品、航空機の部品等の被洗浄物を洗浄液Wにより洗浄するものであり、被洗浄物の気中洗浄と液中洗浄を2段階に亘って自動的に行うことができる。
【0022】
即ち、前記被洗浄物の洗浄装置1は、
図1~
図4に示す如く、洗浄液Wが貯留される洗浄槽2と、洗浄槽2内に支持され、水位低下用の排水口3aを有する上面が開放された有底筒状の洗浄ドラム3と、洗浄ドラム3の上端に気密状に支持載置され、被洗浄物を収容する底面が網状に形成された筒状の洗浄かご4と、洗浄槽2内に配置される水中ポンプ5と、水中ポンプ5から供給される洗浄液Wを洗浄かご4内の被洗浄物に向けて噴射しつつ洗浄液Wの噴射反力により回転可能に支持された一対の洗浄ノズル6,6′とを備えており、前記洗浄ドラム3の排水口3aの開口面積は、水中ポンプ5からの洗浄液Wの送水量が排水口3aから排水される洗浄液Wの排水量よりも多くなるように設定されている。
【0023】
具体的には、前記洗浄槽2は、
図1~
図4に示す如く、金属板により上方が開放されたボックス状に形成された槽本体7と、金属板により下面が開放された浅いボックス状に形成され、槽本体7の背面壁の上端部に複数のヒンジ42により上方へ回動自在に取り付けられて槽本体7の上方開口を開閉し得る蓋体8と、槽本体7の両側面壁と蓋体8の両側部との間に介設され、蓋体8を開放位置に保持すると共に、蓋体8を軽い力で開閉できる一対の開閉用ダンパー9と、槽本体7の前面壁の上端部と蓋体8の前部との間に介設され、蓋体8を閉じた状態でロックする施錠具10と、蓋体8の前部に設けた蓋体8を開閉するためのハンドル11と、槽本体7の上端部外面を除いた槽本体7の外面に貼り付けられたプレート状の断熱材12とを備えている。
【0024】
また、洗浄槽2には、洗浄槽2内に貯留された洗浄液Wを所定の温度(例えば、50℃~70℃)まで加熱する棒状のヒータ13と、洗浄槽2内の古い洗浄液Wを槽外へ排出するためのドレン用バルブ14と、洗浄槽2内の水位を確認する水位ホース15とがそれぞれ設けられている。
【0025】
そして、前記洗浄槽2は、複数のキャスター16を備えた洗浄槽用架台17に載置固定されており、任意の場所へ移動可能できるようになっている。
【0026】
前記洗浄ドラム3は、
図1~
図3に示す如く、金属板により上面が開放された円形の有底筒状に形成されており、洗浄槽2の底面壁上面に設けた洗浄ドラム用架台18に水平姿勢で載置固定されている。
【0027】
また、洗浄ドラム3の周壁の下端部には、水位低下用の排水口3aが等角度ごとに複数形成されており、複数の排水口3aの開口面積は、水中ポンプ5からの洗浄液Wの送水量が全ての排水口3aから排水される洗浄液Wの排水量よりも多くなるように設定されている。
【0028】
更に、洗浄ドラム3の周壁外周面には、後述する洗浄かご4を洗浄ドラム3に対してガイドしながら位置決めするための長尺板状の洗浄かご用ガイド19が等角度ごとに設けられている。この洗浄かご用ガイド19を洗浄ドラム3の外周面に設けることによって、洗浄かご4は、その軸線が洗浄ドラム3の軸線と合致する状態で洗浄ドラム3の上端に支持載置されるようになっている。
【0029】
尚、上記の実施形態においては、洗浄ドラム3の周壁の下端部に水位低下用の排水口3aを等角度ごとに複数形成したが、水位低下用の排水口3aの数及び当該排水口3aを形成する位置は、上記の実施形態に係るものに限定されるものではなく、洗浄ドラム3内の洗浄液Wを全て排水することができれば、如何なる数及び位置であっても良い。例えば、他の実施形態においては、洗浄ドラム3の周壁下端部に排水口3aを一つだけ形成しても良く、また、洗浄ドラム3の底面壁に排水口3aを一つ又は複数形成しても良く、或いは、洗浄ドラム3の周壁下端部と底面壁の両方に排水口3aを一つ又は複数形成しても良い。
【0030】
前記洗浄かご4は、
図3及び
図7に示す如く、金属板により円形の筒状に形成された周壁20と、周壁20の下端部開口に設けた格子状の補強体21と、補強体21の上面に支持固定され、車両部品等の被洗浄物が載せられる円形の網体22と、周壁20の外周面に等角度ごとに設けた長尺板状の補強用リブ23と、周壁20の上端部に等角度ごとに設けた複数の逆U字状の吊り下げ金具24とを備えており、吊り下げ金具24にワイヤーロープを引っ掛けてクレーン等で吊り下げ作業できるようになっている。
【0031】
前記水中ポンプ5は、
図2及び
図4に示す如く、洗浄槽2内の隅部底面上に配置されており、縦向きのモータ(図示省略)と、モータの下部に取り付けられ、モータにより回転される羽根車をポンプケーシング内に回転自在に収容して成るポンプ5aと、モータの周囲に冷却用ジャケットを形成する冷却用ジャケットケース5b等を備えている。本実施形態においては、水中ポンプ5には、吐出圧力が0.1MPa~0.3MPa程度の低圧の水中ポンプ5が使用されている。
【0032】
而して、前記水中ポンプ5においては、ポンプ5aを水中に浸漬させた状態でモータを起動させると、ポンプ5aの羽根車がモータにより回転され、ポンプケーシングに形成した吸引口からポンプケーシング内に水が吸引され、ポンプケーシングに形成した吐出口から吸引された水が吐出されるようになっている。また、ポンプ5aの吐出口から吐出された水は、モータの周囲に形成した冷却用ジャケットを通ってモータを冷却した後、冷却用ジャケットケース5bの排水口から排出されるようになっている。
【0033】
尚、水中ポンプ5は、冷却用ジャケットケース5bの排水口にニップル25及びチーズ管26が順次接続されており、チーズ管26に二つの送水用ホース27,28を接続することによって、水中ポンプ5から二方向へ洗浄液Wを供給できるようになっている。
【0034】
前記洗浄ノズル6,6′は、水中ポンプ5から供給される洗浄液Wを洗浄かご4内の被洗浄物に向けて噴射するものであり、洗浄液Wの噴射反力により水平姿勢で回転するようになっている。本実施形態においては、洗浄ノズル6,6′は、
図1~
図4に示す如く、洗浄槽2の蓋体8の内壁面と洗浄ドラム3内にそれぞれ配置されており、洗浄かご4の上方と下方の両方から洗浄かご4内の被洗浄物に向って洗浄液Wを噴射するようになっている。
【0035】
前記上方の洗浄ノズル6は、洗浄槽2の蓋体8の内壁面に固定用金具29を介して固定した上側配管30の下流側端部に設けられており、一方の送水用ホース27、チーズ管26及びニップル25を介して水中ポンプ5に接続されている。
【0036】
前記上方の洗浄ノズル6は、
図1及び
図5に示す如く、送水用ホース27等を介して水中ポンプ5に連通するスイベルジョイント31と、スイベルジョイント31に支持され、スイベルジョイント31に連通する腕管32と、腕管32に設けられ、腕管32に連通する噴出口33aを有する複数のノズル体33とを備えており、前記少なとも一つのノズル体33の噴出口33aは、洗浄ノズル6の回転中心回りの周方向に沿って洗浄液Wを噴射することによって、洗浄ノズル6に前記洗浄液Wの噴射反力を付与できるように形成されている。
【0037】
前記スイベルジョイント31は、
図6に示す如く、上側配管30の下流側端部に下向きに接続され、下流側端部にフランジ34aを有する筒状の軸部34と、軸部34の下流側端部に当該軸部34の軸線回りに回転可能に覆い被せられ、洗浄ノズルの腕管32に連通する中空形状の円形に形成された回転部35と、回転部35の一端面にボルト36及びナット37により固定され、軸部34を回転部35から抜け止めする環状の抜け止め板38と、軸部34と回転部35との間に介設されたブッシュ39,39′とを備えている。
【0038】
また、スイベルジョイント31のブッシュ39,39′は、耐摩耗性、耐薬品性及び滑り特性に優れた超高分子量ポリエチレンにより形成されている。本実施形態においては、ブッシュ39,39′には、異なる形状の二つのブッシュ39,39′が使用されている。一方のブッシュ39は、超高分子量ポリエチレンにより環状の円板に形成されており、筒状の軸部34の一端面と回転部35の窪み部底面との間に介設されている。また、他方のブッシュ39′は、超高分子量ポリエチレンにより一端にフランジを有する筒状に形成されており、軸部34と回転部35の窪み部内周面との間及び軸部34と抜け止め板38の内周面との間に介設されている。
【0039】
尚、二つのブッシュ39,39′の厚みは、スイベルジョイント31内に洗浄液Wが流れたときに、軸部34と円板状のブッシュ39との間及び軸部34と筒状のブッシュ39′との間に洗浄液Wの圧力により水潤滑の隙間が形成されるように設定されている。
【0040】
前記腕管32は、スイベルジョイント31の回転部35の外周面に接続され、回転部35に連通する直線状腕管32a(短管、チーズ管及びエルボから成る)と、回転部35の外周面に接続され、直線状腕管32aの軸線上に配置されて回転部35に連通するT字状腕管32b(短管、チーズ管及びエルボから成る)とを備えている。
【0041】
また、腕管32には、当該腕管32に連通する噴出口33aを有するノズル体33が設けられている。本実施形態においては、上方の洗浄ノズル6の腕管32には、四つのノズル体33が設けられており、直線状腕管32aの先端部及びT字状腕管32bの先端部にそれぞれ二つのノズル体33が設けられている。
【0042】
直線状腕管32aの先端部の二つのノズル体33とT字状腕管32bの先端部の一方のノズル体33は、その噴出口33aが真下を向く姿勢で直線状腕管32a及びT字状腕管32Bにそれぞれ連通状に接続され、また、T字状腕管32bの先端部の他方のノズル体33は、その噴出口33aが洗浄ノズル6の回転中心回りの周方向に沿って洗浄液Wを噴射できるようにT字状腕管32bに傾斜姿勢で連通状に接続されている。
【0043】
一方、前記下方の洗浄ノズル6′は、洗浄ドラム3内に配置されて洗浄ドラム3の底面壁中心に貫通状に設けた下側配管40の上端部に設けられており、他方の送水用ホース28、チーズ管26及びニップル25を介して水中ポンプ5に接続されている。
【0044】
前記下方の洗浄ノズル6′は、上方の洗浄ノズル6と同じ構造及び同じ形状に構成されており、その噴出口33aが上方を向く姿勢で洗浄ドラム3内に配置されている。この下方の洗浄ノズル6′は、上方の洗浄ノズル6と取り付け方向が異なるだけで、上方の洗浄ノズル6と同じ構造及び同じ形状に構成されているため、上方の洗浄ノズル6と同じ部材・部位には同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
尚、本実施形態においては、上方の洗浄ノズル6は、平面視において反時計方向回りに回転し、下方の洗浄ノズル6′は、平面視において時計方向回りに回転するようになっている。
【0046】
而して、前記上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′は、水中ポンプ5により洗浄液Wを送水用ホース27,28等を介してスイベルジョイント31に供給すると、洗浄液Wがスイベルジョイント31の筒状の軸部34内及び中空形状の回転部35内を通って腕管32内に流入し、腕管32に設けた四つのノズル体33の噴出口33aから洗浄かご4内に向って噴射される。
【0047】
このとき、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′は、一つの噴出口33aが洗浄ノズル6,6′の回転中心回りの周方向に沿って洗浄液Wを噴射するため、洗浄ノズル6,6′に洗浄液Wの噴射反力が付与されることになり、回転部35、腕管32及び四つのノズル体33が筒状の軸部34の軸線を中心にして回転し、洗浄ドラム3内の全域に亘って洗浄液Wを噴射することができる。
【0048】
また、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′のスイベルジョイント31は、滑り特性に優れた超高分子量ポリエチレンにより形成したブッシュ39,39′を備え、且つ軸部34とブッシュ39,39′との間に洗浄液Wの圧力により水潤滑の隙間が形成されるようにしているため、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′の回転時に抵抗が少なくて済み、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′を円滑かつスムースに回転させることができる。
【0049】
尚、上記の実施形態においては、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′にそれぞれ四つのノズル体33を設け、そのうちの一つのノズル体33の噴出口33aの向きを変えるようにしたが、ノズル体33の数や向きを変えた噴出口33aの数は、上記の実施形態に係るものに限定されるものではなく、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′を回転できて洗浄かご4内に向って洗浄液Wを噴射することができれば、如何なる数であっても良い。
【0050】
また、上記の実施形態においては、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′の腕管32を直線状腕管32a及びT字状腕管32bから形成したが、他の実施形態においては、直線状腕管32a及びT字状腕管32bを一体的に形成し、腕管32をスイベルジョイント31の回転部35に周方向から貫通状に挿通し、腕管32の回転部35内に位置する部分に開口を形成するようにしても良い。
【0051】
更に、上記の実施形態においては、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′の腕管32にノズル体33を接続して噴出口33aを形成するようにしたが、他の実施形態においては、ノズル体33を省略し、腕管32に直接噴出口33aを形成するようにしても良い。
【0052】
更に、上記の実施形態においては、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′の両方を洗浄液Wの噴射反力により回転させるようにしているが、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′の両方又は何れか一方の洗浄ノズル6(6′)を固定式としても良い。
【0053】
尚、
図1において、41は水中ポンプ5及びヒータ13に接続されて水中ポンプ5及びヒータ13を制御する制御盤である。
【0054】
次に、上述した被洗浄物の洗浄装置1を用いて車両部品や機械加工部品等の被洗浄物を洗浄する場合について説明する。
【0055】
図7は洗浄装置1の停止時の水位と運転時の水位を示すものであり、
図7の破線Aは、洗浄装置1の停止時の水位を示し、
図7の一点鎖線Bと二点鎖線Cは、洗浄装置1の運転時の水位をし、一点鎖線Bは、洗浄かご4から洗浄液Wがオーバーフローする水位を示し、また、二点鎖線Cは、洗浄槽2内に溜まっている洗浄液Wの水位を示す。
【0056】
先ず、被洗浄物を収容した洗浄かご4を洗浄槽2内の洗浄ドラム3上にセットすると共に、洗浄槽2内に洗浄液Wを水中ポンプ5が運転でき且つ洗浄かご4が洗浄液Wに浸からない量だけ貯留する。
【0057】
即ち、洗浄槽2内の洗浄かご4を、吊り下げ金具24を介してクレーン等で吊り上げて洗浄槽2の外へ移動させ、洗浄かご4内に所定量の被洗浄物を収容する。洗浄かご4内に被洗浄物を収容したら、洗浄かご4を再びクレーン等で吊り上げ、洗浄槽2内の洗浄ドラム3上に載せる。
【0058】
このとき、洗浄かご4は、周壁20が金属板により形成されているため、洗浄かご4の強度が高められ、被洗浄物を投入した洗浄かご4をクレーン等で吊り上げて洗浄槽2内に投入することができ、作業時間を短縮することができる。
【0059】
被洗浄物を収容した洗浄かご4を洗浄槽2内にセットしたら、洗浄槽2内に洗浄液Wを水中ポンプ5が運転でき且つ洗浄かご4が洗浄液Wに浸からない量だけ貯留する。即ち、洗浄槽2内に洗浄液Wを
図7の破線Aの位置まで貯留する。
図7の破線Aの位置は、下方の洗浄ノズル6′の噴出口33aの位置よりも少し下方位置に設定されている。
【0060】
尚、上記の実施形態においては、被洗浄物を収容した洗浄かご4を洗浄槽2内にセットした後、洗浄槽2内に洗浄液Wを貯留したが、他の実施形態においては、洗浄槽2内に洗浄液Wを貯留した後、被洗浄物を収容した洗浄かご4を洗浄槽2内にセットしても良い。
【0061】
洗浄槽2内に洗浄かご4をセットして洗浄液Wを貯留したら、操作盤41のスイッチを操作して水中ポンプ5を運転すると共に、ヒータ13を起動させて洗浄液Wを所定の温度まで加熱する。
【0062】
水中ポンプ5を運転すると、洗浄液Wが上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′に供給され、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′の各噴出口33aから洗浄かご4に向って洗浄液Wが噴射される。即ち、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′は、洗浄かご4の上方及び下方から洗浄かご4内に向って垂直方向と傾斜方向に連続的に洗浄液Wを噴射する。このとき、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′は、傾斜方向に噴射される洗浄液Wの噴射反力により回転しながら、洗浄液Wを洗浄かご4内に向って噴射する。
【0063】
洗浄装置1の運転開始時は、洗浄液Wが空気中を通過して直接的に洗浄かご4内の被洗浄物を洗浄する気中洗浄が行われるため、被洗浄物に付着した油分や固形物等の汚れを綺麗に落とすことができる。
【0064】
また、洗浄装置1の運転中は、洗浄ドラム3の排水口3aから洗浄液Wが洗浄槽2内に排水されているが、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′からの洗浄液Wの噴射量、即ち、水中ポンプ5からの送水量が、洗浄ドラム3の排水口3aからの排水量より多いため、洗浄ドラム3内及び洗浄かご4内に洗浄液Wが徐々に溜まって行き、洗浄ドラム3内及び洗浄かご4内の水位が順次上昇する。
【0065】
尚、時間の経過により水位が徐々に上昇し、洗浄かご4が満水になるまでの間は、一部は気中洗浄で、一部は洗浄液Wが流動しながら被洗浄物を洗浄する液中洗浄が行われる。
【0066】
洗浄装置1の運転開始から一定時間が経過すると、空であった洗浄ドラム3内及び洗浄かご4内が洗浄液Wで満杯になり、洗浄かご4の上端から洗浄液Wが順次オーバーフローする。このとき、下方の洗浄ノズル6′からの洗浄液Wの噴射により洗浄ドラム3内及び洗浄かご4内に水流が発生し、洗浄かご4内の被洗浄物が液中洗浄されている。そのため、被洗浄物の全面を洗浄することができる。また完全な液中洗浄のときには、洗浄液Wの水位は、一点鎖線B及び二点鎖線Cの位置にある。
【0067】
そして、所定時間経過して被洗浄物の洗浄が完了すると、水中ポンプ5及びヒータ13の運転が止められ、上方の洗浄ノズル6及び下方の洗浄ノズル6′からの洗浄液Wの噴射がなくなる。そのため、洗浄ドラム3内及び洗浄かご4内の洗浄水は、洗浄ドラム3の排水口3aから洗浄槽2内に排水され、洗浄槽2内の洗浄液Wの水位は最初の水位(
図7の破線Aの位置)の状態に戻る。
【0068】
その後、洗浄かご4を洗浄槽2内から洗浄槽2外へとクレーン等で取り出し、被洗浄物を取り出す。尚、洗浄液Wの温度をヒータ13で適宜調整しているため、被洗浄物は、液中洗浄のときに洗浄液Wに浸漬されることで温度上昇し、洗浄終了後に洗浄液Wが排水されると、気中では早く乾燥する。
【0069】
このように、上述した被洗浄物の洗浄装置1は、被洗浄物の気中洗浄と液中洗浄を2段階に亘って自動的に行うことができるため、気中洗浄や液中洗浄を単独で行う従来の洗浄装置に比較して洗浄能力を大幅に高めることができる。
【0070】
また、被洗浄物の洗浄装置1は、水中ポンプ5及び洗浄ノズル6,6′を洗浄槽2内に配置し、洗浄ノズル6,6′を洗浄液Wの噴射反力により回転させているため、洗浄かごを回転させるテーブルの回転駆動部やノズルの回転駆動部、軸封装置が不要となり、洗浄装置1自体の部品点数が少なくなって構造が簡単になり、メンテナンス箇所が少なくなると共に、コスト低減を図ることができる。しかも、洗浄ノズル6,6′を洗浄液Wの噴射反力により回転させているため、洗浄ノズル6,6′が被洗浄物と接触して停止した場合でも、モータ等の機械的故障が生じることはなく、保護装置等が不要となる。
【0071】
更に、被洗浄物の洗浄装置1は、底面が網状に形成された筒状の洗浄かご4を備えているため、筒状の洗浄かご4の強度が全体を網状に形成した洗浄かごに比較して高められ、被洗浄物を投入した筒状の洗浄かご4をクレーン等で吊り上げて洗浄槽2内に投入することができ、作業時間を短縮することができる。
【0072】
更に、被洗浄物の洗浄装置1は、洗浄ノズル6,6′のスイベルジョイント31の軸部34と回転部35との間にブッシュ39,39′を介設しているため、洗浄ノズル6,6′をスムースに回転させることができる。しかも、ブッシュ39,39′の材質を超高分子量ポリエチレンとしているため、洗浄ノズル6,6′はより一層スムースに回転することになる。
【符号の説明】
【0073】
1 洗浄装置
2 洗浄槽
3 洗浄ドラム
3a 排水口
4 洗浄かご
5 水中ポンプ
6 上方の洗浄ノズル
6′ 下方の洗浄ノズル
W 洗浄液