IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許-真空ポンプ 図1
  • 特許-真空ポンプ 図2
  • 特許-真空ポンプ 図3
  • 特許-真空ポンプ 図4
  • 特許-真空ポンプ 図5
  • 特許-真空ポンプ 図6
  • 特許-真空ポンプ 図7
  • 特許-真空ポンプ 図8
  • 特許-真空ポンプ 図9
  • 特許-真空ポンプ 図10
  • 特許-真空ポンプ 図11
  • 特許-真空ポンプ 図12
  • 特許-真空ポンプ 図13
  • 特許-真空ポンプ 図14
  • 特許-真空ポンプ 図15
  • 特許-真空ポンプ 図16
  • 特許-真空ポンプ 図17
  • 特許-真空ポンプ 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
F04D19/04 A
F04D19/04 B
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019207588
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2020109290
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】18209471.4
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ・メコタ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シュヴァイクヘーファー
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03106691(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/025023(WO,A1)
【文献】特開2008-121889(JP,A)
【文献】米国特許第04181379(US,A)
【文献】特開2008-240728(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108869339(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング要素(18)を有し、
その長手方向の延在が、軸方向を定義するローター(24)を有し、
ローター(24)のために設けられる軸受要素(20)を有する真空ポンプであって、
軸受要素(20)がハウジング要素(18)の開口部(16)内に配置されていて、
軸受要素(20)のハウジグ要素(18)に対する位置決めのために、ハウジング要素(18)から独立した少なくとも一つの第一の構造部材(11)が設けられていて、
開口部(16)が、直径が一定の断面を有する少なくとも一つの第一のシリンダー状の軸方向部分(74)を有し、
第一の構造部材(11)が、少なくとも部分的に開口部(16)の第一の軸方向部分(74)内に配置されていて、
第一の構造部材(11)は、半径方向において第一の軸方向部分(74)で開口部(16)内にのみ配置されていて、
第一の構造部材(11)が、プレート形状、及び/又はディスク形状の少なくとも一つの固定要素(14)によって開口部(16)内に固定されていて、
固定要素(14)が半径方向において、第一の軸方向部分(74)の内側から外側にわたって延びていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
固定要素(14)が、薄板部品として、及び/又は打抜加工部品として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
固定要素(14)が、リング形状に形成されていること、及び/又は複数の突出部(64)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
固定要素(14)が、ハウジング部分(18)及び第一の構造部材(11)に固定されていること、又は第一の構造部材にのみ当接していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
第一の構造部材(11)が、軸受要素(20)のための軸方向の境界部(32)を形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
軸受要素(20)のための作動媒体貯蔵部(26)が設けられていて、作動媒体貯蔵部(26)が、第一の構造部材(11)から見て、固定要素(14)の軸方向の向こう側に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
ハウジング要素(18)に対する軸受要素(20)の位置決めのために、
半径方向の境界部(40)、
第一の軸方向の境界部(32)、及び
第一の軸方向の境界部(32)とは反対の側の第二の軸方向の境界部(34)が設けられていて、
三つの境界部(40,32,34)が、互いに独立して形成された第一の構造部材(11)、第二の構造部材(12)及び第三の構造部材(13)によって形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
第一の軸方向の境界部(32)が、第一の構造部材(11)によって形成されていて、第一の構造部材(11)がハウジング要素(18)から独立して形成されていること、及び/又は、第二の軸方向の境界部(34)が第二の構造部材(12)によって形成されていて、第二の構造部材(12)がハウジング要素(18)から独立して形成されていること、及び/又は、半径方向の境界部(40)が第三の構造部材(13)によって形成されていて、第三の構造部材(13)がハウジング要素から独立して形成されていることを特徴とする請求項7に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
第一の構造部材(11)、第二の構造部材(12)及び第三の構造部材(13)が、開口部(16)から取り出し可能な軸受ソケット(10)を形成していることを特徴とする請求項7又は8に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
第一の構造部材(11)、第二の構造部材(12)及び第三の構造部材(13)のうち少なくとも二つが、プレス嵌めによって接続されていることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
境界部(32,34,40)のうち少なくとも一つが、軸受要素(20)のための緊急ストッパー(38,44)及び緩衝要素(36,42)を有し、緊急ストッパー(38,44)及び緩衝要素(36,42)が同じ構造部材(12,13)に配置されていることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項12】
軸受要素(20)のための作動媒体貯蔵部(26)が設けられていて、そして作動媒体貯蔵部(26)が、軸方向で第一の構造部材(11)、第二の構造部材(12)及び第三の構造部材(13)の外側に配置されていることを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項13】
第一の構造部材(11)、第二の構造部材(12)及び第三の構造部材(13)が、それぞれ、少なくとも一つの空所部(50,56)を有し、その中に、作動媒体搬送要素(51,62)が配置されていて、作動媒体搬送要素(51,62)が、液体的に作動媒体貯蔵部(26)と接続されていることを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項14】
半径方向の作動媒体通路(70)が、第一の構造部材(11)、第二の構造部材(12)及び第三の構造部材(13)のうちの一つの端面に形成されていることを特徴とする請求項7から13のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項15】
第一の構造部材(11)、第二の構造部材(12)及び第三の構造部材(13)同士の間に、軸方向の境界部(32,34)の間の間隔の調整のための、少なくとも一つの調整パッド(60)が設けられていることを特徴とする請求項7から14のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの支承部の構造に関する。特に本発明は、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプであって、ハウジング要素、(特にその長手方向の延在で軸方向を定義する)ローター、びローターのために設けられる軸受要素を有し、その際、軸受要素が、ハウジング要素の開口部内に配置されていて、そしてその際、軸受要素のハウジング要素に対する相対的な位置決めのために設けられている手段を有するものに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の課題は、冒頭に記載した形式の真空ポンプを、簡単に、及び/又は、ない材料消費で製造可能な支承部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する真空ポンプによって、特に、軸受要素のハウジグ要素に対する位置決めのために、ハウジング要素から独立した少なくとも一つの第一の構造部材が設けられていて、開口部が、直径が一定の断面を有する少なくとも一つの第一のシリンダー状の軸方向部分を有し、第一の構造部材が、少なくとも部分的に開口部の第一の軸方向部分内に配置されていて、第一の構造部材は、半径方向において第一の軸方向部分開口部にのみ配置されていて、第一の構造部材が、プレート形状、及び/又はディスク形状の少なくとも一つの固定要素によって開口部内に固定されていて、固定要素が半径方向において、第一の軸方向部分の内から外側にわたって延びていることによって解決される。
【0004】
これによって固定機能は、有利には、第一の構造部材の別の機能、特に、軸受要素の境界け、ハウジング要素に対するセンタリング、及び/又はハウジング要素に対する第一の構造部材、及び/又は軸受ソケットの平面整向から分離される。特に、固定要素、及び/又は第一の構造部材は、固定要素が第一の構造部材、及び/又は軸受ソケットのみを軸方向で付勢するよう形成されている。好ましくは、その際、第一の構造部材、及び/又は軸受ソケットの平面整向は、固定要素に形成される当接部によってではなく、特に軸受ソケット、特に第二の構造部材に形成される当接部によって行われる。
【0005】
機能分離によって、固定要素と第一の構造部材は、それらの断面に関して基本的に互いに独立して寸法設定され、そして処理されることが可能である。結果、第一の構造部材は、固定要素と比較して小さな最大直径、は断面のみを有する。第一の構造部材は、よって同様に小さな断面、又は直径を有する原材料から製造されることが可能である。第一の構造部材が、固定フランジ、又は保持バンドを有し、これが、その断面において、第一の構造部材が配置されている開口部断面よりも大きいという、他の構造に対する比較が視覚的に見て取ることができる。固定フランジによって、切削的製造の際に、原材料が、相応して大きな断面、又は直径を有することが必要となる。しかし、これはフランジの領域においてのみ残るが、他方でより小さな断面の領域に対しては多くの材料が、特に切削的に取り去られる必要がある。本発明はよって、少なくとも第一の構造部材の製造の際に、著しい材料の節約を可能とする。このとは、安価であるだけでなく、環境にも優しい。これに対して固定要素は、同様に少ない材料消費のみで製造されることが可能である。比較的大きな断面の原材料が提供されるべきではあるが、しかしこれから、少ない材料のみが取り除かれる、は有利には材料が取り除かれる必要がないからである。
【0006】
第一の構造部材は、少なくとも部分的に、第一の軸方向部分内に配置されていることが可能である。つまり軸方向において、第一の軸方向部分のみに制限されている必要がある。固定要素は、第一の構造部材を特に軸方向において、特に軸方向のみにおいて、固定し、及び/又は付勢する。
【0007】
特に、第一の構造部材は、ハウジング要素における固定のための固定フランジ、及び/又は保持バンドを有さないことが可能である。有利な例においては、第一の構造部材が開口部内に挿入され、そして固定要素によって固定され、特に軸方向で、特に別の構造部材に対して、及び/又はハウジング要素のショルダー部に対して少なくとも間接的に固定される。
【0008】
固定要素は、特に第一の構造部材を、その軸方向の面において少なくとも間接的に付勢することが可能である。例えば、追加的なディスクが固定要素と第一の構造部材の間に設けられていることが可能である。代替として、固定要素は、第一の構造部材に直接当接していることが可能である。
【0009】
ハウジング要素は、有利には、ハウジング下部、及び/又はハウジングベース部であることが可能である。代替として、又は追加的に、ハウジング要素は真空ポンプのモーターのステーターを担持する、又は形成することが可能である。
【0010】
第一の構造部材は、別の例に従い、ハウジング要素から独立した、特に取り外し可能な軸受ソケットの部材であることが可能である。固定要素は、特に軸受ソケットを軸方向で固定し、特にハウジング要素に対して、特にそのショルダー部に対して固定する。代替として、又は追加的に、固定要素は、軸受ソケット全体を、特に方向において固定し、及び/又は締結することができる。
【0011】
ある実施形においては、固定要素が、薄板部として及び/又は打抜加工として形成されていることが意図されている。それは、特に簡単かつ安価に製造されることが可能であり、そして少ない材料を取り去りのみのもとで処理されることが可能である。これによって、有利には、相応する原材料によって、材料が少なく、かつ安価に大きな断面が提供されることが可能である。
【0012】
好ましくは、固定要素はハウジング要素に固定されている。特に、これとねじ止めされていて、特にこれは第一の軸方向領域の断面の外側で行われている。
【0013】
特に好ましくは、固定要素が、特に半径方向の、複数の突出部を有し、これによって固定要素が、特に第一の軸方向領域の断面の外側に延びている、及び/又は、これは固定点として、特にハウジング要素における固定のために使用される。各突出部によって、突出部、又は固定点においては、単純なディスクに比べて高められた弾性が達成される。これによって、有利には、固定要素が、第一の部材、及び/又は軸受ソケットを少なくとも基本的に軸方向においてのみ固定し、しかしこれらにいて、平面整向を行わないということが保証されることが可能である。これは有利には、追加的なセンタリングによって行われることが可能である。これによって、特に良好に定義された組立が達成され、そして結果、より少ない接合公差が達成されることが可能である。つまり軸受の交換は、これによって更に簡易化される。突出部は、好ましくは固定要素の周囲にわたって分配され、及び/又は間隔をあけて配置され、及び/又はタブとして形成されている。特に、少なくとも三つのそのような突出部が設けられていると有利である。
【0014】
別の実施形においては、固定要素はリング形状に形成されている。これによって、固定の際、び固定された状態において、特に良好な力の分配が達成されることが可能である。基本的に、そして特に良好な力の分配によって、固定要素がローターの長手軸、特にローター自体を取り囲んでいることが意図されていることが可能である。
【0015】
更に、固定要素が、追加的に第一の構造部材に固定されていることも意図され得る。組立のため、第一の構造部材と固定要素は特に簡単に共に使用されることが可能である。代替として、固定要素は、第一の構造部材に対してのみ当接していることが可能であり、特にこれに少なくとも間接的に当接していることが可能である。これによって、部材数量が減少されることは有利である。
【0016】
別の例においては、第一の構造部材は、軸受要素のための半径方向の境界、及び/又は軸方向の境界を形成する。この例においては、境界機能、及び固定機能は、有利に分離されるので、固定要素と第一の構造部材は特に容易にその特有の機能に応じて構成され、そして製造されることが可能である。
【0017】
例えば、軸受要素のための作動媒体貯蔵部が設けられていることが可能である。それは、例えば作動中、潤滑媒体、特に潤滑オイルを含む。作動媒体貯蔵部は、有利には、繊維体、及び/又はフェルト体として形成されていることが可能であり、又はそのようなものを含み得る。特に、作動媒体貯蔵部は、毛細管効果を発揮する材料の一、又は複数の層、特に繊維層、及び/又はフェルト層を有し得る。異なる材料の複数の層が設けられていることも可能である。ローターは、好ましくは、作動媒体貯蔵部から軸受要素への作動媒体の搬送のための円錐形の部分を有する。
【0018】
作動媒体貯蔵部は、有利には、第一の構造部材から見て、固定要素の軸方向の向こう側に設けられていることが可能であり、又は固定要素は、軸方向において第一の構造部材と作動媒体貯蔵部の間に設けられていることが可能である。これは、作動媒体貯蔵部がその断面において、第一の構造部材から独立しているのみならず、固定要素からも独立して構成されていることが可能であるという利点を有する。よって、作動媒体貯蔵部の所望のボリュームを達成するために、これは例えば比較的大きな断面で構成されることが可能であるので、軸方向において特に低い構造高さのみが必要である。結果、真空ポンプは、特にコンパクトに形成されることが可能である。
【0019】
ハウジング要素の開口部は、例えば、他の断面、及び/又は直径を有する少なくとも一つの軸方向部分を有することも可能である。
【0020】
固定要素は、特に同様に、開口部内に、特により大きな断面を有する軸方向部分内に設けられていることが可能である。
【0021】
第一の軸方向部分は、例えば一定の直径を有する円形シリンダー状に形成されていることが可能である。代替として、又は追加的に第一の構造部材は、少なくとも第一の軸方向部分内に、少なくとも部分的に円形シリンダー状に形成されている。これは特に、第一の軸方向部分の直径に少なくとも基本的に相当する直径を有する。特に、その際、第一の軸方向部分には、開口部の内壁と、第一の構造部材の間に隙間嵌めが設けられていることが可能である。
【0022】
本発明の課題は、以下の、その有利な発展形によって説明される真空ポンプによっても解決される。上述したポンプと、その実施形は、以下に説明する観点と特徴に従い、そして特に以下に説明する実施形の個々の特徴の意味においても発展させられることが可能であり、また逆もしかりである。
【0023】
請求項7の真空ポンプは、特に、ハウジング要素に対する軸受要素の位置決めのため、半径方向の境界部、第一の軸方向の境界部、及び第一の軸方向の境界部とは反対の側の第二の軸方向の境界部が設けられていて、三つの境界部が、互いに独立して形成された第一の構造部材、第二の構造部材及び第三の構造部材によって形成されていることによって課題を解決する。
【0024】
これによって境界、又は構造部材は、互いに独立して製造されることが可能であり、このことは製造を著しく簡単とする。これに対して、同じ構造部材において異なる境界が設けられているとき、当該境界は、ツール交換や特別なツールを全く使用することなく製造されることが可能である。特に旋削によって製造される構造部材は、よって、それぞれ簡単に製造されることが可能であるので、特に、複数の構造部材によって形成される軸受ソケットも全体として簡単かつ安価に製造可能である。特に、これによって、少なくとも一つの構造部材が、一回のチャッキングのみで切削、特に旋削によって製造可能であるということが可能となる。境界部の独立した処理は、これと関連する簡易化によって、更に、より良好な製造公差を可能とする。よって、その結果、高い正確性の支承が、簡単な製造性と同時に達成されることが可能である。更に構造部材は、特に簡単に交換可能でもあり、及び/又は特別コンパクトな支承を可能とする。この事は、構造空間を節約するのみならずコスト削減も行う。
【0025】
境界部とは、一般的に、対応する方向において境界付けを行う基準面であるとされよう。これは、例えば、軸受要素に直接、特に転がり軸受の外に直接当接していることが可能であり、又は例えばその間に配置される緩衝要素、特にエラストマー緩衝要素によって間接的に当接していることが可能である。境界部と軸受要素の間には、しかし特に、金属要素と、そうでなければ基本的に硬い要素が設けられていない。よって境界部は、直接的、又は緩衝的な、軸受要素にとって決定的な当接部を形成する。また境界部、及び/又は緩衝要素は、長期にわたっては軸受要素に当接する必要がない。むしろ例えば、境界部又は緩衝要素と軸受要素の間に間隔が設けられていることも可能である。例えば、可動支承部、及び/又は緊急ストッパーを形成するためである。
【0026】
つまり、転がり軸受の外と境界部の間には、好ましくは自由空間、又は間隙が設けられていることが可能である。自由空間、又は間隙が、どれほど緩衝要素、又は緩衝材料で満たされているかは、振動挙動と緩衝に影響がある。特に、少なくとも90%満たされていることは有利である。基本的に、緩衝要素は、例えば均一な構造を有していることが可能である。代替として、緩衝要素が、例えば複雑な構造を有することも可能である。これは例えば中空空間、及び/又は突出部を有している。
【0027】
例えば、半径方向の境界部、第一の軸方向の境界部、及び/又は第二の軸方向の境界部に、特に全ての境界部に、緩衝要素が設けられていることが可能である。
【0028】
本願の枠内において、第一、第二及び場合によっては第三、又は更なる要素(例えば第一び第二の軸方向の境界部、又は第一、第二、び第三の構造部材)を参照する際に、これらの順次は、単に簡単に理解するためのみに使用され、必ずしもこれらの要素の必要な数量を意味するものではない。つまり、基本的に例えば、第二の構造部材が設けられていることなく、第三の構造部材が設けられていることも可能である。例えば、ある実施例の第三の構造部材は、ある請求項の意味において第一の構造部材を形成することも可能である。
【0029】
構造部材のうち少なくとも一つ、特に全て、及び/又はハウジング要素が、有利には金属、特にアルミニウム、又はアルミニウム合金、及び/又はプラスチック、例えばPEEK、及び/又は複合材料、例えば繊維強化プラスチック(繊維複合プラスチック)、ガラス繊維複合体、及び/又は炭素繊維複合体から製造されていることが可能である。
【0030】
第一の軸方向の境界部は、有利には、モーター、及び/又はポンプ効果を発揮する部分領域と反対の方向において、及び/又は外側に向けられた方向において軸受要素を境界付ける。第二の軸方向の境界部は、特に、モーター、及び/又はポンプ効果を発揮する部分領域の方の方向において、及び/又は内側に向けられた方向において軸受要素を境界付ける。半径方向の境界部は、軸受要素を、特に半径方向外側に向かって境界けることが可能である。
【0031】
全く一般的に、び特に請求項1の真空ポンプの発展形としても、第一の軸方向の境界部が、第一の構造部材によって形成されていて、これが、ハウジング要素から独立して形成されていることが意図され得る。第二の境界部は、有利には、第二の構造部材によって形成されていることが可能である。これは、ハウジング要素、特に第一の構造部材から独立して形成されている。半径方向の境界部は、例えば、第三の構造部材によって形成されていることが可能である。これは、ハウジング要素、特に第一、及び/又は第二の構造部材から独立して形成されている。このように独立していることによって、製造は特別簡単となる。当該構造部材と、境界部がハウジング要素から独立して製造されることが可能だからである。特に、その際、一般的に比較的大きなハウジング要素を、境界部の製造の際に共にチャッキングする必要が無い。当該構造部材によって、むしろ、比較的小さく手頃な構造部材が処理されることが可能である。更に独立は、境界部を形成する交換を簡単にする。よって、境界部における損傷が簡単に取り除かれることが可能である。
【0032】
一つの実施形に従い、構造部材は、開口部から取り出し可能な軸受ソケットを形成することが意図されている。これによって、一般的に軸受要素の交換可能性が簡単となるのみならず、より良好な組立品質が達成され、つまり軸受要素の正確な配置と、必要なシールが、ユーザーによる軸受要素の交換の際にも達成される。軸受ソケットによって、ユーザーには、ユーザーが、軸受要素自体と、場合によっては存在する緩衝要素を、境界部において位置決めする必要がない(彼はしばしば必要な経験と必要なツールを有していない)ということが可能とされる。これに対して、ポンプメーカーは軸受ソケットを、交換モジュールとして提供することが可能である。これをユーザーは、簡単な手段で、かつ特別な経験無くして使用することが可能である。これは、結果として、特に安価である。新しい軸受要素の専門的な組み込みのために、ポンプメーカーのサービス要員が現場にいる必要が無いからである。サービス要員の使用が必要なままであるとしても、モジュールとしての軸受ソケットを使用は彼にとっても明らかに簡易とされる。軸受ソケットは、つまり一般的に、特に全体として、及び/又は境界部から軸受要素を分離すること無く、及び/又は外側に向かって、交換可能に形成されていることが可能である。特に、好ましくは予調整された軸受ソケットは、ポンプを分解することなく、例えばサービス担当者によって取り出し可能である
【0033】
別の特別簡単な実施形においては、複数の構造部材が軸受ソケットを形成する。その際、軸受ソケットは、固定要素によって開口部内で軸方向に、特にハウジング要素のショルダー部に対して固定されている。固定要素は、特にプレート形状、及び/又はディスク形状に形成されていることが可能であり、かつ上述した特徴利点を有している。
【0034】
発展形に従い、構造部材のうち、少なくとも二つがプレス嵌めによって接続されていることが意図されている。これによって構造空間が節約され、そして製造コストが更に減少されることが可能である。当該構造部材は、その際、基本的に、一部材の構造部材のように相応する利点を有して取り扱われることが可能であるが、しかし境界部は、上述した利点の通り、接合の前に互いに独立して処理されることが可能である。特に、第二、び第三の構造部材が、プレス嵌めによって接続されていると有利であり、特に第二の構造部材が第三の構造部材内に圧入されていると有利である。
【0035】
構造部材のうち少なくとも二つ、特に第一び第三の構造部材は、有利には、独立した一つの接続手段、例えばねじによって接続されていることが可能である。
【0036】
更なる発展形においては、複数の境界部のうち少なくとも一つは、つまり特に、半径方向の境界部、第一の軸方向の境界部、及び/又は第二の軸方向の境界部は、緩衝要素、び緊急ストッパーを軸受要素のために有する。これらは、同じ構造部材に設けられている。これによって、当該構造部材における機能統合が達成される。その際、しかし、本発明によって提供される簡易な製造の可能性は存在し続ける。緩衝要素のための当接面と、緊急ストッパーが、同じ処理方向から処理されることが可能であり、これによって製造が簡単かつ正確なままだからである。特に、当接面と緊急ストッパーの製造の間で、チャッキングのやり直しと、ツールの交換が必要ない。
【0037】
更に、軸受要素のための作動媒体貯蔵部が設けられていて、そして特に作動媒体貯蔵部が、構造部材、及び/又はこれによって形成される軸受ソケットの軸方向外側に設けられていて、特にモーター、及び/又はポンプ効果を発揮する部分領域と反対の側に設けられていることが意図されていることが可能である。特に、作動媒体貯蔵部の少なくとも一つの繊維層、及び/又はフェルト層が、軸方向外側に設けられている。これによって、作動媒体貯蔵部は、構造部材、又は軸受ソケットから独立して寸法設定されることが可能であり、特により大きな断面で構成されることが可能であるので、支承が全体としてコンパクトに形成されることが可能である。特に、作動媒体貯蔵部は、構造部材及び固定要素のユニットの軸方向外側にも配置されていることが可能である。
【0038】
構造部材の内、少なくとも一つ、特に全て、特に構造部材のための固定要素も、例えば少なくとも一つの空所部を有し得る。その中に、好ましくは毛細管効果を発揮する材料を有する作動媒体搬送要素が配置されている。これは、流体的に作動媒体貯蔵部と接続されている。これによって、特に作動媒体貯蔵部に向かう作動媒体の搬送が、簡単な方法で実現されることが可能である。一、又は複数の作動媒体搬送要素は、例えば作動媒体分配、及び/又は作動媒体リターン搬送要素を形成する、又は含むことが可能である。毛細管効果を発揮する材料は、例えば繊維、フェルト、及び/又は海綿状のプラスチック、及び/又は多孔性のプラスチックを有する、又はこれ(これら)から製造されていることが可能である。例えば、少なくとも一つの作動媒体搬送要素が、弾性的な保持装置によって、特にOリングによって適所に保持されていることが可能である。
【0039】
第二の構造部材は、特にリング形状の作動媒体搬送要素、特に作動媒体分配要素を有する、例えば面側の、特に周回する空所部を有する。
【0040】
別の実施形においては、半径方向の作動媒体通路、特にオイル通路が、構造部材の内の一つ、特に第二、及び/又は第三の構造部材の面に、特に他の構造部材の方に向けられた面に形成されていることが可能である。それは、面に、例えば簡易な空所部、及び/又は段差の形状で、特に簡単に製造可能である。これは、特に、オイルスリットが内側から、構造部材の基本的に中空シリンダー状の内壁内へと、例えば鋸引きによって設けられる公知の構造とは異なる。しかしまた、オイル通路が半径方向の貫通孔として形成されていて、その結果、少なくとも一つの追加的な孔開けステップが当該構造部材の製造の際に必要である公知の構造とも異なる面側の作動媒体通路は、これに対して、例えば同じ形状を形成するツール、特に構造部材型の他の部分と同じバイトによって製造されることが可能である。
【0041】
さらなる発展形においては、複数の構造部材の間に、少なくとも一つの調整パッドが、軸方向の境界部の間の間隔を調整するために設けられている。これによって、支承が正確かつ簡単に調整されることが可能である。よって更には、軸受ソケット領域に、もはや、組み立ての際に動かされ必要があるねじ溝が必要ない。よって、多くの摩耗と、軸受の早期の故障に通じる可能性がある、組み立ての際の削り屑の発生が防止される。
【0042】
特に、第三の構造部材は、軸方向において、第一の構造部材と第二の構造部材の間に配置されていることが可能である。第二の構造部材は、特に、第三の構造部材のポンプ効果を発揮する部分領域、及び/又はモーターの方の側に配置されていることが可能である。第一の構造部材は、特に、第三の構造部材のポンプ効果を発揮する部分領域、及び/又はモーターと反対の方の側に配置されていることが可能である。構造部材のため、軸受ソケットのための固定要素は、特に、構造部材、又は軸受ソケットのポンプ効果を発揮する部分領域、及び/又はモーターと反対の方の側に設けられていることが可能である。
【0043】
一つの発展形に従い、構造部材のうちの一つ、特に第三の構造部材が、ハウジング要素に対するセンタリング部を有することが意図されている。特に、構造部材のうち少なくとも一つ、特に同じ構造部材が、軸受要素に対するセンタリング部を有する。
【0044】
別の有利な実施形に従い、第三の構造部材は、特に段差を付けられた、半径方向センタリング部として形成されたセンタリング周囲を有している。センタリング周囲は、特に完全に周回して形成されている。特に好ましくは、センタリング周囲の軸方向の長さは、5mm以下であり、特に最高3mm、又は約3mmである。特に有利には、代替的に、又は追加的に、センタリング周囲の軸方向の長さは、少なくとも0.5mm、特に少なくとも1mm、又は約1mmである。これによって、第三の構造部材、及び/又は軸受ソケットは、特に簡単に、かつ少ない傾斜リスクハウジング要素の開口部に導入されることが可能である。開口部は特に、対応するセンタリング内周囲を有していて、これは特に、第三の構造部材のセンタリング周囲よりも長い軸方向長さを有することが可能である。
【0045】
特に、構造部材は、例えば公知の構造における半径方向の緩衝要素の領域においてそうであるようなアンダーカットを有さないよう形成されていることが可能である。これによって、一方では構造部材の製造が、そして他方では、緩衝要素の組み立てが更に簡単とされる。
【0046】
ハウジング要素と軸受ソケット又は第一、第二及び第三の構造部材の少なくとも一つの間、及び/又は、第一、第二、及び第三の構造部材の少なくとも二つの間には、有利には、緩衝、シール、及び/又はセンタリング要素、特にOリングが設けられていることが可能である。緩衝要素、例えばOリングによって、当該構造部材の振動除去と、よって全体として有利な振動挙動が達成されることが可能である。例えば、固定要素と、第一の構造部材、特に軸受ソケットの間には、緩衝、シール、及び/又はセンタリング要素が設けられていることが可能である。
【0047】
軸方向におけるハウジング要素と軸受ソケット又は第一、第二及び第三の構造部材の少なくとも一つの間、及び/又は、第一、第二、及び第三の構造部材の少なくとも二つの間には、有利には、調整パッド、特にディスクが設けられていることが可能である。これによって、軸受ソケットは、比較的大きな製造公差においても簡単にその寸法を調整されることが可能であるので、軸受ソケットが組み込まれるポンプにおいては、特に少なくとも基本的に、磁石軸受の変更、特に再調整が必要なく、及び/又は、新たな軸受要素は、先に存在する軸受要素のように、組み立てのために簡単な方法で正確に位置決めされることが可能である。
【0048】
特に軸受ソケットのための固定要素は、有利には、軸受要素のための境界部を有する構造部材と一体式に形成されていることが可能である。
【0049】
基本的には、特に簡単な組み立てのため、第一、第二、び第三の構造部材の少なくとも二つが、少なくとも組み立てのときのために堅固に接続されていると有利である。これは例えば、ボルト、ねじ、中空リベット、ブラインドリベット、スナップ接続、及び/又はプレス接続等によって行われることが可能である。
【0050】
ここに記載した発明の観点は、特にターボ分子ポンプ、特にハイブリッド支承部を有するもの改良に適していて、そしてまた一般的に高速に回転するローターを有する真空ポンプの改良にも適している。
【0051】
以下に本発明を、有利な実施形に基づき添付の図面を参照しつつ説明する。図は以下を簡略的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】ターボ分子ポンプの斜視図
図2図1のターボ分子ポンプの下側の図
図3図2に示された線A-Aに沿うターボ分子ポンプの断面図
図4図2に示された線B-Bに沿うターボ分子ポンプの断面図
図5図2に示された線C-Cに沿うターボ分子ポンプの断面図
図6】発明に係るターボ分子ポンプの断面図
図7図6に従うポンプの発明に係る軸受ソケットの斜視断面図
図8図7軸受ソケットの断面でない図
図9軸受ソケットの分解図
図10】第一の実施形の固定要素を有する軸受ソケット
図11】第二の実施形の固定要素を有する軸受ソケット
図12図6軸受ソケットの方に向けられた部分の拡大図
図13】発明に係るポンプにおける軸受ソケットの組み込み状況
図14軸受ソケットを有する発明に係るポンプの別の断面図
図15】ターボ分子ポンプの別の実施形の断面図
図16】ターボ分子ポンプの別の実施形の断面図
図17】固定要素の別の実施形の図
図18軸受ソケットの別の実施形の図
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1に示されたターボ分子ポンプ111は、インレットフランジ113に取り囲まれたポンプインレット115を有する。このポンプインレットには、公知の方法で、図示されていない真空容器が接続されることが可能である。真空容器からのガスは、ポンプインレット115を介して真空容器から吸引され、そしてポンプを通してポンプアウトレット117へと搬送されることが可能である。ポンプアウトレットには、予真空ポンプ(例えばロータリーベーンポンプ)が接続されていることが可能である。
【0054】
インレットフランジ113は、図1の真空ポンプの向きにおいては、真空ポンプ111のハウジング119の上端部を形成する。ハウジング119は、下部分121を有する。これには、側方にエレクトロニクスハウジング123が設けられている。エレクトロニクスハウジング123内には、真空ポンプ111の電子的、及び/又は電子的コンポーネントが収容されている。これらは例えば、真空ポンプ内に配置される電動モーター125を作動させるためのものである。エレクトロニクスハウジング123には、複数のアクセサリーのための複数の接続部127と、例えば新しいソフトウェアの実行のため、又はポンプチップの読みだしのために形成されていることが可能である接続部が設けられている。更に、データインターフェース129(例えばRS485規格に準拠するもの)と、電源供給接続部131がエレクトロニクスハウジング123には設けられている。
【0055】
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、フローインレット133が、特にフローバルブの形式で設けられている。これを介して真空ポンプ111は通気することが可能である。下部分121の領域には、更にシールガス接続部135(パージガス接続部とも称される)が設けられている。これを介してパージガスが、ポンプによって搬送されるガスに対して電動モーター15を保護するため、モーター室137内に取り込まれることが可能である。モーター室内には、真空ポンプ111の電動モーター125が収容されている。下部分121内には、更に二つの冷却媒体接続部139が設けられている。その際、一方の冷却媒体接続部は冷却媒体のインレットとして、そして他方の冷却媒体接続部はアウトレットとして設けられている。冷却媒体は、冷却目的で真空ポンプ内に導かれることが可能である。
【0056】
真空ポンプの下側面141は、起立面として使用されることが可能であるので、真空ポンプ111は下側面141上に起立して作動させられることが可能である。しかしまた、真空ポンプ111は、インレットフランジ113を介して真空容器に固定されることも可能であり、これによっていわば懸架して作動させられることが可能である。更に真空ポンプ111は、図1に示されたものと異なった向きとされているときにも作動させられることが可能であるよう構成されていることが可能である。下側面141が下に向かってではなく、に向けられて、又は上に向けられて配置されている真空ポンプの実施形も実現されることが可能である。基本的に、任意の向きが可能である。
【0057】
図2に表わされている下側面141には、更に、種々のねじ143が設けられている。これらによって、ここでは詳細に特定されない真空ポンプの構造部材が互いに固定されている。例えば、軸受カバー145が下側面141に固定されている。
【0058】
下側面141には、更に、固定穴147が設けられている。これを介してポンプ111は例えば載置面に固定されることが可能である。
【0059】
図2から5には、冷却媒体配管148が表わされている。この中に、冷却媒体接続部139を介して導入、又は導出される冷却媒体が循環していることが可能である。
【0060】
図3から5の断面図に示されているように、真空ポンプは、複数のプロセスガスポンプ段を有している。これは、ポンプインレット115に及ぶプロセスガスをポンプアウトレット117に搬送するためのものである。
【0061】
ハウジング119内には、ローター149が配置されている。このローターは、回転軸151を中心として回転可能なローター軸153を有している。
【0062】
ターボ分子ポンプ111は、ポンプ効果を奏するよう互いにシリアルに接続された複数のターボ分子ポンプ段を有している。これらターボ分子ポンプ段は、ローター軸153に固定された複数の半径方向のローターディスク155と、ローターディスク155の間に配置され、そしてハウジング119内に固定されているステーターディスク157を有している。その際、一つのローターディスク155とこれに隣接する一つのステーターディスク157がそれぞれ一つのターボ分子ポンプ段を形成している。ステーターディスク157は、スペーサーリング159によって互いに所望の軸方向間隔に保持されている。
【0063】
真空ポンプは、更に、半径方向において互いに入れ子式に配置され、そしてポンプ作用を奏するよう互いにシリアルに接続されたホルベックポンプ段を有する。ホルベックポンプ段のローターは、ローターシャフト153に設けられるローターハブ161と、ローターハブ161に固定され、そしてこれによって担持されるシリンダー側面形状の二つのホルベックロータースリーブ163,165を有している。これらは、回転軸151と同軸に向けられていて、そして半径方向において互いに入れ子式に接続されている。更に、シリンダー側面形状の二つのホルベックステータースリーブ167,169が設けられている。これらは同様に、回転軸151に対して同軸に向けられていて、そして半径方向で見て互いに入れ子式に接続されている。基本的に、他の実施形、例えば別の数量のホルベックポンプ段、ホルベックロータースリーびホルベックステータースリーブを有する実施形も可能である。特に、一つ、又は二つを超えるロータースリーブ、及び/又はステータースリーブも設けられていることが可能である。
【0064】
ポンプ効果を発揮するホルベックポンプ段の表面は、側面によって、つまり、ホルベックロータースリーブ163,165とホルベックステータースリーブ167,169の半径方向の内側面、及び/又は外側面によって形成されている。外側のホルベックステータースリーブ167の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙171を形成しつつ、外側のホルベックロータースリーブ163の半径方向外側面と向かい合っていて、そしてこれと、ターボ分子ポンプに後続する第一のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータースリーブ163の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙173を形成しつつ、内側のホルベックステータースリーブ169の半径方向外側面と向かい合っていて、そしてこれと、第二のホルベックポンプ段を形成する。内側のホルベックステータースリーブ169の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙175を形成しつつ、内側のホルベックロータースリーブ165の半径方向外側面と向かい合っていて、そしてこれと、第三のホルベックポンプ段を形成する。
【0065】
ホルベックロータースリーブ163の下側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられれていることが可能である。これを介して、半径方向外側に位置するホルベック間隙171が、中央のホルベック間隙173と接続されている。更に、内側のホルベックステータースリーブ169の上側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられれていることが可能である。これを介して、中央のホルベック間隙173が、半径方向内側に位置するホルベック間隙175と接続されている。これによって、入れ子式に接続される複数のホルベックポンプ段が互いにシリアルに接続される。半径方向内側に位置するホルベックロータースリーブ165の下側の端部には、更に、アウトレット117への接続チャネル179が設けられていることが可能である。
【0066】
ホルベックステータースリーブ167169の上述したポンプ効果を発揮する表面は、それぞれ、螺旋形状に回転軸151の周りを周回しつつ軸方向に延びる複数のホルベック溝を有する。他方で、ホルベックロータースリーブ163、165のこれに向かい合った側面は、滑らかに形成されていて、そして真空ポンプ111の作動のためのガスをホルベック溝内へと駆り立てる。
【0067】
ローター軸153の回転可能な支承のため、ポンプインレット117の領域に転がり軸受181、びポンプアウトレット115の領域に永久磁石軸受183が設けられている。
【0068】
転がり軸受181の領域には、ローター軸153に円錐形のスプラッシュナット185が設けられている。これは、転がり軸受181の方に向かって増加する外直径を有している。スプラッシュナット185は、作動媒体貯蔵部の少なくとも一つの掻落とし部材と滑り接触状態にある。作動媒体貯蔵部は、互いに積層された吸収性の複数のディスク187を有する。これらディスクは、転がり軸受181のための作動媒体、例えば潤滑剤を染み込ませてある。
【0069】
真空ポンプ111の作動中、作動媒体は、毛細管効果によって作動媒体貯蔵部から掻落とし部材を介して回転するスプラッシュナット185へと伝達され、そして、遠心力によってスプラッシュナット185に沿って、スプラッシュナット185の大きくなる外直径の方向へと、転がり軸受181に向かって搬送される。そこでは例えば、潤滑機能が発揮される。転がり軸受181と作動媒体貯蔵部は、真空ポンプ内において槽形状のインサート189と、軸受カバー145に囲まれている。
【0070】
永久磁石軸受183は、ローター側の軸受半部191と、ステーター側の軸受半部193を有している。これらは、各一つのリング積層部を有している。リング積層部は、軸方向に互いに積層された永久磁石の複数のリング195、197から成っている。リングマグネット195,197は、半径方向の軸受間隙199を形成しつつ互いに向き合っていて、その際、ローター側のリングマグネット195は、半径方向外側に、そしてステーター側のリングマグネット197は半径方向内側に設けられている。軸受間隙199内に存在する場は、リングマグネット195,197の間の磁気的反発力を引き起こす。これは、ローター軸153の半径方向の支承を実現する。ローター側のリングマグネット195は、ローター軸153のキャリア部分201によって担持されている。これは、リングマグネット195を半径方向外側で取り囲んでいる。ステーター側のリングマグネット197は、ステーター側のキャリア部分203によって担持されている。これは、リングマグネット197を通って延びていて、そしてハウジング119の支材205に吊架されている。回転軸151に平行に、ローター側のリングマグネット195が、キャリア部分203と連結されるカバー要素207によって固定されている。ステーター側のリングマグネット197は、回転軸151に平行に一つの方向で、キャリア部分203と接続される固定リング209によって、びキャリア部分203と接続される固定リング211によって固定されている。その上、固定リング211とリングマグネット197の間には、さらばね213が設けられていることが可能である。基本的に、一、若しくは複数のさらばね、は一、若しくは複数の補償要素が設けられていることも可能である。
【0071】
磁石軸受の内部には、緊急用は安全用軸受215が設けられている。これは、真空ポンプの通常の作動時には、非接触で静止し、そしてローター149がステーターに対して半径方向において過剰に変位した際に初めて作用するに至る。ローター149のための半径方向のストッパーを形成するためである。ローター側の構造がステーター側の構造と衝突するのが防止されるからである。安全用軸受215は、好ましくは、特に潤滑されない、又は乾燥潤滑される転がり軸受として形成されていて、そして、ローター149及び/又はステーターと半径方向の間隙を形成する。この間隙は、安全用軸受215が通常のポンプ作動中は作用しないことに供する。安全用軸受が作用するに至る半径方向の変位は、十分大きく寸法取られているので、安全用軸受215は、真空ポンプの通常の作動中は作用せず、そして同時に十分小さいので、ローター側の構造がステーター側の構造と衝突するのがあらゆる状況で防止される。
【0072】
真空ポンプ111は、ローター149を回転駆動するための電動モーター125を有している。電動モーター125のアンカーは、ローター149によって形成されている。そのローター軸153はモーターステーター217を通って延びている。ローター軸153の、モーターステーター217を通って延びる部分には、半径方向外側に、は埋め込まれて、永久磁石装置が設けられていることが可能である。ローター149の、モーターステーター217を通って延びる部分と、モーターステーター217との間には、中間空間219が設けられている。これは、半径方向のモーター間隙を有する。これを介して、モーターステーター217と永久磁石装置は、駆動トルク伝達のため、互いに磁気的に影響することが可能である。
【0073】
モーターステーター217は、ハウジング内において、電動モーター125のために設けられるモーター室137の内部に固定されている。シールガス接続部135を介して、シールガス(パージガスとも称され、これは例えば空気や窒素であることが可能である)が、モーター室137内へと至る。シールガスを介して電動モーター125は、プロセスガス、例えばプロセスガスの腐食性の部分に対して保護されることが可能である。モーター室137は、ポンプアウトレット117を介しても真空引きされることが可能である、つまりモーター室137は、少なくとも近似的に、ポンプアウトレット117に接続される真空ポンプによって実現される予真空状態となっている。
【0074】
モーター室137は、この実施例においては軸受181のための軸受室も形成する。よってシールガスは、腐食性のプロセスガスに対する軸受181のためのバリアーを形成する。基本的に、特に独立した空間においても、軸受ため、及び/又はモーターのためのシールガスが意図されていることが可能である。特にシールガスによって、モーター、軸受、作動媒体貯蔵部、作動媒体、及び/又はセンサー装置、又は任意の他のコンポーネントが支持されることが可能である。
【0075】
モーター室137を画成する壁部221とローターハブ161の間には、更に、いわゆる公知のラビリンスシール223が設けられていることが可能である。特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対してモーター室217をより良好にシールすることを達成するためである。
【0076】
図6には、ターボ分子ポンプとして形成された、発明に係る真空ポンプが示されている。この真空ポンプは、特にそのポンプ効果を発揮する部分領域に関して、図1から5に示された先行技術に係る真空ポンプと類似して形成されていて、そして一般的に相応して、上述の真空ポンプの任意の特徴も発展させられることが可能である。しかし特に、図6に示された真空ポンプは、特に軸受ソケット10により際立っている。これは、三つの独立した構造部材を有する。つまり第一の構造部材11、第二の構造部材12、び第三の構造部材13を有する。
【0077】
軸受ソケット10は、プレート形状、及び/又はディスク形状の固定要素14によってハウジング要素18の開口部16内に固定されている。ハウジング要素18は、ここでは例えば真空ポンプの下部分を形成する。しかし基本的に、ハウジング要素は、外側ハウジングの要素としても、下部分としても形成されている必要はない。むしろ「ハウジング」の概念は、一般的に、真空ポンプにおける固定的な構造を形成し、特に軸受、又は軸受ソケットのためのカバーを形成する要素に関する。この構造、又はこのカバーは、外側ハウジングから独立した要素によっても形成されていることが可能である。これは、特に外側ハウジングに固定されていることが可能である。
【0078】
軸受ソケット10は、更に、軸受要素20(この軸受要素は主として転がり軸受、特にボール軸受として形成されている)を有する。軸受ソケット10、又は構造部材11から13は、その際、更に詳細に説明されるべき、軸受要素20の外22のための境界部を有する。軸受要素20の内23は、ローター24に固定されている。
【0079】
ハウジング要素18の開口部16内には、複数のフェルト層の形式の作動媒体貯蔵部26が設けられている。作動媒体貯蔵部26は、軸方向において、構造部材11から13と固定要素14のモーター28及びポンプ効果を発揮する部分領域30と反対の方の側に配置されている。更に、作動媒体貯蔵部26は、開口部16の軸方向部分に配置されている。これは、軸受ソケット10が配置されている第一の軸方向部分よりも、明らかに大きな直径を有する。相応して、作動媒体貯蔵部26は、軸受ソケット10よりも大きな直径を有する。更に、作動媒体貯蔵部26が、相対的に低い軸方向高さのみを有することが示されている。しかし、相対的に大きな断面、又は直径により、作動媒体貯蔵部26の有利なボリュームが達成される。しかしその際、軸受ソケット10と作動媒体貯蔵部26の軸方向の構造高さは、全体として比較的小さく、そしてコンパクトである。
【0080】
図6の真空ポンプの軸受ソケット10が、以下に図7び8に基づいて詳細に説明される。図7び8、図9から11もまた、軸受ソケット10を、図6に示された組み立て位置に対して180度回転させられている向き、つまり「逆立ちしている」向きで示している点、注意されたい。
【0081】
図7び8は、第一の構造部材11、第二の構造部材12、び軸方向でこれらの間に配置された第三の構造部材13を有する軸受ソケット10を示す。図7においてのみ、そこで選択される断面図に基づいて、第二の構造部材12と別の要素が見て取れる。
【0082】
構造部材11から13は、軸受要素20を半径方向で、び二つの軸方向で制限している。第一の構造部材は、軸方向の境界部32を有している。これは、ここでは軸受要素20の外22のための簡易なストッパー、又は当接部として形成されている。第二の構造部材12は、境界部32と反対の軸方向の境界部34を有する。これは、緩衝要素36を有している。軸方向の境界部34は、更に、同様に第二の構造部材12に形成された緊急ストッパー38を有する。緊急ストッパー38は、通常作動において軸受要素20に間隔をあけていて、しかし軸受要素20の望まれない極端な軸方向のスライドを制限する。第三の構造部材13は、軸受要素20のための半径方向の境界部40を有する。これは、この実施形において同様に緩衝要素42び緊急ストッパー44を有している。代替として、又は追加的に、例えば位置45に、又は第一の構造部材11に半径方向の緊急ストッパーが設けられていることが可能である。基本的に、つまり緊急ストッパーが、通常作動のための境界部と異なる構造部材にも設けられていることが可能であり、特に相応する方向で制限を行う緩衝要素と異なる構造部材に設けられていることも可能である。
【0083】
図7には、軸受要素20の外22と緩衝要素42の間の間隔が見て取ることができる。これは、緩衝要素42の好ましくは円形シリンダー状に形成されていない内側壁部に基づいて、図9から見て取ることが可能であり、そして更に詳細に説明されるように、生ずる。緩衝要素42は、しかし図7に見てとることができない部分(内周の部分)を有する。これらは、直接軸受要素20の外22に当接し、そしてこれを第三の構造部分13に対して支持し、かつ緩衝を行う。好ましくは、軸方向で緩衝要素42の少なくとも一方の側に自由空間、は間隙が設けられている。これによって、緩衝要素42の均一なたみが可能となる。
【0084】
例えば図7に基づいて、境界部32,34び40がそれぞれ互いに独立して、び簡単に製造可能であることが良好に見て取ることができる。よって例えば、境界部32が、簡単に軸方向で処理されることが可能であり、境界部40は完全にこれと独立して半径方向で処理されることが可能であり、そして境界部34はまた独立して軸方向で処理されることが可能である。特に、三つ全ての境界部が、簡易な標準ツールで処理されることが可能である。
【0085】
更に、第二の構造部材12は、その、モーターの方に向けられた側において基本的にフリーであるので、この側は、基本的にトレランス無しで製造されることが可能である。これは、構造部材12が、特別簡単に連続的に棒材から製造されることが可能であることに通じる。その際、同じチャッキングの枠内で、全ての機能面が形成されることが可能であり、そして引き続いて部材はトレランスの無い側で、簡単に切り離される、又は切り取られることが可能である。この例は、本発明が、軸受ソケットの製造をどのように柔軟化し、簡易化し、そして機能面におけるより良好なトレランスを可能とするかを表している。
【0086】
軸受ソケット10は、更に、ここでは例えば、ねじ46として形成される固定手段を有する。これによって、第一の構造部材11は第三の構造部材13に固定されている。第二の構造部材12は、第三の構造部材13の空所部内に、軸方向で押し込められている。構造部材11、12び13は、他の方法で互いに固定されていることも可能である。例えば、少なくとも一つの固定手段が、第一の構造部材11び第二の構造部材12を互いに接続し、結果、第三の構造部材13が、第一び第二の構造部材の間に固定され、特に挟持されているという実施形が考え得る。他の固定手段も考え得る。それは例えば、図7されている、はプラスチックの栓のようなものである。
【0087】
基本的に、構造部材11,12及び/又は13の接続は、解除可能に形成されていることが可能であり、そして例えば、ポンプの構造部材が組み立てられた状態で、接続は解除されることができる。これは例えば、ねじ46が取り外されることによる。構造部材11,12び13は、その際、例えば固定要素14のみによって固定されていることが可能である。結果、本発明をその最も一般的な考えで実現するために、構造部材11,12び13が互いに直接固定されていたり、及び/又は軸受ソケット10へと接続されたりする必要さえな。特に、製造において利点が、そのような固定又は接続無く、既に生じる。構造部材11,12び13の固定された軸受ソケット10への接続は、しかし、追加的に、特に既に上述した、特に軸受交換の際の取り扱いにおける特別な利点を生じる。
【0088】
軸受ソケット10は、更に、オプションのディスク48を有する。これは、ねじ46によってもたらされる力を有利に、第一の構造部材11の面にわたって分配する。
【0089】
第一の構造部材11も、第三の構造部材13びディスク48も、ここでは示されていないが以下図14に基づいて詳細に説明されている、特にシリンダー形状の作動媒体リターン要素51のための整列した複数の空所部50を有する。
【0090】
第一の構造部材は、外側にセンタリング周囲52を有する。これは、開口部16のセンタリング周囲54と、例えば図に見て取れるように、半径方向のセンタリングを形成する。センタリング周囲52は、例えば図7び8に見て取れるように、軸受ソケット10の軸方向の長さに関して比較的短く形成されていて、これによって軸受ソケット10は、特に良好に開口部16内に挿入されることが可能である。特に、これによって挿入の際の傾斜が防止される。また、軸方向で短いセンタリング周囲も特に簡単に製造されることができる。
【0091】
第二の構造部材12は、面に周回して形成される空所部56であって、作動媒体分配要素62のための空所部を有する。これは、空所部50内に配置される作動媒体リターン要素51と接続している。空所部56び50内に配置される作動媒体分配要素、又は作動媒体リターン要素62、又は51は、周囲にわたって均等な作動媒体の分配と、軸受要素20から作動媒体貯蔵部26への作動媒体の順序づけられたリターン搬送に作用する。
【0092】
軸受ソケット10は、更に、Oリング58として形成された保持装置(作動媒体リターン要素のための保持装置)を有する。これらは、空所部50内に配置されていて、そして特に、これらから軸方向で突き出していて、そして作動媒体貯蔵部26と接触している。図7には、作動媒体リターン要素51を有さないOリング58が示されている。作動媒体リターン要素51を保持するため、Oリング58が性的な力を半径方向において外側に向かって作動媒体リターン要素51に及ぼしている。これは図14に見て取ることができる。
【0093】
図9には、軸受ソケット10が分解図で示されている。軸方向の順番で、Oリング58、ねじ46、ディスク48、第一の構造部材11、調整パッド60、緩衝要素42、軸受要素20、軸方向の緩衝要素36、第三の構造部材13、作動媒体分配要素62と第二の構造部材12が見て取れる。
【0094】
調整パッド60は、比較的薄く形成されていて、よって図6,7,び8の組み立てられた状態ではほとんど見て取ることができない又は見て取ることができない。これは、第一の構造部材と第三の構造部材の間に配置されていて、又はオプションとしてはそこに配置されていることが可能である。一、又は複数のそのような調整パッド60によって、境界部32び34の間の間隔は調整されることが可能である。相応して、代替的に、又は追加的に、一、又は複数調整パッドが、第二の構造部材12と第三の構造部材13の間にも設けられていることが可能である。これによって、境界部32び34の段も調整されることが可能である。
【0095】
リング形状の半径方向の緩衝要素42は、軸受要素20の半径方向の緩衝に使用される。図9には、純粋に例示的に、そして基本的にオプション的に、緩衝要素42の内側壁部が、円形シリンダー状に形成されているのではなく、複数の突出部を有し、これらが軸受要素20の円形シリンダー状の形状に対応し、そして作動中、又は組み立て中にこれに当接することが見て取れる。
【0096】
作動媒体分配要素62は、リング形状に形成されていて、そして第二の構造部材12の対応する空所部56内に挿入されている。作動媒体分配要素62は、例えば毛細管効果を発する材料(例えば織物、及び/又はフェルト)から製造されていることが可能である。例えば、しまり嵌め、及び/又はプレス嵌めによって、空所部56内に固定されていることが可能であり、又は単に挿入され、又は例えば接着されていることも可能である。作動媒体分配要素62は、周囲にわたって均等な作動媒体の分配に使用され、そして作動媒体貯蔵部に戻要素、特に空所部50内に配置される作動媒体リターン要素51と関連し、適切な戻し搬送を行う。
【0097】
図10及び11には、ハウジング要素の開口部16内における第一の構造部材11又は軸受ソケット10の固定のための固定要素14に対する様々な実施形が示されている。固定要素14は、基本的にリング形状に形成されていて、そして、図示されていないローターの長手方向軸を取り囲んでいる。固定要素14は、更に、一般的にプレート形状に、かつ好ましくは薄板部品、及び/又は打抜加工部品として形成されている。
【0098】
各固定要素14は、第一の構造部材、軸受ソケット10び開口部16の軸方向領域の断面の半径方向内側にも外側にもびていて、これは例えば図6にも見て取ることができる態様で延びている。その際、固定要素14は、特にこの断面の外側の複数のタブ64と共にびていて、そして特にこの断面の内側でリングプレートを形成する。
【0099】
図10及び11の固定要素14は、その際、特にリングプレートの形成において異なっている。これは、図10の実施形においては半径方向において、基本的に第一の構造部材11まで、はその周囲まで延びている。その際、空所部50は、作動媒体リターン要素51のための別の要素の空所部50と列を成して設けられている。
【0100】
図11の実施形においては、固定要素14はこれに対して、より大きな内直径を有する細いリング形状を有している。これらの実施形は、更に、図10の固定要素14が、軸受ソケット10と、又は第一の構造部材11と、例えばねじ46によって、又は独立した別の固定手段によってしっかりと接続されている点で異なっている。独立した固定手段として、複数の部材を組み立てのためのみに保持する、例えばプラスチック栓が設けられていることも可能である。固定要素14を軸受ソケット10に、又は第一の構造部材11に固定することによって、軸受ソケット10を開口部16内に挿入し、そして固定することが特に簡単に実施されることが可能である。固定された固定要素14が、タブ64にぼされる固定力を、すでに比較的良好に軸受ソケットの断面にわたって分配するからである。
【0101】
図11の実施形においては、これに対して、固定要素14は軸受ソケット10上に載置されている。しかしこれは、組み立ての際、固定要素14と軸受ソケット10又は第一の構造部材11の間で相応する固定ステップが省略されることが可能であるという利点を有する。
【0102】
図12には、軸受ソケット10が拡大されて示されている。ここでも第一の構造部材11、第二の構造部材12、び第三の構造部材13が見て取れる。これらは、固定要素14によって、び複数のねじ66(これらねじの内一つだけが図示されている)によって、ハウジング要素18の開口部16内に固定されていて、詳しく言うとハウジング要素18のショルダー部68に対して固定されている。
【0103】
第三の構造部材13の面には、作動媒体通路70が設けられている。これは、周回する空所部として、そして主として段差、又は段として形成されていて、そして例えば旋削によって簡単に製造されることが可能である。しかし代替として、例えば、半径方向に向けられた空所部(溝等)も考え得る。作動媒体通路70は、軸受要素20から離れ、そして主として作動媒体分配要素62へと向かう作動媒体の移行を可能とする。例えば代替として、又は追加的に、作動媒体が軸受要素20から直接作動媒体リターン要素51へと至ることができるように、作動媒体通路が形成されていることも可能である。これと関連して、作動媒体分配要素62は、特に省略されていることも可能である。基本的に、作動媒体搬送要素は、作動媒体通路70内に設けられていることが可能である。
【0104】
作動媒体が軸受要素20から、特にその外輪22から退出して作動媒体通路70に至ることが可能であるように、軸受20の外22には複数の開口部72が設けられている。これらは例えば図9においても、軸受要素20の周囲に良好に見て取ることができる。
【0105】
作動媒体(作動媒体貯蔵部26内に貯蔵されている)は、よって循環可能である。作動媒体貯蔵部26から、ローター24の円錐形の部分(いわゆるスプラッシュナット185)を介して、遠心力を利用して軸受要素20へと搬送が行われ、そこから開口部72を通って、び作動媒体通路70を通って、作動媒体分配要素62へと至ることができる。ここから、作動媒体は、空所部50(図7び8参照)内に設けられる作動媒体リターン要素51を介して、作動媒体貯蔵部26へと戻される。空所部50内に設けられる作動媒体リターン要素51は、このため、作動媒体分配要素62から、少なくとも構造部材11び13を通って作動媒体貯蔵部26へと延びている。これによってリターン搬送が毛細管効果によった達成される。図12に示された向きにおいて、重力もリターン搬送を行うが、しかし示された構造は、リターン搬送を、他のポンプの向きにおいても可能とする。例えばこれが図1び12と関連して横向きでああたり逆様であったとしても可能である。
【0106】
固定要素14は、ねじ66から軸受ソケット10へと有利に力の分配を行うのみでなく、ワッシャに相応して、特にねじ66をねじ込む際の切りくずの形成と焼き付きを防止する。ねじ66の頭部、又は頭部の部材セグメントは、例えば半径方向において、開口部16の第一の軸方向部分74の断面内まで、又は軸受ソケット10の断面内まで延びている。よって、直接作用する軸方向の予荷重が及ぼされることが可能である。示されたバリエーションにおいては、これに対して、軸方向の予過重が固定要素14のみによって迂回させられ、そして軸受ソケット10へと引き渡される。
【0107】
第二の構造部材12と、ハウジング要素18又はそのショルダー部68の間には、一、又は複数のバランス要素(例えばディスク)が設けられている。これによって、場合によっては、軸受ソケットを作る際に、特に構造部材11,12び13を作る際に発生する不正確性が、基本的に軸方向のローター位置の変更無しで軸受ソケットの交換が行われることが可能であるよう補償されることが可能である。これは特に、磁石軸受にポジティブに作用する。そのようなものは、特に正確な軸方向の調整を必要とするからである。結果、転がり軸受の交換は、これによって簡易化されることが可能である。磁石軸受の調整が必要無いからである。
【0108】
図12には、更に、Oリング58について、どのようにこれが調整パッド60と接して配置されているか見て取ることができる。Oリング58は、ここでは、図14において見て取ることができる作動媒体リターン要素51を空所部50内に保持するという課題のみならず、調整パッドを、ハウジング要素18内において軸受ソケット10を組み付ける前、び間にこれに、つまりここでは第一の構造部材11に固定するという課題も有する。これは組み立てを更に簡単にする。Oリング58は、つまりこの例において二重の機能を有している。
【0109】
図13には、ターボ分子ポンプが下から示されている。その際、軸受ソケット10はハウジング要素18の開口部内に挿入されている。このため軸受ソケット10は、組み立ての際簡単に開口部内に挿入され、そして特に既に組み込まれた軸受要素20を有するローター24上に載置される。軸受要素10は、固定要素14によって、ねじ66によって開口部内に固定されている。固定要素14は、その際、予め軸受ソケット10に固定されていない図11に示された実施形に相当する。図13には、開口部50内に配置された作動媒体リターン要素は、簡単に交換されることが可能であり、詳しく言うと、軸受ソケット10を取り外すことなく交換可能であることが示されている。少ない要素のみが取り外される必要があり、特に、例えば図1に見て取ることが可能なカバー76と、作動媒体貯蔵部26が取り外される必要がある。
【0110】
図14には、発明に係るターボ分子ポンプと軸受ソケット10の別の断面図が示されている。その際、空所部50が第一の構造部材11と第三の構造部材13内に、そしてこの中に配置された作動媒体リターン要素51が見て取ることができるよう、断面が選択されている。これら空所部50内には、簡単にこれら例えばシリンダー状の作動媒体リターン要素51が挿入され、これらは特にフェルト、又は他の毛細管効果を発揮する材料から製造されていることが可能であり、及び/又はこれらは特に作動媒体分配要素62から作動媒体貯蔵部26まで延びている。作動媒体リターン要素51は、例えばロッドとして形成されていることが可能である。
【0111】
図15には、ここでも例示的にターボ分子ポンプとして形成されている真空ポンプの別の実施形が示されている。ハウジング要素18内に支承されている第一の構造部材11、第二の構造部材12、び第三の構造部材13を有する軸受ソケット10が見て取ることができる。軸受ソケット10、好ましくは示されているように第三の構造部材13と、ハウジング要素18の間には、緩衝及び/又はセンタリング要素が設けられている。これは、例えばOリング78として形成されていることが可能である。Oリング78は、空所部80内に配置され、そしてこの中で軸方向に保持されている。
【0112】
空所部80は、この実施形においては、軸受ソケット10、好ましくはここにおけるように第三の構造部材13内に設けられている。図16の実施形は、同様にOリング78を有する。その際、しかしここでは空所部80はハウジング要素18内に設けられている。空所部80を有する各要素は、ハッチングによって強調されている。
【0113】
更に図15び16の実施形は、空所部80がそれぞれ軸方向において中心に対して間隔をあけているという点において共通している。ここで、これは、第三の構造部材のセンタリング周囲52と開口部16又はハウジング要素18のセンタリング周囲によって実現されている。
【0114】
図17には、第一の構造部材11を第三の構造部材13に固定するための代替的な実施形が示されている。ここでは、ディスク48内に突出部82が設けられている。これはディスク48の変形によって形成されている。突出部82は、第一の構造部材11の空所部84を通って、び第三の構造部材の空所部86内へと延びている。突出部は空所部86内に形成され、そしてこれと摩擦結合的接続を、図17における垂直方向に形成する。よって突出部82は、第三の構造部材13において第一の構造部材11を保持する。突出部82は、更に、ディスク48の部材である必要は無く、例え独立した栓として形成されていることが可能である。
【0115】
図17の実施例に従い、他の要素、特に第一の構造部材11、第二の構造部材12、及び第三の構造部材13のうち少なくとも二つが互いに接続されることが可能である。突出部82は、固定手段として例えばねじ46に代えて、又は追加的に設けられていることが可能である。
【0116】
図18は、ハウジング要素18の開口部内に配置されている構造部材11,12び13を有する軸受ソケット10の別の実施形を示す。後述する特別性を除いて、これら要素は、図6の実施形に相応して形成され、そして断面図も相応して選択されている。
【0117】
ハウジング要素18のショルダー部68には、軸受ソケット10が支承されている。図6と異なるのは、ハウジング要素18と軸受ソケット10又は第二の構造部材12の間に、ここでは例示的にOリング96として形成されている緩衝要素が配置されていOリングは、よって空所部98内に配置されている。しかしまた、基本的には、Oリングは例えば空所部無しで設けられ、又は代替的に、若しくは追加的に、空所部が軸受ソケット10に、又は第二の構造部材に設けられていることも可能である。
【0118】
別のOリング96(ここでも例示的に緩衝要素を形成している)は、同時に複数の要素を緩衝するよう設けられている。このため、これは自由空間99内に配置されている。軸方向においては、Oリング98には一方では第三の構造部材13が当接し、そして他方では固定要素14、又は光学的な調整パッド60が当接する。半径方向においては、一方では第一の構造部材11が、そして他方ではハウジング要素18が当接する。Oリング98は、要素の有利なより良好な振動除去のために使用される。
【符号の説明】
【0119】
111 ターボ分子ポンプ
113 インレットフランジ
115 ポンプインレット
117 ポンプアウトレット
119 ハウジング
121 下部分
123 エレクトロニクスハウジング
125 電動モーター
127 アクセサリー接続部
128 サービス接続部
129 データインターフェース
131 電源供給接続部
133 フローインレット
135 シールガス接続部
137 モーター室
139 冷却媒体接続部
141 下側面
143 ねじ
145 軸受カバー
147 固定穴
148 冷却媒体配管
149 ローター
151 回転軸
153 ローターシャフト
155 ローターディスク
157 ステーターディスク
159 スペーサーリング
161 ローターハブ
163 ホルベックロータースリーブ
165 ホルベックロータースリーブ
167 ホルベックステータースリーブ
169 ホルベックステータースリーブ
171 ホルベック間隙
173 ホルベック間隙
175 ホルベック間隙
179 接続チャネル
181 転がり軸受
183 永久磁石軸受
185 スプラッシュナット
187 ディスク
189 インサート
191 ローター側の軸受半部
193 ステーター側の軸受半部
195 リングマグネット
197 リングマグネット
199 軸受間隙
201 担持部分
203 担持部分
205 半径方向の支柱
207 カバー要素
209 支持リング
211 固定リング
213 さらばね
215 緊急用は安全用軸受
217 モーターステーター
219 中間空間
221 壁部
223 ラビリンスシール
10 軸受ソケット
11 第一の構造部材
12 第二の構造部材
13 第三の構造部材
14 固定要素
16 開口部
18 ハウジング要素
20 軸受要素
22 外
23 内
24 ローター
26 作動媒体貯蔵部
28 モーター
30 ポンプ効果を発揮する部分領域
32 境界部 軸方向
34 境界部 軸方向
36 緩衝要素
38 緊急ストッパー
40 境界部 半径方向
42 緩衝要素
44 緊急ストッパー
46 ねじ
48 ディスク
50 空所部
51 作動媒体リターン要素
52 センタリング周囲
54 センタリング内周囲
56 空所部
58 Oリング
60 調整パッド
62 作動媒体分配要素
64 タブ
66 ねじ
68 ショルダー部
70 作動媒体通路
72 開口部
74 軸方向部分
76 カバー
78 Oリング
80 空所部
82 突
84 空所部
86 空所部
96 Oリング
98 空所部
99 自由空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18