(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】編まれた管状の保護スリーブおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
D04B 1/22 20060101AFI20220330BHJP
D04B 1/14 20060101ALI20220330BHJP
D06M 15/256 20060101ALI20220330BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20220330BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20220330BHJP
F16L 57/06 20060101ALI20220330BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
D04B1/22
D04B1/14
D06M15/256
D06M15/643
F16L57/00 A
F16L57/06
F16L59/02
(21)【出願番号】P 2019503733
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(86)【国際出願番号】 US2017043579
(87)【国際公開番号】W WO2018022534
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-16
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チョン・フアイ
(72)【発明者】
【氏名】メブバニ,リテシュ
(72)【発明者】
【氏名】ルディー,リンウッド
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-530061(JP,A)
【文献】特表2012-530195(JP,A)
【文献】特表2013-544341(JP,A)
【文献】特開2013-224739(JP,A)
【文献】特表2017-520435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/22
D04B 1/14
D06M 15/643
D06M 15/256
F16L 57/06
F16L 57/00
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い部材の周りに熱保護を提供するためのニットスリーブであって、
両端部間を長手方向に延在する両縁部を有する編まれた内壁と、
前記内壁に一体的に編み込まれた周方向に連続する管状の外壁とを備え、前記周方向に連続する管状の外壁は、前記周方向に連続する管状の外壁の開いた両端部間を長手方向中央軸に沿って長手方向に延在する中央キャビティを区画し、
前記内壁の前記両縁部は、前記内壁を実質的に管状の巻かれた内壁として形成するために、互いに向かって巻き付け可能であり、
前記周方向に連続する管状の外壁は、前記実質的に管状の巻かれた内壁の少なくとも一部分を周方向に包むために、前記実質的に管状の巻かれた内壁の周りに裏返されるように構成され、これにより、前記実質的に管状の巻かれた内壁は、少なくとも部分的に前記中央キャビティ内に配置される、ニットスリーブ。
【請求項2】
前記周方向に連続する管状の外壁および前記実質的に管状の巻かれた内壁の前記両端部は、前記中央キャビティ内に前記実質的に管状の巻かれた内壁を配置する際に実質的に互いに面一である、請求項1に記載のニットスリーブ。
【請求項3】
前記外壁を形成するヤーンは、前記内壁を形成するヤーンと比べてより大きな耐衝撃性を有する、請求項1に記載のニットスリーブ。
【請求項4】
前記外壁を形成する前記ヤーンは、少なくともポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、綿、レーヨンのうちの1つからなる、請求項
3に記載のニットスリーブ。
【請求項5】
前記内壁を形成する前記ヤーンは、マルチフィラメント鉱物繊維である、請求項
4に記載のニットスリーブ。
【請求項6】
前記内壁を形成する前記ヤーンは、少なくともシリカ、ガラス繊維、セラミック、玄武岩、スレート
およびスラ
グのうちの1つからなる、請求項
5に記載のニットスリーブ。
【請求項7】
前記外壁を形成す
るヤーンは、耐衝撃材料でコーティングされる、請求項1に記載のニットスリーブ。
【請求項8】
前記外壁の前記ヤーンをコーティングする前記耐衝撃材料は、シリコンまたはテフロン(登録商標)である、請求項
7に記載のニットスリーブ。
【請求項9】
前記内壁を形成す
るヤーンは、前記外壁を形成する前記ヤーンと比べてより大きな耐熱性を有する、請求項1に記載のニットスリーブ。
【請求項10】
前記内壁を形成する前記ヤーンは、マルチフィラメント鉱物繊維である、請求項
9に記載のニットスリーブ。
【請求項11】
前記内壁を形成する前記ヤーンは少なくともシリカ、ガラス繊維、セラミック、玄武岩、スレート
およびスラ
グのうちの1つからなる、請求項
10に記載のニットスリーブ。
【請求項12】
それを通って延在する細長い部材の周りに断熱バリアを提供するための管状のテキスタイルスリーブを構築するための方法であって、
両端部間を長手方向に延在する両縁部を有する内壁を編むことと、
前記内壁
が外壁から離れて延在するように、開いた両端部間を中央軸に沿って長手方向に延在する中央キャビティを有する周方向に連続する管状の
前記外壁を、前記内壁と一体的に編むこととを備え、前記内壁は、前記内壁を管状の壁部へと形成するために巻き付け可能であり、前記外壁は、二重層壁部を有する前記スリーブを形成するために前記内壁の周りに裏返されることができる、方法。
【請求項13】
前記内壁を実質的に管状の壁部へと形成するために前記内壁を巻くことと
、周方向に連続する管状の
前記外壁を
、管状の
前記内壁を周方向に囲むために
、巻かれた管状の
前記内壁の周りに裏返すことをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記内壁の前記両縁部のうちの1つを前記外壁に一体的に編むことをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
前記内壁の前記両端部間を長手方向に延在するために、および前記両縁部と一般に平行の関係において延在する前記中央軸を有して前記内壁の前記両縁部間を延在するために、前記外壁を一体的に編むことをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項16】
前記内壁を形成す
るヤーンと比べてより大きな耐衝撃性を有するヤーンを用いて前記外壁を形成することをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項17】
少なくともポリエステルヤーン、ナイロンヤーン、ポリプロピレンヤーン、ポリエチレンヤーン、アクリルヤーン、綿ヤーン、およびレーヨンヤーンのうちの1つを用いて前記外壁を形成することをさらに含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記外壁
のヤーンを耐衝撃材料を用いてさらにコーティングする、請求項
12に記載の方法。
【請求項19】
前記外壁の前記ヤーンをコーティングする前記耐衝撃材料を、シリコンまたはテフロン(登録商標)として提供することをさらに含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
ガラス繊維、シリカ、玄武岩、セラミック、スレート、スラグ等の耐熱性鉱物ヤーンを用いて前記内壁を提供することと、前記内壁を形成す
るヤーンと比べて向上された耐衝撃性を有する異なるヤーンから前記外壁を形成することとをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項21】
第1の種類のヤーンを用いて前記内壁を編むことと、前記第1の種類のヤーンとは異なる第2の種類のヤーンを用いて前記外壁を編むこととをさらに含み、前記第1の種類のヤーンは、前記第2の種類のヤーンと比べて向上された断熱特性を有し、前記第2の種類のヤーンは、前記第1の種類のヤーンと比べて向上された靱性を有する、請求項
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月25日付出願の米国特許仮出願第62/366,521号、および2017年7月24日付出願の米国特許出願第15/658,128号の利益を主張し、その全体が参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1. 技術分野
この発明は、その中に含まれる細長い部材に保護を提供するための一般に管状の保護スリーブに関連し、より具体的には、編まれた管状の保護スリーブおよびそれらの構築方法に関する。
【0003】
2. 関連技術
配線および配管といった細長い部材を摩耗および熱条件に対して保護するための管状のスリーブが知られている。スリーブは通常、比較的高い温度に耐えるために、シリカ、ガラス繊維、セラミック、玄武岩、アラミドまたはカーボンといった耐熱性ヤーンから構築される。そのような耐熱性のあるヤーンから構築されるスリーブは通常、高い温度の管、たとえば排気ガスといった熱い液体または気体用の導管を提供するものを断熱するために、管の境界を超えて熱が外側に放射されることを抑制する目的で使用される。また、スリーブは、たとえばワイヤハーネスといったスリーブの中の内容物を、スリーブ外部の熱への露出から保護するために使用される。上述のスリーブは、熱バリアを提供する際に一般に効果的であるが、スリーブの外壁を形成する耐熱性のあるヤーンは、損傷されやすく、このため、スリーブの有用な寿命は、減らされ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明の1つの態様に従い、その中に含まれる細長い部材の周りに熱保護を提供するためのニットスリーブが、提供される。スリーブは、両端部間を長手方向に延在する両縁部を有する編まれた内壁と、内壁と一体的に編まれた周方向に連続する管状の外壁とを含む。外壁は、外壁の開いた両端部間を中央軸に沿って長手方向に延在する中央キャビティを区画する。内壁を管状のように形成するために、内壁の両縁部は互いに向かって巻き付け可能である。周方向に連続する管状の外壁は、内壁を周方向に取り囲み摩耗から保護するために巻かれた内壁の周りに裏返されるように構成され、二重層壁部を有するスリーブを提供する。
【0005】
本発明の別の態様に従い、外壁を形成するヤーンの種類は、内壁を形成するヤーンの種類とは異なり、外壁を形成するヤーンは、内壁を形成するヤーンと比べてより大きな耐衝撃性を有し、内壁を形成するヤーンは、外壁を形成するヤーンよりも大きい耐熱性を有する。
【0006】
本発明の別の態様に従い、外壁を形成するヤーンは、衝撃および/または摩耗からの損傷に対して内壁への強化された保護を提供するために耐衝撃性および/または耐摩耗性の材料を用いてコーティングされ得、コーティングは、耐熱性のある内壁によって熱への露出からの劣化に対して保護される。
【0007】
本発明の別の態様に従い、外壁および/または外壁のヤーンは、耐衝撃性および耐摩耗性のシリコンまたはテフロン(登録商標)を用いてコーティングされ得る。
【0008】
本発明の別の態様に従い、内壁の両縁部のうちの1つは、外壁に一体的に編み込まれ得る。
【0009】
本発明の別の態様に従い、外壁は、内壁の両端部間および内壁の両縁部間を延在する編まれたつなぎ合わせ目に沿って内壁に一体的に編み込まれ得る。
【0010】
本発明の別の態様に従い、その内部に細長い部材を含むための管状のテキスタイルスリーブを構築するための方法が提供される。方法は、両端部間を長手方向に延在する両縁部を有する内壁を編むことを含む。さらに、外壁が内壁から離れて延在するように、開いた両端部の間を中央軸に沿って長手方向に延在する中央キャビティを有する周方向に連続する管状の外壁を、内壁と一体的に編むことを含む。さらに、内壁を管状の壁部へと形成するために、内壁を巻くことを含む。そして、管状の内壁を周方向に囲むために、巻かれた管状の内壁の周りに周方向に連続する管状の外壁を裏返すことを含み、二重層保護壁部を有するスリーブを提供する。
【0011】
本発明の別の態様に従い、方法は、内壁の両縁部のうちの1つを外壁に一体的に編むことをさらに含み得る。
【0012】
本発明の別の態様に従い、方法は、その中央軸が内壁の両縁部に実質的に平行に延在するように外壁を一体的に編むとともに、内壁の両端部間および内壁の両縁部間を延在する編まれたつなぎ合わせ目に沿って外壁を内壁に編み込むことをさらに含み得る。
【0013】
本発明の別の態様に従い、方法は、内壁を形成するヤーンと比べてより大きな耐衝撃性を有するヤーンを用いて外壁を形成することをさらに含み得る。
【0014】
本発明の別の態様に従い、方法は、外壁を形成するヤーンを耐衝撃材料を用いてコーティングすることをさらに含み得、内壁は、熱が径方向に外側に放射されることを防ぐ役割を担い、これによって外壁を形成するヤーンに対する劣化を防ぎ、また耐衝撃材料コーティングに対する劣化を防ぐ。したがって、内壁と外壁とによって提供される相乗効果は、各々が異なる種類の保護のために構築されることを可能とし、特に、耐熱性は、主として内壁によって提供され、および耐摩耗性および耐衝撃性は、外壁によって提供され、内壁は、部分的に外壁への損傷を防ぐことを助け、またその逆も成立する。
【0015】
本発明の別の態様に従い、方法は、外壁のヤーンをコーティングする耐衝撃材料をシリコンまたはテフロン(登録商標)として提供することをさらに含み得る。
【0016】
本発明の別の態様に従い、方法は、ガラス繊維、シリカ、玄武岩、セラミック、スレート、スラグ、などといった耐熱性鉱物ヤーンを用いて内壁を形成することと、内壁を形成するヤーンと比べて向上された耐衝撃性を有する異なるヤーンから外壁を形成することとをさらに含み得る。耐熱性鉱物ヤーンは径方向外側への熱の放射を抑制し、これによって外壁を形成するヤーンに対する劣化を防ぐ。
【0017】
本発明の別の態様に従い、方法は、第1の種類のヤーンを用いて内壁を編むことと、第1の種類のヤーンとは異なる第2の種類のヤーンを用いて外壁を編むこととをさらに含み得、第1の種類のヤーンは、第2の種類のヤーンと比べて向上された断熱特性を有し、第2の種類のヤーンは、第1の種類のヤーンと比べて向上された靱性を有する。
【0018】
本発明の別の態様に従い、方法は、平台型の編機上で内壁と外壁とを同時に一緒に編むことをさらに含み得る。
【0019】
図面の簡単な説明
本発明のこれらおよび他の態様、特徴および利点は、現在の好ましい実施形態および最良の形態の以下の詳細な説明と、添付の特許請求の範囲と、添付の図面とを関連して考察されると、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の1つの態様に従って構築される編まれた管状のスリーブの概略等角図であり、それを通して延在する保護されるべき細長い管状の部材を有して図示される。
【
図1A】
図1の1A-1A線に一般に沿った概略断面図である。
【
図2A】第1の組み立て前状態を示す
図1のスリーブの図である。
【
図2B】第2の組み立て前状態を示す
図1のスリーブの図である。
【
図2C】組み立てられた状態を示す
図1のスリーブの図である。
【
図3A】本発明の別の態様に従って構築される編まれた管状のスリーブの、
図2Aと同様の第1の組み立て前状態を示す図である。
【
図3B】第2の組み立て前状態を示す
図3Aのスリーブの図である。
【
図3C】組み立てられた状態を示す
図3Aのスリーブの図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
現在好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、
図1は、保護されるべき細長い部材12の周りに配置されるように示される、本開示の1つの実施形態に従って構築される編まれた保護管状のスリーブ10を図示する。例えばエンジンコンパートメントまたは排ガス管の中の熱い配管等のスリーブの中に含まれる細長い部材12からといった熱を径方向に外側に放射させることを防ぐか、または、スリーブ10の中に含まれるワイヤハーネスまたはケーブル等の細長い部材12へと排ガス管等の近傍の熱い部品から内向きに放射される熱に対して保護バリアを提供するかにおいて、スリーブ10は、それが特に極度の熱に対する熱バリアを提供するという点で保護的である。スリーブ10はまた、たとえば、石の衝突等からの衝撃に対しての、研磨物の破片または研磨面に対しての、および燃料、油、水等の液体汚染物に対しての保護など、環境汚染物がスリーブ10またはスリーブ10の中の内容物12に侵入することおよび/または損傷することに対しての保護を提供する。スリーブ10は、一体の単一片の管状の編まれた壁部14を有し、これは、編まれた外壁14’と、外壁14’の中に配置される編まれた内壁14’’とを含む。外壁14’と内壁14’’とは、平台型の編機を介して単一の編み処理において一緒に編まれ、このため、完成されたスリーブ10は、単一の製造物として容易に取り扱われることができ、外壁14’と内壁14’’とを互いにつなぐための二次ステッチ処理を必要としない。外壁14’と内壁14’’の両方、熱保護を提供するが、外壁14’の主要な機能は、破片が内壁14’’に衝突すること、切断すること、および/または摩耗することなどによる、摩耗および損傷に対する機械的な保護を内壁14’’およびその内容物12に提供することである。同時に、内壁14’’の主要な機能は、特に、ラジエータ配管、ホース等の高温流体のための導管としての役割を担う配管を含む、排ガス管用途またはその他の極度の熱用途において、熱が細長い部材12から外側へと、および内壁14’’から径方向へと外側に放射されることを防ぐために、熱バリアおよび/または熱シンクとしての役割を担うなどによって、細長い部材12の周りに熱保護を提供することである。熱を外側に放射することを防ぐ内壁14’’によって、その他の車両システムおよび部品は、排ガス管12を通る熱の流れに露出されることに対して保護される。さらに、外壁14’は、内壁14’’によって遮断される極度の熱への露出に対して保護され、このため、外壁14’を構築するために使用されるヤーンは、所望されるように、内壁14’’を構築するために使用されるヤーンとは異なる特性を有して提供されることができる。さらに、以下に詳細に説明されるように、耐衝撃性および/または耐薬品性を有するコーティング材料は、コーティング材料を劣化させる高温を考慮することなく、外壁14 'またはそのヤーンに塗布され得る。したがって、別個の外壁14’と内壁14’’とによって相乗効果が提供され、各機能は、他のものに対して、またスリーブ10の内部内容物12に対して恩恵を与え、これによってスリーブ10に最適な性能属性を提供する。
【0022】
テキスタイルスリーブ10は、限定することなく一例として、対向する平台を有するコンピュータ化された平台型の編機を介して編まれる。コンピュータ化された平台型の編機上で構築されるスリーブ壁部14に関して、外壁14’と内壁14’’とを構築するために使用される編みステッチの種類は、意図される用途のために所望のように変えられることができる。したがって、壁部14は、例えばジャージ、インターロック、リブ形成ステッチ、またはその他の編みステッチの任意の種類または組み合わせを使用して編まれることができ、このため、外壁14’と内壁14’’とは、単一のまたは複数の編みステッチ種を使用して編まれてもよく、外壁14’と内壁14’’とを形成するために使用される編みステッチの種類は、互いと同じであるか、互いに異なり得る。さらに、壁部14は、外壁14’と内壁14’’とによって提供される直径によって決定されるような任意の適した長さおよび直径を有するように構築され得る。当業者には明らかなように、最終的に内壁14’’は外壁14’内に閉じ込められるので、外壁14’の直径が支配的である。
【0023】
内壁14’’は、2つの台のうちの1つからたとえば針を介して、一般に平坦な材料片として編まれる。内壁14’’は、両端部20,22間を長手方向に延在する両縁部16,18を有する。内壁14’’は、耐熱性のヒートセット不能なマルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントであり、摂氏約-60~1400度の極度の温度環境に耐えるのに適した1つまたは複数のヤーンを用いて編まれる。選択されたマルチフィラメントヤーンは、限定することなく一例として、シリカ、ガラス繊維、セラミック、玄武岩、スレート、スラグ、アラミドまたはカーボンといった、鉱物繊維材料を用いて形成されることができる。鉱物繊維は、連続的なまたは刻まれた繊維構造を有して提供されることができる。極度の熱のいくつかの用途では、有機含有物がそこから除去されるようにスリーブ材料を熱処理し、これによってスリーブ10の耐熱容量を一層増加させることが望ましい。上に列挙された高い耐熱性のヤーンは、極度の熱に耐えるために並外れているが、摩耗および/または衝撃力との直接接触がもたらされると一般に損傷されやすく、このため、外壁14’は、摩耗および衝撃力に対する内壁14’’の耐損傷性を大幅に強化するように、および完成スリーブ10全体としての耐久性を大幅に増加させるように構築される。
【0024】
外壁14’は、平台型の編機の両方の台を介して周方向に連続する管状の壁部として編まれ、1つの台は、主に外壁14’の上側部分または半分(第1の側)を編むことを担い、反対の台は、主に外壁14’の下側部分または半分(第2の側)を編むことを担い、2つの部分は、シームレスに、管状の形状に、同時に一緒に編まれる。編み処理中に、外壁14’は、単一材料片として内壁14’’と一体的に編まれ、
図2Aに示された実施形態は、内壁14’’の両縁部16のうちの1つと一体的に編まれた外壁14’を図示し、内壁14’’の反対の縁部18は、自由に残される。外壁14’が周方向に連続しシームレスであるので、外壁14’は、開いた両端部28,30間を中央軸26に沿って長手方向に延在する中央キャビティ24を区画する。外壁14’は、モノフィラメントヤーンおよび/またはマルチフィラメントヤーンのどちらにせよ、用途のために求められる物理特性に応じて所望の種類のヤーン材料を使用して編まれ得る。内壁14’’が外壁14’に到達する熱に対するバリアとしての役割を担うとすると、外壁14’を編むために使用されるヤーンは、内壁14’’を編むために使用されるヤーンよりも低耐熱性であることができる。そのため、外壁14’を構築するために外部破片からの摩耗および衝撃に耐えるのにより適したヤーンが使用されることができ、この結果、スリーブ10は、外壁14’を介してそこに対して著しい損傷を与える外部起源からの摩耗および破片に耐えることと、同時にまた内壁14’’を介して熱い細長い部材12から放射される熱に対する最適なバリアとして機能することとの両方が可能である。意図される用途のため所望のように外壁14’を編むことに適していると考えられるいくつかのヤーンは、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、綿、レーヨン、および上述の材料のすべての難燃性(FR)バージョンを含む。上述の材料に加えて、所望の場合、内壁を構築するために使用されるものと同じ鉱物繊維ヤーン(複数可)または異なる鉱物繊維ヤーン(複数可)が外壁14’を構築するために使用され得ることが意図され、耐摩耗および/または耐衝撃コーティング材料32は、外壁14’に塗布されるか、外壁14’を編む前に直接鉱物繊維ヤーンに塗布される。外壁14’を形成するために使用されるヤーンに、限定することなく一例として、シリコンまたはテフロン(登録商標)といったコーティング材料32を塗布することによって、外壁14’は、より大きな耐摩耗性/耐衝撃性にされつつ、同時にスリーブ10から外側に放射する熱に対してさらに強化された保護を提供する。上述のように、外壁14’のヤーン(複数可)上にコーティング材料32を使用する能力は、外壁14’に対する熱バリアとしての役目を担う内壁14’’を介して実現され、これによって外壁14’が熱に露出される可能性を減少させ、このため、放射熱がコーティング材料32の耐衝撃および/または耐摩耗属性を劣化させることを防ぐ。上述の高い耐熱性のあるヤーン(複数可)から内壁14’’を形成することによっておよび内壁14’’の厚さを制御することによって、外壁14’の外面34の温度は、排ガス管用途等のたとえ極度の熱用途においても、摂氏約250度を下回った状態に維持可能とされることが意図され、このため、コーティング材料32が受ける熱は、コーティング材料32の熱崩壊を防ぐ機能的制限範囲内に維持される。当然に、スリーブ12の耐久性要件が厳しくない場合には、内壁14’’の厚さは、減少され得るが、このことは結果として熱性能を減少させるだろう。
【0025】
図3A~
図3Cでは、本開示の別の態様に従って構築されるスリーブ110が図示され、100だけ数値がずらされた同じ参照番号は、上述のものと同様の特徴を識別するために使用される。スリーブ110は、スリーブ10に対して上記されたものと同じ特徴をすべて含み、一体の単一片の管状の編まれた壁部114を含み、これは、編まれた外壁114’と、外壁114’の中に配置される編まれた内壁114’’とを含む。さらに、上述のように、外壁114’と内壁114’’とは、単一の編み処理において一緒に編まれる。さらに、外壁114’と、内壁114’’とは、上述のように任意の適した編みステッチおよびパターンを介して、任意の所望のヤーンまたは複数のヤーンから編まれることができる。
【0026】
内壁114’’は、たとえば針を介して2つの台のうちの1つから、両端部120,122間を長手方向に延在する両縁部116,118を有する一般に平坦な材料片として編まれる。
【0027】
外壁114’は、開いた両端部128,130の間を中央軸126に沿って長手方向に延在する中央キャビティ124を区画する周方向に連続しシームレスな壁部として編まれる。外壁114’は、上述のものと同様に単一材料片として内壁と一体的に編まれるが、内壁114’’の両縁部116,118のうちの1つの外壁114’に一体的に編み込まれるよりもむしろ、外壁114’は、内壁114’’の両端部120,122間と内壁114’’の両縁部116,118との間を延在する直線状の編まれたつなぎ合わせ目Sに沿って内壁114’’に一体的に編み込まれて図示され、限定することなく一例として、両縁部116,118間の真中に延在するように示される。そのため、平台型の編機は、内壁114’’の任意の所望の場所に沿って、外壁114’を内壁114’’に一体的に編むようにされ得ることが理解されるべきである。
【0028】
図2Bおよび
図3Bに示されるように、外壁および内壁14’,14’’;114’,114’’を編むことを完了した際に、内壁14’’,114’’の両縁部16,18;116,118は、縁部16,18;116,118が好ましくは互いに少なくともわずかに重畳するように、内壁14’’,114’’を管状のように形成するために互いに向かって巻かれる。そして、
図2Cおよび
図3Cにおける完成された状態に示されるように、周方向に連続する管状の外壁14’、114’は、内壁14’’、114’’の全長を周方向に取り囲むために、巻かれた内壁14’’,114’’の全体の周りに、裏表にかぶせて折られるともいえるように、裏返され、これにより、内壁114’’の両端部120,122が外壁114’の両端部128,130のそれぞれと面一または実質的に面一とされる。したがって、内壁および外壁14’’、14’;114’’,114’は、周方向に連続する二重層保護壁部14、114を有するスリーブ10,110を提供し、内側層14’’,114’’は、熱保護の大部分を提供し、外側層14’、114’は、耐久性の大部分、すなわちスリーブ10,110に対する耐衝撃性および/または耐摩耗性を提供する。
【0029】
当業者には容易に理解されるように、上記の教示に照らして本発明の多くの修正形態および変形形態が可能である。そのような組み合わせが互いに矛盾しない限り、すべての請求項およびすべての実施形態のすべての特徴は互いに組み合わせられることができると考えられる。したがって、本発明は具体的に記載されたものとは別の方法で実施されてもよく、そして本発明の範囲は任意の最終的に許可される請求項によって定義されるということが理解されるべきである。