(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】超音波アレイ用の冗長な接続点を有するフレキシブル回路
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20220330BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
H04R17/00 332A
H04R17/00 330J
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2019513798
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(86)【国際出願番号】 US2017050768
(87)【国際公開番号】W WO2018049222
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-07
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518322506
【氏名又は名称】エコーノース インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】EchoNous, Inc.
【住所又は居所原語表記】8310 154th Avenue Northeast, Building B, Redmond, Washington 98052 US
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】コスキ、ケリー、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ウェッツステイン、ジョエル、ディーン
(72)【発明者】
【氏名】ニーミネン、グレッグ
【審査官】米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0034370(US,A1)
【文献】特開2008-183402(JP,A)
【文献】特表2003-518394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
A61B 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトランスデューサ要素とフレックス回路とを備えており、
前記フレックス回路は、
第1の表面と、前記第1の表面の反対側の第2の表面とを有する絶縁層と;
前記絶縁層の前記第1の表面の複数の第1の導電性パッドと、ここで前記複数の第1の導電性パッドの各々は対応するトランスデューサ要素に電気的に結合され、かつ
直接に接触しており;
前記絶縁層の前記第1の表面における複数の導電性配線と、ここで導電性配線の各々は対応する第1の導電性パッドに電気的に結合されており、
前記絶縁層の前記第2の表面の複数の第2の導電性パッドと、ここで、前記複数の第2の導電性パッドの各々は、対応する第1の導電性パッドに電気的に結合されており、さらに対応する前記第1の導電性パッドに電気的に結合され、かつ接触している対応する前記トランスデューサ要素に電気的に結合され、かつ接触しており、
ここで、前記第1の導電性パッド及び前記第2の導電性パッドの各々は、前記導電性配線の幅よりも大きい幅を有しており、
ここで、前記第1の導電性パッドは、対応する前記第1の導電性パッド及び前記第2の導電性パッドを貫通して形成されている導電性ビアにより、対応する第2の導電性パッドに電気的に結合されており、
を含んでいる
超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記複数の第1の導電性パッド及び前記複数の第2の導電性パッドは、それぞれ前記複数のトランスデューサ要素に取り付けられている
請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記複数のトランスデューサ要素の上に配置されており、かつそれに取り付けられた音響整合層をさらに備えている
請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記絶縁層はポリイミドを含んでいる
請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
第1の表面と前記第1の表面とは反対側の第2の表面とを有する絶縁層と;
前記絶縁層の前記第1の表面の複数の導電性配線と、ここで前記導電性配線の各々は第1の幅を有しており、;
前記絶縁層の前記第1の表面の複数の第1の導電性パッドと、ここで前記第1の導電性パッドの各々は対応する導電性配線に電気的に結合されており、前記第1の導電性パッドの各々は前記導電性配線の前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有しており、;
前記絶縁層の前記第2の表面の複数の第2の導電性パッドと;
複数の導電性ビアと、ここで前記導電性ビアの各々は、対応する第1の導電性パッド、前記絶縁層および対応する第2の導電性パッドを貫通して延在していて、前記導電性ビアの各々は、対応する前記第1の導電性パッドと前記第2の導電性パッドとを互いに電気的に結合させるようになっており、
複数のトランスデューサ要素と、ここで、前記トランスデューサ要素の各々は、対応する第1の導電性パッド及び対応する第2の導電性パッドと電気的に結合され、かつ接触しており、
を含んでいるフレックス回路を備えている
超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記トランスデューサ要素の各々は、対応する前記第1の導電性パッドと前記第2の導電性パッドとに取り付けられている
請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記複数のトランスデューサ要素上に配置されており、かつそれに取り付けられた音響整合層をさらに備えている
請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記絶縁層はポリイミドを含む
請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
絶縁層の第1の表面に複数の導電性配線を形成するステップと;
前記絶縁層の前記第1の表面に複数の第1の導電性パッドを形成するステップと、ここで前
記導電性配線の各々は対応する第1の導電性パッドに電気的に結合されており、前記第1の導電性パッドの各々は前記導電性配線の幅よりも大きい第1の幅を有しており、;
前記絶縁層の第2の表面に複数の第2の導電性パッドを形成するステップと、ここで前記第2の表面は前記第1の表面の反対側であり、前記第2の導電性パッドの各々は前記導電性配線の幅よりも大きい第2の幅を有しており、;
複数の導電性ビアを形成することにより、前記第1の導電性パッドの各々を対応する第2の導電性パッドに電気的に結合させるステップと、ここで前記導電性ビアの各々は対応する第1の導電性パッド、前記絶縁層及び対応する第2の導電性パッドを貫通して延びており、;
対応する第1の導電性パッド及び対応する第2の導電性パッドを、対応する超音波トランスデューサ要素に電気的に結合させるステップと、ここで、対応する前記第1の導電性パッド及び前記第2の導電性パッドは、対応する前記超音波トランスデューサ要素と接触しており、
を備えている
方法。
【請求項10】
前記複数の第1の導電性パッドを形成するステップは、
導電性バスを前記絶縁層の前記第1の表面に取り付けるステップと、ここで前
記導電性配線の各々は前記導電性バスの対応する部分に結合されており;
前記導電性バスをダイシングして前記複数の第1の導電性パッドを形成するステップとを含んでいる
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の第2の導電性パッドを形成するステップは、
導電性バスを前記絶縁層の前記第2の表面に取り付けるステップと;
前記導電性バスをダイシングして前記複数の第2の導電性パッドを形成するステップとを含んでいる
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の第1の導電性パッドを形成するステップは、前記絶縁層の前記第1の表面に第1の導電性バスを取り付けるステップと、前記第1の導電性バスをダイシングするステップとを含んでおり、
前記複数の第2の導電性パッドを形成するステップは、前記絶縁層の前記第2の表面に第2の導電性バスを取り付けるステップと、前記第2の導電性バスをダイシングするステップとを含んでいる
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
対応する前記超音波トランスデューサ要素に音響整合層を形成するステップをさらに備えている
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
圧電材料のブロックを前記複数の第1の導電性パッドおよび前記複数の第2の導電性パッドに取り付けるステップと;
前記圧電材料のブロックをダイシングして複数の超音波トランスデューサ要素を形成するステップとをさらに備えている
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の導電性パッドは、前記第1の導電性パッドとは異なる形状を有している
請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項16】
前記第2の導電性パッドの各々は、前記導電性配線の前記第1の幅よりも大きい第3の幅を有している
請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項17】
前記第2の導電性パッドは、前記第1の導電性パッドとは異なる形状を有している
請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
(技術分野)
本出願は超音波システムに関し、より詳細には音響スタック(acoustic stack)内の超音波トランスデューサ要素(ultrasound transducer elements)に取り付けるためのフレックス回路(flex circuit)を含む超音波システムに関する。
【0002】
(関連技術の説明)
超音波トランスデューサは、一般に、超音波信号(たとえば超音波パルス)の送信を駆動するため、および/または反射超音波信号(たとえばエコー信号)を受信するための、駆動または受信回路などの回路に電気的に接続されている圧電トランスデューサ要素を含む。トランスデューサ要素は、トランスデューサ要素と駆動回路(driving circuitry)、受信回路(receiving circuitry)、処理回路(processing circuitry)などとの間で信号を伝送するための信号線(signal lines)を提供するフレックス回路に結合されている。そのような回路は、典型的には、機器カート(equipment cart)またはハンドヘルドコンピューティング装置(handheld computing device)などの、超音波プローブ(ultrasound probe)の外部に配置されている電子機器に含まれている。したがって、フレックス回路は、トランスデューサ要素を処理、駆動および/または受信回路に結合させる。
【0003】
動作中、電気パルス(electrical pulse)がトランスデューサ要素の電極に印加され、それによってトランスデューサ要素の寸法が機械的に変化し、たとえば、患者の体内の臓器やその他の生理的な特徴等の関心のある目標構造(target structure of interest)に向けて送信される音波が生成される。送信された音波はそして、関心のある目標構造から反射され、トランスデューサ要素の表面で受信され、それに応じて、関連する処理および/または受信回路によって、受信信号として検出することのできる電圧が生成される。
【0004】
超音波トランスデューサは、互いに電気的および音響的に(acoustically)絶縁されたトランスデューサ要素の1つ以上の列を持つ位相アレイ(phased arrays)として配置されたトランスデューサ要素を含む場合がある。そのようなアレイは64個以上の個別のトランスデューサ要素を含む場合がある。音響スタックは、そのようなトランスデューサ要素を含み、裏打ち層(backing layer)、フレックス回路、トランスデューサ要素(たとえば圧電セラミック要素(piezoelectric ceramic elements))、および音響整合層(acoustic matching layer)を含む層構造として形成されうる。典型的には、フレックス回路は絶縁層の一方の側に形成された導電性配線(conductive traces)を含んでいる。そして導電性配線は対応するトランスデューサ要素に結合されている。
【0005】
超音波アレイ、およびそのようなアレイの設計の重要な特徴は、アレイ内のトランスデューサ要素からの、およびトランスデューサ要素への信号パルス経路(signal pulse path)の信頼性である。もし回路短絡(short circuit)、開放(open circuit)、高抵抗または信号経路内の何らかの不備があると、結合されたトランスデューサ要素への、およびトランスデューサ要素から供給された信号は、そこから超音波画像が正確に形成され得るための信頼性ある情報を生成しない場合がある。
【0006】
駆動回路からトランスデューサ要素へ提供される全ての駆動信号は個別の導電性配線を通じて提供されるため、フレックス回路の導電性配線が対応するトランスデューサ要素に結合される点は重要な結合点(critical coupling point)である。同様に、受信されたエコー信号は、トランスデューサ要素に結合された個別の導電性配線を通じてトランスデューサ要素から受信および/または処理回路に提供されうる。
【概要】
【0007】
本開示は、部分的には、超音波トランスデューサ内のフレックス回路を通る、より良好な信号経路の連続性(signal path continuity)に対する要望に対処するものである。フレックス回路を通る信号経路の連続性を改善することによって、処理、駆動および/または受信回路とトランスデューサ要素との間のより信頼性の高い信号通信がもたらされる。
【0008】
本開示によって提供される実施形態は、超音波トランスデューサ内、たとえば超音波トランスデューサの音響スタック内の、各トランスデューサ要素に信号を送信するための冗長接続点を提供することによって、フレックス回路を通る信号通信を改善させる。冗長接続点は、フレックス回路の絶縁層の両側に導電性パッド(conductive pads)を含めることによって設けられうる。絶縁層の一方の側の導電性パッドは、絶縁層の同じ側に形成された対応する導電性配線に結合されている。さらに、導電性パッドは絶縁層の反対側に形成されており、そして絶縁層の反対側の対応する導電性パッドは、互いに整列されており(aligned with one another)、かつ絶縁層を貫通して形成された導電性ビア(conductive vias)によって互いに結合されている。したがって、たとえ導電性パッドのうちの1つがトランスデューサ要素に取り付けられる点に欠陥(そのような欠陥は、たとえば開回路、高抵抗などを引き起こす可能性がある)が存在したとしても、信号は依然として確実に、絶縁層の反対側に形成された導電性パッドによって提供される第2の電気的接続点を通ってトランスデューサ要素へ、およびトランスデューサ要素から供給されうる。
【0009】
少なくとも1つの実施形態では、複数のトランスデューサ要素と1つのフレックス回路とを含んだ超音波トランスデューサが提供される。フレックス回路は、第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面とを有する絶縁層を含んでいる。複数の第1の導電性パッドが絶縁層の第1の表面に形成されており、第1の導電性パッドの各々は、対応するトランスデューサ要素に電気的に結合されている。複数の第2の導電性パッドが絶縁層の第2の表面に形成されており、第2の導電性パッドの各々は、対応する第1の導電性パッドと対応するトランスデューサ要素とに電気的に結合されている。
【0010】
別の実施形態では、フレックス回路を含む超音波トランスデューサが提供される。フレックス回路は、第1の表面と第1の表面とは反対側の第2の表面とを有する絶縁層と、絶縁層の第1の表面の対応する第1の導電性パッドにそれぞれ電気的に結合された絶縁層の第1の表面の複数の導電性配線と、絶縁層の第2の表面の複数の第2の導電性パッドとを含んでいる。フレックス回路は複数の導電性ビアをさらに含んでおり、各々の導電性ビアは、対応する第1の導電性パッドと、絶縁層と、対応する第2の導電性パッドとを貫通して延在している。各々の導電性ビアは、対応する第1および第2の導電性パッドを互いに電気的に結合させる。超音波トランスデューサは複数のトランスデューサ要素をさらに含んでいてよく、各トランスデューサ要素は、対応する第1の導電性パッドと対応する第2の導電性パッドとに電気的に結合されている。
【0011】
さらに別の実施形態では、絶縁層の第1の表面に複数の導電性配線を形成するステップと;絶縁層の第1の表面に複数の第1の導電性パッドを形成するステップと、ここで第1の導電性配線の各々は対応する第1の導電性パッドに電気的に結合されており;絶縁層の第2の表面に複数の第2の導電性パッドを形成するステップと、ここで第2の表面は第1の表面の反対側であり;第1の導電性パッドの各々を対応する第2の導電性パッドに電気的に結合させるステップとを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の1つ以上の実施形態による、超音波トランスデューサ内の音響スタック用のフレックス回路の斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の1つ以上の実施形態による、超音波トランスデューサ内の音響スタック用の別のフレックス回路の斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、本開示の1つ以上の実施形態による、フレックス回路を含んだ超音波トランスデューサ音響スタックを示す正面図である。
【
図3B】
図3Bは、本開示の1つ以上の実施形態による、
図3Aに示した音響スタックの側面図である。
【詳細な説明】
【0013】
本明細書に記載した様々な実施形態では、超音波トランスデューサ用のフレックス回路は、フレックス回路の絶縁層の2つの互いに反対を向いたそれぞれの側面に形成された導電性パッドを含んでいてよい。絶縁層の第1の側面の導電性パッドは、対応する導電性パッドおよび絶縁層を貫通して形成された導電性ビアによって、絶縁層の第2の側面の対応する導電性パッドにそれぞれ電気的に結合されている。絶縁層の第1の側面または第2の側面の一方の導電性パッドは、フレックス回路の対応する導電性配線に電気的に結合されている。フレックス回路は、音響スタック内の各トランスデューサ要素が少なくとも2つの導電性パッド、すなわち導電性ビアによって互いに電気的に結合された絶縁層の互いに反対を向いた両側面の導電性パッドに電気的に結合されるように音響スタックに結合されていてよい。したがって、フレックス回路は、導電性ビアを介して互いに結合された各々の導電性パッドによって提供される少なくとも2つの接点を提供し、それを介して導電性配線に沿って送信される信号(たとえば接続されたトランスデューサ要素を駆動して超音波パルスを送信する駆動信号、または接続されたトランスデューサ要素によって受信されたエコー信号)がトランスデューサ要素に供給されるか、またはトランスデューサ要素から受信されうる。
【0014】
図1は、超音波トランスデューサ内の音響スタック用のフレックス回路10の少なくとも1つの実施形態の斜視図である。フレックス回路10は、絶縁層12と導電性配線14と導電性パッド16とを含んでいる。
【0015】
絶縁層12は、ポリイミドなどの任意の適切な可撓性の絶縁材料から作られている。導電性配線14は、絶縁層12の第1の表面11(たとえば前面)に形成されている。導電性配線14は、任意の導電性材料から作られていてよく、1つ以上のマスク(masks)または成膜パターン(deposition patterns)を用いて絶縁層12に導電性材料を堆積させるなどの任意の適切な工程によって形成されてよい。1つ以上の実施形態において、導電性配線14は銅を含んでいる。
【0016】
絶縁層12の第1の表面11に形成された各導電性配線14は、第1の表面11の対応する導電性パッド16aに結合されている。導電性パッド16aは、導電性配線14と同じ工程で、および同じ材料を用いて形成されていてよい。
【0017】
図1に示した実施形態では、絶縁層12の第1の表面11の各導電性パッド16aは、絶縁層12の第2の表面13(たとえば裏面)に形成された対応する導電性パッド16bと位置合わせされていて、かつ電気的に結合されている。導電性パッド16a,16bは、導電性のスルーホールまたはビア18によって互いに電気的に結合されている。
【0018】
ビア18は、位置合わせされて対応している第1の表面11の導電性パッド16aと第2の表面13の導電性パッド16bとを貫通して形成されている。スルーホールは、たとえば、絶縁層12の第1および第2の表面11,13の位置合わせされた導電性パッド16a,16bを貫通する穿孔(drilling)、打ち抜き(punching)などによって形成されてよく、次にこのスルーホールは銅などの導電性材料を用いてメッキされてよい。このように、ビア18は、対応する導電性パッド16a,16bを絶縁層12を貫いて電気的に結合させる。したがって、絶縁層12の第1の表面11の配線14を通じて供給される信号は、ビア18を介して、第1の表面11の導電性パッド16aおよび第2の表面13の対応する導電性パッド16bに供給される。
【0019】
したがって、フレックス回路10は、音響スタックに取り付けられたときに冗長な電気接点を提供する。すなわち、フレックス回路10は、絶縁層12の各側面に形成された対応する導電性パッド16a,16bがそれぞれ音響スタック内の対応するトランスデューサ要素と接触しているように音響スタックに取り付けられてよい。さらに、対応する導電性パッド16a,16bは、導電性ビア18によって互いに電気的に結合されているため、絶縁層12の第1の表面11の配線14を通って供給される信号は、絶縁層12の両表面11,13の対応する導電性パッドによって、対応するトランスデューサ要素に送信される。したがって、たとえば、対応する導電性パッド16a,16bのうちの1つが、トランスデューサ要素との接続に欠陥がある場合か、または電気信号を伝送する能力が何らかの原因で低下した場合であっても、音響スタック内のトランスデューサ要素への信号(たとえば駆動信号)の伝送が容易にされうる。
【0020】
フレックス回路10は、たとえばダイシングソーを用いて個々の導電経路(conductive paths)にダイシングされうる。フレックス回路10は、各導電経路が対応する導電性配線14と絶縁層12のそれぞれの表面に形成された対応する導電性パッド16a,16bとを含むようにダイシングされてよい。フレックス回路10は、
図1に示したように、たとえばダイシングライン22,24に沿って切断されてよい。
【0021】
図2は、本開示の1つ以上の代替的な実施形態によるフレックス回路100の斜視図である。
図2におけるフレックス回路100は、以下に論じる相違点を除いて、構造および機能において
図1におけるフレックス回路10と同様である。フレックス回路10と100とに共通の特徴は、簡潔化のために、ここでは再び説明しない。
【0022】
フレックス回路10と100との主な違いは、
図2におけるフレックス回路100において、絶縁層12の第2の表面13の導電性パッドが単一の導電性バス(conductive bus)116から形成されていることである。導電性バス116は、たとえば成膜技術(deposition technique)を用いて銅を原料として形成されてよい。代替的には、導電性バス116は、たとえば接着剤を用いて絶縁層12の第2の表面13に接着されている、導電性材料の予め製造された部品であってもよい。1つ以上の実施形態では、導電性バス116は約5ミリメートルの高さ(h)を有している。導電性バス116は、導電性パッド16aとして絶縁層12の反対側の表面(たとえば図示したように第2の表面13)に形成されているか、またはその表面に接合されている。
図1のフレックス回路10におけるのと同じように、導電性ビア18が絶縁層12の第1の表面11の導電性パッド16aを貫通して形成されており、それによって、導電性パッド16aが絶縁層12の第2の表面13の導電性バス116の対応する領域に電気的に結合される。
【0023】
次に、フレックス回路100は、ダイシングソーを用いて、たとえばダイシング線122,124に沿って切断することによって、個々の導電経路にダイシングされうる。ダイシング線122,124で示したように、導電性バス116と絶縁層12とを貫いてダイシングした後では、フレックス回路100は、絶縁層の第1の表面11に形成された配線14と、第1の表面11の導電性パッド16aと、導電性ビア18を介して対応する導電性パッド16aに結合された第2の表面13の導電性バス116の対応する導電性領域(すなわちダイシング後の導電性バス116の一部)とからなる個々の導電経路を含んでいる。
【0024】
図3Aは、本開示の1つ以上の実施形態によるフレックス回路を含む超音波トランスデューサ音響スタック200を示す正面図であり、
図3Bは、
図3Aに示した音響スタック200の側面図である。
【0025】
音響スタック200は、複数のトランスデューサ要素32、音響整合層34およびフレックス回路10を含んでいる。フレックス回路10はトランスデューサ要素32の下面に取り付けられており、音響整合層34はトランスデューサ要素32の上面に取り付けられている。
【0026】
フレックス回路10と、トランスデューサ要素32と、音響整合層34とは、エポキシなどの接着材料を用いて互いに貼り付けられることで音響スタック200を形成しうる。1つ以上の実施形態では、トランスデューサ要素32は、圧電セラミック材料などの圧電材料を用いて作られている。トランスデューサ要素32は、絶縁層12の第1および第2の表面11,13に形成された導電性パッド16a,16bにそれぞれ電気的に結合された電極(たとえば信号電極および/または接地電極)を含む場合がある。代替的には、トランスデューサ要素32を導電性エポキシ、ハンダ、ハンダペーストなどでフレックス回路10に取り付けることによって、トランスデューサ要素32が、対応する導電性パッド16a,16bに電気的に結合されうる。各トランスデューサ要素32が絶縁層12の各表面11,13に1つずつある2つの導電性パッド16a,16bに電気的に結合され、それによって、関連する導電性配線14からトランスデューサ要素32へ信号を送信するための冗長接点が確立されるように、フレックス回路10がトランスデューサ要素32に取り付けられる。
【0027】
図3Aおよび
図3Bに示した音響ブロック200は、様々な製造工程によって形成されてよい。1つの実施形態では、トランスデューサ要素32は、最初は圧電材料の単一のブロックとして提供される場合がある。同様に、絶縁層12の第1の表面11の導電性パッド16aおよび/または絶縁層13の第2の表面13の導電性パッド16bは、最初は、絶縁層12の対応する配線14に電気的に結合された導電性材料のブロック(たとえば
図2に示した導電性バス116)として提供される場合がある。
【0028】
スルーホールは、一旦形成されると導電性パッド16b内に含まれることになる位置で、第2の表面13の導電性バス116を貫通して、たとえば穿孔、打ち抜きなどによって形成されうる。スルーホールは、導電性バス116と、絶縁層12と、絶縁層12の第1の面11の導電性パッド16aとを貫通して延在するように形成されている。次いで、スルーホールは、銅などの導電性材料を用いてメッキされるかまたは他の方法で被覆されて、ダイシングされた後に絶縁層12の第2の表面13の導電性パッド16bとなる導電性バス116の関連する領域に導電性パッド16aを電気的に結合させる導電性ビア18を形成しうる。
【0029】
圧電ブロックは、第1の表面11の導電性パッド16aと第2の表面13の導電性バス116とが圧電ブロックと接触しているように、フレックス回路10に取り付けられうる。次いで、圧電ブロックおよびフレックス回路10は、ダイシングソーを用いて個々のトランスデューサ要素32および対応する導電性パッド16a,16bにダイシングされうる。このようにして、複数の個々のトランスデューサ要素32は、トランスデューサ要素32の各々がフレックス回路10の一対の関連する導電性パッド16a,16bに電気的に結合された状態で形成されうる。導電性パッド16aの各々は、絶縁層12の第1の表面11に形成された対応する配線14に電気的に結合されており、導電性パッド16aの各々はさらに、導電性ビア18によって絶縁層12の第2の表面13の対応する導電性パッド16bに結合されている。したがって、フレックス回路10の各配線14は、絶縁層12の第1の表面11の導電性パッド16aと、絶縁層12の第2の表面13の導電性パッド16bとに結合されているため、フレックス回路10とトランスデューサ要素32との間に冗長な電気接続が形成されている。
【0030】
圧電ブロックが個々のトランスデューサ要素32にダイシングされた後、上述のように、トランスデューサ要素32間および/またはフレックス回路10の隣接する導電性パッド16a,16b間に形成された隙間は、エポキシ充填材40のような接着材料を用いて充填されうる。
【0031】
次いで、音響整合層34は、エポキシなどの任意の適切な接着剤を用いて、トランスデューサ要素32の上面および/またはエポキシ充填材40に取り付けられうる。
【0032】
絶縁層12の第1の表面11の導電性パッド16aは、絶縁層12の第2の表面13の対応する導電性パッド16bと必ずしも同じ寸法を有している必要はない。たとえば、
図2に示したように、導電性パッド16bは導電性バス116を貫いてダイシングすることによって形成されてよく、一方、導電性パッド16aは配線14と共に適切な寸法で既に形成されていてよい。そのような場合、フレックス回路10をダイシングした後に形成される導電性パッド16bは、予め形成された導電性パッド16aよりも大きな面積寸法を有する場合がある。
【0033】
別の実施形態では、トランスデューサ要素32は、最初は圧電材料の単一ブロックとして提供される場合がある一方で、フレックス回路10は、対応する導電性パッド16a,16bを貫通して形成された導電性ビア18を有する、複数の配線14および関連する導電性パッド16a,16bに予め切断されている場合がある。事前に切断されたフレックス回路10は、後に個々のトランスデューサ要素32に切断されることになる領域において、導電性パッド16a,16bの各関連付けられた対が圧電ブロックに接触するように、圧電ブロックに取り付けられていてよい。その後、圧電ブロックは、たとえばダイシングソーを用いて個々のトランスデューサ要素32にダイシングされる。
【0034】
さらに別の実施形態では、音響スタック10は、既にダイシングされたトランスデューサ要素32と、複数の配線14およびそれに関連した、対応する導電性パッド16a,16bを貫通して形成された導電性ビア18を有する導電性パッド16a,16bを形成するように既にダイシングされたフレックス回路10とから形成されうる。そのような場合、トランスデューサ要素32は、絶縁層12の第1および第2の表面11,13の対応する導電性パッド16a,16bに、各々、直接取り付けられるか、そうでなければ電気的に結合されていてよい。エポキシ充填材40が塗布されていてよく、音響整合層34は本明細書に記載したようにトランスデューサ要素32に取り付けられてよい。
【0035】
上述の実施形態の様々な特徴や要素は、さらなる実施形態を提供するために追加の方法で組み合わせることができる。上記の詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を実施形態に加えることができる。一般に、後述の特許請求の範囲において使用される用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲と共に全てのありうる実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されることはない。