(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】巻線され、連結された強磁性ロッドを有するアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/08 20060101AFI20220330BHJP
H01Q 3/32 20060101ALI20220330BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20220330BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H01Q7/08
H01Q3/32
H01Q3/36
H01Q1/24 Z
(21)【出願番号】P 2019516543
(86)(22)【出願日】2017-09-25
(86)【国際出願番号】 FR2017052574
(87)【国際公開番号】W WO2018055313
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-04
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519098729
【氏名又は名称】テデエフ
(73)【特許権者】
【識別番号】519099346
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ ドゥ レンヌ 1
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カヴェーリン、エフゲニー
(72)【発明者】
【氏名】パラド、セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヒムディ、モハメド
(72)【発明者】
【氏名】コロンベル、フランク
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-101454(JP,A)
【文献】特開2000-183632(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01063784(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0024429(US,A1)
【文献】特開2007-086005(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第01063784(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0318624(US,A1)
【文献】特開昭63-171004(JP,A)
【文献】特開平05-090828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0160723(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2008-0064215(KR,A)
【文献】特開平10-051225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/08
H01Q 3/32
H01Q 3/36
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キロメートル波、ヘクトメートル波、またはデカメートル波を送信および/または受信するためのフェライトアンテナであって、
主巻線(1)と呼ばれる少なくとも1つの第1の巻線と、主強磁性ロッド(4)と呼ばれる少なくとも1つの第1の強磁性ロッドと、同調システム(3)と、を備える、主コンター部と呼ばれる少なくとも1つの第1の共振コンター部であって、各主巻線(1)が、主強磁性ロッド(4)の周囲に巻かれ、前記主巻線(1)と並列に接続されたコンデンサを備える前記同調システム(3)に接続される、少なくとも1つの第1の共振コンター部
を備える、フェライトアンテナにおいて、
各主巻線(1)から電気的に分離された二次巻線(2)と、前記二次巻線(2)が周囲に巻かれている二次強磁性ロッド(5)と、を備える、二次コンター部と呼ばれる第2の非共振コンター部をさらに備
え、
各主巻線(1)と前記二次巻線(2)との磁気結合を可能にするように、各主強磁性ロッド(4)および前記二次強磁性ロッド(5)が互いに並列に配置さ
れ、
前記主強磁性ロッド(4)および前記二次強磁性ロッド(5)は、それらの主方向に沿って互いに対して並進移動することができるように構成され、
ていることを特徴とする、フェライトアンテナ。
【請求項2】
前記コンデンサは可変コンデンサであることを特徴とする、請求項
1に記載のフェライトアンテナ。
【請求項3】
追加的なコンター部と呼ばれ、前記主コンター部および前記二次コンター部に対して並列に配置された少なくとも1つの第2の主コンター部を備えることを特徴とする、請求項1から
2のいずれか一項に記載のフェライトアンテナ。
【請求項4】
前記追加的なコンター部のうちの少なくとも1つは、前記主コンター部の前記主強磁性ロッドの前記主方向を横切る方向に、前記主コンター部に対して並進移動することができるように構成されることを特徴とする、請求項
3に記載のフェライトアンテナ。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の2つのフェライトアンテナを備え、第1のフェライトアンテナと、前記第1のフェライトアンテナの主強磁性ロッドおよび二次強磁性ロッドの方向に垂直な方向に沿って自身の主強磁性ロッドおよび二次強磁性ロッドが延びる第2のフェライトアンテナであって、前記第2のフェライトアンテナが前記第1のフェライトアンテナに対して±π/2の電気的位相シフトを有する、第2のフェライトアンテナと、を備えることを特徴とするアンテナシステム。
【請求項6】
請求項1から
4のいずれか一項に記載のフェライトアンテナを備えることを特徴とする、キロメートル波、ヘクトメートル波、またはデカメートル波を送信/受信するためのシステム。
【請求項7】
請求項
5に記載のアンテナシステムを備えることを特徴とする、キロメートル波、ヘクトメートル波、またはデカメートル波を送信/受信するためのシステム。
【請求項8】
請求項1から
4のいずれか一項に記載のアンテナと、前記アンテナに接続され、前記アンテナが受信した信号を処理するため、および/または送信対象の信号を前記アンテナに送信するように構成された、送信/受信のための装置と、を備えることを特徴とする、キロメートル波、ヘクトメートル波、またはデカメートル波を受信および/または送信するための電子通信端末。
【請求項9】
前記アンテナの主同調周波数を電子的および/または機械的に調整するための手段を備えることを特徴とする、請求項
8に記載の電子通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キロメートル波(30~300kHz)、ヘクトメートル波(0.3~3MHz)、またはデカメートル波(3~30MHz)を送信および/または受信するためのアンテナに関する。詳細には、本発明は、連結された強磁性ロッドを有するフェライトアンテナ、すなわち、少なくとも2つの強磁性ロッドの周りに巻かれた少なくとも2つの巻線を備えるフェライトアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
フェライトアンテナは、一般に、現実の標準化されたインピーダンス(例えば50Ω)を有するシステムにおいてフェライトアンテナを効果的に使用することを妨げる強い無効成分を含む、整合されていないインピーダンスを有する。
【0003】
この無効成分を減らすには、同調コンデンサを使用して、インピーダンスの無効部分を除去するが、インピーダンスは一般に極めて高いままであり(数十から数百kΩ)、かえってその結果、巻線を形成する巻き数がかなりの数になる。
【0004】
よって、より小さいインピーダンスを得るためには巻線の巻き数を削減するのであるが、この削減によりアンテナの利得が低下する。
【0005】
満足できる利得および低減されたインピーダンスを有するフェライトアンテナ、例えば、無線周波数の分野を対象とした事実上すべての装置の入力インピーダンスである50Ωを有するフェライトアンテナを得るための他の解決策が提案されてきた。
【0006】
図1aおよび
図1bに示すこれらの解決策は、同一の強磁性ロッド4(強磁性コアまたはフェライトコアとも呼ばれる)上で、二次巻線2と呼ばれる第2の巻線を主巻線1に追加することを含む。主巻線1は同調システム3に接続され、これにより、主巻線1および同調システム3は、主コンター部(contour)と呼ばれる共振コンター部を形成する。
【0007】
図1aに示す第1の解決策では、二次巻線2は、主巻線1の上に巻かれている。
【0008】
図1bに示す第2の解決策では、2つの巻線は並んで巻かれている。
【0009】
これらの解決策は、より良いインピーダンス整合を可能にするが、他の欠点を有する:第1の解決策によるアンテナは、主巻線1の巻き数が中程度でも、その二次共振が急速に失われる。第2の解決策によるアンテナは、強磁性ロッド4上における空間の共有を必要とし、このことにより、主コンター部3が強磁性ロッド4の長さ全体を占有できないため、アンテナの最大の潜在的効果が低減される。加えて、このアンテナの共振におけるインピーダンスは、二次巻線2の巻き数だけでなく、強磁性ロッド上における2つの巻線のそれぞれの位置にも依存し、このことは、実用的な観点から、この解決策の使用を困難にし得る。さらに、この解決策は、同調システムを形成する成分の値を変更することによってのみ同調周波数の変更を可能にする。
【0010】
最後に、2つの解決策の有効性は共振周波数より高い周波数では大幅に減少し、このことは、2つの解決策が同調周波数でのみ使用されることを意味する。特に、従来技術の解決策によるアンテナの二次共振におけるインピーダンスは、実質的にゼロ(第1の解決策)または極めて小さい(第2の解決策では約5Ω)のいずれかである。
【0011】
よって、本発明者らは、現実の低いインピーダンスにおける、特に50Ωでのフェライトアンテナに適合するために提案された解決策に対する代替的な解決策を模索してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、既知のフェライトアンテナの欠点の少なくとも一部を克服することを目的としている。
【0013】
特に、本発明は、本発明の少なくとも1つの実施形態において、現実のインピーダンス、特に50Ωに簡単かつ効果的に同調させることができるフェライトアンテナを提供することを目的としている。
【0014】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、その有効性が最大化されるフェライトアンテナを提供することを目的とする。
【0015】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、良好な周波数アジリティを有し、アンテナの同調帯域幅全体を拡大することを可能にするフェライトアンテナを提供することを目的とする。
【0016】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、その帯域幅が拡大されたフェライトアンテナを提供することを目的とする。
【0017】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、多重共振を有するフェライトアンテナを提供することを目的とする。
【0018】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、高インピーダンスの二次共振を有するフェライトアンテナを提供することを目的とする。
【0019】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、主共振を超えたときに従来技術の解決策よりも高い利得を有するフェライトアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を実現するために、本発明は、キロメートル波、ヘクトメートル波、またはデカメートル波を送信および/または受信するためのフェライトアンテナであって、
-主巻線と呼ばれる少なくとも1つの第1の巻線と、主強磁性ロッドと呼ばれる少なくとも1つの第1の強磁性ロッドと、同調システムと、を備える、主コンター部と呼ばれる少なくとも1つの第1の共振コンター部であって、各主巻線が、主強磁性ロッドの周囲に巻かれ、主巻線と並列に接続されたコンデンサを備える同調システムに接続される、少なくとも1つの第1の共振コンター部
を備える、フェライトアンテナにおいて、
-各主巻線から電気的に分離された二次巻線と、二次巻線が周囲に巻かれている二次強磁性ロッドと、を備える、二次コンター部と呼ばれる第2の非共振コンター部をさらに備えることと、
各主巻線と二次巻線との磁気結合を可能にするために、各主強磁性ロッドおよび二次強磁性ロッドが互いに並列に配置されることと、
を特徴とする、フェライトアンテナに関する。
【0021】
従って、本発明によるフェライトアンテナは、主巻線の強磁性ロッド以外の強磁性ロッド上に配置された二次巻線を使用するおかげで、現実のインピーダンスでの、特に50Ωでのフェライトアンテナの整合を可能にする。強磁性ロッドどうしは互いに接続されていない。二次コンター部は、主コンター部とは反対に、コンデンサを持たず、よってLC回路を形成しないため、非共振である。
【0022】
さらに、この構成は、主巻線が第1の強磁性ロッドのすべてを占有できるため、アンテナの有効性を最大化できる。並列に(かつ物理的に平行に)接続されたいくつかの主巻線を使用することによって、アンテナ範囲の有効性が改善される。
【0023】
さらに、本発明によるアンテナは、kΩのオーダーの高インピーダンス二次共振を有する。
【0024】
加えて、主巻線および二次巻線の磁束は、180°位相がずれている従来技術とは反対に、実質的に同相であるため、主共振を超えたときのアンテナの利得が改善される。
【0025】
本アンテナは、RFID(Radio Frequency Identification、無線自動識別)などの低電力伝送システム、広帯域および長距離の送信/受信システム(単信、複信または全二重通信)、ならびに変調されているか否かを問わず無線で伝播する信号の形態で情報を受信および傍受するためのシステムで使用することができる。さらに、本アンテナは、金属探知機に使用することができる。
【0026】
特に、本発明は2つの共振を有しており、2つの共振は、同時送信/受信を実行するために使用することができる。この場合、送信には50オームに最も近い共振を、受信にはより高いインピーダンスを有する他の共振を使用することがより好ましい。
【0027】
好都合には、そして本発明によれば、主強磁性ロッドおよび二次強磁性ロッドは、それらの主方向に沿って互いに対して並進移動することができるように構成されている。
【0028】
本発明の本態様によれば、強磁性ロッドの互いに対する移動は、フェライトアンテナの共振周波数の調整を容易にする。
【0029】
好都合には、そして本発明によれば、コンデンサは可変コンデンサである。
【0030】
本発明の本態様によれば、可変コンデンサの容量の値の変更は、アンテナの同調を調整することを可能にする。
【0031】
好都合には、本発明によるアンテナは、追加的なコンター部と呼ばれ、主コンター部および二次コンター部に対して並列に配置された少なくとも1つの第2の主コンター部を備える。
【0032】
本発明の本態様によれば、追加的な主コンター部(複数可)が主強磁性ロッドの周りの巻き数と同数の巻き数を有する主巻線を有する場合、アンテナは拡大された帯域幅を有する、または追加的な主コンター部(複数可)が主強磁性ロッドの周りの巻き数とは異なる巻き数を有する主巻線を有する場合、アンテナは多重共振を有する。さらに、互いに対する主コンター部の位置が、帯域幅または多重共振に影響を与える。
【0033】
各追加的なコンター部は、各追加的なコンター部のためのものであり得る、固定値または可変値のコンデンサに接続される。各追加的なコンター部のコンデンサは、追加的なコンター部に応じて、同一または異なるQ値を有し得る。これらの違いは、アンテナの多重共振の態様または広帯域幅の調整に寄与し得る。
【0034】
好都合には、そして本発明の後者の態様によれば、追加的なコンター部のうちの少なくとも1つは、主コンター部の主強磁性ロッドの主方向を横切る方向に、主コンター部に対して並進移動することができるように構成される。
【0035】
本発明の本態様によれば、追加的な主コンター部を近づける、または離すことにより、アンテナの周波数整合が可能になる、例えば、共振周波数または帯域幅を調整できる多重共振または広帯域幅アンテナを得ることが可能になる。
【0036】
可変コンデンサを用いること、および/または他のコンター部に対するコンター部の機械的移動を用いることは、整合または有効性を失うことなく、アンテナの主同調周波数を調整することを可能にする。このことは、整合または有効性の急激な低下により機械的設定に関して特に制限されている従来技術の解決策には当てはまらない。
【0037】
本発明はまた、本発明による2つのフェライトアンテナを備える、すなわち、第1のフェライトアンテナと、第1のフェライトアンテナの主強磁性ロッドおよび二次強磁性ロッドの方向に垂直な方向に沿って自身の主強磁性ロッドおよび二次強磁性ロッドが延びる第2のフェライトアンテナであって、第2のフェライトアンテナが第1のフェライトアンテナに対して±π/4の電気的位相シフトを有する、第2のフェライトアンテナと、を備えることを特徴とするアンテナシステムに関する。
【0038】
本発明の本態様によれば、アンテナシステムは、強磁性ロッドの端部に放射ヌルを本来有するフェライトアンテナを用いて、全方向範囲を得ることを可能にする。さらに、得られたアンテナシステムは、アンテナの出力における信号の振幅および位相に従って位置特定されるべき信号の方向を判定する取得システムに各アンテナを接続することによって、方向探知機能のために使用することができる。
【0039】
本発明はまた、本発明によるフェライトアンテナを備えることを特徴とする、キロメートル波、ヘクトメートル波、またはデカメートル波の送信/受信システムに関する。
【0040】
本発明による送信/受信システムは、例えば、RFID(Radio Frequency Identification、無線自動識別の略称)システムなどの低電力伝送システム、広帯域および長距離の送信/受信システム(単信、複信または全二重通信)、ならびに変調されているか否かを問わず無線で伝播する信号の形態で情報を受信および傍受するためのシステムなどで使用することができる。
【0041】
本発明はまた、本発明によるアンテナシステムを備えることを特徴とする、キロメートル波、ヘクトメートル波、またはデカメートル波を送信/受信するためのシステムに関する。
【0042】
本発明による送信/受信システムは、例えば、アンテナシステムを形成するアンテナの出力において受信した信号の振幅および位相に従って位置特定されるべき信号の方向を判定することを可能にする方向探知取得システムとして使用することができる。
【0043】
特に、本発明はまた、本発明によるアンテナと、アンテナに接続され、アンテナが受信した信号を処理するため、および/または送信対象の信号をアンテナに送信するために整合された、送信/受信のための装置と、を備えることを特徴とする、キロメートル波、ヘクトメートル波、またはデカメートル波を受信および/または送信するための電子通信端末タイプの送信/受信のためのシステムに関する。
【0044】
好都合には、本発明による電子通信端末は、アンテナの主同調周波数を電子的および/または機械的に調整するための手段を備える。
【0045】
特に、アンテナが可変コンデンサを備える場合、調整手段は、上記可変コンデンサの容量を変更することを可能にし得る。アンテナが互いに対して並進移動することができるコンター部または強磁性ロッドを備える場合(上記の実施形態)、調整手段は、上記コンター部または強磁性ロッドの機械的移動を可能にし得る。
【0046】
本発明はまた、上記または下記の特徴の全部または一部による組み合わせを特徴とする、アンテナ、アンテナシステム、送信/受信システム、および電子通信端末に関する。
【0047】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、非限定的に与えられているにすぎない以下の説明を読み、添付の図面を参照すれば、明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1a】既に説明した、従来技術によるフェライトアンテナの概略図である。
【
図1b】既に説明した、従来技術によるフェライトアンテナの概略図である。
【
図2a】本発明の第1の実施形態によるフェライトアンテナの概略図である。
【
図2b】本発明の第2の実施形態によるフェライトアンテナの概略斜視図である。
【
図2c】本発明の第3の実施形態によるフェライトアンテナの概略斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるフェライトアンテナの出力インピーダンスの変化をスミスチャート上に示したグラフである。
【
図4】変圧器巻線タイプの2つの巻線間を循環する磁束の概略図である。
【
図5】二次強磁性ロッドに対する主強磁性ロッドの位置に応じた、本発明の一実施形態によるフェライトアンテナの整合のレベルを示すグラフである。
【
図6】周波数に応じた、本発明の一実施形態によるフェライトアンテナと従来技術によるアンテナとの利得を比較するグラフである。
【
図7】本発明の第4の実施形態によるフェライトアンテナの概略斜視図である。
【
図8】強磁性ロッドの透磁率に応じた、本発明の様々な実施形態によるフェライトアンテナの出力インピーダンスの変化をスミスチャート上に示したグラフである。
【
図9】本発明の一実施形態によるフェライトアンテナとおよび従来技術によるアンテナとの出力インピーダンスの変化をスミスチャート上で比較するグラフである。
【
図10】周波数に応じた、いくつかの主なコンター部を備える本発明の2つの実施形態によるフェライトアンテナの利得を示すグラフである。
【
図11】増幅器に接続された、本発明の第5の実施形態によるフェライトアンテナの概略図である。
【
図12a】本発明の様々な実施形態によるアンテナシステムの概略図である。
【
図12b】本発明の様々な実施形態によるアンテナシステムの概略図である。
【
図12c】本発明の様々な実施形態によるアンテナシステムの概略図である。
【
図13】本発明の一実施形態によるアンテナシステムの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の実施形態は例である。説明は1つ以上の実施形態に言及しているが、このことは、それぞれの言及が同じ実施形態に関連すること、または特徴が1つの単一の実施形態にのみ適用されることを必ずしも意味するわけではない。他の実施形態を提供するために、異なる実施形態の単純な特徴を組み合わせることもできる。図では、縮尺および比率は厳密には重視されておらず、これは、説明のためであり、また明確にするためにそうされている。
【0050】
図2aは、本発明の第1の実施形態によるフェライトアンテナを概略的に示す。
【0051】
フェライトアンテナは、コンデンサによって形成された同調システム3に並列に接続された、(物理的および電気的に)並列な2つの主巻線、すなわち、第1の主強磁性ロッド4aの周りに巻かれた第1の主巻線1aと、第2の主強磁性ロッド4bの周りに巻かれた第2の主巻線1bと、を備える。コンデンサは可変コンデンサとすることができ、これは、上記可変コンデンサの容量の値を変更することができるようにするためであり、またそれにより、アンテナの周波数を同調可能にするためである。同調システム3と2つの主巻線1a、1bとは、主コンター部を形成する。他の実施形態によれば、主巻線は直列に接続することができる。
【0052】
図2bに概略的かつ斜視図で示される本発明の第2の実施形態によれば、フェライトアンテナは、単一の主巻線1を備え、主巻線1は、同調のインピーダンスを調整するために、二次巻線2とは異なる巻き数を有する(ここでは、範囲の有効性を最大にするため二次巻線よりも大きい巻き数を有する)。
【0053】
図2cに概略的かつ斜視図で示される本発明の第3の実施形態によれば、
図2aの第1の実施形態と同様に、フェライトアンテナは、2つの主巻線1a、1bと二次巻線2とを備え、ここでは巻き数は同じである。
【0054】
フェライトアンテナは、その整合を改善するために、二次強磁性ロッド5の周りに巻かれた二次巻線2から形成された非共振二次コンター部をさらに備える。主コンター部とは反対に、二次コンター部は、コンデンサと関連しておらず、従ってLC共振回路を形成しない。
【0055】
主巻線1a、1bと二次巻線2とは物理的に平行であり、二次巻線2は主巻線から電気的に分離されており、巻線はそれらの強磁性ロッドを中心としている。
【0056】
強磁性ロッドは、好ましくは、同一の形状、寸法、および無線電波特性を有する。ロッドは、典型的にはNiZnまたはMnZnベースのいわゆる「軟」強磁性材料から構成され、好ましくは、フェライトアンテナの動作周波数帯域幅における損失が小さい(tanδ<<1)。
【0057】
主共振周波数における範囲の有効性に影響を与えることなく、主巻線(複数可)と二次巻線との間の巻線の方向は同一でも異なっていてもよい。巻線を形成するワイヤの断面は、好ましくは、すべての巻線において同一であり、かつ強い導電性を有する。例えば、範囲の有効性を高めるために、巻線をリッツ線で形成することができる。
【0058】
同調システム3は、フェライトアンテナの調整を可能にし、特に、容量Cである、同調システム3のコンデンサは、インダクタンス巻線Lと共に、同調周波数と呼ばれる、次式にほぼ等しい第1の共振周波数f
r1を有するコンター部LCを形成する。
【数1】
【0059】
主コンター部のみが、この第1の共振周波数f
r1において実質的な実際のインピーダンスを有する。二次巻線2は、第2の共振周波数f
r2を生成することを可能にし、第1の共振周波数f
r1に対してより低い実際のインピーダンスを提供するように、電圧と電流とは同相に設定される。本発明の一実施形態によるフェライトアンテナの出力インピーダンスの変化をスミスチャート上で表したグラフを示している
図3は、シミュレーションまたは実際のフェライトアンテナでの測定による共振周波数f
r1およびf
r2を示している。
【0060】
本発明によるフェライトアンテナの動作は、変圧器の動作と同様であり、また2つの巻線間を循環する磁束を示す
図4に示されるような、磁気結合の原理に基づいている。この図では、巻線は、閉ループを形成する同じ強磁性コアに巻かれている。第1の巻線の磁束Φpは、比透磁率が100から600の間で変化する材料を使用して、一般に0.3から0.6の間の結合係数kで、第2の巻線の磁束Φsに伝達される。
図8は、値100、200、400および600により、強磁性ロッドの相対透磁率に応じた、本発明の様々な実施形態によるフェライトアンテナの出力インピーダンスの変化を表すグラフをスミスチャート上に示す。
【0061】
本発明によるフェライトアンテナでは、強磁性ロッドは閉ループを形成せず、磁束は同じ方向に向いていて(アンテナが共振に近接して動作している場合および共振後の場合)、構成的に足し合わされるようにされており、これにより、フェライトアンテナによって生成された電磁波を効果的に伝播させることが可能になる。
【0062】
共振周波数を超えたときに磁束が反転する
図1aおよび
図1bの従来技術の解決策とは反対に、本発明によるフェライトアンテナにおける磁束の方向は同じ方向に留まり、同調周波数を超えても実質的な利得を保持することを可能にし、これにより減衰システムでの使用が可能になる。
【0063】
本発明によるフェライトアンテナは、第2の共振周波数fr2において低いインピーダンスを得ることを可能にし、1つ以上の主巻線の巻き数と二次巻線2の巻き数とが同じ場合、第2の共振周波数fr2におけるインピーダンスは、共振コンター部のQ値、主巻線(複数可)と二次巻線との間隔の関数である巻線の結合レベル、巻線の巻き数、および強磁性ロッドの比透磁率に応じて、約20Ωから200Ωである。
【0064】
巻き数の減少がインピーダンスを減少させることにより、二次巻線2の巻き数は、このインピーダンスを調整することを可能にする。
【0065】
第1の共振周波数fr1において、数百オームから数kΩの間のより強いインピーダンスが得られる。このインピーダンスは、二次巻線の巻き数または巻線間の間隔によって同様に調整される。
【0066】
共振時の周波数は、同調コンデンサを変えることによって調整することができるが、第1の強磁性ロッド4を第2の強磁性ロッド5に対して横方向に動かすことによっても調整することができる。
【0067】
図5は、二次強磁性ロッドに対する主強磁性ロッドの位置に応じた、50Ωに整合された、本発明の一実施形態によるフェライトアンテナの整合のレベルを表すグラフを示している。曲線は、移動ゼロ(中心)、または主強磁性ロッドの主方向において、および右下の図で示される方向において2、4、および6センチメートルを表す。ロッドの動きは、(主巻線1のインダクタンスの減少による)より高い周波数への整合およびインピーダンスの実部の増加を可能にする。許容されるロッドの最大移動量は、ロッドの長さの約20%から40%である。コンター部が、いくつかの主巻線、従っていくつかの主強磁性ロッドを含む場合、主強磁性ロッド4の動きは、ロッドによって同じでも異なっていてもよい。
【0068】
図6は、周波数に応じた、本発明の一実施形態によるフェライトアンテナと上述の従来技術によるアンテナとの利得を比較するグラフを示している(凡例「技法1」は
図1aに示すようなアンテナに対応し、凡例「技法2」は
図1bに示すようなアンテナに対応し、凡例「技法3」は本発明によるフェライトアンテナに対応する)。3つのアンテナは、同じ強磁性ロッドを有し、同じ巻き数を有し、巻線の中心に強磁性ロッドを有する。
【0069】
アンテナの性能が第1の共振周波数(ここでは1MHz)において同程度である場合、本発明によるアンテナは、より高い周波数での利得降下がより小さい。よって、本発明によるアンテナは、より広い周波数帯域幅を有し、例えば、受信周波数が共振周波数における送信周波数よりも高い複信システムで使用することができる。
【0070】
図9は、本発明の一実施形態によるフェライトアンテナとおよび従来技術のアンテナとの出力インピーダンスの変化をスミスチャート上で比較するグラフを示している。曲線の凡例は、
図5の曲線の凡例と同じである。3つのアンテナの巻線は、同じ巻き数を有する。同じ巻き数および同じ利得に対して、
図1aに示されるアンテナ(技法1)は、使用可能なインピーダンスが1つしかなく、2番目は実質的にゼロであり、
図1bに示されるアンテナ(技法2)は、二次共振において5Ω未満の低いインピーダンスを有し、本発明によるアンテナ(技法3)は、二次共振において約1kΩの高いインピーダンスを有する。
【0071】
図7は、本発明の第4の実施形態によるフェライトアンテナの概略斜視図で示している。本実施形態では、フェライトアンテナは、複数の主コンター部を備え、各主コンター部は、主強磁性ロッド4、4’、および4”の周りに巻かれた主巻線1、1’、および1”から形成されている。フェライトアンテナは、二次強磁性ロッド5の周りに巻かれた唯一の二次巻線2を備え、主巻線1、1’、および1”はこれに結合される。
【0072】
多重共振アンテナを形成するために、すなわちいくつかの共振周波数を有するために、主巻線1,1’、および1”は、異なる巻き数を有し、特に、主コンター部と同数有する。図示されていない他の実施形態では、主コンター部は、広帯域幅のアンテナを形成するために、巻き数および同調システムによる同調の点で近い特性を有する主巻線を有し、共振周波数が近い多重共振アンテナにより、周波数帯域を広げることが可能であり、広帯域幅のアンテナが形成される。同様に、様々なコンデンサのQ値を適切に選択することで、周波数に関して、または逆に広帯域幅に関して可変の帯域幅を持つ多重共振応答を生成することが可能になる。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、アンテナの周波数整合を可能にするために、少なくとも1つの追加的なコンター部、または追加的なコンター部のすべてを、主コンター部の主方向に対して横方向(従って垂直)に主コンター部に対して分離または近接させることができる。
【0074】
図10は、
図7を参照して説明したフェライトアンテナのように、周波数に応じた、いくつかの主なコンター部を備える本発明の2つの実施形態によるフェライトアンテナの利得を表すグラフを示している。特に、「広帯域幅」曲線は、0.92MHzから1.04MHzの広帯域幅を有するアンテナに対応し、「二重周波数」曲線は、0.87MHzと1.06MHzとの2つの周波数において共振を有するアンテナに対応する。
【0075】
図11は、受信用に使用され、単一の主巻線1を備え、二次巻線2の増幅器6に接続されている、本発明の第5の実施形態によるフェライトアンテナを概略的に示している。増幅器6は、その入力において、最適動作のために特定のインピーダンスを必要とし、それは、上で説明されたように、フェライトアンテナのインピーダンスを調整することによって得ることができる。送信用に使用される本発明によるフェライトアンテナの場合、アンテナは、送信装置に、例えば発振器または増幅器の出力に直接接続されなければならず、入力電力の跳ね返りを防ぐために、送信装置と同じ入力インピーダンスを有する必要がある。
【0076】
図12a、
図12b、および
図12cは、電子通信端末(または電気通信端末)を形成するように電気通信機器に接続された、本発明の様々な実施形態によるアンテナシステムを概略的に示しており、
図13は、これらの実施形態のうちの1つによるアンテナシステムを斜視図で概略的に示している。
【0077】
アンテナシステムは、本発明の実施形態による2つのフェライトアンテナ、すなわち、
-主強磁性ロッド4の周りに巻かれ、同調システム3に接続された主巻線1と、二次強磁性ロッド5の周りに巻かれた二次巻線2と、を備える第1のフェライトアンテナと、
-主強磁性ロッド104の周りに巻かれ、同調システム103に接続された主巻線101と、二次強磁性ロッド105の周りに巻かれた二次巻線102と、を備える第2のフェライトアンテナと、
をそれぞれ備える。
【0078】
2つのフェライトアンテナ、特にその二次巻線2、102は、移相器7に接続され、2つのアンテナ間において±π/4の電気的位相シフトを可能にする。移相器は、フェライトアンテナが移相器と同じ特性インピーダンスを有する場合にのみ動作し、これは、上述のインピーダンスを調整する可能性を用いて可能である。
【0079】
図12aに示す実施形態では、アンテナシステムの移相器は、増幅器108および受信装置111(または受信機)である。本実施形態では、アンテナは50Ωに整合されている。移相器はまた、50Ωの特性インピーダンスを有し、従って、一方ではアンテナに、他方では同様に50Ωに整合された増幅器108に、直接接続される。増幅器で増幅された信号は受信機111に送信される。
【0080】
図12bに示す実施形態では、アンテナシステムの各アンテナは、高インピーダンス増幅器108に接続されている。高インピーダンス増幅器108は、移相器7に接続され、移相器7は、受信機111に接続されている。本実施形態では、アンテナは1kΩに整合され、従ってアンテナよりも高いインピーダンスを有し、アンテナが1kΩに整合されるときに最適に動作する高インピーダンス増幅器108に接続され得る。しかしながら、高インピーダンス増幅器108の出力インピーダンスは50Ωであり、従って移相信号を送信し、受信機111と組み合わされた移相器7に接続される。
【0081】
図12cに示す実施形態では、アンテナシステムは、
図12bに示す実施形態と同様であり、受信機は、送信/受信装置112(または送信機/受信機)に置き換えられ、それには、インピーダンス50Ωにおける2つの増幅器110を介した送信を可能にする回路が、高インピーダンス増幅器108に並列に追加される。リレー109が、送信と受信との間の選択を可能にする。アンテナシステムのアンテナの二重共振のおかげで、送信用に低インピーダンス(50Ω)の第1の共振と、受信用に高インピーダンス(数kΩ)の第2の共振と、を使用することが可能である。他の実施形態によれば、送信および受信は、すべての増幅器について50Ωのインピーダンスを有する単一周波数で動作することができる。
【0082】
図13に示すように、2つのフェライトアンテナは互いに垂直に配置され、各アンテナは、強磁性ロッドの端部で他のアンテナの放射ヌルを補償する。このようにして得られたシステムは、全方向範囲を有し、特に方向探知用途に使用することができる。
【0083】
記載されたアンテナおよびアンテナシステムは、送波/受波システムまたは電子通信端末に、これらのシステムまたは端末が、送信装置(例えば、増幅器を有するまたは有さない発振器)および/または受信装置(例えば増幅器を介して伝送線路に接続された受信装置)を備えた状態で、統合され得る。