(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】自己凝固性ペースト状材料の強度を増大させる補強要素
(51)【国際特許分類】
E04C 5/07 20060101AFI20220330BHJP
D07B 1/06 20060101ALI20220330BHJP
B28B 23/02 20060101ALI20220330BHJP
C04B 14/48 20060101ALI20220330BHJP
C04B 16/12 20060101ALI20220330BHJP
C04B 14/38 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
E04C5/07
D07B1/06 Z
B28B23/02 Z
C04B14/48 C
C04B16/12
C04B14/38 Z
(21)【出願番号】P 2019517796
(86)(22)【出願日】2017-09-25
(86)【国際出願番号】 HU2017050040
(87)【国際公開番号】W WO2018060750
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-08-18
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】519108925
【氏名又は名称】ノボノボン ザートケルエン ムケド レースベニュタールシャシャーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ツィントシュ チョンゴル
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第2460376(FR,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006051083(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0212974(US,A1)
【文献】国際公開第01/32341(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0130709(US,A1)
【文献】特開平05-302230(JP,A)
【文献】特開平03-093658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/00-5/20
C04B 14/38,14/48,16/12
D07B 1/06
B28B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性フィラメントから作成される自己凝固性のペースト状材料の強度を増大させる補強要素(10)であって、
前記補強要素(10)は、実質的に
一の平面を規定する中央部分(12)と、前記中央部分(12)から異なる空間方向に延びる少なくとも3つのアーム(11)と、を具備し、
前記アーム(11)のそれぞれが少なくとも2つの離間したフィラメント(13)を有し、
前記アーム(11)のそれぞれは、前記フィラメント(13)を湾曲させることによって作成されたループ(14)それぞれによって構成され、前記フィラメントからは関連するアーム(11)が作成され、前記ループ(14)は、
関連するループ(14)の
湾曲したフィラメント(13)によって形成された2つの離間した枝部(15)を相互接続する外側端部を有する
、補強要素において、
各ループ(14)では、前記枝部(15)は互いに実質的に平行であり、その間の距離がフィラメント(13)の
直径の
2倍から25倍であり、
前記アーム(11)は、前記中央部分(12)から空間内で均一に分布するように延び
、
前記中央部分(12)
が規定する前記一の平面によって分割される
それぞれの空間には、前記アーム(11)のうちの少なくとも1つが配置される、ことを特徴とする、補強要素。
【請求項2】
前記アーム(11)の長さは、その幅の最大10倍であることを特徴とする、請求項1に記載の補強要素。
【請求項3】
偶数の前記アーム(11)を具備し、互いに反対の空間方向に延びる少なくとも一対の前記アーム(11)が単一フィラメント(13)を湾曲させることによって作成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の補強要素。
【請求項4】
前記アーム(11)の数は4であり、4つのアームうちのそれぞれの対は、単一のフィラメント(13)を湾曲させることによって作成され、それぞれのループ(14)は、実質的に共通の平面にて中央部分(12)にあり、
前記アーム(11)を構成する前記対は、前記共通の平面にて突出する場合、互いの延伸部としてのそれぞれの共通
の直線に実質的にあり、
各対の前記アーム(11)は、前記共通の直線上の反対方向に延び、
前記アーム(11)によって構成される前記対のうちの一方の対が前記共通の平面から上方向に所定の角度(α)で
傾斜し、前記アーム(11)の他方の対が同一又はほぼ同一の方法で前記共通の平面から反対方向、即ち、下方向に
傾斜することを特徴とする、請求項1又は2に記載の補強要素。
【請求項5】
前記共通の平面に対する前記アーム(11)の
傾斜の前記角度(α)は20°~50°であることを特徴とする、請求項4に記載の補強要素。
【請求項6】
二対の前記アーム(11)は、前記中央部分(12)の前記二対のうちの一方を形成する前記フィラメント(13)を湾曲させることによって、互いに固定される、ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の補強要素。
【請求項7】
前記フィラメント(13)は円形断面を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項8】
単一フィラメント(13)を湾曲させることによって構成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項9】
前記フィラメント
の材料は、鋼、銅、炭素繊維、プラスチック、ガラス、玄武岩繊維又は
これら材料の組み合わせであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項10】
前記フィラメント(13)は、腐食防止及び/又は強度増大のためのコーティングを具備することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項11】
ペースト状材料の密度と同等又はほぼ同等となるように前記コーティングの厚さによって制御される平均密度を有することを特徴とする、請求項10に記載の補強要素。
【請求項12】
前記コーティングは、バインダ材によって前記フィラメント(13)に結合される炭素繊維糸又はガラス繊維糸から作成されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の補強要素。
【請求項13】
前記フィラメント(13)は二重フィラメントから作成されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項14】
強度を増大させた成形材料から構造体を作成する方法であって、
いくつかの構成要素から
なるペースト状態の材料を混合するステップと、次に混合された材料を所望の形態のジャロジー又は金型に注入するステップと、次に材料を凝固又は硬化させるステップと、を含む方法において、
前記方法はさらに、
請求項1~13のいずれか1項
に記載の補強要素であって、少なくとも80kg/m
3の前記補強要素を、未だペースト状態の材料に供給すること、及び、
供給された前記補強要素(10)を、前記材料中で均一に分布するように混合して、その後、前記注入するステップを実施すること、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
ペースト状材料は、少なくともC50
の品質を有するコンクリートであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲可能なフィラメントから作成される自己凝固性ペースト状材料の強度を増大させる補強要素に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(欧州特許出願公開第2206848号明細書)の先行技術部分の説明には、補強部材としての鋼製棒の欠点を排除するため、即ち、ペースト状のコンクリートがジャロジーに注入される前に鉄筋要素を配置することに関連した高価で困難な組み立て作業を実施する必要性を排除するため、コンクリートを補強することにこれまでに使用された様々な解決策の詳細な要約が含まれる。
【0003】
このような解決策では、多数の小型補強要素を、未だペースト状の状態にあるコンクリート中に供給して混合する方法が用いられていた。コンクリートの凝固後には、得られた構造体は要素のなかったときよりも高い耐荷重能力を有していたが、適切に設計された鋼製補強システムによって提供された強度には到達できなかった。特許文献1では、複数の小さいコイルを水溶性カプセル中に収容して、混合工程中にコイルが相互接続して目詰まりするのを防止した。ペースト状コンクリート中に存在する水分がカプセルを溶解し、充分に混合された要素が構造体の強度を高めることが可能であった。
【0004】
特許文献2(米国特許第5,858,082号明細書)では、湾曲端部を有するワイヤを、形状記憶ワイヤから作成されているにもかかわらずU字形に折り曲げた。このような形状にて、その形状を保つために熱処理を施した。このようなワイヤをペースト状コンクリートに供給し混合し、第2の熱処理を施した。この熱処理では、温度は臨界「記憶」温度を超えて上昇し、それによりコイルは形状を回復して再びその元の開放形状となった。
【0005】
特許文献3(米国特許出願公開第2010/0101163号明細書)では、中央球形部分又は本体を有した補強要素を用いた。中央球形部分又は本体からは、アームが外側方向に延び、アームの端部には、アームよりも大きいサイズのヘッドが配置された。ヘッドの存在により、コンクリートとアームとの間に高めの力伝達接続が提供された。
特許文献4(仏国特許出願第79 17293号(仏国特許出願公開第2460376号明細書))では、別の種類の補強部材が記載されている。そのうちの1つが図1に示され、大きな中央部分から延びるアームを有する。5つのアームのうちの3つがそれぞれの湾曲したループを形成する。ループ枝部間の距離は、一定ではなく、端部でゼロになるように狭まっていく。この要素はこのほか、直線状アームを備える。アームの幅を変化させることにより、幅が狭めのアーム及び直線状アームがループ間を貫通することが可能になり、完全かつ均一な充填を妨げる機械的目詰まりを引き起こす可能性がある。同時に、この要素は非対称であり、即ち、機械的特性の異なる好ましい方向を有することになる可能性も否定できない。
【0006】
コンクリートのための広く普及し市販されている強化解決策のうち、長さ50又は60mm、直径0.8mmの鋼線を備える、商品名DRAMIXの要素を挙げることができる。各鋼線はその端部領域にて段部を有する。そのような構造体のデータシートは、例えばWebアドレス、
http://www.sinthaweethailaos.com/images/product/Stee-%20Fiber/1Steel%20Fibre%-20-%-20DRAMIX%C2%AE/LOOSE%20Fibres/Dramix_Duo100_GB.pdfに開示される。
【0007】
小さい補強要素によって補強されたコンクリート管の試験は、D.A.Scottらの2015年8月に発行された非特許文献1(「Impact of Steel Fiber Size and Shape on the Mechanical Properties of Ultra-High Performance Concrete Geotechnical and Structures Laboratory」に記載される。この文献はWebアドレス、
http://www.dtic.mil/get-tr-doc/pdf?AD=ADA620738に開示される。
【0008】
完全性を目的としない公知の複合補強要素の欠点から、混合工程中に要素が互いに固着する傾向があり、それにより要素同士の空間分布が不均一になることに言及することができる。さらに、補強要素の材料はコンクリート又は複合材料よりも重い鋼であるため、混合物を最終金型に注入した後、補強要素は、硬化する前の材料中で沈降する傾向があり、補強要素の高さ方向の分布が不均一になることになる。別の欠点には、補強要素が複合材料との形状嵌合接続を有しておらず、相互の間に確立された表面接着を介してのみ接続され、この接続は嵌合接続が実施された場合ほど強固ではないことが挙げられる。別の欠点には、そのように強化された材料の異方性強度が挙げられる。これは、要素の形状が全方向で同一の特性を保証することができず、このため、事前に正確に強度を計算することができないことによる。要素は腐食する傾向がある。腐食は概ね構造体の端面又はその割れ目表面で始まり、遅かれ早かれ強度を低下させると同時に、錆びたワイヤが外面で視認できるようになり、構造体の外観が劣化することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第2206848号明細書
【文献】米国特許第5,858,082号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0101163号明細書
【文献】仏国特許出願第79 17293号
【非特許文献】
【0010】
【文献】「Impact of Steel Fiber Size and Shape on the Mechanical Properties of Ultra-High Performance Concrete Geotechnical and Structures Laboratory」D.A.Scottら、2015年8月
【発明の概要】
【0011】
本発明の課題は、自己凝固性ペースト状材料の強度を増大させる補強要素と、ペースト状材料中に要素を供給する方法を提供することであり、既知の解決法の列挙された欠点をはじめとする欠点を減少させることができ、あるいは排除することもできる。
課題を解決する補強要素は可撓性フィラメントから作成される。この要素は、実質的に平面に存在する中央部分と、中央部分から異なる空間方向に延びる少なくとも3つのアームと、を具備する。アームのそれぞれは、フィラメントを湾曲させることによって作成されたループそれぞれによって構成され、フィラメントからは関連するアームが作成され、ループは、関連するループの湾曲したフィラメントによって形成された2つの離間した枝部を相互接続する外側端部を有する。各ループでは、枝部は互いに実質的に平行であり、その間の距離がフィラメントのサイズの約2倍から25倍である。アームは、中央部分から空間内で均一に分布するように延び、その結果、他の任意の方向よりも多くのアームが延びるであろうアームにとって好ましい方向が存在しないことになる。中央部分を通過する任意の平面によって分割される任意の半空間では、アームのうちの少なくとも1つが配置される。
【0012】
本発明によれば、可撓性フィラメントから作成される自己凝固性ペースト状材料の強度を増大させる補強要素が提供される。本発明によれば、要素は中央部分を備える。この中央部分から少なくとも3方向にそれぞれアームが延びる。アームのそれぞれが少なくとも2つの離間したフィラメントを有する。アームは、フィラメントを湾曲させることによって作成されたループそれぞれによって構成された外側端部を有し、フィラメントからは関連するアームが作成される。各ループでは、フィラメント同士の間の距離は、フィラメントのサイズの2倍から25倍である。アームは、アームの少なくとも一方が配置された中央部分を通過する任意の平面によって任意の半空間に分割されるように、配置される。
【0013】
アームの長さがその幅の最大10倍であることが好ましい。
【0014】
好ましい実施形態には偶数のアームが含まれる。互いに反対の空間方向に延びる少なくとも一対のアームを、単一フィラメントを湾曲させることによって作成する。
【0015】
アームの数が4であり、4つアームのうちのそれぞれの対が、単一フィラメントを湾曲させることによって作成され、それぞれのループが、実質的に共通の平面にて中央部分にある場合、アームを構成する対は、共通の平面にて突出する場合、互いの延伸部としてのそれぞれの共通直線上に実質的に存在し、各対のアームは、共通の直線上の反対方向に延び、アームによって構成される対のうちの一方の対が共通の平面から上方向に所定の角度で湾曲し、アームの他方の対が同一又はほぼ同一の方法で共通の平面から反対方向、即ち、下方向に湾曲することが好ましい。
【0016】
共通の平面に対するアームの湾曲の角度が20°~50°であることが好ましい。
【0017】
二対のアームが、中央部分の二対のうちの一方を形成するフィラメントを湾曲させることによって、互いに固定される場合には、さらに利点がある。
【0018】
好ましい実施形態では、フィラメントは円形断面を有する。
【0019】
補強要素は、単一フィラメントを湾曲させることによって構成される場合にきわめて有利である。
【0020】
フィラメントの材料は、鋼、銅、炭素繊維、プラスチック、ガラス、玄武岩繊維又はこのような材料の組み合わせである。
【0021】
フィラメントが、腐食防止及び/又は強度増大のためのコーティングを備える場合、設計の観点からさらに利点がある。
【0022】
空間分布は、補強部材が、ペースト状材料の密度と同等又はほぼ同等となるようにコーティングの厚さによって制御される平均密度を有する場合、さらに均一なものになることになる。
【0023】
強度は、コーティングが、バインダ材によってフィラメントに結合される炭素繊維糸又はガラス繊維糸から作成される場合、増大させることができる。
【0024】
好ましい実施形態では、フィラメントは二重フィラメントから作成される。
【0025】
本発明によればこのほか、強度を増大させた金型材料から構造体を作成する方法が提供される。この方法は、いくつかの構成要素から供給されたペースト状態の材料を混合するステップと、次に混合された材料を所望の形態のジャロジー又は金型に注入するステップと、次に材料を凝固又は硬化させるステップとを含む。本発明によれば、この方法は、上記で特定されたように作成される少なくとも80kg/m3 の補強要素を、未だペースト状態の材料に供給し、追加された補強要素を、材料中で均一に分布するように混合して、その後、前記注入するステップを実施する、ステップを含む。
【0026】
なお、文献は、自己凝固性ペースト状材料に対して、複合材料としても言及している。
【0027】
ペースト状材料は、少なくともC50、好ましくはC100を上回る品質を有するコンクリートであるのが好ましいが、ほかにも、ポリアミド、ポリカーボネート又は類似のプラスチック材料、あるいはセラミック、ガラス又は金属であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
ここで、本発明を好ましい実施形態に関連して図面を参照しながら説明する。
【
図1】本発明による補強要素の一実施形態の上面図。
【
図7】補強要素を形成する二重フィラメントの詳細図。
【
図8】プラスチックコーティングを含む強化要素を形成するフィラメントの詳細図。
【
図9】炭素繊維で被覆されたフィラメント24の斜視図。
【
図10】本発明に従って作成され、従来のプローブ26を測定する試験装置の概略図。
【
図12】
図10に示したものと同じように、本発明に従って作成され、プローブ31を用いた測定装置の概略図。
【
図13】異なるプローブを用いて実施された荷重-変位図。
【
図14】Dramix要素によって補強されたプローブキューブ35から作成された層状のX線写真。
【
図15】プローブキューブ35内の補強要素の数の高さ方向の分布を示す図。
【
図16】
図14と類似しており、本発明に従って調製されたプローブキューブ37について得られた記録を示す図。
【
図17】プローブキューブ37内の補強要素の数の高さ方向の分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
4つのアームを有する本発明による補強要素10の実施形態を示す
図1から
図4を参照する。補強要素10は、中央部分12からさまざまな空間方向に延びる所定数のアーム11を有するような空間的構成を有する。補強要素10にとってさらに特徴的なことは、それぞれのアーム11がフィラメント13又はワイヤから作成され、その結果、それぞれのループ14がフィラメント13から曲げられ、ループ14の枝部15同士の間に所定の距離が保たれることである。この距離は、フィラメント13のサイズ(直径)の2倍から12倍の間である(非円形フィラメントを使用する場合、このサイズはフィラメントの横方向寸法である)。ここで、これよりも距離を大きくすることも可能であるが、この場合、補強要素10は剛性が低下することになることから、上限は重要ではない。2倍のサイズに対応する下限は、ペースト状の結合材料が枝部15の間に形成された空間に容易に浸透し、このような枝部によって形成された空間を充填することができる場合、ループ14が必要な効果をもたらすことができるため、必要である。フィラメント13の材料は、炭素繊維又は炭素リボンで補強される場合、鋼、銅、プラスチック又はこのような材料の別形であることが好ましく、その直径又はその最大横断寸法は約3mm未満である。このような制限値はそれほど重要ではない。フィラメント13は、自身に作用する荷重に抵抗するために適切な高引張強度を有している必要があるが、補強要素10又は少なくとも数個のそのアーム11を曲げることができるように少なくともその形成中は曲げることができる必要がある。
【0030】
図面では、補強要素10の中央部分12が実質的に平面内にあり、
図2及び
図3では、この平面16に沿う直線は一点鎖線で描かれていることがわかる。中央部分12を離れた後、対向するアーム11は、この平面に対してある方向に角度αだけ閉じる。
図2からわかるように、2つのアーム11a及び11bは平面16から下向きに角度αだけ傾斜している。他の2つのアーム11c及び11dも平面15から同じ角度αだけ傾斜しているが、反対側の半分の空間、つまり上方向での傾斜である。曲げの開始線は、図面に示されるように中央部分12の直後にあってもよいが、外側方向にさらに離れていてもよい。
【0031】
アームはいずれも、仮想平面16に対して(絶対値として)角度αだけ閉じる。この角度αの値は、好ましくは20°から50°の間であるが、25°から35°の間の角度範囲の使用が最も好ましい。
【0032】
図1~
図4に示す補強要素10の別の形式的特徴には、アーム11の長さ、即ち、アームの突出の程度が挙げられる。通常の使用中、補強要素10は自己凝固性のペースト状液体材料又は部分的液体材料に大量に供給され、混合されることになる。その目的は、混合の終了までにペースト状材料中に補強要素10を均一に分配することを確実にすることであり、局所的な凝集は起こらず、それぞれの補強要素10の角度位置は可能な方向に均等に分配されることになる。混合の質は、アーム11の長さ及び角度αによって実質的に影響を受ける。提案された角度範囲では、アーム11が枝部15同士の間の距離の10倍以下であることが好ましい。これは絶対的な制限ではないが、アーム11がこのサイズより短い場合、アームが相互に係合する危険は少ない。もちろん、アームの長さには、さらに低い論理的限界もあるが、この限界は混合の質の観点からそれほど重要ではないのに対し、ランダムに近接して配置された補強要素のアームのうち、アームが短かすぎる場合には重要である。
【0033】
アーム11の長さの他に、要素間の凝集及び相互係合は、鋭い先端のフィラメントの端部とは異なる弧状のアーム端部としての湾曲ループの存在によって防止されることになる。アーム11の離間した枝部15の端部の相互接続をそれぞれの弧状ループ14によって均一に混合することを確実にすることに加えて、各枝部15にそれぞれの開口部17を形成するため、ループ14の重要性は高い。ペースト状の成形材料は、このような開口部17を通過して開口部を完全に充填することができ、材料の硬化後、ループ14は、成形材料とフィラメント13との間の接着力だけではなく、最終的にループ14の全体にわたって硬化する結合材料によって提供される形状篏合接続によって主に保持されることになる。この種の接続の本質は、ループ14によって囲まれた硬化材料が、隣接する補強要素10のアーム上のループ14と一体になることである。引張荷重がコンクリートの所与の断面に作用する場合、補強要素10の他のアームがコンクリートに圧力を付与することになり、コンクリートは圧力に対して良好な抵抗を有する。もちろん、補強要素10のフィラメント13のある部分では、引張力が発生することになるが、補強要素10はコンクリートよりもはるかに高い引張強度を有する。これはまさに、補強要素10の存在からもたらされるいっそう高い耐荷重能力の出現の理由である。さらに、ループ14が、アーム11の枝部15によって形成された開口部17に流入した後に自己硬化材料を取り囲むという事実により、取り囲まれた材料と補強要素10との間の大幅に強力になった圧力篏合接続が、あたかもフィラメント13と自己硬化材料との間の接着力によってのみ接続されているかのように生じることになる。古典的に設計された鉄筋コンクリートの場合、これは鋼製補強ワイヤと周囲のコンクリート材料との間の接続の典型的なタイプである。そのような接続は、従来の補強要素と周囲の自己硬化材料との間に確立されることになる。この形状嵌合、抱き込み型の接続は、補強要素10を構成するフィラメント13のタイプ及び品質とは無関係である。このため、フィラメント13を、ペースト状材料への接着性が少ない特殊な材料から作成することも可能である。この特性から、本明細書の後の部分で説明されるいくつかの好ましい特徴が生じる。
【0034】
図1~
図4に示す補強要素10は、重要な特性、即ち、単一の連続フィラメント13を湾曲することによってのみ製造することができるという特性を有する。この特性は、補強要素10が別々の方法ステップによって接続する必要のある別々の部分を有さず、これが補強要素の強度及び耐荷重能力を改善するということを意味する。単一フィラメントによる製造はいくつかの利点を有するが、単一フィラメントの使用は必ずしも必要ではない。補強要素10のそれぞれのアーム又はアーム対は、従来の方法(例えば、溶接、はんだ付け又は結合剤の使用)によって接続することができる別々の部品として作成してもよい。
【0035】
補強要素10のこの設計は好ましいが、
図5~
図8は、別の代替実施形態を示す。
【0036】
図5は、6本のアーム18を有する補強要素9を示しており、この6本のアームも単一フィラメントを湾曲することによって作成することができる。対向するアーム18は実質的に同一の直線上にあり、仮想立方体の対角線を構成する。アームの数をさらに増やすことは、そのような補強要素9を互いに近接して位置決めすることを妨げる可能性があり、その結果、補強要素の必要量を所定量のペースト状材料に供給して混合することができないという結果をもたらすことから、好ましくない。補強要素が互いからの距離を保持するというこの影響が、
図1~
図4に示す実施形態におよぶことははほとんどない。これは、このような補強要素10はさらに開放的な形状を有し、他の類似の要素を互いに密接に配置することを妨げないことによる。
【0037】
アーム11の空間配置及び数は、任意の方向に方向付けることができる空間仮想平面が選択され、補強要素10又は9の中央部分12に適合する直線Pをこの平面内に置くことができる場合、視覚化することができるか理解することができる。この直線Pは、
図5では一点鎖線で示されている。平面は周囲空間を半分に分割し、各半分にほぼ同じ数のアーム11を配置する必要がある。この条件は、補強要素のアーム11が均一な分布で空間内に延在すること、即ち、他のどの方向よりも多くのアームが延在するであろう、アーム11にとって好ましい方向がないことを表す。
【0038】
図6は、
図5に示した補強要素とは対照的に、いずれも湾曲されている3本のアームのみを有する補強要素19を示すが、図面の所与の画像では、アームの湾曲及び傾斜角度は明確に示されていない。しかし、前の段落で定義された規則はこの実施形態にも適用可能である。
【0039】
補強要素10、9、19を形成するのに使用することができるフィラメント13の好ましい設計は、
図7~
図9に示される。
図7では、互いに平行に導かれた一対のフィラメント13a及び13bを含むツインフィラメント22が示されており、この一対のフィラメントはプラスチックコーティング20によって囲まれて接続される。
図8では、フィラメント23は円筒可撓性プラスチックコーティング21によって囲まれる。コーティング20、21の製造は、絶縁電気ケーブルを製造するために概ね使用される類似の材料及び技術を使用することができる。しかし、コーティング20、21のサイズ及び質量は、このようにして作成されたフィラメント22、23の結果として得られる密度が、使用中にフィラメントを取り囲むことになるペースト状の自己硬化性結合材料の密度に等しいかほぼ等しいことになるように、選択される。ペースト状材料としてコンクリートが用いられる場合、フィラメント13、13a又は13bが鋼製であり、コーティング20、21がプラスチック材料製である場合、コーティング20、21の体積は、好ましくは鋼の体積の約2.6~2.8倍から選択される必要がある。この状態が保持されると、そのような方法で作成された補強要素10の密度はコンクリートの密度と同一になり、要素10がペースト状のコンクリートに供給されると、要素は周囲の媒体に沈降しないことになる。
【0040】
図9は鋼製の内側フィラメント13cを有するフィラメント24を示す。このフィラメント13c周りには紡糸炭素をはじめとする強力な繊維で作成されたリボン25が巻かれており、この繊維構造はバインダによって内側フィラメント13cに結合される。この実施形態を選択する場合、フィラメント24は、プラスチックバインダが硬化する前に補強要素10を作成するために湾曲される必要がある。この実施形態の使用は、炭素繊維強化材料が約5000~8000MPaの引張強度を有するのに対し、鋼の引張強度は通常800~1500MPaである、即ち、フィラメント24の引張強度は鋼の引張強度の少なくとも5倍大きいか、さらにはそれ以上であるため、きわめて高い荷重に暴露されるコンクリート構造体での使用に好ましく、妥当である。炭素繊維の代わりに、ガラス繊維、玄武岩又は他のプラスチック繊維から作成されるストランドを、必要な強度を有するならば使用することができる。
【0041】
フィラメント13が鋼製である場合、フィラメント13を腐食から保護する薄い亜鉛層で被覆するかメッキするのが好ましい。
【0042】
フィラメント13の外面は、補強要素10の使用中は力が、ある少量の自己硬化性ペースト状材料を包囲する環状のループ14によって伝達されるため、コンクリートをはじめとする自己硬化性ペースト状材料への接着力がきわめて小さい材料から製造することができる。これにより、コーティングとペースト状材料との間の接着力が果たす役割は副次的なものでしかない。
【0043】
本発明による補強要素10は、主としてさまざまな金型構造体の強度を高めるために使用される。自己硬化性ペースト状材料の中で、一般的に使用される傾向があるのはコンクリートである。しかし、例えば、同等の特性を有するポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステルをはじめとする熱可塑性材料から作成される強化プラスチック構造体に対する要望がますます増えてきている。同じように、多成分自己硬化性材料又は熱硬化性材料を使用することによって製造された複合材料をこの方法で強化することができる。
【0044】
この方法を用いている間、ペースト状で部分的に液体の自己硬化性材料は適切な容器内で混合され、混合工程の間に所定量の強化要素10が混合物に供給される。混合は必要な均質性に達するまで続けられ、次いで材料は下からと全側面から周囲の空間及び適切なジャロジー又は金型に注入される。次いで材料は、必要な場合には、余分な気泡を除去し、金型を材料が硬化するまでこの状態で保管するバイブレータによって処理される。必要な場合には、外面を点在させる(例えばコンクリートの場合には必要とされる)。
【0045】
強化要素10の供給量は、そのように作成された構造体の強度に影響を及ぼし、その量を増加させることによって強度は所与の程度まで増加させることができる。添加することができる量はこのような要素を受容する材料の能力によってのみ制限される。コンクリートの場合、補強要素10の添加の下限は約70~80kg/m3であり(補強要素が鋼製である場合)、必要な強度は約150~200kg/m3の投与量で達成される。コンクリートの品質は充分に良好である必要があり、好ましい範囲の下限は、低めの品質のコンクリートの使用を排除しないが強度の増加がそれほど際立つことがないであろうC50の品質にある。品質に上限はないが、C500付近よりも高品質のコンクリートを使用しても意味がなく、あるとすれば、特殊な目的の場合のみである。
【0046】
本発明の補強要素10では、その特性をさらによく学習し、そのような特性があらゆる場合に存在することを確認するために、多数の実験、試験及び比較測定が実施された。経験の詳細な説明の前に、いくつかの試験と、得られた結果を説明する。
【0047】
図10及び
図12は曲げ強度の試験に使用される試験装置を示す。試験用のプローブ片を、150×150mmの正方形の断面と600mmの長さを有するように作成した。
図10は従来の方法で作成されたプローブ26を示す。このプローブでは、その下部に、図に示すように後方及び上方に湾曲した端部を有する一対の横方向に離間したスチールワイヤ27を配置した。このワイヤの直径は8mmである。コンクリートの品質はC 25であった。試験中、一対の支持シリンダ28、29を500mmの距離を空けて水平支持面上に置いた。荷重は、加圧シリンダ30に垂直力Fの形態で作用し、プローブ26の最低中心点の垂直変位(曲げ)は力Fの関数として測定された。
【0048】
本発明による方法では、品質C110のコンクリートを用いて同一寸法のプローブ31を作成し、このコンクリート中に
図1~
図4に示す補強要素10を100kg/m
3添加した。補強要素10を篏合させることができる仮想球の直径は30mmであり、枝部15の直径は0.9mmであり、アーム11の枝部15同士の間の距離は6mmであり、フィラメントは鋼製であった。
【0049】
このほかの比較のために、商品名DRAMIX ZC-50/0.8で販売されている従来の補強要素を200kg/m3の密度で添加することによって、ほぼ同じサイズのプローブを調製した。鋼製補強要素の長さは50mm、その直径は0.8mmであり、両端部には2段階の段部を付けた。最後に、同一の大きさの別のプローブをC25コンクリート製のコンクリート片とともに使用し、コンクリート片に補強要素を追加しないことによってさらに試験を実施した。
【0050】
結果は
図13の線図に示される。一点鎖線で描かれた曲線32は、従来の鋼製棒で補強されたプローブ26に関するものである。細い点線で描かれた曲線33は、補強材なしのコンクリートプローブに関するものであり、補強材なしのコンクリートがきわめて小さい荷重にしか耐えられず、すぐに破損することを示す。破線で描かれた曲線34は、コンクリートがDRAMIX補強要素によって補強されたプローブに関するものである。最後に、実線で描かれた曲線35は本発明に従って作成されたプローブ31に関するものである。補強要素10を構成するコンクリートが優れた強度及び抵抗を有することは、特別に説明するまでもなく明らかである。従来の鉄筋コンクリートプローブ26と比較したこのプローブの耐荷重能力は90/60、即ち、従来の鉄筋コンクリートのプローブより50%高く、最大値に達した後に破断することはなく、最大荷重を過ぎてからさらに長いたわみに耐える。これは、パルス状の荷重が発生する可能性がある場合にきわめて好ましい特性である。このプローブの強度は、DRAMIX要素で補強された同一サイズのコンクリートの5倍である。この強度は、あらゆる方向からの荷重があっても維持されることに留意することが重要である。
【0051】
ここで、
図14~
図17を参照すると、本発明による解決策の別の特性が示される。上記の実施例に記載されたようなDramix要素によって強化されたコンクリートから、プローブ立方体35を150mmのエッジ長のサイズで作成し、ほぼ同じプローブ立方体を、プローブ31に記載されたように本発明に従って補強されたコンクリートによって作成した。エッジの長さが150mmの2つの立方体をコンピューター断層撮影法で検査し、さまざまな断面で多数のX線写真を作成した。
図14は、既知の要素によって補強されたプローブ立方体35から撮影された層状写真の典型的なものを示す。
【0052】
二次記録は、プローブ立方体35を成形したときの位置にある状態で示す。即ち、符号1~5は高さを示し、ここで#1は最上高バンドに対応し、#5は最低高バンドに対応する。この記録では、光点は、関係する層の補強要素の画像である。画像は、立方体の中の要素の位置に応じて、部分的に小さい円と、部分的に短いか長い縞である。さまざまな高さで撮影された記録は、関連する高さでの補強要素の数の計数を可能にした。
図14の画像を見ると、補強要素に対応する白い斑点が最低バンド5では密度が高まるのに対し、高めのバンドでは要素が大幅に少なくなることがすぐにわかる。
図15の線
図36は、それぞれの高さのバンドでの補強要素のカウント数を示す。バンド#1では約100個の要素しか計数されておらず、この数は下方へ移動するにつれて徐々に増加し、バンド#4と#5の間では最大460個に達している。この変化、即ち、不均一の程度は4.7倍であった。下方に向けて密度がこのように増加するのは、鋼製補強要素がコンクリートより重く、ペースト状又は液状のコンクリート中で落下する傾向があるという事実によるものである。要素の大部分が最も低い高さにないのは、要素が任意の角度位置をとることができ、要素の一端部がジャロジーに達するとそれ以上下方に移動できないためである。
【0053】
図16は、本発明による補強要素10を含むプローブ立方体37から取得した類似の層の記録である。画像を見ると、要素の分布が高さに沿ってさらに均一になっていることがすぐにわかり、確認できる。白い斑点の大きさがさまざまであるのは、補強要素10がさまざまな位置をとっているため、補強要素の投影された斑点が小さくなるか大きくなっていることを示す。
図17は、
図15とほぼ同じであり、各高さでの補強要素10のカウント数を示す。線
図38は、分布がいっそう均一になっていると同時に、要素の数が大幅に多くなっている。最小数は100であり、最大数は1200である。即ち、不均一の程度は、対照例では470%であるのと対照的に、32%である。
【0054】
なお、横方向では重力の影響がわずかであるため、プローブ立方体35、37のいずれの場合も、横方向での不均一は小さかった。
【0055】
図10を再び参照すると、従来の鋼製鉄筋コンクリートから作成された従来のプローブ26は、荷重の影響下でわずかに湾曲したときの状態にて、わずかに不均衡の縮尺で示される。コンクリートの下層は荷重の影響下でわずかに膨張するため、補強鋼製棒も膨張し、その結果、わずかに誇張された縮尺で示されるわずかな亀裂がコンクリート材料に発生する。
図11は、そのような亀裂39を拡大図で示しており、鋼製棒40及び周囲の砂利粒子41を観察することができる。荷重を受けて膨張したコンクリート構造体の表面に亀裂39が存在することは自然現象と考えることができるが、周囲空気中の湿気又は局所的な湿気の存在の影響下で亀裂39に沿って鋼製棒40は腐食する。腐食は、特に腐食した鉄が鋼の3倍の体積を有するため、時間の経過とともに問題を引き起こす可能性がある。局所的な体積の増加はコンクリート材料に張力を生じさせ、さらに亀裂を生じさせ、腐食過程は時間の経過とともにコンクリートの強度を低下させる。
【0056】
上記とは対照的に、本発明に従って製造され
図12に示される構造では、小さな補強要素10の膨張はサイズがきわめて小さく、周囲のコンクリートに引張力ではなく圧力を付与し、その結果、亀裂の発生の理由からは除外されるため、亀裂は形成されない。この効果は、腐食の危険性の減少又は排除をもたらし、構造体の有効寿命を実質的に増加させる。腐食の危険性は、フィラメント13に亜鉛コーティング又はプラスチックコーティングが施されている場合、さらに減少する。
【0057】
既知の補強要素に関して、有利な効果をともに引き起こす根拠を分析し列挙することには価値がある。このような根拠は、以下に要約されるが、重要性の順ではない。
【0058】
補強要素10と周囲のペースト状材料との間の力伝達接続は、ループ14を通って流れた最初のペースト状材料と、凝固した後の材料を保持するループ14自体との間の接続によるものであり、この接続は、フィラメント13と周囲媒体との間の摩擦及び接着接続とは異なることを、これまで説明してきた。このようにして伝達することができる力を増大させるという事実とは別に、フィラメント13の材料を、耐腐食性層、あるいはまた引張強度を増大させる繊維状コーティング、あるいはプラスチックコーティングで覆うことも可能であり、この影響下では、結果として得られる密度が所望の程度に減少する。
【0059】
さまざまな方向にそれほど大きくない角度で延びる補強要素のアームの存在は、要素の局所的な凝集又は相互係合が起こらないため、混合工程中にきわめて有用である。補強要素のアームが別の補強要素のアームのループ内を摺動する場合、アームは混合中の力の影響下で容易に外部に滑り出すことができるため、混合操作中に隣接する補強要素が相互接続するであろう理由はない。補強要素の凝集は、そのような要素の既知の全種類で経験されている。
【0060】
補強要素が流体媒体中に沈降するという上記の危険性がさらに問題を引き起こす。補強要素10のアームは全方向に延びてパラシュートとして作用し、流体中の移動に対する抗力を増大させ、この効果が生じ得ない特別な方向は存在しない。さらに、砂利粒子は、補強要素10のアームと接触して局所的な支持を提供し、媒体内でのアームの変位を防止することができる。沈降効果は、ここに挙げた理由により、比重を調整するプラスチックコーティングを使用して比重が低下しない場合でも、小さくなることになる。
【0061】
凝集の危険性を排除することによって、さらに利点が得られる。即ち、単位体積では、はるかに多くの強化要素を配置することができ、それによって強化の効果も増大する。
図16と
図18に示される数字を比較すると、この効果は実験によって確認されており、本発明を用いたコンクリートサンプル中にはるかに多くの補強要素があるのがわかった。
【0062】
補強要素10のアーム14は、それぞれが一点に沿ってのみジャロジーに接触可能な関連ループ14によって構成された端部を有する。このため、ジャロジーが取り除かれた後、補強要素10の存在は、既知の補強要素の場合のように、ほんの小さな斑点にて示され、長いワイヤ表面には示されない。既製構造の外面まで延びる金属ワイヤは、同時に腐食の中心でもあり、外面の外観を著しく損なう。本発明による補強要素10を使用する場合、腐食防止コーティングを使用しなくても小さな斑点だけは見られるが、亜鉛メッキ設計又はプラスチックコーティング設計の場合は錆の危険性は現れない。
【0063】
次の重要な特性は、補強要素10の場合には好ましい方向がなく、良好な混合及び多数の法則の結果としてアームがあらゆる方向に向いており、強度が完全に等方性である、即ち、あらゆる方向から付与される荷重に対抗する、ということである。これは、まさに要素の凝集の結果として局所的な異方性を有する危険性があったため、以前に使用された解決法を超える実質的な利点である。
【0064】
列挙された効果の結果として、本発明による補強要素10を使用する構造体は、任意の所与の荷重に対して寸法を決めて設計することができ、耐荷重特性が変化し、使用される技術及び製造の環境に左右される可能性があるという問題は生じないことになる。
【0065】
最後に、例えば
図13に示す線図が、強度の実質的な増加があったことを裏づけたことから、いくつかの追加の有利な特性があり得ること、耐荷重能力の増加をさらに増大させる必要性、さらには
図9に示す炭素繊維強化コーティングの必要性がある場合には、大幅に強度の増大した構造を得ることができること、に留意されたい。