(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/28 20060101AFI20220330BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20220330BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20220330BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
A61M5/28
A61M5/24
A61M5/20
A61M5/31 520
(21)【出願番号】P 2019520141
(86)(22)【出願日】2017-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2017075256
(87)【国際公開番号】W WO2018069121
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-18
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
(72)【発明者】
【氏名】マルク・シャーダー
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/113968(WO,A1)
【文献】特表2012-529322(JP,A)
【文献】特表2013-533076(JP,A)
【文献】特表2015-536772(JP,A)
【文献】国際公開第2016/107922(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/125582(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/178-5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを含む薬物送達デバイスであって、前記ハウジングがシリンジを収容し、ここで、該シリンジは:
液体薬剤を収容する容器であって、その遠位端にアパーチャを含み、該アパーチャを通って前記液体薬剤を投薬することができる容器と;
前記容器内のストッパであって、前記アパーチャを通って前記液体薬剤が投薬されるように、容器に対して第1の長手方向位置と第2の長手方向位置との間で可動であるストッパと;
液体薬剤を識別する少なくとも1つの識別手段とを含み、
該シリンジは、ニードルシールドをさらに含み、該ニードルシールドは、液体薬剤が投薬される孔を含み、少なくとも1つの識別手段は、ニードルシールドの外面に配置さ
れ、
少なくとも1つの識別手段は、ニードルシールドに取り付けられたピンを含む、前記薬物送達デバイス。
【請求項2】
ニードルシールドの外面は前面を含み、孔は該前面に配置され、少なくとも1つの識別手段は前記前面に配置される、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
少なくとも1つの識別手段は、タンポ印刷面を含む、請求項1または2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
少なくとも1つの識別手段は、レーザマーキング面を含む、請求項1または2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
ピンは、ニードルシールドの孔の中に取り付けられる、請求項
1~4のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
ピンは、ヘッドと、前記ヘッドに配置された突起とを含み、該突起は、ニードルシールドの孔の中に取り付けられるように構成される、請求項
1~5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
少なくとも1つの識別手段は、UV光を使用して印刷される、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
少なくとも1つの識別手段は、レーザマーキングによって印刷される、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの識別手段は、バーコードを含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の薬物送達デバイスを製造する方法
であって、容器内に収容されている液体薬剤を識別する少なくとも1つの識別手段をシリンジに提供することを含む、前記方法。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス内に収容されている液体薬剤を識別する方法であって、シリンジが、液体薬剤を識別する少なくとも1つの識別手段を含み、該方法は:
センサによって少なくとも1つの識別手段を検出することと;
少なくとも1つの識別手段を検出したことに応答して、検出された少なくとも1つの識別手段を使用して液体薬剤を識別することとを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達デバイスおよび薬物送達デバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己投与式の注射によって送達される現在の治療には、糖尿病(インスリンおよび新しいGLP-Aクラスの薬物の両方)、偏頭痛、ホルモン治療、抗凝血剤などのための薬物が含まれる。自動注射器などの薬物送達デバイスは、注射治療の自己投与を使用者にとってより容易にすることを目的とする。自動注射器は、手動デバイスの薬剤送達に伴う働きに完全または部分的に取って代わるデバイスである。
【0003】
いくつかの自動注射器は、充填済みカートリッジまたはシリンジシステムとともに動作する。このタイプのシステムは、典型的には、薬剤で充填済みの別個のカートリッジまたはシリンジを備える。いくつかの例では、使用者は、充填済みカートリッジを自動注射器のハウジング内へ注射前に挿入しなければならない。
【0004】
自動注射器はまた、使用者が充填済みシリンジ自体を挿入するのに不便しないように、ハウジング内にすでに収容されている充填済みシリンジを備えることができる。この場合、前記自動注射器の組立て中に自動注射器内へ充填済みシリンジが挿入される。
【0005】
充填済み自動注射器シリンジの製造プロセス中、異なる液体薬剤に対して同一のシリンジパッケージが使用される。これにより、製造コストは低く抑えながら、生産効率は高く保たれる。充填済みシリンジは、自動化された機械によって自動注射器内へ挿入される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、ハウジングを含む薬物送達デバイスであって、前記ハウジングがシリンジを収容し、ここで、シリンジは:液体薬剤を収容する容器であって、その遠位端にアパーチャを含み、アパーチャを通って前記液体薬剤を投薬することができる容器と;前記容器内のストッパであって、前記アパーチャを通って前記液体薬剤が投薬されるように、容器に対して第1の長手方向位置と第2の長手方向位置との間で可動であるストッパと;液体薬剤を識別する少なくとも1つの識別手段とを含む、薬物送達デバイスが提供される。容器内に収容されている液体薬剤を識別する識別手段をシリンジに提供することによって、薬物送達デバイス内へのシリンジの挿入後、前記薬物送達デバイス内に正しい液体薬剤が収容されているかどうかを容易に判定することができる。これにより、シリンジを収容する薬物送達デバイスを組み立てる生産効率を増大させながら、製造の損失およびコストを低減させることができる。
【0007】
少なくとも1つの識別手段は、シリンジの遠位端に配置することができる。これにより、シリンジが薬物送達デバイスのハウジングに挿入された後、液体薬剤の容易な識別を可能にすることができる。
【0008】
シリンジは、ニードルシールドをさらに含むことができ、ニードルシールドは、液体薬剤が投薬される孔を含み、少なくとも1つの識別手段をニードルシールドの外面に配置することができる。ニードルシールドの外面に配置された少なくとも1つの識別手段を提供することで、シリンジが薬物送達デバイスに挿入された後、液体薬剤の容易な識別を可能にすることができる。
【0009】
ニードルシールドの外面は前面を含むことができ、孔は前面に配置され、少なくとも1つの識別手段は前記前面に配置される。ニードルシールドの前面に配置された少なくとも1つの識別手段を提供することで、シリンジが薬物送達デバイスのハウジングに挿入された後、薬物送達デバイスを分解したり、薬物送達デバイスのハウジングからシリンジを取り外したりすることなく、液体薬剤の識別を可能にすることができる。
【0010】
少なくとも1つの識別手段は、タンポ印刷面、たとえばニードルシールドのタンポ印刷面を含むことができる。表面をタンポ印刷することにより、比較的安価な識別手段を提供することができる。表面をタンポ印刷することはまた、標準的なシリンジに、すなわちシリンジの追加の修正なく、識別手段を提供することができることを意味する。独特でありしたがって比較的高価なシリンジを、液体薬剤のタイプごとに提供する必要はない。
【0011】
少なくとも1つの識別手段は、レーザマーキング面、たとえばストッパ、ニードルシールド、および/またはガラスバレルのレーザマーキング面を含むことができる。レーザマーキング面は、レーザ彫刻面またはUV(紫外)レーザマーキング面とすることができる。表面のレーザマーキングにより、比較的安価な識別手段を提供することができる。表面のレーザマーキングはまた、標準的なシリンジに、すなわちシリンジの追加の修正なく、識別手段を提供することができることを意味する。独特でありしたがって比較的高価なシリンジを、液体薬剤のタイプごとに提供する必要はない。
【0012】
少なくとも1つの識別手段は、ニードルシールドに取り付けられたピンを含むことができる。ニードルシールドに取り付けられたピンを識別手段として提供することは、ニードルシールドを有する標準的なシリンジに対して、シリンジの修正なく実施することができる。
【0013】
ピンは、ニードルシールドの孔の中に取り付けることができる。これにより、薬物送達デバイスハウジングの開口部を通る液体薬剤の識別を可能にしながら、開口部のサイズを小さく抑えることを可能にすることができる。
【0014】
ピンは、ヘッドと、前記ヘッドに配置された突起とを含むことができ、突起は、ニードルシールドの孔の中に取り付けられるように構成される。これは、ピンをニードルシールドに解放可能に取り付ける特に効果的な手段である。
【0015】
少なくとも1つの識別手段は、容器に印刷されたマーキングを含むことができる。シリンジの容器に印刷されたマーキングを提供することで、比較的安価な識別手段を提供することができる。これはまた、標準的なシリンジに、すなわちシリンジの追加の修正なく、識別手段を提供することができることを意味する。独特でありしたがって比較的高価なシリンジを、液体薬剤のタイプごとに提供する必要はない。シリンジの容器に印刷されたマーキングを提供することで、シリンジがハウジングに挿入されたとき、薬物送達デバイスを分解したり、ハウジングからシリンジを取り外したりすることなく、薬物送達デバイスハウジングの窓を通して識別手段を観察することを可能にすることができる。
【0016】
マーキングは、UV光を使用して容器に印刷することができる。これは、識別手段を提供する特に費用効果の高い手段であり、様々な形状のシリンジに容易に適用することができる。
【0017】
マーキングは、レーザマーキングによって容器に印刷することができる。これは、識別手段を提供する特に費用効果の高い別の手段であり、様々な形状のシリンジに容易に適用することができる。
【0018】
マーキングは、バーコードを含むことができる。これは、計算デバイスまたは他の機械によって識別手段を読み取ることを可能にすることができ、それによりシリンジ内の液体薬剤の識別の自動化を可能にすることができることから有利である。
【0019】
マーキングは、容器の外面の周りに配置されたリングを含むことができる。これは、識別手段を提供する特に費用効果の高い手段である。リングは、他の形態のマーキングと比較すると比較的はっきり区別することができ、したがって最終使用者には目立たないと考えることができる。また、リングの位置を使用して、注射処置中に完全な用量が送達されたかどうかを最終使用者に示すことができる。理想的には、リング位置は、注射の終了を意味するクリックと同期される。注射プロセスの終わりにクリックが生じたとき、ストッパは、リングを越えた位置またはリングに隣接する位置に到達していることになる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、ハウジングを含む薬物送達デバイスを製造する方法であって、前記ハウジングがシリンジを収容し、ここで、シリンジは:液体薬剤を収容する容器であって、その遠位端にアパーチャを含み、アパーチャを通って前記液体薬剤を投薬することができる容器と;
前記容器内のストッパであって、前記アパーチャを通って前記液体薬剤が投薬されるように、容器に対して第1の長手方向位置と第2の長手方向位置との間で可動であるストッパとを含み;前記方法は:容器内に収容されている液体薬剤を識別する少なくとも1つの識別手段をシリンジに提供することを含む、方法が提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、前述の薬物送達デバイス内に収容されている液体薬剤を識別する方法であって、シリンジが、液体薬剤を識別する少なくとも1つの識別手段を含み、方法は、センサによって少なくとも1つの識別手段を検出することと、少なくとも1つの識別手段を検出したことに応答して、少なくとも1つの識別手段を使用して液体薬剤を識別することとを含む、方法が提供される。
【0022】
本発明の様々な態様の上記その他の利点は、以下に記載する実施形態から明らかになるであろう。
【0023】
本発明の例示的な実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態による薬物送達デバイスで使用するためのニードルシールドを有するシリンジの等角図である。
【
図2a】
図1のシリンジを収容する薬物送達デバイスの側面図である。
【
図2b】
図1のシリンジを収容する薬物送達デバイスの正面図である。
【
図3a】本発明の実施形態によるピンを含む識別手段の等角図である。
【
図3b】本発明の実施形態によるシリンジのニードルシールド内に取り付けられた
図3aのピンの等角図である。
【
図4a】シリンジの容器に識別手段が印刷されている、本発明の実施形態による薬物送達デバイスで使用するためのシリンジの等角図である。
【
図4b】窓を有し、
図4aのシリンジを収容している、薬物送達デバイスの等角図である。
【
図5a】シリンジのストッパに識別手段が位置している、本発明の実施形態による薬物送達デバイスで使用するためのシリンジの等角図である。
【
図5b】窓を有し、
図5aのシリンジを収容している、薬物送達デバイスの等角図である。
【
図6a】シリンジの容器にリングが位置している、本発明のいくつかの実施形態による薬物送達デバイスで使用するためのシリンジの等角図である。
【
図6b】窓を有し、
図6aのシリンジを収容している、薬物送達デバイスの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を次に詳細に参照する。本発明の実施形態の例が添付の図面に示されており、添付の図面全体にわたって同じ参照番号が同様の要素を指す。
【0026】
シリンジ内に収容されている液体薬剤を識別する識別手段を有するシリンジを収容するハウジングを含む薬物送達デバイスおよび薬物送達デバイスを製造する方法が提供される。
【0027】
シリンジは、液体薬剤を収容する容器と、容器内のストッパとを含む。容器は、ガラスバレルなどのバレルとすることができる。容器はアパーチャを含み、液体薬剤は、注射処置中にアパーチャを通って投薬されるように構成される。ストッパは、アパーチャを通って液体薬剤を投薬するように、容器に対して第1の位置と第2の位置との間で可動である。
【0028】
後述するようなシリンジは、容器の遠位端でアパーチャに隣接して固定して配置されたカニューレを含む。本説明全体にわたってカニューレという用語を使用するが、カニューレは、針または中空針としても知られていることに留意されたい。本発明の実施形態によるカニューレは剛性であり、したがってカニューレは、注射処置中に使用者の皮膚に貫入することができる。カニューレは、アパーチャと流体連通しており、したがって容器に対する第1の位置と第2の位置との間のストッパの動きにより、アパーチャおよびカニューレを通って液体薬剤が投薬される。
【0029】
シリンジは、シリンジ内に収容されている液体薬剤を識別する少なくとも1つの識別手段をさらに含む。したがって機械または使用者は、前記シリンジの製造後、たとえば前記シリンジを含む薬物送達デバイスの組立て中または組立て後、シリンジ内に収容されている液体薬剤を容易に識別することが可能である。
【0030】
識別手段は、外側から見えるように、したがって機械または使用者にとって液体薬剤の識別をより容易にするように、シリンジの外面に位置することが好ましい。
【0031】
後述する本発明の態様による薬物送達デバイスは、使用者または患者への液体薬剤の皮下注入による送達である。薬物送達デバイスは、注射ペンなどの手持ち式の薬物送達デバイスとすることができる。
【0032】
一例として、手持ち式の薬物送達デバイスは、自動注射器とすることができる。自動注射器は、患者に薬剤を送達するように構成された注射デバイスであり、従来の手動注射デバイスを使用する薬剤送達に伴う働きに完全または部分的に取って代わることによって、注射治療の自己投与を使用者にとってより容易にすることを目的とする。これらの働きには、保護シリンジキャップの取外し、患者の皮膚への針/カニューレの挿入、薬剤の注射、針/カニューレの取外し、針/カニューレの遮蔽、デバイスの再利用の防止を含むことができる。したがって自動注射器は、手動注射デバイスの欠点の多くを克服する。トリガは、多数の手段によって、たとえばトリガボタンによって、または針/カニューレが注射深さに到達する動作によって実行することができる。
【0033】
例示的な薬物送達デバイスを
図2a、
図2b、
図4b、および
図5bに示し、これらの図に伴う説明でより詳細に論じる。
【0034】
本発明による薬物送達デバイスは、注射処置前に薬物送達デバイスのハウジング内へ挿入されているシリンジを収容する。これは、薬物送達デバイスの組立て中に製造場所で行うことができ、したがって薬物送達デバイスは、シリンジが自動注射器内にすでに収容された状態で最終使用者に提供される。これにより、シリンジ自体を挿入する必要がないため、薬物送達デバイスの使用を最終使用者にとって容易にすることが簡略化される。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態によれば、例示的なシリンジ10が
図1に示されている。シリンジ10は、薬物送達デバイスのハウジング、たとえば
図2aに示す薬物送達デバイス20のハウジング21内に収容される。シリンジ10は、液体薬剤12を収容する容器11を含んでおり、したがってシリンジ10は「充填済み」である。容器11は、近位端13および遠位端14を有する。本開示全体にわたって使用される場合、「遠位」という用語は、注射部位に比較的近い場所を指し、「近位」という用語は、自動注射器の使用中に使用者に近い場所、すなわち注射部位から比較的遠い場所を指す。
【0036】
容器11はアパーチャ15を含み、液体薬剤12はアパーチャ15を通って投薬される。シリンジ10は、容器11を封止してアパーチャ15を通って液体薬剤12を変位させるストッパまたはピストン16をさらに含む。ストッパ16は、アパーチャ15を介して液体薬剤12を容器11から変位させるように、容器11の近位端13にある第1の長手方向位置と容器の遠位端14にある第2の長手方向位置との間で容器11内を可動である。
【0037】
シリンジ10は、容器11の遠位端14にアパーチャ15に隣接して配置されたカニューレ(図示せず)をさらに含む。
【0038】
注射処置中、カニューレまたは中空針は患者の皮膚に挿入され、したがってシリンジ10の容器11内に収容されている液体薬剤12を、カニューレを介して患者へ送達することができる。したがって、カニューレは、容器11と流体連通するように構成される。カニューレは、注射処置の開始前に、たとえばボタンまたは摺動機構などのシリンジまたは薬物送達デバイスに配置されている機構の作動によって、容器11内の液体薬剤12と流体連通させることができる。別法として、カニューレは、その初期状態で容器11および液体薬剤12とすでに流体連通させておくこともできる。
【0039】
シリンジ10は、ニードルシールド17をさらに含むことができる。ニードルシールド17は、カニューレの損傷を防止するため、注射前のカニューレを覆うように構成される。ニードルシールド17は、容器11の遠位端14で容器11のアパーチャ15に隣接して配置される。ニードルシールド17は、カニューレを取り囲む。
【0040】
ニードルシールド17は、ニードルシールドの遠位端に前面18を有し、前面18は、孔19(穿孔とも呼ばれる)を含む。ニードルシールド17は、容器11に可動に取り付けられており、したがってニードルシールド17は容器11に対して長手方向に可動である。ニードルシールド17は、容器11の長手方向軸Zに沿って、第1の長手方向位置と第2の長手方向位置との間で可動である。ニードルシールド17は、容器11の近位端13に向かうニードルシールド17の動きによって、第1の長手方向位置から第2の長手方向位置へ動かされる。
【0041】
ニードルシールド17の第1の長手方向位置では、カニューレは、ニードルシールド17によって実質上取り囲まれており、したがってカニューレの遠位端はニードルシールド17内にあり、ニードルシールド17の孔19を介してニードルシールド17の外側へ延びていない。したがってカニューレは保護されており、その結果注射部位に挿入することはできない。
【0042】
ニードルシールド17は、注射処置前に第2の位置へ動かされる(または後退させられる)。ニードルシールド17は、使用者が物理的に後退させることができ、または遮蔽リムーバ(shield remover)(図示せず)の作動によって後退させることができる。遮蔽リムーバは、シリンジ10内に含むことができ、または薬物送達デバイス自体の別の部材内に含むことができる。ニードルシールド17の第2の位置で、カニューレの遠位端は少なくとも部分的に露出し、したがってカニューレの遠位端は、ニードルシールド17の孔19を通ってニードルシールド17の外側へ延びる。次いで、カニューレの遠位端を注射部位に挿入することができる。使用の際、液体薬剤12は、カニューレを介して孔19を通って投薬することができる。
【0043】
以下の実施形態のそれぞれにおいて、シリンジ10は、シリンジ10の容器11内に収容されている液体薬剤12を識別する少なくとも1つの識別手段を含む。すなわち、使用者および/または計算デバイスは、識別手段によって容器11内の液体薬剤12を識別することが可能である。
【0044】
シリンジに識別手段を提供することによって、製造場所の作業者または機械が、前記薬物送達デバイスの組立て中に特定の薬剤を収容している正しいシリンジが薬物送達デバイスに挿入されたことを確認することができる。以前は、薬物送達デバイス内の薬剤が確認されなかった場合、シリンジ、および場合により薬物送達デバイス自体が、廃棄された可能性がある。これにより、薬物送達デバイスの損失および生産コストが増大した。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、シリンジ10の遠位端14に少なくとも1つの識別手段を配置することができ、したがってシリンジ10の遠位端14から識別手段を観察することができる。たとえば、ニードルシールド17の前面18に少なくとも1つの識別手段を配置することができる。そのような位置に識別手段を提供する利点について、
図2aおよび
図2bを参照して以下に論じる。
【0046】
本発明のいくつかの態様によれば、識別手段は、シリンジ10のマーキング面、特にニードルシールド17のマーキング外面を含むことができる。識別手段は、タンポ印刷面など、シリンジ10のマーキング/印刷面を含むことができる。ニードルシールド17の前面18は、タンポ印刷面を含むことができる。
【0047】
別法または追加として、識別手段は、シリンジ10のレーザマーキング面を含むことができる。言い換えれば、識別手段は、レーザによってマーキングされた表面を含むことができる。いくつかの例では、レーザマーキング面は、シリンジ10のUV(紫外)レーザマーキング面である。他の例では、レーザマーキング面は、シリンジ10のレーザ彫刻面である。
【0048】
レーザマーキング面は、ストッパ16の径方向外面などのストッパ16のレーザマーキング面、または以下に論じるように容器11のレーザマーキング面とすることができる。
【0049】
レーザは、バーコード、QRコード、またはデータマトリックスなどの機械可読コードを表面にマーキングすることができる。ニードルシールド17の前面18は、シリンジ10のレーザマーキング面を含むことができる。シリンジ10がニードルシールド17を含む場合、以下に論じるように、ニードルシールド17の前面18で、ニードルシールド17の孔19の周りに、マーキング/印刷面などの識別手段を提供することが特に有利である。
【0050】
図2aおよび
図2bはそれぞれ、本発明によるシリンジ10を収容する例示的な薬物送達デバイス20の側面図および正面図を示す。
図2aに示すように、薬物送達デバイス20は、シリンジ10を収容するように構成されたハウジング21を含む。ハウジング21は、シリンジ10を完全に密閉または収容することができる。ハウジングは、注射処置中に使用者によって保持されるように構成された近位端22と、薬物送達デバイス20の遠位端24に配置された遠位面23とを含む。薬物送達デバイスハウジング21の遠位面23は、注射処置中に注射部位に接触する。
【0051】
薬物送達デバイス20は、前記ハウジング21、たとえば前記ハウジング21の近位端22に配置された作動手段25をさらに含む。作動手段25は、
図2aにボタンとして示されているが、その代わりにダイヤルまたはスライダなどの任意の作動手段が存在することもできる。作動手段25は、使用者によって作動させられたとき、シリンジ10のストッパ16に圧力を加えてストッパをシリンジ10の近位端13からシリンジ10の遠位端14の方へ動かし、液体薬剤12を排出するように構成される。
図2aは、ハウジングの近位端22に配置された作動手段25を示すが、作動手段25は、ハウジング21の異なる位置に配置することもできる。ニードルシールド17の後退などの注射処置に関連する追加の機能を実行するために、1つまたはそれ以上の追加の作動手段(図示せず)をハウジング21に配置することもできる。
【0052】
図2bは、正面からの、すなわち自動注射器20の遠位面23を見ている、
図2aの薬物送達デバイス20を示す。遠位面23は、前記遠位面23に配置された開口部26を含み、シリンジ10または薬物送達デバイス20のカニューレの遠位端は、注射処置中に開口部26を通過する。注射処置前、カニューレの遠位端はニードルシールド17内にあり、したがって開口部26を介して薬物送達デバイス20のハウジング21の外側へ延びない。注射処置中、ニードルシールド17は、たとえば遮蔽リムーバ(図示せず)を作動させることによって後退させられる。その結果、カニューレは次に、注射部位への挿入のために、薬物送達デバイス20のハウジング21の外側へ、遠位面23内の開口部26を通って延びる。
【0053】
図2bで分かるように、ニードルシールド17は、薬物送達デバイスハウジング21の遠位面23内の開口部26を通して見える。ニードルシールド17の孔19およびハウジング21の開口部26は、開口部26を通してニードルシールド17の孔19が見えるように、長手方向軸Zの軸に沿って位置合わせされる。ニードルシールド17の近似位置を、
図2bに破線の円によって示す。
【0054】
ニードルシールド17の前面18が開口部26を通して見えるように、開口部26の直径D1はニードルシールド17の孔19の直径D2より大きいことが有利である。シリンジ10の遠位端、特にニードルシールド17の前面18に配置された少なくとも1つの識別手段を提供することによって、識別手段は開口部26を通して、薬物送達デバイス20の外側に位置する使用者または計算デバイスに見える。これにより、有利には、薬物送達デバイス20を解体したり、薬物送達デバイス20のハウジング21内からシリンジ10を取り出したりしなくても、使用者または計算デバイスが識別手段を容易に観察し、したがってシリンジ10の容器11内に収容されている液体薬剤12を識別することが可能になる。
【0055】
図3aは、本発明による識別手段の例示的な実施形態を示し、識別手段はピン30を含む。ピン30は、
図3bに示すように、ニードルシールド17の前面18に取り付けられるように構成される。
【0056】
図3aは、ヘッド31と、ヘッド31から延びる突起32とを含むピン30を示す。突起32は、ニードルシールド17の孔19内に挿入されるように構成され、それによりピン30がニードルシールド17の孔19内に取り付けられる。ピン30のヘッド31は、ピン30がニードルシールド17内に取り付けられているとき、ピン30が孔19に入るさらなる動作を防止するために、ニードルシールド17の前面18に接触する。
図3aに示すように、突起32は、好ましくは、ピン30をニードルシールド17の孔19内で保持するように構成された少なくとも1つの脚部33を含む。したがってピン30は、ニードルシールド17に解放可能に取り付けることができる。
【0057】
図3bは、ニードルシールド17に取り付けられたピン30を示し、この場合、ピン30は、ニードルシールド17の前面18で孔19内に取り付けられている。ピン30のヘッド31は、ニードルシールド17の前面18に隣接している。
【0058】
ピン30は着色することができ、色はシリンジ10内の液体薬剤12を識別する。このようにして、いくつかの異なる色を使用して、いくつかの異なる液体薬剤を容易に識別することができる。
【0059】
ピン30は、シリンジ10の組立て中、薬物送達デバイス20のハウジング21内へのシリンジ10の挿入前に、ニードルシールド17の前面18に取り付けることができる。シリンジ10が薬物送達デバイス20に挿入された後、
図2aおよび
図2bを参照して前述したように、着色されたピン30が薬物送達デバイス20の遠位面23内の開口部26を通して見える。
【0060】
ピン30を識別手段として使用することは、比較的安価であり容易に製造することができ、シリンジ10をほとんどまたはまったく修正しないでシリンジ10の孔19内へ取り付けることができることから、特に有利である。ピン30はまた、薬物送達デバイス20の開口部26を通して使用者に容易に見える。したがって、薬物送達デバイス20を分解したり、薬物送達デバイス20からシリンジ10を取り外したりすることなく、薬物送達デバイスハウジング21にすでに挿入されたシリンジ10内に収容されている液体薬剤12を容易に識別することができる。ニードルシールド17の孔19内にピン30を取り付けることによって、開口部の直径D1をニードルシールド17の直径D2に対して小さく抑えることができ、それによってハウジング21の内側およびハウジング21内に収容されている薬物送達デバイス/シリンジの構成要素の不要な露出を防止することができる。
【0061】
ピン30は、プラスチックまたは金属から作ることができる。プラスチックは、異なる色のピンを作製するのが比較的容易であるため、有利である。金属は、おそらくはスタンプ加工された一体的な記号と共に容易にスタンプ加工および/または曲げ加工を施して成形することができるため、有利である。したがってピン30は、様々な液体薬剤12を識別するために、安価で容易に作製することができる。
【0062】
注射処置前、たとえばまず薬物送達デバイス20のハウジング21内からシリンジ10を取り外すことによって、ピン30をニードルシールド17から取り外すことができる。
【0063】
図4aおよび
図4bは、本発明のさらなる実施形態による薬物送達デバイス20の斜視図であり、シリンジ10は、薬物送達デバイス20内に収容されている。
【0064】
図4aは、
図1および
図3bを参照して前述したシリンジ10に類似しているシリンジ10を示す。
図4aに示すシリンジ10は、カニューレ(図示せず)およびニードルシールド17を含むが、本実施形態のシリンジ10は、別法として、ニードルシールド17を含まなくてもよい。この場合、ニードルシールド17は、薬物送達デバイス20の異なる部材内に含むことができる。
【0065】
図4aは、識別手段がシリンジ10の容器11、たとえば容器11の外面に印刷されたマーキング40を含むシリンジ10を示す。いくつかの例では、容器11はガラスバレルであり、マーキング40はガラスバレルに印刷される。マーキング40は、インクを使用して容器11に印刷することができる。さらに、マーキング40は、シルクスクリーン印刷技法によって印刷することができる。
【0066】
マーキング40は、好ましくは、QRコードまたはデータマトリックスなどのバーコードを含み、したがってマーキング40は計算デバイスによって可読である。
【0067】
マーキング40は、UV光を使用して容器11に印刷することができる。たとえば、マーキング40は、UV放射によって硬化させたインクなどの被覆を含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、マーキング40は、容器11の表面にレーザマーキングすることができ、容器11はガラスバレルとすることができる。マーキングは、前に論じたように、UVレーザマーキングまたはレーザ彫刻とすることができる。いくつかの例では、マーキング40は、工具拘束構成(tool constrained feature)とすることができる。すなわち、マーキング40は、エンボスまたは突起など、容器11上のスタンプ加工された構成とすることができる。
【0069】
図4aは、近位端13で容器11の外面に配置されたマーキング40を示す。マーキング40は、ストッパ16が容器11の近位端13でその初期長手方向位置にあるとき、ストッパ16に重なる。
【0070】
マーキング40およびストッパ16は、実質上異なる色とすることができる。これは、ストッパ16を背景にマーキング40が使用者にはっきりと見え、それによって液体薬剤12の識別がより容易になることを意味する。
【0071】
別法として、マーキング40およびストッパ16は、実質上同じ色とすることができる。これは、ストッパ16を背景にマーキング40が最終使用者にはっきりと見えないことを意味する。これは、最終使用者がマーキング40に気付くことが望ましくないときに有利である。マーキング40およびストッパ16が実質上同じ色である場合、マーキング40は、たとえばシリンジ10および/または薬物送達デバイス20の組立て中に計算デバイスによって可読とすることができるが、最終使用者にとっては容易に可読ではない。マーキング40は、注射処置が行われた後、最終使用者に可読になることができる。言い換えれば、マーキング40は、ストッパ16が容器11の近位端13で第1の長手方向位置にあるときは最終使用者にはっきりと見えないが、ストッパ16が容器11の遠位端14の方へ第2の長手方向位置に動かされた後は見える。
【0072】
マーキングは、裸眼では見えないインクを含むことが好ましいことがある。たとえば、マーキングは、UV光下でのみ人間に見えるUVインクを含むことができる。これは、シリンジ10の偽造を低減させるのに役立つことができる。
【0073】
図4bは、別の例示的な薬物送達デバイス20を示す。薬物送達デバイス20は、
図2aに示す薬物送達デバイス20に類似しているが、薬物送達デバイス20のハウジング21は、追加として、自動注射器ハウジング21の片側に配置された窓27を含む。シリンジ10は、ハウジング21内に収容されている。ハウジング21は、シリンジ10を完全に密閉または収容することができる。したがって、薬物送達デバイスハウジング21内に収容されているシリンジ10は、窓27を通して見える。使用者が作動手段25を作動させたとき、ストッパ16は、シリンジ10の近位端に近い第1の位置から、シリンジ10の遠位端により近い第2の位置へ動かされる。薬物送達デバイスハウジング21内の窓27により、使用者がストッパ16の動きを観察することが可能になる。
【0074】
本実施形態によるシリンジ10の容器11の外面(またはいくつかの例では、ストッパ16の径方向外表面)のマーキング40はまた、ハウジング21の窓27を通して使用者に見える。マーキング40は、薬物送達デバイス20からシリンジ10を取り外したり、薬物送達デバイス20を分解したりすることなく、シリンジ10内に収容されている液体薬剤12を識別するために、使用者が読み取ることができる。マーキング40がバーコードを含む場合、バーコードは、液体薬剤12を識別するために、計算デバイスのカメラまたは他のスキャナによって可読とすることができる。カメラは、シリンジ10の組立ておよび/または薬物送達デバイス20内へのシリンジ10の配置の間/後、バーコードを読み取ることができる。いくつかの例では、バーコードは、薬物送達デバイスの最終使用者によって操作されるスマートフォンなどの携帯型電子デバイス内のカメラによって可読とすることができる。携帯型電子デバイス上のソフトウェアが、バーコードから液体薬剤12を識別することができる。
【0075】
図5aおよび
図5bは、識別手段(この例ではマーキング40)が容器11ではなくストッパ16に位置していることを除いて、
図4aおよび
図4bのシリンジ10および薬物送達デバイスに類似しているシリンジ10および薬物送達デバイス20を示す。マーキング40は、ストッパ16の円周面42に位置することができる。
図4aおよび
図4bを参照して説明したように、
図5aおよび
図5bのマーキング40は、UVレーザマーキングまたはレーザ彫刻とすることができる。いくつかの例では、マーキング40は、工具拘束構成とすることができる。すなわち、マーキング40は、エンボスまたは突起など、ストッパ16の円周面42上のスタンプ加工された構成とすることができる。マーキング40は、
図4aおよび
図4bに関連して前に論じたように、UVインクなどのインクを含むことができ、インクはストッパ16に印刷されている。マーキング40は、シルクスクリーン印刷技法によって印刷することができる。
【0076】
図5aおよび
図5bに示すように、ストッパ16は、複数の封止面43を有する。これらの封止面43は、容器11の内面に接触し、それによって封止を形成するように、ストッパ16の円周面42から径方向に延びる円周リッジである。マーキング40は、ストッパ16の少なくとも2つの封止面43間の円周面42に位置することができる。マーキング40は、追加または別法として、ストッパ16の少なくとも1つの封止面43の下またはその周りに位置することもできる。
【0077】
図6aおよび
図6bは、本発明のさらなる実施形態による薬物送達デバイス20の斜視図であり、シリンジ10は、薬物送達デバイス20内に収容されている。
【0078】
図4aおよび
図4bと同様に、
図6aおよび
図6bは、識別手段が容器11の外面に印刷されたマーキングを含むシリンジ10を示す。
図6aは、
図6bに示す薬物送達デバイス20のハウジング21内に収容されているシリンジ10を示す。ハウジング21は、シリンジ10を完全に密閉または収容することができる。
図6aにはニードルシールド17を示すが、
図6aおよび
図6bのシリンジ10は、ニードルシールド17を含んでも含まなくてもよいことも事実である。しかし、
図6aおよび
図6bは、マーキングがリング41を含むことを示す。
【0079】
リング41は、UV光を使用して容器11に印刷することができる。たとえば、リング41は、UV放射によって硬化させた被覆を含むことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、リング41は、容器11にレーザマーキングすることができる。
【0081】
リング41は、容器11の外面の周りに配置されており、容器11の外面を部分的または完全に取り囲むことができる。リング41は、着色されたリングとすることができる。リング41の色は、容器11内に収容されている液体薬剤12を識別することができる。別法または追加として、リング41の幅または容器11上のその位置などのリング41の別の特性が、液体薬剤12を識別することもできる。
【0082】
リング41は、容器11の遠位端14に位置することができる。特に、リング41は、
図6bに示すように、注射処置が実行された後、ストッパ16がリング41と位置合わせされるように、容器11上に配置することができる。すなわち、ストッパ16は、所望の用量の液体薬剤12が送達された後、容器11の遠位端14の最終長手方向位置で、リング41と位置合わせされる。このようにして、用量全体が送達されたことを薬物送達デバイス20の使用者に保証することができる。
【0083】
本発明はまた、前述の実施形態のいずれかによる薬物送達デバイス20を製造する方法に関する。特に、この方法は、前述の実施形態のいずれかによる薬物送達デバイス20のシリンジ10に、シリンジ10の容器11内に収容されている液体薬剤12を識別する少なくとも1つの識別手段を提供することを含む。
【0084】
本発明はまた、前述の実施形態のいずれかによる薬物送達デバイス20のシリンジ10内に収容されている液体薬剤を識別する方法に関する。特に、この方法は、センサによってシリンジ10上の少なくとも1つの識別手段を検出することと、前記少なくとも1つの識別手段を検出したことに応答して、少なくとも1つの識別手段を使用して、シリンジ10の容器11内に収容されている液体薬剤12を識別することとを含む。この方法は、コンピュータによって実施することができる。
【0085】
少なくとも1つの識別手段を使用して、シリンジ10の容器11内に収容されている液体薬剤12を識別することは、検出された少なくとも1つの識別手段をデータベースと比較することを含むことができ、データベースは、少なくとも1つの液体薬剤の識別情報を含むことができる。液体薬剤を識別することは、検出された少なくとも1つの識別手段と、データベース内に記憶されている少なくとも1つの液体薬剤の識別情報との間に、整合が存在すると判定することを含むことができる。
【0086】
いくつかの例では、液体薬剤の識別情報は、検出された少なくとも1つの識別手段をデータベースと比較し、データベースとの比較の結果により整合が得られたとき、液体薬剤の識別情報が検証されたと判定することによって、検証することができる。
【0087】
本出願では請求項が特定の組合せの構成で考案されているが、本開示の範囲はまた、本明細書でいずれかの請求項に特許請求される同じ発明に関するか否か、また本発明と同じ技術的な問題のいずれかまたはすべてを軽減するか否かにかかわらず、本明細書に明示的もしくは暗示的に開示する任意の新規な構成もしくは任意の新規な組合せの構成またはその任意の一般化を含むことを理解されたい。本出願人は本明細書によって、本出願または本出願から派生するあらゆるさらなる出願の手続中に、新しい請求項をそのような構成および/または構成の組合せで考案することができることを通知する。
【0088】
いくつかの実施形態について図示および説明したが、これらの実施形態では本発明の原理から逸脱することなく変更を加えることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲に定義されることが、当業者には理解されよう。
【0089】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0090】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組合せを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0091】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物または薬剤をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。それだけには限らないが、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、潅流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み型デバイス(たとえば、薬物またはAPIコーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここで説明される薬物は、たとえば24以上のゲージ数を有する、たとえば皮下針である針を含む注射デバイスでは特に有用であり得る。
【0092】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0093】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0094】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、元の物質と構造的に十分に類似しており、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。特に、用語「類似体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0095】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0096】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0097】
GLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標)、エキセナチド(エキセンディン-4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenがある。
【0098】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0099】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0100】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0101】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0102】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0103】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0104】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0105】
抗体の例としては、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0106】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0107】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、製法、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明はそのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
【0108】
本明細書に記載する薬物送達デバイスは、患者に薬剤を注射するように構成することができる。たとえば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内で行うことができる。そのようなデバイスは、患者または看護師もしくは医師などの医療従事者によって動作させることができ、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器を含むことができる。これらの様々なデバイスによって送達される薬剤の体積は、約0.5ml~約2mlの範囲とすることができる。
【0109】
特有の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要とされる仕様の範囲内で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、デバイスは、特定の期間(たとえば、自動注射器の場合は約3~約20秒、LVDの場合は約10分~約60分)の範囲内で薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様は、低いもしくは最小の不快レベル、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する特定の条件を含むことができる。そのような変動は、たとえば薬物の粘性が約3cP~約50cPの範囲に及ぶことなどの様々な要因により生じることがある。したがって、薬物送達デバイスは、多くの場合、サイズが約25~約31ゲージの中空針を含む。一般的なサイズは、27および29ゲージである。
【0110】
本明細書に記載する送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を含むことができる。たとえば、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって提供することができる。エネルギー源は、たとえば、機械、空気圧、化学、または電気のエネルギーを含むことができる。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを貯蔵または解放するためのばね、てこ、エラストマー、または他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて、単一のデバイスにすることができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための歯車、バルブ、または他の機構をさらに含むことができる。
【0111】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能はそれぞれ、起動機構を介して起動することができる。そのような起動機構は、ボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動機能の起動は、1つの工程または複数の工程からなるプロセスとすることができる。すなわち、使用者は、自動機能を引き起こすために、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要がある。たとえば、1つの工程からなるプロセスでは、使用者は、ニードルスリーブを自分の体に押し当てることで、薬剤の注射を行うことができる。他のデバイスは、自動機能を複数の工程によって起動することを必要とすることがある。たとえば、使用者は、注射を行うために、ボタンを押し下げてニードルシールドを後退させることが必要となることがある。
【0112】
追加として、1つの自動機能の起動により、1つまたはそれ以上の後続の自動機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動機能の起動により、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を行うために、特有の工程シーケンスを必要とすることがある。他のデバイスは、独立した工程シーケンスで動作することができる。
【0113】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器のうちの1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源(典型的には自動注射器に見られる)と、用量設定機構(典型的にはペン注射器に見られる)とを含むことができる。