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特許7049361メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する装置及び方法
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  • 特許-メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/24 20060101AFI20220330BHJP
   B01J 8/26 20060101ALI20220330BHJP
   C07C 1/20 20060101ALI20220330BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20220330BHJP
   C07C 2/86 20060101ALI20220330BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20220330BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20220330BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20220330BHJP
   B01J 29/90 20060101ALI20220330BHJP
   B01J 38/12 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B01J8/24 311
B01J8/24 301
B01J8/26
C07C1/20
C07C11/02
C07C2/86
C07C15/08
C07B61/00 300
B01J29/40 Z
B01J29/90 Z
B01J38/12 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019555132
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 CN2017112809
(87)【国際公開番号】W WO2018196360
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-11-27
(31)【優先権主張番号】201710289046.3
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チャン,タオ
(72)【発明者】
【氏名】イエ,マオ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,チョンミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジンリン
(72)【発明者】
【氏名】タン,ハイロン
(72)【発明者】
【氏名】ジア,ジンミン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,チャンチン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャンガオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チェン
(72)【発明者】
【氏名】リ,フア
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,インフェン
(72)【発明者】
【氏名】リ,チェンゴン
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531400(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0218373(US,A1)
【文献】特表2017-504654(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102463086(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104910958(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0092756(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0060187(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102464557(CN,A)
【文献】特表2002-526513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00-8/46
B01J 21/00-38/74
C07B 31/00-61/00,63/00-63/04
C07C 1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための高速流動床反応器であって、
前記高速流動床反応器の下部が反応領域であり、前記高速流動床反応器の上部が希薄相領域であり、
前記高速流動床反応器は、第1の反応器供給材料分配器と、複数の第2の反応器供給材料分配器を含み、前記第1の反応器供給材料分配器及び複数の前記第2の反応器供給材料分配器は、前記反応領域内に前記高速流動床反応器におけるガス流れ方向に沿って下部から上部に向けて順次配置され、
前記高速流動床反応器は、前記希薄相領域に設置されている第1の反応器気固分離器を含み、
前記第1の反応器気固分離器には、再生触媒の入口が設けられ、前記第1の反応器気固分離器の再生触媒出口が前記反応領域の底部に設置され、前記第1の反応器気固分離器のガス出口が前記希薄相領域に設置されている、ことを特徴とする高速流動床反応器。
【請求項2】
前記高速流動床反応器は、第2の反応器気固分離器を更に含み、前記第2の反応器気固分離器は、前記希薄相領域又は反応器ハウジングの外部に設置され、
前記第2の反応器気固分離器の入口が前記希薄相領域に設置され、前記第2の反応器気固分離器の触媒出口が前記反応領域に設置され、前記第2の反応器気固分離器のガス出口が前記高速流動床反応器の製品ガスの出口に接続され、
前記第1の反応器気固分離器及び前記第2の反応器気固分離器は、サイクロン分離器である、ことを特徴とする請求項1に記載の高速流動床反応器。
【請求項3】
前記第2の反応器供給材料分配器は、2~10個である、ことを特徴とする請求項1に記載の高速流動床反応器。
【請求項4】
前記高速流動床反応器は、反応器ハウジングの内部又は外部に設置された反応器放熱器を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高速流動床反応器。
【請求項5】
前記高速流動床反応器は、前記複数の反応器供給材料分配器の間に設けられている反応器放熱器を含み、
前記高速流動床反応器は、反応器ストリッパーを含み、前記反応器ストリッパーは、前記高速流動床反応器の底部において外から内へ反応器ハウジングを貫通し且つ前記高速流動床反応器の前記反応領域に開口し、前記反応器ストリッパーの底部には、反応器のストリッピングガスの入口と再生対象触媒の出口が設けられ、
反応器ハウジングの内部における前記反応器ストリッパーの開口の水平面からの高さが、前記第1の反応器供給材料分配器よりも高い、ことを特徴とする請求項1に記載の高速流動床反応器。
【請求項6】
メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための装置であって、
請求項1に記載の高速流動床反応器と、触媒を再生するための流動床再生器とを備える、ことを特徴とする装置。
【請求項7】
前記流動床再生器は、乱流流動床再生器であり、再生器ハウジング、再生器気固分離器、再生器放熱器及び再生器ストリッパーを含み、前記流動床再生器の下部が再生領域であり、前記流動床再生器の上部が再生器希薄相領域であり、再生器供給材料分配器が前記再生領域の底部に設置され、前記再生器放熱器が前記再生領域に設置され、前記再生器気固分離器が前記再生器希薄相領域又は前記再生器ハウジングの外部に設置され、
前記再生器気固分離器の入口が前記再生器希薄相領域に設置され、前記再生器気固分離器の触媒出口が前記再生領域に設置され、前記再生器ストリッパーが前記再生器ハウジングの底部で開口している、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記流動床再生器は、再生器ハウジング、再生器供給材料分配器、再生器気固分離器、再生器放熱器、排煙出口、及び再生器ストリッパーを含み、
前記流動床再生器の下部が再生領域であり、前記流動床再生器の上部が再生器希薄相領域であり、
前記高速流動床反応器は、反応器ストリッパーを含み、前記反応器ストリッパーは、前記高速流動床反応器の底部において外から内へ反応器ハウジングを貫通し且つ前記高速流動床反応器の前記反応領域に開口し、前記反応器ストリッパーの底部には、反応器のストリッピングガスの入口と再生対象触媒の出口が設けられ、
前記再生器供給材料分配器が前記再生領域の底部に設置され、前記再生器放熱器が前記再生領域に設置され、前記再生器気固分離器が前記再生器希薄相領域又は前記再生器ハウジングの外部に設置され、前記再生器気固分離器の入口が前記再生器希薄相領域に設置され、前記再生器気固分離器の触媒出口が前記再生領域に設置され、前記再生器気固分離器のガス出口が前記排煙出口に接続され、前記再生器ストリッパーが前記再生器ハウジングの底部で開口し、
前記反応器ストリッパーの再生対象触媒の出口が再生対象シュートの入口に接続され、前記再生対象シュートには、再生対象スプール弁が設けられ、前記再生対象シュートの出口が再生対象ライザーの入口に接続され、前記再生対象ライザーの底部には、再生対象上昇ガスの入口が設けられ、前記再生対象ライザーの出口が前記流動床再生器の前記再生器希薄相領域に接続され、
前記再生器ストリッパーの底部には、再生器のストリッピングガスの入口が設けられ、前記再生器ストリッパーの底部が再生シュートの入口に接続され、前記再生シュート内には、再生スプール弁が設けられ、前記再生シュートの出口が再生ライザーの入口に接続され、前記再生ライザーの底部には、再生上昇ガスの入口が設けられ、前記再生ライザーの出口が前記第1の反応器気固分離器の前記再生触媒の入口に接続され、前記第1の反応器気固分離器が前記高速流動床反応器の前記希薄相領域に設置されている、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法であって、
請求項1に記載の高速流動床反応器が使用される、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとを含有する原料Aを前記第1の反応器供給材料分配器により前記高速流動床反応器の前記反応領域に送り、メタノール及び/又はジメチルエーテルを含有する原料Bを複数の前記第2の反応器供給材料分配器の各々により前記高速流動床反応器の前記反応領域に送って触媒と接触させ、パラキシレン及び低級オレフィン製品を含有する流れC、並びに再生対象触媒を生成する、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記流れCを分離して、パラキシレン、低級オレフィン、C5+鎖状炭化水素、芳香族炭化水素副生成物、並びに未転化のメタノール、ジメチルエーテル及びトルエンを得て、
未転化のメタノール及びジメチルエーテルを、複数の前記第2の反応器供給材料分配器により前記高速流動床反応器の前記反応領域に送り、芳香族炭化水素副生成物及び未転化のトルエンを、前記第1の反応器供給材料分配器により前記高速流動床反応器の前記反応領域に送って触媒に接触させる、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記再生対象触媒は、流動床再生器で再生された後、前記高速流動床反応器の前記反応領域の底部に入る、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとを含有する流れAを、前記高速流動床反応器の下方における前記第1の反応器供給材料分配器により前記高速流動床反応器の前記反応領域に送って触媒と接触させるステップ(1)と、
メタノール及び/又はジメチルエーテルを含有する流れBを、前記第1の反応器供給材料分配器の上方に順次配置された2~10個の前記第2の反応器供給材料分配器の各々により前記高速流動床反応器の前記反応領域に送って触媒と接触させ、パラキシレン及び低級オレフィン製品を含有する流れC、並びに再生対象触媒を生成するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた流れCを分離して、未転化のメタノール及びジメチルエーテルの流れC-1、及びベンゼン、オルトキシレン、メタキシレン、エチルベンゼン及びC9+芳香族炭化水素を含む芳香族炭化水素副生成物と未転化のトルエンとの流れC-2を得て、前記流れC-1を2~10個の前記第2の反応器供給材料分配器の各々により前記高速流動床反応器の前記反応領域に送って触媒と接触させ、前記流れC-2を前記第1の反応器供給材料分配器により前記高速流動床反応器の前記反応領域に送って触媒と接触させるステップ(3)と、
ステップ(2)で得られた前記再生対象触媒を流動床再生器で再生し、再生触媒を、前記第1の反応器気固分離器で気固分離して前記高速流動床反応器の前記反応領域の底部に充填するステップ(4)と、を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の反応器供給材料分配器により前記高速流動床反応器に送られる混合物において、メタノール及び/又はジメチルエーテルの炭素モル数に対する、芳香族炭化水素の分子モル数の比が、0.5より大きく、
前記第1の反応器供給材料分配器により送られるメタノールのモル数に対する、複数の前記第2の反応器供給材料分配器により前記高速流動床反応器に送られる混合物における全ての含酸素化合物のモル数の比が、1より大きい、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
媒の再生において、請求項6に記載の装置が使用される、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
再生対象触媒、反応器ストリッパー、再生対象シュート、再生対象スプール弁及び再生対象ライザーを通って前記流動床再生器の上部に位置する再生器希薄相領域に入り、
生媒体前記流動床再生器の下部に位置する再生領域に導入されて、前記再生対象触媒と炭素燃焼反応を生じ、CO及びCOを含有する排煙並びに再生触媒を生成し、前記排煙は、再生器気固分離器で除塵された後排出され、
前記再生触媒は、再生器ストリッパー、再生シュート、再生スプール弁及び再生ライザーを通って、前記第1の反応器気固分離器の入口に入り、気固分離された後前記高速流動床反応器の前記反応領域の底部に入り、
応器のストリッピングガスは、反応器のストリッピングガスの入口から前記反応器ストリッパーに入り前記再生対象触媒と向流接触した後前記高速流動床反応器に入り、再生対象上昇ガスは、再生対象上昇ガスの入口から前記再生対象ライザーに入り前記再生対象触媒と並流接触した後前記流動床再生器の前記再生器希薄相領域に入り、
生器のストリッピングガスは、再生器のストリッピングガスの入口から前記再生器ストリッパーに入り前記再生触媒と向流接触した後前記流動床再生器に入り、再生上昇ガスは、再生上昇ガスの入口から前記再生ライザーに入り前記再生触媒と並流接触した後前記第1の反応器気固分離器の入口に入り、前記第1の反応器気固分離器は、前記高速流動床反応器の前記希薄相領域に設置されている、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記再生触媒の炭素含有量が0.5wt%以下である、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記再生媒体は、空気、酸素欠乏空気又は水蒸気のうちの少なくとも1種であり、
かつ、前記反応器のストリッピングガス、前記再生器のストリッピングガス、前記再生対象上昇ガス、及び前記再生上昇ガスは、水蒸気及び/又は窒素ガスである、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記高速流動床反応器の反応領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が1.0m/s~8.0m/s、反応温度が350℃~600℃、反応圧力が0.1Ma~1.0MPa、ベッド密度が50kg/m~500kg/mである、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記流動床再生器の再生領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が0.1m/s~2m/s、再生温度が500℃~750℃、再生圧力が0.1Ma~1.0MPa、ベッド密度が200kg/m~1200kg/mである、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、パラキシレン(PX)を生産し低級オレフィンを併産する装置及び生産方法に関し、特に、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンのアルキル化によりパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する流動床装置及生産方法に適用でき、化学・化学工業の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
パラキシレン(PX)は、石油化学業界の基本的な有機原料の1つであり、化学繊維、合成樹脂、農薬、医薬品や高分子材料などの様々な分野に幅広く使用されている。現在、パラキシレンは、主にトルエン、C芳香族炭化水素及び混合キシレンを原料として、不均化、異性化、吸着分離または深冷分離によって生産される。生成物中のパラキシレンの含有量は熱力学により制御されるので、パラキシレンはC混合芳香族炭化水素のうち24%以下だけを占め、プロセスにおける材料循環処理量が大きく、設備が巨大であり、そして運用コストが高い。特にキシレンの3つの異性体は沸点の差が非常に小さく、従来の蒸留技術によって高純度のパラキシレンを得ることは困難であり、高価な吸着分離プロセスを使用しなければならない。近年、中国内外の多くの特許には、パラキシレンの新しい生産スキームが開示されており、その中でも、トルエン・メタノールのアルキル化技術は、パラキシレンを高い選択率で生産するための新しい方法であり、これは産業界において重視化されて多くの注目を集めている。
【0003】
低級オレフィンであるエチレン、プロピレンは、2種の基本的な石油化学工業用の原料であり、それらの需要量が高まっている。エチレン及びプロピレンは、主にナフサを原料として生産され、石油由来である。近年、エチレン及びプロピレンを製造するための非石油経路、特にメタノール転化による低級オレフィン(MTO)の製造経路がますます注目されており、この経路は、中国の石油に対する需要や石油への依存を緩和させるための石油代替戦略を達成するための重要な方法である。
【0004】
従来のトルエンアルキル化方法には、反応器の上流でトルエンとメタノールを混合し、次に混合物として反応器に供給するものが含まれる。反応器のタイプは、固定床と流動床を含む。トルエンの転化率を上げるために、さまざまな固定床及び流動床プロセスで反応物の段階的注入が採用されている。
【0005】
MTO反応とアルキル化反応との競争は、トルエンの転化率、パラキシレンの収率、及び低級オレフィンの選択性へ影響を与える主な要素である。同一反応器において2つの反応を同時に進行させると、プロセスが簡素化される反面、トルエンの転化率が低く、異なる反応器においてそれぞれ2つの反応を進行させると、プロセスが複雑であるが、トルエンの転化率とパラキシレンの収率が高い。従って、トルエン・メタノールのアルキル化によりパラキシレンを製造して低級オレフィンを併産するプロセスは、アルキル化反応とMTO反応の競争を調整して最適化させ、トルエンの転化率、パラキシレンの収率、及び低級オレフィンの選択性を向上させるために、プロセスの配置や反応器の設計において大きな進歩が必要とされる。
【0006】
パラキシレン及び低級オレフィンを調製するための上記の新経路では、反応過程がすべて酸触媒反応である。ZSM-5分子篩触媒に基づくトルエンのメタノールによるアルキル化によりパラキシレンを生産する過程には、メタノールからオレフィンを製造する反応が存在する。この反応過程では、主に下記の反応が起きる。
-CH+CHOH→C-(CH+HO (1)
nCHOH→(CH+nHO n=2,3 (2)
【0007】
メタノールは、トルエン・メタノールのアルキル化反応の原料でありながら、MTO反応の原料であるが、MTOの反応レートは、トルエン・メタノールのアルキル化反応レートよりもはるかに高い。
【0008】
MTO反応の特徴の1つは、反応レートがトルエン・メタノールのアルキル化反応の反応レートよりもはるかに高いことであり、もう1つの重要な特徴は、触媒に炭素が堆積すると、メタノールの転化率が低下し、低級オレフィンの選択性が上昇することである。したがって、触媒への炭素堆積を制御することは、MTO反応における低級オレフィンの選択性を向上させるのに有効な手段である。
【0009】
以上の分析から、本技術分野では、トルエンの転化率、パラキシレンの収率及び低級オレフィンの収率を相乗的に高めるために、触媒設計と反応器設計の2つの側面からアルキル化反応とMTO反応の競争を調整して最適化させる必要があることがわかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願の一態様によれば、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための高速流動床反応器を提供し、該高速流動床反応器は、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するプロセスにおける、メタノールを転化して低級オレフィンを製造する(単に、MTOという)反応とアルキル化反応との競争の問題を解決又は改善し、MTO反応及びアルキル化反応の相乗作用を実現し、物質移動及び反応を制御することによりアルキル化反応とMTO反応の競争を調整して最適化させ、トルエンの転化率、パラキシレンの収率、及び低級オレフィンの選択性を相乗的に向上させる。
【0011】
本発明者らの実験的研究から、トルエンとメタノールが同時に供給され、原料中のメタノールの含有量が低い場合、MTO反応がメタノール(アルキル化反応物)のほとんどをすぐに消費し、トルエン・メタノールのアルキル化反応が抑えられて、トルエンの転化率が低くなることが明らかになった。原料中のメタノールの含有量が過度に過剰である場合、分子篩細孔内におけるメタノールとトルエンとの拡散速度の差により単位時間あたりのトルエンの吸着量が低くなる。これは、トルエン・メタノールのアルキル化反応にも不利である。したがって、反応領域でのメタノールとトルエンの濃度を最適化させることは、トルエンの転化率とパラキシレンの収率を高めるのに有効な手段である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための高速流動床反応器であって、第1の反応器供給材料分配器と、複数の第2の反応器供給材料分配器を含み、前記第1の反応器供給材料分配器及び複数の第2の反応器供給材料分配器は、前記高速流動床反応器におけるガス流れ方向に沿って順次配置されている。
【0013】
好ましくは、前記高速流動床反応器は、第1の反応器気固分離器と、第2の反応器気固分離器を含み、前記第1の反応器気固分離器は、希薄相領域又は反応器ハウジングの外部に設置され、前記第2の反応器気固分離器は、希薄相領域又は反応器ハウジングの外部に設置され、
前記第1の反応器気固分離器には、再生触媒の入口が設けられ、前記第1の反応器気固分離器の触媒出口が反応領域の底部に設置され、前記第1の反応器気固分離器のガス出口が希薄相領域に設置され、
前記第2の反応器気固分離器の入口が前記希薄相領域に設置され、前記第2の反応器気固分離器の触媒出口が前記反応領域に設置され、前記第2の反応器気固分離器のガス出口が高速流動床反応器の製品ガスの出口に接続され、
前記反応領域は、前記高速流動床反応器の下部に位置し、前記希薄相領域は、前記高速流動床反応器の上部に位置する。
【0014】
好ましくは、前記第1の反応器気固分離器及び第2の反応器気固分離器は、サイクロン分離器である。
【0015】
好ましくは、前記第2の反応器供給材料分配器は、2~10個である。
【0016】
好ましくは、前記高速流動床反応器は、前記高速流動床反応器ハウジングの内部又は外部に設置された反応器放熱器を含む。
【0017】
さらに好ましくは、前記反応器放熱器は、前記複数の反応器供給材料分配器の間に設けられている。
【0018】
好ましくは、前記高速流動床反応器は、反応器ストリッパーを含み、前記反応器ストリッパーは、高速流動床反応器の底部において外から内へ反応器ハウジングを貫通し且つ高速流動床反応器の反応領域に開口し、前記反応器ストリッパーの底部には、反応器のストリッピングガスの入口と再生対象触媒の出口が設けられている。
【0019】
さらに好ましくは、反応器ハウジングの内部における前記反応器ストリッパーの開口の水平面からの高さが、第1の反応器供給材料分配器よりも高い。
【0020】
本願においては、低級オレフィンは、エチレン、プロピレン、ブテンのうちの少なくとも1種を含む。
【0021】
本願においては、「メタノール及び/又はジメチルエーテル」は、供給材料中のメタノールが完全に又は一部的にジメチルエーテルで代替することができ、メタノールのみを含む、ジメチルエーテルのみを含む、又はメタノールとジメチルエーテルの両方を含むといった3種の状況を含む。
【0022】
本願においては、「メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンと」は、メタノールとトルエン、ジメチルエーテルとトルエン、又はメタノール、ジメチルエーテル及びトルエンといった3種の状況を含む。
【0023】
特に断らない限り、本願におけるメタノールは、いずれも完全に又は一部的にジメチルエーテルで代替することができ、メタノールの量に関しては、ジメチルエーテルを同じ炭素原子数のメタノールに換算して計算するようにしてもよい。
【0024】
本願の他の形態によれば、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための装置を提供しており、該装置は、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するプロセスにおける、MTO反応とアルキル化反応との競争問題を解決又は改善し、MTO反応及びアルキル化反応の相乗作用を実現し、物質移動及び反応を制御することにより、アルキル化反応とMTO反応との競争を調整して最適化させ、トルエンの転化率、パラキシレンの収率、及び低級オレフィンの選択性を相乗的に向上させる。
【0025】
前記メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための装置は、上記いずれか1項に記載の高速流動床反応器のうちの少なくとも1つと、触媒を再生するための流動床再生器とを備える。
【0026】
好ましくは、前記流動床再生器は、乱流流動床再生器であり、再生器ハウジング、再生器気固分離器、再生器放熱器及び再生器ストリッパーを含み、流動床再生器の下部が再生領域であり、流動床再生器の上部が再生器希薄相領域であり、再生器供給材料分配器が再生領域の底部に設置され、再生器放熱器が再生領域に設置され、再生器気固分離器が希薄相領域又は再生器ハウジングの外部に設置され、
前記再生器気固分離器の入口が再生器希薄相領域に設置され、前記再生器気固分離器の触媒出口が再生領域に設置され、再生器ストリッパーが再生器ハウジングの底部で開口している。
好ましくは、前記流動床再生器は、再生器ハウジング、再生器供給材料分配器、再生器気固分離器、再生器放熱器、排煙出口、及び再生器ストリッパーを含み、
前記流動床再生器の下部が再生領域であり、流動床再生器の上部が希薄相領域であり、
再生器供給材料分配器が再生領域の底部に設置され、再生器放熱器が再生領域に設置され、再生器気固分離器が希薄相領域又は再生器ハウジングの外部に設置され、再生器気固分離器の入口が希薄相領域に設置され、再生器気固分離器の触媒出口が再生領域に設置され、再生器気固分離器のガス出口が排煙出口に接続され、再生器ストリッパーが再生器ハウジングの底部で開口し、
前記反応器ストリッパーの再生対象触媒の出口が再生対象シュートの入口に接続され、再生対象シュートには、再生対象スプール弁が設けられ、再生対象シュートの出口が再生対象ライザーの入口に接続され、再生対象ライザーの底部には、再生対象上昇ガスの入口が設けられ、再生対象ライザーの出口が流動床再生器の希薄相領域に接続され、
前記再生器ストリッパーの底部には、再生器のストリッピングガスの入口が設けられ、再生器ストリッパーの底部が再生シュートの入口に接続され、再生シュート内には、再生スプール弁が設けられ、再生シュートの出口が再生ライザーの入口に接続され、再生ライザーの底部には、再生上昇ガスの入口が設けられ、再生ライザーの出口が第1の反応器気固分離器の再生触媒の入口に接続され、前記第1の反応器気固分離器が流動床反応器の希薄相領域又は反応器ハウジングの外部に設置されている。
【0027】
本願の他の形態によれば、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための方法を提供しており、該方法は、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するプロセスにおいて、MTO反応とアルキル化反応との競争問題を解決又は改善し、MTO反応及びアルキル化反応の相乗作用を実現し、物質移動及び反応を制御することにより、アルキル化反応とMTO反応との競争を調整して最適化させ、トルエンの転化率、パラキシレンの収率、及び低級オレフィンの選択性を相乗的に向上させる。
【0028】
前記メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法は、前の形態に記載の高速流動床反応器のうちの少なくとも1つを用いる。
【0029】
好ましくは、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとを含有する原料Aを第1の反応器供給材料分配器により高速流動床反応器の反応領域に送り、メタノール及び/又はジメチルエーテルを含有する原料Bを複数の第2の反応器供給材料分配器の各々により高速流動床反応器の反応領域に送って触媒と接触させ、パラキシレン及び低級オレフィン製品を含有する流れC、並びに再生対象触媒を生成する。
【0030】
好ましくは、前記流れCを分離して、パラキシレン、低級オレフィン、C5+鎖状炭化水素、芳香族炭化水素副生成物、並びに未転化のメタノール、ジメチルエーテル及びトルエンを得て、
未転化のメタノール及びジメチルエーテルを、複数の第2の反応器供給材料分配器により高速流動床反応器の反応領域に送り、芳香族炭化水素副生成物及び未転化のトルエンを、第1の反応器供給材料分配器により高速流動床反応器の反応領域に送って触媒に接触させる。
【0031】
好ましくは、前記再生対象触媒は、流動床再生器で再生された後、高速流動床反応器の反応領域の底部に入る。
【0032】
好ましくは、前記メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための方法は、
メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンを含有する流れAを、高速流動床反応器の下方における第1の反応器供給材料分配器により高速流動床反応器の反応領域に送って触媒と接触させるステップ(1)と、
メタノール及び/又はジメチルエーテルを含有する流れBを、第1の反応器供給材料分配器の上方に順次配置された2~10個の第2の反応器供給材料分配器の各々により高速流動床反応器の反応領域に送って触媒と接触させ、パラキシレン及び低級オレフィン製品を含有する流れC、並びに再生対象触媒を生成するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた流れCを分離して、未転化のメタノール及びジメチルエーテルの流れC-1、及びベンゼン、オルトキシレン、メタキシレン、エチルベンゼン及びC9+芳香族炭化水素を含む芳香族炭化水素副生成物及び未転化のトルエンの流れC-2を得て、流れC-1を2~10個の第2の反応器供給材料分配器により高速流動床反応器の反応領域に送って触媒と接触させ、流れC-2を第1の反応器供給材料分配器により高速流動床反応器の反応領域に送って触媒と接触させるステップ(3)と、
ステップ(2)で得られた再生対象触媒を流動床再生器で再生し、再生触媒を第1の反応器気固分離器で気固分離して高速流動床反応器の反応領域の底部に充填するステップ(4)とを含む。
【0033】
好ましくは、第1の反応器供給材料分配器により高速流動床反応器に送られる混合物において、芳香族炭化水素の分子モル数とメタノール及び/又はジメチルエーテルの炭素モル数との比が、0.5より大きい。
【0034】
さらに好ましくは、第1の反応器供給材料分配器により高速流動床反応器に送られる混合物において、芳香族炭化水素の分子モル数とメタノール及び/又はジメチルエーテルの炭素モル数との比が、0.5~5である。
【0035】
本願においては、分子モル数は、前記物質中の分子数を示すモル数であり、炭素モル数は、前記物質中の炭素原子数を示すモル数である。
【0036】
好ましくは、複数の第2の反応器供給材料分配器により高速流動床反応器に送られる混合物における全ての含酸素化合物と、第1の反応器供給材料分配器により送られるメタノールとのモル比が、1より大きい。
【0037】
さらに好ましくは、複数の第2の反応器供給材料分配器により高速流動床反応器に送られる混合物における全ての含酸素化合物と、第1の反応器供給材料分配器により送られるメタノールとのモル比が、1~20である。
【0038】
メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための方法に記載の触媒再生装置は、前の形態に記載のメタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための装置のうちの少なくとも1つを用いる。
【0039】
さらに好ましくは、再生対象触媒は、反応器ストリッパー、再生対象シュート、再生対象スプール弁及び再生対象ライザーを通って流動床再生器の希薄相領域に入り、
前記再生媒体は、流動床再生器の再生領域に導入されて、再生対象触媒と炭素燃焼反応を生じ、CO及びCOを含有する排煙並びに再生触媒を生成し、排煙は、再生器気固分離器で除塵された後排出され、
前記再生触媒は、再生器ストリッパー、再生シュート、再生スプール弁及び再生ライザーを通って、第1の反応器気固分離器の入口に入り、気固分離された後高速流動床反応器の反応領域の底部に入り、
前記反応器のストリッピングガスは、反応器のストリッピングガスの入口から反応器ストリッパーに入り再生対象触媒と向流接触した後高速流動床反応器に入り、再生対象上昇ガスは、再生対象上昇ガスの入口から再生対象ライザーに入り再生対象触媒と並流接触した後流動床再生器の希薄相領域に入り、
前記再生器のストリッピングガスは、再生器のストリッピングガスの入口から再生器ストリッパーに入り再生触媒と向流接触した後流動床再生器に入り、再生上昇ガスは、再生上昇ガスの入口から再生ライザーに入り再生触媒と並流接触した後第1の反応器気固分離器の入口に入り、前記第1の反応器気固分離器は、流動床反応器の希薄相領域又は反応器ハウジングの外部に設置されている。
【0040】
好ましくは、前記再生触媒の炭素含有量が0.5wt%以下である。
【0041】
好ましくは、前記再生媒体は、空気、酸素欠乏空気又は水蒸気のうちの少なくとも1種であり、
及び/又は、前記反応器のストリッピングガス、再生器のストリッピングガス、再生対象上昇ガス、及び再生上昇ガスは、水蒸気及び/又は窒素ガスである。
【0042】
好ましくは、前記高速流動床反応器の反応領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が1.0m/s~8.0m/s、反応温度が350℃~600℃、反応圧力が0.1MPa~1.0MPa、ベッド密度が50kg/m~500kg/mである。
【0043】
本願においては、前記高速流動床反応器において、触媒は流動状態で下部の濃厚相領域及び上部の希薄相領域に存在する。濃厚相領域は、前記高速流動床反応器の反応領域である。
【0044】
好ましくは、前記流動床再生器の再生領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が0.1m/s~2m/s、再生温度が500℃~750℃、再生圧力が0.1MPa~1.0MPa、ベッド密度が200kg/m~1200kg/mである。
【0045】
本願は、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための高速流動床反応器を提供し、前記高速流動床反応器は、反応器ハウジング2、n個の反応器供給材料分配器(3-1~3-n)、反応器気固分離器4、反応器気固分離器5、反応器放熱器6、製品ガスの出口7、及び反応器ストリッパー8を含み、高速流動床反応器1の下部が反応領域であり、高速流動床反応器1の上部が希薄相領域であり、n個の反応器供給材料分配器(3-1~3-n)は、下から上へ反応領域に配列され、反応器放熱器6は、反応領域又は反応器ハウジング2の外部に設置され、反応器気固分離器4及び反応器気固分離器5は、希薄相領域又は反応器ハウジング2の外部に設置され、反応器気固分離器4には、再生触媒の入口が設けられ、反応器気固分離器4の触媒出口が反応領域の底部に設置され、反応器気固分離器4のガス出口が希薄相領域に設置され、反応器気固分離器5の入口が希薄相領域に設置され、反応器気固分離器5の触媒出口が反応領域に設置され、反応器気固分離器5のガス出口が製品ガスの出口7に接続され、反応器ストリッパー8は、高速流動床反応器の底部において外から内へ反応器ハウジングを貫通し且つ高速流動床反応器1の反応領域に開口し、反応器ストリッパー8の底部には、反応器のストリッピングガスの入口9が設けられ、且つ反応器ストリッパーの底部には、再生対象触媒の出口が設けられている。
【0046】
好適な一実施形態では、高速流動床反応器1のn個の反応器供給材料分配器(3-1~3-n)は、下から上へ反応領域に設置され、3≦<n≦11であり、nは、反応器供給材料分配器の総数である。
【0047】
好適な一実施形態では、新しい触媒が反応器ストリッパーに直接入らないように、反応器ハウジング2の内部における反応器ストリッパー8の開口の水平面からの高さが、第1の反応器供給材料分配器よりも高い。
【0048】
好適な一実施形態では、反応器気固分離器4及び反応器気固分離器5は、サイクロン分離器である。
【0049】
本願は、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための装置をさらに提供し、前記装置は、上記高速流動床反応器1と、触媒を再生するための流動床再生器14とを備える。
【0050】
好適な一実施形態では、流動床再生器14は、乱流流動床再生器である。
【0051】
好適な一実施形態では、流動床再生器14は、再生器ハウジング15、再生器供給材料分配器16、再生器気固分離器17、再生器放熱器18、排煙出口19、及び再生器ストリッパー20を含み、流動床再生器14の下部が再生領域であり、流動床再生器14の上部が希薄相領域であり、再生器供給材料分配器16は、再生領域の底部に設置され、再生器放熱器18は、再生領域に設置され、再生器気固分離器17は、希薄相領域又は再生器ハウジング15の外部に設置され、再生器気固分離器17の入口が希薄相領域に設置され、再生器気固分離器17の触媒出口が再生領域に設置され、再生器気固分離器17のガス出口が排煙出口19に接続され、再生器ストリッパー20の入口が再生器ハウジング15の底部に接続され、
反応器ストリッパー8の再生対象触媒の出口が再生対象シュート10の入口に接続され、再生対象シュート10には、再生対象スプール弁11が設けられ、再生対象シュート10の出口が再生対象ライザー12の入口に接続され、再生対象ライザー12の底部には、再生対象上昇ガスの入口13が設けられ、再生対象ライザー12の出口が流動床再生器14の希薄相領域に接続され、且つ、再生器ストリッパー20の底部には、再生器のストリッピングガスの入口21が設けられ、再生器ストリッパー20の底部が再生シュート22の入口に接続され、再生シュート22内には、再生スプール弁23が設けられ、再生シュート22の出口が再生ライザー24の入口に接続され、再生ライザー24の底部には、再生上昇ガスの入口25が設けられ、再生ライザー24の出口が反応器気固分離器4の入口に接続される。
【0052】
別の態様によれば、本願は、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための方法を提供し、
トルエン及びメタノールを含有する原料を高速流動床反応器1の最下方の反応器供給材料分配器3-1により高速流動床反応器1の反応領域に送り、メタノールを高速流動床反応器1における反応器供給材料分配器3-2~3-nにより高速流動床反応器1の反応領域に送って触媒と接触させ、パラキシレン及び低級オレフィン製品を含有する流れ、並びに炭素を含有する再生対象触媒を生成するステップと、
高速流動床反応器1からのパラキシレン及び低級オレフィン製品を含有する流れを、製品分離システムに送って分離して、パラキシレン;エチレン;プロピレン;ブテン;C5+鎖状炭化水素;ベンゼン、オルトキシレン、メタキシレン、エチルベンゼン及びC9+芳香族炭化水素を含む芳香族炭化水素副生成物;未転化のメタノール、ジメチルエーテル及びトルエンを得て、未転化のメタノール及びジメチルエーテルを反応器供給材料分配器3-2~3-nにより高速流動床反応器1の反応領域に送り、芳香族炭化水素副生成物及び未転化のトルエンを反応器供給材料分配器3-1により高速流動床反応器1の反応領域に送って触媒と接触させて、生成物に転化するステップと、
再生対象触媒を流動床再生器14で再生し、再生触媒を反応器気固分離器4で気固分離して高速流動床反応器1の反応領域の底部に充填するステップとを含む。
【0053】
好適な一実施形態では、本願の前記方法は、上記メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための装置を用いて行われる。
【0054】
好適な一実施形態では、再生対象触媒は、反応器ストリッパー8、再生対象シュート10、再生対象スプール弁11及び再生対象ライザー12を通って流動床再生器14の希薄相領域に入り、
再生媒体は、再生器供給材料分配器16から流動床再生器14の再生領域に導入されて、再生対象触媒と炭素燃焼反応を生じ、CO及びCOを含有する排煙並びに再生触媒を生成し、排煙は、再生器気固分離器17で除塵された後排出され、
再生触媒は、再生器ストリッパー20、再生シュート22、再生スプール弁23及び再生ライザー24を通って、反応器気固分離器4の入口に入り、気固分離された後高速流動床反応器1の反応領域の底部に入り、
反応器のストリッピングガスは、反応器のストリッピングガスの入口9から反応器ストリッパー8に入り再生対象触媒と向流接触した後高速流動床反応器1に入り、再生対象上昇ガスは、再生対象上昇ガスの入口13から再生対象ライザー12に入り再生対象触媒と並流接触した後流動床再生器14の希薄相領域に入り、
再生器のストリッピングガスは、再生器のストリッピングガスの入口21から再生器ストリッパー20に入り再生触媒と向流接触した後流動床再生器14に入り、再生上昇ガスは、再生上昇ガスの入口25から再生ライザー24に入り再生触媒と並流接触した後反応器気固分離器4の入口に入る。
【0055】
本願の前記メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための方法では、高速流動床反応器の最下方の反応器供給材料分配器3-1から入った混合物における、芳香族炭化水素とメタノールとの物質量比が、0.5より大きく、より好ましくは1より大きい。
【0056】
本願の前記メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための方法では、反応器供給材料分配器3-2~3-nから入った含酸素化合物と、反応器供給材料分配器3-1から入ったメタノールとの物質量比が、1より大きく、より好ましくは5より大きい。
【0057】
好適な一実施形態では、前記触媒には、HZSM-5分子篩が含まれ、該触媒は、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとのアルキル化、メタノールからのオレフィンの製造、及びメタノールの芳香族化の機能を同時に備える。
【0058】
好適な一実施形態では、前記触媒には、HZSM-11分子篩が含まれ、該触媒は、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとのアルキル化、メタノールからのオレフィンの製造、及びメタノールの芳香族化の機能を同時に備える。
【0059】
好適な一実施形態では、前記再生触媒の炭素含有量が0.5wt.%未満であり、より好ましくは再生触媒の炭素含有量が0.1wt.%未満である。
【0060】
好適な一実施形態では、前記高速流動床反応器の反応領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が1.0m/s~8.0m/s、反応温度が350℃~600℃、反応圧力が0.1Mpa~1.0MPa、ベッド密度が50kg/m~500kg/mである。
【0061】
好適な一実施形態では、前記流動床再生器の再生領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が0.1m/s~2m/s、再生温度が500℃~750℃、再生圧力が0.1Mpa~1.0MPa、ベッド密度が200kg/m~1200kg/mである。
【0062】
好適な一実施形態では、前記再生媒体は、空気、酸素欠乏空気又は水蒸気のうちのいずれか1種又は任意の複数種の混合物であり、前記反応器のストリッピングガス、再生器のストリッピングガス、再生対象上昇ガス及び再生上昇ガスは、水蒸気又は窒素ガスである。
【0063】
本願の前記メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための方法において、トルエンの転化率は、50%より高く、メタノールの転化率は、70%より高く、パラキシレンの選択性は、90%より高く、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの単通収率は、48%より高く、鎖状炭化水素における低級オレフィン(エチレン+プロピレン+ブテン)の選択性は、70%より高く、良好な技術的効果が得られる。
【0064】
本願における高速流動床反応器の主な特徴は、芳香族炭化水素原料が最下方の反応器供給材料分配器から供給され、含酸素化合物がn個の反応器供給材料分配器により別々に供給され、高活性の再生触媒が直接反応領域の底部に供給されることである。芳香族炭化水素原料は、新しいトルエン、未転化のトルエン、及び芳香族炭化水素副生成物を含み、含酸素化合物は、新しいメタノール、未転化のメタノール、及びジメチルエーテルを含む。第一に、反応領域の下部では、触媒活性が高く、トルエンのアルキル化反応、芳香族炭化水素副生成物の異性化反応、及びメチル転移反応などに有利であり、第二に、含酸素化合物の多段階供給方式を用いるため、含酸素化合物のごく一部のみが反応器の底部から供給され、底部領域では、含酸素化合物の濃度が低く、芳香族炭化水素の濃度が高く、分子篩細孔内において、低拡散速度である芳香族炭化水素に対する高拡散速度である含酸素化合物の吸着競争の優位性を弱めて、芳香族炭化水素のほとんどが底部領域内で触媒に吸着されることを確保し、第三に、含酸素化合物のほとんどが中上部から供給され、含酸素化合物の転化反応が主に反応領域の中上部で起こり、それにより、底部領域における高活性の再生触媒について、MTO反応中に炭素が堆積することにより生じる活性の急速な低下を回避し、第四に、反応領域の中上部領域における触媒の堆積炭素含有量が高いので、MTO反応における低級オレフィンの選択性向上に寄与し、第五に、含酸素化合物の多段階供給方式を用いるので、反応領域内の含酸素化合物の濃度分布は比較的均一であり、十分なアルキル化反応物を提供し、触媒に吸着された芳香族炭化水素とアルキル化反応物とが接触すると、アルキル化反応が迅速に起こり、それにより、トルエンの転化率及びパラキシレンの収率が向上する。
【0065】
前記のとおり、本出願における高速流動床反応器は、トルエン・メタノールのアルキル化反応及びMTO反応の競争を調整して最適化させ、トルエンの転化率、パラキシレンの収率、及び低級オレフィンの収率を相乗的に向上させることができる。
【0066】
本出願は、反応器設計及びプロセス配置の観点から、トルエンに対するメタノール及び/又はジメチルエーテルの濃度を制御することにより、アルキル化反応及びMTO反応の競争を調整して最適化させ、パラキシレンの収率及び低級オレフィンの選択性を向上させ、それにより、MTO反応がメタノール及び/又はジメチルエーテルのほとんどを急速に消費してアルキル化反応を抑制することもなく、メタノール及び/又はジメチルエーテルの含有量が過度に過剰であるためMTO反応が大量に発生し、単位時間あたりに触媒に吸着されるトルエンの量が少なくなることでアルキル化反応を損なうこともない。
【発明の効果】
【0067】
本願により達成し得る有益な効果は、以下を含む。
(1)本出願による流動床反応器及び装置は、原料の反応レートの差が大きい共同供給系において、異なる原料流れを異なる領域に分配させて原料を供給することによって、物質移動及び反応を制御し、更に共同供給系を調整して最適化させ、アルキル化反応とMTO反応の競争を調整して最適化させ、トルエンの転化率、パラキシレンの収率、及び低級オレフィンの選択性を相乗的に向上させる。
【0068】
(2)本出願によるメタノール・トルエンからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産する方法は、高いトルエンの転化率と高いパラキシレンの選択性を両立させ、トルエンの転化率は、50%より大きく、キシレン異性体における生成物中のパラキシレンの選択性は、90%より大きく、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの質量の単通収率は、48%より大きく、このため、良好な技術的効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本願による一実施態様のメタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、実施例を参照しながら本願を詳細に説明するが、本願は、これら実施例に制限されない。
【0071】
特に明記しない限り、本願の実施例における原料及び触媒は、すべて市販品として入手される。
【0072】
本願の一実施形態として、メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための装置の模式図は、図1に示され、該装置は、高速流動床反応器1を含み、この高速流動床反応器1は、反応器ハウジング2、n個の反応器供給材料分配器3-1~3-n(図1には、3-1~3-nの間の分配器として、3-iを例示する)、反応器気固分離器4、反応器気固分離器5、反応器放熱器6、製品ガスの出口7、及び反応器ストリッパー8を含み、高速流動床反応器1の下部が反応領域であり、高速流動床反応器1の上部が希薄相領域であり、n個の反応器供給材料分配器3-1~3-nは、下から上へ反応領域に配列され、3≦n≦11であり、反応器放熱器6は、反応領域又は反応器ハウジング2の外部に設置され、反応器気固分離器4及び反応器気固分離器5は、希薄相領域又は反応器ハウジング2の外部に設置され、反応器気固分離器4の入口が再生ライザー24に接続され、反応器気固分離器4の触媒出口が反応領域の底部に設置され、反応器気固分離器4のガス出口が希薄相領域に設置され、反応器気固分離器5の入口が希薄相領域に設置され、反応器気固分離器5の触媒出口が反応領域に設置され、反応器気固分離器5のガス出口が製品ガスの出口7に接続され、反応器ストリッパー8の入口が高速流動床反応器1の反応領域内にあり、その水平面からの高さが第1の反応器供給材料分配器より高い。
【0073】
図1に示すように、該装置は、流動床再生器14を含み、この流動床再生器14は、再生器ハウジング15、再生器供給材料分配器16、再生器気固分離器17、再生器放熱器18、排煙出口19、及び再生器ストリッパー20を含み、流動床再生器14の下部が再生領域であり、流動床再生器14の上部が希薄相領域であり、再生器供給材料分配器16は、再生領域の底部に設置され、再生器放熱器18は、再生領域に設置され、再生器気固分離器17は、希薄相領域又は再生器ハウジング15の外部に設置され、再生器気固分離器17の入口が希薄相領域に設置され、再生器気固分離器17の触媒出口が再生領域に設置され、再生器気固分離器17のガス出口が排煙出口19に接続され、再生器ストリッパー20の入口が再生器ハウジング15の底部に接続される。
【0074】
図1に示すように、反応器ストリッパー8の底部には、反応器のストリッピングガスの入口9が設けられ、反応器ストリッパー8の底部が再生対象シュート10の入口に接続され、再生対象シュート10には、再生対象スプール弁11が設けられ、再生対象シュート10の出口が再生対象ライザー12の入口に接続され、再生対象ライザー12の底部には、再生対象上昇ガスの入口13が設けられ、再生対象ライザー12の出口が流動床再生器14の希薄相領域に接続され、
図1に示すように、再生器ストリッパー20の底部には、再生器のストリッピングガスの入口21が設けられ、再生器ストリッパー20の底部が再生シュート22の入口に接続され、再生シュート22には、再生スプール弁23が設けられ、再生シュート22の出口が再生ライザー24の入口に接続され、再生ライザー24の底部には、再生上昇ガスの入口25が設けられ、再生ライザー24の出口が反応器気固分離器4の入口に接続される。
【0075】
本願の上記実施態様では、流動床再生器14は、乱流流動床再生器であってもよく、反応器気固分離器4、反応器気固分離器5及び再生器気固分離器17は、サイクロン分離器であってもよい。
【0076】
本願の一特定実施態様では、本願の前記メタノール及び/又はジメチルエーテルとトルエンとからパラキシレンを生産し低級オレフィンを併産するための方法は、
トルエン及びメタノールを含有する原料を、高速流動床反応器1の最下方の反応器供給材料分配器3-1により高速流動床反応器1の反応領域に送り、メタノールを高速流動床反応器1における反応器供給材料分配器3-2~3-nにより高速流動床反応器1の反応領域に送り、触媒と接触させて、パラキシレン及び低級オレフィン製品を含有する流れ、並びに炭素を含有する再生対象触媒を生成するステップa)と、
高速流動床反応器1からの、パラキシレン及び低級オレフィン製品を含有する流れを製品分離システムに送って分離して、パラキシレン;エチレン;プロピレン;ブテン;C5+鎖状炭化水素;ベンゼン、オルトキシレン、メタキシレン、エチルベンゼン及びC9+芳香族炭化水素を含む芳香族炭化水素副生成物;未転化のメタノール、ジメチルエーテル及びトルエンを得て、未転化のメタノール及びジメチルエーテルを反応器供給材料分配器3-2~3-nにより高速流動床反応器1の反応領域に送り、芳香族炭化水素副生成物及び未転化のトルエンを反応器供給材料分配器3-1により高速流動床反応器1の反応領域に送り、触媒と接触させて、生成物に転化するステップb)と、
再生対象触媒が、反応器ストリッパー8、再生対象シュート10、再生対象スプール弁11、及び再生対象ライザー12を通って流動床再生器14の希薄相領域に入るステップc)と、
再生媒体を再生器供給材料分配器16から流動床再生器14の再生領域に導入し、再生媒体及び再生対象触媒に炭素燃焼反応を発生させ、CO及びCOを含有する排煙並びに再生触媒を生成し、排煙を再生器気固分離器17で除塵して排出するステップd)と、
再生触媒が、再生器ストリッパー20、再生シュート22、再生スプール弁23及び再生ライザー24を通って反応器気固分離器4の入口に入り、気固分離された後、高速流動床反応器1の反応領域の底部に入るステップe)と、
反応器のストリッピングガスが、反応器のストリッピングガスの入口9から反応器ストリッパー8に入り再生対象触媒と向流接触した後高速流動床反応器1に入り、再生対象上昇ガスが、再生対象上昇ガスの入口13から再生対象ライザー12に入り再生対象触媒と並流接触した後流動床再生器14の希薄相領域に入るステップf)と、
再生器のストリッピングガスが、再生器のストリッピングガスの入口21から再生器ストリッパー20に入り再生触媒と向流接触した後流動床再生器14に入り、再生上昇ガスが、再生上昇ガスの入口25から再生ライザー24に入り再生触媒と並流接触した後反応器気固分離器4の入口に入るステップg)とを含む。
【0077】
本願をさらに説明し、本願の技術案を理解しやすくするために、本願の典型的且つ非限定的な実施例を以下に示す。
【0078】
実施例1
図1に示した装置を用いた。ただし、高速流動床反応器1には、反応器気固分離器4が含まれず、再生ライザー24は、直接高速流動床反応器1の希薄相領域に接続された。高速流動床反応器1は、1個の反応器供給材料分配器3-1を含んだ。
【0079】
高速流動床反応器1の反応領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が約1.0m/s、反応温度が約500℃、反応圧力が約0.15MPa、ベッド密度が約350kg/mであった。
【0080】
流動床再生器14の再生領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が約1.0m/s、再生温度が約650℃、再生圧力が約0.15MPa、ベッド密度が約350kg/mであった。
【0081】
触媒には、HZSM-5分子篩が含まれ、再生触媒の炭素含有量が約0.2wt.%であった。
【0082】
再生媒体は、空気であり、反応器のストリッピングガス、再生器のストリッピングガス、再生対象上昇ガス、及び再生上昇ガスは、水蒸気であった。
【0083】
高速流動床反応器の最下方の反応器供給材料分配器3-1から入った混合物は、芳香族炭化水素とメタノールとの物質量比が0.5であった。
【0084】
実験結果は、以下のとおりであった。トルエンの転化率は、22%であり、メタノールの転化率は、95%であり、パラキシレンの選択性は、99%であり、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの単通収率は、21%であり、鎖状炭化水素における低級オレフィン(エチレン+プロピレン+ブテン)の選択性は、64%であった。
【0085】
実施例2
図1に示した装置を用いた。ただし、高速流動床反応器1には、3個の反応器供給材料分配器3-1~3-3が含まれ、反応器気固分離器4は、反応器ハウジング2の外部に設置された。
【0086】
高速流動床反応器1の反応領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が約1.0m/s、反応温度が約500℃、反応圧力が約0.15MPa、ベッド密度が約350kg/mであった。
【0087】
流動床再生器14の再生領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が約1.0m/s、再生温度が約650℃、再生圧力が約0.15MPa、ベッド密度が約350kg/mであった。
【0088】
触媒には、HZSM-5分子篩が含まれ、再生触媒の炭素含有量が約0.2wt.%であった。
【0089】
再生媒体は、空気であり、反応器のストリッピングガス、再生器のストリッピングガス、再生対象上昇ガス、及び再生上昇ガスは、水蒸気であった。
【0090】
高速流動床反応器の最下方の反応器供給材料分配器3-1から入った混合物は、芳香族炭化水素とメタノールとの物質量比が、2であった。
【0091】
反応器供給材料分配器3-2~3-3から入った含酸素化合物と反応器供給材料分配器3-1から入ったメタノールとの物質量比が、3であった。
【0092】
実験結果は、以下のとおりであった。トルエンの転化率は、50%であり、メタノールの転化率は、93%であり、パラキシレンの選択性は、96%であり、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの単通収率は、48%であり、鎖状炭化水素における低級オレフィン(エチレン+プロピレン+ブテン)の選択性は、72%であった。
【0093】
本例が実施例1と異なる点は、以下のとおりである。
(1)実施例1では、再生触媒が高速流動床反応器の希薄相領域に入るが、本例では、再生触媒が高速流動床反応器の底部に入る。
(2)実施例1では、メタノールが1個の反応器供給材料分配器3-1から供給されるが、本例では、メタノールは、3個の反応器供給材料分配器(3-1~3-3)の各々から供給される。
【0094】
実施例1と比較すると、本実施例では、触媒がまず高濃度の芳香族炭化水素原料と接触するため、トルエンの転化率、パラキシレンの収率及び低級オレフィンの選択性を大幅に向上させた。
【0095】
実施例3
図1に示した装置を用いた。ただし、高速流動床反応器1には、6個の反応器供給材料分配器3-1~3-6が含まれ、反応器気固分離器4は、反応器ハウジング2の内部に設置された。
【0096】
高速流動床反応器1の反応領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が約6.0m/s、反応温度が約570℃、反応圧力が約0.7MPa、ベッド密度が約60kg/mであった。
【0097】
流動床再生器14の再生領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が約1.7m/s、再生温度が約600℃、再生圧力が約0.7MPa、ベッド密度が約220kg/mであった。
【0098】
触媒には、HZSM-11分子篩が含まれ、再生触媒の炭素含有量が約0.1wt.%であった。
【0099】
再生媒体は、空気であり、反応器のストリッピングガス、再生器のストリッピングガス、再生対象上昇ガス、及び再生上昇ガスは、水蒸気であった。
【0100】
高速流動床反応器の最下方の反応器供給材料分配器3-1から入った混合物は、芳香族炭化水素とメタノールとの物質量比が、4であった。
【0101】
反応器供給材料分配器3-2~3-6から入った含酸素化合物と、反応器供給材料分配器3-1から入ったメタノールとの物質量比が、20であった。
【0102】
実験結果は、以下のとおりであった。トルエンの転化率は、55%であり、メタノールの転化率は、74%であり、パラキシレンの選択性は、90%であり、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの単通収率は、58%であり、鎖状炭化水素における低級オレフィン(エチレン+プロピレン+ブテン)の選択性は、73%であった。
【0103】
実施例4
図1に示した装置を用いた。ただし、高速流動床反応器1には、4個の反応器供給材料分配器3-1~3-4が含まれ、反応器気固分離器4は、反応器ハウジング2の外部に設置された。
【0104】
高速流動床反応器1の反応領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が約3.0m/s、反応温度が約420℃、反応圧力が約0.3MPa、ベッド密度が約180kg/mであった。
【0105】
流動床再生器14の再生領域の反応条件は、ガスの見かけ線速度が約1.2m/s、再生温度が約700℃、再生圧力が約0.3MPa、ベッド密度が約330kg/mであった。
【0106】
触媒には、HZSM-5分子篩が含まれ、再生触媒の炭素含有量が約0.1wt.%であった。
【0107】
再生媒体は、水蒸気であり、反応器のストリッピングガス、再生器のストリッピングガス、再生対象上昇ガス、及び再生上昇ガスは、窒素ガスであった。
【0108】
高速流動床反応器の最下方の反応器供給材料分配器3-1から入った混合物は、芳香族炭化水素とメタノールとの物質量比が、3であった。
【0109】
反応器供給材料分配器3-1~3-4から入った含酸素化合物と反応器供給材料分配器3-1から入ったメタノールとの物質量比が、10であった。
【0110】
実験結果は、以下のとおりであった。トルエンの転化率は、52%であり、メタノールの転化率は、83%であり、パラキシレンの選択性は、91%であり、芳香族炭化水素に基づくパラキシレンの単通収率は、53%であり、鎖状炭化水素における低級オレフィン(エチレン+プロピレン+ブテン)の選択性は、71%であった。
【0111】
以上は、本願のいくつかの実施例に過ぎず、本願を何ら制限するものではなく、本願は、好適実施例をもって以上のように開示したが、本願を制限するものではない。当業者であれば、本願の技術案の範囲から逸脱することなく、上記で開示された技術内容に基づいて行われる変化又は修正は、いずれも均等の実施態様に相当し、すべて技術案の範囲に属する。
【符号の説明】
【0112】
1-高速流動床反応器、2-反応器ハウジング、3-反応器供給材料分配器(3-1~3-n)、4-反応器気固分離器、5-反応器気固分離器、6-反応器放熱器、7-製品ガスの出口、8-反応器ストリッパー、9-反応器のストリッピングガスの入口、10-再生対象シュート、11-再生対象スプール弁、12-再生対象ライザー、13-再生対象上昇ガスの入口、14-流動床再生器、15-再生器ハウジング、16-再生器供給材料分配器、17-再生器気固分離器、18-再生器放熱器、19-排煙出口、20-再生器ストリッパー、21-再生器のストリッピングガスの入口、22-再生シュート、23-再生スプール弁、24-再生ライザー、25-再生上昇ガスの入口。
図1