(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】挿入機器の操作部、操作部を有する内視鏡、操作部を有する処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 1/008 20060101AFI20220330BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220330BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
A61B1/008 512
A61B1/00 711
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2019560836
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2018039107
(87)【国際公開番号】W WO2019123814
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2017242987
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 卓斗
(72)【発明者】
【氏名】大田 司
(72)【発明者】
【氏名】王 雄偉
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-530155(JP,A)
【文献】特開昭58-124430(JP,A)
【文献】特開2012-040115(JP,A)
【文献】特開平05-228100(JP,A)
【文献】特開2001-346756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 - 23/26
A61M 25/00 - 25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入機器の操作部であって、
操作部材を回動自在に支持する軸と、
前記軸に装着され、前記軸とともに回動することにより牽引部材を牽引するプーリと、
前記プーリに当接されて配置された弾性部材と、
前記軸の延在方向において、前記プーリとの間に前記弾性部材を挟み込むよう配置され、前記延在方向に沿って移動自在となるよう前記軸と同軸状に前記軸周りに配置された第1の部材と、
前記第1の部材の一部と当接することにより、前記第1の部材の前記軸周りの回動を防止するストッパと、
前記軸と同軸状に前記軸周りに配置され、前記軸の回動とは異なる前記軸周りの回転に伴って前記第1の部材を前記延在方向における前記プーリ側に押圧する第2の部材と、
前記ストッパが固定された、前記操作部の外装部材をなす第3の部材と、
を具備し、
前記第2の部材および前記第3の部材のうち、一方の部材には、前記軸の延在方向に突出する突起部が設けられ、他方の部材には、前記軸周りの方向の一部に切り欠き面が設けられ、前記切り欠き面は、横行部と、該横行部の前記軸周りの方向の両端部に形成された段差部である第1の凹部および第2の凹部とを備え、
前記第2の部材は、回動の際に前記突起部が前記切り欠き面に接触し続けるよう前記第3の部材に対して位置決めされ
、
前記第1の部材の前記延在方向における前記プーリ側への移動によって前記第1の部材が前記弾性部材を介して前記プーリを押圧することにより、前記プーリの回動に制動が付与され、
前記プーリの回動に制動を付与する場合、前記突起部は前記第1の凹部に嵌入し、制動を付与しない場合、前記突起部は前記第2の凹部に嵌入し、前記突起部が前記第1の凹部または第2の凹部から前記横行部に移動する際、および、前記横行部から前記第1の凹部または第2の凹部に移動する際に、接触状態が変化することによってクリック感が生じる
ことを特徴とする挿入機器の操作部。
【請求項2】
請求項1に記載の挿入機器の操作部を有する内視鏡。
【請求項3】
請求項1に記載の挿入機器の操作部を有する処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材を回動自在に支持する軸と、軸に装着され、軸とともに回動することにより牽引部材を牽引するプーリと、を具備する挿入機器の操作部、操作部を有する内視鏡、操作部を有す処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、挿入機器、例えば内視鏡は、医療分野及び工業用分野において広く利用されている。
【0003】
内視鏡の挿入部に、複数方向に湾曲自在な湾曲部が設けられた構成が周知である。
【0004】
湾曲部は、管路内の屈曲部における挿入部の進行性を向上させる他、挿入部において、湾曲部よりも先端側に位置する先端部に設けられた観察光学系の観察方向を可変させる。
【0005】
通常、内視鏡の挿入部に設けられた湾曲部は、複数の湾曲駒が挿入部の挿入方向に沿って連結されることにより、例えば上下左右の4方向に湾曲自在となるよう構成されている。
【0006】
また、湾曲部は、湾曲駒の内、最も先端側に位置する湾曲駒に先端が固定されるとともに挿入部内に挿通された4本の牽引部材であるワイヤのいずれかが操作部に設けられた操作部材である湾曲操作ノブによって牽引操作されることにより、上下左右のいずれかの方向に湾曲自在となっている。
【0007】
具体的には、湾曲部は、操作部に設けられた左右湾曲用の湾曲操作ノブが回動操作されることによって、左右用の回動軸を介して操作部に設けられた左右湾曲用のプーリが回動される。次いで、プーリに巻回された牽引部材である左右湾曲用チェーンの左側チェーン部位と右側チェーン部位とのいずれかが牽引される。その結果、左側ワイヤまたは右側ワイヤのいずれかが牽引されることにより、左方向または右方向のいずれかに湾曲される構成を有している。
【0008】
また、湾曲部は、操作部に設けられた上下湾曲用の湾曲操作ノブが回動操作されることによって、左右用の回動軸と同軸状に設けられた上下用の回動軸を介して操作部に設けられた上下湾曲用のプーリが回動される。次いで、プーリに巻回された牽引部材である上下湾曲用チェーンの上側チェーン部位と下側チェーン部位とのいずれかが牽引される。その結果、上側ワイヤまたは下側ワイヤのいずれかが牽引され、上方向または下方向のいずれかに湾曲される構成を有している。
【0009】
尚、左右湾曲用のプーリに左側ワイヤまたは右側ワイヤが直接巻回され、上下湾曲用のプーリに上側ワイヤまたは下側ワイヤが直接巻回された構成も周知である。
【0010】
また、左右湾曲用の湾曲操作ノブは、操作部外において上述した左右用の回動軸及び上下用の回動軸の延在方向に沿って上下湾曲用の湾曲操作ノブと重畳して位置しているとともに、上下湾曲用の湾曲操作ノブよりも操作部の外装部材から延在方向の遠位側(以下、上方と称す)に位置している。
【0011】
尚、以下、延在方向における左右湾曲用の湾曲操作ノブよりも上下湾曲用の湾曲操作ノブ側を下方と称す。
【0012】
また、操作部に、左右湾曲用の湾曲操作ノブの回動操作により左方向または右方向に湾曲された湾曲部の湾曲角度や、上下湾曲用の湾曲操作ノブの回動操作により上方向または下方向に湾曲された湾曲部の湾曲角度を固定するロックレバーが設けられた構成も周知であり、例えば米国特許第8608649号公報に開示されている。
【0013】
米国特許第8608649号公報には、左右用の回動軸及び上下用の回動軸と同軸状に設けられるとともに、ロックレバーの回動に伴って回動する第2の部材であるレバー固定部材と、左右用の回動軸及び上下用の回動軸と同軸状に設けられるとともに、レバー固定部材の回動に伴って延在方向の上方及び下方に移動自在な第1の部材である押圧部材と、左右湾曲用プーリと押圧部材との間に設けられた左右用の弾性部材であるOリングと、上下湾曲用プーリと操作部の第3の部材である外装部材内面との間に設けられた上下用の弾性部材であるOリングとを具備したロック機構の構成が開示されている。
【0014】
米国特許第8608649号公報に開示されたロック機構の構成においては、ロックレバーの回転に伴い、レバー固定部材を回転させ、押圧部材を下方に移動させて、左右用のOリングを押圧部材と左右湾曲用のプーリとの間で潰すとともに、押圧部材によって下方に押圧された左右湾曲用のプーリによって下方に押圧された上下湾曲用のプーリと外装部材内面との間で上下用のOリングを潰すことにより、各Oリングによって左右湾曲用のプーリ及び上下湾曲用のプーリに制動力を付与する。
【0015】
ここで、米国特許第8608649号公報に開示されたロック機構においては、レバー固定部材と押圧部材との各当接面に、各回動軸周り方向に沿って3つの傾斜面がそれぞれ形成されている。
【0016】
各プーリに制動力を付与しない場合は、レバー固定部材の3つの傾斜面の各山側が、押圧部材の3つの傾斜面の各谷側に接触し、各プーリに制動力を付与する場合は、レバー固定部材の回転に伴い、レバー固定部材の各山側が、押圧部材の各傾斜面を摺動しながら各谷側から各山側まで移動していくことにより、押圧部材を下方に移動させる構成を有している。
【0017】
しかしながら、米国特許第8608649号公報のロック機構の構成では、押圧部材の3つの傾斜面に対するレバー固定部材の3つの傾斜面の回転軸周り方向における接触位置の規定を、操作部を組み立てる作業者の目視により行う。このため、押圧部材に対するレバー固定部材の回動軸周り方向における組み付け位置を間違えてしまうと、レバー固定部材に固定されたロックレバーの回動軸周り方向における配置位置がずれてしまうといった誤組みが発生してしまう可能性があった。
【0018】
また、米国特許第8608649号公報においては、ロックレバーは、操作部外において、延在方向における上下湾曲用の湾曲操作ノブと操作部の外装部材との間に位置している。
【0019】
また、各プーリに制動力を与える位置においては、回転に伴いロックレバーの一部が外装部材の外表面に形成された凹部に落ち込むことにより、クリック感を生じさせて操作者に各プーリに制動力を付与した旨を告知する構成を有している。
【0020】
しかしながらこの構成では、操作部の外装部材の外表面に凹部が形成された形状となり、操作部の外観が悪くなってしまうばかりか凹部に細かいゴミが残留する虞があり、ゴミを取り除くための後処理が必要になってしまうといった問題があった。
【0021】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ロック機構の誤組みを防止することができるとともに外装部材の外観が滑らかに形成された構成を具備する挿入機器の操作部、操作部を有する内視鏡、操作部を有する処置具を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一態様による挿入機器の操作部は、挿入機器の操作部であって、操作部材を回動自在に支持する軸と、前記軸に装着され、前記軸とともに回動することにより牽引部材を牽引するプーリと、前記プーリに当接されて配置された弾性部材と、前記軸の延在方向において、前記プーリとの間に前記弾性部材を挟み込むよう配置され、前記延在方向に沿って移動自在となるよう前記軸と同軸状に前記軸周りに配置された第1の部材と、前記第1の部材の一部と当接することにより、前記第1の部材の前記軸周りの回動を防止するストッパと、前記軸と同軸状に前記軸周りに配置され、前記軸の回動とは異なる前記軸周りの回転に伴って前記第1の部材を前記延在方向における前記プーリ側に押圧する第2の部材と、前記ストッパが固定された、前記操作部の外装部材をなす第3の部材と、を具備し、前記第2の部材および前記第3の部材のうち、一方の部材には、前記軸の延在方向に突出する突起部が設けられ、他方の部材には、前記軸周りの方向の一部に切り欠き面が設けられ、前記切り欠き面は、横行部と、該横行部の前記軸周りの方向の両端部に形成された段差部である第1の凹部および第2の凹部とを備え、前記第2の部材は、回動の際に前記突起部が前記切り欠き面に接触し続けるよう前記第3の部材に対して位置決めされ、前記第1の部材の前記延在方向における前記プーリ側への移動によって前記第1の部材が前記弾性部材を介して前記プーリを押圧することにより、前記プーリの回動に制動が付与され、前記プーリの回動に制動を付与する場合、前記突起部は前記第1の凹部に嵌入し、制動を付与しない場合、前記突起部は前記第2の凹部に嵌入し、前記突起部が前記第1の凹部または第2の凹部から前記横行部に移動する際、および、前記横行部から前記第1の凹部または第2の凹部に移動する際に、接触状態が変化することによってクリック感が生じる。
また、本発明の一態様による操作部を有する内視鏡は、前記挿入機器の操作部を有する。
さらに、本発明の一態様による操作部を有する処置具は、前記挿入機器の操作部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施の形態の操作部を具備する内視鏡の外観を示す図
【
図2】
図1の内視鏡の操作部に設けられた湾曲操作装置の構成を示す部分断面図
【
図3】
図2の第2の部材を拡大するとともに反転して示す斜視図
【
図5】
図2中のV線で囲った部位を反転して示す部分拡大分解斜視図
【
図6】
図2の操作部の第3の部材に設けられたストッパによって第1の部材の回動軸周り方向への回動が規制された状態を概略的に示す部分拡大斜視図
【
図7】
図6のストッパによって
図2のスラストプレートの回動軸周り方向への回動が規制された状態を概略的に示す部分拡大斜視図
【
図8】
図6のストッパによって
図2のプーリの回動軸周り方向への回動範囲が規定された状態を概略的に示す部分拡大斜視図
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、図面は模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、それぞれの部材の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0026】
図1は、本実施の形態の操作部を具備する内視鏡の外観を示す図である。
図1に示すように、内視鏡1は、被検体内に挿入される挿入部2と、該挿入部2の基端側に連設された操作部6と、該操作部6から延出されたユニバーサルコード7と、該ユニバーサルコード7の延出端に設けられた図示しないコネクタとを具備して主要部が構成されている。尚、コネクタを介して、内視鏡1は、制御装置や照明装置等の外部装置と電気的に接続される。
【0027】
操作部6に、挿入部2の後述する湾曲部4を上下方向に湾曲させる操作部材である上下湾曲用の湾曲操作ノブ(以下、単に湾曲操作ノブと称す)10と、湾曲部4を左右方向に湾曲させる左右湾曲用の湾曲操作ノブ(以下、単に湾曲操作ノブと称す)20とが設けられている。
【0028】
さらに、操作部6に、湾曲操作ノブ10、20の回動位置を固定する後述するロック機構200(
図2参照)を構成するロックレバー30が設けられている。
【0029】
尚、湾曲操作ノブ10、20とロックレバー30とは、操作部6内に設けられた他の部材とともに、湾曲操作装置100(
図2参照)を構成している。
【0030】
挿入部2は、先端部3と湾曲部4と可撓管部5とにより構成されており、挿入方向に沿って細長に形成されている。
【0031】
先端部3内には、被検体内を観察する図示しない撮像ユニットや、被検体内を照明する照明ユニット等が設けられている。
【0032】
また、湾曲部4は、湾曲操作ノブ10、20の回動操作により、湾曲操作装置100を介して、例えば上下左右の4方向に湾曲されることにより、先端部3に設けられた撮像ユニットの観察方向を可変したり、被検体内における先端部3の挿入性を向上させたりするものである。さらに、湾曲部4の基端側には、可撓管部5が連設されている。
【0033】
次に、操作部6に設けられた内視鏡の湾曲操作装置100の内、ロック機構200の構成について、
図2~
図8を用いて説明する。
【0034】
図2は、
図1の内視鏡の操作部に設けられた湾曲操作装置の構成を示す部分断面図、
図3は、
図2の第2の部材を拡大するとともに反転して示す斜視図、
図4は、
図2の第1の部材を拡大して示す斜視図、
図5は、
図2中のV線で囲った部位を反転して示す部分拡大分解斜視図である。
【0035】
また、
図6は、
図2の操作部の第3の部材に設けられたストッパによって第1の部材の回動軸周り方向への回動が規制された状態を概略的に示す部分拡大斜視図、
図7は、
図6のストッパによって
図2のスラストプレートの回動軸周り方向への回動が規制された状態を概略的に示す部分拡大斜視図、
図8は、
図6のストッパによって
図2のプーリの回動軸周り方向への回動範囲が規定された状態を概略的に示す部分拡大斜視図である。
【0036】
図2に示すように、湾曲操作装置100は、湾曲操作ノブ10と、湾曲操作ノブ20と、上下用の回動軸(以下、単に回動軸と称す)11と、左右用の回動軸(以下、単に回動軸と称す)21と、左右湾曲用のプーリ(以下、単にプーリと称す)12と、上下湾曲用のプーリ(以下、単にプーリと称す)22と、ロック機構200とを具備して主要部が構成されている。
【0037】
また、ロック機構200は、ロックレバー30と、第1の部材である押圧部材50と、第2の部材であるレバー固定部材40と、弾性部材であるOリング35、36とを具備して主要部が構成されている。
【0038】
湾曲操作ノブ10は、操作部6の内部から回動軸11の軸方向(以下、延在方向と称す)Eに沿って上方EUに延出されて設けられた円筒状の回動軸11における上方EUの頂部に固定されており、回動軸11とともに、該回動軸11の回動軸周り方向Cにおける一方向または他方向に回転自在となっている。即ち、回動軸11は、湾曲操作ノブ10を回動自在に支持している。
【0039】
尚、回動軸11の頂部への湾曲操作ノブ10の固定構造は周知であるため、その説明は省略する。
【0040】
湾曲操作ノブ20は、操作部6の内部から延在方向Eに沿って上方EUに延出されるとともに回動軸11内に設けられ回動軸11とは別個に回動する円筒状の回動軸21における上方EUの頂部に固定されており、回動軸21とともに、回動軸周り方向Cにおける一方向または他方向に回転自在となっている。即ち、回動軸21は、湾曲操作ノブ20を回動自在に支持している。
【0041】
尚、回動軸21の頂部への湾曲操作ノブ20の固定構造は周知であるため、その説明は省略する。
【0042】
回動軸11の操作部6の内部に位置する下方EDの下端は、操作部6の内部に設けられたプーリ12に装着されている。
【0043】
尚、プーリ12には、湾曲部4を左右方向に湾曲させる図示しない牽引部材である左右湾曲用チェーンが巻回されている。
【0044】
また、左右湾曲用チェーンの左側チェーン部位に、湾曲部4を構成する複数の湾曲駒の先端駒に各先端が固定された左側ワイヤの基端が接続されており、右側チェーン部位に、湾曲部4を構成する複数の湾曲駒の先端駒に各先端が固定された右側ワイヤの基端が接続されている。
【0045】
このことにより、湾曲操作ノブ10が一方向または他方向に回転操作されると、回動軸11も湾曲操作ノブ10と同方向に回転するとともに、プーリ12も同方向に回転することから、チェーンのいずれか側が牽引され、ワイヤのいずれが牽引されることにより、湾曲部4は、左右いずれかの方向に湾曲する。
【0046】
尚、
図8に示すように、プーリ12は、回動軸周り方向Cの一部に大径部13が形成されており、大径部13の回動軸周り方向Cの各端部13a、13bが、操作部6の第3の部材である外装部材6gの内面6gnから延在方向Eに沿って起立するストッパであるネジボス90の外周に形成された凸部91に当接することにより、回動範囲が規定されている。
【0047】
即ち、プーリ12が回動し過ぎてしまうことによりワイヤを牽引し過ぎてしまうことが防止されている。尚、ネジボス90は、操作部6を構成する外装部材6gを組み立てる際、例えば2つに分割された外装部材6g同士を合わせて固定する際に用いられるネジが螺合されるものである。
【0048】
また、プーリ12の回動範囲は、大径部13の回動軸周り方向Cの長さ、または凸部91の回動軸周り方向Cの大きさを調整することにより任意に設定することができる。
【0049】
また、本実施の形態においては、ストッパはネジボス90の外周に形成された凸部91を例に挙げて示しているが、凸部91は、内面6gnから起立していても構わない。
【0050】
回動軸21の操作部6の内部に位置する下方EDの下端は、操作部6の内部に設けられたプーリ22に装着されている。
【0051】
尚、プーリ22には、湾曲部4を上下方向に湾曲させる図示しない牽引部材である上下湾曲用チェーンが巻回されている。
【0052】
また、上下湾曲用チェーンの上側チェーン部位に、湾曲部4を構成する複数の湾曲駒の先端駒に各先端が固定された上側ワイヤの基端が接続されており、下側チェーン部位に、湾曲部4を構成する複数の湾曲駒の先端駒に各先端が固定された下側ワイヤの基端が接続されている。
【0053】
このことにより、湾曲操作ノブ20が一方向または他方向に回転操作されると、回動軸21も湾曲操作ノブ20と同方向に回転するとともに、プーリ22も同方向に回転することから、チェーンのいずれか側が牽引され、ワイヤのいずれが牽引されることにより、湾曲部4は、上下いずれかの方向に湾曲する。
【0054】
尚、
図8に示すように、プーリ22は、回動軸周り方向Cの一部に大径部23が形成されており、大径部23の回動軸周り方向Cの各端部23a、23bが、凸部91に当接することにより、回動範囲が規定されている。即ち、プーリ22が回動し過ぎてしまうことによりワイヤを牽引し過ぎてしまうことが防止されている。
【0055】
また、プーリ22の回動範囲は、大径部23の回動軸周り方向Cの長さ、または凸部91の回動軸周り方向Cの大きさを調整することにより任意に設定することができる。
【0056】
尚、プーリにチェーンを用いずに、ワイヤが直接巻回された構成であっても構わない。
【0057】
また、延在方向Eにおいて、プーリ12とプーリ22との間に、スラストプレート60が設けられている。
【0058】
スラストプレート60は、プーリ12の回動がプーリ22に伝わってしまうのを防ぐとともに、プーリ22の回動がプーリ12に伝わってしまうのを防ぐものである。
【0059】
また、
図7に示すように、スラストプレート60は、回動軸周り方向Cに沿った外周面の一部に、スラストプレートの外径方向の外側に突出する凸部61が形成されており、凸部61に外径方向の内側に凹む凹部62が形成された形状を有している。
【0060】
さらに、スラストプレート60は、凹部62が、ネジボス90の外周に形成された凸部91に係合していることにより、回動軸周り方向Cの回動が防止されている。
【0061】
図2に戻って、回動軸11の外周に、該回動軸11と同軸状に、
図3に示す筒状のレバー固定部材40が設けられている。
【0062】
レバー固定部材40の上方EUの頂部にロックレバー30が固定されている。尚、ロックレバー30は、操作部6外において、延在方向Eにおける外装部材6gと湾曲操作ノブ10との間において、回動軸周り方向Cにおける
図1のC1に位置する。
【0063】
このことにより、レバー固定部材40は、ロックレバー30とともに回動する。よって、レバー固定部材40は、回動軸11の回動とは別個に回動する。
【0064】
図3に示すように、レバー固定部材40の下端に、他の部位よりも大径なリング状の当接部49が形成されており、当接部49の下方EDの下端面49kに、回動軸周り方向Cに沿った3つの傾斜面41~43が形成されているとともに、上方EUの上端面47jにおける回動軸周り方向Cの一部に、上方EUに突出する突起部47が形成されている。
【0065】
尚、傾斜面41は、谷部41aと、傾斜部41bと、山部41cとから構成され、傾斜面42は、谷部42aと、傾斜部42bと、山部42cとから構成され、傾斜面43は、谷部43aと、傾斜部43bと、山部43cとから構成されている。
【0066】
また、当接部49の上端面49jは、
図5に示すように、外装部材6gの内面6gnにおいて、円筒状に下方EDに突出して形成されるとともに外装部材6gの一部である保持部材80に当接されており、突起部47は、保持部材80の下端面80kにおいて回動軸周り方向Cの一部に形成された切り欠き面85に当接され続けている。
【0067】
切り欠き面85は、横行部81と、該横行部81の回動軸周り方向Cの両端部に形成された段差部である凹部82、83とから構成されている。
【0068】
尚、切り欠き面85に対する突起部47の当接により、レバー固定部材40の回動軸周り方向Cの組み付け位置が規定されている。即ち、ロックレバー30の回動軸周り方向Cの位置C1が規定されている。
【0069】
突起部47は、ロックレバー30の一方向の回転に伴うレバー固定部材40の一方向の回転により、凹部83から横行部81を介して凹部82まで切り欠き面85に当接し続けた状態で摺動移動し、ロックレバー30の他方向の回転に伴うレバー固定部材40の他方向の回転により、凹部82から横行部81を介して凹部83まで切り欠き面85に当接し続けた状態で摺動移動する。
【0070】
尚、後述するプーリ12、22に制動を付与しない場合は、突起部47は凹部83に嵌入しており、制動を付与する場合は、凹部82に嵌入する。
【0071】
この突起部47が凹部82、83から横行部81に移動する際、及び横行部81から凹部82、83に移動する際に、接触状態が変化することによってクリック感が生じる。
【0072】
即ち、凹部82への突起部47の嵌入に伴うクリック感により、ロックレバー30を操作する操作者にプーリ12、22への制動の付与を告知し、凹部83への突起部47の嵌入に伴うクリック感により、ロックレバー30を操作する操作者にプーリ12、22への制動の付与解除を告知する。
【0073】
尚、クリック感の発生は、上述した構成とは反対に、レバー固定部材40の当接部49に形成された切り欠き面に対して、保持部材80の下端面80kにおいて回動軸周り方向Cの一部に形成された突起部が当接することにより発生する構成であっても構わない。
【0074】
図4に示すように、押圧部材50は、延在方向Eに沿った筒状の本体部51と、該本体部51の延在方向Eの中途位置における外周面に設けられたC字状のフランジ部52とを具備して主要部が構成されている。
【0075】
また、押圧部材50の本体部51の内部において、延在方向Eの中途位置に、回動軸周り方向Cに沿った3つの傾斜面54~56が形成されたリング状の当接部59が設けられている。
【0076】
尚、当接部59の外径方向の幅は、当接部49の外径方向の幅に略等しく形成されている。
【0077】
また、傾斜面54は、谷部54aと、傾斜部54bと、山部54cとから構成され、傾斜面55は、谷部55aと、傾斜部55bと、山部55cとから構成され、傾斜面56は、谷部56aと、傾斜部56bと、山部56cとから構成されている。
【0078】
本体部51は、内部にレバー固定部材40が該レバー固定部材40の当接部49側から嵌入される。その結果、当接部59に当接部49が当接する。具体的には、傾斜面54~56に傾斜面41~43が当接する。
【0079】
より具体的には、後述するプーリ12、22に制動を付与しない場合には、谷部54aに山部41cが当接し、傾斜部54bに傾斜部41bが当接し、山部54cに谷部41aが当接する。
【0080】
また、谷部55aに山部42cが当接し、傾斜部55bに傾斜部42bが当接し、山部55cに谷部42aが当接する。さらに、谷部56aに山部43cが当接し、傾斜部56bに傾斜部43bが当接し、山部56cに谷部43aが当接する。
【0081】
この状態から、ロックレバー30が一方向である反時計周り方向に回転されると、谷部54aに当接していた山部41cは、傾斜部54bを介して山部54cに当接するよう摺動移動する。また、谷部55aに当接していた山部42cは、傾斜部55bを介して山部55cに当接するよう摺動移動し、谷部56aに当接していた山部43cは、傾斜部56bを介して山部56cに当接するよう摺動移動する。また、突起部47は、凹部83から横行部81を介して凹部82に摺動移動する。
【0082】
山部41cの山部54cへの当接、山部42cの山部55cへの当接、山部43cの山部56cへの当接により、押圧部材50は、レバー固定部材40に押圧されて下方EDに移動する。
【0083】
この際、
図6に示すように、フランジ部52の切り欠き53が、ネジボス90の外周に形成された凸部91に係合していることにより、押圧部材50は、回動軸周り方向Cの回動が防止された状態で下方EDに移動する。
【0084】
その結果、押圧部材50は、Oリング35を介してプーリ12、スラストプレート60、プーリ22を下方EDに押圧する。
【0085】
尚、この状態から、ロックレバー30が他方向である時計周り方向に回転されると、山部54cに当接していた山部41cは、傾斜部54bを介して谷部54aに当接するよう摺動移動する。また、山部55cに当接していた山部42cは、傾斜部55bを介して谷部55aに当接するよう摺動移動し、山部56cに当接していた山部43cは、傾斜部56bを介して谷部56aに当接するよう摺動移動する。また、突起部47は、凹部82から横行部81を介して凹部83に摺動移動する。
【0086】
その結果、押圧部材50は、切り欠き53への凸部91の係合により、回動軸周り方向Cの回動が防止された状態で上方EUに移動する。
【0087】
図2に戻って、Oリング35は、延在方向Eにおける押圧部材50とプーリ12との間に挟み込まれるよう、プーリ12に当接されて配置されている。
【0088】
また、Oリング36は、延在方向Eにおけるプーリ22と該プーリ22が対向する外装部材6gの内面6gnとの間に挟み込まれるようプーリ22に当接されて配置されている。
【0089】
Oリング35は、ロックレバー30の一方向への回転に伴い、上述したように、押圧部材50がレバー固定部材40により下方EDに押圧されことによって、押圧部材50に当接し、押圧部材50とプーリ12との間によって潰されることにより、プーリ12に制動力を付与する。
【0090】
尚、プーリ12への制動力の付与解除は、ロックレバー30の他方向への回転に伴い、上述したように、押圧部材50が上方EUに移動することにより、Oリング35の潰れ状態が解除されることにより行われる。
【0091】
Oリング36は、ロックレバー30の一方向への回転に伴い、上述したように、押圧部材50がレバー固定部材40により下方EDに押圧されることによって、プーリ12及びスラストプレート60、プーリ22が下方EDに押圧されることにより内面6gnに当接し、プーリ22と内面6gnとの間によって潰されることにより、プーリ22に制動力を付与する。
【0092】
尚、プーリ22への制動力の付与解除は、ロックレバー30の他方向への回転に伴い、上述したように、押圧部材50、プーリ22、スラストプレート60が上方EUに移動することにより、Oリング36の潰れ状態が解除されることにより行われる。
【0093】
このように、本実施の形態において示したロック機構200は、プーリ12、22に対して、1つのロックレバー30にて同時に制動力を付与する構成を有している。
【0094】
このようなロック機構の構成は、プーリ12、22に対して別々に制動力を付与するロック機構に対して構成が簡略になることから、部品点数を減らすことができる。このため、量産性が高くなる他、製造コストを低減できることから、例えばディスポーザブル内視鏡の構成に大いに有用である。
【0095】
尚、その他のロック機構200の構成は従来と同様である。
【0096】
このように、本実施の形態においては、レバー固定部材40の下端の当接部49の上端面49jにおける回動軸周り方向Cの一部に、上方EUに突出する突起部47が形成されている。また、突起部47は、保持部材80の下端面80kにおいて回動軸周り方向Cの一部に形成された、横行部81と凹部82、83とを有する切り欠き面85に当接されていると示した。
【0097】
このことによれば、ロック機構200を組み付ける作業者は、突起部47が切り欠き面85に当接するよう、押圧部材50に対する回動軸周り方向Cの位置に、レバー固定部材40を組み付ければ、即ち、傾斜面54に傾斜面41が当接し、傾斜面55に傾斜面42が当接し、傾斜面56に傾斜面43が当接するよう組み付ければ、レバー固定部材40に固定されたロックレバー30を、回動軸周り方向Cにおいて規定位置C1に配置させることができる。
【0098】
また、突起部47は、ロックレバー30の一方向の回転に伴うレバー固定部材40の一方向の回転により、凹部83から横行部81を介して凹部82まで切り欠き面85に当接した状態で摺動移動し、ロックレバー30の他方向の回転に伴うレバー固定部材40の他方向の回転により、凹部82から横行部81を介して凹部83まで切り欠き面85に当接した状態で摺動移動し、突起部47が凹部82、83から横行部81に移動する際、及び横行部81から凹部82、83に移動する際に、接触状態が変化することによってクリック感が生じると示した。
【0099】
さらに、凹部82への突起部47の嵌入に伴うクリック感により、ロックレバー30を操作する操作者にプーリ12、22への制動の付与を告知し、凹部83への突起部47の嵌入に伴うクリック感により、ロックレバー30を操作する操作者にプーリ12、22への制動の付与解除を告知すると示した。
【0100】
このことによれば、従来のように外装部材6gの外表面に凹部を設けなくても、ロックレバー30の操作に伴うクリック感を操作者に告知することができることから、外装部材6gの外表面を滑らかに形成することができるため、操作部6の外観が向上し、細かいゴミなどが残留する虞がなくなる。
【0101】
以上から、ロック機構200の誤組みを防止することができるとともに外装部材6gの外観が滑らかに形成された構成を具備する内視鏡1の操作部6を提供することができる。
【0102】
さらに、本実施の形態においては、ネジボス90の外周に形成された凸部91により、スラストプレート60、押圧部材50の回動軸周り方向Cへの回動が規制され、さらに、プーリ12、22の回動範囲が規定されると示した。
【0103】
言い換えれば、スラストプレート60、押圧部材50の回動軸周り方向Cへの回動規制と、プーリ12、22の回動範囲の規定とを、1つの凸部91により行うと示した。
【0104】
また、従来のスラストプレート60の回動規制は、スラストプレート60に形成された孔に、外装部材6gの内面6gnに形成された軸が嵌入することにより行っていた。
【0105】
さらに、従来のプーリ12の回動範囲の規定は、プーリ12の押圧部材50への対向面に形成された凸部と、押圧部材50のプーリ12への対向面に形成された凸部との当接により行っていた。
【0106】
また、従来のプーリ22の回動範囲の規定は、プーリ22の内面6gnへの対向面に形成された凸部と、内面6gnに形成された凸部との当接により行っていた。
【0107】
即ち、従来は、それぞれ異なる部材にて回動規制と回動範囲の規定とを別個に行っていた。
【0108】
しかしながらこの従来構成では、押圧部材50の回動規制は、押圧部材50の外周面に形成された2つの凸部と、外装部材6gの内面6gnに形成された2つの凹部で行っていたことから、2つの凹部に対する2つの凸部の嵌入を組み付けの際、180°間違えてしまう可能性があった。即ち、押圧部材50の回動軸周り方向Cにおける組み付け位置を間違えてしまう可能性があった。
【0109】
また、回動規制や回動範囲の規制部材がそれぞれ異なるため、それぞれ誤差を考慮しなければならなかった。
【0110】
さらに、プーリ12の押圧部材50への対向面、プーリ22の内面6gnへの対向面にそれぞれ凸部を設けなくてはならず、各凸部により、Oリング35、36が延在方向Eにおいて潰れることのできる範囲が制限されてしまう可能性があった。
【0111】
しかしながら、本実施の形態の構成によれば、ネジボス90の凸部91にスラストプレート60の外周に形成された凹部62、押圧部材50の切り欠き53を嵌入させて回動規制するとともに、プーリ12、22の外周に形成された大径部13,23の回動軸周り方向Cの各端部13a、23a、13b、23bを当接させて回動範囲を規定する構成のため、押圧部材50の上述したような誤組みを防止できる他、誤差は1つの凸部91のみ考慮すれば良いため、回動規制、回動範囲規定の精度が高くなり、さらには、Oリング35,36の潰れを妨げてしまうことがないため、プーリ12、22への制動力の強度が調整しやすくなる。
【0112】
尚、その他の効果は、従来と同様である。
【0113】
また、上述した本実施の形態においては、挿入機器は、内視鏡1を例に挙げて示したが、これに限らず、処置具等の他の挿入機器の操作部にも適用可能であることは勿論である。
【0114】
本出願は、2017年12月19日に日本国に出願された特願2017-242987号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものである。