(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリエステル薄膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20220330BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220330BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20220330BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20220330BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220330BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20220330BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/20 Z
B29C55/12
B29C48/21
C08L67/00
C08K3/00
(21)【出願番号】P 2020102829
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2020-06-15
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廖▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】楊文政
(72)【発明者】
【氏名】陳豪昇
(72)【発明者】
【氏名】蕭嘉▲彦▼
【審査官】小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-153228(JP,A)
【文献】特開2002-241516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 55/12
B29C 48/21
C08L 67/00
C08K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂基層と、前記ポリエステル樹脂基層の一方の面に形成される艶消し層と、を含む二軸延伸ポリエステル薄膜であって、前記ポリエステル樹脂基層の総重量を100wt%とした場合、前記ポリエステル樹脂基層は、
(1)固有粘度(Intrinsic Viscosity)が0.5dL/g~0.8dL/gであるポリエステル樹脂基層材料50wt%~95wt%と、
(2)前記ポリエステル樹脂基層材料に分散され、固有粘度が0.9dL/g~1.1dL/gである高粘度ポリエステル樹脂材料0.01wt%~5wt%と、
を含み、
前記艶消し層の総重量を100wt%とした場合、前記艶消し層は、
(1)固有粘度が0.5dL/g~0.8dL/gであるポリエステル樹脂マトリックス材料50wt%~95wt%と、
(2)前記ポリエステル樹脂マトリックス材料に分散され、平均粒子径が0.15μm~10μmであ
るフィラー粒子0.3wt%~40wt%と、
を含むことを特徴とする、二軸延伸ポリエステル薄膜。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂基層はフィラー粒子を含まず、前記艶消し層は高粘度ポリエステル樹脂材料を含まない、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステル薄膜。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂基層は1μm~100μmの厚さを有し、前記艶消し層は1μm~100μmの厚さを有する、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステル薄膜。
【請求項4】
前記フィラー粒子はさらに、
第1の平均粒子径を有す
る第1のフィラー粒子と、
前記第1のフィラー粒子と互いにブレンドされ、第2の平均粒子径を有す
る第2のフィラー粒子と、
に区別され、
前記第1の平均粒子径は0.15μm~2μmであり、前記第2の平均粒子径は2μm~10μmである、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステル薄膜。
【請求項5】
前記第1の平均粒子径と前記第2の平均粒子径との差の絶対値は1μm以上である、請求項4に記載の二軸延伸ポリエステル薄膜。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂基層から離れた、前記艶消し層における一方の面は、150nm~950nmの平均粗さ(Ra)を有し、
前記二軸延伸ポリエステル薄膜は、全体において、80%以上の透明度、60%以下の光沢度及び4%以上のヘイズ度を有する、請求項4に記載の二軸延伸ポリエステル薄膜。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂基層材料、前記ポリエステル樹脂マトリックス材料及び前記高粘度ポリエステル樹脂材料は、いずれも二塩基酸と、二価アルコールとの縮合重合反応によって得られた高分子重合体であり、
前記第1のフィラー粒子の材料及
び前記第2のフィラー粒子の材料はそれぞれ、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化セリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンブラック、タルク、カオリン及び架橋重合体の粒子から選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載の二軸延伸ポリエステル薄膜。
【請求項8】
前記艶消し層の外面を艶消し面と定義すると共に、前記ポリエステル樹脂基層の外面を平坦面と定義し、
前記二軸延伸ポリエステル薄膜において、艶消し面の粗さ/平坦面の粗さの比の値は1.3以上であり、
前記二軸延伸ポリエステル薄膜において、艶消し面の光沢度/平坦面の光沢度の比の値は0.9以下である、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステル薄膜。
【請求項9】
ポリエステル樹脂基層原料及び高粘度ポリエステル樹脂原料を第1の押出機に仕込むステップと、
ポリエステル樹脂マトリックス原料及
びフィラー粒子を第2の押出機に仕込むステップと、
前記第1の押出機に仕込まれた前記ポリエステル樹脂基層原料及び前記高粘度ポリエステル樹脂原料と、前記第2の押出機に仕込まれた前記ポリエステル樹脂マトリックス原料及
び前記フィラー粒子とを共押出法によって共押出し、それによって、前記ポリエステル樹脂基層原料及び前記高粘度ポリエステル樹脂原料をポリエステル樹脂基層に形成すると共に、前記ポリエステル樹脂マトリックス原料及
び前記フィラー粒子を前記ポリエステル樹脂基層の一方の面に位置する艶消し層に形成するステップと、
前記ポリエステル樹脂基層及び前記艶消し層が共に構成した未延伸のポリエステル薄膜に二軸延伸を行い、それによって、二軸延伸ポリエステル薄膜を形成するステップと、
を含む二軸延伸ポリエステル薄膜の製造方法であって、
前記ポリエステル樹脂基層の総重量を100wt%とした場合、前記ポリエステル樹脂基層原料の含有量は50wt%~95wt%であり、前記高粘度ポリエステル樹脂原料の含有量は0.01wt%~5wt%であり、
前記ポリエステル樹脂基層原料の固有粘度は0.5dL/g~0.8dL/gであり、前記高粘度ポリエステル樹脂原料の固有粘度は0.9dL/g~1.1dL/gであり、
前記艶消し層の総重量を100wt%とした場合、前記ポリエステル樹脂マトリックス原料の含有量は50wt%~95wt%であり
、前記フィラー粒子の含有量は0.3wt%~40wt%であり、
前記ポリエステル樹脂マトリックス原料の固有粘度は0.5dL/g~0.8dL/gであり
、前記フィラー粒子の平均粒子径は0.15μm~10μmであることを特徴とする、二軸延伸ポリエステル薄膜の製造方法。
【請求項10】
前記フィラー粒子はさらに、
第1の平均粒子径を有す
る第1のフィラー粒子と、
前記第1のフィラー粒子とブレンドされ、第2の平均粒子径を有す
る第2のフィラー粒子と
に区別され、
前記第1の平均粒子径は0.15μm~2μmであり、前記第2の平均粒子径は2μm~10μmであり、前記第1の平均粒子径と前記第2の平均粒子径との差の絶対値は1μm以上である、請求項9に記載の二軸延伸ポリエステル薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記第1のフィラー粒子
と前記第2のフィラー粒子とが1:9~9:1の重量比で互いに混合され、それによって
、前記第1のフィラー粒子
と前記第2のフィラー粒子との混合物の、動的光散乱法による粒子径分布チャートは単峰型のピーク分布を呈する、請求項10に記載の二軸延伸ポリエステル薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂基層から離れた、前記艶消し層における一方の面は150nm~950nmの平均粗さ(Ra)を有し、
前記二軸延伸ポリエステル薄膜は、全体において、80%以上の透明度、60%以下の
光沢度及び4%以上のヘイズ度を有する、請求項10に記載の二軸延伸ポリエステル薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル薄膜に関し、特に、二軸延伸ポリエステル薄膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般のプラスチック薄膜製造方法である流延膜(Casting Film)またはブローフィルム(Blown Film)と比較して、二軸延伸フィルム(Biaxially Oriented Film)製造方法によって製造した二軸延伸ポリエステル薄膜(BOPET Film)は、性能が良好で、商品に対する応用が幅広い。そのため、二軸延伸フィルムは今のポリエステル薄膜の主要加工方法である。しかし、既存の二軸延伸ポリエステル薄膜は、物理化学的特性(例えば、ヘイズ度及び透明度)において、一部の商品応用では依然として多くの欠陥がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、熱可塑性プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレン)から二軸配向の低光沢度表面の薄膜を製造する方法が開示された。当該薄膜は、粒子径が0.3~20μmであり、濃度が1~25wt%である圧縮不可の粒子(例えば、炭酸カルシウム又は二酸化ケイ素)を含む。しかし、当該薄膜のヘイズ度は多くの商品応用では不足する。
【0004】
特許文献2では、1つの層又は複数の層を有する乳状ポリエステル薄膜を製造する方法が開示された。当該方法では、線状ポリエステル粒子から製造された、エチレン又はプロピレンのホモポリマー又はコポリマーを3~27wt%含む混合物を調製し、当該混合物を薄膜に押出して焼入れを行い、そして、焼入れされた薄膜は相互に垂直な方向に延伸することによって二軸配向される。そして当該薄膜をヒートセットする。当該方法では、上記薄膜を製造する時に切り落とされた廃棄材料(当該廃棄材料は、基本的には、ポリエステルとエチレンコポリマー又はプロピレンコポリマーとの混合物である)で構成された薄膜が黄変するため、当該廃棄材料は再生利用できない。また、廃棄材料で製造された黄色い薄膜が市場では受付けられないため、当該方法は経済的ではない。
【0005】
特許文献3では、透明のベース層(B)と、前記透明のベース層の少なくとも一方の側に積層された、艶消し外観を有する層(A)とを有する二軸配向の多層ポリエステル薄膜が開示された。当該艶消し外観を有する層は、基本的には、ポリエチレンテレフタレートを含む共重合ポリエステル及び平均直径が0.3~20μmである惰性無機粒子からなる。艶消し外観を有する層の総重量を100wt%とした場合、当該惰性無機粒子の濃度は3~40wt%である。当該薄膜は、ヘイズ度が高く(光沢度が15以下である)、透明度も60%よりも大きいが、一部の応用ではやはり十分ではない。
【0006】
そこで、本発明の発明者は、上記の欠点を改良すべく、鋭意に研究して本発明を開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第3154461号明細書
【文献】独国特許出願公開第2353347号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0053498号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来技術を改善すべく、二軸延伸ポリエステル薄膜及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる二軸延伸ポリエステル薄膜は、ポリエステル樹脂基層と、前記ポリエステル樹脂基層の一方の面に形成される艶消し層と、を含む。前記ポリエステル樹脂基層の総重量を100wt%とした場合、前記ポリエステル樹脂基層は、(1)固有粘度(Intrinsic Viscosity)が0.5dL/g~0.8dL/gであるポリエステル樹脂基層材料50wt%~95wt%と、(2)前記ポリエステル樹脂基層材料に分散され、固有粘度が0.9dL/g~1.1dL/gである高粘度ポリエステル樹脂材料0.01wt%~5wt%と、を含む。前記艶消し層の総重量を100wt%とした場合、前記艶消し層は、(1)固有粘度が0.5dL/g~0.8dL/gであるポリエステル樹脂マトリックス材料50wt%~95wt%と、(2)前記ポリエステル樹脂マトリックス材料に分散され、平均粒子径が0.15μm~10μmである複数のフィラー粒子0.3wt%~40wt%と、を含む。
【0010】
本発明にかかる二軸延伸ポリエステル薄膜の製造方法は、ポリエステル樹脂基層原料及び高粘度ポリエステル樹脂原料を第1の押出機に仕込むステップと、ポリエステル樹脂マトリックス原料及び複数のフィラー粒子を第2の押出機に仕込むステップと、前記第1の押出機に仕込まれた前記ポリエステル樹脂基層原料及び前記高粘度ポリエステル樹脂原料と、前記第2の押出機に仕込まれた前記ポリエステル樹脂マトリックス原料及び複数の前記フィラー粒子とを共押出法によって共押出し、それによって、前記ポリエステル樹脂基層原料及び前記高粘度ポリエステル樹脂原料をポリエステル樹脂基層に形成すると共に、前記ポリエステル樹脂マトリックス原料及び複数の前記フィラー粒子を前記ポリエステル樹脂基層の一方の面に位置する艶消し層に形成するステップと、前記ポリエステル樹脂基層及び前記艶消し層が共に構成した未延伸のポリエステル薄膜に二軸延伸を行い、それによって、二軸延伸ポリエステル薄膜を形成するステップと、を含む。前記ポリエステル樹脂基層の総重量を100wt%とした場合、前記ポリエステル樹脂基層原料の含有量は50wt%~95wt%であり、前記高粘度ポリエステル樹脂原料の含有量は0.01wt%~5wt%である。前記ポリエステル樹脂基層原料の固有粘度は0.5dL/g~0.8dL/gであり、前記高粘度ポリエステル樹脂原料の固有粘度は0.9dL/g~1.1dL/gである。前記艶消し層の総重量を100wt%とした場合、前記ポリエステル樹脂マトリックス原料の含有量は50wt%~95wt%であり、複数の前記フィラー粒子の含有量は0.3wt%~40wt%である。前記ポリエステル樹脂マトリックス原料の固有粘度は0.5dL/g~0.8dL/gであり、複数の前記フィラー粒子の平均粒子径は0.15μm~10μmである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有利な効果を以下に説明する。本発明にかかる二軸延伸ポリエステル薄膜は、「ポリエステル樹脂基層の一方の面に形成される艶消し層」、「前記ポリエステル樹脂基層の総重量を100wt%とした場合、前記ポリエステル樹脂基層は、(1)固有粘度(Intrinsic Viscosity)が0.5dL/g~0.8dL/gであるポリエステル樹脂基層材料50wt%~95wt%と、(2)前記ポリエステル樹脂基層材料に分散され、固有粘度が0.9dL/g~1.1dL/gである高粘度ポリエステル樹脂材料0.01wt%~5wt%と、を含む」及び「前記艶消し層の総重量を100wt%とした場合、前記艶消し層は、(1)固有粘度が0.5dL/g~0.8dL/gであるポリエステル樹脂マトリックス材料50wt%~95wt%と、(2)前記ポリエステル樹脂マトリックス材料に分散され、平均粒子径が0.15μm~10μmである複数のフィラー粒子0.3wt%~40wt%と、を含む」といった技術的手段によって、二軸延伸ポリエステル薄膜における一方の面に艶消しの効果が付与されると共に、ポリエステル樹脂基層と艶消し層とは良好な結合力を有する。また、二軸延伸ポリエステル薄膜は全体において良好な透明度が依然として維持される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態における二軸延伸ポリエステル薄膜の断面を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態における二軸延伸ポリエステル薄膜の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態における共押出機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【0014】
下記より、具体的な実施形態により本発明が開示する「二軸延伸ポリエステル薄膜及びその製造方法」を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。
【0015】
なお、本明細書において「第1」、「第2」、「第3」等の用語で各種の部品又は信号を説明する可能性があるが、これらの部品又は信号はこれらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は、主として一つの部品と別の部品、又は一つの信号と別の信号を区分するためのものである。また、本明細書に用いられる「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
[二軸延伸ポリエステル薄膜]
【0016】
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、二軸延伸ポリエステル薄膜100が開示される。上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、ポリエステル樹脂基層1と、上記ポリエステル樹脂基層1の一方の面に形成される艶消し層2とを含む。上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、ポリエステル樹脂基層1及び艶消し層2に対し、順次に、共押出(Co-Extrusion)及び二軸延伸(Biaxial-Stretching)を行うことによって形成される。
【0017】
上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、ポリエステル樹脂基層1及び艶消し層2の成分及び成分比例を調整することによって、片面に艶消し効果を付与することができる。即ち、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、一方の面に艶消し効果が付与されると共に、全体において良好な透明度が維持される。
【0018】
上述した目的を実現させるために、本実施形態において、上記ポリエステル樹脂基層1の厚さT1は1μm~100μmであり、好ましくは10μm~100μmである。
【0019】
さらに、上記ポリエステル樹脂基層1は、ポリエステル樹脂基層材料11と、高粘度ポリエステル樹脂材料12と、を含む。また、上記高粘度ポリエステル樹脂材料12はポリエステル樹脂基層材料11に分散される。
【0020】
なかでも、上記ポリエステル樹脂基層材料11は、二塩基酸と、二価アルコール又はその誘導体との縮合重合反応によって得られた高分子重合体である。即ち、上記ポリエステル樹脂基層1のマトリックス材料は主にポリエステル材料である。当該ポリエステル材料は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)であるが、本発明はこれに制限されない。それによって、前記ポリエステル樹脂基層1は、二軸延伸ポリエステル薄膜100の全体に良好な透明度を与えられると共に、上記艶消し層2に対し良好な支持性を提供することができる。なお、本実施形態におけるポリエステル樹脂基層1は、好ましくは、フィラー粒子を含まない。
【0021】
なお、上記のポリエステル材料を形成する原料である二塩基酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、アントラセン-2,6-ジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、ジエチル3,3-スクシネート、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、及びドデカン二酸から選ばれる少なくとも1種である。なお、上記のポリエステル材料を形成する原料である二価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン又はビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンから選ばれる少なくとも1種である。
【0022】
基層の厚さの面では、上記ポリエステル樹脂基層1の厚さT1が上記厚さ範囲の上限値よりも高いと、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100の透明度は悪くなる。一方、上記ポリエステル樹脂基層1の厚さT1が上記厚さ範囲の下限値よりも低いと、上記ポリエステル樹脂基層1は上記艶消し層2に良好な支持性を提供できない。
【0023】
各成分の含有量の面では、上記艶消し層の総重量を100wt%とした場合、上記ポリエステル樹脂基層材料11の含有量は50wt%~95wt%であり、上記高粘度ポリエステル樹脂材料12の含有量は0.01wt%~5wt%である。
【0024】
各成分の物理化学的特性の面では、上記ポリエステル樹脂基層材料11の固有粘度(Intrinsic Viscosity、略してIV)は0.5dL/g~0.8dL/gである。上記高粘度ポリエステル樹脂材料12は上記ポリエステル樹脂基層材料11と異なり、固有粘度が0.9dL/g~1.1dL/gである。そのため、上記ポリエステル樹脂基層材料11は中間値の粘度を有する。
【0025】
上述したようにポリエステル樹脂基層材料11と高粘度ポリエステル樹脂材料12の成分比例及び固有粘度を調整することにより、前記ポリエステル樹脂基層1と艶消し層2との粘度差が減少し、それによって、共押出の時にポリエステル樹脂基層1及び艶消し層2に発生する残留応力が減少すると共に、ポリエステル樹脂基層と艶消し層2との結合力が改善される。また、前記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、全体において、透明度が一定の水準に維持される。
【0026】
しかし、上記高粘度ポリエステル樹脂材料12の含有量が上記含有量範囲の上限値よりも高い(例えば、5wt%よりも高い)と、上記ポリエステル樹脂基層1のヘイズ度は高過ぎる。また、上記高粘度ポリエステル樹脂12はポリエステル樹脂基層材料11に均一に分散できなくなる(または、ポリエステル樹脂基層1の成膜時に問題が生じる可能性がある)。それによって、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、全体において、透明度が悪くなる。一方、上記高粘度ポリエステル樹脂材料12の含有量が上記含有量範囲の下限値よりも低い(例えば、0.01wt%よりも低い)と、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、全体において必要な物理化学的特性(例えば、ヘイズ度)に達することができない。
【0027】
なお、上記ポリエステル樹脂基層1において、上記高粘度ポリエステル樹脂材料12も二塩基酸と、二価アルコール又はその誘導体との縮合重合反応によって得られた高分子重合体である。即ち、上記高粘度ポリエステル樹脂材料12もポリエステル材料である。
【0028】
上記の目的を実現させるために、本実施形態において、上記艶消し層2の厚さT2は1μm~100μmであり、好ましくは5μm~85μmである。
【0029】
上記艶消し層2の厚さT2が上記厚さ範囲の上限値よりも高いと、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100の透明度は悪くなる。一方、上記艶消し層2の厚さT2が上記厚さ範囲の下限値よりも低いと、上記艶消し層2のヘイズ度は低過ぎる。そうなると、上記艶消し層2は必要な物理化学的特性に達することができない。
【0030】
さらに説明すると、上記艶消し層2は、ポリエステル樹脂マトリックス材料21及び複数のフィラー粒子22を含む。なかでも、複数の前記フィラー粒子22は、上記ポリエステル樹脂マトリックス材料21に均一に分散される。
【0031】
各成分の含有量の面では、上記艶消し層2の総重量を100wt%とした場合、上記ポリエステル樹脂マトリックス材料21の含有量は50wt%~95wt%であり、複数の上記フィラー粒子22の含有量は0.3wt%~40wt%であり、好ましくは0.3wt%~25wt%である。
【0032】
各成分の物理化学的特性の面では、上記ポリエステル樹脂マトリックス材料21の固有粘度(Intrinsic Viscosity、略してIV)は0.5dL/g~0.8dL/gである。すなわち、上記ポリエステル樹脂マトリックス材料21も中間値の粘度を有する。
【0033】
なお、上記艶消し層2において、上記ポリエステル樹脂マトリックス材料21も、二塩基酸と、二価アルコール又はその誘導体との縮合重合反応によって得られた高分子重合体である。即ち、上記ポリエステル樹脂マトリックス材料21も、ポリエステル材料である。
【0034】
本実施形態の二軸延伸ポリエステル薄膜100における、上記ポリエステル樹脂基層1及び艶消し層2に用いられるマトリックス材料はいずれもポリエステル材料であるため、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は良好な生産性及び加工性を有する。また、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100が生産プロセスにおいて切り落とされる廃棄材料も、生産プロセスにおいて再生材料として使用することができる。当該再生材料から製造される薄膜は黄変しない。
【0035】
さらに、本実施形態において、複数の上記フィラー粒子22の平均粒子径は0.15μm~10μmであり、複数の上記フィラー粒子の含有量は、上記艶消し層の総重量を100wt%とした場合、0.3wt%~40wt%である。
【0036】
すなわち、上記艶消し層2に複数のフィラー粒子22が導入されることで、光線は上記艶消し層2を透過する際に、艶消し層2で散乱する。それによって、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は片面に艶消しの効果を呈すると共に、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、全体において、良好な透明度が依然として維持される。
【0037】
即ち、本実施形態では、艶消し層2に複数のフィラー粒子22を導入し、かつ艶消し層2の各成分の値(含有量範囲及び物理化学的特性を含む)を調整することによって、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、片面に艶消しの効果が付与されると共に、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、全体において、良好な透明度は依然として維持される。
【0038】
使用量の面では、複数の上記フィラー粒子22の含有量が上記含有量範囲の上限値よりも高い(例えば、40wt%よりも高い)と、上記艶消し層2のヘイズ度は高過ぎる。それと共に、複数の上記フィラー粒子22はポリエステル樹脂マトリックス材料21に均一に分散できなくなる(または、複数の上記フィラー粒子22が塊状に固まる可能性がある)。そうなると、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、全体において、透明度が悪くなる。一方、複数の上記フィラー粒子22の含有量が上記含有量範囲の下限値よりも低い(例えば、0.3wt%よりも低い)と、上記艶消し層2のヘイズ度は不足する。
【0039】
また、平均粒子径の面では、複数の上記フィラー粒子22の平均粒子径が上記平均粒子径の上限値よりも高いと、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、全体において、透明度が悪くなる。一方、複数の上記フィラー粒子22の平均粒子径が上記平均粒子径の下限値よりも低いと、上記艶消し層2のヘイズ度及び表面粗さは低過ぎる。
【0040】
さらに、本発明の一実施形態では、複数の上記フィラー粒子22は、平均粒子径の違いにより複数の第1のフィラー粒子221と複数の第2のフィラー粒子222とに区別される。なかでも、複数の上記第1のフィラー粒子221と複数の上記第2のフィラー粒子222とは互いにブレンドされ、複数の上記第1のフィラー粒子221は第1の平均粒子径を有し、複数の上記第2のフィラー粒子222は第2の平均粒子径を有する。
【0041】
なかでも、複数の上記第1のフィラー粒子221の第1の平均粒子径は0.15μm~2μmであり、複数の上記第2のフィラー粒子222の第2の平均粒子径は2μm~10μmである。なお、複数の上記第1のフィラー粒子221の第1の平均粒子径と複数の上記第2のフィラー粒子222の第2の平均粒子径との差の絶対値は1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。
【0042】
なかでも、本発明の一実施形態では、上記複数の第1のフィラー粒子221及び複数の第2のフィラー粒子222の材料は、いずれも球状又は無定形の粒子状の二酸化ケイ素であるが、本発明はこれに制限されない。上記複数の第1のフィラー粒子221及び複数の第2のフィラー粒子222の材料はそれぞれ、例えば、球状又は無定形の粒子状の二酸化チタン、二酸化セリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンブラック、タルク、カオリン及び架橋重合体の粒子の中の少なくとも1種である。
【0043】
なお、本発明の一実施形態において、複数の上記第1のフィラー粒子221と複数の上記第2のフィラー粒子222とが1:9~9:1の重量比で互いに混合(ブレンドということもある)される。そのため、複数の上記第1のフィラー粒子221と複数の上記第2のフィラー粒子222との混合物の、動的光散乱法(Laser Scattering)による粒子径分布チャート(Particle size distribution chart)は、単峰型のピーク分布を呈する。それによって、上記艶消し層2の表面粗さの均一性が効果的に向上すると共に、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、低光沢の艶消し面と高透明度の効果を同時に有する。
【0044】
上述した配置によれば、本実施形態の艶消し層2における、ポリエステル樹脂基層1から離れる一方の面23(即ち、艶消し層2の外面23)は、150nm~950nmの平均粗さ(Ra)を有し、本実施形態の二軸延伸ポリエステル薄膜100は、全体において、80%以上の透明度、60%以下(好ましくは30~55%)の艶消し面光沢度及び4%以上(好ましくは50~80%である)のヘイズ度を有する。
【0045】
本実施形態の二軸延伸ポリエステル薄膜100は、上述した物理化学的特性を有するため、離型フィルム、遮断フィルム、又は特殊包装の用途に特に好適である。
【0046】
なかでも、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100を離型フィルムとして使用する場合、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100の艶消し層2に離型剤を塗布し、各種の樹脂(例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、塩素化ポリプロピレン樹脂(CPP))を積層する時のベースとして使用してもよい。
【0047】
なかでも、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100を遮断フィルムとして使用する場合、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100の艶消し層2に無機材料を蒸着し、水分およびガスに対する遮断効果を改善してもよい。
【0048】
なかでも、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は片面艶消し及び高透明度の特性を有するため、特殊包装としての用途に特に好適である。
【0049】
本発明の一実施形態では、前記ポリエステル樹脂基層1はフィラー粒子を含まず、前記艶消し層2は高粘度ポリエステル樹脂材料を含まない。即ち、本実施形態では、前記ポリエステル樹脂基層1がフィラー粒子を含む可能性を排除し、前記艶消し層2が高粘度ポリエステル樹脂材料を含む可能性を排除した。
[二軸延伸ポリエステル薄膜の製造方法]
【0050】
以上に、本実施形態の二軸延伸ポリエステル薄膜100を説明した。以下に、二軸延伸ポリエステル薄膜100の製造方法を本発明の実施形態に基づいて説明する。
【0051】
図3及び
図4に示すように、本発明の実施形態では、二軸延伸ポリエステル薄膜100の製造方法が開示される。上記二軸延伸ポリエステル薄膜100の製造方法は、工程S110と、工程S120と、工程S130と、工程S140とを含む。本実施形態における各工程の順序または実際の操作内容は必要に応じて調整してもよく、本実施形態に制限されない。
【0052】
工程S110では、ポリエステル樹脂基層原料11’及び高粘度ポリエステル樹脂原料12’を第1の押出機E1に仕込み、高温(例えば、260℃~300℃の高温)で溶融させる。なかでも、上記ポリエステル樹脂基層原料11’の固有粘度は0.5dL/g~0.8dL/gである。また、高粘度ポリエステル樹脂原料12’の固有粘度は0.9dL/g~1.1dL/gである。即ち、上記ポリエステル樹脂基層原料11’は中間値の粘度を有するポリエステル樹脂である。
【0053】
工程S120では、ポリエステル樹脂マトリックス原料21’及び複数のフィラー粒子22’を第2の押出機E2に仕込み、ポリエステル樹脂マトリックス原料21’及び複数のフィラー粒子22’を高温(例えば、260℃~300℃の高温)で溶融させて互いに混錬する。上記高粘度ポリエステル樹脂原料21’の固有粘度は0.5dL/g~0.8dL/gである。即ち、上記ポリエステル樹脂マトリックス原料21’は、中間値の粘度を有するポリエステル樹脂である。さらに、複数のフィラー粒子22’の平均粒子径は0.15μm~10μmである。
【0054】
工程S130では、上記第1の押出機E1に仕込まれたポリエステル樹脂基層原料11’ 及び高粘度ポリエステル樹脂原料12’と、上記第2の押出機E2に仕込まれたポリエステル樹脂マトリックス原料21’及び複数のフィラー粒子22’とを共押出(Co-Extrusion)法によって共押出し、冷却されたドラムE3(例えば、20℃~50℃に冷却されたドラム)で急冷することによって、上記ポリエステル樹脂基層原料11’ 及び高粘度ポリエステル樹脂原料12’をポリエステル樹脂基層1に形成すると共に、上記ポリエステル樹脂マトリックス原料21’及び複数のフィラー粒子22’を上記ポリエステル樹脂基層1の一方の面に位置する艶消し層2に形成する。上記ポリエステル樹脂基層1及び艶消し層2が共に未延伸のポリエステル薄膜100’を構成する。
【0055】
工程S140では、上記ポリエステル樹脂基層1及び艶消し層2が共に構成した未延伸のポリエステル薄膜100’に二軸延伸を行う。それによって、二層構造を有する二軸延伸ポリエステル薄膜100を形成する。
【0056】
上記二軸延伸は例えば、縦一軸延伸法、横一軸延伸法、縦軸-横軸逐次二軸延伸法、又は縦軸-横軸同時二軸延伸法で行ってもよいが、本発明はこれに制限されない。さらに、上記二軸延伸は例えば、50℃~150℃の延伸温度に未延伸のポリエステル薄膜100’を予熱し、異なる延伸比例に沿って、未延伸のポリエステル薄膜100’を幅方向(又は横方向、TDということもある)に2.0倍~5.0倍、好ましくは3.0倍~4.0倍で延伸加工し、さらに未延伸のポリエステル薄膜100’を長尺方向(又は縦方向、MDということもある)に1.0倍~3.0倍、好ましくは1.0倍~2.5倍で延伸加工することによって実行してもよい。
【0057】
なかでも、上記ポリエステル樹脂基層1の総重量を100wt%とした場合、上記ポリエステル樹脂基層原料11’の含有量は50wt%~95wt%であり、上記高粘度ポリエステル樹脂原料12の含有量は0.01wt%~5wt%である。さらに、艶消し層2の総重量を100wt%とした場合、上記ポリエステル樹脂マトリックス原料21’ の含有量は50wt%~95wt%であり、複数の上記フィラー粒子22’の含有量は0.3wt%~40wt%である。
【0058】
上記の製造方法によって製造される二軸延伸ポリエステル薄膜100において、艶消し層2におけるポリエステル樹脂基層1から離れる一方の面24は150nm~950nmの平均粗さ(Ra)を有する。また、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は、全体において、80%以上の透明度、60%以下(好ましくは20~40%)の光沢度及び4%以上のヘイズ度を有する。
[試験によるデータ測定]
【0059】
以下に、実施例1~4及び比較例1~2に基づいて本発明の内容を詳しく説明するが、以下に示す実施例は本発明を理解するためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されない。
【0060】
実施例1~4及び比較例1~2における二軸延伸ポリエステル薄膜は、上記の工程S110~S140に従って製造してもよい。各成分の比例及び工程の設定値はまとめて表1に示す。
【0061】
そして、実施例1~4及び比較例1~2で製造された二軸延伸ポリエステル薄膜の物理化学的特性を得るために測定を行った(例えば、薄膜表面粗さや、ポリエステル薄膜全体の透明度、光沢度及びヘイズ度を測定した)。測定方法は以下に説明し、測定結果はまとめて表1に示す。
【0062】
粗さ測定:JIS B0601、B0651に準拠し、三次元表面粗さ計(小坂研究所製、製品名:SURF CORDER SE-3CK)を使用して、触針前端R 2μm、走査間隔2μm、走査長1mm、走査本数100本、カットオフ(cut-off)0.25mm、倍率5,000倍の条件で、実施例1~4と比較例1~2における二軸延伸ポリエステル薄膜の表面の中心線平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)を測定した。下表に示す粗さは中心線平均粗さ(Ra)である。
【0063】
透明度及びヘイズ度測定:JIS K7705に準拠し、ヘイズメーター(東京電色(有)製、仕様:TC-HIII)を使用して、実施例1~4及び比較例1~2における二軸延伸ポリエステル薄膜の透明度(光透過率)及びヘイズ度を測定した。
【0064】
光沢度測定:JIS Z8741に準拠し、グロスメーター(日本電色工業株式会社製、仕様:VGS-SENSOR)を使用して、実施例1~4及び比較例1~2における二軸延伸ポリエステル薄膜の光沢度(G60)を測定した。測定条件としては、入射角と受光角ともに60°(N=5)で測定し、平均値を利用した。
【0065】
【0066】
表1における各成分の比例及び工程の設定値により、実施例1~4における、片面が艶消し面であるポリエステル薄膜は、いずれも80%以上の透明度及び60%以下の艶消し面光沢度を有する。なお、艶消し層が比較的に厚い場合、艶消し層のフィラー粒子含有量が比較的に低くても同様の効果を得られる(例えば、実施例3では、艶消し層の厚さは20μmであり、艶消し層のフィラー粒子の合計含有量は20wt%である。実施例4では、艶消し層の厚さは80μmであり、艶消し層のフィラー粒子の合計含有量は1.2wt%である)。
【0067】
また、実施例1~4のポリエステル薄膜の艶消し面粗さ/平坦面粗さの比の値は1.3以上であり、当該比の値は約1.3~3.5である。また、実施例1~4のポリエステル薄膜の艶消し面光沢度/平坦面光沢度の比の値は0.9以下であり、当該比の値は約0.5~0.9である。上述した「艶消し面」は艶消し層の外面を指し、「平坦面」はポリエステル樹脂基層の外面を指す。
【0068】
比較例1~2におけるポリエステル薄膜は艶消し層を有しない。比較例におけるポリエステル薄膜は、ポリエステル樹脂基層にフィラー粒子が添加されているが、フィラー粒子の含有量は0.3wt%以下である。そのため、比較例におけるポリエステル薄膜は透明度が80%よりも大きいが、光沢度及びヘイズ度がいずれも低く、本発明における艶消し面の効果を有しない。
[実施形態による有利な効果]
【0069】
本発明の有利な効果を以下に説明する。本発明にかかる二軸延伸ポリエステル薄膜100は、「ポリエステル樹脂基層1の一方の面に形成される艶消し層2」、「前記ポリエステル樹脂基層1の総重量を100wt%とした場合、前記ポリエステル樹脂基層1は、(1)固有粘度(Intrinsic Viscosity)が0.5dL/g~0.8dL/gであるポリエステル樹脂基層材料11 50wt%~95wt%と、(2)前記ポリエステル樹脂基層材料11に分散され、固有粘度が0.9dL/g~1.1dL/gである高粘度ポリエステル樹脂材料12 0.01wt%~5wt%と、を含む」及び「前記艶消し層2の総重量を100wt%とした場合、前記艶消し層2は、(1)固有粘度が0.5dL/g~0.8dL/gであるポリエステル樹脂マトリックス材料21 50wt%~95wt%と、(2)前記ポリエステル樹脂マトリックス材料21に分散され、平均粒子径が0.15μm~10μmである複数のフィラー粒子22 0.3wt%~40wt%と、を含む」といった技術的手段によって、二軸延伸ポリエステル薄膜100における一方の面に艶消しの効果が付与されると共に、ポリエステル樹脂基層1と艶消し層2とは良好な結合力を有する。また、二軸延伸ポリエステル薄膜100は全体において良好な透明度が依然として維持される。
【0070】
また、本発明の実施形態における、ポリエステル樹脂基層材料11及び高粘度ポリエステル樹脂材料12の成分比例及び固有粘度の選択により、前記ポリエステル樹脂基層1と艶消し層2との粘度差が減少し、それによって、共押出の時にポリエステル樹脂基層1及び艶消し層2に発生する残留応力は減少すると共に、ポリエステル樹脂基層1と艶消し層2との結合力が良好になる。また、前記二軸延伸ポリエステル薄膜100全体の透明度が一定の水準に維持される。
【0071】
さらに、本発明の実施形態の二軸延伸ポリエステル薄膜100において、上記ポリエステル樹脂基層1及び上記艶消し層2に用いられるマトリックス材料はいずれもポリエステル材料である。そのため、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100は良好な生産性及び加工性を有する。また、上記二軸延伸ポリエステル薄膜100が生産プロセスで切り落とされた廃棄材料も、生産プロセスにおいて再生材料として使用することができる。当該再生材料から製造される薄膜は黄変しない。
【0072】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。そのため、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0073】
100:二軸延伸ポリエステル薄膜
100’:未延伸のポリエステル薄膜
1:ポリエステル樹脂基層
11:ポリエステル樹脂基層材料
11’:ポリエステル樹脂基層原料
12:高粘度ポリエステル樹脂材料
12’:高粘度ポリエステル樹脂原料
2:艶消し層
21:ポリエステル樹脂マトリックス材料
21’:ポリエステル樹脂マトリックス原料
22、22’:フィラー粒子
221:第1のフィラー粒子
222:第2のフィラー粒子
23:表面
T1、T2:厚さ
E1:第1の押出機
E2:第2の押出機
E3:ドラム