(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】取水路用エアレーション装置及び取水路点検方法
(51)【国際特許分類】
E02B 9/04 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
E02B9/04 Z
(21)【出願番号】P 2020125354
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 政治
(72)【発明者】
【氏名】三上 純
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-024312(JP,A)
【文献】特開2010-189923(JP,A)
【文献】特開2011-202375(JP,A)
【文献】特開2016-141969(JP,A)
【文献】特開平09-074938(JP,A)
【文献】実開平03-018230(JP,U)
【文献】実開平01-176131(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水口の下流側に設けられた取水路内の水中に空気を供給する取水路用エアレーション装置であって、
陸上から前記取水路内に延び
、前記取水路内において前記取水路の長手方向に延びるように設置され、一端から他端に向けて空気を送気する送気ホースと、
前記取水路内に設置され、互いに離れた位置で前記送気ホースに接続され、前記送気ホースから供給された空気を
前記取水路内の互いに異なる位置で水中に放出する複数の散気ホースと、
を備え
、
各散気ホースは、前記送気ホースの長手方向に間隔を空けて前記送気ホースに接続されている、
取水路用エアレーション装置。
【請求項2】
前記送気ホースは、互いに直列に連結された複数の送気可能な送気ユニットを備え、
前記取水路用エアレーション装置は、隣り合う2つの前記送気ユニットと1つの前記散気ホースとを互いに着脱自在に連結する連結具をさらに備える、
請求項
1に記載の取水路用エアレーション装置。
【請求項3】
前記連結具は、
一端から他端に向けて空気を送気する筒状の本体部と、
前記本体部の両端部に設けられ、互いに隣り合う前記送気ユニットを着脱自在に接続する一対の送気ホース接続部と、
前記本体部から径方向に延び、途中で屈曲又は湾曲して前記本体部の長手方向に延びるL字管と、
前記L字管の端部に設けられ、前記散気ホースを着脱自在に接続する散気ホース接続部と、
を備える、
請求項
2に記載の取水路用エアレーション装置。
【請求項4】
前記送気ユニットの端部及び前記散気ホースの端部には、開口部に雌ねじ孔が形成された接続用金口が設けられ、
前記送気ホース接続部及び散気ホース接続部には、前記接続用金口の雌ねじ孔に締め付け可能な雄ねじが形成されている、
請求項
3に記載の取水路用エアレーション装置。
【請求項5】
前記連結具は、前記送気ホースから前記散気ホースに流れる空気の流量を調整する弁を備える、
請求項
2から
4のいずれか1項に記載の取水路用エアレーション装置。
【請求項6】
前記送気ホースには、前記送気ホースを前記取水路の底面部に沈めるための錘が取り付けられている、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の取水路用エアレーション装置。
【請求項7】
前記散気ホースは、前記送気ホースに平行な向きに配置され、前記散気ホースの外周面の全域から前記散気ホースの径方向に空気を放出するように構成されている、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の取水路用エアレーション装置。
【請求項8】
前記取水路用エアレーション装置は、前記送気ホースの一端に接続された状態で前記陸上に設置され、前記送気ホースに空気を供給する送気装置をさらに備える、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の取水路用エアレーション装置。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の取水路用エアレーション装置を用いた取水路点検方法であって、
取水口の下流側に設けられた取水路からの水の流出を停止させる工程と、
前記取水路用エアレーション装置を前記取水路内に設置する工程と、
前記取水路内に設置された前記取水路用エアレーション装置を作動させることで、前記取水路内の水に空気を供給する工程と、
前記取水路内に設置された設備の点検を実施する工程と、
前記設備の点検終了後に前記取水路用エアレーション装置の作動を停止させることで、前記取水路内の水に対する空気の供給を停止させる工程と、
前記取水路内から前記取水路用エアレーション装置を撤去する工程と、
を含む取水路点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取水路用エアレーション装置及び取水路点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所には、海水を構内に取り入れる取水設備が設置され、そこで取り入れられた海水は、復水器でタービンを回した蒸気を冷却するのに用いられる。取水設備の取水路には、例えば特許文献1で開示されているように、海に生育するムラサキイガイ等の貝が付着し、取水路の海水の流れに垂直な断面が次第に小さくなることが知られている。このため、取水路の流路断面積を確保するために、定期的に行われる点検の際に除貝作業が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電所の取水設備は、電力の安定供給を実現するため、それぞれ独立した2つの系統の取水路を備える。2系統の取水路の点検に伴う費用や労力を低減するため、抜水した状態での取水路の点検を1系統ずつ交互に実施したいとの要望がある。具体的には、一方の取水路では抜水して点検を実施し、他方の取水路では滞水状態を継続させることで、各系統における抜水した状態での点検周期を実質的に延長することが期待されている。
【0005】
抜水した状態での取水路の点検を1系統ずつ交互に実施する場合、滞水状態とされた取水路では、海水中の酸素が不足し、貝が死滅する可能性がある。取水路内で死滅した貝の破片及び有機物は、海水の汚濁や機器の故障を引き起こすため、取水路において滞水状態を継続させることは、周囲環境や各種機器へ多大な影響を及ぼす。そして、このような問題は、2系統の取水路を点検する場合に限られず、他の水路において滞水状態を継続させる場合にも存在している。
【0006】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、滞水状態の水路において生物の死滅を抑制することが可能な取水路用エアレーション装置及び取水路点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る取水路用エアレーション装置は、
取水口の下流側に設けられた取水路内の水中に空気を供給する取水路用エアレーション装置であって、
陸上から前記取水路内に延び、前記取水路内において前記取水路の長手方向に延びるように設置され、一端から他端に向けて空気を送気する送気ホースと、
前記取水路内に設置され、互いに離れた位置で前記送気ホースに接続され、前記送気ホースから供給された空気を前記取水路内の互いに異なる位置で水中に放出する複数の散気ホースと、
を備え、
各散気ホースは、前記送気ホースの長手方向に間隔を空けて前記送気ホースに接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、滞水状態の水路において生物の死滅を抑制することが可能な取水路用エアレーション装置及び取水路点検方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る取水設備の構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る取水設備の構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る水路用エアレーション装置の構成を示す正面図である。
【
図4】
図3の水路用エアレーション装置の一部を拡大した正面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る取水路を長手方向に垂直な面で切断した面における海水の対流を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る連結具の構成を示す正面図である。
【
図7】実施例1における発電所の取水設備に設置した水路用エアレーション装置の仕様を示す図である。
【
図8】実施例2における水質分析のための測定項目を示す図である。
【
図9】実施例2における各パラメータの推移とムラサキイガイの生存状況とを示す図である。
【
図10】実施例2における常時エア水槽及びノンエア水槽における溶存酸素量の推移を示すグラフである。
【
図11】実施例2における常時エア水槽及び断続エア水槽における溶存酸素量の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る水路用エアレーション装置及び水路点検方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面では、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0011】
図1及び
図2に示すように、水路用エアレーション装置10は、取水設備1に設置され、取水設備1の水中に空気を供給し、海水に酸素を溶かし込む装置である。取水設備1は、取水口2から発電所の構内に海水を取り入れ、循環水ポンプに導水する設備である。循環水ポンプから取水された海水は、復水器に供給され、タービンから排出された蒸気を海水で冷却する。
【0012】
水路用エアレーション装置10が設置される取水設備1は、第1の取水設備1Aと、第1の取水設備1Aに隣接して延びるように設置された第2の取水設備1Bと、を備える2系統の取水設備である。第1の取水設備1A及び第2の取水設備1Bは、発電所構内に海水を取り込む互いに独立した流路を構成している。第1の取水設備1A及び第2の取水設備1Bは、同一又は同等の構成を備えるため、以下、水路用エアレーション装置10が設置される第1の取水設備1Aの構成を中心に説明する。
【0013】
第1の取水設備1Aは、海から海水を取り入れる取水口2と、取水口2に接続され、取水口2から供給された海水を移送する取水路3と、取水路3に接続され、水中に浮遊する貝類、海藻等のゴミを捕捉するスクリーン装置6がそれぞれ設けられた2つのスクリーン室4と、各スクリーン室4に接続され、海水を復水器に向けて送り込む循環水ポンプ7がそれぞれ設けられた2つのポンプ室5と、を備える。第1の取水設備1Aの各部は、それぞれコンクリートで形成され、互いに一体となるように組み合わされている。
【0014】
取水口2は、例えば、矩形状の断面を有し、発電所の専用港の海中に設置される。取水路3は、取水口2に接続され、取水口2から取り入れた海水をスクリーン室4に供給する。取水路3は、例えば、矩形状の断面を有する管状の水路であり、100m程度の長さを有する。取水路3は、2つに分岐したスクリーン室4に対応して途中で2つに分岐する。
【0015】
第1の取水設備1Aでは、取水口2から侵入した貝が取水路3の壁面及びスクリーン室4の壁面に付着する。取水路3及びスクリーン室4には、新鮮な海水が常時流れ込むため、壁面に付着した貝は生育を続け、次第に流路の断面積を減少させる。
【0016】
取水設備1の点検では、前半の工程で、抜水された状態の第2の取水設備1Bを点検し、後半の工程で、滞水状態にある第1の取水設備1Aの循環水ポンプ7を点検する。第2の取水設備1Bの点検時には、第1の取水設備1Aの循環水ポンプ7が作動すると共に、第1の取水設備1Aの点検時には、第2の取水設備1Bの循環水ポンプ7が作動するため、点検中でも発電所における燃料の冷却機能が常時維持される。
【0017】
滞水状態で第1の取水設備1Aを点検する際に、
図1に示すように循環水ポンプ7の停止後に第1の取水設備1Aに水路用エアレーション装置10を設置することで、第1の取水設備1Aの海水に酸素を供給できる。このため、第1の取水設備1Aに生息する貝の死滅を抑制でき、結果として第1の取水設備1Aにおける海水の汚濁を防止できる。
【0018】
次に、実施の形態に係る水路用エアレーション装置10の構成を説明する。
図1~
図3に示すように、水路用エアレーション装置10は、陸上から取水路3及びスクリーン室4へ延びる送気ホース11と、取水路3及びスクリーン室4に設置され、互いに異なる位置で送気ホース11に接続され、送気ホース11からの空気を取水路3及びスクリーン室4内の水中に放出する複数の散気ホース12と、送気ホース11に接続され、送気ホース11に向けて空気を供給する送気装置13と、送気ホース11から散気ホース12に向けて送気可能となるように送気ホース11と散気ホース12とを連結する連結具14と、を備える。なお、
図3は、
図2の一点鎖線で囲まれた部分を拡大した図である。
【0019】
各散気ホース12は、送気ホース11に接続され、送気ホース11が延びる方向に沿って所定の間隔、例えば、15m程度の間隔で配置されている。隣接する散気ホース12の間隔は、貝類の死滅を防止するために必要な酸素の量、送気装置13のコンプレッサの性能、ダイバーによる水中での作業効率等を勘案してそれぞれ設定される。複数の散気ホース12が取水路3及びスクリーン室4内に分散して配置されるため、取水路3及びスクリーン室4の海水へ均一に酸素を供給できる。
【0020】
送気ホース11は、内部に長手方向に延びる送気管路を備え、流路の形状に合わせて曲げ変形が可能な柔軟なホースである。送気ホース11の断面は、例えば円筒形であり、その外径は35mm~40mm程度である。送気ホース11は、送気装置13に接続された第1の送気ホース11aと、第1の送気ホース11aからの空気が供給され、互いに直列で接続された複数の第2の送気ホース11bと、を備える。互いに直列に接続された複数の第2の送気ホース11bの1つが第1の送気ホース11aに接続されている。
【0021】
第1の送気ホース11aは、陸上から取水路3まで延びるように形成されているため、第2の送気ホース11bよりも長く形成されているが、その構成は同一又は同等である。第1の送気ホース11a及び第2の送気ホース11bは、いずれも送気ホース11を構成する送気ユニットの一例である。各送気ユニットは、それぞれ連結具14を介して互いに接続され、1つの送気ホース11を構成する。
【0022】
また、送気ホース11は、取水路3が途中で2つに分岐していることに対応して途中で2つに分岐している。具体的には、2つに分岐したY字形連結具(図示せず)の先端部には、それぞれ別個の第2の送気ホース11bの基端部が接続され、Y字形連結具の基端部には、さらに別個の第2の送気ホース11bの先端部が接続されている。
【0023】
図4に示すように、第2の送気ホース11bの両端部には、連結具14に対して着脱自在に接続するための一対の接続用金口11cが固定されている。各接続用金口11cは、内部に空気を送気可能な管路を備える筒状部材であり、その長さは、例えば10cm程度である。
【0024】
接続用金口11cの先端部に設けられた開口部には、連結具14に形成された雄ねじに締め付け可能な雌ねじ孔が形成されている。接続用金口11cの基端部は、送気ホース11の端部に設けられた開口部に挿入され、挿入された状態で送気ホース11の外側からホースバンドで締め付けることで、送気ホース11と接続用金口11cとが固定されている。なお、第1の送気ホース11aの両端部にも、同一又は同等の構成を備える接続用金口11cがホースバンドで固定されている。
【0025】
最も先端側に位置する第2の送気ホース11bの先端部に固定された接続用金口11cには、キャップ(図示せず)が取り付けられている。キャップは、接続用金口11cの雌ねじ孔に締め付け可能な雄ねじを備える。接続用金口11cの雌ねじ孔にキャップの雄ねじを締め付けることで、送気ホース11の先端部の開口部を塞ぎ、送気ホース11の先端部から空気が放出されることを防止する。
【0026】
第2の送気ホース11bには、結束バンドのような接続手段を介してウェイトチェーン11dが取り付けられている。ウェイトチェーン11dは、例えば金属製であり、自重により取水路3の底面部に沈むため、送気ホース11は取水路3の底面部に留置される。ウェイトチェーン11dは、送気ホース11を取水路3の底面部に留置させる錘の一例である。
【0027】
散気ホース12は、送気ホース11から供給された空気を海水に放出する。散気ホース12は、例えば、長手方向に延びる送気管路を備え、その長さは5m程度である。散気ホース12の断面は、例えば円筒形であり、その外径は25mm~30mm程度である。散気ホース12は、例えば、多孔質材料、特に、スポンジ状の多孔質材料で形成されている。散気ホース12としてスポンジ状の多孔質材料を用いることで、散気ホース12の周囲から径方向に均一に空気が放出されるため、海水の対流が促進されると共に水中に効率的に酸素を溶け込ませることができる。
【0028】
散気ホース12の基端部には、連結具14の散気ホース接続部に対して着脱自在に接続するための接続用金口12aが固定されている。接続用金口12aは、接続用金口11cと同一又は同等の構成を備える。他方、散気ホース12の先端部に設けられた開口部には、先端部からの空気の漏れを防止するキャップ12bが取り付けられている。
【0029】
散気ホース12は、海水の対流等により浮遊することがないように送気ホース11に結束バンドを介して接続されている。送気ホース11が取水路3の底面部に設置された金属のウェイトチェーン11dにより留置されているため、水中における散気ホース12の動きも規制される。
【0030】
水路用エアレーション装置10は、上記の構成を備えるため、
図5に示すように散気ホース12が取水路3の底面部に沈下されており、散気ホース12から放出された空気は取水路3の天井に向かって次々と上昇する。そして、天井付近の空気は、後から上昇してきた空気に押し出されるため、取水路3の断面において同一方向に回転する対流が発生するか、
図5に示すように取水路3の断面において互いに反対方向に回転する2つの対流が発生する。したがって、取水路3を取り囲む壁面に付着した全ての貝に対して十分な酸素が供給される。
【0031】
図3に戻り、送気装置13は、外部から空気を取り込み、送気ホース11に圧縮した空気を供給する装置である。送気装置13は、外部から取り込んだ空気を圧縮して放出するコンプレッサと、コンプレッサに電気的に接続され、コンプレッサに電気を供給する発電機と、を備える。コンプレッサには、第1の送気ホース11aの基端部に固定された接続用金口11cが接続され、圧縮された空気を放出する送気ホース接続部(図示せず)が設けられている。
【0032】
図6に示すように、連結具14は、2つの第2の送気ホース11bと1つの散気ホース12とを互いに着脱自在に連結する。連結具14は、内部に送気可能な管路を備える筒状の本体部14aと、本体部14aの両端部から互いに対向する向きに延び、それぞれ隣り合う第2の送気ホース11bの端部が接続される一対の送気ホース接続部14bと、本体部14aの径方向に延びるように本体部14aの周面部に接続され、途中で屈曲又は湾曲して本体部14aの長手方向に延びるL字管14cと、本体部14aの長手方向に延びるようにL字管14cの先端部に接続され、散気ホース12の端部が接続される散気ホース接続部14dと、L字管14cと散気ホース接続部14dとの間に設けられ、第2の送気ホース11bから散気ホース12への空気の流量を調整可能な弁14eと、を備える。
【0033】
送気ホース接続部14b及び散気ホース接続部14dは、それぞれ第2の送気ホース11bの接続用金口11c及び散気ホース12に固定された接続用金口12aに着脱自在に構成されている。送気ホース接続部14b及び散気ホース接続部14dの端部には、接続用金口11c、12aの雌ねじ孔に締め付け可能な雄ねじが形成されている。このため、送気ホース接続部14b及び散気ホース接続部14dの雄ねじを、それぞれ接続用金口11c、12aの雌ねじ孔に締め込むことで、2つの第2の送気ホース11b及び1つの散気ホース12が連結具14に接続され、互いに一体化される。
【0034】
各接続用金口11cの雌ねじ孔及び各送気ホース接続部14bの雄ねじは、接続用金口11cに対して送気ホース接続部14bを同一の向きに回転させると、接続用金口11cと送気ホース接続部14bとが締め付けられるようにねじ切りされている。このため、第2の送気ホース11bに対して連結具14が本体部14aの軸周りに回転しようとしても、どちらか一方の接続用金口11cが連結具14の回転を阻止するため、連結具14が第2の送気ホース11bから外れることを防止できる。
【0035】
弁14eは、各散気ホース12における空気放出量を調整する弁である。送気装置13のコンプレッサから離れて配置された散気ホース12ほど圧力損失の影響を受けやすいため、各散気ホース12からの空気の流量が等しくなるように弁14eの開度を調整する。これにより各散気ホース12から均一な量の空気を放出させることができる。
以上が、水路用エアレーション装置10の構成である。
【0036】
次に、実施の形態に係る水路用エアレーション装置10を用いた取水設備1の点検方法の流れを説明する。以下、前半の工程で、第2の取水設備1Bを抜水した状態で点検し、後半の工程で、滞水状態の第1の取水設備1Aの循環水ポンプ7を点検する場合を例に説明する。また、取水設備1の点検開始の時点で第1の取水設備1A及び第2の取水設備1Bの各循環水ポンプ7が作動しているものとする。
【0037】
まず、第2の取水設備1Bの点検に伴う一連の作業を実施する。具体的には、まず、第2の取水設備1Bに設置された循環水ポンプ7を停止させる。次に、第2の取水設備1Bの取水口2を閉鎖し、例えば、ポンプを用いて外部に海水を排出するなどして第2の取水設備1B内の海水を抜水する。第2の取水設備1Bから海水が抜き取られると、第2の取水設備1Bの点検を開始する。点検の際には、第2の取水設備1Bに付着した貝を除去する除貝作業も実施する。なお、点検には、取水設備1及び周辺機器等の点検作業のみならず、取水設備1における除貝作業などの保守作業や、取水設備1及び周辺機器等に対する補修工事等が含まれてもよい。
【0038】
次に、閉鎖されていた第2の取水設備1Bを所定水位になるまで海水で充水し、その後取水口2を開放し、第2の取水設備1Bに設置された循環水ポンプ7の作動を再開させる。
以上の工程で第2の取水設備1Bの点検に伴う一連の作業が終了する。
【0039】
次に、第1の取水設備1Aにおける循環水ポンプ7の点検に伴う一連の作業を実施する。具体的には、まず、第1の取水設備1Aから抜水せずに、第1の取水設備1Aの循環水ポンプ7を停止させる。
【0040】
次に、第1の取水設備1Aに水路用エアレーション装置10を設置する。具体的には、まず、取水口2付近の陸上に送気装置13のコンプレッサ及び発電機を設置し、コンプレッサに第1の送気ホース11aの一端を接続する。次に、第1の送気ホース11aの他端を専用港の水中に投入し、その後、第1の送気ホース11aの先端側の一部を取水路3内に設置する。
【0041】
次に、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14からなるセットを複数個、陸上から取水路3及びスクリーン室4に搬入する。第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14は、互いに分離された状態であり、それぞれが小型かつ軽量であるため、水中での搬入作業が容易である。
【0042】
次に、取水路3及びスクリーン室4内で、第1の送気ホース11a、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14を組み立てる。第1の送気ホース11a、第2の送気ホース11b及び散気ホース12と連結具14とは、雄ねじと雌ねじ孔とを締め付けることにより互いに接続できるため、水中でも簡単に連結作業を行うことができる。また、第2の送気ホース11bには、錘となるウェイトチェーン11dが接続されているため、取水路3及びスクリーン室4の底面部に設置された第2の送気ホース11bは、水中に浮遊しない。なお、水中での作業は、いずれも資格を有するダイバーが実行する。
以上の工程で水路用エアレーション装置10の設置が終了する。
【0043】
次に、送気装置13のコンプレッサを作動させると、コンプレッサから送気ホース11に圧縮された空気が供給される。送気ホース11に供給された空気は、各連結具14で分岐し、各散気ホース12から水中に放出される。このため、第1の取水設備1Aが滞水状態であっても、水中に酸素が継続的に供給されるため、第1の取水設備1Aの取水路3及びスクリーン室4に付着している貝の死滅を抑制できる。
【0044】
次に、第1の取水設備1Aにおける循環水ポンプ7の点検が終了すると、散気ホース12からの空気の放出を停止させ、第1の取水設備1Aに設置された水路用エアレーション装置10を撤去する。具体的には、取水路3及びスクリーン室4に設置された第1の送気ホース11a、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14を互いに分離し、それぞれを陸上に搬出する。水中での作業は、設置時と同様に資格を有するダイバーが実施する。
【0045】
第2の送気ホース11b及び散気ホース12と連結具14とは、雄ねじと雌ねじ孔とを緩めることで互いに分解できるため、水中でも簡単に分解作業を行うことができる。また、互いに分解された第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14は、それぞれが小型かつ軽量であるため、水中からの搬出が容易である。
【0046】
次に、第1の取水設備1Aの循環水ポンプ7の作動を再開させると、第1の取水設備1Aにおける循環水ポンプ7の点検に伴う一連の作業が終了する。なお、第1の取水設備1Aについては、次回点検時に抜水して除貝作業を行えばよい。
以上が、水路用エアレーション装置10を用いた取水設備1の点検方法の流れである。
【0047】
以上説明したように、実施の形態に係る水路用エアレーション装置10は、取水路3及びスクリーン室4内に設置され、互いに離れた位置で送気ホース11に接続され、送気ホース11から供給された空気を取水路3及びスクリーン室4の水中に放出する複数の散気ホース12を備える。取水路3及びスクリーン室4の全体に空気が行き渡るため、取水路3及びスクリーン室4の壁面に付着した貝に対して十分な酸素が供給される。その結果、海水が滞留状態になったとしても、貝が生存し続けることができ、海水の汚濁や機器の破損を防止できる。
【0048】
また、実施の形態に係る水路用エアレーション装置10は、互いに直列に連結された複数の送気可能なユニットを備える送気ホース11と、隣り合う2つのユニットと1つの散気ホース12とを互いに着脱自在に連結する連結具14と、を備える。このため、設置時には、第1の送気ホース11a、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14を互いに分離した状態で水中に搬送した後に、水中で組み立てることができ、撤去時には、水中で第1の送気ホース11a、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14を互いに分離した状態にした後に、水中から搬出することができる。このため、水路用エアレーション装置10の設置及び撤去における水中でのダイバーの作業負担を低減できる。
【0049】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0050】
(変形例)
上記実施の形態では、取水路3が途中で2つに分岐することに対応して送気ホース11が途中で2つに分岐していたが、本発明はこれに限られない。送気ホース11は、途中で分岐していなくてもよく、途中で3つ以上に分岐していてもよい。また、送気ホース11の複数の位置で分岐していてもよい。
【0051】
上記実施の形態では、第1の送気ホース11a、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14が互いに着脱自在に構成されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、取水路3の長さが比較的短い場合には、第1の送気ホース11a、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14を互いに取り外しできないように一体化してもよい。
【0052】
上記実施の形態では、第1の送気ホース11a、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14をダイバーが水中で組み立てていたが、本発明はこれに限られない。例えば、ダイバーによる水中での組み立て作業の負担を考慮し、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14からなるユニットを陸上で組み立てた後に、複数のユニットをダイバーが水中に搬入し、水中で各ユニットを連結してもよい。
【0053】
上記実施の形態では、複数の散気ホース12を送気ホース11に対して等間隔で接続していたが、本発明はこれに限られない。例えば、送気ホース11における空気の圧力損失を考慮して、送気装置13から離れるにつれて隣り合う散気ホース12の間隔が徐々に短くなるように配置してもよい。
【0054】
上記実施の形態では、送気ホース11の長手方向に延びるように送気ホース11に対して散気ホース12を接続していたが、本発明はこれに限られない。例えば、送気ホース11の径方向に延びるように送気ホース11に対して散気ホース12を接続してもよい。
【0055】
上記実施の形態では、散気ホース12は、スポンジ状の多孔質材料で形成されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、散気ホース12は、長手方向に延びる送気管路を備え、当該送気管路に向けて貫通する多数の貫通孔が周面部に設けられたホースであってもよい。当該ホースは、例えば、ゴムホース、塩ビ管(塩化ビニール製の管)であってもよい。
【0056】
上記実施の形態では、散気ホース12は長尺な形状であったが、本発明はこれに限られない。散気ホース12は、周囲に空気を放出可能な形状であればいかなる形状であってもよく、例えば、球形、紡錘形、箱形等であってもよい。
【0057】
上記実施の形態では、送気ホース11及び散気ホース12の接続用金口11c、12aに設けられた雌ねじ孔と、連結具14の送気ホース接続部14b、散気ホース接続部14dに設けられた雄ねじとが互いに締め付けられることで接続されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、接続用金口11c、12aの外周面に雄ねじを設け、送気ホース接続部14b、散気ホース接続部14dの開口部に雄ねじに対応する雌ねじ孔を設けてもよい。
【0058】
また、接続用金口11c、12aの先端部に径方向内側に付勢されるフックを設け、送気ホース接続部14b、散気ホース接続部14dの外周面に当該フックが係合する凹溝を設けてもよい。
【0059】
上記実施の形態では、連結具14にL字管14cが設けられていたが、本発明はこれに限られない。L字管14cを本体部14aに垂直な方向に延びる直線状の管に置き換え、連結具14をT字型に形成してもよい。
【0060】
上記実施の形態では、連結具14を介して2つの第2の送気ホース11b及び1つの散気ホース12が互いに連結されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、連結具14を介さずに、送気ホース11に複数の散気ホース12が直接接続されていてもよい。
【0061】
上記実施の形態では、送気装置13のコンプレッサに電源として発電機を接続していたが、本発明はこれに限られない。例えば、発電機の代わりに商用電源を接続してもよい。
【0062】
上記実施の形態では、前半の工程で第2の取水設備1Bを抜水した状態で点検し、後半の工程で滞水状態の第1の取水設備1Aの循環水ポンプ7を点検していたが、本発明はこれに限られない。例えば、前半の工程と後半の工程の順番を入れ替えてもよい。また、後半の工程で循環水ポンプ7以外の設備を点検してもよい。
【0063】
上記実施の形態では、作業員が現地で立ち会うことで送気装置13のコンプレッサを作動させていたが、本発明はこれに限られない。例えば、メモリとプロセッサとを備え、操作信号を送信可能な制御装置をコンプレッサに接続し、制御装置と外部の通信端末とを互いに通信可能に接続することで、外部の通信端末を用いてコンプレッサを作動させるように構成してもよい。
【0064】
上記実施の形態では、散気ホース12から水中に連続的に空気を放出していたが、本発明はこれに限られない。散気ホース12から水中に断続的に空気を放出してもよい。例えば、メモリとプロセッサとを備え、操作信号を送信可能な制御装置を送気装置13のコンプレッサ及び発電機に接続し、制御装置のメモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することで、コンプレッサの作動を制御するように構成してもよい。水中に空気を放出する時間(ON時間)と水中への空気の放出を停止する時間(OFF時間)とは、取水路3の水温、専用港の潮汐の程度等を考慮して設定すればよい。
【0065】
また、取水設備1の水中の溶存酸素量(Dissolved Oxygen:DO)を監視するセンサを上記の制御装置に接続し、センサで周期的に取得されるDOに基づいて、送気装置13のコンプレッサの作動を制御するように構成してもよい。例えば、DOが閾値以下、例えば、2mg/L以下になった場合に、コンプレッサの作動を開始させてもよい。
【0066】
上記実施の形態では、水路用エアレーション装置10を発電所における取水設備1の取水路3及びスクリーン室4に設置していたが、本発明はこれに限られない。例えば、水路用エアレーション装置10の取水設備1の取水路3にのみ設置してもよい。また、水路用エアレーション装置10を他の水路、例えば、発電所の放水路、余水路等に設置してもよく、工場、港湾施設等に設けられた水路に設置してもよい。
【0067】
上記実施の形態では、滞水状態にある取水設備1に水路用エアレーション装置10を設置していたが、本発明はこれに限られない。完全に滞水状態でなく、ある程度の水の流入や水の流出がある水路であっても、水路の水中の酸素が不足し、水中の生物が死滅する可能性がある場合には、当該水路に水路用エアレーション装置10を設置してもよい。
【0068】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
実施例1では、発電所の取水設備1に設置される水路用エアレーション装置10の有効性に関する検証を行った。具体的には、取水設備1に水路用エアレーション装置10を設置する際のダイバーの作業工程に安全上の問題がないか、取水設備1に設置された水路用エアレーション装置10が水質改善効果を奏するかどうかを確認した。実施例1における水路用エアレーション装置10の仕様は、
図7に示すとおりである。なお、
図7のユニットは、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14からなるユニットであり、これらのユニットを組み立てると、その全長は5.6mである。また、
図7の全長は、ユニットを10個連結した場合の長さである。
【0071】
まず、地上の作業員が、送気装置13のコンプレッサ及び発電機を取水口2付近の陸上に設置し、次に、ダイバーが、第1の送気ホース11aを取水路3に搬入すると共に、第2の送気ホース11b、散気ホース12及び連結具14からなる各ユニットを取水路3及びスクリーン室4に搬入し、水中で第1の送気ホース11a及び各ユニットを互いに連結した。水路用エアレーション装置10は、取水路3及びスクリーン室4の全域に空気が循環するように取水路の底面部の中央に設置された。次に、散気ホース12から空気を放出させ、空気の放出や循環の様子及び水路用エアレーション装置10の据付状態をビデオカメラで撮影した。
【0072】
以下に検証結果を示す。ダイバーによる水路用エアレーション装置10の水中での設置及び撤去作業については、十分な安全性を確保できていた。ダイバーの動きや敷設した送気ホース11及び散気ホース12の動きにより底面部の堆積物が舞い上がり、一時的な視界不良を招くことがあったが、数分後には視界が回復したため、問題とならなかった。
【0073】
また、空気の放出や循環の状態については、水路用エアレーション装置10の起動と同時に散気ホース12の周りから空気が放出され、取水口2からの距離による空気の放出量にほとんど違いは見受けられなかった。各散気ホース12から放出された空気は、ひとまず上方に噴出し、その後、1つの方向に回転するか互いに相対する2つの方向に回転するように循環した。そして、送気ホース11に接続されたウェイトチェーン11dにより、水中における散気ホース12の浮動が抑制されていた。現場に潜行したダイバーからも同様の観察結果が報告された。
以上から、発電所の取水設備1に水路用エアレーション装置10を安全に設置できること、水路用エアレーション装置10の取水設備1の全域に空気を供給できることが確認できた。
【0074】
(実施例2)
実施例2では、発電所の取水設備1に主に生息するムラサキイガイを飼育し、DO等の各計測パラメータとムラサキイガイの死滅との関係性を調査した。
【0075】
まず、10リットルの水槽を4台用意し、各水槽に取水路3で採取したムラサキイガイを20個体と海水4リットルとを入れ、ムラサキイガイを飼育した。各水槽におけるムラサキイガイの個体数と海水量との比率は、取水路3におけるムラサキイガイの付着密度が取水路1m当たり約4万個体であることに基づいている。各水槽の水温は、取水口2周辺の年間平均水温である15℃一定とした。
【0076】
水槽1台はエアホースにより酸素供給を行う水槽(エア水槽)とし、残りの水槽3台は水面にラップを張り、酸素供給を行わない水槽(ノンエア水槽A、B、C)とした。エア水槽については、水槽内を仕切り板で2つに分割し、一方を、常時エアを供給する常時エア水槽とし、他方を、断続的に空気を供給する断続エア水槽とした。断続エア水槽では、8時間毎に酸素の供給と停止を繰り返した。
【0077】
図8に示すように、計測したパラメータは、海水汚濁の指標となる8項目である。試験期間(飼育期間)は、1系統の取水設備1の点検に要する期間である42日間とした。
【0078】
以下に試験結果を示す。
図9に示すように、常時エア水槽では、各測定項目が良好な値を維持していた。断続エア水槽では、空気の供給を停止すると、停止後8時間後には各測定項目の数値が悪化していたが、空気の供給を再開させると、再開後8時間後には各測定項目の数値が回復していた。その結果、
図10に示すように、常時エア水槽及び断続エア水槽では、ムラサキイガイが42日間にわたって全個体生存した。
【0079】
他方、ノンエア水槽A~Cでは、
図9に示すように時間の経過と共に各測定項目の数値が悪化した。具体的には、DOが0.4mg/Lにまで低下した結果、ムラサキイガイの腐敗に由来する硫化水素が発生した。
図10に示すように、ノンエア水槽A~Cでは、試験開始から10日後にムラサキイガイの一部が死滅し、試験開始から18日後には全滅していた。
【0080】
また、
図11に示すように、水槽への空気の供給が停止されると、DOは徐々に低下するが、水槽へ空気の供給を再開させると、DOは供給停止前の数値にまで回復した。空気の供給を72時間停止させた場合でも同様の結果が得られた。以上から、滞留状態の海水に対して連続的又は断続的に空気を供給することにより、海水中で生存しているムラサキイガイの死滅を抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0081】
1 取水設備
10 水路用エアレーション装置
11 送気ホース
11a 第1の送気ホース
11b 第2の送気ホース
11c 接続用金口
11d ウェイトチェーン
12 散気ホース
12a 接続用金口
13 送気装置
14 連結具
14a 本体部
14b 送気ホース接続部
14c L字管
14d 散気ホース接続部
14e 弁