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▶ オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<図1>
  • 特許-蛍光体粒子および蛍光体粒子の製造方法 図1
  • 特許-蛍光体粒子および蛍光体粒子の製造方法 図2
  • 特許-蛍光体粒子および蛍光体粒子の製造方法 図3
  • 特許-蛍光体粒子および蛍光体粒子の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】蛍光体粒子および蛍光体粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20220330BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C09K11/08 G
C09K11/64
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020165093
(22)【出願日】2020-09-30
(62)【分割の表示】P 2018543696の分割
【原出願日】2017-03-01
(65)【公開番号】P2021006642
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-10-26
(31)【優先権主張番号】102016104194.7
(32)【優先日】2016-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トラグル ソーニャ
(72)【発明者】
【氏名】フィードラー ティム
(72)【発明者】
【氏名】イエルマン フランク
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-084577(JP,A)
【文献】特表2009-524736(JP,A)
【文献】特表2009-524735(JP,A)
【文献】国際公開第2015/062697(WO,A1)
【文献】特開2015-154028(JP,A)
【文献】特開2013-247067(JP,A)
【文献】特開2011-068789(JP,A)
【文献】特開2013-209570(JP,A)
【文献】特開2008-051793(JP,A)
【文献】特表2014-532798(JP,A)
【文献】特表2011-503266(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166572(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/041838(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/173691(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/140936(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/044106(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
C23C 16/00-16/56
H01L 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si含有蛍光体およびAl含有蛍光体の内の一方を含む蛍光体粒子(1)であって、
前記蛍光体粒子(1)の表面が、少なくとも1つの第1保護層(2)および第2保護層(3)で被覆されており、且つ前記第1保護層(2)は前記第2保護層(3)の上方に配置されており、
前記第2保護層(3)は、前記蛍光体のSi含量よりも少なくとも40原子%高いSi含量を有する、または前記蛍光体のAl含量よりも少なくとも10%低いAl含量を有し、
前記少なくとも1つの第1保護層(2)は、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、および金属酸窒化物の内の1種の分子単層を含む、または前記分子単層からなる、蛍光体粒子(1)。
【請求項2】
前記第1保護層(2)は、アルミニウム含有材料を含む、請求項1に記載の蛍光体粒子(1)。
【請求項3】
前記蛍光体粒子(1)は、複数の第1保護層(2)を含み、前記複数の第1保護層(2)は、1nmから500nmの層厚を有する、請求項1または2に記載の蛍光体粒子(1)。
【請求項4】
前記蛍光体粒子(1)は、その組成に少なくとも要素D、要素A1、要素AX、要素SX、および要素NXを含む無機物質を含有する蛍光体を含み、ここで、Dは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Li、Na、K、Rb、Cs、およびYbの群からの1つ、2つ、またはそれ以上の元素であり;A1は、Dに含まれない2価の金属の群から選ばれる1つ、2つ、またはそれ以上の元素を表し;SXは、Siを含む4価の金属の群から選ばれる1つ、2つ、またはそれ以上の元素を表し;AXは、3価の金属の群から選ばれる1つ、2つ、またはそれ以上の元素を表し;NXは、O、N、S、C、Cl、Fの群から選ばれる1つ、2つ、またはそれ以上の元素を表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の蛍光体粒子(1)。
【請求項5】
前記蛍光体粒子(1)は、空間群P1、P2、P1バー、またはP2で結晶化する蛍光体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の蛍光体粒子(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体粒子および蛍光体粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本特許出願は、独国特許出願第102016104194.7号の優先権を主張し、その開示内容は、本参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
一次放射線を、放射線変換を用いて変換放射線、即ちより長波長の二次放射線、に変換することが可能な蛍光体は、多くの場合、加水分解を非常に受け易い。蛍光体の加水分解により、多くの照明装置、例えば蛍光体が一次放射線源のビーム経路内に並べられている発光ダイオード(LED)では、それらの色位置が、望ましくない方向に変化する。さらに、蛍光体の加水分解が生じると、蛍光体の変換効率の大幅な低下も頻繁に発生する。
【0004】
そのような問題を減らすために、蛍光体粒子に液体溶液中で(例えばテトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解で)設けることができる二酸化ケイ素層によって、蛍光体を保護することが公知である。別の考えられる方法は、化学蒸着(CVD)を用いた被覆材料の堆積である。しかしそのような方法では、水分および/または酸素に対する十分な保護を蛍光体粒子に与えることはできない。
【0005】
独国特許出願第102015103326.7は、蛍光体粒子上の保護層の製造について開示しており、当該保護層は、一定pH範囲内の酸溶液で蛍光体粒子を処理することにより製造される。文献に開示されたこの方法によって、蛍光体粒子は既に非常にうまく水分から保護されている。しかし、加水分解感受性の蛍光体粒子を非常に高い大気湿度または水分条件下で使用する場合、蛍光体粒子のさらに良好な保護に対する要求が存在し、したがってそのような保護が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の技術的問題に関して改善された、保護層を有する蛍光体粒子を製造するための方法と、保護層を有する蛍光体粒子とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的は、独立特許請求項の対象によって達成される。
【0008】
蛍光体粒子を製造するための方法の有利な実施形態、および保護層を備えた蛍光体粒子の有利な改良点は、従属項の対象であり、以下の記述および図にも示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
少なくとも1つの第1保護層を有する蛍光体粒子を製造するための方法が提供される。当該方法は、下記の方法ステップ:
A)蛍光体粒子を用意するステップと、
D)少なくとも1つの第1保護層を、原子層成長法を用いて蛍光体粒子の表面に設けるステップと
を含む。
【0010】
上述の方法ステップ、および後述の方法ステップは、好ましくは指定された順序で実施される。しかし、個々の方法ステップ間で、ここに列挙していない方法ステップをさらに実施してもよいし、前記方法ステップを、中間ステップなしに、正確に指定された順序で実施してもよい。
【0011】
方法の少なくとも1つの実施形態によれば、方法ステップD)は、下記の方法ステップ:
D1)蛍光体粒子の表面に、原子層成長法を用いて第1出発化合物を堆積するステップと、
D2)蛍光体粒子の表面に、原子層成長法を用いて第2出発化合物を堆積するステップと
を含む。詳細には、第1出発化合物および第2出発化合物は、第1保護層が蛍光体粒子の表面を完全にまたはほぼ完全に覆うように、表面全体に、またはほぼ表面全体に堆積される。したがって、水分、酸素、および硫化水素などのその他の有害な気体に対する、蛍光体粒子の特に高い保護を確実にすることができる。特に、方法ステップD1)およびD2)は、指定される順序で実施する、即ち、D1)の後にD2)を実施する。
【0012】
原子層成長法(ALD)とは、初めに、少なくとも2種の気状出発化合物の内の第1を蛍光体粒子が用意されているチャンバー内に導入し、蛍光体粒子の表面に吸収させる方法ということができる。特に第1出発化合物は、蛍光体粒子の表面に化学吸着される。これは、第1出発化合物と蛍光体粒子との間に化学結合が形成されるように、出発化合物が蛍光体粒子の表面に化学吸着され、出発化合物が蛍光体粒子の表面に結合されることを意味する。第1出発化合物による、蛍光体粒子表面の好ましくは完全なまたはほぼ完全な遮蔽または被覆の後、未だ気状であるおよび/または表面に吸収されていない第1出発化合物の一部を総容量から除去し、そこに少なくとも2種の出発化合物の内の第2を供給する。第1出発化合物の除去は、排出によって、またはNもしくはArなどの不活性ガスでチャンバーを濯ぐことによって、実施することができる。第2出発化合物は、表面に吸収された第1出発化合物と反応して、第1保護層を形成することができる。この堆積方法を用いれば、被覆材料の個別の粒子の形成、即ち、蛍光体粒子の表面から離れた保護層の形成、を回避することが可能になる。これは、例えばCVD法によって防ぐことはできない。特に、第2出発化合物は、第1出発化合物と接触した後に直接反応する。
【0013】
原子層成長法を用いれば、1種の分子層のみが堆積するように、第1出発化合物および第2出発化合物を自己制御反応で堆積することが可能になる。したがって、高度に構造化され、かつ稠密な第1保護層を、蛍光体粒子の表面に製造することが可能である。
【0014】
一実施形態によれば、方法ステップA)で、蛍光体粒子、例えば粉体状の蛍光体粒子を、ALD被覆チャンバー内に提供する。例えばALD被覆反応器Picosun POCA-100粉末カートリッジを、原子層成長法に使用することができる。
【0015】
一実施形態によれば、第1保護層を、プラズマ支援原子層成長法を用いて蛍光体粒子の表面に設ける。
【0016】
プラズマ原子層成長法(PEALD)は、第2出発化合物がプラズマの同時発生により供給し、その結果、第2出発化合物の励起を可能にするALD法と言うこともできる。その結果、プラズマ・フリーALD法と比べて、表面が加熱される温度を下げることができる。第1保護層は、例えば120℃未満の温度で、好ましくは80℃以下の温度で設けることができる。
【0017】
本明細書に記述される方法の範囲内で製造することができる第1保護層を用いれば、公知の保護層と比べて、水分および/または酸素に対してより低い透過性を実現することができる。原子層成長法によって設けられる第1保護層は、特に、従来の保護層で漏れをもたらす可能性のあるチャネル、細孔、または粒界を全くまたは少ししか持たない。したがって、例えばCVD法を用いて製造された保護層と比較すると、水分および/または酸素に関して、より高い気密性を実現することができる。
【0018】
一実施形態によれば、第1出発化合物は、有機金属化合物および金属ハロゲン化物、特に臭化物および塩化物を含む群から選択される。第2出発化合物は、HO、HS、NH、および/またはOを含む群から選択される。第1保護層は、蛍光体粒子の表面に堆積された第1出発化合物と、第2出発化合物との化学反応によって形成される。
【0019】
一実施形態によれば、第1保護層は、酸化物、硫化物、窒化物、水酸化物、アミド、および/または酸窒化物を含むか、またはこれらからなるものであり、好ましくは、結晶質またはガラス質形態の酸化物、硫化物、窒化物、アミド、および/または酸窒化物を含むか、またはこれらからなるものである。例えば前記材料は、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、スズ、亜鉛、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、またはハフニウムの酸化物、硫化物、窒化物、水酸化物、アミド、および/または酸窒化物とすることができる。第1保護層は、酸化物および水酸化物を含むか、またはこれらからなるものであってもよい。例えば、第1保護層は、Alなどの酸化アルミニウムを含むか、またはこれらからなるものである。特に、酸化物、硫化物、窒化物、水酸化物、アミドおよび/または酸窒化物を、第1出発化合物および第2出発化合物の化学反応によって形成する。
【0020】
一実施形態によれば、有機金属化合物または金属ハロゲン化物の金属は、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、スズ、亜鉛、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、および/またはハフニウムを含む金属の群から選択される。特に、金属は、アルミニウム、ケイ素、および/または亜鉛を含む金属の群から選択され、最も好ましくは、金属はアルミニウムである。特に、アルミニウムを含有する第1保護層は、水および酸素の透過に対して特に堅牢であることが証明された。
【0021】
一実施形態によれば、有機金属化合物は、金属アルキルおよび金属アルコキシドから選択される。特にこれらは、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、スズ、亜鉛、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、および/またはハフニウムの金属アルキルまたは金属アルコキシドである。これらの化合物は、低温で有利に昇華することができる。
【0022】
一実施形態によれば、第1出発化合物は、MCl、MBr、M(CH、M(CH-CH、M(CH-CH-CH、M(OCH、M(OCH-CH、およびM(OCH-CH-CHを含む化合物群から選択される。Mは、B、Al、Si、Sn、Zn、Ti、Zr、Ta、Nb、および/またはHfを表し、特にAl、Si、および/またはZnを表し、xはMの価数に該当し、例えばm=価数が4のZnまたはSiである場合、x=4である。次いで第1出発化合物は、例えばZn(CH、Zn(OCH、ZnCl、ZnBr、Si(CH、Si(OCH、SiCl、またはSiBrとすることができる。
【0023】
一実施形態によれば、第1出発化合物は、AlCl、AlBr、Al(CH、Al(CH-CH、Al(CH-CH-CH、Al(OCH、Al(OCH-CH、およびAl(OCH-CH-CHを含む化合物群から選択される。第1出発化合物は、好ましくは、Al(CH、Al(CH-CH、Al(OCH、およびAl(OCH-CHを含有する化合物群から選択される。特に好ましい第1出発化合物は、Al(CH(トリメチルアルミニウム)である。約127℃と低沸点であるトリメチルアルミニウムは、気化が容易であり、蛍光体粒子の表面に、第2出発化合物(特にHOまたはO)と共に、第1保護層を形成する。当該第1保護層は、高い大気湿度の環境であっても水および酸素から蛍光体粒子を保護する。さらに、トリメチルアルミニウムは市販されており、安価に入手することができる。
【0024】
一実施形態によれば、第1出発化合物は、AlCl、AlBr、Al(CH、Al(CH-CH、Al(CH-CH-CH、Al(OCH、Al(OCH-CH、およびAl(OCH-CH-CHを含む群から選択され、第2出発化合物は、HO、HS、NH、および/またはOを含む群から選択され、好ましくはHO、HS、NH、および/またはOであり、特に好ましくはHOおよび/またはOである。第1出発化合物および第2出発化合物の反応は、第1保護層をもたらし、次いで第1保護層は、その酸化物、硫化物、窒化物、水酸化物、アミド、および/または酸窒化物を形成するか、あるいはこれらの化合物からなる。好ましくは、第1出発化合物の完全なまたはほぼ完全な反応が起こる。意外にもオゾンは、特に高い気密性を持つ第1保護層を製造するための第1出発化合物に特に適していることが証明された。
【0025】
例えば、トリメチルアルミニウムを第1出発化合物として選択し、HOまたはOを第2出発化合物として使用する。出発化合物の反応によって、酸化アルミニウム(例えばAl)を含有するか、またはこれからなる第1保護層を製造する。さらに、メタンガスが副産物として形成されが、より好ましくは、これは被覆チャンバーから、排出によってまたは不活性ガスで濯ぐことに除去される。したがって、メタンは第1保護層に含有されないことが好ましい。このことは、メタンの凝集が気状であるによって、有利に防止することができる。したがって、望ましくない副産物が、第1出発化合物および第2出発化合物の反応から第1保護層内に位置付けられることを有利に防止することができる。Al(OH)を第1保護層に含有させることが可能である。他の方法ステップでは、後者をさらに変換して、酸化アルミニウムを形成することができる。
【0026】
第1出発化合物としてトリメチルアルミニウムを用い、第2出発化合物としてHOまたはOを用いて製造された、酸化アルミニウムを含むかまたはこれからなる第1保護層は、有害な影響(特に加水分解)から蛍光体粒子を保護するのに特に適していることが証明された。その結果、例えばLEDの変換素子内に並べられた蛍光体粒子の変換効率を、LEDの耐用寿命にわたって一定に保つことができる。さらに、LEDによって外向きに放出された放射線の色位置は、その耐用寿命にわたり、一定にまたは事実上一定に、有利に保つことができる。
【0027】
一実施形態によれば、1つの分子単層からなる第1保護層は、ALD法を用いて製造することができる。この方法によって達成される第1保護層は、高密度で高品質であることから、蛍光体粒子の水分および/または酸素に対する効果的な保護を確実にするのに十分な厚さである。
【0028】
一実施形態によれば、方法ステップD)を数回実施する。よって、複数の第1保護層を、蛍光体粒子の表面に設けることが可能である。例としては、最大1000個の分子単層を製造することができる。原子層成長法を用いて第1保護層を繰り返し堆積することにより、特に高い気密性、したがって水などの有害な影響に対して特に高い保護を、実現することができる。
【0029】
方法の一実施形態によれば、方法ステップD)を様々な回数で繰り返して、蛍光体粒子の表面が複数の第1保護層で被覆されるようにする。例えば、前記複数の第1保護層の厚さを、1nmから500nmの間、好ましくは1nmから200nmの間、特に好ましくは1nmから100nmの間にすることができる。特に、1nmから100nmの間の層厚は、ALD被覆に関する十分な保護および時間の消費に対して有利であることが証明された。
【0030】
したがって、ALD法を用いることにより、保護層の厚さを、蛍光体粒子の要件または加水分解感受性に適応させることが可能になる。
【0031】
一実施形態によれば、方法ステップD)の後に、他の方法ステップ:
E)少なくとも1つの第1保護層で被覆された蛍光体粒子を、200℃から500℃、好ましくは250℃から400℃、例えば350℃で、焼き戻しを行うステップを行う。
【0032】
一実施形態によれば、方法ステップE)の焼き戻しを行うステップは、1から8時間、例えば5時間行う。
【0033】
一実施形態によれば、方法ステップE)の焼き戻しを行うステップは、酸素含有雰囲気下で行う。第1出発化合物の残留物、特に金属ハロゲン化物または有機金属化合物が、依然として第1保護層内に存在する場合、残留物を酸素で酸化することができる。例えば、気状COは、有機材料を第1保護層から除去することができるように、トリメチルアルミニウムの酸化によって形成される。例えば、酸素含有雰囲気は、空気である。
【0034】
一実施形態によれば、焼き戻しは、H含有雰囲気下で方法ステップE)によって行われる。
【0035】
一実施形態によれば、方法ステップE)の焼き戻しは、不活性ガス雰囲気下で行われる。不活性ガス雰囲気は、例えば、窒素、アルゴン、またはフォーミングガス雰囲気(HおよびNの混合物)とすることができる。
【0036】
一実施形態によれば、水酸化アルミニウムなどの、方法ステップD)で形成され得る水酸化物は、例えば脱水反応により、方法ステップE)で対応する酸化物と反応することができる。
【0037】
一実施形態によれば、方法ステップE)では、焼き戻しを時間当たり1℃から時間当たり100℃、好ましくは時間当たり5℃から時間当たり50℃、より好ましくは時間当たり10℃から時間当たり20℃、例えば時間当たり13℃または14℃の加熱速度で実施する。例えば、室温から350℃への加熱は24時間で行われ、したがって時間当たり13℃または14℃の加熱速度で行われる。
【0038】
一実施形態によれば、蛍光体は、ケイ素含有蛍光体および/またはアルミニウム含有蛍光体であり、方法ステップD)の前に、以下の方法ステップB)を実施する。
B) ケイ素含有蛍光体および/またはアルミニウム含有蛍光体粒子を酸溶液で処理するステップであって、酸溶液のpHを少なくとも1時間にわたりpH3.5から7、好ましくはpH4から6.5、特に好ましくはpH4.5から6に保持し、且つケイ素を含有する第2保護層を蛍光体粒子の表面に形成し、当該第2保護層のケイ素含量は蛍光体粒子よりも高い、および/またはアルミニウムを含有する第2保護層を蛍光体粒子の表面に形成し、当該第2保護層(3)の表面のアルミニウム含量は、蛍光体粒子とは異なる、特に低い。このような方法は、既に蛍光体粒子の加水分解に対する安定性を著しく増大させる。その上に第2保護層を設けることにより、その安定性は再び著しく増大する。したがって本発明に係る方法を用いて第1保護層および第2保護層が設けられた蛍光体粒子は、高い大気湿度の環境下での適用例に特に適したものとなる。
【0039】
一実施形態では、蛍光体粒子の表面に位置付けられた第2保護層は、そのケイ素原子含量%が蛍光体のそれよりも少なくとも40%高い、好ましくは少なくとも60%高い、および/またはそのアルミニウムの原子含量%が、蛍光体のそれよりも少なくとも10原子%低い、好ましくは少なくとも20原子%低い。
【0040】
一実施形態によれば、方法ステップB)の後および方法ステップD)の前に、以下の方法ステップC)をさらに実施する。
C)少なくとも100℃の温度で、処理後の前記蛍光体粒子(1)の焼き戻しを行うステップ。特に、焼き戻しは、酸素含有雰囲気中、300℃から450℃、特に好ましくは300℃から350℃の温度で実施する。
【0041】
さらに、方法ステップC)では、さらなる酸素を第2保護層に組み込む可能性もあるように、焼き戻しを酸素含有雰囲気中で実施することもできる。焼き戻し中、蛍光体粒子の周囲は、好ましくは空気、または空気とその他の気体(例えば窒素、希ガス、酸素)との混合物とすることができる。焼き戻し中は、加熱速度に限り広い範囲を使用することができる。特に、焼き戻し中の加熱速度は、1℃/時から100℃/時、好ましくは5℃/時から20℃/時、より好ましくは10℃/時から50℃/時にすることができる。
【0042】
一実施形態によれば、方法ステップは、下記の順序:A)、B)、C)、D)、E)で行う。
【0043】
方法ステップB)の後、または方法ステップB)と方法ステップC)の焼き戻しとの間、または方法ステップB)と方法ステップD)との間に、蛍光体粒子を、酸処理後に2から20時間、40から100℃で乾燥させる方法ステップC1)を存在させることができる。その後、蛍光粒子を篩い分けすることも可能である。
【0044】
酸処理を用いて第2保護層を製造するための方法は、独国特許出願第102015103326.7号に開示されている。この特許出願に開示される方法ステップ、および蛍光体は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0045】
一実施形態によれば、全ての加水分解感受性蛍光体粒子は、本発明に係る方法を用いて、第1の、または第1および第2保護層で被覆することができる。例えば、下記の蛍光体を考慮することができる。
(Ba1-x-ySrCa)SiO:Eu2+(0≦x≦1、0≦y≦1)、
(Ba1-x-ySrCaSiO:Eu2+(0≦x≦1、0≦y≦1)、
LiSrSiO:Eu2+、CaMg(SiOCl:Eu2+
オキソ窒化物、例えば(Ba1-x-ySrCa)Si:Eu2+(0≦x≦1;0≦y≦1)、
SrSiAl:Eu2+、Ba4-xCaSiON10:Eu2+(0≦x≦1)、
(Ba1-xSr)YSiAl:Eu2+(0≦x≦1)、
SrSi(6-y)Al(8-y):Eu2+(0.05≦x≦0.5;0.001≦y≦0.5)、
BaSi12:Eu2+、Si6-zAl8-z:Eu2+(0≦z≦0.42)、
Si12-m-nAlm+n16-n:Eu2+(M=Li、Mg、Ca、Y;x=m/v;v=mの価数、x≦0.2)、
Si12-m-nAlm+n16-n:Ce3+
AE2-x-aREEuSi1-y4-x-2y(AE=Sr、Ba、Ca、Mg;RE=希土類金属元素)、
AE2-x-aREEuSi1-y4-x-2y(AE=Sr、Ba、Ca、Mg;RE=希土類元素)、BaSi12:Eu2+、または
窒化物、例えばLaSi11:Ce3+、(Ba1-x-ySrCaSi:Eu2+、(Ca1-x-ySrBa)AlSiN:Eu2+(0≦x≦1;0≦y≦1)、
Sr(Sr1-xCa)AlSi:Eu2+(0≦x≦0.2)、
Sr(Sr1-xCa)AlSi:Ce3+(0≦x≦0.2)、SrAlSi:Eu2+
(Ba1-x-ySrCa)SiN:Eu2+(0≦x≦1;0≦y≦1)、
(Ba1-x-ySrCa)SiN:Ce3+(0≦x≦1;0≦y≦1)、
(Sr1-xCa)LiAl:Eu2+(0≦x≦1)、
(Ba1-x-ySrCa)MgAl:Eu2+(0≦x≦1;0≦y≦1)、
(Ba1-x-ySrCa)MgSiN:Eu2+(0≦x≦1;0≦y≦1)。
【0046】
好ましい実施形態によれば、蛍光体粒子は、その組成に少なくとも要素D、要素A1、要素AX、要素SX、および要素NXを含む無機物質を含有する蛍光体を含む。ここで、Dは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、およびYbの群からの1つ、2つ、またはそれ以上の元素であり;A1は、Dに含まれない2価の金属の群から選ばれる1つ、2つ、またはそれ以上の元素を表し;SXは、Siを含む4価の金属の群から選ばれる1つ、2つ、またはそれ以上の元素を表し;AXは、3価の金属の群から選ばれる1つ、2つ、またはそれ以上の元素を表し;NXは、O、N、S、C、Cl、Fの群から選ばれる1つ、2つ、またはそれ以上の元素を表す。特に、物質は、Sr(SrCa1-a)SiAlと同じ結晶構造を有する。特に、これらの蛍光体の場合、第1保護層は、加水分解効果に対して使用するのに有利であることが証明されている。従来の被覆は、これらの蛍光体を、水および/または酸素から不完全にしか保護しない。
【0047】
下記において、「Sr(SrCa1-a)SiAlと同じ結晶構造」を有する蛍光体は、空間群P1、P2、P1バー、またはP2で結晶化する発光物質と定義される。
【0048】
一実施形態によれば、蛍光体は、下記一般式を有する蛍光体である。
Sr(Sr1-a)SiAl(N,X):D,A,B,E,G,L
式中、Mは、Ca、Ba、Mg単独、または組合せから選択され;Dは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Li、Na、K、Rb、Cs、Yb、Tmの群からの1つ、2つ、またはより多くの元素であり;Aは、MおよびDとは異なる2価の金属から選択され;B=3価の金属であり;E=1価の金属であり;G=4価の元素であり;L=3価の元素である。下記も適用される:0.6≦a<1、好ましくは0.6≦a<1、およびXは、例えばOまたはハロゲンなどの元素を表し、これらは特に、占有された中間格子位置が、格子位置の結晶格子または空格子点に存在する場合、キャリア補償を行うのにも使用される。特に、蛍光体は、空間群P1、P2、P2、またはP1バーで結晶化する。
【0049】
一実施形態によれば、蛍光体は、下記一般式を有する蛍光体である。
Sr(Sr1-a)SiAl:D
式中、Mは、Ca、Ba、Zn、Mgの群から選択され、Dは、EuおよびCeから選択され、好ましくはEuである。さらに、下記が適用される:0.6≦a<1、好ましくは0.8≦a<1。好ましくは、M=Caである。特に、蛍光体は、空間群P1、P2、P2、またはP1バーで結晶化する。
【0050】
一実施形態によれば、蛍光体は、下記一般式を有する蛍光体である。
Sr(SrCa1-a)SiAl:D
式中、D=Eu、および0.8≦a<1、好ましくは0.8≦a<1である。特に、蛍光体は、空間群P1、P2、P2、またはP1バーで結晶化する。
【0051】
一実施形態では、Dの濃度は、アルカリ土類金属の濃度に対して0.1mol%から20mol%、好ましくは0.1%から10mol%、または1mol%から10mol%である。特に非常に好ましくは、Dの濃度は7mol%から10mol%である。
【0052】
本明細書に記述される蛍光体の例示的な実施形態は、下記の通り製造することができる。
【0053】
一般式Sr(SrCa1-a)SiAl:Euの蛍光体を合成するための出発材料として、構成元素の二成分窒化物、即ちCa、Sr、AlN、およびSiを使用する。これらは高度に酸化感受性および加水分解感受性の物質であるため、O<1ppmおよびHO<1ppmのN雰囲気、いわゆるグローブ・ボックスを使用する。さらに、Euを、Eu2+によるドーピングに使用する。計量は、準単純化表示で表した原子比が下記となるように実施する。
Sr:Ca:Si:Al:Eu=(1+a):(1-a):2:2:y
(式中、yは、ドーピングの程度、即ち、Euによって置換される2価の格子サイトの割合に該当する。)
さらに、1種または異なるフラックス剤を添加する。反応物混合物の全重量を、例えば上述の原子比を維持しながら、50~100gになるようにする。その他の総重量単位を使用することも可能である。
【0054】
遊離体混合物は、ZrOボールと一緒にPET混合容器内に導入され、例えば6時間、グローブ・ボックス内のローラー・バンク上で混合する。次いでボールを混合物から除去し、粉末を密閉したモリブデン坩堝に移す。当該坩堝を、タングステン坩堝内に導入し、タングステンで作製された半円形の開放管を配置し、管状炉内に移す。管状炉に、3L/分の流動時間中に、92.5% Nおよび7.5% Hのフォーミングガスを流す。混合物を、管状炉内で、250K/時の速度で1650℃に加熱し、この温度で4時間保持し、その後、250K/時で50℃に冷却する。得られたグローケーキは、炉の冷却後に取り出し、モルターミルを使用して破砕し、メッシュ・サイズが31μmの篩に通して篩い分けすることができる。31μm未満の篩画分は、それぞれ使用される蛍光体または使用される蛍光体粒子である。次いでこれらの蛍光体粒子は、方法ステップA)で使用することができ、少なくとも1つの第1保護層で、および任意選択で第2保護層で被覆される。
【0055】
少なくとも1つの実施形態によれば、溶融剤および/またはフラックスを、結晶化度を改善するため、および/または結晶成長を支援するために使用する。このために、アルカリ土類金属の塩化物、フッ化物、ハロゲン化物、および/またはホウ素含有化合物が、好ましくは使用される。2種以上の溶融剤またはフラックス剤の組合せを使用することもできる。特に、下記の物質の少なくとも1種は、溶融剤としておよび/またはフラックスとして働く:LiF、LiCl、NaF、NaCl、SrCl、SrF、CaCl、CaF、BaCl、BaF、NHCl、NHF、KF、KCl、MgF、MgCl、AlF、HBO、B、Li、NaBO、Na、LiBF。NHHF、NaBF、KBF、EuF、およびこれらから誘導される化合物、例えば水和物も適切である。
【0056】
任意選択で、篩い分けの後に、塩酸などの希酸の含浸を行い、その後に水中で分級し、さらにろ過することができる。分級は、例えば3回実施することができる。この分級は、蛍光体から破片および微粉を除去する働きをする。洗浄プロセスとも呼ぶことができるプロセスは、さらに、蛍光体粒子のより狭い、即ちより均質なサイズ分布を得る働きをする。次いで蛍光体粒子を乾燥することができる。次いでこれらの蛍光体粒子を、方法ステップA)で使用することができ、少なくとも1つの第1保護層、および任意選択で第2保護層で被覆する。
【0057】
特に、蛍光体は、国際出願番号PCT/EP2014/071544号に記載されているものを使用することができる。その出願に開示される蛍光体の特徴、合成、および性質は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0058】
本発明は、少なくとも1つの第1保護層を含む蛍光体粒子にも関する。特に、蛍光体粒子は、上述の方法の1つにより製造することができる。したがって、方法について開示される特徴は、蛍光体粒子に関しても開示され、その逆も同様である。
【0059】
蛍光体粒子は特定のものである。蛍光体粒子は、Si含有蛍光体および/またはAl含有蛍光体を含み、蛍光体粒子の表面は、少なくとも1つの第1保護層および1つの第2保護層で覆われており、第1保護層は第2保護層の上に配置されている。特に、少なくとも1つの第1保護層は、第2保護層を完全に覆う。特に、少なくとも1つの第1保護層および第2保護層は、直接、機械的に接触している。第2保護層は、蛍光体に対するSi含量が、少なくとも40原子%、好ましくは少なくとも60原子%高い、および/または蛍光体に比べてAl含量が、少なくとも10原子%、好ましくは20原子%低い。少なくとも1つの第1保護層は、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属アミド、金属水酸化物、および/または金属酸窒化物の分子単層を含む、あるいは分子単層からなる。
【0060】
金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属アミド、金属水酸化物、および/または金属酸窒化物の金属は、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、スズ、亜鉛、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、および/またはハフニウムから選択することができる。例えば、第1保護層は、Alなどの酸化アルミニウムを含む、または酸化アルミニウムからなる。
【0061】
一実施形態によれば、蛍光体粒子の表面は、複数の第1保護層で覆われる。前記複数の第1保護層は、1nmから500nm、好ましくは1nmから200nm、特に好ましくは1nmから100nmの層厚を有することができる。
【0062】
蛍光体粒子の指定された実施形態は、以下に述べる使用に適用することができる。蛍光体粒子およびそれを製造するための方法の全ての特徴は、使用に関しても開示され、その逆も同様である。
【0063】
本発明は、光をより長波長の光に変換するための、蛍光体粒子の使用に関する。このことは、蛍光体によって光が吸収され、より長波長の光として放出されることを意味すると理解されたい。
【0064】
本発明は、変換素子における蛍光体粒子の使用に関する。特に、変換素子は発光ダイオード(LED)の一部である。
【0065】
使用の一実施形態では、LEDは、動作中に400nmから500nmの波長範囲、例えば460nmの青色放射線を放出する半導体チップを有する。動作中に青色放射線を放出するのに適切な半導体チップは、例えば、窒化ガリウムまたは窒化インジウムガリウムをベースとする。
【0066】
変換素子として可能性のある実施形態は、キャストの形態をとる実施形態であり、キャストは、シリコーンなどのマトリックス材料と、蛍光体粒子とを含む。当該キャストは、半導体チップをその形態にぴったり添うように封入するものである。さらに、形態にぴったり添うように半導体チップを封入するキャストは、例えばハウジングを用いて、側壁上で安定化させることができる、例えばそのようなハウジングのリセス部に位置付けることができる。キャスト用の材料は、当業者に公知である。
【0067】
さらに、変換素子は変換層として含まれてもよい。変換層は、蛍光体粒子およびマトリックス材料を含有する。変換層の場合、変換層と半導体チップとの間に直接接触があり、このとき変換層の厚さは、例えば半導体チップの厚さよりも小さく、かつ、例えば、半導体チップの全ての放射線出口領域で一定でもよい。
【0068】
変換素子は、プレートまたはフィルムの形態をとることもできる。プレートまたはフィルムは、半導体チップの上方に配置される。変換素子の実施形態のこれらの他の変形例では、変換素子と半導体チップとが、必ずしも、直接接触するおよび/または形態がぴったりと添うような接触である必要はない。このことは、変換素子と半導体チップとの間に距離が存在する可能性があることを意味する。言い換えれば、変換素子は半導体チップの下流に配置され、半導体チップから放出される放射線の照射を受ける。次いでキャスト本体または空隙を、変換素子と半導体チップとの間に形成することができる。
【0069】
本発明の他の有利な実施形態および開発点は、図と関連して後述する例示的な実施形態から得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】少なくとも1つの第1保護層を有する蛍光体粒子を示す概略図である。
図2】少なくとも1つの第1保護層を有する蛍光体粒子を示す概略図である。
図3】第1保護層を有するか、有していない蛍光体粒子の、安定性試験の持続時間の関数として表される安定度を示す図である。
図4】第1保護層を有するか、有していない蛍光体粒子の、安定性試験の持続時間の関数として表される安定度を示す図である。
【0071】
図1は、蛍光体粒子1の概略図を示し、その表面は、少なくとも1つの第1保護層2で覆われている。第1保護層2は、本発明に係る方法を用いて製造することができる。この目的のため、例えば、式Sr(SrCa1-a)SiAl:Euの蛍光体の蛍光体粒子を、方法ステップA)で提供する。第1保護層2は、原子層成長法を用いて蛍光体粒子1の表面に設ける。方法ステップD1)では、第1出発化合物、例えばトリメチルアルミニウムを、原子層成長法を用いて蛍光体粒子の表面に堆積し、方法ステップD2)では、第2出発化合物、例えば水またはオゾンを、原子層成長法を用いて蛍光体粒子の表面に堆積する。酸化アルミニウムは、トリメチルアルミニウムと、水またはオゾンとの化学反応によって形成される。揮発するメタンガスが、副産物として形成される。第1保護層の気密性をさらに増大させるために、方法ステップE)で、第1保護層を200℃から500℃の温度で焼き戻しすることができる。焼き戻しが酸素含有雰囲気中で行われる場合、未反応のトリメチルアルミニウムを酸化アルミニウムおよびCOに変換することができる。さらに、例えば方法ステップE)では、既存のAl(OH)を脱水して酸化アルミニウムを形成することができる。したがって、第1保護層内に有機残留物が全くまたはほとんど残らないことを、保証することができる。
【0072】
図2は、蛍光体粒子1の概略図を示し、その表面は、第2保護層3および少なくとも1つの第1保護層2で覆われている。前記蛍光体粒子1を製造するために、例えば、式Sr(SrCa1-a)SiAl:Euの蛍光体の蛍光体粒子を方法ステップA)で提供する。第2保護層を製造するために、例えば、下記一般式の蛍光体20グラムを、脱イオン水200mlに添加し、撹拌を継続する。
Sr(SrCa1-a)SiAl:Eu
(式中、a=0.86であり、ユーロピウム含量が3%(相純度≧95%)である。)
希塩酸(c=2mol/L)6mlをこの分散体に添加し、混合物を75℃から85℃の温度に加熱する。混合物を、この温度範囲で保持し、5時間にわたり撹拌を継続する。pHを常に観察し、pH計に接続されている計量ポンプによって、pH5未満の値に保持する。合計で0.8mlの希塩酸を添加する。次いで酸で浸出させた蛍光体粒子をろ過し、吸引により抽出し、最初に水で、次いでエタノールで集中的に洗浄する。次いで蛍光体粒子を60℃で2時間乾燥し、次いで篩い分けする。乾燥蛍光体粒子は、350℃で5時間、任意選択で焼き戻しすることができる。蛍光体粒子1の表面への、特に第2保護層3上に第1保護層2を設けることは、原子層成長法を用いて実施される。この場合、方法ステップD1)では、第1出発化合物、例えばトリメチルアルミニウムを、原子層成長法を用いて蛍光体粒子の表面に堆積し、方法ステップD2)では、第2出発化合物、例えば水またはオゾンを、原子層成長法を用いて蛍光体粒子の表面に堆積する。第1保護層の気密性をさらに増大させるために、第1保護層を、方法ステップE)で200℃から500℃の温度で焼き戻しすることができる。
【0073】
図3は、少なくとも1つの第1保護層を有するか、有していない蛍光体粒子の、種々のレベルの安定性を示す。当該安定性は、蛍光体粒子がいわゆるPCT試験に曝露される持続時間の関数である、440nmから460nmの間の相対吸収に基づき決定されるものである。異なる蛍光体ごとに、PCT試験の持続時間(t)をx軸上にプロットし、440nmから460nmの間の相対吸収(A)をy軸上にプロットする。
【0074】
PCT試験は、発光物質粒子を100%の相対湿度および121℃の温度でシリコーン・マトリックス中に保持する、加速分解試験(「PCT」=プレッシャー・クッカー試験)である。粒子の安定性は、分解試験を開始する前に測定した吸収値と比較した、蛍光体の相対吸収値の低下に基づいて決定する。分解試験は、2500時間実施する。
【0075】
参照記号Rで示される曲線は、第2保護層のみで被覆されている蛍光体粒子の相対吸収の過程を示す。第2保護層は、独国特許出願第102015103326.7号に開示されるように、pHの関数である調節された量の酸を添加し、その後、焼き戻しすることによって製造した。
【0076】
参照符号Iで示される曲線は、第1の例示的な実施形態の蛍光体粒子の相対吸収の過程を示し、参照符号IIで示される曲線は、第2の例示的な実施形態の蛍光体粒子の相対吸収の過程を示し、参照符号IIIで示される曲線は、第3の例示的な実施形態の蛍光体粒子の相対吸収プロファイルを示し、参照符号IVで提示される曲線は、第4の例示的な実施形態の蛍光体粒子の相対吸収プロファイルを示す。
【0077】
第1の例示的な実施形態は、下記の通り製造した。
【0078】
上述のように、下記一般式の蛍光体粒子を製造した。
Sr(SrCa1-a)SiAl:Eu
(式中、a=0.86であり、ユーロピウム含量は3%(相純度≧95%)である。)
得られたグローケーキを冷却後に炉から取り出し、めのう製のモルターミルを使用して破砕し、メッシュ・サイズが31μmの篩に通して篩い分けした。31μm未満の篩画分は、それぞれ使用された蛍光体または使用された蛍光体粒子である。前記蛍光体粒子を、引き続き希酸に浸漬し、その後、水中で3回分級し、その後、ろ過し、吸引により抽出した。このことは、破片および微粉を除去する働きをする。この洗浄プロセスは、蛍光体粒子の、より狭いサイズ分布を得る働きもする。短時間の含浸の結果、方法ステップB)を実施するときに生じ得るような、第2保護層は特に生じない。次いで蛍光体粒子を乾燥した。一般式Sr(SrCa1-a)SiAl:Eu(式中、a=0.86であり、ユーロピウム含量が3%である)を有する得られた蛍光体粒子を、ALD被覆チャンバーに入れた。例えば、ALD被覆反応器Picosun POCA-100粉末カートリッジを、原子層成長法に使用することができる。150℃の堆積温度で、トリメチルアルミニウムを、原子層成長法を用いて蛍光体粒子の表面に最初に堆積させる。150℃の堆積温度は、被覆チャンバーの内部または被覆される蛍光体粒子およびプロセスガスが、この温度であることを意味する。トリメチルアルミニウムは、蛍光体粒子の表面に吸収される。次いで過剰なトリメチルアルミニウムを除去するために、被覆チャンバーをNでパージする。その後、水を蛍光体粒子の表面に衝突させる。第1保護層が、水とトリメチルアルミニウムとの反応によって蛍光体粒子の表面に形成される。次いで過剰な水およびメタンガスなどの得られる副産物を除去するために、被覆チャンバーをNでパージする。この堆積プロセスは、トリメチルアルミニウムの堆積からなり、Nで濯ぎ、水を分離し、Nで再度パージするものであり、合計で600回実施される。この結果、合計で層厚が94nmである、複数(600)の第1保護層が得られる。層密度は、例えば、蛍光体粒子の表面に類似した第1保護層が形成されているシリコン・ウェハを参照として使用する、反射型薄層測定を用いて決定することができる。トリメチルアルミニウムと水との反応は、Nによる濯ぎプロセスによって、気相中で既に防止することができる。したがってこの反応は、蛍光体粒子の表面でのみ生じる。
【0079】
第2の例示的な実施形態は、第1の例示的な実施形態と類似的に製造した。しかし、他の後続の方法ステップでは、蛍光体粒子を、空気中、炉内で350℃の温度で5時間焼き戻しし、次いで冷却した。
【0080】
第3の例示的な実施形態は、第1の例示的な実施形態と類似的に製造したが、異なる点は、第2出発化合物としてOを使用したことである。
【0081】
第4の例示的な実施形態は、第2の例示的な実施形態に類似して製造したが、異なる点は、第2出発化合物としてOを使用したことである。
【0082】
上記からわかるように、参照符号IIおよびIVで示される第2および第4の例示的な実施形態は、参照記号Rと比べて異なる分解挙動を示す。相対吸収のより遅い減少、ほぼ線形の減少が観察される。特に、熱処理された第1保護層を有する蛍光体粒子は、非常に良好な加水分解耐性によって区別される。
【0083】
図4は、少なくとも1つの第1保護層を有するか、有していない蛍光体粒子の、種々のレベルの安定性を示す。当該安定性は、発光粒子がPCT試験に曝露される持続時間の関数である、相対吸収に基づき決定されるものである。異なる蛍光体ごとに、PCT試験の持続時間(t)をx軸上にプロットし、440nmから460nmの間の相対吸収(A)をy軸上にプロットする。PCT試験は、図3に関連して記述された試験に該当する。試験の持続時間は1800時間であった。
【0084】
参照符号R2で示された曲線は、第2保護層のみで被覆されている蛍光体粒子の相対吸収の過程を示す。第2保護層は、独国特許出願第102015103326.7号に開示されるように、pHの関数である調節された量の酸を添加することにより製造した。
【0085】
参照符号Vで示された曲線は、第5の例示的な実施形態の蛍光体粒子の相対吸収過程を示し、参照記号VIで提示された曲線は、第6の例示的な実施形態の蛍光体粒子の相対吸収過程を示す。
【0086】
第5の例示的な実施形態では、蛍光体粒子を、第2保護層で最初に被覆した。この第2保護層は、上述のようにまたは独国特許出願第102015103326.7号に記載されるように製造した。第3の例示的な実施形態と比べると、トリメチルアルミニウムおよびオゾンは、第2保護層の上方に第1保護層を製造する際に、250℃の堆積温度で蛍光体粒子の表面に堆積させた。トリメチルアルミニウムの堆積、Nによる濯ぎ、オゾンの分離、および再度パージからなる堆積プロセスを、合計で200回実施した。この結果、合計で層厚が18nmである、複数の第1保護層が得られた。
【0087】
第6の例示的な実施形態を、第5の例示的な実施形態と類似的に製造した。しかし他の後続の方法ステップでは、蛍光体粒子を、空気中、炉内で、350℃の温度で5時間焼き戻しし、次いで冷却した。
【0088】
最も安定であることが証明された蛍光体粒子は、第1および第2保護層が設けられかつ被覆後に熱処理された粒子であることが、明らかにわかる(参照符号VI)。
【0089】
本発明は、例示的な実施形態に基づく記述によって、例示的な実施形態に制限されるものではない。むしろ本発明は、任意の新しい特徴と、特徴の任意の組合せをも包含し、それらには、たとえこの特徴またはこの組合せ自体が特許請求項または例示的な実施形態に明確に指定されていない場合であっても、特許請求項における特徴の任意の組合せが特に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 蛍光体
2 第1保護層
3 第2保護層
t 時間
A 相対吸収
I、II、III、IV、V、VI、R、R2 安定性曲線
図1
図2
図3
図4