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特許7049448カプロラクタム由来の溶媒を使用するポリウレタン分散方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】カプロラクタム由来の溶媒を使用するポリウレタン分散方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20220330BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20220330BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20220330BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20220330BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/10
C08G18/08 019
C08G18/28 005
C08G18/65
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020520198
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018038924
(87)【国際公開番号】W WO2019005596
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】62/524,786
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/579,636
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517213094
【氏名又は名称】アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ADVANSIX RESINS & CHEMICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】アサーバサン,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】デ・ラメ,セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】フロレス-バスケス,ハイメ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102007028890(DE,A1)
【文献】特表2012-529547(JP,A)
【文献】特開2017-101198(JP,A)
【文献】特開2013-227528(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189084(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン分散液を形成する方法であって、
少なくとも1種類の溶媒中に溶解されている、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤からプレポリマーを形成する工程、ここで、前記少なくとも1種類の溶媒は、式:
【化1】
(式中、Rは、エチル基である
のカプロラクタム誘導体の形態である;
少なくとも1種類の塩基を前記プレポリマーに添加する工程;及び
前記プレポリマーを水中に分散させる工程;
を含む上記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種類の塩基はアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマージオールは、ポリエーテルオール、ポリエステルオールポリアミドオール、アクリルポリマージオール、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種類のポリマージオールを含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエステルジオールは、ポリカーボネートジオールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つは、ジイソシアネートであり、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネート並びにそれらの組合せから選択される少なくとも1種類のジイソシアネートを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記親水剤は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記親水剤は、ジメチロールプロピオン酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ブロッキング剤を使用して前記プレポリマーを少なくとも部分的にブロックする工程を更に含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ブロッキング剤は、アルコール類、フェノール類、C-H-酸化合物、オキシム、ピラゾール類、イミダゾール類、環式アミド、エステルアミン、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキルエステル、ベンジル-tert-ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルアミン、エチルアセトアセテート、及び/又はそれらの混合物から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリウレタン分散液組成物であって、
水と式:
【化2】
(式中、Rは、エチル基である
のカプロラクタム誘導N-アルキル溶媒との溶液中に分散されている、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤から形成されるポリウレタン;
を含む上記ポリウレタン分散液組成物。
【請求項11】
さらにブロッキング剤を含む請求項10に記載のポリウレタン分散液組成物。
【請求項12】
ブロッキング剤は、アルコール類、フェノール類、C-H-酸化合物、オキシム、ピラゾール類、イミダゾール類、環式アミド、エステルアミン、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキルエステル、ベンジル-tert-ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルアミン、エチルアセトアセテート、及び/又はそれらの混合物から選ばれる、請求項11に記載のポリウレタン分散液組成物
【請求項13】
ポリウレタン分散液を形成する方法であって、
水及び少なくとも1種類の処理溶媒中に溶解された、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤から形成されるポリウレタンプレポリマーを提供する工程;及び
前記ポリウレタン分散液に造膜助剤を添加する工程、ここで前記造膜助剤は式:
【化3】
(式中、n=0又は1であり、RはH又はメチルであり、R及びRは、それぞれ、エチル基である
の1つの形態である;
を含む上記方法。
【請求項14】
造膜助剤は式:
【化4】
(式中、Rは、エチル基である
の1つの形態である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ポリウレタン分散液を形成する方法であって、
少なくとも1種類の処理溶媒中に溶解された、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤からプレポリマーを形成する工程;
前記プレポリマーに少なくとも1種類の塩基を添加する工程;
前記プレポリマーを水中に分散させる工程;
前記ポリウレタン分散液から処理溶媒を除去する工程;
前記ポリウレタン分散液に造膜助剤を添加する工程、ここで前記造膜助剤は式:
【化5】
(式中、n=0又は1であり、RはH又はメチルであり、R及びRは、それぞれ、エチル基である
の1つの形態である;
を含む上記方法。
【請求項16】
式:
【化6】
(式中、n=0又は1であり、R はH又はメチルであり、R及びR は、それぞれ、エチル基である)
の1つの形態である化合物の、ポリウレタン分散液を形成する方法における造膜助剤としての使用。
【請求項17】
ポリウレタン分散液を形成する方法が、
少なくとも1種類の処理溶媒中に溶解された、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤から形成されるプレポリマーを提供する工程;
前記プレポリマーに少なくとも1種類の塩基を添加する工程;
前記プレポリマーを水中に分散させる工程;
前記ポリウレタン分散液から処理溶媒を除去する工程;
前記ポリウレタン分散液に造膜助剤を添加する工程、
を含む、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、「カプロラクタム由来の溶媒を使用するポリウレタン分散方法及び組成物」と題された2017年6月26日に出願の米国仮特許出願第62/524,786号、及び「カプロラクタム由来の溶媒を使用するポリウレタン分散方法及び組成物」と題された2017年10月31日に出願の米国仮特許出願第62/579,636号(これらの全ての開示事項は、参照により明示的に本明細書に組み込まれる)の35USC.§119(e)に基づく利益を主張する。。
【0002】
[0002]本発明は、ポリウレタン分散液の調製及び/又は使用のための溶媒に関し、詳しくはポリウレタン分散液中の処理溶媒及び/又は造膜助剤(coalescing agent)として使用するためのカプロラクタム由来の溶媒に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]ポリウレタン分散液(PUD)は、溶媒を少ししか含有しないか又は全く含有しない接着剤を製造するという、接着剤産業に対する増加する環境要求に対処するために数十年前に開発された。より近年において、PUDは、用途の中でも、被覆、接着剤、シーラント、及びエラストマーとして使用されている。PUDは、高分子量ポリウレタンの水性アニオン性分散液であり、広範囲の用途に関して、靭性、並びに耐引掻性及び耐化学薬品性のようなポリウレタンポリマーの利点を与える。
【0004】
[0004]一般的に、PUDは、2つのプロセスの1つによって製造される。本明細書において伝統的なPUD製造プロセスと呼ぶ第1のプロセスはまず、処理溶媒の存在下で、ポリマージオール、ジイソシアネート、及び親水剤の間の反応によってプレポリマーを製造することを含む。親水剤中の遊離酸基は、塩基、好ましくは窒素含有塩基で中和した後に、樹脂の水溶性又は水分散性を増大させる。
【0005】
[0005]しかしながら、PUDプレポリマー、特に低い分子量及び高い固形分を有するもの製造は、粘度を制御するために多量の処理溶媒を必要とする。N-アルキルピロリドン、特にN-メチル(NMP)、N-エチル(NEP)、N-ブチル(NBP)、及び他のアルキルピロリドンが、長年にわたり処理溶媒として使用されてきた。しかしながら、毒性の懸念のために、N-アルキルピロリドン及び他の溶媒の使用を排除する大きな規制圧力が存在する。例えば、NMP及びNEPは、欧州において生殖毒性区分1Bに分類されており(欧州委員会規則(EC)第1272/2008号(CLP)及び(EU)第944/2013号:それぞれ2016年12月19日)、NMP及び類似の化学物質は、現在、米国において初期リスク評価中である。したがって、PUD製造者は、NMPの好適な代替物を探し求めている。近年において、伝統的なPUD製造プロセスにおいて使用するための1つの既存の種類の溶媒としては、Vandeputteらの米国特許出願公開第2015/0057375号に開示されているもののような潜在的により毒性の低いNMP誘導体が挙げられる。
【0006】
[0006]ピロリドン系溶媒を使用することに対する1つの代替法としては、PUDの製造のためにNMPの代わりにアセトン或いはアセトン及び/又はメチルエチルケトン(MEK)の混合物を使用することが挙げられる(Tsaurの米国特許第4,820,762号を参照)。このプロセス(本明細書においては無溶媒PUD製造プロセスと呼ぶ)は、最終分散液生成物を配合する前に処理溶媒を除去する工程を含み、この理由のために、この方法は「無溶媒」とみなされる。
【0007】
[0007]しかしながら、これらの無溶媒ベースの方法には欠点がないわけではない。例えば、プレポリマーのために十分に低い所望の粘度を達成するためには通常は多量のMEK又はアセトンが必要であり、したがって、操作はより大きな反応及び処理容器が必要であり、これによりこれらのタイプのプロセスは複雑かつ高価になる。加えて、これらの溶媒は造膜助剤ではないので、ポリウレタン分散液組成物を製造した後、販売及び/又は適用する前に、それらを完全に除去しなければならない。更に、PUD樹脂の製造のために最も一般的に使用される親水剤であるジメチロールプロピオン酸(DMPA)は、NMPの代わりに使用されてきたアセトン及びMEKと相溶性でない。その結果、アセトン及び/又はMEK溶媒の使用には、かかる溶媒と相溶性である高価な親水剤のジメチロールブタン酸(DMBA)の使用が必要であった。しかしながら、DMBAはDMPAよりも非常により高価である。PUDを配合する従来方法の別の欠点は、PUD樹脂中に残留溶媒が存在し、これが分散液において造膜工程に悪影響を与えることである。したがって、顧客又はエンドユーザは、造膜効果(coalescing effect)を達成するために造膜助剤を添加しなければならず、これはコストを増加させる。
【0008】
[0008]複雑な「アセトン」プロセスを回避するために、ポリオール、ポリイソシアネート、及び親水性酸成分を溶媒を使用しないで反応させる「溶融」プロセスを使用することができる。この方法においては、連鎖延長工程は、粘度の蓄積を避けるために中和及び分散工程の後に完了させる。しかしながら、この「溶融」プロセスは、PUD樹脂の製造中に高い粘度を引き起こし、種々のタイプのPUD樹脂の連鎖骨格を生成するための全ての異なるタイプのポリオール及びポリイソシアネートに適しているわけではない。
【0009】
[0009]N-アルキルピロリドン又はケトンの使用を避けることを目的とする別の方法においては、ポリオールの代わりにモノマーをポリイソシアネート及び親水剤と反応させてPUD樹脂を製造する。このプロセスにおいては、モノマーは、プロセス中に粘度を制御することを可能にするための溶媒として作用する。一例は、PUDの製造のためのアクリルモノマー(アクリル酸/メタクリル酸及びエステル)の使用である。このタイプの方法は複雑であり、アクリル変性PUDにのみ適用され、例えばポリエーテル、ポリエステル、アルキド、ポリカーボネート(米国特許第8,859,676号参照)、及びポリアミドのような他のポリオール系には適用できない。
【0010】
[0010]PUDの他のバージョンにおいては、部分ブロックイソシアネート基を有するポリイソシアネートを用いて「ブロックPUD」系を生成させており、これは被覆又は塗料の特性を改変するために使用することができ、加熱硬化が必要である。このようなブロックPUDは、ポリオール、ポリイソシアネート、及び親水剤から製造されたポリウレタンプレポリマーを、プレポリマー中のイソシアネート基の一部のみがブロックされるような量のブロッキング剤を添加することによって部分的にブロックすることによって製造することができる。残りのイソシアネート基は、PUDの製造のためのその後の連鎖延長工程を可能にする。別の方法においては、部分ブロックポリイソシアネート(HDI三量体、IPDI三量体)をプレポリマーの製造において使用する。ブロック又は部分ブロックPUD系の製造は周知であり、米国特許第4,098,933号、第4,835,210号、第5,157,074号、第7,589,148号、及び第8,859,676号に更に記載されている。このような部分ブロックPUDプレポリマーの製造中に粘度を制御することは、ブロックポリイソシアネートからのイソシアネート基の存在のために、更により重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2015/0057375号
【文献】米国特許第4,820,762号
【文献】米国特許第8,859,676号
【文献】米国特許第4,098,933号
【文献】米国特許第4,835,210号
【文献】米国特許第5,157,074号
【文献】米国特許第7,589,148号
【文献】米国特許第8,859,676号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[0011]したがって、(ジイソシアネートに対して)不活性で非反応性であり、親水剤と適合性であり、広いpH範囲にわたって加水分解安定性であり、PUD樹脂の良好な粘度制御を与え、無毒であり、高い溶媒和力、中程度の蒸発速度、及び低い臭気を有する溶媒が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[0012]本発明は、ポリウレタン分散液(PUD)中の処理溶媒及び/又は造膜助剤としての使用に適したカプロラクタム由来の溶媒を提供する。より具体的には、カプロラクタム由来の溶媒は、伝統的なPUD製造プロセスによって生成されるPUD中の処理溶媒及び造膜助剤として、又は無溶媒PUD製造プロセスによって生成されるPUD分散液中の造膜助剤として使用するのに適している。また、1種類より多いカプロラクタム由来の溶媒のブレンドを、処理溶媒及び/又は造膜助剤として使用することができる。
【0014】
[0013]その一形態において、本発明は、ポリウレタン分散液を形成する方法であって、少なくとも1種類の溶媒中に溶解されている、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤からプレポリマーを形成する工程(ここで、少なくとも1種類の溶媒は、式:
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、Rは1~5炭素の非置換又は置換アルキル基である)
のカプロラクタム誘導体の形態である);プレポリマーに少なくとも1種類の塩基を添加する工程;及びプレポリマーを水中に分散させる工程;を含む上記方法を提供する。
【0017】
[0014]アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、及び置換アルキルから選択することができる。
[0015]この方法において、次の条件:少なくとも1種類の塩基はアミンである;ポリマージオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアミドポリオール、アクリルポリオール、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種類のポリマージオールを含む;ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つはジイソシアネートであり、これは脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネート並びにそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種類のジイソシアネートを含む;及び、親水剤は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される;の少なくとも1つを存在させることができる。
【0018】
[0016]少なくとも1種類の溶媒としては、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、及びN-ブチルカプロラクタムの少なくとも2つのブレンドを挙げることができる。
【0019】
[0017]ブレンドには、第1及び第2の溶媒の合計重量を基準として25~75重量%の範囲の第1の溶媒及び75~25重量%の範囲の第2の溶媒を含ませることができる。第1の溶媒はN-メチルカプロラクタムであってよく、第2の溶媒はN-エチルカプロラクタムであってよい。ブレンドには、第1及び第2の溶媒の合計重量を基準として約50重量%のN-メチルカプロラクタム及び約50重量%のN-エチルカプロラクタムを含ませることができる。
【0020】
[0018]ブレンドには第1の溶媒及び第2の溶媒を含ませることができ、第1の溶媒と第2の溶媒との間の比は、2:1、1:1、又は1:2のうちの1つである。
[0019]本方法には更に、ブロッキング剤を使用してプレポリマーを少なくとも部分的にブロックする工程を含ませることができる。
【0021】
[0020]その別の形態においては、本発明は、水と、カプロラクタム由来のN-アルキル溶媒及び開鎖エステルアミドの1つとの溶液中に分散されている、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤から形成されるポリウレタンを含むポリウレタン分散液組成物を提供する。
【0022】
[0021]カプロラクタム由来のN-アルキル溶媒は、式:
【0023】
【化2】
【0024】
のものであってよく、開鎖エステルアミドは、式:
【0025】
【化3】
【0026】
のものであってよく、式中、n=0又は1であり、RはH又はメチルであり、R及びRはそれぞれ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及びイソブチルから選択される1~5炭素の非置換又は置換アルキル基である。
【0027】
[0022]ポリウレタン分散液組成物において、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、及び置換アルキルの1つであってよい。
[0023]ポリウレタン分散液組成物において、カプロラクタム由来のN-アルキル溶媒及び開鎖エステルアミドの1つは、分散液の約1重量%~約10重量%の間を構成していてよい。ポリウレタン分散液組成物において、カプロラクタム由来のN-アルキル溶媒及び開鎖エステルアミドの1つは、組成物の約3重量%~約6重量%の間を構成していてよい。
【0028】
[0024]その別の形態においては、本発明は、ポリウレタン分散液を形成する方法であって、少なくとも1種類の処理溶媒中に溶解されている、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤からプレポリマーを形成する工程;プレポリマーに少なくとも1種類の塩基を添加する工程;プレポリマーを水中に分散させる工程;ポリウレタン分散液から処理溶媒を除去する工程;造膜助剤をポリウレタン分散液に添加する工程;を含み、造膜助剤は式:
【0029】
【化4】
【0030】
(式中、n=0又は1であり、RはH又はメチルであり、R及びRはそれぞれ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及びイソブチルから選択される1~5炭素の非置換又は置換アルキル基である)
の1つの形態である上記方法を提供する。
【0031】
[0025]アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、及び置換アルキルから選択することができる。アルキル基はメチルであってよい。アルキル基はエチルであってよい。
【0032】
[0026]本方法においては、次の条件の少なくとも1つが存在しうる:処理溶媒は、アセトン及びメチルエチルケトン並びにそれらの組み合わせから選択される;少なくとも1種類の塩基はアミンである;ポリマージオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアミドポリオール、アクリルポリオール、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種類のポリマージオールを含む;ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つはジイソシアネートであり、それは脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネート並びにそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種類のジイソシアネートを含む;親水剤は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、処理溶媒は、アセトン及びメチルエチルケトン並びにそれらの組み合わせから選択され、親水剤はジメチルブタン酸である。
【0033】
[0027]本方法には、ブロッキング剤を使用してプレポリマーを少なくとも部分的にブロックする工程を更に含ませることができる。
[0028]本明細書で使用される「前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内」という句は、文字通り、値がリストの下位部分にあるか、又はリストの上位部分にあるかかかわらず、かかる句の前にリストされた値の任意の2つから任意の範囲を選択することができることを意味する。例えば、2つのより低い値、2つのより高い値、又はより低い値とより高い値から1対の値を選択することができる。
【0034】
[0029]添付の図面と併せて本発明の実施形態の下記の説明を参照することによって、本発明の上記及び他の特徴、並びにそれらを達成する方法がより明らかになり、本発明それ自体がより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】[0030]図1は、伝統的なPUD製造プロセスの図である。
図2】[0031]図2は、無溶媒PUD製造プロセスの図である。
図3A】[0032]図3Aは、プレポリマーにブロッキング剤を導入してブロックPUDを製造することを含む伝統的なPUD製造プロセスの図である。
図3B】[0033]図3Bは、プレポリマーにブロッキング剤を導入して無溶媒ブロックPUDを製造することを含む無溶媒PUD製造プロセスの図である。
図4A】[0034]図4Aは、ブロックイソシアネートを導入してブロックPUDを製造することを含む伝統的なPUD製造プロセスの図である。
図4B】[0035]図4Bは、ブロックイソシアネートを導入して無溶媒ブロックPUDを製造することを含む無溶媒PUD製造プロセスの図である。
図5】[0036]図5は実施例3に対応し、種々の造膜助剤に関する貯蔵安定性及び粘度のグラフである。
図6】[0037]図6は実施例3に対応し、種々の造膜助剤に関するオープンタイムのグラフである。
図7】[0038]図7は実施例3に対応し、種々の造膜助剤に関する乾燥時間のグラフである。
図8】[0039]図8は実施例3に対応し、エステルアルコール、NBP、N-メチルカプロラクタム(NMCPL)、NMP、及びN-エチルカプロラクタム(NECPL)に関する凍結-融解安定性及び膜特性を示す。
図9】[0040]図9は実施例3に対応し、5回の凍結-融解サイクルにかけた後のN-メチルカプロラクタム(NMCPL)、1:1のNMCPL:NECPL、2:1のNMCPL:NECPL、及び1:2のNMCPL:NECPLの凍結-融解安定性及び膜特性を示す。
【0036】
[0041]対応する参照符号は、いくつかの図にわたって対応する構成要素を示す。図面は本発明による種々の特徴及び構成要素の実施形態を表すが、図面は必ずしも等縮尺ではなく、本発明をより良く例示し且つ説明するために、幾つかの特徴が誇張されている場合がある。本明細書に示される例示は本発明の1以上の実施形態を示し、そのような例示は、いかなるようにも本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0042]本発明は、PUD分散液中の処理溶媒及び/又は造膜助剤として使用するのに適したカプロラクタム由来の溶媒を提供する。より具体的には、カプロラクタム由来の溶媒は、伝統的なPUD製造プロセスによって生成されたPUD分散液中の溶媒及び造膜助剤を処理するために、又は無溶媒PUD製造プロセスによって作製されたPUD分散液中の造膜助剤として適している。
【0038】
I.カプロラクタム由来の溶媒:
[0043]本発明の溶媒はカプロラクタムから誘導することができ、次の一般式(I)又は(II):
【0039】
【化5】
【0040】
【化6】
【0041】
(式中、n=0又は1であり、RはH又はメチルであり、R及びRはそれぞれ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、又はイソブチルなどの1~5炭素の非置換又は置換アルキル基、又はシアノ、ニトロ、ニトロソ、ホルミル、又は他の極性置換基を含む置換アルキル基、例えば2-シアノエチルである)
の1つを有していてよい。Rはまたベンジルであってもよい。一実施形態においては、n=0であり、Rはメチルである。別の実施形態において、n=1であり、Rは水素である。
【0042】
[0044]以下に更に議論されるように、本発明の溶媒は、ポリウレタンプレポリマーの製造における処理溶媒として、及び/又はポリウレタン分散液中の造膜助剤として使用することができる。
【0043】
[0045]カプロラクタム由来の溶媒を製造するための幾つかのプロセスが存在する(例えば、ドイツ特許DE-2025172、ドイツ特許DE-3735904、ルーマニア特許RO-102421、米国特許3,865,814、Takahataらの米国特許5,338,861(相転移触媒を用いるラクタムのN-アルキル化)、HeteroCycles:An International Journal for Reviews and Communications in Heterocyclic Chemistry,1979, Vol.12, No.11, pp.1449-51、及びCuibanらの"N-Substituted Derivatives of ε-caprolactam and Their Thermal and Chemical Behavior", ARKIVOC Journal, Vol. 2002, Part(ii), pp. 56-63)。1つのかかる方法は、アミド基を水素化ナトリウムのような塩基又はナトリウム金属で脱プロトン化すること、続いてアルキルハロゲン化物、ジアルキルスルフェート、又はアルキルトシレート/アセテートのようなアルキル化剤でアルキル化すること、続いて副生成物を除去するための水性後処理を行うことを含む。一例として、カプロラクタム由来の溶媒上のアルキル基が2-シアノエチルである場合には、アクリロニトリルがアルキル化剤の好ましい選択肢である。
【0044】
[0046]開鎖エステルアミドを有する溶媒を製造するための幾つかの方法も存在する。1つの方法は、2-メチルグルタルイミド又はアジピミドのような環状イミドを、アルコールによって開環し、次にトランスジアルキルアミド化することを含む。別の方法は、ジアルキルアミンによってジアルキルジペート又はアジピン酸一酸塩化物をトランスアミド化することを含む(例えば、PCT特許出願公開WO-2009/056477号)。
【0045】
[0047]種々の実施形態においては、カプロラクタム由来の溶媒は個々に使用することができ、又は2種類以上のカプロラクタム由来の溶媒を一緒にブレンドすることができる。
[0048]例えば、いくつかの実施形態においては、本発明のカプロラクタム由来の溶媒は、第1及び第2の異なるカプロラクタム由来の溶媒を含むブレンドされた溶媒組成物であってよい。第1の溶媒は、第1及び第2の溶媒の合計重量を基準として、15重量%、25重量%、35重量%のような少ない量、又は65重量%、75重量%、又は85重量%のような多い量で存在させることができ、又は、第1の溶媒は、例えば15重量%~85重量%、25重量%~75重量%、又は35重量%~65重量%のような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内の量で存在させることができる。
【0046】
[0049]第2の溶媒も、第1及び第2の溶媒の合計重量を基準として、15重量%、25重量%、35重量%のような少ない量、又は65重量%、75重量%、又は85重量%のような多い量で存在させることができ、又は、例えば15重量%~85重量%、25重量%~75重量%、又は35重量%~65重量%のような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内の量で存在させることができる。
【0047】
[0050]言い換えれば、第1及び第2のカプロラクタム由来の溶媒は、種々の比率、例えば、1:1、2:1、又は1:2で与えることができる。
[0051]より具体的には、カプロラクタム由来の溶媒には、n-メチルカプロラクタム及びn-エチルカプロラクタムの合計重量を基準として、15重量%、20重量%、又は25重量%のような少ない量、又は65重量%、75重量%、又は85重量%のような多い量で存在するか、又は前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内の量で存在するn-メチルカプロラクタム(N-MeCPL又はNMCPL)、並びに、n-メチルカプロラクタム及びn-エチルカプロラクタムの合計重量を基準として、15重量%、20重量%、又は25重量%のような少ない量、又は65重量%、75重量%、又は85重量%のような多い量で存在するか、又は前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内の量で存在するn-エチルカプロラクタム(N-EtCPL又はNECPL)を含ませることができる。
【0048】
[0052]言い換えれば、n-メチルカプロラクタム及びn-エチルカプロラクタムは、種々の比、例えば17:3、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、又は3:17、或いはそれらの間の任意の比で与えることができる。
【0049】
II.PUDの形成:
A.伝統的なPUD製造プロセス-処理溶媒及び造膜助剤の両方として作用する溶媒:
[0053]図1を参照すると、伝統的なPUD製造プロセス100において、プレポリマー110は、上記のパートIで論じた1種類以上の溶媒108及び連鎖延長剤125の存在下でのポリマージオール102とポリ又はジイソシアネート104との間の反応によって製造される。プレポリマー又はPUD樹脂110は、一般に式:
【0050】
【化7】
【0051】
のものである。
[0054]ポリマージオール102とポリ又はジイソシアネート104との間の反応は、カルボン酸基を導入するための親水剤106を更に含む。例えば、プレポリマーのポリマージオールは、ヒドロキシル末端ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アルキド、ポリカーボネートポリオール、ポリアミドポリオール、又はアクリルポリオールであってよく、ポリ又はジイソシアネートは、例えば、脂肪族ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートの1つ、或いは脂肪族又は芳香族ジイソシアネートから製造されるポリイソシアネート、例えばトリス(ヘキサメチレンジイソシアネート)三量体又はイソホロンジイソシアネート三量体であってよく、親水剤は、DMPA又はポリエチレンポリオール-DMPAのいずれかであってよい。好適な連鎖延長剤としては、ジオール、アルキルアミンアルコール、及びアミンとアルコールの混合物が挙げられる。
【0052】
[0055]連鎖延長ポリウレタンプレポリマー又はPUD樹脂110は、続いて、少なくとも1種類の塩基又は酸中和剤112と混合し、水114中に分散させて、ポリウレタン分散液116を生成させる。塩基又は中和剤は、プレポリマー110が水114中の水溶性アミン塩となることを可能にするために与えられる。塩基又は中和剤114は、一般に、例えばトリメチルアミンのようなアミンである。
【0053】
[0056]この伝統的な製造プロセスにおいては、カプロラクタム由来の溶媒は、ポリウレタン分散液のための処理溶媒及び造膜助剤の両方として作用し、カプロラクタム由来の溶媒は、ポリウレタン分散液の総重量を基準として、1重量%、2重量%、又は3重量%のような少ない量、又は6重量%、8重量%、又は10重量%のような多い量で存在させることができ、又は例えば、1重量%~10重量%、又は3重量%~6重量%のような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内の量で存在させることができる。
【0054】
B.無溶媒PUD製造プロセス-造膜助剤として作用する溶媒:
[0057]図2を参照すると、無溶媒PUD製造プロセス200においては、プレポリマー又はPUD樹脂210は、処理溶媒208、通常はアセトン及び/又はメチルエチルケトン(MEK)、及び連鎖延長剤225の存在下での、ポリマージオール202とポリ又はジイソシアネート204との間の反応によって製造される。プレポリマー又はPUD樹脂210は、一般にプレポリマー/PUD樹脂110と同様に式:
【0055】
【化8】
【0056】
のものである。ポリマージオール202とジイソシアネート204との間の反応には、反応を促進するために親水剤206を更に含ませることができる。プレポリマー/PUD樹脂210のポリマージオール202は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアミドポリオール、及びアクリルポリオールの1つであってよく、ジイソシアネート204は、脂肪族ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートの1つであってよく、親水剤206は、ジメチルブタン酸(DMBA)であってよい。次に、ポリウレタンプレポリマー210を、アミンなどの少なくとも1種類の塩基212と混合し、水214中に分散させて、ポリウレタン分散液216及び溶媒208の溶液218を生成させることができる。
【0057】
[0058]その後、処理溶媒208をポリウレタン分散液216及び溶媒208の溶液から除去して、無溶媒PUD216を生成させることができる。特に、溶媒208は、蒸留又は他の類似の方法によって溶液から除去することができる。
【0058】
[0059]しかしながら、無溶媒PUD216が良好な造膜を示すため、及び水性ポリウレタン分散液から所望される膜硬度、オープンタイム、乾燥時間、及び他の特性を向上させるために、造膜助剤、すなわち、上記のパートIで論じた1種類以上のカプロラクタム由来の溶媒を使用して、最低造膜温度(MFFT)を低下させることができる。また、水性被覆において低揮発性有機化合物(VOC)造膜助剤を使用することが望ましい場合もある。上記のパートIで論じたカプロラクタム由来の溶媒は、低VOC造膜助剤であり、水性分散液及びエマルジョンにおける揮発性グリコール、グリコールエーテル、及びアルコールエステルの好適な代替物である。
【0059】
C.ブロックイソシアネートを有するPUD:
[0060]図3A図3B図4A、及び図4Bを参照すると、上記で論じた2つの製造プロセスのいずれかを僅かに変更して、少なくとも1つのブロックイソシアネート基を含むPUDを形成することができる。一般に、ポリイソシアネート又はジイソシアネートのイソシアネート基(すなわち、N=C=O基(NCO))の約60~90当量モル%は、通常は所与のブロックPUD326/426/526/626においてブロックされる。以下に記載されるように、上記で論じた製造プロセスを2つの方法の1つにおいて変更して、形成されるPUDが少なくとも1つのブロックイソシアネート基を含むようにすることができる。
【0060】
[0061]例えば、図3A及び図3Bを参照すると、伝統的な製造プロセス及び無溶媒製造プロセスは、プレポリマー321を形成した後にブロッキング剤320/420を含ませることによって変更して、少なくとも1つのイソシアネート基がブロックされている部分ブロックポリウレタンプレポリマー322/422を形成することができる。
【0061】
[0062]部分ブロックポリウレタンプレポリマー322/422は、一般に式:
【0062】
【化9】
【0063】
(式中、BAは、ブロッキング剤でブロックされているイソシアネート基を表す)
のものである。上記の式から分かるように、一部のイソシアネート基はブロックされていないままであり、これらは上記の式においてN=C=O基として示されている。種々の実施形態においては、部分ブロックポリウレタンプレポリマー322/422を、ジアミン又はトリアミンのような連鎖延長剤325/425と反応させて、式:
【0064】
【化10】
【0065】
の部分ブロック連鎖延長プレポリマーを形成することができる。
[0063]いずれかのプロセスによって部分ブロックポリウレタンプレポリマー322/422から形成されるブロックPUD326/426は、次に、非ブロックPUDと同様に、基材上に被覆又は膜として施すことができる。
【0066】
[0064]引き続き図3A及び3Bを参照すると、ブロックPUD326/426は、パートII(A)(図3A)において上記で論じたものと同様の伝統的なPUD製造プロセス300を使用するか、又はパートII(B)(図3B)において上記で論じたものと同様の無溶媒PUD製造プロセス400を使用して、部分ブロックポリウレタンプレポリマー322/422から形成することができる。
【0067】
[0065]図3Aを参照すると、伝統的なPUD製造プロセス300を使用して、ポリイソシアネート304を、パートIにおいて上記で論じた1種類以上の溶媒108の存在下でポリマージオール302及び親水剤306と反応させて、プレポリマー321を生成させることができる。次に、プレポリマー321をブロッキング剤320と反応させて部分ブロックプレポリマー322を形成し、次にこれを連鎖延長剤325と反応させて、PUD樹脂310を形成することができる。続いて、PUD樹脂310を少なくとも1種類の塩基又は酸中和剤312と混合し、水314中に分散させて、ブロックポリウレタン分散液(PUD)326を生成させることができる。
【0068】
[0066]図3Bを参照すると、無溶媒PUD製造プロセス400を使用して、ポリイソシアネート404を、1種類以上の処理溶媒408の存在下でポリマージオール402及び親水剤406と反応させて、プレポリマー421を生成させることができる。次に、プレポリマー421をブロッキング剤420と反応させて部分ブロックプレポリマー422を形成し、次にこれを連鎖延長剤425と反応させてPUD樹脂410を形成することができる。続いて、PUD樹脂410を少なくとも1種類の塩基又は酸中和剤412と混合し、水414中に分散させて、ブロックポリウレタン分散液(PUD)426及び処理溶媒408を含む溶液428を生成させることができる。その後、ブロックポリウレタン分散液426及び溶媒408の溶液428から処理溶媒408を除去して、無溶媒BPUD426を生成させることができる。例えば、溶媒408は、蒸留又は他の類似の方法によって溶液428から除去することができる。
【0069】
[0067]しかしながら、無溶媒BPUD426が良好な造膜を示し、水性ポリウレタン分散液から所望される膜硬度、オープンタイム、乾燥時間、及び他の特性を高めるために、造膜助剤、すなわち上記パートIで論じた1種類以上のカプロラクタム由来の溶媒を使用して、BPUD426の最低造膜温度(MFFT)を低下させることができる。
【0070】
[0068]種々の実施形態においては、部分ブロックプレポリマーを使用して部分ブロックPUDを製造する1つの代表的な方法は、
1.全組成物質量の10~50重量%のカプロラクタム由来の溶媒中のポリイソシアネート成分を反応させて、
(a)NCO基の50~90当量モル%を、熱的に脱ブロックすることができるブロッキング剤と反応させ;
(b)NCO基の0~25当量モル%を、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリル、又はアルキド骨格を有するポリマージオールと反応させ;
(c)NCO基の10~15当量モル%を、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有する親水剤と反応させ;及び
(d)NCO基の0~15当量モル%を、ポリイソシアネートのNCO基に対して少なくとも二官能性である連鎖延長剤と反応させる;
工程;
2.遊離NCO基を有しない上記のポリウレタン分散ポリマーのカルボキシル基を中和剤で中和する工程;及び
3.得られるポリウレタンポリマーを水中に分散させる工程(又は場合によってはジメチルエタノールアミンのような分散助剤を使用することができる);
を含む。
【0071】
[0069]他の方法は、伝統的な製造プロセス及び無溶媒製造プロセスを、ポリイソシアネート504/604をブロッキング剤520/620と反応させることによって形成される部分ブロックポリイソシアネート524/624の使用を含むように変更することを含む。図4A及び図4Bを参照すると、パートII(A)(図4A)において上記で論じたものと同様の伝統的なPUD製造プロセス500を使用するか、又はパートII(B)(図4B)において上記で論じたものと同様の無溶媒PUD製造プロセス600を使用して、部分ブロックポリイソシアネート524/624からブロックPUD526/626を形成することができる。
【0072】
[0070]図4Aを参照すると、伝統的なPUD製造プロセス500を使用して、ブロックイソシアネート524を、パートIにおいて上記で論じた1種類以上の溶媒108及び連鎖延長剤525の存在下で、ポリマージオール502及び親水剤506と反応させてPUD樹脂を生成させることができる。続いて、PUD樹脂510を少なくとも1種類の塩基又は酸中和剤512と混合し、水514中に分散させて、ブロックポリウレタン分散液(PUD)526を生成させることができる。
【0073】
[0071]図4Bを参照すると、無溶媒PUD製造プロセス600を使用して、ブロックイソシアネート624を、少なくとも1種類の処理溶媒608及び連鎖延長剤625の存在下でポリマージオール602及び親水剤606と反応させてPUD樹脂610を生成させることができる。続いて、PUD樹脂610を少なくとも1種類の塩基又は酸中和剤612と混合し、水614中に分散させて、ブロックポリウレタン分散液(BPUD)626と溶媒608との溶液628を生成させることができる。
【0074】
[0072]その後、処理溶媒608をブロックポリウレタン分散液626及び溶媒608の溶液628から除去して、無溶媒BPUD626を生成させることができる。例えば、溶媒608は、蒸留又は他の類似の方法によって溶液から除去することができる。
【0075】
[0073]しかしながら、無溶媒BPUD626が良好な造膜を示し、水性ポリウレタン分散液から所望される膜硬度、オープンタイム、乾燥時間、及び他の特性を高めるために、造膜助剤、すなわち上記のパートIで論じた1種類以上のカプロラクタム由来の溶媒を使用して、BPUD626の最低造膜温度(MFFT)を低下させることができる。
【0076】
[0074]種々の実施形態において、ブロックイソシアネートを使用してブロックされた無溶媒PUDを製造するための1つの代表的な方法は、
1.全質量の10~50重量%のカプロラクタム由来の溶媒中のポリイソシアネート成分(例えば、HDI、IPDIの三量体)を反応させて、
(a)NCO基を基準として10~25当量モル%を、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有する親水剤と反応させ;
(b)NCO基を基準として10~15当量モル%を、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリル、アルキド、ヒマシ油、又は亜麻仁油骨格を有するポリマージオールと反応させ;及び
(c)NCO基を基準として60~80当量モル%を、熱的に脱ブロックすることができるブロッキング剤と反応させる;
工程;
を含む。
【0077】
[0075]施したら、ブロックPUDは、非ブロックPUDの1工程硬化の代わりに2工程硬化にかける。2工程硬化の第1工程は、PUDを基材の表面上で部分的に硬化させる乾式硬化を含み、ここでは水を蒸発させて被覆又は膜を残留させ、PUDの粒子を融合(coalesce)させて厚い粘稠質の層又は膜を形成する。乾式硬化は、通常は室温又は周囲温度で行うので、ブロックイソシアネート基はブロックされたままであり、周囲の反応物と反応することができない。続いて、硬化の第2工程は、PUD被覆を、80℃、90℃、又は100℃のような低い温度、又は130℃、140℃、又は150℃のような高い温度、又は、例えば、80℃~150℃、90℃~140℃、又は100℃~130℃のような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内の昇温温度で加熱して、脱ブロックイソシアネート基を架橋にかける熱硬化を含む。
【0078】
[0076]ブロックPUDを加熱すると、ブロックイソシアネート基がブロッキング剤を解離して非ブロックPUDを生成し、非ブロックイソシアネート基を空気中の水分又はPUDの他の成分と反応させ、ブロッキング剤及び/又は造膜助剤を膜から離脱させる。熱硬化の反応の例は次の通り:
【0079】
【化11】
【0080】
(式中、BLはブロッキング剤であり、RはPUDの残基であり、R’は、例えば、水素、酸、又はアミンであってよい)
である。
【0081】
[0077]本発明による方法において使用するのに適したブロッキング剤は、特に、約50℃より高い温度、好ましくは約80℃~180℃の範囲の温度で有機イソシアネートとの付加反応を開始し、その結果得られる付加生成物を、第一級ヒドロキシル基を含む非揮発性ポリオールと混合して非揮発性ポリオールと反応させて、約100℃~200℃の範囲の温度でウレタンを形成する(反応はブロッキング剤の解離を伴う)、好ましくは1つのイソシアネート反応性基を有する化合物である。このタイプの好適なブロッキング剤は、例えば、イソプロパノール又はtert-ブタノールのような第2級又は第3級アルコールなどのアルコール類、フェノール及びノニルフェノールなどのフェノール類、C-H-酸化合物、例えば活性メチレン基を有する化合物、例えばジメチルマロネート、ジエチルマロネートなどのマロン酸ジエステル、オキシム、例えばホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルプロピルケトオキシム、メチルイソプロピルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、2-ペンタノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、ブタノンオキシム、又はジエチルグリオキシム、ピラゾール類の化合物、例えば1,2-ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、1,2,4-トリアゾール、イミダゾール類の化合物、例えばエチルイミダゾール、環式アミド、例えばカプロラクタムのようなラクタム、アルキルアラニンエステルのようなエステルアミン、及びアセチルアセトン、アセト酢酸アルキルエステル、ベンジル-tert-ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルアミン、エチルアセトアセテート、及び/又はそれらの混合物である。
【0082】
IV.特性:
(a)粘度:
[0078]粘度は、流体が流動する傾向に抵抗する度合いである。塗料又は被覆の粘度は、ブラシ塗布の容易さ、被覆率、及び飛散する傾向に影響を及ぼす。通常は、塗料又は被覆は、十分に容易にブラシ塗布され、ブラシマークなしで塗布される基材を適切に覆い、飛散する傾向が小さい粘度を有することが望ましい。粘度は、ASTM-D4179-11にしたがって求めることができる。一般に、本発明の塗料又は被覆の粘度は、0.05Pa・秒、0.08Pa・秒、0.2Pa・秒、0.5Pa・秒、又は1.0Pa・秒のような低い値、1Pa・秒、1.5Pa・秒、2Pa・秒、又は4Pa・秒のような高い値、又は例えば0.05~4Pa・秒、0.05~2Pa・秒、0.5~1.5Pa・秒、又は0.05~1Pa・秒のような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であり得る。
【0083】
(b)貯蔵安定性:
[0079]被覆又は塗料の貯蔵安定性は、その低剪断粘度(LSV)と相関する。したがって、貯蔵安定性は、熱老化前後の粘度測定及び顕微鏡測定によって試験することができる。一般に、より低いか又はより一定の粘度は、塗料又は被覆に関する良好な貯蔵安定性を示す。より具体的には、より低いか又はより一定の粘度は、塗料又は被覆がより長い期間有用であることを示す。例えば、本発明のPUDは、40℃において少なくとも6週間の貯蔵安定性を有することができ、又は或いは6~12ヶ月間安定に維持することができる。
【0084】
[0080]貯蔵安定性は、PUDを製造した直後、及び室温で1月間又は50℃で1月間貯蔵した後に粘度測定値を評価することによって求めることができる。
c.最低造膜温度:
[0081]塗料又は被覆の最低造膜温度(MFFT)は、塗料又は被覆を薄膜として基材に施した際に均一に造膜する最低温度である。したがって、効果的な使用のためには、塗料及び被覆がそれらのMFFTの温度より高い温度を有する表面にのみ適用されることが重要である。したがって、塗料又は被覆のMFFTがより低いと、塗料又は被覆はより広範な温度にわたってより大きな耐久性を示す。最低造膜温度は、ASTM-D-2354及びISO-2115にしたがって求めることができる。一般に、本発明の塗料又は塗料のMFFTは、-2.5℃、-2.0℃、-1.5℃のような低い値、-1.0℃、-0.5℃、又は0℃のような高い値、又は例えば-2.5℃~0℃、-1.4℃~0℃、又は-1.7℃~-0.4℃のような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であり得る。
【0085】
(d)造膜性:
[0082]被覆又は塗料の造膜性は、ポリマー粒子を一時的に可塑化して連続膜の形成をもたらす造膜助剤の効率によって特徴付けられる。一般に、良好な造膜性を有する塗料又は被覆は、厳しい条件下で適用された場合にクラッキングを少ししか示さないか又は全く示さない。良好な造膜性を有する塗料又は被覆は、欠陥のない一定の膜又は被覆を提供するために重要である。
【0086】
(e)オープンタイム:
[0083]塗料又は被覆のオープンタイムは、塗料がブラシ処理及び補修を可能にするのに十分な「濡れた状態」又は「開放状態」を維持する時間の長さである。オープンタイムは、被覆、特にブラシ塗布のための重要な性能特性である。
【0087】
[0084]オープンタイムは、ASTM-D7488にしたがって求めることができる。一般に、本発明の塗料又は被覆に関するオープンタイムは、例えば、5分、10分、又は15分のような短い時間、20分、22分、又は25分のような長い時間、又は5~25分、10~22分、又は14~22分のような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であり得る。有利には、オープンタイムがより長いと、塗料又は被覆をそれが乾燥する前により長い時間修復することができる。したがって、被覆の塗料が塗布後に擦過されたか又は損傷した場合には、塗料又は被覆が乾燥し始める前に、ユーザーによって塗料又は被覆を均一な厚さにするなどのために修正することができる。更に、より長いオープンタイムは、塗料又は被覆を広い面積にわたって施す場合に、重なり合う被覆の欠陥を減少させることができる。より長いオープンタイムはまた、フェザリング又はグレージングのような装飾技術のためにも有用である。より長いオープンタイムの更なる利点としてはまた、欠陥を修復するためにより少ない時間及び補給品しか必要としないという点で低減された労力及び材料コストも挙げられる。より長いオープンタイムはまた、工芸品、トリム塗装、及び指のネイルポリッシュなどの小規模な作業のためにも重要である場合がある。
【0088】
(f)乾燥時間:
[0085]塗料又は被覆の乾燥時間は、塗料又は被覆が、施された塗料又は被覆をちょうど触れることができる段階、又は乾燥している被覆の表面に衝突した砂を被覆の表面を損傷することなくブラシで除去することができる段階に到達するのにかかる時間の長さである。塗料又は被覆の乾燥時間は、例えば、新たに塗装されたか又は被覆された部屋、床、又は階段を使用状態に戻すことができる時点、又は被覆された物品を取り扱うか又は包装することができる時点を決定する際に重要である。一般に、塗料又は被覆は多くの異なる表面乾燥時間を有するが、一般に、それらはすべて、大まかには次のカテゴリー:超急速乾燥(0~5分)、急速乾燥(5~20分)、0.5~1時間、1.5~3時間、又は4~8時間の1つに分類される。有利には、乾燥時間がより短いと、塗料又は被覆はより迅速に乾燥し、部屋又は物品をより早く使用又は再被覆することができる。
【0089】
[0086]乾燥時間は、ASTM-D1640又はASTM-D5895にしたがって求めることができる。一般に、本発明の塗料又は被覆に関する乾燥時間は、10分、12分、又は14分のような短い時間、16分、18分、又は20分のような長い時間、又は例えば10~20分、12~20分、又は14~20分のような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であり得る。
【0090】
(g)Persoz硬度:
[0087]硬度は、有機表面の減衰特性に関係する。具体的には、硬度は機械的な力に対する被覆又は塗料の抵抗性である。より低い剛性又は抵抗は材料中への試験装置のボールのより深い押込みをもたらし、振動のより速い減衰、及び最終的にはより低い硬度をもたらす。有利には、より高い硬度は、より強いか又はより耐久性のある塗料又は被覆を示す。約110~約135のPersoz硬度を有する被覆又は塗料が良好であると考えられる。
【0091】
[0088]Persoz硬度は、ISO-522にしたがって求めることができる。一般に、本発明の塗料又は被覆に関する28日目における硬度は、100秒、110秒、又は115秒のような低い値、120秒、125秒、又は130秒のような高い値、又は例えば100~130秒、104~130秒、又は104~127秒のような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であり得る。
【0092】
(h)光沢及び色:
[0089]光沢は、顕微鏡レベルでの被覆又は塗料及び/又は基材の平滑さである。被覆又は塗料及び/又は基材が両方とも非常に平滑である場合には、光は均一な方向に反射し、高光沢の仕上げ面を与える。一方、被覆又は塗料及び/又は基材が両方とも顕微鏡レベルで粗い場合には、光は複数の方向に散乱し、より低い光沢又は平坦な仕上げ面を与える。光沢を測定する場合には、異なる角度で仕上げ面を観察することより仕上げ面に1つの値を与えることができる。一般に、100は通常は光沢に関する最高値であり、ゼロは最低値である。
【0093】
[0090]高光沢仕上げ面は、通常は70~100の値を有し、20°光沢計で測定する必要があり、10~70の範囲の光沢は60°光沢計で測定しなければならず、0~10の平坦な仕上げ面は85°光沢計で測定しなければならない。
【0094】
[0091]光沢は、ISO-2813及びUSO-7724-2にしたがって求めることができる。一般に、本発明の塗料及び/又は被覆の光沢は、20°光沢計で測定した場合には1.0~1.5、60°光沢計で測定した場合には2.5~3.5、及び85°光沢計で測定した場合には15~35のような低い値、又は前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であり得る。
【0095】
(i)耐スクラブ性:
[0092]耐スクラブ性は、塗料又は被覆が乾燥して膜を形成した後の摩耗又は劣化に耐える塗料又は被覆の能力である。摩耗又は劣化は、視覚的か、或いは重量又は厚さの損失によって評価される。塗料の耐スクラブ性を評価することの重要性は、汚れ及び他のマーキングを除去するためにブラシ又は布で洗浄した後に予想される視覚的外観を維持すること、及び洗浄製品に曝露されたときにその物理的特性を維持すること、即ち、軟化、ブリスター、又は薄化を起こさないことを確認することである。塗料又は被覆がスクラブされていない領域と比較した場合に外観に何らかの視覚的変化を示す場合には、その塗料は劣った耐スクラブ性を有すると言われる。
【0096】
[0093]耐スクラブ性は、ISO-11998にしたがって求めることができる。一般に、本発明の塗料及び/又は被覆の重量損失は、例えば、2.0g/m又は2.5g/mのような低い値、4.0g/m又は4.5g/mのような高い値、又は2.0~4.5g/m又は2.4~4.4g/mのような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であり得、本発明の塗料及び/又は被覆の厚さの損失は、例えば、1.0μm又は1.5μmのような低い値、2.5μm又は3.0μmのような高い値、又は1.0~3.0μm又は1.5~3.0μmのような前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であり得る。
【0097】
(j)凍結/融解安定性:
[0094]凍結/融解安定性は、しばしば相当なものであり得る温度変化に耐える塗料又は被覆の能力を特徴付ける。一般に、良好な凍結/融解安定性を有する塗料又は被覆は、温度の種々の変化のサイクルにかけてなお塗料又は被覆として有用である能力を有する。良好な凍結/融解安定性は、ユーザーが任意の温度で塗料を貯蔵することを可能にし、塗料又は被覆の温度が劇的に変化した場合であっても塗料又は被覆は有用なままであり、したがって、より長持ちする塗料又は被覆をもたらすので有利である。凍結/融解安定性は、ASTM-D2243-95にしたがって求めることができる。
【0098】
[0095]本明細書で使用する「前述の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内」という語句は、文字通り、値がリストの下位部分にあるか又はリストの上位部分にあるかにかかわらず、かかる語句の前にリストされた値の任意の2つから任意の範囲を選択することができることを意味する。例えば、1対の値は、2つのより低い値、2つのより高い値、又はより低い値とより高い値から選択することができる。
【実施例
【0099】
実施例1:溶媒の溶解度:
[0096]PUD製造プロセスにおけるそれらの利用可能性を求めるために、種々の溶媒間で溶解度を試験した。溶解度とは、温度及び圧力の特定の条件下で単位体積の液体物質(溶媒)中に溶解して飽和溶液を形成する物質(造膜助剤)の量である。これらの実施例に関しては、幾つかの量のデポメドロキシプロゲステロンアセテート(DMPA)を各溶媒中に溶解した。下表1に見られるように、ジメチルホルムアミド(DMF)は、100グラムの溶媒中で63.9グラムのDMPAの最良の溶解度を与え、続いてNMP(54.0gのDMPA)、n-メチルカプロラクタム(N-MeCPL)(27.5gのDMPA)、2:1の比のN-MeCPLとn-エチルカプロラクタム(N-EtCPL)の混合物(25.0gのDMPA)、1:1の比のN-MeCPLとN-EtCPLの混合物(22.5gのDMPA)、1:2の比のN-MeCPLとN-EtCPLの混合物(20.0gのDMPA)、N-EtCPL(20.0gのDMPA)、3-n-ブチルフタリド(NBP)(20.0gのDMPA)、エステルアミン(10.0gのDMPA)、N-ブチルカプロラクタム(n-BuCPL)(10.0gのDMPA)、及びエステルアミド(10.0gのDMPA)であった。カプロラクタム由来の溶媒(N-MeCPL、N-EtCPL、N-BuCPL)はNMP及びDMFほど高い溶解度を有していないが、N-MeCPL、並びに2:1及び1:1の比のN-MeCPLとN-EtCPLの混合物の溶解度は、PUDの製造のためにDMPAを適度に溶解するのに十分である。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例2:造膜助剤とPUD樹脂との適合性:
[0097]また、造膜助剤を、純粋なポリウレタン分散樹脂とのそれらの適合性について、及び透明性、均質性、及び相分離に関する膜の目視観察についても試験した。これらの特性を適切に試験するために、顔料及び他の乳白剤は配合物に加えなかった。試料は、34~36%の固形分を有する無溶媒ポリウレタン分散液のAlberdingk(登録商標)PUR-MATT 970 VPを、(ポリウレタン樹脂を基準として)5重量%の造膜助剤と混合することによって調製した。
【0102】
(a)PUD膜の目視観察:
[0098]それぞれの膜が乾燥した後に、それぞれの膜の透明性、均質性、及び相分離を観察した。下表2を参照すると、膜の目視観察は、カプロラクタム由来の溶媒、N-メチル、及びN-エチルが、良好な膜特性、すなわち良好な透明性及び均質性を示したことを示した。
【0103】
【表2】
【0104】
(b)造膜助剤の最低造膜温度:
[0099]最低造膜温度MFFTは、標準試験方法ASTM-2354及びISO-2115にしたがって、MFFT温度バー(MFFT-BAR)を使用して、350μmの厚さを有する膜を用いて測定した。下表3を参照すると、カプロラクタム由来の造膜助剤、N-メチルカプロラクタム(N-メチルCPL)、N-エチルカプロラクタム(N-エチルCPL)、N-ブチルカプロラクタム(N-ブチルCPL)、エステルアルコール、及びエステルアミドのMFFTは、NBP(-0.4±0.2)と同等又はそれよりも良好なMFFT(それぞれ、-0.8±0.4、-1.4±0.3、及び1.3±0.3)を有していた。
【0105】
【表3】
【0106】
(c)造膜助剤のPersoz硬度:
[00100]ISO-1552標準試験法にしたがって、それぞれの造膜助剤のPersoz硬度を測定した。下表4を参照すると、カプロラクタム由来の造膜助剤、N-メチル、及びN-エチルは、NBP及びエステルアルコールと比較して、28日後に同等か又はより高いPersoz硬度を示した。
【0107】
【表4】
【0108】
VI.実施例3-カプロラクタム由来の溶媒の造膜性(coalescing properties):
[00101]本発明のカプロラクタム由来の溶媒の種々の造膜性を、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、N-メチルピロリドン(NMP)、及びN-ブチルピロリドン(NBP)のような他の公知の造膜助剤と比較して試験した。
【0109】
[00102]最初に、最適な造膜を達成するために、試験を行って着色完成(pigmented and complete)PUD配合物に関する造膜助剤レベルを決定した。完成塗料を、0.7重量%、1.5重量%、3.0重量%、及び5.0重量%(重量%は純粋なポリウレタン分散樹脂を基準とした)の造膜助剤と混合し、約250μmの湿潤膜厚さでスズめっき鋼上に施した。光学顕微鏡を用いて、乾燥膜をクラッキング及び表面欠陥に関して観察した。観察に基づいて、造膜助剤の3重量%の投与量を選択した。顔料、フィラー、及び他の添加剤を有する完成PUD配合物を表5にしたがって調製し、これを用いて試験してカプロラクタム由来の溶媒及び他の公知の造膜助剤の造膜性を求めた。
【0110】
【表5】
【0111】
[00103]本発明のカプロラクタム由来の溶媒の造膜性は、他の公知の造膜助剤と概して同等であるか又はそれよりも良好であると求められた。
(a)粘度及び貯蔵安定性:
[00104]分散液及びエマルジョンは、貯蔵中にポリウレタン粒子を凝集させる傾向がある。ポリウレタン分散液の安定性を求める1つの方法は、ポリウレタン分散液の粘度を経時的に測定することである。粘度は、剪断応力又は引張応力による漸進的な変形に対する溶媒の抵抗性の尺度である。代表的な配合物を、ASTM-D4179-11標準規格による耐圧潰性を求めるための圧縮試験装置、及び終了の程度を求めるための滴定技術を使用して、粘度について試験した。調製直後及び室温で1月間又は50℃で1月間貯蔵した後の塗料について行った粘度測定値間の変動に基づいて、分散液の貯蔵安定性を評価した。一般に、溶媒の粘度がより低いと、溶媒はより安定であり、したがって、溶媒はより良好である。
【0112】
[0105]図5を参照すると、カプロラクタム由来の溶媒であるN-エチルCPL及びN-メチルCPLを使用した着色PUD配合物の貯蔵安定性は、NBPと比較して50℃で1月の加速条件に関して全体的により良好な性能(低い粘度の増加)及びNMPと比較して同等の性能を示した。
【0113】
(b)厳しい条件下でのMFFT及び造膜性:
[00106]この温度を求めるための標準試験は、ASTM-D2354及びISO-2115によって規定されているように、MFFTバーを使用することを含む。一般に、塗料又は被覆のMFFTは、造膜助剤の使用によって一時的に低下する。
【0114】
[00107]本発明のカプロラクタム由来の溶媒は、着色ポリウレタン分散液において良好なMFFTを示した。例えば、下表4に見られるように、N-エチルCPLはNMPよりも低い温度を有し、N-メチルCPLはNBPと実質的に同様の温度を有していた。
【0115】
[00108]また、200μmの湿潤厚さでスズめっき鋼上に塗料を施すことによって、厳しい条件(4℃)において膜を形成する造膜助剤の性能も試験した。下表6に示すように、N-メチルCPL、N-エチルCPL、及びN-ブチルCPLはすべて、クラックが検出されずに厳しい条件において効率的に機能したが、NMP及びエステルアルコールは微小クラックを有していた。
【0116】
【表6】
【0117】
(c)オープンタイム:
[00109]オープンタイムは、ASTM-D7488「ラテックスのオープンタイムに関する試験法」標準規格にしたがって求め、試験は、制御された温度及び湿度(23±2℃及び50±5%RH)下で行った。一般に、塗料をドクターブレードアプリケーターによってコントラストシールチャート上に200μmの湿潤膜厚で塗布し、直ちに木製のペイントブラシの幅広の湾曲した端部で「X」マークを作製する。所定の時間間隔の後、ブラシを試験する塗料中に浸漬し、前後の10ストロークを用いて最初のドローダウンに対して垂直方向にXマークのブラッシングを開始して、試験下の塗料をドローダウン領域中に入れ込んだ。この手順を幾つかの時間間隔後に繰り返す。それらの完全な乾燥(1週間)後に、塗装されたパネルを2人の異なる観察者によって観察し、「X」マークが見えるようになる時間をオープンタイムとみなす。
【0118】
[00110]図6及び下表7を参照すると、カプロラクタム由来の溶媒であるN-エチルCPL及びN-メチルCPLは、NMP(12分)及びNBP(12分)のような他の造膜助剤よりも長い、それぞれ16分及び14分のオープンタイムを有し、エステルアミドは、NMP及びNBPと同等、具体的には12分のオープンタイムを有していた。しかしながら、カプロラクタム由来の溶媒のブレンド、即ち1:1のN-エチルCPL:N-メチルCPL、1:2のN-エチルCPL:N-メチルCPL、及び2:1のN-エチルCPL:N-メチルCPLは、カプロラクタム由来の溶媒単独又は他の造膜助剤の両方よりも更に長い、それぞれ20分、22分、及び18分のオープンタイムを有していた。有利なことに、カプロラクタム由来の溶媒のブレンド、即ち1:1のN-エチルCPL:N-メチルCPL、1:2のN-エチルCPL:N-メチルCPL、及び2:1のN-エチルCPL:N-メチルCPLはまた、それぞれ17.7分、15.9分、及び16.4分であるそれらの乾燥時間よりも長い、それぞれ20分、22分、及び18分のオープンタイムを有していた。
【0119】
(d)乾燥時間:
[00111]着色PUD配合物の乾燥時間は、ASTM-D1640「有機被覆の乾燥、硬化、又は造膜に関する標準試験方法」標準規格、又はASTM-D5895「機械記録装置を用いた有機被覆の造膜中の乾燥又は硬化の評価のための標準試験方法」標準規格にしたがって求めた。ニードルによって塗料表面上に残されたトレースに応じて、4つの乾燥段階:段階1-指触乾燥時間、段階2-タックフリー時間、段階3-硬化乾燥時間、及び段階IV-完全乾燥時間を特定することができる。しかしながら、段階IVはしばしば検出が困難である。
【0120】
[00112]一般に、塗料は、バーコーターによってレネタシート上に200μmの湿潤膜厚で塗布し、ニードル速度は60cm/時に設定した。
[00113]本実施例に関しては、2:1のA:B、1:1のA:B、及び1:2のA:Bの溶媒についての乾燥時間はASTM-D1640標準規格を使用して求め、NM-CPL、NE-CPL、NMP、NBP、エステルアミド、及びエステルアルコールについての乾燥時間はASTM-D5895標準規格を使用して求めた。図7及び下表7を参照すると、全体として、カプロラクタム由来の溶媒、即ちN-メチル(NM-CPL)、N-エチル(NE-CPL)、エステルアミド、及びエステルアルコール、並びにNM-CPLとNE-CPLのブレンド(2:1、1:1、1:2)は、NMP(19.8分)と比較してより短い乾燥時間(それぞれ11.6分、17.4分、13.3分、13.6分、17.7分、15.9分、及び16.4分)を有しており、NM-CPLは、NBP(11.8分)と比較して同等の乾燥時間(11.6分)を有していた。
【0121】
【表7】
【0122】
上記の表から、複数の溶媒のブレンドは通常はオープンタイムよりも短い乾燥時間を有するのに対して、溶媒自体及び他の溶媒は通常はオープンタイムよりも長い乾燥時間を有することを観察することができる。
【0123】
(e)Persoz硬度:
[00114]硬度は、有機表面の減衰特性に関係する。より低い剛性は材料中へのボールのより深い押込みをもたらし、振動のより速い減衰、及び最終的により低い硬度をもたらす。
【0124】
[00115]Persoz硬度の測定は、ドクターブレードアプリケーターを用いて、ISO-1522標準規格にしたがって約50μmの乾燥膜厚(DFT)でスズめっき鋼上に施された着色塗料について行った。下表8を参照すると、カプロラクタム由来の溶媒に関する28日目の硬度は、他の造膜助剤のものと同等であることが示された。例えば、N-エチルカプロラクタム(NE-CPL)に関する28日目の硬度は約104.6±0.5であり、一方でNMPに関する28日目の硬度は約108.8±2.4であり、エステルアルコール及びN-メチルカプロラクタム(NM-CPL)に関する28日目の硬度はそれぞれ約124.8±1及び126.0±1であり、NBPに関する28日目の硬度は約135.8±5であった。更に、NM-CPLとNE-CPLのブレンドを有する塗料又は被覆の硬度は同等の範囲にあることが示され、例えば、NM-CPLとNE-CP1のブレンドは約110~120秒であり、一方でNMP及びNBPの硬度は約105~140秒であった。
【0125】
【表8】
【0126】
(f)光沢及び色:
[00116]光沢測定値は、塗料表面の品質の指標として働く。光沢及び色の測定値は、それぞれISO-2813標準規格及びISO-7724-2標準規格(SCI-D65/10°)にしたがって求めた。
【0127】
[00117]表9及び10を参照すると、カプロラクタム由来の溶媒、即ちn-メチル(NM-CPL)、n-エチル(NE-CPL)、及びそれらのブレンドの光沢及び色測定値は、光沢の増加を示し、色には影響を与えなかった(すなわち、黄変なし)。
【0128】
【表9】
【0129】
【表10】
【0130】
(g)耐スクラブ性:
[00118]耐スクラブ性は、ISO-11998「塗料及びワニス-被覆の湿潤耐スクラブ性及び清浄性の測定」標準規格にしたがって試験した。この試験方法においては、塗料を、フィルムアプリケーターを使用して、特定のギャップクリアランスで試験パネル(レネタシート)上に施した。室温で4週間乾燥及びコンディショニングした後、被覆されたパネルを秤量し、耐スクラブ機中で200回の湿式スクラブサイクルにかけた。次にパネルを洗浄し、乾燥し、秤量して損失を求めて、それから膜厚さの平均損失を計算した。下表11を参照すると、カプロラクタム由来の造膜助剤は、NMPと比較して、より良好な造膜を示し、塗料はブラシの動きに対してより抵抗性であった。例えば、N-メチルカプロラクタム(NM-CPL)、N-エチルカプロラクタム(NE-CPL)、並びに1:2及び1:1の比のそれらのブレンドはすべて、NMP(2.090μm)及びNBP(2.213μm)と比較して、より少ない厚さの損失(それぞれ2.035μm、1.797μm、1.39μm、及び1.64μm)を有していた。更に、カプロラクタム由来の溶媒のNM-CPLとNE-CPLのブレンドは、他の造膜助剤と比較して最も少ない量の重量損失(2.409g/m(1:1)及び2.955g/m(1:2))を示した。
【0131】
【表11】
【0132】
(h)凍結/融解安定性:
[00119]水性のエマルジョン及び分散液は、凍結による不可逆的な凝集を起こし易い。凍結/融解安定性を、ASTM-D2243-95標準規格にしたがって試験した。
【0133】
[00120]これらの実施例に関しては、着色PUD塗料を、-20℃で16時間及び室温で8時間の凍結-融解サイクルにかけ、続いて目視観察にかけた。次に、て、膜特性を観察するために、塗料をスズめっき鋼板上に約200μmの厚さで施した。
【0134】
[00121]図8及び9を参照すると、カプロラクタム由来の造膜助剤のN-メチルカプロラクタム(NM-CPL)及びN-エチルカプロラクタム(NE-CPL)、並びにそれらの1:1、1:2、及び2:1のブレンドは、NBP及びエステルアルコールよりも良好な凍結-融解安定性及び膜特性を示し、NMPと比較して同等の凍結-融解安定性を示した。更に、カプロラクタム由来の造膜助剤(NM-CPL)及びブレンドについては、凍結-融解安定性は5サイクルにかけた後においても最良であった(図9を参照)。特に、各サイクル後に塗料を目視観察して、粘度変化、すなわち塗料の増粘があったかどうかを調べた。次に、被覆の乾燥膜を目視観察した。図8及び図9から分かるように、n-ブチルピロリドン及びエステルアルコールは2サイクル後に塗料試料の増粘を示したが、N-メチルカプロラクタムは5回の凍結-融解サイクルの後においてもそのような粘度変化を示さず、良好な造膜を示した。
【0135】
実施例5:部分ブロックポリウレタン分散液の合成:
実施例5a:部分ブロックポリウレタン分散液の合成-ブロックポリイソシアネート:
[00122]スターラー及び凝縮器を備えた反応器に、N-アルキルカプロラクタム又はそれらのブレンド中の1.01モル当量のポリイソシアネート(例えば、HDI三量体;商品名:CovestroからのDesmodur N3300)を充填し、窒素雰囲気下で50℃に加熱することによって、ブロックポリイソシアネートを使用して部分ブロックポリウレタン分散液を合成した。続いて、0.7モル当量のブロッキング剤(例えば、2-ペンタノンオキシム又は2-ブタノンオキシム)を一定時間(約1時間)かけて滴下し、一定のNCO値に達するまで60~70℃で放置した。この部分ブロックポリイソシアネートに、0.1モル当量のジオール(1,6-ヘキサンジオール又はヒドロキシル末端ポリオール)及び0.2モル当量のジメチロールプロピオン酸(DMPA)を加え、全てのNCO基が消費されるまで(IR分光法によってモニターした)80~90℃で撹拌した。反応混合物を80℃に冷却し、0.2~0.25当量の中和剤(例えば、N,N-ジメチルエタノールアミン又はトリエチルアミン)を加え、撹拌を更に15~30分間続けた。脱イオン水(ポリイソシアネート1モルあたり475~480g)を加え、内容物を50℃で更に2時間撹拌した。次に内容物を室温に冷却した。分散液の固形分含量は、pH約9.0において37~38%であった。
【0136】
実施例5b:部分ブロックポリウレタン分散液の合成:ブロックプレポリマー:
[00123]スターラー及び還流凝縮器を備えた反応容器中に、1.0モル当量のヒドロキシル末端ポリオール(例えば、PTMG、M=1000及び2000g・モル-1)、1.0モル当量のジメチロールプロピオン酸(DMPA)、及び150gのN-アルキルカプロラクタム又はそれらのブレンドを充填することによって、ブロックプレポリマーを使用して部分ブロックポリウレタン分散液を合成した。70~75℃において窒素雰囲気下で撹拌しながら、150gのN-アルキルカプロラクタム又はそれらのブレンド中の2.67モル当量のジイソシアネート(MDI)を反応混合物に加えた。標準滴定(ジ-n-ブチルアミン)を用いて、イソシアネート(NCO)の含量の変化を、約3~4時間後に理論的終点に達するまでモニターした。次に反応混合物を50~60℃に冷却し、計算量(プレポリマー中の残留遊離イソシアネート(NCO)のモル当量の量)の、N-アルキルカプロラクタム又はブレンド中の1.335モル当量のブロッキング剤(例えば、2-ペンタノンオキシム又は2-ブタノンオキシムなど)を加え、残留NCO含有物が存在しなくなるまでIR分光法によってモニターした。このブロックプレポリマーを、50℃~60℃において1.0モル当量の中和剤(トリメチルアミン又はアンモニア)を用いる中和反応に1時間かけ、次に脱イオン水中に分散させた。
【0137】
[00124]本発明を代表的なデザインに関係するものとして記載したが、本発明は本発明の精神及び範囲内で更に修正することができる。更に、本出願は、本発明が関係する技術における公知又は慣例的な実施の範囲内にある本発明からの逸脱をカバーすると意図される。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
ポリウレタン分散液を形成する方法であって、
少なくとも1種類の溶媒中に溶解されている、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤からプレポリマーを形成する工程、ここで、前記少なくとも1種類の溶媒は、式:
【化20】
(式中、Rは、1~5炭素の非置換又は置換アルキル基である)
のカプロラクタム誘導体の形態である;
少なくとも1種類の塩基を前記プレポリマーに添加する工程;及び
前記プレポリマーを水中に分散させる工程;
を含む上記方法。
[2]
前記アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、及び置換アルキルから選択される、[1]に記載の方法。
[3]
次の条件:
前記少なくとも1種類の塩基はアミンである;
前記ポリマージオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアミドポリオール、アクリルポリオール、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種類のポリマージオールを含む;
前記ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つはジイソシアネートであり、これは脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネート並びにそれらの組合せから選択される少なくとも1種類のジイソシアネートを含む;及び
前記親水剤は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、及びそれらの組合せからなる群から選択される;
の少なくとも1つが存在する、[1]に記載の方法:
[4]
前記少なくとも1種類の溶媒が、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、及びN-ブチルカプロラクタムの少なくとも2つのブレンドを含む、[1]に記載の方法。
[5]
前記ブレンドが、第1及び第2の溶媒の合計重量を基準として25~75重量%の範囲の第1の溶媒及び75~25重量%の範囲の第2の溶媒を含む、[4]に記載の方法。
[6]
前記第1の溶媒がN-メチルカプロラクタムであり、前記第2の溶媒がN-エチルカプロラクタムである、[5]に記載の方法。
[7]
前記ブレンドが、前記第1及び第2の溶媒の合計重量を基準として、約50重量%のN-メチルカプロラクタム及び約50重量%のN-エチルカプロラクタムを含む、[6]に記載の方法。
[8]
前記ブレンドが前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒を含み、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との間の比が、2:1、1:1、又は1:2の1つである、[4]に記載の方法。
[9]
ブロッキング剤を使用して前記プレポリマーを少なくとも部分的にブロックする工程を更に含む、[1]に記載の方法。
[10]
ポリウレタン分散液組成物であって、
水とカプロラクタム誘導N-アルキル溶媒及び開鎖エステルアミドの1つとの溶液中に分散されている、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤から形成されるポリウレタン;
を含む上記ポリウレタン分散液組成物。
[11]
前記カプロラクタム誘導N-アルキル溶媒が、式:
【化21】
のものであり、前記開鎖エステルアミドが、式:
【化22】
のものであり、
式中、n=0又は1であり、RはH又はメチルであり、R及びRは、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及びイソブチルから選択される1~5炭素の非置換又は置換アルキル基である、[10]に記載のポリウレタン分散液組成物。
[12]
前記アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、及び置換アルキルの1つである、[11]に記載のポリウレタン分散液組成物。
[13]
前記カプロラクタム誘導N-アルキル溶媒及び前記開鎖エステルアミドの1つが、前記分散液の約1重量%~約10重量%の間を構成する、[10]に記載のポリウレタン分散液組成物。
[14]
前記カプロラクタム誘導N-アルキル溶媒及び前記開鎖エステルアミドの1つが、前記組成物の約3重量%~約6重量%の間を構成する、[13]に記載のポリウレタン分散液組成物。
[15]
ポリウレタン分散液を形成する方法であって、
少なくとも1種類の処理溶媒中に溶解された、ポリマージオール、ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つ、並びに親水剤からプレポリマーを形成する工程;
前記プレポリマーに少なくとも1種類の塩基を添加する工程;
前記プレポリマーを水中に分散させる工程;
前記ポリウレタン分散液から処理溶媒を除去する工程;
前記ポリウレタン分散液に造膜助剤を添加する工程、ここで前記造膜助剤は式:
【化23】
(式中、n=0又は1であり、RはH又はメチルであり、R及びRは、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及びイソブチルから選択される1~5炭素の非置換又は置換アルキル基である)
の1つの形態である;
を含む上記方法。
[16]
前記アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、及び置換アルキルから選択される、[15]に記載の方法。
[17]
前記アルキル基がメチルである、[16]に記載の方法。
[18]
前記アルキル基がエチルである、[16]に記載の方法。
[19]
次の条件:
前記処理溶媒は、アセトン、及びメチルエチルケトン、並びにそれらの組み合わせから選択される;
前記少なくとも1種類の塩基はアミンである;
前記ポリマージオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアミドポリオール、アクリルポリオール、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種類のポリマージオールを含む;
前記ポリイソシアネート及びジイソシアネートの少なくとも1つはジイソシアネートであり、これは脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネート並びにそれらの組合せから選択される少なくとも1種類のジイソシアネートを含む;及び
前記親水剤は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、及びそれらの組合せからなる群から選択され、前記処理溶媒がアセトン及びメチルエチルケトン並びにそれらの組合せから選択される場合には、前記親水剤はジメチルブタン酸である;
の少なくとも1つが存在する、[16]に記載の方法:
[20]
ブロッキング剤を使用して前記プレポリマーを少なくとも部分的にブロックすることを更に含む、[16]に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9